以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態にかかるモータ駆動回路、およびそれを内蔵した駆動回路内蔵モータならびに駆動回路内蔵ポンプモータ、およびそれらを搭載した空気調和機、換気扇、ヒートポンプ給湯機、ならびに内蔵冷温水循環式空調機について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は、実施の形態にかかるモータ駆動回路の一構成例と、このモータ駆動回路を搭載した駆動回路内蔵モータを示す図である。図1に示すように、実施の形態にかかるモータ駆動回路3は、主たる構成要素として、位置検出センサ5と、PWM信号生成部6と、フィルタ回路60と、F/V変換回路61と、モータ駆動部7とを備えている。このモータ駆動回路3の出力がステータ8のステータ巻線に接続されて実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータ4が構成される。
位置検出センサ5は、例えば、ホール素子が絶縁体であるエポキシ樹脂により封止されたホールICで構成され、ロータ(図示せず)の磁極位置に応じたパルス状の位置検出信号を出力する。
モータ駆動部7は、スイッチング素子12〜17がブリッジ接続され構成されたインバータ回路18、論理回路20、上段側ドライバ回路9、および下段側ドライバ回路10を含み構成され、モータ駆動部7の各構成要素の主要部は、例えば、パワーICの同一パッケージ内に構成される。
また、インバータ回路18の下段側の各スイッチング素子15〜17の負極側は、モータ電流を検出するためのシャント抵抗28を介して接地されている。
インバータ回路18には、高圧直流電源1から100V〜400Vの高電圧が印加され、論理回路20、上段側ドライバ回路9、および下段側ドライバ回路10には、低圧直流電源2から3V〜20Vの低電圧が印加されている。
インバータ回路18を構成する各スイッチング素子12〜17は、例えば、MOSFETで構成され、このインバータ回路18における上段側の各スイッチング素子12〜14と下段側の各スイッチング素子15〜17のそれぞれの接続点から三相のステータ巻線u,v,wに駆動電流を供給する。
論理回路20は、PWM信号生成部6から入力したPWM信号に基づいて、上段側ドライバ回路9および下段側ドライバ回路10を制御して、インバータ回路18の上段側の各スイッチング素子12〜14と下段側の各スイッチング素子15〜17をオン/オフすることにより、実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータ4のロータの回転を制御している。
上段側ドライバ回路9は、例えば、モータ駆動部7を構成するパワーIC内部の金属リードフレームに実装され、樹脂により封止されたHVIC(High Voltage IC)により構成され、PWM信号生成部6から入力されるPWM信号をもとに、高電位側に接続される各スイッチング素子12〜14のゲート信号を生成する。
この上段側ドライバ回路9の高耐圧部には、PN接合分離構造もしくは誘電体分離構造を用いる。HVICの高耐圧部をPN接合分離構造とした場合は、誘電体分離構造とした場合に比べて、安価なHVICが得られる。また、HVICの高耐圧部を誘電体分離構造とした場合は、PN接合分離構造とした場合に比べて、例えばラッチアップを防止することができるといった信頼性の高いHVICが得られる。
下段側ドライバ回路10は、例えば、モータ駆動部7を構成するパワーIC内部に樹脂により封止されたLVIC(Low Voltage IC)により構成され、PWM信号生成部6から入力されるPWM信号をもとに、低電位側に接続される各スイッチング素子15〜17のゲート信号を生成する。
ここで、上段側ドライバ回路9および下段側ドライバ回路10は、それぞれの信号遅延時間が同等となるように設計管理し、また、温度特性をそろえるために、モータ駆動部7を構成する他の各構成要素の主要部と共に、パワーICの同一パッケージ内に封止する。なお、上段側ドライバ回路9および下段側ドライバ回路10の双方を誘電体分離構造とした場合には、同一の半導体素子上に形成することも可能である。
PWM信号生成部6は、カウンタ回路32、出力波形生成回路34、データセレクト回路36、PWM回路38、ゲートブロック回路40、デッドタイム回路42、保護リセット回路44、進角回路46、および位置推定回路48を含み構成され、PWM信号生成部6の各構成要素の主要部は、例えば、専用ICやマイコンの同一パッケージ内に構成される。このPWM信号生成部6には、低圧直流電源2から3V〜20Vの低電圧が印加されている。
