JP2016200545A - 検査対象物質を識別して検出する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】検査対象物と他の自家蛍光を有する成分の混在物から検査対象物を識別して検出する検出方法の提供。【解決手段】抗原である検査対象物質を蛍光色素で標識した該抗原に対する抗体を用いて測定する方法において、検査試料中に検査対象物質の他に自家蛍光を有し抗体の標識に用いた蛍光色素を励起する波長の励起光照射により蛍光退色が生じる蛍光物質が混在している場合に、検査対象物質のみを識別して検出する方法であって、励起光の強度を、抗体の標識に用いた蛍光色素を測定可能な強度の蛍光が発する程度に励起する強度であって、前記の混在している蛍光物質の蛍光退色が生じないか又は低く抑える程度の強度に調整することを含む方法。【選択図】なし

Description

本発明は、検査対象物質と他の物質が混在している場合にでも、検査対象物質が存在するか否かの判断ができる検出方法に関し、特に不正薬物である大麻成分の識別検出方法に関する。
従来より、大麻の検査には大麻の葉や花冠をアルコール等の有機溶媒に浸し成分を抽出して呈色試薬を使った簡易検査が行われている。試薬等を用いて、発見された物が大麻であることを一次的に認定する。その際には、キットになっている試薬を使用する。
簡易検査には、特定の薬物に対して特有の反応色を示す性質のあるものが試薬として使われる。大麻の場合、もっとも広く使われるのがデュケノア試薬と呼ばれるもので、試薬が大麻の成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)と反応して、呈色反応を示す。具体的には、大麻に3種の液を順に加えて反応させた後、しばらくすると、液体が上下2層に分かれ、上層は透明な薄い紫色、下層は不透明な青紫色を呈する。
しかし、判定のポイントは、試薬を加えた液体が、上下2層に分かれ、その下層が青紫色を呈していることであり、現実的には見極めが難しく、正確な判定は容易ではなかった。
このように大麻の簡易検査の呈色反応の判定は容易ではなく、例えば、薄暗い車両の中などでは誤判定が生じるおそれがあった。さらに、このキットに入っている3種の液体のなかには劇薬の塩酸もあり、取り扱いによっては非常に危険で注意が必要となっている。
このような大麻の従来の検査法の問題点に鑑み、大麻成分に対する抗体(Q-body(商標))を用い抗原抗体反応を利用した大麻成分の免疫学的測定法が提案された(特許文献1)。該免疫学的測定法においては、大麻の成分の一種類であるテトラヒドロカンナビノール(THC)に対する抗THC抗体を用いて行われる。また、この測定を蛍光標識抗体を用いて行う蛍光光度計を用いた薬物検査の方法も提案された(特許文献2)。
上記特許文献1に記載の方法は、正の相関関係を有する抗原抗体反応、すなわち、検出しようとする抗原濃度と検出に用いる蛍光色素で標識した抗体(Q-body(商標))の蛍光強度が正の相関関係を有する抗原抗体反応を利用した抗原検出の方法であり、検出しようとする抗原濃度と蛍光色素で標識したQ-body(商標)の蛍光強度が正の相関関係にある、正の相関関係を有するQ-body(商標)を用いて行う。この際、上記特許文献2に記載の蛍光光度計(蛍光測定装置)を用いて検出することができる。
これら大麻検出法では、大麻成分のみを含む検体を用いて測定することを前提としていた。しかし、大麻はタバコと同じように紙に巻いて加熱して吸引する嗜好が知られ、タバコ葉中に大麻が混入していることがある。大麻とタバコは同じように乾燥した葉状であり、見た目には区別がつきにくい。このような場合、大麻とタバコを識別して検査する必要があった。
国際公開第2013/065314号 特開2014-71084号公報
本発明は、Q-body(商標)技術を用いて、検査対象物質と他の自家蛍光を有する成分の混在物から検査対象物質を識別して検出する検出方法の提供を目的とする。特に、検査対象物質が大麻か否かの判断、及び検査試料にタバコと大麻が混在しているかを判定できる大麻の検出方法の提供を目的とする。
国際公開第2013/065314号に記載されているように、検出しようとする抗原濃度と検出に用いる蛍光色素で標識した抗体の蛍光強度が正の相関関係を有する抗原抗体反応を利用し、Q-body(商標)技術により大麻成分のみの検出を行うことが可能であった(国際公開第2013/065314号の実施例11)。
しかし、タバコとの識別が必要な状況においては、この「正の相関関係を有する抗体」を用いた場合、タバコの抽出成分に自家蛍光があるため、反応後の蛍光値が増加して見かけ上、蛍光量が増加してしまうために誤検知となるので正確な検出は困難であった。
本発明者は新たに検出しようとする抗原濃度と検出に用いる蛍光色素で標識した抗体の蛍光強度が「負の相関関係を有する抗体」を開発し、先に出願した(特願2014-261183)。本発明者は、該「負の相関関係を有する抗体」が特に大麻の成分の検出に効果的であることを示した。
しかしながら、大麻成分の検出についてさらに検討を行った結果、タバコ葉に含まれる蛍光成分は強い光の照射を受けることによって蛍光退色が起こり、蛍光強度が大きく減ってしまうことを見出した。「負の相関関係を有する抗体」を用いて大麻成分を検出しようとする場合、大麻成分濃度が大きいほど検出される蛍光強度は低下するが、タバコ葉の蛍光成分の蛍光強度が光の照射により減少してしまうと、蛍光強度の減少が大麻成分の存在によるものなのか、タバコ葉の蛍光成分の蛍光強度の減少によるものなのか区別が付かず、結局、大麻とタバコの区別がつかなくなってしまうことがわかった。
本発明者らは、「負の相関関係を有する抗体」を用い、自家蛍光を有する成分が混入した検査対象物を正確に測定する方法について鋭意検討を行った。その結果、照射する励起光の強度を小さくし、自家蛍光を有する混入成分の蛍光退色による蛍光強度の減少を防ぐことにより、蛍光強度の減少が検査対象物の濃度に比例することを見出した。この手法は大麻とタバコの識別のみならず、自家蛍光を有する成分が混入したあらゆる検査対象物の測定に用い得ることを見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 抗原である検査対象物質を蛍光色素で標識した、該抗原に対する抗体を用いて測定する方法において、検査試料中に検査対象物質の他に自家蛍光を有し抗体の標識に用いた蛍光色素を励起する波長の励起光照射により蛍光退色が生じる蛍光物質が混在している場合に、検査対象物質のみを識別して検出する方法であって、
励起光の強度を、抗体の標識に用いた蛍光色素を測定可能な強度の蛍光が発する程度に励起する強度であって、前記の混在している蛍光物質の蛍光退色が生じないか又は低く抑える程度の強度に調整することを含む方法。
[2] 検査試料と検査対象物質を蛍光色素で標識した抗体を混合し、混合直後に励起光を照射して第1回目の蛍光測定を行い、その後所定時間経過後に励起光を照射して第2回目の蛍光測定を行い、第2回目の蛍光測定値から第1回目の蛍光測定値を減じて算出した蛍光減少量をあらかじめ定めた蛍光量の判定値と比較し、前記蛍光減少量が前記判定値よりも大きい場合に、検査試料中に検査対象物質が存在すると判断する、[1]の方法。
[3] 抗体が、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体であって、検査試料中の検査対象物質である抗原の濃度と前記抗体が抗原に結合したときに発する蛍光強度とが負の相関にあることを指標として、抗原を検出し得る抗体である、[1]又は[2]の方法。
[4] 検査対象物質が大麻の成分であり、混在している蛍光物質がタバコの葉に含まれる蛍光物質であり、標識抗体が大麻成分に対する抗体であり、大麻の葉が含まれていると疑われるタバコを検査試料として用い、タバコに混入している大麻を識別して検出する、[1]〜[3]のいずれかの方法。
[5] 大麻成分に対する抗体が、受託番号NITE BP-01970で国際寄託されている、テトラヒドロカンナビノール(THC)又はその誘導体に結合する抗体を産生するハイブリドーマが産生する、検査試料中の検査対象物質である抗原の濃度と前記抗体が抗原に結合したときに発する蛍光強度とが負の相関にあることを指標として、抗原を検出し得る抗体である、[4]の方法。
本発明の検査方法によって、検査試料中に検査対象物質と検査対象物質以外の自家蛍光を有する蛍光物質が混在している場合でも、検査対象物質を識別して検出することができる。例えば、検査試料がタバコと大麻のいずれかが分からない場合、あるいはタバコに大麻が混入している場合に、検査試料に大麻が含まれているか否かを明確に識別して検出することができる。さらに、簡易型の測定装置に本発明の方法を適用することでオンサイトでの簡易な検査を実現できる。
抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いて、自家蛍光物質が混在する検査試料を測定した場合の、抗原抗体反応による蛍光減少量と混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少量の関係を示す図である。 判定値(カットオフ値)を定める方法の原理を示す図である。 蛍光測定装置の試薬セル容器を示す図である。 蛍光測定装置の外観を示す図である。 蛍光測定装置の概略断面図を示す図である。 励起光強度の検討の結果を示す図である。 本発明の方法による検査のフローチャートを示す図である。 励起光量を4段階で変化させたときの蛍光減少量を示す図である。 LED励起光源からの励起光の光学素子を経由して試薬セル(の中央)に照射される位置での光量を測定するために用いた治具を示す図である。 励起光及び蛍光の強さの表し方の関係を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、蛍光色素で標識した抗体を用いて抗原抗体反応を利用して、検査試料中に含まれる抗原である検査対象物質を測定する方法において、検査試料中に検査対象物質以外の蛍光退色が生じる蛍光物質が混在している場合に、検査対象物質を正確に識別して検出する方法である。ここで、識別とは検査対象物質に他の物質が混入している場合に、検査対象物質のみを混入物質と区別して検出することをいう。識別は判別ともいう。
1.本発明で用いる抗体
