JP5930303B2 - テープ状re系酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

テープ状re系酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、テープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法に関し、特に中間層が形成された金属基材上に、MOD(有機金属塩塗布熱分解:Metal-organic Deposition)法を用いて超電導層を形成する技術に関する。
従来、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜の層であるテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法として、中間層が形成された金属基材上に、MOD法を用いて超電導層を形成することが知られている(特許文献1参照)。
このMOD法は、金属有機酸塩を熱分解させるもので、金属成分の有機化合物が均一に溶解した溶液を基板上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基板上に薄膜を形成する方法である。MOD法は、非真空プロセスであることから低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導線材の製造に適する利点を有する。
このMOD法では、出発原料である金属有機酸塩を熱分解させると通常アルカリ土類金属(Ba等)の炭酸塩が生成される。この炭酸塩を経由する固相反応による酸化物超電導体の形成には800[℃]以上の高温熱処理を必要とする。更に、厚膜化を行った際、結晶成長のための核生成が基板界面以外の部分からも生じるため結晶成長速度を制御することが難しく、結果として、面内配向性に優れた超電導膜を得ることが難しい。
この炭酸塩を経由しないMOD法によるRE系(123)超電導体の製造方法としては、フッ素を含む有機酸塩(例えば、TFA塩:トリフルオロ酢酸塩)を出発原料とし、水蒸気雰囲気中で熱処理を行いフッ化物の分解を経由して製造する方法が知られている。
このTFA塩を出発原料とするMOD法としては、例えば、特許文献2、3に示す方法が知られている。これら特許文献2、3では、基板上に形成された中間層上に超電導原料溶液を塗布する塗布工程と、仮焼成熱処理を施し仮焼成膜を作製する仮焼成熱処理工程と、を繰り返して積層して仮焼成膜を作製する積層仮焼成熱処理工程を有する。この積層仮焼成熱処理工程の後で、本焼熱処理として、フッ素を含むアモルファス前駆体と水蒸気とを反応させて超電導体を作成している。この本焼熱処理中の水蒸気分圧によってフッ化物の分解速度を制御できるため、超電導体の結晶成長速度を制御でき、その結果、優れた面内配向性を有する超電導膜が作製される。
ところで、超電導体を形成する基板にテープ状線材を用いたテープ状酸化物超電導線材が知られている。このテープ状酸化物超電導線材を、上記特許文献2、3の思想を用いてMOD法で製造する場合、上記特許文献2、3は、スピンコート塗布方法で塗布する事ができる基板であることからテープ状線材を対象としていない。
このため、従来から、MOD法によりテープ状酸化物超電導線材を製造する場合では、積層仮焼成熱処理において、RTR法(reel to reel)を用いて行っている。
RTR法は、溶液塗布、仮焼成膜生成を繰り返して行うためにテープ状線材を、送り出すテープ状線材送り出し機構と、テープ状線材を巻き取る巻き取り機構とをトンネル炉の両端に設置する。RTR法は、テープ状線材送り出し機構と巻き取り機構とを用いて、テープ状線材を一定速度でトンネル炉内を移動させることで焼成を行う。この焼成を繰り返すことで仮焼成熱処理を連続的に行い、テープ状超電導線材を製造している。
特開2007−165153号公報 特開2012−003961号公報 特開2012−003962号公報
しかしながら、従来のMOD法において、単にテープ状線材を一定速度でトンネル炉内を移動させることによって焼成を行うRTR(reel to reel)方式を積層仮焼成熱処理工程で用いても、所望の膜厚で所望の優れた超電導特性を有する超電導層を得ることができなかった。特に、超電導層の膜厚が1.5μm以上の場合、自己磁場中でIcが400A/cm以上を有する超電導特性を得る事はできなかった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、所望の膜厚で超電導特性の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法の一つの態様は、長尺のテープ状の基板上に形成された中間層上に超電導原料溶液を塗布する塗布工程と、塗布した溶液に仮焼成熱処理を施して仮焼成膜を作製する仮焼成熱処理工程と、前記塗布工程と前記仮焼成熱処理工程とを繰り返すことにより仮焼成膜を積層することで、超電導層の前駆体を作製し、この前駆体に本焼成熱処理を施して超電導層を作製する本焼成熱処理工程とを有し、前記超電導層がREBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)であるテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法であって、前記仮焼成熱処理工程は、バッチ型の電気炉で、前記中間層上に塗布された前記溶液を熱処理して仮焼成膜を作製し、前記仮焼成熱処理工程では、前記電気炉内で、室温と同じ温度から初期仮焼成温度まで徐々に上昇させた後、前記初期仮焼成温度から仮焼成熱処理温度の最高温度350〜400℃に至るまで、酸素ガスを前記電気炉内に導入しつつ前記室温と同じ温度から前記初期仮焼成温度に至るまでの温度上昇の傾きの平均よりも緩い傾きで段階的に温度を上昇させて前記仮焼成膜を作製するようにした。
