JP2014216126A - テープ状酸化物超電導線材の製造方法及び積層仮焼成膜作製装置 - Google Patents

テープ状酸化物超電導線材の製造方法及び積層仮焼成膜作製装置 Download PDF

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勉 小泉
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隆介 広長
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Abstract

【課題】臨界電流値I[A/cm]が高く所望の超電導特性を有するテープ状RE系酸化物超電導線材を製造すること。
【解決手段】基板上の中間層上に、金属元素を含む金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した超電導原料溶液を塗布する塗布工程と、仮焼成炉で前記中間層上に塗布された前記超電導原料溶液に仮焼成熱処理を施して仮焼成膜を作製する仮焼成熱処理工程とを繰り返して、積層した仮焼成膜を作製し、その後、本焼成熱処理工程で、前記積層した仮焼成膜に本焼成熱処理を施して、REBaCu系超電導層を作製する。中間層上に仮焼成膜が作製された基板を仮焼成炉から炉出する炉出温度は、前記仮焼成熱処理を行うために前記基板が前記仮焼成炉に突入するときの突入温度よりも高く、且つ、前記仮焼成熱処理の最高温度よりも低いようにした。
【選択図】図3

Description

本発明は、超電導ケーブル及び超電導マグネット等の超電導応用機器の利用に適するテープ状酸化物超電導線材の製造方法及び積層仮焼成膜作製装置に関する。
従来、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜を備える酸化物超電導材は、金属基板上に2軸配向した無機材料薄膜を1層あるいは複数層(中間層という)で形成し、その上に超電導薄膜および安定化層を順次形成した構造を有する。このREBaCu系の酸化物超電導材(以下、「REBCO超電導材」という)では、結晶が2軸配向しているため、Bi系の銀シース線材に比べ、臨界電流値I[A/cm]が高く、液体窒素温度での磁場特性に優れている。よって、この線材を、現在低温で使用されている超電導ケーブル及び超電導マグネット等の超電導応用機器に用いることによって、超電導機器を高温状態で使用することが期待されている。
なお、REBCO超電導材の超電導薄膜(REBCO超電導薄膜)における結晶は、斜方晶である。超電導薄膜の特性は、結晶の配向性に大きく影響され、この超電導薄膜の下層を構成する基板および中間層の結晶の配向性にも大きく影響される。さらに、超電導薄膜の結晶方位のずれが双晶粒界を発生させる。このため、通電特性において材料の特性を最大限発揮させるためには、結晶内のCuO面を揃えるだけではなく、面内の結晶方位も揃えることが必須となっている。
このようなREBCO超電導材の製造方法として、有機金属酸塩あるいは有機金属化合物を原料とし、真空プロセスを使用せずに、超電導薄膜を製造するMOD法(Metal Organic Deposition Processes:有機酸塩堆積法)が知られている。
MOD法は、基板上の金属有機酸塩を加熱して熱分解することで基板上に超電導層である薄膜を形成する。具体的には、MOD法では、まず、金属成分の有機化合物が均一に溶解された原料溶液を基板上に塗布する。次いで、溶液を塗布した基板に仮焼成熱処理を施してアモルファス状の前駆体を形成し、その後、結晶化熱処理(本焼成熱処理)を施すことで前駆体を結晶化させて酸化物超電導体を形成する。
このMOD法としては、オクチル酸塩、ナフテン酸塩等の脂肪族有機酸塩、トリフルオロ酢酸塩に代表されるフッ素を含む有機酸塩等を出発原料とし、水蒸気雰囲気中で熱処理及び水蒸気分圧の制御することで、REBCO超電導体を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
このフッ素を含む有機酸塩を出発原料とする方法によれば、水蒸気とフッ素を含むアモルファス前駆体との反応により基板からRE(123)超電導体をエピタキシャル成長させることができる。具体的には、原料溶液を基板に塗布した後、有機分を分解させるために約450℃以下で熱処理する仮焼成熱処理工程を経て、金属有機酸塩を約750℃で結晶加熱処理することにより超電導膜を生成させる。
特開2010−192142号公報 特開2004−161505号公報 特開2003−300726号公報
ところで、MOD法における熱処理の特徴として、膜中のフッ素と水蒸気とを反応させることにより、HFガスが発生することが挙げられる。特に、仮焼工程において、トリフルオロ酢酸銅がCuOに分解することにより、多量のHFガスが発生する。このため、仮焼成熱処理で原料溶液を加熱して前躯体を形成する際に、その昇温温度の速さによっては、TFA塩を始めとする金属有機酸塩の分解が不十分となり、仮焼成熱処理により形成される超電導で前駆体膜中に、溶媒や有機酸塩が残存する傾向がある。これにより、その後の結晶化熱処理中の昇温時に、残存していたフッ化物等の有機酸塩が急激に分解して膜中に突沸痕や異物、ポアなどが発生する。また、仮焼成膜が分解してYBCOの結晶を形成する時の体積収縮により応力が膜に生じ、突沸痕や異物、ポアなどを起点としたクラックが生ずる。この傾向は、塗布と仮焼熱処理を繰り返して多層構造の酸化物超電導前駆体膜を形成して厚膜化する場合に著しくなる。その結果、得られた前駆体厚膜を結晶化し超電導膜を得る際にクラックがそのままの状態で残存するため、通電時の電流経路を阻害してしまうことにより超電導特性(臨界電流密度Jc[MA/cm])は著しく低下する。
