JP2015152404A - 抗原抗体反応を利用した大麻成分の測定方法 - Google Patents

抗原抗体反応を利用した大麻成分の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大麻成分のオンサイト検査を容易にする抗原抗体反応を利用した大麻成分の測定方法を提供することを目的とする。【解決手段】アミド系又はエステル系の潤滑剤を添加したポリプロピレン製のキャップ部材を備えている、ポリプロピレン製の検査試料調製室とポリスチレン製の抗原抗体反応室とを隔壁部で隔てた一体型の縦長容器である検査用デバイスを用い、検査試料調製室でアルコールを40wt%以下含有する大麻成分調製用溶液で大麻成分を調製し、該調製液を、大麻成分に対する抗体を収容した抗原抗体反応室に定容積移動させ、該抗原抗体反応室で大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。【選択図】なし

Description

本発明は、不法薬物である大麻の検査のための大麻成分の測定方法に関する。
従来より、大麻の検査には大麻の葉や花冠をアルコール等の有機溶媒に浸し成分を抽出して呈色試薬を使った簡易検査が行われている。試薬等を用いて、発見された物が大麻であることを一次的に認定する。その際には、キットになっている試薬を使用する。
簡易検査には、特定の薬物に対して特有の反応色を示す性質のあるものが試薬として使われる。大麻の場合、もっとも広く使われるのがデュケノア試薬と呼ばれるもので、試薬が大麻の成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)と反応して、呈色反応を示す(非特許文献1)。具体的には、大麻に3種の液を順に加えて反応させた後、しばらくすると、液体が上下2層に分かれ、上層は透明な薄い紫色、下層は不透明な青紫色を呈する。
しかし、判定のポイントは、試薬を加えた液体が、上下2層に分かれ、その下層が青紫色を呈していることであり、現実的には見極めが難しく、正確な判定は容易ではなかった。
このように大麻の簡易検査の呈色反応の判定は容易ではなく、例えば、薄暗い車両の中などでは誤判定が生じるおそれがあった。さらに、このキットに入っている3種の液体のなかには劇薬の塩酸もあり、取り扱いによっては非常に危険で注意が必要となっている。
また、従来の方法では、大麻成分は100wt%の有機溶媒を用いて抽出していた(特許文献1)。さらに、メタノール等の有機溶媒を用いて抽出した後、液―液抽出などの操作を繰り返して、大麻中の幻覚成分を分離精製する必要があるという報告もあった(特許文献2)。
抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法により抗原を測定するために用いる抗体として、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドとを備え、前記抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方が蛍光色素により標識された抗体が開発されていた(特許文献3)。
特許第4358993号公報 特開2012-69516号公報 特許第5043237号公報
Marja H.Niemi et al, ,JOURNAL OF MOLECULAR BIOLOGY,(2010), VOL400(4), pages 803-814
本発明は、大麻成分のオンサイト検査を容易にする抗原抗体反応を利用した大麻成分の測定方法の提供を目的とする。
大麻取り締まりの現場では、オンサイトで大麻を検出する必要があり、誤判定が少なく、劇物も使用しない安全な判定キットや判定方法が望まれていた。
本発明者らは、簡便に実施でき、誤判定が少なく、劇物も使用しない安全な大麻成分の測定方法として、大麻成分に対する抗体を用い抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法が望ましいと考えた。
しかし、従来は大麻成分の抽出のためにはアルコールなどの有機溶媒が必須であるとされ、100wt%の有機溶媒が抽出に用いられていた。抗体は大麻成分の抽出に必要とされていた有機溶媒に対して耐性が低く、有機溶媒で抽出した大麻成分を抗原抗体反応を利用して測定することはできなかった。
本発明者らは、免疫学的抗原抗体反応に利用する抗体試薬としてQ-body(商標)抗体を用いるQ-body法を開発した(特許第5043237号公報)。Q-body抗体は、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドとを備え、前記抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方が蛍光色素により標識された抗体、すなわち蛍光標識を付加した抗体であり、抗原と結合することにより蛍光を発する。
このQ-Body抗体を用いた方法によれば、税関などの現場で簡易型の蛍光検査器を使用して不法薬物である大麻の検査が可能となる。
検査に使用する大麻成分検査試料を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスは1回のみ使用する使い捨て型のデバイスとなり、経済的観点から安価なポリプロピレン(PP)樹脂製のデバイスが使用される。
Q-body抗体を用いた方法では、縦長の容器の内部を上下2区画とする隔壁があるデバイスを使用する。具体的には、該デバイスは検査対象の大麻成分を調製する第一の容器である検査試料調製室と検査対象成分と抗体を反応させる第二の容器である抗原抗体反応室の2区画を有する。デバイス下部の抗原抗体反応室には、大麻成分と反応する抗体に蛍光標識を付加したQ-body抗体試薬を収容してある。抗原抗体反応室と隔壁を挟んで上部にある検査試料調製室には、検査対象である大麻成分を含む疑いのある検査試料調製液を調製する緩衝液であるPBS-Tを調製用溶液として収容してあり、検査試料調製室の上部はキャップ(蓋)部材で密閉される。
検査に際しては、検査試料調製室のキャップ部材をとり、検査対象物を検査試料調製室へ入れ、デバイスを撹拌し、あるいはデバイスに振動を与えることにより試料と調製用溶液を混合し、検査試料調製液を調製する。そして、隔壁部に形成された所定量の検査試料調製液を検査試料調製室から抗原抗体反応室へ移動させる定容積移動機構部により、一定量の検査試料調製液を抗原抗体反応室へ移し、検査試料調製液とQ-body抗体試薬と反応させる。大麻成分とQ-body抗体が結合すると蛍光を発するので、蛍光検査器で蛍光測定をする。
従来の方法では大麻成分はアルコールで抽出するとされているが、デバイスの素材であるポリプロピレン自体はアルコール耐性があるものの、キャップ部材あるいは隔壁部に形成された定容積移動機構部の摺動部分の摺動性をよくするために、デバイスを構成するポリプロピレンにはアミド系、エステル系の潤滑材が添加されている。この潤滑材はアルコールに耐性がなく溶出してしまうため、大麻成分の検査に際して、潤滑剤が添加されたポリプロピレン製のデバイスを使用すると摺動部分が動きにくくなり使いづらいものとなってしまう。
本発明者らは、抗原抗体反応を用いた大麻成分の測定を可能にすべく、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法による大麻成分(THC-A、THC及びCBN)の測定に必要となる大麻成分の濃度について検討を行った。この際、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法による大麻成分の測定に支障のないアルコール濃度及び大麻成分検査試料を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスの検査試料調製室の摺動部分の摺動性を損なわないアルコール濃度について検討を行った。
すなわち、本発明者らは、大麻成分の調製に用いるメタノールの含有割合を変えた調製用水溶液を用意し、大麻成分の調製量を測定するとともに、デバイスの摺動部分の摺動性に悪影響を与えないメタノール濃度について検討を行った。その結果、メタノールが40重量(wt)%以下の水溶液で、デバイスの摺動部分の摺動性を確保しつつ、抗原抗体反応を損なうことなく大麻成分の検出をすることが可能になることがわかり本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製し、大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法であって、
(i)以下のポリプロピレン製の検査試料調製室とポリスチレン製の抗原抗体反応室とを隔壁部で隔てた一体型の縦長容器である検査用デバイスを用い:
(a)前記検査試料調製室はアミド系又はエステル系の潤滑剤を添加したポリプロピレン製である;
(b)前記検査試料調製室には、アルコールを40wt%以下含有した大麻成分調製用溶液が収容されている;
