以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
以下に示す実施の形態において、バイオセンサ基板10は、本発明の「試料保持担体」に相当する。ベース基板11は、本発明の「基板」に相当する。ウエル13は、本発明の「試料収容部」に相当する。ゾーン番号は、本発明の「ゾーン特定情報」に相当する。半導体レーザ101〜光検出器109は、本発明の「投射部」に相当する。ダイクロイックプリズム106、対物レンズ107、集光レンズ110および蛍光検出器111は、本発明の「検出部」に相当する。回転装置123は、本発明の「回転駆動部」に相当する。サーボ回路202およびコントローラ205は、本発明の「回転制御部」に相当する。半導体レーザ101は、本発明の「光源」に相当する。対物レンズアクチュエータ122は、本発明の「レンズ駆動部」に相当する。信号演算回路211と、加算器301〜304と、位相差検出回路311と、減算器321は、本発明の「信号演算部」に相当する。サーボ回路212は、本発明の「トラッキング制御部」に相当する。コントローラ215は、本発明の「トラッキング制御部」、「トラック外れ検出部」に相当する。制御回路312とサンプルホールド回路313は、本発明の「切替制御部」、「信号保持部」に相当する。制御回路331とサンプルホールド回路332は、本発明の「切替制御部」、「信号保持部」に相当する。本発明と本実施の形態との対応の記載はあくまで一例であって、本発明を本実施の形態に限定するものではない。
<バイオセンサ基板>
図1(a)は、本実施の形態に係るバイオセンサ基板10の外観構成を模式的に示す斜視図である。バイオセンサ基板10は、たとえば、マラリア原虫に感染した赤血球を検出するために用いられる。
バイオセンサ基板10は、光ディスク(CDやDVD等)と同様に円盤形状を有しており、中心に円形状の孔10aが形成されている。また、バイオセンサ基板10は、ベース基板11の上面にウエル層12が積層された構造となっている。ウエル層12には、図1(a)の右端の拡大図に示すように、円柱形状の窪みからなる微小なウエル13が複数形成されている。ウエル13は、バイオセンサ基板10の内周から外周に向かって略同心円状に並んでいる。また、ウエル13は、バイオセンサ基板10の径方向に直線状に並ぶように配置されている。ウエル13は、ウエル層12の上面よりも一段低い底面部13aを有しており、試料が滴下されたときにその試料を収容することができるよう直径と高さが設定されている。
図1(b)は、バイオセンサ基板10を面に垂直な平面で切断したときの断面図であり、図1(c)は、図1(b)の破線部分の拡大図である。
ベース基板11の上側(ウエル層12側)には、光ディスクと同様の螺旋状のトラックTが形成されている。ベース基板11とウエル層12との間には、反射膜14が配されている。ベース基板11の上面に反射膜14が積層されることにより、ベース基板11の上面に、反射膜14とベース基板11との界面である反射面11aが形成される。ウエル13は、ウエル層12の上面側に所定の間隔を開けて形成されている。ウエル13の底面部13aは、反射膜14よりも僅かに上側に位置付けられており、ウエル13の底面部13aと反射膜14の上面とは離間している。
ここで、ウエル13の直径と高さを、それぞれd1、d2とし、底面部13aと反射面11aとの間隔をd3とし、ウエル13の間隔をd4とし、ベース基板11の厚みをd5とし、反射面11aのトラックピッチをd6とする。本実施の形態では、直径d1と、高さd2は、それぞれ、100μmと50μmに設定されており、間隔d3、d4は、それぞれ、2μmと300μmに設定されており、厚みd5は0.6mmに設定されており、トラックピッチd6は、1μmに設定されている。また、反射膜14の励起光(後述)に対する反射率は、3〜4%に設定されている。
なお、トラックピッチd6は、蛍光検出対象の被検体の寸法に応じて調整すれば良い。本実施の形態では、被検体である赤血球の直径が10μm程度であるため、ウエル13に試料が収容されたときに必ず被検体をトラックが横切るよう、トラックピッチd6が1μmに設定されている。すなわち、トラックピッチは、蛍光検出対象の被検体の幅よりも小さく設定される必要がある。ただし、トラックピッチが小さくなるほど、バイオセンサ基板10の全領域を走査するために必要な時間が長くなる。したがって、トラックピッチd6を被検体の寸法よりも小さくする場合には、被検体の寸法にバラつきがあったとしても各被検体を少なくとも1回トラックが横切ることとなる程度に、トラックピッチd6を設定すると良い。
また、本実施の形態では、ベース基板11はポリカーボネートから構成されており、ウエル層12は紫外線硬化樹脂から構成されており、反射膜14はアルミニウム、銀合金等の金属、あるいは、酸化ニオブ、波長選択膜等から構成されている。なお、ベース基板11は、ポリカーボネートの他、ポリメチルメタクリレート、非晶質ポリオレフィン等から構成されても良い。ウエル層12は、シリコーン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、非晶質ポリオレフィン等から構成されても良い。反射膜14の膜厚は、所望の反射率になるよう、たとえば5nm〜20nmに設定される。
図1(d)は、ウエル13に対する励起光の照射状態を示す図である。本実施の形態では、バイオセンサ基板10を回転させながらベース基板11側から励起光が入射され、反射膜14に収束される。入射された励起光は、一部が反射膜14によって反射され、大部分が反射膜14を透過する。反射膜14によって反射された励起光は、後述のように、励起光の焦点をトラックに追従させるための制御に用いられる。また、反射膜14を透過した励起光は、ウエル13へと到達し、ウエル13に収容された試料に照射される。これにより、試料から蛍光が発せられる。この蛍光は、後述のように、試料に含まれるマラリア原虫に感染した赤血球の検出に用いられる。
図2(a)は、実施の形態に係るバイオセンサ基板10のエリア割りを示す図、図2(b)は、実施の形態に係る各ゾーンとトラックの関係を示す図である。
図2(a)に示すように、バイオセンサ基板10上の領域は、内周から外周に向かって径方向に、m個のゾーンに区切られている。各ゾーンは、略同心円状に設定されている。また、各ゾーンの径方向の幅は、互いに同じである。すなわち、各ゾーンの径方向の幅は、n個のトラックピッチに相当する幅(n×トラックピッチ)となっている。
図2(b)は、図2(a)の破線の領域を拡大した図である。便宜上、ゾーン1、3のトラックは実線で示され、ゾーン2のトラックは破線で示されている。
ここで、図2(a)のように、バイオセンサ基板10の一つの径を基準径D0に設定する。この場合、図2(b)のように、基準径D0の位置から1周するトラックを1トラック片として、各ゾーンのトラック片をカウントすると、各ゾーンには、n本のトラック片が含まれる。ゾーン2の最内周のトラック片(トラック1)の始端は、基準径D0の位置において、一つ内側のゾーン1のトラック片(トラックn)の終端に繋がっている。他のゾーンも同様に、最内周のトラック片(トラック1)の始端が、基準径D0の位置において、一つ内側のゾーン1のトラック片(トラックn)の終端に繋がっている。上記のように、各ゾーンに含まれるトラック片の数は、何れも、n個である。各ゾーンの径方向の幅は、たとえば、300μmに設定される。
図3は、実施の形態に係るゾーン、トラック、ウエル領域および基準領域の関係を説明する図である。なお、図3には、隣接するゾーン間の境界が分かり易いように、この境界部分にハッチングが付されている。しかし、この境界部分には、バイオセンサ基板10の他の部分と相違する特別な構造が設けられておらず、この境界部分もこの境界部分に径方向に隣接する部分と同様の構造を有している。
図3に示すように、バイオセンサ基板10には、基準径D0から所定の角度範囲の領域に、基準領域が設定されている。この基準領域に含まれるトラックは、ピット列により構成され、このピット列により、後述の情報が保持される。また、基準領域以外の領域に含まれるトラックは、バイオセンサ基板10の周方向に単調に進む溝(以下、「ストレート溝」と称する)となっている。基準領域のピット列に保持された情報は、CDやDVDと同様、トラックが励起光(後述)により走査されたときの反射光の強度変化を検出することにより、再生される。
また、上記のように、ウエル13は、バイオセンサ基板10の径方向に等間隔に並ぶように、放射状に配置されている。したがって、各ゾーンには、周方向に一定の角度間隔でウエル13が並んでいる。本実施の形態では、各ゾーンを周方向に一定の角度間隔で区画した領域を、ウエル領域と呼ぶ。ウエル領域は、各ゾーンから基準領域を除いた領域を、各ゾーンに含まれるウエル13の数で周方向に均等に区画することにより設定される。図3に示すように、一つのウエル領域には、その略中央に、一つのウエル13が配置される。
なお、図3では、ウエル領域が方形形状で示されているが、厳密には、ディスク内周側がディスク外周側の辺よりも短い擬似台形形状となる。すなわち、ウエル領域は、リング状の各ゾーンを周方向に一定の角度間隔で分割して形成されるため、リングを所定角度毎に切断した形状となる。したがって、一つのウエル領域に含まれるn本のトラック部分は、ディスク外周に向かうほど、長くなる。
また、ウエル領域は、上記のようにゾーンを周方向に均等に区分して設定されるため、同じゾーンに含まれるウエル領域の形状は、互いに同じである。しかし、ゾーンが異なると、ウエル領域の周方向の幅は異なる。ウエル領域の最も外側のトラック部分の周方向の幅は、たとえば、ゾーンの最も外側のトラック1周分から基準領域の幅を減じた長さをLとしたとき、L/j(jは各ゾーンに含まれるウエル13の数)の商とされる。このように、ゾーンをj個に分割することによりウエル領域の周方向の幅が決まるため、ゾーンが異なるとウエル領域の周方向の幅も異なる。本実施の形態では、ゾーンの分割数jが、全てのゾーンで同じであるため、外周側のゾーン程、周方向のゾーンの幅が大きくなる。本実施の形態では、ウエル領域の周方向の幅が、300μm以上となっている。
ウエル領域の径方向の幅、すなわち、ゾーンの径方向の幅は、上記のように、ゾーンに含まれるトラック片の数nによって決まる。本実施の形態では、トラックピッチが1μmであるため、ウエル領域の径方向の幅が300μmである場合、一つのウエル領域に含まれるトラック部分の数は300本となる。
図4は、実施の形態に係る基準領域の各トラックに設定されるデータフォーマットを示す図である。
図4に示すように、基準領域に含まれる各トラック部分のデータフォーマットは、先頭に固有パターンの基準同期信号が配され、これにゾーン番号と、トラック番号が続く構成となっている。
基準同期信号は、ピットの長さと、このピットから次のピットまでのスペースの長さが特異な組合せとなっており、この組合せを検出することにより、励起光が基準同期信号を走査したことが検出される。ゾーン番号は、このトラックが含まれるゾーンの番号を示す。ゾーン番号は、図2に示すように、バイオセンサ基板10の最内周位置のゾーン1のゾーン番号を1として、ゾーンが外側に一つ変わる毎にゾーン番号が1ずつ増加する。トラック番号は、ゾーン内のトラックの位置を示す。すなわち、ゾーンの最内周位置のトラックのトラック番号を1として、トラックが外側に一つ変わる毎にトラック番号が1ずつ増加する。