位置推定回路48は、位置検出センサ5から入力される位置検出信号に基づいて、推定したロータの位置である位置信号をカウンタ回路32に出力する。
進角回路46は、F/V変換回路61から入力される電圧値に基づいて、インバータ回路18の出力電圧位相の進角制御を行い、位相制御を行う際に進める出力電圧位相の位相角情報を進角信号として出力する。この進角制御については、後述する。
カウンタ回路32は、位置推定回路48からの位置信号のアップエッジ(またはダウンエッジ)から次のダウンエッジ(またはアップエッジ)までの時間をカウントし出力波形生成回路34に出力する。また、進角回路46からの進角信号に基づいて位相制御を行う。
出力波形生成回路34では、フィルタ回路60を介して入力される出力電圧指令と、カウンタ回路32でカウントした時間とに基づいて変調波形を生成する。
データセレクト回路36では、所定の条件に基づいて変調波形を60°リセットまたは360°リセットに分けてリセットし、その変調波形の制御信号をPWM回路38に出力する。
PWM回路38では、入力した変調波形の制御信号と三角波とを比較してPWM信号を生成してゲートブロック回路40に出力する。このPWM信号は、デッドタイム回路42を経て、論理回路20に出力される。
ゲートブロック回路40は、保護リセット回路44からの信号によってPWM信号を遮断するものであり、保護リセット回路44は、シャント抵抗28によって検出された検出電流が所定値以上になると過電流であるとしてゲートブロック回路40に遮断を指示する。
デッドタイム回路42は、PWM信号の出力タイミングを調整するものである。
フィルタ回路60は、外部から入力される出力電圧指令の高周波ノイズを除去すると共に、出力電圧指令の急峻な電圧変動を抑制する。
F/V変換回路61は、位置検出センサ5から入力される位置検出信号の周波数を、ロータの実回転数に相当する電圧値に変換して、進角回路46に出力する。
つぎに、本実施の形態における進角制御について説明する。ロータの回転数が大きくなると、ステータに誘起される誘起電圧の位相に対して、インバータ回路の出力電圧位相に遅れが生じるため、このインバータ回路の出力電圧位相の遅れを補正する進角制御を行う必要がある。
ここで、ロータの回転数指令値に相当する出力電圧指令を用いて進角制御を行うことが考えられるが、上述したように、この出力電圧指令は、一般に、外部からリード配線を介してモータ駆動回路に入力されるものであり、このリード配線にモータ駆動回路のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のスイッチング動作により高周波電流が流れ、出力電圧指令を生成する回路の基準電位に対し、高周波ノイズが重畳された電位がモータ内部に伝達される。このため、モータの内部の基準電位が変動して出力電圧指令の電圧値も変動し、この出力電圧指令を用いて進角制御を行った場合には、出力電圧指令に基づいて生成される進角信号も高周波ノイズの影響で変動することとなり、モータの回転が不安定になり、異音の発生や制御の発散の要因となる。
また、出力電圧指令が急峻に変化した場合には、出力電圧指令に応じた進角制御による電圧位相角と機械的な慣性モーメントを持つ実際のモータ位相角との差が大きくなり、無効電流が増大して、異常な過電流保護動作やそれに伴う騒音の発生要因となる。
また、予めモータの最大回転数に合わせて進角を固定しておく手法もあるが、この場合には、低回転域では実際のモータの位相角に対して、インバータ回路の出力電圧位相が進むこととなるため、低回転域においてモータ電流が大きくなり銅損が大きくなる。
また、トルクの増加によっても、実際のモータの位相角に対して、インバータ回路の出力電圧位相に遅れが生じる。トルクがモータ電流の変動に対応して変動することを利用し、モータ電流の検出値を用いて進角制御を行う手法もあるが、例えば、急激な負荷変動によりモータ電流が増大した場合には、制御が発散する虞がある。
したがって、本実施の形態では、ロータの回転数の情報として、ホールIC(つまり、位置検出センサ5)により検出された位置検出信号の周波数を、ロータの実回転数に相当する電圧値に変換し、この電圧値に基づいて、進角制御を行うようにしている。
