JP2015141831A - 酸化物超電導線材 - Google Patents

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隆介 広長
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Abstract

【課題】安定化層が超電導層から剥がれにくく、印加磁場環境下でも優れた超電導特性を有する酸化物超電導線材を実現すること。
【解決手段】基板11上に中間層12を介して、REBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1又は2種以上の元素を示し)系の超電導層17が形成されている。超電導層17には、磁束ピンニング点17aが分散されており、超電導層17は、中間層12上に接して形成される第1超電導層13と、第1超電導層13上に接して形成され、且つ、安定化層15が接して積層される第2超電導層14とを有する。第2超電導層14は、第1超電導層13よりも磁束ピンニング点17aの添加量が少ない。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導線材に関し、特に、金属基板上に中間層を介して形成された超電導層上に安定化層が形成された酸化物超電導線材に関する。
従来、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜を備える酸化物超電導線材は、金属基板上に2軸配向した無機材料薄膜を1層あるいは複数層形成し、その上に超電導薄膜(超電導層)及び安定化層を順次形成した構造を有する。このREBaCu系の酸化物超電導線材(以下、「REBCO超電導線材」という)の製造については、数多くの成膜方法での製造の検討が行われている。
このREBCO超電導線材の製造方法として、例えば、特許文献1に示すように、有機金属塩あるいは有機金属化合物を原料とし、真空プロセスを使用せずに、超電導薄膜を製造する方法としてMOD法が知られている。
このMOD法は、先ず、酸化物中間層が形成された基材を、超電導原料溶液(有機金属塩を均一に有機溶媒に溶解させたもの)に浸し、この基材を超電導原料溶液から引き上げて基材の表面に超電導膜を付着させる。その後、仮焼成熱処理及び本焼成熱処理を行うことで、熱分解して、酸化物超電導体を形成する。MOD法は、非真空中でも長尺の基材に連続的に酸化物超電導体を形成できるので、PLD(Pulsed Laser Deposition)法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の気相法よりも、プロセスが簡単で低コスト化が可能であることから、注目されている。
ところで、MOD法を用いて形成された酸化物超電導線材であっても、超電導層に不純物を含まない酸化物超電導線材では、無磁場下(自己磁場中)で高臨界電流特性を示すが、印加磁場環境下で使用する場合、臨界電流特性は急激に低下することが知られている。
この対応策として、超電導層内に、磁束をピン留めする磁束ピンニング点を導入することが考えられている(例えば特許文献1参照)。
この特許文献1では、TFA−MOD法において仮焼膜を形成する際に使用する超電導原料溶液中に、超電導体と反応しない元素からなるZr等の有機金属塩を添加する。そして、本焼工程における反応熱処理の過程において、超電導体を構成するBaと反応させ、超電導薄膜中に非超電導物質であるBaZrO(BZO)の微粒子を磁束ピンニング点として均一分散させている。
特開2009−164010号公報
しかしながら、超電導原料溶液に磁束ピンニング点を形成するためのZr元素等の添加元素を加えて酸化物超電導線材を作製する場合、MOD法では、本焼工程において、余剰な添加元素が最表層に不純物相として生成してしまうことが多い。これにより表面の平滑性が損なわれ、その上層に形成されるAg等による安定化層との密着性が低下する。この密着性の低下は、安定化層が超電導層に対して剥離し易くなるとともに、超電導層と安定化層との接続抵抗の増加により安定化層に電流の分流が発生して発熱等により超電導特性の低下を招くという問題がある。
本発明の目的は、安定化層が超電導層から剥がれにくく、印加磁場環境下でも優れた超電導特性を有する酸化物超電導線材を提供することである。
本発明の酸化物超電導線材の一つの態様は、基板上に中間層を介して形成され、且つ、添加した磁束ピンニング点を分散させたREBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1又は2種以上の元素を示す。)系の超電導層を有する酸化物超電導線材において、前記超電導層は、前記中間層上に接して形成される第1超電導層と、前記第1超電導層上に接して形成され、且つ、安定化層が接して積層される第2超電導層と、を有し、前記第2超電導層は、前記第1超電導層よりも前記磁束ピンニング点の添加量が少ない、構成を採る。
本発明によれば、安定化層が超電導層から剥がれにくく、印加磁場環境下でも優れた超電導特性を有する酸化物超電導線材を実現できる。
