JPWO2012132752A1 - 水中油型艶出し材 - Google Patents

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Abstract

昨今の食品に対する安全意識の高まりから、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものが望まれており、これらの添加物を使用しなくても水中油型乳化物として乳化安定性に優れ、そして水中油型乳化物であるので塗付する際の作業性に優れ、焼成食品表面に均一で良好な艶を付与し、匂い、風味に優れ、作業時の液性状態の経時変化が抑制されている焼成食品用艶出し材を提供する事にある。液状油脂、大豆蛋白及び水を含む水中油型乳化物であって、液状油脂を10〜35重量%含み且つ大豆蛋白質を2〜12重量%含み、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものであり、大豆蛋白が大豆蛋白質を50重量%以上含むものであり、予め水に均一に分散・溶解されたものである、水中油型艶出し材である。【選択図】なし

Description

本発明は、焼成食品用の艶出し材として有用な水中油型艶出し材及びその製造法、並びにこれを用いた焼成食品に関する。
従来溶き卵等「塗り玉」とかそれに代わる「艶出し材」とか称する素材をパン等の表面に塗布して焼成し、パン等の表面に艶を与える(艶出しする)ことが行われている。
特許文献1では、分離大豆蛋白質又は濃縮大豆蛋白質の製造法において固形分濃度12%以上の高濃度により噴霧乾燥又は真空ドラム乾燥をした後粉砕又は擂潰処理により粉体粒形を破壊したものを含有することを特徴とするパン、菓子類の艶出剤が提案されている。このものは粉体粒形を破壊したものではあるが、使用に際しては水に分散・溶解しなければならず作業性に問題があった。
特許文献2では、蛋白を必須の成分として含有する離型剤が提案されているが艶出し材としては不十分であった。
特許文献3では、酵素分解タイプの分離大豆蛋白質、液状油脂及び水を、酵素分解タイプの分離大豆蛋白質2〜12重量%、液状油脂15〜30重量%、水83〜58重量%の割合で含有し、且つO/W型に乳化されていることを特徴とする焼成食品用艶出し剤が提案されているが、酵素分解タイプの分離大豆蛋白質を使用している関係でコストが高くなるという問題があった。
特開昭55−165743号公報 特開昭63−91033号公報 特許第3636843号公報
本発明の目的は、昨今の食品に対する安全意識の高まりから、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものが望まれており、これらの添加物を使用しなくても水中油型乳化物として乳化安定性に優れ、そして水中油型乳化物であるので塗付する際の作業性に優れ、焼成食品表面に均一で良好な艶を付与し、匂い、風味に優れ、作業時の液性状態の経時変化が抑制されている焼成食品用艶出し材を提供する事にある。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、液状油脂、大豆蛋白及び水を含む焼成食品用艶出し材の製造の際に、大豆蛋白を水に均一に分散・溶解させた状態で液状油脂と接触し、その後混合・乳化することが有効であるという知見に基づき本発明はなされたものである。
そして、本発明の水中油型艶出し材は作業時の液性状態の経時変化が抑制されており、具体的には焼成食品用艶出し材が作業時に経時で刷毛に固まっていくがこの現象を抑制することを可能にした。
即ち本発明の第1は、液状油脂、大豆蛋白及び水を含む水中油型乳化物であって、液状油脂を10〜35重量%含み且つ大豆蛋白質を2〜12重量%含み、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものである水中油型艶出し材である。第2は、大豆蛋白が大豆蛋白質を50重量%以上含むものであり、予め水に均一に分散・溶解されたものである、第1記載の水中油型艶出し材である。第3は、液状油脂、大豆蛋白及び水を含む水中油型乳化物であって、水中油型艶出し材を調製する際に、液状油脂を10〜35重量%配合し、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものであり、大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態で液状油脂と接触し、その後混合・乳化する水中油型艶出し材の製造法である。