JP5889072B2 - 超電導線用基材の製造方法及び超電導線の製造方法 - Google Patents

超電導線用基材の製造方法及び超電導線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超電導線用基材の製造方法及び超電導線の製造方法に関する。
超電導線用基材の製造方法として、所謂RTR(Reel-to-Reel)方式でテープ状の基材を搬送しながら基材の主面に基材長手方向に亘り、スパッタ法を用いて超電導層の下地となる酸化物を主体とした中間層を成膜する中間層成膜工程を有するものが知られている。また、超電導線の製造方法として、上述した超電導線用基材の製造方法で得られた超電導線用基材の中間層上に超電導層を形成する超電導層工程を有するものが知られている。
この超電導線の製造方法によって得られる超電導線の通電特性は、超電導層を構成する超電導体の結晶方位、特に2軸配向性に大きく依存することが知られている。高い2軸配向性を有する超電導層を得るためには、その下地となる超電導線用基材の中間層の結晶性を向上させる必要がある。
ここで、特許文献1には、LiNiO基材上にスパッタ法を用いてY部分安定化酸化ジルコニウムからなる中間層を成膜し、この中間層を基材からLiOが揮発しないように水蒸気含有雰囲気下で加熱処理した後、中間層上に超電導層を形成する方法が開示されている。
また、特許文献2には、中間層の表面に水分や二酸化炭素等の不純物が付着しないように、中間層成膜工程と超電導層成膜工程の間は、中間層を減水蒸気雰囲気又は減二酸化炭素雰囲気で保持する方法が開示されている。
特開平5−97590号公報 国際公開第2007/094147号
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では、中間層成膜時の雰囲気(特にHOガスやCOガス)については言及していない。したがって、特許文献1及び特許文献2のような方法において、テープ状の基材を搬送しながら基材の主面にスパッタ法を用いて酸化物を主体とした中間層を成膜する場合、基材長手方向に亘って結晶性の変動が大きい中間層を得る場合がある。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、基材長手方向に亘って結晶性の変動が小さい中間層を得ることができる超電導線用基材の製造方法及び超電導線の製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決する過程において、本発明者らは、テープ状の基材を搬送しながら基材の主面にスパッタ法を用いて酸化物を主体とした中間層を成膜した場合、成膜時間(搬送時間)の経過に伴って、すなわち基材の搬送方向の後端側になるほど、中間層の主体となる酸化物の酸素欠損量が多くなってしまうことを見出した。
成膜時間の経過に伴って酸化物の酸素欠損量が多くなると、基材長手方向に亘って、酸素量の変動が大きな酸化物を有する中間層となってしまい、中間層上に形成される超電導層の2軸配向性ひいては超電導線の通電特性が基材長手方向に亘って大きく変動するという問題が生じる。
そこで、本発明者らは、成膜時間の経過に伴って中間層の主体となる酸化物の酸素欠損量が多くなる原因を考察すると、スパッタ装置のチャンバー内、すなわち成膜雰囲気中のHOガスが成膜時間の経過に伴って減少していることが原因であることを見出した。
本発明の上記課題は下記の手段によって解決された。
<1>テープ状の基材を搬送する搬送工程と、前記搬送工程中に、HOガス又はCOガスの少なくとも何れか一方を前記基材の周囲に導入しながら、前記周囲の雰囲気下で、前記基材の長手方向に亘って前記基材の主面に、スパッタ法を用いて超電導層の下地となる酸化物を主体とした中間層を成膜する中間層成膜工程であって、前記雰囲気のH Oガスの分圧を、1.00×10 −4 Pa以上に保持するようにH Oガスの導入を続ける、前記雰囲気のCO ガスの分圧を、1×10 −6 Pa以上に保持するようにCO ガスの導入を続ける中間層成膜工程と、を有する超電導線用基材の製造方法。
<2>前記中間層成膜工程では、前記雰囲気のHOガスの分圧及びCOガスの分圧の少なくとも何れか一方が一定となるように、HOガス及びCOガスの少なくとも何れか一方を前記周囲に導入しながら前記中間層を形成する、<1>に記載の超電導線用基材の製造方法。
>前記中間層成膜工程では、前記雰囲気のHOガスの分圧を、5×10−3Pa以下に保持するようにHOガスの導入を続ける、前記<1>又は前記<2>に記載の超電導線用基材の製造方法。
>前記中間層成膜工程では、前記酸化物として、組成式がCeO,PrO,LaMnO,NbO,SrTiO,GdZr ,,Gd及びMgOで表される酸化物、又はYSZ(イットリア安定化ジルコニア)(ただし、組成式中の酸素の組成比は酸素欠損を除いた化学量論比である)のうちいずれか1つを用いる、前記<1>〜前記<>の何れか1つに記載の超電導線用基材の製造方法。