これらのことから、突沸が発生しにくく、所望の臨界電流値I[A/cm]を有する超電導特性(臨界電流密度J[MA/cm])の優れた酸化物超電導線材の製造が望まれている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、臨界電流値I[A/cm]が高く所望の超電導特性を有するテープ状RE系酸化物超電導線材を製造できるテープ状酸化物超電導線材の製造方法及び積層仮焼成膜作製装置を提供することを目的とする。
本発明のテープ状酸化物超電導線材の製造方法の一つの態様は、基板上に形成された中間層上に、金属元素を含む金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した超電導原料溶液を塗布する塗布工程と、仮焼成炉で前記中間層上に塗布された前記超電導原料溶液に仮焼成熱処理を施して仮焼成膜を作製する仮焼成熱処理工程とを繰り返すことにより、積層した仮焼成膜を作製する積層膜形成処理工程と、前記積層膜形成処理工程の後、前記積層した仮焼成膜に本焼成熱処理を施すことで、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)である超電導層を作製する本焼成熱処理工程と、を有し、前記中間層上に前記仮焼成膜が作製された前記基板を前記仮焼成炉から炉出する炉出温度は、前記仮焼成熱処理を行うために前記基板が前記仮焼成炉に突入するときの突入温度よりも高く、且つ、前記仮焼成熱処理の最高温度よりも低く、前記仮焼成熱処理の最高温度は400℃超であるようにした。
本発明の積層仮焼成膜作製装置の一つの態様は、基板上に形成された中間層上に、金属元素を含む金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した超電導原料溶液を塗布する塗布装置と、前記中間層上に塗布された前記超電導原料溶液に仮焼成熱処理を施して前記中間層上に仮焼成膜を作製する仮焼成炉と、を有し、前記塗布装置による前記超電導原料溶液の塗布と、前記仮焼成炉による前記仮焼成熱処理とを繰り返して前記仮焼成膜を積層することで、その後に施される本焼成熱処理によってREBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)超電導層となる超電導前駆体を作製する積層仮焼成膜作製装置であって、前記仮焼成炉は、前記仮焼成膜が作製された前記基板を前記仮焼成炉から炉出する炉出温度を、前記超電導原料溶液が中間層上に塗布された前記基板を前記仮焼成炉に突入する突入温度よりも高く、且つ、前記仮焼成熱処理の最高温度よりも低くし、前記仮焼成熱処理の最高温度を400℃超とした構成を採る。
本発明によれば、臨界電流値Iが高く所望の超電導特性を有するテープ状酸化物超電導線材を製造できる。
本発明の一実施の形態に係る酸化物超電導線材の製造方法の概略を示した模式図 同製造方法で用いられる積層仮焼成膜作製装置の概略図 同積層仮焼成膜作製装置の仮焼成処理の制御に用いられる設定温度プロファイルの一例を示す図 本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法で製造されるテープ状酸化物超電導線材の断面図 本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法で製造されるテープ状酸化物超電導線材の特性を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<本実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法の概要>
図1は、本発明の一実施の形態に係る酸化物超電導線材の製造方法の概略を示した模式図である。
まず、基板に酸化物中間層が成膜されたテープ状の複合基板10を形成する。複合基板10は、例えば、Ni合金基板等の基板上に、中間層を成膜してなる。Ni合金基板等の基板上に、テンプレートとしてスパッタリング法により成膜したGdZrからなる第1中間層を成膜する。さらに、この上に、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法によりMgOから成る第2中間層、スパッタリング法によりLaMnOから成る第3中間層、スパッタリング法或いはPLD法によりCeOからなる第4中間層を順に成膜する。これにより複合基板10は形成される。なお、各中間層は、MOD法で形成しても良い。
この複合基板10上に、塗布工程Aで超電導原料溶液を塗布して塗布膜31を形成する。ここでは、複合基板10を、超電導原料溶液(有機金属塩を有機溶媒に溶解させたもの)に浸し、この複合基板10を超電導原料溶液から引き上げること(いわゆるディップコート法)により、複合基板の表面に超電導膜としての塗布膜31を付着させる。これにより、複合基板10に超電導原料溶液を塗布する。