本発明によれば、所望の膜厚で超電導特性の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材を製造することができる。
本発明の実施の形態に係るテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法で製造されるテープ状RE系酸化物超電導線材の断面図 同テープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法の概略を示す線材の断面図 同テープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法において用いられる熱処理装置の要部構成を示す概略断面図 同熱処理装置の回転体を示す概略図 熱処理装置を用いたMOD法による超電導線材の製造方法を模式的に示す図 熱処理装置における仮焼成熱処理時の温度プロファイルを示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明の実施の形態に係るテープ状RE系酸化物超電導線材(YBCO超電導線材)の製造方法を用いて製造されるYBCO超電導層(RE系(123)超電導層)を備えるテープ状RE系酸化物超電導線材について説明する。
<酸化物超電導線材>
図1は、本発明の実施の形態に係るテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法で製造される酸化物超電導線材のテープの軸方向に垂直な断面を示す概略図である。
酸化物超電導線材(YBCO超電導線材)20は、テープ状であり、テープ状の金属基板21上に、中間層22、テープ状の酸化物超電導層(以下、「超電導層」と称する)23、安定化層24が順に積層されることによって形成される。ここでは、中間層22は、第1中間層22a、第2中間層22b、第3中間層22cを有する。
テープ状の金属基板21は、例えば、ニッケル(Ni)、ニッケル基合金、ステンレス鋼又は銀(Ag)である。金属基板21は、ここでは、結晶粒無配向・耐熱高強度金属基板であり、Ni−Cr系(具体的には、Ni−Cr−Fe−Mo系のハステロイ(登録商標)B、C、X等)、W−Mo系、Fe−Cr系(例えば、オーステナイト系ステンレス)、Fe−Ni系(例えば、非磁性の組成系のもの)等の材料に代表される立方晶系のビッカース硬度(Hv)=150以上の非磁性の合金である。金属基板21の厚さは、例えば、0.1mm以下である。
第1中間層22aは、スパッタリング法によりテープ状の金属基板21上に、IBAD法により成膜されたMgOから成る層である。この第1中間層22aの上には、スパッタリング法によりLaMnOから成る第2中間層22bが成膜されている。
更に、この上に、ここでは、スパッタリング法(PLD方でもよい)によってCeOを蒸着して全軸配向のキャップ層としての第3中間層22cが成膜されている。なお、第3中間層22cの厚みは、約1000[nm]である。なお、第3中間層22cをCeO膜にGdを添加したCe−Gd−O膜とした場合、超電導層23として成膜されるYBCO超電導層が良好な配向性を得るために、第3中間層22cにおける膜中のGd添加量を50at%以下にすることが好ましい。この第3中間層22cの上には超電導層23が成膜されている。この超電導線材20では、第1中間層22a、第2中簡層22b及び第3中間層22cにより中間層22が形成される。これら金属基板21と、金属基板21上に形成された中間層22とによって、複合基板25を構成する。この複合基板25の表面、つまり、中間層22上には、超電導層23が成膜されている。複合基板25は、2軸配向性を有するものでも配向性の無い金属基板21の上に2軸配向性を有する中間層22を成膜したものでもよい。また、中間層22は、1層〜3層或いは5層以上で形成されてもよい。
なお、超電導層23上には、銀、金、白金等の貴金属、あるいはそれらの合金であり低抵抗の金属である安定化層24が設けられている。なお、安定化層24は、超電導層23の直上に形成することによって、超電導層23が金、銀などの貴金属、あるいはそれらの合金以外の材料と直接的な接触によって反応によって引き起こす性能低下を防止する。これに加えて、安定化層24は、事故電流や交流通電により発生した熱を分散して発熱による破壊・性能低下を防止する。安定化層24の厚みはここでは10〜30[μm]である。
超電導層23は、全軸配向REBCO層、つまり、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜の層である。ここでは、超電導層23は、イットリウム系酸化物超電導体(RE123)である。
ここでは、超電導層23は、Baの定比組成を2より小さくした通常の低Ba組成法に用いられる原料溶液組成RE:Ba:Cu=1:1.5:3に、添加元素Mを加えて形成された、有効な酸化物粒子である人工ピン粒子(磁束ピンニング点)23aを有する。このときの超電導原料溶液組成は、人工ピン粒子の組成(Zrの場合Ba:Zr=1:1)を考慮して設定される。なお、超電導層23は、磁束ピンニング点23aを有する構成としたが、これに限らず、磁束ピンニング点23aを有しない層であってもよい。すなわち、テープ状酸化物超電導線材20では、磁束ピンニング点23aを含む超電導層23としたが、これに限らず、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つの添加元素(添加金属)Mを含まない超電導層であってもよい。
