JP2018138526A - 1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 - Google Patents

1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 Download PDF

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健史 細井
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Abstract

【課題】環境負荷のかからない反応条件下、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率よく製造する方法を提供する。【解決手段】安価なクロラールを出発原料に用い、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルと反応させることにより、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを得、続いて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下、塩素(Cl2)を反応させることにより、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルを得る。次に、得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、デスフルランへ誘導することが可能である。【選択図】なし

Description

本発明は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法に関する。
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルはデスフルランとして知られている重要な吸入麻酔薬である。該吸入麻酔薬は、極めて低い生体内代謝率を有しており、生体に優しく安全性の高い薬剤として広く使用されている。
デスフルランに関する製造例は、それの前駆体として2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエチルジフルオロメチルエーテル(CFCHClOCHF;イソフルラン)、2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CFCHOCHF)、そして1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル(CFCHFOCHCl)に対して、フッ素化する方法が挙げられる。
イソフルランのハロゲン交換フッ素化反応として、アルカリ金属フッ化物を使用する方法(特許文献1)、三フッ化臭素を使用する方法(特許文献2や特許文献3)、フッ化水素を使用する方法(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)が知られている。2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを、直接フッ素化する反応としては、フッ素ガスを使用する方法(特許文献8)、高次金属フッ素化合物を使用する方法(特許文献9や特許文献10)が知られている。
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応は、フッ化水素を使用する方法が知られている(特許文献11)。
米国特許4874901号明細書 米国特許4762856号明細書 米国特許5015781号明細書 特開平2−279646号公報 米国特許6800786号明細書 国際公開第2006−076324号 特表2010−533211号明細書 米国特許3897502号明細書 特開平4−273839号公報 特開平6−192154号公報 西独国特許2361058号明細書
デスフルランの製造方法については、デスフルラン等のエーテル部位(「−O−」)を持つ化合物の物性上、過酷な条件下にてフッ素化反応を行った場合、エーテル部位の開裂に伴った分解物の副生が問題となってくる。従来からの方法は、高価な出発原料を採用する割に変換率が悪く、効率の良い方法ではなかった。また、これらの高価な出発原料を合成する方法は、環境負荷の大きい試薬や、取り扱いの難しい試薬を用いるものが多く、工業的に好ましい製法とは言い難い。
特許文献1に記載の方法は、フッ化カリウムを用いたフッ素化反応を開示しているが、反応条件は高温かつ高圧である為、工業的な製法として採用しにくく、かつ低収率である。特許文献2や特許文献3に記載の方法についても、使用している三フッ化臭素は、毒性と腐食性の強い試薬であり、取り扱いが困難な点が挙げられる。特許文献4や特許文献5に記載の方法は、五塩化アンチモン触媒の存在下、室温付近の条件でフッ化水素を用いた液相フッ素化を行うことにより、目的とするデスフルランを得ている。しかし、フッ化水素自身、酸性物質でもあり、また、一般的に反応活性が高いとされる五塩化アンチモンを使用しているため、原料であるイソフルランや目的物であるデスフルランのエーテル部位の開裂に由来した不純物の副生が多く生じていた。
特許文献6に記載の方法は、クロミア触媒の存在下での気相フッ素化反応を行っているが、変換率は中程度であり、満足な結果を得ていない。特許文献7に記載の方法は、活性炭に担持したアンチモン触媒の存在下での気相フッ素化反応を行っているが、こちらも変換率は必ずしも高いとは言えなかった。
一方、特許文献8に記載の方法は、爆発の危険もあり、また、取り扱いが不便で目的物が低収率ということもあり、工業的な製造としては採用しにくい。特許文献9や特許文献10に記載の方法は、反応を円滑に行うためには、大過剰の高次金属フッ素化合物が必要であり、経済的な観点から好ましくない。また、特許文献11に記載の方法は、何れも低収率〜中程度の収率であり、吸入麻酔剤としての製造方法としては採用しにくく、何れの方法も課題が残されたままである。
