実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における電力変換装置を適用した可変速モータ駆動システムの一例を示す回路図である。ダイオードクランプ型3レベル変換器103(以降、単に3レベル変換器103と称する。)により直流電力から変換された交流電力を三相モータ104に供給する例である。電力系統の三相系統電源101から供給された交流電力をダイオード整流回路102で直流電力に整流し、3レベル変換器103に供給する。ダイオード整流回路102は、三相系統電源101に接続される入力端子にリアクトル105が接続され、6つの整流ダイオード109を有する。3レベル変換器103は、正極の直流入力端子(正極直流端子)107P及び負極の直流入力端子(負極直流端子)107Nと、三相交流電力を出力するU相の交流出力端子108U、V相の交流出力端子108V及びW相の交流出力端子108Wを有する。直流入力端子107Pは、ダイオード整流回路102における正極の直流出力端子106Pに接続される。直流入力端子107Nは、ダイオード整流回路102における負極の直流出力端子106Nに接続される。3レベル変換器103は、ゲート駆動回路400により制御された交流電力を三相モータ104に供給する。
3レベル変換器103は、正極の直流入力端子107P及び負極の直流入力端子107Nの間に、直流コンデンサ111、112と、U相のレグ113Uと、V相のレグ113Vと、W相のレグ113Wとが接続される。U相のレグ113Uは、4つのスイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uと、4つのフリーホイリングダイオードFD1U、FD2U、FD3U、FD4Uと、2つのクランプダイオードCD1U、CD2Uを有する。同様に、V相のレグ113Vは、4つのスイッチング素子T1V、T2V、T3V、T4Vと、4つのフリーホイリングダイオードFD1V、FD2V、FD3V、FD4Vと、2つのクランプダイオードCD1V、CD2Vを有する。W相のレグ113Wは、4つのスイッチング素子T1W、T2W、T3W、T4Wと、4つのフリーホイリングダイオードFD1W、FD2W、FD3W、FD4Wと、2つのクランプダイオードCD1W、CD2Wを有する。ここでは、各スイッチング素子Tは、MOSFETであるものとして説明する。
ゲート駆動回路400は、ゲート信号制御部410とゲート駆動部420を有し、各相のレグ113U、113V、113Wの12個のスイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4U、T1V、T2V、T3V、T4V、T1W、T2W、T3W、T4Wの制御入力端子Gにゲート制御入力Vsigを出力する。制御入力端子G1U、G2U、G3U、G4U、G1V、G2V、G3V、G4V、G1W、G2W、G3W、G4Wに、ゲート制御入力Vsig1U、Vsig2U、Vsig3U、Vsig4U、Vsig1V、Vsig2V、Vsig3V、Vsig4V、Vsig1W、Vsig2W、Vsig3W、Vsig4Wが出力される。また、ゲート駆動回路400は、各スイッチング素子Tの過電流を検出する電流センサ(図8参照)からのセンサ信号Ssig1U、Ssig2U、Ssig3U、Ssig4U、Ssig1V、Ssig2V、Ssig3V、Ssig4V、Ssig1W、Ssig2W、Ssig3W、Ssig4Wが入力される。
図2を用いて、3レベル変換器103の1相分のレグを詳細に説明する。図2は、電力変換装置における1相(U相)のレグを示す回路図である。前述したように3レベル変換器103は、直流コンデンサ111および112を直列に接続し、その直列体(コンデンサ直列体)の正極側P0を直流入力端子107Pに接続し、そのコンデンサ直列体の負極側N0を直流入力端子107Nに接続する。直流コンデンサ111、112の相互接続点である中性点C0とする。
レグ113Uはブリッジ回路を構成する。4つのスイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uを直列接続した直列体は、この直列体(スイッチ直列体)の正極側PUを直流入力端子107Pに接続し、このスイッチ直列体の負極側NUを直流入力端子107Nに接続する。スイッチ直列体の正極側PUはスイッチング素子T1Uのドレインに相当し、スイッチ直列体の負極側NUはスイッチング素子T4Uのソースに相当する。スイッチング素子T1U、T2Uは上側アームを構成し、スイッチング素子T3U、T4Uは下側アームを構成する。スイッチ直列体内では、正極側のスイッチング素子のソースと負極側のスイッチング素子のドレインとが接続される。このように各スイッチング素子の端子を正極側と負極側を同一にする、すなわちドレインが正極側で、ソースが負極側にする。ここで、このようにドレインが正極側で、ソースが負極側にする接続を同一極性の接続ということにする。4つのフリーホイリングダイオードFD1U、FD2U、FD3U、FD4Uは、それぞれスイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uのソースとドレイン間に、フリーホイリングダイオードFDのアノードをスイッチ直列体の負極側であるソースに、カソードをスイッチ直列体の正極側であるドレインに接続する。すなわち、フリーホイリングダイオードFDは、スイッチ直列体の極性と逆方向(逆極性)に、スイッチング素子Tと並列に接続される。スイッチング素子Tとこのスイッチング素子Tのソース・ドレイン間に逆方向に接続されたフリーホイリングダイオードFDは、1つのペアを構成する。
スイッチング素子T1U及びフリーホイリングダイオードFD1U、スイッチング素子T2U及びフリーホイリングダイオードFD2U、スイッチング素子T3U及びフリーホイリングダイオードFD3U、スイッチング素子T4U及びフリーホイリングダイオードFD4Uは、それぞれ1つのペアである。これらの4つのペアを同一極性で直列に接続し、ブリッジ回路を構成する。各スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uのゲート端子G1U、G2U、G3U、G4Uには、ゲート駆動回路400のゲート制御入力Vsig1U、Vsig2U、Vsig3U、Vsig4Uが入力される。
ブリッジ回路のドレイン側、すなわちスイッチ直列体の正極側PUはコンデンサ直列体の正極側P0に接続され、ブリッジ回路のソース側、すなわちスイッチ直列体の負正極側NUはコンデンサ直列体の負極側N0に接続される。また、スイッチング素子T1U、T2Uの相互接続点には、クランプダイオードCD1Uのカソード端子を接続し、クランプダイオードCD1Uのアノード端子は、コンデンサ直列体の中性点C0に接続する。一方、スイッチング素子T3U、T4Uの相互接続点には、クランプダイオードCD2Uのアノード端子を接続し、クランプダイオードCD2Uのカソード端子は、コンデンサ直列体の中性点C0に接続する。クランプダイオードCD1UとクランプダイオードCD2Uの接続点は中性点CUとなる。上側アームと下側アームの接続点、すなわちスイッチ直列体のスイッチング素子T2U、T3Uの相互接続点は交流出力端子108Uに接続される。他のレグ113V、113Wも同様に構成される。なお、交流出力端子108、108U、108V、108Wは、それぞれ適宜、交流端子108、108U、108V、108Wと呼ぶことにする。
図3〜図5を用いて、3レベル変換器103のレグ113の出力状態を説明する。図3はレグ113Uの第1の状態を示す回路図であり、図4はレグ113Uの第2の状態を示す回路図であり、図5はレグ113Uの第3の状態を示す回路図である。スイッチング素子Tのオン・オフ状態とコンデンサ直列体の中性点C0から見た交流端子108Uの電位の関係を図示したものである。コンデンサ直列体の中性点C0に基準電位Vssが接続され、コンデンサ直列体の正極側P0と中性点C0との間に直流電圧Vdcが印加され、コンデンサ直列体の負極側N0と中性点C0との間に直流電圧Vdcが印加される場合を示している。
図3に示すように、スイッチング素子T1U、T2Uをオン状態、スイッチング素子T3U、T4Uをオフ状態に制御すると、交流端子108Uの電位Vacは+Vdcとなる。次に、図3の状態から図4の状態に変更する。図4に示すように、スイッチング素子T2U、T3Uをオン状態、スイッチング素子T1U、T4Uをオフ状態に制御すると、クランプダイオードCD1U、CD2Uにより基準電位Vssに固定され、交流端子108Uの電位Vacは0Vとなる。さらに、図4の状態から図5の状態に変更する。図5に示すように、スイッチング素子T3U、T4Uをオン状態、スイッチング素子T1U、T2Uをオフ状態に制御すると、交流端子108Uの電位Vacは−Vdcとなる。
