JP6009309B2 - テープ状酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

テープ状酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、テープ状酸化物超電導線材の製造方法に関し、特に中間層が形成された金属基材上に、MOD(有機金属塩塗布熱分解:Metal-Organic Deposition)法を用いて超電導層を形成する技術に関する。
従来、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜を備える酸化物超電導線材は、金属基板上に2軸配向した無機材料薄膜を1層あるいは複数層形成し、その上に超電導薄膜および安定化層を順次形成した構造を有する。このREBaCu系の酸化物超電導線材(以下、「REBCO超電導線材」という)では、結晶が2軸配向しているため、Bi系の銀シース線材に比べ、臨界電流値(I)が高く、液体窒素温度での磁場特性に優れている。よって、この線材を、現在低温で使用されている超電導機器に用いることによって、超電導機器を高温状態で使用できることが期待されている。なお、REBCO超電導線材の超電導薄膜(REBCO超電導薄膜)における結晶は、斜方晶である。超電導薄膜の特性は、結晶の配向性に大きく影響され、この超電導薄膜の下層を構成する基板および中間層の結晶の配向性にも大きく影響される。さらに、超電導薄膜の結晶方位のずれが双晶粒界を発生させる。このため、通電特性において材料の特性を最大限発揮させるためには、結晶内のCuO面を揃えるだけではなく、面内の結晶方位も揃えることが必須となっている。
このようなREBCO超電導線材の製造では、数多くの成膜方法での製造の検討が行われている。例えば、テープ状の金属基板の上に面内配向した中間層を形成した2軸配向金属基板の製造技術として、IBAD(Iron Beam Assist Deposition)や配向金属を用いた手法がある。これらの手法により、無配向または配向金属テープ上に面内配向度と方位を向上させた中間層を形成し、その上に成膜したREBCO超電導線材が多く知られている。
これらの手法の中で、最も高特性が得られているのは、基板にIBAD基板を用いたものである。この方法では、非磁性、高強度であるテープ状のNi基基板上に、Mg、Gd、Zr等の超電導体を形成する元素との反応が抑制可能な元素を斜め方向からイオンを照射しながら粒子を堆積させて配向制御層(MgO等)を形成する。次いで、形成した配向制御層上に、スパッタリング法等により格子整合層(CeO等)を形成した後、パルスレーザー等によりREBCO(具体的には、YBCO)層を成膜して超電導線材を製造する。しかしながら、この方法では、全てが気相法による高真空プロセスで作製されるため、高性能な線材が得られる点では利点はあるが、メンテナンス費用等の装置維持コストが嵩む等の問題がある。
近年、特許文献1に示すように、有機金属塩あるいは有機金属化合物を原料とし、真空プロセスを使用せずに、超電導薄膜を製造する方法としてMOD法が知られている。
このMOD法は、金属有機酸塩あるいは有機金属化合物を熱分解させるもので、金属成分の有機化合物が均一に溶解した原料溶液を基板上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基板上に薄膜を形成する方法である。
MOD法は、非真空プロセスであることから低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導線材の製造に適する利点を有する。また、このMOD法は、拡散防止層、格子整合層等の中間層をMOD法で成膜することも可能であることから、今後本基板の安定製造が可能となれば、更なる低コスト線材が提供可能となる。
このMOD法によるREBCO超電導線材の製造方法では、原料溶液塗布・仮焼工程は、結晶化処理(本焼工程)に次いで重要な工程である。
このMOD法において基板に塗布される原料溶液は、超電導体を構成する各金属元素を所定のモル比で含むトリフルオロ酢酸塩(TFA塩)を始めとするオクチル酸塩、ナフテン酸塩等の金属有機酸塩の混合溶液である超電導原料溶液である。
この超電導原料溶液を基板の表面に塗布する方法としては、超電導原料溶液中に、酸化物中間層が形成されたテープ状の基板を浸した後、この基材を超電導原料溶液から引き上げる、いわゆる、ディップコート法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
そして、本焼工程では、塗布された超電導原料溶液を熱分解することで超電導層を形成する。この本焼工程では、線材を保持し、周面に所定の穴径を有する試料ドラムに線材を巻きつけて保持し、この試料ドラムを炉内に配置して、線材に熱処理を施すバッチ式が採用されている。このバッチ式では、炉内温度及び雰囲気コントロールが容易であるばかりではなく、線材を一括に処理できるため、安定した製造が出来、製造速度が速い等の長所がある。
特開2007−165153号公報 特開2011−170998号公報
ところで、本焼成工程において本焼成を行う際に、仮焼終了時の超電導前駆体層を形成しているアモルファス層の成分及び厚さが不均一であると、均一に反応せずに、最終的には不均一な超電導線材となってしまう。