本発明においては、抗体として、抗体軽鎖可変領域(VL)を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域(VH)を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体を用いる。
抗体軽鎖可変領域は、抗体軽鎖遺伝子のV領域及びJ領域のエクソンによりコードされる抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列を含むものであれば特に制限されるものではなく、上記抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端側に、さらに任意のアミノ酸配列が付加されたものであってもよい。また、上記抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列としては、カバット(Kabat)の番号付け系で第35番目のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列であることが好ましい。抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドは、抗体軽鎖可変領域を含有していればよく、抗体軽鎖や、抗体軽鎖に任意のアミノ酸配列からなるペプチドを含むことができ、例えば、抗体軽鎖可変領域に、抗体軽鎖定常領域(Cκ)や、さらにヒンジ部分を付与したポリペプチドとすることができ、中でも抗体軽鎖可変領域にCκを付与したポリペプチド等が好ましい。検査対象の抗原に応じて、抗原を認識し得る抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドを適宜作製することができる。
抗体重鎖可変領域は、抗体重鎖遺伝子のV領域、D領域、及びJ領域のエクソンによりコードされる抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列を含むものであれば特に制限されるものではなく、上記抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端側に、さらに任意のアミノ酸配列が付加されたものであってもよい。また、上記抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列としては、カバット(Kabat)の番号付け系で第36番目、第47番目、又は第103番目のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列であることが好ましい。抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドは、抗体重鎖可変領域を含有していればよく、抗体重鎖や、抗体重鎖に任意のアミノ酸配列からなるペプチドを含むことができ、例えば、抗体重鎖可変領域に、抗体重鎖定常領域(CH1)や、さらにヒンジ部分やFc領域を付与したポリペプチドとすることができ、中でも抗体重鎖可変領域にCH1を付与したポリペプチド等が好ましい。検査対象の抗原に応じて、抗原を認識し得る抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドを適宜作製することができる。
抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドは、複合体を形成することが好ましく、抗体軽鎖可変領域及び抗体重鎖可変領域に、それぞれ複合体を形成するアミノ酸配列を含むペプチドが結合されたものであれば特に制限されるものではない。複合体を形成するペプチドとしては、上記抗体定常領域(CH1やCκなど)の他、2量体を形成する一方を抗体軽鎖可変領域に他方を抗体重鎖可変領域に付与することもできる。また、相互作用してこれらの複合体形成に寄与する2種類のタンパク質を選択することもできる。
本発明において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる複合体を抗体と呼ぶ。また、該複合体は抗原に結合するという抗体が有する特性を有しているので、抗原結合タンパク質と呼ぶこともできる。本発明の抗体は、後述のscFv抗体(一本鎖抗体:single chain variable fragment)、Fab抗体、F(ab')2抗体等を含む。
本発明の抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドとを構成要素として含み、複合体を形成するものであればよく、本発明の蛍光標識された抗体の機能を損なわない限りは、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドに加え、さらにペプチドやタンパク質、脂質、金属その他化合物等を構成要素として含んでもよい。
また、本発明の抗体は、前記ポリペプチド同士が組み合わさって一体として機能し得る構造体であればよく、前記ポリペプチド間の化学結合の有無は特に問題とされない。前記結合としては、前記ポリペプチド同士による、ジスルフィド結合や、架橋剤を用いて形成された結合等を挙げることができ、これらの結合は1つの複合体において複数組み合わせて使用されてもよい。これらの中でもジスルフィド結合を好適に例示することができる。本発明の抗原結合タンパク質は前記ポリペプチド同士が互いに近い距離となる複合体を形成することが好ましく、このような機能をもつペプチドを含む、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる複合体が好ましい。抗体分子において抗体軽鎖定常領域と抗体重鎖定常領域はその相互作用により抗体軽鎖可変領域と抗体重鎖可変領域をより近い距離とし、強固な抗原結合ポケットを形成する補助的役割を果たしている。このことから、本発明の抗原結合タンパク質としては、抗体軽鎖可変領域と抗体軽鎖定常領域からなるポリペプチドと、抗体重鎖可変領域と抗体重鎖定常領域からなるポリペプチド鎖が、ジスルフィド結合で結合した1分子の抗体タンパク質であるFab抗体や、Fab抗体2つがヒンジを介してジスルフィド結合で結合したF(ab')2抗体や、完全体の抗体が好ましく、中でもFab抗体が最も好ましい。また、本発明の抗体は、抗体軽鎖可変領域と抗体重鎖可変領域とからなるscFv抗体(一本鎖抗体:single chain variable fragment)であってもよい。
scFv抗体及びFab抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド1つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つからなり、F(ab')2抗体及び完全体の抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つからなる。scFv抗体及びFab抗体において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドのみが蛍光標識されていてもよく、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのみが蛍光標識されていてもよく、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドの両方が蛍光標識されていてもよい。また、F(ab')2抗体及び完全体の抗体は、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つ及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つの計4つのポリペプチドからなるが、その蛍光標識のパターンとして、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド1つ、又は2つが標識されているもの、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つ、又は2つが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域含むポリペプチド1つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つの2つのポリペプチドが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド1つの3つのポリペプチドが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド1つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つの3つのポリペプチドが標識されているもの、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド2つと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド2つの4つのポリペプチドが標識されているものがある。
本発明の抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる抗体において、いずれか一方が標識されている場合をシングルラベル抗体(例えば、シングルラベルFab抗体等)と呼ぶ。また、両方が標識されている場合、同じ種類の蛍光色素でもよいし、別の種類の蛍光色素でもよい。本発明において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドの両方が蛍光色素により標識され、両方の蛍光色素が同じ種類である場合を同色ダブルラベル抗体(例えば、同色ダブルラベルFab抗体)と呼び、異なる場合を異色ダブルラベル抗体(例えば、異色ダブルラベルFab抗体)と呼ぶ。