3レベル変換器103は、図3〜図5に示す3つのパターンを切り替えることにより、交流端子108Uの電位を制御するものであって、図3〜図5のパターンで動作させている限り、オフ状態のスイッチング素子Tのドレイン・ソース間に印加される電圧は、クランプダイオードCD1U、CD2Uによって、スイッチ直列体の正極側P0と負極側N0の両端電圧の+2Vdcではなく、スイッチ直列体の正極側P0と中性点C0の両端電圧、またはスイッチ直列体の中性点C0と負極側N0の両端電圧の+Vdcとなる。これとは異なり、コンデンサ直列体を有しない2レベル変換器では、スイッチ直列体の正極側P0と負極側N0の両端電圧の+2Vdcがオフ状態のスイッチング素子に印加される。したがって、実施の形態1の3レベル変換器103は、2レベル変換器と比較して、スイッチング素子TおよびフリーホイリングダイオードFDの素子耐圧を低く設計できる利点がある。
次に、本発明の特徴的な点について説明する。第1の特徴は、スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uのうち、直流側のスイッチング素子T1U、T4Uの特性が交流側のスイッチング素子T2U、T3Uの特性とは異なることである。また、第2の特徴は、ゲート制御信号Gsig(図8参照)が変化してから、直流側のスイッチング素子T1U、T4Uのオン・オフ状態が実際に変化するまでの時間が、交流側のスイッチング素子T2U、T3Uのオン・オフ状態が実際に変化するまでの時間とは異なることである。
まず、第1の特徴であるスイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uの特性について説明する。図6は、スイッチング素子の伝達特性の一例を示すグラフである。縦軸はドレイン電流Idであり、横軸はゲート・ソース間電圧Vgsである。ドレイン・ソース間電圧Vdsが10Vの場合である。直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uと、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uの伝達特性の例を示している。伝達特性301は交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uの伝達特性であり、伝達特性302は直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uの伝達特性である。本発明では、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vgs(th)(以降、単にVthと略す。)の方が、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthよりも低いことを特徴とする。図6の例では、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthが、高しきい値電圧VthH、すなわち約5Vである。これに対して、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthは、低しきい値電圧VthL、すなわち約3Vである。
図7は、スイッチング素子の出力特性の一例を示すグラフである。直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uと、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uの出力特性の例を示している。縦軸はドレイン電流Idであり、横軸はドレイン・ソース間電圧Vdsである。ゲート・ソース間電圧Vgsが15Vの場合である。本発明の特徴は、前述のように交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthの方が、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthよりも低いことである。図7に示すように、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthとオン状態のドレイン・ソース間電圧Vdsは依存関係があり、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthの低いスイッチング素子の方(特性303)が、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthの高いスイッチング素子の方(特性304)よりもオン状態のドレイン・ソース間電圧Vdsも低い。これは、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthの低いスイッチング素子の方が、導通損失が小さいことを意味している。図3〜図5で図示したように、3レベル変換器103においては、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uは、少なくともどちらか一方が導通しているのに対して、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uは、図4のように両方のスイッチング素子ともに導通しない状態がある。すなわち、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uの方が電流の通流時間が長い。本発明において、電流の通流時間が長い交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uは、相対的にゲート・ソース間しきい値電圧Vthが低くて導通損失の小さいスイッチング素子であるので、電力変換装置の電力損失を小さくすることができる。
次にゲート駆動回路400について説明する。図8は、3レベル変換器103のスイッチング素子のゲート駆動回路の一例を示す図である。図8では、1個のスイッチング素子T1とスイッチング素子T1に接続されたフリーホイリングダイオードFD1のみを記載した。G1、S1、D1はスイッチング素子T1のゲート端子、ソース端子、ドレイン端子である。ゲート駆動回路400は、ゲート信号制御部410とゲート駆動部420を有する。スイッチング素子T1の駆動は、まず、ゲート信号制御部410によってゲート制御信号Gsig1を生成し、ゲート駆動部420に出力される。ゲート信号制御部410は、3レベル変換器103のレグ113(主回路)のスイッチング素子T1がオフ状態に対応するローレベル(例えば0V)のゲート制御信号Gsig1、または、スイッチング素子T1がオン状態に対応するハイレベル(例えば+5V)のゲート制御信号Gsig1をゲート駆動部420に出力するものであり、直接的に主回路のスイッチング素子T1のゲート・ソース間に電圧を印加してするものではない。ゲート駆動部420は、ゲート制御信号Gsig1を受けて、スイッチング素子T1を駆動するゲート制御入力Vsig1を出力する。
ゲート信号制御部410は、PWM制御部401と保護動作部402を有する。PWM制御部401は、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行う制御信号を生成する。保護動作部402は、スイッチング素子T1の電流を検出する電流センサ440により検出されたセンサ信号Ssig1を受ける。保護動作部402は、センサ信号Ssig1が所定の判定基準を超えたと判定した場合、すなわち過電流が流れたと判定した場合に、PWM制御を行う制御信号に代えて、スイッチング素子T1を破壊しないように電流遮断を行う保護動作の制御信号をゲート制御信号Gsig1としてゲート駆動部420に出力する。
上記ゲート制御信号Gsig1が入力されるゲート駆動部420は、入力されたゲート制御信号Gsig1をもとに、主回路のスイッチング素子T1がオンまたはオフするのに必要なゲート・ソース間電圧に変換し、ゲート抵抗Rgを介して、主回路のスイッチング素子T1のゲート・ソース間に電圧を印加する。例えば、主回路のスイッチング素子T1をオフ状態に制御するゲート・ソース間電圧(VgL)は−8Vであり、オン状態に制御するゲート・ソース間電圧(VgH)は+15Vである。
ここで重要なことは、ゲート信号制御部410がゲート制御信号Gsig1をオフ状態からオン状態に変化させても、実際には、ゲート駆動部のゲート抵抗Rgとスイッチング素子T1のゲート・ソース間の浮遊容量Cgsが存在するので、ゲート駆動部420のトーテムポール回路421の出力電圧を限りなく短い時間で−8Vから+15Vに変化させても、その主回路のスイッチング素子T1のゲート・ソース間電圧は、ゲート抵抗Rgと浮遊容量Cgsで決定される時定数で電圧が変化し、スイッチング素子T1の伝達特性によって決まるゲート・ソース間電圧に達したときに、初めてオフ状態からオン状態に遷移する。スイッチング素子T1は、ドレイン・ゲート間に浮遊容量Cdgが存在する。この浮遊容量Cdgは後述するスイッチング素子T1の出力特性に影響する。
