JPWO2010064634A1 - 糞便試料の調製方法、糞便試料調製用溶液、及び採便用キット - Google Patents

糞便試料の調製方法、糞便試料調製用溶液、及び採便用キット Download PDF

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Abstract

本発明は、糞便中の核酸を、安定して保存することが可能な糞便試料を、煩雑な操作を必要とせずに調製し得る方法、該方法に用いられる糞便試料調製用溶液及び採便用キット、並びに、該方法により調製された糞便試料を用いて糞便中の核酸を回収し解析する方法を提供する。本発明の糞便試料の調製方法は、糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製方法であって、採取された糞便を、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とする糞便試料調製用溶液に混合させることを特徴とする。

Description

本発明は、糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製方法、糞便試料調製用溶液、採便用キット、該調製方法により調製された糞便試料、該糞便試料からの核酸回収方法、及び該核酸回収方法により回収された核酸を用いた核酸解析方法に関する。
本願は、2008年12月5日に日本国に出願された特願2008−310988号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
欧米と同様に日本においても、大腸がんの患者数は、年々急激に増加しており、大腸がんが、がん死亡率の上位を占めるようになってきている。これは、日本人の食生活が欧米型の肉食中心となったことに原因があると考えられている。具体的には、毎年約6万人程度が大腸がんに罹患しており、臓器別の死亡数でも、胃がん、肺がんに続く3番目の多さであり、今後更なる増加も予想されている。一方で、大腸がんは、他のがんと異なり、発症の初期に治療することにより、100%近く治癒可能ながんである。したがって、大腸がんを早期がん検診の対象とすることは極めて有意義であり、大腸がんの早期発見のための検査方法の研究・開発が盛んに行われている。
大腸がんの早期発見のための検査方法として、例えば、注腸検査、大腸内視鏡検査等が行われている。注腸検査とは、大腸にバリウムを注入し、大腸の粘膜面に付着させ、X線を照射しその表面の凹凸の撮影を行い、大腸の表面を観察する検査である。一方、大腸内視鏡検査とは、内視鏡により直接大腸内部を観察する検査である。特に大腸内視鏡検査は、感度や特異性が高く、ポリープや早期がんの切除も可能であるという利点も有している。
しかしながら、これらの検査方法は、コストが高い上に被験者への負担が大きく、合併症のリスクを伴うという問題がある。例えば、注腸検査には、X線被爆や腸閉塞の危険性がある。また、大腸内視鏡検査は、内視鏡を直接大腸内に投入するため侵襲的であり、かつ、内視鏡操作には熟練を要し、検査のできる施設が限られている。このため、これらの検査方法は、定期健診等の無症状の一般人を対象とした大腸がん検査に適しているとは言い難い。
近年、大腸がんの一次スクリーニング法として、非侵襲的で低コストである便潜血検査が広く実施されている。便潜血検査は、糞便中に含まれる赤血球由来のヘモグロビンの有無を調べる検査であり、間接的に大腸がんの存在を予測する方法である。便潜血検査では、便の採取や保存を常温で行うことができ、冷蔵・冷凍等の特別な保存条件も必要としないこと、及び、一般的な家庭で簡単に行うことができ、操作が非常に簡便であることも、広く利用される要因となっている。但し、便潜血検査では、感度が25%程度と低く、大腸がんを見落とす確率が高いという問題がある。さらに、陽性的中率も低く、便潜血検査陽性の被験者の中で実際に大腸がん患者である割合は10%以下であり、多くの偽陽性を含んでいる。このため、より信頼性の高い新たな検査法の開発が強く望まれている。
定期健診等にも適した、非侵襲的で簡便であり、かつ信頼性の高い新たな検査方法として、糞便中のがん細胞の有無やがん細胞由来遺伝子の有無を調べる検査が注目されている。これらの検査方法は、直接的にがん細胞やがん細胞由来遺伝子の有無を調べるため、大腸がんの罹患に伴い間接的に生じる消化管からの出血の有無を調べる便潜血検査法に比べて、より信頼性の高い検査法になり得ると考えられる。
糞便試料中のがん細胞等を精度よく検出するためには、糞便試料中のがん細胞由来核酸を効率よく回収することが重要である。特に、がん細胞由来核酸は微量であり、かつ、糞便中には、消化残留物やバクテリアが大量に含まれているため、核酸は非常に分解され易い。このため、糞便試料から核酸、特にヒト等の哺乳細胞由来の核酸を効率よく回収するためには、糞便中の核酸の分解を防止し、検査操作時まで安定して保存し得るように糞便試料を調製することが重要である。このような糞便試料の調製方法として、例えば、採取された糞便から、大腸等の消化管から剥離したがん細胞を分離する方法がある。糞便からがん細胞を分離することにより、バクテリア等由来のプロテアーゼやDNase、RNase等の分解酵素による影響を抑えることができる。糞便からがん細胞を分離する方法として、例えば、(1)糞便から細胞を分離する方法であって、a)便をそのゲル氷点未満の温度に冷却する工程と、b)便が実質的に完全な状態を残すように、便をそのゲル氷点未満の温度に維持しながら便から細胞を採取する工程と、を含むことを特徴とする方法が開示されている(例えば特許文献1参照。)。その他、(2)通常周囲温度で、プロテアーゼ阻害物質、粘液溶解剤、殺細菌剤を有する輸送培地に糞便を分散させた後、大腸剥離細胞を単離する方法が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
一方で、細胞の形態を組織学的及び細胞学的に観察する場合に、採取された細胞の形態を観察時まで維持するために、ホルマリン固定やアルコール固定等の多くの固定方法が従来行われてきている。これらの固定方法を応用した方法であって、哺乳細胞試料の長期保存及び保存後の細胞観察を可能にするための保存溶液として、例えば、(3)哺乳細胞を定着するために充分な量の水と混和可能なアルコールと、溶液内での哺乳細胞の凝集を防ぐために充分な量の抗凝集剤と、細胞を保存する間、溶液のpHを4から7の範囲に保つ緩衝剤とを含む細胞溶液保存剤が開示されている(例えば特許文献3参照。)。
また、細胞の組織学的及び細胞学的観察に加え、保存後の細胞中のタンパク質や核酸等に対する分子学的解析をも可能とする保存溶液として、例えば、(4)緩衝成分、少なくとも1つのアルコール成分、固定剤成分、並びにRNA、DNA及びタンパク質からなる群の少なくとも1つの分解を抑制する薬剤を含む普遍的収集培地(例えば特許文献4参照。)や、(5)5〜20%ポリエチレングリコール及び80〜95%メタノールを含む非水溶液(例えば特許文献5参照。)等が開示されている。さらに、(6)細胞の構造及び核酸を安定化する組成物であって、(a)少なくとも1種のアルコール又はケトンを含む、タンパク質を沈殿又は変性させることができる第1の物質と、(b)第1の物質の少なくとも1個の細胞への注入を促進する第2の促進物質とを含む組成物も開示されている(例えば特許文献6参照。)。
その他にも、生体試料中の生体成分を安定化するための方法として、(7)生体試料、特に全血を採取するための方法であって、タンパク質を安定化し、かつタンパク質の分解および/または断片化を阻害するのに有効な量の、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤等の安定剤を含む採取容器及び生体試料の採取方法(例えば特許文献7参照。)、(8)試料中の蛋白質分解物質および/または核酸分解物質に対する阻害効果を引き起こす組成物に試料を曝露することによって、試料中の細胞および核酸を保存する方法(例えば特許文献8参照。)、(9)糞便サンプル中のDNAの完全性を保存する方法であって、糞便サンプルを、十分な量のDNA分解のインヒビターに曝露させる工程を包含する方法(例えば特許文献9参照。)等が開示されている。
特表平11−511982号公報 特表2004−519202号公報 特開2003−153688号公報 特表2004−500897号公報 特表2005−532824号公報 特開2001−128662号公報 特表2005−525126号公報 特開2004−159648号公報 特表2002−537777号公報
上記(1)の方法においては、糞便試料を冷却しながら細胞を分離している。この分離操作を冷却せずに行うと、糞便試料の変質等により正しい検出結果を得ることができなくなってしまうためであり、糞便試料の変質を効果的に防止するためには、採便直後に冷却することが重要である。しかしながら、検診等のように家庭において採便が行われる場合には、採取後速やかに糞便試料を冷却することは非常に困難であり、現実的ではない。
また、糞便試料の変質を防ぐために、糞便試料を凍結することが考えられるが、凍結させた糞便試料は、検査前に融解しなければならず操作が煩雑となる。
上記(2)の方法では、殺細菌剤等を添加することにより、冷却操作を必要とせず、室温で糞便試料の調製や保存が可能であるものの、糞便から大腸剥離細胞を分離する作業は煩雑であるという問題がある。また、殺細菌剤等により破壊されたバクテリア由来の核酸分解酵素やタンパク質分解酵素により、大腸剥離細胞及び大腸剥離細胞由来の核酸等が分解されてしまう結果、大腸がん検出の精度が低下するおそれがある。その他、細胞を生存させた状態で保存しているために、大腸剥離細胞中の遺伝子発現等の分子学的プロファイリングが培地中の抗生物質等の成分や経時的な影響を受け変化してしまうという問題もある。
一方、上記(3)〜(5)の保存溶液を用いることにより、細胞を室温で安定して保存することができるが、これらの保存溶液は、ほぼ単離された細胞に対して用いられるものであり、糞便のような多種多様な物質が含まれている生体試料に直接用いることは困難である。また、上記(6)の組成物は、主に膣スワブ試料中の主にバクテリア由来の核酸を安定して保存し得るものであるが、バクテリアとは大きく異なる構造を有し、かつバクテリアよりもはるかに微量である哺乳細胞由来の核酸も安定して保存し得るものであるかについては一切記載されていない。また、膣スワブ試料と異なり消化残留物等を多く含む糞便に用いた場合であっても核酸を安定して保存し得るかについても一切記載が無い。
さらに、上記(7)の方法では、採取された生体試料の保存のために、プロテアーゼ阻害剤を含有する溶液を用いているが、主に、血液等の比較的夾雑物の少ない試料中のタンパク質を安定化する方法であり、糞便等の多種多様な物質が含まれている生体試料に対しても十分な安定化効果が得られるかについては、記載されてはいない。また、タンパク質についてのみの記載であり、核酸等のその他の生体成分に対する安定化は記載されていない。同様に、上記(8)の方法は、主に尿等の夾雑物の少ない試料中の細胞や核酸を安定化する方法であり、糞便においても十分な安定化効果が得られるかについては、記載されてはいない。一方、上記(9)の方法は、糞便中の核酸を安定化する方法であるが、十分量のDNA分解のインヒビターを含む緩衝液を用いて糞便をホモジェナイズして得られた上清中のDNA分解の阻害を確認しており、糞便中の細胞からのDNA抽出時における核酸の損失を防止し得ることは確認されているものの、DNA抽出前、つまり、糞便中の細胞内に存在する核酸も安定的に保存されているかどうかについては、一切記載されてはいない。
本発明は、糞便中の核酸を安定して保存することが可能な糞便試料を、煩雑な操作を必要とせずに調製し得る方法、該方法に用いられる糞便試料調製用溶液及び採便用キット、並びに、該方法により調製された糞便試料を用いて糞便中の核酸を回収し解析する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、採取された糞便を、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とする糞便試料調製用溶液、特に、プロテアーゼ阻害剤を含有する水溶性有機溶媒を有効成分とする糞便試料調製用溶液に混合させることにより、糞便中に含まれている核酸の保存性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製方法であって、採取された糞便を、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とする糞便試料調製用溶液に混合させることを特徴とする、糞便試料の調製方法、
(2) 採取された糞便を、前記糞便試料調製用溶液に混合させた後、所定時間保存することを特徴とする前記(1)記載の糞便試料の調製方法、
(3) 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、1時間以上であることを特徴とする前記(2)記載の糞便試料の調製方法、