>前記中間層を多層構造とするとき、前記中間層成膜工程では、HOガス又はCOガスを前記周囲に導入しながら、CeO又はPrOを主体とした前記中間層の最表層を形成する、前記<1>〜前記<>の何れか1つに記載の超電導線用基材の製造方法。
>前記中間層成膜工程の後に、前記中間層の表面に付着したHO又はCOを除去する除去工程を有する、前記<1>〜前記<>の何れか1つに記載の超電導線用基材の製造方法。
>前記<1>〜前記<>の何れか1つに記載の超電導線用基材の製造方法で製造した超電導線用基材の中間層の表面に、超電導体を主体とした超電導層を成膜する超電導層成膜工程、を有する超電導線の製造方法。
本発明によれば、基材長手方向に亘って結晶性の変動が小さい中間層を得ることができる超電導線用基材の製造方法及び超電導線の製造方法を提供することができた。
図1は、本発明の実施形態に係る超電導線1の積層構造を示す図である。 図2は、超電導線用基材2の中間層20が多層構造である場合の中間層20の層構成の一例を示した図である。 図3は、本発明の実施形態で用いるスパッタ装置の概略構成図である。 図4は、スパッタ装置を用いてガス導入装置により一定量のHOガスを導入しながら、導入したHOガスをターボ分子ポンプで排気し続けた場合において、成膜時間とHOガスの分圧の関係を示す図である。 図5は、HOガスの導入分圧とCeOの(200)面のピーク位置との関係をプロットしたグラフ図である。 図6は、従来のスパッタ装置を用いて、成膜時間と成膜雰囲気中のHOガスの分圧の関係を示す図である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る超電導線用基材の製造方法及び超電導線の製造方法について超電導線を一例に挙げて具体的に説明する。なお、各図面を通して、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
<<超電導線用基材及び超電導線の概略構成>>
まず、本発明の実施形態に係る超電導線用基材の製造方法によって得られる超電導線用基材と、超電導線の製造方法によって得られる超電導線の概略構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る超電導線1の積層構造を示す図である。
図1に示すように、超電導線1は、基材10上に中間層20、超電導層30、保護層40が順に形成された積層構造を有している。そして、図1におけるテープ基材10と中間層20が、本発明の実施形態に係る超電導線用基材2を構成する。
基材10は、テープ状の基材(以下、テープ基材10と称す)とされており、その厚み方向の一面が成膜面(主面)となる。このテープ基材10は、低磁性の無配向金属基材や無配向セラミックス基材が用いられる。金属基材の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Co、Cu、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag、Cr等の金属又はこれらの合金が用いられる。特に好ましいのは、耐食性及び耐熱性の点で優れているステンレス、ハステロイ(登録商標)、その他のニッケル系合金である。また、これら各種金属材料上に各種セラミックスを配してもよい。また、セラミックス基材の材料としては、例えば、MgO、SrTiO、又はイットリウム安定化ジルコニア等が用いられる。
中間層20は、超電導層30の下地となる層であり、超電導層30において高い2軸配向性を実現するためにテープ基材10上に形成される層である。このような中間層20は、例えば、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が基材10と超電導層30を構成する超電導体との中間的な値を示す。また、中間層20は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。ただし、中間層20が単層構造であっても多層構造であっても、酸化物を主体とした層を少なくとも1つを有する。ここで、上記及び以降から説明する「主体」とは、ある層を構成する構成成分のうち、最も多く層中に含有されている成分を表す。なお、中間層20が多層構造の場合の具体的な層構成については、後述する。
超電導層30は、中間層20上に形成され、超電導体を主体としている。この超電導層30は、酸化物超電導体、特に銅酸化物超電導体を主体としていることが好ましい。銅酸化物超電導体としては、REBaCu7−δ(RE−123と称す),BiSrCaCu8+δ(BiサイトにPbドープしたものも含む),BiSrCaCu10+δ(BiサイトにPbドープしたものも含む),(La,Ba)CuO4−δ,(Ca,Sr)CuO2−δ[CaサイトはBaであってもよい],(Nd,Ce)CuO4−δ,(Cu,Mo)Sr(Ce,Y)CuO [(Cu,Mo)−12s2と称し、s=1、2、3,4である],Ba(Pb,Bi)O又はTlBaCan−1Cu2n+4(nは2以上の整数である)等の組成式で表される結晶材料を用いることができる。また、銅酸化物超電導体は、これら結晶材料を組み合わせて構成することもできる。
