JP2011047802A - 標的物質の濃度測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生体試料中の標的物質濃度を正確かつ簡便に測定する方法の提供。
【解決手段】a)反応溶液に、蛍光標識抗原と生体試料と1価Fabフラグメント抗体である標的物質の特異的抗体とを添加し、蛍光標識抗原と特異的抗体との結合体を形成させた後、b)蛍光解析法により、当該反応溶液中の前記結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合を測定し、c)少なくとも1濃度以上の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、各未標識抗原溶液に対して、工程a)及びb)と同様にして、当該反応溶液中の前記結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合を測定した後、e)反応溶液の未標識抗原濃度と測定された当該反応溶液中の蛍光標識抗原の含有割合とを相関させ、f)得られた相関に基づき、工程b)で測定された蛍光標識抗原の含有割合から、前記生体試料中の標的物質濃度を測定する工程とを有する標的物質の濃度測定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、生体試料中の標的物質の濃度を、蛍光法を用いて正確に定量する方法に関する。
抗原抗体反応を用いることにより、生体内外の種々の生体分子を特異的に検出することができる。このため、抗原抗体反応は、従来より、種々の病気の診断や生理活性物質のスクリーニングに応用されている。
生体試料中の特定の物質を、抗原抗体反応を利用して測定する方法としては、ELISA法等が挙げられる。例えば、一般に自動化された血液分析機には、ELISA法の原理をそのまま応用したsandwich ELISA法が用いられている。このsandwich ELISA法は、ビーズ等の担体に標的物質Aに対する第1の抗体と、酵素標識した標的物質Aに対する第2の抗体の2種類の抗体により標的物質Aをサンドイッチした後、結合していない過剰の第2の抗体を洗浄により除去して酵素基質と反応させることにより、標的物質Aの濃度を測定する方法である。しかしながら、このsandwich ELISA法は、前述のとおり複数の試薬と洗浄を含むものであり、工程が煩雑であり、かつ、長時間を要するという問題がある。また、大がかりな装置を要し、コストも高い。
より短時間の測定が可能となるように、測定法のステップを簡略化する方法としては、標的物質Aの特異的抗体に対して、濃度が既知の標識済み抗原と、生体試料中の標的物質Aとを、競合的に結合させることにより、標的物質Aを定量する競合的抗原抗体反応法がある。生体試料中の標的物質Aの量が多いほど、特異的抗体と結合する標識済み抗原の量が低下するため、標識を利用して特異的抗体と結合する標識済み抗原量を求めることにより、生体試料中の標的物質Aを定量的に測定することができる。そして、これらの競合的抗原抗体反応法では、2種類の抗体により標的物質Aをsandwichする必要がないため、抗原抗体反応ステップ1回と洗浄ステップ2回を除くことが可能であり、sandwich ELISA法よりも短時間で測定することができる。
その他、蛍光分子からの蛍光を測定・解析する蛍光解析法という技術がある。例えば、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy:FCS)は、溶液中にレーザー光を当て共焦点領域を作り、その中で運動する蛍光標識された分子のゆらぎを測定する技術であって、分子間のゆらぎの程度を比較することで、その分子が他の分子と結合したかなどを測定することができる方法である(例えば、特許文献1参照。)。分子のゆらぎは当該分子の大きさに依存するため、この方法に抗原抗体反応を応用すると、抗体又は抗原のいずれかに蛍光標識を行うことにより、抗体と結合している抗原と、単独で存在している遊離の抗原とを区別して検出することができる。蛍光解析法と競合的抗原抗体反応法とを組み合わせた方法は、抗原と抗体とを添加して混合し溶液を市販の蛍光分析装置等を用いて測定すればよい、非常にシンプルな測定系であるため、自動化が容易であり、コストも抑えることができる(例えば、非特許文献1参照。)。
なお、蛍光標識分子の大きさの変化に基づいて検出するため、蛍光標識分子と他の分子との結合性をより精度よく測定する場合には、当該他の分子と結合した蛍光標識分子の大きさが、蛍光標識分子単独の大きさよりも5〜8倍以上大きいことが好ましい(例えば、非特許文献2参照。)。このため、抗原と抗体の結合性を測定する場合には、比較的分子量の小さい抗原に標識することが好ましい。例えば、抗体認識配列を含む抗原の一部の配列に蛍光標識する工夫を行ってもよい。また、蛍光標識抗体を用いる場合には、抗原中の、当該蛍光標識抗体との結合部位とは異なる部位と特異的に結合する未標識の抗体を利用して、抗原と未結合の蛍光標識抗体よりも、抗原と結合した蛍光標識抗体の分子量を大きくする等の工夫が場合によっては必要である(例えば、特許文献2参照。)。
また、生体試料中の標的物質を定量する場合には、精製又は粗精製された標的物質を水又は水溶液に含有させた濃度既知の標準溶液を調整し、当該標準溶液の測定値から検量線を作成し、当該検量線に、生体試料から得られた測定値を参照し、濃度を算出することが、一般的に行われている。一方で、生体試料中には様々な物質が含まれており、このため、当該標準溶液を用いて定量した場合には、測定値に誤差等が生じる場合がある。これは、生体試料と標準溶液とでは粘度や比重が異なるため、分析装置への分注量が異なってしまうことによる。そこで、この標準溶液に、アルブミン等のタンパク質を4〜8%となるように含有させることにより、両者の分析装置に対する分注量を同等とし、測定誤差を改善する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
一方、抗原抗体反応において、抗体として全長IgG抗体等の一般的な2価の全長の抗体を用いた場合、反応溶液中には、1の抗体に対して1の抗原が結合した(1価で結合した)結合体と、1の抗体に対して2の抗原が結合した(2価で結合した)結合体とが混在する状態が考えられる。そして、この1価で結合した結合体の分子数と2価で結合した結合体の分子数との割合は、抗体濃度や抗原濃度に依存して変化する。このため、例えば、フローサイトメトリーを用いて異常プリオンタンパク質を高感度で検出するために、2価の抗体ではなく、1価の抗体を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
特許第3517241号公報 特開2005−345311号公報 特開2002−31641号公報 特許第3568198号公報
テティン(Tetin)、外2名、アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、2002年、第307巻、第84〜91ページ。 メセス(Meseth)、外3名、バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical Journal)、1999年、第76巻、第1619〜1631ページ。
FCSは、蛍光標識された分子のゆらぎを測定するため、測定溶液の粘性は分子のブラウン運動に影響を与えるため、正確な測定の障害となってしまう。また、自家蛍光を持つ物質を含む測定溶液は、自家蛍光が蛍光ノイズの原因となり、正確な測定ができなくなってしまう。一方で、蛍光解析法は、蛍光シグナルを検出し解析するために非常に感度が高く、他の分析方法の場合よりも、必要とするサンプル量は微量で良く、通常、生体試料を50倍以上希釈して測定を行う。このため、精製又は粗精製された標的物質を水又は水溶液に含有させた標準溶液を用いて測定値を補正する場合に、他の測定法よりも、生体試料と標準溶液との粘性や比重の差の影響・生体試料由来の自家蛍光の影響を小さく抑えることができる。
しかしながら、蛍光解析法と競合的抗原抗体反応法とを組み合わせた方法により、生体試料中の標的物質量を定量的に測定する場合に、単に、生体試料を50倍以上に希釈して行った競合的抗原抗体反応の反応溶液に対してFCS計測を行い、測定値を、精製又は粗精製された標的物質を水又は水溶液に含有させた溶液を標準溶液として補正した場合には、生体試料中の標的物質量を正確に測定することは困難である。
本発明は、上記した状況をふまえ開発したものであり、生体試料中の標的物質の濃度を正確かつ簡便に測定する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、競合的抗原抗体反応に用いる抗体として、通常用いられる全長の抗体ではなく、1価のFabフラグメント抗体を用い、かつ、検量線作成や基準値設定のために、濃度既知の標品の標的物質を測定する際の反応溶液に、生体物質由来の粘性・自家蛍光の影響を補正するための補正用物質を適量添加することによって、生体試料の標的物質の濃度を正確かつ簡便に測定し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 生体試料中の標的物質の濃度を測定する方法であって、(a) 反応溶液に、所定量の蛍光標識抗原と、生体試料と、標的物質に対する特異的抗体とを添加して、前記蛍光標識抗原と前記生体試料中の標的物質とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体を形成する工程と、(b) 前記工程(a)の後、前記反応溶液に、前記蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質を励起し得る波長の光を照射し、当該蛍光物質から発される蛍光を蛍光シグナルとして検出し、検出された蛍光シグナルを蛍光解析法により解析して、当該反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)を測定する工程と、(c) 少なくとも1濃度以上の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、各未標識抗原溶液に対して、それぞれ、所定量の前記蛍光標識抗原と、所定量の前記未標識抗原溶液と、前記特異的抗体と、補正用物質とを含む反応溶液を調製し、当該反応溶液中で、蛍光標識抗原と未標識抗原とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体を形成する工程と、(d) 前記工程(c)の後、各反応溶液に対して、それぞれ、前記蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質を励起し得る波長の光を照射し、当該蛍光物質から発される蛍光を蛍光シグナルとして検出し、検出された蛍光シグナルを蛍光解析法により解析して、当該反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)を測定する工程と、(e) 前記工程(c)における反応溶液の未標識抗原濃度と、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)とを相関させる工程と、(f) 前記工程(e)において得られた相関に基づき、工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)から、前記生体試料中の前記標的物質濃度を測定する工程と、を有し、前記蛍光解析法が、蛍光相関分光法(FCS)又は蛍光偏光法(FP)であり、かつ、前記特異的抗体が1価のFabフラグメント抗体であることを特徴とする標的物質の濃度測定方法、
