JPWO2011132731A1 - 酸化物超電導導体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の酸化物超電導導体は、基材と、前記基材上に形成された酸化物超電導層とを備え、前記酸化物超電導層は、REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)の組成式で表される酸化物超電導体からなり、且つTbを含む異相が分散されている。

Description

本発明は、酸化物超電導導体及びその製造方法に関する。
本願は、2010年4月21日に、日本国に出願された特願2010−097808号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
RE123系の酸化物超電導体は、REBaCu(RE:Y、Gdなどの希土類元素、6.5<y<7.1)の組成で表記され、液体窒素温度(77K)よりも高い臨界温度を有しており、超電導デバイス、変圧器、限流器、モータ、又はマグネット等の超電導機器への応用が期待されている。
一般に、RE123系の酸化物超電導体を用い良好な結晶配向性を持つように成膜された超電導体は、無磁場下で高臨界電流特性を示す。しかしながら、超電導状態の超電導体に磁場を印加し、電流を流すと、超電導体に侵入している量子化磁束にローレンツ力が生じる。この時、ローレンツ力によって量子化磁束が移動すると、電流の方向に電圧が発生し、抵抗が生じてしまう。このローレンツ力は、電流値が増加するほど、また磁場が強くなるほど大きくなるので、抵抗も大きくなり、臨界電流特性が低下してしまう。
その解決策として、一般的に超電導層内に不純物又は欠陥などのナノスケールの異相を混入させ、磁束をピン止め(ピンニング)することで、超電導体の磁界中での臨界電流特性が改善されることが知られている。
このような手法としては、例えば、超電導材料のREとBaの置換量、超電導層成膜時の基板温度、又は酸素分圧を制御して、超電導層中に生成する積層欠陥の量を制御することにより、超電導積層体中に微細なピンニング点を導入する方法(特許文献1参照)が提案されている。或いは、RE123系の酸化物超電導体からなる超電導層中に、BaZrO、BaWO、BaNb、BaSnO、BaHfO又はBaTiOなどのペロブスカイト構造を有するBa酸化物の柱状結晶を、超電導層の膜厚方向に間欠的に並べて導入する方法(特許文献2参照)等が提案されている。
特開2005−116408号公報 特開2008−130291号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるような、積層欠陥導入により磁場中の臨界電流特性を改善しようとする試みでは、高臨界電流を可能とする超電導薄膜形成のための最適な条件を意図的に外す方針となる。本来、超電導層の成膜の際には成膜条件の厳密な制御が必要である。したがって、特許文献1に記載のように酸素分圧又は基板温度等の成膜条件を変化させて超電導層を成膜する方法は、最適成膜条件からずれた成膜方法になる。このため、臨界電流特性が大きく劣化したり、欠陥量の制御が困難となり、その長尺に亘り均一な臨界電流特性を有した超電導線材を作製することが難しくなるといった問題があった。
また、特許文献2に記載されるような、柱状結晶を超電導層に導入することにより磁場中の臨界電流特性を改善する試みでは、上記積層欠陥の制御よりは簡便であるが、無磁場あるいは極低磁場領域での臨界電流特性が低下するといった問題がある。また、柱状結晶がc軸(超電導層の膜厚方向;超電導線材の基材に垂直方法)に平行に大きく成長しすぎることで、c軸方向に磁場が印加された場合には、量子化磁束の動きを抑制する強い効果が得られるものの、c軸に対して45°の方向等、他の角度に磁場が印加された場合には、量子化磁束の動きを抑制する効果が弱いため、臨界電流特性の低下が若干大きくなってしまうという問題があった。
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、磁場中の臨界電流の低下を抑制し、良好な臨界電流特性を有する酸化物超電導導体及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1態様の酸化物超電導導体は、基材と、前記基材上に形成された酸化物超電導層とを備える。前記酸化物超電導層は、REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)の組成式で表される酸化物超電導体からなる。前記酸化物超電導層においては、Tbを含む異相が分散されている。
本発明の第1態様の酸化物超電導導体においては、前記異相が、BaとTbを含む酸化物であることが好ましい。
本発明の第1態様の酸化物超電導導体においては、前記異相が、4価の前記Tbに起因した柱状結晶と、3価の前記Tbに起因した点欠陥とを有することが好ましい。