(c)前記抗原抗体反応室には、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドとを備え、前記抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方又は両方が、抗体重鎖可変領域ポリペプチド又は抗体軽鎖可変領域ポリペプチドに標識された状態でクエンチされる蛍光色素により標識され、前記抗体重鎖可変領域ポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域ポリペプチドが前記抗原を介して複合体を形成したときにクエンチが解消されて蛍光強度が増加する、大麻成分に対する抗体が収容されている;
(d)前記該隔壁部に形成された前記検査試料調製室から前記抗原抗体反応室へ定容積の大麻成分調製液を移動し得る定容積移動機構部を備えている;
(ii)前記の検査用デバイスのキャップ部材を開放し、前記検査試料調製室に大麻成分を含む疑いのある検査試料を入れ、
(iii)前記キャップを閉めて撹拌、振動又は静置により検査試料と大麻成分調製用溶液を混合し、
(iv)前記定容積移動機構部によって前記検査試料調製室から所定量の大麻成分調製液を前記抗原抗体反応室へ定容積移動させ、
(v)前記抗原抗体反応室で大麻成分と前記抗原抗体反応を行う、
ことを含む大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
[2]大麻成分調製用溶液が界面活性剤を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS-T)、界面活性剤を含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は純水の溶液である、[1]の大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
[3]アルコールが、メタノール、エタノール及びプロパノールからなる群から選択される、[1]又は[2]の大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
[4]大麻成分が、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THC-A)又はカンナビノール(CBN)である、[1]〜[3]のいずれかの大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
[5]大麻成分を含む疑いのある検査試料が、葉、茎、根、種及び花弁からなる群から選択されるいずれかの部位を含む植物検査片、又は樹脂である、[1]〜[4]のいずれかの大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
[6][1]〜[5]のいずれかの大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法により、大麻成分を検出する方法。
[7]大麻成分と大麻成分に対する抗体が複合体を形成したときの蛍光強度の変化を測定する、[6]の大麻成分を検出する方法。
本発明の方法は、ポリプロピレン製のデバイスであって潤滑剤を添加したポリプロピレンでできた摺動部分を有する大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせるためのデバイスを用いて大麻成分を含む検査試料より大麻成分を調製し、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法により大麻成分を測定する方法であり、アルコール濃度が40wt%以下の溶液を用いて大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製するため、抗原抗体反応が阻害されることなく、大麻成分を同定検出することができる。また、塩酸等の劇物を使用することもないので、安全に検出できる。さらに、低濃度のアルコールを用いて前記デバイス中で大麻成分を調製するため、ポリプロピレン製のデバイスの摺動部分に添加した潤滑剤が溶出することなく、デバイスの使用が損なわれることなく、大麻成分の検出を行うことができる。
THC、THC-A及びCBNの構造を示す図である。 大麻成分の抽出及び抗原抗体反応を行わせる検査用デバイスの縦断面図である。 蛍光検査器の外観を示す図である。 蛍光検査器の内部構成を示す図である。 励起光照射による抗原抗体反応による抗原同定の原理を示す図である。 図3に示す蛍光検査器の測定系を示す図である。 図2に示す大麻成分抽出反応デバイスを用いた大麻成分の抽出及び抗原抗体反応を行わせる方法を示す図である。 大麻成分の抽出法の概要を示す図である。 アルコール濃度と抗原抗体反応による大麻成分の検出の関係を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、大麻成分を含んでいると疑われる検査試料に大麻成分が含まれているか否かを検査するための抗原抗体反応を行わせる方法であり、さらに、該抗原抗体反応を利用して大麻成分を測定し検出する方法である。
大麻とは、マリファナ(marijuana)ともいい、アサ属(Cannabis属)に属するアサの花冠、葉を乾燥又は樹脂化、液体化したものをいう。本発明においては、大麻成分を含む物質を検査試料とする。大麻成分を含む物質として、葉、茎、根、種及び花弁等のアサの植物の部分若しくはその植物片、又は葉、茎、根、種及び花弁等のアサの植物の部分から取れる樹液を圧縮して固形状の樹脂にした大麻加工品である大麻樹脂等が挙げられる。通常、植物の部分又はその植物片は、乾燥した状態で乾燥大麻として使用される。本発明においては、植物の部分若しくはその植物片である検査対象物としては、乾燥大麻、特に乾燥大麻植物片が用いられる。
大麻には、カンナビノイドと呼ばれる化学物質が大麻成分として含まれ、カンナビノイドは多幸感、鎮痛作用、幻覚作用等の種々の薬理作用を有する。カンナビノイドには、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THC-A)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)等があり、本発明においては、これらの中でも強い幻覚作用を有するテトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THC-A)又はカンナビノール(CBN)の検出を目的とする。THCには、二重結合の位置異性体があり、Δ8-THCとΔ9-THCがある。THCという場合、Δ8-THCもΔ9-THCも含まれる。THC及びTHC-Aの化学構造式を図1に示す。
従来、大麻の検査においては、THCやTHC-AやCBNの大麻成分を大麻植物片からメタノール等の有機溶媒を用いて抽出しており、大麻成分を検出可能に抽出するには、高濃度、例えば、100wt(質量)%の高純度の有機溶媒を用いる必要があると認識されていた。一方、有機溶媒は抗原抗体反応を阻害するため、高濃度の有機溶媒で抽出した大麻成分をそのまま抗原抗体反応を利用して測定することはできなかった。従って、大麻成分を含む検査試料中の大麻成分を有機溶媒を用いて抽出又は溶解させることにより調製し、大麻成分調製液を得て、該調製液を用いて直接抗原抗体反応を利用して大麻成分を測定することはできないと認識されていた。
本発明においては、従来大麻成分を抽出したり、溶解させることができないと認識されていた低濃度の有機溶媒を用いて大麻成分を含む検査試料中の大麻成分を抽出又は溶解させることにより大麻成分調製液を得て、該大麻成分調製液をそのまま直接検体として用いて大麻成分を抗原抗体反応を利用した免疫学的測定方法により測定し検出する。すなわち、本発明により、大麻成分を調製するときのアルコール成分の使用を制限することが可能になる。
さらに、本発明で用いる大麻成分検査試料を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスは、摺動する部材であるキャップ(蓋)部材や隔壁部の定容積移動機構部を有し、これらはポリプロピレンでできており、摺動のためにアミド系やエステル系の潤滑剤が添加されている。これらの潤滑剤はアルコール耐性がなく、高濃度のアルコールにより溶出してしまうため、摺動する部材の潤滑効果がなくなり検査試料の調製及び抗原抗体反応に支障をきたしてしまう。このため、前記検査用デバイスを用いるときには、高濃度のアルコール溶液の使用を避ける必要が生じた。本発明は、ポリプロピレンから潤滑剤が溶出しない濃度のアルコール溶液を用いて大麻成分を調製するため、潤滑剤の溶出によるデバイスの使用への悪影響を防止することができる。