図4に示すデータフォーマットは、全てのゾーンに含まれる基準領域に設定されている。本実施の形態において、バイオセンサ基板10上のウエル13が配置される領域は、物理的構造によって各ゾーンに区画されているのではなく、基準領域のトラックに保持されたゾーン番号によって、各ゾーンに区画されている。すなわち、ゾーン毎に基準領域に保持されるゾーン番号を変えることにより、バイオセンサ基板10のウエル13の配置領域に各ゾーンが設定される。
このように、ゾーン番号によってウエル13の配置領域がゾーンに区画される。
なお、図2(a)に示すように、バイオセンサ基板10には、最内周に配されたゾーン1のさらに内側に、管理ゾーンが設定され、この管理ゾーンに、ピット列が螺旋状に並ぶトラックが形成されている。管理ゾーンのトラックの終端は、最内周のゾーン1のトラックの始端へと繋がっている。管理ゾーンのトラックには、かかるピット列によって、当該バイオセンサ基板10に含まれるゾーンの総数やウエル13の総数、各ゾーンに含まれるウエル13の数など、当該バイオセンサ基板10を管理するための情報が保持されている。
図4に戻って、本実施の形態では、上記のようにウエル領域の中央に、ウエル13が一つ配置される。本実施の形態では、ウエル13の径が100μmであるため、ウエル領域はウエル13よりも十分広い。よって、ウエル形成時に、ウエル領域に対するウエル13の配置位置がややずれても、ウエル13は、ウエル領域内に収容されるようになる。
図5(a)〜(d)は、バイオセンサ基板10の作成方法を示す図である。なお、かかる作成方法は、以下に示すように、光ディスクの作成方法と略同様となっている。
まず、図5(a)に示すように、ベース基板11が射出成型により形成される。これにより、ベース基板11の厚みはd5となり、ベース基板11の上面に、トラックが形成される。続いて、図2(b)に示すように、ベース基板11の上面に、反射膜14が蒸着され、これにより、ベース基板11の上面に反射面11aが形成される。続いて、図2(c)に示すように、反射膜14の上面に、スピンコートにより底面層12aが積層される。続いて、図2(d)に示すように、底面層12aの上面に、2P成型により厚さd2の上面層12bが形成される。これにより、図1(b)に示すようなウエル13が複数形成される。ウエル層12は、底面層12aと上面層12bが合わせられて形成されることになる。
なお、底面層12aの上面に上面層12bを2P成型により形成する場合、上記のように、ウエル13がウエル領域の中心部分に配置されるよう、2P成型のためのスタンパ(ウエルスタンパ)をベース基板11に対して適正に配置する必要がある。
図6(a)、(b)は、ベース基板11に対するウエルスタンパWSの位置調整方法を説明する図である。
この位置調整方法では、ベース基板11に、位置調整時にマーカーとなる2つの微小な回折エリアM1が、ベース基板11の中心に対して互いに対称な位置に形成されている。これらの回折エリアM1は、射出成型時にベース基板11上面のトラックが形成されていない外周領域に回折パターンを形成することにより設けられる。また、ウエルスタンパWSには、回折エリアM1にそれぞれ対応する位置に、マーカーとなる2つの微小な回折エリアM2が形成されている。そして、ベース基板11が適正な位置に位置付けられたときに2つの回折エリアM1にレーザ光が入射する位置に2つのレーザ光源が配置され、これらレーザ光源からレーザ光を上向きに出射させる。また、回折エリアM1、M2によって回折されたレーザ光(回折光)を受光する位置に光センサLSが配置される。
2P成形時には、まず、図6(a)に示すように、2つの回折エリアM1によって生じた回折光がそれぞれ光センサLSによって受光されるよう、ベース基板11の周方向の位置が調整される。このとき、レーザ光の一部(0次回折光:非回折光)は、回折エリアM1によって回折されずにそのまま回折エリアM1を透過する。次に、ウエルスタンパWSをベース基板11の上面に接近させ、同時に、回折エリアM1を透過した非回折光が、それぞれ、回折エリアM2に入射するよう、ウエルスタンパWSの周方向の位置が調整される。すなわち、非回折光が入射することにより2つの回折エリアM2によって生じた回折光がそれぞれ光センサLSによって受光されるよう、ウエルスタンパWSの周方向の位置が調整される。こうして、ベース基板11とウエルスタンパWSが位置調整された状態で、ウエルスタンパWSがベース基板11の上面に押し付けられる。この状態で、紫外線が照射され、紫外線硬化樹脂が硬化することにより、上面層12bが形成される。
なお、ベース基板11とウエルスタンパWSとの間の位置決めは、上記以外の方法によって行われても良い。たとえば、ウエルスタンパWSとベース基板11に、それぞれ、凸部と凹部を設けておき、両者を嵌合させることによって、ベース基板11とウエルスタンパWSとの間の位置決めが行われても良い。
<蛍光検出装置>
図7は、本実施の形態に係る蛍光検出装置1の構成を示す図である。蛍光検出装置1は、たとえば、上記バイオセンサ基板10のウエル13に収容された赤血球がマラリア原虫に感染しているかを判定するために用いられる。
なお、蛍光検出装置1を使用する際、予め、被検体に蛍光標識を施すことにより作成した試料を、バイオセンサ基板10のウエル13に収容させておく。本実施の形態では、被検体である直径約10μm、厚さ約2μmの赤血球に蛍光標識が施され、かかる赤血球が直径100μmのウエル13の底面部13aに並列的に複数配される。このように試料が収容されたバイオセンサ基板10の孔10a(図1(a)参照)が、蛍光検出装置1の回転装置123(ターンテーブル)にセットされ、測定が開始される。
蛍光検出装置1の光学系は、半導体レーザ101と、アパーチャ102と、偏光ビームスプリッタ(PBS)103と、コリメータレンズ104と、1/4波長板105と、ダイクロイックプリズム106と、対物レンズ107と、アナモレンズ108と、光検出器109と、集光レンズ110と、蛍光検出器111を備えている。また、蛍光検出装置1は、上記光学系の他、ホルダ121と、対物レンズアクチュエータ122と、回転装置123と、信号演算回路201と、サーボ回路202と、再生回路203と、信号増幅回路204と、コントローラ205を備えている。
なお、蛍光検出装置1の光学系と、ホルダ121と、対物レンズアクチュエータ122は、CDやDVDの記録/再生に用いる既存の光ピックアップ装置と同様、ハウジングに設置される。また、このハウジングは、所定のガイド機構によって、バイオセンサ基板10の径方向に移動可能となっている。
半導体レーザ101は、波長405nm程度のレーザ光(以下、「励起光」という)を出射する。なお、本実施の形態における励起光は、特許請求の範囲に記載の光の一例である。図7には、半導体レーザ101から出射される励起光のうち、バイオセンサ基板10に導かれる励起光、すなわち、アパーチャ102を通過する励起光が、破線で示されている。アパーチャ102には、所定の口径を有する円形の開口が形成されており、このアパーチャ102により励起光の口径が制限される。また、半導体レーザ101の位置は、半導体レーザ101から出射される励起光がPBS103に対してS偏光となるよう調整されている。これにより、半導体レーザ101から出射された励起光は、アパーチャ102により口径を制限された後、PBS103によって反射され、コリメータレンズ104に入射する。
コリメータレンズ104は、PBS103側から入射する励起光を平行光に変換する。これにより、コリメータレンズ104を通過した励起光は、所定径の平行光となる。1/4波長板105は、コリメータレンズ104側から入射する励起光を円偏光に変換するとともに、ダイクロイックプリズム106側から入射する励起光を、コリメータレンズ104側から入射する際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、コリメータレンズ104側からPBS103に入射する励起光は、PBS103を透過する。
ダイクロイックプリズム106は、波長405nm程度の光を反射し、波長450〜540nm程度の光を透過するよう構成されている。これにより、1/4波長板105側から入射する励起光は、ダイクロイックプリズム106によって反射され、対物レンズ107に入射する。
対物レンズ107は、励起光をバイオセンサ基板10に対して適正に収束させるよう構成されている。具体的には、対物レンズ107は、ダイクロイックプリズム106側から入射する励起光が所定のNA(開口数、ここでは、0.34)で収束するよう構成されている。対物レンズ107に対する励起光の入射口径は、アパーチャ102の口径によって決められる。対物レンズ107により収束される励起光の焦点深度は、励起光のNAによって決まる。
対物レンズ107は、ホルダ121に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ122により、フォーカス方向(バイオセンサ基板10に垂直な方向)とトラッキング方向(バイオセンサ基板10の径方向)に駆動される。すなわち、対物レンズ107は、励起光が、バイオセンサ基板10の反射面11aに合焦された状態で、ピット列からなるトラックを追従するよう、駆動される。反射面11aに合焦された励起光は、一部が反射面11aによって反射され、大部分が反射面11aを透過する。
反射面11aによって反射された励起光(以下、「反射励起光」という)は、ダイクロイックプリズム106によって反射され、1/4波長板105により直線偏光に変換され、コリメータレンズ104により収束光となる。そして、コリメータレンズ104側からPBS103に入射する反射励起光は、上述したようにPBS103を透過する。
アナモレンズ108は、PBS103側から入射する反射励起光に非点収差を導入する。アナモレンズ108を透過した反射励起光は、光検出器109に入射する。光検出器109は、受光面上に反射励起光を受光するための4分割センサを有している。光検出器109の検出信号は、信号演算回路201に入力される。
バイオセンサ基板10に照射された励起光のうち、反射面11aを透過した励起光は、ウエル13の底面部13aに到達する。本実施の形態では、励起光の焦点深度が、図1(b)の間隔d3よりも長くなっている。このため、反射面11aに合焦された励起光が反射面11aを透過すると、この励起光は、略合焦状態から広がることなくウエル13aの底面部13aに到達し、試料に照射される。
底面部13aに並列的に配されている、蛍光標識が施された、マラリア原虫に感染している赤血球に励起光が照射されると、マラリア原虫から蛍光が発生する。かかる蛍光は、図7において一点鎖線で示されるように、NA(開口数)が励起光のNAよりも大きい。このため、対物レンズ107とダイクロイックプリズム106との間において、蛍光のビーム径は励起光のビーム径よりも大きくなっている。蛍光のNAは、たとえば、0.65である。また、蛍光の波長は励起光の波長と異なっており、本実施の形態では450〜540nmとなっている。
対物レンズ107側からダイクロイックプリズム106に入射する蛍光は、波長が450〜540nmであるため、ダイクロイックプリズム106を透過する。集光レンズ110は、ダイクロイックプリズム106側から入射する蛍光を集光して、蛍光検出器111に導く。蛍光検出器111は、受光面上に蛍光を受光するためのセンサを有している。蛍光検出器111の検出信号は、信号増幅回路204に入力される。
