JPWO2012086593A1 - 粘性を有する栄養組成物 - Google Patents

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Abstract

自然落下投与で使用可能で、かつ非常に粘度の低い流動食に比べて、より生理学的に好ましい粘性を有する流動食の提供。増粘剤と乳化剤を組み合わせて使用することにより、原材料の調合から容器に充填するまでの工程においては製造が容易な粘度を維持し、かつ加熱処理後は自然落下による経管投与に適した粘度を有する栄養組成物を提供する。また、増粘剤、乳化剤及び吸水性食物繊維を組み合わせて使用することにより、原材料の調合から容器に充填するまでの工程においては製造が容易な粘度を維持し、かつ加熱処理後は自然落下による経管投与に適した粘度を有する栄養組成物を提供する。

Description

本発明は粘性を有する栄養組成物に関する。より詳細には、本発明は生理学的に好ましい粘性を有し、流動食の製造に用いることのできる粘性を有する栄養組成物に関する。
低粘度の液状流動食は、胃に直接投与する胃瘻経管投与法において、胃食道逆流の原因となることが知られており、その対策として、粘度4000〜20,000mPa・s(12rpm)の半固形状流動食を短時間で投与する方法が良く行われている。このような投与法が試みられ、実際に症状が改善されるケースが増え、液体を直接胃に投与することが生理学的に好ましくないという考えも認知されるようになってきた。
一方で、これだけ高粘度の半固形状流動食を用いる場合、従来の手技である自然滴下法を用いることはできず、シリンジを用いて注入する等の煩雑で、力のいる作業で投与することが必要であり、看護士や介護士の負担が大きいことが課題となっていた。
そこで、成熟した手技である自然落下投与で使用可能で、かつ非常に粘度の低い流動食に比べて、より生理学的に好ましい粘性の流動食が求められるようになった。
しかし、製造面においては、原材料の調合から容器に充填するまでの工程で製造が容易な粘度を維持する事も必要とされている。
胃瘻患者に用いられる経腸栄養剤用の半固形化剤に関して、特開2010-065013(特許文献1)は、分子の一部がイオタカラギナンで置換されたカッパカラギナンを含有することを特徴とする、胃瘻患者に用いられる経腸栄養剤用の半固形化剤を記載している。同文献には「半固形化」の定義として、「本明細書において、半固形化とは、静置状態ではゲル状であるが、変形あるいは力をかけることにより均一なペースト状に変化する状態をいう」との記載がある。この文献記載の半固形化経腸栄養剤は、内径30mmの50mlシリンジに半固形化経腸栄養剤を25ml充填し、内径4mm、長さ300mmのチューブを接続し、治具を用いて5mm/秒の速度でチューブに35mm押し込んだ際の応力が20000N/m以下であることを特徴とするものである旨、記載されている。特許文献1には、食物繊維への言及があるが、どのような食物繊維であるか、具体的な記載はない。また特許文献1に記載の栄養剤の製造は、加熱滅菌処理工程を伴わないものである。同文献の段落[0008]には、従来技術の栄養剤について加熱という危険な作業を伴うとの記載があり、加熱は好ましくないものとして記載されている。
特開2007-295877(特許文献2)は、ゲル化剤、及び多価金属塩を含有し、加熱殺菌処理されてなることを特徴とする乳たんぱく含有ゲル状栄養組成物を記載している。特許文献2は、段落[0009]にてゲル化剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムを例示している。また段落[0022]でアップル4倍濃縮果汁を投入し、80℃で加温した旨、記載している。この発明は栄養剤のゲル強度を一定のものとする趣旨である(特許文献2の請求項4参照)。
特開2004-261063(特許文献3)は、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル等のグリセリン有機酸エステルを含有する乳成分含有ゲル状食品用乳化剤を記載している。また、同文献は、加熱殺菌工程前に乳化剤を添加し、加熱殺菌を行い、その後、乳成分含有ゲル状食品を緩慢冷却により固化させる工程を含む、ミルクプリンのような乳成分含有ゲル状食品の製造方法を記載している。これら特許文献2及び3は、いずれも増粘剤と乳化剤との相乗効果については、記載も示唆もない。また、吸水性食物繊維についても、記載も示唆もない。
特開2007-289164 (特許文献4)は、流動食の製造方法として、増粘剤を均質に分散させた所定の粘度の調合液を製造し、加熱してレトルト殺菌し、所定の粘度を有する流動食の製造方法を記載している。同文献では増粘剤としてタマリンドガムが主に使用されている。特許文献4は、増粘剤と乳化剤との相乗効果については、その記載も示唆もない。同文献の段落[0025]の調製例では、原材料として食物繊維を用いた旨、記載されているが、これが如何なるものであるか具体的記載はない。また同文献中には、吸水性食物繊維についての記載や示唆はない。
特開2010-065013 特開2007-295877 特開2004-261063 特開2007-289164
本発明の課題は、加熱処理前の粘度が低く、かつ加熱処理後の粘度が顕著に高い栄養組成物を提供することである。
本発明者らは、増粘剤および乳化剤の相乗効果により、加熱処理前の組成物の粘度を低い粘度に抑えつつ、加熱処理後の組成物の粘度を顕著に高めたという新しい知見に基づき、栄養組成物である本発明を完成させた。また、均質処理圧を調整することによって前記組成物の加熱処理後の粘度を調整することも可能である。さらに、増粘剤、乳化剤及び吸水性食物繊維を用いることにより、加熱処理前の組成物の粘度を低い粘度に抑えつつ、加熱処理後の組成物の粘度を顕著に高めたという新しい知見に基づき、栄養組成物である本発明を完成させた。さらに、該組成物は、前記食物繊維の吸水作用により自由水が減少するため、一定の粘度を付与するのに必要な増粘剤等の量を低減することが可能となった。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
i) 増粘剤、及び
ii) 乳化剤、を含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、粘性を有する栄養組成物。
[2]
i) 栄養組成物に対して0.01〜1.0重量%の増粘剤、及び
ii) 栄養組成物に対して0.02〜2.0重量%の乳化剤、を含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、[1]記載の粘性を有する栄養組成物。
[3]
i)増粘剤が、ローカストビーンガム、κ−カラギナン、ι−カラギナン、λ−カラギナン、カラギナン、ゼラチン、ローメトキシルペクチン、ハイメトキシルペクチン、ペクチン、タラガム、寒天、低強度寒天、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、プロピレングリコール、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースからなる群より選択される1種類または複数種類の増粘剤であり、
ii)乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリドからなる群より選択される1種類または複数種類の乳化剤である、[1]又は[2]記載の栄養組成物。
[4]
i)増粘剤がカラギナンおよび/または低強度寒天であり、
ii)乳化剤がコハク酸モノグリセリドおよび/またはジアセチル酒石酸モノグリセリドである、[1]〜[3]のいずれかに記載の栄養組成物。
[5]
組成物の粘度が5〜300mPa・sであり、該組成物の粘度がB型粘度計を用いて45〜85℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、[1]〜[4]のいずれかに記載の栄養組成物。
[6]
均質処理圧を10〜100MPaに調整して均質化処理を行った、[1]〜[5]のいずれかに記載の栄養組成物。
[7]