ゲート駆動部420は、ゲート制御信号Gsig1を受けるバッファ422と、前述のVgHとVgLを出力するレベル変換回路を有する。レベル変換回路は、抵抗423、424、スイッチング素子425、426、フリーホイリングダイオード427、428、直流コンデンサ429、430を有する。スイッチング素子425及びフリーホイリングダイオード427と、スイッチング素子426及びフリーホイリングダイオード428はスイッチング素子T1及びフリーホイリングダイオードFD1と同様に接続される。2つの直流コンデンサ429、430を直列接続したコンデンサ直列体と、2つのスイッチング素子425、426を直列接続したスイッチ直列体は、それぞれ正極側、負極側が接続される。この正極側には、図示しない正電圧電源VHが接続され、負極側には図示しない負電圧電源VLが接続される。正電圧電源VHは、基準電位Vssに対してVgH(+15V)の電圧を供給する。負電圧電源VLは、基準電位Vssに対してVgL(−8V)の電圧を供給する。
前述した本発明の第2の特徴について詳しく説明する。第2の特徴は、ゲート制御信号Gsigが変化してから、直流側のスイッチング素子T1U、T4Uのオン・オフ状態が実際に変化するまでの時間が、交流側のスイッチング素子T2U、T3Uのオン・オフ状態が実際に変化するまでの時間とは異なることである。
ここで説明するスイッチング素子の特性は、図9に示すように、3レベル変換器103のレグ113全体の特性ではなく、スイッチング素子T1及びフリーホイリングダイオードFD1がそれぞれ1つの場合で説明する。図9は、スイッチング素子のオン特性及びオフ特性を計測する回路図である。スイッチング素子T1のドレイン端子D1には直流電圧Vdd(+300V)が印加されるとともに200Aのドレイン電流Idが供給され、スイッチング素子T1のソース端子S1には基準電位Vss(0V)が印加される。
図10は、スイッチング素子のターンオフの一例を示す波形である。図10(a)はゲート制御信号Gsigの波形であり、図10(b)は交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間電圧Vgsの波形であり、図10(c)は交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのドレイン・ソース間電圧Vdsの波形である。図10(d)は直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのゲート・ソース間電圧Vgsの波形であり、図10(e)は直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのドレイン・ソース間電圧Vdsの波形である。時刻t0でゲート制御信号Gsigがオン状態(5V)からオフ状態(0V)に変化してから、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uと直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uが完全にオフ状態となるまで時間、すなわち、ターンオフ時間toffを比較している。図10は、例としてドレイン電流Idが200A、オフ状態のドレイン・ソース間電圧が300Vを例としている。ゲート制御信号が5Vから0Vに変化したのとほぼ同時に、トーテムポール回路421の出力電圧は15Vから−8Vに変化する。しかし、主回路のスイッチング素子T1のゲート・ソース間電圧Vgsは、ゲート抵抗Rgとスイッチング素子T1の浮遊容量Cgsによって決まる時定数で減少を開始する。ここで、主回路のスイッチング素子T1は、伝達特性により決定されるミラー電圧Vmと呼ばれる電圧に達した時にスイッチング動作を開始し、以後のミラー期間tmと呼ばれる期間で浮遊容量Cdgを充電することで、主回路のスイッチング状態が変化する。
ミラー電圧Vmは、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthと依存関係にあり、図6のドレイン電流Idが200A時を例にすると、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthの低い交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのミラー電圧Vm1が5V、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthの高い直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのミラー電圧Vm2が7.2Vである。図10(b)、(d)に示すようにゲート・ソース間電圧がVgHレベルの15Vから低下し、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uは時刻t1でミラー電圧Vm2に達し、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uは時刻t3でミラー電圧Vm1に達する。直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uの方が交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uよりも早くミラー電圧Vmに達する。図10(c)、(e)に示すように、先にミラー電圧Vmに達する直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uが時刻t1からスイッチング動作を開始し、その後に交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uが遅れて時刻t3からスイッチング動作を開始する。
ミラー期間tmでは、トーテムポール回路421の出力電圧がゲート抵抗Rgを介して浮遊容量Cdgを放電することによって、スイッチング動作を行う。よって、浮遊容量Cdgを放電する電流が、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uは(5V+8V)/Rgであるのに対して、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uは(7.2V+8V)/Rgであるので、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uの方が、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uよりも放電電流が大きい。そのため、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uは、浮遊容量Cdgの放電を完了する時間が相対的に短い時間であるため、ミラー期間tmが短い。よって、先にミラー電圧Vmに達してミラー期間tmも短い、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthの高い直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uの方が、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uよりもターンオフ時間は短い。すなわち、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uは時刻t1からt2までミラー電圧Vm2が一定となり、時刻t2でターンオフする。交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uは時刻t3からt4までミラー電圧Vm1が一定となり、時刻t4でターンオフする。
ここで、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのターンオフ時におけるミラー期間tmをtmac(オフ)とし、このときのターンオフ時間toffをtoffacとする。直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのターンオフ時におけるミラー期間tmをtmdc(オフ)とし、このときのターンオフ時間toffをtoffdcとする。交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uと直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのターンオフ時間toffの関係を数式で表わせば、toffdc<toffacとなる。
