JP2015019478A - モータ制御装置及び空気調和機 - Google Patents
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Abstract
Description
インバータ回路内の6つのスイッチング素子(単に、素子ともいう)には、IGBT(Insulated-Gate-Bipolar-Transistor)を用いることが一般的である。しかし、インバータ回路の定常期間動作時の定常損失改善のため、IGBTではなく、定常損失の小さいMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用する技術が提案されている。
SJ−MOSはこのIrrが特に大きいため、スイッチング損失が過大になる、という問題がある。
図1に示すように、逆回復電流Irrが大きいとは、波高値と逆回復時間(以下trrと表記する)が大きいことを意味する。
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置の構成を示す図である。本実施形態のモータ制御装置は、三相インバータ回路を用いて三相同期モータの駆動制御を行う場合に適用した例である。
図2に示すように、モータ制御装置100は、直流電源110と、PWM(Pulse Width Modulation)制御により三相同期モータ130の駆動制御を行う三相インバータ回路(単に、インバータ回路ともいう)120と、電流検出部140と、直流電圧検出部150と、モータ制御部160と、インバータ駆動部170と、を備えて構成される。
直流電源110は、例えば蓄電池であるが、この他、出力直流電圧を制御可能なコンバータ回路(図示せず)等を採用してもよい。
インバータ回路120は、直流電力を交流電力に変換し、該変換された交流電力でモータの駆動制御を行う。インバータ回路120は、インバータ駆動部170から出力されるパルス幅変調波信号(PWM信号)である駆動制御信号dsに基づいて、直流電源110から供給される直流電力を、U相・V相・W相の擬似正弦波である三相交流電力に変換し、この変換された三相交流電力で三相同期モータ(単に、モータともいう)130の駆動制御を行う。
各スイッチング素子11〜16は、直流電源110の正極側に接続された直流母線PLと、負極側に接続された直流母線NLとの間の上下アームに接続されている。上下アームには第1〜第6のスイッチング素子11〜16として、低消費電力のMOSFETが接続されている。
なお、上アームのスイッチング素子11,13,15を、上MOSFET11〜13又は上アーム素子11,13,15とも表現し、下アームのスイッチング素子12,14,16を、下MOSFET12,14,16又は下アーム素子12,14,16とも表現する。
第1のMOSFET11及び第2のMOSFET12は、正負の直流母線PL,NL間に、第1の接続点Nd1を介して直列接続されており、それぞれの素子のドレイン−ソース間には寄生ダイオード21,22が逆並列接続されている。この場合、還流ダイオード21,22は寄生ダイオードである。第1の接続点Nd1は、モータ130のU相動力線に接続されている。
第3のMOSFET13及び第4のMOSFET14は、正負の直流母線PL,NL間に、第2の接続点Nd2を介して直列接続されており、それぞれの素子のドレイン−ソース間には還流ダイオード23、24が逆並列接続されている。この場合、還流ダイオード23、24は寄生ダイオードである。第2の接続点Nd2は、モータ130のV相動力線に接続されている。
第5のMOSFET15及び第6のMOSFET16は、正負の直流母線PL,NL間に、第3の接続点Nd3を介して直列接続されており、それぞれの素子のドレイン−ソース間には寄生ダイオード25、26が逆並列接続されている。この場合、還流ダイオード25、26は寄生ダイオードである。第3の接続点Nd3は、モータ130のW相動力線に接続されている。
また、第1〜第6のスイッチング素子11〜16のゲートには、それぞれゲート回路31,32,33,34,35,36が接続されている。
