JPWO2013168429A1 - 溶接構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、コンテナ船は、近年、大型化し、6,000〜20,000 TEUといった大型船が建造されるようになってきている。なお、TEU(Twenty feet Equivalent Unit)は、長さ20フィートのコンテナに換算した個数を表し、コンテナ船の積載能力の指標を示している。このような船の大型化に伴い、船体外板は、板厚:50mm以上で、降伏強さ:390N/mm2級以上の厚鋼板が使用される傾向となっている。
非特許文献1では、溶接部で強制的に発生させた脆性亀裂の伝播経路、伝播挙動が実験的に調査されている。ここには、溶接部の破壊靱性がある程度確保されていれば、溶接残留応力の影響により脆性亀裂は溶接部から母材側に逸れてしまうことが多いという結果が記載されている。しかしその一方で溶接部に沿って脆性亀裂が伝播した例も複数例確認されている。このことは、脆性破壊が溶接部に沿って直進伝播する可能性が無いとは言い切れないことを示唆していることになる。
特許文献1に記載された技術では、この骨材に、表層部および裏層部で3mm以上の厚みにわたり0.5〜5μmの平均円相当粒径を有し、さらに板厚面に平行な面で(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上である、ミクロ組織を有する鋼板を用いるとしている。このようなミクロ組織を有する鋼板を補強材として隅肉溶接した構造とすることにより、突合せ溶接部に脆性亀裂が発生しても、補強材である骨材で脆性亀裂の伝播を停止でき、溶接構造体が破壊するような致命的な損傷を防止できるとしている。
特許文献2に記載された溶接構造体では、隅肉溶接継手断面におけるウェブの、フランジとの突合せ面に未溶着部を残存させる。そして、その未溶着部の幅と、隅肉溶接部の左右の脚長とウェブ板厚との和との比、Xが、被接合部材(フランジ)の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaと特別な関係式を満足するように、未溶着部の幅を調整する。これにより、被接合部材(フランジ)を板厚:50mm以上の厚物材としても、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂の伝播を、隅肉溶接部のウェブとフランジの突合せ面で停止させ、被接合部材(フランジ)への脆性亀裂の伝播を阻止することができるとしている。
また、特許文献2に記載された技術は、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂の伝播を、構造の不連続性と、被接合部材(フランジ)の脆性亀裂伝播停止特性との組合せで、阻止しようとする技術である。
しかし、日本造船研究協会第169委員会報告(「船体構造の破壊管理制御設計に関する研究―報告書―」、(1979)、p.118〜136、日本造船研究協会第169委員会)に示されるように、一般に、隅肉溶接継手の被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂を接合部材(ウェブ)で伝播停止させることは、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂を被接合部材(フランジ)で伝播停止させることに比べて、難しいことが実験的に確認されている。
この理由は明確には記載されていないが、一因として、T継手部に亀裂が突入するときの破壊駆動力(応力拡大係数)が、被接合部材(フランジ)に突入する場合よりも接合部材(ウェブ)に突入する場合のほうが大きくなることが要因として考えられる。
なお、特許文献2には、接合部材(ウェブ)の脆性亀裂伝播停止特性については何の配慮もなされていない。
すなわち、特許文献2に記載された技術は、例えば、NK船級の「脆性亀裂アレスト設計指針」(2009年9月制定)で想定されている、大型コンテナ船の強力甲板(フランジに相当)で発生した脆性亀裂がハッチサイドコーミング(ウェブに相当)に伝播するようなケースに対して、十分な亀裂伝播停止特性を有しているとはいえない。
なお、本発明が対象とする溶接構造体は、接合部材(ウェブ)ならびに被接合部材(フランジ)がともに、板厚50mm以上で突合せ溶接継手部を有するものとし、接合部材(ウェブ)の突合せ溶接継手部の溶接部端面を被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部の溶接部表面に突合せて、接合部材と被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる隅肉溶接継手を備える溶接構造体である。
その結果、このような厳しい条件の隅肉溶接継手において被接合部材(フランジ)から発生した脆性亀裂の伝播を阻止(停止)するには、接合部材(ウェブ)と被接合部材(フランジ)との突合せ面に不連続部を確保し、さらに脆性亀裂の伝播部を所定値以上の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaを有する脆性亀裂伝播停止特性に優れた部材で構成しただけでは十分でないことに思い至った。
とくに、被接合部材(フランジ)の板厚tf(mm)が大きくなると脆性亀裂先端のエネルギー解放率(亀裂進展駆動力)が増加し、脆性亀裂が停止しにくくなることに鑑みて、被接合部材(フランジ)の板厚tf(mm)に関連した、隅肉溶接部の靭性向上が必須となることに想到した。