この超電導原料溶液は、例えば、Y―TFA塩(トリフルオロ酢酸塩)、Ba―TFA塩およびCu―ナフテン酸塩を有機溶媒中にY:Ba:Cu=1:1.5:3の比率で溶解した混合溶液である。なお、この超電導原料溶液には、磁束ピンニング点を形成するためのZr等の添加元素が添加されていてもよい。なお、この超電導原料溶液の粘度は、2〜150mPa・sである。
このように複合基板10に超電導原料溶液を塗布した後、仮焼成熱処理工程Bにおいて、仮焼成炉で複合基板10を仮焼成する。なお、塗布工程Aにおいて、ディップコートで1回に塗布する膜厚は0.01〜2.0[μm]、好ましくは0.05〜1.5[μm]である。これにより、本焼成熱処理後に生成される超電導層の厚み(膜厚)は、0.5μm以上となり、例えば、1.5μmに形成される。なお、複合基板10において、ベースとなる基板上に形成される中間層は、MgO中間層上に、CeOからなる中間層を成膜して形成したものでもよい。
この塗布工程Aおよび仮焼成熱処理工程Bを所定回数繰り返すことによって、複合基板10における中間層上で塗布膜31をマルチコートする。これにより、複合基板10における中間層上に、仮焼成膜32を積層して、YBCO超電導層30のアモルファス超電導前駆体としての積層仮焼成膜(前駆体)33が作製される。
これら塗布工程A及び仮焼成熱処理工程Bを繰り返して複合基板10上に仮焼成膜を積層してなる積層仮焼成膜(前駆体)を成膜する工程は、積層仮焼成膜作製工程Cと称する。
このように、積層仮焼成膜作製工程Cで、フッ素(F)を含有した膜体を中間層上に成膜した後、本焼成熱処理工程Dで、複合基板10における膜体の結晶化熱処理、即ち、YBCO超電導層生成のための熱処理を、水蒸気ガス中において施す。なお、このYBCO超電導層30の生成に伴いHFが発生する。
更に、この本焼成熱処理工程Dの後、生成されたYBCO超電導層30上に、スパッタ法で安定化層(例えば、Ag安定化層)を成膜し、後熱処理を施す。これにより、YBCO超電導層30を有する超電導線材(YBCO超電導線材)を製造する。なお、超電導原料溶液にZrが添加されている場合では、磁束ピンニング点が分散され、磁場印加特性に優れたYBCO超電導線材を製造できる。なお、このMOD法は、非真空プロセスであることから低コストで高速成膜が可能であり、長尺のテープ状酸化物超電導材の製造に適する。
なお、複合基板10におけるNi合金基板は、2軸配向性を有するものでも配向性の無い金属基板の上に2軸配向性を有する中間層を成膜したものでもよい。また、中間層は、1層あるいは複数層形成される。塗布方法としては、上記のディップコート法以外にインクジェット法、スプレー法などを用いることも可能であるが、基本的には、連続して混合溶液を複合基板上に塗布できるプロセスであればこの例によって制約されない。1回に塗布する膜厚は、0.01μm〜2.0μm、好ましくは0.1μm〜1.0μmである。
また、ここで用いる超電導原料溶液は、Y、Ba、Cuを所定のモル比で含んだ金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した混合溶液である。モル数はY:Ba:Cu=1:a:3としたときにa<2の範囲内のBaモル比の原料溶液を用いるようにしたものである。この場合、高いJc及びIc値を得るために、原料溶液中のBaモル比は1.0≦a≦1.8の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、原料溶液中のBaモル比は1.3≦a≦1.7の範囲である。これにより、Baの偏析を抑制することができ、その結果、結晶粒界でのBaベースの不純物の析出が抑制される。
よって、クラックの発生が抑制されるとともに結晶粒間の電気的結合性が向上し、超電導膜をMOD法により形成することにより、高速で均一な厚膜を有する超電導特性に優れたテープ状酸化物超電導線材20を容易に製造できる。また、金属有機酸塩としては、各元素のオクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩、三弗化酢酸塩などが挙げられるが、1種類以上の前記塩を有機溶媒に均一に溶解し、複合基板上に塗布できるものであれば用いることができる。
具体的には、超電導原料溶液としては、下記(a)〜(d)の溶液を用いることが好ましい。
(a)REを含む有機金属錯体溶液:REを含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液、特に、REを含むトリフルオロ酢酸塩溶液であることが望ましい。
(b)Baを含む有機金属錯体溶液:Baを含むトリフルオロ酢酸塩の溶液
(c)Cuを含む有機金属錯体溶液:Cuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
(d)Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液:Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbから選択された少なくとも1種以上の金属を含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩、酢酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