電流検出部140は、電線と並行配置される架線電流センサ等によるものであり、負の直流母線NLに近接して配置されており、直流電源110からインバータ回路120へ流れる回路電流Ioを検出し、この検出された回路電流Ioをモータ制御部160へ出力する。
モータ制御部160は、回路電流Ioに基づいて、モータ130に流れる三相交流電流Iu,Iv,Iw(但し、Iu,Iv,Iwは図示略)を再現し、この再現された三相交流電流Iu,Iv,Iwと、直流電圧Vdと、外部から入力されるモータ回転数指令値irとに基づいて、モータ130に印加する三相交流指令電圧Vu,Vv,Vw(但し、Vu,Vv,Vwは図示略)を演算する。また、モータ制御部160は、モータ130に印加する正弦波電圧の振幅値Vs(但し、Vsは図示略)を演算し、これら演算結果をインバータ駆動部170へ出力する。なお、モータ制御部160の構成例については図3により後記する。
インバータ駆動部170は、モータ制御部160での演算結果である三相交流指令電圧Vu,Vv,Vw(図示略)及び予め定められた正弦波電圧の振幅値Vs(図示略)に従い、第1〜第6のスイッチング素子11〜16のスイッチング制御(PWM制御)を行うための駆動制御信号dsを、インバータ回路120の各ゲート回路31〜36へ出力する。
図3は、上記モータ制御装置100のモータ制御部160の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、モータ制御部160は、CPU(Central Processing Unit)161、ROM(Read Only Memory)162、RAM(Random-access Memory)163、記憶装置(HDD:Hard Disk Drive等)164を備え、これら161〜164がバス166に接続された一般的な構成となっているCPU161は、ROM162に記憶されたプログラム165を読み出してRAM163に展開し、CPU161がモータ制御部160の演算等の制御を実行するようになっている。
図4は、上記モータ制御装置100の第1及び第2のスイッチング素子のゲート回路の構成を示す図である。図4は、図1に示した上アームスイッチング素子(第1のスイッチング素子)及び下アームスイッチング素子(第2のスイッチング素子)のゲート回路31,32の具体的な構成を示す。
前記図1に示す上アームスイッチング素子のゲート回路31,33,35は、同一構成を採るため第1のスイッチング素子11のゲート回路31を、ゲート回路31-aとして代表して説明する。同様に、前記図1に示す下アームスイッチング素子のゲート回路32,34,36は、同一構成を採るため第2のスイッチング素子12のゲート回路32を、ゲート回路32-aとして代表して説明する。
ゲート回路31-aは、上アームのスイッチング素子(上MOSFET)11のゲートとインバータ駆動部170との間に接続されたゲート抵抗器R1と、当該ゲートにアノードが接続されたダイオードD1と、このダイオードD1のカソードとインバータ駆動部170との間に接続されたゲート抵抗器R2と、を備える。また、ゲート回路32-aは、下アームのスイッチング素子(下MOSFET)12のゲートとインバータ駆動部170との間に接続されたゲート抵抗器R3と、当該ゲートにカソードが接続されたダイオードD2と、このダイオードD2のアノードとインバータ駆動部170との間に接続されたゲート抵抗器R4と、を備える。なお、C1,C3は帰還容量成分、C1,C3は帰還容量成分である。
ゲート回路31-aは、上MOSFET11オン時にはゲート抵抗器R1が使用され、上MOSFET11オフ時にはゲート抵抗器R1、R2が使用される。また、ゲート回路32-aは、下MOSFET12オン時にはゲート抵抗器R3、R4が使用され、下MOSFET12オフ時はゲート抵抗器R3が使用される。
前記図1に示す上アームスイッチング素子のゲート回路31,33,35は、同一構成を採るため第1のスイッチング素子11のゲート回路31を、ゲート回路31-bとして代表して説明する。同様に、前記図1に示す下アームスイッチング素子のゲート回路32,34,36は、同一構成を採るため第2のスイッチング素子12のゲート回路32を、ゲート回路32-bとして代表して説明する。