磁束ピンニング点(人工ピンニング点)23aは、超電導層23中に均一に分散された、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む粒径50[nm]以下、より好ましくは粒径10[nm]以下の化合物としての酸化物粒子である。なお、磁束ピンニング点23aの粒径は、磁束線サイズに近い方がより効果を発揮するため、上記範囲内であることが望ましい。
また、酸化物粒子の数nは、超電導層23中に、1[μm]当たり1.0×10個≦n<1.0×10個含まれることが望ましい。粒子の数が多いと確かにより多くの磁束をピン止めする事ができるため効果的であるが、上記範囲を超えると超電導体の体積減少の効果が大きくなるため超電導電流を阻害し、結局は超電導特性を低下させることとなる。例えば、1[μm]当たり1.0×10個以上存在する場合には、酸化物粒子の粒径が5[nm]であったとしても体積分率で60%を超える事になり、超電導特性を低下させる。
中間層22上に塗布される超電導原料溶液は、RE(REは、Y、Nd、Sm、Eu、GdおよびHoから選択された1種以上の元素を示す)、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液(混合溶液)と、Baと親和性の大きいZr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む有機金属錯体溶液とからなる。
すなわち、超電導原料溶液は、ここでは、Y、Ba、Cuを所定のモル比で含んだ金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した混合溶液である。モル数はY:Ba:Cu=1:a:3としたときにa<2の範囲内であるBaモル比の原料溶液を用いるようにしたものである。この場合、高いJc及びIc値を得るために、原料溶液中のBaモル比は1.0≦a≦1.8の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、原料溶液中のBaモル比は1.3≦a≦1.7の範囲である。これにより、Baの偏析を抑制することができ、その結果、結晶粒界でのBaベースの不純物の析出が抑制される。よって、クラックの発生が抑制されるとともに結晶粒間の電気的結合性が向上し、超電導膜をMOD法により形成することにより、高速で均一な厚膜を有する超電導特性に優れたテープ状酸化物超電導体を容易に製造できる。また、金属有機酸塩としては、各元素のオクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩、三弗化酢酸塩などが挙げられるが、これらのうち1種類以上の前記塩を有機溶媒に均一に溶解し、複合基板上に塗布できるものであれば用いることができる。
本実施の形態では、上記有機金属錯体溶液を用いることによって、超電導原料溶液中に含まれるBaのモル比aは、a<2の範囲内とする。加えて、混合溶液は、超電導体中にZr、Ce、Sn、Hf、Nb又はTiを含む粒径50[nm]以下、好ましくは粒径10[nm]以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点23aとして分散させることにより製造することができる。
なお、混合溶液(超電導原料溶液)としては、下記(a)〜(d)の溶液を用いることが好ましい。
(a)REを含む有機金属錯体溶液:REを含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液、特に、REを含むトリフルオロ酢酸塩溶液であることが望ましい。
(b)Baを含む有機金属錯体溶液:Baを含むトリフルオロ酢酸塩の溶液
(c)Cuを含む有機金属錯体溶液:Cuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
(d)Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液:Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbから選択された少なくとも1種以上の金属を含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
また、超電導層23は、第3中間層22c上において、水蒸気分圧3〜76[Torr]、酸素分圧300〜760[Torr]の雰囲気中で400〜500[℃]の温度範囲の仮焼熱処理されることが望ましい。また、超電導層23は、水蒸気分圧30〜600[Torr]、酸素分圧0.05〜1[Torr]の雰囲気中で700〜900[℃]までの温度範囲で本焼成熱処理されることが好ましい。本実施の形態では、超電導層23の仮焼性を、バッチ型の電気炉としての熱処理装置10内で施す。
また、形成される超電導層23に磁束ピンニング点23aを形成するための添加元素(添加金属)Mは、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つである。なお、添加元素Mの添加量は、超電導体構成金属元素に対して30[wt%]以下である必要があり、特に超電導層全体に対して1〜10[wt%]であることが望ましい。1〜10[wt%]が望ましい理由としては、磁場中特性向上のためには、添加元素の添加量が多い方がより多くの磁束をピン止め出来るため効果的である。しかしながら、10[wt%]、即ち体積分率30[vol%]を超えると超電導体の体積減少の効果が大きくなると共に、粒子が単独で存在できる臨界を超えるため、ピン止め効果が薄れかつ超電導電流を阻害するからである。さらに、上記範囲を超えると、析出物が凝集して超電導電流を阻害するからである。なお、添加元素MをZr、Sn、Ce、Ti、Hfのうちの少なくとも一つである場合におけるBaとの比は、Ba:M=1:1である。
