JPWO2013190867A1 - 膵液成分含有試料の調製方法、及び膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キット - Google Patents

膵液成分含有試料の調製方法、及び膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キット Download PDF

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Abstract

本発明は、膵液成分を含む生体試料中のタンパク質のうち、特にS100Pを、室温で安定して保存することが可能な膵液成分含有試料を調製する方法、及び当該方法に好適なキットを提供する。本発明においては、膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類と、アミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類とを添加することにより、S100Pの検出に供されるまで室温で保存される膵液成分含有試料を調製することを特徴とする。

Description

本発明は、膵液中に含まれているS100Pを、検査に供されるまで室温で安定して保存することが可能な保存用試料を調製する方法、及び当該方法に好適な、膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キットに関する。
体液は臓器の状態を知るための重要な生体試料である。特に膵液は、早期発見が難しく、予後が非常に悪いとされる膵癌の早期発見に資する重要な生体試料であり、細胞診、重炭酸塩測定、細菌検査、タンパク質や核酸等からなるマーカーの検査等に用いられている。また、近年、膵液中のタンパク質を解析する研究、例えば、膵癌等の膵臓関連疾患についての新たなマーカーの探索が盛んに行われている。
特に、S100タンパク質ファミリーのメンバーであり、糖化最終産物受容体(receptor for advanced glycation endproducts:RAGE)であるS100Pは、非常に多くの膵癌で発現が確認されており、かつ、膵癌の増殖・浸潤に関与していることが報告されている。例えば、非特許文献1には、S100Pが、膵臓の早期の発癌マーカーとして有用であること、及び膵液中のS100P濃度解析が、腫瘍と慢性膵炎の識別に有用であることが報告されている。また、非特許文献2には、正常な膵臓導管上皮ではS100Pの発現は観察されなかったが、膵管内乳頭粘液性腫瘍細胞では全検体でS100Pの発現が観察されたことが報告されている。すなわち、S100Pは、膵癌のマーカーとして有用であり、膵液中のS100P量を測定することにより、膵癌の早期発見や進行度の診断等に資することが期待される。
一方で、膵液は消化液であるため、様々な消化酵素を含む。これらの消化酵素は、膵臓内においては不活性の状態で存在しているが、十二指腸に排出された後に活性化することが知られている。膵液中の消化酵素は、十二指腸上皮細胞から分泌される小腸エンテロキナーゼによって分解のカスケード反応が進む。小腸エンテロキナーゼによって膵液中に含まれるトリプシノーゲンが活性化されてトリプシンになり、さらにこのトリプシンが引き金となり、キモトリプシノーゲン、プロエステラーゼなど種々の消化酵素(プロテアーゼ)が活性化されることが知られている。これら種々のプロテアーゼの活性化により、膵液中に含まれるタンパク質、核酸、脂質、細胞等の各種生体分子は、十二指腸に排出後に分解、変性されてしまう。このため、十二指腸へ排出された膵液を生体試料とし、当該生体試料中のS100Pを定量する場合、当該生体試料中のS100Pがプロテアーゼの影響を受け、正確に測定できないことが懸念される。そこで、十二指腸に排出された膵液中におけるプロテアーゼの活性をいかに阻害するかが重要となる。
プロテアーゼの活性は一般的に温度に依存するため、生体から採取された膵液や十二指腸液を、S100Pの検査に供するまで凍結保存しておくことにより、保存期間中のS100Pの分解・変性をある程度抑制可能と考えられる。しかし、S100Pの検査を臨床検査として実施する場合、全ての医療機関や検査機関において検体の保存設備が充分に整っているとは言い難いことを考慮すれば、生体から採取された膵液や十二指腸液は、検査に供されるまで、なるべく室温で保存可能なことが望ましい。そこで、膵液や十二指腸液を室温で保存した場合にも、これらの検体中に含まれているS100Pを安定して保存できるように、室温の溶液状態においても、膵液や十二指腸液由来のプロテアーゼの活性を充分に阻害する必要がある。
生体成分を含有する溶液を室温で保存する方法としては、例えば、臨床検査の分野において酵素免疫測定法、放射線免疫測定法等の免疫測定を行う際に、測定対象である抗原を含む試料を、溶液の状態で、当該試料中の抗原の失活を防止し安定的に保存する方法として、当該試料にカゼイン又はホエイタンパクを加える方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、体液を安定的に室温で保存するための方法として、多孔質材にプロテアーゼ阻害剤を保持させた検査具に、目的の体液を浸漬させた後、乾燥させる方法もある(例えば、特許文献2参照)。
特開平8−5634号公報 特開2003−270237号公報
オオウチダ(Ohuchida)、他9名、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clinical Cancer Research)、2006年、第12巻、第18号、第5411〜5416ページ。 ナカタ(Nakata)、他9名、ヒューマン・パソロジー(Human Pathology)、2010年、第41巻、第824〜831ページ。
特許文献1に記載の方法は、免疫測定に用いられる標準溶液等のように、プロテアーゼ等の夾雑物が非常に少ない試料に対しては有効であるものの、膵液や十二指腸液のように元々多量のプロテアーゼを含有する試料に対しては、あまり効果が期待できない。
また、特許文献2に記載の方法は、乾燥状態で検体を保存するため、検査対象がペプチド等の比較的乾燥処理による変性が生じ難い物質にはある程度有効であるが、S100Pをはじめとするタンパク質は、乾燥処理によって立体構造に影響を受け、変性するおそれがある。さらに、特許文献2には、多孔質材に保持することが可能なプロテアーゼ阻害剤が多く記載されているものの、膵液や十二指腸液中のS100Pの分解を抑制するために最適化されたプロテアーゼ阻害剤の組合せは開示されていない。このため、仮に乾燥処理を省略した態様で特許文献2に記載の方法を適用して膵液等を保存したとしても、充分なS100Pの室温保存効果が得られるわけではない。
本発明は、膵液や十二指腸液等の膵液成分を含む生体試料中のタンパク質のうち、特にS100Pを、室温で安定して保存することが可能な膵液成分含有試料を調製する方法、及び当該方法に好適な膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と、特定の種類のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤とを組み合わせて添加することにより、試料を室温で保存した場合であっても、当該生体試料中に含まれているS100Pを安定して保存可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の膵液成分含有試料の調製方法及び膵液成分含有試料の室温保存用キットは、下記(1)〜(10)の構成をとる。