一方、本発明で開示する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応(本発明の第3工程(詳細は後述する)に対応する)については、特許文献11に記載がなされているが、該公報によれば、五塩化アンチモン触媒の存在下、室温付近にてフッ化水素を用いた液相フッ素化を行うことにより、目的とするデスフルランを得ているが、低収率(21%)であった(特許文献11)。これらの反応例により、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応によるデスフルランの合成には、低収率という課題が残されていた。
以上のように、原料の入手が容易な出発原料を用い、取り扱いが安全なフッ素化試薬を用いて、効率的にデスフルランを製造する方法が強く望まれていた。
本発明者らは、上記の問題点を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、式[1]:
Figure 2018138526
で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒド(クロラール、本明細書で単に「クロラール」と言うときがある。)、またはクロラールの等価体である、式[5]:
Figure 2018138526
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。]
で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドヘミアセタール類に対し、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルを反応させることにより、式[2]:
Figure 2018138526
で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを選択的に得(第1工程)、続いて、得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下、塩素(Cl)を反応させることにより、デスフルランの前駆体である、式[3]:
Figure 2018138526
で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルへ誘導し(第2工程)、さらに、得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[4]:
Figure 2018138526
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを効率的に製造できる知見を得(第3工程)、本発明を完成した。
第1工程については、フッ化水素並びにオルトギ酸トリメチルとの反応により、モノフルオロ化とメチルエーテル化を同時に行うことが可能となった。第2工程については、塩素の供給量を適切に制御することにより、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを高い選択率で製造できることとなった。第3工程については、フッ化水素を用いたフッ素化反応により、全ての塩素原子を一度にフッ素原子へ置換できる知見を得た。
第1工程〜第3工程に記載の各反応は、有害な廃棄物は生成せず、従来の方法と比較しても格段に有利に製造できることとなった。本発明の製造方法は、工業的に実施する上で好ましい方法である。
このように、クロラールを出発原料に用い、効率的に1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを得、次いで塩素化、フッ素化を行うことでデスフルランを製造する方法は知られていなかった。
すなわち、本発明は、以下の[発明1]から[発明9]に記載する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法を提供する。
[発明1]
以下の工程を含む、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルの製造方法。
第1工程:式[1]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒド、またはそれの等価体である、式[5]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドヘミアセタール類に、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルと反応させることにより、式[2]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを得る工程。
第2工程:第1工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下、塩素を反応させることにより、式[3]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程。
第3工程:第2工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを得る工程。
[発明2]
第1工程における反応を、有機溶媒を用いることなく行う、発明1に記載の製造方法。
[発明3]
第2工程において、ラジカル開始剤が、有機過酸化物、アゾ系ラジカル開始剤、ハロゲン光、及び紫外線光からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明1または2に記載の製造方法。
[発明4]
第3工程において、反応を気相中で行う、発明1乃至3の何れかに記載の製造方法。
[発明5]
第3工程において、反応を触媒の存在下で行う、発明1乃至4の何れかに記載の製造方法。
[発明6]
第3工程において、反応を、アンチモン、タンタル、ニオブ、モリブデン、スズ、及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物を活性炭に担持した金属ハロゲン化物担持触媒の存在下で行う、発明1乃至5の何れかに記載の製造方法。
[発明7]
第3工程において、反応を、五塩化アンチモンを活性炭に担持した触媒の存在下で行う、発明1乃至6の何れかに記載の製造方法。
[発明8]
第3工程において、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル100モルに対し、0.1から10モルの塩素(Cl)を反応系に導入させる工程を含む、発明1乃至7の何れかに記載の製造方法。