本発明の第1態様の酸化物超電導導体においては、前記Tbが、前記REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)に対して0.1質量%以上4質量%以下の範囲で前記酸化物超電導層に含有されていることが好ましい。
本発明の第1態様の酸化物超電導導体においては、前記基材と前記酸化物超電導層との間に、中間層とキャップ層とがこの順に介在され、前記酸化物超電導層上に安定化層が形成されてなることが好ましい。
上記課題を解決するため、本発明の第2態様の酸化物超電導導体の製造方法は、REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)の組成式で表される酸化物超電導体の構成元素とTbを含むターゲットを使用し、物理気相蒸着法により、基材上にTbを含む異相が分散された酸化物超電導層を形成する。
本発明の第2態様の酸化物超電導導体の製造方法においては、前記ターゲットとして、前記REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)を含む粉末に対して、Tbの粉末を0.1mol%以上5mol%以下の範囲で混入させて焼結させたものを用いることが好ましい。


本発明の第1態様の酸化物超電導導体には、価数が3価と4価を取り得るTbがRE123系の酸化物超電導層中に導入されている。これにより、Tbを含む異相、より詳しくは、4価のTbに起因する柱状結晶と、3価のTbに起因する点欠陥とが、酸化物超電導層中に混在している。これにより、c軸方向に磁場を印加した場合では、柱状結晶によって、量子化磁束の動きを抑制するピン止め効果が得られる。一方、c軸方向以外の方向に磁場を印加した場合では、点欠陥によって量子化磁束の動きを抑制することができる。すなわち、点欠陥においては磁場への異方性が少なく、等方的に量子化磁束の動きを抑制することができる。また、Tbは3価と4価を取り得ることから、4価のTbに起因する柱状結晶は、従来の単純なペロブスカイト構造の柱状結晶の人工ピンに比べると、c軸方向の成長が抑制される傾向となる。その結果、4価のTbの柱状結晶においては、c軸方向の結晶が程良い長さで成長し、かつ、3価のTbに起因する点欠陥の等方的なピン止め効果が相乗的に作用し、磁場が印加される全ての角度の領域において、臨界電流特性の改善が可能となる。
本発明の第2態様の酸化物超電導導体の製造方法では、REBaCuの組成式で表される酸化物超電導体の構成元素とTbとを所望の割合で混入させた原料を用いることにより、簡便に、臨界電流特性が良好な酸化物超電導導体を製造できる。また、パルスレーザ蒸着法(PLD法)等の物理気相蒸着法で、REBaCuの組成式で表される酸化物超電導体の構成元素とTbとを含むターゲットを使用することにより、従来の成膜装置を使用して、簡便な工程で酸化物超電導導体を製造できる。
本発明に係る酸化物超電導導体の一例を示す概略斜視図である。 本発明の酸化物超電導導体の製造方法で使用される成膜装置の一例を示す概略斜視図である。 臨界電流の磁場印加角度依存性を示すグラフである。
本発明の酸化物超電導導体及びその製造方法の一実施形態について説明する。
本発明の酸化物超電導導体は、基材と、基材上に形成された酸化物超電導層とを備える。前記酸化物超電導層は、REBaCu(RE123;式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)の組成式で表される酸化物超電導体からなる。また、この酸化物超電導層にはTbを含む異相が分散されている。
図1は、本発明に係る酸化物超電導導体の一例を示す概略斜視図である。図1に示す酸化物超電導導体10は、基材11の上に、ベッド層12と中間層13とキャップ層14と酸化物超電導層15とがこの順に積層されている。酸化物超電導層15の上には、安定化層16が積層されている。酸化物超電導導体10において、ベッド層12は略することもできる。
本実施形態の酸化物超電導導体10に適用できる基材11としては、通常の超電導線材又は超電導導体の基材として使用可能であって、高強度を有する基材であればよい。基材11の形状としては、長尺のケーブルを形成するためにテープ状であることが好ましい。基材11の材質としては、耐熱性の金属が好ましい。この金属としては、例えば、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ(米国ヘインズ社登録商標)等のニッケル合金等の各種金属材料が挙げられ、もしくは、これら各種金属材料上にセラミックスが配された材料等が挙げられる。各種耐熱性の金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイが好適である。ハステロイとしては、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材11の厚さは、目的に応じて適宜調整すればよく、通常は、10〜500μmである。