第4は、液状油脂と大豆蛋白分散・溶解液の接触に際しては、液状油脂の品温が20℃〜70℃の温度範囲である、第3記載の水中油型艶出し材の製造法である。第5は、液状油脂と大豆蛋白分散・溶解液の接触に際しては、大豆蛋白分散・溶解液の品温が0℃〜60℃の温度範囲である、第3記載の水中油型艶出し材の製造法である。第6は、分散・溶解された大豆蛋白の平均粒子径が1000μm以下である、第3記載の水中油型艶出し材の製造法である。第7は、大豆蛋白質を2〜12重量%含む、第3記載の水中油型艶出し材の製造法である。第8は、第3〜第7の何れか1に記載の製造法で得られた水中油型艶出し材である。第9は、第1、第2又は第8記載の水中油型艶出し材を使用してなる焼成食品である。
水中油型乳化物であるので塗付する際の作業性に優れ、焼成食品表面に均一で良好な艶を付与し、匂い、風味に優れ、作業時の液性状態の経時変化が抑制されている焼成食品用艶出し材を提供する事が可能になった。
更に本発明の水中油型艶出し材は乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しなくても乳化安定であり、しかも匂い、風味に優れた焼成食品用艶出し材の製造が可能になった。
レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いた、攪拌装置の概略図
本発明の水中油型艶出し材は、液状油脂、大豆蛋白及び水を原料として、液状油脂を10〜35重量%含み且つ大豆蛋白質を2〜12重量%含み、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものである水中油型艶出し材である。そして好ましくは大豆蛋白が大豆蛋白質を50重量%以上含むものであり、予め水に均一に分散・溶解されたものである。当該水中油型艶出し材の製造は、一般的なクリーム類を製造する要領で製造することができ、油相と水相を混合し予備乳化した後、0〜15MPaの条件下にて均質化する。その後殺菌処理し冷却しても良いし、殺菌処理した後、再度、0〜15MPaの条件下にて均質化し冷却しても良い。均質化は、殺菌処理の前後のどちらか一方でも、両者を組み合わせた二段均質化でもよい。
水中油型艶出し材の保存性を高めたい場合は殺菌に代えて滅菌処理が好ましい。
本発明の水中油型艶出し材は、液状油脂、大豆蛋白及び水を原料として、油相と水相を混合し予備乳化して得るのであるが、水中油型艶出し材を調製する際に、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものであり、予備乳化に際しては大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態で液状油脂と接触し、その後混合・乳化するのが好ましい。
予備乳化の温度は水中油型艶出し材の品温が65℃〜75℃の範囲で行なわれる。
液状油脂と大豆蛋白分散・溶解液の接触に際しては、液状油脂の品温が20℃〜70℃の温度範囲が好ましく、より好ましくは40℃〜70℃の温度範囲であり、更に好ましくは45℃〜70℃の温度範囲である。液状油脂の品温が低すぎるとその後の予備乳化温度までに達するのに時間を要し生産性が悪くなる。液状油脂の品温が高すぎると得られた水中油型艶出し材の風味が悪くなる。
本発明においては、液状油脂と大豆蛋白分散・溶解液の接触に際しては、大豆蛋白分散・溶解液の品温が0℃〜60℃の温度範囲が好ましく、より好ましくは20℃〜60℃の温度範囲であり、更に好ましくは20℃〜50℃の温度範囲である。大豆蛋白分散・溶解液の品温が低すぎるとその後の予備乳化温度までに達するのに時間を要し生産性が悪くなる。大豆蛋白分散・溶解液の品温が高すぎると大豆蛋白の分散・溶解状態が悪くなり得られた水中油型艶出し材の刷毛の固まり度合いが悪くなる。
本発明において、大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態で液状油脂と接触するのであるが、大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態とはレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて、大豆蛋白分散・溶解液の評価を行って、その状態を把握することができる。具体的には大豆蛋白分散・溶解液0.1gを25gの蒸留水に希釈し装置内に備えられている攪拌装置で液を分散させその分散状態の可・否を目視で確認し、可である場合大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態であるとすることができる。