(2) 前記蛍光偏光法(FP)が蛍光偏光解析法(FIDA−PO)であることを特徴とする前記(1)記載の標的物質の濃度測定方法、
(3) 前記補正用物質がアルブミンであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の標的物質の濃度測定方法、
(4) 前記工程(c)において、少なくとも2濃度以上の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、かつ、各反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量が、それぞれ、工程(a)における反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量と等量であり、前記工程(e)及び(f)が、それぞれ、(e1)及び(f1)であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法;(e1) 前記工程(c)における反応溶液中の未標識抗原濃度と、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)との関係の近似線を作成する工程と、(f1) 前記工程(e1)において得られた近似線に基づき、工程(b)において測定された蛍光標識抗原の含有割合(モル比)から、前記生体試料中の前記標的物質濃度を算出する工程、
(5) 前記工程(c)において、1濃度の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、かつ、当該未標識抗原溶液を含む反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量が、それぞれ、工程(a)における反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量と等量であり、前記工程(f)が(f2)であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法;(f2) 工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)が、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)よりも小さい場合に、前記工程(a)における反応溶液中の前記生体試料由来の標的物質の濃度が、前記工程(c)における反応溶液中の未標識抗原濃度より高いと判断し、工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)が、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)以上である場合に、前記工程(a)における反応溶液中の前記生体試料由来の標的物質の濃度が、前記工程(c)における反応溶液中の未標識抗原濃度以下であると判断する工程、
(6) 反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)の測定を、蛍光解析法により求められた測定値を2成分解析することにより行うことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法、
(7) 前記生体試料が、血液、血清、血漿、リンパ液、髄液、骨髄液、腹水、及び胸水からなる群より選択される1種であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法、
(8) 前記生体試料が血清であり、前記工程(c)における反応溶液中の前記補正用物質濃度が0.1〜5.0%の範囲内であることを特徴とする前記(3)記載の標的物質の濃度測定方法、
を、提供するものである。
本発明の標的物質の濃度測定方法は、単に、競合的抗原抗体反応に1価のFabフラグメント抗体を用い、かつ、生体試料の測定値を、適量の補正用物質の存在下で測定された標準溶液の測定値に基づいて補正することにより、生体試料の標的物質の濃度を非常に正確に測定することができる。
競合的抗原抗体反応を、2価の抗体を用いて行った場合(A)と、1価のFabフラグメント抗体を用いて行った場合(B)とを、模式的に示した図である。 遅延型競合的抗原抗体反応を行い、かつ蛍光解析法としてFCSを用いた場合の、本発明の標的物質の濃度測定方法の一態様を示したフローチャート図である。 実施例1において、縦軸を各反応溶液中の結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの割合〔K2(%)〕とし、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度(A)及び各反応溶液中のC3a−desArg濃度の対数値(B)としたグラフに、各反応溶液から得られた測定値をプロットした図である。 比較例1において、縦軸を各反応溶液中の結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの割合〔K2(%)〕とし、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度(A)及び各反応溶液中のC3a−desArg濃度の対数値(B)としたグラフに、各反応溶液から得られた測定値をプロットした図である。 比較例2において、縦軸を各反応溶液中の結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの割合〔K2(%)〕とし、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度(A)及び各反応溶液中のC3a−desArg濃度の対数値(B)としたグラフに、各反応溶液から得られた測定値をプロットした図である。 参考例1において、各反応溶液中の各分子の並進拡散時間を示した図である。 参考例2において、各反応溶液中の各分子の並進拡散時間を示した図である。
本発明及び本願明細書において、特に記載が無い限り、「量」は「モル量」を、「量比」や「比」は「モル比」を、「比率」は「モル比率」を、「割合」は「モル量同士の割合」を、それぞれ意味する。
また、本発明及び本願明細書において、ある溶液の「特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)」とは、当該溶液中の蛍光標識抗原を含む分子全体に対する、特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の割合を意味する。なお、「蛍光標識抗原を含む分子全体」とは、特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原と、特異的抗体との結合体を形成していない蛍光標識抗原(単独で存在している蛍光標識抗原)との両方を含む分子全体を示す。
本発明の標的物質の濃度測定方法は、生体試料中の標的物質の濃度を測定する方法であって、当該標的物質と特異的に結合する抗体と(以下、単に「特異的抗体」ということがある。)に対して、生体試料中の標的物質と蛍光標識抗原とを、競合的に結合させることにより、蛍光標識抗原と特異的抗体とからなる結合体を形成し、この結合体を蛍光解析法により検出し解析する、蛍光解析法と競合的抗原抗体反応法とを組み合わせた方法である。このため、本発明の標的物質の濃度測定方法は、煩雑な洗浄工程等を要さず、迅速かつ簡便に、生体試料中の標的物質の濃度を測定することができる。但し、本発明において「特異的に結合する」とは、該標的物質の検出や精製等に通常用いることができる程度に特異的に結合し得ることを意味し、他の物質等と全く交差しないものである必要はない。
例えば、特許文献4に記載の方法のように、抗原抗体反応の反応産物の検出をフローサイトメトリーにより行った場合には、ビーズの遠心・洗浄・2次抗体の利用等、測定に時間を要し、操作も煩雑であるが、本発明の標的物質の濃度測定方法は、競合的抗原抗体反応に必要な抗体等を全て1の反応溶液中で混合した後、当該反応溶液を蛍光解析に供すればよく、試薬コストも比較的低く抑えることができるため、臨床検査等への実用化の点でも優れている。
本発明において、蛍光解析法としては、例えば、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy:FCS)、蛍光偏光法(Fluorescence Polarization:FP)等が挙げられる。FPとしては、例えば、一分子蛍光解析法の1種である蛍光偏光解析法(FIDA polarization:FIDA−PO)であることが好ましい。本発明の反応系としては、分子の大きさの変化を効率よく検出し得るFCS又はFPであることが好ましく、FCS又はFIDA−POであることがより好ましく、FCSであることがさらに好ましい。
FCSは、細いレーザー光の中の一定時間の分子のゆらぎを計測する方法である。透明な媒体中を拡散している分子は、焦点(極微小空間)を通過する際に、共焦点光学系で検出可能な蛍光強度の変動(分子のゆらぎ)を発生させる。大きな分子は遅く、小さな分子は早く動くことから、自己相関法により、分子の大きさに換算し、分子間の結合を測定することが可能な方法である。さらに、試料溶液中に拡散時間が異なる2種類以上の蛍光分子が存在している場合、それぞれの拡散時間を有する分子の数量及び割合を算出することもできる。すなわち、蛍光標識抗原と特異的抗体との結合体(以下、「結合型の蛍光標識抗原」ということがある。)は、単独で存在している蛍光標識抗原(以下、「単独型の蛍光標識抗原」ということがある。)よりも分子の大きさが大きいため、拡散時間(分子が焦点を通過する時間)が長くなる。よって、各分子の拡散時間を測定することにより、単独型の蛍光標識抗原と結合型の蛍光標識抗原とを、識別して検出し、反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を算出することができる。
蛍光強度分布解析法(Fluorescence−Intensity Distribution Analysis:FIDA)は、蛍光分子の一分子当たりの蛍光強度と分子数を求めることができる解析法であり、試料溶液中に蛍光強度が異なる2種類以上の蛍光分子が存在している場合、それぞれの蛍光強度を有する分子の数量及び割合を算出することもできる。
FPは、蛍光分子に励起光として偏光を照射すると、生じる蛍光の偏光度が分子の状態によって異なること(蛍光異方性)を利用し、分子の状態を計測する方法である。大きな分子(分子量の大きい分子)は回転速度が遅いため、蛍光の偏光は解消せず、蛍光偏光度が大きくなる。一方、小さな分子(分子量の小さい分子)は回転速度が速いため、蛍光の偏光が解消され、蛍光偏光度は小さくなる。つまり、反応溶液中に、結合型の蛍光標識抗原が多く存在している場合には、当該反応溶液の蛍光偏光度が大きくなり、逆に、結合型の蛍光標識抗原が少なく、単独型の蛍光標識抗原が多く存在している場合には、当該反応溶液の蛍光偏光度は小さくなる。よって、反応溶液の蛍光偏光度を測定することにより、反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を求めることができる。なお、蛍光解析法として、反応溶液全体の蛍光偏光度を測定するFPの場合であっても、FIDA−POのように一分子蛍光解析法により行う場合と同程度の感度で、反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を求めることが可能である。