(1) 膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類、及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類を添加して膵液成分含有試料を調製する工程、を有する膵液成分含有試料の調製方法。
(2)前記膵液成分含有試料を調製する工程後、当該膵液成分含有試料を室温で保存する工程を更に有する、前記(1)に記載の膵液成分含有試料の調製方法。
(3) 前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤が、PMSF、AEBSF、p−APMSF、4−(フルオロスルホニル)安息香酸、3−(フルオロスルホニル)安息香酸、2−アミノベンゼンスルホニルフルオリド、3−アミノベンゼンスルホニルフルオリド、4−アミノベンゼンスルホニルフルオリド、2−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド、3−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド、及び4−ニトロベンゼンスルホニルフルオリドからなる群より選択される、前記(1)の膵液成分含有試料の調製方法。
(4) 前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤として、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFからなる群より選択される2種以上の化合物を用いる、前記(1)又は(2)の膵液成分含有試料の調製方法。
(5) 前記トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤が、TLCKである、前記(1)〜(3)のいずれかの膵液成分含有試料の調製方法。
(6) 前記膵液成分含有試料の調製工程において、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤として、PMSF、AEBSF、又はp−APMSFをそれぞれ最終濃度1mM以上、4mM以上、2mM以上添加し、トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤として、TLCKを最終濃度0.1mM以上添加する、前記(1)の膵液成分含有試料の調製方法。
(7) 前記生体試料が、膵液又は十二指腸液である、前記(1)〜(5)のいずれか一の膵液成分含有試料の調製方法。
(8) フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類;アミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類;を含む、膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キット。
(9) 前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤が、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFからなる群より選択される1種以上の化合物である、前記(8)の室温保存用キット。
(10) 前記トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤が、TLCKである、前記(8)又は(9)の室温保存用キット。
(11) 採取された体液を貯留するための貯留部を備える保存用容器を更に含み、前記貯留部に、前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤及び前記トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤が予め充填されている、前記(8)〜(10)のいずれか一の室温保存用キット。
本発明の膵液成分含有試料の調製方法により、膵液成分を含有する生体試料を、当該生体試料中に含まれるS100Pの分解・変性を充分に抑制しつつ、室温で安定的に保存することが可能な保存用試料を調製することができる。すなわち、非常に分解されやすい膵液中のタンパク質をより安定的に保存することにより、質の高い試料を提供することが可能となり、ひいては膵癌の研究の加速に寄与することが期待できる。特に、室温で保存可能な試料を調製できるため、本発明の膵液成分含有試料の調製方法は、臨床検査へ広く応用されることも期待される。
また、本発明の膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キットを用いることにより、生体から採取された膵液や十二指腸液から、室温保存可能なS100P検査用の生体試料を、より簡便に調製することができる。
PMSF、AEBSF、及びp−APMSFの化学式を示した図である。 参考例1において、各パンクレアチン溶液のプロテアーゼ活性(相対値:%)の結果を示した図である。 参考例2において、各試料溶液中のS100P量の測定結果を示した図である。 実施例1において、各試料溶液中のS100P量の測定結果を示した図である。 参考例3において、各試料溶液中のS100P量の測定結果を示した図である。
膵液とは、膵管から排出される体液である。本発明及び本願明細書において、膵液成分を含有する生体試料とは、膵液由来の成分が含まれている体液を含む試料を意味する。膵液由来成分が含まれている体液としては、膵臓から直接カテーテルから採取された膵液、十二指腸で採取した液(十二指腸液)等が挙げられる。十二指腸液には、膵液に加えて、同じく乳頭部より排出された胆汁や元々十二指腸に存在している液、血液等も含まれている。なお、膵液や十二指腸液は、常法により採取することができる。
<膵液成分含有試料の調製方法>
本発明の膵液成分含有試料の調製方法(以下、「本発明の調製方法」ということがある)は、膵液成分を含有する生体試料を、室温であっても、当該生体試料に含まれている成分のうち、特にS100Pの分解・変性を抑制して安定的に保存し得るように調製する方法である。すなわち、本発明の調製方法は、膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類、及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類を添加して膵液成分含有試料を調製する工程を有するものであり、必要に応じて、S100Pの検出に供されるまで当該試料を室温で保存する工程を更に有することを特徴とする。