本発明において、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドや、これらのポリペプチドからなる複合体である抗体や、その構成要素等は、公知の化学合成法、遺伝子組換え技術、抗体分子のタンパク質分解酵素による分解方法等を用いて調製することができるが、中でも、比較的容易な操作でかつ大量に調製することが可能な遺伝子組換え技術により調製することが好ましい。遺伝子組換え技術により前記ポリペプチドを調製する場合には、かかるポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNAを好適な発現ベクターに導入して組換えベクターを作製し、バクテリア、酵母、昆虫、動植物細胞などを宿主として用いた発現系や、無細胞翻訳系により目的のポリペプチドを発現させることができる。無細胞翻訳系において目的のポリペプチドの発現を行う場合は、例えば、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等の無細胞抽出液に、ヌクレオチド3リン酸や各種アミノ酸を加えた反応液中で、目的のポリペプチドを発現させることができる。この際、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドはProXタグやFLAGタグ、Hisタグ等のタグが付加されていてもよく、これらのタグは蛍光色素の付加や、ポリペプチドの精製等に利用することができる。このようにして得た抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや、抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド同士は、蛍光色素による標識中又は標識の前後に、適当な溶媒中で複合体を形成させることができ、ジスルフィド結合又は架橋剤により結合させ、複合体を形成させる例を挙げることができる。例えば、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドをコードする遺伝子を、大腸菌無細胞合成系で共発現後、4℃で16時間インキュベーションすることによりジスルフィド結合を形成させ複合体を形成することができる。また、大腸菌無細胞合成反応系にタンパク質ジスルフィドイソメラーゼやプロリンシストランスイソメラーゼなどの分子シャペロンを添加することによりジスルフィド結合を促進することができる。また、前記架橋剤としては、ポリペプチド同士を架橋し結合させうる化合物であればよく、例えば、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、カルボジイミド類、イミドエステル類など挙げることができ、適宜市販品を入手し常法により使用することができる。また、本発明の複合体は、抗体を酵素などで切断して作製することもでき、例えばパパインや、ペプシンを用いて抗体を処理することにより、それぞれFab抗体や、F(ab’)2抗体を作製することもできる。
本発明の方法においては、抗体が抗原に結合したときに、抗体が抗原に結合していないときに対して、蛍光の発生の有無や、蛍光強度が変化するように設計された蛍光標識抗体が好適に用いられる。すなわち、標識抗体が抗原に結合していないときには、標識に用いた蛍光色素が消光(クエンチ)されて蛍光を発しないか、特定の波長の蛍光を発生する状態にあるようにし、抗体に抗原が結合した場合に、蛍光色素の蛍光の発生状態が変化し得るようにする。例えば、抗体と抗原が結合していない状態で消光状態にあった蛍光色素が抗体と抗原が結合することにより蛍光を発するようになるか、あるいは抗体と抗原が結合していない状態で蛍光を発していた蛍光色素が抗体と抗原が結合することにより発生する蛍光の波長がシフトするようにする。このような抗体として、消光色素(クエンチャー)により蛍光強度の変化が生じる抗体、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により蛍光色素の発光状態が変化する抗体が挙げられる。すなわち、本発明においては、検査対象物質である抗原と該検査対象物質に対する抗体が複合体を形成したときの蛍光強度が変化し得る抗体を用いる。蛍光強度が変化し得る抗体として、前記抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドが抗原と結合して複合体を形成したときに、該抗原と抗体の複合体が前記蛍光色素のクエンチャーとなり、該抗原と前記抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドの複合体が形成したときに前記蛍光色素がより強くクエンチされることにより蛍光強度が減少する抗体が挙げられる。このような抗体を用いた場合、検査対象である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にあり、該抗体を検査対象である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体という。該抗体により、検査試料中の検査対象物質である抗原の濃度と前記抗体が抗原に結合したときに発する蛍光強度とが負の相関にあることを指標として、抗原を検出することができる。
特に抗体のVH領域に存在するトリプトファン残基を消光色素(クエンチャー)として利用する蛍光標識抗体が挙げられる。抗体のVH領域の第36番目、第47番目、第103番目(Kabatの番号付け系による)にはトリプトファン(W)残基が存在し、これらのトリプトファン残基はクエンチャーとして作用している(WO2011/061944号公報)。蛍光色素で標識した抗体が抗原に結合したときに、蛍光色素がトリプトファン残基の近傍に位置しトリプトファン残基と相互作用して蛍光色素がクエンチするように設計する。すなわち、該蛍光標識抗体は抗原に結合していない状態では、クエンチされており、蛍光を発しない。抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合、抗原と抗体の複合体が蛍光色素にクエンチャーとして作用し、蛍光色素はさらにクエンチされ、蛍光色素が発生する蛍光の蛍光強度は弱くなる。この際、抗体の抗体軽鎖可変領域ポリペプチド及び/又は抗体重鎖可変領域ポリペプチドの標識に用いられた蛍光色素は、抗体の抗原結合ポケット中に位置し、重鎖可変領域のトリプトファンとより近接した位置に存在し、トリプトファンとの相互作用がより強くなり、クエンチされる。抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドの両方が蛍光色素で標識されている場合、両方の蛍光色素が抗体の抗原結合ポケットに入り込み、2つの蛍光色素の間でも相互作用が生じ、蛍光色素間のクエンチング効果(H-dimer)が得られる。この際、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドの標識に用いた蛍光色素と抗体重鎖可変領域ポリペプチドの標識に用いた蛍光色素が異なる蛍光色素であり、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体(ドナー)となる供与体色素とエネルギー受容体(アクセプター)となる受容体色素の組み合わせとなる場合、抗体が抗原と結合したとき、両方の蛍光色素すなわちエネルギー供与体とエネルギー受容体の向きが変化し、エネルギー供与体が発するエネルギーからのエネルギー受容体への蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じなくなり、発生する蛍光の蛍光強度が弱くなる。すなわち、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体を用いて抗原を測定、検出する場合、トリプトファン残基によるクエンチング、蛍光色素間のクエンチングに加え、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)効果によるクエンチングの効果が得られ、クエンチが大きくなる。蛍光色素は抗原と抗体の複合体と疎水的相互作用や静電的相互作用等により相互作用し、クエンチの程度が強くなる。 このように、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いて抗原濃度を測定し、又は抗原を検出する場合、抗原結合タンパク質に結合する抗原が多くなるほど、蛍光色素から発生する蛍光がクエンチされ、蛍光強度が低下する。すなわち、前記抗体が検査対象の抗原と結合して複合体を形成したときに、抗原と抗体の複合体が前記蛍光色素のクエンチャーとなり、液相中の抗原濃度と上記蛍光色素の蛍光強度とが負の相関関係にあり、抗原と抗体の複合体が形成したときに前記蛍光色素がより強くクエンチされることにより蛍光強度が減少する。
本発明において抗体軽鎖可変領域(VL)を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域(VH)を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体をQ-body(商標)と呼び、検査対象物質である抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にあるQ-body(商標)を用いることができる。Q-body(商標)をFab型複合体又はFab型抗体とも呼ぶ。
抗体の蛍光標識に用いる蛍光色素としては、ローダミン、クマリン、Cy、EvoBlue、オキサジン、Carbopyronin、naphthalene、biphenyl、anthracene、phenenthrene、pyrene、carbazole等を基本骨格として有する蛍光色素やその蛍光色素の誘導体を例示することができ、具体的には、TAMRA:carbocytetremethlrhodamine:TMR、Carboxyrhodamine 6G:CR6G、ATTO655(商標名)、CR110:carboxyrhodamine 110:Rhodamine Green(商標名)、BODIPY FL(商標名):4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 493/503(商標名):4,4-difluoro-1,3,5,7-tetramethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-8-propionicacid、BODIPY R6G(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1,3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 558/568(商標名):4,4-difluoro-5-(2-thienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 564/570(商標名):4,4-difluoro-5-styryl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 