FIDA−POは、FIDAと蛍光偏光解析を複合させた解析法であり、蛍光分子の蛍光偏光度と分子数を求めることができる。試料溶液中に蛍光偏光度が異なる2種類以上の蛍光分子が存在している場合、それぞれの蛍光偏光度を有する分子の数量及び割合を算出することもできる。具体的には、前述したように、大きい分子は、回転運動がゆっくりとなるため、小さい分子よりも、蛍光偏光度が大きくなるため、FIDA−POにより一分子当たりの蛍光偏光度を観測することにより、反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を算出することができる。
蛍光解析法では、測定に蛍光を用いているため、生体試料中に含まれる標的物質量が低濃度である場合であっても、高感度に測定することが可能である。つまり、反応溶液に添加する生体試料の量が少量でよい(例えば、反応溶液を、生体試料の50倍以上の希釈液とすることができる)ため、生体試料による粘性や比重、自家蛍光の影響(例えば、蛍光ノイズの上昇等)を低減することができる。例えば、特許文献3においては、測定値の補正に用いる標準溶液に高濃度のアルブミンを添加することによって、当該標準溶液の粘性・比重を生体試料と同等にしているが、本発明においては、このような高濃度のアルブミンを添加する必要はない。
本発明により測定される対象である標的物質としては、生体試料中に含まれている物質であって、当該物質の全部又は一部が抗体の抗原となり得る物質であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ペプチド等のタンパク質、糖鎖、脂質、核酸、低分子化合物等が挙げられる。ここで、生体試料中に含まれ得る低分子化合物としては、例えば、非ペプチド系ホルモンやビオチン等が挙げられる。
本発明において用いられる特異的抗体は、標的物質に特異的に結合する抗体のFabフラグメントからなる1価の抗体である。IgG抗体やIgM抗体等の従来使用されている全長抗体に代えて、1価の抗体を用いることにより、特異的抗体と蛍光標識抗原又は生体試料中の標的物質とを、1:1で結合させることができ、反応溶液中には、単独で存在している特異的抗体、単独型の蛍光標識抗原、単独で存在している標的物質、特異的抗体と蛍光標識抗原との結合体、及び特異的抗体と標的物質との結合体のみを存在させることができる。
図1は、競合的抗原抗体反応を、2価の抗体を用いて行った場合(A)と、1価の抗体を用いて行った場合(B)とを、模式的に示した図である。図1(A)に示すように、2価の抗体を用いた場合には、反応溶液中の蛍光標識抗原は、単独型の蛍光標識抗原、2個の蛍光標識抗原と結合した抗体、1個の蛍光標識抗原とのみ結合した抗体、及び1個の標的物質及び1個の蛍光標識抗原と結合した抗体の状態で混在している。ここで、2個の蛍光標識抗原と結合した抗体と、1個の蛍光標識抗原とのみ結合した抗体と、1個の標的物質及び1個の蛍光標識抗原と結合した抗体は、いずれも分子量や蛍光物質の周辺環境が異なるため、理論上は、FCSやFIDA−PO等のFPによって、それぞれ識別して検出することができ、各分子の反応溶液中の含有割合を求めることが可能である(例えば、R. Rigler (Editor), E.S. Elson (Editor), “Fluorescence Correlation Spectroscopy”, Springer参照。)。しかしながら、分子の大きさに基づいて各分子を識別するFCSやFPにより計測する場合には、これらの相違は非常に小さく、正確に識別することは非常に難しい。例えば、抗原抗体反応をFCSやFPによって計測する場合、抗原と抗体は、それぞれ、抗原と抗体との結合体の大きさが、単独型の抗原よりも十分に大きく変化するように設計されるため、抗原と抗体が1価で結合した分子と2価で結合した分子とを区別して検出することができず、抗体と結合していない「単独型」の蛍光標識抗原に対して、両者ともまとめて、抗体と結合している「結合型」の抗原として解析されてしまう場合が多い。そして、蛍光標識抗原が抗体と1価で結合する分子と2価で結合する分子とが混在する状態は、解析データのノイズとなり、解析結果の質を低下させてしまう。さらに、分離して検出するための補正に必要なパラメーターを算出することは非常に困難である上、補正をするための解析にも手間がかかる。
これに対して、本発明の標的物質の濃度測定方法においては、図1(B)に示すように、1価の抗体を用いているため、反応溶液中の蛍光標識抗原は、単独型の蛍光標識抗原と、特異的抗体と1価で結合している結合型の蛍光標識抗原との2種類のみが存在する。このため、蛍光標識抗原が特異的抗体に対して1価と2価で結合する状態が混在する場合よりも正確な定量が可能になり(直線性が良くなる)、より精度の良い解析結果を得ることができる。また、蛍光標識抗原と特異的抗体が1価で結合した分子と2価で結合した分子とを考慮して補正を行う必要がなく、解析に手間がかからず簡便である。さらに、前述したように、2価の抗体を用いた場合には、1分子当たり1分子の抗原と結合する抗体の割合と、2分子の抗原と結合する抗体の割合は、反応溶液中の抗体と抗原の濃度に依存して変化するが、本発明の標的物質の濃度測定方法のように1価の抗体を用いることにより、蛍光標識抗原や特異的抗体の濃度に依存せず、より正確な解析結果を得ることができる。
また、本発明において用いられる特異的抗体は、抗体のF領域が欠如したFabフラグメント抗体である。F領域は、多くの分子と結合し易い領域であり、このため、全長抗体等のF領域を含む抗体を用いた場合には、当該抗体のF領域に、生体試料中に含まれている補体、白血球、マクロファージ等の分子が非特異的に結合する結果、測定対象とする蛍光標識抗原と抗体との結合体の見かけの分子量(大きさ)が大きくなってしまう上に、測定データのばらつきが大きくなる傾向がある。本発明においては、F領域が欠如したFabフラグメント抗体を用いることにより、抗原抗体反応に用いる抗体と、標的物質以外の生体試料中の分子との非特異的な結合が顕著に低減し、見かけの分子量が大きくなる現象を回避することが可能となり、緩衝液を用いて作成した検量線と再現性良く相関する測定値を得ることができる。
実際に、後記参考例2の結果に示すように、全長抗体を用いた競合的抗原抗体反応の反応産物をFCSにより計測した場合には、測定された並進拡散時間は、血清に代えて、血清中の標的物質と同濃度の標品を添加して阻害した場合の並進拡散時間よりもはるかに大きくなり、かつ測定データのばらつきも大きくなった。
さらに、この生体試料を添加した場合の前記結合体の分子量の見かけ上の上昇は、検体ごとや測定日によっても異なる傾向にある。これは、抗体のF領域と非特異的に結合する補体、白血球、マクロファージ等の分子の生体試料中の含有量には個人差があり、また、同一人であっても体調によって変化することが要因の一つとして考えられる。例えば、白血球の場合、正常な人でも4000〜9000個/mといった幅があり、運動やストレスによっても増加することが一般的に知られている。
このように、F領域を含む抗体を用いた場合には、単に測定値から、緩衝液を用いて作成した検量線を参照して定量するだけでは、個人差や日々の体調等によって変動する見かけの分子量の上昇を補正しきれず、血清等の生体試料中の標的物質の量を正確に測定することは非常に困難である。
すなわち、本発明においては、FCS等の蛍光解析法を用いて、生体試料中の標的物質の濃度を正確に定量するために、生体試料中の標的物質以外の成分との非特異的な結合によって見かけの分子量の大きさが増える原因となる抗体のF領域を切断し、かつ蛍光標識抗原との結合体において、例えば1価と2価等の価数が異なる結合状態が混在することを回避するために、抗原との結合部位が1箇所の抗体を用いることを特徴とする。
本発明において、特異的抗体として用いられる1価のFabフラグメント抗体は、1価にFab化された市販の抗体を用いても良く、全長抗体から常法により作製したものを用いてもよい。例えば、全長抗体をPapain等の分解酵素を用いて消化した後、ProteinAカラムによって精製することにより、所望の標的物質に対する1価のFabフラグメント抗体を作製することができる。その他、市販の1価Fabフラグメント抗体作製用キットを用いてもよい。
本発明において用いられる蛍光標識抗原は、特異的抗体に対するエピトープを含む分子に、蛍光物質が結合したものである。このエピトープを含む分子としては、特に限定されるものではなく、標的物質自体であってもよく、標的物質のエピトープを含むフラグメントであってもよく、当該エピトープと標的物質以外の他の分子(例えばペプチドやタンパク質等)とのキメラ分子であってもよい。
このように、蛍光標識抗原を適宜設計することにより、単独型の蛍光標識抗原の分子量と、特異的抗体と結合した蛍光標識分子の分子量とに十分な差が生じるように工夫することができる。このため、蛍光解析法としてFCSやFIDA−PO等のFPを用いることにより、多種多様な生体分子を標的物質とし、当該生体分子の生体試料中における濃度を測定することができる。
例えば、標的物質がタンパク質である場合には、エピトープを含むポリペプチドを蛍光標識したものを蛍光標識抗原とすることにより、標的物質の種類に関わらず、本発明の標的物質の濃度測定方法により、生体試料中の当該標的物質の濃度を求めることができる。また、エピトープを含むポリペプチドを蛍光標識したものは、分子量が小さくかつ安定な物質として供給することも可能であることから、このポリペプチドを蛍光標識抗原とすることにより、検出試薬のコストを低減することも可能である。
特に、蛍光解析法としてFCSやFIDA−POを用いる場合には、蛍光標識抗原の分子量が、特異的抗体の1/5以下となるように設計し作製することが好ましく、1/8以下となるように設計し作製することがより好ましい。単独型の蛍光標識抗原と結合型の蛍光標識抗原との識別をより精度良く行うことができるためである。例えば、1価のFabフラグメント抗体の分子量が約50kDaであるため、蛍光標識抗原の分子量は、約7kDa以下であることが好ましい。
なお、本発明において用いられる蛍光標識抗原としては、1分子中に1のエピトープ領域を有する分子である。蛍光標識抗原と特異的抗体とを1:1で結合させることにより、より正確に標的物質の濃度を測定することができるためである。
蛍光標識抗原の標識に用いられる蛍光物質としては、特に限定されるものでなく、ペプチドやタンパク質、核酸等の生体分子の標識において通常用いられている蛍光物質から適宜選択して用いることができる。このような蛍光物質としては、例えば、TAMRA、FITC(フルオレセインイソチオシアナート)、フルオレセイン、ローダミン、NBD、TMR(テトラメチルローダミン)、Rhodamine Green、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647等のAlexa Fluor(登録商標)シリーズ(インビトロジェン社製)、Cy dyeシリーズ(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、Atto 633等のAtto dyeシリーズ(Atto tec社製)、EVOblue50(Roche Diagnostics社製)、GFP(Green Fluorescent Protein)、YFP(Yellow Fluorescent Protein)、ユーロピウム等の希土類錯体等がある。特異的抗体との結合に対する影響を抑えることができるため、TAMRA、FITC、フルオレセイン、ローダミン、NBD、TMR、Alexa Fluor等の比較的分子量の小さい蛍光物質であることが好ましい。特に、TMR等のように、連続して光照射を行った場合でも比較的安定して蛍光を発する色素であることが好ましい。このように退色し難い蛍光物質を標識として用いることにより、蛍光解析法による測定時における光照射の時間や回数の影響を抑えて、計測値ごとのばらつきを防止し、より安定した測定結果を得ることができる。
