JPH05336884A - 起泡性水中油形食用油脂組成物及び同組成物を用いたケーキ製造法 - Google Patents

起泡性水中油形食用油脂組成物及び同組成物を用いたケーキ製造法

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JPH05336884A
JPH05336884A JP4171671A JP17167192A JPH05336884A JP H05336884 A JPH05336884 A JP H05336884A JP 4171671 A JP4171671 A JP 4171671A JP 17167192 A JP17167192 A JP 17167192A JP H05336884 A JPH05336884 A JP H05336884A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 油脂としてバターのような固形脂を多用する
ケーキ、また卵を小麦粉の2倍程度まで含有するケーキ
を、外観、内相共に良好に、容易かつ安定的に製造する
手段を提供することに関する。 【構成】 上昇融点が実質的に人の体温を越えない食用
油脂と親油性乳化剤を含む油相25〜70重量%と、親
水性乳化剤、糖質を含む水相75〜30重量%とを、乳
化してなる起泡性水中油形食用油脂組成物であって、親
油性乳化剤として、グリセリン脂肪酸モノエステルを必
須とし、要すればプロピレングリコール脂肪酸エステル
及び/またはソルビタン脂肪酸モノエステルを併用し、
親水性乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル及び/また
はポリグリセリン脂肪酸エステルとリゾリン脂質を用い
ることを特徴とする起泡性水中油形食用油脂組成物。並
びに本組成物を用いたケーキの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はケーキ用の起泡性水中油
形食用油脂組成物、及び同組成物を用いたケーキの製造
法に関する。さらに詳しくは、固形の油脂を含み、かつ
卵成分の含有量が多いケーキの製造を、容易かつ安定的
に行うための起泡性を有する食用固形脂の水中油形乳化
油脂組成物、及び同組成物を用いたケーキの製造法に関
する。
【0002】
【従来の技術】スポンジケーキ、バターケーキ、パンド
ケーキなど洋菓子類は、古くは卵や常温で固形の油脂の
起泡性を利用して作られてきた。この種の伝統的な方法
によるケーキ類の製造は、先ず全卵をショ糖と共に起泡
しておき、後に小麦粉を加える方法、卵白のみの起泡か
ら始める方法など、起泡のために長時間を要し、経験と
熟練を必要とする仕事であった。全原料を一度に起泡す
る事は不可能で、高品質のものを安定的に製造すること
は極めて困難であったため、洋菓子の大衆への普及の障
害になっていた。そこで、ケーキの起泡を促進し、起泡
後の生地を安定化して、工業的なケーキ製造を容易にす
る技術が、種々の食品用乳化剤組成物によってもたらさ
れた。さらに機械装置の改善、発達と相まって、洋菓子
類の製造を家内工業的なものから、近代的な食品製造業
に発展させることを可能にした。
【0003】この種の組成物は、当初は起泡に際して油
脂を配合しないスポンジケーキ用の起泡剤として発達し
たが、後に油脂を配合したケーキの需要が高まり、油脂
を主要成分とした組成物の開発が行われた。油脂を主要
成分とした起泡性組成分には大別して2種がある。その
一つは、例えば、特公昭54−39460のように水分
を実質的に含まないものである。他の一つは、例えば、
特公昭44−21389、特公平3−28168、特開
平3−187340のように、食用油脂の水中油形乳化
組成物の形態をとり、本発明の起泡性水中油形食用油脂
組成物(以下、単に起泡性O/W乳化油脂と称する)と
類似するものである。
【0004】上記の何れの起泡性油脂組成物に関して
