WO2016208466A1 - 検出対象物質の検出方法 - Google Patents

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  • FIG. 1 It is a figure which shows the method of determining a determination value based on the fluorescence increase amount or the fluorescence increase rate. It is a figure which shows the method of defining a determination value based on fluorescence variation
  • the antibody comprises a polypeptide comprising an antibody light chain variable region (VL) and a polypeptide comprising an antibody heavy chain variable region (VH), and comprising the antibody light chain variable region.
  • VL antibody light chain variable region
  • VH antibody heavy chain variable region
  • An antibody in which either one or both of a peptide and a polypeptide containing an antibody heavy chain variable region is labeled with a fluorescent dye is used.
  • the complex of the antigen and antibody acts as a quencher on the fluorescent dye, and the fluorescent dye is further quenched to generate a fluorescent dye.
  • the fluorescence intensity of the fluorescence to be weakened.
  • the fluorescent dye used for labeling the antibody light chain variable region polypeptide and / or antibody heavy chain variable region polypeptide of the antibody is located in the antigen-binding pocket of the antibody and is combined with tryptophan of the heavy chain variable region. Located in close proximity, interaction with tryptophan becomes stronger and quenched.
  • a ProX tag (VH is labeled when translated and VL is unlabeled) is added to the N-terminus of the inserted VL or VH, and a His tag or FLAG tag is added to the C-terminus. It is designed as follows.

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Abstract

オンサイトで用い得る小型の蛍光検出装置を用いて迅速に検査試料中の検出対象物質を測定する方法の提供。 抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識された、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる複合体を含む抗原抗体反応用抗体試薬であって、液相中の検出対象物質である抗原濃度と上記蛍光色素の蛍光強度とが正又は負の相関関係にあることを指標として、該検出対象物質である抗原を検出する抗原抗体反応用抗体試薬を用いる検出対象物質の検出方法において、抗原抗体反応が開始されてから所定の周期で蛍光強度測定を行い、各測定ごとの蛍光強度を比較し蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を算出し、その蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を予め設定した判定値と比較し、蛍光増加量若しくは蛍光増加率が判定値より大きくなったとき、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率が判定値より小さくなったときに検出対象物質が存在すると判定し、所定の判定時間以内に蛍光増加量若しくは蛍光増加率が判定値より大きくならないとき、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率が判定値より小さくならないときに検出対象物質が存在しないと判定することを含み、前記判定値が、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率である、検出対象物質の検出方法。

Description

検出対象物質の検出方法
 本発明は、検査試料中に検出対象物質が存在するか否かを所定の反応時間を経過することなく迅速に判定できる検出方法に関する。
 本発明者らは、先に、非天然アミノ酸導入技術を利用して抗体のN末端近傍を部位特異的に蛍光標識することで、抗原結合依存的に蛍光強度が増大する抗体である蛍光標識抗体(Quenchbody:Q-body(登録商標))を開発した(特許文献1及び特許文献2を参照)。
 また、本発明者は検出しようとする抗原濃度と検出に用いる蛍光色素で標識した抗体の蛍光強度が「負の相関関係を有する抗体」を開発し、先に出願した(特願2014-261183)。
 本発明者は、さらに上記の抗体を用いてオンサイトで(現場で)検出対象物質の検出を可能とする蛍光光度計を開発した(特許文献4)。
 特許文献1及び2に記載の発明においては、反応前と所定の時間が経過した反応後での蛍光量の増加で検出対象物質の有無を判断している。特許文献3で例示されるように、いままでは温度一定での測定のために据え置き型の蛍光検出装置が主に用いられていた。特許文献4は簡易型の蛍光光度計を開示しているが、迅速に検出する方法等のオンサイトでの検出における実用に適した測定方法の開示はない。
国際公開第2011/061944号 国際公開第2013/065314号 特開2012-118046号公報 特開2014-145633号公報
 本発明は、オンサイトで用い得る小型の蛍光検出装置を用いて迅速に検査試料中の検出対象物質を測定する方法の提供を目的とする。
 従来、蛍光色素等で標識した抗体を用いて、検査試料中の検出対象物質(抗原)を測定する場合、所定の時間期間抗原抗体反応を行わせた後に蛍光強度を測定していた。すなわち、検出対象物質が強陽性の検査試料も陰性の検査試料も所定の時間をかけて判定していた。
 オンサイトで検出を行う場合や検査試料の数が多い場合、1検査試料の測定にかかる時間をできる限り短縮したいという課題があった。
 また、検査室で測定機器を用いて検査を行う場合、検査室の環境温度は一定に保たれ、また検査室に据え置かれている大型の測定機器には温度制御機構が備えられており、測定時の温度条件は常に一定に維持されている。しかしながら、オンサイトで検出を行う場合、現場により環境温度が異なることがあり、また、オンサイトで用いる小型の測定機器に温度制御機構を備えることも困難であった。従って、どのような温度条件でも迅速に検出対象物質を検出できるようにしたいという課題があった。
 本発明者らは、蛍光色素で標識した抗体を用いて抗原抗体反応を利用して、検査試料中に含まれる抗原である検出対象物質を検出する方法において、抗原抗体反応が開始されてから所定の周期で蛍光強度測定を行い、測定都度の蛍光強度の比較によって蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を算出し、その蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を予め設定した判定値と比較することで所定の判定時間内に検出対象物質の有無を判定する方法を開発した。
 この方法によれば、所定の時間を経過する前に、検査試料中に検出対象物質が含まれているか、あるいは含まれていないかを判定することができ、あらゆる検査試料について検出対象物質の有無を最短時間で判定することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
 すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識された、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる複合体を含む抗原抗体反応用抗体試薬であって、液相中の検出対象物質である抗原濃度と上記蛍光色素の蛍光強度とが正の相関関係にあることを指標として、該検出対象物質である抗原を検出する抗原抗体反応用抗体試薬を用いる検出対象物質の検出方法において、
 抗原抗体反応が開始されてから所定の周期で蛍光強度測定を行い、反応前の蛍光強度に対する各測定ごとの蛍光強度を比較し蛍光増加量又は蛍光増加率を算出し、その蛍光増加量又は蛍光増加率を予め設定した判定値と比較し、蛍光増加量又は蛍光増加率が判定値より大きくなったときに検出対象物質が存在すると判定し、所定の判定時間以内に蛍光増加量又は蛍光増加率が判定値より大きくならなかったときに検出対象物質が存在しないと判定することを含み、
 前記判定値が、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光増加量又は蛍光増加率である、
検出対象物質の検出方法。
[2] さらに、各測定ごとにその前の測定時の蛍光強度に対する蛍光強度の変化量である蛍光変化量を算出し、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光強度を、その前の測定時の蛍光強度に対する蛍光変化量である第2の判定値と比較し、各測定ごとの蛍光変化量が第2の判定値以下になったときに、抗原抗体反応が完了したと判断し測定を終了する、[1]の検出対象物質の検出方法。
[3] 抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている複合体を含む抗原抗体反応用抗体試薬であって、液相中の検出対象物質である抗原濃度と上記蛍光色素の蛍光強度とが負の相関関係にあることを指標として、該検出対象物質である抗原を検出する抗原抗体反応用抗体試薬を用いる検出対象物質の検出方法において、
 抗原抗体反応が開始されてから所定の周期で蛍光強度測定を行い、反応前の蛍光強度に対する各測定ごとの蛍光強度を比較し蛍光減少量又は蛍光減少率を算出し、その蛍光減少量又は蛍光減少率を予め設定した判定値と比較し、蛍光減少量又は蛍光減少率が判定値より小さくなったときに検出対象物質が存在すると判定し、所定の判定時間以内に蛍光減少量又は蛍光減少率が判定値より小さくならなかったときに検出対象物質が存在しないと判定することを含み、
 前記判定値が、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光減少量又は蛍光減少率である、
検出対象物質の検出方法。
[4] さらに、各測定ごとにその前の測定時の蛍光強度に対する蛍光強度の変化量である蛍光変化量を算出し、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光強度を、その前の測定時の蛍光強度に対する蛍光変化量である第2の判定値と比較し、各測定ごとの蛍光変化量が第2の判定値以上になったときに、抗原抗体反応が完了したと判断し測定を終了する、[3]の検出対象物質の検出方法。
[5] 所定の周期が5~10秒であり、所定の判定時間が30秒~120秒である、[1]~[4]のいずれかの検出対象物質の検出方法。
[6] 前記所定の判定時間を、蛍光測定をするときの環境温度に応じて設定することを特徴とする、[1]~[5]のいずれかの検出対象物質の検出方法。
[7] 前記所定の判定時間を、検査試料中の検出対象物質の想定される濃度に応じて設定することを特徴とする、[1]~[6]のいずれかの検出対象物質の検出方法。