大麻成分調製用の有機溶媒としては、炭素数の小さいアルコールを用い、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノールを用い、この中でもメタノールが好ましい。ここで、大麻成分の調製とは、大麻成分を含む検査試料から大麻成分を抽出すること、又は大麻成分を含む検査試料中の大麻成分を溶解させることをいう。例えば、大麻成分を含む検査試料として大麻植物片を用いる場合、大麻成分を含む検査試料から大麻成分を抽出することをいい、大麻成分を含む検査試料として大麻樹脂を用いる場合、大麻成分を含む検査試料から大麻成分を溶解させることをいう。大麻成分を抽出又は溶解させるための大麻成分調製用溶液は、アルコールを含んでおり、アルコール濃度は、40wt%以下、好ましくは30wt%以下である。アルコール濃度の下限値は限定されないが、例えば、1wt%、2wt%、3wt%、5wt%、7.5wt%、あるいは10wt%である。アルコールは、水で希釈してもよいが、好ましくは緩衝液又は生理食塩水で希釈して用いる。さらに、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈して用いればよい。大麻成分調製用アルコール水溶液は、好ましくは界面活性剤を含む。界面活性剤を含むリン酸緩衝生理食塩水をPBS-Tという。界面活性剤は、限定されないが、Tween-20、Tween-80等が好適に用いられる。
この際、アルコール濃度が高いほど大麻成分抽出効率又は大麻成分溶解効率である大麻成分調製効率は良くなるが、抗原抗体反応を行うためには、数μg/mL以上、例えば、3〜4μg/mL以上の濃度でTHC、THC-A又はCBNが調製できればよい。従って、低濃度のアルコールを含む溶液で抽出しても抗原抗体反応で測定できる程度の濃度のTHC、THC-A又はCBNを調製することが可能になる。大麻成分を調製するときのアルコール濃度が低くなれば、アルコールを含む大麻成分調製液を直接抗原抗体反応を利用した免疫学的測定の検体試料として用いることが可能になる。
調製は大麻成分を含む検査試料をアルコールを含む大麻成分調製用溶液中に入れ、撹拌、振動又は静置することにより行う。撹拌はボルテックスミキサー等の撹拌器を用いて行うことができる。また、超音波を照射して調製してもよい。撹拌、振動は、例えば、10秒〜60分間行えばよい。また、静置により抽出する場合は、大麻成分調製用溶液に大麻成分を含む検査試料を入れ、10秒以上静置すればよい。大麻成分を含む検査試料の大きさは限定されないが、例えば、1〜10mm角片にして調製すればよい。また、粉砕してから調製してもよい。
本発明において大麻成分を抗原として抗原抗体反応を行わせるときに用いる抗体は、大麻成分に対する特異的抗体、好ましくは、抗THC抗体、抗THC-A抗体又は抗CBN抗体を蛍光物質で標識したQ-body抗体を用いる。なお、THC、THC-A及びCBNは構造が類似しており、免疫学的に交叉反応するので、抗THC抗体、抗THC-A抗体又は抗CBN抗体のいずれかを用いることにより、THC、THC-A及びCBNを測定することができる。Q-body抗体は、蛍光標識抗体であり、抗体が抗原に結合したときに、抗体が抗原に結合していないときに対して、蛍光の発生の有無や、蛍光強度が変化するように設計された蛍光標識抗体である。すなわち、Q-body抗体が抗原に結合していないときには、標識に用いた蛍光物質が消光(クエンチ)されて蛍光を発しないか、特定の波長の蛍光を発生する状態にあるようにし、抗体に抗原が結合した場合に、蛍光色素の蛍光の発生状態が変化し得るようにする。例えば、抗体と抗原が結合していない状態で消光状態にあった蛍光色素が抗体と抗原が結合することにより蛍光を発し蛍光強度が増加するようになるか、あるいは抗体と抗原が結合していない状態で蛍光を発していた蛍光色素が抗体と抗原が結合することにより発生する蛍光の波長がシフトするようにする。このような抗体として、消光色素(クエンチャー)により蛍光強度の変化が生じる抗体、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により蛍光色素の発光状態が変化する抗体が挙げられる。すなわち、本発明においては、大麻成分と大麻成分に対する抗体が複合体を形成したときの蛍光強度が変化し得る抗体を用いる。
特に抗体のVH領域に存在するトリプトファン残基を消光色素(クエンチャー)として利用する蛍光標識抗体が挙げられる。抗体のVH領域の第36番目、第47番目、第103番目(Kabatの番号付け系による)にはトリプトファン(W)残基が存在し、これらのトリプトファン残基はクエンチャーとして作用している(WO2011/061944号公報)。蛍光色素で標識した抗体抗原に結合したときに、蛍光色素がトリプトファン残基の近傍に位置しトリプトファン残基と相互作用して蛍光色素がクエンチするように設計する。すなわち、該蛍光標識抗体は抗原に結合していない状態では、クエンチされており、蛍光を発しない。抗体に抗原が結合すると、抗体の立体構造が変化し、トリプトファンの近傍に位置していた蛍光色素はトリプトファンから離れ、トリプトファンと相互作用しなくなり、クエンチが解除され、蛍光を発するようになる。抗原が存在する場合、抗体と抗原が結合し、抗体の立体構造が変化し、蛍光色素のクエンチが解除され、蛍光を発するようになる。この蛍光を測定することにより、抗原の存在を検出することができ、また蛍光強度により抗原を定量することもできる。本発明において、このような蛍光標識抗体を、Q-bodyという。すなわち、Q-body抗体は、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドとを備え、前記抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方又は両方が、抗体重鎖可変領域ポリペプチド又は抗体軽鎖可変領域ポリペプチドに標識された状態でクエンチされる蛍光色素により標識され、前記抗体重鎖可変領域ポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域ポリペプチドが前記抗原を介して複合体を形成したときにクエンチが解消されて蛍光強度が増加する抗体である。
上記Q-bodyの抗体重鎖可変領域ポリペプチドとしては、抗体重鎖遺伝子のV領域、D領域、及びJ領域のエクソンによりコードされる抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列を含むものであれば特に制限されるものではなく、上記抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端側に、さらに任意のアミノ酸配列が付加されたものであってもよい。また、上記抗体重鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列としては、カバット(Kabat)の番号付け系で第36番目、第47番目、又は第103番目のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列であることが好ましい。
上記Q-bodyの抗体軽鎖可変領域ポリペプチドとしては、抗体軽鎖遺伝子のV領域及びJ領域のエクソンによりコードされる抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列を含むものであれば特に制限されるものではなく、上記抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端側に、さらに任意のアミノ酸配列が付加されたものであってもよい。また、上記抗体軽鎖可変領域に特異的なアミノ酸配列としては、カバット(Kabat)の番号付け系で第35番目のアミノ酸がトリプトファンであるアミノ酸配列であることが好ましい。
抗体軽鎖可変領域ポリペプチド、抗体軽鎖可変領域ポリペプチド、及び、抗体軽鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域の両方を含む一本鎖抗体ポリペプチドは、公知の化学合成法、遺伝子組換え技術、抗体分子のタンパク質分解酵素による分解方法等を用いて調製することができるが、中でも、比較的容易な操作でかつ大量に調製することが可能な遺伝子組換え技術により調製することが好ましい。
Q-bodyを標識する蛍光色素としては、抗体重鎖可変領域ポリペプチド又は抗体軽鎖可変領域ポリペプチドに標識された状態でクエンチ(消光)されるものであれば特に制限されず、ローダミン、クマリン、Cy、EvoBlue、オキサジン、Carbopyronin、naphthalene、biphenyl、anthracene、phenenthrene、pyrene、carbazole等を基本骨格として有する蛍光色素やその蛍光色素の誘導体を例示することができ、具体的には、CR110:carboxyrhodamine 110:Rhodamine Green(商標名)、TAMRA: carbocytetremethlrhodamine:TMR、ATTO655(商標名)、BODIPY FL(商標名):4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 493/503(商標名):4,4-difluoro-1,3,5,7-tetramethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-8-propionicacid、BODIPY R6G(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1,3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 558/568(商標名):4,4-difluoro-5-(2-thienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 564/570(商標名):4,4-difluoro-5-styryl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 576/589(商標名):4,4-difluoro-5-(2-pyrrolyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 581/591(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1,3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-p