このため、ディップ法を用いて超電導前駆体を形成する場合、超電導原料溶液中に浸して引き上げる基材の移動速度、つまり、基材に超電導原料溶液を塗布する塗布速度と、超電導原料溶液の粘度のバランスを考慮して超電導原料溶液を塗布する必要が有る。
よって、原料溶液塗布・仮焼工程の更なる高速化及び製造する超電導層の通電容量を更に向上させるための厚膜化を行うことが非常に困難となる。また、基板に超電導原料溶液を塗布する際に生じる表面張力が影響して、線材の両エッジに超電導原料溶液が過剰に塗布される場合があり、線材幅方向に対して超電導層厚に不均一が生じる。これにより、超電導前駆体のエッジ部分が無効領域となり、本来得られるべき通電容量が得られずに、線材全体としては、特性が低下する恐れがある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、所望の膜厚で基材に超電導原料溶液を均一に塗布することができ、超電導特性の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材を製造できるテープ状酸化物超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のテープ状酸化物超電導線材の製造方法の一つの態様は、金属基板、中間層、テープ状のRE系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素からなる)の酸化物超電導層、安定化層を順に積層して形成するテープ状酸化物超電導線材の製造方法において、前記酸化物超電導層は、Baの定比組成が2より小さい原料溶液組成からなり、且つ、前記酸化物超電導層中に、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む粒径50nm以下の磁束ピニング点が均一に分散されており、前記酸化物超電導層を形成する際に、前記金属基板及び前記中間層を含み且つ連続して走行するテープ状基材の表面上に、溶液塗布部により酸化物超電導物質の原料溶液を塗布する塗布工程を有し、前記テープ状基材の幅は、2〜30mmであり、前記原料溶液の粘度は、2〜150mPa・sであり、前記原料溶液は、オクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩またはトリフルオロ酢酸塩より選択された1種以上からなる、金属元素を含む金属有機酸塩を有機溶媒中に溶解し、且つ、前記磁束ピンニング点を形成するための添加元素を含む混合溶液からなり、前記溶液塗布部は、丸棒に、前記テープ状基材の幅の1/50以下の径であるワイヤーを巻装してなり、前記ワイヤーどうしの外面に螺旋状の溝が前記複数のテープ状基材の走行方向に沿うように形成され、前記塗布工程では、前記溶液塗布部を前記複数のテープ状基材の一方の表面に当接して、前記原料溶液を塗布するようにした。
本発明によれば、所望の膜厚で基材に超電導原料溶液を均一に塗布することができ、超電導特性の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材を製造することができる。
本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法で製造されるテープ状RE系酸化物超電導線材の断面図 同テープ状酸化物超電導線材の製造方法の概略を示した模式図 同テープ状酸化物超電導線材の製造方法において用いられる塗布装置の要部構成を示す概略側面図 同塗布装置のバーコーターを上方から見た図 同塗布装置のバーコーターの構成を示す側断面図 同塗布装置のバーコーターにおける溝部の拡大断面図 本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法で製造される超電導前駆体を示す図 同テープ状酸化物超電導線材の製造方法において用いられる同塗布装置におけるバーコーターの変形例を示す平面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材(YBCO超電導線材)の製造方法を用いて製造されるYBCO超電導層(RE系(123)超電導層)を備えるテープ状RE系酸化物超電導線材について説明する。
<酸化物超電導線材>
図1は、本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法で製造される酸化物超電導線材のテープの軸方向に垂直な断面を示す概略図である。
酸化物超電導線材(YBCO超電導線材)20は、テープ状であり、テープ状の金属基板21上に、中間層22、テープ状の酸化物超電導層(以下、「超電導層」と称する)23、安定化層24が順に積層されることによって形成される。ここでは、中間層22は、第1中間層22a、第2中間層22b、第3中間層22cを有する。
テープ状の金属基板21は、例えば、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、ステンレス鋼又は銀(Ag)である。金属基板21は、ここでは、結晶粒無配向・耐熱高強度金属基板であり、Ni−Cr系(具体的には、Ni−Cr−Fe−Mo系のハステロイ(登録商標)B、C、X等)、W−Mo系、Fe−Cr系(例えば、オーステナイト系ステンレス)、Fe−Ni系(例えば、非磁性の組成系のもの)等の材料に代表される立方晶系のビッカース硬度(Hv)=150以上の非磁性の合金である。金属基板21の厚さは、例えば、0.1mm以下である。