また、隅肉溶接部の溶接脚長や溶着幅が長くなると、脆性亀裂の伝播が容易となるため、隅肉溶接部の溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方を16mm以下にする必要があることも知見した。
加えて、被接合部材および/または接合部材の突合せ溶接継手部の溶接金属の靭性を一定値以上とすることにより、所望の脆性亀裂伝播停止特性を有する溶接構造体とすることが可能となることを知見した。
突合せ面に所定の長さ以上の未溶着部、すなわち不連続部を確保するとともに、
隅肉溶接継手部の溶接脚長または溶着幅の少なくとも一方を16mm以下とし、
さらに、隅肉溶接部靭性を被接合部材の板厚tf(mm)との関係で所定の関係を満足する靭性とし、
加えて、接合部材および/または被接合部材の突合せ溶接継手部の溶接金属の靭性を高めることによりはじめて、
従来の技術では困難であった、上記のような板厚50mm以上の厚肉の被接合部材で発生した脆性亀裂の接合部材への伝播を阻止(停止)できることを見出した。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
ともに突合せ溶接継手部を有する、厚肉の接合部材(ウェブ)と厚肉の被接合部材(フランジ)とを、接合部材(ウェブ)の突合せ溶接継手部の溶接部端面を被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部の溶接部表面に突合せ、隅肉溶接により接合して大型隅肉溶接継手を作製した。
なお、未溶着部比率Y(%)(=(隅肉溶接した突合せ溶接継手断面における未溶着部の幅B)/(接合部材の板厚tw)×100)と、溶接材料および溶接条件等の調整により隅肉溶接金属部靭性とを、種々変化させた隅肉溶接継手とした。また、隅肉溶接部の溶接脚長または溶接幅の少なくとも一方は16mm以下とした。
なお、図3(a)に示す超大型構造モデル試験体は、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部11が接合部材(ウェブ)1の突合せ溶接継手部12と断面で同一線をなし、かつ、溶接線が直交するように作製した。また、機械ノッチ7の先端が、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部11のBOND部となるように加工した。
なお、応力257N/mm2は、船体に適用されている降伏強度390N/mm2級鋼板の最大許容応力相当の値である。また、温度:−10℃は船舶の設計温度である。
図4(a),(b)から、未溶着部比率Yが95%以上で、かつ隅肉溶接金属部の靭性と被接合部材(フランジ)の板厚tfとの関係が、特定の関係を満足する場合には、負荷応力が257N/mm2の場合でも、接合部材(ウェブ)のKcaに何ら配慮を加えずに、被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂を隅肉溶接部で停止でき、脆性亀裂の接合部材(ウェブ)への伝播を阻止(停止)できることがわかる。
なお、図4(a)、(b)は、隅肉溶接部の溶接脚長または溶着幅の少なくとも一方が16mm以下で、かつ被接合部材および/または接合部材の突合せ溶接継手部の溶接金属が所定の靭性を満足する場合である。
ここで、未溶着部比率Yは、接合部材(ウェブ)の突合せ溶接継手部12の溶接部端面を被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部11の溶接部表面に突合わせて隅肉溶接した突合せ溶接継手断面における未溶着部の幅Bと接合部材(ウェブ)板厚twの比率、(B/tw)×100(%)で定義される値である。
vTrs(℃) ≦ −1.5tf(mm)+90 ‥‥(1)
が、図4(b)から、
vE-20(J) ≧ 2.75tf(mm)−140 ‥‥(2)
が得られる。
ただし、被接合部材(フランジ)の板厚tfが50≦tf(mm)≦53の範囲にある場合、(2)式はvE-20(J)≧ 5.75とする。
そして、上記(1)、(2)式を満足するまでに、隅肉溶接金属の低温靭性を高めれば、板厚50mm以上の厚肉の被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂を隅肉溶接部内で停止させることが、多くの場合で可能となることを見出した。
さらに、上記した隅肉溶接部で脆性亀裂の伝播を阻止できなくても、隅肉溶接部の溶接脚長もしくは溶接幅の少なくとも一方を16mm以下とすること、ならびに被接合部材および/または接合部材の突合せ溶接継手部の溶接金属の低温靭性を所定の靭性とすることにより、接合部材(ウェブ)の溶接部(突合せ溶接継手部)で脆性亀裂の伝播を阻止できることも知見した。
また、上記と同様の対策を施すことにより、接合部材(ウェブ)から被接合部材(フランジ)に突入する脆性亀裂の伝播を、隅肉溶接部あるいは被接合部材(フランジ)の溶接部(突合せ溶接継手部)で阻止できることも知見した。
本発明は、かかる知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
1.板厚50mm以上の接合部材の端面を板厚50mm以上の被接合部材の表面に突合せ、前記接合部材と前記被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方が16mm以下の隅肉溶接継手を備えた溶接構造体であって、