576/589(商標名):4,4-difluoro-5-(2-pyrrolyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 581/591(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1, 3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、Cy3(商標名)、Cy3B(商標名)、Cy3.5(商標名)、Cy5(商標名)、Cy5.5(商標名)、EvoBlue10(商標名)、EvoBlue30(商標名)、MR121、ATTO 390(商標名)、ATTO 425(商標名)、ATTO 465(商標名)、ATTO488(商標名)、ATTO 495(商標名)、ATTO 520(商標名)、ATTO 532(商標名)、ATTO Rho6G(商標名)、ATTO 550(商標名)、ATTO 565(商標名)、ATTO Rho3B(商標名)、ATTO Rho11(商標名)、ATTO Rho12(商標名)、ATTO Thio12(商標名)、ATTO 610(商標名)、ATTO 611X(商標名)、ATTO 620(商標名)、ATTO Rho14(商標名)、ATTO 633(商標名)、ATTO 647(商標名)、ATTO 647N(商標名)、ATTO 655(商標名)、ATTO Oxa12(商標名)、ATTO 700(商標名)、ATTO 725(商標名)、ATTO 740(商標名)、Alexa Fluor 350(商標名)、Alexa Fluor 405(商標名)、Alexa Fluor 430(商標名)、Alexa Fluor 488(商標名)、Alexa Fluor 532(商標名)、Alexa Fluor 546(商標名)、Alexa Fluor 555(商標名)、Alexa Fluor 568(商標名)、Alexa Fluor 594(商標名)、Alexa Fluor 633(商標名)、Alexa Fluor 647(商標名)、Alexa Fluor 680(商標名)、Alexa Fluor 700(商標名)、Alexa Fluor 750(商標名)、Alexa Fluor 790(商標名)、Rhodamine Red-X(商標名)、Texas Red-X(商標名)、5(6)-TAMRA-X(商標名)、5TAMRA(商標名)、SFX(商標名)を挙げることができるが、中でも、Cy3、EvoBlue10、ローダミン系蛍光色素であるTAMRAやCR110、及びオキサジン系蛍光色素であるATTO655を特に好適に例示することができる。
上記蛍光色素中、同色ダブルラベルに対しては、TAMRAとTAMRAの組合せが特に好ましく、異色ダブルラベルに対しては、TAMRAとCR110の組合せ及びTAMRAとATTO 655の組合せが特に好ましい。
なお、蛍光色素によっては、極性に応じ蛍光強度を変化させる極性感受性を有するものがある(M. Renard et al., J. Mol. Biol. (2002) 318, 429-442)。例えば、IANBD、CNBD、Acrylodan、5-IAF等が挙げられる。これらの蛍光色素で標識した抗体を用いて蛍光クエンチングに基づく測定を行う場合、抗原が結合することにより蛍光色素が溶媒から遮蔽され、蛍光色素がクエンチャーと接触する機会が減少することによりさらにクエンチが進む。本発明においては、上記のような極性感受性を有する蛍光色素は除外され、極性感受性に基づかないクエンチの原理により抗原を測定し又は検出する。
本発明において、蛍光色素により、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドや抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドを標識する方法は特に制限されず、ポリペプチドの両端又は側鎖の官能基を利用して直接又は架橋剤等を介して間接的に標識する方法や、無細胞翻訳系を利用してポリペプチドを合成しながら部位特異的に標識する手法等を用いることができる。無細胞翻訳系を利用して標識する方法としては、アンバーサプレッション法(Ellman J et al.(1991)Methods Enzymol.202:301-36)、4塩基コドン法(Hohsaka T., et al., J. Am. Chem. Soc., 118, 9778-9779, 1996)、C末端標識法(特開2000-139468号公報)、N末端標識法(米国特許第5,643,722号公報、Olejnik et al.(2005)Methods 36:252-260)等が知られており、アンバーサプレッション法では、標識のターゲット部位のアミノ酸をコードするコドンを終止コドンの一つであるアンバーコドンに置き換えたDNA又はmRNAを作製し、無細胞翻訳系を用いて該DNA又はmRNAからタンパク質を合成する。その際、タンパク質合成反応液に標識された非天然アミノ酸を結合させたサプレッサーtRNAを添加することで、アンバーコドンに置換した部位に標識アミノ酸が導入されたタンパク質を合成することができる。4塩基コドン法ではコドンを主にCGGGに拡張し、アミノ酸をコードするコドンをCGGGに置き換えたDNA又はmRNAを作製し、無細胞翻訳系を用いて該DNA又はmRNAからタンパク質を合成する。その際、タンパク質合成反応液に標識された非天然アミノ酸を結合させたtRNA CGGGを添加することで、4塩基コドンに置換した部位に標識アミノ酸が導入されたタンパク質を合成することができる。本発明における異色ダブルラベルには、無細胞翻訳系を用い、アンバーサプレッション法と4塩基コドン法を組み合わせて共発現させることにより、軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び重鎖可変領域を含むポリペプチドに異なる蛍光色素で標識を行い、複合体を形成することができる。また、C末端標識法では、標識したピューロマイシンを最適濃度で添加した無細胞翻訳系において、DNA又はmRNAからタンパク質への翻訳を行うことにより、C末端特異的に標識が導入されたタンパク質を合成することができる。
また、大腸菌や動物細胞を宿主とする遺伝子組み換え技術により部位特異的に蛍光色素を導入する手法を用いることもできる。アジドチロシンを認識するアミノアシルtRNA合成酵素と、サプレッサーアジドチロシル-tRNAを導入した大腸菌を宿主として、部位特異的にポリペプチドにアジドチロシンを導入し、導入したアジド基に蛍光色素を結合することができる。また、古細菌由来ピロリジルtRNA合成酵素と、サプレッサーピロリジル-tRNAを導入した動物細胞を宿主として、部位特異的にポリペプチドにアジドZリジンを導入し、導入したアジド基に蛍光色素を結合することができる。
本発明の抗原結合タンパク質を構成する抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドは、モノクローナル抗体由来のものを用いることができる。すなわち、検査対象物質である抗原を免疫原として用いて常法でモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得て該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドを利用することができる。また、前記ハイブリドーマより、抗体軽鎖可変領域をコードするDNA及び抗体重鎖可変領域をコードするDNAを得て、該DNAを用いてリコンビナントタンパク質として、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド及び抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなる抗原結合タンパク質を製造することもできる。
ハイブリドーマの例として、抗テトラヒドロカンナビノール(THC)またはその誘導体に対する抗体を産生するハイブリドーマが挙げられる。なお、THC、THC-A及びCBNは構造が類似しており、免疫学的に交叉反応するので、抗THC抗体を用いることにより、THC-A及びCBNを検出することもできる。そのようなハイブリドーマの例としてハイブリドーマA-04が挙げられ、該ハイブリドーマA-04は、2014年11月20日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NITE Patent Microorganisms Depository)(日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE BP-01970(「識別の表示」は、「A-04」)で国際寄託されている。該ハイブリドーマが産生する抗体は、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体であり、該抗体の抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドにより、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にあるQ-body(商標)を作製することができる。
2.検査対象物質及び検査試料中に混在する検査対象物質以外の蛍光退色が生じる蛍光物質