第1中間層22aは、スパッタリング法によりテープ状の金属基板21上に、IBAD法により成膜されたMgOから成る層である。この第1中間層22aの上には、スパッタリング法によりLaMnOから成る第2中間層22bが成膜されている。
更に、この上に、ここでは、スパッタリング法(PLD方でもよい)によってCeOを蒸着して全軸配向のキャップ層としての第3中間層22cが成膜されている。なお、第3中間層22cの厚みは、約1000[nm]である。なお、第3中間層22cをCeO膜にGdを添加したCe−Gd−O膜とした場合、超電導層23として成膜されるYBCO超電導層が良好な配向性を得るために、第3中間層22cにおける膜中のGd添加量を50at%以下にすることが好ましい。この第3中間層22cの上には超電導層23が成膜されている。この超電導線材20では、第1中間層22a、第2中簡層22b及び第3中間層22cにより中間層22が形成される。これら金属基板21と、金属基板21上に形成された中間層22とによって、複合基板25を構成する。この複合基板25の表面、つまり、中間層22上には、超電導層23が成膜されている。複合基板25は、2軸配向性を有するものでも配向性の無い金属基板21の上に2軸配向性を有する中間層22を成膜したものでもよい。また、中間層22は、1層〜3層或いは5層以上で形成されてもよい。なお、複合基板25の幅方向の長さは、特に限定されるものではないが、本実施の形態では、幅5[mm]としている。一般に、基材(複合基板)25の幅は、2〜30[mm]である。また、複合基板25の長手方向の長さは、500[m]としている。
なお、超電導層23上には、銀、金、白金等の貴金属、あるいはそれらの合金であり低抵抗の金属である安定化層24が設けられている。なお、安定化層24は、超電導層23の直上に形成することによって、超電導層23が金、銀などの貴金属、あるいはそれらの合金以外の材料と直接的な接触によって反応によって引き起こす性能低下を防止する。これに加えて、安定化層24は、事故電流や交流通電により発生した熱を分散して発熱による破壊・性能低下を防止する。安定化層24の厚みはここでは10〜30[μm]である。
超電導層23は、全軸配向REBCO層、つまり、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜の層である。ここでは、超電導層23は、イットリウム系酸化物超電導体(RE123)である。
ここでは、超電導層23は、Baの定比組成を2より小さくした通常の低Ba組成法に用いられる原料溶液組成RE:Ba:Cu=1:1.5:3に、添加元素Mを加えて形成された、有効な酸化物粒子である人工ピン粒子(磁束ピンニング点)23aを有する。このときの超電導原料溶液組成は、人工ピン粒子の組成(Zrの場合Ba:Zr=1:1)を考慮して設定される。
磁束ピンニング点(人工ピンニング点)23aは、超電導層23中に均一に分散された、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む粒径50[nm]以下、より好ましくは粒径10[nm]以下の化合物としての酸化物粒子である。なお、磁束ピンニング点23aの粒径は、磁束線サイズに近い方がより効果を発揮するため、上記範囲内であることが望ましい。
また、酸化物粒子の数nは、超電導層23中に、1[μm]当たり1.0×10個≦n<1.0×10個含まれることが望ましい。粒子の数が多いと確かにより多くの磁束をピン止めする事ができるため効果的であるが、上記範囲を超えると超電導体の体積減少の効果が大きくなるため超電導電流を阻害し、結局は超電導特性を低下させることとなる。例えば、1[μm]当たり1.0×10個以上存在する場合には、酸化物粒子の粒径が5[nm]であったとしても体積分率で60%を超える事になり、超電導特性を低下させる。
中間層22上に塗布される超電導原料溶液は、金属元素を含む金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した混合溶液からなる。具体的には、超電導原料溶液は、RE(REは、Y、Nd、Sm、Eu、GdおよびHoから選択された1種以上の元素を示す)、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液(混合溶液)と、Baと親和性の大きいZr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む有機金属錯体溶液とからなる。
これらの有機金属錯体溶液を用いることによって、超電導層23では、層中に含まれるBaのモル比yは、y<2の範囲内となる。また、超電導層23では、超電導層23中にZr、Ce、Sn、Hf、Nb又はTiを含む粒径50[nm]以下、好ましくは粒径10[nm]以下の酸化物粒子が磁束ピンニング点23aとして分散されるものとなる。
なお、超電導原料溶液としては、下記(a)〜(d)の溶液を用いることが好ましい。
(a)REを含む有機金属錯体溶液:REを含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液、特に、REを含むトリフルオロ酢酸塩溶液であることが望ましい。
(b)Baを含む有機金属錯体溶液:Baを含むトリフルオロ酢酸塩の溶液