本発明に係る実施の形態の酸化物超電導線材の説明に供する図 本発明に係る実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法を説明する図 熱処理装置の要部構成を示す概略断面図 同熱処理装置の要部構成を示す概略正面図 同熱処理装置の回転体を示す概略図 塗布乾燥装置の要部構成を示す概略側面図 実施例1の酸化物超電導線材の要部構成を示す概略側面図
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<酸化物超電導線材>
図1は、本発明に係る実施の形態の酸化物超電導線材の説明に供する図であり、詳細には、テープ状の酸化物超電導線材においてテープの軸方向に垂直な断面を示す図である。
酸化物超電導線材10は、テープ状の金属基板11上に、中間層12、超電導層17、安定化層15が順に積層されることによって形成される。
金属基板11は、例えば、Ni−Cr系(具体的には、Ni−Cr−Fe−Mo系のハステロイ(登録商標)B、C、X等)、W−Mo系、Fe−Cr系(例えば、オーステナイト系ステンレス)、又は、Fe−Ni系(例えば、非磁性の組成系のもの)等の材料に代表される低磁性の結晶粒無配向・耐熱高強度金属基板である。金属基板11の厚さは、例えば、0.1[mm]以下である。
中間層12は、金属基板11からの元素の拡散が第1超電導層13に及ぶのを防止するための拡散防止層、第1超電導層13の結晶を一定の方向に配向させるための配向層等の複数の層を有する。例えば、中間層12は、金属基板11上に、第1中間層としてのAl層、第2中間層としてのY層、第3中間層としてのMgO層、第4中間層としてのLaMnO層、第5中間層としてのCeO層を順に積層した5層で構成する。
第1中間層としてのAl層は、金属基板11上にスパッタリング法で成膜される。この第1中間層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するための層であり、その上に配される膜の配向性を得るために用いられるベッド層としても機能する。
第2中間層としてのY層は、Al層上に、例えば、PLD法により成膜される。
第3中間層としてのMgO層は、Y層上にIBAD法により成膜される。第4中間層としてのLaMnO層は、MgO層上にスパッタリング法により成膜される。
第4中間層としてのLaMnO層上には、第5中間層であるCeO層がスパッタリング法で成膜される。CeO層は、超電導層17との整合性がよく、且つ、超電導層17との反応性が小さいため最も優れた中間層の一つとして知られており、超電導層17の直下に配置される層として機能する。CeO層は、スパッタリング法に代えてPLD(Pulsed Laser Deposition:パルスレーザ蒸着法)法で、成膜されてもよい。なお、MgO層より上方の層は、超電導層17との反応を防止する反応防止層としても機能する。
金属基板11と、金属基板11上に設けられた中間層12が、テープ状の複合基板(以下、「基材」と称する)16を構成する。
基材16は、2軸配向性を有する金属基板11上に中間層12を形成して2軸配向性を有する基材としてもよく、また、配向性の無い金属基板11の上に2軸配向性を有する中間層12を成膜して2軸配向性を有するように構成してもよい。なお、中間層12は、1層〜3層或いは5層以上で形成されてもよい。基材16の幅方向の長さは、特に限定されるものではないが、本実施の形態では、幅1〜150[mm]、厚さ0.01〜0.5[μm]とすることが好ましい。一般に、基材16の幅は、2〜30[mm]である。また、基材16の長手方向の長さは、500[m]としている。
超電導層17は、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1又は2種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜の層である。超電導層17は、YBaCuで表されるイットリウム系超電導体(YBCO層)が代表的なものである。
超電導層17には、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも一つの添加元素を含む50[nm]以下の酸化物粒子が磁束ピンニング点17aとして分散している。より好ましくは、磁束ピンニング点17aは、5〜30[nm]のZrを含む酸化物粒子である。
この超電導層17は、MOD法により成膜されており、ここでは、トリフルオロ酢酸塩(TFA)を用いたTFA−MOD法で成膜される。例えば、TFAを含むBa溶液中に、Baと親和性の高いZr含有ナフテン酸塩等を混合することにより、RE系超電導体からなる超電導層17に、Zrを含む酸化物粒子(例えば、BaZrO)を磁束ピンニング点17aとして分散させる。なお、超電導層17中に磁束ピンニング点17aを分散する手法は、公知の技術を適用できる(例えば特開2012−059468号公報)。
超電導層17は、第1酸化物超電導層(以下、「第1超電導層」と称する)13と、第2酸化物超電導層(以下、「第2超電導層」と称する)14とを有する。
第1超電導層13は、基材16の中間層12上に接して形成されている。
第1超電導層13における磁束ピンニング点17aの添加量(添加元素量)は、金属濃度で0.5〜10モル%である。
また、第1超電導層13の膜厚は、超電導層17の膜厚の2/3以上である。