加熱処理し、さらに常温以下の温度で1〜90日保存することにより組成物の粘度が300〜3000mPa・sとなったものであり、該加熱処理し、さらに常温以下の温度で1〜90日保存後の組成物の粘度はB型粘度計を用いて20℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、[1]〜[6]のいずれかに記載の栄養組成物。
[8]
増粘剤及び乳化剤を含み、増粘剤と乳化剤の重量比(乳化剤/増粘剤)が0.5〜30であり、加熱処理し、さらに常温以下の温度で1〜90日保存することにより粘度が上昇する性質を有する、粘性を有する栄養組成物。
[9]
吸水性食物繊維をさらに含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の栄養組成物。
[10]
栄養組成物に対して0.1〜3.0重量%の吸水性食物繊維を含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、[9]に記載の粘性を有する栄養組成物。
[11]
吸水性食物繊維が、不溶性食物繊維であることを特徴とする、[9]又は[10]に記載の栄養組成物。
[12]
吸水性食物繊維が、大豆食物繊維の不溶性繊維および/又は大豆ふすまであることを特徴とする、[9]〜[11]のいずれかに記載の栄養組成物。
[13]
タンパク質、脂質、又は糖質からなる群のうち1つ又は複数を含有し、組成物の熱量が1.00〜3.00kcal/mlである、[9]〜[12]のいずれかに記載の栄養組成物。
[14]
i)栄養組成物に対して0.01〜1.0重量%の増粘剤、及び栄養組成物に対して0.02〜2.0重量%の乳化剤の各成分を用意する工程、
ii) 均質化のための圧処理工程、及び
iii) 加熱処理工程、
を含み、加熱処理前の組成物の粘度が5〜300mPa・sであり、該加熱処理前の組成物の粘度はB型粘度計を用いて45〜85℃、12rpmにて測定を行ったときのものであり、加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存の後の組成物の粘度が300〜3000mPa・sであり、該加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存後の組成物の粘度はB型粘度計を用いて、20℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、粘性を有する栄養組成物の製造方法。
[15]
i)栄養組成物に対して0.01〜1.0重量%の増粘剤、及び栄養組成物に対して0.02〜2.0重量%の乳化剤の各成分を用意する工程、
ii) 均質化のための圧処理工程、及び
iii) 加熱処理工程、
を含み、加熱処理前の組成物の粘度が5〜300mPa・sであり、該加熱処理前の組成物の粘度はB型粘度計を用いて45〜85℃、12rpmにて測定を行ったときのものであり、均質化のための圧処理工程における均質処理圧が10〜100MPaであり、加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存の後の組成物の粘度が300〜3000mPa・sであり、該加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存後の組成物の粘度は、B型粘度計を用いて20℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、粘性を有する栄養組成物の製造方法。
[16]
工程i)において、さらに栄養組成物に対して0.1〜3.0重量%の吸水性食物繊維を用意する、[14]又は[15]に記載の方法。
[17]
吸水性食物繊維が、不溶性食物繊維であることを特徴とする、[16]に記載の方法。
[18]
吸水性食物繊維が、大豆食物繊維の不溶性繊維および/又は大豆ふすまであることを特徴とする、[16]又は[17]に記載の方法。
[19]
タンパク質、脂質、又は糖質からなる群のうち1つ又は複数を含有し、製造される組成物の熱量が1.00〜3.00kcal/mlである、[16]〜[18]のいずれかに記載の方法。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2010-286644号、2011-108848号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
増粘剤と乳化剤を組み合わせて使用することにより、原材料の調合から容器に充填するまでの工程においては製造が容易な粘度を維持し、かつ加熱処理後は自然落下による経管投与に適した粘度である栄養組成物を提供することができた。さらに、増粘剤、乳化剤及び吸水性食物繊維を組み合わせて使用することにより、原材料の調合から容器に充填するまでの工程においては製造が容易な粘度を維持し、かつ加熱処理後は自然落下による経管投与に適した粘度である栄養組成物を提供することができた。つまり、本発明の栄養組成物は、製造が容易でかつ、経管投与が容易な栄養組成物である。また、本発明の栄養組成物は、増粘剤および乳化剤を組み合わせて使用することにより、主に増粘剤により粘度を高めた組成物と比べて、加熱処理を行う前の粘度を低く抑えることが可能であり、そのため製造が容易となる。本発明の栄養組成物は、加えて吸水性食物繊維を使用した場合、前記吸水性食物繊維の吸水作用により自由水が減少するため、一定の粘度を付与するのに必要な増粘剤等の含有量を従来のものと比較して低く抑えることが可能となるため、主に増粘剤により粘度を高めた組成物と比べて、加熱処理を行う前の粘度を低く抑えることが可能であり、そのため製造が容易となる。さらに、本発明の栄養組成物は、増粘剤の含有量を従来のものと比較して低く抑えることが可能であり、従来品と同程度の粘度の組成物を製造する場合にも、使用する原材料の一部を節約できるという経済的な利点もある。また、本発明の栄養組成物は、増粘剤の使用量を低く抑えることが可能であることに関連して、加熱処理前の組成物の粘度を過度に増大させることなく栄養組成物の含有熱量を従来のものよりも高くすることができる。
一定量の増粘剤の存在下において、添加する乳化剤の量を変化させたときの組成物のレトルト殺菌後の粘度の変化を示す。 増粘剤としてカラギナンの代わりに低強度寒天を使用し、一定量の当該増粘剤の存在下において、添加する乳化剤(DATEM)の量を変化させたときの組成物のレトルト殺菌後の粘度の変化を示す。 一定量の乳化剤の存在下において、添加する増粘剤の量を変化させたときの組成物のレトルト殺菌後の粘度の変化を示す。 一定量の増粘剤及び乳化剤の存在下において、均質処理圧を変化させたときの組成物のレトルト殺菌後の粘度の変化を示す。 吸水性食物繊維および乳化剤を含有する組成物に、増粘剤を添加したときの組成物のレトルト殺菌後の粘度の変化を示す。 一定量の吸水性食物繊維および乳化剤を含有する組成物において、添加する増粘剤の量を変化させたときの組成物のレトルト殺菌後の粘度の変化を示す。 一定量の吸水性食物繊維、増粘剤及び乳化剤の存在下において、均質処理圧を変化させたときの組成物のレトルト殺菌後の粘度の変化を示す。
本発明の栄養組成物は、増粘剤および乳化剤の相乗効果により、加熱処理後に粘度の高い組成物が得られるという新しい知見に基づく。また、本発明の栄養組成物は、増粘剤、乳化剤及び吸水性食物繊維を用いることにより、加熱処理の前後でさらに飛躍的に組成物の粘度を上昇させることができるという知見に基づく。
食物繊維は、ヒトの消化酵素によって水解されない食物中の物質を指し、水に対する親和性から、水溶性食物繊維および不溶性食物繊維に分類される。その起源として、細胞壁の構造物質(セルロース、ヘミセルロース、不溶性ペクチン質、リグニン、キチン等)、非構成物質(水溶性ペクチン質、植物ガム、粘着物、海藻多糖類、化学修飾多糖類等)等が知られている(印南敏ら編、食物繊維、第一出版発行、1982年)。
本発明で使用することのできる吸水性食物繊維は、吸水性のある食物繊維を指し、特に加熱処理により吸水性が高まる性質を有するのが好ましい。本発明の栄養組成物に吸水性食物繊維を用いると、その吸水作用により組成物中の自由水が減少するため、組成物中の溶液部分における増粘剤等の濃度が相対的に高まることになる。その結果、増粘剤等に由来する粘度が高まる結果となる。しかも、加熱処理することにより吸水性が高まる食物繊維を使用すると、加熱処理によってその粘度はさらに高まる。また、本発明の栄養組成物において、予めα化処理されていない状態のデンプン、増粘多糖類、繊維状セルロース、結晶セルロース等のように、加熱処理により吸水性が高まる他の物質を一部併用してもよい。