このように、ロータの実回転数に基づいて進角制御を行うことにより、モータ駆動回路3のインバータ回路18を構成する各スイッチング素子12〜17のスイッチングにより発生する高周波ノイズによる影響を抑制しつつ、出力電圧指令の急激な変化や、急激な負荷変動に起因した電圧電流変動に依存することなく、ロータの実回転数に応じた最適な位相でモータ駆動制御を行うことができるので、安定したモータ動作が可能となり、異常な過電流保護動作や、騒音や異音の発生を抑制することが可能となる。
また、本実施の形態では、フィルタ回路60により出力電圧指令の高周波ノイズを除去すると共に、出力電圧指令の急峻な電圧変動を抑制するようにしている。これにより、出力電圧指令による出力電圧制御においても上述した高周波ノイズによる影響を抑制することができ、出力電圧の急激な変動も抑制されるので、出力電圧制御による回転数と機械的な慣性モーメントを持つ実際のモータ回転数との差を小さくすることができ、さらに安定したモータ動作が可能となる。
ここで、インバータ回路18を構成する各スイッチング素子12〜17として、MOSFETを用いた構成である場合の効果について説明する。
MOSFETのオン抵抗は、電流の二乗に比例することは一般的に知られているが、上述したように、本実施の形態では、進角制御により最適な位相でモータ駆動制御を行うことにより、特に、予めモータの最大回転数に合わせて進角を固定しておく手法と比較して、低回転域においてモータ電流を低減することが可能である。このため、本実施の形態にかかるモータ駆動回路3において、インバータ回路18を構成する各スイッチング素子12〜17として、MOSFETを用いた場合には、MOSFETによる定常損失低減の効果を有効に引き出すことができ、より高効率なモータ駆動回路3を得ることができる。
また、本実施の形態にかかるモータ駆動回路3では、インバータ回路18を構成する各スイッチング素子12〜17として、例えば、炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)系材料、またはダイヤモンド等のワイドバンドギャップ(以下、「WBG」という)半導体で形成されたMOSFETを用いた構成に適用して好適である。
WBG半導体により形成されたMOSFETは、Si(シリコン)系半導体により形成されたMOSFETよりも定常損失は小さいが、スイッチングの立ち上がり勾配dv/dtが大きくノイズ発生量が大きい。本実施の形態にかかるモータ駆動回路3における進角制御や出力電圧制御は、上述したように、高周波ノイズに対する耐性が高いため、インバータ回路18を構成する各スイッチング素子12〜17としてWBG半導体で形成されたMOSFETを用いた場合でも、安定したモータ動作が可能である。
つぎに、実施の形態にかかるモータ駆動回路3のプリント基板上における部品配置および駆動回路内蔵モータ4の構造について、図2および図3を参照して説明する。
図2は、実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータの構造例を示す図である。図2(a)は、ステータ8とモータ駆動回路3の各部品101,102,103が配置されたプリント基板21とを組み合わせて絶縁体であるモールド樹脂で一体化した側面断面図を示し、図2(b)は、図2(a)に示す矢視透視図を示している。
図2に示すように、図1に示したモータ駆動回路3を構成する各部品101,102,103は、出力電圧指令を生成する外部回路(図示せず)や、高圧直流電源1、低圧直流電源2等と接続するための外部接続リード19のコネクタ部品104と共に同一のプリント基板21上に実装され、そのプリント基板21がステータコアに巻線を巻回されて構成されるステータ8に対向配置されている。モータ駆動回路3の出力は、ステータ8の巻線と電気的に結合するための接続端子22に半田付けされている。また、プリント基板21およびステータ8は、モールド樹脂23により封止されて機械的に結合され一体化している。このモールド樹脂23は、ステータ8のプリント基板21に面する側にベアリングハウジング24を形成すると共に、その反対側は、ステータ8の内周面に沿ってロータ貫通用穴25が空けられている。このロータ貫通用穴25に主軸とベアリングとが組み合わされたロータが嵌り、ベアリングハウジング24とベアリングとを嵌合させる構造となっており、プリント基板21の中央部には、ベアリングを組み合わせた主軸を貫通させるための円形の穴が空けられている。
