JP2017001972A - アルコール化合物の製造方法 - Google Patents

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裕輔 村田
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Abstract

【課題】高価なルテニウム錯体触媒を用いることなく、安価な銅錯体触媒を用いて穏和な反応条件下にてカルボン酸誘導体をアルコール化合物に還元する新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】イミダゾリウム塩(A)、銅化合物(B)及び、塩基(C)を反応させて得られる銅錯体の存在下、カルボン酸エステル化合物を水素で還元する工程(2)を含む、アルコール化合物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アルコール化合物の製造方法及び該製造方法に有用な銅錯体等に関する。
カルボン酸エステル化合物を還元して対応するアルコール化合物を得る方法は化学合成において重要である。特に触媒を用いた接触還元法は、副生成物の低減、操作性の良さ、作業の安全性等からアルコール化合物の製造方法として有用である。このような還元触媒としては、不均一系触媒、均一系触媒が知られている。
たとえば、上記不均一系触媒としては、銅系触媒や貴金属系触媒が知られている。銅系触媒としては、例えば、銅−クロム−酸素系触媒(Cu−Cr−O系触媒)が知られている(たとえば、非特許文献1)。しかしながら、不均一系触媒を用いる製造方法では、高温又は高圧という過酷な反応条件を必要とすることが多く、操作性、製造装置等に大きな制限を有する。
一方、均一系触媒としては、ルテニウム錯体触媒が知られている(例えば、特許文献1〜3及び非特許文献2)。均一系触媒を用いる製造方法では、不均一系触媒を用いる場合よりも穏和な条件で反応が進行するため、操作性、製造装置等の観点から有利である。しかしながら、これらの錯体は高価なルテニウムを用いているため、錯体が高価であり、また価格変動の影響を大きく受けやすく、経済性の観点から問題である。
また、還元触媒として安価な金属である銅を用いた均一系触媒は、アルデヒドやケトンといった還元容易なカルボニル化合物やオレフィンに対して還元活性を有していることが知られている(例えば、特許文献4及び5)。しかしながら、還元が比較的困難なカルボン酸エステル化合物に対して還元活性を示すことは知られていない。
特表2008−538352号公報 WO2011/048727号 WO2012/052996号 WO2007/007646号 WO2010/067441号
H.Adkins「Organic Reaction」 1984.8.1−27 Ikariya,T.et al.,「ACS Catalysis」,2012,2,1718−1741
本発明は、高価なルテニウム錯体触媒を用いることなく、安価な銅錯体触媒を用いて穏和な反応条件下にてカルボン酸エステル化合物をアルコール化合物に還元する新規な製造方法を提供する。
斯かる課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討したところ、以下の本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の項1〜9に示す構成を包含する。
項1. イミダゾリウム塩(A)、銅化合物(B)及び、塩基(C)を反応させて得られる銅錯体の存在下、カルボン酸エステル化合物を水素で還元する工程(2)を含む、アルコール化合物の製造方法。
項2. 前記イミダゾリウム塩(A)は、式(1)又は(2)
Figure 2017001972
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとRとが結合して、RとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Xは1価のアニオンを表す;R〜R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとR及び/又はRとRとが結合して、RとR及び/又はRとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Xは1価のアニオンを表す。]
で示されるイミダゾリウム塩である前記項1記載の製造方法。
項3. 前記一般式(1)中のR及びR、又は式(2)中のR及びR10がシクロアルキル基である前記項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記銅化合物(B)が下記一般式(3)
Cu(Z)Y ・・・(3)
[式中、Yは1価のアニオンを表し、Zは単座配位子を表し、nは0から6の自然数を表す。]
で示される銅化合物である前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5. カルボン酸エステル化合物が、式(4)
11−COOR12 ・・・(4)
(式中、R11及びR12はそれぞれ互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
で示されるカルボン酸エステル化合物であり、得られるアルコール化合物が、式(5)
11−CHOH ・・・(5)
[式中、R11は上記と同一の意味を表す。]
で示されるアルコール化合物であることを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法
項6. カルボン酸エステル化合物が、式(6)
Figure 2017001972
[式中、R13は、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。]
で示されるラクトンであり、得られるアルコール化合物が、式(7)
HO−R13−CHOH ・・・(7)
[式中、R13は上記と同一の意味を表す。]
で示されるアルコール化合物であることを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法
項7. イミダゾリウム塩(A)と銅化合物(B)とを塩基(C)存在下で反応させて銅錯体を得る工程(1)をさらに含む、前記項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
項8. 工程(2)で得られた反応混合物からアルコール化合物を分離する工程(3)をさらに含む、前記項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
項9. 式(10)〜式(13)
Figure 2017001972
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとRとが結合して、RとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Wは1価のアニオンを表す;R〜R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとR及び/又はRとRとが結合して、RとR及び/又はRとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Wは1価のアニオンを表す。]
で示される銅錯体の存在下、カルボン酸エステル化合物を水素で還元する工程を含む、アルコール化合物の製造方法。
本発明によれば、経済的に有利な銅錯体触媒を用いて、比較的穏和な反応条件でもカルボン酸エステル化合物をアルコール化合物に還元することのできる新規な製造方法を提供可能である。
本発明の製造方法は、イミダゾリウム塩(A)、銅化合物(B)及び塩基(C)を反応させて得られる銅錯体(以下、銅錯体と記すことがある。)の存在下、カルボン酸エステル化合物を水素で還元する工程(2)を含む。本発明の製造方法は、イミダゾリウム塩(A)、銅化合物(B)及び塩基(C)を反応させて銅錯体を得る工程(1)をさらに含むことが好ましく、工程(1)及び工程(2)で得られた反応混合物からアルコール化合物を分離する工程(3)をさらに含むことがより好ましい。
上記イミダゾリウム塩(A)は、一般的に、置換基が結合していてもよい。上記イミダゾリウム塩上の置換基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基等が挙げられる。