(4) 前記プロテアーゼ阻害剤が、ペプチド系プロテアーゼ阻害剤、還元剤、タンパク質変性剤、及びキレート剤からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(5) 前記プロテアーゼ阻害剤が、AEBSF、アプロチニン、ベスタチン、E−64、ロイベプチン、ペブスタチン、尿素、DTT(ジチオスレイトール)、及びEDTAからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(6) 前記糞便試料調製用溶液が、プロテアーゼ阻害剤及び水溶性有機溶媒を有効成分とすることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(7) 前記糞便試料調製用溶液が緩衝作用を有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(8) 前記糞便試料調製用溶液のpHが2〜6.5であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(9) 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(10) 前記水溶性有機溶媒が水溶性アルコール及び/又はケトン類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が30%以上であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(11) 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコールとして、エタノール、プロパノール、及びメタノールからなる群より選ばれる1以上を含むことを特徴とする前記(6)〜(10)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(12) 前記水溶性有機溶媒がエタノールであることを特徴とする前記(6)〜(11)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(13) 前記水溶性有機溶媒が、ケトン類として、アセトン及び/又はメチルエチルケトンを含むことを特徴とする前記(6)〜(11)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(14) 前記水溶性有機溶媒がアルデヒド類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が0.01〜30%であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(15) 前記糞便と前記糞便試料調製用溶液の混合比率が、糞便容量1に対して糞便試料調製用溶液容量が1以上であることを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(16) 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、12時間以上であることを特徴とする前記(2)〜(15)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(17) 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、24時間以上であることを特徴とする前記(2)〜(15)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(18) 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、72時間以上であることを特徴とする前記(2)〜(15)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(19) 前記糞便試料調製用溶液のpHが3〜6であることを特徴とする前記(8)〜(18)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(20) 前記糞便試料調製用溶液のpHが4.5〜5.5であることを特徴とする前記(6)〜(18)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(21) 前記糞便試料調製用溶液が界面活性剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(22) 前記糞便試料調製用溶液が着色剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(21)のいずれか記載の糞便試料の調製方法、
(23) 糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製に用いられる溶液であって、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とすることを特徴とする、糞便試料調製用溶液、
(24) 糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製に用いられる溶液であって、プロテアーゼ阻害剤及び水溶性有機溶媒を有効成分とすることを特徴とする、糞便試料調製用溶液、
(25) 前記プロテアーゼ阻害剤が、ペプチド系プロテアーゼ阻害剤、還元剤、タンパク質変性剤、及びキレート剤からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(23)又は(24)記載の糞便試料調製用溶液、
(26) 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(24)又は(25)記載の糞便試料調製用溶液、
(27) 前記(23)〜(26)のいずれか記載の糞便試料調製用溶液と、当該糞便試料調製用溶液を含有する採便容器と、を有することを特徴とする採便用キット、
(28) 前記(1)〜(22)のいずれか記載の糞便試料の調製方法により調製された糞便試料、
(29) 糞便試料から核酸を回収する方法であって、前記(28)記載の糞便試料中から、腸内常在菌由来の核酸と腸内常在菌以外の生物由来の核酸とを同時に回収することを特徴とする核酸回収方法、
(30) 前記腸内常在菌以外の生物が、哺乳細胞であることを特徴とする前記(29)記載の核酸回収方法、
(31) 核酸を回収する工程が、(a)前記糞便試料中のタンパク質を変性させ、前記糞便試料中の腸内常在菌及び腸内常在菌以外の生物から、核酸を溶出させる工程と、(b)前記工程(a)において溶出させた核酸を回収する工程と、を有することを特徴とする前記(29)又は(30)記載の核酸回収方法、
(32) 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、(c)前記工程(a)により変性させたタンパク質を除去する工程と、を有することを特徴とする前記(31)記載の核酸回収方法、
(33) 前記工程(a)におけるタンパク質の変性が、カオトロピック塩、有機溶媒、及び界面活性剤からなる群より選ばれる1以上を用いて行われることを特徴とする前記(31)又は(32)記載の核酸回収方法、
(34) 前記有機溶媒がフェノールであることを特徴とする前記(33)記載の核酸回収方法、
(35) 前記工程(c)における変性させたタンパク質の除去が、クロロホルムを用いて行われることを特徴とする前記(32)〜(34)のいずれか記載の核酸回収方法、
(36) 前記工程(b)における核酸の回収が、(b1)前記工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させる工程と、(b2)前記工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる工程と、を有することを特徴とする前記(31)〜(35)のいずれか記載の核酸回収方法、
(37) 前記工程(a)の前に、(d)前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、を有することを特徴とする前記(31)〜(36)のいずれか記載の核酸回収方法、
(38) 前記(29)〜(37)のいずれか記載の核酸回収方法を用いて糞便試料から回収された核酸を用いて、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする核酸解析方法、
(39) 前記哺乳細胞が消化管細胞であることを特徴とする前記(38)記載の核酸解析方法、
(40) 前記哺乳細胞が大腸剥離細胞であることを特徴とする前記(38)記載の核酸解析方法、
(41) 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカーであることを特徴とする前記(38)〜(40)のいずれか記載の核酸解析方法、
(42) 前記哺乳細胞由来の核酸が、炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする前記(38)〜(40)のいずれか記載の核酸解析方法、
(43) 前記哺乳細胞由来の核酸が、Cox−2遺伝子由来の核酸であることを特徴とする前記(38)〜(40)のいずれか記載の核酸解析方法、
(44) 前記解析が、RNA解析及び/又はDNA解析であることを特徴とする前記(38)〜(43)のいずれか記載の核酸解析方法、
(45) 前記RNA解析が、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアントの解析、mRNA発現解析、及び機能性RNA解析のいずれか1以上であることを特徴とする前記(44)記載の核酸解析方法、
(46) 前記DNA解析が、変異解析及びエピジェネティック変化解析のいずれか1以上であることを特徴とする前記(44)記載の核酸解析方法、
(47) 前記変異解析が、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位のいずれか1以上の変異の解析であることを特徴とする前記(46)記載の核酸解析方法、
(48) 前記エピジェネティック変化解析が、DNAのメチル化解析及びDNAの脱メチル化解析のいずれか1以上であることを特徴とする前記(46)記載の核酸解析方法、
(49) 前記変異解析がK−ras遺伝子の変異解析であることを特徴とする前記(46)記載の核酸解析方法、
を提供するものである。
本発明の糞便試料の調製方法により、糞便中の核酸を安定して保存可能な糞便試料を調製することができる。すなわち、本発明の糞便試料の調製方法により、糞便試料中に比較的少量含まれている腸内常在菌以外の生物由来の核酸、例えば、哺乳細胞等由来の核酸をも、室温で長期間保存可能なほど安定的に維持することができる。このように、本発明の糞便試料の調製方法を用いることにより、糞便の採取から糞便試料の調製、保存、輸送を、糞便試料中の核酸を安定的に保存しつつ、室温で簡便に行うことができるため、検診等のスクリーニング検査のための糞便試料の調製に非常に好適である。さらに、腸内常在菌以外の生物由来の核酸を解析するための糞便試料を調製する場合であっても、哺乳細胞等の検出の対象である生物又はその細胞等を分離するという煩雑な操作を必要としないため、多数の検体を処理する場合であっても、労力とコストを効果的に低減することができる。特に、本発明の採便用キットを用いることにより、より簡便に糞便試料を調製することが可能となる。
本発明の採便用キットに用いることができる採便容器の一態様を示した図である。 本発明の採便用キットに用いることができる採便容器の一態様を示した図である。 実施例1において、糞便試料1−1〜1−5由来のRNA中のGAPDH遺伝子発現量を相対比較した結果を示した図である。 実施例2において、糞便試料2−1〜2−3由来のRNA中のGAPDH遺伝子発現量を相対比較した結果を示した図である。 参考例1において、各糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。 参考例3において、各濃度のエタノール溶液を用いて調製された糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。
本発明の糞便試料の調製方法は、糞便中に含まれる細胞又は細胞由来成分の解析のための糞便試料の調製方法であって、採取された糞便を、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とする糞便試料調製用溶液に混合させることを特徴とする。本発明においては、糞便中に含まれる細胞や細胞由来成分、特に核酸の保存性を向上させるために、核酸分解に対する阻害剤ではなく、プロテアーゼ阻害剤を有効成分として用いる。糞便中の核酸等の細胞由来成分は、排泄直後には通常細胞内に存在しているが、その後、糞便中に多量に存在するプロテアーゼにより細胞膜のタンパク質等が分解される結果、細胞膜に生じた孔等から細胞外へと流出し、この細胞外へ流出した核酸等の細胞由来成分は、やはり糞便中に多量に存在する核酸分解酵素等の働きにより分解されてしまう。本発明においては、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とすることにより、糞便中の細胞膜タンパク質の分解を効果的に抑制し、核酸等の細胞由来成分を、分解酵素等が比較的少量な細胞内に維持することにより、細胞由来成分の保存性を向上させることができる。