ゲート回路31-bは、上アームのスイッチング素子(上MOSFET)11のゲートとインバータ駆動部170との間に直列に接続されたゲート抵抗器R5及びゲート抵抗器R1と、ゲート抵抗器R5とゲート抵抗器R1との間にアノードが接続されたダイオードD1と、このダイオードD1のカソードとインバータ駆動部170との間に接続されたゲート抵抗器R2と、を備える。また、ゲート回路32-bは、下アームのスイッチング素子(下MOSFET)12のゲートとインバータ駆動部170との間に直列に接続されたゲート抵抗器R6及びゲート抵抗器R3と、ゲート抵抗器R6とゲート抵抗器R3との間にカソードが接続されたダイオードD2と、このダイオードD2のアノードとインバータ駆動部170との間に接続されたゲート抵抗器R4と、を備える。ゲート抵抗器R5,R6は、MOSFET11,12へ不測の電圧印加があった場合、この影響を緩和するためのものである。MOSFET11,12のゲートになるべく近い場所に配置することが好ましい。
また、ゲート回路32-bは、下MOSFET12オン時にはゲート抵抗器R3、R4が使用され、下MOSFET12オフ時はゲート抵抗器R3が使用される。この場合、MOSFET12のゲートには、ゲート抵抗器R6が配置され、MOSFET12オン/オフにかかわらず、常にゲート抵抗器R6が接続される。
<上アーム素子オン時>
図6は、下アーム素子が還流モード中に上アーム素子がオンした際の下アーム素子と上アーム素子の第1の接合点Ndのドレイン電流Idを、上アーム素子のオン時ゲート抵抗値の大きさ毎に示す図である。
図6は、縦軸がドレイン電流Id、横軸が時間tであり、下MOSFET12が還流モード(下還流モード)中に上MOSFET11がオンした際のドレイン電流Idを、上MOSFET11のオン時のゲート抵抗値(ゲート抵抗器R1の抵抗値)H-RonNの大きさ毎に表している。このとき、下MOSFETのゲート抵抗値は固定値とする。また、図6では、ゲート抵抗値H‐RonNの大きさを、H-RonN小,H-RonN中,H-RonN大で示している。
ドレイン電流Id1は、上MOSFET11のゲート抵抗値H‐RonNが小(H-RonN小)の場合に流れ、ドレイン電流Id2は、ゲート抵抗値H‐RonNが中(H-RonN中)の場合に流れ、ドレイン電流Id3は、ゲート抵抗値H‐RonNが大(H-RonN大)の場合に流れる。また、各ドレイン電流Id1,Id2,Id3の最大値(最大波高値)を、各実線矢印h1,h2,h3で示した。また、t1、t2、t3はドレイン電流Id1、Id2、Id3が流れはじめてから、最大値まで達するのにかかる時間を示している。
このような上アームオン時のセルフターンオン現象は、下MOSFET12のオフ時のゲート抵抗値、L-RoffNが大きいほどに逆回復時間trrが大きくなって、よりその度合いが大きくなる。このセルフターンオン現象の度合いが大きくなる程に、寄生ダイオード22で発生する逆回復電流Irrが大きくなってしまう悪影響を受ける。このため、スイッチング損失が大きくなり、効率悪化などの不具合を生じる。
図7は、下アーム素子が還流モード中に上アーム素子がオンした際の下アーム素子と上アーム素子の第1の接合点Ndのドレイン電流Idを、下アーム素子のオフ時のゲート抵抗値の大きさ毎に示す図である。
図7は、縦軸がドレイン電流Id、横軸が時間tであり、下MOSFET12が還流モード中に上MOSFET11がオンした際のドレイン電流Idを、下MOSFET12オフ時のゲート抵抗値L-RoffNの大きさ毎に表している。但し、図7では、ゲート抵抗値L-RoffNの大きさを、L-RoffN小,L-RoffN中,L-RoffN大で示しており、これらの大きさは、予め定められた抵抗値(所定抵抗値)に対する大きさである。すなわち、下MOSFET12のゲート抵抗値L-RoffNが大きくなる程に、L-RoffN小,L-RoffN中,L-RoffN大と大きくなるように表現してある。
ドレイン電流Id4は、下MOSFET12オフ時のゲート抵抗値L‐RoffNが大(L‐RoffN大)の場合に流れ、ドレイン電流Id5は、ゲート抵抗値L‐RoffNが中(L‐RoffN中)の場合に流れ、ドレイン電流Id6は、ゲート抵抗値L‐RoffNが小(L‐RoffN小)の場合に流れる。