上記置換基を有していてもよいアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れであってもよく、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
上記置換基を有していてもよいアルキル基のうち、無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基等の直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜20のアルキル基;シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メンチル基、シクロドデシル基等の炭素数3〜12のシクロアルキル基等が挙げられる。
上記置換基を有していてもよいアルキル基における置換基としては、例えば、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜10のアリール基;2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基等の炭素数1〜4のアルキル置換アリール基;4−クロロフェニル基等のハロゲン置換アリール基;4−メトキシフェニル基等の炭素数1〜4のアルコキシ置換アリール基等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜6のハロアルコキシ基;ベンジルオキシ基;4−メチルベンジルオキシ基等の(C〜Cアルキル)置換ベンジルオキシ基;4−メトキシベンジルオキシ基等の(C〜Cアルコキシ)置換ベンジルオキシ基;3−フェノキシベンジルオキシ基等のフェノキシ置換ベンジルオキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の(C〜Cアルコシキ)置換C〜Cアルコキシ基等が挙げられる。
上記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基;2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等の[(C〜Cアルキル)置換アリール]オキシ基;4−メトキシフェノキシ基等の[(C〜Cアルコキシ)置換アリール]オキシ基;3−フェノキシフェノキシ基等の(フェノキシ置換アリール)オキシ基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
上記置換基を有していてもよいアルキル基のうち、置換基を有するアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基等の(C〜Cアルコキシ)置換C〜Cアルキル基;ベンジル基等のアリール置換アルキル基;4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基等の(ハロゲン置換アリール)C〜Cアルキル基;フェノキシメチル基等の(フェノキシ置換)C〜Cアルキル基等が挙げられる。
尚、本明細書中、各置換基の例示において、C〜C、C〜C10は、それぞれ炭素数1〜4、炭素数3〜10を表す。
上記イミダゾリウム塩に結合してもよい置換基のうち、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。上記置換基を有していてもよいアリール基のうち、無置換のアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基、具体的にはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記置換基を有するアリール基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記置換基を有するアリール基としては、例えば、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基等の(C〜Cアルキル)置換アリール基;4−クロロフェニル基等のハロゲン置換アリール基;4−メトキシフェニル基等の(C〜Cアルコキシ)置換アリール基;等が挙げられる。
上記イミダゾリウム塩に結合し得る置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、ベンジル基、(C〜Cアルキル)置換ベンジル基が好ましい。
上記イミダゾリウム塩(A)は、例えば、次の一般式(1)または(2)
Figure 2017001972
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとRとが結合して、RとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Xは1価のアニオンを表す。;R〜R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとR及び/又はRとRとが結合して、RとR及び/又はRとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Xは1価のアニオンを表す]
で示されるものを挙げることができる。
〜R又はR〜R10はそれぞれ異なっていても、同一であってもよい。R及びR、又はR及びR10が同一であることがイミダゾリウム塩の入手がより容易である点で好ましい。
式(1)において、アルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基としては、それぞれ上述のイミダゾリウム塩に結合し得る置換基として例示した基を挙げることができる。具体的には、上記置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基において例示した置換基を挙げることができる。
とR又はRとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって形成される環としては、例えば、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゾイレン環、ナフトイレン環等が挙げられる。
即ち、RとRとが結合して、RとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって形成される環を含むイミダゾリウム塩の具体例としては、シクロペンテノイミダゾール、シクロヘキセノイミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール等のイミダゾリウム塩(これらの窒素原子上に置換基R及びRを有していてもよい)が挙げられる。
とRとが結合して、RとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって形成される環を含むイミダゾリウム塩の具体例としては、シクロペンタノイミダゾール、シクロヘキサノイミダゾール等のイミダゾリウム塩(これらの窒素原子上に置換基R〜R10を有していてもよい)が挙げられる。
特に、得られる銅錯体の触媒活性の観点から好ましいイミダゾリウム塩としては、上記一般式(1)のイミダゾリウム塩におけるR〜RのうちR及びRが前記したシクロアルキル基であることが好ましく、R及びRが水素原子、かつR及びRが前記したシクロアルキル基であることがより好ましい。また、上記一般式(2)のイミダゾリウム塩におけるR〜R10のうちR及びR10が前記したシクロアルキル基であることが好ましく、R〜Rが水素原子、かつR及びR10が前記したシクロアルキル基であることがより好ましい。
特に、得られる銅錯体の触媒活性の観点から上記一般式(1)のイミダゾリウム塩におけるR〜RのうちR及びRが前記したシクロアルキル基であることが好ましく、R及びRが水素原子、かつR及びRが前記したシクロアルキル基であることがより好ましい。