ropionic acid、Cy3(商標名)、Cy3B(商標名)、Cy3.5(商標名)、Cy5(商標名)、Cy5.5(商標名)、EvoBlue10(商標名)、EvoBlue30(商標名)、MR121、ATTO 390(商標名)、ATTO 425(商標名)、ATTO 465(商標名)、ATTO 488(商標名)、ATTO 495(商標名)、ATTO 520(商標名)、ATTO 532(商標名)、ATTO Rho6G(商標名)、ATTO 550(商標名)、ATTO 565(商標名)、ATTO Rho3B(商標名)、ATTO Rho11(商標名)、ATTO Rho12(商標名)、ATTO Thio12(商標名)、ATTO 610(商標名)、ATTO 611X(商標名)、ATTO 620(商標名)、ATTO Rho14(商標名)、ATTO 633(商標名)、ATTO 647(商標名)、ATTO 647N(商標名)、ATTO 655(商標名)、ATTO Oxa12(商標名)、ATTO 700(商標名)、ATTO 725(商標名)、ATTO 740(商標名)、Alexa Fluor 350(商標名)、Alexa Fluor 405(商標名)、Alexa Fluor 430(商標名)、Alexa Fluor 488(商標名)、Alexa Fluor 532(商標名)、Alexa Fluor 546(商標名)、Alexa Fluor 555(商標名)、Alexa Fluor 568(商標名)、Alexa Fluor 594(商標名)、Alexa Fluor 633(商標名)、Alexa Fluor 647(商標名)、Alexa Fluor 680(商標名)、Alexa Fluor 700(商標名)、Alexa Fluor 750(商標名)、Alexa Fluor 790(商標名)、Rhodamine Red-X(商標名)、Texas Red-X(商標名)、5(6)-TAMRA-X(商標名)、5TAMRA(商標名)、SFX(商標名)を挙げることができるが、中でも、ローダミン系蛍光色素であるCR110やTAMRA、及びオキサジン系蛍光色素であるATTO655を特に好適に挙げることができる。
Q-bodyについては、特許第5043237号公報及びWO2013/065314に記載されている。
上記のQ-body抗体を用いる場合、抗体と大麻成分が結合したときに発生する蛍光を測定すればよい。免疫学的測定を行う抗原抗体反応系は、液系でも固相系でもよい。固相系は、乾燥した抗体を用いる。乾燥抗体としては、フリーズドライした抗体や固定化した抗体を用いることができる。大麻成分検査試料を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスの抗原抗体反応室に抗体溶液又は乾燥抗体を入れておき、該抗原抗体反応室に、前記デバイスの検査試料調製室中の大麻成分を含む検査試料より調製した大麻成分調製液を添加すればよい。
抗原抗体反応時にアルコール成分を含む大麻成分調製液を検体試料として用いるため、抗原抗体反応が起こる際に反応系にアルコールが含まれており、アルコール濃度が高いと抗体が変性されてしまい、抗原抗体反応に悪影響がでる。例えば、メタノールを用いた場合、メタノールにより抗体が変性されてしまい、抗原抗体反応に影響がでる。
さらに、後述のように本発明の方法で用いる大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスにおいて摺動する部分の、摺動性を良くするために、摺動部分を含む検査試料調製室は潤滑剤を添加したポリプロピレンでできている。アルコール濃度が40wt%を超える溶液が該部分に接触すると潤滑剤が溶出してしまい摺動部分の摺動性が低下してしまう。従って、大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスを使用する際にはアルコール濃度が40wt%以下の大麻成分調製用溶液を用いる必要がある。さらに、抗原抗体反応時のQ-body抗体と混合した状態でのアルコール終濃度は、20wt%以下、好ましくは15wt%以下、さらに好ましくは10wt%以下、さらに好ましくは7.5wt%以下、特に好ましくは5wt%以下である。なお、大麻成分を調製するためのアルコール成分は大麻成分調製用溶液に含まれており、アルコール成分0wt%の大麻成分調製用溶液は使用しない。
例えば、本発明の方法においては、アルコール40wt%以下を含む大麻成分調製用溶液(アルコール0wt%の大麻成分調製用溶液を除く)を用いて大麻成分を含む検査試料より大麻成分を調製し、得られた大麻成分調製液をアルコールが含まれた状態で抗原溶液として用いるため、大麻成分調製液と抗体を添加したときのアルコール終濃度が20wt%以下、好ましくは15wt%以下、さらに好ましくは10wt%以下、さらに好ましくは7.5wt%以下、特に好ましくは5wt%以下となるように大麻成分調製用溶液のアルコール濃度を調整する必要がある。乾燥させた抗体又は固相化した抗体を用いる場合は、大麻成分調製液中のアルコール濃度は、20wt%以下とすればよい。また、大麻成分調製用溶液と抗原溶液を容積比1:1で混合して抗原抗体反応を行わせる場合は、大麻成分調製用溶液のアルコール濃度を40wt%以下、好ましくは30wt%以下、さらに好ましくは20wt%以下、さらに好ましくは15wt%以下、特に好ましくは10wt%以下とすればよい。通常、抗原抗体反応時は、大麻成分調製用溶液と抗体溶液を容積比1:1〜1:3で混合する。従って、大麻成分の抽出効率と抗原抗体反応の両方を考慮した場合の大麻成分調製用溶液中のアルコール濃度は、40wt%以下、好ましくは30wt%以下、さらに好ましくは20wt%以下、さらに好ましくは15wt%以下、特に好ましくは10wt%以下である。
免疫学的測定を行う際には、大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製し、大麻成分に対する抗体と混合し抗原抗体反応を行わせることができる大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスを用いてもよい。このようなデバイスとして、例えば、大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製する第一の容器である検査試料調製室と大麻成分と大麻成分に対する抗体であるQ-body抗体とを混合し抗原抗体反応を行わせる第二の容器である抗原抗体反応室を有するデバイスが挙げられる。大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせる検査用デバイスを大麻成分検査用デバイスということもある。
以下、大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせる検査用デバイス及び該デバイスを用いた大麻成分の調製方法及び検査試料調製液である大麻成分調製液と大麻成分に対するQ-body抗体とを混合し抗原抗体反応を行わせる方法について説明する。以下の説明において、大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製する検査試料調製室を第一の容器と称し、検査対象成分とQ-body抗体を反応させる抗原抗体反応室を第二の容器と称する。
第一の容器の容量は、1.2〜4.8mL程度、第二の容器の容量は、50〜200μL程度であり、デバイス全体の大きさは、長さ54〜216mm、外径7〜26mm程度である。該デバイスは、第一の容器と第二の容器を備える。これは隔壁を介して連続し、所定量を第一の容器から第二の容器へ液体を移動させ添加することが可能な一体型の縦長容器であるデバイスでもいいし、別体のデバイスであってもいい。第一の容器にはアルコール濃度が40wt%以下の溶液を含み、第二の容器には大麻成分を抗原とした抗原抗体反応により抗原を検出するための大麻成分に対するQ-body抗体を含む。抗体は液体でも、乾燥物でもよい。乾燥物としては、凍結乾燥した抗体、第二の容器に固相化した抗体等が挙げられる。第一の容器において、大麻成分を含む検査試料から大麻成分が調製され、大麻成分を含む調製液が第二の容器に定容積移動されることにより添加され、第二の容器中で抗原抗体反応が起こる。