また、超電導原料溶液として、イットリウム(Y)のトリフルオロ酢酸塩(Y-TFA)、バリウム(Ba)のトリフルオロ酢酸塩(Ba−TFA)及び銅(Cu)のナフテン酸塩を、Y:Ba:Cuのモル比が1:a:3(但し、a<2)で混合したものを用いた場合としたが、本発明はこれ以外の超電導原料溶液を用いてもよい。例えば、Re:Ba:Cuのモル比が1:2:3となるように調整された超電導原料溶液を用いた場合にも有効である。ここで、Reは、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)からなる群から選ばれた金属を示す。
本実施の形態の積層仮焼成膜作製工程Cでは、仮焼成熱処理工程Bで仮焼成熱処理を行う際に、基板及び中間層を有する複合基板10が仮焼成炉から炉出する直前の炉の温度(炉出温度)と、複合基板10が仮焼成炉に突入する炉の炉突入温度とが、特定の範囲で管理される。この特定の範囲とは、仮焼成膜が作製される複合基板10を仮焼成炉(電気炉)60から炉出する炉出温度が、複合基板10が仮焼成炉に突入するときの炉突入温度よりも高く、且つ、仮焼成熱処理の最高到達温度(最高温度)よりも低い温度となる範囲である。
図2は、積層仮焼成膜作製工程Cで用いられる積層仮焼成膜作製装置の概略図である。
図2に示す積層仮焼成膜作製装置40は、塗布工程A(図1参照)及び仮焼成熱工程B(図1参照)を繰り返すことによって、仮焼成膜を積層して形成して、超電導前駆体としての積層仮焼成膜を形成する。
積層仮焼成膜作製装置40は、ここでは、積層仮焼成膜を作製するテープ状の長尺の複合基板10を繰り出す繰り出しリール41と、複合基板10を巻き取る巻き取りリール42と、塗布装置50と、仮焼成炉60と、を有する。
すなわち、積層仮焼成膜作製装置40は、所謂、RTR(Reel to Reel)方式テープ移動機構と、テープ状複合基板10をマルチターンさせてターゲット上を通過させるマルチターン機構とを組み合わせることで、積層仮焼成膜を作製する装置である。
繰り出しリール41は、図示しない繰り出し機構に設けられ、上述したように基板上に中間層を成膜してなる複合基板10が巻回されている。繰り出しリール41は、巻回された複合基板10を、ガイド部(ガイドローラ)43a、43bを介して、塗布装置50に繰り出す。
塗布装置50は、複合基板10に超電導原料溶液21を塗布する装置である。
塗布装置50は、超電導原料溶液21を収容する超電導溶液タンク(以下、「タンク」という)51と、タンク51内に配置され、ガイド部43bで案内される複合基板10を、ガイド部43c側に案内するガイド(ここではガイドローラ)52とを有する。この塗布装置50では、タンク51内に複合基板10を走行させることで浸し、ガイド52の湾曲する外面で案内させて、引き上げ(ディップコート法)ることで、複合基板10に超電導原料溶液21を塗布する。なお、タンク51には、超電導原料溶液21を自動供給する供給装置と、タンク51内の超電導原料溶液21の所定容量を検知するセンサが取り付けられている。タンク51内の超電導原料溶液21が所定量以下になると、センサが検知し、そのセンサ情報に基づいて供給装置によって、タンク51には超電導原料溶液21が供給される。
仮焼成炉60は、内部を複合基板10が走行するように設けられ、走行する複合基板10を加熱する。具体的には、仮焼成炉60に、超電導原料溶液21が塗布された複合基板10が導入され、この導入される複合基板10を加熱することで仮焼成熱処理を施す。
仮焼成炉60は、導入される複合基板10に仮焼成熱処理を施す仮焼成熱処理領域60aを有する。仮焼成炉60は、仮焼成熱処理領域60a中を複合基板10が走行する際に、複合基板10に塗布された超電導原料溶液21を加熱する温度を変更している。
仮焼成炉60では、少なくとも、内部に複合基板10が導入される導入口における炉の仮焼成熱処理温度(炉突入温度)と、炉出口における炉の仮焼成熱処理温度(炉出温度)と、仮焼成熱処理の最高到達温度(最高温度)が調整自在となっている。仮焼成炉60は、炉内の仮焼成熱処理温度を、複合基板10の走行方向に沿って変化するように調整自在としてもよい。
仮焼成炉60は、仮焼成熱処理領域60aにおける仮焼成温度を、複合基板10の走行経路に沿って適宜制御自在となっている。
ここでは、仮焼成炉60は、仮焼成熱処理領域60a内を加熱するヒータ61、62と、ヒータ61、62を含む仮焼成炉60における各部を制御し、仮焼成炉60の駆動を制御する制御部(温度制御回路)63と、を有する。
また、仮焼成炉60は、仮焼成熱処理領域60aにおいて、複合基板10の走行方向に沿って、少なくとも導入口60bと炉出口60cとに図示しない温度センサを備える。これら温度センサを用いて、仮焼成炉60は、制御部63によりヒータ61、62の温度を制御して、少なくとも仮焼成熱処理領域内のおける導入口領域(導入口60bに相当)及び炉出口領域(炉出口60cに相当)の温度を制御する。
ヒータ61、62は、仮焼成熱処理領域60aへの導入口と、炉出口と、これら導入口及び炉出口の間の温度を適宜設定自在に構成されている。