第2超電導層14は、超電導層17と安定化層15とを密着させるものであり、第1超電導層13上に接して形成されている。また、第2超電導層14上には、安定化層15が密着して形成されている。
第2超電導層14は、磁束ピンニング点17aの添加量のみ異なり、第1超電導層13と同様に構成される。
第2超電導層14には、第1超電導層13よりも添加量の少ない磁束ピンニング点17aが分散されている。この第2超電導層14には、磁束ピンニング点が存在しない場合もあるが、ここでは、第2超電導層14には、第1超電導層13よりも添加量の少ない磁束ピンニング点17aが分散されている。このように第2超電導層14は、第1超電導層13よりも分散された磁束ピンニング点17aが少なく、安定化層15が密着して形成される最表面には、磁束ピンニング点17aが存在しにくく、平滑な最表面となっている。
安定化層15は、第2超電導層14上に接して形成されている。
安定化層15は、低抵抗の金属であり、銀、金、白金等の貴金属、あるいはそれらの合金等で構成される。安定化層15は、主に、超電導層17が金、銀などの貴金属、あるいはそれらの合金以外の材料と直接的な接触によって反応によって引き起こす性能低下を防止する。また、安定化層15は、事故電流や交流通電により発生した熱を分散して発熱による破壊・性能低下を防止する。すなわち、安定化層15は、超電導層17が金、銀などの貴金属、あるいはそれらの合金以外の材料と直接的な接触によって反応によって引き起こす性能低下を防止する。
このように本実施の形態の酸化物超電導線材10によれば、超電導層17中に磁束ピンニング点17aが分散しているため、超電導線材10が湾曲した状態で用いられても、磁場の影響を受けにくく、安定した超電導特性が発揮される。
さらに、超電導層17において、第2超電導層14では、第1超電導層13よりも分散された磁束ピンニング点17aが少なく、安定化層15が密着して成膜される最表面にも磁束ピンニング点17aが存在しにくく、平滑な最表面となっている。これにより、同じ材料で構成される第1超電導層13とは一体的に密着状態で設けられ、安定化層15とも密着して接合された状態となり、安定化層15が剥離しにくくなっている。言い換えれば、超電導層17は、密着する安定化層15の剥がれにくさを示す剥離強度が向上する。
よって、安定化層が超電導層から剥がれにくく、印加磁場環境下でも優れた超電導特性を有することができる。
<酸化物超電導線材10の製造方法1の概要>
酸化物超電導線材10は、MOD法により超電導層(YBCO層)を成膜することで、製造される。図2は、本発明の実施の形態の酸化物超電導線材10の製造方法において仮焼成処理1を説明する図であり、RTR(Reel To Reel)式仮焼炉の概略図である。
図2に示す仮焼成炉30を用いて基材16に対して超電導原料溶液130の塗布を行い、次いで、仮焼成熱処理を施す。これを繰り返すことで本焼成熱処理前のアモルファス超電導前駆体を形成する。
図2の仮焼成炉30は、超電導原料溶液130を収容する容器41を有する塗布装置40と、送り出しリール32と、ガイド(案内ローラ)34と、ヒータ炉36と、巻き取りリール37とを有する。
超電導原料溶液130は、金属元素を含む金属有機酸塩、または、有機金属化合物を、有機溶媒中に溶解した混合溶液からなる。なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、トルエン等及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
超電導原料溶液130としては、下記(a)〜(d)の混合溶液を用いてもよい。
(a)RE(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示す)を含む有機金属錯体溶液:有機溶媒と、REを含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液、特に、REを含むトリフルオロ酢酸塩溶液であることが望ましい。
(b)Baを含む有機金属錯体溶液:有機溶媒と、Baを含むトリフルオロ酢酸塩の溶液
(c)Cuを含む有機金属錯体溶液:有機溶媒と、Cuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
(d)Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液:有機溶媒と、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbから選択された少なくとも1種以上の金属を含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
ここでは、超電導原料溶液130は、Y―TFA塩(トリフルオロ酢酸塩)、Ba―TFA塩及びCu―ナフテン酸塩を有機溶媒中にY:Ba:Cu=1:1.5:3の比率で溶解した溶液としている。この超電導原料溶液130には、磁束ピンニング点17aを形成するためのZr等の添加元素が、金属濃度で所定モル%となるように添加されている。この所定モル%は、第1超電導層13を成膜する際の超電導原料溶液130のモル%よりも、第2超電導層14を成膜する際に塗布される超電導原料溶液130の方が小さくなるようにする。添加元素(添加金属)は、上述したようにZr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つである。なお、添加元素の添加量は、0.5〜10モル%とする。