以上の結晶材料の中でも、超電導特性が良くて結晶構造が単純であるという理由から、REBaCu7−δを用いることが好ましい。また、結晶材料は、多結晶材料であっても単結晶材料であってもよい。
上記REBaCu7−δ中のREは、Y,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,YbやLuなどの単一の希土類元素又は複数の希土類元素であり、これらの中でもBaサイトと置換が起きない等の理由でYであることが好ましい。また、δは、酸素不定比量であり、例えば0以上1以下であり、超電導転移温度が高いという観点から0に近いほど好ましい。なお、酸素不定比量は、オートクレーブ等の装置を用いて高圧酸素アニール等を行えば、δは0未満、すなわち、負の値をとることもある。
また、REBaCu7−δ以外の結晶材料のδも酸素不定比量を表し、例えば0以上1以下である。
超電導層30の膜厚は、特に限定されないが、例えば500nm以上3000nm以下である。
<<超電導線用基材の詳細構成>>
図2は、超電導線用基材2の中間層20が多層構造である場合の中間層20の層構成の一例を示した図である。
多層構造の一例である中間層20は、ベッド層22と、強制配向層24と、LMO層26と、キャップ層28と、を順に積層した構成となっている。
ベッド層22は、基材10上に形成され、基材10の構成元素が拡散するのを防止するための層である。ベッド層22の構成材料としては、GdZr7−δ(−1<δ<1、以下GZOを称す)、YAlO(イットリウムアルミネート)、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Y、Gd、Al、B、Sc、Cr、REZrO、CeO、PrO、及びRE等を用いることができる。ここで、REは、単一の希土類元素又は複数の希土類元素を表す。なお、ベッド層22は、拡散防止機能とともに例えば強制配向層24の2軸配向性を向上させるなど他の機能を有していてもよい。なお、2軸配向性を向上させる機能を持たせるためには、GZOやCeO、PrO等をベッド層22の構成材料として用いることが好ましい。なお、「2軸配向性」とは、層中の結晶のc軸配向性及びa軸面内配向性が高いことを意味する。
ベッド層22の厚みは、特に限定されないが、当該ベッド層22の機能(基材10からの金属元素の拡散抑制と強制配向層の配向性を向上)の低下を抑制するという観点から10nm以上であることが好ましく、基材10の反りを抑制するという観点から500nm以下であることが好ましい。特にコスト等の要請により厚みを薄くするという観点から、100nm以下であることがより好ましい。
強制配向層24は、ベッド層22上に形成され、2軸配向性を有し、超電導層30の結晶を一定の方向に配向させるための層である。強制配向層24は、例えばNbOやMgO等の多結晶材料を主体としている。また、ベッド層22と同様の材料、例えばGZOを用いることもできる。
強制配向層24の膜厚は、特に限定されないが、例えば1nm以上20nm以下である。
なお、「強制配向層」という用語は、IBAD法により形成された2軸配向性を有する層を指すものであり、IBAD法により形成された強制配向層であるか否かは、X線回折測定等により、ベッド層22が非配向か否か且つ強制配向層24となる層が2軸配向性を有しているか否かを分析することによって特定することができる。
LMO層26は、強制配向層24とキャップ層28の間に配置され、キャップ層28の格子整合性を向上させる機能を有している。このようなLMO層26は、組成式がLaMnMO3+δ(δは酸素不定比量)で表される結晶材料で構成された酸化物層である。なお、δの値は、特に限定されないが、例えば−1<δ<1である。
LMO層26の厚みは、特に限定されないが、LMO層26の表面粗を抑制するという観点から100nm以下であることが好ましく、製造上の観点から4nm以上であることが好ましい。具体値としては30nmが挙げられる。
キャップ層28は、LMO層26上に形成され、LMO層26を保護するとともに超電導層30との格子整合性をさらに高めるための層である。具体的には、希土類元素を含有し、かつ自己配向性を有する蛍石型結晶構造体で構成されている。この蛍石型結晶構造体は、例えばCeO及びPrOから選ばれる少なくとも1つである。また、キャップ層28は蛍石型結晶構造体を主に備えていればよく、他に不純物を含有していてもよい。
キャップ層28の膜厚は、特に限定されないが、十分な配向性を得るには50nm以上が好ましく、300nm以上であればさらに好ましい。ただし、600nm を超えると成膜時間が増大するので、600nm以下とすることが好ましい。
<<スパッタ装置の概略>>