[発明9]
式[3]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル。
本発明によれば、入手が容易なクロラールを出発原料とし、取り扱いが安全な各種試剤を用いて、前記で記載した工程を経由することにより、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率的に製造できるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
本発明は、以下の工程(第1工程から第3工程)を含む。
第1工程:式[1]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒド、またはそれの等価体である、式[5]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドヘミアセタール類に、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルと反応させることにより、式[2]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを得る工程。
第2工程:第1工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下、塩素を反応させることにより、式[3]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程。
第3工程:第2工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを得る工程。
これら各工程の関係を図示すると、以下の通りとなる。
Figure 2018138526
[第1工程]
最初に第1工程について説明する。第1工程は、式[1]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒド(クロラール)に、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルと反応させることにより、式[2]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを得る工程である。
本工程において用いるクロラールは、公知の化合物であり、市販品(例えば、東京化成工業株式会社製)を用いるのが便利であるが、その他にも公知の文献(Tetrahedron Letters,56(24),3758−3761,2015)の方法等により製造できる。
なお、クロラールは、それ自身比較的不安定な化合物である為、それの水和物、二量体、ヘミアセタール等、クロラールは安定な等価体として取り扱うことが多い。例えば本工程では、クロラールの等価体である、式[5]で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドヘミアセタール類が、本工程における出発原料として利用できる。
なお、該ヘミアセタール類におけるRが水素原子の場合(=抱水クロラール)、抱水クロラールの脱水反応により、容易に式[1]で表されるクロラールに変換可能である。なお、脱水反応は公知の方法で行えば良い。
一方、該ヘミアセタール類のRがメチル基の場合は、トリクロロアセトアルデヒドのメチルヘミアセタール体(本明細書で単に「メチルヘミアセタール体」と言うことがある)となるが、該メチルヘミアセタール体を本工程における出発原料として用いる場合であっても、目的物である式[2]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを製造できる。従って、本工程については、式[5]で表される化合物を用いる実施形態であっても、本工程の範囲に包合されるものとして扱う。
本工程におけるフッ素化剤であるフッ化水素の使用量は、式[1]のクロラールに対し、通常、1当量以上あれば良く、2当量から10当量を用いると反応は円滑に進行するため好ましい。さらに、後処理面を考慮すると、3当量から6当量が特に好ましい。
本工程で用いるオルトギ酸トリメチルは、反応系に添加することで、フッ素化反応の変換率を向上させることができることから、本発明における好ましい態様の一つである。オルトギ酸トリメチルは市販品(例えば、日宝化学株式会社品)を用いることができる。
クロラールに対するフッ素化反応は、下記式で表されるように、反応の進行と共に、目的物の他、水分子が発生する。オルトギ酸トリメチルは、水分子に対するスカベンジャー(捕捉剤)として機能しているものと考えられる。すなわち、オルトギ酸トリメチルはフッ化水素の酸性条件下、速やかに加水分解反応を促され、1分子のギ酸メチルと2分子のメタノールへ変換される。
このように、オルトギ酸トリメチルと水との反応によりアルコール(メタノール)が生成し(脱水剤として機能)、それと同時に得られるエステル体(ギ酸メチル)は、反応後、目的物(1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテル)と容易に分離が可能である。
Figure 2018138526
オルトギ酸トリメチルを脱水剤として機能させるには、オルトギ酸トリメチルの使用量は、クロラール1当量に対し、通常、0.2当量以上、好ましくは0.5〜1.5当量、特に好ましくは0.8当量から1.3当量用いるのが良い。但し、オルトギ酸トリメチルを1.5当量超える量を用いた場合、加水分解により副生するアルコール(メタノール)の影響を受け、フルオラールとの平衡化合物であるジメチルアセタール(1,1−ジメトキシ−2,2,2−トリクロロエタン)が生じ、目的とする1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルへの反応が阻害されることがあるので、前述した範囲の量を用いることは、好ましい態様の一つとして挙げられる。
本工程における反応溶媒は、耐フッ化水素の高い溶媒を好適に用いることができ、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系、スルホキシド系等が挙げられる。具体例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの反応溶媒は、単独または組み合わせて用いることができる。