つまり、ゲート抵抗値L‐RoffNが、L‐RoffN大、L‐RoffN中、L‐RoffN小と小さくなる程、最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間は、T3,T2,T1と短くなる。この最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間はT1,T2,T3と長くなる程に、スイッチング素子のスイッチング損失が増えるという不具合が知られている。したがって、ゲート抵抗値L‐RoffNが最も小さい(L‐RoffN小)場合に、最も短い時間T1でドレイン電流Id6が流れ、この場合に最もスイッチング損失が小さくなる。
以上、下MOSFET12の寄生ダイオード22に順方向に電流が流れる下還流モード中に、上MOSFET11がスイッチング動作によりオンになる場合の、上下アームのゲート抵抗値による電流波形の変化について説明した。
[上アーム素子還流モード中の下アーム素子オン時のドレイン電流Id]
<下アーム素子オン時>
図8は、上アーム素子が還流モード中に下アーム素子がオンした際の下アーム素子と上アーム素子の第1の接合点Ndのドレイン電流Idを、下アーム素子のオン時のゲート抵抗値の大きさ毎に示す図である。
図8は、縦軸がドレイン電流Id、横軸が時間tであり、上MOSFET11が還流モード時に下MOSFET12がオンした際のドレイン電流Idを、下MOSFET12のオン時のゲート抵抗値L-RonNの大きさ毎に表している。また、図8では、ゲート抵抗値L‐RonNの大きさを、L-RonN小,L-RonN中,L-RonN大で示している。
前記図4に示す上MOSFET11の寄生ダイオード21に順方向に電流が流れる上還流モード中に、下MOSFET12がスイッチング動作によりオンになると、上MOSFET11の寄生ダイオード21に逆バイアス電圧が印加される。これにより、寄生ダイオード22に逆方向の逆回復電流Irrが流れる。このため、上MOSFET11には、図8に示すような、大きさのドレイン電流Id7,Id8,Id9が流れてしまう。
また、上MOSFET11が還流モード中に、下MOSFET12がスイッチング動作を行ったとき、上MOSFET11のドレインの電圧変化dV/dtと上アームMOSFETの帰還容量成分C1によって変位電流が発生し、この変位電流が帰還容量を通って上MOSFET11のゲートに流れ込んで入力容量成分C2に電荷がチャージされることで、セルフターンオン現象が発生する。
下還流モード時と同様に、上MOSFET11のオフ時のゲート抵抗値、L-RoffNが大きいほどに逆回復時間trrが大きくなって、その度合いが大きくなる。このセルフターンオン現象の度合いが大きくなる程に、寄生ダイオード21で発生する逆回復電流Irrが大きくなってしまう悪影響を受ける。このため、スイッチング損失が大きくなり、効率悪化などの不具合を生じる。
図9は、下アーム素子が還流モード中に上アーム素子がオンした際の下アーム素子と上アーム素子の第1の接合点Ndのドレイン電流Idを、上アーム素子のオフ時のゲート抵抗値の大きさ毎に示す図である。
図9は、縦軸がドレイン電流Id、横軸が時間tであり、上MOSFET11が還流モード中に下MOSFET12がオンした際のドレイン電流Idを、上MOSFET12オフ時のゲート抵抗値H-RoffNの大きさ毎に表している。但し、図9では、ゲート抵抗値H-RoffNの大きさを、H-RoffN小,H-RoffN中,H-RoffN大で示しており、これらの大きさは、予め定められた抵抗値(所定抵抗値)に対する大きさである。すなわち、上MOSFET11のゲート抵抗値H-RoffNが大きくなる程に、H-RoffN小,H-RoffN中,H-RoffN大と大きくなるように表現してある。
各ドレイン電流Id10,Id11,Id12は共に、最大波高値は同じであるが、最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間が、矢印幅T6で示すようにドレイン電流Id10が最も長く、次に、T5で示すドレイン電流Id11、T4で示すドレイン電流Id12の順に短くなっている。