図11を用いて、基準電位が正の場合におけるゲート信号制御部410に組み込まれるPWM制御部401の動作の一例として三角波キャリア比較を説明する。図11は基準電位が正の場合におけるPWM制御部の動作の一例を示す波形である。図11(a)は三角波キャリアVcarと規格化された電圧指令値Vcntの絶対値の波形である。図11(b)は図2に示した3レベル変換器103の直流端子側スイッチング素子T1Uに対するゲート制御信号Gsig1の波形であり、図11(c)は3レベル変換器103の交流端子側スイッチング素子T2Uに対するゲート制御信号Gsig2の波形である。図11(d)は3レベル変換器103の交流端子側スイッチング素子T3Uに対するゲート制御信号Gsig3の波形であり、図11(e)は3レベル変換器103の直流端子側スイッチング素子T4Uに対するゲート制御信号Gsig4の波形である。図11(f)は交流端子108Uの出力波形Vacである。
PWM制御部401は、まず図1の三相モータ104を所要のトルク、または速度に制御するために、交流端子108U、108V、108Wの電圧指令値Vrefが図示しない電圧指令値生成回路によって作成される。PWM制御部401は、電圧指令値Vrefを一方の直流コンデンサ111(112)の電圧Vdcで除してVref/Vdcを計算して規格化し、その絶対値ABS(Vref/Vdc)を計算する。ABS(Vref/Vdc)はVcntである。さらにこの規格化された電圧指令値の絶対値ABS(Vref/Vdc)と、規格化された数値0から1まで変化する三角波キャリアVcarとの比較を行う。
図11を用いて、図3の状態(Vac=+Vdc)、図4の状態(Vac=0V)を交互に繰り返す場合を説明する。PWM制御部401は、交流端子108Uの電位Vacが+Vdcまたは0となる状態の時間比率を切り替えることにより、1制御周期の平均電圧がVrefと等しくなるように制御を行う。このため、スイッチング素子T2Uのゲート制御信号Gsig2を5VのHレベル(スイッチング素子Tをオンにする)、スイッチング素子T4Uのゲート制御信号Gsig4を0VのLレベル(スイッチング素子Tをオフにする)とし、スイッチング素子T1U、T3Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig3は電圧指令値Vrefの大きさに応じてHレベル(オンレベル)/Lレベル(オフレベル)すなわちスイッチング素子Tのオン/オフを切り替える。
図11(a)において、三角波キャリアVcarは時刻t11、t13、t15、t17、t19で数値の変化する方向が変化する。三角波キャリアVcarの値が0から1へ増加する変化点は、時刻t11、t15、t19である。三角波キャリアVcarの値が1から0へ減少する変化点は、時刻t13、t17である。時刻t12、t14、t16、t18、t20にて、三角波キャリアVcarと規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが交差する。
規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarの値よりも大きい場合は、スイッチング素子T1Uのゲート制御信号Gsig1をオンレベルとし、スイッチング素子T3Uのゲート制御信号Gsig3をオフレベルとする。その結果、直流コンデンサ111及び直流コンデンサ112のコンデンサ直列体における中性点C0を基準とした交流端子電位Vacは、図3のように+Vdcとなる。交流端子電位Vacは、ゲート制御信号Gsig1、Gsig3が変化してから、後述する所定の遅延時間経過後に+Vdcとなる。規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarよりも大きい場合は、図11において、時刻t12までの期間、時刻t14から時刻t16の期間、時刻t18から時刻t20の期間が該当する。
一方、規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarの値よりも小さい場合は、スイッチング素子T1Uのゲート制御信号Gsig1をオフレベルとし、スイッチング素子T3Uのゲート制御信号Gsig3をオンレベルとする。その結果、直流コンデンサ111及び直流コンデンサ112のコンデンサ直列体における中性点C0を基準とした交流端子電位Vacは、図4のように0Vとなる。交流端子電位Vacは、ゲート制御信号Gsig1、Gsig3が変化してから、後述する所定の遅延時間経過後に0Vとなる。規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarよりも小さい場合は、図11において、時刻t12から時刻t14の期間、時刻t16から時刻t18の期間、時刻t20以降の期間が該当する。
このように、交流端子108Uの電位Vacを+Vdcと0Vとで切り替えることにより、交流端子108Uの1制御周期の平均電圧を、電圧指令値Vrefと等しく制御することができる。
図11のPWM制御部の動作におけるスイッチング素子の切替えタイミングを説明する。図12はスイッチング素子のスイッチング波形の一例であり、図13はスイッチング素子の他のスイッチング波形の一例である。図12(a)〜図12(c)はスイッチング素子T1U(T4U)の波形であり、図12(d)〜図12(f)はスイッチング素子T3U(T2U)の波形である。図12(a)、図12(d)はゲート制御信号Gsigの波形であり、図12(b)、図12(e)はゲート・ソース間電圧Vgsの波形であり、図12(c)、図12(f)はドレイン・ソース間電圧Vdsの波形である。図13(a)〜図13(c)はスイッチング素子T1U(T4U)の波形であり、図13(d)〜図13(f)はスイッチング素子T3U(T2U)の波形である。図13(a)、図13(d)はゲート制御信号Gsigの波形であり、図13(b)、図13(e)はゲート・ソース間電圧Vgsの波形であり、図13(c)、図13(f)はドレイン・ソース間電圧Vdsの波形である。図12はスイッチング素子T1U(T4U)をオンからオフにし、スイッチング素子T3U(T2U)をオフからオンにする場合であり、図11の時刻t12、t16、t20におけるスイッチング素子の切替えタイミングに相等するものである。図13はスイッチング素子T1U(T4U)をオフからオンにし、スイッチング素子T3U(T2U)をオンからオフにする場合であり、図11の時刻t14、t18におけるスイッチング素子の切替えタイミングに相等するものである。
図12を用いて、図11の時刻t12、t16、t20におけるスイッチング素子の切替えタイミングを説明する。直流端子側スイッチング素子T1Uは、ゲート・ソース間しきい値電圧Vth(7.2V)が交流端子側スイッチング素子T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vth(5V)にくらべて相対的に高いため、電圧変化が7.8V(15V−7.2V)であり、先にオンからオフ状態への変化を開始する(時刻t1)。これに対し、交流端子側スイッチング素子T3Uは、ゲート・ソース間しきい値電圧Vth(5V)が低いが、トーテムポール回路421の出力電圧が負バイアスの−8Vから+15Vに変化するため、電圧変化が13V(5V−(−8V))であり、直流端子側スイッチング素子T1Uより遅れてオフからオン状態へ変化を開始する(時刻t5)。その結果、ゲート制御信号Gsig1とGsig3を同時に変化させても、直流端子側スイッチング素子T1Uがミラー期間tmdc(オフ)経過後、先にオンからオフ状態に変化し(時刻t2)、交流端子側スイッチング素子T3Uがミラー期間tmac(オン)経過後、遅れてオフからオン状態に変化する(時刻t6)。したがって、スイッチング素子T1U、T2U、T3Uが同時にオンとなる状態が存在しないので、直流コンデンサ111の電圧Vdcがスイッチング素子T1U、T2U、T3UとクランプダイオードCD2Uによって短絡されることがない。したがって、過電流によるスイッチング素子T1U、T2U、T3U、およびクランプダイオードCD2Uの素子破壊を防止することができる。
図12に示すように、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのターンオン時間tonacと直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのターンオフ時間toffdcの関係は、数式で表わせば、toffdc<tonacとなる。
