JPWO2011152256A1 - 高周波モジュール - Google Patents

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Abstract

高周波モジュール(11)は、インダクタ(Lt1)と、ESD保護素子(12)とを備える。インダクタ(Lt1)は、ローパスフィルタ(LPF)を構成する回路素子であって、特定の周波数帯域で信号ラインとグランドとの間に寄生容量を持つ。ESD保護素子(12)は、信号ラインを流れるサージ電流をグランドに逃がす機能を持つとともに、特定の周波数帯域でキャパシタ(Cesd1)を持ち、キャパシタ(Cesd1)とインダクタ(Lt1)の寄生容量とは並列接続される構成である。

Description

この発明は、静電気による放電破壊を防止するESD(Electro-StaticDischarge;静電気放電)保護素子を設けた高周波モジュールに関する。
静電気による破壊を防ぐため、高周波モジュールにおいてESD保護素子が設けられることがある(例えば特許文献1参照)。ESDとは、帯電した導電性の物体(人体等)が、他の導電性の物体(電子機器等)に接触、あるいは充分接近したときに放電が発生する現象である。ESDにより電子機器の損傷や誤作動などの問題が発生するため、電子機器では放電により発生する電流(サージ電流)が回路に印加されることを防ぐ必要がある。このために使用されるのがESD保護素子であり、サージ吸収素子やサージアブソーバとも呼ばれている。
図1(A)は特許文献1を参考にした従来の高周波モジュール100の回路図である。高周波モジュール100はESD保護回路101とアンテナスイッチ102とを備え、アンテナスイッチ102の入力端子104と、アンテナ端子103との間にはESD保護回路101が直列に挿入される。図1(B)、図1(C)はESD保護回路101の構成例を示す回路図である。ESD保護回路101は信号ラインとグランドとにT型またはπ型で接続された複数の回路素子で構成され、アンテナ端子103からのサージ電流をグランドに逃がすことでアンテナスイッチ102の破壊を防ぐ機能を持つ。
特開2005−123740号公報
従来の高周波モジュールでは、ESD保護素子を設けることで信号ラインにおける信号伝搬距離が延長され、これにより信号の損失(導体損)が増大してしまう。また、ESD保護素子を接続することでインピーダンスの整合がずれて信号の損失(反射損)が増大してしまう。
そこで、本発明は、ESD保護機能を実現しながら、信号伝搬距離の延長とインピーダンスミスマッチングの発生とを防ぐことが可能な、高周波モジュールの提供を目的とする。
この発明は、アンテナを伝わる複数の通信信号から特定の通信信号を選別する信号選別回路と、ESD保護素子と、を備える高周波モジュールにおいて、信号選別回路は、前記通信信号が流れる信号ラインとグランドとの間に、前記通信信号の周波数帯域で容量成分を持つ回路素子を含んで構成され、ESD保護素子は、前記通信信号の周波数帯域で容量成分を持つとともに、該容量成分と前記回路素子の容量成分とが、前記通信信号の周波数帯域での等価回路において並列接続される構成である。
この構成では、ESD保護素子を信号ラインとグランドとの間に並列接続するので、信号ラインにおけるESD保護素子による信号伝搬距離の延長がなく、これによる伝送損失の増大が発生しない。さらには、信号選別回路を構成する回路素子に対してESD保護素子を並列に接続するので、それらの容量成分が一つの合成容量として機能し、この合成容量を所望値に設計することでインピーダンスの整合をとることが可能になる。したがって、ESD保護素子を設置することに起因するインピーダンスミスマッチングの発生と、これによる反射損失の増大を防ぐことができる。
この発明の前記回路素子は、前記信号ラインとグランドとの間に接続されるキャパシタであると好適である。
この構成では、信号選別回路を構成する既存のキャパシタの持つ容量と、新たに付設するESD保護素子の持つ容量との合成容量を所望値に設計することでインピーダンスの整合をとり、ESD保護素子を設置することによる反射損失の増大を防ぐことが可能になる。
この発明の前記信号選別回路は、低域通過フィルタを含んで構成され、前記低域通過フィルタの前記アンテナに接続される端子とは異なる端子に前記キャパシタ及び前記ESD保護素子とが並列接続される構成であってもよい。
この発明の回路素子は、前記信号ラインと、前記信号ラインに誘電体層を介して対向するグランド電極とで構成されるストリップラインまたはマイクロストリップラインであると好適である。