ベッド層12は、耐熱性が高く、基材11との界面反応性を低減し、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層12は、必要に応じて配され、例えば、イットリア(Y)、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)等から構成される。ベッド層12は、例えば、スパッタリング法等の成膜法により形成され、ベッド層12の厚さは例えば10〜200nmである。
また、本発明において、酸化物超電導導体10の構造としては図1に示す構造に限られず、基材11とベッド層12との間に拡散防止層が介在された構造を用いてもよい。拡散防止層は、基材11の構成元素がベッド層12を介して酸化物超電導層15へと拡散するのを防止する目的で形成された層であり、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、あるいは希土類金属酸化物等から構成される。拡散防止層の厚さは、例えば10〜400nmである。なお、拡散防止層の結晶性は問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すればよい。
後述する中間層13又はキャップ層14および酸化物超電導層15等の他の層を基材11上に形成する際に、このような層が必然的に加熱されたり熱処理される結果として熱履歴を受けると、基材11の構成元素の一部がベッド層12を介して酸化物超電導層15に拡散することがある。このため、基材11とベッド層12との間に拡散防止層を介在させることにより、この構成元素の拡散を抑制することができる。特に、拡散防止層とベッド層12とが積層された2層構造を採用することで、基材11側から基材11の上方に向けて元素が拡散することを効果的に抑制することができる。基材11とベッド層12との間に拡散防止層を介在させる場合の例としては、拡散防止層としてAlを用い、ベッド層12としてYを用いる組み合わせを例示できる。
中間層13の構造は、単層構造あるいは複層構造のいずれでもよい。中間層12の材質としては、その上に積層される酸化物超電導層15の結晶配向性を制御するために、2軸配向する物質から選択される。中間層13の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示できる。
中間層13の厚さは、目的に応じて適宜調整すればよいが、通常は、0.005〜2μmの範囲である。
中間層13は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する)、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層15又はキャップ層14の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、金属酸化物の蒸着時に、下地の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、GdZr、MgO又はZrO−Y(YSZ)からなる中間層13は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
キャップ層14は、中間層13の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面に平行な方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成された層であることが好ましい。このようなキャップ層14は、前記金属酸化物層からなる中間層13よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層14の材質は、上記機能を発現し得る材質であれば特に限定されないが、好ましい材質として具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層14の材質がCeOである場合、キャップ層14は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいてもよい。
このCeO層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが望ましい。PLD法によるCeO層の成膜条件としては、基材の温度が約500〜1000℃に設定され、圧力が約0.6〜100Paに設定され、成膜ガス(ガス雰囲気)として酸素が用いられた条件が挙げられる。
CeO層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましく、500nm以上であれば更に好ましい。但し、CeO層が厚すぎると、結晶配向性が悪くなるので、その膜厚は500〜1000nmであることが好ましい。