膵液や十二指腸液等の膵液成分を含有する生体試料中には、検査対象であるタンパク質(本発明の調製方法においては、S100P)の他に、多量のプロテアーゼが含まれているため、当該生体試料を室温で保存した場合には、プロテアーゼの影響により、目的のタンパク質が分解・変性してしまう。このため、室温保存後の生体試料について検査を行った場合には、生体から採取直後には当該タンパク質が含まれていた生体試料であっても、検査では当該タンパク質が検出されず、検査精度が低下するという問題がある。これに対して、本発明の調製方法により膵液成分を含有する生体試料を調製することによって、室温の溶液状態であっても、当該生体試料由来のプロテアーゼの活性を効果的に抑制でき、S100Pの安定性を飛躍的に向上させることができる。すなわち、本発明の調製方法により得られた膵液成分含有試料は、室温保存後であっても従来になく高品質であり、高い精度が要求されるS100P検査(S100Pを検出するための検査)に好適である。
具体的には、本発明の調製方法においては、膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類、及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤(以下、「特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤」ということがある。)を少なくとも1種類を添加して膵液成分含有試料を調製する。フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤、及びトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を併用することにより、室温の溶液中にもかかわらず、S100Pの分解・変性を効果的に抑制することができる。
後記参考例1に示すように、TLCK(N−a−トシル-L-リジンクロロメチルケトン)等の、トリプシン様セリンプロテアーゼに対する阻害活性を有するアミノ酸クロロメチルケトン類による、膵液や十二指腸液中のプロテアーゼの活性抑制の効果は、フォイパンやFOYと同程度でしかなく、ロイペプチン等の他の汎用されているプロテアーゼ阻害剤よりもはるかに低い。にもかかわらず、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と、TLCK等のアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤とを併用することによって、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤とロイペプチン等の他のプロテアーゼ阻害剤とを併用した場合には観察されないような、非常に優れたS100Pの室温安定性向上効果が得られた。室温におけるS100Pの安定性向上に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤とアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤との併用が特に効果的であるというこの驚くべき知見は、本発明者らによって初めて見出された。
本発明の調製方法において用いられるフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤は、フッ化スルホニル基を有し、かつプロテアーゼ阻害活性を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、ベンゼン環に直接又は炭素数1〜6の炭化水素基を介してフッ化スルホニル基が結合する構造を有する化合物であることが好ましく、PMSF(フェニルメチルスルフォニルフルオライド)、AEBSF(4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルフォニルフルオライド))、p−APMSF(p−アミジノフェニルメタンスルフォニルフオライド塩酸塩)、4−(フルオロスルホニル)安息香酸(CAS番号:455−26−5)、3−(フルオロスルホニル)安息香酸(CAS番号:454−95−5)、2−アミノベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:392−86−9)、3−アミノベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:368−50−3)、4−アミノベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:98−62−4)、2−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:433−98−7)、3−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:349−78−0)、又は4−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:349−96−2)であることが好ましく、PMSF、AEBSF、又はp−APMSFであることがより好ましい。図1に、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFの化学式を示す。図1中、点線で囲われた官能基が、フッ化スルホニル基である。
本発明の調製方法において用いられるフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤は、1種類であってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。特に、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFからなる群より選択される1の化合物を少なくとも用いることが好ましく、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFからなる群より選択される2以上の化合物を組み合わせて用いることがより好ましく、3種類全てを用いてもよい。膵液には活性の異なる様々なプロテアーゼが含まれているため、複数のプロテアーゼ阻害剤を混合して用いることにより、より確実に生体試料中のプロテアーゼ活性を抑えることが期待できる。さらに単独で使用する場合よりも、低い濃度で組み合わせることによってプロテアーゼ活性を抑えることが期待できる。
膵液成分を含有する生体試料に添加されるフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤の量は、当該プロテアーゼ阻害剤によるプロテアーゼ阻害効果及びS100Pの室温安定性向上効果が発揮される量であれば特に限定されるものではなく、膵液成分を含有する生体試料の種類、用いるプロテアーゼ阻害剤の種類等を考慮して、適宜調整することができる。例えば、膵液成分を含有する生体試料にフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてPMSFのみを添加する場合、最終濃度が1mM以上、好ましくは5mM以上、より好ましくは10mM以上となるように添加することができる。また、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてAEBSFのみを用いる場合、最終濃度が4mM以上、好ましくは10mM以上、より好ましくは20mM以上となるように、膵液成分を含有する生体試料にAEBSFを添加することができる。フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてp−APMSFのみを用いる場合、最終濃度が2mM以上、好ましくは5mM以上、より好ましくは10mM以上となるように、膵液成分を含有する生体試料にAEBSFを添加することができる。