検査対象物質である抗原としては、上記抗体重鎖可変領域を含むポリペプチド及び上記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドにより特異的に認識される抗原であれば特に制限されず、例えば、タンパク質、ペプチド、糖質、脂質、糖脂質、低分子化合物等を挙げることができる。すなわち、本発明の方法において、検査対象である抗原はイムノアッセイ、すなわち抗原抗体反応を利用したアッセイで測定し得る抗原又は抗体である。抗原としては抗体を作製し得るものなら如何なる抗原でもよく、例えば、タンパク質、多糖類、脂質、糖脂質等が挙げられる。これらの物質を含む原生動物、真菌、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルス、動物組織等も検出し得る。また、麻薬、爆薬、農薬、香料、公害物質等の低分子化合物を含む化学物質も測定対象となり得る。このような物質として、例えば、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THC-A)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)等のカンナビノイドと呼ばれる大麻成分、アンフェタミン、メタンフェタミン、モルヒネ、ヘロイン、コデインなどの覚せい剤や麻薬類;アフラトキシン、ステリグマトシスチン、ネオソラニオール、ニバレノール、フモニシン、オクラトキシン、エンドファイト産生毒素などのカビ毒;テストステロンやエストラジオールなどの性ホルモン;クレンブテロールやラクトパミンなどの飼料に不正に用いられる添加物;PCB、ゴシポール、ヒスタミン、ベンツピレン、メラミン、アクリルアミド、ダイオキシンなどの有害物質;アセタミプリド、イミダクロプリド、クロルフェナピル、マラチオン、カルバリル、クロチアニジン、トリフルミゾール、クロロタロニル、スピノサド、ランネート、メタミドホス、クロルピリホスなどの残留農薬;ビスフェノールAなどの環境ホルモンなどが挙げることができる。テトラヒドロカンナビノール(THC)には、二重結合の位置異性体があり、Δ8-THCとΔ9-THCがある。THCという場合、Δ8-THCもΔ9-THCも含まれる。上記の物質は各物質の誘導体も含む。
検査試料も限定されず、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液等の生体由来体液試料、培養上清、細胞抽出液、菌体抽出液、廃水や、アレルゲン等の動物組織由来物質、麻薬等が付着している可能性がある物質を紙等で拭った試料等が挙げられる。また、大麻成分等の麻薬や覚せい剤を含む物質が挙げられる。大麻成分を含む物質として、葉、茎、根、種及び花弁等のアサの植物の部分若しくはその植物片、又は葉、茎、根、種及び花弁等のアサの植物の部分から取れる樹液を圧縮して固形状の樹脂にした大麻加工品である大麻樹脂等が挙げられる。通常、植物の部分又はその植物片は、乾燥した状態で乾燥大麻として使用される。本発明においては、植物の部分若しくはその植物片である検査対象物としては、乾燥大麻、特に乾燥大麻植物片が用いられる。
検査試料に混在する物質は限定されないが、検査対象物質以外の自家蛍光を有し、励起光を照射し蛍光を発することにより蛍光退色を生じる蛍光物質である。該混在する蛍光物質は、検査対象物質の測定のための蛍光標識抗体の蛍光を励起する波長の励起光で励起され、蛍光が退色又は消光する。一般的に、蛍光を発し得る物質は、強い励起光を照射するか、あるいは励起光を照射し続けると発生する蛍光の強さが、弱くなるか、あるいは完全に蛍光を発しなくなる。この現象を蛍光退色と呼ぶ。このような自家蛍光を有し、蛍光退色を生じ得る物質として、色素等が挙げられる。また、検査試料に混在する物質は特定の物質として同定されている必要はなく、例えば、検査試料に混入している組成物等に含まれている未特定の蛍光物質も含まれる。例えば、タバコに大麻の葉が含まれている場合があり、タバコ中の大麻の葉の混入を大麻成分の検出により検出する必要がある場合がある。タバコの葉には、明確に同定されていないが、自家蛍光を有する蛍光物質が含まれており、該蛍光物質と大麻成分を識別して検出する必要がある。この場合、検査試料はタバコ、検査対象物質は大麻成分、混在する蛍光物質はタバコの葉に含まれる蛍光物質である。本発明の方法によれば、タバコの葉に大麻の葉が混入している場合に、タバコに含まれる蛍光物質の影響を受けることなく、大麻の混入を識別して検出することができる。すなわち、検査対象物質が大麻の成分であり、混在している蛍光物質がタバコの葉に含まれる蛍光物質であり、大麻の葉が含まれていると疑われるタバコを検査試料として用い、タバコに混入している大麻を検出することができる。
3.本発明の方法による測定
本発明の方法においては、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いるため、発生する蛍光強度は抗原濃度と負の相関関係にある。抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いる場合、抗原抗体反応前の蛍光色素標識抗体に励起光を当て発する蛍光を測定し、次いで抗原抗体反応を行わせた後に再度励起光を当て発する蛍光を測定し、後の測定時における、蛍光強度の低下を指標に抗原濃度を定量する。しかしながら、検査試料中に蛍光退色が生じる蛍光物質が混在する場合、最初の蛍光測定時には、該蛍光物質から発する蛍光も測定されるが、後の蛍光測定時には、蛍光退色が生じており、該蛍光物質から発する蛍光は測定されない。蛍光測定の際に、抗体の標識に用いた蛍光色素が発する蛍光と混在する蛍光物質の蛍光の両方をトータルの蛍光強度として測定される。従って、混在する蛍光物質の蛍光退色の程度が大きいと、トータルの蛍光強度も低下し、検査対象物質の濃度が実際よりも過少に算出されてしまう。
例えば、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いた場合、抗原抗体反応により蛍光は減少し、同時に、混在する蛍光物質の蛍光退色が生じる、トータルの蛍光強度は抗原抗体反応により減少した蛍光強度と混在する蛍光物質の蛍光退色により減少した蛍光強度の和となり、抗原抗体反応による蛍光減少を正確に測定できない。
このような現象が起こるのは、抗体の標識に用いた蛍光色素を励起する波長の光により、混在する蛍光退色が生じる蛍光物質が励起され、抗体の標識に用いた蛍光色素が発する蛍光の波長と混在する蛍光退色が生じる蛍光物質が発する蛍光の波長がオーバーラップする場合である。
本発明の方法においては、検査試料に照射する励起光の強度を調整することにより、検査対象物質のみを識別して検出する。検査対象物質を検出するには、抗原である検査対象物質と蛍光標識抗体の複合体から発する蛍光を検出する必要があり、この検出には一定以上の強度の蛍光を検出する必要があるので、励起光も一定以上の強度が必要である。一方、励起光強度が大きい場合、検査試料中に混在する自家蛍光を有する蛍光物質に蛍光退色が生じ、抗原抗体反応後の蛍光強度の抗原抗体反応開始前の蛍光強度に対する減少が、検査対象物質である抗原の存在によるものなのか、あるいは混在する蛍光物質の蛍光退色によるものなのか区別が困難になってしまう。
図1−1は、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体(Q-body(商標))を用いた場合に、検査試料中の検査対象物質と混在する蛍光物質の区別が困難になる原理を示したものである。図1−1中の数値は説明のために設定した数値であり、実測値ではない。図1−1は、蛍光標識抗体を用いて検査試料中の抗原を測定する際に、検査試料中に自家蛍光を発し、蛍光退色が生じる蛍光物質が混在している場合の、励起光を照射したときの蛍光強度を模式的に示した図である。(1)抗原抗体反応を行う前の抗体(Q-body(商標))のみに励起光を当てて蛍光を測定したときの蛍光強度と検査試料と蛍光標識抗体を混合し、抗原抗体反応を開始した場合の蛍光強度(mV)の経時的変化((2)混合0秒後、(3)混合20秒後及び(4)混合40秒後)を示してある。各バーのドット部分が蛍光標識抗体が発する蛍光の強度、斜線の部分が抗原抗体反応による蛍光標識抗体の蛍光減少を示し、黒い太線で囲んだ部分が混在する蛍光物質から発せられる自家蛍光強度を示し、縦線部分が混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少を示す。検査試料中に蛍光退色が生じる蛍光物質が混在していなければ、経時的な蛍光測定により測定される蛍光減少は、抗原抗体反応による蛍光減少のみであり、この場合、蛍光減少量から抗原量を算出することができる。しかしながら、検査試料中に蛍光退色が生じる蛍光物質が混在している場合、励起光照射による蛍光物質の蛍光退色により蛍光量が減少するので、トータルの蛍光減少量は、抗原抗体反応による蛍光減少と混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少の和であり、抗原抗体反応による蛍光減少のみを測定することができないので、抗原量を正確に測定することができない。図1の場合、(1)Q-body(商標)のみを基準とすると、(2)、(3)及び(4)のトータルの蛍光増加率は、それぞれ、約6倍、約5.6倍及び約5倍になる。この結果は、抗原と抗体を混合する前の蛍光を基準とした場合、測定した蛍光は増加しているように見えてしまうため、混合直後(混合0秒後)を基準にして蛍光変化を評価する必要があることを示している。
しかしながら、照射する励起光の強さを混在する蛍光物質の蛍光退色が生じない強さに調整することにより、混在する蛍光物質の蛍光退色が生じないため、トータルの蛍光減少は抗原抗体反応による蛍光減少となる。すなわち、励起光の強度を、混在する蛍光物質の蛍光退色が生じない程度に低下させることにより、抗原抗体反応のみによる蛍光減少を測定することができ、結果的に検査対象物質である抗原濃度を正確に測定することができる。
実際には、混在する蛍光物質の蛍光退色が全く生じない蛍光強度では、蛍光強度が低過ぎて、蛍光標識抗体の蛍光色素を十分励起することができないことがある。この場合は、蛍光標識抗体の蛍光色素を励起し得る蛍光強度の範囲内で、混在する蛍光物質の蛍光退色を可能な限り低く抑えられる強度の励起光に調整すればよい。
抗体として、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いる場合、励起光強度を小さくすると抗原抗体反応による蛍光減少量は低下し、同時に、混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少量も低下する。励起光強度を低下させたときの、抗原抗体反応による蛍光減少の程度と混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少量の低下の関係はリニアな関係ではなく、励起光強度を低下させたときの混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少量の低下の程度の方が抗原抗体反応による蛍光減少の程度よりも大きい。従って、抗原抗体反応による蛍光減少量が混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少量よりも大きくなる強度の励起光を選択すればよい。