また、本工程は、有機溶媒を用いずに反応を行うことができる。有機溶媒を用いずに反応を行うことは、反応後の精製操作が簡便となり、高純度な該目的物を洗浄操作のみで得る利点があるので、より好ましい態様と言える。
温度条件は、−50から+100℃の範囲で行えば良く、通常は−20から+50℃が好ましく、中でも0から+20℃が特に好ましい。
圧力条件は、0.1MPa(絶対圧。以下、本明細書で同じ)から0.9MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPaから0.5MPaが好ましく、特に0.1MPaから0.2MPaがより好ましい。従って、ステンレス鋼(SUS)の様な材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する耐食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂容器を用いて反応を行うことが好ましい。例えば、フッ化水素の沸点(+19.54℃)以上の温度条件で反応を行う場合には、ステンレス鋼(SUS)等の耐圧反応容器を用いることが好ましい。
反応時間は、通常は12時間以内であるが、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段によりフッ素化反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
後処理は、反応終了液に対して通常の精製操作である洗浄を実施することにより、目的とする1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを容易に得ることができる。この目的物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度品へ精製することができる。
[第2工程]
次に、第2工程について説明する。第2工程は、第1工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下、塩素を反応させることにより、式[3]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程である。
本工程における塩素の供給量は、第1工程により得られた式[2]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対し、1.00当量から6.00当量の範囲で行えば良く、中でも1.25当量から4.00当量が好ましく、1.50当量から3.00当量の使用量が特に好ましい。
塩素の供給量に応じて反応基質の塩素化度は進行するため、塩素の供給量を適切に制御することで、「低次塩素化物」、すなわち、式[6]:
Figure 2018138526
で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルクロロメチルエーテル(本明細書で「モノクロロメチルエーテル」と言うことがある)や、「高次塩素化物」、すなわち、式[7]:
Figure 2018138526
で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルトリクロロメチルエーテル(本明細書で「トリクロロメチルエーテル」と言うことがある)の副生を最小限に抑えることが可能である。
反応器に塩素を供給する場合、塩素は気体および液体のどちらであっても良いが、取扱いの容易さという観点から、気体であることが好ましい。塩素の供給方法は、反応液中に、塩素を供給できる方法であればよく、特に限定されない。例えば、塩素化の反応開始前に反応容器内に一括で塩素を仕込む方法、塩素化反応の進行中に逐次的に塩素を供給する方法、塩素化反応の進行中に連続的に塩素を供給する方法などがある。また、反応が激しすぎる場合、アルゴンや窒素等の不活性ガスを塩素に混合させながら(すなわち、塩素を不活性ガスで“希釈する”ことを意味する)導入しても良い。
本工程は、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対する塩素化反応の選択性をより向上させるために、ラジカル開始剤を共存させることができる。具体的には、有機過酸化物、アゾ系ラジカル開始剤、紫外線光、ハロゲン光が好適に用いることができる。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルペルオキシド)、ケトンペルオキシド、ペルオキシケタール、ハイドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートを例示できる。アゾ系ラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(略名“AIBN”)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を例示できる。紫外線光としては、水銀灯、紫外線LED、有機EL、無機EL、紫外線レーザーを例示できる。中でもアゾ系ラジカル開始剤は、取り扱いが容易であり、好適に用いられる。
ラジカル開始剤の使用量は、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテル1モルに対して通常0.01から20モル%であり、好ましくは0.1から10モル%、更に好ましくは0.5から5モル%である。また、ラジカル開始剤は反応の進行状況を観察して、適宜追加することもできる。ラジカル開始剤の量が原料1モルに対して0.01モル%未満では反応が途中で停止しやすく、収率が低下する恐れがある。一方、20モル%を超えると、経済的に好ましくない。
本工程は耐塩素化性のある反応溶媒を好適に用いることができる。反応溶媒は、水、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系及びスルホキシド系等が挙げられる。具体例な反応溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル及びジメチルスルホキシド等であり、これらの反応溶媒は、単独または1種類以上を組み合わせて用いることができる。