本発明の大豆蛋白分散・溶解液の大豆蛋白質濃度は3〜20重量%であるのが好ましく、より好ましくは5〜18重量%であり、更に好ましくは6〜16重量%である。大豆蛋白分散・溶解液の大豆蛋白質濃度が低すぎると水中油型艶出し材を製造する際に艶を発揮するのに充分な大豆蛋白を配合するのが難しくなる。大豆蛋白濃度が高すぎると大豆蛋白の分散・溶解液の粘度が高くなり大豆蛋白の分散・溶解状態が悪くなり得られた水中油型艶出し材の刷毛の固まり度合いが悪くなる。具体的な実施例では大豆蛋白質濃度10〜15重量%で行った。
本発明の大豆蛋白は、大豆由来の蛋白を意味し、具体的には、全脂豆乳粉末、調製豆乳粉末、脱脂豆乳粉末、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、全脂大豆粉、脱脂大豆粉が例示でき単独又は2種以上を混合使用することができる。より好ましくは調製豆乳粉末、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、が例示でき単独又は2種以上の混合使用であり、更に好ましくは調製豆乳粉末、分離大豆蛋白の単独又は2種の混合である。
そしてこれらの大豆蛋白由来の原料を使用する場合、原料中に占める大豆蛋白含有量が50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは85重量%以上である。
本発明の分離大豆蛋白は、一般に脱脂された大豆蛋白原料を水系下で撹拌等して脱脂豆乳を抽出し、不溶性成分(オカラ等の抽出残査)を除去した後、水溶性画分を等電点沈殿(PH4〜5,通常PH4.2〜4.6)させホエー等の水溶性成分を除去して得られる沈殿画分を分離し中和し中和液を殺菌又は滅菌処理し大豆蛋白分散・溶解液とすることが出来る。また、大豆蛋白分散・溶解液を噴霧乾燥して粉体とし大豆蛋白分散・溶解液の原料とすることができる。
本発明の濃縮大豆蛋白は脱脂大豆から通常、エタノールおよび水を用いて糖質その他の可溶成分を除いて乾燥したもので、製法としてはアルコール洗浄法、酸洗浄法、湿熱洗浄法等ある。噴霧乾燥して得られた粉末は大豆蛋白分散・溶解液の原料とすることができる。
本発明の調製豆乳粉末は脱脂大豆を水抽出して得られた脱脂豆乳をアルカリ土類金属化合物の存在下において100℃未満の加熱を行い、次に100℃以上の高温加熱し、噴霧乾燥することにより得ることができ、粉末は大豆蛋白分散・溶解液の原料とすることができる。
本発明の大豆蛋白は全脂豆乳粉末、調製豆乳粉末、脱脂豆乳粉末、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、全脂大豆粉、脱脂大豆粉の何れの原料も使用可能であり、状態としては大豆蛋白分散・溶解液でも良いし粉末状のものであっても良い。
何れにしても、大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態で液状油脂と接触し、その後混合・乳化する必要がある。
大豆蛋白原料が粉末状の場合は、予め大豆蛋白原料を、品温0℃〜60℃の水及び/又は水性成分に分散・溶解して大豆蛋白分散・溶解液を調製するのが好ましい。更に品温20℃〜60℃の水及び/又は水性成分に、最も好ましくは品温20℃〜50℃の水及び/又は水性成分に分散・溶解して大豆蛋白分散・溶解液を調製するのが好ましい。
本発明の水中油型艶出し材に含まれる大豆蛋白質量としては、水中油型艶出し材全体に対して大豆蛋白質を2〜12重量%含むものであり、好ましくは3〜10重量%であり、更に好ましくは4〜9重量%である。水中油型艶出し材全体に対して大豆蛋白質が少ないと充分な艶を発揮することが難しくなる。大豆蛋白質が多すぎると粘度が高くなり塗付する際の作業性が悪くなる。
本発明の水中油型艶出し材は、予備乳化に際しては大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態で液状油脂と接触し、その後混合・乳化する必要がある。
大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態はレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて把握するのであるが、本測定器の平均粒子径の検出限界は0.3μmである。