添加元素MがZrである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導体中に分散して形成される化合物はBaZrOである。添加元素MがTiである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaTiOである。また、添加元素MがCeである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaCeOであり、添加元素MがSnである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaSnOである。また、添加元素MがHfである場合、磁束ピンニング点23aとして超電導層23中に分散して形成される化合物はBaHfOである。なお、磁束ピンニング点23aとなる各化合物は、超電導層23中に均一分散される。
また、添加元素MがNbの場合におけるBaとの比は、Ba:M=1:0.5〜2であり、磁束ピンニング点として超電導体中に分散して形成される化合物は、YNbBa、BaNb等である。なお、各磁束ピンニング点23aとなる化合物は、超電導層23中に均一分散される。
超電導層(超電導体)23中に磁束ピンニング点23aが形成された超電導線材において、超電導層23中に含まれるBaのモル比は、RE:Ba:Cu=1:1.5:3を満たす比になるようにする。このようにBaのモル比を、その標準モル比(RE:Ba:Cu=1:2:3を満たす比)より小さくすることによって、Baの偏析が抑制され、結晶粒界でのBaベースの不純物の析出が抑制される。これにより形成される超電導層23は、クラックの発生が抑制されるとともに、結晶粒間の電気的結合性が向上して通電電流によって定義されるJcが向上する。
また、超電導層23中に人工的に導入される磁束ピンニング点23aとして分散するZr、Sn、Ce、Ti、又はHfのうち少なくとも一つを含む酸化物粒子の粒径は、50[nm]以下とされるが、特に、10[nm]以下であることが望ましい。
なお、TFAを含む超電導原料溶液に添加される添加元素Mが、Zrである場合、TFAを含む超電導原料溶液中に、Baと親和性の高いZr含有ナフテン酸塩等を混合する手法を採用してもよい。これにより、超電導層23の組成(RE:Ba:Cu=1:1.5:3を維持しつつ、Baと結合して磁束ピンニング点(人工ピン粒子)23aとなるBaZrOを形成して超電導層23を形成する粒内に分散させる。このように形成された超電導層23は、粒界偏析によるJc低下することなく、粒界特性が改善される。
さらに、超電導層23内に形成されたBaZrOが膜面方向だけでなく、膜厚方向にもナノサイズ、ナノ間隔に存在し、これらが磁束を有効にピンニングし、磁場印加角度に対するJcの異方性を著しく改善することが可能となる。また、BaZrOのサイズ、密度及び分散を制御するためには、Zr含有ナフテン酸塩等の導入量だけでなく、仮焼熱処理時及び本焼熱(結晶化熱)処理時の酸素分圧、水蒸気分圧、焼成温度の制御により可能となる。これらの最適化を行うことにより有効な磁束ピンニング点23aの導入が可能となる。
また、酸化物超電導線材20では、Ba濃度を低減したRE系の超電導層23において、超電導層中に人工的にZr含有磁束ピンニング点23aを微細分散させることができる。このため、Jcの磁場印加角度依存性[Jc,min/Jc,max]が小さく、かつ、高磁場で高いJcを有する磁場特性を有するとともに、Jcの磁場印加角度依存性[Jc,min/Jc,max]も著しく向上できる。よって、自己磁場に加えて、磁場中でも、あらゆる磁場印加角度方向に対しても有効に磁束をピンニングして、等方的Jc特性が得られることで高い超電導特性(Jcの臨界電流密度Jc[MA/cm]および臨界電流Ic[A/cm])を確保できる。
<本テープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法の概要>
図2は、本発明の実施の形態に係るRE系酸化物超電導線材20の製造方法の概略を示す線材の断面図である。ここでは、超電導層としてYBCO超電導層を作製する場合を例に挙げて説明する。
まず、テープ状の金属基板21、例えば、Ni合金基板(基材)21上に、IBAD法によりMgOから成る第1中間層22aを成膜する(図1参照)。
次いで、第1中間層22aの上に、スパッタリング法によりLaMnOから成る第2中間層22bを成膜し、更に、この上に、スパッタリング法或いはPLD方によりCeOからなる第3中間層22cを成膜して複合基板25を形成する(図1参照)。
この複合基板25上に、塗布工程Aで超電導原料溶液を塗布して塗布膜を形成する。ここでは、超電導原料溶液は複合基板25上にディップコート法により塗布される。この超電導原料溶液は、上述したようにY―TFA塩(トリフルオロ酢酸塩)、Ba―TFA塩およびCu―ナフテン酸塩を有機溶媒中にY:Ba:Cu=1:1.5:3の比率で溶解した混合溶液である。この混合溶液には、磁束ピンニング点を形成するためのZr等の添加元素Mが添加されている。なお、作製する超電導層に磁束ピンニング点を含めない場合は、混合溶液(超電導原料溶液)中に添加物Mを添加しない。