本明細書において、加熱処理とは、後述の加熱殺菌のほか、70℃以上×数分以上、又は80℃以上×数分以上の加熱処理も含む。
本発明の吸水性食物繊維は、タンパク質、脂質、又は糖質等と共に加熱処理を行ってもよい。あるいは、タンパク質、脂質、又は糖質とは別途加熱処理を行い、加熱殺菌したタンパク質、脂質、又は糖質等に添加して用いてもかまわない。
本発明の吸水性食物繊維として、不溶性食物繊維を好適に使用することができる。前記不溶性食物繊維の例として、セルロース、ヘミセルロース(キシラン、マンナン、ガラクタン、グルカン、グルコマンナン、キシログルカン等)、ホロセルロース、マトリックス多糖、植物(野菜(レタス、セロリ、玉ねぎ、ごぼう、大根、グリーンピース、かんぴょう、トマト等)、果物(リンゴ、バナナ等)、穀類(大麦、小麦、からす麦、とうもろこし、アマランサス等)、芋類(さつまいも、じゃがいも、こんにゃく芋)、豆類(えんどう豆、大豆、小豆、ひよこ豆、いんげん豆、うずら豆、緑豆、等)、きのこ類(きくらげ、しいたけ等)、くり、アーモンド、ピーナツ、ごま等)に由来する食物繊維の不溶性繊維、他の天然物(動物、海藻、微生物等)に由来する食物繊維の不溶性繊維、前記天然物由来の不溶性繊維を化学的に修飾・部分分解又は精製したもの、化学的に合成した喫食可能な不溶性繊維、大豆ふすま、小麦ふすま、大麦ふすま、トウモロコシふすま、オート麦ふすま、ライ麦ふすま、ハトムギふすま、米糠、キビ、アワ、ヒエ、モロコシ等の雑穀ふすま、菽穀(マメ科)ふすま、ソバ等の擬穀ふすま、ゴマふすま、おから等を挙げることができ、好適な例として大豆食物繊維の不溶性繊維、大豆ふすま等を挙げる事ができる。また、前記不溶性食物繊維について、リグニン等の疎水性成分が除去されたもの、多数の側鎖を有するもの、非晶質であるものを好適に用いることができる。
前記吸水性食物繊維は1種類あるいは複数種類を組み合わせて用いることができ、また、前記吸水性食物繊維を多く含む食品や、前記吸水性食物繊維を多く含む添加剤を用いてもかまわない。また、本発明において、前記吸水性食物繊維に他の食物繊維を一部併用してもかまわない。例えば、少なくとも大豆食物繊維の不溶性繊維および/又は大豆ふすまを本発明の組成物に使用する吸水性食物繊維に含んでもよい。本発明の実施例に使用した大豆食物繊維の不溶性繊維は、例えば、大豆を脱脂し、さらに水抽出した際に生じる不溶物を乾燥して取得することができる。また、おからを乾燥して得ることもできる。
五訂増補日本食品標準成分表(文部科学省:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.htm)によると、大豆(乾燥)に含まれる食物繊維の総量、水溶性食物繊維量、不溶性食物繊維量は、それぞれ17.1g/100可食部、1.8g/100可食部、15.3g/100可食部である。また、おから(旧製法)に含まれる食物繊維の総量、水溶性食物繊維量、不溶性食物繊維量は、それぞれ9.7g/100可食部、0.3g/100可食部、9.4g/100可食部であり、おから(新製法)に含まれる食物繊維の総量、水溶性食物繊維量、不溶性食物繊維量は、それぞれ11.5g/100可食部、0.4g/100可食部、11.1g/100可食部である。
なお、本発明の吸水性食物繊維は、大豆増粘多糖類、難消化デキストリンのような水溶性食物繊維は含まない。本発明の栄養組成物において、水溶性食物繊維を一部併用してもかまわない。
ふすまとは、穀物を製粉し穀物分を作ったときの残りをいう。例えば大豆ふすまとは、大豆を製粉した際に生ずる残りであり、小麦ふすまとは、小麦フィードとも呼ばれ、小麦を製粉し小麦粉を作ったときの残りである。ふすまのことを、イネ科植物の場合、糠(ぬか)と呼ぶこともある。糠は、穀物を精白した際に生じる果皮、種皮、胚芽などの部分をいう。本明細書ではふすまを糠と同義に用いる。また、ふすまを穀物全般に対して用い、例えば小麦、とうもろこし、オーツ麦等のような特定の穀物に限定されない。本発明に用いることのできるふすまとしては、限定するものではないが、化学的に合成した喫食可能な不溶性繊維、大豆ふすま、小麦ふすま、大麦ふすま、トウモロコシふすま、オート麦ふすま、ライ麦ふすま、ハトムギふすま、米糠、キビ、アワ、ヒエ、モロコシ等の雑穀ふすま、菽穀(マメ科)ふすま、ソバ等の擬穀ふすま、ゴマふすま、おから等を挙げることができる。
本発明の栄養組成物に使用する吸水性食物繊維の量は、作製する栄養組成物の粘度、吸水性食物繊維の種類、食品タンパク質・増粘剤・乳化剤等の他成分の種類・含量、均質処理圧等によって適宜調整することができる。その下限量は、あえて挙げるなら、例えば、栄養組成物に対して0.1重量%であり、0.2重量%であり、0.5重量%であり得る。またその上限量は、あえて挙げるなら、例えば、栄養組成物に対して3.0重量%であり、2.5重量%であり、2.2重量%であり、2.0重量%であり、1.0重量%であり得る。本発明において、前記下限値と前記上限値を、前記のいずれかの値に設定した場合、使用する吸水性食物繊維の量を「(下限値)〜(上限値)」と記載することができる。
また、吸水性食物繊維の粒子は大きい方が吸水性に優れる(印南敏ら編、食物繊維、第一出版発行、1982年)。本発明において、好適に用いることのできる該食物繊維の大きさは、作製する栄養組成物の粘度、吸水性食物繊維の種類・含量、食品タンパク質・増粘剤・乳化剤等の他成分の種類・含量、均質処理圧等によって適宜調整することができるが、あえて挙げるなら、吸水させる前の乾燥状態の吸水性食物繊維の大きさについて、20メッシュを篩過し、かつ100メッシュを篩過しない大きさ、より好ましくは60メッシュを篩過し、かつ100メッシュを篩過しない大きさを挙げることができる。
大豆食物繊維は、セルロース、ヘミセルロース等を含有し、その重合度や立体構造によって水溶性食物繊維および不溶性食物繊維が存在する。水溶性食物繊維はそれ自体に増粘性があるため増粘安定剤として実用化されている。一方、セルロースおよびヘミセルロースを主成分とする不溶性食物繊維は、それ自体に増粘性がほとんどみられない。大豆食物繊維の不溶性食物繊維のうち、大きな3次構造を有するものは吸水性にすぐれ、さらに加熱するとその吸水性が高まる性質を有する。大豆ふすまは、大豆食物繊維の不溶性食物繊維に富む素材として知られている。
本発明で使用することのできる増粘剤(ゲル化剤、安定剤、増粘安定剤、糊料ともいう)の例として、ローカストビーンガム、κ−カラギナン、ι−カラギナン、λ−カラギナン、カラギナン、ゼラチン、ローメトキシルペクチン、ハイメトキシルペクチン、ペクチン、タラガム、寒天、低強度寒天、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、プロピレングリコール、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができ、好適な例として多糖類を主成分とする増粘剤を挙げる事ができる。前記増粘剤は1種類あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。また、本発明において、前記増粘剤に他の増粘剤を一部併用してもかまわない。例えば、少なくともカラギナンおよび/又は低強度寒天を本発明の組成物に使用する増粘剤に含んでもよい。本発明の栄養組成物に使用する増粘剤の量は、作製する栄養組成物の粘度、増粘剤の種類、吸水性食物繊維、乳化剤等の他成分の種類・含量、均質処理圧等によって適宜調整することができる。その下限量は、あえて挙げるなら、例えば、栄養組成物に対して0.01重量%であり、0.02重量%であり、0.05重量%であり得る。またその上限量は、あえて挙げるなら、例えば、栄養組成物に対して2.0重量%であり、1.0重量%であり、0.5重量%であり得る。本発明において、前記下限値と前記上限値を、前記のいずれかの値に設定した場合、使用する増粘剤の量を「(下限値)〜(上限値)」と記載することができる。