抗体として、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用いる場合、あらかじめ、選択した強度の励起光を用いて、検査対象物質を抗原抗体反応により測定した場合の、蛍光減少量を求め、さらに、検査試料に混在する蛍光物質又は該蛍光物質を含む試料に励起光を照射した場合の蛍光退色による蛍光減少量を求める。抗原抗体反応による蛍光減少量と混在する蛍光物質の蛍光退色による蛍光減少量の間の蛍光減少量を判定値(カットオフ値)として定めておき、蛍光減少量がその判定値を超えた場合に、検査試料中に検査対象物質が含まれている、すなわち、検査対象物質陽性であると判定することができる。
判定値(カットオフ値)は、図1−2を参照に以下の方法で定めることができる。
例えば、抗原抗体反応時の温度は一定とした場合で説明する。図1−2の横軸に記載のように、検査対象物質(抗原)濃度を0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mL、10μg/mLというように低濃度から高濃度までの試料を準備し(抗原をPBST溶液に添加して作成すればよい)、各々の試料に対して励起光照射を行い照射開始(反応開始)60秒後の蛍光減少量を測定する。図1−2下の「励起光照射 1回目」という記載は、抗原と抗体を混合後60秒後に初めて励起光を照射することを示す。この場合、同図の棒グラフのように各々の濃度において蛍光減少量に差が生じる。また、図中の「蛍光退色による蛍光減少」で表される部分は、試料中に蛍光退色が生じ得る蛍光物質が混在していることを想定している。ここで、目的の検査対象物質の検出が必要となる(希望する)下限の濃度(最低検出濃度)を0.1μg/mLと決めた場合、図のXを判定値として定めることができ、Xを「あらかじめ定めた判定値」として用いればよい。
本発明の方法においては、蛍光色素で標識した抗体を検査試料と混合し反応させ、混合直後に第1回目の蛍光量の測定を行う。ここで、「混合直後」とは、混合後速やかに測定することをいう。自家蛍光をもつ蛍光物質を含む検査試料を測定した場合、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を使用しても、反応前を基準とすると見かけ上では、検査対象物質と標識抗体が反応した際の蛍光減少量が小さいので蛍光減少が発生していても、蛍光増加したように見えてしまい、反応(蛍光減少)を確実にとらえることができなくなってしまう(図1−1)。そのため、第1回目の測定を混合直後に行う。
混合後所定時間経過後に第2回目の蛍光量の測定を行う。所定時間は、例えば、10〜120秒後、好ましくは20〜100秒後、さらに好ましくは20〜60秒後である。第2回目の蛍光量測定値の第1回目の蛍光量測定値に対する蛍光減少量を算出すればよい。あらかじめ、判定値を決定していた場合は、蛍光減少量と判定値を比較し、蛍光減少量が判定値より大きい場合に、検査試料中に、検査対象物質が存在していたと判断することができる。
図5は、抗体として、抗原濃度と蛍光色素の蛍光強度が負の相関関係にある抗体を用い、検査試料として、タバコの葉と大麻の葉が混在したものの抽出液を用いた場合の実際の結果である。該実験における検査対象物質は、大麻成分であるカンナビノールであり、抗原濃度が蛍光強度と負の相関関係を有する蛍光標識抗カンナビノール抗体を用いて測定している。タバコの葉には、未特定の蛍光物質が含まれており、この反応系でカンナビノールを測定しようとした場合、蛍光標識抗カンナビノール抗体から発せられる蛍光とタバコの葉に含まれる蛍光物質から発せられる蛍光の両方を測定することになる。図中には、タバコの葉のみからの抽出液及び大麻の葉のみからの抽出液の蛍光測定結果も示してある。励起光強度(量)が小さくなるにつれ、大麻の葉の抽出液を用いた場合の抗原抗体反応による蛍光減少量は小さくなるが、タバコの葉の抽出液を用いた場合の蛍光退色による蛍光減少量はより小さくなる。図5に示した例では、励起光量が890mV及び445mVの場合、大麻の葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量とタバコの葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量の差は大きくなく、また、大麻の葉とタバコの葉の混合物の抽出物を用いた場合の蛍光減少量と大麻の葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量は等しくない。一方、励起光量を297mV又は223mVまで低下させたとき、大麻の葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量とタバコの葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量の差が大きくなり、また、大麻の葉とタバコの葉の混合物の抽出物を用いた場合の蛍光減少量と大麻の葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量は等しくなる。この場合、大麻の葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量とタバコの葉の抽出物を用いた場合の蛍光減少量の間の蛍光減少量を判定値(カットオフ値)とすることにより、大麻成分であるカンナビノールを検出することができる。すなわち、図5の例で、励起光量が297mVのとき、蛍光減少量が約15(mV)以上の場合、検査試料にカンナビノールが存在していると判定することができる。この場合、約15(mV)の蛍光減少量が判定値となり、また、該値をカットオフ値としてカンナビノールの存在の有無を決定することができる。また、カットオフ値を基準にすることにより、カンナビノールを定量することも可能である。例えば、カットオフ値をC1、C2、C3、・・・Cnのように数ポイント定めて、測定された蛍光減少量がC1〜C2の場合の定量値、C2〜C3の場合の定量値のように定量値をあらかじめ定めておけばよい。また、あらかじめ蛍光減少量とカンナビノール濃度の標準曲線を作成しておき、該標準曲線に基づいて定量値を得ることもできる。
4.検査用デバイス及び蛍光測定装置
本発明の方法により免疫学的測定を行う際は、検査試料から検査対象物質を抽出し、該検査対象物質に対する抗体と混合し抗原抗体反応を行わせる。この際、検査試料を抽出し抗原抗体反応を行わせる検査用デバイスを用いてもよい。このようなデバイスとして、例えば、検査試料から検査対象物質を抽出する容器部分と検査対象物質と該検査対象物質に対する抗体とを混合し抗原抗体反応を行わせる容器部分を有するデバイスが挙げられる。デバイスの例として、特開2014-032048号公報に記載の試薬セル容器が挙げられる。
該デバイスは、図2−1に示すように、第一の容器と第二の容器を備える。該デバイスは、第一の容器と第二の容器が隔壁を介して連続し、所定量を第一の容器から第二の容器へ液体を移動させ添加することが可能な一体型のデバイスでもいいし、第一の容器と第二の容器が連続していない別体のデバイスであってもいい。第一の容器には検査試料を抽出するための溶液を含み、第二の容器には検査対象物質を抗原とした抗原抗体反応により抗原を検出するための検査対象物質に対する抗体を含む。抗体は液体でも、乾燥物でもよい。乾燥物としては、凍結乾燥した抗体、第二の容器に固相化した抗体等が挙げられる。第一の容器において、検査試料から検査対象物質が抽出され、検査対象物質を含む抽出液が第二の容器に定容積移動されることにより添加され、第二の容器中で抗原抗体反応が起こる。抽出に用いるための溶液は限定されず、検査対象物質に応じて適宜選択することができ、水、生理食塩水、緩衝液、有機溶媒等が挙げられる。例えば、検査試料が大麻の葉であり、検査対象物質が大麻成分である場合、メタノール等の有機溶媒を用いればよい。
抗原抗体反応を行った後、反応液中で形成された抗原と抗体の複合体を検出する。例えば、抗体として蛍光標識抗体を用いた場合、抗原と抗体の複合体から発生する蛍光を測定すればよい。抗体としてQ-body(商標)を用いた場合、測定は、第二の容器中の抗原抗体反応後の反応液を蛍光測定装置で測定することにより行うことができる。
蛍光測定装置は、特定の波長の蛍光を検出し得る検出装置であればいかなる装置をも用いることができる。例えば、特開2014-035290号公報に記載の携帯型蛍光測定装置を用いることができる。該蛍光測定装置100を図2−2及び2−3に示す。上記の検査対象物質検査用デバイスを用いて検査試料より検査対象物質を抽出し抗原抗体反応を行わせた後、反応液を試料として用いて蛍光測定装置により蛍光を測定すればよい。この際、前記検査対象物質検査用デバイスの抗原抗体反応液を含む第二の容器部分を該測定装置に挿入し測定することもできる。
該測定装置は、少なくとも、容器内の液相対象物中の蛍光色素等の蛍光物質を励起して蛍光を放出させることが可能な励起光を放射する光源と、蛍光色素等の蛍光物質が放出した蛍光を検出する検出器と、光源からの励起光を容器内の液相対象物に導くとともに液相対象物からの蛍光を検出器に導く光学系とを備えている携帯型蛍光光度計である。該測定装置は容器と光源、検出器及び光学系を一体に保持する筐体を備えている。図2−2に携帯型蛍光測定装置の斜視概略図を示し、図2−3に内部構成を示す。図2−2及び2−3に示すように、前記蛍光測定装置は、全体としては扁平なほぼ直方体の箱状のものである。携帯型であるので、大きさとしては人の手のひらサイズかそれよりも少し大きい程度である。該蛍光測定装置の筺体の前面には、光度計の動作状態や測定結果を表示する表示部63と、幾つかの操作ボタン64〜69が設けられている。該蛍光測定装置の筺体62は、上面部の一部が開閉蓋61となっている。開閉蓋61を開くと、筺体62内に試薬セル装着部60が形成されている。試薬セル装着部60は、試薬セル70の寸法形状に適合した枠状の部位である。
試薬セル70は、励起光や蛍光を十分透過する材料で形成されている。具体的には、硼珪酸ガラスや石英、サファイアのようなガラス製、PMMA(アクリル樹脂)、ポリスチレン、COC(環状オレフィン・コポリマー)のような樹脂製のものが試薬セル70の材料として使用される。試薬セル70に抗原抗体反応を行わせた後の反応液を添加し、蛍光を測定すればよい。
試薬セル70を蛍光測定装置に装着する場合、図2−2に示すように、開閉蓋61を開け、試薬セル70を試薬セル装着部60の挿入孔に挿入する。試薬セル70は、試薬セル装着部に装着されて所定位置で保持される。その後、開閉蓋61は閉じられる。