も、用いられる油脂は実質的に液状の油脂である事が好
ましいとされている。特公昭44−21389では、油
脂は液状油脂から融点45℃程度迄のものであれば、何
れも使用しうるとしているが、比較例に示されるように
常温で固形の油脂を用いた場合、良好な結果は得られて
いない。実際的に、常温で固形の食用油脂を用いたこの
種の製品は製造販売されておらず、通常の流通条件で結
晶を生じない油脂が用いられてきた。その理由は、常温
で固形である油脂をこれらの組成物に用いると、ケーキ
の泡が卵の起泡性を基本としている故に、結晶した油脂
が卵のタンパクによる気泡面を傷つけ、消泡作用を起こ
すためとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】スポンジケーキの基本
は、小麦粉、砂糖、全卵(中味)が等量の三等割であっ
たが、近年における消費者の嗜好の高級化から、油脂と
してバターを多用するケーキ、また卵を小麦粉の2倍程
度まで増量するケーキの需要が高まってきた。かかるケ
ーキの安定的な製造は困難で、これを行う手段として
は、前記の油脂を含まない起泡用乳化剤組成物、もしく
は液状油からなる起泡性O/W乳化油脂によってケーキ
の生地を作った後で、溶解したバターを手早く混合する
方法があった。しかし、この技術も生産性が悪く、また
ケーキの比重がバラツキ易く、一定の品質の製品を得る
事が難しかった。
【0006】他方ケーキ配合組成中の卵量が増加する
と、油脂を含むケーキでは特に、焼成中の生地の流動に
よって起こる生地気泡の部分的消泡によって、焼成後の
ケーキ内層に芯が出来易くなる。このため、バター含量
が多くかつ良好な内層を持ったケーキを、容易に安定的
に製造することは困難で、特に厚みをもったこの種のケ
ーキの製造は極めて困難だった。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者らは、
上記の課題を解決するために、常温で固形の食用油脂、
特にバター、またはバター脂を主成分とする油脂による
ケーキ用の起泡性O/W乳化油脂について鋭意研究し、
卵量が増加しても芯の発生の無い組成物を得ることに成
功した。
【0008】すなわち、本発明の起泡性水中油形食用油
脂組成物、及び同組成物を用いたケーキ製造法は、上昇
融点が実質的に人の体温を越えない食用油脂と親油性乳
化剤を含む油相25〜70重量%と、親水性乳化剤、糖
質を含む水相75〜30重量%とを、乳化してなる起泡
性水中油形食用油脂組成物であって、親油性乳化剤とし
て、グリセリン脂肪酸モノエステルを必須とし、プロピ
レングリコール脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸モノ
エステルの中から一種以上を併用し、または併用せず、
親水性乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル及び/また
はポリグリセリン脂肪酸エステルと、リゾリン脂質を用
いることを特徴とするものである。
【0009】さらに、本発明の起泡性水中油形食用油脂
組成物は、組成物全体に対する各成分の構成百分比が次
の内容によるものが適する。 1) 親油性乳化剤が、必須成分としてヨウ素価20以
下のグリセリン脂肪酸モノエステルを5〜15重量%
と、それぞれ飽和脂肪酸のプロピレングリコール脂肪酸
モノエステル、ソルビタン脂肪酸モノエステルから1種
以上を0〜10重量%の組合せからなり、それらの合計
量が5〜20重量%であるものを含む油相と、 2) 親水性乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル及び/ま
たはポリグリセリン脂肪酸エステルを1〜6重量%と、
リゾリン脂質を0.1〜4重量%との組合せであり、糖
質が10〜40重量%である水相からなる起泡性水中油
形食用油脂組成物である。
【0010】さらに詳しくは、本発明の組成分に使用す
る食用油脂はバターまたは乳脂であるか、またはバター