カラギナンは、ガラクトースとアンヒドロガラクトースからなる多糖類の硫酸エステルの塩類で、イバラノリ、キリンサイ、ギンナンソウ、スギノリ、ツノマタの全藻より水またはアルカリ水溶液で抽出・精製して得られる(精製カラギナン)。別名をカラギーナン、カラゲナン、カラゲニン、Carrageenanともいう。キリンサイの全藻を乾燥、またはアルカリ処理の後に中和・乾燥処理して得られる、ユーケマ粉末または加工ユーケマ藻類として使用することもできる。ガラクトースとアンヒドロガラクトースの比率や硫酸エステルの数により主にκ−、ι−、λ−のタイプのカラギナンが存在する。また、κ−カラギナン分子の一部をι−カラギナンに置換したκ−カラギナンや、食用以外で使用する分解カラギナンも存在する。κ−およびι−タイプのカラギナンはゲル化する性質を有し、水溶液における粘度はκ−カラギナン<ι−カラギナンである。この水溶液を冷却すると、κ−カラギナンは堅くて脆いゲル、ι−カラギナンは粘弾性のあるゲルを形成する。また、κ−およびι−タイプのカラギナンは、塩や乳タンパク質と反応して強いゲルを形成する(日高徹ら, 食品添加物事典,食品化学新聞社, 1997年発行, p.74、および、天然物便覧 第14版,食品と科学社,1998年発行,p.110−111)。
低強度寒天とは、寒天を熱処理することによって寒天成分の分子を切断し、ゼリー強度(日寒水式)が1.5%の寒天濃度で10〜250g/cm2に調整したものであり、寒天に比べてゼリー強度が低い。低強度寒天は、例えば特許第3414954号に記載の方法で製造することができる。なお、ゼリー強度(日寒水式)とは、寒天の1.5%溶液を調製し、20℃で15時間放置して凝固せしめたゲルについて、その表面 1cm2当たり20秒間耐え得る最大重量(g数)をいう。
本発明で使用することのできる乳化剤の例として、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ペンタグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンエルカ酸エステル等)、有機酸(酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸等)モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル等)、(アブラナ、卵黄、分別、乳等)レシチン、酵素分解レシチン(例えば、酵素分解アブラナレシチン等)等を挙げることができ、好適な例として有機酸モノグリセリドを挙げることができる。前記乳化剤は1種類あるいは複数種類を組み合わせて用いることができ、親水性の乳化剤と他の乳化剤を組み合わせて用いてもよい。また、本発明において、前記乳化剤に前記乳化剤以外の他の乳化剤が一部、例えば前記乳化剤より少ない量で、含まれていてもよい。例えば、少なくともコハク酸モノグリセリドおよび/またはジアセチル酒石酸モノグリセリドを本発明の組成物に使用する乳化剤に含んでもよく、少なくとも有機酸モノグリセリドを本発明の組成物に使用する乳化剤に含んでもよい。乳化剤の添加量は作製する栄養組成物の粘度、乳化剤の種類、吸水性食物繊維、増粘剤等の他原料の含量、均質処理圧等によって適宜調整することができる。その下限量は、あえて挙げるなら、例えば、栄養組成物に対して0.02重量%であり、0.05重量%であり、0.10重量%であり、0.55重量%であり、0.60重量%であり、0.70重量%であり得る。またその上限量は、あえて挙げるなら、例えば、栄養組成物に対して2.0重量%であり、1.5重量%であり、1.0重量%であり得る。本発明において、前記下限値と前記上限値を、前記のいずれかの値に設定した場合、使用する乳化剤の量を「(下限値)〜(上限値)」と記載することができる。
モノグリセリドは、グリセリンの1つの水酸基に脂肪酸が結合したものである。有機酸モノグリセリドは、有機酸が前記モノグリセリドの水酸基にエステル結合したものをいう。
ジアセチル酒石酸モノグリセリドは、酒石酸の水酸基がアセチル化した化合物が、前記モノグリセリドの水酸基にエステル結合したものである。別名、TMG、DATEM (Diacetyl Tartaric (Acid) ester of monoglyceride)ともいう。O/W型乳化に用いられることがある。
コハク酸モノグリセリドは、コハク酸が前記モノグリセリドの水酸基にエステル結合したものである。別名、SMG(Succinic Acid esters of monoglyceride)ともいう。O/W型乳化に用いられることがある。
本発明において、有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸の例としてカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸を挙げることができるが、この例に限定されない。
本発明において、タンパク質の全部または一部に食品タンパク質を使用することができる。本発明において使用することのできる食品タンパク質の例として、乳由来タンパク質(カゼイン、カゼインナトリウム、MPC(Milk Protein Concentrate)、α−カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼイン等)、大豆由来タンパク質(グリシニン、βコングリシニン等)、小麦由来タンパク質(グルテン、グルアジン、グルテリン等)、畜肉由来タンパク質(筋肉構造タンパク、ミオシン、アクチン等)、魚肉(筋繊維タンパク、アクトミオシン、ミオシン、アクチン等)、鶏卵由来タンパク質(卵白アルブミン、卵黄リポタンパク等)、豚皮由来タンパク質(ゼラチン等)等を挙げることができ、好適な例としてカゼインナトリウムを挙げる事ができる。本発明において、食品タンパク質は1種類あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。また、本発明において、前記タンパク質に他の食品タンパク質を一部併用してもかまわない。例えば、少なくともカゼインナトリウムを本発明の組成物に使用する食品タンパク質に含んでもよい。本発明の栄養組成物に使用する食品タンパク質の量は、作製する栄養組成物の粘度、pH、イオン強度、温度、食品タンパク質の種類、食物繊維・増粘剤・乳化剤等の他成分の種類・含量、均質処理圧、等によって適宜調整することができるが、あえて挙げるなら栄養組成物に対して1.0〜12.0重量%(w/w%)、好ましくは2.0〜10.0重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量%を使用することができる。
本発明の栄養組成物は糖類を含有することができる。本発明で使用することのできる糖類の例として、でんぷん、デキストリン、セルロース、グルコマンナン、グルカン等の多糖類や、キチン類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、低分子多糖類、低分子デキストリン、低分子セルロース、低分子グルコマンナン等を挙げることができる。例えば、DE値が12〜50、15〜40、20〜40のものを使用することができる。また、糖類の由来は植物、動物、微生物等のいずれであってもよく、化学的に合成したものであってもよい。例えば、植物(バレイショ、米、サツマイモ、トウモロコシ、小麦、豆類(そらまめ、緑豆、小豆等)、キャッサバ等)、動物(甲殻類、昆虫、貝等)、微生物(キノコ、かび等)などに由来する糖類をそのまま、あるいは、酵素反応、微生物を用いた反応、熱、化学反応等の手段を用いて一部または全部を分解、修飾等の処理をしたものを用いてもよい。本発明の栄養組成物に使用する糖類の量や種類は、作製する栄養組成物の粘度、乳化剤・増粘剤・タンパク質・脂質等の他原料の種類や含量等によって適宜調整・選択することができる。
デキストリンは、でんぷんを熱、酸、酵素等によって分解等し、必要であれば精製して得られる生成物をいう。別名ブリティッシュガム、スターチガム、Dextrineともいう。製法や分解の程度等により、種々のデキストリンが存在する。種々のデキストリンの例として、マルトデキストリン、難消化デキストリン(水溶性食物繊維)、シクロデキストリン、可溶化デンプン、分岐コーンシラップ等を挙げることができる。デキストリンはデキストロース当量(DE)により評価されうる。当業者であれば、慣用の方法でDEを決定することができる。例えばマルトデキストリンのデキストロース当量は3から20とされる。本発明に用いるデキストリンは、デキストロース当量(DE)が通常12〜50、好ましくは15〜40、より好ましくは20〜40である。このデキストリンと他のDEをもつデキストリンを併用して用いてもかまわない。