前記接合部材および前記被接合部材をともに突合せ溶接継手部を有する部材とし、該接合部材および/または該被接合部材の突合せ溶接継手部の溶接金属が、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrs-W(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-W(J)で140J以上の靭性を有し、
前記隅肉溶接継手における前記接合部材の前記突合せ溶接継手部の溶接部端面を、前記被接合部材の前記突合せ溶接継手部の溶接部表面に突合せ、該突合せた面に、前記隅肉溶接継手の突合せ溶接継手断面で該接合部材の板厚twの95%以上の未溶着部を有し、
さらに前記隅肉溶接継手の隅肉溶接金属について、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs(℃)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(1)式の関係、および/または、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20(J)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(2)式の関係を満足させる、
ことを特徴とする溶接構造体。
記
vTrs ≦ −1.5tf+90 ‥‥(1)
vE-20(J)≧ 5.75、(但し、50≦tf(mm)≦53)、
vE-20(J)≧ 2.75tf(mm)−140 、(但し、tf(mm)>53) ‥‥(2)
ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、
vE-20:試験温度:−20℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギー(J)、
tf:被接合部材の板厚(mm)
2.前記接合部材および/または前記被接合部材の突合せ溶接継手部の熱影響部が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-H(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-H(J)で140J以上の靭性を有することを特徴とする前記1に記載の溶接構造体。
3.前記接合部材および/または前記被接合部材を構成する鋼板が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-B(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-B(J)で140J以上の靭性を有することを特徴とする前記1または2に記載の溶接構造体。
4.前記接合部材および/または前記被接合部材の突合せ溶接部の溶接金属が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-W(℃)で−85℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-W(J)で160J以上の靭性を有することを特徴とする前記1に記載の溶接構造体。
5.前記接合部材および/または前記被接合部材の突合せ溶接継手部の熱影響部が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-H(℃)で−85℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-H(J)で160J以上の靭性を有する熱影響部であることを特徴とする前記4に記載の溶接構造体。
6.前記接合部材および/または前記被接合部材を構成する鋼板が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-B(℃)で−85℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-B(J)で160J以上の靭性を有する鋼板であることを特徴とする前記4または5に記載の溶接構造体。
なお、たとえ、接合部材(ウェブ)1側に脆性亀裂が伝播しようとしても、本発明では、所定以上の靭性を保持する隅肉溶接部(隅肉溶接金属5)を形成するため、脆性亀裂は、隅肉溶接部(隅肉溶接金属5)で停止しやすくなる。
図1(b)に示すように、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部11と接合部材(ウェブ)1の突合せ溶接継手部12とが直交する隅肉溶接継手では、突合せ溶接継手部11の溶接部表面と突合せ溶接継手部12の溶接部端面との突合せ面に未溶着部4が存在する。
本発明では、突合せ溶接継手部位置での、隅肉溶接継手断面における未溶着部4の寸法(幅B)は、脆性亀裂の伝播抑制のため、ウェブ板厚twの95%以上とする。これにより、隅肉溶接金属が塑性変形しやすくなり、隅肉溶接金属に突入した脆性亀裂の亀裂先端近傍の応力緩和が生じ、接合部材(ウェブ)1側への脆性亀裂の伝播を抑制できる。このため、未溶着部4の寸法(幅B)は、接合部材(ウェブ)板厚twの95%以上に限定した。なお、好ましくは96%以上100%以下である。
なお、被接合部材(フランジ)2や接合部材(ウェブ)1の板厚が80mmを超える場合には、強度確保のために、隅肉溶接金属部の低温靭性を高めたうえで、溶接脚長を広げることが好ましい。
vTrs ≦ −1.5tf+90 ‥‥(1)
vE-20 ≧ 5.75 (但し、50≦tf(mm)≦53)、
vE-20 ≧ 2.75tf(mm)−140 (但し、tf(mm)>53)‥‥(2)
(ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、vE-20:試験温度:−20℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギー(J)、tf:被接合部材(フランジ)の板厚(mm))
隅肉溶接金属の靭性が、被接合部材(フランジ)の板厚tfと関連して、上記した(1)式および/または(2)式を満足することにより、図4に示すように、被接合部材(フランジ)の板厚が50mm以上である溶接構造体を、所望の脆性亀裂伝播阻止特性を確保した溶接構造体とすることができる。隅肉溶接金属の靭性が、上記した(1)式および(2)式のいずれも満足しない場合には、隅肉溶接金属の靭性が不足して、被接合部材(フランジ)で発生し伝播してきた脆性亀裂を、隅肉溶接金属部で伝播阻止させることができない。
また、本発明では、被接合部材2および/または接合部材1の突合せ溶接継手部の溶接金属が、上記した靭性を有し、さらに、熱影響部が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-H(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-H(J)で140J以上の靭性を有することが好ましい。さらに加えて、被接合部材2および/または接合部材1を構成する鋼板が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-B(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-B(J)で140J以上の靭性を有することが好ましい。これらの高靭性化により、より容易に、被接合部材(フランジ)溶接部から伝播してきた脆性亀裂、または接合部材(ウェブ)溶接部から伝播してきた脆性亀裂を、隅肉溶接部あるいは接合部材(ウェブ)の溶接部または被接合部材(フランジ)の溶接部で阻止することができるようになる。
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
得られた接合部材および被接合部材の突合せ溶接継手部から、試験片表面が表層下1mmまたは2mmで、試験片長手方向が溶接線と直角をなし、ノッチが溶接線と直角をなす向きとなるように、溶接金属中央部、熱影響部(BOND部)から、Vノッチシャルピー衝撃試験片(10mm厚)を採取した。シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242の規定に準拠して行い、破面遷移温度vTrs(℃)、および試験温度:−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーvE-20(J)を求めた。なお、接合部材および被接合部材を構成する鋼板の母材部についても同様に、vE-20(J)、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。
ついで、接合部材(ウェブ)1の突合せ溶接継手部12の溶接部端面を、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部11の溶接部表面に突合せたのち、接合部材1と被接合部材2とを隅肉溶接し、図3(a)、(b)に示す形状の実構造サイズの大型隅肉溶接継手を作製した。隅肉溶接は、表3および4に示す種々の溶接金属靭性、種々の溶接脚長もしくは溶着幅を有する隅肉溶接継手となるように、溶接材料および溶接入熱、シールドガス等の溶接条件を変化させて行った。
また、得られた大型隅肉溶接継手の隅肉溶接金属から、または隅肉溶接と同じ条件で作製した突合せ溶接継手から、Vノッチシャルピー衝撃試験片(10mm厚)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:−20℃での吸収エネルギーvE-20(J)、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。得られた隅肉溶接金属5の低温靭性を表3および4に示す。
図3(a)に示す超大型構造モデル試験体は、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部11と接合部材(ウェブ)1の突合せ溶接継手部12とを直交させ、被接合部材(フランジ)2から接合部材(ウェブ)1へと脆性亀裂を伝播させる場合であり、機械ノッチ7の先端が突合せ溶接継手部11のBOND部となるように加工した。
図3(b)に示す超大型構造モデル試験体は、接合部材(ウェブ)1の突合せ溶接継手部12と被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部11とを直交させ、接合部材(ウェブ)1から被接合部材(フランジ)2へと脆性亀裂を伝播させる場合であり、機械ノッチ7の先端が突合せ溶接継手部12のBOND部となるように加工した。
いずれの試験も、応力100〜283N/mm2、温度:−10℃の条件で実施した。応力100N/mm2は、船体に定常的に作用する応力の平均的な値である。また、応力257N/mm2は、船体に適用されている降伏強度390N/mm2級鋼板の最大許容応力相当の値である。さらに、応力283N/mm2は、船体に適用されている降伏強度460N/mm2級鋼板の最大許容応力相当の値である。温度:−10℃は船舶の設計温度である。
また、未溶着部比率Yが本発明の範囲を外れる比較例(試験体No.22〜No.24、No.27)は、被接合部材で発生した脆性亀裂が接合部材へと伝播し、脆性亀裂の伝播を阻止(停止)することができなかった。