ヒータ61、62は、仮焼成炉60内を走行する複合基板10に対向する位置にそれぞれ設けられ、ヒータ61、62のそれぞれの発熱面を対向して配置させている。これら対向面の間を、複合基板10が走行するように構成され、これらヒータ61、62が挟む領域全体が、仮焼成熱処理領域60aとなっており、複合基板の走行方向に沿って加熱調整自在となっている。ここでは、仮焼成熱処理領域60aにおいて、複合基板10が走行する線状の走行路は、複数のセクションに分かれている。すなわち、発熱面を対向して配置されたヒータ61、62は、それぞれ、各セクションを、各セクションに対応して、複合基板10の走行方向に沿って並べて配置された複数の部分ヒータを有する。これら部分ヒータは、それぞれ温度制御回路を含む制御部63によりそれぞれ独立して制御される。
制御部63は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えている。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して仮焼成炉60の各部の動作を集中制御する。このとき、図示しない記憶部に格納されている各種データが参照される。特に、記憶部には、仮焼成炉60において、ヒータ61、62(詳細には、部分ヒータ)を介して行われる仮焼成熱処理に用いられる温度設定テーブル(プロファイル)や各種データが格納される。なお、記憶部は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)や、ハードディスクドライブで構成される。
制御部63は、温度設定機能を有し、ヒータ61、62における部分ヒータをそれぞれ個別に温度設定することで、仮焼成炉60において複合基板10の走行方向に沿う温度勾配を設定可能となっている。制御部63は、仮焼成熱処理領域60aにおいて、各部分ヒータにより加熱される各セクションに対応して設けられる図示しない温度センサを用いて、各部分ヒータを制御する。ここでは、制御部63は、温度設定テーブル(プロファイル)を参照して、炉出口での炉出温度を、仮焼成炉60に突入するときの導入口における炉突入温度よりも高く、且つ、仮焼成熱処理の最高温度よりも低くする。また、制御部63は、各セクションを加熱する部分ヒータを制御して、結晶か温度に達しない仮焼成熱処理における最高到達温度を設定する。
この仮焼成炉60から炉出する複合基板10は、ガイド部43dを介して、ガイド部43aに案内されたり、巻き取りリール42に案内されたりする。なお、巻き取りリール42は、図示しない巻き取りモータにより回動自在に設けられる。このモータ駆動により、仮焼成膜が積層された複合基板10は、巻き取りリール42により巻き取られる。
ガイド部43a〜43dは、複合基板10に対して、超電導原料溶液21の塗布処理及び仮焼成熱処理を、所定回数、繰り返させた後、巻き取りリール42に案内するマルチターン式のガイドである。
図3は、積層仮焼成膜作製装置40の仮焼成処理の制御に用いられる設定温度プロファイルの一例を示す図である。図3では、電気炉である仮焼成炉60の長さに沿って、つまり、導入口60bから炉出口60cまでの長さに対応して、それぞれ仮焼成熱処理温度が設定されている。これらの温度設定は制御部63により温度センサを用いてヒータ61、62を制御することで行われる。
図3に示すように、本実施の形態の仮焼成炉60では、複合基板10が炉出する炉出温度は、仮焼成熱処理を行うために複合基板10が仮焼成炉60に突入するときの炉突入温度よりも高く、且つ、仮焼成熱処理の最高温度よりも低い。また、この炉出温度は、仮焼成熱処理において、中央部分よりも炉出口側で達する最高温度から漸次減少する温度である。この炉出温度は、400℃以下であることが好ましい。より好ましくは350℃以下である。
理由として、本焼成時に中間層と超電導層界面からエピタキシャル成長によりペロブスカイト結晶格子を形成するが、仮焼成膜の状態ではアモルファス状態、つまり結晶成長の核となる微結晶が膜中に存在しない状態であることが望ましい。しかしながら、高温から室温付近まで冷却すると、微結晶が形成されてしまうだけでなく、本焼成にて必要とするフッ素の量が不足するという問題も生ずる。従って、炉出温度は、適正な温度範囲にてコントロールする必要があり、上記温度以下(400℃以下、より好ましくは350℃以下)かつ突入温度より高い温度にてコントロールする必要がある。
また、炉突入温度は、200℃以下であることが好ましい。より好ましくは150℃以下である。理由として、塗布・仮焼システムの構造上、テープ線材は溶液塗布後に室温から電気炉内に突入するが、急加熱により、溶液中の有機溶媒が突沸し気泡が膜中に残存するという問題が生ずる。
また、仮焼成炉60では、最高温度が仮焼成炉60の導入口60bから炉出口60cまでの炉長の中心地点と炉出口60c地点の間の位置となるように、ヒータ61、62は発熱温度を制御される。
積層仮焼成膜作製装置40(図2参照)では、繰り出しリール41から繰り出された複合基板10は、ガイド部43aで塗布装置50に案内されて、塗布装置50のタンク51内を通過する。このような複合基板10によるタンク51内の通過は、ガイド52により案内されることで物理的な抵抗無しで通過し、タンク51の出口の界面でまっすぐに引き上げられることで行われる。このようにタンク51から引き上げられることで複合基板10には、超電導原料溶液21が塗布される(図1の塗布工程A)。
塗布装置50で超電導原料溶液21が塗布された後、複合基板10は、ガイド部43cを介して仮焼成炉60に案内(導入)される。