本発明の栄養組成物は、前記の吸水性食物繊維、増粘剤、乳化剤、食品タンパク質、糖類の他に、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類、pH調節剤等を使用することができる。タンパク質としては、例えば乳由来タンパク質、タンパク質酵素分解物、全脂粉乳、脱脂粉乳、カゼイン、カゼイン分解物、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、ホエイタンパク質加水分解物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ−カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これらの分解物;バター、乳清ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などが挙げられる。カゼインホスホペプチド、リジン等のペプチドやアミノ酸を含んでいてもよい。糖質としては、例えば、糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、エリソルビン酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができ、合成品及び/又はこれらを多く含む食品を用いてもよい。
本発明の栄養組成物は、適当にタンパク質、脂質、糖質を加えることにより、その熱量を調節することができる。本明細書では、栄養組成物の熱量を便宜的に1mlあたりのエネルギー(kcal/ml)と記載する。また、栄養組成物のタンパク質含量をg/kcalとして表現する。これは栄養組成物の全熱量(kcal)のうち、タンパク質が占める割合をグラム数(g)で表したものである。脂質及び糖質については栄養組成物中の脂質又は糖質の占めるエネルギー比率として表現する。例えば、栄養組成物中の脂質に由来する熱量が、その組成物全体の熱量の50%に相当する場合、これを栄養組成物のエネルギー比率の50%を脂質が占める、と表現する。本発明の栄養組成物の熱量は、タンパク質、脂質、糖質の量を調節することにより、例えば1.0kcal/ml〜3.0kcal/ml、好ましくは、1.5〜2.5kcal/ml、より好ましくは1.5〜2.0kcal/mlとすることができる。本発明の栄養組成物は、例えばタンパク質を3.0〜6.0g/100kcal、好ましくは3.5〜5.5g/100kcal、より好ましくは4.0〜5.0g/100kcal相当量含むことができる。本発明の栄養組成物は、脂質を、栄養組成物中の脂質の占めるエネルギー比率が10〜40%、好ましくは、15〜35%、より好ましくは20〜30%となるように含むことができる。本発明の栄養組成物は、糖質を、栄養組成物中の糖質の占めるエネルギー比率が36〜78%、好ましくは43〜71%、より好ましくは50〜64%となるように含むことができる。本発明の栄養組成物は、上記所定の粘度を有しつつ、このような量のタンパク質、脂質、糖質を含有することができる。
前記原材料を一部または全てを調合した後に、必要に応じて均質化を行う。均質化とは、調合した各成分を十分混合することにより均質にし、また、脂肪球や他成分の粗大粒子を機械的に微細化して脂肪等の浮上・凝集を防止するとともに、栄養組成物を均一な乳化状態にすることをいう。均質化を行う際の均質処理圧を高くすると、加熱処理後の粘度を低下させることができ、かつ、セジメント(沈降粒子)の発生を低減せしめることが可能となる。つまり、均質処理圧を調整することで栄養組成物の粘度やセジメントの生成をコントロールすることが可能である。均質処理は通常、調整液を所定の圧力下で慣用の均質機を用いて攪拌することにより行う。本発明では、好ましくは均質処理圧10、25、40、60、100MPa等で均質化処理を行うことができるが、処理圧はこれらの例に限定されない。つまり、前記増粘剤および乳化剤の使用に加えて、均質処理圧10〜100MPaの均質化処理により、加熱処理および常温以下の温度による所定期間、例えば7日間の保存の後の組成物の粘度(B型粘度計、20℃、12rpm)を300〜3000mPa・s、例えば400〜3000mPa・sに調整することもできる。
原材料を調合した後の均質化処理は、任意の適当な温度で行うことができる。均質化処理は例えば20℃前後の室温で行うこともでき、また、これより高い温度、一例として20〜85℃、例えば45〜80℃、好ましくは45〜70℃、より好ましくは50℃〜60℃前後の温度で行うこともできる。好ましくは均質化処理は、50℃〜60℃前後の温度で行う。これにより均質化工程での組成物の粘度(B型粘度計、均質化処理の温度、12rpm)を好ましくは5〜300mPa・s程度に抑えることができる。
本発明の栄養組成物の製造においては加熱処理又は加熱殺菌を行う。加熱殺菌条件は、一般的な食品の殺菌条件を用いることができ、慣用の装置を用いて加熱殺菌を行うことができる。例えば、62〜65℃×30分、72℃以上×15秒以上、72℃以上×15分以上若しくは120〜150℃×1〜5秒の殺菌、または121〜124℃×5〜20分、105〜140℃の滅菌、レトルト(加圧加熱)殺菌、高圧蒸気滅菌等を使用することができるが、これらの例に限定されない。加熱殺菌は、好ましくは加圧下で行うことができる。加熱殺菌処理することにより殺菌できるとともに、栄養組成物の粘度を増加させることができる。本明細書において滅菌および殺菌は同義に用いることができる。また、レトルト殺菌は、加熱殺菌の一態様として用いることができる。
本発明の栄養組成物は、好ましくは、増粘剤および乳化剤ならびに任意に吸水性食物繊維および食品タンパク質を混合して加熱処理を行う前の粘度が5〜300mPa・s、好ましくは10〜200mPa・s、より好ましくは20〜100mPa・sであり、原材料の調合から容器に充填するまでの工程は製造が容易な粘度を維持することができる。前記粘度は、B型粘度計を用い、12rpm の条件で、45〜85℃、好ましくは45〜70℃、より好ましくは50〜60℃における粘度を測定した値である。また、加熱処理前の混合液の20℃における粘度(B型粘度計、12rpm )は5〜400mPa・s、好ましくは50〜300mPa・s、より好ましくは100〜300mPa・sである。加熱処理前の混合液の粘度が5mPa・s未満の場合には、混合液中の成分の沈降等の不都合が生じうる。逆に加熱処理前の混合液の粘度(B型粘度計、45〜85℃、12rpm)が300mPa・sを超えると、均質化工程の溶液操作が困難になる等の不都合を生じる。
本明細書において、加熱処理を行う前の粘度が5〜300mPa・sである、という場合、これは下限以上、上限未満までの範囲をいうものとする。すなわち、5〜300mPa・sとは、5 mPa・s以上、300 mPa・s未満を意味するものとする。
本発明の栄養組成物は、加熱処理の後に、さらに常温以下の温度で保存すると徐々に粘度(B型粘度計、20℃、12rpm)が高まり、一定の時間の経過後に粘度はほぼ安定する。組成物を保存する期間は、望まれる粘度に応じて、数時間〜半日、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、20日、30日、40日、50日、60日、70日、80日、90日等と適宜選択することができる。すなわち、本発明の組成物の加熱処理後の保存期間は、例えば1〜90日、好ましくは5〜60日、より好ましくは7〜30日、さらに好ましくは7日間とすることができる。本発明の好ましい実施形態の栄養組成物は、加熱処理後、常温以下の温度で保存すると約7日後(約1週間後)には粘度(B型粘度計、20℃、12rpm)がほぼ安定する。当業者であれば、慣用の手法を用いて、加熱処理後の組成物の粘度が一定するまでの時間を適宜決定することができる。