図3は、実施の形態にかかるモータ駆動回路のプリント基板上における部品配置の一例を示す図である。図3(a)は、図2の上面透視図で見た面と同一の面を示し、図3(b)は、図3(a)の裏面を左右反転させて示している。以下、図3(b)に示す面を、ステータ8に対向する面であることから、「ステータ側」といい、図3(a)に示す面を「反ステータ側」という。
図3において、スルーホール実装型部品101は、例えば、図1において説明したモータ駆動部7の各構成要素の主要部がパッケージ化されたパワーICであり、面実装型部品102は、例えば、図1において説明したPWM信号生成部6の各構成要素の主要部がパッケージ化された専用ICやマイコンであり、面実装型部品103は、例えば、図1において説明した位置検出センサ5であるホール素子が樹脂により封止されたホールICである。なお、以下の説明では、外部接続リード19のコネクタ部品104も、スルーホール実装型部品104として説明する。
本実施の形態では、図3に示すように、パワーIC等を含むスルーホール実装型部品101,104をプリント基板21の反ステータ側に実装し、専用ICやマイコン、ホールIC等を含む面実装型部品102,103をプリント基板21のステータ側に実装するようにしている。以下、これによる効果について説明する。
図2に示すように、プリント基板21のステータ側の面に接するモールド樹脂23は、ステータ8とプリント基板21との間に介在するため、熱抵抗の大きいプリント基板21によりステータ8から発せられる熱の伝搬が妨げられ、熱分布が略均一となり温度勾配が小さい。
これに対し、プリント基板21の反ステータ側の面に接するモールド樹脂23は、熱抵抗の大きいプリント基板21とモータ表面との間に介在するため、プリント基板21に近い程温度が高く、モータ表面に近い程温度が低くなり、プリント基板21のステータ側の面に接するモールド樹脂23よりも温度勾配が大きくなる。
つまり、プリント基板21の反ステータ側の面に実装される部品は、プリント基板21のステータ側の面に実装される部品よりも、モールド樹脂23の熱収縮による応力を受けやすい。
本実施の形態では、上述したように、応力によって半田切れの発生し易い面実装型部品102,103をプリント基板21のステータ側に実装すると共に、スルーホール実装型部品101,104をプリント基板21の反ステータ側に実装することにより、プリント基板21の半田付け工程を面実装型部品102,103が実装されたステータ側の面の半田フロー工程のみとすることができ、駆動回路内蔵モータ4を構成するモータ駆動回路3の製造コストを低減することができる。さらに、このプリント基板21のステータ側の面をステータ8に面して配置し、プリント基板21上のモータ駆動回路3とステータ8とを電気的に結合してモールド樹脂23により封止することにより、熱履歴に対して半田寿命が長くなり、駆動回路内蔵モータ4の信頼性を高めることができる。
また、本実施の形態では、図2および図3に示すように、プリント基板21の形状を、円の一部が欠けた半月形状としている。以下、これによる効果について説明する。
図4は、実施の形態にかかるモータ駆動回路を構成する各部品を実装するプリント基板の平面図である。本実施の形態では、長方形の1枚のプリント基板材30から、モータ駆動回路3(図1参照)が実装された半月形状のプリント基板21を6枚材料取りしている。図4を見れば一目瞭然であるが、半月形状のプリント基板21は、円形のプリント基板に比べ、材料取りが良い。また、図3に示すように、モータ駆動部7を構成する各構成要素の主要部をスルーホール実装型のパワーICの同一パッケージ内に集約してプリント基板21の反ステータ側に実装することにより、PWM信号生成部6を構成する各構成要素の主要部を面実装型の専用ICやマイコン等をプリント基板21のステータ側に効率よく配置することができる。さらに、PWM信号生成部6を構成する各構成要素の主要部を面実装型の専用ICやマイコン等の同一パッケージ内に集約することにより、モータ駆動回路3を実装するプリント基板21の小型化を図ることも可能となる。