該デバイスは、第一の容器でアルコールを含む大麻成分調製用溶液を用いて大麻成分を調製した後に大麻成分を含む調製液を第二の容器へ添加するための機構を備えていてもよい。調製用溶液を含む第一の容器に大麻成分を含む検査試料を入れ、撹拌、振動又は静置することにより調製する。
該検査用デバイスの第一の容器及び第二の容器は円筒形状を有しており、第二の容器は第一の容器の下方に装着される。第一の容器の内周側には、計量部材が嵌着され、該計量部材は、第一の容器に対して接離する方向に移動可能である。また、第一の容器の上方開口部には、キャップ部材が挿着され、該キャップ部材は、90度回転させ9mm押し込む、あるいは、取り外すことにより、前記計量部材に対して接離する方向に移動可能である。大麻成分検査用デバイスで大麻成分を調製するときには、検査用デバイスのキャップ部材を回転させ取り外し、検査試料を入れ、その後キャップを閉め大麻成分を調製すればよい。
前記計量部材の底部には、液体が流通する液体流通開口部が形成され、前記計量部材の底部には、液体を計量するための計量用溝部を備えた計量ロッドが突設されている。
第一の容器中で大麻成分を調製した後、大麻成分を含む大麻成分調製液が、計量部材の液体流通開口部を介して、計量用溝部に収容され、前記キャップ部材に対して接近する方向に移動させることにより、キャップ部材が計量部材に当接し、さらにキャップ部材を計量部材に対して接近する方向に移動させることにより、計量部材を第二の容器に接近する方向に移動させる。この結果、前記計量部材の計量用溝部に収容されている所定の量の大麻成分調製液が、第二の容器に添加され、第二の容器に含まれる大麻成分に対するQ-body抗体に混合され、抗原抗体反応が生じる。
すなわち、このデバイスを用いることにより、第一の容器中で調製された大麻成分調製液が、計量部材の液体流通開口部を介して、計量用溝部に収容される。その後、キャップ部材を計量部材に対して接近する方向に移動させることにより、キャップ部材が計量部材に当接し、さらにキャップ部材を計量部材に対して接近する方向に移動させることにより、計量部材が第二の容器に接近する方向に移動し、計量部材の計量用溝部に収容された所定の量の大麻成分調製液を第二の容器中に含まれる大麻成分に対するQ-body抗体に添加することができる。
前記計量部材は計量ロッドを備え、該計量ロッドが、第一の容器の内側に形成された計量用側壁に沿って、液密状態で摺動するように構成されている。
このように構成することにより、計量部材の計量ロッドが、第一の容器の内周に形成された計量用側壁に沿って、液密状態で摺動するので、一旦計量用溝部に収容された所定の量の大麻成分調製液が、漏洩することなく、常に所定の量の大麻成分調製液を、第二の容器に収容した大麻成分に対するQ-body抗体に混合することができる。
また、第一の容器は、前記計量部材の計量ロッドが、一定間隔離間した上方シール部と、下方シール部とから構成され、前記上方シール部と下方シール部とのあいだに、計量用溝間部が形成されている。
このように、構成することにより、上方シール部と下方シール部との間に、計量用溝部が形成されているので、これらのシール部でシールされることになり、一旦計量用溝部に収容された所定の量の大麻成分調製液が、漏洩することなく、常に所定の量の大麻成分調製液を、第二の容器に収容した大麻成分に対するQ-body抗体に混合することができる。
図2に上記の大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせる検査用デバイスの縦断面図を示す。大麻成分検査用デバイス10は、大麻成分を調製する調製用溶液L1を含む第一の容器12を備えており、この第一の容器の下方には、大麻成分に対するQ-body抗体L2を含む第二の容器14が装着されている。
また、第一の容器12の内周側には、第二の容器14に対して、接離する方向に移動可能な計量部材16が嵌着されている。
さらに、第一の容器12の上方開口部12aに、計量部材16に対して、接離する方向に移動可能なキャップ部材18が挿着されている。第一の容器12は、略円筒形状の容器本体部20を備えており、容器本体部20の底部には、容器本体部20の径よりも小径に形成された計量用側壁22が形成されている。また、この計量用側壁22の下端は、再び径が大きくなった係合部24が延設されており、この係合部24の外周に係合突起24aが形成されている。
また、容器本体部20の内壁20aには、計量部材16を、第一の容器12の内周側に嵌着した際に、計量部材16を位置決めするための位置決め用突設部26が形成されている。
また、第一の容器12の上方開口部12aの近傍の内壁20aには、上方開口部12aにキャップ部材18を装着した際に、キャップ部材18を係止するための係止突設部28が形成されている。
第一の容器12の上方開口部12aの近傍の内壁20aには、キャップ部材18を計量部材16に対して接近する方向に移動させる際に、キャップ部材18を案内する案内溝30が形成されている。
図2に示したように、第二の容器14は、略円筒形状の第二の容器本体14aを備えており、この第二の容器本体14aの内部に、大麻成分に対するQ-body抗体L2を収容するための有底筒状の抗体収容部34が形成されている。
また、第二の容器14の本体14aの上部には、第一の容器12の下方に装着した際に、第一の容器12の容器本体部20の外周に形成された係合突起24aと係合する、係合スリット14bが形成されている。
さらに、第二の容器14の本体14aの下部には、対向する2つのスリット開口部36が形成されており、例えば、これらのスリット開口部36を介して、光を照射して、第二の容器14の抗原抗体反応の検査ができるように構成されている。
なお、本発明の大麻成分検査用デバイス10の使用用途によっては、このようなスリット開口部36を設けないようにすることも可能である。
また、図2に示したように、計量部材16は、略円筒形状の計量部材本体38を備えており、この計量部材本体38の底部には、液体が流通する液体流通開口部40が形成されている。
また、計量部材16の計量部材本体38の下端には、計量ロッド44を備えており、この計量ロッド44が、第一の容器12の内周に形成された計量用側壁22に沿って、液密状態で摺動するように構成されている。
計量部材16の計量部材本体38の外径は、第一の容器12の容器本体部20の内径とほぼ同じか、僅かに小さく形成されており、計量部材16が、第一の容器12の容器本体部20の内壁20aに沿って摺動して、第二の容器14に対して、接離する方向に移動可能となっている。
一方、キャップ部材18は、図2に示したように、略円筒形状のキャップ部材本体52と、上面54と、キャップ部材本体52から外側に離間して、上面54の外周端部から下方に延設された操作部材56とを備えている。
この場合、キャップ部材本体52の外径は、第一の容器12の容器本体部20の内径とほぼ同じか、僅かに小さく形成されており、後述するように、計量部材16に対して、接離する方向に移動可能となっている。
また、大麻成分検査用デバイス10を誤って倒してしまった場合にも、第一の容器12の容器本体部20内に収容した調製用液体L1が、外部に漏洩しないように、キャップ部材本体52の外径は、第一の容器12の容器本体部20の内径に対して、液密的にシールするような寸法にするのが望ましい。
また、操作部材56の内径は、計量部材16に対して、接離する方向に移動可能となるように、第一の容器12の容器本体部20の外径とほぼ同じか、僅かに大きくなるように形成されている。
また、キャップ部材本体52と操作部材56との間に位置する、上面54の下面54aに、第一の容器12の上端12bが当接してストッパーとして機能することによって、計量部材16がこれ以上、第二の容器14に対して、接近する方向に移動することがないように構成されている。
なお、図示されていないが、キャップ部材18のキャップ部材本体52には、第一の容器12の内壁に形成された案内溝30に嵌合して摺動ずる案内突設部が形成されている。
このように構成される本発明の大麻成分検査用デバイス10は、例えば、下記のように使用される。
先ず、図2に示したように、本発明の大麻成分検査用デバイス10は、使用前に予め組み立てた状態となっている。
すなわち、第一の容器12の係合部24の外周に形成された係合突起24aに、第二の容器14の本体14aの上部の係合スリット14bを係合することによって、第二の容器14が、第一の容器12の下方の係合部24に装着されている。また、第二の容器14の抗体収容部34の内部に、予め抗体L2が収容されている。
また、図2に示したように、第一の容器12の容器本体部20の内周側には、第二の容器14に対して、接離する方向に移動可能な計量部材16が嵌着されている。
すなわち、計量部材16を第一の容器12の内周側に嵌着した際に、計量部材16の計量部材本体38の下端38aが、容器本体部20の内壁20aに形成された位置決め用突設部26に当接してストッパーとして機能して、計量部材16が初期位置に位置決めされるようになっている。
この状態では、計量部材16の計量ロッド44の下方シール部48が、第一の容器12の内周に形成された計量用側壁22に嵌合した状態であり、液密的にシールされるようになっている。