次に、本発明の実施形態に係る超電導線用基材の製造方法及び超電導線の製造方法で用いるスパッタ装置の概略を説明する。
図3は、本発明の実施形態で用いるスパッタ装置の概略構成図である。
本発明の実施形態で用いるスパッタ装置50は、スパッタ装置室内(成膜室内)をターボ分子ポンプ52にて真空引きしてArを含む所定のガスを導入しながら、テープ基材10上に薄膜を成膜するRTR方式のものである。
スパッタ装置50は、前面に図示しない開閉可能な扉を有し、当該扉よりも内側には成膜室54が形成されている。この成膜室54には、テープ基材10の引き出し側のリールとしての供給側リール56Aと、テープ基材10の巻取り側のリールとしての巻取り側リール56Bとが設けられている。供給側リール56Aは回転駆動する第1回転駆動部58に装着されており、一方で巻取り側リール56Bは回転駆動する第2回転駆動部60に装着されている。また、供給側リール56Aには、テープ基材10が予め巻回されている。
また、成膜室54には、テープ基材10を供給側リール56Aから成膜部64を介して巻取り側リール56Bへ搬送する搬送ローラ62が設けられている。
搬送ローラ62による搬送の際、テープ基材10が通過する成膜部64には、ターゲット66と、当該ターゲット66と対向するヒーターブロック68と、ガス導入装置70と、が設けられている。
ターゲット66は、不図示の高周波電源によりマイナスの電圧が印加されてグロー放電を発生するものである。このグロー放電により、成膜室54のAr原子がイオン化され、高速でターゲット66の表面にArイオンが衝突し、ターゲット66を構成する成膜材料の粒子(原子・分子)が弾き出され、通過するテープ基材10の成膜面(表面)に堆積される。
ヒーターブロック68は、成膜部64を通過するテープ基材10の裏面を成膜温度まで加熱するものである。
ガス導入装置70は、HOガス又はCOガスを、成膜室54の特にテープ基材10の周囲にテープ基材10の搬送方向に沿って導入する装置である。なお、ガス導入装置70は、成膜部64を通過するテープ基材10の基材長手方向(搬送方向)に亘ってHOガス又はCOガスが均一に行き渡るように成膜室54内に設けられているが、成膜室54の外側に設けるようにしてもよい。その他、成膜室54の外側には、OガスやArガスを導入する導入装置も設けられている。
また、スパッタ装置50は、成膜部64の他に、CPUやメモリ等で構成され装置全体を制御する制御部72を備えている。第1回転駆動部58と、第2回転駆動部60と、成膜部64(のヒーターブロック68等)と、搬送ローラ62を含む搬送部(不図示)と、が信号線74を介して電気的に接続されている。
そして、この制御部72は、ユーザからの成膜指示を受け付けると、成膜室54を真空にした後、ガス導入装置70によりArガスやHOガス又はCOガスを含むガスを導入し、且つターボ分子ポンプ52によって導入したHOガス又はCOガスを排気しながら、供給側リール56Aに巻回されたテープ基材10を、第1回転駆動部58を回転駆動することにより供給側リール56Aから引き出して、成膜部64でテープ基材10上に成膜しつつ、第2回転駆動部60を回転駆動することにより巻取り側リール56Bでテープ基材10を巻取る制御を行う。
<<超電導線用基材の製造方法の第1実施形態>>
次に、第1実施形態に係る超電導線用基材の製造方法について説明する。第1実施形態の超電導線用基材の製造方法では、上述の中間層20を単層構造とする場合を想定する。
−基材用意工程−
まず、図1に示すように、テープ基材10を用意する基材用意工程を行う。具体的には、スパッタ装置50の供給側リール56Aに巻回する。
−搬送工程−
テープ基材10を、搬送ローラ62を用いて巻取り側リール56Bへ搬送する搬送工程を行う。
−中間層成膜工程−
上記搬送工程中において、成膜部64を通過するテープ基材10に、スパッタ法を用いて酸化物を主体とした単層構造の中間層20を成膜する中間層成膜工程を行う。
ここで、搬送工程中にテープ基材10の主面に酸化物を主体とした中間層20を成膜する場合、本発明者らは、成膜時間(搬送時間)の経過に伴って、すなわちテープ基材10の搬送方向(基材長手方向)の後端側になるほど、中間層20の主体となる酸化物の酸素欠損量が多くなってしまうことを見出した。
成膜時間の経過に伴って酸化物の酸素欠損量が多くなると、基材長手方向に亘って、酸素量の変動が大きな酸化物を有する中間層20となってしまい、中間層20上に形成される超電導層30の2軸配向性ひいては超電導線1の通電特性が基材長手方向に亘って大きく変動するという問題が生じる。
そこで、本発明者らは、成膜時間の経過に伴って中間層20の主体となる酸化物の酸素欠損量が多くなる原因を考察すると、図6に示すように、従来のスパッタ装置の成膜室内、すなわち成膜雰囲気では、その雰囲気中のHOガスが成膜時間の経過に伴って減少していることが原因であることが分かった。なぜなら、成膜した中間層20において、6時間後に成膜した箇所と18時間後に成膜した箇所をX線回折測定により測定すると、CeOのミラー指数(200)のピーク位置が、成膜時間の経過、すなわちHOガスの減少に伴って33.02°から32.98°の低角側にシフトすることが確認されたからである。なお、CeOのミラー指数(200)のピーク位置が低角側にシフトすると、それは酸化物の酸素欠損を意味することになる。