ヒータ炉36は、基材16において中間層上に塗布された超電導原料溶液130に対して、仮焼成熱処理を施すことでアモルファス状態にするものである。ここでは、図示しない制御部によりヒータ炉36は、内部を通過する基材16に対して、温度勾配2℃/minで最高加熱温度500℃、水蒸気分圧2.1%の酸素ガス雰囲気(ガス流量1l/min、大気圧)中で施すように制御される。
まず、金属基板11上に中間層12まで形成した基材16を形成する。基材16は、例えば、Ni合金基板である金属基板11上に、スパッタリング法によるAl層、PLD法によるY層、IBAD法によるMgO層、スパッタリング法によるLaMnO層、スパッタリング法によるCeO層を順に成膜して作製する。
仮焼成炉30において仮焼成熱処理を行う場合、まず、作製した基材16を、図2に示す仮焼成炉30の送り出しリール32に巻回する。また、容器41には、第1超電導層13を成膜するための添加量で添加元素(例えば、Zr)が添加された超電導原料溶液130を貯留する。
仮焼成炉30は、送り出しリール32から基材16を繰り出して、超電導原料溶液130を貯留する塗布装置40を通過させた後、ガイド34を介してヒータ炉36に搬送する。ヒータ炉36では、基材16が内部を通過することで、基材16で中間層上に塗布された超電導原料溶液130の乾燥及び仮焼成が行われる。なお、ヒータ炉36では、内部を通過する基材16に対して、水蒸気を含む酸素気流となる雰囲気ガスを吹き付けつつ、所定の温度勾配(最高到達温度450[℃])で加熱する。
これら塗布、乾燥及び仮焼が複数回(図では4回分であるが、例えば、計12回)繰り返された(マルチターン)後で、各ガイド34によって巻き取りリール37に搬送される。
マルチターンの際に、超電導原料溶液130の塗布を重ねて第1超電導層13を形成するときと、第1超電導層13上に第2超電導層14を形成するときとで、超電導原料溶液130における添加元素の添加量を変更する。超電導原料溶液130を、第1超電導層13の膜厚相当分塗布して乾燥及び仮焼成熱処理を施した後、第1超電導層13を形成するときよりも添加元素(例えばZr)の添加量を減らした超電導原料溶液130で、第2超電導層14の膜厚に相当する分、塗布する。その後、乾燥及び仮焼成熱処理を施して、基材16を巻き取りリール37に搬送する。
巻き取りリール37は、所定膜厚の超電導前駆体が形成された基材16を巻き取る。その後、本焼熱処理として、超電導前駆体に対して本焼成熱処理(例えば、水蒸気を含む減圧低酸素気流中、最高到達温度750[℃]の条件下において、3〜5時間加熱)を施す。これにより、超電導前駆体である仮焼膜の結晶化が行われ、その後、超電導層上に安定化層15を形成することで酸化物超電導線材が作製される。
すなわち、仮焼成炉30を用いた酸化物超電導線材の製造方法、具体的には、超電導層前駆体の成膜方法は、所定膜厚の超電導前駆体を形成して巻き取るまでに、超電導溶液の塗布・仮焼を複数回繰り返して所定膜厚を確保する。よって、第1超電導層13の膜厚を、超電導層17の膜厚(第1超電導層13及び第2超電導層14の合計膜厚)の2/3以上にしつつ、第2超電導層14における磁束ピンニング点17aの添加量を、第1超電導層13よりも少なくすることを容易に行える。
具体的には、マルチターンにおいて中間層上に超電導前駆体を形成する際に、形成する第2超電導層14の厚みも考慮して超電導原料溶液の塗布・仮焼を御所定回数繰り返すことで、第1超電導層13の膜厚を、超電導層17の膜厚の2/3以上にできる。加えて、超電導前駆体の最上層を形成する際に、超電導原料溶液を、磁束ピンニング点17aとなる添加元素の添加量を少なくした超電導原料溶液或いは添加量を無くした超電導原料溶液に変更して、これを塗布して仮焼する。これにより、安定化層15の界面となる第2超電導層14では、磁束ピンニング点17aの添加量を、第1超電導層13における添加量よりも少なくして、或いは、磁束ピンニング点17aを添加せずに、超電導層17を容易に形成できる。
本実施の形態の酸化物超電導線材10を製造する際に、仮焼成熱処理としては、図3〜図5に示すバッチ式熱処理炉を用いて行ってもよい。
<酸化物超電導線材10の製造方法2の概要>
図3〜図5は、バッチ式熱処理炉の説明に供する図であり、図3は、同熱処理装置の要部構成を示す概略断面図、図4は、同熱処理装置の要部構成を示す概略正面図、図5は、同熱処理装置の回転体を示す概略図である。
図3〜図5に示す熱処理装置50は、バッチ式の熱処理炉である熱処理装置50を用いて、基材16において塗布された原料溶液(超電導原料溶液)の仮焼成を行うものである。
熱処理装置50は、円筒状の熱処理空間51aを有する炉芯管51と、円筒状の回転体52と、ガス供給管53と、ガス排出管54と、を有する。
炉芯管51の熱処理空間51aは、炉内の減圧雰囲気又は真空が保持できるように構成されている。炉芯管51には、図3及び図4に示すように、周囲にヒータ55が配置されており、熱処理空間51aである内部をヒータ55によって加熱する。
炉芯管51内部には、炉芯管51の軸線である炉芯軸Cを中心に、回転体52が回転可能に配置されている。