これにより、第一の容器12の本体部20内に収容した混合すべき大麻成分調製用溶液L1が、計量部材本体38の底部に形成された液体流通開口部40、容器本体部20の計量用側壁22に囲まれた開口部を介して、第二の容器14の抗体収容部34の内部に収容された抗体L2と混合されないように構成されている。
また、この状態では、第一の容器12の上方開口部12aに、計量部材16が嵌着されている。そして、第一の容器12の上方開口部12aの近傍の内壁20aに形成された係止突設部28に、キャップ部材18のキャップ部材本体52の略中間に外側に突設するように形成された係止突設部52aが当接してストッパーとして機能し、キャップ部材18が初期位置に係止されている。
次に、再び、キャップ部材18を第一の容器12の上方開口部12aに嵌着する。
そして、キャップ部材18を回転させることによって、第一の容器12の上方開口部12aの近傍の内壁20aに形成された案内溝30と、キャップ部材18のキャップ部材本体52に形成された案内突設部を合致させる。
そして、キャップ部材本体52の操作部材56を指などで把持して下方に押し下げることによって、又は、キャップ部材本体52の上面54を下方に押圧することによって、キャップ部材18を第二の容器14の方向に移動させる。
これによって、キャップ部材18のキャップ部材本体52の下端52bが、計量部材16の計量部材本体38の上端に当接して、計量部材16の計量部材本体38の下端38aと、容器本体部20の内壁20aに形成された位置決め用突設部26との間の当接状態が解除されて、計量部材16が第二の容器14の方向に、すなわち、下方に移動される。
この状態では、第一の容器12の容器本体部20内に収容した混合すべき大麻成分調製用溶液L1は、計量部材16の計量部材本体38の底部に形成された液体流通開口部40を介して、計量部材16の計量ロッド44の上方シール部46と下方シール部48との間に形成された計量用溝部50に浸入する。
そして、さらにキャップ部材18を第二の容器14の方向に移動させることによって、計量部材16の計量ロッド44の上方シール部46が、第一の容器12の内周に形成された計量用側壁22に嵌合した状態となり、液密的にシールされる。
これによって、計量部材16の計量ロッド44の上方シール部46と下方シール部48との間に形成された計量用溝部50と、第一の容器12の内周に形成された計量用側壁22との間に、空間が形成されることになる。
これによって、該空間に収容された大麻成分調製液L1が、計量されることになる。
続いて、さらにキャップ部材18を第二の容器14の方向に移動させることによって、計量部材16がさらに下方に、第二の容器14の方向に移動される。
これによって、計量部材16の計量ロッド44の下方シール部48が、第一の容器12の内周に形成された計量用側壁22の下端から離間した状態となり、開口部が形成されることになる。
これによって、この開口部を介して、前記空間に収容、計量された大麻成分調製液L1が、第二の容器14の抗体収容部34に浸入して、第二の容器14の抗体収容部34に収容されたQ-body抗体L2との混合が開始される。
そして、さらにキャップ部材18を第二の容器14の方向に移動させることによって、計量部材16がさらに下方に、第二の容器14の方向に最終位置(混合完了位置)まで移動される。
これによって、計量部材16の計量ロッド44の上方シール部46が、ピストンとして作用する。これにより、計量部材16の計量ロッド44の上方シール部46と下方シール部48との問に形成された計量用溝部50、すなわち、前記空間に収容され、計量された大麻成分調製液L1が、第二の容器14の抗体収容部34に浸入して、第二の容器14の抗体収容部34に収容されたQ-body抗体L2と混合されることになる。
この最終位置の状態では、キャップ部材本体52と操作部材56との間に位置する、上面54の下面54aに、第一の容器12の上端12bが当接してストッパーとして機能することによって、計量部材16がこれ以上、第二の容器14に対して、接近する方向に移動することがない。
また、この最終位置の状態では、計量部材16の計量ロッド44の上方シール部46が、第一の容器12の内周に形成された計量用側壁22に嵌合した状態であり、液密的にシールされている。
従って、これ以上、第一の容器12の容器本体部20内に収容した大麻成分調製液L1が、第二の容器14の抗体収容部34に浸入して、第二の容器14の抗体収容部34に収容されたQ-body抗体L2と混合されないように構成されている。
このように構成される本発明の検査用デバイス10によれば、計量部材16の計量用溝部50、すなわち、前記空間に収容された所定の量の液体を、第二の容器14の抗体収容部34に収容したQ-body抗体L2に混合することができる。
また、第一の容器12、第二の容器14、計量部材16、キャップ部材18は、不透明、半透明、透明とすることができる。
さらに、計量部材16は隔壁部に形成された定容積移動機構部であるが、該計量部材16の計量部材本体38の外径は、第一の容器12の容器本体部20の内径とほぼ同じか、僅かに小さく形成されており、計量部材16が、第一の容器12の容器本体部20の内壁20aに沿って摺動して、第二の容器14に対して、接離する方向に移動可能となっている。また、キャップ部材18は、図2に示したように、略円筒形状のキャップ部材本体52と、上面54と、キャップ部材本体52から外側に離間して、上面54の外周端部から下方に延設された操作部材56とを備えている。この場合、キャップ部材本体52の外径は、第一の容器12の容器本体部20の内径とほぼ同じか、僅かに小さく形成されており、後述するように、計量部材16に対して、接離する方向に移動可能となっている。
従って、計量部材16及びキャップ部材18は液密性を確保するため、きつく締まるようになっており、そのままでは摺動性が悪くなってしまう。そこで、計量部材16及びキャップ部材18、特にキャップ部材18を含む第一の容器(検査試料調製室)は、摺動性を良くするために潤滑剤を添加したポリプロピレンでできている。潤滑剤としては、アミド系、エステル系の潤滑材が挙げられ、例えば、アルフロー(商標):日油株式会社が挙げられ、ポリプロピレン中に0.1〜1wt%、好ましくは0.5wt%程度含まれている。潤滑剤は、検査試料調製室のキャップ部材等が高濃度のアルコールを含む溶液と接触した場合、潤滑剤がアルコール中に溶出してしまい、潤滑効果が失われる結果、第一の溶液の摺動部分である計量部材及びキャップ部材の摺動性が著しく低下してしまう。
アルフローの化学式を以下に示す。
Figure 2015152404
上記の計量部材及びキャップ部材を含む第一の容器のポリプロピレンに添加した潤滑剤は、大麻成分検査用デバイスを用いて大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせるときに、アルコール濃度が40wt%より高くなると溶出してしまい、大麻成分検査用デバイスの操作性が著しく低下する。従って、本発明の大麻成分検査用デバイスを用いて大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせるときには、大麻成分調製用溶液として、アルコール濃度が40wt%以下、好ましくは30wt%以下の溶液を用いる。
第二の容器において、大麻成分調製液と大麻成分に対するQ-body抗体が混合され、抗原抗体反応が起こる。
大麻成分検査用デバイスのアルコールを含有する大麻成分調製用溶液を収容した第一の容器に大麻成分を含む検査試料を入れ大麻成分を調製する。第一の容器中の大麻成分を含む調製液をデバイスの機構を利用して、大麻成分に対するQ-body抗体を含む第二の容器に移動させ添加し、抗原抗体反応を行わせる。第二の容器中のQ-body抗体は凍結乾燥品等の乾燥物として含まれていても抗体溶液として含まれていてもよい。抗体溶液として含まれる場合、アルコールを含む大麻成分調製液とQ-body抗体溶液の混合比(容積比)は、1:1〜1:5、好ましくは1:2〜1:4、さらに好ましくは1:3である。例えば、第一の容器に大麻成分調製液を1〜5mL、好ましくは2〜3mL、さらに好ましくは2.4mL収容しておき、大麻成分を含む検査試料を入れ、調製した後、調製液を10〜100μL、好ましくは20〜50μL、さらに好ましくは25μLを第二の容器に移す。この際、調製液中には大麻成分が4μg/mL以上、好ましくは4〜400μg/mLの濃度で含まれていればよい。この際、第二の容器には、25〜100μL、好ましくは50〜100μL、さらに好ましくは75μLの大麻成分に対するQ-body抗体を含む抗体溶液を入れておけばよい(図7)。この結果、第一の容器中の大麻成分調製液中の大麻成分濃度が4〜400μg/mLのとき、第二の容器において抗原抗体反応を行わせるときの大麻成分濃度は1〜100μg/mLとなる。
抗原抗体反応は、4〜44℃、好ましくは25〜35℃で反応直後〜3分、好ましくは3分以上分行う。
抗原抗体反応を行った後、反応液中で形成された抗原とQ-body抗体の複合体を検出する。すなわち、抗原とQ-body抗体の複合体から発生する蛍光を測定すればよい。測定は、第二の容器中の抗原抗体反応後の反応液を蛍光検査器で測定することにより行うことができる。