としては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;メタンスルホナート等のアルカンスルホナートイオン;トリフルオロメタンスルホナート等のフッ素原子を有するアルカンスルホナートイオン;アセテートイオン;トリフルオロアセテートイオン、トリクロロアセテートイオン等のハロゲン原子を有するアセテートイオン;硝酸イオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロボレート、テトラクロロボレート等のテトラハロボレートイオン;ヘキサフルオロホスファート等のヘキサハロホスファートイオン;ヘキサフルオロアンチモナート、ヘキサクロロアンチモナート等のヘキサハロアンチモナートイオン;ペンタフルオロスタンナート、ペンタクロロスタンナート等のペンタハロスタンナートイオン;テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等の置換基を有していてもよいテトラアリールボレートイオン;メトキシド、エトキシド、1−プロポキシド、2−プロポキシド、1−ブトキシド、2−ブトキシド、2−メチル−1−プロポキシド、2−メチル−2−プロポキシド等のアルコキシド等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン化物イオン、テトラハロボレートイオン、ヘキサハロホスファートイオン、及びヘキサハロアンチモナートイオンが好ましく、特に活性及び原料の入手容易性の観点から塩化物イオン、臭化物イオン及びテトラフルオロボレートイオンが好ましい。
上記一般式(1)のイミダゾリウム塩としては、具体的に、1,3−ジシクロプロピルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロプロピルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジシクロプロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)イミダゾリウムクロリド、1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)イミダゾリウムブロミド、1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジシクロペンチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロペンチルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジシクロペンチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジシクロオクチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロオクチルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジシクロオクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジシクロデシルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロデシルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジシクロデシルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジメンチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジメンチルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジメンチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジシクロドデシルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロドデシルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジシクロドデシルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等を挙げることができ、特に入手容易性の観点から、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムテトラフルオロボレートが好ましい。
次に、上記イミダゾリウム塩(A)と銅化合物(B)とを塩基(C)の存在下で反応させる工程(1)により得られる銅錯体及び該銅錯体を含有する組成物について説明する。
上記銅錯体は、後述のカルボン酸エステル化合物を還元する触媒として好適に用いることができる。上記銅錯体は、上記イミダゾリウム塩(A)、銅化合物(B)及び塩基(C)から得られるので、安価に製造することができる。
本発明で用いられる銅化合物(B)としては、一価又は二価の銅を含有する化合物が挙げられ、例えば、銅塩、その他の銅化合物、銅錯体等が挙げられる。これら本発明で用いられる銅化合物の具体例としては、例えば、Organocopper Reagent A Practical Approach (OXFORD UNIVERSITY PRESS, 1994)に記載の銅化合物等が挙げられる。
銅化合物(B)としては、例えば下記一般式(3)
Cu(Z)Y ・・・(3)
[式中、Yは1価のアニオンを表し、Zは単座配位子を表し、nは0から6の自然数を表す。]
で表される銅塩等が挙げられる。
式(3)において、Yは前述の1価のアニオンを挙げることができる。
式(3)において、Zは2電子供与性の単座配位子を表す。2電子供与性の単座配位子の例としては、CO、PR1a1b1c(R1a、R1b及びR1cは同一又は異なって、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基)、P(OR2a)(OR2b)(OR2c)(R2a、R2b及びR2cは同一又は異なって、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基)、SR3a3b(R3a及びR3bは同一又は異なって、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基)、ニトリル基(R4aCN;R4aは置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基)、イソニトリル基(R5aNC;R5aは置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基)、N、PF、CS、テトラヒドロチオフェン、炭素数1〜5、好ましくは2〜5のアルケン等が挙げられる。
PR1a1b1c、P(OR2a)(OR2b)(OR2c)、SR3a3b、ニトリル基(R4aCN)、イソニトリル基(R5aNC)におけるR1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R4a、R5aとしては、置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリ―ル基、複素環基等が挙げられる。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び複素環基としては、前記したアルキル基、シクロアルキル基、アリ―ル基及び複素環基が挙げられる。なお、上記のうち、R1a、R1b及びR1cはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R2a、R2b及びR2cはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R3a及びR3bはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、炭素数1〜5のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−2−ブテン等が挙げられる。
これらのなかでも、好ましい単座配位子としては、PR1a1b1c(R1a、R1b及びR1cは同一又は異なって、それぞれ上記説明した、置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基である)、ニトリル基(R4aCN;R4aは置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基)等が挙げられる。