本発明の大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態においては大豆蛋白は一部は分散し、一部が溶解した状態である。それ故に本測定器の測定条件において、大豆蛋白の分散粒子は0.3μmを最小平均粒子径として、分散・溶解された大豆蛋白の平均粒子径が小さい程好ましく、分散・溶解された大豆蛋白の平均粒子径が1000μm以下が好ましく、より好ましくは600以下であり、更に好ましくは0.3μm〜500μmの範囲であり、最も好ましくは0.3μm〜300μmの範囲である。大豆蛋白の平均粒子径が大きすぎると本願発明でいうところの大豆蛋白が均一に分散・溶解された状態を得難くなり、作業時の経時で刷毛に水中油型艶出し材が固まって作業性が悪くなる。
本発明においては、液状油脂を水中油型艶出し材全体に対して10〜35重量%含む必要がある。具体的には融点20℃以下である油脂を使用するのがよい。原料として例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、ヤシ脂、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物油脂、並びに、それら油脂の硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が例示できる。好ましくは、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、パームオレイン、パームスーパーオレインが望ましく、更に菜種油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、パームスーパーオレインが望ましい。
油脂の上昇融点は一般的に用いられる測定方法で、その概要は、油脂を毛細管内部へ満たし、固化させた後水に浸漬し、水の温度を上昇させる中で、試料が毛細管内で上昇を始める温度を測定するものである。なお詳細は「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(1)1996年度版」による。
本発明においては液状油脂を水中油型艶出し材全体に対して10〜35重量%含む必要があり、好ましくは15〜35重量%であり、更に好ましくは15〜30重量%である。液状油脂が少ないと充分な艶を発揮することが難しくなる。逆に液状油脂が多すぎると艶出し材の粘度が高くなり均一に塗布するのが難しくなる。
本発明の水中油型艶出し材の製造に際しては乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しなくても乳化安定性に優れ、匂い、風味の良い艶出し材を製造することが出来る。その理由は大豆蛋白分散・溶解液の大豆蛋白質が有する乳化力とそれに加えて大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態に調整されている事並びに油脂が液状油脂であることによると推察している。乳化剤やpH調整剤の影響による風味が回避され風味に優れた水中油型艶出し材となる。
ここでいう乳化剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステルが例示できる。また、pH調整剤としては、クエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが例示できる。
本発明の水中油型艶出し材は、液状油脂、大豆蛋白及び水を原料として、油相と水相を混合し予備乳化して得るのであるが、水中油型艶出し材の保存性を高めたい場合は殺菌に代えて滅菌処理が好ましい。
滅菌処理には、間接加熱方式と直接加熱方式の2種類があり、間接加熱処理する装置としてはAPVプレート式UHT処理装置(APV株式会社製)、CP−UHT滅菌装置(クリマティー・パッケージ株式会社製)、ストルク・チューブラー型滅菌装置(ストルク株式会社製)、コンサーム掻取式UHT滅菌装置(テトラパック・アルファラベル株式会社製)等が例示できるが、特にこれらにこだわるものではない。また、直接加熱式滅菌装置としては、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)、ユーペリゼーション滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、VTIS滅菌装置(テトラパック・アルファラバル株式会社製)、ラギアーUHT滅菌装置(ラギアー株式会社製)、パラリゼーター(パッシュ・アンド・シルケーボーグ株式会社製)等のUHT滅菌装置が例示でき、これらの何れの装置を使用してもよい。