また、好ましくは、加熱処理し、さらに常温(15〜25℃)以下の温度で所定期間、例えば7日間保存した後の本発明の栄養組成物の粘度(B型粘度計、20℃、12rpm )は300〜3000 mPa・s、好ましくは400〜3000 mPa・s、好ましくは400〜2000 mPa・s、より好ましくは500〜1500 mPa・sである。本発明の栄養組成物の、加熱処理した後の保存は、0℃〜常温以下で行うのが好ましい。上記の粘度に調整することで、液状の栄養組成物を摂取者に投与する際に、従来から用いられた経管の自然落下投与による方法を用いることが可能となる。その結果、低粘度の栄養組成物を経管投与する際に問題となる胃食道逆流や、高粘度(例えば4000〜20000 mPa・s)の半固形状栄養組成物の投与で問題となるシリンジ注入等の煩雑さを解消し、簡便に投与することが可能となる。あるいは、乳化剤の種類、増粘剤等の他原料の含量、均質処理圧等を適宜調整すれば、4000 mPa・s以上の半固形流動食と同程度の粘度(B型粘度計、20℃、12rpm)の組成物を得ることも可能である。加熱処理および常温以下の温度での所定期間、例えば7日間保存により、組成物の粘度(いずれの時点も、B型粘度計、20℃、12rpmで測定した場合)は、加熱処理前のそれと比較して1.5〜20倍、好ましくは2〜12倍、より好ましくは3〜10倍になる。
本明細書において、加熱処理し、さらに常温以下の温度で所定期間保存した後の本発明の栄養組成物の粘度が300〜3000 mPa・sであるという場合、これは下限以上、上限未満までの範囲をいうものとする。すなわち、300〜3000 mPa・sとは、300 mPa・s以上、3000 mPa・s未満を意味するものとする。
本発明の栄養組成物の粘度は、慣用の方法により測定することができる。一例として、B型粘度計を用いて粘度を測定することができる(20℃〜85℃、12rpm)。
本発明の栄養組成物の粘度(20℃、12rpm)は、例えば「特別用途食品の表示許可基準:高齢者用食品の試験方法 3粘度(「高齢者用食品の表示許可の取扱いについて」(平成6年2月23日衛新第15号厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知))」に準じて行うことができる。具体的には、B型回転粘度計を用いて、12rpmでローターを回転させ、2分後の示度読み、その値に対応する係数を乗じて得た値をmPa・sで表す。測定は20±2℃で行う。
また、他の例として、ねじれ振動式粘度計、超音波粘度計、回転式粘度計等のインライン型粘度計を用いて製造工程中の粘度を適宜あるいは連続的に測定してもよい。
本発明の栄養組成物は、増粘剤のみならず乳化剤との相乗効果により、また、増粘剤、乳化剤および吸水性食物繊維の効果により、加熱処理し、さらに常温以下の温度で所定期間、例えば1〜90日、例えば7日間保存した後の粘度を高める効果を有する。そのため、主に増粘剤により粘度を高めた組成物と比べて、加熱処理を行う前の粘度を低く抑えることが可能である。つまり、本発明は、製造が容易でかつ、経管投与が容易な栄養組成物を提供するものである。一方で、例えば後述の実施例2の比較例1に示すように、乳化剤を含有せずに増粘剤を添加して製造した栄養組成物は、加熱処理を行う前の粘度(B型粘度計、20℃、12rpm)と比較して、加熱処理しさらに常温以下の温度で7日間保存しても高まらなかった。
ここで増粘剤と乳化剤との相乗効果とは、加熱処理し、さらに常温以下の温度で所定期間、例えば1〜90日、例えば7日間保存した後の粘度(B型粘度計、20℃、12rpm )が300〜3000 mPa・sの栄養組成物を製造するに際し、主に増粘剤により粘度を高めた栄養組成物の粘度と比べて、加熱処理を行う前の組成物の粘度が格段に低いにもかかわらず、加熱処理し、さらに常温以下の温度で所定期間、例えば1〜90日、例えば7日間保存すると、組成物の粘度を主に増粘剤により粘度を高めた栄養組成と同程度またはそれ以上とすることができることをいう。
また、本明細書における増粘剤、乳化剤および吸水性食物繊維の効果とは、加熱処理し、さらに常温以下の温度で所定期間、例えば1〜90日、例えば7日間保存した後の粘度(B型粘度計、20℃、12rpm)が300〜3000 mPa・sの栄養組成物を製造するに際し、主に増粘剤により粘度を高めた栄養組成物の粘度と比べて、かつ主に増粘剤および乳化剤により粘度を高めた栄養組成物の粘度と比べて、加熱処理を行う前の組成物の粘度が格段に低いにもかかわらず、加熱処理し、さらに常温以下の温度で所定期間、例えば1〜90日、例えば7日間保存すると、組成物の粘度を主に増粘剤により粘度を高めた栄養組成または主に増粘剤および乳化剤により粘度を高めた栄養組成物と同程度またはそれ以上とすることができることをいう。
本発明の栄養組成物は、その含有する増粘剤及び乳化剤及び吸水性食物繊維の配合の比率を適宜調整して、加熱処理し、その後常温以下の温度で所定期間、例えば1〜90日、例えば7日間保存した後に所定の粘度を有する栄養組成物を得ることができる。この粘度は栄養組成物に含まれるタンパク質や脂肪の含量や種類、殺菌前の脂肪粒径等の因子によって影響を受けるので、増粘剤及び乳化剤及び吸水性食物繊維の配合比を適宜調整することができる。
(実施例)
実施例1 増粘剤への乳化剤添加が組成物の粘度に与える影響
栄養組成物に、一定量の増粘剤、及び乳化剤の種類・配合比率を変えて添加し、組成物の粘度に与える影響を試験した。表1の配合表に従って原材料を攪拌・混合して、各種栄養組成物(製造例1〜4)を調合し、50〜60℃および均質処理圧20MPaの条件で均質化処理し、さらに50〜60℃および均質処理圧30MPaの条件で均質化処理を行った。この栄養組成物の粘度を測定し[レトルト殺菌前]、次いで栄養組成物を容器に充填して密封し、121〜123.5℃×5〜20分の条件でレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌後の栄養組成物を15℃×1週間保存した後に、再び粘度を測定した[レトルト殺菌後]。なお、デキストリンはコーンスターチ由来で、かつDEが20〜40のものを使用し、以降の実施例および比較例においても同じデキストリンを使用した。また、粘度の測定はB型粘度計を使用し、12rpm、20℃の条件で測定を行った。また、使用した食物繊維は難消化性デキストリンであった。なお、表2は、製造例1〜4の熱量、エネルギー比率を示したものである。
Figure 2012086593
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(結果)
結果を図1に示す。一定量の増粘剤の存在下において、乳化剤を添加した組成物のレトルト殺菌後の粘度はレトルト殺菌前の4.3〜8.2倍に高まり、乳化剤の配合比率に比例して粘度は高い値を示した。一方で、レトルト殺菌前の粘度は配合比率により大きな差は認められなかった。また、有機酸モノグリセリドの一種である、コハク酸モノグリセリド(SMG)、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(DATEM)はいずれも組成物のレトルト殺菌後の粘度を高める結果となった。このことから、増粘剤に有機酸モノグリセリドを添加することにより、レトルト殺菌後の組成物の粘度を飛躍的に高めることがわかった。すなわち、僅か0.16重量%の増粘剤を有する組成物であっても、有機酸モノグリセリドを添加することによる相乗効果の結果、一例として粘度が2000mPa・sを超える組成物が得られた。
実施例2 増粘剤への乳化剤添加が組成物の粘度に与える影響
上記実施例1と同様の手順で栄養組成物に、一定量の増粘剤、及び乳化剤の種類・配合比率を変えて添加し、組成物の粘度に与える影響を試験したが、その際、増粘剤としてカラギナンの代わりに低強度寒天を用いた。低強度寒天は、ゼリー強度(日寒水式)が1.5%の寒天濃度で30g/cm2である製品(伊那食品工業社製)を用いた。表3の配合表に従って低強度寒天等の原材料を攪拌・混合して、各種栄養組成物(製造例7、8)を調合し、50〜60℃および均質処理圧20MPaの条件で均質化処理し、さらに50〜60℃および均質処理圧30MPaの条件で均質化処理を行った。この栄養組成物の粘度を測定し[レトルト殺菌前]、次いで栄養組成物を容器に充填して密封し、121〜123.5℃×5〜20分の条件でレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌後の栄養組成物を15℃×1週間保存した後に、再び粘度を測定した[レトルト殺菌後]。なお、粘度の測定はB型粘度計を使用し、12rpm、20℃の条件で測定を行った。なお、用いた乳化剤はジアセチル酒石酸モノグリセリド(DATEM)であった。また、使用した食物繊維は難消化性デキストリンであった。なお、表4は、製造例7〜8の熱量、エネルギー比率を示したものである。