本工程で用いる反応溶媒の使用量は、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテル100質量部に対し、10質量部から1000質量部の範囲で行えば良く、中でも10質量部から500質量部が好ましく、特に25質量部から250質量部の使用量が好ましい。
なお、本工程は、有機溶媒を用いずに反応を行うことができる。有機溶媒を用いずに反応を行うことは、反応後の精製操作が簡便となり、高純度な該目的物を洗浄操作のみで得る利点があるので、より好ましい態様と言える。
本工程における反応温度は、−20℃から+120℃の範囲で行えば良く、通常は0℃から+100℃が好ましく、中でも+20℃から+80℃が特に好ましい。
本工程における圧力条件は、0.05MPa〜5.0MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPa〜0.3MPa程度の微加圧の範囲が、より簡便であり、好ましい。なお、5.0MPaを超える圧力で反応を行うことも可能であるが、過剰な圧力条件は設備に負荷がかかるため、前記圧力範囲、大気圧下での反応が好ましい。従って、塩素や副生する塩化水素に対する耐食性を有する石英ガラスやホウケイ酸ガラス等のガラス容器、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂容器を好適に用いることができる。
本工程における反応時間は、通常は24時間以内であるが、前記ラジカル開始剤、紫外線光の出力に起因した反応条件の違いにより反応時間は異なってくる。ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質の消失を確認後、反応を終了することが好ましい。
後処理は、反応終了液に対して通常の蒸留操作を実施することにより、目的とする式[3]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルを、高純度に得ることができる。この生成物は、必要に応じて活性炭処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度へ精製することができる。
式[3]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルは有用な吸入麻酔薬であるデスフルランの前駆体である。一方、前述した高次塩素化物、すなわち、式[7]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルトリクロロメチルエーテルに対し、特許文献2や特許文献3に記載の方法を参考にフッ素化を試みたところ、フッ素化は部分的に進行し、1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロジフルオロメチルエーテルが得られる。しかしながら、該エーテルはデスフルランを製造する際、分離困難な不純物になり得るため、吸入麻酔薬であるデスフルランの製造工程を考慮した場合、本工程の塩素化反応時において、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルトリクロロメチルエーテルは、できる限り低減させることが好ましい。
一方、低次塩素化物である式[6]で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルクロロメチルエーテルは容易に分離回収でき、回収した該エーテルは再度、塩素化を行うことで、目的物である、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルへ誘導することが可能である。1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルクロロメチルエーテルを再利用する際は、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを再添加して、塩素化反応を繰り返し行うこともできる。
[第3工程]
次に、第3工程について説明する。第3工程は、第2工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程である。
本工程は、フッ化水素に対して実質的に不活性な材質で造られた反応器を用い、温度調節の下、触媒の充填された反応領域へ1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルを導入することで行なわれる。本工程で用いる反応容器としては、通常、管状のものであって、ステンレス鋼、ハステロイTM、白金等の金属製のものや、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂等を内部にライニングしたものであり、常圧又は加圧下でも十分反応を行うことができる反応容器を用いるのが好ましい。
本工程では、フッ素化反応を行う際、触媒を用いることができる。かかる触媒としては、アンチモン、タンタル、ニオブ、モリブデン、スズ、及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物を活性炭に担持した金属ハロゲン化物担持触媒である。
触媒調製に用いる前記金属ハロゲン化物としては、高原子価金属ハロゲン化物、すなわち、通常取りうる最高の原子価を有するハロゲン化物が好ましい。したがって、該ハロゲン化物における高原子価金属としては、アンチモン(V:酸化数をいう。以下同じ))、スズ(IV)、チタン(IV)、ニオブ(V)、タンタル(V)、モリブテン(V)であるのが好ましい。これらの金属のうち、アンチモン、タンタルは好ましく、アンチモンが特に好ましい。なお、金属ハロゲン化物を担体に担持した後に、通常取りうる最高の酸化数に塩素などで酸化すること、さらには金属化合物を担持し、次いでハロゲン化および/または高次酸化することで高原子価金属ハロゲン化物を担持した触媒としても良い。金属ハロゲン化物は、SbX(Xはそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表す。以下同じ)、TaX、NbX、MoX、SnX、TiXの構造等の金属ハロゲン化物が挙げられる。