本発明の水中油型艶出し材を使用する焼成品としては、ベーカリー製品、焼菓子、和菓子、焼きおにぎり等が挙げられる。ベーカリー製品としては、山食パン、ハード山食、バタービエノワ、ハイブラン、バターロール、あんパン、クリームパン、チョココルネ等が例示できる。焼菓子としては、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、シュウ、ウエハース等が例示できる。 和菓子としては、饅頭等が例示できる。
本発明の水中油型艶出し材を焼成前生地表面に塗布する方法としては、特に限定されず、部分的浸漬、刷毛塗り、スプレー式等が挙げられる。部分的浸漬は、例えば生地の一部又は全部を水中油型艶出し材に浸漬する方法であり、手動若しくは自動で行える。刷毛塗りは、生地に対して艶出し材を刷毛の付着手段を用いて塗り付けることである。又、スプレー式は、噴霧装置(スプレー)を用いて艶出し材を生地にふきつける方法である。
なお、一般的に行われる「刷毛」を使用する塗布方法では、従来の「艶出し材」においては、刷毛への固形分の付着(刷毛の固まり度)が顕著であり、2時間以上の長時間の連続した作業が困難であった。本発明においては、大豆蛋白の分散溶解状態を制御することにより、長時間の連続した塗布作業を可能にしたものである。すなわち、本発明にかかる艶出し材は「刷毛による2時間以上の連続した塗布作業用の艶出し材」と言える特質を有するものであり、従来にない特質を有するものである。
本発明の水中油型艶出し材を塗布後焼成する方法としては、例えばオーブン、電子レンジ等を用いることができる。オーブンとしては、一般的に使用される固定窯、トレイオーブン、リールオーブン、トンネルオーブン等の運行窯等特に限定されるものではない。
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。また、結果については以下の方法で評価した。
A 大豆蛋白分散・溶解液の評価
レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて、大豆蛋白分散・溶解液の評価を行った。大豆蛋白分散・溶解液0.1gを25gの蒸留水に希釈し装置内に備えられている攪拌装置で液を分散させその分散状態の可・否を目視で確認し、可の場合に測定を続行し、データとして出力される粒子径の平均値を平均粒子径とした。 評価は分散状態の可・否と平均粒子径の測定の2段階で行った。
攪拌装置の概略を図1に示した。攪拌棒を上下8mmの幅で180回/分の運動を繰り返すことでガラスセル内の液が攪拌されるものである。

B 艶出し材の評価
・粘度
粘度の測定は、品温5℃でB型粘度計(株式会社東京計器製)にて、2号ローター、30rpmの条件下で行った。

・平均粒子径
レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて、艶出し材を蒸留水で測定可能範囲に希釈し測定後、データとして出力される平均値を平均粒子径とした。(検出範囲は0.3〜1000μm)

・ニオイの評価
5℃の艶出し材を100mlビーカーに50g取り出しニオイを20人のパネラーに以下の3段階で評価してもらい平均的結果を算出した。
◎ : ニオイがなく良好
○ : 若干のニオイがある
△ : ニオイがある
因みに市販の生クリームは心地よい匂いであり○評価であった。

・風味
5℃の艶出し材2gを20人のパネラーに食してもらい以下の3段階で評価してもらって平均的結果を算出した。
◎ : 良好
○ : 少しイヤ味を感じる
△ : イヤ味を感じる

・艶の状態
バターロール生地に艶出し材を0.5g塗布し、上火220℃、下火200℃のオーブンで10分間焼成し得られたバターロールの艶の状態を目視で評価した。 評価は焼成後3時間後と1日後で以下の基準で行った。 ◎ : 特に良好な艶が出ている。
○ : 艶が充分に出ている。
△ : 艶が出ているが不十分。

・刷毛の固まり度合い
刷毛の固まり度は別途艶出し材を直径8cm、高さ4cmの円筒状のプラスチック容器に120g入れ、幅6cm、高さ3.5cmのナイロン製刷毛に2秒間浸漬し、その後刷毛を20℃、湿度75%の部屋にて吊るして静置し、1時間毎に刷毛の固まり度合いを確認した。
刷毛の固まり度合いは以下の基準で評価した。実際の作業を想定した場合4時間後の状態が一つの判断基準となる。
◎ : 全く固まっていない。
○ : 固まり始めている。
△ : 固まっている。
実験例1