[8] 前記所定の判定時間を、蛍光測定をするときの環境温度及び検査試料中の検出対象物質の想定される濃度に応じて設定することを特徴とする、[1]~[6]のいずれかの検出対象物質の検出方法。
 本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2015-125119号の開示内容を包含する。
 本発明の方法によれば、抗原抗体反応が進行途中でも検査試料中に検出対象物質が含まれているかどうかを判定することができ、また、所定の時間を経過する前に、抗原抗体反応が完了しているかどうかも判定することができる。その結果、検出対象物質が含まれている検査試料についても、含まれていない検査試料についても、検出対象物質の有無を最短時間で迅速に判定することができる。
蛍光増加量又は蛍光増加率に基づいて判定値を定める方法を示す図である。 蛍光変化量に基づいて判定値を定める方法を示す図である。 検出対象物質の検出の判定方法のチャートを示す図である。 蛍光測定装置の試薬セル容器を示す図である。 蛍光測定装置の外観を示す図である。 蛍光測定装置の概略断面図を示す図である。 メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光増加率を表す。 メタンフェタミン用Q-body(登録商標)と3μg/mLのMPmOHとの5℃、25℃及び35℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光増加率を表す。 メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。 メタンフェタミン用Q-body(登録商標)と10μg/mLのMPmOHとの5、25℃及び35℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。 メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光増加量(mV)を表す。 大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0~10μg/mL)との5℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光減少量(mV)を表す。 大麻用Q-body(登録商標)と0.1μg/mLのCBNとの5℃、25℃及び35℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光減少量(mV)を表す。 大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0~10μg/mL)との5℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。 大麻用Q-body(登録商標)と0.1μg/mLのCBNとの5℃、25℃及び35℃における反応の結果を示す図である。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。
 以下、本発明を詳細に説明する。
 本発明は、蛍光色素で標識した抗体を用いて抗原抗体反応を利用して、検査試料中に含まれる抗原である検出対象物質を検出する方法において、抗原抗体反応が開始されてから所定の周期で蛍光強度測定を行い、反応前の蛍光強度と測定都度の蛍光強度との比較によって蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を算出し、その蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を予め設定した判定値と比較することで所定の判定時間内に検出対象物質の有無を判定する方法である。検出対象物質の有無の判定を検出対象物質の検出という。
1.本発明で用いる抗体
 本発明においては、抗体として、抗体軽鎖可変領域(VL)を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域(VH)を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体を用いる。
 抗体軽鎖可変領域は、抗体軽鎖遺伝子のV領域及びJ領域のエクソンによりコードされる抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列を含むものであれば特に制限されるものではなく、上記抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端側に、さらに任意のアミノ酸配列が付加されたものであってもよい。また、上記抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列としては、カバット(Kabat)の番号付け系で第35番目のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列であることが好ましい。抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドは、抗体軽鎖可変領域を含有していればよく、抗体軽鎖や、抗体軽鎖に任意のアミノ酸配列からなるペプチドを含むことができ、例えば、抗体軽鎖可変領域に、抗体軽鎖定常領域(Cκ)や、さらにヒンジ部分を付与したポリペプチドとすることができ、中でも抗体軽鎖可変領域にCκを付与したポリペプチド等が好ましい。検出対象の抗原に応じて、抗原を認識し得る抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドを適宜作製することができる。
 抗体重鎖可変領域は、抗体重鎖遺伝子のV領域、D領域、及びJ領域のエクソンによりコードされる抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列を含むものであれば特に制限されるものではなく、上記抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端側に、さらに任意のアミノ酸配列が付加されたものであってもよい。また、上記抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列としては、カバット(Kabat)の番号付け系で第36番目、第47番目、又は第103番目のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列であることが好ましい。抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドは、抗体重鎖可変領域を含有していればよく、抗体重鎖や、抗体重鎖に任意のアミノ酸配列からなるペプチドを含むことができ、例えば、抗体重鎖可変領域に、抗体重鎖定常領域(CH1)や、さらにヒンジ部分やFc領域を付与したポリペプチドとすることができ、中でも抗体重鎖可変領域にCH1を付与したポリペプチド等が好ましい。検出対象の抗原に応じて、抗原を認識し得る抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドを適宜作製することができる。
 抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドは、複合体を形成することが好ましく、抗体軽鎖可変領域及び抗体重鎖可変領域に、それぞれ複合体を形成するアミノ酸配列を含むペプチドが結合されたものであれば特に制限されるものではない。複合体を形成するペプチドとしては、上記抗体定常領域(CH1やCκなど)の他、2量体を形成する一方を抗体軽鎖可変領域に他方を抗体重鎖可変領域に付与することもできる。また、相互作用してこれらの複合体形成に寄与する2種類のタンパク質を選択することもできる。
 本発明において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる複合体を抗体と呼ぶ。また、該複合体は抗原に結合するという抗体が有する特性を有しているので、抗原結合タンパク質と呼ぶこともできる。本発明の抗体は、後述のscFv抗体(一本鎖抗体:single chain variable fragment)、Fab抗体、F(ab')2抗体、完全体の抗体等を含む。
 本発明の抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドとを構成要素として含み、複合体を形成するものであればよく、本発明の蛍光標識された抗体の機能を損なわない限りは、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドに加え、さらにペプチドやタンパク質、脂質、金属その他化合物等を構成要素として含んでもよい。
 また、本発明の抗体は、前記ポリペプチド同士が組み合わさって一体として機能し得る構造体であればよく、前記ポリペプチド間の化学結合の有無は特に問題とされない。前記結合としては、前記ポリペプチド同士による、ジスルフィド結合や、架橋剤を用いて形成された結合等を挙げることができ、これらの結合は1つの複合体において複数組み合わせて使用されてもよい。これらの中でもジスルフィド結合を好適に例示することができる。本発明の抗体は前記ポリペプチド同士が互いに近い距離となる複合体を形成することが好ましく、このような機能をもつペプチドを含む、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる複合体が好ましい。抗体分子において抗体軽鎖定常領域と抗体重鎖定常領域はその相互作用により抗体軽鎖可変領域と抗体重鎖可変領域をより近い距離とし、強固な抗原結合ポケットを形成する補助的役割を果たしている。このことから、本発明の抗体としては、抗体軽鎖可変領域と抗体軽鎖定常領域からなるポリペプチドと、抗体重鎖可変領域と抗体重鎖定常領域からなるポリペプチド鎖が、ジスルフィド結合で結合した1分子の抗体タンパク質であるFab抗体や、Fab抗体2つがヒンジを介してジスルフィド結合で結合したF(ab')2抗体や、完全体の抗体が好ましく、中でもFab抗体が最も好ましい。また、本発明の抗体は、抗体軽鎖可変領域と抗体重鎖可変領域とからなるscFv抗体(一本鎖抗体:single chain variable fragment)であってもよい。
 scFv抗体及びFab抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド1つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つからなり、F(ab')2抗体及び完全体の抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つからなる。scFv抗体及びFab抗体において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドのみが蛍光標識されていてもよく、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのみが蛍光標識されていてもよく、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドの両方が蛍光標識されていてもよい。また、F(ab')2抗体及び完全体の抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つ及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つの計4つのポリペプチドからなるが、その蛍光標識のパターンとして、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド1つ、又は2つが標識されているもの、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つ、又は2つが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域含むポリペプチド1つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つの2つのポリペプチドが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つの3つのポリペプチドが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド1つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つの3つのポリペプチドが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つの4つのポリペプチドが標識されているものがある。