触媒調製に用いる金属ハロゲン化物として、具体的にはアンチモン化合物としては、五塩化アンチモン、三塩化二フッ化アンチモン、三塩化アンチモン、五臭化アンチモン、三臭化アンチモン、五フッ化アンチモン、三フッ化アンチモン、三沃化アンチモン等が挙げられる。これらのうち、五塩化アンチモンが特に好ましい。同様に、スズ化合物としては、四塩化スズ、二塩化スズ等が、チタン化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタン等が、ニオブ化合物としては、五塩化ニオブ等が、タンタル化合物としては、五塩化タンタル等が、モリブテン化合物としは、五塩化モリブデン等が挙げられる。
触媒の調製方法としては特に限定されず、金属ハロゲン化物が活性炭に付着しておればよい。常温付近で液体である化合物、例えば、五塩化アンチモン、四塩化スズまたは四塩化チタンなどの場合、後述する塩基性水溶液、酸または熱水による処理や脱水処理の前処理を必要に応じて施した活性炭に、そのまま滴下、スプレー、浸漬等の方法で直接付着させることができる。また、常温で液体または固体の化合物である場合には、化合物を溶媒に溶解した溶液へ活性炭を浸漬し含浸させるか、スプレーなどの方法で活性炭に付着させる。次に、このようにして得られた金属化合物の付着した活性炭を加熱または/および減圧して乾燥した後、金属ハロゲン化物が付着した活性炭を加熱下においてフッ化水素、塩素、塩化水素、塩化フッ化炭化水素等と接触させることで触媒を調製する。特に五塩化アンチモンを担持した場合、100℃以上で1当量以上の塩素により処理することが、触媒の活性化に望ましい。
本工程で用いる溶媒としては、金属ハロゲン化物を溶解でき、その際、金属ハロゲン化物を分解しない溶媒であれば良い。具体的には、例えば、低級アルコール類(炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基を有するアルコール、または炭素数3〜6の環式のアルキル基を有するアルコールのことを言う)、エーテル類、ケトン類、芳香族化合物、エステル類、塩素系溶剤、フッ素系溶剤などが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。
例えば、五塩化アンチモン、五塩化ニオブ、五塩化タンタル、五塩化モリブデンなどの溶剤としては1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなど、フッ素系溶剤は好適である。これらの溶媒を使用する際、または溶媒を用いない場合でも水などのハロゲン化物と反応性を有する物質を溶媒および処理系から除去し、実質的に水の不存在下において担持させることが好ましい。
本工程で使用する触媒の、該触媒の調製に用いる金属ハロゲン化物の活性炭への担持量は、活性炭100質量部に対し0.1から500質量部であり、好ましくは1から250質量部である。また、2種以上の金属を併せて触媒活性を調節することもできる。この場合、アンチモンハロゲン化物(特に五塩化アンチモン)を主成分として、他のニオブ化合物(特に五塩化ニオブ)またはタンタル化合物(特に五塩化タンタル)、スズ、チタン、ニオブ、タンタル、モリブテンのハロゲン化物を組み合わせるのが良い。副成分金属/主成分金属の原子比は、副成分金属を含まない場合でも良いが、50/50〜0/100とすることができ、30/70〜0/100が好ましい。
担体として用いる活性炭は、木材、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰等を原料とする植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭等を原料とする石炭系、石油残滓、オイルカーボン等を原料とする石油系または炭化ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂系がある。これら市販の活性炭から選択し使用することができ、例えば、瀝青炭から製造された活性炭(東洋カルゴン製BPL粒状活性炭)、椰子殻炭(武田薬品工業製粒状白鷺GX、SX、CX、XRC、東洋カルゴン製PCB)等が挙げられるが、これらに限定されない。形状、大きさも通常粒状で用いられるが、球状、繊維状、粉体状、ハニカム状等反応器に適合すれば通常の知識範囲の中で使用することができる。
本発明において使用する活性炭は比表面積の大きな活性炭が好ましい。活性炭の比表面積ならびに細孔容積は、市販品の規格の範囲で十分であるが、それぞれ400m/gより大きく、0.1cm/gより大きいことが望ましい。またそれぞれ800から3000m/g、0.2から1.0cm/gであればよい。さらに、活性炭は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液に常温付近で10時間程度またはそれ以上の時間浸漬するか、活性炭を触媒担体に使用する際に慣用的に行われる硝酸、塩酸、フッ酸等の酸による前処理を施し、予め担体表面の活性化ならびに灰分の除去を行うことが望ましい。さらに、本工程での触媒は、何れの方法により前処理される場合も、金属ハロゲン化物を担持処理する際に加水分解等により劣化しないよう前もって加熱し、その後、減圧乾燥等することで水分除去を可及的に行うのが好ましい。何れの方法で調製した触媒も、使用の前に予めフッ化水素、フッ素化またはフッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤と接触させておき、反応中の触媒の組成変化、短寿命化、異常反応などを防止することが有効である。
また、本工程で使用する触媒はフッ化水素および/または塩素と接触させておくことは同様の理由で好ましい。また、反応中に、塩素、フッ素化塩素化または塩素化炭化水素などを反応器中に供給することは触媒寿命の延長、反応率、反応収率の向上に有効である。特に塩素の導入は触媒活性の向上、維持に好ましく、原料である1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル100モルに対し、0.1から10モル程度同伴させることが好ましい。
本工程では、気相中、フッ化水素を流通させることでフッ素化反応を進行させるが、このような流通形式では、触媒の保持方法は固定床、流動床、移動床等、いずれの形式でもかまわないが、固定床で行うのが簡便であり、好ましい。