この混合溶液(超電導原料溶液)を塗布した後、仮焼成熱処理工程Bで仮焼成する。なお、塗布工程Aでは、上記のディップコート法以外にインクジェット法、スプレー法などを用いることも可能であるが、基本的には、連続して混合溶液を複合基板25上に塗布できるプロセスであればこの例によって制約されない。1回に塗布する膜厚は0.01〜2.0[μm]、好ましくは0.1〜1.0[μm]である。これにより、生成される超電導層23の厚み(膜厚)は、1.3μm以上であり、例えば、1.5μmに形成される。なお、複合基板25において、基材上に形成される中間層は、MgO中間層上に、CeOからなる中簡層を成膜して形成したものでもよい。
この塗布工程Aおよび仮焼成熱処理工程Bを所定回数繰り返すことによって、テープ状酸化物超電導線材20の複合基板25における中間層上で塗布膜をマルチコートする。このように塗布工程Aと仮焼成熱処理工程Bとを繰り返す工程、すなわち、積層仮焼成熱処理工程を行うことによって、複合基板25上をマルチコート、つまり、塗布と仮焼成とで作製される仮焼成膜を複合基板25上に積層することで超電導層の前駆体を作製する。
これにより、複合基板25における中間層上に、超電導層23となるアモルファス超電導前駆体としての膜体(図2に示す「前駆体」)を形成する。このようにフッ素(F)を含有した膜体を中間層上に成膜した後、本焼成熱処理工程Cで、テープ状酸化物超電導線材20における膜体の結晶化熱処理(ここでは、YBCO超電導層生成のための熱処理)を、水蒸気ガス中において施す。このYBCO超電導層23の生成に伴いHFが発生する。この本焼成熱処理工程Cの後、生成されたYBCO超電導体上にスパッタ法により安定化層(例えば、Ag安定化層)24を施し、後熱処理を施す。これにより、磁束ピンニング点が分散され、磁場印加特性に優れたYBCO層を有する超電導線材(YBCO超電導線材)を製造する。
本実施の形態に係るテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法では、積層仮焼成熱処理工程における仮焼成熱処理工程Bは、以下に示す熱処理装置10(図3及び図4参照)を用いて行う。なお、本実施の形態では、本焼成熱処理工程Cも、熱処理装置10(図3及び図4参照)を用いて行う。これにより、超電導層の前駆体を作製する。また、本焼成熱処理工程Cにおける本焼成熱処理も同様に、熱処理装置10を用いて行う。これにより、本実施の形態に係るテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法は、YBCO超電導層を作製する。
<熱処理装置>
図3及び4は、仮焼成熱処理工程B(図2参照)で使用される熱処理装置10の要部構成を模式的に示す断面図である。図4はその内部に配置される円筒状の回転体15を示す。
熱処理装置10は、所謂、バッチ型の電気炉である。熱処理装置10は、炉体12及び電気ヒータ13からなる熱処理炉14と、熱処理炉14の内部(詳細には炉体12の内部)に配置された円筒状の回転体15と、を備える。
炉体12には、酸素ガス、水蒸気などの雰囲気ガスが導入される。電気ヒータ13は、炉体12の外部に配置されている。なお、この熱処理装置10は、中間層を形成する際に用いてもよい。
この円筒状の回転体(円筒状体)15は、熱処理炉14の内部に水平方向の回転軸部16に対して回転可能に配置されている。この回転体15は、石英ガラス、セラミックス、ハステロイまたはインコネル等の高温に耐え、酸化しないものにより形成される。
この回転体15の外周には、仮焼成熱処理が施されるテープ材26が巻回されている。このテープ材26は、金属基板21上に2軸配向性を有する中間層22を形成してなる複合基板25と、複合基板25上に超電導原料溶液を塗布してなる溶液膜、或いは、複合基板25に塗布した混合溶液(超電導原料溶液)を仮焼成してなる超電導前駆体としての仮焼成膜とを有する。テープ材26は、回転体15の外周に巻回された状態で超電導体生成の熱処理が施される。
回転体15における筒状の本体部分である円筒体15aには、テープ材26のテープ幅の1/2以下の径を有する多数の貫通孔15bが円筒体15aの全面に均一に形成されている。円筒体15aの一端側は蓋体15cにより密封されている。また円筒体15aの他端側は、円筒体内部のガスを熱処理炉14外へ排出するためのガス排出管17が蓋体15dの内部に連続して接続されている。
また、円筒体15aの外表面に離間して複数(少なくとも4本)のガス供給管18が回転体15の回転軸に対して対称に配置されている。各ガス供給管18には、多数のガス噴出孔(図示せず)が円筒体15aの表面に向かって雰囲気ガスを噴出するように形成されている。ガス供給管18の長さは、円筒体15aの高さよりも長くすることが好ましい。なお、ガス噴出孔の径は、ガス圧およびガス流量が均一になるように設計されている。ガス供給管18は、石英ガラス、セラミックス、ハステロイまたはインコネル等の高温に耐え、酸化しない材料により形成される。
雰囲気ガスは、ガス供給管18に接続された接続管(図示せず)を通じて熱処理炉14外に配置された雰囲気ガス供給装置(図示せず)からガス供給管18に送給される。
この熱処理装置10により仮焼成熱処理或いは本焼成熱処理を行う場合、熱処理炉14の内部を減圧雰囲気に保つことができるように構成されている。なお、雰囲気ガス供給装置は、不活性ガス(アルゴン、窒素等)、酸素ガスおよび水蒸気ガスを供給するガス系統に接続され、熱処理のパターンに合わせてこれらの雰囲気ガスを変化させる機構を備える。
本熱処理装置10は、塗布膜或いは仮焼成膜に対して仮焼成温度で仮焼成熱処理を施している際に、酸素ガスを供給する。
また、本熱処理装置10は、超電導の前駆体に対して本焼性温度で本焼成熱処理を施している際に、雰囲気ガスとして水蒸気ガスを低酸素雰囲気ガス(不活性ガス及び10000ppm以下の酸素を含む雰囲気ガス)に置換して供給する。