図5は、実施の形態にかかる空気調和機の室内機および室外機の概観図である。また、図6は、遠心型のラインフロー型の送風ファンを用いた室内機の縦断面図である。また、図7は、軸流型のプロペラタイプの送風ファンを用いた室内機の縦断面図である。図5に示す実施の形態にかかる空気調和機50において、本実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータ4は、図6に示す室内機51に用いられる遠心型のラインフロー型の送風ファン53や、図7に示す室内機81に用いられる軸流型のプロペラタイプの送風ファン83や、室外機52の送風ファン54(図5参照)を駆動するモータとして適用して好適である。これら送風ファン53,54,83の回転羽根の慣性モーメントは、ロータの慣性モーメントと比べても大きいため、ロータの実回転数の単位時間当たりの変化は、出力電圧指令により制御される回転数の変化よりも小さくなる場合が多い。このため、本実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータ4を適用して、ロータの実回転数に基づいて進角制御を行うことによる効果が大きく、安定した動作が可能となる。
また、図7に示す軸流型のプロペラタイプの送風ファン83は、図6に示した遠心型のラインフロー型の送風ファン53に比べ、送風効率が高いことが一般的に知られている。一方で、送風ファン83の取り付け部品84が風路に設置されるため、この取り付け部品84により送風が妨げられ効率が悪化し、圧力損失が増大する要因となる。この圧力損失を低減するためには、送風ファン83の取り付け部品84として、風路を妨げないように、細長い異形形状とする必要がある。送風ファン83の取り付け部品84をこのような細長い異形形状とすると、モータの振動が大きくなり、これに伴い騒音が大きくなることが課題となる。本実施の形態では、ロータの実回転数に基づいて進角制御を行うことにより、出力電圧指令の急激な変化や、急激な負荷変動に起因した電圧電流変動に依存することなく、ロータの実回転数に応じた最適な位相でモータ駆動制御を行うことができ、また、出力電圧指令の急峻な電圧変動を抑制するようにしているので、出力電圧の急激な変動も抑制され、出力電圧制御による回転数と機械的な慣性モーメントを持つ実際のモータ回転数との差を小さくすることができる。このため、加減速時の振動の発生を抑制することができ、室内にいる使用者に騒音や振動による不快感を与えることなく、送風効率の高い空気調和機を得ることができる。
また、送風効率の高い軸流型の送風ファン83を用いることにより機器の効率を改善することができるので、ロータマグネットとして、バックヨークが不要な極背向フェライト磁石を用いることができる。この場合には、希土類磁石等のレアアースを用いる必要がなくなり、資源を有効に活用することができる。
また、本実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータ4を、例えば、換気扇に適用しても、同様の効果を得られる。本実施の形態にかかる駆動回路内臓モータ4は、特に、予めモータの最大回転数に合わせて進角を固定しておく手法と比較して、低回転域においてモータ電流を低減することが可能であるため、低速運転の割合が大きい24時間換気タイプの換気扇において、銅損を抑制した高効率な運転が可能となる。
図8は、実施の形態にかかる駆動回路内蔵ポンプモータの縦断面図である。図8に示す駆動回路内蔵ポンプモータ70では、インペラ71と、ポンプハウジング72と、流体がプリント基板21やステータ8に流れ込むのを防ぐためのカップ74とを有し、ロータマグネット73とステータ8との間にカップ74が介在している。
このような駆動回路内蔵ポンプモータ70において、モータ電流の検出値を用いて進角制御を行う手法を用いた場合、例えば、インペラ71とポンプハウジング72との間や、ロータマグネット73とカップ74との間に異物が混入して軸ロックが発生した場合には、モータ電流が増大して進角制御が発散、つまり、インバータ回路18の電圧位相角と機械的な慣性モーメントを持つ実際のモータ位相角との差が大きくなり、その結果として、トルクが生じなくなる。これに対し、駆動回路内蔵ポンプモータ70の駆動回路として、本実施の形態にかかるモータ駆動回路3を適用した場合には、内部に異物が混入して軸ロックが発生したとしても、ロータの実回転数に基づいて進角制御を行うので、トルクが失われることなく、混入した異物を排出することができる。
また、このような駆動回路内蔵ポンプモータ70を、例えば、ヒートポンプ給湯機や内蔵冷温水循環式空調機に適用しても、同様の効果を得られることは言うまでもない。
