JP2010025770A - α−アミラーゼアイソザイムの識別法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鑑別疾患が可能な、α−アミラーゼアイソザイムの識別法を提供する。
【解決手段】α−アミラーゼアイソザイムを、その糖鎖構造の相違によって識別する方法を提供する。特に、膵型α−アミラーゼアイソザイムをその血液型糖鎖抗原を検出することによって同定すること、抗α−アミラーゼ抗体と抗血液型糖鎖抗原抗体を組み合わせることによってα−アミラーゼアイソザイムを識別することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】α−アミラーゼアイソザイムを、その糖鎖構造の相違によって識別する方法を提供する。特に、膵型α−アミラーゼアイソザイムをその血液型糖鎖抗原を検出することによって同定すること、抗α−アミラーゼ抗体と抗血液型糖鎖抗原抗体を組み合わせることによってα−アミラーゼアイソザイムを識別することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、膵型および唾液型α−アミラーゼアイソザイム、並びに各種良性疾患や癌で発現するα−アミラーゼアイソザイムの識別法に関する。
生体試料などの被検試料、特にヒトの唾液、膵液、血液、尿中のα−アミラーゼ活性の測定は医学上の診断に於いて重要である。例えば、膵炎、膵臓癌、耳下腺炎に於いては、血液や尿中のα−アミラーゼ活性は通常の値に比べて著しい上昇を示す。更に、例えば血中α−アミラーゼ活性を各アイソザイムに分離して測定することは高アミラーゼ血症の解析や病態の解明に重要であり、日常臨床検査にも応用されている。
ヒトα−アミラーゼアイソザイムとしては、唾液腺由来の唾液型α−アミラーゼアイソザイムと膵臓由来の膵型α−アミラーゼアイソザイムの2種類が古くから知られている。中でも、主に膵臓疾患の診断指標として膵型α−アミラーゼアイソザイム活性の測定は重要であり、現在までに種々の膵型α−アミラーゼアイソザイムの分別測定法が開発されてきた。このような痾−アミラーゼアイソザイムの分別測定法としては、例えば電気泳動法,ゲル濾過法,アフィニティークロマトグラフィーを利用する方法等のアイソザイム間のタンパク質化学的な差を利用して分離・測定する方法、例えば唾液型α−アミラーゼアイソザイムインヒビター等の阻害剤を利用する方法、例えば抗原抗体反応により唾液型α−アミラーゼアイソザイムの活性を特異的に阻害し得ることを利用した免疫学的方法(免疫阻害法)等、種々の方法が知られている。(特許文献1参照)
日本腹部救急医学会および日本膵臓学会の急性膵臓炎診療ガイドラインによれば、急性膵炎の血中アミラーゼ測定は推奨度Aであるが、特異度が低い点が問題であるとしている。また、日本膵臓学会の膵癌診療ガイドラインによれば、血中膵酵素であるアミラーゼは膵臓疾患の診断には重要であるが、膵癌に特異的ではないとしている。このように、現行の血中アミラーゼもしくは膵型アミラーゼの測定では、鑑別疾患を満足させるものではない。
特開平09−328500号公報
本発明は、鑑別疾患が可能な、α−アミラーゼアイソザイムの識別法を提供することを目的とする。
ヒト体液中には膵型(P型)と唾液腺型(S型)の2種類のアイソザイムが存在し、前者は分子量54kDで糖鎖を含まないのに対して、後者は糖鎖含量の相違により分子量約62kDのfamily Aと56kDのfamily Bとに分類されてきた。既に、耳下腺由来S型アイソザイムの糖鎖構造は発表されている(J Biol Chem,255, 5635, 1980)。また、肺癌や卵巣癌などで、シアル酸結合S型アイソザイムの存在が報告されている(Eur J Cancer Clin Oncol, 18, 123, 1982; Clinica Chimica Acta, 391, 106, 2008)。
しかし、本発明者らが開発した質量分析による超高感度糖ペプチド解析技術によって、P型酵素にも糖鎖が結合したアイソザイムが存在することを初めて見出した。さらに、S型酵素との比較解析によってその糖鎖構造の相違を解明した。
この臓器特異的な糖鎖構造の相違を利用して、より精度の高いアイソザイム識別法が提供できることを見出した。
この臓器特異的な糖鎖構造の相違を利用して、より精度の高いアイソザイム識別法が提供できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)α−アミラーゼアイソザイムをその糖鎖構造の相違によって識別するα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