回転体52は、表面52aに、前駆体が形成された基材16が巻回される円筒体52bを有し、図示しない回転機構により熱処理中に一定速度で回転する。
なお、回転体52は、石英ガラス、アルミナなどのセラミックス又はハステロイ、インコネル等の金属等のような高温に耐え、酸化しにくい材質により構成される。
円筒体52bの表面52a(回転体52の表面)には、基材16が、超電導前駆体の膜面を露出させた状態で螺旋状に巻回される。
この回転体52の円筒体52bには、図5に示すように、多数の貫通孔57が形成されている。この貫通孔57の径は、基材16のテープ幅と同等とすることが好ましい。また、その開孔率は表面52aの面積に対して50〜95%とし、特に89〜91%の範囲の開孔率が好適する。円筒体52bの一端側は蓋体52cにより閉塞されている。円筒体52bの他端側は、蓋体52dにより閉塞されている。蓋体52dには、円筒体52b内部の雰囲気ガスを炉芯管51の外部へ排出するガス排出管54が挿通されている。
また、図3及び図4に示すように、炉芯管51内には、回転体52に対して軸方向に均一に雰囲気ガスを噴射する複数のガス供給管53が設けられている。複数のガス供給管53は、炉芯軸Cに平行に配置され、かつ、炉芯軸Cに垂直な断面において対称に配置されており、円筒体52bの表面52aから離間する。各ガス供給管53は、多数のガス噴出孔を介して、回転体52に対して雰囲気ガスを噴出する。
なお、雰囲気ガスを均一に噴出し、かつフッ素ガスをより除去させるためには、雰囲気ガスを供給する際の流速、具体的には円筒体52bに巻回された超電導原料溶液の膜面に接触する流速は、例えば、200[m/s]以上500[m/s]以下であることが好ましい。また、ガス噴出孔の径は、ガス圧及びガス流量が均一になるように設計される。雰囲気ガスは、ガス供給管53に接続される図示しない接続管を介して、炉芯管51の外に配置される図示しない雰囲気ガス供給装置から供給される。因みに、ガス供給装置では、不活性ガス、酸素ガス又は水蒸気等からなる雰囲気ガスを生成し、ガス供給管53からはこの雰囲気ガスが噴出される。なお、ガス供給管53及びガス排出管54は、回転体52と同様の高温に耐え、酸化しにくい材質により構成される。
この熱処理装置50では、図示しない制御部がヒータ55の温度調整、雰囲気ガス装置の制御、回転体52の回転駆動制御を行う。雰囲気ガス供給装置は、不活性ガス(アルゴン、窒素等)、酸素ガス及び水蒸気を供給するガス系統に接続され、熱処理のパターンに合わせてこれらの雰囲気ガスを変化させる機構を備える。熱処理装置50は、炉芯管51内を減圧雰囲気に保ちつつ、基材16において塗布された超電導原料溶液130に対して、仮焼性温度で仮焼成熱処理を施す。
次に、熱処理装置50による仮焼成熱処理について説明する。
まず、金属基板11上に中間層12が形成された基材16を形成し、この基材16の中間層上に超電導原料溶液130を塗布する。なお、基材16の作製については、製造方法1で述べたものと同様であるため説明は省略する。
図6に、塗布装置60の模式図の一例を示す。
塗布装置60は、基材16が巻回された送り出しリール61と、超電導原料溶液130が収容されたU字状の溶液槽63と、ガイドローラ62、64と、回転体52をセットして回転させる図示しない回転部とを有する。
溶液槽63は、上方に基材導入口及び基材排出口を向けたU字状筒体である。溶液槽63内には、超電導原料溶液130が貯留されており、基材導入口から基材16を導入して、内部を通過させて、基材排出口から基材16を排出することで、基材16に対して超電導原料溶液130を塗布する。
塗布装置60では、送り出しリール61から基材16を、所定の速度(例えば、5[m/h]−20[m/h]程度)で送り出し、ガイドローラ62を介して、超電導原料溶液を溜めた溶液槽63内を通過させて超電導原料溶液を塗布する。超電導原料溶液130が塗布された基材16は、ガイドローラ64を介して回転体52により巻き取られる。
なお、塗布装置60は、回転体52及び送り出しリール61のうち、少なくとも回転体52をセットして回転させる回転部を制御する図示しない制御部を有する。この制御部が、送り出しリール61から送り出される基材16の移動速度、回転体52の円筒体52bにより巻き取られる移動速度及び溶液槽63に潜らせる速度等を調整する。
このようにして中間層上に超電導原料溶液が塗布された基材16は、回転体52の円筒体52bの外周に螺旋状に巻回される。
そして、基材16が巻回された回転体52を、図3〜5に示す熱処理装置50の炉芯管51内に設置する。
熱処理装置50において、基材16を巻き付けた円筒状の回転体52は一定速度(例えば、1−2[rpm])で回転する。加えて、所定の温度プロフィールを用いた焼成パターンで制御したヒータ55は熱処理空間51aを加熱雰囲気に保持する。この熱処理空間51a内に、ガス供給装置(図示せず)から供給された雰囲気ガスを、ガス供給管53が、多数のガス噴出孔を介して、テープ状の基材16の超電導原料溶液130の膜面に対して均等に吹き付ける。吹き付けられた雰囲気ガスは、膜面と反応し、これにより、超電導原料溶液130が塗布されてなる膜面に仮焼成熱処理を施す。なお、雰囲気ガスはその後、回転体52における円筒体52bの多数の貫通孔57を介して、円筒体52bの内部に入り、反応後のガスとしてガス排出管54を経由して炉外へ排出される。次いで、室内温度で基材16を冷却した後、基材16を熱処理装置50から取り出す。