 本発明の抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる抗体において、いずれか一方が標識されている場合をシングルラベル抗体(例えば、シングルラベルFab抗体等)と呼ぶ。また、両方が標識されている場合、同じ種類の蛍光色素でもよいし、別の種類の蛍光色素でもよい。本発明において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドの両方が蛍光色素により標識され、両方の蛍光色素が同じ種類である場合を同色ダブルラベル抗体(例えば、同色ダブルラベルFab抗体)と呼び、異なる場合を異色ダブルラベル抗体(例えば、異色ダブルラベルFab抗体)と呼ぶ。
 本発明において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドや、これらのポリペプチドからなる複合体である抗体や、その構成要素等は、公知の化学合成法、遺伝子組換え技術、抗体分子のタンパク質分解酵素による分解方法等を用いて調製することができるが、中でも、比較的容易な操作でかつ大量に調製することが可能な遺伝子組換え技術により調製することが好ましい。遺伝子組換え技術により前記ポリペプチドを調製する場合には、かかるポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNAを好適な発現ベクターに導入して組換えベクターを作製し、バクテリア、酵母、昆虫、動植物細胞などを宿主として用いた発現系や、無細胞翻訳系により目的のポリペプチドを発現させることができる。無細胞翻訳系において目的のポリペプチドの発現を行う場合は、例えば、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等の無細胞抽出液に、ヌクレオチド3リン酸や各種アミノ酸を加えた反応液中で、目的のポリペプチドを発現させることができる。この際、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドはProXタグやFLAGタグ、Hisタグ等のタグが付加されていてもよく、これらのタグは蛍光色素の付加や、ポリペプチドの精製等に利用することができる。このようにして得た抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド同士は、蛍光色素による標識中又は標識の前後に、適当な溶媒中で複合体を形成させることができ、ジスルフィド結合又は架橋剤により結合させ、複合体を形成させる例を挙げることができる。例えば、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドをコードする遺伝子を、大腸菌無細胞合成系で共発現後、4℃で16時間インキュベーションすることによりジスルフィド結合を形成させ複合体を形成することができる。また、大腸菌無細胞合成反応系にタンパク質ジスルフィドイソメラーゼやプロリンシストランスイソメラーゼなどの分子シャペロンを添加することによりジスルフィド結合を促進することができる。また、前記架橋剤としては、ポリペプチド同士を架橋し結合させうる化合物であればよく、例えば、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、カルボジイミド類、イミドエステル類など挙げることができ、適宜市販品を入手し常法により使用することができる。また、本発明の複合体は、抗体を酵素などで切断して作製することもでき、例えばパパインや、ペプシンを用いて抗体を処理することにより、それぞれFab抗体や、F(ab’)2抗体を作製することもできる。
 本発明の方法においては、抗体が抗原に結合したときに、抗体が抗原に結合していないときに対して、蛍光の発生の有無や、蛍光強度が変化するように設計された蛍光標識抗体が好適に用いられる。すなわち、標識抗体が抗原に結合していないときには、標識に用いた蛍光色素が消光(クエンチ)されて蛍光を発しないか、特定の波長の蛍光を発生する状態にあるようにし、抗体に抗原が結合した場合に、蛍光色素の蛍光の発生状態が変化し得るようにする。例えば、抗体と抗原が結合していない状態で消光状態にあった蛍光色素が抗体と抗原が結合することにより蛍光を発するようになるか、あるいは抗体と抗原が結合していない状態で蛍光を発していた蛍光色素が抗体と抗原が結合することにより発生する蛍光の波長がシフトするようにする。このような抗体として、消光色素(クエンチャー)により蛍光強度の変化が生じる抗体、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により蛍光色素の発光状態が変化する抗体が挙げられる。すなわち、本発明においては、検出対象物質である抗原と該検出対象物質に対する抗体が複合体を形成したときの蛍光強度が変化し得る抗体を用いる。
 蛍光強度が変化し得る抗体として、(1)抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドが前記抗原を介して複合体を形成したときにクエンチが解消されて蛍光強度が増加する抗体と(2)前記抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドが抗原と結合して複合体を形成したときに、該抗原と抗体の複合体が前記蛍光色素のクエンチャーとなり、該抗原と前記抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドの複合体が形成したときに前記蛍光色素がより強くクエンチされることにより蛍光強度が減少する抗体が挙げられる。前者の抗体を用いた場合、検出対象である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にあり、該抗体を検出対象である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体という。該抗体により、検査試料中の検出対象物質である抗原の濃度と前記抗体が抗原に結合したときに発する蛍光強度とが正の相関にあることを指標として、抗原を検出することができる。後者の抗体を用いた場合、検出対象である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にあり、該抗体を検出対象である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体という。該抗体により、検査試料中の検出対象物質である抗原の濃度と前記抗体が抗原に結合したときに発する蛍光強度とが負の相関にあることを指標として、抗原を検出することができる。
 特に抗体のVH領域に存在するトリプトファン残基を消光色素(クエンチャー)として利用する蛍光標識抗体が挙げられる。抗体のVH領域の第36番目、第47番目、第103番目(Kabatの番号付け系による)にはトリプトファン(W)残基が存在し、これらのトリプトファン残基はクエンチャーとして作用している(WO2011/061944号公報)。蛍光色素で標識した抗体が抗原に結合したときに、蛍光色素がトリプトファン残基の近傍に位置しトリプトファン残基と相互作用して蛍光色素がクエンチするように設計する。すなわち、該蛍光標識抗体は抗原に結合していない状態では、クエンチされており、蛍光を発しない。
 抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合、抗体に抗原が結合すると、抗体の立体構造が変化し、トリプトファンの近傍に位置していた蛍光色素はトリプトファンから離れ、トリプトファンと相互作用しなくなり、クエンチが解除され、蛍光を発するようになる。抗原が存在する場合、抗体と抗原が結合し、抗体の立体構造が変化し、蛍光色素のクエンチが解除され、蛍光を発するようになる。この蛍光を測定することにより、抗原の存在を検出することができ、また蛍光強度により抗原を定量することもできる。
 このように、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いて抗原濃度を測定し、又は抗原を検出する場合、抗原結合タンパク質に結合する抗原が多くなるほど、蛍光強度が増加する。
 一方、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合、抗原と抗体の複合体が蛍光色素にクエンチャーとして作用し、蛍光色素はさらにクエンチされ、蛍光色素が発生する蛍光の蛍光強度は弱くなる。この際、抗体の抗体軽鎖可変領域ポリペプチド及び/又は抗体重鎖可変領域ポリペプチドの標識に用いられた蛍光色素は、抗体の抗原結合ポケット中に位置し、重鎖可変領域のトリプトファンとより近接した位置に存在し、トリプトファンとの相互作用がより強くなり、クエンチされる。抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドの両方が蛍光色素で標識されている場合、両方の蛍光色素が抗体の抗原結合ポケットに入り込み、2つの蛍光色素の間でも相互作用が生じ、蛍光色素間のクエンチング効果(H-dimer)が得られる。この際、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドの標識に用いた蛍光色素と抗体重鎖可変領域ポリペプチドの標識に用いた蛍光色素が異なる蛍光色素であり、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体(ドナー)となる供与体色素とエネルギー受容体(アクセプター)となる受容体色素の組み合わせとなる場合、抗体が抗原と結合したとき、両方の蛍光色素すなわちエネルギー供与体とエネルギー受容体の向きが変化し、エネルギー供与体が発するエネルギーからのエネルギー受容体への蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じなくなり、発生する蛍光の蛍光強度が弱くなる。すなわち、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体を用いて抗原を測定、検出する場合、トリプトファン残基によるクエンチング、蛍光色素間のクエンチングに加え、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)効果によるクエンチングの効果が得られ、クエンチがより大きくなる。蛍光色素は抗原と抗体の複合体と疎水的相互作用や静電的相互作用等により相互作用し、クエンチの程度が強くなる。
 このように、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いて抗原濃度を測定し、又は抗原を検出する場合、抗原結合タンパク質に結合する抗原が多くなるほど、蛍光色素から発生する蛍光がクエンチされ、蛍光強度が低下する。すなわち、前記抗体が検出対象の抗原と結合して複合体を形成したときに、抗原と抗体の複合体が前記蛍光色素のクエンチャーとなり、液相中の抗原濃度と上記蛍光色素の蛍光強度とが負の相関関係にあり、抗原と抗体の複合体が形成したときに前記蛍光色素がより強くクエンチされることにより蛍光強度が減少する。
 本発明において抗体軽鎖可変領域(VL)を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域(VH)を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体をQ-body(登録商標)と呼び、検出対象物質である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にあるQ-body(登録商標)を用いることができる。Q-body(登録商標)をFab型複合体又はFab型抗体とも呼ぶ。