つまり、ゲート抵抗値H‐RoffNが、H‐RoffN大、H‐RoffN中、H‐RoffN小と小さくなる程、最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間がT6,T5,T4と短くなり、T4,T5,T6と長くなる程に、スイッチング素子のスイッチング損失が増えるという不具合が知られている。したがって、ゲート抵抗値H‐RoffNが最も小さい(H‐RoffN小)場合に、最も短い時間T4でドレイン電流Id12が流れ、この場合に最もスイッチング損失が小さくなる。
<上下アームのゲート抵抗値同一>
図10は、上記モータ制御装置100の第1及び第2のスイッチング素子のゲート回路の他の構成を示す図である。図4及び図5と同一構成部分には、同一番号を付している。図10は、上下アームでゲート定数を同じとした場合のゲート回路の構成を示している。
図10に示すように、上下アームのゲート回路31-c,32-cは、ゲート抵抗Rを1つとしている。
ゲート回路31-c,32-cのゲート定数を、同じ値とした場合の上下アームのスイッチングを考える。通常、上下アームに同じスイッチング素子を配置したインバータ回路のゲート回路は、図10に示すように上下アームのゲート定数を共通とすることが一般的である。
図11は、上下アームのゲート抵抗を共通とした場合の、下アーム素子が還流モード中に上アーム素子がオンした際のクロス波形と、上アーム素子が還流モード時に下アーム素子がオンした際のクロス波形を示す図である。
図11(A)は、図10のゲート回路31-c,32-c構成により、下MOSFET12が還流モード中に上MOSFET11がスイッチング動作を行ったときの、上MOSFETのドレイン‐ソース間電圧(H-Vds)と上MOSFET11のドレイン電流Idのクロス波形を示している。また図11(B)は、上MOSFET11が還流モード中に下MOSFET12がスイッチング動作を行ったときの、下MOSFETのドレイン‐ソース間電圧(L-Vds)と上MOSFET11のドレイン電流Idのクロス波形を示している。図11中、縦軸がドレイン電流Id、ドレイン‐ソース間電圧Vdsであり、横軸が時間tである。
そして、図11(B)の区間(3)-aは、上MOSFET11が還流モード中に下MOSFET12がスイッチングを行った後、ドレイン電流が最大波高値まで達するまでの時間を示している。図11(B)の区間(4)-aは、ドレイン電流が最大波高値まで達した後、定常値に落ち着くまでの時間を示している。
図11(A)(B)の波形を見比べると、上下アームを同じゲート抵抗値でオンさせた場合、ゲート抵抗値は同じでも、実際のクロス波形は上下で異なる波形となっていることがわかる。これは例えば、上下アームでドライバICの能力の違いがあった場合や、上下アームで電流が流れるパターンのインピーダンスに差があった場合にこのような現象が発生すると考えられる。
よって、区間(1)-aと区間(3)-aのスイッチング損失では区間(3)-aの方が大きく、区間(2)と区間(4)のスイッチング損失では区間(2)-aの方が大きくなる。この波形においてスイッチング損失を計算すると、下還流における上オン時のスイッチング損失(区間(1)-a〜(2)-aまでのスイッチング損失)は約288μJとなり、上還流における下オン時のスイッチング損失(区間(3)-a〜(4)-aまでのスイッチング損失)は約343μJとなる。
特に、スーパー・ジャンクション・MOSFETのように逆回復電流Irrが大きい(波高値と逆回復時間trrが大きい)素子を使用した場合には、スイッチング損失増大による、効率悪化の影響が大きい。
そこで、本発明では、下アームスイッチング素子オン時のゲート抵抗値を、上アームスイッチング素子オン時のゲート抵抗値よりも小さく設定し、且つ下アームスイッチング素子オフ時のゲート抵抗値を、上アームスイッチング素子オフ時のゲート抵抗値よりも大きく設定するようにした。例えば、下アームのスイッチング素子12,14,16オン時のゲート抵抗値を、上アームのスイッチング素子11,13,15オン時ゲート抵抗値よりも1/2以下に設定し、下アームのスイッチング素子12,14,16オフ時のゲート抵抗値を、上アームのスイッチング素子11,13,15オフ時のゲート抵抗値よりも1.5倍以上に設定する。