この構成では、ストリップラインまたはマイクロストリップラインの信号ラインとグランド電極間で構成される容量と、新たに付設するESD保護素子の持つ容量との合成容量を所望値に設計することでインピーダンスの整合をとり、ESD保護素子を設置することによる反射損失の増大を防ぐことが可能になる。
この発明のESD保護素子は、誘電体多層基板と一対の放電電極と外部電極とを備え、外部電極を介して信号選別回路に接続されるチップ型の構成であると好適である。また、高周波モジュールが備える積層回路基板に形成された空洞部と一対の放電電極と混合部とによってESD保護素子が積層回路基板と一体に形成された構成であっても好適である。なお、混合部は金属材料と誘電体材料とからなり空洞部に露出する位置に設ける。一対の放電電極は、空洞部内で間隔を隔てて先端同士が対向するように配置された対向部を有する。外部電極は、放電電極に接続され誘電体多層基板の表面に形成される。
これらの構成では、空洞部内に配置された一対の放電電極に所定の大きさを超える電圧が印加されると、混合部を介して放電が起こり、サージ電流がグランドに流れることになる。また、一対の放電電極によって、ESD保護素子が通信信号の周波数帯域で容量成分を持つことになる。
この発明の信号選別回路は、通信信号を処理するダイオードスイッチ回路またはFETスイッチ回路を備えて構成されると好適である。
ダイオードおよびFETは静電気に弱い半導体が材料であるので、ESD保護素子を付加する必要性が大きい。
この発明によれば、ESD保護機能を実現しながら、信号伝搬距離の延長とインピーダンスミスマッチングの発生とを防ぐことが可能な、高周波モジュールを提供することができる。
従来の高周波モジュールの構成を説明する図である。 本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュールの回路図である。 第1の実施形態に係る高周波モジュールの積層図である。 第1の実施形態に係る高周波モジュールの断面図である。 第2の実施形態に係る高周波モジュールの回路図である。 第2の実施形態に係る高周波モジュールの積層図である。 第3の実施形態に係る高周波モジュールの回路図である。 第3の実施形態に係る高周波モジュールの積層図である。 第4の実施形態に係る高周波モジュールの断面図である。
《第1の実施形態》
本発明の第1実施形態に係る高周波モジュールについて、GSM850、GSM900、GSM1800、およびGSM1900の4つの通信信号に対応する高周波モジュール11を例に説明する。
図2は、高周波モジュール11の詳細な回路構成を説明する回路図である。
高周波モジュール11は、ESD保護素子12、ダイプレクサDPX、スイッチ回路SW1,SW2、ローパスフィルタLPF1,LPF2、および表面弾性波フィルタSAW1,SAW2を備える。ダイプレクサDPX、スイッチ回路SW1,SW2、ローパスフィルタLPF1,LPF2によって請求項に記載の信号選別回路が構成される。また、外部接続ポートとして、アンテナポートANT、信号ポート1800/1900-Tx,1800-Rx,1900-Rx,850/900-Tx,850-Rx,900-Rx、および制御ポートVc1,Vc2、を備える。
ダイプレクサDPXは、ローパスフィルタLPFとハイパスフィルタHPFとを備える。ダイプレクサDPXにおけるローパスフィルタLPFとハイパスフィルタHPFとの接続点には、アンテナポートANTを接続するとともに、ESD保護素子12を接続する。
ESD保護素子12は、少なくとも当該高周波モジュールの通信帯域では小さい容量(例えば、0.05pF程度)のキャパシタCesd1として機能するものであり、アンテナポートANTとグランドとの間に接続している。アンテナポートANTからの信号ラインにサージ電流が印加されると、キャパシタCesd1は短絡してサージ電流をグランドに流す。
ハイパスフィルタHPFは、GSM1800およびGSM1900の信号を通過させGSM850およびGSM900の信号を減衰させる高域通過フィルタである。より詳細には、ハイパスフィルタHPFはキャパシタCc1,Cc2、インダクタLt2、およびキャパシタCt2を備え、アンテナポートANTとスイッチ回路SW1との間の信号ラインにキャパシタCc1,Cc2の直列回路を挿入し、キャパシタCc1,Cc2の接続点をインダクタLt2、およびキャパシタCt2の直列回路を介してグランドへ接続する。