Figure 2012086593
Figure 2012086593
(結果)
低強度寒天を用いた場合の結果を図2に示す。一定量の増粘剤としての低強度寒天の存在下において、乳化剤を添加した組成物のレトルト殺菌後の粘度はレトルト殺菌前の約2.6〜2.9倍に高まり、乳化剤の配合比率が高い方が、加熱殺菌後の組成物の粘度は高い値を示した。一方で、レトルト殺菌前の粘度は配合比率により大きな差は認められなかった。このことから、本発明の栄養組成物に用いることのできる増粘剤はカラギナンに限定されるものではなく、低強度寒天を用いた場合にも同様の効果が得られることを示した。
比較例2−4 添加する乳化剤の種類について
実施例1と同様に、栄養組成物に、一定量の増粘剤、及び乳化剤を添加し、組成物の粘度に与える影響を試験した。その際、乳化剤として、大豆レシチン(比較例2)、大豆リゾレシチン(比較例3)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例4)を用いた。表5の配合表に従って原材料を攪拌・混合して、各種栄養組成物(比較例2〜4)を調合し、実施例1と同様の手順で均質化処理、レトルト殺菌等を行った。また、使用した食物繊維は難消化性デキストリンであった。
Figure 2012086593
(結果)
比較例2〜4の組成を用いた場合、いずれもレトルト殺菌後に組成物の乳化構造が破壊され、所望の粘度を有する栄養組成物は得られなかった。
実施例3 増粘剤の配合比率が組成物の粘度に与える影響
栄養組成物に、一定量の乳化剤に増粘剤の配合比率を変えて添加し、組成物の粘度に与える影響を試験した。表6の配合表に従って原材料を攪拌・混合して、各種栄養組成物(比較例1、製造例4〜6)を調合し、50〜60℃および均質処理圧20MPaの条件で均質化処理し、さらに均質処理圧30MPaで均質化処理を行った。この栄養組成物の粘度を測定し[レトルト殺菌前]、次いで栄養組成物を容器に充填して密封し、121〜123.5℃×5〜20分の条件でレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌後の栄養組成物を15℃×1週間保存した後に、再び粘度を測定した[レトルト殺菌後]。なお、粘度の測定はB型粘度計を使用し、12rpm、20℃の条件で測定を行った。また、使用した食物繊維は難消化性デキストリンであった。なお、表7は、比較例1、製造例4〜6の熱量、エネルギー比率を示したものである。
Figure 2012086593
Figure 2012086593
(結果)
結果を図3に示す。増粘剤を添加しない組成物(比較例1)ではレトルト殺菌前後で粘度の違いはほぼ認められなかったが、増粘剤を添加した組成物のレトルト殺菌後の粘度はレトルト殺菌前の6.8〜8.2倍に高まり、増粘剤の配合比率に比例して粘度は高い値を示した。このことから、有機酸モノグリセリドの存在する系へ増粘剤を添加することにより、レトルト殺菌後の組成物の粘度を飛躍的に高めることがわかった。また、増粘剤と乳化剤を添加した場合に、栄養組成物の粘度を増大させる相乗効果がもたらされることを実証した。
実施例4 均質処理圧が組成物の粘度等に与える影響
栄養組成物に一定量の増粘剤および乳化剤を添加し、均質処理圧を変えて均質化処理を行って組成物の粘度に与える影響を試験した。表8の配合表に従って原材料を攪拌・混合して、栄養組成物を調合し、50〜60℃および均質処理圧0、10、25、40、または60MPaの条件で均質化処理した。次いで栄養組成物を容器に充填して密封し、121〜123.5℃×5〜20分の条件でレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌後の栄養組成物を15℃×1週間保存した後に、再び粘度を測定した[レトルト殺菌後]。なお、粘度の測定はB型粘度計を使用し、12rpm、20℃の条件で測定を行った。また、レトルト殺菌後の組成物について、黒色ミルクセジメントディスク(33mmφ、アドバンテック東洋社製)を用い、「食品衛生検査指針 理化学編(社団法人 日本食品衛生協会発刊)」に従ったセジメント(沈降粒子)試験を行い、ディスク面に白色凝集物が10個未満の状態を合格、10個以上の状態を不合格として評価した。また、使用した食物繊維は難消化性デキストリンであった。なお、表9は、表8に示す配合の熱量、エネルギー比率を示したものである。
Figure 2012086593
Figure 2012086593
(結果)
結果を図4に示す。均質処理圧が高まるに従って、レトルト殺菌後の組成物の粘度は減少した。また、均質処理圧が25MPa以上ではセジメントを生じなかった。このことから、均質処理圧を調整することで、増粘剤および乳化剤を有する組成物のレトルト殺菌後の粘度やセジメントの発生を調整することが可能であることがわかった。
実施例5 乳化剤、及び吸水性食物繊維を有する組成物への増粘剤添加の組成物粘度に対する影響
一定量の吸水性食物繊維および乳化剤を有する栄養組成物に、増粘剤を添加し、組成物の粘度に与える影響を試験した。表10の配合表に従って原材料を攪拌・混合して、各種栄養組成物(製造例9)を調合し、50〜60℃および均質処理圧20MPaの条件で均質化処理し、さらに50〜60℃および均質処理圧30MPaの条件で均質化処理を行った。この栄養組成物の粘度を測定し[レトルト殺菌前]、次いで栄養組成物を容器に充填して密封し、121〜123.5℃×5〜20分の条件でレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌後の栄養組成物を15℃×1週間保存した後に、再び粘度を測定した[レトルト殺菌後]。なお、粘度の測定はB型粘度計を使用し、12rpm、20℃の条件で測定を行った。なお、用いた吸水性食物繊維は大豆食物繊維の不溶性繊維、乳化剤はジアセチル酒石酸モノグリセリド(DATEM)、増粘剤はカラギナンであった。なお、表11は、製造例9の熱量、エネルギー比率を示したものである。
Figure 2012086593
Figure 2012086593
(結果)
結果を図5に示す。増粘剤、乳化剤および吸水性食物繊維を添加した組成物のレトルト殺菌後の粘度はレトルト殺菌前の約8.4倍に高まった。
このことから、本発明の増粘剤および乳化剤を有する栄養組成物に吸水性食物繊維を用いることにより、増粘剤が少量しか存在しなくても、レトルト殺菌後の組成物の粘度を飛躍的に高められることがわかった。
実施例6 一定量の乳化剤および吸水性食物繊維を有する組成物への増粘剤添加比率が与える影響
一定量の吸水性食物繊維および乳化剤を有する栄養組成物に、増粘剤の配合比率を変えて添加し、組成物の粘度に与える影響を試験した。表12の配合表に従って原材料を攪拌・混合して、各種栄養組成物(製造例10、11、12)を調合し、50〜60℃および均質処理圧20MPaの条件で均質化処理し、さらに50〜60℃および均質処理圧30MPaの条件で均質化処理を行った。この栄養組成物の粘度を測定し[レトルト殺菌前]、次いで栄養組成物を容器に充填して密封し、121〜123.5℃×5〜20分の条件でレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌後の栄養組成物を15℃×1週間保存した後に、再び粘度を測定した[レトルト殺菌後]。なお、粘度の測定はB型粘度計を使用し、12rpm、20℃の条件で測定を行った。なお、用いた吸水性食物繊維は大豆食物繊維の不溶性繊維、乳化剤はジアセチル酒石酸モノグリセリド(DATEM)、増粘剤はカラギナンであった。なお、表13は、製造例10〜12の熱量、エネルギー比率を示したものである。
Figure 2012086593