また、熱処理装置10は、制御部(CPU)19を有し、この制御部19を介して電気ヒータ13の温度調整、雰囲気ガス装置の制御、回転体15の回転駆動制御などが適宜行われている。特に、仮焼成熱処理では、制御部19は、仮焼成熱処理における電気ヒータ13の温度を調整して、テープ材26に仮焼成熱処理を施す。
また、本熱処理装置10は、仮焼成温度或いは本焼性温度で仮焼成或いは本焼成熱処理を施す際には、雰囲気ガスとして水蒸気ガスを低酸素雰囲気ガス(不活性ガス及び10000ppm以下の酸素を含む雰囲気ガス)に置換して供給する。
このように構成された熱処理装置10では、テープ材26が巻回された円筒状の回転体15が所定の回転速度で駆動機構(図示せず)により回転される。これとともに、電気ヒータ13によって熱処理炉14内を加熱雰囲気に保持する。また、加熱雰囲気に保持された熱処理炉14の内部に、ガス供給管18の多数のガス噴出孔から雰囲気ガスが円筒体表面に向かって噴出される。なお、雰囲気ガスは、ガス供給管18のガス噴出孔からそれぞれ略一定の流量で噴出される。一方、この雰囲気ガスは、円筒体15aの多数の貫通孔15bから円筒体15a内部に吸入され、円筒体15aの他端側に接続されたガス排出管17を経由して熱処理炉14外へ排出される。
なお、本焼成熱処理においても、電気ヒータ13によって加熱雰囲気に保持された熱処理炉14の内部に、ガス供給管18の多数のガス噴出孔から雰囲気ガスが円筒体表面に向かって噴出される。
このように構成された熱処理装置10では、超電導原料溶液が塗布される(図2の塗布工程A)の後の仮焼成熱処理Bにおいて、中間層上に塗布された超電導原料溶液を加熱して仮焼成熱処理工程を行う。
図5は、熱処理装置10を用いたMOD法による超電導線材の製造方法を模式的に示す図である。なお、図5において図5Aは、図2の塗布工程Aに対応し、図5Bは、図2Bの仮焼成熱処理工程に対応し、図5Cは、図2の本焼成熱処理工程Cに対応する。また、図5Dは、安定化層24(図1参照)を作製する工程を示し、図5Eは、本焼成熱処理C(図5C及び図2参照)後に行う後熱処理工程を示す図である。
まず、図1に示すテープ状のNi合金基板であるハステロイ(基材)21上に、IBAD法による第1中間層22a、スパッタリング法による第2中間層(LaMnO層)22b、スパッタリング法或いはPLD方による第3中間層(CeO層)22cを順に成膜する。これにより線状の複合基板25を形成する。
この複合基板25を、図5Aに示す塗布工程(図2の塗布工程Aに相当)で、混合溶液(超電導原料溶液)Kにどぶ浸けする。すなわち、複合基板2に対して、ディップコート法によって混合溶液23を塗布する。なお、混合溶液(超電導原料溶液)Kは、Y―TFA塩(トリフルオロ酢酸塩)、Ba―TFA塩およびCu―ナフテン酸塩を有機溶媒中にY:Ba:Cu=1:1.5:3の比率で溶解した溶液である。
複合基板25に混合溶液Kを塗布した後、図5Bに示すように、熱処理装置10を用いて、仮焼成工程(図2の仮焼成工程Bに相当)で仮焼成する。この塗布工程(図5A参照)および仮焼成工程(図5B参照)を所定回数繰り返すことで、テープ材25における中間層上に超電導前駆体としての仮焼成膜を形成し、前駆体付線材27を作製する。
この積層仮焼成熱処理工程における熱処理装置10の仮焼成処理では、仮焼成温度を段階的に変化させて仮焼成熱処理の最高温度(図6に示す仮焼成最高温度D2)にして、テープ材26に対して仮焼成を施す。すなわち、仮焼成熱処理工程では、仮焼成熱処理温度の最高温度D2に至るまで、単位時間における温度上昇を変化させて、段階的に温度を上昇させることで、仮焼成膜を作製している。なお、この最高温度は、300〜450[℃]であることが好ましく、更に好ましくは、350〜400[℃]である。
結晶化温度に近づくにつれ超電導層内に結晶化の核となる微結晶が生成されやすい。微結晶が生成されてしまうと、本焼時において、Ce界面からエピタキシャル成長しない箇所が発生し、結晶欠陥となる恐れがある。よって、仮焼成温度を上記温度未満にすることによって仮焼膜の状態をアモルファス状態にする。これにより、上記温度を超えて仮焼成した場合よりも、仮焼成において結晶欠陥が発生することがなく、生成された超電導層の超電導特性の低下原因となりにくい。
また、仮焼成処理温度が、上記温度以上であるため、上記温度より低い場合と比較して、有機溶媒等の揮発成分が層内に篭ることがなく、不純物を層内に抱えたまま本焼を行うことがない。超電導線材は1μm程度の薄膜であるため、超電導層(YBCO超電導層)23に不純物が存在すると、超電導特性の低下に著しく影響する。特に、仮焼成処理では、熱処理装置10内に、酸素を流して、400℃の高温で、炭素などの有機残渣が不純物として内部に残らない様にすることが好ましい。
図6は、熱処理装置10における仮焼成熱処理時の温度プロファイルを示す図である。
図6に示すように、熱処理装置10を用いた仮焼成熱処理工程では、まず、回転体15に巻回されたテープ材26を内部に挿入する。そして、テープ材26を巻回した回転体15に対して、初期仮焼成温度(図6では約270[℃])D1まで加熱する。
仮焼成熱処理工程では、熱処理装置10の熱処理路炉14内におけるテープ材26に対する加熱は、室温と同じ温度から初期仮焼成温度D1まで、徐々に上昇するように行われる。これにより、従来のRTR方式を用いた仮焼成熱処理とは異なり、テープ材は、開放されたトンネル炉内に突入されることで、室温状態から急激に昇温しない。よって、塗布した混合溶液に含まれる有機溶媒や水分等の突沸が防止される。