本工程の方法を行う反応温度は特に限定されないが、100から500℃であり、100から300℃が好ましく、100から200℃がさらに好ましい。反応温度が500℃を超えても特に反応率は向上せず、分解生成物が生成して目的物であるデスフルランの選択率が低下するので好ましくない。
本工程において、反応系に供給する1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル:フッ化水素のモル比は反応温度により変わってくるが、通常、1:50から1:2であり、1:30から1:4が好ましく、1:20から1:5が特に好ましい。フッ化水素が過剰量である場合、有機物処理量の減少ならびに反応系から排出された未反応フッ化水素と生成物との混合物の分離に支障をきたす。一方で、フッ化水素が少ないと反応変換率は低下し、目的物の収率が低下する。
本工程の方法は、圧力については特に限定されないが、例えば気相反応として行う場合は、特に加圧または減圧などの圧力調節をすることなく行うことができる。装置の機械的な側面から0.1MPa〜1.0MPaで行うのが好ましい。なお、操作圧力を設定する場合、系内に存在する原料などの有機物が反応系内で液化しないような条件を選ぶことが望ましい。
本工程の方法での接触時間は、標準状態において、通常0.1から200秒、好ましくは3から100秒である。接触時間が短いと反応率が低下し、接触時間が長すぎると副反応が起こるので好ましくない。
本工程の方法により、反応器から流出する、目的物であるデスフルランを主成分とする生成物は、公知の方法で精製することができる。後処理は、反応終了液に対して通常の蒸留操作を実施することにより、デスフルランの単体を高純度に得ることができる。目的生成物は、必要に応じて、活性炭処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度へ精製することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」は、原料または生成物をガスクロマトグラフィー(以下GCと記す、検出器はFID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。なお、第3工程に用いるフッ素化触媒は以下の通りに調製したものを用い、フッ素化反応に供した。
[調製例]
1リットルガラス製フラスコに、表面積1150から1250m/g、細孔径15から20オングストロームの粒状活性炭(東洋カルゴンPCB、4×10メッシュ)0.25リットルを入れ130から150℃に加温した後真空ポンプにより水分を除去した。水分の留出が認められなくなった時点でフラスコ内に窒素を導入して常圧とし、125gの五塩化アンチモンを滴下ロートにて1時間にわたり撹拌しながら活性炭層に導入した。五塩化アンチモンを含浸した活性炭は約1時間、150℃に保持して熟成した。
[実施例1]
Figure 2018138526
温度計、攪拌モーターを備えた1000mlのステンレス鋼製(SUS)オートクレーブ反応器にフッ化水素162g(8.14mol)、そしてクロラール400g(2.71mol)を量り取った。その後、冷却下、オルトギ酸メチル288g(2.71mol)を内温4.0℃から26.7℃にて滴下した。室温にて1時間反応後、再度冷却を行い、発熱に注意しながらイオン交換水400gを反応液へ添加し、反応を停止させた。10分間の水洗後、2層分離を行うことでGC純度77.1%の有機層を555g得た。得られた有機層にはオルトギ酸メチルの加水分解体であるギ酸メチルやメタノールが含有するため、16%水酸化カリウム溶液600gを用いて洗浄を行うことにより、GC純度94.2%の1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを収率90.0%にて443g得た。
[物性データ]
1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.75(3H,d,J=1.58Hz),5.34(1H,d,J=63.8Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−128.1 (1F,d,J=63.7Hz)
[実施例2]
Figure 2018138526
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテル400g(2.20mol、1.00当量)、そしてAIBN7.2g(44mmol、2mol%)を量り取った。オイルバス温度を60℃まで加温後、塩素343g(4.84mol、2.2当量)を発熱に注意しながら、5時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応液をGC分析に供したところ、目的物として、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルは55.5GC%、未反応の原料は1.5%、低次塩素化物(モノクロロメチルエーテル;1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルクロロメチルエーテル)は24.7GC%、高次塩素化物(トリクロロメチルエーテル;1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルトリクロロメチルエーテル)は8.5GC%、その他は9.8%であった。得られた反応粗体は理論段数10段の蒸留塔を用い、精密蒸留による分留を行ったところ、目的物が75.8%含有する主留分を収率48%にて得た。
また、低次塩素化物が62.9%、そして目的物が23.6%含有する初留分を収率35%で回収した。回収した初留分は再度、塩素化を行うことにより、目的物への誘導が可能である。
[物性データ]
1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.04(1H,d,J=57.4Hz),7.32(1H,s)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−129.1 (1F,d,J=57.7 Hz)
[実施例3]
Figure 2018138526