(c)Cuを含む有機金属錯体溶液:Cuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
(d)Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液:Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbから選択された少なくとも1種以上の金属を含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
また、超電導層23は、第3中間層22c上において、水蒸気分圧3〜76[Torr]、酸素分圧300〜760[Torr]の雰囲気中で400〜500[℃]の温度範囲の仮焼熱処理されることが望ましい。また、超電導層23は、水蒸気分圧30〜600[Torr]、酸素分圧0.05〜1[Torr]の雰囲気中で700〜900[℃]までの温度範囲で本焼成熱処理されることが好ましい。
また、形成される超電導層23に磁束ピンニング点23aを形成するための添加元素(添加金属)Mは、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つである。なお、添加元素Mの添加量は、30[wt%]以下である必要があり、特に超電導層全体に対して1〜10[wt%]であることが望ましい。1〜10[wt%]が望ましい理由としては、磁場中特性向上のためには、添加元素の添加量が多い方がより多くの磁束をピン止め出来るため効果的である。これは、添加元素Mの添加量が特に超電導層全体に対して10[wt%]、即ち体積分率30[vol%]を超えると超電導体の体積減少の効果が大きくなると共に、粒子が単独で存在できる臨界を超えるため、ピン止め効果が薄れかつ超電導電流を阻害するからである。さらに、上記範囲を超えると、析出物が凝集して超電導電流を阻害するからである。なお、添加元素MをZr、Sn、Ce、Ti、Hfのうちの少なくとも一つである場合におけるBaとの比は、Ba:M=1:1である。
添加元素MがZrである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導体中に分散して形成される化合物はBaZrOである。添加元素MがTiである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaTiOである。また、添加元素MがCeである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaCeOであり、添加元素MがSnである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaSnOである。また、添加元素MがHfである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaHfOである。なお、磁束ピンニング点23aとなる各化合物は、超電導層23中に均一分散される。
また、添加元素MがNbの場合におけるBaとの比は、Ba:M=1:0.5〜2であり、磁束ピンニング点として超電導体中に分散して形成される化合物は、YNbBa、BaNb等である。なお、各磁束ピンニング点23aとなる化合物は、超電導層23中に均一分散される。
超電導層(超電導体)23中に磁束ピンニング点23aが形成された超電導線材において、超電導層23中に含まれるBaのモル比は、RE:Ba:Cu=1:1.5:3を満たす比になるようにする。このようにBaのモル比を、その標準モル比(RE:Ba:Cu=1:2:3を満たす比)より小さくすることによって、Baの偏析が抑制され、結晶粒界でのBaベースの不純物の析出が抑制される。これにより形成される超電導層23は、クラックの発生が抑制されるとともに、結晶粒間の電気的結合性が向上して通電電流によって定義されるJcが向上する。
また、超電導層23中に人工的に導入される磁束ピンニング点23aとして分散するZr、Sn、Ce、Ti、又はHfのうち少なくとも一つを含む酸化物粒子の粒径は、50[nm]以下とされるが、特に、10[nm]以下であることが望ましい。
なお、TFAを含む超電導原料溶液に添加される添加元素Mが、Zrである場合、TFAを含む超電導原料溶液中に、Baと親和性の高いZr含有ナフテン酸塩等を混合する手法を採用してもよい。これにより、超電導層23の組成(RE:Ba:Cu=1:1.5:3を維持しつつ、Baと結合して磁束ピンニング点(人工ピン粒子)23aとなるBaZrOを形成して超電導層23を形成する粒内に分散させる。このように形成された超電導層23は、粒界偏析によるJc低下することなく、粒界特性が改善される。
さらに、超電導層23内に形成されたBaZrOが膜面方向だけでなく、膜厚方向にもナノサイズ、ナノ間隔に存在し、これらが磁束を有効にピンニングし、磁場印加角度に対するJcの異方性を著しく改善することが可能となる。また、BaZrOのサイズ、密度及び分散を制御するためには、Zr含有ナフテン酸塩等の導入量だけでなく、仮焼熱処理時及び本焼熱(結晶化熱)処理時の酸素分圧、水蒸気分圧、焼成温度の制御により可能となる。これらの最適化を行うことにより有効な磁束ピンニング点23aの導入が可能となる。