信号演算回路201は、光検出器109の検出信号から、フォーカスエラー信号FEとトラッキングエラー信号TEを生成し、また、光検出器109の検出信号から、再生RF信号を生成する。フォーカスエラー信号は、光ディスク技術で用いられる既存の非点収差法を用いて生成される。また、トラッキングエラー信号は、光ディスク技術で用いられる既存の1ビームプッシュプル法を用いて生成される。
サーボ回路202は、信号演算回路201から出力されたフォーカスエラー信号FEとトラッキングエラー信号TEを用いて、励起光の焦点がバイオセンサ基板10のトラックを追従するよう、対物レンズアクチュエータ122の駆動を制御する。また、サーボ回路202は、ゾーン毎に角速度一定でバイオセンサ基板10が回転されるよう、回転装置123を制御する。回転装置123は、バイオセンサ基板10が1回転する毎に、回転検出信号をサーボ回路202に出力する。サーボ回路202は、この回転検出信号を用いて、ゾーン毎に角速度一定となるように、バイオセンサ基板10を回転させる。
後述のように、本実施の形態では、励起光が同一ゾーンに含まれる期間は、当該ゾーンに設定された角速度で、バイオセンサ基板10が回転駆動される。各ゾーンに設定された角速度は、ゾーン毎に異なっている。すなわち、各ゾーンに設定された角速度は、外周側のゾーンほど遅くなっている。本実施の形態では、各ゾーンの最内周のトラックを励起光が走査するときの線速度がゾーン間で同じとなるように、各ゾーンの角速度が設定されている。
再生回路203は、信号演算回路201から出力された再生RF信号を復調して再生データを生成する。復調される再生データは、基準領域のトラック(ピット列)に保持されているゾーン番号とトラック番号である。再生回路203は、復調したゾーン番号とトラック番号を、コントローラ205に出力する。信号増幅回路204は、蛍光検出器111の検出信号(蛍光検出信号)を増幅してコントローラ205に出力する。蛍光検出信号は、試料中に含まれたマラリア原虫に感染した赤血球を特定するために用いられる。
コントローラ205は、信号演算回路201と、サーボ回路202と、再生回路203の他、蛍光検出装置1の各部を制御する。コントローラ205は、CPUとメモリを備え、メモリに格納されたプログラムに従って各部を制御する。また、コントローラ205は、各ゾーンの角速度を規定するための角速度テーブル205aを、保持している。コントローラ205は、励起光の走査位置が、一のゾーンから他のゾーンに移行した場合に、各角速度テーブル205aを参照して、バイオセンサ基板10の角速度を更新する。
図8(a)は、本実施の形態に係る角速度の更新制御を示すフローチャートである。図8(b)は、コントローラ205が保持する角速度テーブル205aの構造を示す図である。図8(b)に示すように、角速度テーブル205aには、ゾーン番号に対応付けて角速度が記述されている。
図8(a)を参照して、コントローラ205は、蛍光検出動作が終了されるまでの間(S11)、再生回路203からゾーン番号が出力されるのを待つ(S12)。
図8(c)は、信号演算回路201から再生回路203に出力される再生RF信号(光検出器109に配された4分割センサの各センサから出力される信号を加算したSUM信号)の遷移を模式的に示す波形図である。再生回路203は、再生RF信号上に、固有のパターンを有する基準同期信号を検出すると、基準同期信号から所定期間の範囲に含まれる再生RF信号からゾーン番号を復調し、さらに、その後、所定期間の範囲に含まれる再生RF信号からトラック番号を復調する。なお、ウエル領域に含まれるトラックは、上記のようにピットのないストレート溝となっているため、励起光がウエル領域を走査する期間は、再生RF信号上に、ピットを示す信号が現れることはない。
コントローラ205は、再生回路203からゾーン番号を取得すると(S12:YES)、取得したゾーン番号が、前回取得したゾーン番号から変化したかを判定する(S13)。ここで、ゾーン番号に変化が無いと(S13:NO)、コントローラ205は、処理をS11に戻し、次のゾーン番号の到来を待つ。一方、ゾーン番号に変化があると、今回取得したゾーン番号に対応する角速度を角速度テーブル205aから取得し、バイオセンサ基板10の角速度を、取得した角速度に更新する(S14)。
その後、コントローラ205は、再び処理をS11に戻し、蛍光検出動作が終了するまで、ゾーン番号の到来を待つ(S21)。なお、S11の判定は、たとえば、管理ゾーンから取得した最後のゾーンの最外周のトラックに対する励起光の走査が終了した場合にYESとされる。新たにゾーン番号を取得すると(S12:YES)、コントローラ205は、S13以降の処理を実行する。他方、蛍光検出動作が終了すると(S11:YES)、コントローラ205は、角速度の更新処理を終了する。
<実施の形態の効果>
以上、本態様に係る蛍光検出装置1によれば、ゾーンの配置位置がバイオセンサ基板10の外周側に向かうに従って、ゾーンに対する角速度が小さくなるように、ゾーンに対する角速度が変更されるため、バイオセンサ基板10の外周部に光が照射される場合にも、ウエル13に対する光の走査速度が過度に速まることが無い。よって、バイオセンサ基板10の外周部においても、ウエル13内に収容された検体に十分な量の励起光を照射することができる。また、ゾーン内においては、角速度一定でバイオセンサ基板10が回転されるため、各ゾーンの最内周のトラックに設定された線速度により各ゾーンが線速度一定で走査される場合に比べて、一つのゾーンを走査するのに要する時間が短縮される。よって、バイオセンサ基板10の全領域を光で走査するのに要する時間を短縮することができ、バイオセンサ基板10に対する検査時間を短縮することができる。
このように、本態様に係る蛍光検出装置1によれば、バイオセンサ基板10の内周部から外周部までの全領域に亘って、検体に対し励起光を適正かつ効率的に照射することができる。
なお、本実施の形態によれば、各ゾーンが角速度一定で走査されるため、トラック1周分を励起光が走査する時間は、ゾーン内において、同じである。したがって、信号増幅回路204から出力される蛍光検出信号を、所定のサンプリング周期にてサンプリングしてサンプル値を取得する場合、励起光が図2(a)の基準径D0からトラックを1周する間に取得されるサンプル値の数は、各ゾーンにおいて同じである。また、各ゾーンに設定される角速度は、各ゾーンの最内周のトラックに設定される線速度が互いに同じとなるよう調整されているため、励起光が基準径D0から1周する間に取得されるサンプル値の数は、ゾーン間においても同じである。したがって、本実施の形態では、径方向の任意の位置において、励起光が基準径D0から1周する間に取得されるサンプル値の数が同じとなる。
したがって、このように励起光が基準径D0から1周する間に取得されるサンプル値を1行おきにメモリにマッピングすると、行の始端からウエル13の最内周側の端縁までの期間(サンプル数)と、行の始端から当該ウエル13の最外周側の端縁までの期間(サンプル数)は同じとなる。このため、メモリにマップングされたサンプル値上において、ウエル13に対応する領域を、バイオセンサ基板10上のウエル13と同様、円の形状として規定することができる。したがって、メモリにマッピングされたサンプル値を画像として再生すると、図9(a)に模式的に示すように、各ゾーン上にウエル13の領域を円形の領域として表すことができる。
これに対し、各ゾーンが線速度一定で走査される場合、トラック1周分を励起光が走査する時間は、ゾーン内において、走査位置が外周に向かうほど長くなる。したがって、信号増幅回路204から出力される蛍光検出信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングしてサンプル値を取得する場合、励起光が基準径D0から1周する間に取得されるサンプル値の数は、ゾーン内において、外周側の方が多くなる。
したがって、励起光が基準径D0から1周する間に取得されるサンプル値を1行おきにメモリにマッピングすると、行の始端からウエル13の最内周側の端縁までの期間(サンプル数)と、行の始端から当該ウエル13の最外周側の端縁までの期間(サンプル数)は異なることとなる。このため、メモリにマップングされたサンプル値上において、ウエル13に対応する領域は、バイオセンサ基板10上のウエル13と異なり、円形が歪んだ楕円の領域となる。したがって、メモリにマッピングされたサンプル値を画像として再生すると、図9(b)に模式的に示すように、各ゾーン上において、ウエル13の領域が楕円形に歪んだ領域として表示されることとなる。
このように楕円形に歪んだ形状でウエル13の領域が表示されると、蛍光検出装置1による検査の後に、実際に電子顕微鏡でマラリア原虫に感染した赤血球を目視により確認する際に、画像で表示されたウエル13と電子顕微鏡を介して目視するウエル23の形状とが異なるため、蛍光検出装置1による検査によって異常が検出されたウエル13内の位置を、電子顕微鏡によって観察する際のウエル13内の位置に同定するのが難しくなる。
これに対し、本実施の形態によれば、上記のように、円形でウエル13の領域を表示できるため、蛍光検出装置1による検査によって異常が検出されたウエル13内の位置を、電子顕微鏡によって観察する際のウエル13内の位置に同定するのが容易となる。このように、本実施の形態によれば、蛍光検出装置1による検査結果を実観測時に確認する作業が容易になるとの効果がさらに奏され得る。
<変更例1>
図10は、変更例1に係るバイオセンサ基板10の構成と、基準領域およびアドレス領域に設定されるデータフォーマットを示す図である。
本変更例では、基準領域とは別に、各ウエル領域の先頭に、アドレス領域が設けられている。アドレス領域は、所定の角度幅でバイオセンサ基板10の径方向に延びるように配置されている。また、アドレス領域にも基準領域と同様、トラックに沿ってピット列が形成され、このピット列によって、所定の情報が保持されている。
本変更例では、基準領域の各トラックに保持されていたトラック番号が、アドレス領域の各トラックに保持されている。また、アドレス領域のトラックには、当該ウエル領域に含まれるウエル13の番号(ウエル番号)が保持されている。本変更例において、ウエル番号は、ゾーン毎に設定される。すなわち、各ゾーンの開始位置から走査方向に最初に現れるウエル13のウエル番号が1に設定され、その後、走査方向にウエル13が出現する毎に、ウエル番号が1ずつ増加する。
本変更例において、角速度の更新処理は、上記実施の形態と同様である。本変更例によれば、ウエル13毎にトラック番号とウエル番号が付されるため、ウエル13が特定され易くなり、さらに、ウエル13を横切るトラックを特定し易くなる。このため、ウエル13内にマラリア原虫に感染した赤血球が検出された場合に、当該赤血球の位置が適正に特定され易くなる。
<変更例2>
図11は、変更例2に係るバイオセンサ基板10の構成を示す図である。
本変更例では、径方向に隣り合う2つのゾーンの間に境界領域が設けられている。境界領域に含まれるトラックは、基準領域と同じく、ピット列から構成されている。本変更例では、このピット列は、基準領域の基準同期信号とは別の固有のパターンからなっている。本変更例では、境界領域のピット列によって特別な情報は保持されていない。