 抗体の蛍光標識に用いる蛍光色素としては、ローダミン、クマリン、Cy、EvoBlue、オキサジン、Carbopyronin、naphthalene、biphenyl、anthracene、phenenthrene、pyrene、carbazole等を基本骨格として有する蛍光色素やその蛍光色素の誘導体を例示することができ、具体的には、TAMRA:carbocytetremethlrhodamine:TMR、Carboxyrhodamine 6G:CR6G、ATTO655(商標名)、CR110:carboxyrhodamine 110:Rhodamine Green(商標名)、BODIPY FL(商標名):4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 493/503(商標名):4,4-difluoro-1,3,5,7-tetramethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-8-propionicacid、BODIPY R6G(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1,3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 558/568(商標名):4,4-difluoro-5-(2-thienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 564/570(商標名):4,4-difluoro-5-styryl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 576/589(商標名):4,4-difluoro-5-(2-pyrrolyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 581/591(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1, 3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、Cy3(商標名)、Cy3B(商標名)、Cy3.5(商標名)、Cy5(商標名)、Cy5.5(商標名)、EvoBlue10(商標名)、EvoBlue30(商標名)、MR121、ATTO 390(商標名)、ATTO 425(商標名)、ATTO 465(商標名)、ATTO488(商標名)、ATTO 495(商標名)、ATTO 520(商標名)、ATTO 532(商標名)、ATTO Rho6G(商標名)、ATTO 550(商標名)、ATTO 565(商標名)、ATTO Rho3B(商標名)、ATTO Rho11(商標名)、ATTO Rho12(商標名)、ATTO Thio12(商標名)、ATTO 610(商標名)、ATTO 611X(商標名)、ATTO 620(商標名)、ATTO Rho14(商標名)、ATTO 633(商標名)、ATTO 647(商標名)、ATTO 647N(商標名)、ATTO 655(商標名)、ATTO Oxa12(商標名)、ATTO 700(商標名)、ATTO 725(商標名)、ATTO 740(商標名)、Alexa Fluor 350(商標名)、Alexa Fluor 405(商標名)、Alexa Fluor 430(商標名)、Alexa Fluor 488(商標名)、Alexa Fluor 532(商標名)、Alexa Fluor 546(商標名)、Alexa Fluor 555(商標名)、Alexa Fluor 568(商標名)、Alexa Fluor 594(商標名)、Alexa Fluor 633(商標名)、Alexa Fluor 647(商標名)、Alexa Fluor 680(商標名)、Alexa Fluor 700(商標名)、Alexa Fluor 750(商標名)、Alexa Fluor 790(商標名)、Rhodamine Red-X(商標名)、Texas Red-X(商標名)、5(6)-TAMRA-X(商標名)、5TAMRA(商標名)、SFX(商標名)を挙げることができるが、中でも、Cy3、EvoBlue10、ローダミン系蛍光色素であるTAMRAやCR110、及びオキサジン系蛍光色素であるATTO655を特に好適に例示することができる。
 上記蛍光色素中、同色ダブルラベルに対しては、TAMRAとTAMRAの組合せが特に好ましく、異色ダブルラベルに対しては、TAMRAとCR110の組合せ及びTAMRAとATTO 655の組合せが特に好ましい。
 なお、蛍光色素によっては、極性に応じ蛍光強度を変化させる極性感受性を有するものがある(M. Renard et al., J. Mol. Biol. (2002) 318, 429-442)。例えば、IANBD、CNBD、Acrylodan、5-IAF等が挙げられる。これらの蛍光色素で標識した抗体を用いて蛍光クエンチングに基づく測定を行う場合、抗原が結合することにより蛍光色素が溶媒から遮蔽され、蛍光色素の蛍光強度の変化が起きる。本発明においては、上記のような極性感受性を有する蛍光色素は除外され、極性感受性に基づかないクエンチの原理により抗原を測定し又は検出する。
 本発明において、蛍光色素により、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドを標識する方法は特に制限されず、ポリペプチドの両端又は側鎖の官能基を利用して直接又は架橋剤等を介して間接的に標識する方法や、無細胞翻訳系を利用してポリペプチドを合成しながら部位特異的に標識する手法等を用いることができる。無細胞翻訳系を利用して標識する方法としては、アンバーサプレッション法(Ellman J et al.(1991)Methods Enzymol.202:301-36)、4塩基コドン法(Hohsaka T., et al., J. Am. Chem. Soc., 118, 9778-9779, 1996)、C末端標識法(特開2000-139468号公報)、N末端標識法(米国特許第5,643,722号公報、Olejnik et al.(2005)Methods 36:252-260)等が知られており、アンバーサプレッション法では、標識のターゲット部位のアミノ酸をコードするコドンを終止コドンの一つであるアンバーコドンに置き換えたDNA又はmRNAを作製し、無細胞翻訳系を用いて該DNA又はmRNAからタンパク質を合成する。その際、タンパク質合成反応液に標識された非天然アミノ酸を結合させたサプレッサーtRNAを添加することで、アンバーコドンに置換した部位に標識アミノ酸が導入されたタンパク質を合成することができる。4塩基コドン法ではコドンを主にCGGGに拡張し、アミノ酸をコードするコドンをCGGGに置き換えたDNA又はmRNAを作製し、無細胞翻訳系を用いて該DNA又はmRNAからタンパク質を合成する。その際、タンパク質合成反応液に標識された非天然アミノ酸を結合させたtRNA CGGGを添加することで、4塩基コドンに置換した部位に標識アミノ酸が導入されたタンパク質を合成することができる。本発明における異色ダブルラベルには、無細胞翻訳系を用い、アンバーサプレッション法と4塩基コドン法を組み合わせて共発現させることにより、軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び重鎖可変領域を含むポリペプチドに異なる蛍光色素で標識を行い、複合体を形成することができる。また、C末端標識法では、標識したピューロマイシンを最適濃度で添加した無細胞翻訳系において、DNA又はmRNAからタンパク質への翻訳を行うことにより、C末端特異的に標識が導入されたタンパク質を合成することができる。
 また、大腸菌や動物細胞を宿主とする遺伝子組み換え技術により部位特異的に蛍光色素を導入する手法を用いることもできる。アジドチロシンを認識するアミノアシルtRNA合成酵素と、サプレッサーアジドチロシル-tRNAを導入した大腸菌を宿主として、部位特異的にポリペプチドにアジドチロシンを導入し、導入したアジド基に蛍光色素を結合することができる。また、古細菌由来ピロリジルtRNA合成酵素と、サプレッサーピロリジル-tRNAを導入した動物細胞を宿主として、部位特異的にポリペプチドにアジドZリジンを導入し、導入したアジド基に蛍光色素を結合することができる。
 本発明の抗体を構成する抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドは、モノクローナル抗体由来のものを用いることができる。すなわち、検出対象物質である抗原を免疫原として用いて常法でモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得て該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドを利用することができる。また、前記ハイブリドーマより、抗体軽鎖可変領域をコードするDNA及び抗体重鎖可変領域をコードするDNAを得て、該DNAを用いてリコンビナントタンパク質として、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる抗原結合タンパク質を製造することもできる。
 ハイブリドーマの例として、抗テトラヒドロカンナビノール(THC)又はその誘導体に対する抗体を産生するハイブリドーマが挙げられる。なお、THC、THC-A及びCBNは構造が類似しており、免疫学的に交叉反応するので、抗THC抗体を用いることにより、THC-A及びCBNを検出することもできる。そのようなハイブリドーマの例としてハイブリドーマA-04が挙げられ、該ハイブリドーマA-04は、2014年11月20日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NITE Patent Microorganisms Depository)(日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE BP-01970(「識別の表示」は、「A-04」)で国際寄託されている。該ハイブリドーマが産生する抗体は、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体であり、該抗体の抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドにより、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にあるQ-body(登録商標)を作製することができる。
2.検出対象物質
 検出対象物質は抗原抗体反応により検出し得る抗原であり、抗原としては、上記抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド及び上記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドにより特異的に認識される抗原であれば特に制限されず、例えば、タンパク質、ペプチド、糖質、脂質、糖脂質、低分子化合物等を挙げることができる。すなわち、本発明の方法において、検出対象物質である抗原はイムノアッセイ、すなわち抗原抗体反応を利用したアッセイで測定し得る抗原又は抗体である。抗原としては抗体を作製し得るものなら如何なる抗原でもよく、例えば、タンパク質、多糖類、脂質、糖脂質等が挙げられる。これらの物質を含む原生動物、真菌、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルス、動物組織等も検出し得る。また、麻薬、爆薬、農薬、香料、公害物質等の低分子化合物を含む化学物質も測定対象となり得る。このような物質として、例えば、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THC-A)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)等のカンナビノイドと呼ばれる大麻成分、アンフェタミン、メタンフェタミン、モルヒネ、ヘロイン、コデインなどの覚せい剤や麻薬類;アフラトキシン、ステリグマトシスチン、ネオソラニオール、ニバレノール、フモニシン、オクラトキシン、エンドファイト産生毒素などのカビ毒;テストステロンやエストラジオールなどの性ホルモン;クレンブテロールやラクトパミンなどの飼料に不正に用いられる添加物;PCB、ゴシポール、ヒスタミン、ベンツピレン、メラミン、アクリルアミド、ダイオキシンなどの有害物質;アセタミプリド、イミダクロプリド、クロルフェナピル、マラチオン、カルバリル、クロチアニジン、トリフルミゾール、クロロタロニル、スピノサド、ランネート、メタミドホス、クロルピリホスなどの残留農薬;ビスフェノールAなどの環境ホルモンなどが挙げることができる。テトラヒドロカンナビノール(THC)には、二重結合の位置異性体があり、Δ8-THCとΔ9-THCがある。THCという場合、Δ8-THCもΔ9-THCも含まれる。上記の物質は各物質の誘導体も含む。
 検査試料も限定されず、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液等の生体由来体液試料、培養上清、細胞抽出液、菌体抽出液、廃水や、アレルゲン等の動物組織由来物質、麻薬等が付着している可能性がある物質を紙等で拭った試料等が挙げられる。また、大麻成分等の麻薬や覚せい剤を含む物質が挙げられる。大麻成分を含む物質として、葉、茎、根、種及び花弁等のアサの植物の部分若しくはその植物片、又は葉、茎、根、種及び花弁等のアサの植物の部分から取れる樹液を圧縮して固形状の樹脂にした大麻加工品である大麻樹脂等が挙げられる。通常、植物の部分又はその植物片は、乾燥した状態で乾燥大麻として使用される。本発明においては、植物の部分若しくはその植物片である検査試料としては、乾燥大麻、特に乾燥大麻植物片が用いられる。
3.本発明の方法による測定
 本発明の方法においては、蛍光色素で標識した抗体を検査試料と混合し反応させ、一定の間隔をおいて、所定の周期で蛍光強度の測定を所定の判定時間が経過するまで測定を継続して行う。測定は少なくとも2回行う。