このように、良好な配向性を有するキャップ層14上に後述する酸化物超電導層15を形成すると、酸化物超電導層15もキャップ層14の配向性に整合するように結晶化する。よってキャップ層14上に形成された酸化物超電導層15は、結晶配向性に乱れが殆どない。また、酸化物超電導層15を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、基材11の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、基材11の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られた酸化物超電導層15は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、基材11の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
酸化物超電導層15は、RE123系の酸化物超電導体からなり、酸化物超電導層15においては、Tbを含む異相が分散されている。RE123系の酸化物超電導体は、REBaCu(式中、REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)なる組成で表される物質であり、このような物質の中でも、GdBaCu、YBaCuが好ましい。
酸化物超電導層15に分散されている異相は、Tbを含み、この異相が常電導部分となり酸化物超電導層15中の量子化磁束の動きを抑制する人工ピンとして機能する。
Tbは希土類元素の中でも価数が3価と4価を取り得る珍しい元素である。このようなTbをREBaCu(RE123系)の酸化物超電導層15中に導入すると、4価のTbはBaとの酸化物であるBaTbOを形成し柱状結晶として成長する。また、3価のTbは、Tbまたはそれに類する酸化物を形成し、酸化物超電導層15中に点状の欠陥(点欠陥)として存在する。
従来、RE123系超電導層の量子化磁束の人工ピンとして知られている物質としては、Zrなどの4価の元素が用いられてきた。この場合では、Zrを導入することにより、BaZrO等のペロブスカイト構造の柱状結晶をc軸方向(超電導層の膜厚方向;基材の垂直方向)に成長させている。しかしながら、このような従来の柱状結晶の人工ピンでは、c軸方向に結晶が成長しすぎてしまい、c軸方向の磁場中では良好な臨界電流特性となるが、c軸に垂直な方向(超電導層の水平方向;基材の水平方向)など、c軸よりずれた方向の磁場が印加されると臨界電流特性の低下が起こるという問題があった。すなわち、人工ピンとして柱状結晶を導入する方法では、磁場への異方性が強いという問題があった。
本発明においては、価数が3価と4価を取りうるTbを酸化物超電導層15中に導入することにより、4価のTbに起因する柱状結晶と、3価のTbに起因する点欠陥とが酸化物超電導層15中に混在している。これにより、c軸方向に磁場を印加した場合では、4価のTbに起因する柱状結晶によって、量子化磁束の動きを抑制するピン止め効果が得られ、c軸方向以外の方向に磁場を印加した場合では、3価のTbに起因する点欠陥によって、量子化磁束の動きを抑制する効果が得られる。すなわち、点欠陥においては磁場への異方性が少なく、等方的に量子化磁束の動きを抑制することができる。また、Tbは3価と4価を取り得ることから、4価のTbに起因する柱状結晶は、従来の単純なペロブスカイト構造の柱状結晶の人工ピンに比べると、c軸方向の成長が抑制される傾向となる。その結果、4価のTbの柱状結晶においては、c軸方向の結晶が10nm〜100nmといった程良い長さで成長し、かつ、3価のTbに起因する点欠陥の等方的なピン止め効果が相乗的に作用し、磁場が印加される全ての角度の領域において、臨界電流特性の改善が可能となる。
酸化物超電導層15中における、Tbの導入割合は、REBaCuの母相に対してTb元素が0.1〜4質量%の範囲で導入されていることが好ましい。例えば、後述するように酸化物超電導層17をパルスレーザ蒸着(PLD)法により成膜する場合、REBaCu(RE123系)の粉末、或いはREBaCu(RE123系)の構成元素を含む粉末に対し、Tbの粉末を0.1〜5mol%混入させて焼結させたターゲットを使用することが好ましい。このようなmol%または質量%の範囲で酸化物超電導層15中にTbを導入することにより、量子化磁束の動きを効果的に抑制し、磁場中の臨界電流の低下を抑制し、良好な臨界電流特性を有する酸化物超電導導体10を得ることができる。
これに対し、Tbの導入割合が0.1質量%未満である場合、或いはTbの粉末の混入量が0.1mol%未満である場合では、Tb導入によるピン止め効果が得られ難くなる可能性がある。一方、Tbの導入割合が4質量%を超える場合、或いはTbの粉末の混入量が5mol%を超える場合では、酸化物超電導層15中におけるRE123系酸化物超電導体の割合が低くなりすぎて、酸化物超電導導体10の超電導特性が低下してしまう可能性がある。
酸化物超電導層15の組成の比率は、例えば、電子ビームの解析データで組成を特定し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、異相の比率を求めることで特定できる。