図12は、基準領域に設定されるデータフォーマットを示す図である。なお、図12には、最内周に配されたゾーン1の近傍の領域が示されている。
図12に示すように、本変更例では、基準領域にゾーン番号が保持されていない。上記実施の形態では、基準領域に保持されたゾーン番号を取得することにより、現在走査中のゾーンが識別されたが、本変更例では、境界領域が走査され、境界領域に固有のピットのパターンが検出されたことにより、走査位置が、次のゾーンに入ったことが検出される。境界領域において、ピットの長さと、このピットから次のピットまでのスペースの長さは、たとえば、基準領域におけるピットの長さとスペースの長さの2倍とされる。また、境界領域に含まれるトラックの径方向の数は、境界領域を適正に検出できるよう、数トラック(5トラック程度)となっている。
このように、ピット列からなる境界領域によってウエル13の配置領域が複数のゾーンに物理的に区画される。
本変更例では、走査位置が境界領域に入ったことをコントローラ205が検出できるよう、図7に示す信号演算回路201から、再生RF信号(SUM信号)が、コントローラ205に出力される。コントローラ205は、再生RF信号を監視し、再生RF信号上に、境界領域のピットとスペースに対応するパターンの信号が生じたことに基づいて、走査位置が境界領域に入ったことを検出する。
図13(a)は、変更例2に係る角速度の更新制御を示すフローチャートである。
コントローラ205は、蛍光検出動作が終了されるまでの間(S21)、信号演算回路201から入力される再生RF信号を監視し、励起光の走査位置が境界領域に入ったか否かを判定する(S22)。たとえば、バイオセンサ基板10が蛍光検出装置1に装着されると、所定の角速度でバイオセンサ基板10が回転され、図12に示す管理ゾーンが読み取られる。その後、励起光がトラックを辿ることにより、励起光の走査位置が、ゾーン1の内周側に配置された境界領域に進入する。こうして、走査位置が境界領域に入ると、コントローラ205は、信号演算回路201から入力される再生RF信号上に境界領域に固有のパターンを検出し、走査位置が最初の境界領域に入ったと判定する(S22:YES)。
コントローラ205は、走査位置が境界領域に入ったと判定すると(S22:YES)、ゾーン番号を一つ増加させ、走査位置が境界領域を抜けて外周側のゾーンにジャンプするよう、サーボ回路202にトラックジャンプの指令を出力する。たとえば、上記のように、管理ゾーンの情報が読み取られた後、励起光の走査位置が、始めて境界領域(ゾーン1の内周側に配置された境界領域)に入った場合(S22:YES)、コントローラ205は、角速度制御のために保持するゾーン番号を0から1に増加させ(S23)、当該境界領域からゾーン1へとジャンプするよう、境界領域のトラック数に応じた幅だけ外周方向に走査位置をジャンプさせる指示をサーボ回路202に出力する(S24)。サーボ回路202は、既存の光ディスク技術と同様の手法により、励起光の走査位置を外周方向にジャンプさせる。
こうして、トラックジャンプが実行された後、コントローラ205は、励起光が、基準領域中の基準同期信号を走査したか否かを判定する(S25)。コントローラ205は、再生RF信号を監視し、再生RF信号上に、基準同期信号のピットとスペースに対応するパターンの信号が生じたことに基づいて、励起光が基準同期信号を走査したことを検出する。基準同期信号を検出すると(S25:YES)、コントローラ205は、S23で取得したゾーン番号に対応する角速度を角速度テーブル205aから取得し、バイオセンサ基板10の角速度を、取得した角速度に更新する(S26)。
その後、コントローラ205は、再び処理をS21に戻し、蛍光検出動作が終了するまで、次の境界領域の到来を待つ(S22)。走査位置が次の境界領域に進入すると(S22:YES)、コントローラ205は、S23以降の処理を実行する。コントローラ205は、同様の処理を、S21において蛍光検出動作が終了したと判定するまで繰り返す。蛍光検出動作が終了したか否かの判定は、上記実施の形態と同様にして行われる。そして、蛍光検出動作が終了すると(S21:YES)、コントローラ205は、角速度の更新処理を終了する。
本変更例においても、上記実施の形態と同様の効果が奏され得る。
なお、図13(a)のフローチャートでは、励起光の走査位置が境界領域に入るまで、トラックに対する励起光の走査がそのまま継続されたが、ウエル13に対する走査が終了したことに応じて、次の境界領域をサーチする処理がさらに実行されても良い。
図13(b)は、この場合の角速度の更新処理を示すフローチャートである。図13(b)のフローチャートでは、図13(a)のフローチャートに対し、S31とS32が追加されている。
S31では、境界領域のサーチが行われ、S32では、励起光の走査位置が、ゾーン内においてウエル13よりも外周側へと進んだか否かが判定される。
S31のサーチ処理では、たとえば、励起光の走査位置を外周側に数トラックだけジャンプさせ、ジャンプ後の走査位置において、境界領域に固有のパターンが再生RF信号上に現れたか否かが判定される。S31の処理は、再生RF信号上に、境界領域に固有のパターンが現れるまで、繰り返し実行される。再生RF信号上に境界領域に固有のパターンが検出されると、S22において、励起光の走査位置が境界領域に入ったと判定される(S22:YES)。
S32の判定は、たとえば、バイオセンサ基板10が1回転する間に再生RF信号の信号レベルが変化する状態から、バイオセンサ基板10が1回転する間に再生RF信号の信号レベルが変化しない状態へと移行したことに基づいて行われる。図7に示す光検出器109には、図1(c)に示す反射膜14によって反射された反射励起光の他、反射膜14を透過した後、ウエル底面部13aにより反射され、再び反射膜14を透過した励起光(迷光)も入射する。このため、励起光が、ウエル13に対応する位置を走査する期間は、この迷光の分だけ、光検出器109の受光量が増加し、再生RF信号の信号レベルが上昇する。
励起光の走査軌跡がウエル13に掛かる場合、バイオセンサ基板10が1回転する間に、再生RF信号の信号レベルに、上記迷光に応じた変化が生じる。励起光の走査軌跡がウエル13よりも外側の領域に外れると、上記迷光が光検出器109に入射しないため、バイオセンサ基板10が1回転しても、再生RF信号の信号レベルに変化は生じない。したがって、バイオセンサ基板10が1回転する間に再生RF信号の信号レベルが変化する状態から、バイオセンサ基板10が1回転する間に再生RF信号の信号レベルが変化しない状態へと移行したことに基づいて、励起光の走査位置が、ウエル13よりも外周側へと進んだことが検出され得る。
図13(b)のフローチャートにおいて、バイオセンサ基板10の管理ゾーンが読み取られると、S31において、最内周に配された境界領域がサーチされる(S31)。そして、このサーチにより最内周の境界領域が検出されると(S32:YES)、図13(a)と同様、S23以降の処理が実行され、角速度の更新が行われる。角速度を更新すると(S26)、コントローラ205は、励起光の走査位置が、ウエル13よりも外側の領域に外れたか否かを判定する(S32)。そして、走査位置がウエル13よりも外側の領域に外れると(S32:YES)、蛍光検出動作が終了したかを判定し(S21)、蛍光検出動作が終了していなければ(S21:NO)、さらに外周側の境界領域に対するサーチを実行する(S31)。
図13(b)のフローチャートによれば、励起光の走査位置がウエル13よりも外側に外れると、次の境界領域がサーチされるため、図13(a)のフローチャートに比べて迅速に、バイオセンサ基板10に対する検査を完了することができる。
なお、図13(b)に示したサーチ処理は、上記実施の形態に係る図8(a)のフローチャートにも適用可能である。この場合、図14(a)に示すように、S14の処理により角速度が更新されると、励起光の走査位置がウエル13よりも外側の領域に外れたかが判定される。そして、励起光の走査位置がウエル13よりも外側の領域に外れると、処理がS11に進められ、蛍光検出動作が終了していなければ(S11:NO)、さらに外周側のゾーンをサーチする処理が実行される(S33)。
このサーチ処理では、励起光の走査位置を外周側に数トラックだけジャンプさせ、ジャンプ後の走査位置において、新たなゾーン番号が取得されたか否かが判定される。このサーチ処理は、新たなゾーン番号が取得されるまで、繰り返し実行される。新たなゾーン番号が取得されると、S13の判定がYESとなり、S14において、バイオセンサ基板10の角速度が、新たなゾーン番号に応じた角速度に更新される。
図14(a)のフローチャートによれば、図8(a)のフローチャートに比べて迅速に、バイオセンサ基板10に対する検査を完了することができる。
なお、図13(a)、(b)では、励起光の走査位置が境界領域の外側のゾーンに進入し、基準同期信号が検出されたことに応じて(S25:YES)、角速度が更新された(S26)。しかしながら、角速度の更新は、境界領域が検出されたことに応じて実行されても良い。この場合、図13(a)のフローチャートは、図14(b)のように修正される。すなわち、境界領域が検出されると(S22:YES)、ゾーン番号が1つ増加され(S23)、バイオセンサ基板10の角速度が、増加後のゾーン番号に対応する角速度に更新される(S26)。その後、励起光の走査位置が、外周側にトラックジャンプされ、外周側のゾーンに対する走査が実行される。図13(b)のフローチャートも同様に変更可能である。
<変更例3>
上記変更例2では、境界領域に含まれるトラックには特別な情報が保持されていなかった。これに対し、変更例3では、境界領域にゾーン番号が保持されている。
図15は、変更例3に係るバイオセンサ基板10の構成と、基準領域および境界領域のデータフォーマットを示す図である。
図15に示すように、変更例3では、内周側からk番目の境界領域kのトラックに境界同期信号とゾーン番号が保持されている。境界同期信号は、上記変更例2の場合と同様、ピットとスペースの固有のパターンからなっている。ゾーン番号は、境界領域kの外側にあるゾーンk、すなわち、内周側からk番目のゾーンkのゾーン番号である。境界領域kのトラックには、境界同期信号とゾーン番号とからなる組が、トラックの全期間に亘って繰り返し記録されている。また、これに代えて、基準領域に続くトラック部分に1回または数回だけ境界同期信号とゾーン番号とからなる組が記録され、その後のトラックの区間には、他の情報が記録されるか、あるいは、無作為なパターンでドットとスペースが配列されても良い。
このように、本変更例では、ピット列からなる境界領域kがその外側のゾーンのゾーン番号を保持する。
図16(a)は、変更例3に係る角速度更新処理を示すフローチャートである。図16(a)のフローチャートは、図13(a)のフローチャートにおけるS23がS41に置き換えられており、その他のステップは、図13(a)のフローチャートと同様である。
図16(a)のS22によって境界領域が検出されると(S22:YES)、この境界領域からゾーン番号が取得される(S41)。そして、S24においてトラックジャンプが実行され、その後、基準同期信号が検出されると(S25:YES)、バイオセンサ基板10の角速度が、S41で取得したゾーン番号に対応する角速度に更新される(S26)。