このように塗布装置60による超電導原料溶液の塗布と、熱処理装置50による仮焼成熱処理との一連の処理を、複数回繰り返すことで、中間層上に、所定膜厚の超電導前駆体を形成する。
塗布及び仮焼成熱処理の一連の処理を繰り返す際に、超電導原料溶液130の塗布を重ねて第1超電導層13を形成するときと、第1超電導層13上に第2超電導層14を形成するときとで、超電導原料溶液130における添加元素の添加量を変更する。超電導原料溶液130を、第1超電導層13の膜厚相当分塗布して仮焼成熱処理を施した後、第1超電導層13を形成するときよりも添加元素(例えばZr)の添加量を減らした超電導原料溶液130を、基材16における仮焼熱処理後の部位に対して塗布する。その後、熱処理装置50で、仮焼成熱処理を施し、これを第2超電導層14の膜厚になるまで繰り返す。
次いで、中間層12上に所定膜厚の超電導前駆体が形成された基材16を、本焼成用熱処理炉(例えば、熱処理装置50でもよい)内に設置して、本焼成処理を施すことで、超電導層を形成する。次いで、超電導層上に安定化層15を形成することで酸化物超電導線材が作製される。
すなわち、熱処理装置50及び塗布装置60を用いた酸化物超電導線材の製造方法2、具体的には、超電導層前駆体の成膜方法2では、所定膜厚の超電導前駆体を形成するまでに、超電導原料溶液130の塗布・仮焼を複数回繰り返して所定膜厚を確保する。よって、第1超電導層13の膜厚を、第1超電導層13及び第2超電導層14の合計膜厚の2/3以上にしつつ、第2超電導層14における磁束ピンニング点17aの添加量を、第1超電導層13よりも少なくすることを容易に行える。
具体的には、第1超電導層13を形成する際に、塗布装置60による超電導原料溶液の塗布及び熱処理装置50による仮焼成熱処理の一連の処理を、第2超電導層14の厚みを考慮して、超電導層17の厚の2/3以上となるように所定回数繰り返す。
また、第2超電導層14、言い換えれば、超電導前駆体の最上層を形成する場合では、磁束ピンニング点17aとなる添加元素の添加量を少なくした超電導原料溶液130或いは添加量を無くした超電導原料溶液130を塗布した後、仮焼するようにする。
これにより、安定化層の界面となる第2超電導層14は、磁束ピンニング点17aの添加量を、第1超電導層13における添加量よりも少なくして、或いは、磁束ピンニング点17aを添加せずに容易に形成できる。
<実施例1>
図7に示す酸化物超電導線材10Aを製作した。この酸化物超電導線材10Aでは、基板として、金属基板(Ni合金基板:ハステロイ(登録商標)テープ)11上に、中間層12を成膜した基材を作製した。中間層12は、金属基板11上に、スパッタリング法によりAl層、PLD法によりY層、IBAD法によりMgO層、スパッタリング法によりLaMnO層及びスパッタリング法によりCeO層を順に成膜して形成した。
このように形成した中間層12上に、上記製造方法1を用いて、第1超電導層13と、第2超電導層14とを成膜した。第1超電導層13として磁束ピンニング点17aとなるZrの添加量(「ピン添加量」と称する)を2モル%としたYBCO層を成膜した。この第1超電導層13上に第2超電導層14としてピン添加量1モル%としたYBCO層を成膜した。酸化物超電導線材の超電導膜(第1超電導層13及び第2超電導層14の合計である超電導層17)において、第1超電導層13の第2超電導層に対する膜厚は、2/3以上とした。この後、第2超電導層14上に安定化層15としてAg層を成膜して酸化物超電導線材を作製した。
なお、第1超電導層13の成膜の際には、Y―TFA塩、Ba―TFA塩及びCuのナフテン酸塩をY:Ba:Cuのモル比が1:1.5:3となるように有機溶媒中に混合し、この混合溶液中に磁束ピンニング点17aとなるZrを含有するナフテン酸塩を金属濃度で2モル%(金属モル比で1%)配合して作製した原料溶液を用いた。また、第2超電導層14の成膜の際には、第1超電導層13と同様の混合溶液中に、Zrを含有するナフテン酸塩を金属濃度で1モル%(金属モル比で1%)配合して作製した原料溶液を用いた。また、仮焼熱処理は、水蒸気分圧16[Torr]の酸素ガス雰囲気中で最高加熱温度(Tmax)500[℃]まで加熱した後、炉冷することにより施した。また、本焼成熱処理(結晶化熱処理)は、水蒸気分圧76[Torr]、酸素分圧0.23[Torr]のアルゴンガス雰囲気中で760[℃]の温度で保持した後、炉冷することにより施した。
以上のように製造した酸化物超電導線材10Aの無磁場環境下(自己磁場中に相当)での特性(Ic値)は、500[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)であった。また、酸化物超電導線材10Aの超電導膜について、超電導膜における結晶軸のc軸に平行な方向(ab面に垂直)に外部磁場(ここでは3T)を印加し、その際の超伝導特性Ic[A/cm−W](@77K)を測定した。このような印加磁場環境下における超電導特性Ic,minは、50[A/cm−W]@77K,3T‖cであった。この酸化物超電導線材に棒を貼り付け、この棒をオートグラフで垂直に引き上げることで剥離した際の力を剥離強度[MPa]として測定した。際0Aの剥離強度は、60[MPa]だった。