Figure 2012086593
(結果)
結果を図6に示す。一定量の吸水性食物繊維および乳化剤の存在下において、添加する増粘剤の比率を増加させることにより、組成物のレトルト殺菌後の粘度は増大した。なお、レトルト殺菌前の粘度は、増粘剤の添加量にかかわらず、ほとんど変化は見られなかった。
実施例7 均質処理圧が組成物の粘度等に与える影響
栄養組成物に一定量の増粘剤、乳化剤及び吸水性食物繊維を添加し、均質処理圧を変えて均質化処理を行って組成物の粘度に与える影響を試験した。表14の配合表に従って原材料を攪拌・混合して、栄養組成物を調合し、50〜60℃および均質処理圧20、40、または60MPaの条件で均質化処理した。次いで栄養組成物を容器に充填して密封し、121〜123.5℃×5〜20分の条件でレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌後の栄養組成物を15℃×1週間保存した後に、再び粘度を測定した[レトルト殺菌後]。なお、粘度の測定はB型粘度計を使用し、12rpm、20℃の条件で測定を行った。なお、表15は、製造例13の熱量、エネルギー比率を示したものである。
Figure 2012086593
Figure 2012086593
(結果)
結果を図7に示す。均質処理圧が高まるに従って、レトルト殺菌後の組成物の粘度は減少した。このことから、均質処理圧を調整することで、増粘剤、乳化剤および吸水性食物繊維を有する組成物のレトルト殺菌後の粘度を調整することが可能であることがわかった。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (19)

  1. i) 増粘剤、及び
    ii) 乳化剤、を含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、粘性を有する栄養組成物。
  2. i) 栄養組成物に対して0.01〜1.0重量%の増粘剤、及び
    ii) 栄養組成物に対して0.02〜2.0重量%の乳化剤、を含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、請求項1記載の粘性を有する栄養組成物。
  3. i)増粘剤が、ローカストビーンガム、κ−カラギナン、ι−カラギナン、λ−カラギナン、カラギナン、ゼラチン、ローメトキシルペクチン、ハイメトキシルペクチン、ペクチン、タラガム、寒天、低強度寒天、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、プロピレングリコール、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースからなる群より選択される1種類または複数種類の増粘剤であり、
    ii)乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリドからなる群より選択される1種類または複数種類の乳化剤である、請求項1又は2記載の栄養組成物。
  4. i)増粘剤がカラギナンおよび/又は低強度寒天であり、
    ii)乳化剤がコハク酸モノグリセリドおよび/またはジアセチル酒石酸モノグリセリドである、請求項1〜3のいずれか1項記載の栄養組成物。
  5. 組成物の粘度が5〜300mPa・sであり、該組成物の粘度はB型粘度計を用いて45〜85℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の栄養組成物。
  6. 均質処理圧を10〜100MPaに調整して均質化処理を行った、請求項1〜5のいずれか1項記載の栄養組成物。
  7. 加熱処理し、さらに常温以下の温度で1〜90日保存することにより組成物の粘度が300〜3000mPa・sとなったものであり、該加熱処理し、さらに常温以下の温度で1〜90日保存後の組成物の粘度はB型粘度計を用いて20℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、請求項1〜6のいずれか1項記載の栄養組成物。
  8. 増粘剤及び、乳化剤を含み、増粘剤と乳化剤の重量比(乳化剤/増粘剤)が0.5〜30であり、加熱処理し、さらに常温以下の温度で1〜90日保存することにより粘度が上昇する性質を有する、粘性を有する栄養組成物。
  9. 吸水性食物繊維をさらに含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の栄養組成物。
  10. 栄養組成物に対して0.1〜3.0重量%の吸水性食物繊維を含み、加熱処理することにより粘度が上昇する性質を有する、請求項9に記載の粘性を有する栄養組成物。
  11. 吸水性食物繊維が、不溶性食物繊維であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の栄養組成物。
  12. 吸水性食物繊維が、大豆食物繊維の不溶性繊維および/又は大豆ふすまであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の栄養組成物。
  13. タンパク質、脂質、又は糖質からなる群のうち1つ又は複数を含有し、組成物の熱量が1.00〜3.00kcal/mlである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の栄養組成物。
  14. i)栄養組成物に対して0.01〜1.0重量%の増粘剤、及び栄養組成物に対して0.02〜2.0重量%の乳化剤の各成分を用意する工程、
    ii) 均質化のための圧処理工程、及び
    iii) 加熱処理工程、
    を含み、加熱処理前の組成物の粘度が5〜300mPa・sであり、該加熱処理前の組成物の粘度はB型粘度計を用いて45〜85℃、12rpmにて測定を行ったときのものであり、加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存の後の組成物の粘度が300〜3000mPa・sであり、該加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存後の組成物の粘度はB型粘度計を用いて20℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、粘性を有する栄養組成物の製造方法。
  15. i)栄養組成物に対して0.01〜1.0重量%の増粘剤、及び栄養組成物に対して0.02〜2.0重量%の乳化剤の各成分を用意する工程、
    ii) 均質化のための圧処理工程、及び
    iii) 加熱処理工程、
    を含み、加熱処理前の組成物の粘度が5〜300mPa・sであり、該加熱処理前の組成物の粘度はB型粘度計を用いて45〜85℃、12rpmにて測定を行ったときのものであり、均質化のための圧処理工程における均質処理圧が10〜100MPaであり、加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存の後の組成物の粘度が300〜3000mPa・sであり、該加熱処理および常温以下の温度による1〜90日の保存後の組成物の粘度はB型粘度計を用いて20℃、12rpmにて測定を行ったときのものである、粘性を有する栄養組成物の製造方法。
  16. 工程i)において、さらに栄養組成物に対して0.1〜3.0重量%の吸水性食物繊維を用意する、請求項14又は15に記載の方法。
  17. 吸水性食物繊維が、不溶性食物繊維であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  18. 吸水性食物繊維が、大豆食物繊維の不溶性繊維および/又は大豆ふすまであることを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
  19. タンパク質、脂質、又は糖質からなる群のうち1つ又は複数を含有し、製造される組成物の熱量が1.00〜3.00kcal/mlである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
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