図16(b)では、図13(b)のフローチャートにおけるS23がS42に置き換えられている。このフローチャートにおいても、S22によって境界領域が検出されると(S22:YES)、この境界領域からゾーン番号が取得される(S42)。そして、S24においてトラックジャンプが実行され、その後、基準同期信号が検出されると(S25:YES)、バイオセンサ基板10の角速度が、S42で取得したゾーン番号に対応する角速度に更新される(S26)。
本変更例においても、上記実施の形態と同様の効果が奏され得る。また、図16(a)、(b)のフローチャートは、図14(b)と同様、励起光の走査位置が境界領域に入ったことに応じて角速度が更新されるよう修正されても良い。
<変更例4>
上記実施の形態では、1つのゾーンに1つの角速度が設定されたが、径方向に隣り合う複数のゾーンに1つの角速度が設定されても良い。
図17(a)、(b)は、それぞれ、径方向に隣り合う2つのゾーンに1つの角速度が設定される場合の角速度更新制御のフローチャートおよび角速度テーブル205aの構成を示す図である。図17(a)のフローチャートは、図8(a)のフローチャートに対してS51が追加されている。また、図17(b)に示すように、本変更例の角速度テーブル205aは、2つのゾーン番号に対して一つの角速度が対応付けられている。ここで、2つのゾーン番号の組に割り当てられた角速度は、この組よりも1つ内周側にある2つのゾーン番号の組に割り当てられた角速度よりも小さくなっている。たとえば、2つのゾーン番号の組のうち内周側のゾーン番号のゾーンの最内周のトラックの線速度が、他の2つのゾーン番号の組のうち内周側のゾーン番号のゾーンの最内周のトラックの線速度と同一となるように、各組の角速度が設定されている。
図17(a)のフローチャートにおいて、コントローラ205は、基準領域から今回取得したゾーン番号が前回取得したゾーン番号から変化したと判定すると(S13:YES)、取得したゾーン番号に対応する角速度を角速度テーブル205aから取得し、取得した角速度が、現在設定されている角速度と相違するかを判定する(S51)。そして、取得した角速度が現在設定されている角速度と相違していると(S51:YES)、コントローラ205は、バイオセンサ基板10の角速度を、今回取得した角速度に更新する(S14)。
本変更例によれば、ゾーン番号が2回変化するまでは、バイオセンサ基板10の角速度が維持されるため、上記実施の形態に比べて、角速度の変更動作を簡素なものとすることができる。また、2つのゾーンに対して1つの角速度が設定されるため、これら2つのゾーンのうち外周側のゾーンに対する角速度が上記実施の形態よりも速くなり、結果、バイオセンサ基板10の全領域を走査するのに要する時間を短縮することができる。ただし、その反面、本変更例では、2つのゾーンのうち外周側のゾーンに対する角速度が上記実施の形態よりも速くなるため、外周側のゾーンを走査する際に試料に照射される励起光の光量が、上記実施の形態よりも低下することとなる。したがって、このように試料に対する励起光の照射光量が低下しても十分に、試料から蛍光が生じる場合には、本変更例のように、隣り合う2つのゾーンに対して一つの角速度が設定されるのが望ましい。一つの角速度が設定されるゾーンの数は、試料に対する励起光の照射光量の低下が許容される範囲で適宜設定され得るものである。
<変更例5>
図18は、本変更例に係る蛍光検出装置1の構成を示す図である。
なお、本変更例の蛍光検出装置1による測定には、変更例1に示すバイオセンサ基板10が用いられる。バイオセンサ基板10には、基準領域とは別に、アドレス領域が設けられ、アドレス領域に、ウエル同期信号、トラック番号およびウエル番号が保持される(図10参照)。
本変更例の蛍光検出装置1の光学系は、上記実施の形態と同様、半導体レーザ101と、アパーチャ102と、偏光ビームスプリッタ(PBS)103と、コリメータレンズ104と、1/4波長板105と、ダイクロイックプリズム106と、対物レンズ107と、アナモレンズ108と、光検出器109と、集光レンズ110と、蛍光検出器111を備えている。また、蛍光検出装置1は、上記実施の形態と同様、ホルダ121と、対物レンズアクチュエータ122と、回転装置123と、を備える。これらの構成については、上記実施の形態において既に説明されているため、ここでの説明を省略する。
蛍光検出装置1は、さらに、信号演算回路211と、サーボ回路212と、再生回213と、信号増幅回路214と、コントローラ215と、クロック生成回路216を備えている。
信号演算回路211は、光検出器109の検出信号から、フォーカスエラー信号FEと、トラッキングエラー信号TE1、TE2と、再生RF信号を生成する。これらの信号については、追って図19を参照して説明する。
サーボ回路212は、信号演算回路201から出力されたフォーカスエラー信号FEとトラッキングエラー信号TE1を用いて、対物レンズアクチュエータ122の駆動を制御する。また、サーボ回路212は、蛍光検出装置1の光学系と、ホルダ121と、対物レンズアクチュエータ122が設置されたハウジングの移動制御を行う。また、サーボ回路212は、バイオセンサ基板10が1回転する毎に回転装置123から出力される回転検出信号に基づき、ゾーン毎に角速度一定でバイオセンサ基板10が回転されるよう、回転装置123を制御する。この際、図8(a)に示す角速度の更新制御が行われ、ゾーンの配置位置がバイオセンサ基板10の外周側に向かうに従って、ゾーンに対する角速度が小さくなるように、コントローラ215によってゾーンに対する角速度が更新される。なお、回転装置123は、サーボ回路212の他、コントローラ215にも回転検出信号を出力する。
再生回路213は、信号演算回路211から出力された再生RF信号を復調して再生データを生成する。復調される再生データは、図10に示す基準領域とアドレス領域に保持されているゾーン番号、トラック番号およびウエル番号である。再生回路213は、復調した再生データを、コントローラ215に出力する。信号増幅回路214は、蛍光検出器111の検出信号(蛍光検出信号)を増幅してコントローラ205に出力する。
コントローラ215は、CPUとメモリを備え、メモリに格納されたプログラムに従って、信号演算回路211と、サーボ回路212と、再生回路213の他、蛍光検出装置1の各部を制御する。また、コントローラ215は、メモリに格納されたプログラムによって、走査位置検出部215aと蛍光位置特定部215bとしての機能を有している。なお、コントローラ215には、上記実施の形態と同様、角速度テーブル(図示せず)が保持されている。
走査位置検出部215aは、信号演算回路211から出力される信号(再生RF信号)とクロック生成回路216から出力される信号(クロック信号)とに基づいて、ウエル領域に含まれる各トラック部分における励起光の走査位置を検出する。また、蛍光位置特定部215bは、再生回路213から出力される再生データ(ゾーン番号およびウエル番号)と、信号増幅回路214から出力される信号(蛍光検出信号)に基づいて、蛍光を検出したウエル13がバイオセンサ基板10のどの位置にあるかを判定し、蛍光を検出したウエル13に対応するゾーン番号およびウエル番号を内部メモリに保持する。さらに、蛍光位置特定部215bは、再生回路213から出力される再生データ(トラック番号)と、信号増幅回路214から出力される信号(蛍光検出信号)と、走査位置検出部215aによって検出された走査位置とに基づいて、ウエル13内の蛍光発生位置を特定し、これらを内部メモリに保持する。
また、コントローラ215は、信号演算回路211から出力されたトラッキングエラー信号TE2に基づいて、励起光がストレート溝を走査しているときに、走査位置が目標トラックから外れたか否かを判定する。コントローラ215は、走査位置が外れたと判定すると、励起光が再度同じトラックを走査するよう、サーボ回路212を制御する。
クロック生成回路216は、信号演算回路211から入力される再生RF信号に基づいて、再生RF信号に同期した所定周波数のクロックを生成し、生成したクロックを、各回路に供給する。
図19は、信号演算回路211の回路構成を示す図である。
光検出器109は、上述したように受光面上に反射励起光を受光するための4分割センサを有しており、4分割センサを構成する左上、右上、右下、左下のセンサは、それぞれ受光した反射励起光のビームスポットに基づいて検出信号S1〜S4を出力する。なお、図18の光検出器109の受光面上において、ディスクの径方向に対応する方向は、左右方向である。また、フォーカスエラー信号FEとトラッキングエラー信号TEは、既存の光ディスク装置において用いられる非点収差法と位相差検出法(DPD法)に従って生成される。
信号演算回路211は、加算器301〜304、306と、減算器305と、位相差検出回路311と、制御回路312と、サンプルホールド回路313と、ローパスフィルタ(LPF)314、315を備えている。加算器301は、検出信号S1、S3を加算した信号を、減算器305と位相差検出回路311に出力し、加算器302は、検出信号S2、S4を加算した信号を、減算器305と位相差検出回路311に出力する。加算器303は、検出信号S1、S4を加算した信号を加算器306に出力し、加算器304は、検出信号S2、S3を加算した信号を加算器306に出力する。
減算器305は、加算器301、302の出力信号を減算して、フォーカスエラー信号FEを出力する。加算器306は、加算器303、304の出力信号を加算して、再生RF信号(SUM信号)を出力する。位相差検出回路311は、加算器301、302の出力信号の位相差に基づいて、トラッキングエラー信号TEを生成する。対物レンズ107の焦点位置が反射面11aに位置付けられているとき、光検出器109の4分割センサ上のビームスポットは最小錯乱円となり、フォーカスエラー信号FEの値が0となる。また、対物レンズ107の焦点位置が反射面11aのトラックの真上に位置付けられているとき、4分割センサの左側の2つのセンサと右側の2つのセンサに掛かるビームスポットの位相は等しくなり、トラッキングエラー信号TEの値は0となる。
制御回路312は、再生RF信号とクロック信号に基づいて、サンプルホールド回路313を開放状態またはホールド(保持)状態とする。サンプルホールド回路313は、制御回路312により信号を開放するよう制御されると、位相差検出回路311から出力されたトラッキングエラー信号TEを後段のLPF314に出力する。また、サンプルホールド回路313は、制御回路312により信号をホールド(保持)するよう制御されると、ホールド(保持)制御される直前の、位相差検出回路311から出力されたトラッキングエラー信号TEを、その後、信号を開放する制御を受けるまでの間、後段のLPF314に出力し続ける。LPF314は、サンプルホールド回路313から出力される信号の高周波成分を取り除いて、トラッキングエラー信号TE1を出力する。LPF315は、位相差検出回路311から出力されるトラッキングエラー信号TEの高周波成分を取り除いて、トラッキングエラー信号TE2を出力する。
図20(a)、(b)は、図19の加算器306から出力される再生RF信号を模式的に示す図である。