また、酸化物超電導線材20では、Ba濃度を低減したRE系の超電導層23において、超電導層中に人工的にZr含有磁束ピンニング点23aを微細分散させることができる。このため、Jcの磁場印加角度依存性[Jc,min/Jc,max]が小さく、かつ、高磁場で高いJcを有する磁場特性を有するとともに、Jcの磁場印加角度依存性[Jc,min/Jc,max]も著しく向上できる。よって、自己磁場に加えて、磁場中でも、あらゆる磁場印加角度方向に対しても有効に磁束をピンニングして、等方的Jc特性が得られることで高い超電導特性(Jcの臨界電流密度Jc[MA/cm]および臨界電流Ic[A/cm])を確保できる。
<MOD法による本テープ状酸化物超電導線材(RE系酸化物超電導線材)の製造方法の概要>
図2は、本発明の実施の形態に係るYBCO超電導層(RE系(123)超電導体)を有するテープ状酸化物超電導線材(RE系酸化物超電導線材)の製造方法の概略を示した模式図である。
まず、テープ状の金属基板21、例えば、Ni合金基板21上に、IBAD法によりMgOから成る第1中間層22aを成膜する(図1参照)。
次いで、第1中間層22aの上に、スパッタリング法によりLaMnOから成る第2中間層22bを成膜し、更に、この上に、スパッタリング法或いはPLD方によりCeOからなる第3中間層22cを成膜して複合基板25を形成する(図1参照)。なお、中間層22は、MOD法で形成しても良い。
この複合基板25上に、塗布工程Aで超電導原料溶液を塗布して塗布膜を形成する。ここでは、超電導原料溶液は複合基板25上に塗布装置10により塗布される。この超電導原料溶液は、上述したようにY―TFA塩(トリフルオロ酢酸塩)、Ba―TFA塩およびCu―ナフテン酸塩を有機溶媒中にY:Ba:Cu=1:1.5:3の比率で溶解した混合溶液である。この超電導原料溶液には、磁束ピンニング点を形成するためのZr等の添加元素Mが添加されている。なお、この超電導原料溶液の粘度は、2〜150mPa・sである。
この超電導原料溶液(混合溶液)を塗布した後、仮焼成熱処理工程Bで仮焼成する。なお、塗布工程Aにおいて、1回に塗布する膜厚は0.01〜2.0[μm]、好ましくは0.1〜1.0[μm]である。これにより、生成される超電導層23の厚み(膜厚)は、1.3μm以上であり、例えば、1.5μmに形成される。なお、複合基板25において、基材上に形成される中間層は、MgO中間層上に、CeOからなる中簡層を成膜して形成したものでもよい。
この塗布工程Aおよび仮焼成熱処理工程Bを所定回数繰り返すことによって、テープ状酸化物超電導線材20の複合基板25における中間層上で塗布膜をマルチコートする。これにより、複合基板25における中間層上に、YBCO超電導層23(以下、「超電導層」とも称する)となるアモルファス超電導前駆体としての膜体(図2に示す「前駆体」)を形成する。
このようにフッ素(F)を含有した膜体を中間層上に成膜した後、本焼成熱処理工程Cで、テープ状酸化物超電導線材20における膜体の結晶化熱処理、即ち、YBCO超電導層生成のための熱処理を、水蒸気ガス中において施す。この本焼成熱処理工程Cは、図示しない熱処理装置を用いて行われる。なお、このYBCO超電導層23の生成に伴いHF(図2参照)が発生する。
なお、この本焼成熱処理工程Cの後、生成されたYBCO超電導体上にスパッタ法により安定化層(例えば、Ag安定化層)24を施し、後熱処理を施す。これにより、磁束ピンニング点が分散され、磁場印加特性に優れたYBCO層を有する超電導線材(YBCO超電導線材)を製造する。
<塗布装置の構成>
図3から図5は、塗布工程Aで使用される塗布装置の説明に供する図である。なお、図3は、テープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法において用いられる塗布装置の要部構成を示す概略側面図である。また、図4は、同塗布装置のバーコーターを上方から見た図であり、図5は、同塗布装置のバーコーターの構成を示すバーコーターを軸方向で切断した縦部分断面図である。
塗布装置10は、塗布工程Aで用いられるものであり、テープ状基材の表面に超電導原料溶液Kを塗布する溶液塗布部としてのバーコーター11と、溶液ケース12と、駆動モーター13と、ポンプ14と、溶液貯留部15と、案内管16a、16bと、制御部17とを有する。
バーコーター11は、溶液ケース12内で、回転自在に配置されており、ガイドリール18a、18bにより搬送される複合基板25に、溶液ケース12内の超電導原料溶液Kを塗布する。なお、ガイドリール18a、18bは、塗布装置10の上方で、バーコーター11を挟むように所定間隔を空けて配置されており、図示しないモーターにより同じ速度で同方向に回転する。この構成により、ガイドリール18a、18bは、その外周に配置される複合基板25を、一方のガイドリール18aから他方のガイドリール18b側に搬送して、塗布装置10のバーコーター11に接触するように案内する。また、ガイドリール18a、18bの駆動は、モーターを介して、塗布装置10を駆動制御する制御部17により制御される。
バーコーター11は、複合基板25の搬送方向と直交する方向に延在する円柱状をなす。バーコーター11は、その外周面、ここでは上側の外周面で、複合基板25に線接触で当接する。具体的には、バーコーダー11の上側の外周面には、ガイドリール18a、18b間に掛け渡される複合基板25が、ガイドリール18a、18bと反対側の面で接触する。