これによって、後記するようにスーパー・ジャンクション・MOSFETのように逆回復電流Irrの大きい素子をインバータの上下アームに用いた場合でも、スイッチング損失の増大を最小限に抑えることが可能である。
図12は、上下アームのゲート抵抗値を共通/非共通にした場合の下アーム素子が還流モード中に上アーム素子がオンした際のクロス波形を対比して示す図である。
図12(A)は、上下アームのゲート抵抗値を共通とした場合の、下MOSFET12が還流モード中に上MOSFET11がオン時のクロス波形を示す。図12(A)は、図11(A)と同一である。図12(B)は、上下アームでゲート定数を非共通とした場合、具体的には下MOSFET12オフ時のゲート抵抗値L-RoffNを、上MOSFET11オフ時のゲート抵抗値H-RoffNの1.5倍に設定した条件下で、下MOSFET12が還流モード中に上MOSFET11がオンした場合のクロス波形を示す。
区間(1)-aと区間(1)-bでは、ドレイン電流Idが最大波高値まで達する時間は約100nsで等しい。しかし、区間(1)-aの最大波高値が約11Aであるのに対し区間(1)-bの最大波高値は約10Aであり、区間(1)-bの最大波高値が小さくなっていることがわかる。最大波高値を下げることで、スイッチング損失を改善することができる。
区間(2)-aでは、ドレイン電流Idが最大波高値(約11A)から定常値に落ち着くまでの時間は、約150nsである。区間(2)-bでは、ドレイン電流Idが最大波高値(約10A)から定常値に落ち着くまでの時間は、約125nsである。区間(2)-aと区間(2)-bでは、ドレイン電流Idが最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間が短くなっていることがわかる。ドレイン電流Idが最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間、すなわち逆回復時間が短くすることで、スイッチング損失を改善することができる。
図13は、上下アームのゲート抵抗値を共通/非共通にした場合の上アーム素子が還流モード中に下アーム素子がオンした際のクロス波形を対比して示す図である。
図13(A)は、上下アームのゲート抵抗値を共通とした場合の、上MOSFET11が還流モード中に下MOSFET12がオン時のクロス波形を示す。図13(A)は、図11(B)と同一である。図13(B)は、上下アームでゲート定数を非共通とした場合、具体的には下MOSFET12オン時のゲート抵抗値L-RonNを、上MOSFET11オン時のゲート抵抗値H-RonNの1/2とし、さらに下MOSFET12オフ時のゲート抵抗値L-RoffNを、上MOSFET11オフ時のゲート抵抗値H-RoffNの1.5倍に設定した条件下で、上MOSFET11還流モード中に下MOSFET12がオンした場合のクロス波形を示す。
区間(3)-aでは、ドレイン電流Idが最大波高値まで達する時間が約150nsであるのに対し区間(3)-bではドレイン電流Idが最大波高値まで達する時間が約125nsであり、ドレイン電流Idが最大波高値まで達する時間が短くなっていることがわかる。また、区間(3)-aの最大波高値が約11Aであるのに対し区間(3)-bの最大波高値は約10Aであり、区間(3)-bの最大波高値が小さくなっていることがわかる。ドレイン電流Idの最大波高値と、ドレイン電流Idが最大波高値まで達する時間のいずれもが改善されている。
区間(4)-aでは、ドレイン電流Idが最大波高値(約11A)から定常値に落ち着くまでの時間は、約100nsである。区間(4)-bでは、ドレイン電流Idが最大波高値(約10A)から定常値に落ち着くまでの時間は、約70nsである。区間(4)-aと区間(4)-bでは、ドレイン電流Idが最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間が短くなっていることがわかる。ドレイン電流Idが最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間、すなわち逆回復時間を短くすることができ、スイッチング損失を改善することができる。