仮焼成炉60に導入される複合基板10は、仮焼成炉60内を通過することで、塗布膜の乾燥及び仮焼成が施される(図1の仮焼成熱処理工程B)。仮焼成炉60では、図3に示す温度設定プロファイル(温度設定テーブル)を用いて複合基板10を加熱する。仮焼成炉60から炉出された、仮焼成膜付の複合基板10は、仮焼成炉60を出てガイド部43d、43a等に案内されつつ室温まで冷却される。室温まで冷却された後、仮焼成膜付の複合基板10は、再びタンク51内に挿入されて引き上げられることでタンク51内を通過して超電導原料溶液21が塗布される。その後、仮焼成膜付の複合基板10は、仮焼成炉60に突入する。
このように、積層仮焼成膜作製装置40は、塗布装置50により塗布工程A(図1参照)及び仮焼成熱処理工程B(図1参照)を複数回数(図では3回であるが十数回)、繰り返してマルチコート(図1の積層仮焼成膜作製工程C)した後、巻取りリール42に搬送する。これにより、超電導前駆体としての積層仮焼成膜を備える複合基板10は、巻き取りリール42で巻き取られる。その後、本焼熱処理により仮焼成膜の結晶化が行われ(図1の本焼熱処理工程)、酸化物超電導薄膜線材が作製される。なお、塗布スピードと溶液粘度によって超電導原料溶液21の塗布量は適宜制御される。
このように積層仮焼成膜作製装置40は、フッ素を含む有機酸塩を出発原料とするMOD溶液をRTR方式で複合基板10に塗布した後に、アモルファス前駆体とするための仮焼成熱処理の際の温度プロセスを制御する。すなわち、仮焼成炉60における仮焼成熱処理において、仮焼成炉60から炉出する直前の炉出温度と、仮焼成炉60へ突入する炉突入温度を特定の範囲で管理する。仮焼成炉60は、炉出温度を、炉突入温度よりも高く、且つ、仮焼成熱処理の最高温度よりも低くする。これにより、有機媒体等の低沸点化合物の突沸を防止できる。また、制御部63は、各セクションを加熱する部分ヒータを制御して、結晶か温度に達しない仮焼成熱処理における最高到達温度を設定する。ここでは、最高到達温度は、制御部63によって仮焼成炉60の導入口60bから炉出口60cまでの炉長の中心地点と炉出口地点の間で到達するように設定される。
このように本実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法によれば、異物、微結晶等が存在しない安定したアモルファス状態の仮焼成膜、積層仮焼成膜を作製できる。これら仮焼成膜、積層仮焼成膜は、本焼熱処理工程D(図1参照)において、ボトムアップのエピタキシャル成長が効率よく進み、完全なアモルファス層となり、臨界電流値I[A/cm-width](77K、自己磁場中))が飛躍的に向上した超電導特性の高い超電導線材となった。
よって、本実施の形態では、炉突入温度と、最高温度と、炉出温度とを設定することで微結晶のない完全なアモルファス層の仮焼成膜及びこれを積層した積層仮焼成膜(超電導前駆体)を作製できる。
また、本実施の形態の積層仮焼成膜作製装置40における仮焼成炉60は、内部を開放した状態で、つまり、電気炉開放の大気圧で電気炉として使用される。このため、酸化物超電導線材の製造において、仮焼成熱処理に際し、真空、減圧制御を必要としない。
<テープ状酸化物超電導線材の構成>
図4は、本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法で製造される酸化物超電導線材のテープの軸方向に垂直な断面を示す概略図である。図4に示すテープ状酸化物超電導線材20は、積層仮焼成膜を、積層仮焼成膜作製装置40を用いて作製している。
酸化物超電導線材(YBCO超電導線材)20は、テープ状であり、複合基板10においてテープ状の金属基板11上に成膜された中間層12上に、テープ状の酸化物超電導層(以下、「超電導層」と称する)30、安定化層14が順に積層されることによって作製される。
テープ状の金属基板である基板11は、例えば、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、ステンレス鋼又は銀(Ag)である。基板11は、ここでは、結晶粒無配向・耐熱高強度金属基板であり、Ni−Cr系(具体的には、Ni−Cr−Fe−Mo系のハステロイ(登録商標)B、C、X等)、W−Mo系、Fe−Cr系(例えば、オーステナイト系ステンレス)、Fe−Ni系(例えば、非磁性の組成系のもの)等の材料に代表される立方晶系のビッカース硬度(Hv)=150以上の非磁性の合金である。金属基板11の厚さは、例えば、0.1mm以下である。ここでは、基板11としてハステロイ(登録商標)テープが適用されている。なお、基板11の厚さは、例えば、50〜200[μm]である。
中間層12は、ここでは第1〜第4中間層12a〜12dにより形成される。第1中間層12aは、基板11上に、スパッタリング法により成膜したGdZrである。また、第2中間層12bは、第1中間層12a上にIBAD法により成膜したMgOである。また、第3中間層12cは、第2中間層12b上に、スパッタリング法により成膜したLaMnOである。第4中間層12dは、第3中間層12c上に、スパッタリング法(PLD方でもよい)によって全軸配向のキャップ層として蒸着して成膜されたCeOである。なお、第1〜第4中間層12a〜12dの厚みは、それぞれ約1[μm]である。なお、第4中間層12dをCeO膜にGdを添加したCe−Gd−O膜とした場合、超電導層として成膜されるYBCO超電導層30が良好な配向性を得るために、第4中間層12dにおける膜中のGd添加量を50at%以下にすることが好ましい。この第4中間層12dの上には超電導層30が成膜されている。なお、中間層12は、1層〜3層或いは5層以上で形成されてもよい。なお、複合基板10の幅方向の長さは、特に限定されるものではないが、本実施の形態では、幅5[mm]としている。一般に、基板11の幅は、2〜30[mm]である。また、複合基板10の長手方向の長さは、500[m]としている。