酸化物超電導層15の厚みは、目的に応じて適宜調整可能であるが、0.3〜9μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。また、酸化物超電導層15は、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層15は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理気相蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等で積層できる。これらの中でも、生産性の観点からパルスレーザ蒸着法(PLD法)、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)又はCVD法を用いることが好ましい。
MOD法は、金属有機酸塩を塗布した後に熱分解させる方法である。より具体的には、金属成分の有機化合物を均一に溶解した溶液を基材上に塗布した後、この溶液を加熱して熱分解させることにより基材上に薄膜を形成する。この方法は、真空プロセスを必要とせず、低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導導体の製造に適している。このMOD法では、原料溶液の組成を調整することによって、形成される酸化物超電導層15中のTbの導入割合を制御できる。
CVD法では、原料ガスの種類又は流量を制御することによって、形成される酸化物超電導層15中のTbの導入割合を制御できる。
PLD法では、使用するターゲットの組成比を調整することにより、形成される酸化物超電導層15中のTbの導入割合を制御できる。
上記方法により酸化物超電導層15を形成するには、REBaCu(RE123系)に対してTb元素が0.1〜4質量%の範囲で混入されるように原料の組成比を調整することにより、その組成比が反映された薄膜(酸化物超電導層15)を形成することができる。
具体的には、例えば、パルスレーザ蒸着(PLD)法により成膜する場合、REBaCu(RE123系)の粉末、或いはREBaCu(RE123系)の構成元素を含む粉末に対し、Tbの粉末を0.1〜5mol%混入させて焼結させたターゲットを使用することが好ましい。このようなmol%または質量%の範囲でRE123系酸化物超電導体の中にTbを混入することにより、上述のように柱状結晶と点欠陥とが形成され、量子化磁束の動きを効果的に抑制し、磁場中の臨界電流の低下を抑制し、良好な臨界電流特性を有する酸化物超電導導体10を得ることができる。
これに対し、RE123系原料へのTb元素の混入量が0.1質量%未満である場合、或いはTbの粉末の混入量が0.1mol%未満である場合では、Tb導入によるピン止め効果が得られ難くなる可能性がある。一方、RE123系原料へのTb元素の混入量が4質量%を超える場合、或いはTbの粉末の混入量が5mol%を超える場合、酸化物超電導層15中におけるRE123系酸化物超電導体の割合が低くなりすぎて、酸化物超電導導体10の超電導特性が低下してしまう可能性がある。
本発明において、上述した方法の中でも、物理気相蒸着法であるPLD法により酸化物超電導層15を形成することが特に好ましい。以下、本発明の酸化物超電導導体の製造方法の一実施形態として、PLD法による製造方法について説明する。
図2は、PLD法による酸化物超電導層の成膜に使用されるレーザ蒸着装置の一例を示す概略斜視図である。
図2に示すレーザ蒸着装置20は、基材11上にベッド層12、中間層13、及びキャップ層14が順次積層された長尺の薄膜積層体25を巻回するリールなどの複数の巻回部材を含む。複数の巻回部材は、巻回部材の軸方向が互いに略平行になるように(同軸的)に配列している。より具体的には、レーザ蒸着装置20は、一対の巻回部材群23、24(第1巻回部材23及び第2巻回部材24)と、送出リール21と、巻取リール22と、基板ホルダ26と、加熱装置(図示略)と、ターゲット27と、レーザ光発光装置28と、を備えている。
一対の巻回部材群23、24は、離間して対向配置されている。送出リール21は、第1巻回部材群23の外側に配置された薄膜積層体25を送り出す。巻取リール22は、第2巻回部材群24の外側に配置された薄膜積層体25を巻き取る。基板ホルダ26は、巻回部材群23、24の巻回により複数列とされた薄膜積層体25を支持する。加熱装置は、基板ホルダ26に内蔵された薄膜積層体25を加熱する。ターゲット27は、薄膜積層体25と対向配置されている。レーザ光発光装置28は、ターゲット27にレーザ光Lを照射する。
一対の巻回部材群23、24、送出リール21、及び巻取リール22を駆動装置(図示略)により互いに同期して駆動させることにより、送出リール21から送り出された薄膜積層体25が一対の巻回部材群23、24を周回し、巻取リール22に巻き取られる。