本発明の糞便試料の調製方法において用いられる糞便試料調製用溶液(以下、本発明の糞便試料調製用溶液、ということがある。)は、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とする。プロテアーゼ阻害剤は、プロテアーゼ(protease、ペプチド結合の加水分解を触媒し得る酵素)の酵素活性を阻害し得るものであれば、特に限定されるものではなく、プロテイナーゼ(proteinase)阻害剤であってもよく、ペプチダーゼ(peptidase)阻害剤であってもよい。また、セリンプロテアーゼを阻害し得るものであってもよく、システインプロテアーゼを阻害し得るものであってもよく、アスパラギン酸プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ)(aspatric protease)を阻害し得るものであってもよく、金属プロテアーゼ(metallo protease)を阻害し得るものであってもよい。
本発明において用いられるプロテアーゼ阻害剤としては、公知のプロテアーゼ阻害剤の中から適宜選択して用いることができる。本発明において用いられるプロテアーゼ阻害剤としては、例えば、AEBSF、Aprotinin、Bestain、Calpain Inhibitor l、Calpain Inhibitor II、Chymostatin、3,4−Dichloroisocoumain、E−64、Lactacystin、Leupeptin、MG−115、MG−132、PepstatinA、PMSF、Proteasome Inhibitor、TLCK、TPCK、Trypsin Inhibitor等が挙げられる。その他、一般に「プロテアーゼ阻害剤カクテル」と呼ばれる、複数種類のプロテアーゼ阻害剤を組合せたものを使用することもできる。
また、本発明の糞便試料調製用溶液に添加される前述のプロテアーゼ阻害剤の濃度は、糞便試料中のプロテアーゼを阻害するために十分な濃度であれば、特に限定されるものではなく、添加されるプロテアーゼ阻害剤の種類や、糞便試料調製用溶液のpHや温度、糞便試料調製用溶液と糞便との混合比等を考慮して適宜決定することができる。表1に、糞便試料調製用溶液における各プロテアーゼ阻害剤の好ましい濃度を記載する。
Figure 2010064634
本発明において用いられるプロテアーゼ阻害剤としては、上記のようなペプチド系プロテアーゼ阻害剤であってもよく、還元剤であってもよく、タンパク質変性剤であってもよく、キレート剤であってもよい。なお、本発明において、「ペプチド系プロテアーゼ阻害剤」とは、プロテアーゼと相互作用をすることにより、プロテアーゼ活性を阻害し得るペプチド、又はその修飾体を意味する。
キレート剤としてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、O,O’−ビス(2−アミノフェニルエチレングリコール)エチレンジアミン四酢酸(BAPTA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、トランスー1,2−ジアミノシクロヘキサンーエチレンジアミン四酢酸(CyDTA)、1,3−ジアミノー2−ヒドロキシブロパンーエチレンジアミン四酢酸(DPTA−OH)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン二プロバン酸塩酸塩(EDDP)、エチレンジアミン二メチレンホスホン酸1水和物(EDDPO)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(EDTA−OH)、エチレンジアミン四メチレンホスホン酸(EDTPO)、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸(EGTA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸(HBED)、1,6−ヘキサメチレンジアミン四酢酸(HDTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)、イミノ二酢酸(IDA)、1,2−ジアミノプロパン四酢酸(Methyl−EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロ三プロパン酸(NTP)、ニトリロ三メチレンホスホン酸三ナトリウム塩(NTPO)、エチレンジアミン四(2−ピリジルメチル)(TPEN)、及びトリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)等が挙げられる。
プロテアーゼ阻害剤として本発明の糞便試料調製用溶液に添加されるキレート剤の濃度は、糞便試料中のプロテアーゼを阻害するために十分な濃度であれば、特に限定されるものではなく、キレート剤の種類等を考慮して適宜決定することができる。好ましくは、本発明の糞便試料調製用溶液における最終濃度が0.1mM〜1Mとなるように、各キレート剤を添加する。
還元剤としては、DTT(ジチオスレイトール)、βメルカプトエタノール等が挙げられる。
プロテアーゼ阻害剤として本発明の糞便試料調製用溶液に添加される還元剤の濃度は、糞便試料中のプロテアーゼを阻害するために十分な濃度であれば、特に限定されるものではなく、還元剤の種類等を考慮して適宜決定することができる。好ましくは、本発明の糞便試料調製用溶液における最終濃度が0.1mM〜1Mとなるように、各還元剤を添加する。
タンパク質変性剤としては、尿素、グアニン、グアニジン塩等が挙げられる。
プロテアーゼ阻害剤として本発明の糞便試料調製用溶液に添加されるタンパク質変性剤の濃度は、糞便試料中のプロテアーゼを阻害するために十分な濃度であれば、特に限定されるものではなく、タンパク質変性剤の種類等を考慮して適宜決定することができる。好ましくは、本発明の糞便試料調製用溶液における最終濃度が0.1mM〜10Mとなるように、各タンパク質変性剤を添加する。
なお、本発明の糞便試料調製用溶液は、1種類のプロテアーゼ阻害剤のみを含有していてもよく、2種類以上のプロテアーゼ阻害剤を含有するものであってもよい。また、AEBSF等のペプチド系のプロテアーゼ阻害剤を複数種類組み合わせて含有してもよく、ペプチド系プロテアーゼ阻害剤とキレート剤、ペプチド系プロテアーゼ阻害剤と還元剤のように、異なる種類のプロテアーゼ阻害剤を含有するものであってもよい。
本発明の糞便試料調製用溶液は、核酸保存性向上効果を得るための有効成分として、プロテアーゼ阻害剤に加えて、水溶性有機溶媒を含んでいることが好ましい。糞便を、プロテアーゼ阻害を含有する水溶性有機溶媒に混合させることにより、糞便中に含まれる核酸の分解等による損失を最小限に抑えて、該水溶性有機溶媒中において非常に安定的に核酸を保存することができる。このような核酸保存性向上効果は、水溶性有機溶媒成分が有する脱水作用により、腸内常在菌、哺乳細胞、ウィルス等の核酸を有する生物の細胞活性が顕著に低下することにより、経時的な変化が抑制されるため、及び、水溶性有機溶媒成分が有するタンパク質変性作用により、糞便中のプロテアーゼ、DNase、RNase等の各種分解酵素の活性が顕著に低下し、核酸等の細胞由来成分の分解が抑制されるためと推察される。
糞便等の生体試料は、通常多量の水分を含有している。このため、水に対する溶解度が高い溶媒や水と任意の割合で混合可能である溶媒である水溶性有機溶媒を有効成分とすることにより、本発明の糞便試料調製用溶液は、糞便試料と速やかに混合することができ、より高い核酸保存性向上効果を得ることができる。
本発明において水溶性有機溶媒とは、アルコール類、ケトン類、又はアルデヒド類であって、直鎖構造を有し、室温付近、例えば15〜40℃において液状である溶媒を意味する。直鎖構造を有する水溶性有機溶媒を有効成分とすることにより、ベンゼン環等の環状構造を有する有機溶媒を有効成分とするよりも、糞便との混合を素早く行うことができる。環状構造を有する有機溶媒は、一般的に水と分離しやすいため、糞便と混合しにくく、高い核酸保存性向上効果を得ることは難しい。たとえ水にある程度溶解する溶媒であったとしても、糞便を均一に分散させるためには、激しく混合したり、加温する必要があることが多いためである。なお、糞便と環状構造を有する有機溶媒を混合しやすくするために、あらかじめ、有機溶媒と水の混合溶液を作製した後、糞便と該混合溶液を混合させることも考えられる。しかしながら、該混合溶液を作製するためには、環状構造を有する有機溶媒と水を激しく混合したり、加温する必要がある場合が多く好ましくない。
本発明の糞便試料調製用溶液においては、水に対する溶解度が12重量%以上の水溶性有機溶媒であることが好ましく、水に対する溶解度が20重量%以上の水溶性有機溶媒であることがより好ましく、水に対する溶解度が90重量%以上の水溶性有機溶媒であることがさらに好ましく、水と任意の割合で混合可能である水溶性有機溶媒であることが特に好ましい。水と任意の割合で混合可能である水溶性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、ホルムアルデヒド等がある。
本発明の糞便試料調製用溶液に含まれる水溶性有機溶媒は、上記定義を充足するものであって、核酸保存性向上効果を奏することができる溶媒であれば特に限定されるものではない。該水溶性有機溶媒として、例えば、アルコール類としては、水溶性アルコールであるメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メルカプトエタノール等があり、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(水に対する溶解度90重量%)等があり、アルデヒド類としては、アセトアルデヒド(アセチルアルデヒド)、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、グルタールアルデヒド、パラフォルムアルデヒド、グリオキサール(glyoxal)等がある。プロパノールは、n−プロパノールであってもよく、2−プロパノールであってもよい。また、ブタノールは、1−ブタノール(水に対する溶解度20重量%)であってもよく、2−ブタノール(水に対する溶解度12.5重量%)であってもよい。本発明において用いられる水溶性有機溶媒としては、水溶性アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ホルムアルデヒドであることが好ましい。水に対する溶解度が十分に高いためである。入手容易性、取り扱い性、安全性等の点から、水溶性アルコールであることがより好ましく、エタノール、プロパノール、メタノールであることがさらに好ましい。特にエタノールは、最も安全性が高く、家庭内でも容易に扱うことが可能であるため、定期健診等のスクリーニング検査において特に有用である。
本発明の糞便試料調製用溶液中の水溶性有機溶媒濃度は、核酸保存性向上効果を奏することができる濃度であれば、特に限定されるものではなく、水溶性有機溶媒の種類等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、有効成分として、水溶性アルコールやケトン類を用いる場合には、本発明の糞便試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は30%以上であることが好ましい。水溶性有機溶媒濃度が充分に高濃度であることにより、糞便と糞便試料調製用溶液を混合した場合に、糞便中の哺乳細胞等や腸内常在菌に水溶性有機溶媒成分が迅速に浸透し、核酸保存性向上効果を速やかに奏することができる。
なお、本発明及び本願明細書中においては、特に記載がない限り、「%」は「体積%」を意味する。
特に、有効成分として、水溶性アルコールを用いる場合には、本発明の糞便試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、50〜80%であることがさらに好ましく、60〜70%であることが特に好ましい。水溶性有機溶媒濃度が高い程、水分含量の多い糞便に対しても少量の糞便試料調製用溶液を用いることによって、充分な核酸保存性向上効果を得ることができる。
また、有効成分として、アセトン、メチルエチルケトンを用いる場合には、本発明の糞便試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。その他、有効成分として、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、パラフォルムアルデヒド、グリオキサールを用いる場合には、本発明の糞便試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は0.01〜30%であることが好ましく、0.03〜10%であることがより好ましく、3〜5%であることがさらに好ましい。アルデヒド類は、アルコール類やケトン類よりも低濃度においても、核酸保存性向上効果を奏することができる。
その他、本発明において用いられる水溶性有機溶媒は、1種類の水溶性有機溶媒のみを含有していてもよく、2種類以上の水溶性有機溶媒の混合溶液であってもよい。例えば、2種類以上のアルコールの混合溶液であってもよく、アルコールと他種類の水溶性有機溶媒との混合溶液であってもよい。核酸保存性向上効果がより改善されるため、アルコールとアセトンの混合溶液であることも好ましい。
本発明の糞便試料調製用溶液のpHは、酸性であることが好ましい。核酸の加水分解をより効果的に抑制することができるためである。本発明の糞便試料調製用溶液としては、pHが2〜6.5であることが好ましく、3〜6であることがより好ましく、4.5〜5.5であることがさらに好ましい。