または乳脂と他の食用油脂の混合物であることが本発明
の組成物の目的に適する。本発明に使用するリゾリン脂
質は大豆リゾリン脂質であることが適する。本発明の組
成物に使用する糖質が単糖類または少糖類の糖アルコー
ルか、非還元性の2または3糖類であることが本発明の
組成物の経日的な安定性のために適する。
【0011】本発明の第二の実施態様は上記の内容を持
った起泡性水中油形食用油脂組成物を用いたケーキ製造
法に関する。
【0012】本発明に使用する油脂は体温以下の融点を
もつ食用油脂であれば何れも適するが、バターまたは乳
脂(牛のバターオイル)であるか、またはバターまたは
乳脂と他の食用油脂の混合物であることが本発明の組成
物の目的に適する。バターまたは乳脂と混合する食用油
脂としては、特に限定はないが、例えば、大豆油、菜種
油、コーン油、椰子油、パーム核油、魚油、豚脂など通
常の動植物油、及びそれらの硬化油、カカオ脂、分別
油、エステル交換油、及びこれらから2種以上の混合物
などであるが、これらの食用油脂のみをも用い得る。
【0013】本発明に使用するヨウ素価20以下のグリ
セリン脂肪酸モノエステルドとは炭素原子数16〜20
の飽和脂肪酸を主要成分とするグリセリンモノエステル
であって、反応モノグリセリドを分子蒸溜したものが適
する。モノグリセリドの含有量は多い方がよく、全体の
80重量%以上であることが好ましい。グリセリン脂肪
酸モノエステルのヨウ素価の調節はその製造原料である
脂肪酸によって行っても良いし、また飽和脂肪酸のモノ
グリセリドに、不飽和脂肪酸のモノグリセリドを混合し
てもよい。例えば、市販の飽和脂肪酸のモノグリセリド
はヨウ素価2程度であるが、これをそのまま用いても良
いし、またオレイン酸モノグリセリド、リノール酸モノ
グリセリドなどをステアリン酸モノグリセリドに少量混
合して、ヨウ素価を上記範囲内に調節してもよい。ヨウ
素価は4〜10の範囲が特に好ましい。
【0014】本発明に使用するプロピレングリコール脂
肪酸モノエステルとは、炭素原子数16〜20の飽和脂
肪酸のプロピレングリコールエステルであって、モノエ
ステル純度90重量%以上の蒸溜品が適する。
【0015】本発明に用いるソルビタン脂肪酸モノエス
テルとは炭素原子数16〜18の飽和脂肪酸のソルビタ
ン、ソルビトール、ソルバイドのモノ・ジ・ポリエステ
ルであって、HLB値が4以上のものが適する。また脂
肪酸は少量の不飽和脂肪酸を含有しうる。
【0016】本発明に用いるショ糖脂肪酸エステルは、
ショ糖と炭素原子数16〜20の飽和脂肪酸のモノ・ジ
・ポリエステルの混合物で、そのHLB値が7〜16の
ものが適する。なおこれらの脂肪酸エステルは特定のH
LBのものを単独で用いることも、高・低のHLBのも
のを組み合わせて用いることもできる。これらの脂肪酸
エステルは飽和脂肪酸からなることが好ましいが、少量
の不飽和脂肪酸を含有しうる。
【0017】本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エス
テルは、グリセリンが4〜10分子エーテル結合したポ
リグリセリンと、炭素原子数16〜20の飽和脂肪酸の
モノ・ジ・ポリエステルであって、そのHLBが7〜1
6のものが適する。なおこれらの脂肪酸エステルは特定
のHLBのものを単独で用いることも、高・低のHLB
のものを組み合わせて用いることもできる。これらの脂
肪酸エステルは飽和脂肪酸からなることが好ましいが少
量の不飽和脂肪酸を含有しうる。
【0018】本発明に用いるリゾリン脂質とは、大豆由
来のリン脂質や卵黄リン脂質をホスフォリパーゼAによ
って脱アシル化した、モノアシル体のリン脂質であっ
て、通常は膵臓由来のホスフォリパーゼA2で処理され
たものが用いられる。これらはリゾホスファチジルコリ
ン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスフ
ァチジルイノシトール、リゾホスファチジン酸などのモ