安定化層14は、銀、金、白金等の貴金属、あるいはそれらの合金であり低抵抗の金属である。なお、安定化層14は、超電導層30の直上に形成することによって、超電導層30が金、銀などの貴金属、あるいはそれらの合金以外の材料と直接的な接触によって反応によって引き起こす性能低下を防止する。これに加えて、安定化層14は、事故電流や交流通電により発生した熱を分散して発熱による破壊・性能低下を防止する。安定化層14の厚みはここでは10〜30[μm]である。
超電導層30は、全軸配向REBCO層、つまり、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の高温超電導薄膜の層である。ここでは、超電導層30は、イットリウム系酸化物超電導体(RE123)であり、積層仮焼成膜作製装置40で、複合基板10の第4中間層12d上に成膜されることで作製した。
このテープ状酸化物超電導線材20の作製に際し、超電導原料溶液21として、イットリウム(Y)のトリフルオロ酢酸塩(Y−TFA)、バリウム(Ba)のトリフルオロ酢酸塩(Ba−TFA)及び銅(Cu)のナフテン酸塩を、Y:Ba:Cuのモル比が1:a:3(但し、a<2)で混合したものを用いた。
なお、積層仮焼成膜作製装置40において、塗布装置50内の超電導原料溶液21からの複合基板10の引き上げ速度は20[m/h]に設定した。なお、引き上げ速度は、これに限定されるものではなく、一般に、引き上げ速度は5〜100[m/h]である。
このようなテープ状酸化物超電導線材20を製造する際に、仮焼成炉60における仮焼成熱処理条件(仮焼条件)を変えた。具体的には、仮焼成炉60において、基板11上、或いは、仮焼成膜上に塗布された超電導原料溶液21に仮焼成熱処理を施すときの仮焼条件(炉突入温度、最高到達温度、炉出温度)を変えて制御した。この制御によりテープ状酸化物超電導線材を作製して、テープ状酸化物超電導線材の超電導特性(臨界電流値I[A/cm−w]77K自己磁場中)を求めた。なお、炉突入温度は、導入口60bから電気炉である仮焼成炉60内に突入した際の導入口60bを画成する部位を含む領域の温度であり、最高到達温度(最高温度)は、仮焼成炉60内で仮焼成熱処理される際の最高温度である。また、炉出温度は、炉出口60cを画成する部位を含む領域の温度であり、炉出口60cから炉出される直前の温度である。
図5は、本発明の実施の形態に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法で製造されるテープ状酸化物超電導線材の特性を示す図である。
<実施例1>
仮焼条件を、電気炉(仮焼成炉)への炉突入温度(「突入温度」ともいう)150℃、最高到達温度(「最高温度」ともいう)450℃、炉出直前温度(「直前温度」ともいう)350℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は320(A/cm-w)であった。
<実施例2>
仮焼条件を、突入温度150℃、最高温度450℃、直前温度400℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は250[A/cm-w]であった。
<実施例3>
仮焼条件を、突入温度200℃、最高温度450℃、直前温度350℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は200[A/cm-w]であった。
<実施例4>
仮焼条件を、突入温度200℃、最高温度450℃、直前温度400℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は170[A/cm-w]であった。
<参照例1>
仮焼条件を、突入温度230℃、最高温度450℃、直前温度350℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は100[A/cm-w]であった。
<参照例2>
仮焼条件を、突入温度150℃、最高温度450℃、直前温度420℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は90[A/cm-w]であった。
<比較例1>
仮焼条件を、突入温度150℃、最高温度450℃、直前温度120℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は90[A/cm-w]であった。
<比較例2>
仮焼条件を、突入温度150℃、最高温度450℃、直前温度500℃で作製した仮焼成膜を本焼成熱処理することで、図4に示すテープ状酸化物超電導線材を作製した。このテープ状酸化物超電導線材における臨界電流値は60[A/cm-w]であった。