銅化合物の具体例としては、例えば、硝酸銅(I)、硝酸銅(II)等の硝酸銅;亜硝酸銅(I)、亜硝酸銅(II)等の亜硝酸銅;塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、フッ化銅(I)、フッ化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)等のハロゲン化銅;硫酸銅(II)等の硫酸銅;亜硫酸銅(II)等の亜硫酸銅;メタンスルホン酸銅(I)、メタンスルホン酸銅(II)、p−トルエンスルホン酸銅(I)、p−トルエンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)等のスルホン酸銅;スルファミン酸銅(II)等のスルファミン酸銅;炭酸銅(II)等の炭酸銅;水酸化銅(II)等の水酸化銅;酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、ギ酸銅(II)、プロピオン酸銅(II)、グルコン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、シュウ酸銅(II)、安息香酸銅(II)、フタル酸銅(II)、カプリル酸銅(II)、クエン酸銅(II)、サリチル酸銅(II)、酒石酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、ナフテン酸銅、乳酸銅(II)、ラウリン酸銅(II)等のカルボン酸銅;硫化銅(I)、硫化銅(II)等の硫化銅;チオシアン酸銅(I)、チオシアン酸銅(II)等のチオシアン酸銅;リン酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)、銅ヘキサフルオロリン酸、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロリン酸等のリン酸銅;酸化銅(I)、酸化銅(II)等の酸化銅;塩素酸銅(I)、過塩素酸銅(II)等の過ハロゲン化酸銅;ヨウ素酸銅(II)等のハロゲン化酸銅;ヘキサフルオロケイ酸銅等のケイ酸銅;シアン化銅(I)、シアン化銅(II)等のシアン化銅;ホウ酸銅、メタホウ酸銅、銅テトラフルオロホウ酸、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロホウ酸等のホウ酸銅等が挙げられる。
上記銅化合物(B)は単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。銅化合物(B)は、市販品であってもよいし、公知の方法により合成したものであってもよい。
銅化合物(B)は、銅化合物(B)における銅原子の量が、イミダゾリウム塩(A)1モルに対して、一般に0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの範囲となる量で使用される。
塩基(C)は、例えば、イミダゾリウム塩(A)が式(1)又は式(2)で示されるイミダゾリウム塩である場合、イミダゾール環の2位の炭素原子に結合した水素原子を引き抜いてカルベンを発生させ得る化合物であることが好ましい。斯かる塩基(C)は、例えば式(1)又は式(2)で示されるイミダゾリウム塩と接触させた場合、イミダゾール環の2位の水素原子を引き抜いて、式(8)又は式(9)
Figure 2017001972
[式(8)中、R〜Rはそれぞれ上記と同一の意味を表し、:は当該炭素原子がカルベンであることを表す。;式(9)中、R〜R10はそれぞれ上記と同一の意味を表し、:は当該炭素原子がカルベンであることを表す。]
で示される基を発生させることができる。
上記塩基(C)としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアルカリ金属ビス(トリアルキルシリル)アミド等のアルカリ金属含有化合物が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属含有化合物であり、より好ましくはアルカリ金属アルコキシドである。
塩基(C)は単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。塩基(C)は、市販品であってもよいし、公知の方法により合成したものであってもよい。
塩基(C)の使用量は、イミダゾリウム塩(A)1モルに対して、例えば、0.8〜10モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは1〜4モルの範囲等が挙げられる。
工程(1)は、有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。
斯かる有機溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒;等が挙げられ、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒が好ましい。
有機溶媒の使用量として、例えば、イミダゾリウム塩(A)1質量部に対して、1質量部以上、100質量部以下の範囲等を挙げることができる。
工程(1)において、その手順は限定されず、例えば、イミダゾリウム塩(A)と塩基(C)とを混合し、そこに銅化合物(B)を加える工程等を挙げることができる。
工程(1)の反応温度としては、例えば、−40〜150℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは0〜60℃の範囲等が挙げられる。工程(1)の進行は、例えば高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
工程(1)により得られた反応混合物中には銅錯体が含まれている。該反応混合物は、そのまま後述の工程(2)に供するか、又は該反応混合物から銅錯体を単離し、さらに、必要に応じて銅錯体を精製した後、後述の工程(2)に供することができる。
単離する際の具体的な処理方法としては、例えば、洗浄、分液、濾過、晶析、濃縮等が挙げられる。精製する際の具体的な処理方法としては、再結晶、カラムクロマトグラフィ等が挙げられる。
上記銅錯体を含有する組成物としては、イミダゾリウム塩(A)と銅化合物(B)と塩基(C)との反応により得られた反応混合物や、該反応混合物から単離された銅錯体を含む粉末又は溶液が挙げられる。該組成物は、銅錯体を含有するので、後述の工程(2)に好適に用いることができる。
工程(1)で得られる銅錯体としては、式(10)〜式(13)
Figure 2017001972
[式(10)又は式(11)中、R〜Rそれぞれ上記と同一の意味を表し、Wは前記した1価のアニオンを表す。;式(12)又は式(13)中、R〜R10それぞれ上記と同一の意味を表し、Wは前記した1価のアニオンを表す。]
で示される銅錯体等が挙げられる。
式(10)〜式(13)において、Wは前述の1価のアニオンを挙げることができる。
銅錯体の具体例としては、クロロ[1,3−ジシクロプロピル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジシクロプロピル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジシクロプロピル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジシクロプロピル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジシクロプロピル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート、クロロ[1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジ−(2’,2’−ジメチルシクロプロピル)−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート、クロロ[1,3−ジシクロペンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジシクロペンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジシクロペンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジシクロペンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジシクロペンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート、クロロ[1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート、クロロ[1,3−ジシクロオクチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジシクロオクチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジシクロオクチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジシクロオクチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジシクロオクチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート、クロロ[1,3−ジシクロデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジシクロデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジシクロデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジシクロデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジシクロデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート、クロロ[1,3−ジメンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジメンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジメンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジメンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジメンチル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート、クロロ[1,3−ジシクロドデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ブロモ[1,3−ジシクロドデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ヨード[1,3−ジシクロドデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、[1,3−ジシクロドデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅(2−プロポキシド)、ビス[1,3−ジシクロドデシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレート等を挙げることができ、特に合成容易性の観点から、クロロ[1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅、ビス[1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾール−2−リジデン]銅テトラフルオロボレートが好ましい。
次に、工程(2)について説明する。
工程(2)は、銅錯体の存在下、カルボン酸誘導体を水素で還元する工程である。銅錯体としては、上記工程(1)において例示した銅錯体を用いることができる。適宜入手した銅錯体を用いることができ、具体的には、上記工程(1)により得られた銅錯体をそのまま又は単離して用いることができる。
工程(2)に用いられるカルボン酸エステル化合物は、カルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)を1つ以上有する有機化合物である。上記複数のカルボニルオキシ基を有する化合物として、シュウ酸ジエステル、マロン酸ジエステル、フタル酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、グルタル酸ジエステル、アジピン酸ジエステルが挙げられる。
上記カルボン酸エステル化合物としては、カルボニルオキシ基のカルボニルに脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基が結合したカルボン酸エステル化合物(以下、この化合物を「脂肪族炭化水素含有カルボン酸エステル」と称する。)、カルボニルオキシ基のカルボニルに芳香族炭化水素基が結合したカルボン酸エステル化合物(以下、この化合物を「芳香族炭化水素含有カルボン酸エステル」と称する。)、環状カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。
脂肪族炭化水素含有カルボン酸エステル及び芳香族炭化水素含有カルボン酸エステルとしては、例えば、式(4)
11−COOR12 ・・・(4)
(式中、R11及びR12はそれぞれ互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
で示されるカルボン酸エステル化合物等を挙げることができる。
斯かるアルキル基としては、上記イミダゾリウム塩(A)で説明したアルキル基が挙げられる。
斯かるアルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−デセニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。アルケニル基における置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;アミノ基;水酸基;等が挙げられる。置換基を有するアルケニル基の具体例としては、3−フルオロ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−フェノキシ−1−ブテニル基等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素含有カルボン酸エステルの具体例としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、ブタン酸イソプロピル、ペンタン酸オクチル、ヘキサン酸ベンジル、ヘプタン酸ペンチル、オクタン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸ベンジル、ピバル酸メチル、tert−ブチル酢酸ブチル、アクリル酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸ベンジル、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチル、ピルビン酸ヘプチル、シュウ酸ジメチル、マロン酸ジエチル、グルタル酸ジプロピル、アジピン酸ジブチルが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素含有カルボン酸エステルは、市販品であってもよいし、公知の方法により製造したものであってもよい。
上記カルボン酸エステル化合物において、上記芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
斯かるアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。該アリール基における置換基としては、例えば、前記置換されていてもよいアルキル基;前記置換されていてもよいアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アミノ基;水酸基;カルボニルオキシアルキル基;等が挙げられる。置換基を有するアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−アミノフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、3−フェノキシ−1−ブテニル基、スチリル基等が挙げられる。
環状カルボン酸エステル化合物とは、例えば、式(6)