 測定の周期は限定されないが、数秒から数十秒であり、好ましくは2~20秒、さらに好ましくは3~15秒、さらに好ましくは5~10秒、特に好ましくは5秒である。測定を継続して行う所定の反応時間も限定されないが、トータルで30秒~600秒、好ましくは30秒~300秒、さらに好ましくは30秒~180秒、さらに好ましくは30秒~120秒、さらに好ましくは45秒~75秒、特に好ましくは60秒である。測定を継続して行う所定の判定時間は、測定にかかる時間として許容できる時間内で設定すればよい。例えば、オンサイトで(現場で)検出対象物質の検出を行う場合は、許容できる時間は短く、通常1検査試料につき60秒以内での検出が望ましい。さらに、所定の判定時間は、検出を行う現場の環境温度、あるいは想定される検出対象物質の濃度範囲に応じて適宜設定することができる。例えば、環境温度が高い場合、抗原抗体反応速度が大きくなるので、反応が速く進行する。この場合、所定の判定時間を短くすることができ、逆に環境温度が低い場合、所定の判定時間を長くすればよい。また、検査試料中の想定される検出対象物質の濃度範囲が大きい場合、抗原抗体反応速度が大きくなるので、反応が速く進行する。この場合、所定の判定時間を短くすることができ、逆に想定される検出対象物質の濃度範囲が小さい場合、所定の判定時間を長くすることができる。
 各測定ごとに得られる蛍光強度測定値を比較し、蛍光強度測定値に対する蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を算出する。
 検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合には、抗原抗体反応により蛍光強度が増加するので、蛍光増加量又は蛍光増加率を算出する。一方、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合には、抗原抗体反応により蛍光強度が減少するので、蛍光減少量又は蛍光減少率を算出する。
 蛍光増加率又は蛍光減少率は、反応前における蛍光強度を1とした場合の相対値で表すことができる。また、蛍光増加量又は蛍光減少量は、反応前の蛍光強度との差の絶対値で表すことができる。蛍光強度は、例えば蛍光測定装置で出力される電圧(mV)等で表すことができる。
 反応前の蛍光強度として、あらかじめ測定した値を用いてもよい。反応前の蛍光強度は、検査試料を測定するときに用いる抗体濃度と同じ抗体濃度で測定した蛍光強度である。
 一定周期で行う測定ごとに蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を算出し、予め設定した判定値(カットオフ値)と比較する。算出した蛍光増加量若しくは蛍光増加率が判定値より大きくなったとき、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率が判定値より小さくなったとき、検査試料中に検出対象物質が含まれている、あるいは検査試料は検出対象物質陽性であると定性的に判定する。
 また、一定周期で行う2回目以降の測定ごとに、蛍光変化量を算出してもよい。蛍光変化量は周期的に行う複数回の測定において、前の測定からの蛍光強度の変化量(増加又は減少)で表すことができる。蛍光変化量は、抗原抗体反応が進行しているか否かの指標になり得、蛍光強度が変化しなくなったとき、抗原抗体反応は完了したと判断することができる。蛍光変化量は、例えば蛍光測定装置で出力される電圧(mV)等で表すことができる。
 判定値は以下の方法で定める。
 あらかじめ、検出対象物質の検出を希望しない最大濃度を定めておく。検出を希望しない最大濃度とは、検出対象物質が検査試料に含まれているか否かの判定基準となる濃度である。検査試料中に検出を希望しない最大濃度以上の検出対象物質が含まれている場合、検査試料中に検出対象物質が含まれている、すなわち検査試料は検出対象物質陽性であると判定することができる。一方、検査試料中に検出を希望しない最大濃度未満の検出対象物質しか含まれていない場合、検査試料中に検出対象物質が含まれていない、すなわち検査試料は検出対象物質陰性であると判定することができる。
 検出を希望しない最大濃度において、上記のように、蛍光色素で標識した抗体を検査試料と混合し反応させ、一定の間隔をおいて所定の周期で、蛍光強度の測定を所定の判定時間が経過するまで行う。所定の判定時間反応させたときの蛍光強度測定値の、反応前の蛍光強度測定値に対する蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率を第1の判定値とすればよい。
 本発明の方法においては、さらに2回目以降の蛍光強度の測定により求めた蛍光変化量を第2の判定値とすることもできる。第2の判定値は、検出を希望しない最大濃度において、蛍光色素で標識した抗体を検査試料と混合し反応させ、混合直後の(反応時間0)第1回目の蛍光強度の測定を行い、その後、一定の間隔をおいて所定の周期で、蛍光強度の測定を所定の判定時間が経過するまで行う。第2回目の蛍光強度測定値の第1回目の測定時の蛍光強度測定値に対する蛍光強度の変化量、すなわち、最初に算出した蛍光強度の変化量を第2の判定値とすればよい。上記のように蛍光変化量は抗原抗体反応が進行しているか、完了したかを示す指標となるので、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合には、抗原抗体反応により蛍光強度が増加し時間とともに増加量が小さくなるので、経時的な蛍光変化量は減少する。従って、蛍光変化量が第2の判定値以下になったときには、もはや抗原抗体反応は起こらないので、それ以降の測定を行う必要はない。また、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合には、抗原抗体反応により蛍光強度が減少し時間とともに減少量が小さくなるので、経時的な蛍光変化量は増加する。従って、蛍光変化量が第2の判定値以上になったときには、もはや抗原抗体反応は起こらないので、それ以降の測定を行う必要はない。
 検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合には、蛍光増加量若しくは蛍光増加率が第1の判定値より大きくならない状況で、蛍光変化量が第2の判定値以下になった場合、所定の判定時間が経過していなくても検査試料は検出対象物質陰性であると判定することができる。一方、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合には、蛍光減少量若しくは蛍光減少率が第1の判定値より小さくならない状況で、蛍光変化量が第2の判定値以上になった場合、所定の判定時間が経過していなくても検査試料は検出対象物質陰性であると判定することができる。
 ただし、蛍光変化量はばらつきが生じ易く、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合、通常は後になるほど小さくなるが、反応の途中で蛍光変化量が最初に算出した蛍光変化量より突然大きくなることがある。この場合は、最も大きい蛍光変化量を第2の判定値とすればよい。同様に、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合、通常は後になるほど大きくなるが、反応の途中で蛍光変化量が最初に算出した蛍光変化量より突然小さくなることがある。この場合は、最も小さい蛍光変化量を第2の判定値とすればよい。
 本発明において、蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率に基づいて定めた第1の判定値を判定値J1と呼び、蛍光変化量に基づいて定めた第2の判定値を判定値J2と呼ぶ。
 図1に蛍光増加量又は蛍光増加率に基づいて判定値J1を定める方法を、測定ごとの経時的な蛍光増加量又は蛍光増加率のグラフにより示す。グラフの横軸は反応時間を示し、縦軸は蛍光増加量又は蛍光増加率を示す。反応は、測定を継続して行う所定の判定時間が経過するまで行なわせている。図では、検査試料中の検出対象物質の濃度がC1、C2、C3及びC4の場合(C1<C2<C3<C4)の経時的な蛍光増加量又は蛍光増加率を示してある。図1に示すのは、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合であり、抗原抗体反応により蛍光強度が増加する。図1に示すように、検出対象物質の濃度が大きいほど、反応の初期段階で急激に蛍光増加量又は蛍光増加率が大きくなり、早い段階で蛍光増加量又は蛍光増加率がプラトーに達する。C1を、検出を希望しない最大濃度とした場合、所定の判定時間(横軸の最大値)における濃度C1における蛍光増加量又は蛍光増加率が検査試料中に検出対象物質が含まれているか否かを判定する判定値J1となる。判定値J1は図1中に点線で示してある。図1は、検出対象物質の濃度を変えたときの経時的な蛍光増加量又は蛍光増加率の上昇の違いを示すために、C1、C2、C3及びC4の濃度における蛍光増加量又は蛍光増加率の経時的な変化を示しているが、実際に判定値を求めるときは、検出を希望しない濃度である濃度C1における蛍光増加量又は蛍光増加率のみを求めればよい。図1は、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合の蛍光増加量又は蛍光増加率に基づいて判定値J1を定める方法を示しているが、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合には、抗原抗体反応により蛍光強度が減少するので、縦軸は経時的な蛍光減少量又は蛍光減少率に基づいて同様に判定値J1を定めることができる。
 また、図2に蛍光変化量に基づいて判定値J2を定める方法を、測定ごとの経時的な蛍光変化量のグラフにより示す。グラフの横軸は反応時間を示し、縦軸は蛍光変化量を示す。反応は、測定を継続して行う所定の判定時間が経過するまで行なわせている。図では、検査試料中の検出対象物質の濃度がC1、C2、C3及びC4の場合(C1<C2<C3<C4)の経時的な蛍光変化量を示してある。図2に示すように、検出対象物質の濃度が大きいほど、反応の初期段階における蛍光変化量が大きくなり、早い段階で蛍光変化量がプラトーに達する。C1を、検出を希望しない濃度とした場合、所定の周期での測定の最初の測定(横軸の最小値)における濃度C1での蛍光変化量が、検出対象物質と抗体との反応が進行していないと判断するための判定値となる。判定値J2は図2中に点線で示してある。
 図2は、検出対象物質の濃度を変えたときの経時的な蛍光変化量の変化の違いを示すために、C1、C2、C3及びC4の濃度における蛍光変化量の経時的な変化を示しているが、実際に判定値を求めるときは、検出を希望しない最大濃度である濃度C1における蛍光変化量のみを求めればよい。
 図2は、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合の蛍光変化量に基づいて判定値J2を定める方法を示しており、蛍光変化量は経時的に減少する。一方、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合には、抗原抗体反応により蛍光強度が減少するので、蛍光変化量は経時的に増加する。
 図3に検出対象物質検出の判定方法のチャートを示す。図3Aは従来の方法を示し、図3Bは本発明の方法を示す。従来の方法においては、測定を継続して行う所定の判定時間が経過したときに初めて蛍光強度を測定し、得られた測定値に基づいて検出対象物質の有無を判定していた。
 本発明の方法を図3Bに基づいて説明する。図3Bは検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合の方法を示しているが、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いる場合は、蛍光増加量又は蛍光増加率の代りに蛍光減少量又は蛍光減少率を用いればよい。図3Bにおいて、蛍光増加量をFxで表し、蛍光変化量をCxで表す。xは何回目の測定かを示す。Cxは、Fx-F(x-1)で表されるが、これはX回目の測定で算出された蛍光増加量(Fx)から1回前のx-1回目の測定で算出された蛍光増加量(F(x-1))を引くことによりX回目の測定で算出される蛍光変化量(Cx)を算出できることを表している。