本発明の糞便試料調製用溶液は、多少の酸や塩基が添加された場合であっても、特に糞便が添加された場合であっても、pHの変動が少なく、前述のpH範囲内に維持されるような緩衝作用を有するものであることが好ましい。緩衝作用を有する糞便試料調製用溶液としては、適当な緩衝液に、有効成分であるプロテアーゼ阻害剤や水溶性有機溶媒を添加したものであってもよいが、本発明においては、特に、有機酸と当該有機酸の共役塩基とを含有する糞便試料調製用溶液であって、当該有機酸とその共役塩基とにより緩衝作用を奏するものであることが好ましい。例えば、糞便試料調製用溶液に、有機酸と当該有機酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を添加することにより、所望のpHに調整してもよく、有機酸を添加した後に、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を用いてpHを調整してもよい。
その他、本発明の糞便試料調製用溶液としては、有機酸と鉱酸の双方を含む溶液であって、適当な緩衝作用を有するものであってもよい。例えば、グリシン/HCl緩衝系、カコジル酸Na/HCl緩衝系、又はフタル酸HK/HCl緩衝系等の、酸性側で緩衝作用を有する緩衝系に、水溶性有機溶媒を混合した溶液であってもよい。
なお、本発明において、糞便試料調製用溶液のpHは、ガラス電極法を測定原理としたpHメーター(例えば東亜ディーケーケー社製)を、フタル酸塩標準液と中性リン酸塩標準液によって校正した後に、測定して得られた値である。
また、本発明の糞便試料調製用溶液は、プロテアーゼ阻害剤や水溶性有機溶媒成分による核酸保存性向上効果を損なわない限り、プロテアーゼ阻害剤や水溶性有機溶媒以外にも、任意の成分を含んでいてもよい。例えば、カオトロピック塩を含有していてもよく、界面活性剤を含有していても良い。カオトロピック塩や界面活性剤を含有することにより、糞便中の細胞活性や核酸分解酵素等のプロテアーゼ以外の酵素活性もより効果的に阻害することができる。糞便試料調製用溶液に含有させ得るカオトロピック塩として、例えば、塩酸グアニジン、グアニジンイソチオシアネート、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、及びトリクロロ酢酸ナトリウム等がある。糞便試料調製用溶液に含有させ得る界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。該非イオン性界面活性剤として、例えば、Tween80、CHAPS(3−[3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、Triton X−100、Tween20等がある。カオトロピック塩や界面活性剤の種類や濃度は、核酸保存性向上効果が得られる濃度であれば、特に限定されるものではなく、糞便量やその後の核酸の回収・解析方法等を考慮して、適宜決定することができる。
その他、糞便試料調製用溶液には、適宜着色剤を添加してもよい。糞便試料調製用溶液を着色することにより、誤飲防止、糞便の色が緩和される等の効果が得られる。該着色剤として、食品添加物として使用される着色料であることが好ましく、青色や緑色等が好ましい。例えば、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)等が挙げられる。また、複数の着色剤を混合して添加してもよく、単独で添加しても良い。
本発明の糞便試料の調製方法において、糞便と糞便試料調製用溶液との混合は、糞便を糞便試料調製用溶液に浸漬させ、特段の攪拌操作を行わないものであってもよい。本発明の糞便試料調製用溶液は、水分含有量の多い糞便に対しても非常に馴染みやすいため、混合する糞便の量や状態によっては、単に糞便試料調製用溶液に浸漬させて特段の攪拌操作を行わない場合であっても、糞便中に十分に浸透し、十分な核酸保存性向上効果が奏されるためである。
糞便と糞便試料調製用溶液との混合は、糞便を糞便試料調製用溶液に投入して浸漬させた後に攪拌してもよい。攪拌することにより、糞便を十分に糞便試料調製用溶液に分散させ、懸濁させることができる。糞便を投入した糞便試料調製用溶液を攪拌して混合する場合には、該攪拌は、速やかに行われることが好ましい。糞便を速やかに糞便試料調製用溶液中に分散させることにより、糞便中の細胞に対する水溶性有機溶媒成分の浸透を迅速に行うことができ、核酸保存性向上効果が速やかに得られるためである。
なお、糞便と糞便試料調製用溶液を混合する方法は、物理的手法により混合する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、予め糞便試料調製用溶液を入れておいた容器に、採取された糞便を投入して浸漬させた状態で保存しておいてもよい。また、予め糞便試料調製用溶液を入れておいた密閉可能な容器に、採取された糞便を投入して密閉した後、該容器を上下に転倒させることにより、混合してもよく、該容器をボルテックス等の振とう機にかけることにより混合してもよい。また、糞便と糞便試料調製用溶液を、混合用粒子の存在下で混合してもよい。速やかに混合させることができるため、振とう機を用いる方法や、混合用粒子を用いる方法であることが好ましい。特に、予め混合用粒子を含有させた採便容器を用いることにより、家庭等の特殊な装置のない環境においても迅速に混合することができる。
混合用粒子としては、水溶性有機溶媒成分による核酸保存性向上効果を損なわない組成物であって、糞便にぶつかることにより、糞便を迅速に糞便試料調製用溶液中に分散させ得る硬度や比重を有する粒子であれば、特に限定されるものではなく、1種類の材質からなる粒子であってもよく、2種類以上の材質からなる粒子であってもよい。このような混合用粒子として、例えば、ガラス、セラミックス、プラスチック、ラテックス、金属等からなる粒子がある。その他、混合用粒子は、磁性粒子であってもよく、非磁性粒子であってもよい。
採取された糞便と混合する糞便試料調製用溶液の容量は、特に限定されるものではないが、糞便と糞便試料調製用溶液の混合比率は、糞便容量1に対して糞便試料調製用溶液容量が1以上であることが好ましい。糞便試料調製用溶液入り採便容器に糞便を入れる場合に、糞便と等量以上の糞便試料調製用溶液であれば、糞便の全周囲が糞便試料調製用溶液に浸らせることができ、本発明の効果を得られるためである。例えば、糞便と糞便試料調製用溶液が等量である場合には、糞便試料調製用溶液入り採便容器の軽量化・小型化が可能となる。一方で、糞便に対して、5倍以上の容量の糞便試料調製用溶液を混合させることにより、糞便試料調製用溶液中への糞便の分散を迅速かつ効果的に行うことができ、さらに、糞便に含有されている水分による水溶性アルコール濃度の低下の影響を抑えることもできる。糞便試料調製用溶液入り採便容器の軽量化と糞便の分散性の向上の両方の効果をバランス良く備えることが可能となるため、糞便と糞便試料調製用溶液の混合比率が、1:1〜1:20であることがより好ましく、1:3〜1:10であることがさらに好ましく1:5程度であることがより好ましい。
なお、本発明の糞便試料の調製方法に供される糞便は、動物のものであれば特に限定されるものではないが、哺乳動物由来のものであることが好ましく、ヒト由来のものであることがより好ましい。例えば、定期健診や診断等のために採取されたヒトの糞便であることが好ましいが、家畜や野生動物等の糞便であってもよい。また、採取後一定期間保存されたものであってもよいが、採取直後のものであることが好ましい。さらに、採取された糞便は、排泄直後のものであることが好ましいが、排泄後時間を経たものであってもよい。
本発明の糞便試料の調製方法に供される糞便の量は、特に限定されるものではないが、10mg〜1gであることが好ましい。糞便量があまりに多くなってしまうと、採取作業に手間がかかり、採便容器も大きくなってしまうため、取り扱い性等が低下するおそれがある。逆に糞便量があまりに少量である場合には、糞便中に含まれる大腸剥離細胞等の哺乳細胞数が少なくなりすぎるため、必要な核酸量を回収できず、目的の核酸解析の精度が低下するおそれがある。また、糞便はヘテロジニアスである、つまり、多種多様な成分が不均一に存在しているため、哺乳細胞の局在の影響を避けるために、採糞時には、糞便の広範囲から採取することが好ましい。
本発明の糞便試料の調製方法においては、採取された糞便を、前記糞便試料調製用溶液に混合させた後、所定時間保存することにより、より優れた核酸保存性向上効果を得ることができる。これは、糞便中には、脂質等の夾雑物が豊富に含まれているために、プロテアーゼ阻害剤が糞便中に十分に浸透するためには、ある程度の時間を要するためと推察される。保存する時間は、プロテアーゼの活性低減効果を奏し得る時間であれば、特に限定されるものではなく、プロテアーゼ阻害剤の種類や濃度、水溶性有機溶媒の種類や濃度、糞便と糞便試料調製用溶液との混合比、保存温度等を考慮して適宜決定することができる。本発明の糞便試料の調製方法においては、1時間以上保存することが好ましく、12時間以上保存することがより好ましく、24時間以上保存することがさらに好ましく、72時間以上保存することが特に好ましい。また、168時間以上保存してもよい。例えば、混合後少なくとも12時間以上保存することにより、糞便中に一般的に含まれているタンパク質分解酵素の、核酸の分解に対する影響を、十分に抑制し得る。
所定時間保存せずに抽出を行う場合、糞便中のプロテアーゼに十分にプロテアーゼ阻害剤が作用する前に、糞便由来固形分回収の際にプロテアーゼ阻害剤が除かれるため、プロテアーゼ活性が残り核酸が分解してしまう。これに対して、所定時間保存した場合には、プロテアーゼ活性が完全に停止しているため、固形分回収の際にプロテアーゼ阻害剤が除かれても、核酸の分解を十分に抑制することができる。
糞便と糞便試料調製用溶液との混合により得られた糞便試料の保存は、核酸保存性向上効果が得られる限り、特に限定されるものではないが、冷蔵保存の場合よりも、室温等の比較的温度の高い環境下で行うことが好ましい。具体的には、10℃以上で保存することが好ましく、20℃以上で保存することがより好ましい。プロテアーゼ阻害剤によるプロテアーゼの活性低減効果は、糞便試料を保存する温度が低温の場合よりもむしろ温度が高いほうが高い効果が得られるためである。これは、温度が高いほど、糞便試料調製用溶液中のプロテアーゼ阻害剤の、糞便への浸透が速やかに行われるためと推察される。但し、該糞便試料の保存は、50℃以下で行うことが好ましい。高温条件下で長期間保存することにより、揮発等により、該糞便試料中の水溶性有機溶媒の濃度が、核酸保存性向上効果を奏するに充分な濃度よりも低下するおそれがあるためである。
このように、本発明の糞便試料の調製方法においては、糞便試料の保存温度が10〜50℃の範囲であれば、より優れた核酸保存性向上効果を得ることができる。したがって、糞便試料の保存は、恒温装置等を用いて温度制御された環境下で行ってもよいが、温度制御された特別な環境を必要とせず、室温で行ってもよい。このため、たとえば、本発明の糞便試料の調製方法により調製された糞便試料を、温度非制御下で輸送する場合や、室温等の比較的温度の高い環境下で長時間保管した場合にも、十分な核酸保存性向上効果を得ることができる。
したがって、本発明の糞便試料の調製方法は、定期健診等における糞便試料の調製に特に好適である。上述したように、糞便中の核酸は非常に分解されやすく、このため、定期健診等の場合のように、採便者が糞便試料を調製する場所と核酸抽出操作を行う場所とが離れており、調製された糞便試料が核酸抽出操作を行う場所に輸送される場合には、輸送期間中に核酸の分解等が進行してしまうため、信頼できる結果を得られにくいという問題がある。また、核酸の分解を防止するために、糞便試料を冷凍・冷蔵等の低温環境下で保存・輸送することも行われているが、温度制御装置等の専用の装置が必要とされる上に、輸送コスト等が高くなってしまう。これに対して、本発明の糞便試料の調製方法により調製された糞便試料は、輸送時の温度が10〜50℃であれば、温度制御の有無にかかわらず、糞便試料の輸送期間を、より高い核酸保存性向上効果を得るための保存期間とすることができる。
本発明の糞便試料の調製方法により調製された糞便試料、すなわち本発明の糞便試料は、プロテアーゼ阻害剤によるプロテアーゼ阻害作用や、水溶性有機溶媒による脱水作用やタンパク質変性作用、核酸分解抑制作用により、糞便中の核酸、特に哺乳細胞等由来の糞便中に比較的少量しか存在していない核酸の保存性を効果的に向上させることができる。このため、糞便試料を本発明の調製方法により調製した場合には、調製直後の糞便試料のみならず、長期保存後又は輸送後の糞便試料を用いて核酸解析を行った場合であっても、信頼性の高い解析結果を得ることが期待できる。特に、糞便に含まれている大腸剥離細胞等の哺乳細胞の分子学的プロファイリングに対する経時的な変化を最小限に抑えつつ、糞便中の核酸、特に哺乳細胞由来の核酸を長期間室温で安定して保存することができるため、採取された糞便を本発明の調製方法を用いて調製することにより、検診等のスクリーニング検査のように、糞便採取後から解析時まで間がある場合や、糞便採取場所が解析場所から離れているような場合であっても、核酸、特に壊れやすいRNAの分解を抑制しつつ、糞便試料を保存又は輸送することが可能である。また、冷蔵や冷凍のための特別な機器や保存温度条件を設定する必要がなく、簡便かつ低コストで糞便試料を保存又は輸送することができる。
本発明の糞便試料は、核酸を含有するその他の生体試料と同様に、様々な核酸解析に供することができる。特に、早期発見の要請の強い、がんの発症や感染症の罹患の有無を調べるための核酸解析に供されることが好ましい。また、大腸炎、小腸炎、胃炎、膵炎等の炎症性疾患の発症の有無を調べるための核酸解析に供されることも好ましい。その他、ポリープ等の隆起性病変の検査や胃潰瘍等の大腸、小腸、胃、肝臓、胆嚢、胆管の疾患の検査に供されてもよい。