そこで、本実施形態では、中間層成膜工程では、ガス導入装置70からHOガスをテープ基材10の周囲に導入しながら、その周囲の雰囲気(成膜雰囲気)下でテープ基材10の主面に、スパッタ法を用いて中間層20を基材長手方向に亘って成膜する。なお、中間層20は、単層構造であって酸化物が主体となるように形成する。これにより、長時間の成膜でもHOガスの減少を抑えて、中間層20の主体となる酸化物の酸素欠損の変化を抑制することができる。これにより、基材長手方向に亘って中間層20の主体となる酸化物の酸素量(結晶性)を略一定とすることができる、すなわち基材長手方向に亘って結晶性の変動が小さい中間層20を得ることができる。
なお、テープ基材10の周囲にCOガスを導入しても、酸化物の酸素欠損の変化を抑制することができるため(参考文献:N. Laosiripojana et al., Applied Catalysis B: Environmental 82 (2008) 103−113)、HOガスの代わりに又はHOと共にCOガスを導入してもよい。また、その他、テープ基材10の周囲には、OガスやArガス等も導入することができる。なお、HOと共にCOガスを導入する場合には、テープ基材10の周囲(雰囲気)のHOガスの分圧及びCOガスの分圧がそれぞれ一定となるように導入することが好ましい。
単層構造の中間層20の主体となる酸化物は、特に限定されないが、例えば組成式がCeO,PrO,LaMnO,NbO,SrTiO,GdZr ,,Gd及びMgOで表される酸化物、又はYSZ(イットリア安定化ジルコニア)のうちいずれか1つを用いることができる。ただし、上記組成式中の酸素の組成比は酸素欠損を除いた理論値(化学量論比)であるため、実際は酸素欠損によって酸素の組成比が理論値よりも少ない場合もある。
成膜雰囲気において、ある一定範囲のHOガス又はCOガスの分圧では、酸素欠損が大きく変化しない、つまり酸化物の酸素量を略一定に保つことができるという観点から、CeO又はPrOであることが好ましい。例えば、CeOの場合、実施例において詳述するが、HOガスの分圧が1.00×10−4Pa以上又は5.20×10−5Pa以下であると、当該1.00×10−4Pa以上又は5.20×10−5Pa以下の範囲内でHOガスの分圧が変わっても、酸素欠損を略一定に保つことができる。
また、成膜雰囲気中のHOガス又はCOガスの分圧と、酸素欠損量が正比例の関係にある酸化物の場合は、テープ基材10の周囲の成膜雰囲気におけるHOガスの分圧又はCOガスの分圧が一定となるように、ガス導入装置70からHOガス又はCOガスを導入することが好ましい。無論、酸化物がCeOやPrOの場合であっても、HOガスの分圧又はCOガスの分圧が一定となるように、ガス導入装置70からHOガス又はCOガスを導入してもよい。
Oガスの分圧又はCOガスの分圧を一定にすることで、中間層20における酸化物の酸素量を略一定に保つことができるからである。
なお、HOガスの分圧又はCOガスの分圧を一定とするためには、例えば一定量のHOガス又はCOガスを導入しながら、導入したHOガス又はCOガスをターボ分子ポンプ52で排気し続けることで実現することができる。
図4は、上述したスパッタ装置50を用いてガス導入装置70により一定量のHOガスを導入しながら、導入したHOガスをターボ分子ポンプ52で排気し続けた場合において、成膜時間とHOガスの分圧の関係を示す図である。図4に示すように、一定量のHOガスを導入すると、スパッタ装置50の成膜室54内、すなわち成膜雰囲気中のHOガスの分圧が、成膜時間に係らず略一定となる。なお、成膜時間が0時間(h)〜4時間(h)の間は、スパッタ装置50の扉を閉めた直後の時間であるため、HOガスの分圧が高くなっているが、この時間は中間層成膜工程を行わないようにすればよい。
成膜雰囲気中のHOガスの分圧が、成膜時間に係らず略一定となると、中間層20を構成するCeOのミラー指数(200)のピーク位置が、例えば33.02°付近で略一定となり、CeOの酸素欠損を略一定にすることができる。
また、HOガスを導入する場合で、中間層20の酸化物としてCeOやPrO等のMO系(M:希土類元素)の酸化物等を用いる場合、成膜雰囲気のHOガスの分圧を、1.00×10−4Pa以上に保持するようにHOガスの導入を続けることが好ましい。このようにすることで、基材長手方向に亘って酸化物の酸素量が均一で、且つ、酸素欠損がない或いは酸素欠損が少ない酸化物を得ることができる。これにより、超電導層30に流れる臨界電流が例えば200Aを超える超電導線1を得ることができる。