図13を用いて、図11の時刻t14、t18におけるスイッチング素子の切替えタイミングを説明する。交流端子側スイッチング素子T3Uは、ゲート・ソース間しきい値電圧Vth(5V)が直流端子側スイッチング素子T1Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vth(7.2V)にくらべて低いため、オンからオフ状態の変化の開始タイミングだけで比較すると遅くなるが、オンからオフ状態の変化する電圧変化が10V(15V−5V)であり、直流端子側スイッチング素子T1Uよりも先にオンからオフ状態への変化を開始する(時刻t3)。これに対し、直流端子側スイッチング素子T1Uは、ゲート・ソース間しきい値電圧Vth(7.2V)が高く、トーテムポール回路421の出力電圧が負バイアスの−8Vから+15Vに変化するため、電圧変化が15.2V(7.2V−(−8V))であり、交流端子側スイッチング素子T3Uの状態変化よりもさらに遅れて、オフからオン状態に変化を開始する(時刻t7)。その結果、ゲート制御信号Gsig1とGsig3を同時に変化させても、交流端子側スイッチング素子T3Uがミラー期間tmac(オフ)経過後、先にオンからオフ状態に変化し(時刻t4)、直流端子側スイッチング素子T1Uがミラー期間tmdc(オン)経過後、遅れてオフからオン状態に変化する(時刻t8)。したがって、スイッチング素子T1U、T2U、T3Uが同時にオンとなる状態が存在しないので、直流コンデンサ111の電圧Vdcがスイッチング素子T1U、T2U、T3UとクランプダイオードCD2Uによって短絡されることがない。したがって、過電流によるスイッチング素子T1U、T2U、T3U、およびクランプダイオードCD2Uの素子破壊を防止することができる。
図13に示すように、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのターンオン時間tondcと交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのターンオフ時間toffacの関係は、数式で表わせば、toffac<tondcとなる。
以上のように実施の形態1の3レベル変換器103は、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthを交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthよりも高くしたので、直流コンデンサ111の電圧Vdcがスイッチング素子T1U、T2U、T3UとクランプダイオードCD2Uによって短絡されることがない。したがって、過電流によるスイッチング素子T1U、T2U、T3U、およびクランプダイオードCD2Uの素子破壊を防止することができる。
次に図14を用いて、基準電位が負の場合におけるゲート信号制御部410に組み込まれるPWM制御部401の動作の一例として三角波キャリア比較を説明する。図14は基準電位が負の場合におけるPWM制御部の動作の一例を示す波形である。図14(a)は三角波キャリアVcarと規格化された電圧指令値Vcntの絶対値の波形である。図14(b)は図2に示した3レベル変換器103の直流端子側スイッチング素子T1Uに対するゲート制御信号Gsig1の波形であり、図14(c)は3レベル変換器103の交流端子側スイッチング素子T2Uに対するゲート制御信号Gsig2の波形である。図14(d)は3レベル変換器103の交流端子側スイッチング素子T3Uに対するゲート制御信号Gsig3の波形であり、図14(e)は3レベル変換器103の直流端子側スイッチング素子T4Uに対するゲート制御信号Gsig4の波形である。図14(f)は交流端子108Uの出力波形Vacである。図11とは、ゲート制御信号Gsig1がオフレベルであり、ゲート制御信号Gsig3がオンレベルであり、ゲート制御信号Gsig2、Gsig4を変化させて、出力波形Vacの波形が反転して点で異なる。
電圧指令値Vrefが負の場合は、図4と図5の状態の切り替えを行うことになる。図14(a)において、三角波キャリアVcarは時刻t21、t23、t25、t27、t29で数値の変化する方向が変化する。三角波キャリアVcarの値が0から1へ増加する変化点は、時刻t21、t25、t29である。三角波キャリアVcarの値が1から0へ減少する変化点は、時刻t23、t27である。時刻t22、t24、t26、t28、t30にて、三角波キャリアVcarと規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが交差する。
規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarの値よりも大きい場合は、スイッチング素子T2Uのゲート制御信号Gsig2をオフレベルとし、スイッチング素子T4Uのゲート制御信号Gsig4をオンレベルとする。その結果、直流コンデンサ111及び直流コンデンサ112のコンデンサ直列体における中性点C0を基準とした交流端子電位Vacは、図5のように−Vdcとなる。交流端子電位Vacは、ゲート制御信号Gsig2、Gsig4が変化してから、上述の所定の遅延時間経過後に−Vdcとなる。規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarよりも大きい場合は、図14において、時刻t22までの期間、時刻t24から時刻t26の期間、時刻t28から時刻t30の期間が該当する。
一方、規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarの値よりも小さい場合は、スイッチング素子T2Uのゲート制御信号Gsig2をオンレベルとし、スイッチング素子T4Uのゲート制御信号Gsig4をオフレベルとする。その結果、直流コンデンサ111及び直流コンデンサ112のコンデンサ直列体における中性点C0を基準とした交流端子電位Vacは、図4のように0Vとなる。交流端子電位Vacは、ゲート制御信号Gsig2、Gsig4が変化してから、上述の所定の遅延時間経過後に0Vとなる。規格化された電圧指令値の絶対値Vcntが三角波キャリアVcarよりも小さい場合は、図14において、時刻t22から時刻t24の期間、時刻t26から時刻t28の期間、時刻t30以降の期間が該当する。
このように、電圧指令値Vrefが負の場合も、電圧指令値Vrefが正の場合と同様に、交流端子108Uの電位Vacを−Vdcと0Vとで切り替えることにより、交流端子108Uの1制御周期の平均電圧を、電圧指令値Vrefと等しく制御することができる。また、スイッチング素子T2U、T3U、T4Uが同時にオンとなる状態が存在しないので、直流コンデンサ112の電圧VdcがクランプダイオードCD1Uとスイッチング素子T2U、T3U、T4Uによって短絡されることがない。したがって、過電流によるスイッチング素子T2U、T3U、T4U、およびクランプダイオードCD1Uの素子破壊を防止することができる。
また、本発明の特徴である直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uと交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのターンオフ・ターンオン特性の違いは、ゲート信号制御部410に組み込まれる保護動作部402とも関連する。以下に保護動作部402の動作を説明する。
外部からのノイズが誤動作を引き起こし、全てのスイッチング素子がオン状態になった場合を考える。図15は、電力変換装置における誤動作を説明する図である。ここでは、外部からのノイズが誤動作を引き起こし、全てのスイッチング素子がオン状態になった場合を仮定している。このとき、直流コンデンサ111及び直流コンデンサ112の直列体における両端の電圧2Vdcが、スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uにより短絡状態になるので、大きな短絡電流Isがスイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uに流れる。図8に示した電流センサ440により、スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uに流れる大きな短絡電流Isを検出する。保護動作部402は、スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uの電流を検出する電流センサ440により検出されたセンサ信号Ssig1〜Ssig4を受ける。保護動作部402は、センサ信号Ssig1〜Ssig4が所定の判定基準を超えたと判定した場合、すなわち過電流が流れたと判定した場合に、PWM制御を行う制御信号に代えて、スイッチング素子T1U〜T4Uを破壊しないように電流遮断を行う保護動作の制御信号をゲート制御信号Gsig1〜Gsig4としてゲート駆動部420に出力する。このように、ゲート信号制御部410はPWM制御部401よりも保護動作部402のゲート制御信号の出力を優先する。