エピトープを含む分子を蛍光物質により標識する態様は、エピトープ部位と特異的抗体との結合に影響を与えないものであれば、特に限定されるものではなく、当該分子の末端に標識してもよく、当該分子表面の任意の箇所に標識してもよい。特異的抗体との結合を阻害するおそれが小さいことから、蛍光物質を当該分子の末端に結合させることが好ましい。また、蛍光標識抗原一分子当たりに標識する蛍光物質は、一分子であってもよく、複数分子であってもよい。さらに、蛍光標識抗原毎に標識する蛍光物質の分子数が異なっていてもよい。但し、蛍光解析法としてFIDA−POを用いる場合には、蛍光標識抗原一分子当たりの蛍光強度が等しい必要がある。このため、蛍光標識抗原一分子当たりに標識する蛍光物質量が一定であることが好ましく、蛍光標識抗原一分子当たりに一分子の蛍光物質が標識されていることがより好ましい。
エピトープを含む分子を蛍光物質により標識し、蛍光標識抗原を作製する方法は、特に限定されるものではなく、当該技術分野において用いられるいずれの方法を用いて行ってもよい。例えば、エピトープを含む分子を合成した後に、マレイミド化又はNHSエステル化された蛍光物質を公知の有機合成反応により化学的に標識してもよく、予め蛍光標識されたアミノ酸やヌクレオチド等を用いて、常法によりポリペプチドやポリヌクレオチドを合成してもよい。
本発明に供される生体試料としては、生体に含まれる成分を含有する試料であればよい。例えば、生物から採取された試料であってもよく、培養細胞を調製した試料であってもよい。特に、臨床検査等に用いられるためにヒトから採取された生体試料であることが好ましい。該生体試料として、例えば、血液、血漿、血清、骨髄液、髄液、リンパ液、腹水、胸水、唾液、滲出液、羊膜液、喀痰、精液、胆汁、膵液、糞便、尿、器官洗浄液等がある。中でも、本発明の効果をより発揮し得ることから、抗体のF領域と結合する分子を比較的多く含有する生体試料、例えば、血液、骨髄液、髄液、リンパ液、腹水等のFレセプターを細胞表面に発現している細胞を含む生体試料であることが好ましい。
また、該生体試料は、生物から採取された状態の試料であってもよく、調製した試料であってもよい。該調製の方法は、該生体試料中に含有されている標的物質を損なわない方法であれば、特に限定されるものではなく、通常、生体試料に対してなされている調製方法で行うことができる。該調製方法として、例えば、生理食塩水やセリンプロテアーゼ阻害剤等を含有するバッファー等を用いた希釈、標的物質の分離又は濃縮等がある。
本発明の標的物質の濃度測定方法は、具体的には、下記工程(a)〜(f)を有する。
(a) 反応溶液に、所定量の蛍光標識抗原と、生体試料と、標的物質に対する特異的抗体とを添加して、前記蛍光標識抗原と前記生体試料中の標的物質とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体を形成する工程と、
(b) 前記工程(a)の後、前記反応溶液に、前記蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質を励起し得る波長の光を照射し、当該蛍光物質から発される蛍光を蛍光シグナルとして検出し、検出された蛍光シグナルを蛍光解析法により解析して、当該反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)を測定する工程と、
(c) 少なくとも1濃度以上の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、各未標識抗原溶液に対して、それぞれ、所定量の前記蛍光標識抗原と、所定量の前記未標識抗原溶液と、前記特異的抗体と、補正用物質とを含む反応溶液を調製し、当該反応溶液中で、蛍光標識抗原と未標識抗原とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体を形成する工程と、
(d) 前記工程(c)の後、各反応溶液に対して、それぞれ、前記蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質を励起し得る波長の光を照射し、当該蛍光物質から発される蛍光を蛍光シグナルとして検出し、検出された蛍光シグナルを蛍光解析法により解析して、当該反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)を測定する工程と、
(e) 前記工程(c)における反応溶液の未標識抗原濃度と、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)とを相関させる工程と
(f) 前記工程(e)において得られた相関に基づき、工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)から、前記生体試料中の前記標的物質濃度を測定する工程。
以下、工程ごとに説明する。
工程(a)として、反応溶液に、所定量の蛍光標識抗原と、生体試料と、標的物質に対する特異的抗体とを添加して、前記蛍光標識抗原と前記生体試料中の標的物質とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体(結合型の蛍光標識抗原)を形成する。次いで、工程(b)として、前記蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質を励起し得る波長の光を照射し、当該蛍光物質から発される蛍光を蛍光シグナルとして検出し、検出された蛍光シグナルを蛍光解析法により解析して、当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合(モル比)を測定する。
工程(a)において用いられる反応溶液としては、抗原抗体反応を阻害しない溶液であれば、特に限定されるものではないが、バッファーであることが好ましい。蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質の種類によっては、pH等の影響を受けやすいことがあるためである。該バッファーとして、例えば、pH7〜8の、リン酸バッファー、10−200mMのトリスバッファー、HEPESバッファー、Hunksバッファー等が挙げられる。
当該反応溶液に添加される蛍光標識抗原、生体試料、及び特異的抗体の量は、反応溶液の組成、蛍光解析法の種類、生体試料の種類、蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質の種類、反応時間や温度等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、FCS又はFIDA−PO等のFPにより解析する場合には、粘性や自家蛍光の高い生体試料を添加することによる反応溶液に対する影響を最低限に抑えるために、反応溶液に生体試料を50倍以上の希釈となるように添加することが好ましい。FCSやFIDA−PO等のFPは、蛍光標識された分子のゆらぎを測定するため、蛍光ノイズの原因となる粘性や自家蛍光は、正確な測定の障害となってしまうためである。
結合型の蛍光標識抗原は、具体的には、蛍光標識抗原と、生体試料と、特異的抗体とを添加した反応溶液を所定の反応時間インキュベートすることにより形成することができる。反応時間は、特に限定されるものではなく、標的物質の種類や蛍光解析法の種類等を考慮して適宜決定することができる。本発明においては、競合的抗原抗体反応により結合型の蛍光標識抗原を形成する反応時間は、蛍光標識抗原と生体試料と特異的抗体との三者全てを添加した時点から30分間以内であることが好ましく、20分間以内であることがより好ましい。
本発明においては、特異的抗体に対して、蛍光標識抗原と生体試料中の標的物質とを競合的に結合させることができればよく、三者を同時に反応させてもよく、特異的抗体と生体試料中の標的物質(生体試料由来標的物質)とを反応させて、標的物質と特異的抗体との結合体を形成させた後に、当該結合体に対して蛍光標識抗原を反応させてもよい。また、特異的抗体と蛍光標識抗原とを反応させた後に、形成された結合型の蛍光標識抗原に対して生体試料由来標的物質を競合的に反応させてもよい。
本発明においては、予め形成された生体試料由来標的物質と特異的抗体との結合体に、蛍光標識抗原を反応させること(遅延型競合的抗原抗体反応)が好ましい。具体的には、前記工程(a)が、下記工程(a’−1)及び(a’−2)からなる方法である。
(a’−1) 反応溶液に、生体試料と特異的抗体とを添加して、標的物質−特異的抗体結合体を形成する工程。
(a’−2) 前記工程(a’−1)の後、前記反応溶液に、さらに、所定量の蛍光標識抗原を添加して、蛍光標識抗原と標的物質とを、特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、結合型の蛍光標識抗原を形成する工程。
工程(a)における結合型の蛍光標識抗原の形成を、前述の遅延型競合的抗原抗体反応により行う場合には、前記工程(a’−1)における、反応溶液中の標的物質と特異的抗体とを結合させる反応時間と、前記工程(a’−2)における反応溶液中の蛍光標識抗原と特異的抗体とを結合させる反応時間との和が30分間以内であることが好ましく、20分間以内であることがより好ましい。また、当該反応時間の和は、10分間以内のように、より短くてもよい。なかでも、工程(a’−1)における反応時間と、工程(a’−2)における反応時間を、それぞれ実験毎に常に統一させることが好ましい。
次いで、反応後の反応溶液に、標識に用いた蛍光物質の励起光を照射し、蛍光シグナルを検出する。蛍光シグナルの検出は、具体的には、蛍光光度計に、該反応溶液を設置し、常法により蛍光シグナルを検出することができる。なお、検出した蛍光シグナルの解析を一分子蛍光解析法により行う場合には、一般的には、共焦点(コンフォーカル)光学系を利用して蛍光シグナルを検出するが、一分子蛍光解析を行うための一分子由来の蛍光シグナルを取得することができる光学系であれば、特に限定されるものではなく、共焦点光学系以外の他の光学系を用いることも可能である。その他、蛍光シグナルの解析を一分子ごとではなく、反応溶液全体として解析する場合には、蛍光を検出可能な蛍光光度計やマイクロプレートリーダー等を用いて蛍光シグナルを検出することもできる。
蛍光シグナルの解析を一分子蛍光解析法により行う場合には、蛍光シグナルの計測条件は、使用する蛍光光度計や蛍光顕微鏡の仕様により、適宜決定することができるが、例えば、1サンプル当たり、10〜15秒間で5回程度行う。計測時間はこれ以上長くても良く、回数もこれ以上多くても良い。但し、検出に用いる装置の種類によっては、計測時間が10秒間未満等の短時間である場合や、測定回数が1回程度のみである場合には、データの再現性、信頼性が低下するおそれがある。また、蛍光シグナルを計測するサンプルに対して焦点位置を走査させることにより、より多数の分子から情報(蛍光シグナル)を取得することができ、統計的な精度を高めることも可能である。
検出された蛍光シグナルを、蛍光解析法により解析することにより、反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を測定する。蛍光解析法としては、前述のFCSや、FIDA−PO等のFPなどを用いることができる。これらの解析方法は、常法により行うことができる。