ここで、初期仮焼成温度は、熱処理炉14の内部に、ガス供給管18を介して、雰囲気ガスとして酸素ガスの導入を開始する温度である。ここでは,初期仮焼成温度に時間t1で到達している。すなわち、仮焼成熱処理中では、温度上昇中の熱処理炉14の内部において、初期仮焼成温度時のときに酸素ガスが導入される。
次いで、酸素ガスを導入しつつ、酸素ガスが充満された熱処理炉14内を、初期仮焼成温度に至るまでの温度上の傾きの平均よりも緩い傾きで、仮焼成温度の最高温度である最高仮焼成温度に至るまで、加熱する。
ここでは、酸素ガスを導入しながら、酸素ガスが導入される初期仮焼成温度の到達時間t1から最高仮焼成温度に到る所定時間t2までのWet in状態の期間として約5時間の間、熱処理炉14内部の炉体12内の仮焼性温度を上昇させる。このように、複合基板25上の塗布膜に対して結晶加熱処理を行って仮焼成膜を成膜する。
なお、仮焼成熱処理の開始から仮焼成処理の最高温度(仮焼成最高温度)に到達するまでの熱処理時間は、1〜10時間前であることが望ましい。更に好ましくは、仮焼成熱処理の開始から仮焼成最高温度に到達するまでの熱処理時間は、2〜7時間前であることが好ましい。
結晶化温度に近づくにつれて超電導層内に結晶化の核となる微結晶が生成するため、上述したように仮焼膜の状態では、仮焼膜をアモルファス状態とすることが好ましい。このため、膜中に微結晶が生成されないように、仮焼成熱処理時間を、微結晶が生成される10時間になる前に設定される。また、仮焼成時間を上記時間以上とし、上記時間未満にて仮焼した場合と異なり、有機溶媒等の揮発成分が層内に篭って不純物となり、仮焼膜中に存在することを防止する。ここでは、熱処理装置10内を、酸素が充満された最高仮焼成温度400℃にして、炭素などの有機残渣が不純物として装置内に残らない様にしている。
そして、最高温度D2に到達した後、熱処理装置10では加熱を停止するとともに、酸素ガスの供給を停止する。つまり、所定時間D2以降の冷却期間では、水蒸気ガス、酸素ガスの供給を停止する。
このような仮焼成熱処理を施した後、再び塗布工程で、混合溶液を塗布し、その後、先の仮焼成熱処理と同様に仮焼成熱処理を施して、仮焼成膜を作製する。これら塗布工程と仮焼成熱処理工程を繰り返すことでマルチコートを施して、厚膜の仮焼成膜としての超電導層(YBCO超電導層)23の前駆体を作製する。
こうしてテープ材26において複合基板25に積層された中間層22(図1参照)上に超電導層(YBCO超電導層)23の前駆体を生成して前駆体付線材27を作製した後、図5Cに示す本焼成工程(図2の本焼成工程Cに相当)を行う。
この本焼成工程では、前駆体付線材27における超電導前駆体の膜体の結晶化熱処理、即ち、YBCO超電導体生成のための熱処理を施して、超電導層(YBCO超電導層)23を生成する。
次いで、図5Dに示す安定化層作製工程で、生成されたYBCO超電導体上にスパッタ法により安定化層であるAg安定化層24を施した後、図5Dにしめす後熱処理工程で、後熱処理を施してYBCO超電導線材を製造する。なお、図5Dに示す後熱処理工程では、熱処理装置10を用いて熱処理を行っている。
なお、図5Cに示す本焼成熱処理工程では、熱処理装置10は、温度上昇中の熱処理炉14の内部において、雰囲気ガスとして水蒸気ガスを、本焼成温度700〜900[℃]の温度TS[℃](ここでは本焼成温度を750[℃]とする)で、ガス供給管18を介して導入する。この水蒸気ガスの導入開始温度は、本焼成温度(ここでは750[℃])に到達するまでの昇温中の温度である。水蒸気ガスの導入開始温度は、好ましくは、450[℃]から550[℃]までの温度であることが好ましい。水蒸気ガスの導入開始温度が450[℃]から550[℃]までの温度であれば、600[℃]付近から水蒸気ガスを導入した場合や400[℃]付近から水蒸気ガスを導入した場合よりも、本焼成熱処理温度時点における水蒸気ガスの量を十分に確保できる。
次いで、水蒸気ガスを導入しつつ、本焼成温度で所定時間定温維持することで結晶化熱処理を行う。ここでは、水蒸気ガスを導入しながら、所定時間として5〜30時間(より好ましくは、10時間〜15時間)の間、熱処理炉14内部の炉体12内の本焼性温度を維持する。これにより、YBCO超電導層23を生成するために、酸化物超電導線材20を構成する複合基板25上の前駆体に対する結晶加熱処理を行う。
次いで、本焼成熱処理が施された前駆体の冷却を開始する前、つまり、熱処理炉14内部の炉体12内の冷却を開始するTF時間前(ここでは、冷却開始の数時間前、例えば、5分〜2時間前)に水蒸気ガスの供給を停止する。この水蒸気ガスの供給停止の直後に不活性ガス及び10000ppm以下の酸素を含む低酸素雰囲気ガスを供給する。具体的には、不活性ガスは窒素、アルゴンなどであり、低酸素雰囲気ガスを炉体12内に供給して、ガス供給管18を介して炉体12内に供給される雰囲気ガスとしての水蒸気ガスを低酸素雰囲気ガスに全置換し、炉体12内のフッ素の除去を終了させる。なお、水蒸気ガスの供給停止は、言い換えれば、本焼成熱処理工程では、低酸素雰囲気ガスの供給によって熱処理炉(電気炉)14内に供給されている水蒸気ガスが低酸素雰囲気ガスに全置換される前に行う。
また、本焼成熱処理工程では、炉体12内の水蒸気ガスを低酸素雰囲気ガスに全置換することができるため、超電導結晶が分解されることがなく、また未反応のBaが水蒸気ガスと反応することもないため所望の超電導特性を得ることができる。この冷却している間では、不活性ガスの供給は継続する。