 検出対象物質の含有濃度が未知の検査試料と蛍光色素で標識した抗体を混合し反応させ、一定の周期で測定を継続する。1回目の測定を行った時点で、蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率F1を算出し、あらかじめ定めた第1の判定値J1と比較する。この時点で蛍光増加量F1が判定値J1より大きい場合(F1>J1)、試験した検査試料は検出対象物質陽性であると判定することができる。この場合、以降の測定を行う必要はない。蛍光増加量F1が判定値J1より小さい場合、さらに2回目の測定を行い、蛍光変化量C2を算出する。蛍光変化量C2を第2の判定値J2と比較する、蛍光変化量C2が判定値J2より大きい場合、抗原抗体反応はまだ進行していることを示す。蛍光変化量C2が判定値J2より大きい場合、さらに2回目、3回目、・・・X回目の測定を行い、測定ごとの蛍光増加量若しくは蛍光増加率、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率Fx及び蛍光変化量Cxを算出する。
 X回目の蛍光増加量又は蛍光増加率Fを算出し、判定値J1と比較する。蛍光増加量Fxが判定値J1より大きい場合、試験した検査試料は検出対象物質陽性であると判定することができる。蛍光増加量Fが判定値J1以下の場合、蛍光変化量Cを算出し、判定値J2と比較する。蛍光変化量Cxが判定値J2以下の場合、抗原抗体反応が完了したと判定することができる。この場合、もはや蛍光量が変化することはないので、その時点で測定を中止する。
 検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合には、蛍光増加量若しくは蛍光増加率が第1の判定値J1より大きくならず、かつ蛍光変化量Cxが第2の判定値J2より大きいままの場合であっても、所定の判定時間が経過した場合は、検査試料は検出対象物質陰性であると判定すればよい。一方、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合には、蛍光減少量若しくは蛍光減少率Fが第1の判定値J1より小さくならず、かつ蛍光変化量Cxが第2の判定値J2より小さいままの場合であっても、所定の判定時間が経過した場合は、検査試料は検出対象物質陰性であると判定すればよい。
 本発明の方法においては、一旦、検出対象物質陽性又は陰性であると判定されたら、以後の蛍光強度の測定は行う必要はない。また、測定を継続する所定の時間が経過したときに、前記の蛍光増加量若しくは蛍光増加率が判定値より大きくならず、又は蛍光減少量若しくは蛍光減少率Fが第1の判定値J1より小さくならない場合、検査試料は検出対象物質陰性であると判定することができる。
 図3Aに示す従来の方法では、所定の時間が経過するまで抗原抗体反応を行わせて蛍光強度を測定してはじめて検出対象物質を検出することができるが、本発明の方法によれば、所定の時間が経過するまで抗原抗体反応を行わせる必要がない。一定の周期で測定を行い、蛍光増加量が第1の判定値J1より大きくなった時点で検出対象物質が陽性であると判定することができる。また、蛍光増加量が第1の判定値J1より大きくならず、かつ蛍光変化量が第2の判定値J2以下になった時点で、抗原抗体反応が完了しており、検出対象物質が陰性であると判断することができる。従って、本発明の方法によれば、常に最短時間で検出対象物質の有無を判定することができる。測定すべき検査試料が多い場合やオンサイトの検出で測定に費やせる時間に限りがある場合に、本発明の方法は有用である。
 検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体を用いた場合の、図3Bに示す本発明の方法では、第1の判定値J1及び第2の判定値J2の2つの判定値を用いて検出対象物質を検出しているが、蛍光増加量若しくは蛍光増加率に基づく第1の判定値J1のみを用いて検出することもできる。この場合、抗原抗体反応が進行中か、あるいは完了しているかの判定はできないが、蛍光増加量若しくは蛍光増加率が判定値J1より大きくなった時点で検出対象物質が陽性であると判定することができ、蛍光増加量若しくは蛍光増加率が判定値J1より大きくなることなく所定の判定時間が経過した時点で、検出対象物質が陰性であると判定することができる。判定値J2を用いた場合、蛍光増加量若しくは蛍光増加率が判定値J1より大きくならなくても、蛍光変化量が判定値J2以下になった時点で抗原抗体反応が完了したと判定し、その時点で検出対象物質が陰性であると判定することができるので、判定値J1のみを用いるときより検出にかかる時間を節約することができる。
 また、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合は、蛍光減少量若しくは蛍光減少率に基づく第1の判定値J1のみを用いて検出することもできる。この場合、抗原抗体反応が進行中か、あるいは完了しているかの判定はできないが、蛍光減少量若しくは蛍光減少率が判定値J1より小さくなった時点で検出対象物質が陽性であると判定することができ、蛍光減少量若しくは蛍光減少率が判定値J1より小さくなることなく所定の判定時間が経過した時点で、検出対象物質が陰性であると判定することができる。判定値J2を用いた場合、蛍光減少量若しくは蛍光減少率が判定値J1より小さくならなくても、蛍光変化量が判定値J2以上になった時点で抗原抗体反応が完了したと判定し、その時点で検出対象物質が陰性であると判定することができるので、判定値J1のみを用いるときより検出にかかる時間を節約することができる。
 なお、抗原抗体反応速度は、環境温度により異なるので、環境温度が異なる条件で同じ濃度の検出対象物質を同じ時間抗体と反応させた場合、蛍光強度は変わる。従って、複数の種々の温度条件下で判定値を定めておき、実際の測定現場の環境温度に対応した判定値を採用してもよい。
 また、測定時の環境温度にかかわらず、判定値を定めるときに、検出を希望する最大反応温度で測定を行ってもよい。検出を希望する最大反応温度とは、その温度未満では抗原抗体反応が進みにくく検出自体が成立しない温度をいう。例えば、検出を希望する最大反応温度を5℃とした場合、判定値を定めるための蛍光強度の測定を5℃で行えばよい。すなわち、判定値を検出を希望する検出対象物質の最大濃度と検出を希望する最大反応温度を組合せた条件で定めればよい。この場合、5℃で行った測定値により定めた判定値を用いて、30℃で検査試料の検出を行った場合、30℃における抗原抗体速度は5℃における抗原抗体反応速度よりも大きいので、検査試料中に含まれる被検出物質の濃度が、検出を希望しない最大濃度以下の濃度であった場合でも、所定の判定時間以内に蛍光増加量又は蛍光増加率が第1の判定値J1を超え、被検出物質が陽性であると判定される可能性がある。本発明の方法においては、所定の濃度以上の被検出物質が含まれる検査試料が被検出資料陽性と確実に判定されることを目的としているので、このような偽陽性は許容する。このように、検出を希望する最大反応温度で判定値を定めることにより、どのような環境温度でも検出対象物質を迅速に検出することができる。
4.検査用デバイス及び蛍光測定装置
 本発明の方法により免疫学的測定を行う際は、検査試料から検出対象物質を抽出し、該検出対象物質に対する抗体と混合し抗原抗体反応を行わせる。この際、検査試料を抽出し抗原抗体反応を行わせる検査用デバイスを用いてもよい。このようなデバイスとして、例えば、検査試料から検出対象物質を抽出する容器部分と検出対象物質と該検出対象物質に対する抗体とを混合し抗原抗体反応を行わせる容器部分を有するデバイスが挙げられる。
 デバイスの例として、特開2014-032048号公報に記載の試薬セル容器が挙げられる。
 該デバイスは、図4-1に示すように、第一の容器と第二の容器を備える。該デバイスは、第一の容器と第二の容器が隔壁を介して連続し、所定量を第一の容器から第二の容器へ液体を移動させ添加することが可能な一体型のデバイスでもいいし、第一の容器と第二の容器が連続していない別体のデバイスであってもいい。第一の容器には検査試料を抽出するための溶液を含み、第二の容器には検出対象物質を抗原とした抗原抗体反応により抗原を検出するための検出対象物質に対する抗体を含む。抗体は液体でも、乾燥物でもよい。乾燥物としては、凍結乾燥した抗体、第二の容器に固相化した抗体等が挙げられる。第一の容器において、検査試料から検出対象物質が抽出され、検出対象物質を含む抽出液が第二の容器に定容積移動されることにより添加され、第二の容器中で抗原抗体反応が起こる。抽出に用いるための溶液は限定されず、検出対象物質に応じて適宜選択することができ、水、生理食塩水、緩衝液、有機溶媒等が挙げられる。例えば、検査試料が大麻の葉であり、検出対象物質が大麻成分である場合、メタノール等の有機溶媒を用いればよい。
 抗原抗体反応を行った後、反応液中で形成された抗原と抗体の複合体を検出する。例えば、抗体として蛍光標識抗体を用いた場合、抗原と抗体の複合体から発生する蛍光を測定すればよい。抗体としてQ-body(商標)を用いた場合、測定は、第二の容器中の抗原抗体反応後の反応液を蛍光測定装置で測定することにより行うことができる。
 蛍光測定装置は、特定の波長の蛍光を検出し得る検出装置であればいかなる装置をも用いることができる。例えば、特開2014-035290号公報に記載の携帯型蛍光測定装置を用いることができる。該蛍光測定装置100を図4-2及び4-3に示す。上記の検出対象物質検査用デバイスを用いて検査試料より検出対象物質を抽出し抗原抗体反応を行わせた後、反応液を試料として用いて蛍光測定装置により蛍光を測定すればよい。この際、前記検出対象物質検査用デバイスの抗原抗体反応液を含む第二の容器部分を該測定装置に挿入し測定することもできる。
 該測定装置は、少なくとも、容器内の液相対象物中の蛍光色素等の蛍光物質を励起して蛍光を放出させることが可能な励起光を放射する光源と、蛍光色素等の蛍光物質が放出した蛍光を検出する検出器と、光源からの励起光を容器内の液相対象物に導くとともに液相対象物からの蛍光を検出器に導く光学系とを備えている携帯型蛍光光度計である。該測定装置は容器と光源、検出器及び光学系を一体に保持する筐体を備えている。図4-2に携帯型蛍光測定装置の斜視概略図を示し、図4-3に内部構成を示す。図4-2及び4-3に示すように、前記蛍光測定装置は、全体としては扁平なほぼ直方体の箱状のものである。携帯型であるので、大きさとしては人の手のひらサイズかそれよりも少し大きい程度である。該蛍光測定装置の筺体の前面には、光度計の動作状態や測定結果を表示する表示部63と、幾つかの操作ボタン64~69が設けられている。該蛍光測定装置の筺体62は、上面部の一部が開閉蓋61となっている。開閉蓋61を開くと、筺体62内に試薬セル装着部60が形成されている。試薬セル装着部60は、試薬セル70の寸法形状に適合した枠状の部位である。
 試薬セル70は、励起光や蛍光を十分透過する材料で形成されている。具体的には、硼珪酸ガラスや石英、サファイアのようなガラス製、PMMA(アクリル樹脂)、ポリスチレン、COC(環状オレフィン・コポリマー)のような樹脂製のものが試薬セル70の材料として使用される。試薬セル70に抗原抗体反応を行わせた後の反応液を添加し、蛍光を測定すればよい。
 試薬セル70を蛍光測定装置に装着する場合、図4-2に示すように、開閉蓋61を開け、試薬セル70を試薬セル装着部60の挿入孔に挿入する。試薬セル70は、試薬セル装着部に装着されて所定位置で保持される。その後、開閉蓋61は閉じられる。
 光源72は、液相対象物中の蛍光色素等の蛍光物質を励起して蛍光を放出させることができる光(励起光)を放射するものである。光源としては、レーザ光、LED光等を用いることができるが、好ましくは、LEDランプが用いられ、例えば、波長525nmの緑色光を放射するLEDを用いればよく、レンズを備えた出力2mW程度のものを好適に用いることができる。
 蛍光測定装置の光学系は、光源72からの励起光を試薬セル70のセル部に導くと共にセルの液相対象物からの蛍光を検出器76に導くものである。検出器76は、フォトダイオードを使用したものや光電管などの中から適宜選択されるが、フォトダイオードが好適に用いられる。図4-3に示す内部構造を有する測定装置の場合、光学系は光源72からの光を集光するレンズ71、光路の折り曲げと光の選択を行うためのダイクロイックミラー75、光路上に配置されたフィルタ(励起フィルタ73及び蛍光フィルタ74)等から構成されている。ダイクロイックミラー75を挟んで、試薬セル装着部60とは反対側の位置に、検出器76が配置されている。前記蛍光測定装置はさらに電源を供給する電池77及び演算装置78を備えている。演算装置は検出した蛍光強度から試料中の大麻成分濃度を算出し、表示部63に表示することができる。演算装置には、記憶装置が備えられていてもよく、あらかじめ記憶装置に蛍光強度と大麻成分濃度を関連付けした式が記憶されており、該式に基づいて、大麻成分濃度を算出する。概式は、例えば、あらかじめ作成したキャリブレーションカーブを表す式である。
 このような小型の測定装置を用いることにより、取得した試料を実験室に運んで測定することなく、取得現場でオンサイトで大麻成分を検出することが可能になる。
 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 抗体の調製
 軽鎖可変領域と重鎖可変領域をTAMRAでダブル標識したメタンフェタミン用Q-body(登録商標)及び大麻用Q-body(登録商標)を作製した。