図20(a)を参照して、励起光が、図10に示すアドレス領域のピット列を走査している場合、再生RF信号上に、ウエル同期信号と、トラック番号と、ウエル番号に対応する波形が順に現れる。本変更例において、ウエル同期信号は、1TM(幅1Tのピットマーク)と1TS(幅1Tのスペース)からなっている。なお、1Tの物理的長さは、伝送回路帯域や、再生時の回転数に対して再生可能な範囲であればよい。励起光がウエル領域のストレート溝を走査している場合、再生RF信号上には、ピットに対応する波形は現れない。
図20(b)を参照して、励起光が、図10に示す基準領域のピット列を走査している場合、再生RF信号上に、基準同期信号とゾーン番号に対応する波形が順に現れる。本実施の形態の基準同期信号は、2TMと2TSからなっている。
ところで、図19に示す信号演算回路211では、上記のように、光検出器109の4分割センサを構成する各センサからの信号の位相差に基づいて、トラッキングエラー信号TE1が生成される。生成されたトラッキングエラー信号TE1は、トラックに対する励起光の掛かり具合を反映したものとなっている。したがって、良好なトラッキングエラー信号TE1を生成するためには、4分割センサに対して、反射励起光以外の外乱光が極力入射しないことが要求される。4分割センサに外乱光が入射すると、トラッキングエラー信号TE1が劣化し、トラッキングサーボが不安定となる。
しかしながら、図1(d)に示すように、励起光の一部が反射面11aを透過するように、バイオセンサ基板10が構成されている。この場合、反射面11aを透過した励起光は、その一部が底面部13aによって反射され、さらに、反射された励起光は、再び、反射面11aを透過して、光検出器109へと導かれる。したがって、光検出器109には、トラッキングサーボに用いられる反射励起光の他に、底面部13aによって反射された励起光(迷光)もまた入射することとなる。
この場合、この迷光が、4分割センサを構成する各センサに対して不均衡に入射すると、トラッキングエラー信号TE1に劣化が生じる。特に、励起光が底面部13aの境界部分に入射すると、励起光に散乱や反射方向の変化が生じ、迷光が各センサに対して不均衡な状態で入射し易くなる。これによりトラッキングエラー信号TE1が大きく劣化すると、トラッキングサーボが過度に不安定となり、励起光の走査位置が、走査対象のトラックから外れることが起こり得る。
特に、バイオセンサ基板10では、より多くの励起光を試料に導くために、励起光に対する反射膜14の反射率が低く設定されている。このため、底面部13aへと導かれた後に迷光となる励起光の光量も大きくなり、これに伴い、光検出器109に入射する迷光の光量が、反射励起光の光量に対して相対的に大きくなる。したがって、迷光によるトラッキングサーボの影響が大きくなり、トラッキングサーボが迷光によって過度に不安定となる現象が生じ易い。
そこで、本変更例では、このような現象を回避してトラッキングサーボを安定化させるための手段が設けられている。より詳細には、励起光がウエル13に対応するトラック部分を走査される期間は、トラッキングサーボに用いられるトラッキングエラー信号を直前の値にホールド(保持)することにより、トラッキングサーボの安定化が図られている。以下、この制御について説明する。
図21は、制御回路312による処理を示すフローチャートである。
制御回路312は、再生RF信号に含まれる基準同期信号と、ウエル同期信号とを検出し、検出した同期信号に応じて処理を行う。なお、サンプルホールド回路313は、蛍光検出装置1の起動時には予め開放されている。
なお、制御回路312は、再生RF信号上に、基準同期信号およびウエル同期信号に対応する固有の波形パターン(図20(a)、(b)参照)が現れたことに基づいて、これら同期信号を検出する。
すなわち、図20(a)に示すように、ウエル同期信号は、再生RF信号上に波形が無い期間に続いて現れる。制御回路312は、波形が無い期間に続いて1TMと1TSが連続する波形を検出することにより、ウエル同期信号を検出する。また、図20(b)に示すように、基準同期信号は、再生RF信号上に波形が無い期間に続いて現れる。制御回路312は、波形が無い期間に続いて2TMと2TSが連続する波形を検出することにより、基準同期信号を検出する。
なお、基準領域の直後のウエル領域では、図20(b)に示すように、基準領域の末尾に波形が存在するため、この末尾の波形とウエル同期信号の波形が混在し、このため、1TMと1TSからなるウエル同期信号を検出することができない。したがって、基準領域の直後のウエル領域について、制御回路312は、基準領域に含まれる基準同期信号に基づいて、サンプルホールド回路313の制御を行う。
制御回路312は、基準同期信号を検出すると(S11:YES)、サンプルホールド回路313を開放し(S12)、その後、走査位置が1つ目のウエル領域のピット列(アドレス領域)を通過するまでの期間、サンプルホールド回路313を開放状態に維持する(S13)。
なお、図20(b)において、ゾーン番号からウエル番号までの期間は、予め決められている。制御回路312は、基準同期信号を検出した後、この期間が経過したことに基づいて、走査位置が1つ目のウエル領域のピット列を通過したことを判定する。たとえば、制御回路312は、基準同期信号を検出したことに応じて、クロック生成回路206から入力されるクロック信号のカウントを開始し、カウント値が、ゾーン番号からウエル番号までの期間に対応する値に到達したタイミングを、走査位置が1つ目のウエル領域のピット列を通過したタイミング、すなわち、走査位置が1つ目のウエル13のストレート溝に差し掛かるタイミングと判定する。あるいは、この方法に代えて、基準同期信号を検出した後の経過時間に基づいて、走査位置が1つ目のウエル領域のピット列を通過したタイミングを判定しても良く、また、基準同期信号を検出した後、再生RF信号上から波形が消失したことにより、走査位置が1つ目のウエル領域のピット列を通過したことを判定しても良い。
図21に戻り、走査位置が1つ目のウエル領域のピット列を経過すると(S13:YES)、制御回路312は、サンプルホールド回路313をホールド(保持)状態に設定する(S14)。
次に、制御回路312は、ウエル同期信号を検出すると(S11:NO、S15:YES)、サンプルホールド回路313を開放し(S16)、その後、走査位置がウエル領域のピット列を通過するまでの期間、サンプルホールド回路313を開放状態に維持する(S17)。そして、走査位置がウエル領域のピット列を通過すると(S17:YES)、制御回路312は、サンプルホールド回路313をホールド(保持)状態に設定する(S18)。これにより、たとえば、走査位置が1つ目のウエル領域のストレート溝を通過し、2つ目のウエル領域のウエル同期信号に差し掛かると、サンプルホールド回路313が開放されて通常のトラッキングサーボが実行され、走査位置が2つ目のウエル領域のピット列を通過すると、サンプルホールド回路313がホールド(保持)状態となって、直前のトラッキングエラー信号TE1に基づくトラッキングサーボが実行される。この制御は、その後、基準同期信号が検出されるまで、繰り返し行われる。
制御回路312は、基準同期信号とウエル同期信号の何れも検出しないと(S11:NO、S15:NO)、蛍光検出装置1による蛍光検出動作を終了する指示が行われない限り、処理をS11に戻して各同期信号の検出を継続する(S19)。
図22(a)、(b)は、図21のフローチャートに従ってサンプルホールド回路313が制御される場合の励起光の動きを模式的に示す図である。
たとえば、図22(a)のように、励起光の走査位置がウエル領域のピット列(アドレス領域)を通過したタイミングにおいて、励起光がP1の位置にあり、励起光がトラックに対して下方向にずれているとする。この場合、トラッキングエラー信号TE1が、下方向のトラックずれを示す値を持っていると、このトラッキングエラー信号TE1に基づき、サーボ回路212は、励起光の位置を上方向に変位させる制御を行う。図21のフローチャートでは、励起光がストレート溝を走査する期間において、トラッキングエラー信号TE1がホールド(保持)されるため、この期間中は、励起光の位置を上方向に変位させる制御が行われる。このため、励起光は、走査が進むに従って、位置P2を経由してさらに上方向に移動し、次のウエル領域のピット列へと入ったタイミングにおいて、位置P3の位置に位置付けられる。このタイミングにおいて、サンプルホールド回路313が開放され、通常のトラッキングエラー信号TE1に基づく制御が行われる。これにより、励起光は、下方向に移動して位置P4に位置付けられる。
なお、図22(b)のように、励起光の走査位置がウエル領域のピット列を通過したタイミングにおいて、励起光が、オントラック位置である位置P5にあり、トラッキングエラー信号TE1の値が、略ゼロであるような場合、サーボ回路212は、励起光を略変化させないような制御を行う。このため、励起光は、走査が進んでも、トラックから略ずれることがなく、位置P6から位置P7へと進む。その後、ピット列を走査する間も、励起光は略オントラックのまま、位置P8へと進む。
このように、図21のフローチャートによる制御では、励起光がストレート溝を走査する期間において、トラッキングエラー信号TE1をホールド(保持)した制御が行われても、励起光を、略トラックに沿って走査させることができ、励起光をウエル13中の試料に適正に照射させることができる。ただし、励起光がストレート溝を走査する期間には、通常のトラッキング制御が行われないため、何らかの原因によって、励起光の走査位置が、走査対象のトラックから外れることが起こり得る。この問題に対処するため、本実施の形態では、以下に示す制御が行われる。
図23(a)は、励起光がストレート溝を走査している間に、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたときの制御を示すフローチャートである。
コントローラ215は、図19に示すLPF315から出力されたトラッキングエラー信号TE2を監視し、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたか否かを判定する(S31)。図19に示すように、LPF315からは、励起光がストレート溝を走査している間も、励起光がピット列を走査するときと同様、トラッキングエラー信号TE2を出力し続ける。コントローラ215は、トラッキングエラー信号TE2の変化に基づいて、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたことを判定する。
たとえば、トラッキングエラー信号TE2の絶対値が所定の閾値を超えたときに、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたと判定される。あるいは、トラッキングエラー信号TE2の絶対値が所定の閾値を超え、さらに、トラッキングエラー信号TE2がピークを超えたときに、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたと判定される。さらに、このようにトラッキングエラー信号TE2の振幅に基づいて励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたと判定された場合に、さらに、その後に取得されるトラック番号を参照し、このトラック番号が、走査対象トラック番号と一致するかを確かめることによって、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたことを判定しても良い。
励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたことを検出しなければ(S31:NO)、コントローラ215は、蛍光検出動作が終了したか否かを判定し(S38)、蛍光検出動作が終了するまで(S38:YES)、トラック外れの発生を監視する(S31)。この監視において、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたことを検出すると(S31:YES)、コントローラ215は、蛍光検出動作を停止する(S32)。
次に、コントローラ215は、トラック外れが生じた後に励起光が位置付けられた現在走査中のトラックからトラック番号を取得し、現在走査中のトラックが、走査対象トラックに対して、内周側にあるか、外周側にあるかを判定する(S33)。現在走査中のトラックが、走査対象トラックよりも外周側にあると(S33:NO)、コントローラ215は、励起光の走査位置を、走査対象トラックよりも1つ内周側にあるトラックにジャンプさせ(S35)、基準同期信号の到来を待つ(S36)。なお、S35におけるトラックジャンプは、既存の光ディスク技術と同様、対物レンズ107を変位させることによって行われる。
他方、現在走査中のトラックが、走査対象トラックよりも内周側にあると(S33:YES)、コントローラ215は、さらに、現在走査中のトラックが、走査対象トラックよりも1つだけ内周側にあるかを判定する(S34)。現在走査中のトラックが、走査対象トラックよりも1つだけ内周側にない場合(S34:NO)、コントローラ215は、励起光の走査位置を、走査対象トラックよりも1つ内周側にあるトラックにジャンプさせ(S35)、基準同期信号の到来を待つ(S36)。また、現在走査中のトラックが、走査対象トラックよりも1つだけ内周側にある場合(S34:YES)、コントローラ215は、トラックジャンプを行わずに、基準同期信号の到来を待つ(S36)。
しかる後、基準同期信号を検出したことを示す信号が再生回路213から入力されると(S36:YES)、コントローラ215は、蛍光検出動作を再開する(S37)。コントローラ215は、以上の処理を、蛍光検出動作が終了するまで(S38:YES)、繰り返し実行する。
図23(b)は、図23(a)のフローチャートによる制御動作の一例を模式的に示す図である。
励起光が、基準径D0の位置から実線のようにトラックを走査し、その後、位置Paにおいてトラック外れが生じたとする。この場合、トラック外れによって励起光が位置Pbに位置付けられたとすると、図23(b)に太い点線で示すように、励起光の走査位置が、位置Paよりも一つ内周側のトラックにジャンプされる。その後、励起光は、ジャンプ後のトラックを走査し、やがて、励起光の走査位置が基準径D0の位置へと到達する。こうして、励起光の走査位置が、トラック外れが生じたトラックの先頭位置に戻される。その後、このトラックに対する蛍光検出動作が再び実行される。
また、トラック外れによって、励起光の走査位置が位置Paから位置Pcに移動した場合、この位置Pcは、位置Paに対して一つ内周側のトラック上にあるため、励起光は、そのままこのトラックを走査する。そして、励起光の走査位置が基準径D0の位置へと到達すると、トラック外れが生じたトラックに対する蛍光検出動作が再び実行される。
本変更例によれば、以下の効果が奏され得る。
励起光がウエル領域のストレート溝を走査する間は、励起光がストレート溝に差し掛かる直前のトラッキングエラー信号TE1に基づいて、トラッキングサーボが行われる。他方、励起光がウエル領域のストレート溝以外を走査する間は、光検出器109に入射する反射励起光の位相差に基づいて、すなわち、通常のトラッキングエラー信号TEから生成されるトラッキングエラー信号TE1に基づいて、トラッキングサーボが行われる。このように制御回路312による処理が行われると、常にトラッキングエラー信号TE1に基づいてトラッキングサーボが行われる場合に比べて、トラッキングサーボが不安定となることが抑制される。
すなわち、バイオセンサ基板10に照射される励起光のうち反射面11aを透過した励起光がウエル層12に到達すると、上記のように、ウエル層12に到達した励起光による迷光が、光検出器109に入射する。この場合、迷光によりトラッキングエラー信号TE1が劣化し、トラッキングサーボが不安定となる惧れがある。
これに対し、本変更例によれば、励起光がウエル13の配置されるストレート溝の部分を走査する期間は、その直前のトラッキングエラー信号TE1に基づいて、トラッキングサーボが行われるため、迷光によるトラッキングサーボの劣化が抑制される。したがって、励起光の走査位置が、走査対象のトラックから外れるといった事態が抑制され得る。
なお、トラック外れの主要因がディスク偏心に伴う場合には、トラッキングエラー信号TE1に基づいたサーボ制御を行わない領域の長さをディスク偏心に伴うトラック外れが生じない範囲に設定することで、予めトラック外れを抑制することができる。
また、本変更例によれば、ウエル13が配されるトラック部分はストレート溝により形成されているため、ピットやグルーブにより形成されている場合に比べて、試料から生じる蛍光の、トラック部分による回折や散乱が起こりにくくなる。これにより、蛍光検出器111に対してより多くの蛍光を安定的に導くことができるため、蛍光検出器111から良好な蛍光検出信号を出力させることができる。
また、励起光がストレート溝を走査しているときでも、光検出器109に入射する反射励起光の位相差に基づいて、トラッキングエラー信号TE2が生成される。これにより、コントローラ215は、トラッキングエラー信号TE2に基づいて、走査位置が目標トラックから外れたか否かを判定することができ、図23(a)に示すフローチャートに従って、トラック外れが生じたトラックに対して適正に蛍光検出動作を実行することができる。
また、ゾーン内に多数存在するウエル同期信号(1TMと1TS)が、ゾーン内に1つしか存在しない基準同期信号(2TMと2TS)よりも短い期間に設定されている。これにより、ウエル同期信号によって占有される領域を抑制でき、ゾーン内に多数のウエル領域を配することができる。その結果、各ゾーンを有効に利用することが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、ウエル13に赤血球を収容させて、赤血球がマラリア原虫に感染しているか否かが判定されたが、ウエル13に収容させる試料および判定対象となる事象は、これに限られない。
たとえば、特定の遺伝子を発現している細胞や、核酸、タンパク質、脂質、糖等の生体物質が通常より過剰である、または不足している細胞を、特定の細胞として種々の細胞群から検出しても良い。このような特定の細胞は自然界に存在する細胞であってもよいし、人為的処理が施された細胞であってもよい。自然界に存在する細胞としては、特に限定されないが、たとえば病原細胞、病変細胞、病原菌または病原生物に感染された細胞、突然変異した細胞、特定の性質を有する未知の細胞等が挙げられる。また、人為的処理は、特に限定されないが、たとえば物理的処理(例:電磁波照射)、化学的処理(例:薬剤処理)、遺伝子工学的処理(例:遺伝子組み換え処理)等が挙げられる。
また、このような人為的処理のうち、細胞に与える影響が既知である処理を細胞群に施し、当該影響が表れない細胞または当該影響がより強く表れる細胞を特定の細胞として検出することもできる。たとえば、薬剤処理へ耐性または高感受性を示す細胞を特定の細胞として検出することができる。
また、細胞群の種類も特に限定されるものではない。単細胞生物の群の他、多細胞生物由来の細胞の群であってもよい。多細胞生物由来の細胞としては、たとえば生物の正常組織または病態組織から得られた細胞や、これらの細胞に由来する培養細胞等が挙げられる。また、これらの細胞を得る生物も、特に限定されない。たとえば、動物から採取した細胞または植物から採取した細胞であってよい。より具体的には、たとえば脊椎動物(特に哺乳類および鳥類)から採取した細胞、昆虫から採取した細胞、植物培養細胞等を検出対象の細胞として挙げることができるが、検出対象の細胞はこれらに限定されるものではない。また、同一の細胞の群であっても、複数種の細胞が混在する群であってもよい。
また、上記実施の形態では、ウエル13が配置される領域が、基準領域に保持されたゾーン番号によって区画されたが、ウエル13の配置領域を複数のゾーンに区画するための情報が保持される領域は、基準領域に限られず、他の領域であっても良い。たとえば、図2(a)に示す管理ゾーンに、ウエル13の配置領域を複数のゾーンに区画するための情報が保持されても良い。この場合、基準領域には、バイオセンサ基板10の最内周から外周方向に向かって径方向に連続するトラック番号が保持され、管理ゾーンには、各ゾーンの開始位置と終了位置をトラック番号によって規定する情報が保持される。
たとえば、各ゾーンの径方向の幅が300トラック分の幅である場合、管理ゾーンには、トラック番号1〜300までの範囲がゾーン1、トラック番号301〜600までの範囲がゾーン2といったように、トラック番号によってゾーンの範囲を設定する情報が保持される。そして、励起光の現在の走査位置から取得されたトラック番号が、一のゾーンを規定するトラック番号の範囲から他のゾーンを規定するトラック番号の範囲に移行したことに応じて、バイオセンサ基板10の各速度が更新される。
また、上記実施の形態では、各ゾーンの最内周のトラックに対する線速度が一定となるように、各ゾーンの角速度が設定されたが、各ゾーンの最外周のトラックに対する線速度が一定となるように、各ゾーンの角速度が設定されても良く、あるいは、各ゾーンにおいて径方向に同じ位置にあるトラックに対する線速度が一定となるように、各ゾーンの角速度が設定されても良い。
また、各ゾーンの最内周のトラックに対する線速度は、必ずしも、ゾーン間で同一でなくても良く、各ゾーンの最内周のトラックに対する線速度が互いにややずれていても良い。各ゾーンに含まれるウエル13中の試料に十分な光量の励起光が照射され、且つ、ウエル13の配置領域を線速度一定で走査するよりも迅速に、バイオセンサ基板10に対する走査が完了されるのであれば、各ゾーンの最内周のトラックに対する線速度が相違するよう、各ゾーンに対する角速度が設定されても良い。
また、上記実施の形態では、一つのゾーンにウエル13が1周だけ並ぶように、ウエル13が各ゾーンに配置されたが、一つのゾーンにウエル13が2周以上並ぶように、ウエル13が各ゾーンに配置されても良い。
たとえば、図24(a)に示すように、1つのゾーンに対して3周分のウエル13が配置され、各ゾーンにおいて、径方向と周方向にずれるように、ウエル13が配置されても良い。あるいは、図24(b)に示すように、1つのゾーンに対して2周分のウエル13が配置され、各ゾーンにおいて、2つのウエル13が径方向に並び且つ周方向にずれないように、ウエル13が配置されても良い。また、図24(c)に示すように、一つのゾーンにおいて、複数のウエル13からなるグループが周方向に一定間隔で並ぶように、ウエル13が配置されても良い。