(2)膵型α−アミラーゼアイソザイムをその血液型糖鎖抗原を検出することによって同定することを特徴とする、(1)のα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
(3)抗α−アミラーゼ抗体と抗血液型糖鎖抗原抗体を組み合わせることによってα−アミラーゼアイソザイムを識別することを特徴とする、(2)のα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
(1)α−アミラーゼアイソザイムをその糖鎖構造の相違によって識別するα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
(2)膵型α−アミラーゼアイソザイムをその血液型糖鎖抗原を検出することによって同定することを特徴とする、(1)のα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
(3)抗α−アミラーゼ抗体と抗血液型糖鎖抗原抗体を組み合わせることによってα−アミラーゼアイソザイムを識別することを特徴とする、(2)のα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
さらに、同一タンパク質においても、良性疾患患者由来と癌患者由来との間で、そこに結合する糖鎖構造が異なることが知られている。したがって、P型アイソザイムにおいても、糖鎖構造の相違を検出することによって、膵炎および膵癌の鑑別診断が可能になる。同様に、高アミラーゼ血症を示す、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、食道癌、多発性骨髄腫などの診断にも応用できる。
本発明のα−アミラーゼアイソザイムの識別法により、膵型と唾液型の産生臓器の識別が可能となるため、各種良性疾患と癌の鑑別診断が可能となる。
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
ヒトS型およびP型アミラーゼアイソザイムの糖ペプチド解析
市販のヒトS型およびP型アミラーゼアイソザイム(BioDesgin)50 μgを5 mM ジチオスライトール-25 mM 重炭酸アンモニウム溶液 100μLに溶解し、56度で45分反応させた。次に、55 mM ヨードアセタミド-25 mM 重炭酸アンモニウム溶液 50μLを加え、暗所で室温に30分放置した。その反応液に0.4 μg/μLトリプシン溶液を添加して37度20時間反応させた。反応液を乾固し、5%アセトニトリルー0.1%トリフルオロ酢酸500μLに溶解後、カーボングラファイト充填カートリッジであるIntersep GC 50mg(GLサイエンス)を用いて、得られた糖ペプチド画分の粗精製および脱塩を行った。最初に、カートリッジに対して、1MのNaOH水溶液、純水、30%酢酸水溶液、純水、80%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液、ならびに5%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液を順次送液し、充填されたカーボングラファイトの洗浄および平衡化を行った。次に、糖ペプチド溶液をカートリッジに送液した。糖ペプチド画分を吸着させたカートリッジに対して、純水、5%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液を順次送液し、糖ペプチド画分の粗精製および脱塩を行った。その後に、カートリッジに対して、80%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液を送液して、吸着した糖ペプチドを溶出した。この糖ペプチドを含む溶出液を回収し、遠心式濃縮機によって乾固させた。
[実施例1]
ヒトS型およびP型アミラーゼアイソザイムの糖ペプチド解析