<実施例2>
実施例1と同様に図7に示す酸化物超電導線材10Aを製作した。その際に、第1超電導層13の磁束ピンニング点17aを形成するZrの添加量を1モル%に変更し、第2超電導層14の磁束ピンニング点17aを形成するZrの添加量を0.5モル%に変更して、実施例2の酸化物超電導線材とした。この実施例2の酸化物超電導線材の超電導膜(第1超電導層及び第2超電導層の合計である超電導層)において、第1超電導層の第2超電導層に対する膜厚は、2/3以上とした。この実施例2の酸化物超電導線材の超電導特性Icは、450[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)であり、印加磁場環境(外部磁場3T)下における超電導特性Ic,minは、45[A/cm−W]@77K,3T‖cであった。さらに、実施例2の酸化物超電導線材の剥離強度は、80[MPa]であった。
<比較例1>
実施例1の酸化物超電導線材10Aを作製する際に、第1超電導層及び第2超電導層における磁束ピンニング点となるZrの添加量をそれぞれ2モル%に変更して、比較例1としての酸化物超電導線材を作製した。つまり、第1超電導層及び第2超電導層を、磁束ピンニング点を含むZrが2モル%の一つの超電導層を作製した。この比較例1の酸化物超電導線材の超電導特性Icは、495[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)であり、印加磁場環境(外部磁場3T)下における超電導特性Ic,minは、55[A/cm−W]@77K,3T‖cであった。また、比較例1の酸化物超電導線材の剥離強度は、30[MPa]であった。
<比較例2>
実施例2の酸化物超電導線材10Aを作製する際に、第1超電導層及び第2超電導層における磁束ピンニング点となるZrの添加量をそれぞれ1モル%に変更して、比較例2の酸化物超電導線材を作製した。つまり、第1超電導層及び第2超電導層を、磁束ピンニング点を含むZrが1モル%の一つの超電導層として形成した。この比較例2の酸化物超電導線材の超電導特性Icは、430[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)であり、印加磁場環境(外部磁場3T)下における超電導特性Ic,minは、48[A/cm−W]@77K,3T‖cであった。また、比較例2の酸化物超電導線材の剥離強度は、50[MPa]であった。
<参照例1>
実施例1の酸化物超電導線材10Aを作製する際に、超電導膜(第1超電導層及び第2超電導層の合計である超電導層)において、第1超電導層の第2超電導層に対する膜厚が1/2となる参照例1の酸化物超電導線材を製作した。なお、参照例1の酸化物超電導線材における各超電導層のZr添加量は、実施例1と同じである。この参照例1の酸化物超電導線材の超電導特性Icは、470[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)であり、印加磁場環境(外部磁場3T)下における超電導特性Ic,minは、40[A/cm−W]@77K,3T‖cであった。さらに、参照例1の酸化物超電導線材の剥離強度は、60[MPa]であった。
<参照例2>
実施例2の酸化物超電導線材10Aを作製する際に、超電導膜(第1超電導層及び第2超電導層の合計である超電導層)において、第1超電導層の第2超電導層に対する膜厚が1/2となる参照例2の酸化物超電導線材を作製した。なお、参照例2の酸化物超電導線材における各超電導層のZr添加量は、実施例2と同じである。この参照例2の酸化物超電導線材の超電導特性Icは、440[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)であり、印加磁場環境(外部磁場3T)下における超電導特性Ic,minは、40[A/cm−W]@77K,3T‖cであった。また、参照例2の酸化物超電導線材の剥離強度は、60[MPa]であった。
<比較例3>
実施例1の酸化物超電導線材10Aを作製する際に、第1超電導層及び第2超電導層、つまり、超電導層の磁束ピンニング点17aを形成するZrの添加量を無くして、比較例3としての酸化物超電導線材を作製した。この比較例3の酸化物超電導線材の超電導特性Icは、505[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)であり、印加磁場環境(外部磁場3T)下における超電導特性Ic,minは、5[A/cm−W]@77K,3T‖cであった。また、参照例1の酸化物超電導線材の剥離強度は、90[MPa]であった。
なお、これら実施例1−2、比較例1−3及び参照例1−2のそれぞれにおける第1超電導層及び第2超電導層の合計膜厚は同じ膜厚である。これら実施例1−2、比較例1−3及び参照例1−2における測定結果を、実施例1−2に、比較例1−3及び参照例1−2を対応させて表1に示す。
Figure 2015141831