Figure 2017001972
(式中、R13は、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。)
で示されるラクトン等を挙げることができる。
斯かるラクトンは、4〜22員環であることが好ましい。即ち、上記R13における置換基を有していてもよいアルキレン基は、置換されてもよい炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましい。斯かるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプタレン基、オクタレン基、デシレン基が挙げられる。該アルキレン基における置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;エテニル基、1−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−デセニル基等のアルケニル基;アミノ基;水酸基;等が挙げられる。置換基を有するアルキレン基の具体例としては、フルオロエチレン基、メトキシメチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、2−アミノブチレン基、2−フェニルメチルブチレン基等が挙げられる。
上記環状カルボン酸エステル化合物としては、β―プロピオラクトン、γ―ブチロラクトン、δ―バレロラクトン、ε―カプロラクトン、β−メチル−ε―カプロラクトン、γ−メチル−ε―カプロラクトン、ヘプタノラクトン、オクタノラクトン、ノナノラクトン、デカノラクトン等が挙げられる。環状カルボン酸エステル化合物は、市販品であってもよいし、公知の方法により製造したものであってもよい。
工程(2)は、例えば、水素ガスを用いる還元等を挙げることができる。該水素ガスとして、市販のものを用いることができる。工程(2)において、水素は工程(2)が行われる反応装置に、例えば、0.1〜5MPaの範囲の圧力で供給される。
工程(2)において、水素は、カルボン酸エステル化合物1モルに対し、例えば、1〜100モルの範囲で使用される。
工程(2)における上記銅錯体の使用量としては、銅原子に換算した量がカルボン酸エステル化合物におけるエステル構造1モルに対して、例えば、0.0001〜0.2モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは0.001〜0.2モルの範囲等が挙げられる。
工程(2)において、活性向上の観点から銅錯体及び塩基の存在下でカルボン酸エステル化合物を還元することが好ましい。
上記還元における塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;が挙げられる。該塩基は、工程(1)で用いられる塩基(C)と同種類であってもよいし異なる種類であってもよい。好ましくは、アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属属アルコキシド等を挙げることができ、より好ましくは、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
工程(2)における塩基の使用量は、銅錯体に対して、例えば、1〜100モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは1〜10モルの範囲等、より好ましくは1〜5モルの範囲等が挙げられる。
工程(2)は、有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。斯かる有機溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;が挙げられ、エーテル溶媒、芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
有機溶媒の使用量は、カルボン酸エステル化合物1質量部に対して、例えば、1質量部以上、100質量部以下の範囲等を挙げることができる。
工程(2)としては、例えば、工程(1)で得られた銅錯体、カルボン酸エステル化合物、並びに、必要により有機溶媒及び/又は塩基を反応装置内で混合し、次いで、該装置内を水素で置換して水素圧と反応温度を調整する工程等を挙げることができる。
工程(2)における反応温度は、特に制限されないが、未反応の原料の残存をより抑え、且つ、原料、本発明の金属錯体等の分解をより抑制する観点から、0℃〜200℃が好ましく、0℃〜150℃がより好ましい。本発明の銅錯体を用いることで、比較的穏和な条件でも、水素化還元させにくい基質であっても水素化還元させることが可能である。なお、本発明では、沸点の低い溶媒を使用することもあるが、例えば加圧下に反応を行えば溶媒の沸点より高い温度で反応を進行させることも可能である。
工程(2)における水素の圧力は、特に制限されないが、未反応の原料の残存をより抑え、且つ、高圧ガス保安法に則った作業を行う必要がなく、反応装備をより安価にできる観点から、0.1MPa〜10MPaが好ましく、0.1MPa〜5MPaがより好ましく、0.1MPa〜1MPaがさらに好ましい。本発明の金属錯体を用いることで、比較的穏和な条件でも、水素化還元させにくい基質であっても水素化還元させることが可能である。
工程(2)における反応の進行は、例えば、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
工程(2)により得られるアルコール化合物は、−CHOHを有する化合物である。該−CHOHは、カルボン酸エステル化合物におけるカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)が水素により還元されることにより形成された基である。
カルボン酸エステル化合物として前記式(4)で示されるカルボン酸エステルを用いた場合、例えば、式(5)
11−CHOH ・・・(5)
(式中、R11は上記と同一の意味を表す。)
で示されるアルコール化合物等を得ることができる。
式(5)で示されるアルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、アリルアルコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンメタノール、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンメタノール等が挙げられる。
カルボン酸エステル化合物として芳香族炭化水素含有カルボン酸エステルを用いた場合、例えば、以下のアルコール化合物が得られる。
ベンジルアルコール、2−フルオロベンジルアルコール、3−フルオロベンジルアルコール、4−フルオロベンジルアルコール、2−クロロベンジルアルコール、4−クロロベンジルアルコール、4−アミノベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール、2−フェニル−1−エタノール、4−フェニル−1−ブタノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−ナフチルメタノール、1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、3,4,5,6−テトラフルオロ−1,2−ベンゼンジメタノール、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジメタノール。
カルボン酸エステル化合物として、式(6)で示される環状カルボン酸エステルを用いた場合、例えば、式(7)
HO−R13−CHOH ・・・(7)
(式中、R13は上記と同一の意味を表す。)
で示されるアルコール化合物が得られる。
式(7)で示されるアルコール化合物としては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、4−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
カルボン酸エステル化合物として複数のカルボニルオキシ基を有するカルボン酸エステル化合物を用いて工程(2)を行った場合、1つ以上のカルボニルオキシ基が水素により還元されたアルコール化合物が得られる。
カルボン酸エステル化合物が特に脂肪族又は芳香族カルボン酸エステルの場合、還元反応の進行とともに、一般式(14)