ノアシルグリセロリン脂質を含む。またこれらの混合物
から含水アルコール処理などによってリゾホスファチジ
ルコリンの含有量を増加させたものも適する。これらの
中で、大豆リゾリン脂質は安価であり、本発明の原料と
して適する。
【0019】前記酵素処理によっては全てのリン脂質を
リゾリン脂質にすることは困難で、ジアシル体リン脂質
が残存する。リゾリン脂質の量はリン脂質全体の少なく
とも40重量%以上、好ましくは50重量%以上、さら
に好ましくは70重量%以上であることが本発明の産物
に適する。このようなものであれば、リゾリン脂質が、
例えば、通常の油分を含むペースト状の大豆リン脂質を
ホスフォリパーゼA2で処理した後、中和するかまたは
しないで、油分などを含んだまま製品化したものであっ
てもよく、また酵素処理後溶剤によって精製し、油脂及
び発生した脂肪酸を除いたものでもよい。しかし本発明
の組成物ではリゾリン脂質の配合量はその絶対量で表
す。
【0020】本発明に用いる糖質としては、ソルビトー
ル、マンニトール、キシリトール、還元水飴のような、
単糖類、少糖類の水素還元物、ショ糖その他の非還元性
の2糖または少糖類を用いることが適する。またこれら
のものの混合物もまた適する。還元性の糖類も用いるこ
とが出来るが、ケーキの焼成時にタンパク系の成分との
間に着色反応を起こし易いため、使用する場合はその添
加量は限られる。糖質は固体であっても濃厚水溶液であ
ってもよい。
【0021】以下に本発明の実施態様について具体的に
説明する。本発明の組成物では、親油性乳化剤は油相が
乳化された時点で、その大部分が水相に移行し親水性乳
化剤と共にミセルまたはベシクル構造を作り、また油滴
の周囲にラメラー構造を作ると考えられている。本発明
の組成物の起泡力の本体は糖質溶液中に分散した、乳化
剤の混合ミセルやベシクルのコロイドゲルと考えられ
る。なお、以下本発明の組成物の諸原料の配合量は特に
断わらない限り、組成物の全重量に対する重量%によっ
て表す。
【0022】油相の調製:常温で固体及び/または液体
の油脂と油溶性乳化剤を乳化剤の融点以上の温度、すな
わち75〜80℃に加温して溶解する。油相量の組成物
全体に占める量はおよそ25〜70重量%であることが
好ましい。油相が25重量%(油脂量は20重量%)以
下のものも起泡剤として用い得るが、油脂の量がこの水
準以下になることは本発明の目的から外れる。油相が7
0重量%以上のものも調製可能であるが、後述するよう
に起泡力発現の場は水相部分であるので、水相成分の不
足により十分な起泡力が得にくくなる上、乳化の際の機
械的せん断によって、組成物の一部が油中水型(W/
O)に転相し易くなるために好ましくない。
【0023】水性ゲル中のグリセリン飽和脂肪酸モノエ
ステルはタンパクの起泡を促進する効果が大きいが、グ
リセリン脂肪酸モノエステルは親水性乳化剤との比率に
おいて、多用すると経日的に結晶し効力を失う。その配
合量は、油相の相対量や他の乳化剤の配合組成によって
異なるが、およそ5〜15重量%であることが適する。
5重量%以下では起泡力が不足し、15重量%以上では
組成物の稠度が大きくなりすぎて生地中への混合が不便
になる。
【0024】グリセリン飽和脂肪酸モノエステルに対し
て、不飽和脂肪酸のモノグリセリドを加えると起泡力は
低下する。しかし少量の不飽和脂肪酸モノグリセリドを
含有させることにより、厚めのケーキ生地に発生し易い
芯を防止する効果がある。その理由は解らないが、その
添加の程度はグリセリン脂肪酸モノエステル全体のヨウ
素価として3〜20、好ましくは4〜10である。芯の
防止効果は後述のリゾリン脂質に劣るが、この範囲のヨ
ウ素価の製品を用いるか、または飽和脂肪酸モノグリセ
リドに不飽和脂肪酸モノグリセリドを混合して用いるこ
とが適する。
【0025】プロピレングリコール飽和脂肪酸エステ
ル、ソルビタン飽和脂肪酸モノエステルにも起泡促進効
果があるが、これらの水性ゲルは結晶性がないのでグリ