実施の形態1の3レベル変換器103は、本発明の素子特性の違いを十分に活用し、全ての素子のゲート制御信号を同時にオフするような保護動作を行うことができる。全ての素子のゲート制御信号を同時にオフするような保護動作を行う。前述の通り、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthが直流端子側素子T1U、T4Uの方が交流端子側素子T2U、T3Uよりも大きいため、直流端子側素子T1U、T4Uのターンオフ時間toffは相対的に短いため、すべての素子T1U、T2U、T3U、T4Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig2、Gsig3、Gsig4を同時にオフしたとしても、従来と同様に、先に直流端子側素子T1U、T4Uがオフし、過電圧が交流端子側素子T2U、T3Uに印加されることがなく、交流端子側素子T2U、T3Uの過電圧による素子破壊を防止することができる。
3レベル変換器103では、PWM動作において常に、交流端子側素子T2U、T3Uのどちらかには電流が流れるので、低Vthの素子は低導通損である。実施の形態1の3レベル変換器103は、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthが直流端子側素子T1U、T4Uよりも低い、すなわち低Vthの素子を交流端子側素子T2U、T3Uに用いたので、電力損失が低減できる。
従来は、本実施の形態とは異なり、過電流検出時の保護動作を、交流端子側のスイッチング素子、直流端子側スイッチング素子ごとに設定しているため、保護回路の規模が大きくなっていた。実施の形態1の3レベル変換器103は、全ての素子T1U、T2U、T3U、T4Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig2、Gsig3、Gsig4を同時にオフするような保護動作を行うことができるので、従来の保護回路とは異なり、保護動作部402を小型化にでき、ゲート信号制御部410を小型化することができる。
ここで、従来のPWM制御部の動作を説明する。そもそも従来のダイオードクランプ型3レベル変換器では、スイッチング素子S11〜S34の動作特性は同じである。したがって、正常時のPWM制御部の動作において工夫を行っていた。スイッチング素子S11(T1U相等)がオンレベルからオフレベルに、スイッチング素子S13(T3U相等)がオフレベルからオンレベルに同時に切り替わるよう、それぞれのゲート制御信号Gsig1、Gsig3を同時に変更した(図11の時刻t12に相等)とするとスイッチング素子S11、S13が同時にオン状態になってしまう。その結果、直流コンデンサC1の電圧Ed(2Vdcに相当)がスイッチング素子S11、S12(T2U相当)、S13、とクランプダイオードD12(CD2U相当)によって短絡され、それらの素子を過電流によって破壊してしまう可能性がある。これを防止するため、後述する図16、図17のようにゲート制御信号の立ち上がりを遅らせるようにデッドタイムtDを挿入していた。特許文献1の3レベル電力変換器の短絡保護装置や特許文献2の電力変換装置においても、ダイオードクランプ型3レベル変換器のスイッチング素子の動作特性は同じである。スイッチング素子の動作特性が同じために、スイッチング素子およびダイオードの過電圧破壊を防止するために、過電流検出時の保護動作を、交流端子側のスイッチング素子、直流端子側スイッチング素子ごとに設定した短絡保護装置や保護回路を使用していた。
上述したように、実施の形態1の3レベル変換器103は、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthを交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthよりも高くしたので、全ての素子T1U、T2U、T3U、T4Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig2、Gsig3、Gsig4のタイミングを同時に変化したとしても、素子の過電流や過電圧が発生することがなく、スイッチング素子の素子破壊を防止することができる。
また、従来は、スイッチング素子S11〜S34の動作特性は同じなので、交流端子側スイッチング素子S12、S13、S22、S23、S32、S33の導通損失は、直流端子側スイッチング素子S11、S14、S21、S24、S31、S34と同等であり、電力損失が大きい問題点があった。しかし、実施の形態1の3レベル変換器103は、ゲート・ソース間しきい値電圧Vthが直流端子側素子T1U、T4Uよりも低い、すなわち低Vthの素子を交流端子側素子T2U、T3Uに用いたので、従来に比べて電力損失が低減できる。
以上のように実施の形態1の電力変換装置によれば、直流電力が導通する正極直流端子107P及び負極直流端子107Nの間に接続されたコンデンサ直列体111、112と、正極直流端子107P及び負極直流端子107Nの間に接続され、交流電力が導通する交流端子108Uを有する主回路113Uと、主回路113Uが有する複数のスイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uのそれぞれを制御する制御信号Gsig1U、Gsig2U、Gsig3U、Gsig4Uを生成するゲート駆動回路400とを備え、コンデンサ直列体111、112は、直列に接続された第1の直流コンデンサ111と第2の直流コンデンサ112とを有し、主回路113Uは、同一極性に直列に接続された第1のスイッチング素子T1U、第2のスイッチング素子T2U、第3のスイッチング素子T3U及び第4のスイッチング素子T4Uと、第1のスイッチング素子T1U及び第2のスイッチング素子T2Uの接続点と第1の直流コンデンサ111及び第2の直流コンデンサ112の接続点である中性点C0との間に接続された第1のクランプダイオードCD1Uと、第3のスイッチング素子T3U及び第4のスイッチング素子T4Uの接続点と中性点C0との間に接続された第2のクランプダイオードCD2Uとを有し、交流端子108Uは第2のスイッチング素子T2U及び第3のスイッチング素子T3Uの接続点に接続され、交流端子108Uに接続された第2のスイッチング素子T2U及び第3のスイッチング素子T3Uにおけるしきい値電圧Vthは、正極直流端子107Pに接続された第1のスイッチング素子T1U及び、負極直流端子107Nに接続された第4のスイッチング素子T4Uにおけるしきい値電圧Vthより低いので、スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uを保護する制御を複雑すぎないようにでき、スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uの保護回路を小型化することができる。
なお、前述の説明では、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uと、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthを、図6のように選定したが、これはあくまでも一例である。前述したようなスイッチング速度の差を、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uと、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uとで見出すことができれば、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uと、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthの差を図6よりも小さくしてもよい。
例えば、ゲート駆動回路のゲート抵抗Rgの抵抗値の誤差を5%とする場合は、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uと、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uのゲート・ソース間しきい値電圧Vthの差を、オン状態に制御するゲート・ソース間電圧(VgH)の+15Vの5%である0.75V以上と設計することもできる。
さらに、従来の電力変換装置では、スイッチング周波数が高周波化するに伴って、保護回路も高周波化に対応せざるを得ないため、高精度で高価な保護回路を必要とするが、本発明の実施の形態1の電力変換装置は、スイッチング素子の特性を利用するため、特別な保護回路を用意する必要がない。