Figure 2017001972
(式中、R11及びR12は上記と同一の意味を表す。)
で示される、生成物であるアルコール化合物とのエステル交換反応が進行し、アルコール化合物の収量が低下する場合がある。
目的生成物である式(5)で示されるアルコール化合物の収量向上のためには、一般式(15)
14OH ・・・(15)
(式中、R14は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
で示されるアルコール化合物を還元反応前または終了後に添加することで、一般式(16)
Figure 2017001972
(式中、R11及びR14は上記と同一の意味を表す。)
で示される反応が進行し、目的生成物のアルコール化合物の収量を向上させることができる。
式(15)中、R14で使用される置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基としては、上記R11又はR12で説明した置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
特に、回収の容易性の観点から、R12と同一のものが好ましい
式(15)で示されるアルコール化合物の使用量は、カルボン酸エステル化合物に対して、例えば、1〜10,000モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは5〜5,000モルの範囲等、より好ましくは10〜1,000モルの範囲等が挙げられる。
式(16)の反応を行う温度は、特に制限されないが、0℃〜200℃が好ましく、0℃〜150℃がより好ましい。なお、本発明では、沸点の低い溶媒を使用することもあるが、例えば加圧下に反応を行えば溶媒の沸点より高い温度で反応を進行させることも可能である。
次に、工程(3)について説明する。
工程(2)において還元反応終了後、得られる反応混合物中には生成物であるアルコール化合物のほか、未反応の原料や副反応生成物、及び銅触媒が含まれている。工業的に有用な純度を有するアルコール化合物を得るためには、工程(3)として精製を行うことが望ましい。
精製方法としては、該反応混合物に、例えば、洗浄、分液、晶析、濃縮、蒸留等の単離処理を施すことにより目的のアルコール化合物を単離することができる。
反応混合物中に銅錯体等の不溶物が析出している場合は、必要に応じて、ろ過等により該不溶物を除去した後で上記の単離処理を施せばよい。
上記の分液処理には、必要に応じて、水と混和しない有機溶媒を用いてもよい。また、単離されたアルコール化合物を、例えば、蒸留、カラムクロマトグラフィ等の精製手段により精製してもよい。
ここで、水と混和しない有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒等が挙げられる。
本発明の製造方法によれば、医農薬原体、電子材料等の各種化学製品及びそれらの合成中間体等として有用なアルコール化合物を提供することができる。
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
なお、水素化反応を実施した各例において、得られた反応混合液を用いて以下の条件におけるガスクロマトグラフィー(GC)測定を行うことによって、転化率及び選択率を求めた。
転化率及び選択率の分析条件は以下の分析条件:
<分析方法>
装置:「島津GC−17A」(株式会社島津ジーエルシー製)
注入口温度:280℃
検出温度:280℃
カラム:「DB−1MS(60m)」(J&W Scientific社製)
カラム温度:40℃(5分)−15℃/分−320℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
を使用した。
H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルの測定は、JEOL製「JEOL GX−500」を使用した。
1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)銅テトラフルオロボレートは東京化成工業株式会社から購入した試薬をそのまま使用した。水素化(トリフェニルホスフィン)銅ヘキサマー及び(S)−SEGPHOSはアルドリッチ社から購入した試薬をそのまま使用した。塩化銅(I)はアルドリッチ社から購入した純度99.995% trace metals basisグレードの試薬をそのまま使用した。ナトリウム−tert−ブトキシドはアルドリッチ社から購入した純度99.9%グレードの試薬をそのまま使用した。
また、下記の実施例及び比較例において使用した銅錯体1〜3の構造を以下に示す。
Figure 2017001972
[式中、Phはフェニル基である。]
《実施例1−1:錯体1》
非特許文献「Dalton Trans.,2010,39,7595−7606」に記載の化合物6aを錯体1として合成した。
《実施例1−2:錯体2》
非特許文献「Chem. Eur. J.,2008,14, 158−168」に記載の化合物5bを錯体2として合成した。
《比較例1−1:錯体3》
特許文献4の実施例2の記載に従って錯体3を合成した。
《実施例2−1》
次の反応式:
Figure 2017001972
[式中、Meはメチル基である。]
によりピバル酸メチルの還元反応を行った。
窒素雰囲気下、内容積100mlの電磁誘導撹拌機付きオートクレーブに、ピバル酸メチル(1.31g、11.3mmol)、実施例1−1で製造した錯体1(0.113mmol)、オルトキシレン(60mL)、デカン(0.1mL;内部標準物質)及びナトリウム−tert−ブトキシド(0.665mmol)を加え、水素圧0.65MPa、100℃で3時間水素化還元を行った。
反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ピバル酸メチルの転化率は32%(残存率68%)であり、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は10%であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は11%であった。
この反応液が入っているオートクレーブに対し、MeOH(4.5mL、111mmol)を圧入し、100℃で30分攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は20%に向上し、ピバル酸メチルの転化率は22%(残存率78%)であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は1%となった。
《実施例2−2》
実施例2−1において、錯体1の代わりに実施例1−2の錯体2(0.113mmol)を用いた以外は、実施例2−1と同様にしてピバル酸メチルの還元反応を実施した。
反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、ピバル酸メチルの転化率は28%(残存率72%)であり、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は8%であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は10%であった。
MeOH導入後の反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は17%に向上し、ピバル酸メチルの転化率は19%(残存率81%)であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は1%となった。
《実施例2−3》
実施例2−1において、錯体1の代わりに、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムクロリド(0.226mmol)及び塩化銅(I)(0.113mmol)を用いた以外は、実施例2−1と同様にしてピバル酸メチルの還元を実施した。
反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、ピバル酸メチルの転化率は33%(残存率67%)であり、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は11%であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は11%であった。