脱脂大豆フレーク10kgを水100kgに分散させ、T.K.HOMOMIXER MARK(プライミクス株式会社製Model2.5)で攪拌しながら50℃で30分間抽出した後、遠心分離機を用いて不溶物(オカラ)を除去して得た脱脂豆乳にpH4.5になるまで塩酸を添加し、酸沈殿画分を遠心分離機により回収した。
この酸沈殿画分(固形分4kg)を水36kgに分散し、更に水酸化ナトリウムを加えてpH7.0に中和して、この中和液を140℃で20秒間加熱殺菌し、冷却して品温40℃の実験例1に基づく大豆蛋白分散・溶解液を得た(大豆蛋白質含量:8.6重量%、全固形分:10.0重量%)。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価し結果を表1に纏めた。
実験例2
20℃の水90部に粉末状の分離大豆蛋白(不二製油(株)製、「フジプロE」、蛋白質量86重量%)10部を内容量40Lの攪拌機付き円筒堅型三重式タンクを用いて30分間攪拌し品温21.5℃の実験例2に基づく大豆蛋白分散・溶解液(大豆蛋白質含量:8.6重量%)を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価し結果を表1に纏めた。
実験例3
20℃の水90部を30℃の水90部に代えた以外は実験例2と同様な処理を行い、品温31.5℃の実験例3に基づく大豆蛋白分散・溶解液(大豆蛋白質含量:8.6重量%)を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価し結果を表1に纏めた。
実験例4
20℃の水90部を40℃の水90部に代えた以外は実験例2と同様な処理を行い、品温41.5℃の実験例4に基づく大豆蛋白分散・溶解液(大豆蛋白質含量:8.6重量%)を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価し結果を表1に纏めた。
実験例1〜実験例4の評価を表1に纏めた。
Figure 2012132752
実験例5
20℃の水90部を50℃の水90部に代えた以外は実験例2と同様な処理を行い、品温51.5℃の実験例5に基づく大豆蛋白分散・溶解液(大豆蛋白質含量:8.6重量%)を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価し結果を表2に纏めた。
比較実験例1
20℃の水90部に粉末状の分離大豆蛋白(不二製油(株)製、「フジプロE」、蛋白質量86重量%)10部を内容量40Lの攪拌機付き円筒堅型三重式タンクを用いて10分間攪拌した後、10分間かけて70℃に昇温して比較実験例1に基づく大豆蛋白分散・溶解液を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価し結果を表2に纏めた。
比較実験例2
20℃の水90部を70℃の水90部に代えた以外は実験例2と同様な処理を行い、品温71.5℃の比較実験例2に基づく大豆蛋白分散・溶解液を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価し結果を表2に纏めた。
実験例5並びに比較実験例1及び比較実験例2の評価を表2に纏めた。
Figure 2012132752
実施例1
実験例1で得た品温40℃の大豆蛋白分散・溶解液60部に菜種油23部を混合し、これに70℃の温水17部を加え68℃で30分間T.K.HOMOMIXER MARK(プライミクス株式会社製Model2.5)で攪拌し予備乳化した後、144℃において4秒の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、15MPa の均質化圧力で均質化して、直ちに10℃に冷却した。冷却後約24時間エージングして、実施例1に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。得られた艶出し材を評価法に従って評価し結果を表3に纏めた。
艶の状態については、市販の冷凍バターロール生地を20℃で1時間解凍した後、35℃、湿度75%のホイロで50分間発酵させた。35℃のバターロール生地を重量計に乗せ、5℃の艶出材を刷毛を用いて0.5g塗布し、上火220℃、下火200℃のオーブンで10分間焼成し、得られたバターロールの艶の状態を確認した。 刷毛の固まり度合いについても評価法に従って評価し結果を表3に纏めた。
実施例2