また、HOガスを導入する場合、成膜雰囲気のHOガスの分圧を、5×10−3Pa以下に保持するようにHOガスの導入を続けることが好ましい。HOの消費量を抑えつつ、ターボ分子ポンプ52で余分なHOガスを確実に排気できるからである。
また、COガスを導入する場合、成膜雰囲気のCOガスの分圧を、1×10−6Pa以上に保持するようにCOガスの導入を続けることが好ましい。このようにすることで、基材長手方向に亘って酸化物の酸素量が均一で、且つ、酸素欠損がない或いは酸素欠損が少ない酸化物を得ることができる。これにより、超電導層30に流れる臨界電流が200Aを超える超電導線1を得ることができる。
以上のように、第1実施形態に係る超電導線用基材の製造方法の各工程を経ることにより、図1に示す超電導線用基材2が得られる。
<<超電導線用基材の製造方法の第2実施形態>>
次に、第2実施形態に係る超電導線用基材の製造方法について説明する。第2実施形態の超電導線用基材の製造方法では、上述の中間層20を多層構造とする場合を想定する。
上述の中間層20を多層構造とする場合、第1実施形態で説明した中間層成膜工程を、中間層20の全ての層を成膜する際に実施してもよいし、単層を含む一部の層を成膜する際にのみ実施してもよい。特に、超電導層30の超電導特性に影響を与え易いという観点から、超電導層30と接する中間層20の最表層を成膜する際に上記中間層成膜工程を実施することが好ましい。
以下の第2実施形態では、中間層20の最表層を成膜する際にのみ上記中間層成膜工程を実施する場合を説明する。
−基材用意工程−
まず、図2に示すように、テープ基材10を用意する基材用意工程を行う。
−ベッド層成膜工程−
次に、図2に示すように、基材用意工程で用意したテープ基材10の主面に、中間層20の最下層となるベッド層22を成膜するベッド層成膜工程を行う。
このベッド層22の成膜する方法としては、例えばTFA−MOD法、PLD法、CVD法、MOCVD法、又はスパッタ法等が挙げられる。中でも製造が容易であるという観点からスパッタ法を用いることが好ましい。このときの成膜条件は、ベッド層22の構成材料や膜厚等によって適宜設定されるが、例えば、RFスパッタ出力:100W以上500W以下、線材搬送速度:10m/h以上100m/h以下、成膜温度:20℃以上500℃以下とされる。
−強制配向層成膜工程−
次に、ベッド層22上に中間層20の内部層となる強制配向層24を成膜する強制配向層成膜工程を行う。
この強制配向層24の成膜方法としては、例えばアルゴン、酸素、又はアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気中でIBAD法により成膜する方法が挙げられる。IBAD法では、アシストイオンビームを成膜面に対して斜め方向から照射しながら、RFスパッタ(又はイオンビームスパッタ)により蒸着源(MgO等)からはじき出された蒸着粒子を成膜面に堆積させて成膜する。このときの成膜条件は、強制配向層24の構成材料や膜厚等によって適宜設定されるが、例えば、アシストイオンビーム電圧:800V以上1500V以下、アシストイオンビーム電流:80以上350mA以下、アシストイオンビーム加速電圧:200V、RFスパッタ出力:800W以上1500W以下、線材搬送速度:40m/h以上500m/h以下、成膜温度:5℃以上350℃以下とされる。
−LMO層成膜工程−
次に、強制配向層24上に中間層20の内部層となるLMO層26を成膜するLMO層成膜工程を行う。
このLMO層26の成膜方法としては、テープ基材10を加熱しながら行うPLD法やRFスパッタリング法による成膜が挙げられる。RFスパッタリング法による成膜条件は、LMO層26の構成材料であるLa(Mn1−x3+δにおけるM置換量xやLMO層26の膜厚等によって適宜設定されるが、例えば、スパッタ出力:100W以上300W以下、線材搬送速度:20m/h以上200m/h以下、成膜温度(基材加熱温度):800℃以下、成膜雰囲気:0.1Pa以上1.5Pa以下のArガス雰囲気とされる。
−キャップ層成膜工程−
次に、LMO層26上に中間層20の最表層となるキャップ層28を成膜するキャップ層成膜工程を行う。
このキャップ層成膜工程では、第1実施形態で説明した基材用意工程、搬送工程及び中間層成膜工程を行う。
具体的には、ベッド層22、強制配向層24及びLMO層26が積層したテープ基材10をスパッタ装置50の供給側リール56Aに巻回した後、このテープ基材10を、搬送ローラ62を用いて巻取り側リール56Bへ搬送する。そして、この搬送の際に、ガス導入装置70からHOガスをテープ基材10の周囲に導入しながら、その周囲の雰囲気(成膜雰囲気)下でテープ基材10の積層しているLMO層26上に、スパッタ法を用いて、CeO又はPrOを主体としたキャップ層28を成膜する。なお、スパッタに用いる材料の種類を増やすことができるという観点から、スパッタ法のうち、DCスパッタよりRFスパッタ法を用いることが好ましい。