ここでは、バーコーター11には、その外周面に、回転軸方向に並べられた複数の複合基板25が一様に当接し、ガイドリール18a、18bの回転によって、複合基板25のそれぞれが接触する。
また、このバーコーター11の外周面には、図5に示すように、軸方向に延在する螺旋状の溝部112が形成されている。
ここでは、バーコーター11は、丸棒11aにワイヤー11bを螺旋(ソレノイド)状に巻装したワイヤーバーである。ワイヤー11bが螺旋状であることから、丸棒11aの外面には、丸棒11aの延在方向で隣り合うワイヤー11bどうしの外面に螺旋状の溝部112が形成される。溝部112における容積(ポケット容積)により、塗布時の塗工量が規定される。塗布する対象が複合基板25等のテープ状の基材である場合、溝部112の容積の60%から70%が塗工量となる。ここでは、溝部112の容積は、10〜100cc/mであることが望ましい。これにより、バーコーター11は、複合基板25に対して幅方向で均一に好適に超電導原料溶液Kを塗布できる。
また、バーコーター11の外面に形成された螺旋状の溝部112では、周方向が、複合基板(テープ状基材)25の走行方向に沿うような方向となっている。なお、このワイヤー11bの径は、0.1〜1.0mmであることが望ましい。このように、ワイヤー11bの径は、複合基板25の幅(例えば、5mm)よりも小さく1/50以下の径となっている。これにより、ワイヤー11bの長手方向に沿って、ワイヤー11bの径より大きい幅の複合基板25が走行するため、所望の一層あたりの塗布膜厚が均一に得られるだけでなく、テープ幅方向についても塗布膜厚が均一にすることができる。
バーコーター11は、駆動部としての駆動モーター13により、バーコーター11の中心軸を中心に回転駆動自在に設けられている。ここでは、バーコーター11は、駆動モーター13により複合基板(テープ状基材)25の走行方向とは逆方向に回転する。
バーコーター11が、複合基板(テープ状基材)25の走行方向とは逆方向に回転することによって、超電導原料溶液がより一層付着しやすく、厚膜化することができる。
また、このバーコーター11は、その走行速度が、複合基板25の走行速度の1/2以上3倍以下となるように、駆動モーター13により回転駆動される。これにより、長手方向に対して適正な膜厚を安定して得ることができる。なお、バーコーター11の回転は、駆動モーター11を介して、複合基板25の走行速度の1/2以上3倍以下となるように制御部17によって制御される。
このバーコーター11は、溶液ケース12内の超電導原料溶液Kに、バーコーター11の一部(ここでは下側の外周面)で浸かる位置に位置する。
この溶液ケース12は、ポンプ14と案内管16aを介して、超電導原料溶液Kを溜める溶液貯留部15と接続されており、超電導原料溶液Kをバーコーター11に供給する。
具体的には、溶液ケース12は、上方に開口するケース本体121と、ケース本体121内に配置され、断面円弧状の内側ケース122と、ガイド板部123とを有する。
ケース本体121は、溶液貯留部15と離間して配置されている。ケース本体121の下面には、溶液貯留部15内に延出する案内管16bが接続されている。
このケース本体121内には、ケース本体121から離間して内側ケース122が配置されている。内側ケース122には、一端部が溶液貯留部15内に配置された案内管16aの他端部が接続されている。内側ケース122内と、溶液貯留部15は、案内管16aを介して連通している。内側ケース122内には、案内管16aの途中に設けられたポンプ14により案内管16aを介して、溶液貯留部15から超電導原料溶液Kが汲み上げられることで供給される。
この内側ケース122内には、バーコーター11がその外周面の一部(下端部)で、超電導原料溶液Kに浸かるように、回動自在に設けられている。なお、塗布装置10では、ポンプ14及び案内管16aを介して内側ケース122内に汲み上げられた超電導原料溶液Kは、内側ケース122から漏れて、ケース本体121内に落下し、案内管16bを介して、溶液貯留部15内に戻る。このように塗布装置10では、超電導原料溶液Kは、案内管16a、16b、ポンプ14、溶液ケース12、溶液貯留部15を通って循環する。
ガイド板部123は、複合基板25の走行方向に沿って、複合基板25の下面側に配置される。ガイド板部123は、バーコーター11の上部を露出させる開口部を有し、この開口部内にバーコーター11を位置させた状態で、ケース本体121に上方から取り付けられている。
この構成により、溶液ケース12において内側ケース122内のバーコーダー11は、下面側で超電導原料溶液Kに浸かった状態で回転すると、回転軸方向で隣り合うワイヤー11b間、つまり、溝部112内に、超電導原料溶液Kが浸透する。これにより、回転するバーコーター11は、その外周面の全周に亘って、溝部112を介して超電導原料溶液Kを螺旋状に軸方向に亘って保持する。つまり、ガイド板部123の開口部から外部に露出する外周面の溝部112でも超電導原料溶液Kが保持される。この露出する部分で、バーコーター11は複合基板25に接触する。
この超電導原料溶液Kの粘度は、2〜150mPa・sであることが望ましい。これにより、回転軸方向で隣り合うワイヤー11b間、つまり、溝部112内に超電導原料溶液Kが均一に入り込み、テープ状の複合基板25の幅方向および長手方向に対して均一な塗布膜厚を得ることができる。
次に、この塗布装置10を用いてテープ状RE系酸化物超電導線材を製造する場合について具体的に説明する。