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテル50g(276mmol、1.00当量)を量り取った。オイルバス温度を40℃まで加温後、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ社製)にて紫外線を照射しながら、塩素45g(634mmol、2.3当量)を発熱に注意しながら、3時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体を得た。この反応粗体をGC分析に供すると、目的物として、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルは56.6GC%含有していることを確認した。
[実施例4]
Figure 2018138526
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径2.5cm・長さ40cm)に触媒として前記調製例で調製した触媒を50mL充填した。約3mL/分の流量で塩素ガスを流しながら、反応管の温度を120℃に上げ、フッ化水素を約0.1g/分の速度で1時間にわたり導入した。次いで、原料である1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル(75.8GC%)を約0.1g/分(接触時間15秒)の速度で反応管へ供給開始した。反応開始1時間後には反応は安定したので、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)が32.9%であった。
[物性データ]
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン):
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):5.91(1H,dq,J=2.8Hz,54.2Hz),6.43(1H,t,J=70.5Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−146.5(1F,d,J=54.8Hz),−86.8(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−85.5(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−84.6(3F,s)
本発明における対象化合物である1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)は、吸入麻酔剤として利用できる。

Claims (9)

  1. 以下の工程を含む、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
    第1工程:式[1]:
    Figure 2018138526
    で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒド、またはそれの等価体である、式[5]:
    Figure 2018138526
    [式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。]
    で表される2,2,2−トリクロロアセトアルデヒドヘミアセタール類に、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルと反応させることにより、式[2]:
    Figure 2018138526
    で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルを得る工程。
    第2工程:第1工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下、塩素(Cl)を反応させることにより、式[3]:
    Figure 2018138526
    で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程。
    第3工程:第2工程にて得られた1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[4]:
    Figure 2018138526
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
  2. 第1工程における反応を、有機溶媒を用いることなく行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 第2工程において、ラジカル開始剤が、有機過酸化物、アゾ系ラジカル開始剤、ハロゲン光、及び紫外線光からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 第3工程において、反応を気相中で行う、請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
  5. 第3工程において、反応を触媒の存在下で行う、発明1乃至4の何れかに記載の製造方法。
  6. 第3工程において、反応を、アンチモン、タンタル、ニオブ、モリブデン、スズ、及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物を活性炭に担持した金属ハロゲン化物担持触媒の存在下で行う、請求項1乃至5の何れかに記載の製造方法。
  7. 第3工程において、反応を、五塩化アンチモンを活性炭に担持した触媒の存在下で行う、請求項1乃至6の何れかに記載の製造方法。
  8. 第3工程において、1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル100モルに対し、0.1から10モルの塩素(Cl)を反応系に導入させる工程を含む、請求項1乃至7の何れかに記載の製造方法。
  9. 式[3]:
    Figure 2018138526
    で表される1−フルオロ−2,2,2−トリクロロエチルジクロロメチルエーテル。
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