RFスパッタ法による成膜条件は、キャップ層28の構成材料や膜厚等によって適宜設定されるが、例えば、RFスパッタ出力:200W以上1000W以下、線材搬送速度:2m/h以上50m/h以下、成膜温度:450℃以上800℃以下とされる。
以上のように、第2実施形態に係る超電導線用基材の製造方法の各工程を経ることにより、図2に示す超電導線用基材2が得られる。この場合、キャップ層28の主体となるCeO又はPrOの酸素欠損が基材長手方向に亘って均一となり、この結果、基材長手方向に亘ってキャップ層28の結晶性、特に2軸配向性が均一となる。
<<超電導線の製造方法の一実施形態>>
次に、超電導線の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る超電導線の製造方法は、上述した第1実施形態又は第2実施形態の超電導線用基材の製造方法により超電導線用基材2を得た後、以下のような工程を有する。
−超電導層成膜工程−
まず、図1に示すように、超電導線用基材2の中間層20の最表層上に、超電導体を主体とした超電導層30を成膜する超電導層成膜工程を行う。
超電導層30の成膜方法としては、例えばTFA−MOD法、PLD法、CVD法、MOCVD法、又はスパッタ法などが挙げられる。これら成膜方法の中でも、高真空を必要としない、大面積、複雑な形状のテープ基材10にも成膜可能、量産性に優れているという理由からMOCVD法を用いることが好ましい。
−保護層成膜工程−
次に、図1に示すように、超電導層30上に保護層40を成膜する保護層成膜工程を行う。
保護層40の成膜方法としては、特に限定されないが、例えばスパッタ法が挙げられる。保護層40の材料としては、例えば銀などの貴金属や銅などが挙げられる。
以上のように、本実施形態に係る超電導線の製造方法の各工程を経ることにより、図1に示す超電導線1が得られる。
<<変形例>>
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
例えば、上述した実施形態に係る超電導線の製造方法には、保護層成膜工程の後に超電導線1を熱処理する工程等他の工程を加えてもよい。逆に、保護層成膜工程を省略してもよい。
また、中間層成膜工程の後で超電導層成膜工程の前に、中間層成膜工程のHO又はCOガスの導入により中間層20の表面に付着したHO又はCOを除去する除去工程を追加してもよい。超電導層成膜工程時に、中間層20の表面にHO又はCOがあると超電導層30の膜特性(超電導特性)を低下させる可能性があるので、超電導層成膜工程の前に、中間層20の表面に付着したHO又はCOを除去することで、超電導特性の低下を抑制する。なお、この除去工程の具体例としては、熱処理や表面研磨、吸水ロールによる中間層表面の清掃等が挙げられる。
また、中間層成膜工程では、HOガス又はCOガスを導入し続ける場合を説明したが、HOガス又はCOガスを中間層成膜工程中、連続的に導入し続けてもよいし、HOガス又はCOガスを断続的に導入し続けてもよい。
また、上述した第2実施形態では、中間層20の最表層(キャップ層28)を成膜する際にのみ上記中間層成膜工程を実施する場合を説明したが、中間層20の最下層(ベッド層22)を成膜する際に上記中間層成膜工程を実施するようにしてもよい。これにより、ベッド層22上に、基材長手方向に亘って、結晶性、特に2軸配向性の変動が小さい強制配向層24を成膜することが可能となる。
以下に、本発明に係る超電導線用基材の製造方法について、実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
本実施例に係る超電導線用基材の製造方法では、まず基材としてテープ状のハステロイ基板を8つ用意した。
そして、用意した各ハステロイ基板の上に、スパッタ法を用いて80nmのベッド層を成膜した。次に、各ベッド層の上に、MgOからなる強制配向層(IBAD−MgO層)を、IBAD法により常温で3nm成膜した。さらに、各強制配向層の上に、LMOからなるLMO層を、スパッタ法により15nm成膜した。次に、各LMO層の上に、CeOからなるキャップ層をスパッタ法により600℃で550nm成膜した。このとき、基材毎にHOガスの導入分圧(Pa)を変えてHOガスとOガスとArガスとをハステロイ基板の周囲に導入しながら成膜を行った。なお、この成膜の際、基材周囲の雰囲気の圧力は、約8.00×10−1Paであった。また、Oガスの流量は、1.014×10−2Pa・m/sとした。アルゴンガスの流量とHOガスの流量は、HOガスの導入分圧が以下の表1に記載の値となるように調整した。なお、HOガスの導入分圧は、ハステロイ基材の周囲の雰囲気のHOガスの分圧と同一とみなすものとする。
以上より、実施例1〜8の超電導線用基材を作製した。
次に、各実施例に係わる超電導線用基材のキャップ層について、リガク製X線回折装置RINT−ULTIMAIIIを用いてX線回折測定を行った。そして、X線回折測定により得られた回折パターンから、CeOのミラー指数(200)面のピーク位置(°)を得た。