まず、テープ状の金属基板(Ni合金基板)21(図1参照)上に、中間層22を形成して複合基板25を形成する。なお、中間層22は、上述したように、金属基板21上に、IBAD法によりMgOから成る第1中間層22aを成膜する。次いで、第1中間層22a上にスパッタリング法によりLaMnOから成る第2中間層22bを成膜し、更に、その上に、スパッタリング法或いはPLD法によりCeOからなる第3中間層22cを成膜する。
次いで、塗布装置10を用いて塗布工程A(図2参照)を行う。
すなわち、塗布工程A(図2参照)では、複合基板25を、ガイドリール18a、18bによって、複合基板25の長手方向に移動して、塗布装置10を走行させる。
ここで、塗布装置10のバーコーター11は、制御部17を介して、複合基板25の走行速度の1/2以上3倍以下で、複合基板25の走行方向と逆方向に一定速度で回転している。
バーコーター11は、溶液ケース12内で回転することにより、回転軸方向で隣り合うワイヤー11b間、つまり、溝部112を介して超電導原料溶液Kを螺旋状に軸方向に亘って保持する。
このバーコーター11の外面上を、複合基板25が当接しつつ走行すると、図6に示すように、複合基板25は、超電導原料溶液Kが保持された溝部112上を移動する。
溝部112はバーコーター11の外周面に螺旋状に形成されている。このため、溝部112内の超電導原料溶液Kは、外周面上を走行する複合基板25に対して、その走行方向と直交する方向(幅方向)に亘って接触して、均一に塗布される。
次いで、熱処理装置を用いて、仮焼成熱処理工程B(図2参照)で仮焼成する。
これら塗布工程A(図2参照)および仮焼成熱処理工程B(図2参照)を所定回数繰り返すことによって、テープ状酸化物超電導線材20の複合基板25における中間層上で塗布膜をマルチコートする。これにより、複合基板25における中間層上に、YBCO超電導層23(図1参照)となるアモルファス超電導前駆体としての膜体(図2に示す「前駆体」)を形成する。
図7は、本実施の形態により製造されるテープ状酸化物超電導線材の製造方法による超電導前駆体と従来の製造方法による超電導前駆体との比較を示す図である。図7Aは、本実施の形態の製造方法による超電導前駆体の延在方向と直交する断面を示す図であり、図7Bは、従来方法による超電導前駆体の延在方向と直交する断面を示す図である。なお、図7A、図7Bにおいて、横軸が形成される超電導前駆体の幅を示し、縦軸が、同超電導前駆体の膜厚を示す図である。
図7Aに示すように、本実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法によれば、複合基板(テープ状基材)25に対して、その幅方向に超電導層厚を均一にできる。
これに対して、従来のディップ法で超電導原料溶液を塗布する場合では、図7Bに示すように、複合基板25の両エッジ(領域Nで示す部分)に超電導原料溶液が過剰に塗布される等のように幅方向で不均一に塗布される。これにより、本焼成後に形成される超電導線材において両エッジ部分が無効領域となる場合がある。
このように、塗布装置10のバーコーター11を用いた塗布工程A(図2参照)と、仮焼成熱処理工程Bを繰り返して形成した超電導前駆体に対して、本焼成熱処理C(図2参照)で本焼成熱処理を行うことで、テープ状RE系酸化物超電導線材(YBCO超電導線材)を製造する。
このように本実施の形態によれば、塗布工程A(図2参照)において、溶液ケース12内に配置され、且つ、回転するバーコーター11上を複合基板(テープ状基材)25が連続して走行する。これにより、複合基板(テープ状基材)25の表面に、酸化物超電導物質の超電導原料溶液Kが、複合基板25の走行方向と直交する方向、つまり、複合基板25の幅方向に亘って、均一に塗布される。
超電導原料溶液Kを保持する溝部112は、複合基板25の走行方向と直交するバーコーター11の回転軸方向、つまり、複合基板25の幅方向に沿って、且つ、丸棒11aの全長、つまり、バーコーター11の全体に亘って螺旋状に形成されている。このため、回転軸方向と直交する方向で移動する複合基板25に対して、複合基板25の幅の長さに関わらず、均一に超電導原料溶液Kを塗布でき、歩留まりの向上も図ることができる。
よって、本実施の形態によれば、好適な通電容量を有し、超電導特性(I)の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材(YBCO超電導線材)を製造することができる。
なお、バーコーター11は、表面において、複合基板(テープ状基材)25の走行方向に溝112が形成されていればどのように形成されてもよい。
例えば、図8に示すバーコーダー11Aを備える塗布装置10を用いて、複合基板(テープ状基材)25に超電導原料溶液を塗布する構成としてもよい。
図8は、本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法において用いられる同塗布装置におけるバーコーターの変形例を示す平面図である。
図8に示すバーコーター11Aは、図3及び図4に示す塗布装置10において、バーコーター11に代えて用いられ、接触する複合基板25に超電導原料溶液Kを塗布する。バーコーター11Aは、円柱状のバーコーター本体19と、バーコーター本体19の外周面に、バーコーター本体19の中心軸と同一中心で螺旋状に形成された溝部112Aとを備える。