また、上記実施の形態では、全てのゾーンに同じ数のウエル13が配置されたが、各ゾーンに配置されるウエル13の数が、ゾーン間で相違していても良い。たとえば、周方向に隣り合うウエル13間の周方向の距離が同じであれば、1つのゾーンの配置されるウエル13の数は、内周側のゾーンよりも外周側のゾーンの方が多くなる。このようにゾーンの位置がバイオセンサ基板10の外周側に向かうにつれて、ゾーンに配置されるウエル13の数が増加するように、各ゾーンに配置されるウエル13の数が設定されても良い。この場合、ウエル13は、バイオセンサ基板10の径方向には並ばなくなる。
また、上記実施の形態では、反射膜14は金属から構成されているが、これに限らず、透光性の誘電体材料であってもよい。この場合、ベース基板11の屈折率と誘電体材料の屈折率とを異なるものとすることにより、反射を生じさせることが可能となる。具体的には、ベース基板11の材料としてポリカーボネート(屈折率:1.59)を用い、反射膜14の材料としてTiO2(屈折率:2.65)等を用いることができる。また、反射膜14の材料として、酸化ニオブ(Nb2O5)を用いることにより、波長400nm近傍の反射率を高くする一方、波長500nm近傍の反射率を低くすることができ、励起光に対する反射率R1を高く、蛍光に対する反射率R2を抑える反射膜14とすることができる。また、反射膜14として、誘電体膜と金属膜の積層膜としてもよい。
また、上記実施の形態では、図1(a)に示すように、ウエル13の形状は円柱形状に設定されたが、これに限らず、試料を収容できる形状であれば、四角柱、楕円柱、錐形等、円柱形状以外の形状に設定されても良い。また、ウエル13の直径d1と高さd2、底面部13aと反射面11aとの間隔d3、ウエル13の間隔d4、ベース基板11の厚みd5、および、反射面11aのトラックピッチd6は、上記実施の形態の値に限られず、適宜設定されても良い。
また、上記実施の形態では、半導体レーザ101から出射される励起光の波長は405nmに設定されたが、これに限らず、測定対象となる試料で用いられる蛍光標識の種類に応じて適宜設定されれば良い。励起光および蛍光の波長の変更に伴い、ダイクロイックプリズム106の透過波長帯域等、光学系の種々のパラメータが適宜変更される。
また、上記実施の形態では、図5(a)〜(d)に示すように、ベース基板11が射出成型により成型され、反射面11aの上面に反射膜14が蒸着され、底面層12aがスピンコートにより積層され、上面層12bが2P成型に形成されて、バイオセンサ基板10が作成された。しかしながら、バイオセンサ基板10の作成方法は、これに限らず、適宜、別の方法により作成されても良い。
また、上記実施の形態では、情報がピット列により保持されたが、トラックをピットのない溝とし、この溝をバイオセンサ基板10の径方向に蛇行させることにより、情報が保持されても良い。この場合、溝の蛇行波形によって情報が保持される。また、溝の蛇行形状は、既存の光ディスクに適用される技術と同様、トラッキングエラー信号に基づいて再生され得る。また、ピットと溝の組合せによって情報が保持されても良い。
また、上記実施の形態において、バイオセンサ基板10を回転装置123により回転させる際に、ウエル13の上部にふたを設けても良い。これにより、ウエル13からの試料の不所望な流出(意図しない流出)、蒸発または移動を防ぐことができる。
また、蛍光検出装置1の光学系も、図7に示すものに制限されるものではなく、他に、種々の変更が可能である。たとえば、図25に示すように、図7の光学系からアパーチャ102が省略され、代わりに、ホルダ121のダイクロイックプリズム106側に円形のアパーチャ131が配されても良い。この構成において、アパーチャ131は、波長選択性を有しており、励起光に対しては所定の周辺部を遮光し、蛍光は、全てを透過するよう構成される。同様に、図18の光学系からアパーチャ102が省略され、代わりに、ホルダ121のダイクロイックプリズム106側に円形のアパーチャが配されても良い。
さらに、上記実施の形態では、光源として一つの半導体レーザ101が用いられたが、本発明は、上記以外の光学系を有する蛍光検出装置および上記以外の構成を有する試料保持担体にも適用可能である。たとえば、本発明は、ウエルに励起光を照射するための光源と、トラックにレーザ光を照射するための光源が個別に準備された蛍光検出装置およびそれに用いる試料保持担体にも、適用可能である。
さらに、上記変更例5では、ウエル領域の、ウエル同期信号と、トラック番号と、ウエル番号に対応するトラック部分がピット列によって形成されたが、連続的な溝(グルーブ)によってトラックが形成されても良く、ピット列と溝(グルーブ)の組合せによってトラックが形成されても良い。溝(グルーブ)によってトラックが形成される場合、たとえば、溝(グルーブ)を蛇行させることによって種々の情報が保持される。すなわち、トラックに保持させる情報に従って溝(グルーブ)の蛇行形状が変調される。上記変更例5に係るバイオセンサ基板10上の全てのピット列が溝(グループ)に置き換えられ、溝の蛇行によって、各種信号と情報が保持されても良い。この場合、各種同期信号は、それぞれ、溝の蛇行形状が固有のパターンを有することによって、他の信号から区別される。
図26は、このように、上記変更例5に係るバイオセンサ基板10上の全てのピット列が溝(グループ)に置き換えられた場合の信号演算回路211の構成を示す図である。
この信号演算回路211では、トラッキングエラー信号の生成方法が、DPD法からDPP(DifferentialPush-Pull)法に置き換えられている。これに伴い、図19の位相差検出回路311が、減算器321に置き換えられ、減算器321の入力端子に接続される信号線が、図19の信号演算回路211から変更されている。
減算器321は、光検出器109の4分割センサを構成する4つのセンサの内、径方向に垂直な分割線によって分割された左側の2つのセンサの出力の加算値(S1+S4)と、当該分割線によって分割された右側の2つのセンサの出力の加算値(S2+S3)とを減算して、トラッキングエラー信号TEを生成する。減算器321よりも後段側の回路の構成は、図19の場合と同様である。また、制御回路312とサンプルホールド回路313の機能も、図19の場合と同様である。
図26の構成例においても、上記変更例5と同様、励起光が蛇行する溝(グルーブ)を走査する期間は、サンプルホールド回路313が開放され、通常のトラッキングエラー信号TE1を用いてトラッキングサーボが行われる。また、励起光がストレート溝を走査する期間は、その直前のトラッキングエラー信号TE1がホールド(保持)され、ホールド(保持)されたトラッキングエラー信号TE1を用いて、トラッキングサーボが行われる。したがって、この構成例によっても、上記変更例5と同様の効果が奏され得る。
また、図26の構成例では、励起光が蛇行する溝(グルーブ)を走査する期間において出力されるトラッキングエラー信号TE1から、溝(グルーブ)の蛇行形状が取得され、取得された蛇行形状によって、各種同期信号や、ゾーン番号等の種々の情報が取得される。すなわち、再生回路213は、トラッキングエラー信号TE1に基づいて、溝(グルーブ)の蛇行形状を取得し、取得した蛇行形状に基づいて、各種同期信号や、ゾーン番号等の種々の情報を取得する。なお、蛇行する溝(グルーブ)から同期信号や種々の情報を取得する方法は、既存の光ディスク技術を用いて実現することができる。
また、上記変更例5では、ウエル領域のウエル13が配置されるトラック部分が、ストレート溝により構成されたが、ストレート溝を省略し、ウエル領域のウエル13が配置される近傍の領域が鏡面状に構成されても良い。
図27は、この場合のバイオセンサ基板10のエリア割りを示す図である。この構成において、ベース基板11の上面は、ウエル領域のアドレス領域に、上記情報を保持するためのピット列が形成され、このピット列に続く領域は、ストレート溝の無い平坦な面となっている。この平坦な面にも反射膜14が生成され、これにより、反射膜14の表面は、平坦な鏡面となっている。
この構成によれば、ウエル13に収容された試料によって生じた蛍光がストレート溝によって散乱および回折されることが無いため、上記実施の形態に比べてさらに、多くの光量でかつ安定的に、蛍光を蛍光検出器111に導くことができる。
なお、上記変更例5では、ウエル領域中のストレート溝を励起光が走査する期間においては、ストレート溝に対する励起光の掛り具合に基づく通常のトラッキングサーボが行われないため、図27の構成例のように、ストレート溝が省略されても、トラッキングサーボに特に問題が生じることはない。ただし、この構成では、ストレート溝に基づくトラッキングエラー信号TE2が生成され得ないため、上記実施の形態のように、励起光の走査位置が対象トラックから外れたことをトラッキングエラー信号TE2に基づいて検出することができなくなる。したがって、この構成例の場合には、たとえば、鏡面領域を通過した後に到来する次のウエル領域のアドレス領域からトラック番号を取得し、取得したトラック番号が、一つ前のウエル領域から取得したトラック番号から相違することに基づいて、励起光の走査位置が対象トラックから外れたことが検出される。
なお、図27の構成例の場合には、上記のように、ストレート溝に基づくトラッキングエラー信号TE2が生成され得ないため、図19または図26の構成からLPF315が省略される。
また、上記変更例5では、サンプルホールド回路313は、制御回路312により制御されたが、コントローラ215により制御されても良い。
また、上記変更例5では、信号演算回路211内にサンプルホールド回路313が配されたが、サンプルホールド回路313は、サーボ回路212から出力されるトラッキングサーボ信号(対物レンズアクチュエータ122に印加される駆動信号)をホールド(保持)するように配置されても良い。
図28は、この場合の構成を示す図である。上記変更例5と同様、制御回路331は、励起光がストレート溝に差し掛かる直前のトラッキングサーボ信号をサンプルホールド回路332によってホールド(保持)させ、励起光がストレート溝を走査する期間は、ホールド(保持)されたトラッキングサーボ信号を用いて対物レンズアクチュエータ122がトラッキング方向に制御される。この場合、対物レンズアクチュエータ122には同じ値のトラッキングサーボ信号が供給され続けるため、励起光は、ストレート溝に差し掛かる直前の位置に固定される。その後、励起光がストレート溝を抜けると、制御回路331は、サンプルホールド回路332を開放し、トラッキングエラー信号TE1に基づく通常のトラッキングサーボが実行される。
さらに、上記変更例5の、図21に示す、トラッキングサーボを安定化させるための制御、および、図23(a)に示す、励起光の走査位置が走査対象トラックから外れたときの制御は、蛍光検出装置1による測定に、ウエル13が形成される領域が複数のゾーンに区切られていないバイオセンサ基板10が用いられた場合にも適用することができる。この場合、サーボ回路212は、クロック生成回路216から出力されるクロック信号を用いて、線速度一定でバイオセンサ基板10が回転されるよう、回転装置123を制御し得る。これにより、バイオセンサ基板10の各トラックは、励起光により線速度一定で走査される。
この他、本発明の実施の形態は、請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。