すなわち、図4、図5及び図10のゲート回路31,32において、下MOSFET12オン時のゲート抵抗値L-RonNを、上MOSFET11オン時のゲート抵抗値H-RonNの1/2に設定して実測すると、ドレイン電流Idが最大波高値から定常値になるまでの時間が、上下アームのスイッチング素子11〜16のゲート抵抗値を共通にした場合よりも短くなる(約100nsから約70nsに短縮)ことが実験により確かめられた。言い換えれば、下アームのスイッチング素子オン時のゲート抵抗値は、上アームのスイッチング素子オン時ゲート抵抗値よりも1/2以下に設定するようにすれば、最大波高値から定常値に落ち着くまでの時間をスイッチング素子11〜16のゲート抵抗値を共通にした場合よりも短くすることが可能になる。
前記図12(A)の波形と図12(B)の波形を比較してスイッチング損失を計算する。
上記各波形においてスイッチング損失を計算すると、下還流における上オン時のスイッチング損失(図12(B)の区間(1)-b〜(2)-bまでのスイッチング損失)は約238μJとなり、図12(A)の波形に比べて約17%低減となる。
前記図13(A)の波形と図13(B)の波形を比較してスイッチング損失を計算する。
上記各波形においてスイッチング損失を計算すると、上還流における下オン時のスイッチング損失(図13(B)の区間(3)-b〜(4)-bまでのスイッチング損失)は約240μJとなり、図13(A)の波形に比べて約30%低減となる。
このように、本実施形態では、インバータ回路120内ゲート回路31,32のオン時オフ時それぞれに上下アームでゲート抵抗値を変えることで、ゲート抵抗値を共通にした場合と比較して、逆回復電流Irrによるスイッチング損失の増大を抑制することができる。
図14は、本発明の第2の実施形態のモータ制御装置を用いた空気調和機の構成図である。
図14に示すように、空気調和機200は、熱交換器201,202と、ファン203,204と、圧縮機205と、配管206と、モータ制御装置100(図2参照)と、から構成されている。
モータ制御装置100は、交流電源を直流に変換して、モータ駆動用のインバータ回路120(図2参照)に提供し、圧縮機205の内部に配置されている三相同期モータ130(図2参照)を駆動する。
第1の実施形態のモータ制御装置100を、空気調和機200のファンモータや、圧縮機205に適用することで、高効率で高い省エネ性能を有する空気調和機200を提供することが可能である。
例えば、本実施形態では、下アームオン時のゲート抵抗値L-RonNを、上アームオン時のゲート抵抗値H-RonNの1/2とし、さらに下アームオフ時のゲート抵抗値L-RoffNを、上アームオフ時のゲート抵抗値H-RoffNの1.5倍に設定した場合について説明したが、使用する素子や、目標とするスイッチング損失に合わせて、上下アームオン時、オフ時のゲート抵抗値H-RonN、H-RoffN、L-RonN、L-RoffNを調整すればよい。
21,22,23,24,25,26 寄生ダイオード
31,32 ゲート回路
31-a,32-a,31-b,32-b,31-c,32-c ゲート回路
100 モータ制御装置
110 直流電源
120 三相インバータ回路(インバータ回路)
130 三相同期モータ(モータ)
140 電流検出部
150 直流電圧検出部
160 モータ制御部
170 インバータ駆動部
161 CPU
162 ROM
163 RAM
164 記憶装置
166 バス
200 空気調和機
201,202 熱交換器
203,204 ファン
205 圧縮機
R1,R2,R3,R4,R5,R6 ゲート抵抗器
D1,D2 ダイオード
C1,C3 帰還容量成分
C2,C4 入力容量成分
Io 回路電流
PL 正の直流母線
NL 負の直流母線
ds 駆動制御信号
ir モータ回転数指令値
Claims (9)
- 直流電力を交流電力に変換し、該変換された交流電力でモータの駆動制御を行うインバータ回路を備え、
前記インバータ回路は、
前記直流電力が供給される正負の母線間の上アーム及び下アームに接続され、上下で1対を成すスイッチング素子を3対有し、該3対のスイッチング素子間が前記モータの動力線に接続され、
前記下アームの前記スイッチング素子オン時のゲート抵抗値が、前記上アームの前記スイッチング素子のオン時ゲート抵抗値よりも小さく設定され、且つ前記下アームの前記スイッチング素子オフ時のゲート抵抗値が、前記上アームの前記スイッチング素子オフ時のゲート抵抗値よりも大きく設定された