また、図11の時刻t12のようにスイッチング素子T1Uがオンからオフ、スイッチング素子T3Uがオフからオンに同時に切り替わるよう、それぞれのゲート制御信号Gsig1、Gsig3を同時に変更したとしても、製造ばらつき等によりそれらスイッチング素子T1U、T3Uのターンオフ時間とターンオフ時間の違いによっては、スイッチング素子T3Uのターンオン時間tonacの方が、スイッチング素子T1Uのターンオフ時間toffdcよりも短くなってしまう場合があり得る。この場合はゲート−ソース間しきい値電圧Vthが交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uの方が直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uよりも低いため、トーテムポール回路421の出力電圧の負バイアス電圧やゲート抵抗Rgを調整し、直流端子側スイッチング素子T1Uのターンオフ時間toffdcを交流端子側スイッチング素子T3Uのターンオン時間tonacよりも短くすることで、スイッチング素子T1U、T2U、T3Uが同時にオン状態になるようなことを避けるができる。したがって、直流コンデンサ111の電圧Vdcがスイッチング素子T1U、T2U、T3UとクランプダイオードCD2Uによって短絡されることがなく、過電流によるスイッチング素子T1U、T2U、T3U、およびクランプダイオードCD2Uの素子破壊を防止することができる。
以上のようにトーテムポール回路421の出力電圧の負バイアス電圧やゲート抵抗Rgを調整することで、全ての素子T1U、T2U、T3U、T4Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig2、Gsig3、Gsig4のタイミングを同時に変化したとしても、スイッチング素子やクランプダイオードに過電流が流れることがなく、素子破壊を防止することができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、PWM制御部の動作においてゲート制御信号の一部を遅らせるようにデッドタイムtDを挿入する。これにより、電力変換装置(3レベル変換器)103の信頼性を向上させることができる。以下に説明する。
実施の形態2の電力変換装置(3レベル変換器)103は、PWM制御部401の動作が異なる。実施の形態2のPWM制御部401について説明する。図11の時刻t12のようにスイッチング素子T1Uがオンからオフ、スイッチング素子T3Uがオフからオンに同時に切り替わるよう、それぞれのゲート制御信号Gsig1、Gsig3を同時に変更したとしても、製造ばらつき等によりそれらスイッチング素子T1U、T3Uのターンオフ時間とターンオフ時間の違いによっては、スイッチング素子T3Uのターンオン時間tonacの方が、スイッチング素子T1Uのターンオフ時間toffdcよりも短くなってしまう場合があり得る。この場合はスイッチング素子T1U、T3Uが同時にオン状態になってしまう。その結果、スイッチング素子T1U、T2U、T3Uがオンしていることになり、直流コンデンサ111の電圧Vdcがスイッチング素子T1U、T2U、T3UとクランプダイオードCD2Uによって短絡され、スイッチング素子やクランプダイオードを過電流によって破壊してしまう可能性がある。これを防止するため、図16、図17のようにゲート制御信号の立ち上がりを遅らせるようにデッドタイムtD(tD1、tD2)を挿入する。
図16は、本発明の実施の形態2における基準電位が正の場合のPWM制御部の動作の一例を示す波形である。図17は、本発明の実施の形態2における基準電位が負の場合のPWM制御部の動作の一例を示す波形である。図16は、実施の形態1の図11とはゲート制御信号Gsig1の立ち上がりがデッドタイムtD1だけ遅延し、Gsig3の立ち上がりがデッドタイムtD2だけ遅延している点で異なる。図17は、実施の形態1の図14とはゲート制御信号Gsig2の立ち上がりがデッドタイムtD2だけ遅延し、Gsig4の立ち上がりがデッドタイムtD1だけ遅延している点で異なる。
図16の時刻t12の動作を説明する。実施の形態2のPWM制御部401は、ゲート制御信号Gsig1をオフにすると、このゲート制御信号Gsig1の立ち下りを受けてデッドタイムtD2だけ遅延させて、ゲート制御信号Gsig3を立ち上げ、オンレベルにする。デッドタイムtD2は、直流端子側スイッチング素子T1Uのターンオフ時間toffdcが、交流端子側スイッチング素子T3Uのターンオン時間tonacに該デッドタイムtD2を加えた実効ターンオン時間ton1ac(=tonac+tD2)より短くなるように設定する。このようにすることで、直流端子側スイッチング素子T1Uがターンオフするまでの時間toffdcを、交流端子側スイッチング素子T3Uがターンオンするまでの時間、すなわち実効ターンオン時間ton1acよりも短くでき、スイッチング素子T1U、T2U、T3Uが同時にオン状態になるようなことを避けるができる。したがって、直流コンデンサ111を短絡することによる過電流の発生がなく、スイッチング素子およびクランプダイオードの素子破壊を防止することができる。
図16の時刻t14の動作を説明する。実施の形態2のPWM制御部401は、ゲート制御信号Gsig3をオフにすると、このゲート制御信号Gsig3の立ち下りを受けてデッドタイムtD1だけ遅延させて、ゲート制御信号Gsig1を立ち上げ、オンレベルにする。デッドタイムtD1は、交流端子側スイッチング素子T3Uのターンオフ時間toffacが、直流端子側スイッチング素子T1Uのターンオン時間tondcに該デッドタイムtD1を加えた実効ターンオン時間ton1dc(=tondc+tD1)より短くなるように設定する。このようにすることで、交流端子側スイッチング素子T3Uがターンオフするまでの時間toffacを、直流端子側スイッチング素子T1Uがターンオンするまでの時間、すなわち実効ターンオン時間ton1dcよりも短くでき、スイッチング素子T1U、T2U、T3Uが同時にオン状態になるようなことを避けるができる。したがって、直流コンデンサ111を短絡することによる過電流の発生がなく、スイッチング素子およびクランプダイオードの素子破壊を防止することができる。
図17の時刻t22の動作を説明する。実施の形態2のPWM制御部401は、ゲート制御信号Gsig4をオフにすると、このゲート制御信号Gsig4の立ち下りを受けてデッドタイムtD2だけ遅延させて、ゲート制御信号Gsig2を立ち上げ、オンレベルにする。デッドタイムtD2は、直流端子側スイッチング素子T4Uのターンオフ時間toffdcが、交流端子側スイッチング素子T2Uのターンオン時間tonacに該デッドタイムtD2を加えた実効ターンオン時間ton1ac(=tonac+tD2)より短くなるように設定する。このようにすることで、直流端子側スイッチング素子T4Uがターンオフするまでの時間toffdcを、交流端子側スイッチング素子T2Uがターンオンするまでの時間、すなわち実効ターンオン時間ton1acよりも短くでき、スイッチング素子T2U、T3U、T4Uが同時にオン状態になるようなことを避けるができる。したがって、直流コンデンサ112を短絡することによる過電流の発生がなく、スイッチング素子およびクランプダイオードの素子破壊を防止することができる。
図17の時刻t24の動作を説明する。実施の形態2のPWM制御部401は、ゲート制御信号Gsig2をオフにすると、このゲート制御信号Gsig2の立ち下りを受けてデッドタイムtD1だけ遅延させて、ゲート制御信号Gsig4を立ち上げ、オンレベルにする。デッドタイムtD1は、交流端子側スイッチング素子T2Uのターンオフ時間toffacが、直流端子側スイッチング素子T4Uのターンオン時間tondcに該デッドタイムtD1を加えた実効ターンオン時間ton1dc(=tondc+tD1)より短くなるように設定する。このようにすることで、交流端子側スイッチング素子T2Uがターンオフするまでの時間toffacを、直流端子側スイッチング素子T4Uがターンオンするまでの時間、すなわち実効ターンオン時間ton1dcよりも短くでき、スイッチング素子T2U、T3U、T4Uが同時にオン状態になるようなことを避けるができる。したがって、直流コンデンサ112を短絡することによる過電流の発生がなく、スイッチング素子およびクランプダイオードの素子破壊を防止することができる。
以上のように、ゲート制御信号Gsig1、Gsig2、Gsig3、Gsig4の立ち上がりがデッドタイムtD1、tD2を挿入することで、確実に、3つのスイッチング素子T1U、T2U、T3U(又は、T2U、T3U、T4U)が同時にオン状態になるようなことを避けるができる。したがって、直流コンデンサ111(112)を短絡することによる過電流の発生がなく、スイッチング素子およびクランプダイオードの素子破壊を防止することができる。実施の形態1よりも電力変換装置(3レベル変換器)103の信頼性を向上させることができる。
ゲート信号制御部410が、デッドタイムtD1、tD2を挿入するように制御する場合は、ゲート信号制御部410と素子特性の2重の過電圧破壊防止措置を施したことになり、電力変換装置(3レベル変換器)103の信頼性が向上する。
実施の形態3.