本発明の調製方法において用いられるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤は、アミノ酸クロロメチルケトン類であり、かつトリプシンに代表されるトリプシン様セリンプロテアーゼに対する阻害活性を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。本発明においては、特に、TLCKを用いることが好ましい。
膵液成分を含有する生体試料に添加される特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤の量は、当該プロテアーゼ阻害剤によるプロテアーゼ阻害効果及びS100Pの室温安定性向上効果が発揮される量であれば特に限定されるものではなく、膵液成分を含有する生体試料の種類、用いるプロテアーゼ阻害剤の種類等を考慮して、適宜調整することができる。例えば、膵液成分を含有する生体試料に特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤としてTLCKのみを添加する場合、最終濃度が0.1mM以上、好ましくは1mM以上、より好ましくは5mM以上、さらに好ましくは10mM以上となるように添加することができる。
本発明の調製方法においては、膵液成分を含有する生体試料に添加されるフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と前記特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤は、粉末状、顆粒状等の固形状であってもよく、適当なバッファー等に溶解させたプロテアーゼ阻害剤溶液であってもよい。また、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と前記特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤は、膵液成分を含有する生体試料に同時に添加してもよく、どちらか一方を先に添加した後、他方を添加してもよい。本発明のS100Pの室温安定性向上効果を充分に発揮させる点からは、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と前記特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤は同時に添加されることが好ましい。
本発明の調製方法においては、膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と前記特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤のみを添加してもよく、その他のプロテアーゼ阻害剤をさらに添加してもよい。その他のプロテアーゼ阻害剤としては、本発明のS100Pの室温安定性向上効果を損なわないものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパイン、キモスタチン、エラスタチナール、抗トロンビン等のペプチド系プロテアーゼ阻害剤、EDTA等のキレート剤、Elastase Inhibitor、トリプシンインヒビター、Ecotin(E.coli)等が挙げられる。また、メシル酸ガベキサート(FOY)、メシル酸カモスタット(フォイパン)、メシル酸ナファモスタット(Futhan)、ウリナスタチン等の膵炎治療薬を用いることもできる。
本発明の調製方法に供される膵液成分を含有する生体試料は、膵液由来の成分が含まれている体液を含む試料であればよく、膵液由来成分が含まれている体液のみからなるものであってもよく、当該体液を適当なバッファー等で希釈した液であってもよく、当該体液又はその希釈液に、各種添加剤を添加したものであってもよい。添加剤としては、界面活性剤、核酸分解酵素阻害剤、pH調整剤、pH指示薬等が挙げられる。本発明の調製方法に供される膵液成分を含有する生体試料としては、膵液又は十二指腸液を含む試料であることが好ましい。具体的には、膵液、十二指腸液、膵液又は十二指腸液の希釈液、若しくはこれらに前述の各種添加剤を添加した液等が挙げられる。
本発明の調製方法においては、生体から採取された後に保存等された膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を添加してもよいが、生体から膵液成分を含有する体液を採取した時点からこれらのプロテアーゼ阻害剤を添加する時点までの間隔は、短いほうが好ましく、生体から採取直後の膵液又は十二指腸液にこれらのプロテアーゼ阻害剤を添加することが特に好ましい。膵液を含む生体試料は、含有されるプロテアーゼの働きが非常に強く、採取直後からタンパク質の分解が進むことがあるため、採取した生体試料と前記プロテアーゼ阻害剤が混合するまでのタイムラグをより短くすることが好ましいためである。例えば、膵液又は十二指腸液を生体から採取するための採取具に設けられた貯留部(採取された体液を貯留するための容器様部材)内に、予めフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を充填させておくことにより、生体から採取された膵液又は十二指腸液が回収容器内で直ちにプロテアーゼ阻害剤と混合される。また、採取具が貯留部を有さず、採取具に貯留部となる保存用容器を接続する場合には、当該保存用容器内に予めフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を充填させておく。
本発明の調製方法においては、膵液由来の成分のうち、特にS100Pの分解・変性を抑制するために最適なプロテアーゼ阻害剤の組み合わせを用いているため、当該方法により調製された膵液成分含有試料に含まれるS100Pは、室温であったとしても、従来になくより安定して保存される。よって、本発明の調製方法により調製された膵液成分含有試料に対してS100P検査を行うことにより、当該膵液成分含有試料がS100P検査に供されるまで室温で保存した場合でも、充分な検査精度を得ることができる。なお、本発明の調製方法により調製された膵液成分含有試料は、室温保存されることによりその効果を充分に発揮することができるが、凍結保存や冷蔵保存等がなされてもよい。
本発明の調製方法により調製された膵液成分含有試料に対して行われるS100P検査は、S100Pの検出又は定量を目的としてなされる検査であれば特に限定されるものではない。例えば、ELISA、イムノクロマト、二次元電気泳動、ウエスタンブロット、質量分析法などを用いた種々のタンパク質解析や、PCR、RT−PCR、プローブを用いたハイブリダイゼーションなどを用いた種々の核酸解析、細胞数カウントや細胞診のような細胞解析等によって、S100Pを検出することができる。