蛍光検査器は、特定の波長の蛍光を検出し得る検出装置であればいかなる装置をも用いることができる。例えば、図3に示す携帯型蛍光検査器を用いることができる。上記の大麻成分検査用デバイスを用いて大麻成分を含む検査試料より大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせた後、反応液を用いて蛍光検査器により蛍光を測定すればよい。この際、前記大麻成分検査用デバイスの抗原抗体反応液を含む第二の容器部分を該検査器に挿入し測定することができる。
該検査器は、少なくとも、容器内の液相対象物中の蛍光物質を励起して蛍光を放出させることが可能な励起光を放射する光源と、蛍光物質が放出した蛍光を検出する検出器と、光源からの励起光を容器内の液相対象物に導くとともに液相対象物からの蛍光を検出器に導く光学系とを備えている携帯型蛍光光度計である。該検査器は容器と光源、検出器及び光学系を一体に保持する筐体を備えている。図6に蛍光検査器の測定系を示す。
図3に携帯型蛍光検査器の斜視概略図を示し、図4に内部構成を示す。図3に示すように、前記蛍光検査器は、全体としては扁平なほぼ直方体の箱状のものである。携帯型であるので、大きさとしては人の手のひらサイズかそれよりも少し大きい程度である。該蛍光検査器の筺体62の前面には、光度計の動作状態や測定結果を表示する表示部63と、幾つかの操作ボタン64〜69が設けられている。
該蛍光検査器の筺体62は、上面部の一部が開閉蓋61となっている。開閉蓋61を開くと、筺体62内に試薬セル装着部60が形成されている。試薬セル装着部60は、試薬セル70の寸法形状に適合した枠状の部位である。
試薬セル70は、励起光や蛍光を十分透過する材料で形成されている。具体的には、硼珪酸ガラスや石英、サファイアのようなガラス製、PMMA(アクリル樹脂)、ポリスチレン、COC(環状オレフィン・コポリマー)のような樹脂製のものが試薬セル70の材料として使用される。
試薬セル70を蛍光検査器に装着する場合、図3に示すように、開閉蓋61を開け、試料セル70を試薬セル装着部60の挿入孔に挿入する。試薬セル70は、試薬セル装着部に装着されて所定位置で保持される。その後、開閉蓋61は閉じられる。
光源72は、液相対象物中の蛍光物質を励起して蛍光を放出させることができる光(励起光)を放射するものである。光源としては、レーザ光、LED光等を用いることができるが、好ましくは、LEDランプが用いられ、例えば、波長525nmの緑色光を放射するLEDを用いればよく、レンズを備えた出力2mW程度のものを好適に用いることができる。
蛍光検査器の光学系は、光源72からの励起光を試薬セル70のセル部に導くと共にセルの液相対象物からの蛍光を検出器76に導くものである。検出器76は、フォトダイオードを使用したものや光電管などの中から適宜選択されるが、フォトダイオードが好適に用いられる。図4に示す内部構造を有する検査器の場合、光学系は光源72からの光を集光するレンズ71、光路の折り曲げと光の選択を行うためのダイクロイックミラー75、光路上に配置されたフィルタ(励起フィルタ73及び蛍光フィルタ74)等から構成されている。ダイクロイックミラー75を挟んで、試薬セル装着部60とは反対側の位置に、検出器76が配置されている。前記蛍光検査器はさらに電源を供給する電池77及び演算装置78を備えている。演算装置は検知した蛍光強度から試料中の大麻成分濃度を算出し、表示部63に表示することができる。演算装置には、記憶装置が備えられていてもよく、あらかじめ記憶装置に蛍光強度と大麻成分濃度を関連付けした式が記憶されており、該式に基づいて、大麻成分濃度を算出する。概式は例えば、あらかじめ作成したキャリブレーションカーブを表す式である。
本発明はさらに、上記の検査用デバイスを含む大麻成分検査用キット、あるいは上記の検査用デバイス及び蛍光検査器を含む大麻成分検査用キットを包含する。
前記の大麻成分検査試料を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスと前記蛍光検査器を用いて以下のように大麻成分の検出を行う。
大麻成分を含む検査試料を、40wt%以下の濃度のアルコールを含む大麻成分調製用溶液が収容された、大麻成分検査用デバイスの第一の容器に入れ、撹拌、振動又は静置により大麻成分を調製する。大麻成分検査用デバイスの機構により、第一の容器中の大麻成分調製液を、大麻成分に対するQ-body抗体が収容された、大麻成分検査用デバイスの第二の容器に移動添加させる。この後、第二の容器中で抗原抗体反応が進行する。
抗原抗体反応を行わせた後、反応液を蛍光検査器の試薬セルに移し、測定を行う。この際、大麻成分検査用デバイスの第二の容器を試薬セルとして用いることもできる。
抗体として、Q-bodyを用いた場合、検査試料中に大麻成分が含まれる場合、抗体が抗原である大麻成分と結合することにより、蛍光を発するようになり、大麻成分の存在を検出することができる。
本発明の方法によれば、税関などの現場で簡易型の蛍光検査器を使用して、オンサイトで不法薬物である大麻の検査が可能となる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 潤滑剤を添加したポリプロピレンでできた摺動部分を有する、大麻成分検査試料を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイスのアルコールに対する耐性試験
大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製する検査試料調製室であって、キャップ部材で蓋をする検査試料調製室を有する検査用デバイスの検査試料調製室にメタノール又はエタノールを含む溶液を入れ、キャップ部材の操作性及び外観に対する影響を調べた。メタノール又はエタノールは、10wt%、20wt%、30wt%、40wt%、50wt%又は100wt%で用い、PBS-T溶液(リン酸緩衝生理食塩水+界面活性剤Tween20 0.05%+防腐剤 アジ化ナトリウム0.05%)に溶解して用いた。コントロールとして、アルコールを含まないPBS-T溶液を用いた。
検査用デバイスの検査試料調製室にメタノール又はエタノールを含む溶液を2.4mL入れ、一定時間放置し、キャップ部材を回す、外すという通常の検査において行う操作を行いそのときの操作性を評価した。また、目視により検査試料調製室の外観の変化を評価した。評価は3人のパネリストを用いた官能検査により行い、アルコールを含まないPBS-T溶液を用いた場合の操作性及び外観と比較した。ここで、操作性とはキャップ部材の回しやすさ、外しやすさをいう。
操作性についての結果を表1に示す。3人のパネリストの評価結果は同じであった。表1中、○はPBS-T溶液を用いた場合と比べて操作性が同程度であったことを示し、×はキャップ部材が固くて回しづらくなり操作性が低下したことを示す。
Figure 2015152404
表1に示すように、メタノール50wt%以上、エタノール40wt%以上で操作性が低下した。これは、ポリプロピレン製のキャップ部材に添加された潤滑剤(アルフロー(商標);日油株式会社)の溶出のため、キャップ部材の潤滑性が低下し、摺動性が低下したためである。
実施例2 大麻の葉からのTHC及びTHC-Aの抽出効率の検討
(1)抽出時のメタノール濃度の検討
抗原抗体反応では、4μg/mL以上の大麻成分の抽出ができれば反応確認ができる。抽出に用いるメタノール濃度を変え、4μg/mL以上の大麻成分の抽出が可能かを確認した。
大麻の葉からの大麻成分の抽出用溶液(調製用溶液)としては、10wt%、30wt%又は40wt%のメタノールを含有するPBS-T溶液(リン酸緩衝生理食塩水+界面活性剤Tween 0.05%+防腐剤 アジ化ナトリウム0.05%)を用いた。なお、PBS-T中のアジ化ナトリウムは長期保存のための防腐剤であり抗原抗体反応には関与しない。
上記溶液をポリプロピレン樹脂製の容器に入れた。大麻の葉を20枚用意し、その葉を5mm角の四角い切片にし、重量にして約20mgを容器内に投入し溶液に浸し、容器に蓋をして上下振動させた。浸漬は3分間とし、得られた抽出液(調整液)50μLをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて濃度定量する。浸漬時間の3分は、オンサイト検査での許容される時間として設定した。
図8に大麻成分の抽出法の概要を示す。
HPLC<高速液体クロマトグラフィ>測定条件は以下の通りであった。
(a)カラム
XBridge BEH C18 Intelligent Speed (IS) Column, 130Å, 2.5μm, 4.6 mm X 20 mm, 1/pkg(Waters Part number:186003088)
(b)Sample Injection: 50μl(原液)
(c)バッファA:0.1% TFA(トリフルオロ酢酸)
バッファD:アセトニトリル
(d)Elution(溶出のためにバッファ液を流す条件)
バッファAは最初から流し、徐々にバッファDの割合を変えていく。