セリン脂肪酸モノエステルと共に用いる。両者の配合量
は合計で0〜約10重量%であることが適する。グリセ
リン脂肪酸モノエステルとの対比において、両者の合計
で相対的な量が多くなり過ぎると起泡力が低下し、また
10重量%を越えると組成物の稠度が高くなりすぎる。
【0026】水相の調製:親水性乳化剤、リゾリン脂
質、糖質の水への溶解は、加温下で行うが、溶解法は特
に限定されない。しかし、水溶性の高いものの順に溶解
することが好ましい。
【0027】ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂
肪酸エステルについては共にHLB値で7〜16の飽和
脂肪酸からなるものが適する。両者の乳化性は、ショ糖
脂肪酸エステルの方が優る傾向があるが、ある程度似て
いるので、その何れか、または混合して用いることが出
来る。また親水性の程度の異なるものを混合してもよ
い。ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エス
テルの合計量は、他の親水性乳化剤であるリゾりン脂質
との量的な関連と、親油性乳化剤の総量との関連で好適
な添加量が変化するが、およそ1〜6重量%の間にあ
る。
【0028】リゾリン脂質または大豆リゾリン脂質は、
本発明の組成物の乳化の安定に大きく貢献し、また比較
的少量の添加で、油脂及び卵の配合量の多いケーキの芯
の発生を防止する効果がある。その理由は不明である
が、リゾリン脂質は他の非イオン性の乳化剤に比べて、
はるかに微少な量でもタンパクと結合し易いので、タン
パクの物理的性質を変える性質があることと関連してい
ると推定される。リゾリン脂質の配合量は、他の親水性
乳化剤の親水性の程度と量に関連するが、およそ0.1
〜4重量%の間にある。
【0029】油脂成分の乳化の安定化と、グリセリン脂
肪酸モノエステルなど親油性の乳化剤の可溶化の見地か
らすると、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪
酸エステル、リゾリン脂質からなる親水性の乳化剤の量
はさらに多い方が適する。少なすぎると油脂のO/W乳
化性能が不十分であり、エマルジョンは不安定であっ
て、また、グリセリン脂肪酸モノエステルの晶出が起こ
りやすくなる。多すぎると組成物の起泡性を低下させ
る。より親水性のものを用いれば使用量は少なくてすむ
が、親油性乳化剤との量的比率において、それぞれ上記
範囲内にあることが適する。
【0030】組成物の乳化方法:およそ65〜75℃に
加熱した水相に、ほぼ同温度に加熱した油相を加えて乳
化を行うが、その方法は特定されない。簡単には、ター
ビン式の高速撹拌乳化機を用い得るし、比較的油相の少
ない組成物の場合は、予め撹拌槽中で水相に油相を加え
て予備乳化を行った後、加圧式のホモジナイザーによっ
て乳化してもよい。比較的油相の多い組成物で乳化液の
粘度の高い場合には、高粘度用のホモミキサー(例え
ば、特殊機化工業(株)製)を用いることが出来る。エ
マルジョン粒子がほぼ均一になり、5μm以上のものが
実質的に含まれなくなるまで乳化を行う。得られたエマ
ルジョンを、例えば、掻きとり式冷却機で10〜15℃
程度にまで急冷することによって本発明の組成物を得
る。
【0031】本発明の起泡性O/W乳化油脂組成物に
は、補助的な効能を得るために本発明の効果を阻害しな
い範囲で、他の少量の添加物を加えることが出来る。例
えば、カゼインソーダ、ホエイタンパク、その他の可溶
性タンパクやタンパクの部分分解物、各種の水溶性ガム
などのコロイド物質、上記乳化剤以外の界面活性剤、レ
シチン、殺菌剤としてのアルコール、PH調節剤として
の重合燐酸塩・苛性ソーダ、香料などである。
【0032】以上の方法によって得られる本発明の種々
の組成物は、これらを使用するケーキに求められるバタ
ーなどの油脂含量と、起泡性の程度に応じて、適当なも
のを調製することが出来る。従って、バタースポンジの