以上説明したように、実施の形態のモータ駆動回路、およびそれを内蔵した駆動回路内蔵モータならびに駆動回路内蔵ポンプモータ、およびそれらを搭載した空気調和機、換気扇、ヒートポンプ給湯機、ならびに内蔵冷温水循環式空調機によれば、ロータの回転数の情報として、ホールICにより検出された位置検出信号の周波数を、ロータの実回転数に相当する電圧値に変換し、この電圧値に基づいて、進角制御を行うようにしたので、インバータ回路を構成する各スイッチング素子のスイッチングにより発生する高周波ノイズによる影響を抑制しつつ、出力電圧指令の急激な変化や、急激な負荷変動に起因した電圧電流変動に依存することなく、ロータの実回転数に応じた最適な位相でモータ駆動制御を行うことができる。これにより、安定したモータ動作が可能となり、異常な過電流保護動作や、騒音や異音の発生を抑制することが可能となる。
また、フィルタ回路により出力電圧指令の高周波ノイズを除去すると共に、出力電圧指令の急峻な電圧変動を抑制することにより、出力電圧指令による出力電圧制御においても上述した高周波ノイズによる影響を抑制することができ、出力電圧の急激な変動も抑制されるので、出力電圧制御による回転数と機械的な慣性モーメントを持つ実際のモータ回転数との差を小さくすることができ、さらに安定したモータ動作が可能となる。
また、インバータ回路を構成する各スイッチング素子として、MOSFETを用いた構成とすることにより、MOSFETによる定常損失低減の効果を有効に引き出すことができ、より高効率なモータ駆動装置を得ることができる。
また、高周波ノイズに対する耐性が高いため、インバータ回路を構成する各スイッチング素子として、スイッチングの立ち上がり勾配dv/dtが大きくノイズ発生量が大きいWBG半導体で形成されたMOSFETを用いた構成に適用して好適であり、安定したモータ動作が可能である。
なお、上述した実施の形態において説明したWBG半導体により構成されたスイッチング素子を用いることによる効果は、上述した効果にとどまらない。
例えば、WBG半導体で形成されたMOSFETは、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、小型化が可能であり、これら小型化されたMOSFETを用いてパワーICを構成することにより、パワーICの小型化が可能となる。
また、WBG半導体で形成されたMOSFETは、耐熱性も高いため、パワーICの冷却手段を簡素化することが可能であるので、このパワーICを実装したモータ駆動回路や、それを内蔵した駆動回路内蔵モータならびに駆動回路内蔵ポンプモータの小型化が可能となる。
また、応力によって半田切れの発生し易い面実装型部品をプリント基板のステータ側に実装すると共に、スルーホール実装型部品をプリント基板の反ステータ側に実装することにより、プリント基板の半田付け工程を面実装型部品が実装されたステータ側の面の半田フロー工程のみとすることができ、駆動回路内蔵モータを構成するモータ駆動回路の製造コストを低減することができる。さらに、このプリント基板のステータ側の面をステータに面して配置し、プリント基板上のモータ駆動回路とステータとを電気的に結合してモールド樹脂により封止することにより、熱履歴に対して半田寿命が長くなり、駆動回路内蔵モータの信頼性を高めることができる。
また、モータ駆動部を構成する各構成要素の主要部を同一パッケージ内に封止したスルーホール実装型のパワーICとして構成し、PWM信号生成部を構成する各構成要素の主要部を同一パッケージ内に封止した面実装型の専用ICあるいはマイコンとして構成することにより、モータ駆動回路を実装するプリント基板の小型化を図ることができる。
また、モータ駆動回路を実装するプリント基板の外形を半月形状とすることにより、外形が円形であるよりも1枚のプリント基板材から効率よく材料取りを行うことができる。
また、本実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータは、空気調和機の室内機の送風ファンや、室外機の送風ファンを駆動するモータとして適用して好適である。これら送風ファンの回転羽根の慣性モーメントは、ロータの慣性モーメントと比べても大きいため、ロータの実回転数の単位時間当たりの変化は、出力電圧指令により制御される回転数の変化よりも小さくなる場合が多い。このため、本実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータを適用して、ロータの実回転数に基づいて進角制御を行うことによる効果が大きく、安定した動作が可能となる。
また、空気調和機の室内機の送風ファンとして、遠心型のラインフロー型の送風ファンに比べて送風効率が高い反面、モータの取り付け部品を細長い異形形状とする必要があり振動や騒音が発生し易い軸流型のプロペラタイプの送風ファンを用いた場合でも、加減速時の振動の発生を抑制することができるので、室内にいる使用者に騒音や振動による不快感を与えることなく、送風効率の高い空気調和機を得ることができる。