加えて、隅肉溶接金属の低温靱性が本発明の範囲を外れる比較例(試験体No.25,No.29,No.30,No.32,No.33)は、脆性亀裂が、被接合部材から接合部材へと、あるいは接合部材から被接合部材へと伝播し、脆性亀裂の伝播を阻止(停止)することができなかった。
また、未溶着部比率Yおよび隅肉溶接部の低温靱性がともに、本発明の範囲を外れる比較例(試験体No.31)は、被接合部材で発生した脆性亀裂が接合部材へと伝播し、脆性亀裂の伝播を阻止(停止)することができなかった。
2 被接合部材(フランジ)
3 溶接脚長
4 未溶着部
5 隅肉溶接金属
6 補助板
7 機械ノッチ
8 仮付け溶接
9 大型隅肉溶接継手
10 部分開先溶接
11 被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部
12 接合部材(ウェブ)の突合せ溶接継手部
13 溶着幅
θ 交差角
Claims (6)
- 板厚50mm以上の接合部材の端面を板厚50mm以上の被接合部材の表面に突合せ、前記接合部材と前記被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方が16mm以下の隅肉溶接継手を備えた溶接構造体であって、
前記接合部材および前記被接合部材をともに突合せ溶接継手部を有する部材とし、該接合部材および/または該被接合部材の突合せ溶接継手部の溶接金属が、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrs-W(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-W(J)で140J以上の靭性を有し、
前記隅肉溶接継手における前記接合部材の前記突合せ溶接継手部の溶接部端面を、前記被接合部材の前記突合せ溶接継手部の溶接部表面に突合せ、該突合せた面に、前記隅肉溶接継手の突合せ溶接継手断面で該接合部材の板厚twの95%以上の未溶着部を有し、
さらに前記隅肉溶接継手の隅肉溶接金属について、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs(℃)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(1)式の関係、および/または、
該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20(J)と前記被接合部材の板厚tfとが下記(2)式の関係を満足させる、
ことを特徴とする溶接構造体。
記
vTrs ≦ −1.5tf+90 ‥‥(1)
vE-20(J)≧ 5.75、(但し、50≦tf(mm)≦53)、
vE-20(J)≧ 2.75tf(mm)−140 、(但し、tf(mm)>53) ‥‥(2)
ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、
vE-20:試験温度:−20℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギー(J)、
tf:被接合部材の板厚(mm) - 前記接合部材および/または前記被接合部材の突合せ溶接継手部の熱影響部が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-H(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-H(J)で140J以上の靭性を有することを特徴とする請求項1に記載の溶接構造体。
- 前記接合部材および/または前記被接合部材を構成する鋼板が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-B(℃)で−65℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-B(J)で140J以上の靭性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接構造体。
- 前記接合部材および/または前記被接合部材の突合せ溶接部の溶接金属が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-W(℃)で−85℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-W(J)で160J以上の靭性を有することを特徴とする請求項1に記載の溶接構造体。
- 前記接合部材および/または前記被接合部材の突合せ溶接継手部の熱影響部が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-H(℃)で−85℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-H(J)で160J以上の靭性を有する熱影響部であることを特徴とする請求項4に記載の溶接構造体。
- 前記接合部材および/または前記被接合部材を構成する鋼板が、シャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs-B(℃)で−85℃以下、および/または、−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-20-B(J)で160J以上の靭性を有する鋼板であることを特徴とする請求項4または5に記載の溶接構造体。
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