ように比較的バター量の少ないものから、パンドケーキ
のように比較的油脂(バター)量の多いものまでを容易
に製造することが出来、しかも、卵の配合量が多いう
え、ケーキ生地の厚さの大きいものであっても、芯の発
生の無い良好な内層を有する製品を得ることが出来る。
【0033】
【実施例】以下に実施例、比較例を挙げて本発明の効果
を検証するが、本発明はそれらに限定されない。この実
施例、比較例で用いた特定の原料について以下に一括し
て記載する。
【0034】グリセリン脂肪酸モノエステル:理研ビタ
ミン(株)製のエマルジーMS(硬化牛脂脂肪酸モノグ
リセリド、純分96%、ヨウ素価1.5)、エマルジー
MO(棉実ステアリンのモノグリセリド、純分95%、
ヨウ素価74)、エマルジーMT(硬化牛脂脂肪酸モノ
グリセリド、純分94%、ヨウ素価19)を用いた。
【0035】プロピレングリコールステアリン酸モノエ
ステル:理研ビタミン(株)製のリケマールPS100
(純分94%)。 ソルビタンステアリン酸モノエステル:(株)花王製エ
マゾールS−10F(HLB4.7)。
【0036】ショ糖ステアリン酸エステル:三菱化成食
品(株)製リョートウエステル、S−1670S(HL
B15)、同S−770(HLB7)、第一工業製薬
(株)製DKエステルF−110(HLB11)、以上
何れも硬化牛脂脂肪酸エステル。 ポリグリセリンステアリン酸エステル:阪本薬品(株)
製YSグリスター、MS−500(HLB11)。
【0037】大豆リゾリン脂質:日清製油(株)製ベイ
シスLG−10E(アセトン不溶物56重量%、リゾ体
変換率83%)、同ベイシスLP−20E(アセトン不
溶物94重量%、リゾ体変換率95%)、なお、前者は
約44重量%の油脂と脂肪酸を含み、後者はそれらを実
質的に含有しない。これらはそれぞれ、リゾリン脂質を
全リン脂質の約75重量%及び約92重量%含有する。
従って、ベイシスのLG−10Eはリゾリン脂質を約4
2重量%、LP−20Eは約86重量%含有する。
【0038】糖質:日研化学(株)製のD−ソルビトー
ル70重量%水溶液を用いた。
【0039】実施例1〜7 表1に示す百分比の配合組成によって、全量を1000
gとし、実施例1から実施例7の組成物を得た。なおこ
こで使用したバターは雪印乳業(株)製で、水分を14
重量%含有するが便宜上全体を油相として表記した。調
製方法は、水相成分を約75℃で溶解しておき、別途に
約75〜80℃で溶解した油相を用意する。特殊機化工
業(株)製のTKホモミキサー・マークII−2.5型に
よって、70±3℃の水相中に同温の油相を撹拌しなが
ら加え、12,500rpmで6分間撹拌し一旦撹拌を止
め、さらに6分間13,000rpmで撹拌した。得られ
たエマルジョンは約3℃のステンレス製の冷却板上で箆
を使って10〜14℃にまで急冷し、組成物を得た。
【0040】
【表1】
【0041】実施例8〜11 表2に示す百分比の配合組成によって、全重量を100
0gとし、実施例1〜7と同様にして実施例8〜11の
組成物を得た。なお油脂として、実施例9では上昇融点
34℃の大豆硬化油とコーンサラダ油を使用し、実施例
10ではバターとコーンサラダ油を、実施例11ではコ
ーンサラダ油のみを用いた。
【0042】比較例1〜3 比較例として、本発明の範囲外にある例を、表2に示す
配合で、実施例1〜7と同様にして調製した。
【0043】
【表2】
【0044】実施例、比較例の組成物によるケーキの製
造 実施例1〜11及び比較例の組成物を用いて、ケーキ生
地の起泡と焼成試験を行った。 ケーキの製作:上白糖300g、全量550gの液体全卵
の中の100g、各組成物は油脂含量と起泡力が異なる
ので表3に記載した量を、ホバートミキサー・モデルK
5SSにとり、低速で1分間撹拌した後、残りの液体全
卵450g、薄力小麦粉300gを加え、高速で3分間撹
拌して起泡した。生地の比重を測定し、450g宛を直
径18cmのケーキ型2個にとり、180℃のオープンで
約45分間かけて焼成した。