特に、腸内常在菌以外の生物由来の核酸、すなわち、糞便試料中に大量に含まれている腸内常在菌由来の核酸よりも少量しか含まれていない核酸を標的核酸として解析する場合には、本発明の糞便試料調製用溶液を用いて糞便を調製することが好ましい。排泄後時間の経過とともに、糞便中の核酸は分解等により徐々に損なわれていく。このため、標的核酸が糞便中に少量しか存在していない核酸である場合には、核酸の分解が進行した糞便試料を用いて解析を行うと、解析に充分な量の標的核酸を回収することができず、排泄直後の糞便中には該標的核酸が存在していた場合であっても陰性(糞便中に該標的核酸は存在していない)と判断されるおそれが大きい。本発明の糞便試料調製用溶液を用いて糞便を調製することにより、糞便中の核酸を安定して保存し得る結果、糞便中に少量しか存在していない核酸であっても、効率よく回収することができ、核酸解析の信頼性を向上させることができる。
このような腸内常在菌以外の生物由来の核酸として、例えば、がん細胞由来の核酸等の哺乳細胞由来の核酸や、肝炎ウィルス等の感染症の初期または後期における該感染症の原因菌由来の核酸等がある。その他、寄生虫由来の核酸であってもよい。
なお、本発明において、腸内常在菌とは、糞便中に比較的大量に存在するバクテリア細胞であり、通常ヒト等の動物の腸内に生息する常在菌を意味する。該腸内常在菌として、例えば、Bacteroides属、Eubacterium属、Bifidobacterium属、Clostridium属等の偏性嫌気性菌や、Escherichia属、Enterobacter属、Klebsiella属、Citrobacter属、Enterococcus属等の通性嫌気性菌等がある。
例えば、糞便試料から、がん細胞由来の核酸、すなわち、変異等が起こっている核酸を検出し解析することにより、大腸がんや膵臓がん等のがんの発症の有無を検査することができる。また、糞便試料から、感染症等の原因である病原菌由来の核酸、例えばウィルス由来の核酸や寄生虫由来の核酸等が検出されるかどうかを調べることにより、感染症の罹患の有無や寄生虫の存在の有無を調べることができる。特に、A型・E型肝炎ウィルス等の糞便中に排出される病原菌の検出に糞便試料を用いることにより、非侵襲的かつ簡便に感染症検査を行うことができる。その他、腸内常在菌以外の病原バクテリア、例えば腸管出血性大腸菌O−157等の食中毒菌や病原菌由来の核酸が検出されるかどうかを調べることにより、細菌感染症の罹患の有無を調べることもできる。
特に、核酸解析により、新生物性転化を示すマーカーや炎症性消化器疾患を示すマーカーを検出することが好ましい。該新生物性転化を示すマーカーとして、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、シアリルTn抗原(STN)等の公知のがんマーカーや、APC遺伝子、p53遺伝子、K−ras遺伝子等の変異の有無等がある。また、p16、hMLHI、MGMT、p14、APC、E−cadherin、ESR1、SFRP2等の遺伝子のメチル化の検出も、大腸疾患の診断マーカーとして有用である(例えば、Lind et al.、「A CpG island hypermethylation profile of primary colorectal carcinomas and colon cancer cell lines」、Molecular Cancer、2004年、第3巻第28章参照。)。その他、糞便試料中のヘリコバクターピロリ菌由来のDNAが、胃がんマーカーとして用いられ得ることが既に報告されている(例えばNilsson et al.、Journal of Clinical Microbiology、2004年、第42巻第8号、第3781〜8ページ参照。)。一方、炎症性消化器疾患を示すマーカーとして、例えば、Cox−2遺伝子由来核酸等がある。なお、Cox−2遺伝子由来核酸は、新生物性転化を示すマーカーとしても用いられる。
糞便試料中には、多種多様な物質が存在しており、核酸解析において阻害要因となり得る物質も多数存在している。このため、糞便試料を直接解析に用いるのではなく、糞便試料から核酸を回収し、回収された核酸を用いて核酸解析を行うことにより、解析の精度をより向上させることができる。前述したように、本発明の調製方法により調製された糞便試料からは、核酸を非常に効率よく回収することができるため、糞便中に大量に存在する腸内常在菌由来の核酸のみならず、微量に存在する哺乳細胞由来の核酸の解析に非常に好適な試料である。特に糞便であることから、大腸、小腸、胃等の消化管細胞由来の核酸を解析することが好ましく、大腸剥離細胞由来の核酸を解析することが特に好ましい。
糞便試料から核酸を回収する方法は、特に限定されるものではなく、試料から核酸を回収する場合に通常用いられる方法であれば、いずれの方法によっても行うことができる。本発明の糞便試料中には、主に哺乳細胞等の腸内常在菌以外の生物(以下、哺乳細胞等ということがある。)由来の核酸と、腸内常在菌由来の核酸が含まれている。糞便試料からの核酸回収においては、哺乳細胞等由来の核酸と腸内常在菌細胞由来の核酸を別々に回収してもよいが、同時に回収することが特に好ましい。哺乳細胞等由来の核酸と腸内常在菌由来の核酸を同時に回収することにより、糞便中に大量に存在する腸内常在菌由来の核酸がキャリアーとして機能する結果、少数である哺乳細胞等由来の核酸を、哺乳細胞等を予め糞便から単離した後に核酸を回収する場合よりも、非常に効率よく核酸を回収し得る。そして、このように回収された核酸を用いて核酸解析を行うことにより、大腸がん等の特定の疾患マーカーを非常に高感度かつ高精度に検出することがきる。なお、糞便試料から回収する核酸は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、DNAとRNAの両方であってもよい。
例えば、工程(a)として、本発明の糞便試料中のタンパク質を変性させ、前記糞便試料中の哺乳細胞等及び腸内常在菌から、核酸を溶出させた後、工程(b)として、溶出させた核酸を回収することにより、本発明の糞便試料から哺乳細胞等由来の核酸と腸内常在菌由来の核酸を同時に回収することができる。
工程(a)における糞便試料中のタンパク質の変性は、公知の手法で行うことができる。例えば、糞便試料にカオトロピック塩、有機溶媒、界面活性剤等の、通常タンパク質の変性剤として用いられている化合物を添加することにより、糞便試料中のタンパク質を変性させることができる。工程(a)において糞便試料に添加し得るカオトロピック塩や界面活性剤は、本発明の糞便試料調製用溶液に添加し得るカオトロピック塩及び界面活性剤として挙げたものと同様のものを用いることができる。有機溶媒としては、フェノールであることが好ましい。フェノールは中性であってもよく、酸性であってもよい。酸性のフェノールを用いた場合には、DNAよりもRNAを選択的に水層に抽出することができる。なお、工程(a)において、糞便試料にカオトロピック塩、有機溶媒、界面活性剤等を添加する場合には、1種類の化合物を添加してもよく、2種類以上の化合物を添加してもよい。
工程(a)の後工程(b)の前に、工程(c)として、工程(a)により変性させたタンパク質を除去してもよい。核酸を回収する前に、予め変性させたタンパク質を除去することにより、回収される核酸の品質を向上させることができる。工程(c)におけるタンパク質の除去は、公知の手法で行うことができる。例えば、遠心分離により、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、変性タンパク質を除去することができる。また、クロロホルムを添加し、ボルテックス等により充分に攪拌混合させた後に遠心分離を行い、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、単に遠心分離を行う場合よりも、より完全に変性タンパク質を除去することができる。
工程(b)における溶出させた核酸の回収は、エタノール沈殿法や塩化セシウム超遠心法等の公知の手法で行うことができる。また、工程(b1)として、工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させた後、工程(b2)として、工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させることにより、核酸を回収することができる。工程(b1)において核酸を吸着させる無機支持体は、核酸を吸着することができる公知の無機支持体を用いることができる。また、該無機支持体の形状も特に限定されるものではなく、粒子状であってもよく、膜状であってもよい。該無機支持体として、例えば、シリカゲル、シリカ質オキシド、ガラス、珪藻土等のシリカ含有粒子(ビーズ)や、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ニトロセルロース等の多孔質膜等がある。工程(b2)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる溶媒は、回収する核酸の種類やその後の核酸解析方法等を考慮して、これらの公知の無機支持体から核酸を溶出するために通常用いられている溶媒を適宜用いることができる。該溶出用溶媒として、特に精製水であることが好ましい。なお、工程(b1)の後、工程(b2)の前に、核酸を吸着させた無機支持体を適当な洗浄バッファーを用いて洗浄することが好ましい。
なお、糞便試料が、哺乳細胞等から核酸を溶出するために充分な濃度のカオトロピック塩や界面活性剤を含む糞便試料調製用溶液を用いて調製されている場合には、該糞便試料からの核酸の回収において、工程(a)を省略することもできる。
糞便試料が、哺乳細胞等から核酸を溶出するために充分な濃度のカオトロピック塩や界面活性剤を含まない糞便試料調製用溶液を用いて調製されている場合には、工程(a)の前に、工程(d)として、糞便試料から固形成分を回収することが好ましい。糞便試料は、糞便と糞便試料調製用溶液を迅速に混合させるために、糞便中の固形成分に対する液体成分の比率が大きい。そこで、糞便試料から糞便試料調製用溶液を除去し、哺乳細胞等や腸内常在菌を含む固形成分のみを回収することにより、核酸の回収及び解析におけるスケールを小さくすることができる。また、固形成分から水溶性有機溶媒を除去することにより、該固形成分から核酸を回収する工程における水溶性有機溶媒の影響を抑えることもできる。例えば、本発明の糞便試料を遠心分離することにより、固形成分を沈殿させ、上清を除去することにより、固形成分のみを回収することができる。その他、フィルター濾過等によっても、固形成分のみを回収することができる。さらに、回収された固形成分をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)等の適当なバッファーを用いて洗浄することも好ましい。
なお、回収された固形成分に、カオトロピック塩等のタンパク質変性剤を直接添加してもよいが、一度適当な溶出用薬剤に懸濁させた後にタンパク質変性剤を添加することが好ましい。DNAを回収する場合には、該溶出用薬剤として、例えば、リン酸バッファーやトリスバッファー等を用いることができる。高圧蒸気滅菌等により、DNaseを失活させた薬剤であることが好ましく、さらにプロテイナーゼK等のタンパク質分解酵素を含有させた薬剤であることがより好ましい。一方、RNAを回収する場合には、該溶出用薬剤として、例えば、クエン酸バッファー等を用いることができるが、RNAは非常に分解され易い物質であるため、チオシアン酸グアニジンや塩酸グアニジン等のRNase阻害剤を含有したバッファーを用いることが好ましい。
その後の解析方法によっては、糞便試料から核酸を回収しなくてもよい。具体的には、糞便試料中の哺乳細胞等や腸内常在菌から核酸を溶出させた後、そのまま核酸解析に用いることができる。例えば、糞便試料中に病原菌等が大量に存在している場合であって、該病原菌由来の核酸を解析する場合には、糞便試料から固形成分のみを回収した後、プロテイナーゼK等のタンパク質分解酵素を含有するPBS等の溶出用薬剤を添加して混合することにより得た均一な糞便試料溶液を、そのまま核酸解析に用いることにより、病原菌由来の遺伝子等を検出することができる。その他、糞便試料からの核酸の回収は、核酸抽出キットやウィルス検出キット等の市販のキットを用いて行うこともできる。
本発明の糞便試料より回収された核酸は、公知の核酸解析方法を用いて解析することができる。該核酸解析方法として、例えば、核酸を定量する方法や、PCR等を用いて特定の塩基配列領域を検出する方法等がある。その他、RNAを回収した場合には、逆転写反応によりcDNAを合成した後、該cDNAを用いて、DNAと同様にして解析に用いることができる。例えば、がん遺伝子等がコードされている塩基配列領域や、マイクロサテライトを含む塩基配列領域等の遺伝的変異の有無を検出することにより、がんの発症の有無を調べることができる。糞便試料から回収されたDNAを用いた場合には、例えば、DNA上の変異解析やエピジェネティック変化解析を行うことができる。変異解析としては、例えば、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位の解析等が挙げられる。また、エピジェネティック変化解析としては、例えば、メチル化や脱メチル化の解析等が挙げられる。一方、回収されたRNAを用いた場合には、例えば、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアント(アイソフォーム)等の変異を検出することができる。その他、機能性RNA(ノンコーディングRNA)解析、例えば、転移RNA(transfer RNA、tRNA)、リボソームRNA(ribosomal RNA、rRNA)、microRNA(miRNA、マイクロRNA)等の解析を行うことができる。また、RNA発現量を検出し解析することもできる。特に、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析等を行うことが好ましい。なお、これらの解析は、当該分野において公知の方法により行うことができる。また、K−ras遺伝子変異解析キット、メチル化検出キット等の市販の解析キットを用いてもよい。