ことを特徴とするモータ制御装置。 - 前記下アームの前記スイッチング素子オン時のゲート抵抗値は、前記上アームの前記スイッチング素子オン時ゲート抵抗値よりも1/2以下に設定され、前記下アームの前記スイッチング素子オフ時のゲート抵抗値は、前記上アームの前記スイッチング素子オフ時のゲート抵抗値よりも1.5倍以上に設定された
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記スイッチング素子のドレイン電流が最大波高値まで達する時間において、前記最大波高値が上下アームの前記スイッチング素子のゲート抵抗値を共通にした場合よりも低くなるように、前記上下アームのゲート抵抗値を、当該上下アームで異なる値に設定する
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記スイッチング素子のドレイン電流が最大波高値から定常値になるまでの時間が、上下アームの前記スイッチング素子のゲート抵抗値を共通にした場合よりも短くなるように、前記上下アームのゲート抵抗値を、当該上下アームで異なる値に設定する
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記スイッチング素子のオン/オフ動作により当該素子のドレイン‐ソース間電圧又はドレイン電流に生じるリンギングが所定閾値以下となる、前記最大波高値又は前記定常値になるまでの時間を算出し、当該算出結果に基づいて前記上下アームのゲート抵抗値を、当該上下アームで異なる値に設定する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のモータ制御装置。 - 前記上アームの前記スイッチング素子を制御する上アームゲート回路は、
前記上アームの前記スイッチング素子のゲートと前記インバータ回路を駆動するインバータ駆動部との間に直列に接続されたゲート抵抗器R5及びゲート抵抗器R1と、
前記ゲート抵抗器R5と前記ゲート抵抗器R1との間にアノードが接続されたダイオードD1と、
前記ダイオードD1のカソードと前記インバータ駆動部との間に接続されたゲート抵抗器R2と、を備え、
前記下アームの前記スイッチング素子を制御する下アームゲート回路は、
前記下アームの前記スイッチング素子のゲートと前記インバータ駆動部との間に直列に接続されたゲート抵抗器R6及び接続ゲート抵抗器R3と、
前記ゲート抵抗器R6と前記ゲート抵抗器R3との間にカソードが接続されたダイオードD2と、
前記ダイオードD2のアノードと前記インバータ駆動部との間に接続されたゲート抵抗器R4と、を備え、
前記上アームゲート回路は、
前記上アームの前記スイッチング素子オン時には前記ゲート抵抗器R1が使用され、前記上アームの前記スイッチング素子オフ時には前記ゲート抵抗器R1及びゲート抵抗器R2が使用され、前記上アームの前記スイッチング素子オン/オフにかかわらず、前記ゲート抵抗器R5が接続され、
前記下アームゲート回路は、
前記下アームの前記スイッチング素子オン時には前記ゲート抵抗器R3及びゲート抵抗器R4が使用され、前記下アームの前記スイッチング素子オフ時は前記ゲート抵抗器R3が使用され、前記下アームの前記スイッチング素子オン/オフにかかわらず、前記ゲート抵抗器R6が接続される
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記スイッチング素子は、スーパー・ジャンクション・MOSFETを含むMOSFETである
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記スイッチング素子は、IGBTである
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。 - 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のモータ制御装置を備える
ことを特徴とする空気調和機。
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