ローパスフィルタLPFは、GSM850およびGSM900の信号を通過させGSM1800およびGSM1900の信号を減衰させる低域通過フィルタである。ローパスフィルタLPFは、キャパシタCt1、インダクタLt1、およびキャパシタCu1を備える。より詳細には、アンテナポートANTとスイッチ回路SW2との間にインダクタLt1と、インダクタLt1に並列に接続されるキャパシタCt1とを挿入し、また、インダクタLt1およびキャパシタCt1とスイッチ回路SW2との接続点とグランド電極との間にキャパシタCu1を挿入して、ローパスフィルタLPFが構成される。
スイッチ回路SW1は、ダイオードDD1、インダクタDSLt、キャパシタDCt1、インダクタDSL1、インダクタDSL2、キャパシタDC、インダクタDL、ダイオードDD2、キャパシタDC5、抵抗Rd、およびキャパシタC1を備え、GSM1800およびGSM1900の送信信号と受信信号とを分離する。
スイッチ回路SW2は、ダイオードGD1、インダクタGSL1、インダクタGSL2、キャパシタGC、インダクタGL、ダイオードGD2、キャパシタGC5、抵抗Rg、およびキャパシタC1を備え、GSM850およびGSM900の送信信号と受信信号とを分離する。
ローパスフィルタLPF1は、インダクタDLt1,DLt2、キャパシタDCc1,DCc2、およびキャパシタDCu1,DCu2,DCu3を備え、GSM1800およびGSM1900の送信信号の2次高調波および3次高調波成分を除去する低域通過フィルタを構成する。
ローパスフィルタLPF2は、インダクタGLt1、キャパシタGCc1、およびキャパシタGCu1,GCu2を備え、GSM850およびGSM900の送信信号の2次高調波および3次高調波成分を除去する低域通過フィルタを構成する。
表面弾性波フィルタSAW1は、GSM1800の受信信号とGSM1900の受信信号とを分離する。表面弾性波フィルタSAW2は、GSM850の受信信号とGSM900の受信信号とを分離する。
なお、スイッチ回路SW1,SW2、ローパスフィルタLPF1,LPF2、表面弾性波フィルタSAW1,SAW2の構成について既知であるため、詳細な説明を省略する。
以上の構成において、信号選別回路を構成する回路素子、特にスイッチ回路SW2のダイオードGD1やダイオードGD2は、従来、アンテナポートANTからのサージ電流の印加によって放電破壊が生じる危険性が高かった。しかしながら本実施形態では、それらのダイオードGD1,GD2よりもアンテナポートANT側にESD保護素子12を接続しているので、ダイオードGD1,GD2は放電破壊から保護することができる。
また、ダイプレクサDPXに設けるESD保護素子12は、アンテナポートANTから各信号ポートにつながる信号ラインに対して直列ではなく、信号ラインとグランドとの間に並列接続している。これにより、ダイプレクサDPXにおいてESD保護素子12を設けても信号伝搬距離の延長がなく、伝送損失の増大がない。
さらには、ローパスフィルタLPFのインダクタLt1は後で詳細に説明するストリップラインの構造になっており、請求項に記載の容量成分を持つ回路素子に相当し、信号ラインとグランドとの間に容量成分(不図示)を持つ。従って、この容量は、信号ラインとグランドの間に接続され、キャパシタCesd1として機能するESD保護素子12と並列に接続される。通常、この容量はダイプレクサDPXの周波数特性を調整するために適切な設定値に設定されるが、本実施形態ではインダクタLt1の容量(不図示)とキャパシタCesd1とで構成される合成容量を適切に設定することで、ESD保護素子12を設けたことによるインピーダンスの整合ずれ(ミスマッチング)と、それによる反射損失の増大を防ぐことができる。
次に、高周波モジュール11を構成する積層回路基板11Aの詳細構成について説明する。
図3は、積層回路基板11Aの具体例を説明する積層図である。
なお図3において、積層回路基板11Aの底面の層を第1層とし、天面側にむかって層番号が増加し、積層回路基板11Aの天面の層を第24層としている。図中に記載されている符号は、それぞれ図2で示した回路構成に対応している。また、図中に記載されている○印は、導電性のビアホールを示し、当該ビアホールにより積層方向にならぶ各層の電極間の導電性を確保している。
積層回路基板11Aは合計24層の誘電体層が積層された構造であり、各種インダクタやキャパシタなどを内部電極パターンで実現するとともに、各ポートを基板底面の電極パターンで実現し、チップ型の実装部品を接続する電極を基板天面の電極パターンで実現する。