なお、本発明の調製方法は、S100P以外の膵液由来成分についても、室温安定性を向上させていることが期待される。このため、本発明の調製方法により調製された膵液成分含有試料は、膵液含有成分試料中の、S100P以外の成分についての、各種検査のための測定試料としても用いることができる。検査対象となる物質は、膵液又は十二指腸液に含まれていることが期待される生体成分であれば特に限定されるものではなく、タンパク質であってもよく、DNAやRNA等の核酸であってもよく、細胞であってもよい。例えば、当該膵液成分含有試料は、ELISA、イムノクロマト、二次元電気泳動、ウエスタンブロット、質量分析法などを用いた種々のタンパク質解析や、PCR、RT−PCR、プローブを用いたハイブリダイゼーションなどを用いた種々の核酸解析、細胞数カウントや細胞診のような細胞解析等に用いることができる。
<膵液成分を含有する生体試料の保存用キット>
本発明の膵液成分を含有する生体試料の保存用キット(以下、「本発明の保存用キット」ということがある)は、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類、及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類を有することを特徴とする。当該保存用キットに備えられているフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と特定のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤とを、膵液成分を含有する生体試料に添加することにより、S100Pの検出に供されるまでの間、室温で保存可能な膵液成分含有試料をより簡便に調製することができる。
本発明の保存用キットに含まれるフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせていてもよい。本発明においては、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFからなる群より選択される1種以上の化合物を用いることが好ましく、これらの化合物群より選択される2種以上の化合物を用いることがより好ましい。同様に、本発明の保存用キットに含まれるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせていてもよい。本発明においてはトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤として、TLCKを用いることが好ましい。
また、本発明の保存用キットに含まれる各種プロテアーゼ阻害剤は、凍結乾燥粉末であってもよく、凍結乾燥粉末を適当な賦形剤等とともに成型された錠剤又は顆粒剤等であってもよく、適当なバッファーに溶解させたプロテアーゼ阻害剤溶液であってもよい。
本発明の保存用キットは、さらに、採取された体液を希釈するためのバッファー、その他のプロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、pH調整剤、pH指示薬等を含んでいてもよい。界面活性剤、pH調整剤、pH指示薬等の各種添加剤は、予め希釈用のバッファーに溶解させていてもよい。その他、本発明の保存用キットは、調製された膵液成分含有試料(膵液成分を含有する生体試料に、本発明の保存用キットが含む各種プロテアーゼ阻害剤を添加し、必要に応じてその他の成分を添加したもの)を、当該膵液成分含有試料が充填されている容器から一定量を滴下することを可能とする、当該容器の開口部に結合可能なキャップを含んでいてもよい。
本発明の保存用キットは、生体から採取された膵液又は十二指腸液等の体液を貯留するための貯留部を備える保存用容器を含んでいてもよい。この場合、本発明のプロテアーゼ阻害剤は、当該貯留部に予め含まれていることが好ましい。当該保存用容器に目盛りが刻まれていた場合には、当該保存用容器に添加された生体試料の量(当該保存容器内に予めプロテアーゼ阻害剤が充填されていた場合には、生体試料とプロテアーゼ阻害剤の合計量)が視覚的に確認することができ、ひいてはプロテアーゼ阻害剤の終濃度を一目で理解することができる。
また、膵液成分を含む生体試料は、経内視鏡的に採取することが一般的である。そこで、本発明の保存用キットの構成品として、膵液成分を含む生体試料を経内視鏡的に採取する採取具を含めてもよい。当該採取具としては、例えば、内視鏡装置に挿入可能なカテーテルにシリンジを組合せたものや、内視鏡装置に挿入可能な吸収体を先端に備えたプローブ等がある。内視鏡装置に挿入可能なカテーテルとしては、例えば、特開2011−5009号公報に記載されている標本採取キューブ等が挙げられる。これらの採取具としては、前記プロテアーゼ阻害剤を予め分注した貯留部を有していることが好ましい。また、当該貯留部が取り外し可能な場合には、保存容器としても使用することができる。
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[参考例1]
膵液中の消化酵素の中で、その分解カスケードのトリガーとなっている酵素はセリンプロテアーゼであることが知られている。そこでまず、膵液中に含まれているプロテアーゼに対して阻害効果の高いセリンプロテアーゼ阻害剤のスクリーニングを行った。
具体的には、市販されているプロテアーゼ阻害剤の中から、セリンプロテアーゼをターゲットとし、膵液に対して阻害効果の高い阻害剤を探索した。用いたプロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン(Roche社製)、ロイペプチン(Roche社製)、PMSF(Roche社製)、AEBSF(Roche社製)、p−APMSF(SIGMA社製)、メシル酸カモスタット(フォイパン;和光純薬社製)、メシル酸ガベキサート(FOY;和光純薬社製)、TLCK(SIGMA社製)、TPCK(SIGMA社製)である。なお、TPCKは、キモトリプシンに対する阻害活性を有するが、トリプシンに対する阻害活性を示さないアミノ酸クロロメチルケトン類である。
膵酵素が活性化した状態で存在するブタの膵臓から製した消化酵素剤である“パンクレアチン”を擬似人工膵液として用い、各プロテアーゼ阻害剤を、最終濃度が製造元による推奨濃度範囲になるよう添加した後、プロテアーゼ活性を測定した。プロテアーゼ活性はEnzCheck Protease Assay Kits(Molecular Probes社製)を用いて測定した。具体的には、各プロテアーゼ阻害剤が添加されたパンクレアチン溶液に、キット添付の蛍光標識されたカゼインを添加し、37℃で2時間インキュベーションした後、Ex/Em=485/535nmの蛍光波長で蛍光量を測定した。また、対照として、パンクレアチンに直接蛍光標識されたカゼインを添加した試料溶液(阻害剤なし)についても、同様にプロテアーゼ活性を測定した。
各パンクレアチン溶液の蛍光量の測定結果を図2に示す。縦軸の蛍光量はカゼインを分解した量を表し、その値をプロテアーゼ活性の値として概算した。横軸は、各パンクレアチン溶液に添加したプロテアーゼ阻害剤及びその最終濃度を示す。この結果、PMSF、AEBS、及びp−APMSFが、その他のプロテアーゼ阻害剤比べて非常に阻害効果が高いことが明らかとなった。これらはいずれもフッ化スルホニル基を有するスルホン系化合物であった。
[参考例2]