市販のヒトS型およびP型アミラーゼアイソザイム(BioDesgin)50 μgを5 mM ジチオスライトール-25 mM 重炭酸アンモニウム溶液 100μLに溶解し、56度で45分反応させた。次に、55 mM ヨードアセタミド-25 mM 重炭酸アンモニウム溶液 50μLを加え、暗所で室温に30分放置した。その反応液に0.4 μg/μLトリプシン溶液を添加して37度20時間反応させた。反応液を乾固し、5%アセトニトリルー0.1%トリフルオロ酢酸500μLに溶解後、カーボングラファイト充填カートリッジであるIntersep GC 50mg(GLサイエンス)を用いて、得られた糖ペプチド画分の粗精製および脱塩を行った。最初に、カートリッジに対して、1MのNaOH水溶液、純水、30%酢酸水溶液、純水、80%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液、ならびに5%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液を順次送液し、充填されたカーボングラファイトの洗浄および平衡化を行った。次に、糖ペプチド溶液をカートリッジに送液した。糖ペプチド画分を吸着させたカートリッジに対して、純水、5%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液を順次送液し、糖ペプチド画分の粗精製および脱塩を行った。その後に、カートリッジに対して、80%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水溶液を送液して、吸着した糖ペプチドを溶出した。この糖ペプチドを含む溶出液を回収し、遠心式濃縮機によって乾固させた。
さらに、Sepharose CL-4B(シグマアルドリッチ社)を用いて、糖ペプチドの精製を行った。使用前に、Sepharose CL-4Bを50%エタノール水溶液で5回洗浄し、次いで、ブタノール:純水:エタノール=4:1:1の混合溶液で5回洗浄した。乾固させた粗精製の糖ペプチドを、同混合溶液に溶解させた。その溶液に対して、洗浄したSepharose CL-4Bを6μL加え、1時間にわたって室温にて振盪して、糖ペプチドをSepharose CL-4Bに吸着させた。続いて、前述の混合溶液を用いて、9回にわたってSepharose CL-4Bを洗浄した。糖ペプチドの吸着したSepharose CL-4Bに50%エタノール水溶液を加え、30分間にわたって室温で振盪して、糖ペプチドを溶離させた。溶離した糖ペプチドを含む溶液を回収し、遠心式濃縮機によって乾固させた。次いで、得られた固形物を5%アセトニトリル水溶液4μLに溶解した。この糖ペプチド画分を純水で溶解しその一部をMALDI用ターゲットプレートに滴下後風乾させた。次に、ターゲットプレート上に、1−ピレニルジアゾメタン(PDAM、500pmol)のDMSO溶液0.25μLを滴下し、約25分間にわたって40℃に加熱し、乾燥させた。この操作によって、ターゲットプレート上に、PDAMで標識された糖ペプチドが得られた。続いて、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)の50%アセトニトリル溶液(濃度10mg/mL)0.5μLを滴下し、室温において乾燥させ、MALDI−QIT−TOFMS装置AXIMA−QIT(Shimadzu Biotech)で測定した。
図1上段にS型アイソザイムを下段にP型アイソザイムのマススペクトルを示した。それぞれのイオンをMS/MS解析することによって、すべて共通のペプチド(458-466)上の461番目のアスパラギンに糖鎖が結合していることが判明した。さらに、特異的糖鎖フラグメントを検出することによって、S型アイソザイムは、主に2本鎖複合型糖鎖にH, Le抗原構造などが発現し、一方、P型アイソザイム上には、これらの構造は少なく血液型A抗原が顕著に発現していることが判明した。
以上の結果から、P型アイソザイムにも糖鎖が結合しているアイソザイムが存在することが初めて同定された。さらに、その糖鎖構造はS型アイソザイムとは異なり、ABO血液型抗原を含んでいることが明らかになった。
[実施例2]
ヒトアミラーゼアイソザイムのウエスタンブロット
P型およびS型α−アミラーゼ標品(BioDesgin)それぞれ1μgあるいは2μg相当、十二指腸がん患者(血液型A)膵液タンパク質10μg相当、健常者(血液型AB)唾液2μL相当を、SDSサンプルバッファー(50 mM Tris-HCl, pH6.8, 100 mM ditiothreitol, 2% (w/v) SDS, 0.1% (v/v)glycerol)に溶解後、100℃、3分加熱した。これらを8%SDS-PAGE(40mV一定電流)で分離した。電気泳動後のゲルは、ゲル一枚当たり、100mAの定電流で40分間、ImmobilonPメンブラン(ミリポア)にセミドライ方式にて転写した。ImmobilonPメンブランは、あらかじめメタノールに約1分間浸したのち、転写バッファー(24 mM Tris base, 192 mM glycine, 20% methanol)で平衡化した。