以下の表1に、各実施例におけるキャップ層のHOガスの導入分圧と(200)面のピーク位置との関係をまとめた。また、図5に、HOガスの導入分圧と(200)面のピーク位置との関係をプロットしたグラフを示す。なお、図5には、各プロットに基づいて、HOガスの導入分圧と(200)面のピーク位置との関係を点線で示した。なお、図中実施例1と2のプロットは、点線上にないが、実施例3のプロットの誤差の範囲内であったため、実施例1〜3を点線で示すとき、実施例1〜2は、実施例3と同一の値をとるものとみなした。
Figure 0005889072
表1及び図5に示すように、HOガスの導入分圧が1.00×10−4Pa以上であると、当該1.00×10−4Pa以上の範囲内でHOガスの導入分圧が変わっても、(200)面のピーク位置が33.02°付近で略一定となることがわかる(図5中では導入分圧が上がるにつれてピーク位置が多少高角側にシフトしているようにも見えるが33.02°付近でほぼ飽和していると考えてよい)。同様に、5.20×10−5Pa以下であると、当該5.20×10−5Pa以下の範囲内においてはHOガスの導入分圧が変わっても、(200)面のピーク位置が32.87°付近で略一定となることが分かった。また、HOガスの導入分圧が5.20×10−5Pa超1.00×10−4Pa未満の範囲では、HOガスの導入分圧が下がるにつれて、急激に(200)面のピーク位置が低角側にシフトすることが分かった。このように(200)面のピーク位置が低角側にシフトすると、それはCeOの酸素欠損を意味することになる。
なお、HOガスの導入分圧が5.20×10−5Pa以下では、CeOの酸素欠損が生じている状態のため、HOガスの導入分圧が1.00×10−4Pa以上である場合の方がCeOの酸素欠損が少なく、好ましい。
以上より、CeOの成膜工程において、成膜雰囲気のHOガスの分圧を、1.00×10−4Pa以上又は5.20×10−5Pa以下に保持するようにHOガスの導入を続けることで、酸素欠損を略一定に保つことができることが分かった。特に、成膜雰囲気のHOガスの分圧を、1.00×10−4Pa以上に保持するようにHOガスの導入を続けることで、基材長手方向に亘ってCeOの酸素量が略均一で、且つ、酸素欠損がない或いは酸素欠損が少ないCeOを得ることができることが分かった。
1 超電導線
2 超電導線用基材
10 テープ基材(基材)
20 中間層
28 キャップ層(最表層)
30 超電導層

Claims (7)

  1. テープ状の基材を搬送する搬送工程と、
    前記搬送工程中に、HOガス又はCOガスの少なくとも何れか一方を前記基材の周囲に導入しながら、前記周囲の雰囲気下で、前記基材の長手方向に亘って前記基材の主面に、スパッタ法を用いて超電導層の下地となる酸化物を主体とした中間層を成膜する中間層成膜工程であって、前記雰囲気のH Oガスの分圧を、1.00×10 −4 Pa以上に保持するようにH Oガスの導入を続ける、前記雰囲気のCO ガスの分圧を、1×10 −6 Pa以上に保持するようにCO ガスの導入を続ける中間層成膜工程と、
    を有する超電導線用基材の製造方法。
  2. 前記中間層成膜工程では、前記雰囲気のHOガスの分圧及びCOガスの分圧の少なくとも何れか一方が一定となるように、HOガス及びCOガスの少なくとも何れか一方を前記周囲に導入しながら前記中間層を形成する、
    請求項1に記載の超電導線用基材の製造方法。
  3. 前記中間層成膜工程では、前記雰囲気のHOガスの分圧を、5×10−3Pa以下に保持するようにHOガスの導入を続ける、
    請求項1又は請求項2に記載の超電導線用基材の製造方法。
  4. 前記中間層成膜工程では、前記酸化物として、組成式がCeO,PrO,LaMnO,NbO,SrTiO,GdZr ,,Gd及びMgOで表される酸化物、又はYSZ(イットリア安定化ジルコニア)(ただし、組成式中の酸素の組成比は酸素欠損を除いた化学量論比である)のうちいずれか1つを用いる、
    請求項1〜請求項の何れか1項に記載の超電導線用基材の製造方法。
  5. 前記中間層を多層構造とするとき、
    前記中間層成膜工程では、HOガス又はCOガスを前記周囲に導入しながら、CeO又はPrOを主体とした前記中間層の最表層を形成する、
    請求項1〜請求項の何れか1項に記載の超電導線用基材の製造方法。
  6. 前記中間層成膜工程の後に、前記中間層の表面に付着したHO又はCOを除去する除去工程を有する、
    請求項1〜請求項の何れか1項に記載の超電導線用基材の製造方法。
  7. 請求項1〜請求項の何れか1項に記載の超電導線用基材の製造方法で製造した超電導線用基材の中間層の表面に、超電導体を主体とした超電導層を成膜する超電導層成膜工程、
    を有する超電導線の製造方法。
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