また、送風効率の高い軸流ファンを用いることにより機器の効率を改善することができるので、バックヨークが不要な極背向フェライト磁石を用いてロータを構成することができ、希土類磁石等のレアアースを用いる必要がなくなるので、資源を有効に活用することができる。
また、本実施の形態にかかる駆動回路内蔵モータを、例えば、換気扇に適用しても、同様の効果を得られ、特に、予めモータの最大回転数に合わせて進角を固定しておく手法と比較して、低回転域においてモータ電流を低減することが可能であるため、低速運転の割合が大きい24時間換気タイプの換気扇において、銅損を抑制した高効率な運転が可能となる。
また、駆動回路内蔵ポンプモータの駆動回路として、本実施の形態にかかるモータ駆動回路を適用した場合には、内部に異物が混入して軸ロックが発生したとしても、ロータの実回転数に基づいて進角制御を行うので、トルクが失われることなく、混入した異物を排出することができる。
また、このような駆動回路内蔵ポンプモータを、例えば、ヒートポンプ給湯機や内蔵冷温水循環式空調機に適用しても、同様の効果を得られる。
なお、上述した実施の形態では、ロータの実回転数に基づいて進角制御を行う例について説明したが、この他に、モータ電流の検出値を用いて進角制御を行う手法を併用することも可能である。この場合には、例えば、図1において説明したシャント抵抗28によって検出されたモータ電流を用いて、進角制御を行うようにすればよい。この場合には、モータ電流の検出値に応じた進角制御の制御量を小さくすることにより、例えば、急激な負荷変動が生じた場合でも、進角制御が発散するのを抑制することができる。
また、上述した実施の形態では、フィルタ回路により出力電圧指令の高周波ノイズを除去すると共に、出力電圧指令の急峻な電圧変動を抑制するようにしているので、インバータ回路を構成するスイッチング素子として、高速スイッチングが可能なMOSFETや、スイッチングの立ち上がり勾配dv/dtが大きくノイズ発生量が大きいWBG半導体で形成されたMOSFETを用いた構成に適用して好適であることを述べたが、スイッチング素子の種類はこれに限らず、例えば、バイポーラトランジスタやIGBTであっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、上述した実施の形態では、モータ駆動回路を内蔵した駆動回路内蔵モータおよび駆動回路内蔵ポンプモータを用いて説明したが、モータ駆動回路とモータあるいはポンプモータとが物理的に分離された構成であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかるモータ駆動回路は、ロータの位置を検出する位置検出センサと、ステータ巻線に駆動電流を供給するインバータ回路を含み構成されるモータ駆動部と、前記位置検出センサからの位置検出信号と外部から入力される出力電圧指令とに基づいて、前記インバータ回路を駆動するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記位置検出信号の周波数を、前記ロータの実回転数に相当する電圧値に変換するF/V変換回路と、モータ電流を検出するためのシャント抵抗と、前記電圧値に基づいて、前記インバータ回路の出力電圧位相の進角制御を行うと共に、前記モータ電流に応じて、前記進角制御の制御量を制御する進角回路と、を備えたものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかるモータ駆動回路は、ロータの位置を検出する位置検出センサと、ステータ巻線に駆動電流を供給するインバータ回路を含み構成されるモータ駆動部と、前記位置検出センサからの位置検出信号と外部から入力される出力電圧指令とに基づいて、前記インバータ回路を駆動するためのPWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記位置検出信号の周波数を、前記ロータの実回転数に相当する電圧値に変換するF/V変換回路と、モータ電流を検出するためのシャント抵抗と、前記電圧値に基づいて、前記インバータ回路の出力電圧位相の進角制御を行うと共に、前記モータ電流に応じて、前記進角制御の制御量を制御する進角回路と、を備え、前記進角回路は、前記モータ電流の変動が大きくなるにつれて、前記進角制御の制御量を小さくすることを特徴とするものである。