実施例1は、比較例1と比較して、同膜厚の超電導層において安定化層に密着する層のピン添加量が少ない分、外部磁場を受ける環境下での超電導特性については多少数値が下がるものの、剥離強度が大きく(約倍)なることが判った。これは、比較例1と参照例1とを比較しても参照例1の方が、剥離強度が大きくなることからも明らかである。
また、実施例2は、比較例2と比較して、実施例1と比較例1の比較結果と同様に、同膜厚の超電導層において安定化層に密着する層のピン添加量が少ない分、印加磁場環境下(外部磁場3Tを受ける環境下)での超電導特性については多少数値が下がるものの、剥離強度の面で優れることが判った。これは、比較例1と参照例1とを比較しても参照例1の方が、剥離強度が大きくなることからも明らかである。
このように、実施例1、比較例1及び参照例1との比較と、実施例2、比較例2及び参照例2の比較とから、超電導層全体において安定化層に密着する層のピン添加量が少ない分、印加磁場環境下(外部磁場3Tを受ける環境下)での超電導特性については多少数値が下がるものの、剥離強度の面で優れることが判った。
また、これら実施例1、実施例2の酸化物超電導線材は、超電導層に磁束ピンニング点を有しない比較例3と比較して、磁束ピンニング点を含む分、自己磁場中の超電導特性は劣るものの、印加磁場環境下での超電導特性ははるかに優れるということが判った。
また、本実施の形態の製造方法で製造される酸化物超電導線材では実施例1、実施例2を参照するに、超電導特性が、450[A/cm−W]@77K,自己磁場中(self field)以上、印加磁場環境(外部磁場3T)下における超電導特性Ic,minが45[A/cm−W]@77K,3T‖c以上、剥離強度が60以上と、すべてに優れた特性を有することが判った。
このように本実施の形態の酸化物超電導線材は、従来の酸化物超電導線材と比較して、自己磁場中で優れた超電導特性を有することは勿論のこと、印加磁場環境(外部磁場を受ける環境)下における超電導特性も優れ、さらに、剥離強度にも優れた特性を有する。
なお、本実施の形態の酸化物超電導線材10では、磁束ピンニング点17aを含む第2超電導層14としたが、これに限らず、第2超電導層14をZr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つの添加元素(添加金属)Mを含まない第2超電導層としてもよい。この構成の場合、磁束ピンニング点17aを含む第1超電導層13の厚みは、超電導層(第1超電導層13と第2超電導層14との合計)17の膜厚の2/3以上とする。これにより、自己磁場中で優れた超電導特性を有することは勿論のこと、印加磁場環境下でも優れた超電導特性を有し、更に、剥離強度の強い酸化物超電導線材を実現することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明に係る酸化物超電導線材は、安定化層が超電導層から剥がれにくく、印加磁場環境下でも優れた超電導特性を有し、印加磁場環境下で使用する酸化物超電導線材として有用である。
10、10A 酸化物超電導線材
11 金属基板
12 中間層
13 第1超電導層
14 第2超電導層
15 安定化層
16 基材
17 超電導層
17a 磁束ピンニング点
30 仮焼成炉
32、61 送り出しリール
34 ガイド
36 ヒータ炉
37 巻き取りリール
40 塗布装置
41 容器
50 熱処理装置
51 炉芯管
51a 熱処理空間
52 回転体
52a 表面
52b 円筒体
52c、52d 蓋体
53 ガス供給管
54 ガス排出管
55 ヒータ
57 貫通孔
60 塗布装置
62、64 ガイドローラ
63 溶液槽
130 超電導原料溶液

Claims (6)

  1. 基板上に中間層を介して形成され、且つ、添加した磁束ピンニング点を分散させたREBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1又は2種以上の元素を示す。)系の超電導層を有する酸化物超電導線材において、
    前記超電導層は、
    前記中間層上に接して形成される第1超電導層と、
    前記第1超電導層上に接して形成され、且つ、安定化層が接して積層される第2超電導層と、
    を有し、
    前記第2超電導層は、前記第1超電導層よりも前記磁束ピンニング点の添加量が少ない、
    酸化物超電導線材。
  2. 前記第1超電導層の膜厚は、前記超電導層の膜厚の2/3以上であり、
    前記第2超電導層には、前記磁束ピンニング点が添加されていない、
    請求項1記載の酸化物超電導線材。
  3. 前記超電導層に含まれる前記磁束ピンニング点の添加量は、金属濃度で0.5〜10モル%である、
    請求項1又は2記載の酸化物超電導線材。
  4. 前記第2超電導層の前記磁束ピンニング点の添加量は、金属濃度で2モル%未満である、
    請求項1記載の酸化物超電導線材。
  5. 前記磁束ピンニング点は、5〜30nmのZrを含む酸化物粒子である、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材。
  6. 前記超電導層はMOD法にて形成されてなる、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材。
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