積層回路基板11Aの底面に対応する第1層の底面側には、アンテナポートANTを含む複数のポートとなる電極パターンを形成している。アンテナポートANTは第1層から第4層までビアホールで引き回し、第5層に設けた内部電極パターンに接続している。この内部電極パターンはESD保護素子12の一部を構成している。
ここで、ESD保護素子12の概略構成を説明する。図4(A)は、高周波モジュール11の断面図であり、図4(B)は、ESD保護素子12の断面図である。
高周波モジュール11は、積層回路基板11Aに、複数の回路素子11B,11CとESD保護素子12とを設けた構成である。積層回路基板11Aは上述の図3の説明のようにセラミックあるいは樹脂等の複数の誘電体層を積層してなる。回路素子11Bは、積層回路基板11Aの各誘電体層間または表面に所定パターンで形成していて、回路素子11Cは、積層回路基板11Aの内部または上面に配置したチップ型搭載部品である。ESD保護素子12は、積層回路基板11Aの内部に設けた空洞部12Cと、先端が空洞部12C内に突出する放電電極12A,12Bと、積層回路基板11Aの誘電体層の一部領域に金属粒子を分散させてなり、空洞部12Cに部分的に露出する混合部12Dと、を備える。放電電極12A,12Bはそれぞれ、混合部12Dの表面に積層されていて、互いの先端が空洞部12C内で間隔を隔てて対向する対向部を構成している。
このような構成のESD保護素子12に対して、放電電極12A,12Bの一方をアンテナからの通信信号が流れる信号ラインに、他方をグランドに接続しておくと、放電電極12A,12B間が高周波的に容量を持つ。そして、信号ラインにサージ電流が印加された場合、放電電極12A,12B間が混合部12Dの金属粒子を介して短絡し、サージ電流がグランドに流れる。したがって、高周波モジュール11のサージ電流による破壊を防ぐことが可能になる。
なおESD保護素子12は、少なくとも放電電極12A,12Bを備える構成であればよく、混合部12Dを設けず、放電電極12A,12Bを極めて近接させた構成としてもよい。また、積層回路基板11Aと一体に構成する基板一体型の構成ではなく、積層回路基板11Aとは別体に構成されるチップ型の回路素子11Cとして構成としてもよい。
再び図3に戻り説明する。上述のESD保護素子12は、積層回路基板11Aの第5層をくり抜いて空洞部11C(符号不図示)を形成していて、放電電極12A,12B(符号不図示)の一方は第6層に設けたグランド電極に接続されている。
また、アンテナポートANTは第1層から第8層までビアホールで引き回し、第8層から第14層に設けた電極パターンからなるインダクタLt1に接続している。インダクタLt1は第8層〜第14層の内部電極パターンが、誘電体層を介して、第6層に設けたグランド電極GNDと対向するストリップライン構造となっており、高周波的に容量成分を持つ。
本実施形態の高周波モジュール11においては、インダクタLt1の容量とESD保護素子12の持つ容量との合成容量を、ESD保護素子12を設けない従来構造におけるインダクタLt1の容量と同等なものにするために、インダクタLt1とESD保護素子12のうちの少なくとも一方を調整する。インダクタLt1の容量は、インダクタLt1を構成する内部電極パターンとグランド電極との対向面積を変えることで調整でき、ESD保護素子12の容量は放電電極12Aと12Bの間隔を変えることで調整できる。
これにより、この高周波モジュール11では、ESD保護素子12の影響によりインピーダンスの整合がずれて反射損失が増大することを防ぐことができる。
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2実施形態に係る高周波モジュールについて説明する。図5は本実施形態の高周波モジュール21の回路図である。
本実施形態の高周波モジュール21は、第1の実施形態の高周波モジュール11とはESD保護素子22の接続位置が相違する。具体的には、アンテナポートANTとインダクタLt1との接続点ではなく、インダクタLt1とキャパシタCu1との接続点に、ESD保護素子22を接続する。
ESD保護素子22は、当該高周波モジュールの通信帯域では小さい容量(例えば0.05pF程度)のキャパシタCesd2として機能するものであり、アンテナポートANTからの信号ラインにサージ電流が印加されると、キャパシタCesd2は短絡してサージ電流をグランドに流す。キャパシタCu1は請求項に記載の容量成分を持つ回路素子に相当し、キャパシタCesd2と並列に、信号ラインとグランドとの間に接続される。