このように本実施の形態によって酸化物超電導線材20を製造する際には、図2の塗布工程Aにおいて、金属基板21上に、中間層22を介して超電導原料溶液を塗布した後、仮焼熱処理工程Bで仮焼成熱処理を施す。これを所定の膜厚となるまで繰り返して行う(マルチコート処理)。次いで、本焼熱処理工程Cで、テープ状線材20に本焼成熱処理を施す。これにより、本焼成熱処理においてフッ化バリウムを効率よく分解でき、超導電体となる前駆体で好適な結晶化を図り、製造するテープ状酸化物超電導線材の超導電層の超電導特性を向上させることができる。
本実施の形態によれば、図5Bに示す仮焼成処理工程では、バッチ型の熱処理装置10(詳細は図2及び図3参照)内で、仮焼成膜を作製する。すなわち、仮焼成膜に対して、仮焼成熱処理工程をバッチ式の熱処理装置10で施すため、密閉された炉体12内で、徐々にネッ処理温度を上昇させて、効果的に焼成を行うことができる。これにより、仮焼熱処理中において、従来のRTR方式と異なり、塗布した混合溶液(超電導原料溶液)を、高温のトンネル炉に突入させることで急激に昇温させることがなく、混合溶液の突沸を防止することができる。よって、一様で均一な膜を形成でき、超電導特性に優れた超電導線材を製造できる。
また、バッチ型の熱処理装置10で仮焼成を施すため、従来のreel-to-reel方式の焼成を行う場合と比較して、炉内の雰囲気をコントロールし易いだけでなく、温度・圧力などの制御が容易である。よって更に安定した超電導層(YBCO超電導層)23を形成でき、かつ、短時間でテープ状RE系酸化物超電導線材を製造できる。
なお、本実施の形態における金属基板21としてのNi合金基板は2軸配向性を有するものでも、配向性の無い金属基板の上に2軸配向性を有する中間層を成膜したものでもよい。また、中間層22は、1層あるいは複数層形成される。また、塗布工程Aにおける塗布方法としては、上記のディップコート法以外にインクジェット法、スプレー法などを用いることも可能であるが、基本的には、連続して混合溶液を複合基板25上に塗布できるプロセスであればこの例によって制約されない。1回に塗布する膜厚は、0.01μm〜2.0μm、好ましくは0.1μm〜1.0μmである。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明に係るテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法は、所望の膜厚で超電導特性の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材を製造できる効果を有し、超電導線材の製造方法として有用である。
10 熱処理装置
12 炉体
13 電気ヒータ
14 熱処理炉
15 回転体
15a 円筒体
15b 貫通孔
15c、15d 蓋体
16 回転軸部
17 ガス排出管
18 ガス供給管
20 酸化物超電導線材
21 金属基板
22 中間層
23 超電導層
24 安定化層
25 複合基板
26 テープ材
27 前駆体付線材

Claims (5)

  1. 長尺のテープ状の基板上に形成された中間層上に超電導原料溶液を塗布する塗布工程と、
    塗布した溶液に仮焼成熱処理を施して仮焼成膜を作製する仮焼成熱処理工程と、
    前記塗布工程と前記仮焼成熱処理工程とを繰り返すことにより仮焼成膜を積層することで、超電導層の前駆体を作製し、この前駆体に本焼成熱処理を施して超電導層を作製する本焼成熱処理工程とを有し、前記超電導層がREBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)であるテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法であって、
    前記溶液は、RE、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液と、磁束ピンニング点を形成するZr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む有機金属錯体溶液とからなり、
    前記仮焼熱処理工程は、バッチ型の電気炉で、前記中間層上に塗布された前記溶液を熱処理して仮焼成膜を作製し、
    前記仮焼成熱処理工程では、前記電気炉内で、室温と同じ温度から初期仮焼成温度まで徐々に上昇させた後、前記初期仮焼成温度から仮焼成熱処理温度の最高温度350〜400℃に至るまで、酸素ガスを前記電気炉内に導入しつつ前記室温と同じ温度から前記初期仮焼成温度に至るまでの温度上昇の傾きの平均よりも緩い傾きで段階的に温度を上昇させて前記仮焼成膜を作製する、
    ことを特徴とするテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記仮焼成熱処理において熱処理開始から最高温度に到達するまでの熱処理時間は、1〜10時間前である、
    ことを特徴とする請求項に記載のテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記仮焼成熱処理において熱処理開始から最高温度に到達するまでの熱処理時間は、2〜7時間前である、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 前記仮焼熱処理工程のバッチ型の電気炉は内部に円筒状体を備えてなり、該円筒状体に被熱処理物を巻きまわして仮焼熱処理を行う、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記本焼成熱処理工程はバッチ型の電気炉にて熱処理する工程である、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のテープ状RE系酸化物超電導線材の製造方法。
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