すなわち、溝112Aは、バーコーター本体19の外面に、回転軸方向、つまり、複合基板25(図3、図4参照)の走行方向と直交する方向に螺旋状に延在する。また、溝部112Aは、ここでは、断面V字状に形成されている。
この溝部112Aにおける容積(ポケット容積)は、10〜100cc/mであり、この容量により、塗布時の塗工量が規定される。塗布する対象が複合基板25等のテープ状の基材である場合、溝部112Aの容積の60%から70%が塗工量となる。
溝部112A内には、バーコーター本体19が回転、ここでは、走行方向と逆方向に回転することで、溶液ケース12(図3及び図4参照)内の超電導原料溶液Kが浸透する。これにより、溝部112Aは、超電導原料溶液Kを保持する。
このように構成されたバーコーター11Aを、塗布装置10のバーコーター11に代えて用いることで、複合基板(テープ状基材)25に超電導原料溶液Kを塗布しても、バーコーター11を用いた塗布装置10と同様の作用効果を得ることが出来る。
すなわち、MOD法を用いた塗布工程A(図2参照)において、複合基板25(図3及び図4参照)を、バーコーター本体19の外面に接触させつつ、走行させる。すると、回転(ここでは、走行方向と逆方向に回転)するバーコーター本体19では、外周面で、軸方向に亘って形成された溝部112A内における超電導原料溶液Kが、接触しつつ走行する複合基板25(図3及び図4参照)に、幅方向に亘って付着する。これにより、バーコーター11Aをバーコーター11に代えた塗布装置10は、複合基板25(図3及び図4参照)に対し、超電導原料溶液Kを、複合基板25の幅方向に亘って均一に塗布することができる。
なお、本実施の形態のテープ状酸化物超電導線材20では、磁束ピンニング点23aを含む超電導層23としたが、これに限らず、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つの添加元素(添加金属)Mを含まない超電導層であってもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法は、所望の薄い膜厚で超電導特性の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材を製造できる効果を有し、超電導線材の製造方法として有用である。
10 塗布装置
11、11A バーコーター(溶液塗布部)
11a 丸棒
11b ワイヤー
12 溶液ケース
13 駆動モーター
14 ポンプ
15 溶液貯留部
17 制御部
19 バーコーター本体
25 複合基板
112、112A 溝部
K 超電導原料溶液

Claims (5)

  1. 金属基板、中間層、テープ状のRE系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素からなる)の酸化物超電導層、安定化層を順に積層して形成するテープ状酸化物超電導線材の製造方法において、
    前記酸化物超電導層は、Baの定比組成が2より小さい原料溶液組成からなり、且つ、前記酸化物超電導層中に、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む粒径50nm以下の磁束ピニング点が均一に分散されており、
    前記酸化物超電導層を形成する際に、前記金属基板及び前記中間層を含み且つ連続して走行するテープ状基材の表面上に、溶液塗布部により酸化物超電導物質の原料溶液を塗布する塗布工程を有し、
    前記テープ状基材の幅は、2〜30mmであり、
    前記原料溶液の粘度は、2〜150mPa・sであり、
    前記原料溶液は、オクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩またはトリフルオロ酢酸塩より選択された1種以上からなる、金属元素を含む金属有機酸塩を有機溶媒中に溶解し、且つ、前記磁束ピンニング点を形成するための前記添加元素を含む混合溶液からなり、
    前記溶液塗布部は、丸棒に、前記テープ状基材の幅の1/50以下の径であるワイヤーを巻装してなり、前記ワイヤーどうしの外面に螺旋状の溝が前記複数のテープ状基材の走行方向に沿うように形成され、
    前記塗布工程では、前記溶液塗布部を前記複数のテープ状基材の一方の表面に当接して、前記原料溶液を塗布することを特徴とするテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記溶液塗布部は、前記テープ状基材の走行方向とは逆方向に走行することを特徴とする請求項記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記溶液塗布部の走行速度は、前記テープ状基材の走行速度の1/2以上3倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 前記ワイヤー径は、0.1〜1.0mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記溝の容積は、10〜100cc/mであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
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