蛍光シグナルの解析を蛍光解析法により行う場合には、反応溶液中の各分子の測定値を、2成分解析法により解析することにより、当該分子が単独型の蛍光標識抗原と結合型の蛍光標識抗原のいずれであるのかを簡便に識別し、反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を測定することができる。具体的には、単独型の蛍光標識抗原から得られる測定値(FCSの場合には並進拡散時間、FP又はFIDA−POの場合には蛍光偏光度)を1成分目、結合型の蛍光標識抗原から得られる測定値を2成分目として、各成分の反応溶液中の割合を算出する。
単独型の蛍光標識抗原から得られる測定値は、工程(a)における反応溶液に蛍光標識抗原のみを添加した溶液を解析することにより得ることができる。一方、結合型の蛍光標識抗原から得られる測定値は、蛍光標識抗原に対して過剰量の特異的抗体を添加する等により、蛍光標識抗原と特異的抗体の結合が飽和し、単独型の蛍光標識抗原がほとんど存在していない状態の溶液を解析することにより得ることができる。なお、これらの測定値は、測定装置の状態、測定時の温度、測定に要する時間等の条件により変動するため、一の反応溶液に対する測定ごとに、若しくは一連の測定ごとに、測定することが好ましい。なお、「一連の測定」とは、例えば、96ウェルプレート等の多穴プレートに複数の測定試料を添加し、この多穴プレートを測定装置に設置して、一度の操作で多数の測定試料を順次測定する場合のような、測定条件が実質的に同一である連続した測定を意味する。
2成分解析法で解析することにより、測定データの異常値の頻度が1成分解析よりも低いため、データ解析に手間がかからないこと、各成分(単独型の蛍光標識抗原と結合型の蛍光標識抗原)の測定値を、測定ごとに求めるため、測定装置の日差・日内変動を考慮する必要がないこと等の利点がある。
本発明においては、蛍光標識抗原から発される蛍光を測定することにより、形成された結合型の蛍光標識抗原の存在を直接測定しているため、抗原抗体反応の検出に汎用されている酵素標識による化学発光検出のような間接的測定法とは異なり、結合型の蛍光標識抗原を形成する反応とのタイムラグがなく、形成された結合型の蛍光標識抗原を経時的にモニターすることが可能となる。さらに、測定試料ごとに各工程の反応時間を一定にして測定することにより、蛍光標識抗原と特異的抗体との結合反応や生体試料由来標的物質と特異的抗体との結合反応が平衡に達する前に蛍光を測定したとしても、精度よく結合型の蛍光標識抗原を検出することができる。つまり、本発明においては、抗原抗体反応が必ずしも平衡に達するまで待つ必要がないため、結合型の蛍光標識抗原を短時間で検出することが可能となる。具体的には、前述のように、例えば、工程(a)を20分間以内で行うことができる。
反応溶液中の標的物質量が多いほど、特異的抗体と標的物質との結合体が多く形成されるようになり、結合型の蛍光標識抗原量が少なくなる。つまり、結合型の蛍光標識抗原量は、反応溶液中の標的物質量に依存して、すなわち、生体試料中に含まれていた標的物質量に依存して変動する。よって、反応溶液の標的物質の濃度と、結合型の蛍光標識抗原量との相関関係を調べ、得られた相関に基づいて、生体試料中に含まれていた標的物質量(標的物質の濃度)を測定することができる。
前記相関は、具体的には、工程(c)〜(e)により求めることができる。すなわち、工程(c)として、少なくとも1濃度以上の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、各未標識抗原溶液に対して、それぞれ、所定量の前記蛍光標識抗原と、所定量の前記未標識抗原溶液と、前記特異的抗体と、補正用物質とを含む反応溶液を調製し、当該反応溶液中で、蛍光標識抗原と未標識抗原とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体を形成する。次いで、工程(d)として、工程(c)と同様にして、当該反応溶液中の、結合型の蛍光標識抗原の含有割合を測定する。さらに、工程(e)として、工程(c)における反応溶液の未標識抗原濃度と、工程(d)において測定された当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合とを相関させる。
本発明において、反応溶液中の未標識抗原濃度と結合型の蛍光標識抗原の含有割合とを相関させるとは、当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合の測定値から、大凡の反応溶液中の未標識抗原濃度が推定できるものであればよい。例えば、複数の濃度の未標識抗原溶液を用いて競合的抗原抗体反応を行い、蛍光シグナルを検出して蛍光解析することにより、未標識抗原による阻害曲線を作成し、これを検量線として相関を決定するものであってもよく、1の濃度の未標識抗原溶液のみを用いて測定することにより、いわゆる基準値を決定する半定量的なものであってもよい。すなわち、工程(c)において調製される濃度既知の未標識抗原溶液は、1種類のみを調製してもよく、未標識抗原の濃度が異なる2種類以上の溶液を調製してもよい。
本発明においては、工程(c)における反応溶液中に、補正用物質を添加することを特徴とする。一般的に、生体試料には粘性や自家蛍光を有する分子をはじめ、多種多様な分子が多く含まれている。このため、反応溶液に添加した生体試料に含まれている標的物質と等量の精製した未標識抗原を、水又はバッファーに含有させた未標識抗原溶液として反応溶液に添加した場合に蛍光解析により求められた各蛍光標識分子の測定値と、生体試料を添加した反応溶液から求められた測定値とは一致しない。
特に、FCS又はFIDA−POにより解析する場合には、この生体試料から求められる測定値と、未標識抗原溶液から求められる測定値との解離は大きくなる傾向にある。例えば、後記参考例1に示すように、最終的な希釈率が100倍となるように血清を添加した溶液をFCS計測したところ、その並進拡散時間は、当該溶液に血清を添加しなかった場合の並進拡散時間とほぼ同等であった。つまり、一分子蛍光解析の測定試料に対する生体試料の希釈率が100倍以上である場合には、生体試料の粘性や自家蛍光による影響は、ほぼ最低限度まで抑制されていると言える。
にもかかわらず、生体試料中の標的物質を添加した場合の並進拡散時間と、精製した未標識抗原を添加した場合の並進拡散時間との差は十分に小さくすることができず、精製した未標識抗原を用いた検量線によって、生体試料中の標的物質の濃度を正確に求めることができない。ここで、反応溶液に添加する生体試料の量をより微量とすることにより、当該差をより小さくすることができる可能性があるが、反応溶液に添加する生体試料の量があまりに微量である場合には、得られた測定値の信頼性が損なわれるおそれがあり、また、元々生体試料中の含有量が少ない標的物質の濃度を測定することができなくなる。
本発明においては、未標識抗原溶液と共に適量の補正用物質を反応溶液に添加することにより、補正用物質に由来する粘性、若しくは粘性と自家蛍光の両方によって、精製した未標識抗原溶液から求められる測定値と、生体試料から求められる測定値との乖離を解消し補正することができ、工程(e)において求められた相関に基づいて、生体試料の標的物質濃度を従来になく正確に測定することが可能となる。例えば、FCSにより解析する場合には、未標識抗原溶液と共に適量の補正用物質を反応溶液に添加することにより、補正用物質に由来する粘性、若しくは粘性と自家蛍光の両方によって並進拡散時間が長くなり、生体試料を用いて測定する際に見かけの分子量が大きくなる現象を補正することが可能になる。
つまり、本発明において補正用物質とは、蛍光解析のための測定溶液(適切な励起光を照射し、当該溶液中の蛍光分子から発された蛍光を蛍光シグナルとして検出するための溶液)中に添加することにより、当該測定溶液中の蛍光分子の見かけの分子量(大きさ)を大きくすることが可能な物質を意味する。本発明において用いられる補正用物質は、タンパク質、核酸、脂質、糖類、多糖類、アルコール等の成分であり、粘性を有する物質であって、特異的抗体に対する抗原抗体反応を阻害しない物質であれば特に限定されるものではない。また、粘性に加えて、自家蛍光を有する物質を補正物質としてもよい。具体的には、このような補正用物質として、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)等のアルブミン、ゼラチン、コラーゲン、グルコース、スクロース、マンノース、ガラクトース、グリコーゲン、セルロース、デキストラン、デキストリン、DNA、RNA、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
但し、前述の補正効果を得るためには、反応溶液に添加される補正用物質の濃度が、所定の範囲内になるように、補正用物質を反応溶液に添加する必要がある。この補正効果が得られる濃度範囲は、補正用物質の種類、生体試料の種類及び反応溶液中に添加される量、蛍光解析の種類等を考慮して、適宜決定することができる。具体的には、例えば、工程(c)〜(e)において、反応溶液に添加する補正用物質の濃度を変えて、それぞれの濃度における、反応溶液の未標識抗原濃度と当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合(測定値)との相関を求める。そして、工程(a)及び(b)により得られた反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合から、これらの相関関係に基づいて算出した当該生体試料の標的物質濃度と、粘性や自家蛍光の影響を受けにくいELISA法等の測定系により測定した生体試料中の標的物質濃度とを比較することにより、反応溶液に添加する補正用物質の濃度の好ましい範囲を設定することができる。両者が最も一致する(両者の乖離が十分に小さくなる)濃度が、反応溶液に添加する補正用物質の好ましい濃度である。
例えば、生体試料が血清である場合には、反応溶液中の最終濃度が0.1〜5.0%となるように添加することが好ましい。中でも、補正用物質としてBSA等のアルブミンを用いる場合には、反応溶液の最終濃度が0.1〜1.0 %、好ましくは0.1〜0.5%となるように添加することが好ましい。また、補正用物質としてゼラチンを用いる場合には、反応溶液の最終濃度が0.1〜1.0%、好ましくは0.1〜0.5%となるように、補正用物質としてスクロースを用いる場合には1.0〜5.0%、好ましくは1.0〜3.0%となるように、補正用物質としてデキストランを用いる場合には、0.5〜2.0%、好ましくは0.5〜1.5%となるように、補正用物質としてポリエチレングリコールを用いる場合には0.5〜2.0%、好ましくは0.5〜1.0%となるように、補正用物質としてグリセリンを用いる場合には1.0〜5.0%、好ましくは1.0〜3.0%となるように、それぞれ添加することが好ましい。
本発明において、未標識抗原とは、特異的抗体に対するエピトープを含む分子であって、蛍光物質により標識されていないものを意味する。なお、エピトープを含む分子としては、蛍光標識抗原において挙げられたものと同様のものを用いることができる。また、未標識抗原は、蛍光標識前の蛍光標識抗原と同じ分子であってもよく、異なる分子であってもよい。