MeOH導入後の反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は21%に向上し、ピバル酸メチルの転化率は23%(残存率77%)であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は1%となった。
《実施例2−4》
実施例2−1において、錯体1の代わりに、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(0.226mmol)及びテトラキス(アセトニトリル)銅テトラフルオロボレート(0.113mmol)を用いた以外は、実施例2−1と同様にしてピバル酸メチルの還元反応を実施した。
反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、ピバル酸メチルの転化率は29%(残存率71%)であり、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は9%であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は10%であった。
MeOH導入後の反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、2,2−ジメチル−1−プロパノールの生成率は18%に向上し、ピバル酸メチルの転化率は20%(残存率80%)であり、副生物であるピバル酸−2,2−ジメチル−1−プロピルの生成率は1%となった。
《比較例2−1》
実施例2−1において、錯体1の代わりに比較例1−1の錯体3(0.113mmol)を用いた以外は、実施例2−1と同様にしてピバル酸メチルの還元反応を実施した。
反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、反応は全く進行していなかった。
《比較例2−2》
実施例2−1において、錯体1の代わりに水素化(トリフェニルホスフィン)銅ヘキサマー(銅として0.0113mmol)を用いた以外は、実施例2−1と同様にしてピバル酸メチルの還元反応を実施した。
反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、反応は全く進行していなかった。
《比較例2−3》
実施例2−1において、錯体1の代わりに(S)−SEGPHOS(0.226mmol)及び塩化銅(I)(0.113mmol)を用いた以外は、実施例2−1と同様にしてピバル酸メチルの還元反応を実施した。
反応液をガスクロマトグラフィ―で分析した結果、反応は全く進行していなかった。
《実施例3》
実施例2−1で得た反応溶液を、マクマホンを充填した高さ35cmの充填塔を備えた200mL3つ口フラスコに移し替え、常圧で蒸留した。沸点90℃以下の留分を除いたのち、沸点99〜103℃の留分1及び沸点112〜116℃の留分2を取得した。留分1として純度99.5%のピバル酸メチル0.85g(0.073mmol;原料として添加したピバル酸メチルを基準として回収率65%)、及び留分2として純度99.4%の2,2−ジメチル−1−プロパノール0.14g(0.016mmol;原料として添加したピバル酸メチルを基準として回収率14%)を得た。
本発明では、高価なルテニウム錯体触媒を用いることなく、安価な銅錯体触媒を用いることで、工業的に有利な比較的低い水素圧及び反応温度でも、カルボン酸エステルの還元反応を触媒することができ、対応するアルコール化合物を製造することができる。従って、食品工業、医薬品工業、化粧品工業、香料工業等の各種の産業分野、特に化学産業分野において有用であり、産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. イミダゾリウム塩(A)、銅化合物(B)及び、塩基(C)を反応させて得られる銅錯体の存在下、カルボン酸エステル化合物を水素で還元する工程(2)を含む、アルコール化合物の製造方法。
  2. 前記イミダゾリウム塩(A)は、式(1)又は式(2)
    Figure 2017001972
    [式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとRとが結合して、RとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Xは1価のアニオンを表す;R〜R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとR及び/又はRとRとが結合して、RとR及び/又はRとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Xは1価のアニオンを表す;。]
    で示されるイミダゾリウム塩である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記一般式(1)中のR及びR又は式(2)中のR及びR10がシクロアルキル基である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記銅化合物(B)が下記一般式(3)
    Cu(Z)Y ・・・(3)
    [式中、Yは1価のアニオンを表し、Zは単座配位子を表し、nは0から6の自然数を表す。]
    で示される銅化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. カルボン酸エステル化合物が、式(4)
    11−COOR12 ・・・(4)
    (式中、R11及びR12はそれぞれ互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
    で示されるカルボン酸エステル化合物であり、得られるアルコール化合物が、式(5)
    11−CHOH ・・・(5)
    [式中、R11は上記と同一の意味を表す。]
    で示されるアルコール化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法
  6. カルボン酸エステル化合物が、式(6)
    Figure 2017001972
    [式中、R13は、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。]
    で示されるラクトンであり、得られるアルコール化合物が、式(7)
    HO−R13−CHOH ・・・(7)
    [式中、R13は上記と同一の意味を表す。]
    で示されるアルコール化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法
  7. イミダゾリウム塩(A)と銅化合物(B)とを塩基(C)存在下で反応させて銅錯体を得る工程(1)をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 工程(2)で得られた反応混合物からアルコール化合物を分離する工程(3)をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 式(10)〜(13)
    Figure 2017001972
    [式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとRとが結合して、RとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Wは1価のアニオンを表す;R〜R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくは置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又はRとR及び/又はRとRとが結合して、RとR及び/又はRとRとがそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を表す。Wは1価のアニオンを表す。]
    で示される銅錯体の存在下、カルボン酸エステル化合物を水素で還元する工程を含む、アルコール化合物の製造方法。
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