一対の巻回部材群23、24に巻回された長尺の薄膜積層体25は、巻回部材群23、24を周回することにより、蒸着粒子の堆積領域内にて複数列レーンを構成するように配置されている。そのため、本実施形態のレーザ蒸着装置20においては、レーザ光Lをターゲット27の表面に照射すると、ターゲット27から叩き出され若しくは蒸発した蒸着粒子の噴流(以下、プルーム29と記す)が生じ、ターゲット27に対向する領域を走行する薄膜積層体25の表面に向けて蒸着粒子を堆積させることができる。
ターゲット27は、形成しようとする酸化物超電導層15と同等または近似した組成、又は、成膜中に逃避しやすい成分を多く含有させた複合酸化物あるいは酸化物超電導体に、Tbを含む化合物が所望の割合で混入された焼結体などの板材からなる。本発明の酸化物超電導導体10の酸化物超電導層15は、Tbを含む異相を含有するRE123系の酸化物超電導体であるので、REBaCu(RE123系)の粉末にTbを含む化合物が混入された焼結体等をターゲット27として使用することができる。ターゲット27としては、REBaCu(RE123系)の粉末に対し、Tbの粉末を0.1〜5mol%混入させて焼結させたターゲットを使用することが好ましい。このような割合でTbを混入させたターゲット27を使用することにより、RE123系酸化物超電導層15中に、Tb元素が0.1〜4質量%の範囲で混入されて、Tbを含む柱状結晶および点欠陥の異相が導入される。このような異相が量子化磁束の人工ピンとして機能することにより、良好な臨界電流特性の酸化物超電導導体10を得ることができる。
ターゲット27にレーザ光Lを照射するレーザ光発光装置28としては、ターゲット27から蒸着粒子を叩き出すことができるレーザ光Lを発生する装置であれば、Ar−F(193nm)、Kr−F(248nm)などのエキシマレーザ、YAGレーザ、CO2レーザなどのいずれのレーザ光を照射する装置を用いてもよい。
次に、図2に示す構成を有するレーザ蒸着装置20を用いて長尺の薄膜積層体25の上(基材11上のキャップ層14の上面)に酸化物超電導層15を成膜する方法を説明する。まず、ターゲット27を所定の位置に設置し、次いで、送出リール21に巻回されている薄膜積層体25を引き出しながら、一対の巻回部材群23、24に順次巻回する。その後、薄膜積層体25の先端側を巻取リール22に巻き取り可能に取り付ける。
これによって、一対の巻回部材群23、24に巻回された薄膜積層体25は、一対の巻回部材群23、24を周回し、ターゲット27に対向する位置に複数列並んで移動可能になる。その後、排気装置(図示略)を駆動し、少なくとも一対の巻回部材群23、24間を走行する薄膜積層体25を覆うように設置された処理容器(不図示)内を減圧する。この際、必要に応じて処理容器内に酸素ガスを導入し、容器内の雰囲気を酸素雰囲気にしてもよい。
次に、ターゲット27にレーザ光Lを照射して成膜を開始するよりも前の適当な時に、加熱装置(図示略)を通電することによって、少なくとも成膜領域を走行する薄膜積層体25を加熱し、薄膜積層体25を一定温度に保温する。成膜時の薄膜積層体25の表面温度は、適宜調整可能であり、例えば、780〜850℃であることができる。
続いて、送出リール21から薄膜積層体25を送り出しつつ、レーザ光発光装置28からレーザ光Lを発生させ、レーザ光Lをターゲット27に照射する。この時、レーザ光Lが照射される位置をターゲット27の表面上で移動させるようにターゲット27を走査しながら、レーザ光Lをターゲット27に照射することが好ましい。また、ターゲット移動機構(図示略)によって、ターゲット27をその平行な面に沿って移動させることも好ましい。このように、ターゲット27におけるレーザ光Lが照射される位置を移動させることにより、ターゲット27の表面全域から順次プルーム29が発生し、ターゲット27の粒子が叩き出される、或いはターゲット27の粒子が蒸発する。このため、レーン状に複数配列した薄膜積層体25の個々に可能な限り均一な酸化物超電導層15を成膜できる。
ターゲット27から叩き出され若しくは蒸発した蒸着粒子によって、その放射方向の断面積が徐々に拡大していく形状を有するプルーム29が発生し(図2参照)。複数列並んで移動している薄膜積層体25の表面に、蒸着粒子が堆積する。したがって、薄膜積層体25がこれら一対の巻回部材群23、24を周回する間に、酸化物超電導層15が繰り返し成膜され、必要な厚さが得られるように酸化物超電導層15が薄膜積層体25上に積層される。酸化物超電導層15の成膜後、得られた酸化物超電導導体10は巻取リール21に巻き取られる。
以上の工程により、薄膜積層体25(基材11上のキャップ層14の上面)に、Tbを含む柱状結晶と点欠陥である異相が分散された酸化物超電導層15を形成できる。
酸化物超電導層15の上には、図1に示すように安定化層16が積層されることが好ましい。
酸化物超電導層15の上に積層される安定化層16は、酸化物超電導層15の一部領域が常電導状態に転移しようとした場合に、酸化物超電導層15を流れる電流が転流する電流のバイパス路として機能する。このように安定化層16を設けることにより、酸化物超電導層15の超電導状態が安定化し、酸化物超電導層15の焼損が防止される。