例えば、1の濃度の未標識抗原溶液を段階的に希釈した複数の希釈溶液を、それぞれ別個の反応溶液に、所定量の特異的抗体、蛍光標識抗原及び補正用物質とともに添加し、競合的抗原抗体反応を行うことにより、当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を測定する。反応溶液中の未標識抗原濃度(又は量)と測定された当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合とから、両者の相関関係を近似する近似線(検量線)を作成することができる。この作成された検量線に基づき、工程(b)において測定された結合型の蛍光標識抗原の含有割合から、前記生体試料中の標的物質の濃度を算出することができる。なお、工程(c)において、複数の未標識抗原溶液に対して反応を行う場合には、各未標識抗原溶液を添加したそれぞれの反応溶液における反応時間等の反応条件が等しいことを要する。
反応溶液中の未標識抗原濃度と測定された当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合との相関関係を近似する検量線は、例えば、横軸を反応溶液中の未標識抗原濃度、縦軸を結合型の蛍光標識抗原の含有割合として各測定値をプロットし、最小二乗法等の一般的に演算解析に用いられる手法により作成することができる。多くの場合には、反応溶液中の未標識抗原濃度を対数表示した片対数グラフに測定値をプロットすることにより、直線に近い検量線を作成することができる。
また、例えば、工程(c)において、1濃度(1種類の濃度)の未標識抗原溶液を、所定量の特異的抗体、蛍光標識抗原及び補正用物質とともに1の反応溶液に添加し、工程(d)において、当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を測定した場合であって、工程(b)において測定された結合型の蛍光標識抗原の含有割合の測定値が、工程(d)において得られた測定値よりも小さい場合には、前記生体試料中の標的物質濃度は、工程(c)において調製した反応溶液中の未標識抗原濃度より高く、逆に、工程(d)において得られた測定値以上である場合には、前記生体試料中の標的物質濃度は、工程(c)において調製した反応溶液中の未標識抗原濃度以下であることが求められる。
なお、生体試料中の標的物質濃度をより精確に求めるために、工程(c)における反応溶液中において結合型の蛍光標識抗原を形成させる反応は、工程(a)における反応とほぼ同じ条件であることが好ましい。ここで、当該反応は、主に、反応溶液の蛍光標識抗原の種類と濃度、特異的抗体の種類と濃度、反応溶液中の蛍光標識抗原と特異的抗体とを結合させる反応時間や温度、反応溶液の種類等に影響を受ける。このため、工程(a)と工程(c)は、同種の、好ましくは同じロットの蛍光標識抗原や特異的抗体を用いることが好ましく、工程(a)における反応溶液の蛍光標識抗原及び特異的抗体の濃度は、工程(c)における反応溶液の蛍光標識抗原及び特異的抗体の濃度と等しいことが好ましい。さらに、工程(b)における測定と工程(d)における測定とは、同じ測定方法により行うことを要する。
特に、工程(a)における反応溶液中の蛍光標識抗原と特異的抗体とを結合させる反応時間と、工程(c)における反応溶液中の蛍光標識抗原と特異的抗体とを結合させる反応時間とが等しいことが好ましい。具体的には、各反応溶液に対して、蛍光標識抗原と生体試料と特異的抗体との三者全てを添加した時点から蛍光シグナルを測定するまでの時間を統一させることが望ましい。特に、遅延型競合的抗原抗体反応により行う場合には、競合的抗原抗体反応開始から蛍光シグナルの測定までの時間を統一させることが望ましい。
工程(a)と工程(c)を行う順番は特に限定されるものではなく、工程(a)を行った後に工程(c)を行ってもよく、工程(c)を行った後に工程(a)を行ってもよく、両者を同時に行ってもよい。さらに、工程(a)と工程(c)を一連の操作として行ってもよく、独立して別個に行ってもよい。
また、一の生体試料に対して工程(a)及び(b)を行うごとに、工程(c)〜(e)を行うことにより、より精度よく当該生体試料中の標的物質濃度を測定することができる。
一方、反応条件を整えた実験系であれば、実験ごとの測定値の変動は小さい。このため、生体試料ごとに工程(c)〜(e)を行う必要はなく、同種の生体試料に対して、同種の蛍光標識抗原と特異的抗体とを用いて、同等の反応条件において工程(c)〜(e)を行って既に求められている、反応溶液中の未標識抗原濃度と結合型の蛍光標識抗原の含有割合との相関(例えば、前述の検量線や基準値)を利用して、生体試料中の標的物質濃度を算出することもできる。なお、検量線等の作成に用いる蛍光標識抗原、特異的抗体、及び未標識抗原のうち、少なくとも1つの種類やロットが変わる場合には、変更前のものと比較して、基準値や検量線に変化がないかどうかを確認することが好ましい。
工程(b)と(e)のいずれも終了した後、工程(f)として、工程(e)において得られた相関に基づき、工程(b)において測定された結合型の蛍光標識抗原(特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原)の含有割合から、前記生体試料中の前記標的物質濃度を測定する。例えば、工程(c)〜(e)において、2種以上の濃度の未標識抗原溶液を用いて検量線を作成した場合には、この作成された検量線に基づき、工程(b)において測定された結合型の蛍光標識抗原の含有割合から、前記生体試料中の標的物質の濃度を測定することができる。一方、工程(c)〜(e)において、1濃度の濃度既知の未標識抗原溶液を用いることにより、反応溶液中の未標識抗原がある特定の濃度である場合の当該反応溶液中の結合型の蛍光標識抗原の含有割合を求め、当該含有割合を基準値とした場合には、工程(b)において測定された結合型の蛍光標識抗原の含有割合が、当該基準値よりも大きい場合には、工程(b)における反応溶液中の標的物質の濃度は、工程(c)における反応溶液中の未標識抗原の濃度よりも低いことが分かる。逆に、工程(b)において測定された結合型の蛍光標識抗原の含有割合が、当該基準値よりも小さい場合には、工程(b)における反応溶液中の標的物質の濃度は、工程(c)における反応溶液中の未標識抗原の濃度よりも高いことが分かる。
なお、反応溶液中の蛍光標識抗原は、特異的抗体と結合している結合型と、特異的抗体と結合していない単独型のいずれかとして存在している。つまり、反応溶液中の標的物質量が多くなると、特異的抗体と標的物質との結合体が多く形成される結果、単独型の蛍光標識抗原量が多くなる。このため、単独型の蛍光標識抗原量と反応溶液の標的物質の濃度との相関に基づいて、生体試料中の標的物質の濃度を測定することもできる。なお、単独型の蛍光標識抗原量と反応溶液の標的物質の濃度との相関は、前述の工程(b)〜(f)において、結合型の蛍光標識抗原量に代えて単独型の蛍光標識抗原量を指標とすることにより、求めることができる。
例えば、1の濃度の未標識抗原溶液を段階的に希釈した複数の希釈溶液を、それぞれ別個の反応溶液に、所定量の特異的抗体、蛍光標識抗原及び補正用物質とともに添加し、競合的抗原抗体反応を行うことにより、当該反応溶液中の単独型の蛍光標識抗原の含有割合を測定する。反応溶液中の未標識抗原濃度(又は量)と測定された当該反応溶液中の単独型の蛍光標識抗原の含有割合とから、両者の相関関係を近似する近似線(検量線)を作成することができる。この作成された検量線に基づき、生体試料を添加して調製した反応溶液から測定された単独型の蛍光標識抗原の含有割合から、前記生体試料中の標的物質の濃度を算出することができる。
また、例えば、1濃度(1種類の濃度)の未標識抗原溶液を、所定量の特異的抗体、蛍光標識抗原及び補正用物質とともに1の反応溶液に添加し、当該反応溶液中の単独型の蛍光標識抗原の含有割合を測定した場合であって、生体試料を添加して調製した反応溶液から測定された単独型の蛍光標識抗原の含有割合の測定値が、当該未標識抗原溶液を添加した反応溶液から得られた測定値よりも大きい場合には、前記生体試料中の標的物質濃度は、当該未標識抗原溶液を添加した反応溶液中の未標識抗原濃度より高く、逆に、当該未標識抗原溶液を添加した反応溶液から得られた測定値以下である場合には、前記生体試料中の標的物質濃度は、当該未標識抗原溶液を添加した反応溶液中の未標識抗原濃度以下であることが求められる。
本発明の標的物質の濃度測定方法は、標識分子の分子量差を検出できる測定系であれば特に限定されないが、洗浄工程を要しないホモジニアスなアッセイ系である、すなわち、前記工程(b)が、前記工程(a)における反応溶液自体を測定試料とし、かつ、前記工程(d)が、前記工程(c)における反応溶液自体を測定試料とすることが好ましい。ホモジニアスなアッセイ系を用いることにより、蛍光標識抗原等の試薬を混ぜるだけの単一ステップによる迅速な測定が可能となる。また、データのばらつきの原因の一つである洗浄工程がないため、短時間でデータを得られるのみならず、ばらつきの少ないより信頼性の高い測定結果が得られる。さらに、工程が少ないため、作業者によるデータの差や日差が少ないことに加えて、測定工程の自動化が容易となる。
図2は、遅延型競合的抗原抗体反応を行い、かつ蛍光解析法としてFCSを用いた場合の、本発明の標的物質の濃度測定方法の一態様を示したフローチャート図である。なお、本発明の標的物質の濃度測定方法が、これらの態様に限定されるものではないことは言うまでもない。
まず、反応溶液に、標的物質と特異的に結合する1価のFabフラグメント抗体(図中、「1価Fabフラグメント抗体」)と生体試料を添加する(ステップ1)。標的物質と1価Fabフラグメント抗体との結合体を形成させた後、当該反応溶液に、所定量の蛍光標識抗原を添加する(ステップ2)。標的物質と1価Fabフラグメント抗体との結合体に対して、蛍光標識抗原を競合的に反応させることにより、結合型の蛍光標識抗原を形成する。その後、当該反応溶液をFCS測定することにより、反応溶液中の蛍光標識抗原の揺らぎを測定し、並進拡散時間を求める(ステップ3)。次いで、単独型の蛍光標識抗原の並進拡散時間と、1価Fabフラグメント抗体と結合した結合型の蛍光標識抗原の並進拡散時間とを基に2成分解析により、反応溶液中の蛍光標識抗原の分子数全体に対する、結合型の蛍光標識抗原の分子数の割合〔K2(%)〕を算出する(ステップ4)。さらに、ステップ4において算出された結合型の蛍光標識抗原の割合から、検量線を参照して、生体試料中の標的物質の濃度を定量する(ステップ5)。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本発明の標的物質の濃度測定方法により、血清中のヒトC3a−desArgの濃度を測定した。補正用物質としてBSA(ウシ血清アルブミン)を用い、蛍光シグナルの解析はFCSにより行った。C3aは前駆体であるC3から切り出されて生じる物質であるが、C3aの状態では不安定なため、C末端のアルギニンが欠損したC末端アルギニン欠損型(C3a−desArg)に、すぐに分解されてしまう。
抗C3a1価Fabフラグメント抗体(C3aに対する1価のFabフラグメント抗体であって、C3a−desArgとC3aとの両方に結合する。)は、Pierce Fab Micro Preparation Kit(PIERCE社製、カタログ番号:44685)を用いて、抗C3a抗体(Abcam社製、コード番号:ab37230、クローン番号:4H3)から作製した。この抗C3a1価Fabフラグメント抗体が6.25nMとなるように、0.1%BSA含有PBS(リン酸生理食塩水)を用いて調製した溶液を、抗C3a1価Fabフラグメント抗体溶液とした。
蛍光標識抗原として、ヒトC末端アルギニン欠損型C3a−desArgのC末端の20アミノ酸(アミノ酸一文字表記でCSYITELRRQHARASHLGLA)からなるポリペプチドのN末端をATTO 633により標識したATTO 633標識C3a−desArgペプチド(3kDa、SIGMA社に合成を依頼。)を用いた。このATTO 633標識C3a−desArgペプチドが10nMとなるように、0.05%Tween20含有PBSを用いて調製した溶液を、ATTO 633標識C3a−desArgペプチド溶液とした。