実験例1で得た品温40℃の大豆蛋白分散・溶解液60部を実験例2で得た品温21.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例2に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。
実施例1と同様な評価を行い表3に纏めた。
実施例3
実験例1で得た品温40℃の大豆蛋白分散・溶解液60部を実験例3で得た品温31.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例3に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。
実施例1と同様な評価を行い表3に纏めた。
実施例4
実験例1で得た品温40℃の大豆蛋白分散・溶解液60部を実験例4で得た品温41.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例4に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。
実施例1と同様な評価を行い表3に纏めた。
実施例1〜実施例4の結果と評価を表3に纏めた。
Figure 2012132752
実施例5
実験例1で得た品温40℃の大豆蛋白分散・溶解液60部を実験例5で得た品温51.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例5に基づく艶出し材を得た。
実施例1と同様な評価を行い表4に纏めた。
比較例1
実験例1で得た品温40℃の大豆蛋白分散・溶解液60部を比較実験例1で得た品温70℃の大豆蛋白分散・溶解液60部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、比較例1に基づく艶出し材を得た。
実施例1と同様な評価を行い表4に纏めた。
比較例2
実験例1で得た品温40℃の大豆蛋白分散・溶解液60部を比較実験例2で得た品温71.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、比較例2に基づく艶出し材を得た。
実施例1と同様な評価を行い表4に纏めた。
比較例3
粉体混合の例:粉末状の分離大豆蛋白(不二製油(株)製、「フジプロE」、蛋白質量86重量%)6部と70℃の温水71部を内容量40Lの攪拌機付き円筒堅型三重式タンクを用いて10分間攪拌した後、10分間かけて70℃に昇温して菜種油23部と混合し68℃で30分間T.K.HOMOMIXER MARK(プライミクス株式会社製Model2.5)で攪拌し予備乳化した後、144℃において4秒の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、15MPa の均質化圧力で均質化して、直ちに10℃に冷却した。冷却後約24時間エージングして、比較例3に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。得られた艶出し材を評価法に従って評価し結果を表4に纏めた。
実施例5及び比較例1〜比較例3の結果と評価を表4に纏めた。
Figure 2012132752
実施例6
実施例2において実験例2で得た品温21.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部と70℃の温水17部を実験例2で得た品温21.5℃の大豆蛋白分散・溶解液30部と70℃の温水47部に代えた以外は実施例2と同様な処理を行い、実施例6に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:2.6重量%)を得た。実施例2と同様な評価を行い表5に纏めた。
実施例7
実施例7
20℃の水85部に粉末状の分離大豆蛋白(不二製油(株)製、「フジプロE」、蛋白質量86重量%)15部を内容量40Lの攪拌機付き円筒堅型三重式タンクを用いて30分間攪拌し品温21.5℃大豆蛋白分散・溶解液(大豆蛋白質含量:12.9重量%)を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価した。分散の可・否は可で、平均粒子径は173μmであった。
実施例2において実験例2で得た品温21.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部を上記で得た大豆蛋白分散・溶解液60部に代えた以外は実施例2と同様な処理を行い、実施例7に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:7.7重量%)を得た。実施例2と同様な評価を行い表5に纏めた。