図6は、高周波モジュール21の積層図である。高周波モジュール21を形成する積層回路基板では、アンテナポートANTは第1層から第8層までビアホールで引き回してインダクタLt1に接続している。インダクタLt1は第8層から第14層に設けた電極パターンからなる。また、インダクタLt1は、第13層から第5層までビアホールで引き回してキャパシタCu1に接続している。キャパシタCu1は、第5層に設けた内部電極パターンと、第4層、第6層に設けたグランド電極とが、対向することにより構成される。ESD保護素子22は、第5層に設けたキャパシタCu1を構成する一方の電極である内部電極パターンと、第6層に設けたキャパシタCu1を構成する他方の電極であるグランド電極との間に接続している。従って、ESD保護素子とキャパシタCu1とは並列に接続されている。
本実施形態の高周波モジュール21においては、キャパシタCu1を形成する一対の対向電極同士の対向面積を従来よりも低減し、キャパシタCu1の容量とキャパシタCesd2の容量との合成容量を従来構造(ESD保護素子22を設けない構造)におけるキャパシタCu1の容量と同等なものにする。これにより、この高周波モジュール21では、ESD保護素子22の影響による整合ずれ、およびこれによる反射損失の発生を防止できる。
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3実施形態に係る高周波モジュールについて説明する。図7は本実施形態の高周波モジュール31の回路図である。
本実施形態の高周波モジュール31は、第1の実施形態の高周波モジュール11および第2の実施形態の高周波モジュール21とはESD保護素子32の接続位置が相違する。具体的には、ダイプレクサDPXではなく、スイッチ回路SW2のインダクタGSL2とダイオードGD2とキャパシタGCとの接続点に、ESD保護素子32を接続する。
ESD保護素子32は、当該高周波モジュールの通信帯域では小さい容量(例えば0.05pF程度)のキャパシタCesd3として機能するものであり、信号ラインを介してインダクタGSL2からキャパシタGCとダイオードGD2にサージ電流が印加されるとキャパシタCesd2は短絡してサージ電流をグランドに流す。インダクタGSL2は請求項に記載の回路素子に相当し、第1の実施形態のインダクタLt1と同様に、信号ラインとグランドとの間に接続される容量成分を持つストリップライン構造となっており、キャパシタCesd3と並列接続される。
図8は、高周波モジュール31の積層図である。
高周波モジュール31の積層回路基板では、インダクタGSL2は第8層から第18層に設けた内部電極パターンが誘電体層を介して、第6層に設けたグランド電極GNDに対向するストリップライン構造であり、高周波的に容量成分を持つ。インダクタGSL2を構成する内部電極パターンは、第18層に設けたビアホールを介して、第19層に設けたESD保護素子32の一端に接続している。また、ESD保護素子32の他端は第19層に設けたビアホールを介して、第20層に設けたグランド電極GNDに接続している。従って、インダクタGSL2とESD保護素子32は信号ラインとグランドの間で並列接続される。
本実施形態の高周波モジュール31においては、インダクタGSL2の容量とキャパシタCesd3の容量との合成容量を従来構造におけるインダクタGSL2の容量と同等なものに調整する。これにより、この高周波モジュール31では、ESD保護素子32の影響による整合ずれ、および反射損失の発生を防止できる。
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4実施形態に係る高周波モジュールについて説明する。図9(A)は本実施形態の高周波モジュール41の断面図であり、図9(B)は、高周波モジュール41が備えるESD保護素子42の断面図である。
本実施形態の高周波モジュール41は、基板一体型ではなくチップ型のESD保護素子42を備える構成である。ESD保護素子42は、内部空洞を備える誘電体多層基板であるキャビティ42Cと、キャビティ42Cの内部空洞内で先端同士が対向する放電電極42A,42Bと、放電電極42A,42Bに導通する外部電極42Eとを備え、キャビティ42Cの内壁面の一部を混合部42Dとし、キャビティ42Cの外面に外部電極42Eを設けた構成である。
この高周波モジュール41においても、前述の各実施形態の回路構成と同様な回路構成とすることで、ESD保護機能を実現しながら、ESD保護素子42を設置することに起因する伝送損失の増大や、インピーダンスミスマッチングの発生を防ぐことが可能になる。