また、検量線作成のための未標識抗原として、標品C3a−desArg(CALBIOCHEM社製、カタログ番号: 204884)を用いた。この標品C3a−desArgの7種類の濃度の2倍希釈系列(156nM、78.1nM、39.1nM、19.5nM、9.77nM、4.88nM、2.44nM)を、0.05%Tween20含有PBSを用いて調製した。
一方、3人から採取された血清(検体a〜c)を、それぞれ希釈率が20倍となるように、0.05%Tween20含有PBSを用いて希釈し、血清20倍希釈液を調製した。この血清20倍希釈液20μlを、最終容量が100μlの反応溶液中に添加した場合、当該反応溶液は血清の100倍希釈液に相当する。なお、これらの血清中のC3a−desArg濃度は、予めELISA法により測定しておいた。具体的には、まず、採取した血液を遠心分離し、上清から血清成分を分取した。血清は、使用するまで−80℃で保管しておいた。市販のELISAキット(MicroVue C3a EIA Kit、QUIDEL社製、カタログ番号:A015)を用いて固相化した抗C3a抗体に、1/100倍に希釈した血清を加えて、血清由来のC3a−desArgを抗C3a抗体に結合させた後、さらに、酵素を標識した二次抗体と結合させた。余分な酵素標識抗体を洗浄した後、酵素基質と反応させて、450nmの吸光度を測定することにより酵素反応の生成物を検出し、当該反応溶液中のC3a−desArg濃度(ng/ml)を測定した。C3a−desArgの分子量(9,000)から、血清中のC3a−desArg濃度(nM)を算出した。この結果、各検体のC3a−desArg濃度は、それぞれ、検体a(330nM)、検体b(1,100nM)、検体c(170nM)であった。
各検体の反応溶液として、1.5mlチューブに、20μlの抗C3a1価Fabフラグメント抗体溶液と、20μlの各血清20倍希釈液とを添加し、容量が80μlとなるように0.05%Tween20含有PBSを添加して調製した。つまり、反応溶液の容量が100μlとなった際の抗C3a1価Fabフラグメント抗体の最終濃度は1.25nMである。
一方、検量線作成のための反応溶液として、1.5mlチューブに、20μlの抗C3a1価Fabフラグメント抗体溶液と、20μlの標品C3a−desArgの希釈系列の各溶液又は0.05%Tween20含有PBSと、BSAとを添加し、容量が80μlとなるように0.05%Tween20含有PBSを添加して調製した。なお、BSAは、後に20μlのATTO 633標識C3a−desArgペプチド溶液を添加して反応溶液が100μlとなった際の最終濃度が、それぞれ0.1、0.5、1、又は2%となるようにそれぞれ添加した。その後、これらのチューブを30℃で10分間インキュベートすることにより、抗原抗体反応を行った。
また、これらとは別に、単独型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの測定用として、1.5mlチューブに、80μlの0.05%Tween20含有PBSのみを分注した対照試料1を調製した。さらに、結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの測定用として、1.5mlチューブに、抗C3a1価Fabフラグメント抗体を、反応溶液が100μlとなった際の最終濃度が10nMとなるように添加し、容量が80μlとなるように0.05%Tween20含有PBSを添加して、対照試料2を調製した。
次いで、各チューブに、20μlのATTO 633標識C3a−desArgペプチド溶液を分注して混合した後、これらのチューブを30℃で10分間インキュベートすることにより、競合的抗原抗体反応を行った。つまり、反応溶液中のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの最終濃度は2nMである。また、対照試料2中では、2nMのATTO 633標識C3a−desArgペプチドに対して10nMの抗C3a1価Fabフラグメント抗体が存在しているため、反応後には両者の結合は飽和し、ほぼ全てのATTO 633標識C3a−desArgペプチドが結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドとして存在する。さらに、検量線作成に用いた反応溶液中の標品C3a−desArgの最終濃度は、0.5nM、1.0nM、2.0nM、3.9nM、7.8nM、15.6nM、31.3nMとなる。
各チューブ内の反応溶液を、MF測定用プレート(オリンパス社製)に分注し、一分子蛍光分析システムMF20(オリンパス社製)を使用し、FCS計測を行い、反応溶液中の各分子の並進拡散時間を測定した。測定条件は、励起波長633nm、レーザー強度100μWとし、1サンプルあたり15秒間5回計測した。対照試料1から求められた並進拡散時間(単独型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの並進拡散時間)を1成分目、対照試料2から求められた並進拡散時間(結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの並進拡散時間)を2成分目として2成分解析を行い、各反応溶液中のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの全分子数に対する、結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの分子数の割合〔K2(%)〕を算出した。
図3(A)は、縦軸を各反応溶液中の結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの割合〔K2(%)〕とし、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度としたグラフに、各反応溶液から得られた測定値をプロットした図である。図3(B)は、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度の対数値として、同じくプロットした図である。血清(検体a〜c)については、ELISA法により予め測定しておいたC3a−desArg濃度を用いてプロットした。
この結果、反応溶液中に0.1〜1%となるようにBSAを添加した反応系により作成した検量線を用いることにより、BSA非存在下(後記比較例2)の場合よりも、より正確に血清中のC3a−desArg濃度を測定し得ることが分かった。特に、0.5%BSAを添加した反応系により作成した検量線が、血清データ(検体a〜c)と最も相関した。一方、2%BSAを添加した反応系により作成した検量線は、K2(%)の値が大きくなりすぎ、検量線としては不適当であった。
また、3種の検体(a〜c)から得られた測定値は、いずれも0.5%BSAを添加した反応系により作成した検量線上にのった。このことから、本発明のように、BSA等の補正用物質存在下で、1価のFabフラグメント抗体を用いて競合的抗原抗体反応を行った場合の検量線を作成することにより、検体に依存せず、生体試料中の標的物質の濃度を測定し得ることが明らかである。
[比較例1]
実施例1で用いた血清(検体a〜c)中のヒトC3a−desArgの濃度を、2価の抗C3a抗体を用いて測定した。
具体的には、抗C3a1価Fabフラグメント抗体に代えて2価の抗C3a抗体を用いた以外は、実施例1と同様にして遅延型競合的抗原抗体反応を行い、反応後の反応溶液中の各分子の並進拡散時間を測定した。単独型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの並進拡散時間(反応溶液中にBSAを添加しなかった場合の測定値)を1成分目、結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの並進拡散時間(反応溶液中にBSAを添加せず、かつ2価の抗C3a抗体を用いた場合の測定値)を2成分目として2成分解析を行い、各反応溶液中のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの全分子数に対する、結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの分子数の割合〔K2(%)〕を算出した。
図4(A)は、縦軸を各反応溶液中の結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの割合〔K2(%)〕とし、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度としたグラフに、各反応溶液から得られた測定値をプロットした図である。図4(B)は、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度の対数値として、同じくプロットした図である。血清(検体a〜c)については、ELISA法により予め測定しておいたC3a−desArg濃度を用いてプロットした。
この結果、1価のFabフラグメント抗体を用いた実施例1の場合よりも、各データのばらつきが大きく、かつ、各検量線において直線性のある領域が狭かった。例えば、BSA濃度が1%の場合の各測定データポイントのCV値の平均値は、実施例1では5.3%であるのに対して、比較例1では14%もあった。また、検量線において直線性のある領域は、実施例1では、C3a−desArg濃度が0.5〜7.8nMの範囲であったが、比較例1では0.5〜3.9nMの範囲であった。
さらに、血清データは、作成した検量線の中では、2%BSAを添加した反応系により作成した検量線に最も近づいていたが、3検体を全て適切に補正可能な検量線はなかった。これは、抗体のF領域と血清中の補体等の成分が結合すること、及び、検体中に含まれる補体等の成分量は、検体ごとに異なることが原因と考えられる。
[比較例2]
実施例1で用いた血清試料中のヒトC3a−desArgの濃度を、検量線作成用の反応溶液中に補正用物質を添加せずに作成した検量線を用いて測定した。
具体的には、検量線作成のための反応溶液にBSAを添加しない以外は、実施例1と同様にして遅延型競合的抗原抗体反応を行い、反応後の反応溶液中の結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの分子数の割合〔K2(%)〕を算出した。
図5(A)は、縦軸を各反応溶液中の結合型のATTO 633標識C3a−desArgペプチドの割合〔K2(%)〕とし、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度としたグラフに、各反応溶液から得られた測定値をプロットした図である。図5(B)は、横軸を各反応溶液中のC3a−desArg濃度の対数値として、同じくプロットした図である。血清(検体a〜c)については、ELISA法により予め測定しておいたC3a−desArg濃度を用いてプロットした。
この結果、2価の抗体を用いた比較例1の場合よりも、各データのばらつきが小さく、かつ、作成された検量線と血清データ(検体a〜c)との差も小さくなった。一方で、補正用物質を添加した実施例1の場合よりも、作成された検量線と血清データ(検体a〜c)との差が大きかった。よって、これらの結果から、BSA等の補正用物質を反応溶液に添加して検量線を作成し、かつ競合的抗原抗体反応に1価のFabフラグメント抗体を用いることにより、生体試料中の標的物質の濃度を非常に正確に測定できることが明らかである。