このように、本発明の糞便試料の調製方法、該調製方法により調製された糞便試料からの核酸回収方法、及び該核酸回収方法により回収された核酸を用いた核酸解析方法を用いることにより、糞便中の核酸を高感度かつ高精度に解析することができるため、大腸がんをはじめ、様々な症状や疾患の早期発見や診断、治療経過の観察、及び他の異常な容態の病理学的研究等に資することが期待できる。
予め本発明の糞便試料調製用溶液を含有させた採便容器に糞便を採取することにより、より簡便かつ迅速に採取された糞便を調製することができる。また、本発明の糞便試料調製用溶液と、該糞便試料調製用溶液を含有する採便容器と、を有する採便用キットを用いることにより、より簡便に本発明の効果を発揮することができる。なお、該採便用キットには、採便棒等の、該糞便試料調製用溶液及びそれを含有する採便容器以外の構成物を適宜有していてもよい。
このような採便容器の形態や大きさ等は特に限定されるものではなく、溶媒を含有し得る公知の採便容器を用いることができる。取り扱いが簡便であるため、採便容器の蓋と採便棒が一体化している採便容器であることが好ましい。また、採便量をコントロールすることができるため、採便棒が一定量の糞便を採取し得るものであることがより好ましい。このような公知の採便容器として、例えば、特公平6−72837号公報に開示されている採便容器等がある。
図1及び図2は、本発明の採便用キットに用いることができる採便容器の一態様をそれぞれ示した図である。なお、本発明の採便用キットに用いることができる採便容器は、これらの採便容器に限定されるものではない。
まず図1の採便容器について説明する。採便棒3と一体化した蓋2と、容器本体1を有し、内部に本発明の糞便試料調製用溶液Sを含有する採便容器である。採便棒3の先端には糞便を一定量採取し得るカップ3aがあり、かつカップ3aには篩目がある。一方、容器本体1の底部には、カップ3aと補足的な形状となる隆起部1aがある。カップ3aを隆起部1aに勘合させることにより、カップ3aに採取された糞便は、カップ3aにある篩目からところてんのように押し出されるため、糞便試料調製用溶液Sに糞便を速やかに分散させることができる。
図2記載の採便容器は、先端が尖っている採便棒13と一体化した蓋12と、容器本体11を有し、容器本体11内部に、本発明の糞便試料調製用溶液Sを含有する密封された袋15を有する採便容器である。採便棒13には、糞便Eを一定量採取し得る穴13aが空いている。また、採便棒13上をスライドすることにより穴13aの蓋となり得る可動蓋13bも付いている。図2aのように、まず、採便棒13を、可動蓋13bを穴13aよりも蓋12側に寄せて、穴13aが完全に開口している状態とした後に、糞便Eに押し付ける。すると図2bに示すように、穴13aに糞便Eが充填される。この状態で、可動蓋13bをスライドさせて穴13aに蓋をすることにより、穴13aの容量の糞便を正確に採取することができる(図2c)。その後、可動蓋13bを元の位置に戻して穴13aが完全に開口している状態とした後に(図2d)、蓋12を容器本体11に収納する(図2e)。採便棒13が容器本体11に収納される際に、採便棒13の尖った先端が糞便試料調製用溶液Sを含有する袋15を破ることにより、糞便試料調製用溶液Sと糞便Eが混合される。このような採便容器は、採便棒を容器に入れて始めて溶液が容器中に満たされるため、メタノールのような人体に有害な糞便試料調製用溶液を用いる場合であっても、溶液漏れによる事故を回避することができ、家庭でも安全に取り扱うことが出来る。
以上述べたように、本発明の糞便試料調製用溶液は、糞便中の核酸の保存性に非常に優れた調製用溶液であるが、核酸のみならず、細胞やタンパク質等の細胞由来成分(細胞内に存在するタンパク質等の生体成分)の保存性も向上させることができる。このため、本発明の糞便試料調製用溶液を用いて調製された糞便試料は、核酸解析のみならず、糞便に含まれている細胞の形態学的解析や、糞便に含まれているタンパク質等の解析に供することもできる。
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に記載が無い場合には、「%」は「体積%」を意味する。また、培養細胞であるCaco−2細胞は、常法により培養した。
[実施例1]
健常人1名より採取された糞便を、5本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.5gずつ分取した。分取後、各糞便に対して、糞便試料調製用溶液として、蒸留水(DW)(糞便試料1−1)、インヒビターカクテル(シグマ社製)の100倍希釈溶液(原液を蒸留水で100倍希釈した溶液;糞便試料1−2)、20mM DTT(糞便試料1−3)、5M 尿素(糞便試料1−4)、0.5M EDTA(糞便試料1−5)を、各10mL加えて、各溶液に糞便を浸漬させて、糞便試料を調製した。
各糞便試料を、25℃で7日間保存した後、RNAを回収した。具体的には、各チューブを遠心処理して糞便の固形成分を回収した後、フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。
回収されたRNA1μgに対してRT−PCRを行い、ヒトGAPDH遺伝子の検出を行った。プライマーとして、アプライドバイオシステム社製のGAPDHプライマープローブMIX(カタログNo:Hs02786624_gl)を用いた。
具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、得られたcDNAを1μLずつそれぞれ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのGAPDHプライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)をそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。
該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、95℃で10分間処理した後、95℃で1分間、56.5℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行った後、さらに72℃で7分間処理することにより、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各糞便試料から回収されたRNA中のGAPDH遺伝子の発現量の相対値を算出した。算出した結果を図3に示す。プロテアーゼ阻害剤を含有する溶液を用いて調製した糞便試料1−2〜1−5では、プロテアーゼ阻害剤無添加の糞便試料1−1よりも、GAPDH遺伝子の発現量が少なくとも10倍以上と非常に多かった。これらの結果から、プロテアーゼ阻害剤を含有する糞便試料調製用溶液(本発明の糞便試料調製用溶液)を用いることにより、RNAの保存性が飛躍的に向上することが明らかである。
[実施例2]
糞便試料調製用溶液として、60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料2−1)、インヒビターカクテル(シグマ社製)を最終濃度が100倍希釈溶液となるように添加した60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料2−2)、インヒビターカクテル(シグマ社製)を最終濃度が1000倍希釈溶液となるように添加した60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料2−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、糞便試料を調製してRNAを回収した後、各糞便試料から回収されたRNA中のGAPDH遺伝子の発現量の相対値を算出した。なお、糞便試料2−1〜3の調製に用いた前記糞便試料調製用溶液は、いずれも、最終pHが5.5となるように、0.1Mクエン酸/水酸化ナトリウム溶液を用いて予め調整した溶液である。
糞便試料2−1〜2−3由来のRNA中のGAPDH遺伝子発現量を相対比較した結果を図4に示す。この結果、糞便試料調製用溶液として、プロテアーゼ阻害剤と水溶性有機溶媒(エタノール)とを両方含有する溶液を用いることにより、よりRNAの保存性が向上すること、及び、プロテアーゼ阻害剤には至適濃度があることが明らかとなった。
[実施例3]
新生物性転化や炎症性消化器疾患を示すマーカーであるCox−2遺伝子の発現が確認されている大腸癌患者1名の糞便を小分けし、3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.5gずつ分取した。糞便試料調製用溶液として、60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料3−1)、インヒビターカクテル(シグマ社製)を最終濃度が100倍希釈溶液となるように添加した60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料3−2)、インヒビターカクテル(シグマ社製)を最終濃度が1000倍希釈溶液となるように添加した60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料3−3)を調製した後、分取された各糞便に対してそれぞれ添加し、各溶液に糞便を浸漬させて、糞便試料を調製した。実施例1と同様にして、各糞便試料からRNAを回収した後、各糞便試料から回収されたRNA中のCox−2遺伝子の発現量の相対値を算出した。なお、糞便試料3−1〜3の調製に用いた前記糞便試料調製用溶液は、いずれも、最終pHが5.5となるように、0.1Mクエン酸/水酸化ナトリウム溶液を用いて予め調整した溶液である。
糞便試料3−1〜3由来のRNA中のCox−2遺伝子発現量を相対比較した結果、図4とほぼ同様の相対値を示すことがわかった。この結果から、新生物性転化や炎症性消化器疾患を示すマーカーを検出する際に、糞便試料調製用溶液として、プロテアーゼ阻害剤と水溶性有機溶媒(エタノール)とを両方含有する溶液を用いることにより、よりRNAの保存性が向上すること、及び、プロテアーゼ阻害剤には至適濃度があることが明らかとなった。
[実施例4]
健常人1名より採取された糞便を、9本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.5gずつ分取した。分取直後、10mLのインヒビターカクテル(シグマ社製)の100倍希釈溶液(原液を蒸留水で100倍希釈した溶液)を加えて糞便をよく分散させて糞便試料を調製した後、−4℃(糞便試料4−1)、0℃(糞便試料4−2)、4℃(糞便試料4−3)、10℃(糞便試料4−4)、20℃(糞便試料4−5)、30℃(糞便試料4−6)、40℃(糞便試料4−7)、50℃(糞便試料4−8)、60℃(糞便試料4−9)の各条件で6時間静置して保存した。
各糞便試料は、各温度で保存後、室温にてRNAを回収した。具体的には、各チューブを遠心処理して糞便の固形成分を回収した後、フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)に、酢酸ナトリウム及びエタノールを添加して攪拌した後、遠心分離処理を行い、沈殿を得た後、風乾させた。これらの沈殿を、DEPC処理をした水に溶解させ、RNA溶液を得た。
各RNA溶液のうち、一部を用い、逆転写反応用のキットであるReverTra Ace qPCR RT Kit(東洋紡社製)を用い、cDNAを合成した。このcDNAを鋳型とし、12.5μLの2×TaqMan PCR master mix (Applied Biosystems社製)を添加し、配列番号1の塩基配列を有するヒトGAPDH用フォワードプライマーと、配列番号2の塩基配列を有するヒトGAPDH用リバースプライマーとをそれぞれ最終濃度が900nmolとなるように添加し、最終容量が25μLとなるようにPCR溶液を調製した。該PCR溶液に対して、ABI Prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)によるSYBR green PCR解析を行った。PCRの熱サイクルは、95℃10分間の変性サイクルの後、95℃30秒間、55℃30秒間、72℃30秒間を45サイクルの条件で行った。定量は、濃度既知のスタンダードプラスミドによる希釈系列を鋳型として得られた蛍光強度の結果に基づき行い、20℃で保存した糞便試料4−5由来のPCR溶液の蛍光強度を1とした場合の核酸増幅量の相対値を算出した。
Figure 2010064634
解析結果を表2に示す。糞便試料4−1〜3及び4−9由来RNAを鋳型に用いた場合には、核酸増幅量は検出感度以下であった。一方、糞便試料4−4〜8由来RNAをそれぞれ鋳型に用いた場合には、核酸増幅が確認された。