参考例1によって膵液中の消化酵素に対する阻害効果が高いことが明らかとなったスルホン系化合物に着目し、膵癌のマーカータンパク質として知られるS100P(カルシウム結合タンパク質)の膵液中における室温安定性に対する、各種スルホン系化合物の効果を調べた。すなわち、4種類のヒト臨床検体の膵液を用い、S100Pの標品タンパク質を添加した後、室温保存前後でS100P濃度が変化するかどうかを調べた。
具体的には、まず、25ng/mLのS100P(標品)溶液を各ヒト臨床検体に混合した試料溶液(試料溶液1:阻害剤なし)と、試料溶液1にAEBSF(最終濃度:4mM)を添加した試料溶液(試料溶液2:AEBSF)、試料溶液1にAEBSF(最終濃度:4mM)とPMSF(最終濃度:1mM)を添加した試料溶液(試料溶液3:AEBSF+PMSF)を調製した。各試料溶液は、CircuLex S100P ELISA Kit(Cyclex社製、カタログ番号:CY−8060)に付属のバッファーを用いて調製した。これらの試料溶液を25℃、16時間インキュベートすることにより反応させた(室温保存)。その後、各試料溶液をCircuLex S100P ELISA Kit(Cyclex社製、カタログ番号:CY−8060)に付属のバッファーを用いて10倍希釈した希釈液に対して、CircuLex S100P ELISA Kitを用い、S100Pの検出を行った。対照として、調製直後(すなわち、室温保存前)の試料溶液1についても、同様にして、S100Pの検出を行った。
測定結果を図3に示す。縦軸はS100P濃度を示し、横軸は試料溶液1の室温保存前(図中、「室温保存前」)、並びに試料溶液1〜3の室温保存後(図中、「阻害剤なし」、「AEBSF」、「AEBSF+PMSF」)を示す。室温保存により、プロテアーゼ阻害剤を添加しなかった試料溶液1では、いずれの膵液検体もS100Pがほとんど分解されていた。これに対し、プロテアーゼ阻害剤を添加した試料溶液2及び3では、いずれの膵液検体でもS100Pが検出され、特にAEBSFとPMSFの両方を添加した試料溶液3では、S100P濃度が高く維持されていた。これらの結果から、フッ化スルホニル基を有するスルホン系化合物を少なくとも1種以上、好ましくは2種以上混合することにより、膵液中のS100Pが室温でもより安定することが明らかとなった。
[実施例1]
人工的に添加された標品ではなく、ヒト膵液検体に元々含まれているS100Pを検出するためには、フッ化スルホニル基を有するスルホン系化合物のみでは不充分である。そのため、S100Pのさらなる保存性能の向上を目指し、フッ化スルホニル基を有するスルホン系化合物とその他スルホン系化合物であるTLCKの併用の有無により、S100Pの保存安定性が影響を受けるかを調べた。7種類のヒト臨床検体を用いた。
具体的には、各ヒト臨床検体にAEBSF(最終濃度:4mM)を添加した試料溶液(試料溶液1:AEBSF)、各ヒト臨床検体にAEBSF(最終濃度:4mM)とPMSF(最終濃度:1mM)を添加した試料溶液(試料溶液2:AEBSF+PMSF)、各ヒト臨床検体にAEBSF(最終濃度:4mM)とPMSF(最終濃度:1mM)とアプロチニン(最終濃度:3μM)を添加した試料溶液(試料溶液3:AEBSF+PMSF+Aprotinin)、各ヒト臨床検体にAEBSF(最終濃度:4mM)とPMSF(最終濃度:1mM)とTPCK(最終濃度:1mM)を添加した試料溶液(試料溶液4:AEBSF+PMSF+TPCK)、各ヒト臨床検体にAEBSF(最終濃度:4mM)とPMSF(最終濃度:1mM)とTLCK(最終濃度:1mM)を添加した試料溶液(試料溶液5:AEBSF+PMSF+TLCK)を調製した。各試料溶液は、CircuLex S100P ELISA Kit(Cyclex社製、カタログ番号:CY−8060)に付属のバッファーを用いて調製した。これらの試料溶液を25℃、16時間インキュベートすることにより反応させた後(室温保存後)、参考例2と同様にしてS100Pの検出を行った。
また、対照として、室温保存に代えて凍結保存を行った以外は、上記と同様にして同じヒト臨床検体から試料溶液1〜5を調製し、これらの試料溶液について参考例2と同様にしてS100Pの検出を行った。
測定結果を図4に示す。縦軸はS100P濃度を示し、横軸は、ヒト膵液検体1〜7についての試料溶液1〜5(図中、「AEBSF」、「AEBSF+PMSF」、「AEBSF+PMSF+Aprotinin」、「AEBSF+PMSF+TPCK」、「AEBSF+PMSF+TLCK」)を示す。また、図中、「FT」は、凍結保存後かつ室温保存無しの場合の結果を、「25℃、16h」は、25℃、16時間インキュベート後(室温保存後)の場合の結果を、それぞれ示す。この結果、凍結保存した試料溶液は、添加したプロテアーゼ阻害剤の種類にかかわらず、全てのヒト膵液検体において、量の多寡はあるもののS100Pが検出された。これに対して、AEBSFのみを添加した試料溶液1や、AEBSFとPMSFを添加した試料溶液2では、全てのヒト膵液検体においてS100Pが検出されたものの、凍結保存した場合と比べるとその量は非常に少なく、室温保存中に大部分のS100Pが分解・変性されたことがわかった。これに対して、AEBSFとPMSFとTLCKを添加した試料溶液5では、全てのヒト膵液検体において、凍結保存した場合の約70%以上のS100P濃度の残存率を示した。一方、AEBSFとPMSFにアプロチニンを添加した試料溶液3やAEBSFとPMSFにTPCKを添加した試料溶液4では、AEBSFとPMSFとTLCKを添加した試料溶液5のような高い残存率は見られなかった。これらの結果から、少なくとも1種類以上のフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と、TLCK等のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害活性を有するアミノ酸クロロメチルケトン類を併用することにより、膵液中のS100Pを室温でも非常に安定して保存可能であることがわかった。
[参考例3]
擬似人工膵液中におけるS100Pの保存安定性とヒト臨床検体中におけるS100Pの保存安定性とに対するプロテアーゼ阻害剤の効果を比較した。S100P含有擬似人工膵液としては、パンクレアチン溶液にS100P(標品)を25ng/mLとなるように添加した溶液を用いた。
具体的には、まず、25ng/mLのS100P(標品)溶液を、実施例1で用いたヒト臨床検体2種(ヒト膵液検体1及び2)と擬似人工膵液のそれぞれに混合した試料溶液(試料溶液1:阻害剤なし)と、試料溶液1にAEBSF(最終濃度:4mM)を添加した試料溶液(試料溶液2:AEBSF)、試料溶液1にAEBSF(最終濃度:4mM)とPMSF(最終濃度:1mM)を添加した試料溶液(試料溶液3:AEBSF+PMSF)、試料溶液1にAEBSF(最終濃度:4mM)とPMSF(最終濃度:1mM)とTLCK(最終濃度:1mM)を添加した試料溶液(試料溶液4:AEBSF+PMSF+TLCK)を調製した。各試料溶液は、CircuLex S100P ELISA
Kit(Cyclex社製、カタログ番号:CY−8060)に付属のバッファーを用いて調製した。これらの試料溶液を25℃、16時間インキュベートすることにより反応させた後(室温保存後)、参考例2と同様にしてS100Pの検出を行った。