0.00 [min]−5.00 [min], D conc 0% -100% gradient
5.00 [min]−6.00 [min], D conc 100% -0% gradient
6.01 [min]−11.00 [min], D conc 0 %
11.00min, Stop
(e)Flow-rate: 1.5 ml / min、Temp: 30 ℃
検出は、228nmの吸収ピークに基づいて行った。ピーク高さが高い場合、検出量が多いことを示す。
各メタノール濃度で試料をそれぞれ5本ずつ用意し、濃度定量を行った(N=5)。
その結果、大麻成分の平均的抽出量はメタノール濃度10wt%、30wt%のPSB-T溶液それぞれで、この順番で、8.7μg/mL、9.3μg/mL、7.6μg/mLとなり、いずれも4μg/mLの最低抽出量を超えた。
メタノール濃度40wt%となると、抗体が変性されてしまい、測定に支障をきたすことが分かった。
メタノール量が少なければ少ないほど抗原抗体反応が促進されるという大きな効果がある。
(2)純水とPBS-T溶液での大麻成分抽出の検討
純水とPBS-T溶液を用いて(1)と同様の方法で大麻の葉から大麻成分の抽出を行い、濃度定量を行った(n=3)。
その結果、大麻成分の平均的抽出量は純水で3.4μg/mL、PBS-T溶液で7.4μg/mLであり、PBS-T溶液では純水の2倍強の抽出濃度となった。大麻成分の抽出にはメタノールを含まない単なる純水ではなく、メタノールを含まないPBS-T溶液の方が望ましい。純水を抽出液とした場合、PBS-T溶液に比べ抽出量は劣るものの抗原抗体反応に使う量の大麻成分の抽出は可能である。
実施例1の結果、アルコール成分が30wt%以下の溶液に大麻の葉を検査片として投入し、当該検査片の成分を溶液中へ抽出させることが可能であることがわかった。
実施例3 抗原抗体反応を利用した大麻成分の検出におけるメタノールの影響
抗体として大麻成分であるTHC及びTHC-Aに対する抗体を蛍光色素で標識した抗体であるQ-body(T-3抗体)を用いた。大麻成分であるTHCに対する抗体Q-bodyは、WO2013/065314に記載の方法で作製した。すなわち、WO2013/065314の実施例1に記載の方法で、大麻成分THCに対する抗体のTAMRAで標識された軽鎖可変領域(VL;配列番号1)と抗体軽鎖定常領域(Cκ;配列番号2)を含むポリペプチドと、TAMRAで標識された大麻成分THCに対する重鎖可変領域(VH;配列番号3)と抗体重鎖定常領域(CH1;配列番号4)を含むポリペプチドからなる同色ダブルラベルFab型複合体を合成し、Q-bodyとして用いた。Q-bodyは0.5%Tween20及び2%BSAを含むPBS中16nMの濃度で用いた。
THCを100μg/mLの濃度で含み、メタノールを60wt%、50wt%、40wt%、30wt%、20wt%又は10wt%の濃度で含むPBS-T溶液を抗原溶液として用いた。
抗体溶液30μLと抗原溶液30μLを混合し、抗原抗体反応を行わせた。抗原抗体反応時のメタノール終濃度は、30wt%、25wt%、20wt%、15wt%、10wt%又は5wt%であり、Q-bodyの終濃度は8nMであった。抗原抗体反応は30℃で行った。それぞれ、n=3で測定を行った。
反応液を蛍光プレートリーダー(Moleculardevices社、SpectraMax Paradigm S/N: 32 770 02-2092)を用いて蛍光を測定した。測定時の励起波長及び蛍光波長は、それぞれ530nm及び580nmであった。
結果を図9に示す。図9のグラフの横軸は相対的な蛍光強度を示し、1.00以上は抗原を検出できたことを示し、1.00未満は検出できなかったことを示す。図9に示すように、抗原抗体反応時のメタノール終濃度が15wt%以下の場合に、抗原抗体反応が起こり、THCを測定することができた。
本発明により、大麻成分を簡便に短時間で検出できるオンサイトの大麻成分検査方法を提供することができる。
10 大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製し抗原抗体反応を行わせるための検査用デバイス
12 第一の容器(大麻成分を調製する検査試料調製室)
12a 上方開口部
12b 上端
14 第二の容器(抗原抗体反応室)
14a 第二の容器本体
14b 係合スリット
16 計量部材
18 キャップ部材
20 第一の容器本体部
20a 内壁
20b 外周側壁
22 計量用側壁
24 係合部
24a 係合突起
26 位置決め用突設部
28 係止突設部
30 案内溝
32 指標部材
34 抗体収容部
36 スリット開口部
38 計量部材本体
38a 下端
40 液体流通開口部
44 計量ロッド
46 上方シール部
48 下方シール部
50 計量用溝部
52 キャップ部材本体
52a 係止突設部
52b 下端
54 上面
54a 下面
56 操作部材
60 試薬セル装着部
61 開閉蓋
62 筺体
63 表示部
64〜69 操作ボタン
70 試薬セル
71 レンズ
72 光源
73 励起フィルタ
74 蛍光フィルタ
75 ダイクロイックミラー
76 検出器
77 電池
78 演算装置

Claims (7)

  1. 大麻成分を含む検査試料から大麻成分を調製し、大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法であって、
    (i)以下のポリプロピレン製の検査試料調製室とポリスチレン製の抗原抗体反応室とを隔壁部で隔てた一体型の縦長容器である検査用デバイスを用い、
    (a)前記検査試料調製室はアミド系又はエステル系の潤滑剤を添加したポリプロピレン製である;
    (b)前記検査試料調製室には、アルコールを40wt%以下含有した大麻成分調製用溶液が収容されている;
    (c)前記抗原抗体反応室には、抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドとを備え、前記抗体軽鎖可変領域ポリペプチドと抗体重鎖可変領域ポリペプチドのいずれか一方又は両方が、抗体重鎖可変領域ポリペプチド又は抗体軽鎖可変領域ポリペプチドに標識された状態でクエンチされる蛍光色素により標識され、前記抗体重鎖可変領域ポリペプチド及び抗体軽鎖可変領域ポリペプチドが前記抗原を介して複合体を形成したときにクエンチが解消されて蛍光強度が増加する、大麻成分に対する抗体が収容されている;
    (d)前記該隔壁部に形成された前記検査試料調製室から前記抗原抗体反応室へ定容積の大麻成分調製液を移動しうる定容積移動機構部を備えている
    (ii)前記の検査用デバイスのキャップ部材を開放し、前記検査試料調製室に大麻成分を含む疑いのある検査試料を入れ、
    (iii)前記キャップを閉めて撹拌、振動又は静置により検査試料と大麻成分調製用溶液混合し、
    (iv)前記定容積移動機構部によって前記検査試料調製室から所定量の大麻成分調製液を前記抗原抗体反応室へ定容積移動させ、
    (v)前記抗原抗体反応室で大麻成分と前記抗体抗原抗体反応を行う、
    ことを含む大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
  2. 大麻成分調製用溶液が界面活性剤を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS-T)、界面活性剤を含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は純水の溶液である、請求項1に記載の大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
  3. アルコールが、メタノール、エタノール及びプロパノールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
  4. 大麻成分が、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THC-A)、又はカンナビノール(CBN)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
  5. 大麻成分を含む疑いのある検査試料が、葉、茎、根、種及び花弁からなる群から選択されるいずれかの部位を含む植物検査片、又は樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の大麻成分と大麻成分に対する抗体の抗原抗体反応を行わせる方法により、大麻成分を検出する方法。
  7. 大麻成分と大麻成分に対する抗体が複合体を形成したときの蛍光強度の変化を測定する、請求項6記載の大麻成分を検出する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2017081979A1 (ja) * 2015-11-13 2017-05-18 ウシオ電機株式会社 検出方法および分析チップ

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