安定化層16の材料としては、導電性が良好な金属からなる材料を採用することが好ましく、具体的には、銀又は銀合金、銅などからなる材料が例示できる。安定化層16の構造としては、1層構造でもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
安定化層16の積層方法としては、公知の方法が用いられるが、銀層をメッキ又はスパッタ法で形成し、その上に銅テープなどを貼り合わせるなどの方法を採用できる。安定化層16の厚さは、3〜300μmの範囲に設定することができる。
このような構成を有する酸化物超電導導体10の外周面を絶縁層で被覆することにより、超電導線材を得ることができる。
絶縁層は、通常使用される各種樹脂等、公知の材質からなる。前記樹脂としては、具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂、シリコン樹脂、アルキッド樹脂、ビニル樹脂等が例示できる。絶縁層による被覆の厚さは特に限定されず、被覆対象の部位等に応じて、適宜調節すればよい。絶縁層の材質に応じて公知の方法で絶縁層を形成すればよく、例えば、原料を塗布して、この原料を硬化させればよい。また、シート状の絶縁層が入手できる場合には、この絶縁層を使用して、酸化物超電導導体10を被覆してもよい。
本発明の酸化物超電導導体10には、価数が3価と4価を取りうるTbを酸化物超電導層15中に導入することにより、Tbを含む異相、より詳しくは、4価のTbに起因する柱状結晶と、3価のTbに起因する点欠陥とが混在している。これにより、c軸方向への磁場の印加では、柱状結晶による量子化磁束の動きを抑制するピン止め効果が得られ、点欠陥においては磁場への異方性が少なく、等方的に量子化磁束の動きを抑制することができる。また、Tbは3価と4価を取り得ることから、4価のTbに起因する柱状結晶は、従来の単純なペロブスカイト構造の柱状結晶の人工ピンに比べると、c軸方向の成長が抑制される傾向となる。その結果、4価のTbの柱状結晶においては、c軸方向の結晶が10nm〜100nmといった程良い長さで成長し、かつ、3価のTbに起因する点欠陥の等方的なピン止め効果が相乗的に作用し、磁場が印加される全ての角度の領域において、臨界電流特性の改善が可能となる。
さらに、本発明の酸化物超電導導体の製造方法によれば、酸化物超電導体の構成元素とTbを所望の割合で混入させた原料を用いることにより、簡便に、臨界電流特性が良好な酸化物超電導導体を製造できる。また、物理気相蒸着法であるパルスレーザ蒸着法(PLD法)で、REBaCuの組成式で表される酸化物超電導体の構成元素とTbを含むターゲットを使用することにより、従来の成膜装置を使用して、簡便な工程で酸化物超電導導体を製造することができる。
以上、本発明の酸化物超電導導体、及び酸化物超電導導体の製造方法の一実施形態について説明したが、上記実施形態において、酸化物超電導導体の各部、酸化物超電導線材の製造方法およびそれに使用される装置は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
幅5mm、厚さ0.1mmのテープ状のハステロイC276(米国ヘインズ社登録商標)製の基材上に、スパッタ法によりAl(拡散防止層;膜厚150nm)を成膜した。次いで、この拡散防止層上に、イオンビームスパッタ法によりY(ベッド層;膜厚20nm)を成膜した。次いで、このベッド層上に、イオンビームアシストスパッタ法(IBAD法)によりMgO(中間層;膜厚10nm)を形成した。次いで、この中間層上に、パルスレーザ蒸着法(PLD法)によりCeO(キャップ層:膜厚500nm)を成膜した。
次いでCeO層上に、図2に示すレーザ蒸着装置20を用いて、パルスレーザ蒸着法(PLD法)により膜厚1.0μmのRE123系の酸化物超電導層を成膜し、さらに、この酸化物超電導層上に厚さ10μmのAg(安定化層)をスパッタして酸化物超電導導体を作製した。なお、酸化物超電導層の成膜は、GdBaCuの粉末にTbを2mol%混入させた粉末を焼結させたターゲットを使用し、温度800℃、圧力80Pa、レーザ出力180W、酸素80%雰囲気下にて行った。
(比較例1)
ターゲットとして、GdBaCuの焼結体を用いて酸化物超電導層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして酸化物超電導導体を作製した。
(比較例2)
ターゲットとしてGdBaCuの粉末にZrOを5mol%混入させた粉末を焼結させた焼結体を用いて酸化物超電導層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして酸化物超電導導体を作製した。
実施例1および比較例1、2の酸化物超電導導体について、液体窒素温度下(77K)、無磁場(0T)での臨界電流Ic0を測定し、さらに、0.5Tの磁場下における臨界電流Icを測定した。図3に、各酸化物超電導導体の臨界電流の変化率Ic/Ic0の磁場印加角度依存性をプロットした結果を示す。図3において、「Tb添加」は実施例1、「添加無」は比較例1、「Zr添加」は比較例2の結果をそれぞれ示す。