すなわち、保存温度が10℃以上である場合には、糞便中のプロテアーゼによる影響に伴う核酸の分解を、効果的に抑制し得ることが分かった。特に、保存温度が20℃以上の場合には、さらに大きな効果が得られることが分かった。一方で、保存温度が50℃を超えると、核酸増幅が確認されず、核酸分解が促進されたことが示唆された。
これらの結果から、保存温度が低温の場合、溶液中のインヒビターカクテル(ペプチド系プロテアーゼ阻害剤)が糞便中のプロテアーゼに対して十分に作用せず、糞便由来固形分回収・RNA抽出等の操作の過程において、糞便由来のプロテアーゼの活性により核酸の分解が促進されてしまうことが示唆された。
[実施例5]
健常人1名より採取された糞便を、9本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.5gずつ分取した。分取直後、10mLのインヒビターカクテル(シグマ社製)の100倍希釈溶液(原液を蒸留水で100倍希釈した溶液)を加えて糞便をよく分散させて糞便試料を調製した後、20℃で静置して保存した。各糞便試料の保存時間は、1分間(糞便試料5−1)、10分間(糞便試料5−2)、1時間(糞便試料5−3)、12時間(糞便試料5−4)、24時間(糞便試料5−5)、36時間(糞便試料5−6)、48時間(糞便試料5−7)、72時間(糞便試料5−8)、168時間(糞便試料5−9)とした。
各糞便試料は、各保存時間経過後、実施例3と同様にして、RNAを回収してcDNAを得た後、SYBR green PCR解析を行った。保存時間が24時間である糞便試料5−5由来のPCR溶液の蛍光強度を1とした場合の核酸増幅量の相対値を算出した。
Figure 2010064634
解析結果を表3に示す。糞便試料5−1〜3由来RNAを鋳型に用いた場合には、核酸増幅量は検出感度以下であった。一方、保存時間が12時間以上である糞便試料5−4〜9由来RNAをそれぞれ鋳型に用いた場合には、核酸増幅が確認された。特に、保存時間が12〜48時間では、保存時間が長くなるにつれて核酸増幅量が高くなり、48時間よりも長い場合であっても、一定の核酸増幅量が検出された。
すなわち、保存時間が12時間以上である場合には、糞便中のプロテアーゼによる影響に伴う核酸の分解を、効果的に抑制し得ることが分かった。
これらの結果から、糞便試料を保存しない場合や、保存時間が数分間である場合には、溶液中のインヒビターカクテル(ペプチド系プロテアーゼ阻害剤)が糞便中のプロテアーゼに対して十分に作用せず、糞便由来固形分回収・RNA抽出等の操作の過程において、糞便由来のプロテアーゼの活性により核酸の分解が促進されてしまうことが示唆された。
[参考例1]
健常人1名より採取された糞便を、3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。このうち1本に対して、分取直後、速やかに液体窒素を用いて凍結処理を行い、糞便試料(1A)とした。他の1本に対して、分取後、10mLの70%エタノール溶液を加えて糞便をよく分散させた後、室温で1時間静置し、糞便試料(1B)とした。残りの1本は、分取後、溶液等を添加せずに速やかに抽出工程に移行させ、これを糞便試料(1C)とした。
その後、各糞便試料からRNAを回収した。具体的には、各糞便試料に、3mLのフェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて、回収したRNAの定量を行った。
図5は、各糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。本発明の糞便試料調製用溶液であるエタノール溶液を用いて調製された糞便試料(1B)からは、採取直後に凍結処理を行った糞便試料(1A)から回収されたRNA量には若干及ばないものの、採取直後速やかに核酸抽出を行った糞便試料(1C)に比べて、非常に多くのRNAを回収することができた。これらの結果から、本発明の糞便試料調製用溶液を用いて調製することにより、室温での調製であっても、非常に効率よく核酸を回収し得る糞便試料が得られることが明らかである。検診等の場合のように、患者が自宅で採便する場合には、糞便試料の調製を室温付近で行えることが望まれるが、本発明の糞便試料調製用溶液は、このような要請に充分に応えることが可能である。
[参考例2]
健常人の糞便0.5gに対し、MDR1(multidrug resistance 1)遺伝子を高発現しているヒト大腸がん由来培養細胞Caco−2細胞を5.0×10cells混合させたものを、大腸がん患者擬似糞便とし、該糞便を本発明の糞便試料の調製方法により糞便試料を調製した。
具体的には、該大腸がん患者擬似糞便を、15mLのポリプロピレンチューブに0.5gずつ分取し、表4記載の糞便試料調製用溶液をそれぞれ添加して混合して、糞便試料を調製した。なお、表中、「普遍的収集培地」とは、特許文献4に記載の保存培地(500mLのPack食塩水G、400mgの重炭酸ナトリウム、10gのBSA、500units/Lのpenicillin G、500mg/Lの硫酸ストレプトマイシン、1.25mg/Lのamphortericin B、50mg/Lのgentamicin)である。調製した糞便試料を、室温(25℃)の恒温インキュベータにおいて、1、3、7、10日間、それぞれ保存した。
Figure 2010064634
保存後、各糞便試料からRNAを回収し、回収されたRNAに対して、MDR1遺伝子の転写産物であるmRNAの検出を試みた。糞便試料調製用溶液(2C)を用いて調製した糞便試料(以下、糞便試料(2C)という。)に対しては、まず、Caco−2細胞を含む哺乳細胞を分離した後、RNAの回収を行った。糞便試料調製用溶液(2C)以外の糞便試料調製用溶液を用いて調製した糞便試料に対しては、哺乳細胞を分離せず、哺乳細胞由来の核酸とバクテリア由来の核酸を同時に回収した。糞便試料(2C)からの哺乳細胞の分離は、具体的には、糞便試料(2C)に5mLのヒストパック1077溶液(Sigma社製)を添加して混合した後、200×g、30分間室温で遠心分離処理を行い、懸濁液とヒストパック1077溶液の間の界面を回収することにより行った。分離した哺乳細胞は、PBSで3回洗浄した。
糞便試料からのRNAの回収は、具体的には、次のようにして行った。まず、糞便試料(糞便試料(2C)のみ分離した哺乳細胞)に、3mLのフェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、12,000×gで10分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を新しいポリプロピレンチューブに回収した。その後、RNeasy midi kit(Qiagen社製)を用いて、回収された上清からRNAを回収した。
回収されたRNAに対してRT−PCRを行った。PCRのプライマーとして、配列番号3の塩基配列を有するMDR1遺伝子増幅用のフォワードプライマーと、配列番号4の塩基配列を有するMDR1遺伝子増幅用のリバースプライマーを用いた。
具体的には、0.2mLのPCRチューブに、12μLの超純水と2μLの10×バッファーを添加し、さらにcDNA、該フォワードプライマー、該リバースプライマー、塩化マグネシウム、dNTP、及びDNAポリメラーゼをそれぞれ1μLずつ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。該PCRチューブを、95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間を30サイクル、からなる反応条件によりPCRを行った。この結果、得られたPCR産物を、Agilent DNA1000 LabChip(登録商標)キット(アジレント社製)を用いて泳動し、得られたバンドの強度を測定し、PCR産物の増幅程度を調べた。
Figure 2010064634
表5は、各糞便試料由来のPCR産物の増幅程度を、保存期間ごとにまとめた表である。なお、表中「糞便試料(2A)」は、糞便試料調製用溶液(2A)を用いて調製した糞便試料を、「糞便試料(2B)」は、糞便試料調製用溶液(2B)を用いて調製した糞便試料を、「糞便試料(2D)」は、糞便試料調製用溶液(2D)を用いて調製した糞便試料を、それぞれ意味する。
この結果、糞便試料(2D)では、保存期間が1日の場合にはPCR産物の増幅が確認されたが、保存期間3日以降は、増幅が確認できなかった。これに対して、本発明の糞便試料調製用溶液である糞便試料調製用溶液(2A)や糞便試料調製用溶液(2B)を用いて調製された糞便試料(2A)及び(2B)では、保存期間10日においてもPCR産物の増幅を確認することができた。一方で、特許文献4記載の糞便試料調製用溶液(2C)を用いて調製された糞便試料(2C)では、保存期間1日であってもPCR産物の増幅は確認することができなかった。
以上の結果から、本発明の調製方法により調製された糞便試料からは、糞便中に含まれている核酸を効率よく回収することができることが明らかである。また、本発明の糞便試料を用いることにより、RNA解析の精度を向上し得ることも明らかである。これは、本発明の糞便試料用溶液を用いることにより、糞便中に含まれる哺乳細胞由来の核酸、特に分解され易いRNAでさえも、室温で長期間保存可能なほど安定して保持し得るためと推察される。
一方で、糞便試料(2C)由来のPCR産物では増幅が確認されなかったことから、糞便試料調製用溶液として抗生物質を含有する溶液を用いた場合には、該抗生物質により糞便中のバクテリア細胞は殺菌されるものの、死滅したバクテリア細胞からRNase等が放出される等により、却ってRNA分解が促進される可能性が示唆される。また、糞便に含まれる哺乳細胞数は少ないため、糞便から哺乳細胞を分離した場合には、バクテリア細胞由来の核酸がキャリアーとして機能し得る本発明の核酸の回収方法と比較して、充分量の核酸を回収することが困難である可能性も示唆される。
[参考例3]
超純水を用いて希釈することにより、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%のエタノール溶液をそれぞれ調製した。これらのエタノール溶液を、各5mLずつ15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ分注した。
これらのチューブに、健常人より採取した糞便0.5gをそれぞれ分取した後、37℃で48時間静置した。その後、各チューブを遠心分離処理し、上清を除去して得られた固形成分に、3mLのフェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、12,000×gで10分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を新しいポリプロピレンチューブに回収した。その後、RNeasy midi kit(Qiagen社製)を用いて、回収された上清からRNAを回収した。
図6は、各濃度のエタノール溶液を用いて調製された糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。この結果、糞便試料調製用溶液の有効成分としてエタノール等のアルコールを用いる場合には、アルコール濃度は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、50〜80%であることがさらに好ましく、60〜70%であることが特に好ましいことが明らかである。
[参考例4]
健常人5名から採取した糞便をよく混合し、0.2gずつ2本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ分取した。このうち1本に対して、1mLの18%イソプロパノール含有32%変性エタノール溶液(totalアルコール濃度として50%)を加えてよく混合した後、25℃で1日静置した。該糞便試料を糞便試料(4A)とした。残りの1本は対照試料とし、分取後速やかに−80℃ディープフリーザーに回収した。
両糞便試料から、糞便からのDNA抽出キット「QIAamp DNA Stool Mini Kit」(Qiagen社製)を用いてDANを回収した。回収されたDNAの濃度を吸光度法により定量した結果、両糞便試料から、ほぼ同等量のDNAを回収することができた。
回収されたDNAを100ng用いて、K−ras遺伝子の変異解析キット「K−rasコドン12変異検出試薬」(湧永製薬社製)を用いて、付属のプロトコールに従い変異解析を行った。その結果、糞便試料(4A)から回収されたDNAの解析結果は、対照試料から回収されたDNAを用いた場合と同様に、6種類の変異遺伝子は全て陰性となった。
以上の結果から、本発明の糞便試料の調製方法、及び、本発明の核酸回収方法により回収された核酸を用いることにより、遺伝子変異等の高い正確性を要求される核酸解析であっても精度よく行えることが明らかである。また今回はイソプロパノールとエタノールを混合した変性エタノールを処理溶液として使用したが、アルコール濃度としては同じである、50%エタノール溶液を使用しても同等の結果が得られた。
[参考例5]
健常人1名より採取された糞便を、3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.1gずつ分取し、このうち1本に対して、3mLの70%エタノールを加えて糞便をよく分散させ、得られた糞便試料を糞便試料(5A)とした。一方、残りの2本に対して、それぞれ2.4mLの「ISOGEN」(ニッポンジーン社製)を加えて糞便をよく分散させ、得られた糞便試料を、それぞれ比較試料(P1)、比較試料(P2)とした。なお、「ISOGEN」はフェノール(水に対する溶解度約10重量%)が40%含有されているフェノール含有物である。