実施の形態3では、直流端子側素子T1U、T4Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig4を交流端子側素子T2U、T3Uのゲート制御信号Gsig2、Gsig3よりも先にオフするような保護動作を施す。これにより、電力変換装置(3レベル変換器)103の保護動作における信頼性を向上させることができる。以下に説明する。
従来の公知技術と同様の動作を保護動作部402が行う。実施の形態3の保護動作部について説明する。図15のように、外部からのノイズが誤動作を引き起こし、全てのスイッチング素子がオン状態になった場合を考える。実施の形態3の保護動作部402は、スイッチング素子T1U、T2U、T3U、T4Uの電流を検出する電流センサ440により検出されたセンサ信号Ssig1〜Ssig4を受ける。実施の形態3の保護動作部402は、センサ信号Ssig1〜Ssig4が所定の判定基準を超えたと判定した場合、すなわち過電流(大きな短絡電流Is)が流れたと判定した場合に、PWM制御を行う制御信号に代えて、スイッチング素子T1U〜T4Uを破壊しないように電流遮断を行う保護動作の制御信号をゲート制御信号Gsig1〜Gsig4としてゲート駆動部420に出力する。
過電流が流れたと判定した実施の形態3の保護動作部402は、まず、直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uを先にオフするようにゲート制御信号Gsig1、Gsig4を出力し、その後、一定時間を経て、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uをオフするようにゲート制御信号Gsig2、Gsig3を出力する。このようにすることで、交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uを直流端子側スイッチング素子T1U、T4Uよりも早いタイミングでオフすることを確実に防止することができる。したがって、直流コンデンサ111及び112の直列体における両端の電圧2Vdcが先にオフした場合の交流端子側スイッチング素子T2U、T3Uに印加されて過電圧破壊を招いてしまうことを防止することができる。
実施の形態3の電力変換装置(3レベル変換器)103は、上記のように直流端子側素子T1U、T4Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig4を交流端子側素子T2U、T3Uのゲート制御信号Gsig2、Gsig3よりも先にオフするような保護動作を施したので、実施の形態1や実施の形態2よりも、保護動作における信頼性を向上することができる。
従来は、過電流(大きな短絡電流Is)が流れた場合に、保護機能が保護回路でしか担保されていないため、十分な保護動作ができない場合があり、保護機能の信頼性が低い問題がった。実施の形態3の電力変換装置(3レベル変換器)103は、上記のように直流端子側素子T1U、T4Uのゲート制御信号Gsig1、Gsig4を交流端子側素子T2U、T3Uのゲート制御信号Gsig2、Gsig3よりも先にオフするような保護動作を施した場合は、スイッチング素子の特性からくる保護動作に加えて、さらに確実に保護動作を行うので、保護機能の信頼性を大きく向上させることができる。
なお、直流入力端子107Pと直流入力端子107Nの直流電圧を三相系統電源101とダイオード整流回路102にて生成した例で説明したが、他の方法、例えば三相系統電源とコンバータによる方法や、既設の直流電源に接続してもよい。
また、スイッチング素子がMOSFETである場合で説明したが、JFETやIGBTなど、スイッチング機能を有する他の半導体素子であっても同様の効果が得られる。MOSFETのゲート・ドレイン・ソースは、JFETのゲート・ドレイン・ソース、IGBTのゲート・コレクタ・エミッタにそれぞれ対応する。
また、スイッチング素子Tと逆並列にフリーホイリングダイオードFDを接続した場合で説明したが、MOSFETなどのスイッチング素子に寄生するボディダイオードを利用して、実際には接続しなくてもよい。
また、電力変換装置として直流電力を交流電力に変換する例で説明したが、交流電力を直流電力に変換する場合にも適用できる。
また、実施の形態1乃至3では、スイッチング素子、フリーホイリングダイオードならびにクランプダイオードの半導体材料は特に限定しておらず、一般的には珪素が使用できる。半導体材料を、ワイドバンドギャップ半導体材料、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、またはダイヤモンドなどを使用すれば、本発明の効果を維持したまま低損失化が可能となり、電力変換装置の高効率化が可能となる。また、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、電力変換装置の小型化が可能となる。さらにワイドバンドギャップ半導体素子は、耐熱性が高いので、高温動作が可能であり、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化も可能となるので、電力変換装置の一層の小型化が可能になる。また、直流端子側素子の半導体材料を珪素とし、直流端子側素子よりもゲート・ソース間しきい値電圧Vthが低い交流端子側素子の半導体材料をワイドバンドギャップ半導体材料としてもよい。
本発明に係る電力変換装置は、直流電力が導通する正極直流端子及び負極直流端子の間に接続されたコンデンサ直列体と、正極直流端子及び負極直流端子の間に接続され、交流
電力が導通する交流端子を有する主回路と、主回路が有する複数のスイッチング素子のそれぞれを制御する制御信号を生成するゲート駆動回路とを備える。コンデンサ直列体は、直列に接続された第1の直流コンデンサと第2の直流コンデンサとを有し、主回路は、同一極性に直列に接続された第1のスイッチング素子、第2のスイッチング素子、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の接続点と第1の直流コンデンサ及び第2の直流コンデンサの接続点である中性点との間に接続された第1のクランプダイオードと、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子の接続点と中性点との間に接続された第2のクランプダイオードとを有する。ゲート駆動回路は、第1のスイッチング素子、第2のスイッチング素子、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子のそれぞれのゲート端子に接続されるゲート抵抗を有する。交流端子は第2のスイッチング素子及び第3のスイッチング素子の接続点に接続され、交流端子に接続された第2のスイッチング素子及び第3のスイッチング素子における第1のしきい値電圧は、正極直流端子に接続された第1のスイッチング素子及び、負極直流端子に接続された第4のスイッチング素子における第2のしきい値電圧より低く、かつオン状態に制御するゲート・ソース間電圧に対する第1のしきい値電圧と第2のしきい値電圧との電圧差の割合は、ゲート抵抗の抵抗値の許容誤差の割合よりも大きい。