光源72は、液相対象物中の蛍光色素等の蛍光物質を励起して蛍光を放出させることができる光(励起光)を放射するものである。光源としては、レーザ光、LED光等を用いることができるが、好ましくは、LEDランプが用いられ、例えば、波長525nmの緑色光を放射するLEDを用いればよく、レンズを備えた出力2mW程度のものを好適に用いることができる。
蛍光測定装置の光学系は、光源72からの励起光を試薬セル70のセル部に導くと共にセルの液相対象物からの蛍光を検出器76に導くものである。検出器76は、フォトダイオードを使用したものや光電管などの中から適宜選択されるが、フォトダイオードが好適に用いられる。図2−3に示す内部構造を有する測定装置の場合、光学系は光源72からの光を集光するレンズ71、光路の折り曲げと光の選択を行うためのダイクロイックミラー75、光路上に配置されたフィルタ(励起フィルタ73及び蛍光フィルタ74)等から構成されている。ダイクロイックミラー75を挟んで、試薬セル装着部60とは反対側の位置に、検出器76が配置されている。前記蛍光測定装置はさらに電源を供給する電池77及び演算装置78を備えている。演算装置は検知した蛍光強度から試料中の大麻成分濃度を算出し、表示部63に表示することができる。演算装置には、記憶装置が備えられていてもよく、あらかじめ記憶装置に蛍光強度と大麻成分濃度を関連付けした式が記憶されており、該式に基づいて、大麻成分濃度を算出する。概式は、例えば、あらかじめ作成したキャリブレーションカーブを表す式である。
このような小型の測定装置を用いることにより、取得した試料を実験室に運んで測定することなく、取得現場でオンサイトで大麻成分を検出することが可能になる。
本発明の方法において、検査試料に照射する励起光の強度を調整するが、励起光の強度は光源に印加する電圧で表すことができる。この場合の単位は、例えば、mVである。光源としては、例えばLED(発光ダイオード)を用いることができる。また、発する蛍光の強度は、照射される蛍光の強さを放射照度として測定してもよいし、フォトダイオード等の光感受性素子から出力される電流値で表すこともできる。放射照度の単位は、例えば、μW/cm2であり、電流値の単位は、例えば、μAである。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 Q-body(商標)の作製
(1)抗テトラヒドロカンナビノール(THC)ハイブリドーマの製造
マウス系統(BALB/c)にBSA結合THC抗原(Genway Biotech社製)をアジュバンドと共に免疫し、血清力価が上昇後脾臓を摘出し、ミエローマ細胞NS-1株(P3.NS-1/1.Ag4.1)とのPEG法(40%)による細胞融合を実施した。さらにHAT培地による選択後、ELISAによる選抜を実施することで、抗THC抗体(IgG1,kappa)産生ハイブリドーマを得た。得られたハイブリドーマA-04は、2014年11月20日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NITE Patent Microorganisms Depository)(日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE BP-01970(「識別の表示」は、「A-04」)で国際寄託した。
(2)Q-body(商標)の作製
Q-body(商標)の作製法はWO2011/061944に記載されており、該公報の記載に基づいて作製することが可能である。
(発現ベクターの構築)
(1)で作製したテトラヒドロカンナビノール(THC)に対する抗体の軽鎖可変領域(VL)と抗体軽鎖定常領域(Cκ)を含むポリペプチドをコードするDNA配列に、N末端にProXタグ(9番目のアミノ酸に対応する塩基配列はTTTであり、翻訳されるとMSKQIEVNFSNET;配列番号1)のDNA配列を付与し、さらに、C末端にリンカー(配列番号2)及びFLAGタグのDNA配列を付与した遺伝子を、pIVEX2.3dベクター(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)へ組み込んだ。またTHCに対する抗体の重鎖可変領域(VH)と抗体重鎖定常領域(CH1)を含むポリペプチドをコードするDNA配列に、N末端にアンバーコドンを含むProXタグ(9番目のアミノ酸に対応する塩基配列はTAGであり、翻訳されるとMSKQIEVNXSNET(Xは蛍光標識アミノ酸);配列番号3)のDNA配列を付与し、さらに、C末端にリンカー(配列番号2)及びHisタグのDNA配列を付与した遺伝子を、pIVEX2.3dベクター(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)へ組み込んだ。これらの構築した発現ベクターは、挿入したVL又はVHのN末端にProXタグ(翻訳されるとVHは標識され、VLは非標識)が、C末端にHisタグ又はFLAGタグが、それぞれ付加されるよう設計されている。
(Fab型抗体の合成)
反応液(60μL)は、3μLのEnzyme Mix、0.6μLのMethionine、30μLの2×Reaction Mix、20μLのE-coli Lysate、2μLの2種類のplasmid DNA(各200ng)、3μLの蛍光標識アミノアシル−tRNAamber(480pmol)、1.4μLのNuclease Free Waterを加えた。蛍光標識タンパク質を作製するための蛍光標識アミノアシル−tRNA(TAMRA-X-AF-tRNAamber)は、CloverDirect(商標名)tRNA Reagents for Site-Directed Protein Functionalization(プロテイン・エクスプレス社製)を用いた。反応液は、20℃、2時間で静置して反応させタンパク質合成を行なった後、さらに、4℃、16時間の反応により複合化形成を完成させた。反応終了後、反応液0.5μLを用いてSDS-PAGE(15%)を行い、蛍光イメージアナライザー(FMBIO-III;日立ソフトウェアエンジニアリング社製)でタンパク質発現を観察した。さらに、抗Hisタグ抗体又は抗FLAGタグ抗体を用いてウエスタンブロットを行い、目的の蛍光標識抗体可変領域含有ペプチドが合成されていることを確認した。
(蛍光標識Fab型抗体の精製)
合成した蛍光標識Fab型抗体は、抗FLAG M2アフィニティーゲル(シグマアルドリッチ社製)やHis-Spin Trap Column(GEヘルスケア社製)により精製を行った。上記反応液(60μL)を、抗FLAG M2アフィニティーゲルを入れたカラムへアプライし、室温で15分間インキュベートした後にWash buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回洗浄を行った。次に200μLのElute buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/100μg FLAG peptide/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回溶出させた。次に溶出液は、His-Spin Trap Columnへアプライした。室温で15分間インキュベートした後にWash buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/60mM imidazole/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回洗浄を行った。次に200μLのElute buffer(20mM Phosphate buffer(pH7.4)/0.5M NaCl/0.5M imidazole/0.1%Polyoxyethylene(23)Lauryl Ether)で3回溶出させた。さらに溶出液は、アミコンウルトラ−0.5遠心式フィルター10kDa(ミリポア社製)を使用し、PBS(+0.05% Tween20)でバッファー交換、濃縮を行った。精製後のサンプルの濃度は、蛍光イメージアナライザー(FMBIO-III;日立ソフトウェアエンジニアリング社製)を用いて測定した。
実施例2 照射条件の確認
負の相関関係を有する抗体を用いて、大麻葉とタバコ葉が混在しているサンプル中の大麻葉を検出しようとする場合、タバコ抽出液は励起光を照射すると蛍光減少するため、大麻葉のみを検出することは困難であった。
そこで、蛍光測定装置のLED励起光源の出力を低下させることにより、励起光強度を低下させることにより、タバコ抽出液の蛍光減少量を小さくすることができるかを確認し、さらに、検査対象抗原であるカンナビノールとタバコ抽出液を混ぜて測定した場合の蛍光減少量がどの程度になるのかを確認するための検討を行った。
方法
1.試料の調製
(1)タバコ抽出液の調製
タバコは、市販品のMevius(商標) One 1(日本たばこ産業)を用いた。タバコの葉を巻紙から取り出しほぐし、タバコ葉約10mgをメタノール(MeOH)を含むPBS(MeOH:PBS=6:4)1mlに添加し、ボルテックスミキサーで5秒間撹拌した後、5分間超音波処理した。その後、3000rpmで2分間遠心分離を行い、上清を採取し、タバコ抽出液とした。
(2)カンナビノール溶液の調製
カンナビノール(CBN:大麻成分)を0.4%のメタノール(MeOH)を含むPBSTに4μg/mLの濃度で溶解させた。
(3)反応溶液の調製
図2−1に示す蛍光測定装置用の反応用光学セル(試薬セル容器)(図1の第2の容器)内でタバコ抽出液、実施例1の方法で作製したQ-body(商標)を含むQ-body(商標)液及びカンナビノール溶液を以下のように混合した。混合はピペッティングにより行った。
A: PBST 75μL+タバコ抽出液 25μL(終MeOH濃度15%)
B: Q-body(商標)液 75μL+タバコ抽出液 25μL(終MeOH濃度15%)
C: Q-body(商標)液 75μL+カンナビノール液 25μL(終MeOH濃度0.1%,終CBN濃度1μg/mL)
2.蛍光測定
図1の蛍光測定装置を使用し、上記A〜Cの各混合物をサンプルとして、LED(発光ダイオード)からの励起光出力の設定値を以下の5段階に変更して測定した(n=1)。測定は、励起光照射直後及び励起光照射60秒後に行った。
(1) 初期設定値: 890mV
(2) 初期設定値の2分の1: 445mV
(3) 初期設定値の3分の1: 297mV