1.メタンフェタミン用Q-body(登録商標)の作製
(発現ベクターの構築)
 メタンフェタミンに対する抗体の軽鎖可変領域(VL;配列番号1)と抗体軽鎖定常領域(Cκ;配列番号2)を含むポリペプチドをコードするDNA配列に、N末端にProXタグ(9番目のアミノ酸に対応する塩基配列はTTTであり、翻訳されるとMSKQIEVNFSNET;配列番号3)及びGGGS2スペーサー(GGGSGGGS;配列番号4)のDNA配列を付与し、さらに、C末端にリンカー(配列番号5)及びHisタグのDNA配列を付与した遺伝子を、pIVEX2.3dベクターへ組み込んだ。またメタンフェタミンに対する抗体の重鎖可変領域(VH;配列番号6)と抗体重鎖定常領域(CH1;配列番号7)を含むポリペプチドをコードするDNA配列に、N末端にアンバーコドンを含むProXタグ(9番目のアミノ酸に対応する塩基配列はTAGであり、翻訳されるとMSKQIEVNXSNET(Xは蛍光標識アミノ酸);配列番号3)のDNA配列及びGGGS2スペーサー(配列番号4)を付与し、さらに、C末端にリンカー(配列番号5)及びFLAGタグのDNA配列を付与した遺伝子を、pIVEX2.3dベクターへ組み込んだ。これらの構築した発現ベクターは、挿入したVL又はVHのN末端にProXタグ(翻訳されるとVHは標識され、VLは非標識)が、C末端にHisタグ又はFLAGタグが、それぞれ付加されるよう設計されている。
(Fab型抗体の合成)
 反応液(60μL)は、3μLのEnzyme Mix、0.6μLのMethionine、30μLの2×Reaction Mix、20μLのE-coli Lysate、2μLの2種類のplasmid DNA(各200ng)、3μLの蛍光標識アミノアシル-tRNAamber(480pmol)、1.4μLのNuclease Free Waterを加えた。蛍光標識タンパク質を作製するための蛍光標識アミノアシル-tRNA(TAMRA-X-AF-tRNAamber)は、CloverDirect(商標名)tRNA Reagents for Site-Directed Protein Functionalization(プロテイン・エクスプレス社製)を用いた。反応液は、20℃、2時間で静置して反応させタンパク質合成を行なった後、さらに、4℃、16時間の反応により複合化形成を完成させた。反応終了後、反応液0.5μLを用いてSDS-PAGE(15%)を行い、蛍光イメージアナライザー(FMBIO-III;日立ソフトウェアエンジニアリング社製)でタンパク質発現を観察した。さらに、抗Hisタグ抗体又は抗FLAGタグ抗体を用いてウエスタンブロットを行い、目的の蛍光標識抗体可変領域含有ペプチドが合成されていることを確認した。
(蛍光標識Fab型複合体の精製)
 合成した蛍光標識Fab型複合体は、抗FLAG M2アフィニティーゲル(シグマアルドリッチ社製)やHis-Spin Trap Column(GEヘルスケア社製)により精製を行った。上記反応液(60μL)を、抗FLAG M2アフィニティーゲルを入れたカラムへアプライし、室温で15分間インキュベートした後にWash buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回洗浄を行った。次に200μLのElute buffer(20mMPhosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/100μg FLAG peptide/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回溶出させた。次に溶出液は、His-Spin Trap Columnへアプライした。室温で15分間インキュベートした後にWash buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/60mM imidazole/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回洗浄を行った。次に200μLのElute buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/0.5Mimidazole/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回溶出させた。さらに溶出液は、アミコンウルトラ-0.5遠心式フィルター10kDa(ミリポア社製)を使用し、PBS(+0.05%Tween20)でバッファー交換、濃縮を行った。精製後のサンプルの濃度は、蛍光イメージアナライザー(FMBIO-III;日立ソフトウェアエンジニアリング社製)を用いて測定した。
2.大麻用Q-body(登録商標)の作製
(1)抗テトラヒドロカンナビノール(THC)ハイブリドーマの製造
 マウス系統(BALB/c)にBSA結合THC抗原(Genway Biotech社製)をアジュバンドと共に免疫し、血清力価が上昇後脾臓を摘出し、ミエローマ細胞NS-1株(P3.NS-1/1.Ag4.1)とのPEG法(40%)による細胞融合を実施した。さらにHAT培地による選択後、ELISAによる選抜を実施することで、抗THC抗体(IgG1,kappa)産生ハイブリドーマを得た。得られたハイブリドーマA-04は、2014年11月20日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NITE Patent Microorganisms Depository)(日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE BP-01970(「識別の表示」は、「A-04」)で国際寄託した。
(2) Q-body(登録商標)の作製
 Q-body(登録商標)の作製法はWO2011/061944に記載されており、該公報の記載に基づいて作製することが可能である。
(発現ベクターの構築)
 (1)で作製したテトラヒドロカンナビノール(THC)に対する抗体の軽鎖可変領域(VL)と抗体軽鎖定常領域(Cκ)を含むポリペプチドをコードするDNA配列に、N末端にアンバーコドンを含むProXタグ(9番目のアミノ酸に対応する塩基配列はTAGであり、翻訳されるとMSKQIEVNXSNET(Xは蛍光標識アミノ酸);配列番号3)及びGGGS2スペーサー(配列番号4)のDNA配列を付与し、さらに、C末端にリンカー(配列番号5)及びFLAGタグのDNA配列を付与した遺伝子を、pIVEX2.3dベクター(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)へ組み込んだ。またTHCに対する抗体の重鎖可変領域(VH)と抗体重鎖定常領域(CH1)を含むポリペプチドをコードするDNA配列に、N末端にアンバーコドンを含むProXタグ(9番目のアミノ酸に対応する塩基配列はTAGであり、翻訳されるとMSKQIEVNXSNET(Xは蛍光標識アミノ酸);配列番号3)及びGGGS2スペーサー(配列番号4)のDNA配列を付与し、さらに、C末端にリンカー(配列番号2)及びFLAGタグのDNA配列を付与した遺伝子を、pIVEX2.3dベクター(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)へ組み込んだ。これらの構築した発現ベクターは、挿入したVL又はVHのN末端にProXタグ(翻訳されるとVHは標識され、VLは非標識)が、C末端にHisタグ又はFLAGタグが、それぞれ付加されるよう設計されている。
(Fab型抗体の合成)
 反応液(60μL)は、3μLのEnzyme Mix、0.6μLのMethionine、30μLの2×Reaction Mix、20μLのE-coli Lysate、2μLの2種類のplasmid DNA(各200ng)、3μLの蛍光標識アミノアシル-tRNAamber(480pmol)、1.4μLのNuclease Free Waterを加えた。蛍光標識タンパク質を作製するための蛍光標識アミノアシル-tRNA(TAMRA-X-AF-tRNAamber)は、CloverDirect(商標名)tRNA Reagents for Site-Directed Protein Functionalization(プロテイン・エクスプレス社製)を用いた。反応液は、20℃、2時間で静置して反応させタンパク質合成を行なった後、さらに、4℃、16時間の反応により複合化形成を完成させた。反応終了後、反応液0.5μLを用いてSDS-PAGE(15%)を行い、蛍光イメージアナライザー(FMBIO-III;日立ソフトウェアエンジニアリング社製)でタンパク質発現を観察した。さらに、抗Hisタグ抗体又は抗FLAGタグ抗体を用いてウエスタンブロットを行い、目的の蛍光標識抗体可変領域含有ペプチドが合成されていることを確認した。
(蛍光標識Fab型抗体の精製)
 合成した蛍光標識Fab型抗体は、抗FLAG M2アフィニティーゲル(シグマアルドリッチ社製)やHis-Spin Trap Column(GEヘルスケア社製)により精製を行った。上記反応液(60μL)を、抗FLAG M2アフィニティーゲルを入れたカラムへアプライし、室温で15分間インキュベートした後にWash buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回洗浄を行った。次に200μLのElute buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/100μg FLAG peptide/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回溶出させた。次に溶出液は、His-Spin Trap Columnへアプライした。室温で15分間インキュベートした後にWash buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/60mM imidazole/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回洗浄を行った。次に200μLのElute buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/0.5M imidazole/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回溶出させた。さらに溶出液は、アミコンウルトラ-0.5遠心式フィルター10kDa(ミリポア社製)を使用し、PBS(+0.05% Tween20)でバッファー交換、濃縮を行った。精製後のサンプルの濃度は、蛍光イメージアナライザー(FMBIO-III;日立ソフトウェアエンジニアリング社製)を用いて測定した。
実施例2 抗原の検出
1.Q-body(登録商標)と抗原の反応による蛍光強度の測定
 蛍光測定装置として、特開2014-035290号公報に記載の携帯型蛍光測定装置を用い、試薬セル容器として、特開2014-032048号公報に記載の試薬セル容器を用いて測定を行った。
 実施例1で調製したメタンフェタミン用Q-body(登録商標)及び大麻用Q-body(登録商標)を、それぞれ2nM及び6nMの濃度になるようにPBS(0.05% Tween20, 0.75% BSA, 0.05%+アジ化ナトリウム)で調製した。
 検出対象物質として、MPmOH(3-[(2S)-2-(メチルアミノ)プロピル]フェノール塩酸塩)及びCBN(カンナビノール)を用いた。どちらも疑似薬物抗原として用いた。抗原の終濃度は、MPmOHが3μg/mL、10μg/mL及び30μg/mLであり、CBNが0.1μg/mL、1μg/mL及び10μg/mLであった。抗原としてカンナビノールを用いた場合は、カンナビノール抗原液中にメタノールが含まれているので、反応溶液中にメタノールが含まれる。
 Q-body(登録商標)溶液75μLと抗原溶液25μLを上記の試薬セル容器中で混合し、該試薬セル容器を上記の蛍光測定装置に挿入して蛍光強度を測定した。
 Q-body溶液と抗原溶液の混合直後に蛍光強度を測定し、以降5秒ごとに反応60秒後まで12回測定した。測定はn=1で行った。
 測定は、5℃、25℃又は35℃の恒温槽中で行った。蛍光強度測定の際の励起光源は中心波長525nmのLEDであり、出力890mVで励起した。
 図5に、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光増加率(任意単位)を表す。
 図6に、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)と3μg/mLのMPmOHとの5℃、25℃及び35℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光増加率(任意単位)を表す。