【0045】ケーキの評価:ケーキは体積を測定し、垂
直方向と水平方向にスライスして、内相の良否、芯発生
の有無を調べた。これらの結果は表3に一括して示し
た。芯の発生の程度は、−、±、+、++、+++の記
号で表し、内相と外観は5点を最高として評点を記し
た。外観では特にケーキの底部の浮き上がりを減点し
た。
【0046】
【表3】
【0047】
【発明の効果】本発明の起泡性水中油形食用油脂組成物
の効果は表3に示した通りである。すなわち、本発明の
組成物を用いた含油ケーキの製造では、バターのように
常温で固形の油脂を含有しても、また卵の多い配合であ
っても、全配合物を同時に混合する製造方法によって簡
単に安定的な製造を行うことが出来る。また、得られた
ケーキには通常の方法では防止することの困難な芯の発
生を避けることが出来る。以上により、従来には無かっ
た改良された起泡性水中油形食用油脂組成物を得た。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上昇融点が実質的に人の体温を越えない
    食用油脂と親油性乳化剤を含む油相と、親水性乳化剤と
    糖質を含む水相とを、乳化してなる起泡性水中油形食用
    油脂組成物であって、親油性乳化剤として、グリセリン
    脂肪酸モノエステルを必須とし、プロピレングリコール
    脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸モノエステルの中か
    ら1種以上を併用し、または併用せず、親水性乳化剤と
    して、ショ糖脂肪酸エステル及び/またはポリグリセリ
    ン脂肪酸エステルと、リゾリン脂質を用いることを特徴
    とする起泡性水中油形食用油脂組成物。
  2. 【請求項2】 上昇融点が実質的に人の体温を越えない
    食用油脂と親油性乳化剤を含む油相25〜70重量%
    と、親水性乳化剤と糖質を含む水相75〜30重量%と
    を、乳化してなる起泡性水中油形食用油脂組成物であっ
    て、組成物全体に対する各成分の構成百分比が次による
    ことを特徴とするもの。親油性乳化剤が、必須成分とし
    てのヨウ素価20以下のグリセリン脂肪酸モノエステル
    を5〜15重量%と、それぞれ飽和脂肪酸のプロピレン
    グリコール脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸モノ
    エステルから1種以上を0〜10重量%の組合せからな
    り、それらの合計量が5〜20重量%であるものを含む
    油相と、 親水性乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル及び/またはポ
    リグリセリン脂肪酸エステルを1〜6重量%と、リゾリ
    ン脂質を0.1〜4重量%との組合せであり、糖質が1
    0〜40重量%である水相からなる起泡性水中油形食用
    油脂組成物。
  3. 【請求項3】 食用固形脂がバターまたは乳脂である
    か、またはバターまたは乳脂と他の食用油脂の混合物で
    ある請求項1及び請求項2記載の起泡性水中油形食用油
    脂組成物。
  4. 【請求項4】 リゾリン脂質が大豆リゾリン脂質であ
    る、請求項1請求項2及び請求項3記載の起泡性水中油
    形食用油脂組成物。
  5. 【請求項5】 糖質が糖アルコールか、非還元性の二ま
    たは三糖類である請求項1請求項2及び請求項3記載の
    起泡性水中油形食用油脂組成物。
  6. 【請求項6】 請求項3、4、5を満足してなる請求項
    2記載の起泡性水中油形食用油脂組成物。
  7. 【請求項7】 請求項1及び請求項2〜6記載の起泡性
    水中油形食用油脂組成物を用いたケーキの製造法。
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