ヒトアミラーゼアイソザイムのウエスタンブロット
P型およびS型α−アミラーゼ標品(BioDesgin)それぞれ1μgあるいは2μg相当、十二指腸がん患者(血液型A)膵液タンパク質10μg相当、健常者(血液型AB)唾液2μL相当を、SDSサンプルバッファー(50 mM Tris-HCl, pH6.8, 100 mM ditiothreitol, 2% (w/v) SDS, 0.1% (v/v)glycerol)に溶解後、100℃、3分加熱した。これらを8%SDS-PAGE(40mV一定電流)で分離した。電気泳動後のゲルは、ゲル一枚当たり、100mAの定電流で40分間、ImmobilonPメンブラン(ミリポア)にセミドライ方式にて転写した。ImmobilonPメンブランは、あらかじめメタノールに約1分間浸したのち、転写バッファー(24 mM Tris base, 192 mM glycine, 20% methanol)で平衡化した。
転写後のメンブレンをTris-bufferd saline (20 m M Tris base, 137mM NaCl, pH 7.6, TBS)に0.05%のTween20を含むTBS-Tで軽くリンスしたのち、1%スキムミルクを含むTBS-Tでブロッキングした(室温、1時間)。抗ヒトα-アミラーゼ抗体(Goat、Abcam)は、1%スキムミルクを含むTBS-T中で2500倍希釈し、抗体反応に用いた。抗血液型A型抗体(Mouse、Santacruz)は、同様に、1000倍希釈した。抗体との反応は、室温で一晩行った。
TBS-Tで十分洗浄した後(1回目リンス、2回目から5回目は10-15分の振とう)、1%スキムミルク-TBS-T で20000倍に希釈したHRP標識-抗ヤギIgG(Zymed)、または、2500倍に希釈したHRP標識-抗マウスIgM+IgG(Thermo)を加え、室温で2時間反応させた。
反応後、TBS-Tで十分洗浄した(1回目リンス、2回目から5回目は10-15分の振とう)。サランラップの上に、転写面を上にしてメンブレンを配し、Enhanced chemiluminescence基質液(West Dura、Pierce)をかけて5分間放置し発色させた。基質液を切って、メンブレンを新しいサランラップで包み、CehmiDoc XRS(バイオラッド)で化学発光を検出した。
図2左に示したように、いずれの試料においても50〜60kDa付近にアミラーゼが検出された。しかし、図2右に示したように、P型アミラーゼ標品および十二指腸癌患者膵液ではアミラーゼの泳動位置に血液型A抗原が検出されたのに対し、S型アミラーゼでは検出されなかった。この結果は、実施例1のMS解析の結果と同様であった。S型およびP型標品は複数の検体を合わせて精製しているので、血液型ABOすべての個体由来であると思われる。血液型AB健常者由来唾液試料においてもアミラーゼ上には血液型A抗原が発現していないことから、S型アミラーゼ上にはその個体の血液型抗原は発現していないことが示された。
[実施例3]
P型アイソザイムのPNGaseF消化
タンパク質20μg相当を容量20μlになるように20mM炭酸アンモニウム緩衝液、0.02%SDS、10mMメルカプトエタノールに溶解し、100℃で10分間加熱した。室温に冷ましたのち、終濃度1.5%のTritonX-100、5unitのPNGaseF(Sigma)を加えて37℃で2時間インキュベートした。酵素は100℃10分加熱して失活させた。
P型アイソザイムのPNGaseF消化
タンパク質20μg相当を容量20μlになるように20mM炭酸アンモニウム緩衝液、0.02%SDS、10mMメルカプトエタノールに溶解し、100℃で10分間加熱した。室温に冷ましたのち、終濃度1.5%のTritonX-100、5unitのPNGaseF(Sigma)を加えて37℃で2時間インキュベートした。酵素は100℃10分加熱して失活させた。
P型アミラーゼは1μg、十二指腸癌患者膵液は、8μgのタンパク質相当分を含む消化反応液を、8%SDS-PAGEで分離後、ImmobilonPに転写した。泳動および転写は実施例2と同様に行った。転写後のメンブレンを抗αアミラーゼ抗体および抗血液型A型抗体で実施例2と同様に検出した。