これら実施例1〜4、参照例1、2及び比較例1、2を比較すると、実施例1のテープ状酸化物超電導線材の電界電流値Iが320[A/cm−w]となり、実施例1〜4、参照例1、2及び比較例1、2の中で、77K自己磁場中において最も高い臨界電流I[A/cm]となった。つまり、仮焼成炉60において、突入温度150℃以下で、且つ、炉出温度350℃以下として仮焼成熱処理を行う場合が、テープ状酸化物超電導線材として、最も高い臨界電流I[A/cm]、つまり、極めて良好な超電導特性(Jcの臨界電流密度Jc[MA/cm]を確保できた。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明に係るテープ状酸化物超電導線材の製造方法は、所望の薄い膜厚で超電導特性の優れたテープ状RE系酸化物超電導線材を製造できる効果を有し、超電導線材の製造方法として有用である。
10 複合基板
11 金属基板
12 中間層
12a 第1中間層
12b 第2中間層
12c 第3中間層
12d 第4中間層
14 安定化層
20 超電導線材
21 超電導原料溶液
30 超電導層
31 塗布膜
32 仮焼成膜
33 積層仮焼成膜
40 積層仮焼成膜作製装置
41 繰り出しリール
42 巻き取りリール
43a、43b、43c、43d ガイド部(ガイドローラ)
50 塗布装置
51 超電導原料溶液タンク
52 ガイド
60 仮焼成炉
61、62 ヒータ
63 制御部

Claims (8)

  1. 基板上に形成された中間層上に、金属元素を含む金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した超電導原料溶液を塗布する塗布工程と、仮焼成炉で前記中間層上に塗布された前記超電導原料溶液に仮焼成熱処理を施して仮焼成膜を作製する仮焼成熱処理工程とを繰り返すことにより、積層した仮焼成膜を作製する積層膜形成処理工程と、
    前記積層膜形成処理工程の後、前記積層した仮焼成膜に本焼成熱処理を施すことで、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)である超電導層を作製する本焼成熱処理工程と、
    を有し、
    前記中間層上に前記仮焼成膜が作製される前記基板を前記仮焼成炉から炉出する炉出温度は、前記仮焼成熱処理を行うために前記基板が前記仮焼成炉に突入するときの突入温度よりも高く、且つ、前記仮焼成熱処理の最高温度よりも低く、
    前記仮焼成熱処理の最高温度は400℃超である、
    ことを特徴とするテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記炉出温度は、400℃以下である、
    ことを特徴とする請求項1記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記炉出温度は、350℃以下である、
    ことを特徴とする請求項1記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 前記突入温度は、200℃以下である、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記突入温度は、150℃以下である、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記仮焼成熱処理において、前記仮焼成膜が作製される前記基板が、前記仮焼成炉に突入されて前記最高温度に到達する到達地点は、前記基板が突入する前記仮焼成炉の導入口から炉出口までの炉長の中心地点と炉出口地点の間にある、
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 前記金属有機酸塩は、オクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩またはトリフルオロ酢酸塩より選択された1種以上からなる、
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のテープ状酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 基板上に形成された中間層上に、金属元素を含む金属有機酸塩または有機金属化合物を有機溶媒中に溶解した超電導原料溶液を塗布する塗布装置と、
    前記中間層上に塗布された前記超電導原料溶液に仮焼成熱処理を施して前記中間層上に仮焼成膜を作製する仮焼成炉と、を有し、
    前記塗布装置による前記超電導原料溶液の塗布と、前記仮焼成炉による前記仮焼成熱処理とを繰り返して、前記仮焼成膜を積層することで、その後に施される本焼成熱処理によってREBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)超電導層となる積層仮焼成膜を作製する積層仮焼成膜作製装置であって、
    前記仮焼成炉は、
    前記仮焼成膜が作製された前記基板を前記仮焼成炉から炉出する炉出温度を、前記超電導原料溶液が中間層上に塗布された前記基板を前記仮焼成炉に突入する突入温度よりも高く、且つ、前記仮焼成熱処理の最高温度よりも低くし、
    前記仮焼成熱処理の最高温度を400℃超とした、
    ことを特徴とする積層仮焼成膜作製装置。
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