 図7に、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。
 図8に、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)と10μg/mLのMPmOHとの5、25℃及び35℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。
 図9に、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光増加量(mV)を表す。
 図10に、大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0~10μg/mL)との5℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光減少量(mV)を表す。
 図11に、大麻用Q-body(登録商標)と0.1μg/mLのCBNとの5℃、25℃及び35℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光減少量(mV)を表す。
 図12に、大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0~10μg/mL)との5℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。
 図13に、大麻用Q-body(登録商標)と0.1μg/mLのCBNとの5℃、25℃及び35℃における反応の結果を示す。縦軸は蛍光変化量(mV)を表す。
2.判定値の決定
 本発明の方法においては、検査試料中に検出対象物質が含まれているか否かを判定するための蛍光増加量若しくは蛍光増加率に基づく第1の判定値J1と蛍光変化量に基づく第2の判定値J2をあらかじめ定めておく。
 図5~図13に示す蛍光増加率(蛍光増加量)、蛍光減少率(蛍光減少量)及び蛍光変化量の変化に基づいて第1の判定値J1及び第2の判定値J2を定めた。
 蛍光増加率又は蛍光減少率は、反応直後(時間0)からの蛍光増加率又は蛍光減少率であり、反応直後(時間0)における蛍光強度を1とした場合の相対値で表す。また、蛍光増加量又は蛍光減少量は、反応直後(時間0)からの蛍光強度の増加又は減少量(mV)で表す。さらに、蛍光変化量は5秒ごとの複数回の測定において、前の測定からの蛍光強度の変化量(増加又は減少)(mV)で表す。
 図5は、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を蛍光増加率で示した図である。メタンフェタミン用Q-body(登録商標)は、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が正の相関関係にある抗体である。MPmOHについては、検出を希望しない最大濃度を3μg/mLとした。すなわち、検査試料中に3μg/mLを超える濃度でMPmOHが含まれている場合に該検査試料中にMPmOHが検出できた、あるいは該検査試料はMPmOH陽性であるとした。MPmOH濃度3μg/mLにおける60秒後の蛍光増加率は1.2であった。従って、5℃においてメタンフェタミン用Q-bodyを用いてMPmOHを検出するときの、蛍光増加率ベースの第1の判定値J1を1.2とした。図5中に点線で判定値を示す。
 図7は、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を蛍光変化量(mV)で示した図である。
 図7の結果により、蛍光変化量ベースの第2の判定値J2を2mVとした。
 濃度未知の検査試料に10μg/mLのMPmOHが含まれていた場合、図5に示すように反応開始5秒後の2回目の蛍光強度測定において、蛍光増加率は判定値J1より大きくなる。従って、10μg/mLのMPmOHを含む検査試料を本発明の方法で測定した場合、5秒でMPmOH陽性と判定することができる。なお、濃度未知の検査試料に10μg/mLのMPmOHが含まれていた場合、反応開始5秒後の蛍光強度測定において算出される蛍光変化量は約17mVであり、判定値J2より大きい。従って、反応開始5秒後にはまだ抗原抗体反応は完了していないと判定することができる。
 図6は、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(3μg/mL)との5℃、25℃及び35℃における反応の結果を蛍光増加率で示した図であり、図8は、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(10μg/mL)との5℃、25℃及び35℃における反応の結果を蛍光変化量で示した図である。5℃を検出を希望する最大温度とした場合、検出を希望する最大反応温度で判定値を定めることにより、どのような環境温度でも検出対象物質を迅速に検出することができることを示す。
 また、図9は、メタンフェタミン用Q-body(登録商標)とMPmOH(0~30μg/mL)との5℃における反応の結果を蛍光増加量で示した図である。図5に示す蛍光増加率に替えて蛍光増加量を用いても検出対象物質の検出を行うことができる。
 図10は、大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0~10μg/mL)との5℃における反応の結果を蛍光減少量で示した図である。大麻用Q-body(登録商標)は、検出対象物質(抗原)濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体である。CBNについては、検出を希望しない最大濃度を0.1μg/mLとした。すなわち、検査試料中に0.1μg/mLを超える濃度でCBNが含まれている場合に該検査試料中にCBNが検出できた、あるいは該検査試料はCBN陽性であるとした。CBN濃度0.1μg/mLにおける60秒後の蛍光減少量は-15mVであった。従って、5℃において大麻用Q-bodyを用いてCBNを検出するときの、蛍光減少量ベースの第1の判定値J1を-15mVとした。図10中に点線で判定値を示す。
 図12は、大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0~10μg/mL)との5℃における反応の結果を蛍光変化量(mV)で示した図である。
 図12の結果により、蛍光変化量ベースの第2の判定値J2を-4mVとした。0.1μg/mLのCBN濃度における最初に算出される蛍光変化量は-3mVであるが、反応開始30秒経過後の蛍光変化量が-4mVに振れているため、判定値J2を-4mVとした。
 濃度未知の検査試料に1μg/mLのCBNが含まれていた場合、図10に示すように反応開始15秒後の4回目の蛍光強度測定において、蛍光減少量は判定値J1より小さくなる。従って、1μg/mLのCBNを含む検査試料を本発明の方法で測定した場合、15秒でCBN陽性と判定することができる。なお、濃度未知の検査試料に1μg/mLのCBNが含まれていた場合、反応開始5秒後の蛍光強度測定において算出される蛍光変化量は約-6mVであり、判定値J2より小さい。従って、反応開始5秒後にはまだ抗原抗体反応は完了していないと判定することができる。
 図11は、大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0.1μg/mL)との5℃、25℃、35℃における反応の結果を蛍光減少量で示した図であり、図13は、大麻用Q-body(登録商標)とCBN(0.1μg/mL)との5℃、25℃、35℃における反応の結果を蛍光変化量で示した図である。5℃を検出を希望する最大温度とした場合、検出を希望する最大反応温度で判定値を定めることにより、どのような環境温度でも検出対象物質を迅速に検出することができることを示す。
 本発明の方法は、オンサイトで(現場で)迅速に検出対象物質を検出することに利用できる。
50 キャップ
51 第一容器
52 第二容器
53 位置決め部材
60 試薬セル装着部
61 開閉蓋
62 筺体
63 表示部
64~69 操作ボタン
70 試薬セル
71 レンズ
72 光源
73 励起フィルタ
74 蛍光フィルタ
75 ダイクロイックミラー
76 検出器
77 電池
78 演算装置
100 蛍光測定装置
 NITE BP-01970
1~7 合成
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (8)

  1.  抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識された、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる複合体を含む抗原抗体反応用抗体試薬であって、液相中の検出対象物質である抗原濃度と上記蛍光色素の蛍光強度とが正の相関関係にあることを指標として、該検出対象物質である抗原を検出する抗原抗体反応用抗体試薬を用いる検出対象物質の検出方法において、
     抗原抗体反応が開始されてから所定の周期で蛍光強度測定を行い、反応前の蛍光強度に対する各測定ごとの蛍光強度を比較し蛍光増加量又は蛍光増加率を算出し、その蛍光増加量又は蛍光増加率を予め設定した判定値と比較し、蛍光増加量又は蛍光増加率が判定値より大きくなったときに検出対象物質が存在すると判定し、所定の判定時間以内に蛍光増加量又は蛍光増加率が判定値より大きくならなかったときに検出対象物質が存在しないと判定することを含み、
     前記判定値が、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光増加量又は蛍光増加率である、
    検出対象物質の検出方法。
  2.  さらに、各測定ごとにその前の測定時の蛍光強度に対する蛍光強度の変化量である蛍光変化量を算出し、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光強度を、その前の測定時の蛍光強度に対する蛍光変化量である第2の判定値と比較し、各測定ごとの蛍光変化量が第2の判定値以下になったときに、抗原抗体反応が完了したと判断し測定を終了する、請求項1に記載の検出対象物質の検出方法。
  3.  抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている複合体を含む抗原抗体反応用抗体試薬であって、液相中の検出対象物質である抗原濃度と上記蛍光色素の蛍光強度とが負の相関関係にあることを指標として、該検出対象物質である抗原を検出する抗原抗体反応用抗体試薬を用いる検出対象物質の検出方法において、
     抗原抗体反応が開始されてから所定の周期で蛍光強度測定を行い、反応前の蛍光強度に対する各測定ごとの蛍光強度を比較し蛍光減少量又は蛍光減少率を算出し、その蛍光減少量又は蛍光減少率を予め設定した判定値と比較し、蛍光減少量又は蛍光減少率が判定値より小さくなったときに検出対象物質が存在すると判定し、所定の判定時間以内に蛍光減少量又は蛍光減少率が判定値より小さくならなかったときに検出対象物質が存在しないと判定することを含み、
     前記判定値が、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光減少量又は蛍光減少率である、
    検出対象物質の検出方法。
  4.  さらに、各測定ごとにその前の測定時の蛍光強度に対する蛍光強度の変化量である蛍光変化量を算出し、前記複合体と検出を希望しない最大濃度の検出対象物質を所定の判定時間反応させたときの蛍光強度を、その前の測定時の蛍光強度に対する蛍光変化量である第2の判定値と比較し、各測定ごとの蛍光変化量が第2の判定値以上になったときに、抗原抗体反応が完了したと判断し測定を終了する、請求項3に記載の検出対象物質の検出方法。
  5.  所定の周期が5~10秒であり、所定の判定時間が30秒~120秒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の検出対象物質の検出方法。
  6.  前記所定の判定時間を、蛍光測定をするときの環境温度に応じて設定することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の検出対象物質の検出方法。
  7.  前記所定の判定時間を、検査試料中の検出対象物質の想定される濃度に応じて設定することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出対象物質の検出方法。
  8.  前記所定の判定時間を、蛍光測定をするときの環境温度及び検査試料中の検出対象物質の想定される濃度に応じて設定することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出対象物質の検出方法。
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