また、対照として、前記と同様にして調製した試料溶液1について、室温保存に代えて凍結保存を行った後、直ちに参考例2と同様にしてS100Pの検出を行った。
測定結果を図5に示す。縦軸はS100P濃度を示し、横軸は、ヒト膵液検体1、2、及びS100P含有擬似人工膵液についての試料溶液1〜4(図中、「阻害剤なし」、「AEBSF」、「AEBSF+PMSF」、「AEBSF+PMSF+TLCK」)を示す。また、図中、「FT」は、凍結保存後かつ室温保存無しの場合の結果を、「25℃、16h」は、25℃、16時間インキュベート後(室温保存後)の場合の結果を、それぞれ示す。この結果、凍結保存した試料溶液では、ヒト膵液検体とパンクレアチン溶液のいずれについても、添加したS100Pが検出された。一方で、室温保存後の試料溶液については、プロテアーゼ阻害剤の添加の有無や種類にかかわらず、パンクレアチン溶液ではS100Pは全く検出されなかった。また、ヒト膵液検体1及び2については、AEBSF又はAEBSFとPMSFを添加した試料溶液2及び3では、プロテアーゼ阻害剤を添加しなかった試料溶液1よりもS100Pの検出量は多く、添加したプロテアーゼ阻害剤により、S100Pの室温保存安定性に改善がみられた。これに対して、ヒト膵液検体1及び2の両方において、実施例1の結果とは異なり、AEBSFとPMSFとTLCKを添加した試料溶液3では、TLCKを添加していない試料溶液2又は3に比べてS100Pの検出量は明らかに少なかった。これらの結果から、理由は不明であるが、AEBSF等のフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と、TLCK等のアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤とを併用することによるS100Pの室温保存安定性効果は、生体から採取された膵液や十二指腸液等の生体試料中に元々含まれていたS100P(エンドジニアスなS100P)に対しては発揮されるものの、後から添加したS100P(エキソジニアスなS100P)に対しては、当該効果が得られないことがわかった。
本発明の調製方法及び本発明の室温保存用キットは、膵液や十二指腸液等の生体試料中のタンパク質のうち、特にS100Pを室温で安定して保存することが可能であるため、膵液中のS100Pを解析する分野、特に膵癌の診断・治療のための臨床検査等の分野において利用が可能である。
すなわち、本発明の膵液成分含有試料の調製方法及び膵液成分含有試料の保存用キットは、下記(1)〜()の構成をとる。
(1) 膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてPMSF及びAEBSF、並びにアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤としてTLCKを添加して膵液成分含有試料を調製する工程、を有する膵液成分含有試料の調製方法。
(2)前記膵液成分含有試料を調製する工程後、当該膵液成分含有試料を室温で保存する工程を更に有する、前記(1)の膵液成分含有試料の調製方法。
) 前記膵液成分含有試料の調製工程において、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤として、PMSFを最終濃度1mM以上、AEBSFを最終濃度4mM以上添加し、トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤として、TLCKを最終濃度0.1mM以上添加する、前記(1)又は(2)の膵液成分含有試料の調製方法。
) 前記生体試料が、膵液又は十二指腸液である、前記(1)〜()のいずれか一の膵液成分含有試料の調製方法。
) フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてPMSF及びAEBSF;アミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤としてTLCK;を含む、膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キット。
) 採取された体液を貯留するための貯留部を備える保存用容器を更に含み、前記貯留部に、前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤及び前記トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤が予め充填されている、前記()の保存用キット。
本発明の調製方法において用いられるフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤は、フッ化スルホニル基を有し、かつプロテアーゼ阻害活性を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、ベンゼン環に直接又は炭素数1〜6の炭化水素基を介してフッ化スルホニル基が結合する構造を有する化合物であることが好ましく、PMSF(フェニルメチルスルフォニルフルオライド)、AEBSF(4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルフォニルフルオライド))、p−APMSF(p−アミジノフェニルメタンスルフォニルフオライド塩酸塩)、4−(フルオロスルホニル)安息香酸(CAS番号:455−26−5)、3−(フルオロスルホニル)安息香酸(CAS番号:454−95−5)、2−アミノベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:392−86−9)、3−アミノベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:368−50−3)、4−アミノベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:98−62−4)、2−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:433−98−7)、3−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:349−78−0)、又は4−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド(CAS番号:349−96−2)であることが好ましく、PMSF、AEBSF、又はp−APMSFであることがより好ましい。図1に、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFの化学式を示す。図1中、点線で囲われた官能基が、フッ化スルホニル基である。