[参考例1]
血清存在下と非存在下においてFCS計測を行い、ATTO 633標識C3a−desArgペプチドの並進拡散時間を測定した。測定対象とした血清は、実施例1等で用いた血清とは異なる3種の血清(検体1〜3)を用いた。各血清(検体1〜3)に含まれるC3a−desArgの濃度は予めELISA法で測定した結果、全て約200nMであった。また、抗C3a抗体及びATTO 633標識C3a−desArgペプチドは、実施例1と同じものを用いた。
具体的には、まず、1.5mlチューブに、20μlの各血清20倍希釈液と、容量が80μlとなるように0.05%Tween20含有PBSを添加して調製した。次いで、各チューブに10nMのATTO 633標識C3a−desArgペプチド溶液を分注して20μlずつ混合した(最終濃度2nM)。
これらの溶液を、実施例1と同様にしてFCS計測を行い、反応溶液中の各分子の並進拡散時間を測定した。
図6は、各反応溶液中の各分子の並進拡散時間(Diffusion Time)を示した図である。この結果、いずれの試料中の分子の並進拡散時間もほぼ等しくなり、このため、FCS計測時の反応溶液が、血清を100倍程度希釈したものとすることにより、血清由来の粘性及び自家蛍光の影響を低減し得ることが分かった。
[参考例2]
血清中のC3a−desArgを抗原として、2価の抗C3a抗体を用いて競合的抗原抗体反応を行った反応溶液に対してFCS計測を行った結果と、バッファーで調製した標品C3a−desArgを抗原として行った結果とを比較した。3種の血清(検体1〜3)及びATTO 633標識C3a−desArgペプチドは、参考例1と同じものを用いた。
具体的には、まず、1.5mlチューブに、20μlの各血清20倍希釈液と、反応溶液が100μlとなった際の最終濃度が1.25nMとなるように抗C3a抗体とを添加し、容量が80μlとなるように0.05%Tween20含有PBSを添加して調製した。
一方、1.5mlチューブに、反応溶液が100μlとなった際の最終濃度が1.25nMとなるように抗C3a抗体を添加し、容量が80μlとなるように0.05%Tween20含有PBSを添加して調製した〔対照試料(標品C3a−desArg無)〕。また、別の1.5mlチューブに、抗C3a抗体及び標品C3a−desArgを、反応溶液が100μlとなった際の最終濃度が、それぞれ、1.25nM及び2nMとなるように添加し、容量が80μlとなるように0.05%Tween20含有PBSを添加して調製した〔対照試料(2nM標品C3a−desArg)〕。
その後、これらのチューブを30℃で10分間インキュベートすることにより、抗原抗体反応を行った。
次いで、各チューブに、10nMのATTO 633標識C3a−desArgペプチド溶液を分注して20μlずつ混合した後(最終濃度2nM)、これらのチューブを30℃で10分間インキュベートすることにより、抗原抗体反応を行った。各チューブ内の反応溶液を、実施例1と同様にしてFCS計測を行い、反応溶液中の各分子の並進拡散時間を測定した。
図7は、各反応溶液中の各分子の並進拡散時間(Diffusion Time)を示した図である。ここで、各反応溶液中の血清試料由来のC3a−desArgは、いずれの検体においても約2nMである。すなわち、血清を添加した反応溶液中の各分子の並進拡散時間(検体1〜3)と、2nMの標品C3a−desArgを添加した反応溶液中の各分子の並進拡散時間〔対照試料(2nM標品C3a−desArg)〕とは、理論上はほぼ等しくなるはずである。にもかかわらず、検体1〜3の並進拡散時間は、未標識のC3a−desArgが存在していない対照試料(標品C3a−desArg無)よりも大きくなり、かつ、ばらつきも大きくなった。
ここで、参考例1では、参考例2と同じ血清検体1〜3を同じ希釈率で使用しているにも関わらず、各検体と対照試料(2nM標品C3a−desArg)との並進拡散時間の乖離が、参考例2と比較するとずっと小さく、また検体間による乖離程度の差もほとんどなかった。この結果から、血清由来の粘性及び自家蛍光の並進拡散時間に対する影響は非常に小さく、参考例2において、各検体と対照試料との並進拡散時間が大きく乖離しているのは、抗C3a抗体中のF領域に、血清由来の補体成分等がランダムに結合するために、各分子の分子量が、抗原抗体反応に非依存的に変動してしまったためと推察される。さらに、検体1〜3は同程度の濃度のC3a−desArgを含んでいたにもかかわらず、対照試料との並進拡散時間の乖離の程度には検体間で差があった。これは、抗体のF領域と非特異的に結合する補体、白血球、マクロファージ等の分子の含有量が検体間で差があることが原因の一つとして考えられる。
本発明の標的物質の濃度測定方法により、生体試料中の標的物質の濃度を、従来になく正確に、かつ簡便に測定することが可能であることから、生体試料を解析する分野、特に臨床検査等の分野において利用が可能である。

Claims (8)

  1. 生体試料中の標的物質の濃度を測定する方法であって、
    (a) 反応溶液に、所定量の蛍光標識抗原と、生体試料と、標的物質に対する特異的抗体とを添加して、前記蛍光標識抗原と前記生体試料中の標的物質とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体を形成する工程と、
    (b) 前記工程(a)の後、前記反応溶液に、前記蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質を励起し得る波長の光を照射し、当該蛍光物質から発される蛍光を蛍光シグナルとして検出し、検出された蛍光シグナルを蛍光解析法により解析して、当該反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)を測定する工程と、
    (c) 少なくとも1濃度以上の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、各未標識抗原溶液に対して、それぞれ、所定量の前記蛍光標識抗原と、所定量の前記未標識抗原溶液と、前記特異的抗体と、補正用物質とを含む反応溶液を調製し、当該反応溶液中で、蛍光標識抗原と未標識抗原とを、前記特異的抗体に対して競合的に結合させることにより、前記蛍光標識抗原と前記特異的抗体との結合体を形成する工程と、
    (d) 前記工程(c)の後、各反応溶液に対して、それぞれ、前記蛍光標識抗原の標識に用いた蛍光物質を励起し得る波長の光を照射し、当該蛍光物質から発される蛍光を蛍光シグナルとして検出し、検出された蛍光シグナルを蛍光解析法により解析して、当該反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)を測定する工程と、
    (e) 前記工程(c)における反応溶液の未標識抗原濃度と、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)とを相関させる工程と、
    (f) 前記工程(e)において得られた相関に基づき、工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)から、前記生体試料中の前記標的物質濃度を測定する工程と、
    を有し、
    前記蛍光解析法が、蛍光相関分光法(FCS)又は蛍光偏光法(FP)であり、かつ、
    前記特異的抗体が1価のFabフラグメント抗体であることを特徴とする標的物質の濃度測定方法。
  2. 前記蛍光偏光法(FP)が蛍光偏光解析法(FIDA−PO)であることを特徴とする請求項1記載の標的物質の濃度測定方法。
  3. 前記補正用物質がアルブミンであることを特徴とする請求項1又は2記載の標的物質の濃度測定方法。
  4. 前記工程(c)において、少なくとも2濃度以上の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、かつ、各反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量が、それぞれ、工程(a)における反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量と等量であり、
    前記工程(e)及び(f)が、それぞれ、(e1)及び(f1)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法。
    (e1) 前記工程(c)における反応溶液中の未標識抗原濃度と、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)との関係の近似線を作成する工程と、
    (f1) 前記工程(e1)において得られた近似線に基づき、工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)から、前記生体試料中の前記標的物質濃度を算出する工程。
  5. 前記工程(c)において、1濃度の濃度既知の未標識抗原溶液を調製し、かつ、当該未標識抗原溶液を含む反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量が、それぞれ、工程(a)における反応溶液の最終容量、添加される蛍光標識抗原量、添加される特異的抗体量と等量であり、
    前記工程(f)が(f2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法。
    (f2) 工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)が、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)よりも小さい場合に、前記工程(a)における反応溶液中の前記生体試料由来の標的物質の濃度が、前記工程(c)における反応溶液中の未標識抗原濃度よりも高いと判断し、工程(b)において測定された前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)が、前記工程(d)において測定された当該反応溶液中の前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)以上である場合に、前記工程(a)における反応溶液中の前記生体試料由来の標的物質の濃度が、前記工程(c)における反応溶液中の未標識抗原濃度以下であると判断する工程。
  6. 反応溶液中の、前記特異的抗体との結合体を形成している蛍光標識抗原の含有割合(モル比)の測定を、蛍光解析法により求められた測定値を2成分解析することにより行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法。
  7. 前記生体試料が、血液、血清、血漿、リンパ液、髄液、骨髄液、腹水、及び胸水からなる群より選択される1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の標的物質の濃度測定方法。
  8. 前記生体試料が血清であり、前記工程(c)における反応溶液中の前記補正用物質濃度が0.1〜5.0%の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の標的物質の濃度測定方法。
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