図3左に示したように、PNGaseF処理によって、P型アミラーゼおよび十二指腸癌患者膵液中のアミラーゼは54kDa付近のバンドに収束したことから、N結合型糖鎖が遊離したことが示された。さらに、図3右に示したように、PNGaseF消化前では分子量が大きいアミラーゼの位置に血液型A抗原が発現していたが、PNGaseFにより糖鎖を遊離後は血液型A抗原が消失した。このことから、P型アミラーゼ上のN結合型糖鎖に血液型A抗原が発現していることが明らかになった。
このように、今まで糖鎖が結合していないとされてきたヒトP型アミラーゼにも糖鎖が結合し、その個体の血液型抗原を発現していることが初めて明らかになった。糖鎖が結合するS型アミラーゼアイソザイムは、ABO式血液型抗原は顕著に発現していないことから、これらの糖鎖構造の臓器特異性を利用して血中のアミラーゼアイソザイムを識別することが可能である。
[実施例4]
血清および膵液を抗アミラーゼ抗体による免疫沈降で粗精製した画分について血液型の発現を検出した例を示す。
肺癌患者(T2:血液型B, T4:血液型A)由来凍結血清を室温に溶解後、12,000×g、30分間遠心し、上清を得た。ProteoPrep Blue Albumin and IgG Depletion Kit(シグマアルドリッチ社)にて、血清中に多く含まれるアルブミンとIgGを除去した。血清18μl相当を、RIPA(RadioImmunoPrecipitation Assay)バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 8, 150 mM 塩化ナトリウム, 1% Nonidet P-40, 0.5% デオキシコール酸ナトリウム, 0.1% ドデシル硫酸ナトリウム)で希釈し、7倍濃度に調製したプロテアーゼ阻害剤(Complete Mini、ロシュ社)35.7μlを添加し、総容量250μlとした。
血清および膵液を抗アミラーゼ抗体による免疫沈降で粗精製した画分について血液型の発現を検出した例を示す。
肺癌患者(T2:血液型B, T4:血液型A)由来凍結血清を室温に溶解後、12,000×g、30分間遠心し、上清を得た。ProteoPrep Blue Albumin and IgG Depletion Kit(シグマアルドリッチ社)にて、血清中に多く含まれるアルブミンとIgGを除去した。血清18μl相当を、RIPA(RadioImmunoPrecipitation Assay)バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 8, 150 mM 塩化ナトリウム, 1% Nonidet P-40, 0.5% デオキシコール酸ナトリウム, 0.1% ドデシル硫酸ナトリウム)で希釈し、7倍濃度に調製したプロテアーゼ阻害剤(Complete Mini、ロシュ社)35.7μlを添加し、総容量250μlとした。
十二指腸癌患者(PJ001:血液型O, PJ002:血液型A)由来凍結膵液を室温に溶解後、12,000×g、1時間遠心し、上清を得た。膵液50μlを、RIPAバッファーで希釈し、7倍濃度のプロテアーゼ阻害剤35.7μlを添加し、総容量を250μlとした。
それぞれに、ベッド体積15μlのAminoLink Plus Coupling resinを加え、4℃、1時間混和した。遠心(1,000×g、1分)して上清を回収し、レジンに非特異的に吸着するタンパク質を除去した。続いて、ウサギ正常IgG(ザイメッド社、クロマトグラフィ精製品)を固定したAminoLink Plus Coupling resin(抗体0.5mg/レジンml)ベッド体積15μlを、同上清に加え、4℃、1時間混和した。遠心(1,000×g、1分)して上清を回収し、IgGへ非特異的に吸着するタンパク質を除去した。この上清に、ウサギ抗ヒト唾液由来アミラーゼ抗体(シグマアルドリッチ社)を固定したAminoLink Plus Coupling resin(抗体0.3mg/レジンml)ベッド体積15μlを加え、4℃、一晩、混和した。遠心(1,000×g、1分)して上清を除き、レジンをRIPAバッファーで洗浄した。レジンに40μlの0.1Mグリシン緩衝液pH3を加えて混和し、結合したタンパク質を溶出後、遠心して溶液を回収した。これを再度、繰り返した。レジンに40μlのSDS-PAGEサンプル緩衝液(50 mM Tris-HCl, pH6.8, 100 mM dithiothreitol, 2%(w/v) ドデシル硫酸ナトリウム)を加え混和した後、遠心して、溶液を回収した。これを再度繰り返した。