このうち、比較試料(P1)に対して、糞便分散後、速やかにRNA回収を行った。具体的には、糞便試料を30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、12,000×gで10分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を新しいポリプロピレンチューブに回収した。その後、RNeasy midi kit(Qiagen社製)を用いて、回収された上清からRNAを回収した。
また、比較試料(P2)は、室温で5時間静置した後、比較試料(P1)と同様にして、RNA回収を行った。
一方、糞便試料(5A)は、比較試料(P2)と同様に室温で5時間静置した後、遠心分離処理を行って上清を除去した後、得られた沈殿(固形成分)に、2.4mLの「ISOGEN」を添加した後、比較試料(P1)と同様にして、RNA回収を行った。
回収されたRNAを、ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて定量した。この結果、糞便試料調製直後にRNA回収を行った比較試料(P1)からは32μgのRNAを回収することができたが、5時間室温静置後に回収操作を行った比較試料(P2)からは14μgしか回収することができなかった。これに対して、糞便試料(5A)からは、5時間室温静置後に回収操作を行ったにもかかわらず、57μgという比較試料(P1)よりも大量のRNAを回収することができた。
これらの結果から、本発明の糞便試料調製用溶液を用いることにより、従来のフェノール溶液を用いた場合よりも、非常に効率よくRNAを回収し得ることが明らかである。
本発明の糞便試料の調製方法により、糞便試料中の核酸を効率よく保存し得る糞便試料を簡便に調製することができるため、特に糞便試料を用いた定期健診等の臨床検査等の分野において利用が可能である。
1…容器本体、1a…隆起部、2…蓋、3…採便棒、3a…カップ、S…糞便試料調製用溶液、11…容器本体、12…蓋、13…採便棒、13a…穴、13b…可動蓋、15…袋、E…糞便。

Claims (49)

  1. 糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製方法であって、
    採取された糞便を、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とする糞便試料調製用溶液に混合させることを特徴とする、糞便試料の調製方法。
  2. 採取された糞便を、前記糞便試料調製用溶液に混合させた後、所定時間保存することを特徴とする請求項1記載の糞便試料の調製方法。
  3. 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、1時間以上であることを特徴とする請求項2記載の糞便試料の調製方法。
  4. 前記プロテアーゼ阻害剤が、ペプチド系プロテアーゼ阻害剤、還元剤、タンパク質変性剤、及びキレート剤からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  5. 前記プロテアーゼ阻害剤が、AEBSF、アプロチニン、ベスタチン、E−64、ロイベプチン、ペブスタチン、尿素、DTT(ジチオスレイトール)、及びEDTAからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  6. 前記糞便試料調製用溶液が、プロテアーゼ阻害剤及び水溶性有機溶媒を有効成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  7. 前記糞便試料調製用溶液が緩衝作用を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  8. 前記糞便試料調製用溶液のpHが2〜6.5であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  9. 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  10. 前記水溶性有機溶媒が水溶性アルコール及び/又はケトン類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が30%以上であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  11. 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコールとして、エタノール、プロパノール、及びメタノールからなる群より選ばれる1以上を含むことを特徴とする請求項6〜10のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  12. 前記水溶性有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項6〜11のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  13. 前記水溶性有機溶媒が、ケトン類として、アセトン及び/又はメチルエチルケトンを含むことを特徴とする請求項6〜11のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  14. 前記水溶性有機溶媒がアルデヒド類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が0.01〜30%であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  15. 前記糞便と前記糞便試料調製用溶液の混合比率が、糞便容量1に対して糞便試料調製用溶液容量が1以上であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  16. 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、12時間以上であることを特徴とする請求項2〜15のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  17. 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、24時間以上であることを特徴とする請求項2〜15のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  18. 前記糞便試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、72時間以上であることを特徴とする請求項2〜15のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  19. 前記糞便試料調製用溶液のpHが3〜6であることを特徴とする請求項8〜18のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  20. 前記糞便試料調製用溶液のpHが4.5〜5.5であることを特徴とする請求項8〜18のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  21. 前記糞便試料調製用溶液が界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  22. 前記糞便試料調製用溶液が着色剤を含有することを特徴とする請求項1〜21のいずれか記載の糞便試料の調製方法。
  23. 糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製に用いられる溶液であって、プロテアーゼ阻害剤を有効成分とすることを特徴とする、糞便試料調製用溶液。
  24. 糞便中に含まれる核酸の解析のための糞便試料の調製に用いられる溶液であって、プロテアーゼ阻害剤及び水溶性有機溶媒を有効成分とすることを特徴とする、糞便試料調製用溶液。
  25. 前記プロテアーゼ阻害剤が、ペプチド系プロテアーゼ阻害剤、還元剤、タンパク質変性剤、及びキレート剤からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項23又は24記載の糞便試料調製用溶液。
  26. 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項24又は25記載の糞便試料調製用溶液。
  27. 請求項23〜26のいずれか記載の糞便試料調製用溶液と、当該糞便試料調製用溶液を含有する採便容器と、を有することを特徴とする採便用キット。
  28. 請求項1〜22のいずれか記載の糞便試料の調製方法により調製された糞便試料。
  29. 糞便試料から核酸を回収する方法であって、請求項28記載の糞便試料中から、腸内常在菌由来の核酸と腸内常在菌以外の生物由来の核酸とを同時に回収することを特徴とする核酸回収方法。
  30. 前記腸内常在菌以外の生物が、哺乳細胞であることを特徴とする請求項29記載の核酸回収方法。
  31. 核酸を回収する工程が、
    (a)前記糞便試料中のタンパク質を変性させ、前記糞便試料中の腸内常在菌及び腸内常在菌以外の生物から、核酸を溶出させる工程と、
    (b)前記工程(a)において溶出させた核酸を回収する工程と、
    を有することを特徴とする請求項29又は30記載の核酸回収方法。
  32. 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、
    (c)前記工程(a)により変性させたタンパク質を除去する工程と、
    を有することを特徴とする請求項31記載の核酸回収方法。
  33. 前記工程(a)におけるタンパク質の変性が、カオトロピック塩、有機溶媒、及び界面活性剤からなる群より選ばれる1以上を用いて行われることを特徴とする請求項31又は32記載の核酸回収方法。
  34. 前記有機溶媒がフェノールであることを特徴とする請求項33記載の核酸回収方法。
  35. 前記工程(c)における変性させたタンパク質の除去が、クロロホルムを用いて行われることを特徴とする請求項32〜34のいずれか記載の核酸回収方法。
  36. 前記工程(b)における核酸の回収が、
    (b1)前記工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させる工程と、
    (b2)前記工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる工程と、
    を有することを特徴とする請求項31〜35のいずれか記載の核酸回収方法。
  37. 前記工程(a)の前に、
    (d)前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、
    を有することを特徴とする請求項31〜36のいずれか記載の核酸回収方法。
  38. 請求項29〜37のいずれか記載の核酸回収方法を用いて糞便試料から回収された核酸を用いて、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする核酸解析方法。
  39. 前記哺乳細胞が消化管細胞であることを特徴とする請求項38記載の核酸解析方法。
  40. 前記哺乳細胞が大腸剥離細胞であることを特徴とする請求項38記載の核酸解析方法。
  41. 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカーであることを特徴とする請求項38〜40のいずれか記載の核酸解析方法。
  42. 前記哺乳細胞由来の核酸が、炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする請求項38〜40のいずれか記載の核酸解析方法。
  43. 前記哺乳細胞由来の核酸が、Cox−2遺伝子由来核酸であることを特徴とする請求項38〜40のいずれか記載の核酸解析方法。
  44. 前記解析が、RNA解析及び/又はDNA解析であることを特徴とする請求項38〜43のいずれか記載の核酸解析方法。
  45. 前記RNA解析が、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアントの解析、mRNA発現解析、及び機能性RNA解析のいずれか1以上であることを特徴とする請求項44記載の核酸解析方法。
  46. 前記DNA解析が、変異解析及びエピジェネティック変化解析のいずれか1以上であることを特徴とする請求項44記載の核酸解析方法。
  47. 前記変異解析が、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位のいずれか1以上の変異の解析であることを特徴とする請求項46記載の核酸解析方法。
  48. 前記エピジェネティック変化解析が、DNAのメチル化解析及びDNAの脱メチル化解析のいずれか1以上であることを特徴とする請求項46記載の核酸解析方法。
  49. 前記変異解析がK−ras遺伝子の変異解析であることを特徴とする請求項46記載の核酸解析方法。
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