実施例8
実施例2において菜種油23部と70℃の温水17部を菜種油15部と70℃の温水25部に代えた以外は実施例2と同様な処理を行い、実施例8に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。実施例2と同様な評価を行い表5に纏めた。
実施例9
実施例2において菜種油23部と70℃の温水17部を菜種油30部と70℃の温水10部に代えた以外は実施例2と同様な処理を行い、実施例9に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。実施例2と同様な評価を行い表5に纏めた。
実施例6〜実施例9の結果と評価を表5に纏めた。
Figure 2012132752
実施例10
20℃の水90部に調製豆乳粉末(不二製油(株)製、「プロフィット1000」、蛋白質量61重量%)15部を内容量40Lの攪拌機付き円筒堅型三重式タンクを用いて30分間攪拌し品温21.5℃の大豆蛋白分散・溶解液(大豆蛋白質含量:9.2重量%)を得た。得られた大豆蛋白分散・溶解液を評価法に従って評価した。分散の可・否は可で、平均粒子径は190μmであった。
実施例2において実験例2で得た品温21.5℃の大豆蛋白分散・溶解液60部と70℃の温水17部を上記で得た大豆蛋白分散・溶解液56部と70℃の温水21部に代えた以外は実施例2と同様な処理を行い、実施例10に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。実施例2と同様な評価を行い表6に纏めた。
参考例1
予備乳化の際に添加剤として炭酸ナトリウム(大東化学製 精製炭酸ナトリウム(無水))を0.2部加えた以外は実施例2と同様な処理を行い、参考例1に基づく艶出し材(大豆蛋白質含量:5.2重量%)を得た。この艶出し材はニオイがあった。実施例2と同様な評価を行い表6に纏めた。
参考例2
20℃の水90部に粉末状の酵素分解タイプ分離大豆蛋白(不二製油(株)製、「サンラバー50」、蛋白質量77重量%)10部を徐々に添加してT.K.HOMOMIXER MARK(プライミクス株式会社製Model2.5)によって分散させ、次いで70℃まで加熱して、そして液状油脂を徐々に添加して同温度で10分間攪拌した後、直接殺菌機によって142℃で2秒間殺菌後、ホモゲナイザーに通し、15℃まで冷却して参考例2に基づく艶出し材を得た。実施例2と同様な評価を行い表6に纏めた。
実施例10、参考例1、参考例2の結果と評価を表6に纏めた。
Figure 2012132752
本発明は、焼成食品用の艶出し材として有用な水中油型艶出し材及びその製造法、並びにこれを用いた焼成食品に関するものである。

Claims (9)

  1. 液状油脂、大豆蛋白及び水を含む水中油型乳化物であって、液状油脂を10〜35重量%含み且つ大豆蛋白質を2〜12重量%含み、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものである水中油型艶出し材。
  2. 大豆蛋白が大豆蛋白質を50重量%以上含むものであり、予め水に均一に分散・溶解されたものである、請求項1記載の水中油型艶出し材。
  3. 液状油脂、大豆蛋白及び水を含む水中油型乳化物であって、水中油型艶出し材を調製する際に、液状油脂を10〜35重量%配合し、乳化剤及び/又はpH調整剤を配合しないものであり、大豆蛋白が水に均一に分散・溶解された状態で液状油脂と接触し、その後混合・乳化する水中油型艶出し材の製造法。
  4. 液状油脂と大豆蛋白分散・溶解液の接触に際しては、液状油脂の品温が20℃〜70℃の温度範囲である、請求項3記載の水中油型艶出し材の製造法。
  5. 液状油脂と大豆蛋白分散・溶解液の接触に際しては、大豆蛋白分散・溶解液の品温が0℃〜60℃の温度範囲である、請求項3記載の水中油型艶出し材の製造法。
  6. 分散・溶解された大豆蛋白の平均粒子径が1000μm以下である、請求項3記載の水中油型艶出し材の製造法。
  7. 大豆蛋白質を2〜12重量%含む、請求項3記載の水中油型艶出し材の製造法。
  8. 請求項3〜請求項7の何れか1項に記載の製造法で得られた水中油型艶出し材。
  9. 請求項1、請求項2又は請求項8記載の水中油型艶出し材を使用してなる焼成食品。
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