以上の各実施形態で例示するように本発明は実施できるが、アンテナポートに対して直接、またはアンテナポートに対してインダクタを介して接続される半導体回路素子はサージによる破壊の危険性が高いので、アンテナポートからその半導体回路素子までの信号ラインとグランドとの間に、確実に本発明のESD保護素子が設けられることが望ましい。
また、ESD保護素子の配置位置は、サージ電流による破壊からの保護の確実性という観点からは保護すべき回路素子に、アンテナ側からできるだけ近接して配置されることが望ましく、保護すべき回路素子が複数の場合にはESD保護素子も複数設けると好適である。一方、小型化の観点からはアンテナからの信号ラインが分岐する前の位置に、ESD保護素子を設けると好適である。
また、ダイプレクサだけではなくスイッチモジュールや、他のマルチバンド対応、シングルバンド対応の高周波モジュールの構成などにも本発明は適用できる。本発明は実施形態の記載に制限されるものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
11,21,31…高周波モジュール 11A…積層回路基板 11B…電極状回路素子 11C…チップ状回路素子 12,22,32…ESD保護素子 12A,12B…放電電極 12C…空洞部 12D…混合部 DPX…ダイプレクサ HPF…ハイパスフィルタ LPF,LPF1,LPF2…ローパスフィルタ SW1,SW2…スイッチ回路 SAW1,SAW2…表面弾性波フィルタ

Claims (7)

  1. アンテナを伝わる複数の通信信号から特定の通信信号を選別する信号選別回路と、ESD保護素子と、を備える高周波モジュールにおいて、
    前記信号選別回路は、前記通信信号が流れる信号ラインとグランドとの間に、前記通信信号の周波数帯域で容量成分を持つ回路素子を含んで構成され、
    前記ESD保護素子は、前記通信信号の周波数帯域で容量成分を持つとともに、該容量成分と前記回路素子の容量成分とが、前記通信信号の周波数帯域の等価回路において並列接続される構成である、高周波モジュール。
  2. 前記回路素子は、前記信号ラインとグランドとの間に接続されるキャパシタである、請求項1に記載の高周波モジュール。
  3. 前記信号選別回路は、低域通過フィルタを含んで構成され、前記低域通過フィルタの前記アンテナに接続される端子とは異なる端子に前記キャパシタ及び前記ESD保護素子とが並列接続される構成である、請求項2に記載の高周波モジュール。
  4. 前記回路素子は、前記信号ラインと、前記信号ラインに誘電体層を介して対向するグランドとで構成されるストリップラインまたはマイクロストリップラインである、請求項1に記載の高周波モジュール。
  5. 前記ESD保護素子は、内部に空洞部が設けられた誘電体多層基板と、前記空洞部内で間隔を隔てて先端同士が対向するように配置された対向部を有する放電電極対と、前記誘電体多層基板の表面に形成され、前記放電電極と接続される外部電極とによってチップ型に構成され、前記誘電体多層基板は、前記放電電極の設けられた表面近傍であって、すくなくとも前記対向部および前記対向部間の部分に隣接して配置される、金属材料と誘電体材料を含む混合部を備え、
    前記外部電極を介して、前記ESD保護素子が前記信号選別回路に接続されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の高周波モジュール。
  6. 誘電体層と電極層とが積層されることによって、前記信号選別回路が形成された積層回路基板において、
    前記積層回路基板の内部には空洞部が形成され、前記空洞部内で間隔を隔てて先端同士が対向するように配置された対向部を有する放電電極対が形成され、
    前記誘電体層は、前記放電電極の設けられた表面近傍であって、少なくとも前記対向部および前記対向部間の部分に隣接して配置される、金属材料と誘電体材料を含む混合部を備え、
    前記空洞部と、前記放電電極対と、前記混合部とによって、前記ESD保護素子が形成され、前記放電電極対を介して、前記信号選別回路と接続されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の高周波モジュール。
  7. 前記帯域回路は、通信信号を処理するダイオードスイッチ回路またはFETスイッチ回路を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の高周波モジュール。
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