膵液成分を含有する生体試料に添加されるフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤の量は、当該プロテアーゼ阻害剤によるプロテアーゼ阻害効果及びS100Pの室温安定性向上効果が発揮される量であれば特に限定されるものではなく、膵液成分を含有する生体試料の種類、用いるプロテアーゼ阻害剤の種類等を考慮して、適宜調整することができる。例えば、膵液成分を含有する生体試料にフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてPMSFのみを添加する場合、最終濃度が1mM以上、好ましくは5mM以上、より好ましくは10mM以上となるように添加することができる。また、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてAEBSFのみを用いる場合、最終濃度が4mM以上、好ましくは10mM以上、より好ましくは20mM以上となるように、膵液成分を含有する生体試料にAEBSFを添加することができる。フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤としてp−APMSFのみを用いる場合、最終濃度が2mM以上、好ましくは5mM以上、より好ましくは10mM以上となるように、膵液成分を含有する生体試料にp−APMSFを添加することができる。
各パンクレアチン溶液の蛍光量の測定結果を図2に示す。縦軸の蛍光量はカゼインを分解した量を表し、その値をプロテアーゼ活性の値として概算した。横軸は、各パンクレアチン溶液に添加したプロテアーゼ阻害剤及びその最終濃度を示す。この結果、PMSF、AEBS、及びp−APMSFが、その他のプロテアーゼ阻害剤比べて非常に阻害効果が高いことが明らかとなった。これらはいずれもフッ化スルホニル基を有するスルホン系化合物であった。
測定結果を図5に示す。縦軸はS100P濃度を示し、横軸は、ヒト膵液検体1、2、及びS100P含有擬似人工膵液についての試料溶液1〜4(図中、「阻害剤なし」、「AEBSF」、「AEBSF+PMSF」、「AEBSF+PMSF+TLCK」)を示す。また、図中、「FT」は、凍結保存後かつ室温保存無しの場合の結果を、「25℃、16h」は、25℃、16時間インキュベート後(室温保存後)の場合の結果を、それぞれ示す。この結果、凍結保存した試料溶液では、ヒト膵液検体とパンクレアチン溶液のいずれについても、添加したS100Pが検出された。一方で、室温保存後の試料溶液については、プロテアーゼ阻害剤の添加の有無や種類にかかわらず、パンクレアチン溶液ではS100Pは全く検出されなかった。また、ヒト膵液検体1及び2については、AEBSF又はAEBSFとPMSFを添加した試料溶液2及び3では、プロテアーゼ阻害剤を添加しなかった試料溶液1よりもS100Pの検出量は多く、添加したプロテアーゼ阻害剤により、S100Pの室温保存安定性に改善がみられた。これに対して、ヒト膵液検体1及び2の両方において、実施例1の結果とは異なり、AEBSFとPMSFとTLCKを添加した試料溶液では、TLCKを添加していない試料溶液2又は3に比べてS100Pの検出量は明らかに少なかった。これらの結果から、理由は不明であるが、AEBSF等のフッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤と、TLCK等のアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤とを併用することによるS100Pの室温保存安定性効果は、生体から採取された膵液や十二指腸液等の生体試料中に元々含まれていたS100P(エンドジニアスなS100P)に対しては発揮されるものの、後から添加したS100P(エキソジニアスなS100P)に対しては、当該効果が得られないことがわかった。

Claims (11)

  1. 膵液成分を含有する生体試料に、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類、及びアミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類を添加して膵液成分含有試料を調製する工程;
    を有する、膵液成分含有試料の調製方法。
  2. 前記膵液成分含有試料を調製する工程後、当該膵液成分含有試料を室温で保存する工程を更に有する、請求項1に記載の膵液成分含有試料の調製方法。
  3. 前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤が、PMSF、AEBSF、p−APMSF、4−(フルオロスルホニル)安息香酸、3−(フルオロスルホニル)安息香酸、2−アミノベンゼンスルホニルフルオリド、3−アミノベンゼンスルホニルフルオリド、4−アミノベンゼンスルホニルフルオリド、2−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド、3−ニトロベンゼンスルホニルフルオリド、及び4−ニトロベンゼンスルホニルフルオリドからなる群より選択される、請求項1に記載の膵液成分含有試料の調製方法。
  4. 前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤として、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFからなる群より選択される2種以上の化合物を用いる、請求項1に記載の膵液成分含有試料の調製方法。
  5. 前記トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤が、TLCKである、請求項1に記載の膵液成分含有試料の調製方法。
  6. 前記膵液成分含有試料の調製工程において、フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤として、PMSF、AEBSF、又はp−APMSFをそれぞれ、最終濃度1mM以上、4mM以上、2mM以上添加し、トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤として、TLCKを最終濃度0.1mM以上添加する、請求項1に記載の膵液成分含有試料の調製方法。
  7. 前記生体試料が、膵液又は十二指腸液である、請求項1に記載の膵液成分含有試料の調製方法。
  8. フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類;
    アミノ酸クロロメチルケトン類であるトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤を少なくとも1種類;
    を含む、膵液成分を含有する生体試料の室温保存用キット。
  9. 前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤が、PMSF、AEBSF、及びp−APMSFからなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項8に記載の室温保存用キット。
  10. 前記トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤が、TLCKである、請求項9に記載の室温保存用キット。
  11. 採取された体液を貯留するための貯留部を備える保存用容器を更に含み、
    前記貯留部に、前記フッ化スルホニル基を有するプロテアーゼ阻害剤及び前記トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤が予め充填されている、請求項8に記載の室温保存用キット。
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