図3の結果より、RE123系酸化物超電導体にTbを導入した実施例1の酸化物超電導導体は、磁場印加角度がc軸に平行な場合(θ=0°)に加えて、c軸よりずれた角度で磁場が印加された場合(0°<θ<90°、特に45°付近など)においても、比較例1及び2の酸化物超電導導体に比べて、臨界電流の低下を抑制することができている。従って、実施例1の酸化物超電導導体は、磁場中の臨界電流の低下を抑制し、良好な臨界電流特性を有することが明らかである。
(実施例2:Tb混入量の検討)
ターゲットとして、GdBaCuの粉末に、表1に記載の混入量でTbを混入させた粉末を焼結させた焼結体を用いて酸化物超電導層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプル1〜6の酸化物超電導導体を作製した。
得られたサンプル1〜6の酸化物超電導導体について、液体窒素温度下(77K)、無磁場(0T)での臨界電流Ic0を測定した。さらに、液体窒素温度下(77K)で、0.5Tの磁場を、磁場印加角度θ=45°(c軸に対して45°)で印加して、臨界電流Icを測定した。サンプル1〜6の酸化物超電導導体について、磁場印加角度θ=45°における臨界電流の変化率Ic/Ic0を算出した。結果を表1に記した。
Figure 2011132731
表1に示す結果より、GdBaCuの粉末に、Tbを0.01〜5.0mol%混入させた粉末を焼結させた焼結体を用いたサンプル2〜5は、Tbを添加していないサンプル1の酸化物超電導導体と比べて、臨界電流の低下を抑制することができている。中でも、GdBaCuの粉末に、Tbを0.1〜5.0mol%混入させた粉末を焼結させた焼結体を用いたサンプル3〜5は、効果的に臨界電流の低下を抑制することができている。また、GdBaCuの粉末に、Tbを6.0mol%混入させた粉末を焼結させた焼結体を用いたサンプル6では、臨界電流の低下を抑制する効果が確認されなかった。
本発明の酸化物超電導導体によれば、磁場が印加される全ての角度の領域において、臨界電流特性の改善が可能となる。
10…酸化物超電導導体
11…基材
12…ベッド層
13…中間層
14…キャップ層
15…酸化物超電導層
16…安定化層
20…レーザ蒸着装置
21…送出リール
22…巻取リール
23…第1巻回部材
24…第2巻回部材
25…薄膜積層体
26…基板ホルダ
27…ターゲット
28…レーザ光発光装置
29…プルーム
L…レーザ光

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材上に形成された酸化物超電導層とを備え、
    前記酸化物超電導層は、REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)の組成式で表される酸化物超電導体からなり、且つTbを含む異相が分散されてなることを特徴とする酸化物超電導導体。
  2. 前記異相が、BaとTbを含む酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体。
  3. 前記異相が、4価の前記Tbに起因した柱状結晶と、3価の前記Tbに起因した点欠陥とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化物超電導導体。
  4. 前記Tbが、前記REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)に対して0.1質量%以上4質量%以下の範囲で前記酸化物超電導層に含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸化物超電導導体。
  5. 前記基材と前記酸化物超電導層との間に、中間層とキャップ層とがこの順に介在され、
    前記酸化物超電導層上に安定化層が形成されてなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の酸化物超電導導体。
  6. 酸化物超電導導体の製造方法であって、
    REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)の組成式で表される酸化物超電導体の構成元素とTbを含むターゲットを使用し、
    物理気相蒸着法により、基材上にTbを含む異相が分散された酸化物超電導層を形成する
    ことを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。
  7. 前記ターゲットとして、前記REBaCu(式中、REは希土類元素を表し、6.5<y<7.1を満たす)を含む粉末に対して、Tbの粉末を0.1mol%以上5mol%以下の範囲で混入させて焼結させたものを用いることを特徴とする請求項6に記載の酸化物超電導導体の製造方法。
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