(4) 初期設定値の4分の1: 223mV
(5) 初期設定値の5分の1: 178mV
結果
図3に、A〜Cの混合物に照射するLED励起光量(励起光強度)を上記のように変えたときの励起光照射60秒後の蛍光強度及び励起光照射直後の蛍光強度からの蛍光減少量を示す。蛍光強度はフォトダイオード(PD)からの出力電圧mVで示す。また、図5に各混合物に照射するLED励起光強度を変えたときの60秒後の蛍光減少量の相対値を示す。励起光出力設定値が初期設定値の4分の1のときの蛍光減少量を1とした。
図3に示すように、LED励起光量を小さくしていくと、タバコの蛍光減少量は小さくなった。ただし、単純な比例関係にはならなかった。
図3に示すように、LED励起光量を小さくしていくと、負の相関関係を有するQ-body(商標)とカンナビノールとの反応による蛍光減少量は小さくなり、比例に近い関係性が見られた。
本実施例の結果より、励起光量を小さくしタバコの蛍光減少を低下させ、蛍光測定装置に応じて、判定の閾値を適正値に変更することで、大麻とタバコの混ぜ物が測定できることが判明した。また、LEDからの放射光の強度はLEDに印加する電圧値で200〜300mV(初期設定値の3分の1〜4分の1)が適切であることがわかった。
実施例3 大麻葉とタバコの混合物を用いての大麻の検出
励起光源の出力を低下させて、実際に大麻葉とタバコの識別検査が可能かを確認した。
方法
方法は図4に記載の検査のフローチャートに従い行った。
1.試料の調製
前処理として、大麻の葉、タバコ、大麻の葉とタバコ混合物は全て、ヘアアイロンで加熱(200℃、15秒)し、乾燥させた。
(1)大麻の葉の抽出液の調製
大麻の葉を秤量冶具にて秤量した量(約30 mg)あたり、抽出溶媒(PBS-T 0.05%tween20 0.05%アジ化ナトリウム)2.4mlにて手振り抽出した。
(2)タバコ抽出液の調製
タバコは、市販品のMevius(商標) MODE 06(日本たばこ産業)を用いた。タバコの葉を巻紙から取り出しほぐし、秤量冶具にて秤量した量(約30 mg)あたり、抽出溶媒(PBS-T 0.05%tween20 0.05%アジ化ナトリウム)2.4mlにて手振り抽出した。
(3)大麻の葉とタバコの葉の抽出液の混合物抽出液の調製
大麻の葉とタバコの葉を半量ずつ混ぜたものを秤量冶具にて秤量した量(約30 mg)あたり、抽出溶媒(PBS-T 0.05%tween20 0.05%アジ化ナトリウム)2.4mlにて手振り抽出した。
2.抗原抗体反応
1で調製した試料を実施例1の方法で作製したQ-Body(商標)を含むQ-body(商標)抗体溶液に定量滴下して混合しQ-body(商標)抗体と反応させた。
3.蛍光測定
LED励起光のピーク波長を525nmに固定し、フォトダイオードの電圧でモニターしながら励起光量の出力を4段階で変化させて、Q-body(商標)抗体と試料の反応液に照射した。励起光量の出力は、初期設定値890mV、初期設定値の2分の1の445mV、初期設定値の3分の1の297mV及び初期設定値の4分の1の223mVの4段階とした。蛍光量の変化は、LEDへの印加電圧を変化させることにより行った。反応液の混合直後に蛍光光量を測定し、さらに反応液混合60秒後(反応開始60秒後)に蛍光光量を測定し、混合直後の蛍光量からの蛍光減少量を以下の式で算出した。
蛍光減少値=[混合直後の蛍光強度]−[60秒後の蛍光強度] (mV)
60秒はオンサイト測定で要求される測定時間から決めたが、反応後測定開始する時間は60秒に限定されるものではなく、その前後数十秒は許容される。
結果
図5に励起光量を4段階で変化させたときの蛍光減少量を示す。測定はn=2で行い、図にはタバコの葉の抽出液を用いた場合、大麻の葉の抽出物を用いた場合、及び大麻の葉とタバコの葉の混合物を用いた場合の蛍光減少量を示す。
図5に示すように、励起光量出力297mV、及び223mVのときに、タバコの葉の抽出液を用いた場合の蛍光減少量と大麻の葉の抽出液を用いた場合の蛍光減少量が重ならず、明確に分かれた。この結果は、励起光量出力297mV、及び223mVのときに、大麻の葉とタバコの葉を明確に区分けできる蛍光量の判定値(カットオフ値)を設定できることが判明した。
LED励起光量の出力を小さくするように調整した場合、タバコの葉に含まれる自家蛍光成分の蛍光減少が少なくなる。タバコの葉からの抽出成分(蛍光物質)には自家蛍光があり、励起光を照射することで蛍光を発する。励起光を小さくするように調整しないと該蛍光物質に蛍光退色が生じ、タバコの葉の蛍光物質が壊れるか、又は、低蛍光性の構造に変化する。このため、蛍光退色による蛍光減少が生じる。しかし、励起光の強度を適度に調整することにより、蛍光退色を起こすことなく、蛍光減少を観測できるため、負の相関関係を有するQ-body(商標)抗体と抗原抗体反応時の蛍光減少のみを測定することが可能となることが判明した。
実施例4 LED励起光源からの励起光の光学素子を経由して試薬セル(の中央)に照射される位置での光量
LED励起光源の入力電圧を変化させた時のセルに照射されている光量を、フォトダイオード(PD)(シリコンフォトダイオード(SiPD))から出力される電流値として測定した。
この測定は、蛍光測定装置内に「試薬セル容器」に代えて同容器と同じ形状及び大きさの測定治具(図6)を挿入して行った。該治具は、励起光が検査対象に照射される位置でどの程度の強さかを調べるためフォトダイオードを使って、フォトダイオードから生ずる光電流を測定するための光電流測定用治具である。該治具は樹脂製の中実体で試薬容器が蛍光測定装置に挿入され同装置内部で保持される外形状に合わせた外形状をしており、同治具が蛍光測定装置に挿入されると、試薬容器が挿入された際に抗原抗体反応が生じている液相部位に励起光が入射する、その同じ位置にフォトダイオードが位置するようになっており、励起光は光取り込み穴から入射する。同治具の高さ方向の中央部には位置決め部材が固定されており、フォトダイオードはフォトダイオード固定板に支持されて、フォトダイオードには光電流を取り出すために配線がなされている。励起光が当たる部位(試薬セルの中央、図6の「フォトダイオード固定版の部位)にPDが配置されるようになっている。
LED励起光源への入力電圧を890mV、445mV、297mV、223mVと変化させ、それぞれの入力電圧のときのPDでの受光量に応じたPDからの出力電流値を各入力電圧ごとに10回づつ測定し、PDの出力電流平均値を求めた。この出力電流平均値を求める測定を3回行い、LED励起光源の入力電圧に対応するフォトダイオード(PD)から出力される電流値を求めた。
図7に示すように、890mVは634μAに対応し、445mVは298μAに対応し、297mVは154μAに対応し、223mVは67μAに対応していた。
上記の測定結果に基づいて、蛍光強度をフォトダイオードからの出力電流値として表すことができる。なお、フォトダイオードからの出力電流値より放射照度を算出することができ、図7には算出した放射照度(μW/cm2)の概算値も示す。
本発明の方法により、自家蛍光を有する蛍光物質が混在している検査試料中の検査対象物質を正確に識別して検出することができる。
50 キャップ
51 第一容器
52 第二容器
53 位置決め部材
60 試薬セル装着部
61 開閉蓋
62 筺体
63 表示部
64〜69 操作ボタン
70 試薬セル
71 レンズ
72 光源
73 励起フィルタ
74 蛍光フィルタ
75 ダイクロイックミラー
76 検出器
77 電池
78 演算装置
80 配線
81 SiPD(シリコンフォトダイオード)
82 フォトダイオード固定版
83 光取り込み穴
84 励起光
85 光源
100 蛍光測定装置
NITE BP-01970

Claims (5)

  1. 抗原である検査対象物質を蛍光色素で標識した、該抗原に対する抗体を用いて測定する方法において、検査試料中に検査対象物質の他に自家蛍光を有し抗体の標識に用いた蛍光色素を励起する波長の励起光照射により蛍光退色が生じる蛍光物質が混在している場合に、検査対象物質のみを識別して検出する方法であって、
    励起光の強度を、抗体の標識に用いた蛍光色素を測定可能な強度の蛍光が発する程度に励起する強度であって、前記の混在している蛍光物質の蛍光退色が生じないか又は低く抑える程度の強度に調整することを含む方法。
  2. 検査試料と検査対象物質を蛍光色素で標識した抗体を混合し、混合直後に励起光を照射して第1回目の蛍光測定を行い、その後所定時間経過後に励起光を照射して第2回目の蛍光測定を行い、第2回目の蛍光測定値から第1回目の蛍光測定値を減じて算出した蛍光減少量をあらかじめ定めた蛍光量の判定値と比較し、前記蛍光減少量が前記判定値よりも大きい場合に、検査試料中に検査対象物質が存在すると判断する、請求項1記載の方法。
  3. 抗体が、抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドからなり、前記抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチドと抗体重鎖可変領域を含むポリペプチドのいずれか一方又は両方が蛍光色素により標識されている抗体であって、検査試料中の検査対象物質である抗原の濃度と前記抗体が抗原に結合したときに発する蛍光強度とが負の相関にあることを指標として、抗原を検出し得る抗体である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 検査対象物質が大麻の成分であり、混在している蛍光物質がタバコの葉に含まれる蛍光物質であり、標識抗体が大麻成分に対する抗体であり、大麻の葉が含まれていると疑われるタバコを検査試料として用い、タバコに混入している大麻を識別して検出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 大麻成分に対する抗体が、受託番号NITE BP-01970で国際寄託されている、テトラヒドロカンナビノール(THC)又はその誘導体に結合する抗体を産生するハイブリドーマが産生する、検査試料中の検査対象物質である抗原の濃度と前記抗体が抗原に結合したときに発する蛍光強度とが負の相関にあることを指標として、抗原を検出し得る抗体である、請求項4記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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