それぞれに、ベッド体積15μlのAminoLink Plus Coupling resinを加え、4℃、1時間混和した。遠心(1,000×g、1分)して上清を回収し、レジンに非特異的に吸着するタンパク質を除去した。続いて、ウサギ正常IgG(ザイメッド社、クロマトグラフィ精製品)を固定したAminoLink Plus Coupling resin(抗体0.5mg/レジンml)ベッド体積15μlを、同上清に加え、4℃、1時間混和した。遠心(1,000×g、1分)して上清を回収し、IgGへ非特異的に吸着するタンパク質を除去した。この上清に、ウサギ抗ヒト唾液由来アミラーゼ抗体(シグマアルドリッチ社)を固定したAminoLink Plus Coupling resin(抗体0.3mg/レジンml)ベッド体積15μlを加え、4℃、一晩、混和した。遠心(1,000×g、1分)して上清を除き、レジンをRIPAバッファーで洗浄した。レジンに40μlの0.1Mグリシン緩衝液pH3を加えて混和し、結合したタンパク質を溶出後、遠心して溶液を回収した。これを再度、繰り返した。レジンに40μlのSDS-PAGEサンプル緩衝液(50 mM Tris-HCl, pH6.8, 100 mM dithiothreitol, 2%(w/v) ドデシル硫酸ナトリウム)を加え混和した後、遠心して、溶液を回収した。これを再度繰り返した。
SDS-PAGEサンプル緩衝液溶出液それぞれ10μlについて、実施例2と同様に、8%SDS-PAGEでタンパク質を分離後、ImmobilonP(日本ミリポア社)に転写した。転写後のメンブレンを0.3%スキムミルク、0.1%Tween20を含むTBS-Tで室温1時間振とうした。続いて、ヤギ抗HPA抗体(C-20、サンタクルズ社)およびマウス抗血液型A型抗体(サンタクルズ社)を加え、室温1時間、振とうした。TBS-Tで十分洗浄した後、メンブレンをそれぞれ、HRP標識抗ヤギIgG抗体(ザイメッド社)、HRP標識抗マウスIgM抗体(ザイメッド社)を加え、室温1時間振とうした。メンブレンをTBS-Tで十分洗浄後、化学発色液(SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate、ピアス社)と反応後、ChemiDoc XRS(バイオラッド社)でシグナルを検出した。
図4に膵液、図5に血清のウエスタンブロットを示した。
膵液について実施例2と同様な結果が得られたが、抗体による粗精製によって、血液型A患者のP型アイソザイムに血液型A抗原が発現していることがより明確になった。さらに、血液型O患者のP型アイソザイムに血液型A抗原が発現していないことも示された。
肺癌患者血清中のアミラーゼは、血液型Bの患者だけでなく血液型Aの患者であっても血液型A抗原が発現していないことが示された。
このように、アミラーゼの産生臓器や病態によって発現している糖鎖構造が異なることが明らかに示され、これを利用して鑑別診断が可能となる。
膵液について実施例2と同様な結果が得られたが、抗体による粗精製によって、血液型A患者のP型アイソザイムに血液型A抗原が発現していることがより明確になった。さらに、血液型O患者のP型アイソザイムに血液型A抗原が発現していないことも示された。
肺癌患者血清中のアミラーゼは、血液型Bの患者だけでなく血液型Aの患者であっても血液型A抗原が発現していないことが示された。
このように、アミラーゼの産生臓器や病態によって発現している糖鎖構造が異なることが明らかに示され、これを利用して鑑別診断が可能となる。
本発明のα−アミラーゼアイソザイムの識別法により、膵型と唾液型の産生臓器の識別が可能となるため、各種良性疾患と癌の鑑別診断が可能となる。
Claims (3)
- α−アミラーゼアイソザイムをその糖鎖構造の相違によって識別するα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
- 膵型α−アミラーゼアイソザイムをその血液型糖鎖抗原を検出することによって同定することを特徴とする、請求項1に記載のα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
- 抗α−アミラーゼ抗体と抗血液型糖鎖抗原抗体を組み合わせることによってα−アミラーゼアイソザイムを識別することを特徴とする、請求項2に記載のα−アミラーゼアイソザイムの識別法。
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2008
- 2008-07-18 JP JP2008187955A patent/JP2010025770A/ja active Pending
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