JPWO2011122389A1 - 糖尿病の予防又は治療用油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

安全性が高く、継続的に摂取しても副作用の懸念がない、糖尿病の予防又は治療に有効な油脂組成物を提供すること。本発明の糖尿病の予防又は治療用油脂組成物は、トリアシルグリセロールを有効成分として含有し、当該トリアシルグリセロールは、分子内に中鎖脂肪酸残基を1つ又は2つ有し、且つ、構成脂肪酸として、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と、炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とを含有することを特徴とする。

Description

本発明は、糖尿病の予防又は治療用油脂組成物に関し、詳細には、ある特定のトリアシルグリセロールを有効成分とする糖尿病の予防又は治療用油脂組成物に関する。
糖尿病は、I型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)と、II型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)とに大別される。日本の糖尿病罹患者の大部分は、II型糖尿病であり、インスリンの分泌量が低下するインスリン分泌不全や、インスリンの血糖を下げる作用が弱くなるインスリン抵抗性(インスリン作用不全)といった症状が進行することで発症する。これらの症状には、遺伝的要因や、偏食、過食、運動不足、ストレス等の環境的要因が大きく関与している。
近年、II型糖尿病の患者数が増加しており、境界型と呼ばれる糖尿病予備軍を含めるとすでに2000万人にも及ぶと言われている。したがって、糖尿病患者のケアだけでなく、糖尿病予備軍を糖尿病に移行させない予防も重要な課題となっている。
一般に、II型糖尿病の治療は、食事療法及び運動療法を基本とした上で薬物療法を行う。日本におけるII型糖尿病の薬物療法としては、インスリン分泌を促進させるスルホニルウレア剤(SU剤)が多用されている。これは、日本人のインスリン分泌能力が欧米人に比べて低いからである。また、インスリン抵抗性の症状には、ピオグリタゾン等のいわゆるチアゾルジン系薬剤が使用されている。
しかしながら、SU剤には、低血糖、そう痒感、発疹、体重増加、膵β細胞の疲弊等の副作用の問題があり、また、チアゾルジン系薬剤は、肝障害や腎機能障害の患者には禁忌であり、浮腫、体重増加等の副作用の問題を有していた。糖尿病の薬物療法は、長期間継続して行う必要があるため、継続的に服用しても副作用の懸念がない抗糖尿病薬の開発が所望されていた。
このような抗糖尿病薬としては、これまで、白甘薯の塊根の皮部分から得られる抽出液を有効成分とするインスリン分泌促進剤(特許文献1)や、酢酸、β−コングリシニン、及びγ−アミノ酪酸をそれぞれ有効成分とするインスリン抵抗性改善剤(特許文献2〜4)が報告されている。
特許第3677007号公報 特開2002−193797号公報 WO2004/087199号公報 特開2008−74734号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、安全性が高く、継続的に摂取しても副作用の懸念がない、糖尿病の予防又は治療に有効な油脂組成物、及びそれを含有する飲食品を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、構成脂肪酸として、ある特定の炭素数の中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸とを分子内に有するトリアシルグリセロールを有効成分とする油脂組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明では以下のようなものを提供する。
(1)トリアシルグリセロールを有効成分として含有し、該トリアシルグリセロールは、分子内に中鎖脂肪酸残基を1つ又は2つ有し、且つ、構成脂肪酸として、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とを含有することを特徴とする糖尿病の予防又は治療用油脂組成物。
(2)上記トリアシルグリセロールの構成脂肪酸は、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とからなる(1)に記載の油脂組成物。
(3)上記中鎖脂肪酸が炭素数8及び/又は10の飽和脂肪酸である(1)又は(2)に記載の油脂組成物。
(4)上記(1)〜(3)いずれかに記載の油脂組成物を含有する飲食品。
本発明の油脂組成物は、インスリン分泌促進作用と、インスリン抵抗性改善作用とを有するので、インスリン分泌量が低下するインスリン分泌不全や、インスリンの作用が低下するインスリン抵抗性を伴う糖尿病の予防又は治療に有効である。また、本発明の油脂組成物は、有効成分がトリアシルグリセロールであるので、安全性が高く、副作用の懸念がないため、安心して継続的に摂取することができる。
MLCT投与試行における血漿インスリン濃度の測定結果を示す図である。 MCT投与試行における血漿インスリン濃度の測定結果を示す図である。 MCT+LCT投与試行における血漿インスリン濃度の測定結果を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明の油脂組成物は、糖尿病の予防又は治療用として用いるものであり、トリアシルグリセロールを有効成分として含有する。そして、本発明の油脂組成物の有効成分であるトリアシルグリセロールは、分子内に中鎖脂肪酸残基を1つ又は2つ有し、且つ、構成脂肪酸として、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とを含有する。すなわち、トリアシルグリセロールの形態としては、1分子のトリアシルグリセロール中に構成脂肪酸として中鎖脂肪酸のみが存在する中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、MCTという。)、長鎖脂肪酸のみが存在する長鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、LCTという。)、及び中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸とが混在する中・長鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、M・LCTという。)があるが、本発明の油脂組成物は、1分子のトリアシルグリセロール中に炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とを構成脂肪酸として含有するM・LCTを有効成分として含有することを特徴とする。
本発明の油脂組成物では、有効成分である上記M・LCT以外に、上記MCT及び/又はLCTを含有してもよい。なお、本明細書では、このようなトリアシルグリセロールを中長鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、MLCTという。)ということとし、分子内に中鎖脂肪酸残基を1つ又は2つ有し、構成脂肪酸として中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸とが混在するトリアシルグリセロールのM・LCTとは区別して表現する。
有効成分のトリアシルグリセロールは、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とを含有し、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とからなることが好ましい。炭素数6〜10の中鎖脂肪酸としては、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、及びn−デカン酸が挙げられるが、炭素数が偶数の飽和脂肪酸が好ましく、炭素数が8及び/又は10の飽和脂肪酸(n−オクタン酸及び/又はn−デカン酸)がより好ましい。中鎖脂肪酸は、ヤシ油やパーム核油等を加水分解することにより得ることができる。
炭素数16〜24の長鎖脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の長鎖飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸等の長鎖不飽和脂肪酸が挙げられる。長鎖脂肪酸は、搾油原料を搾油し、精製した大豆油、菜種油、コーン油、米油、ゴマ油、綿実油、ひまわり油、紅花油、亜麻仁油、シソ油、オリーブ油等を加水分解することにより得ることができる。
本発明の油脂組成物の有効成分であるトリアシルグリセロールは、構成脂肪酸として上記中鎖脂肪酸と上記長鎖脂肪酸とを含有するが、これらの脂肪酸の結合位置は、特に限定されない。
トリアシルグリセロールの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、従来公知のエステル交換反応又はエステル化反応が挙げられる。エステル交換反応としては、例えば、ナトリウムメトキシド等の無機触媒を用いた化学的なエステル交換反応、リパーゼ等を用いた酵素によるエステル交換反応が挙げられる。本発明では、どちらの反応によるかは特に問わない。また、エステル交換反応は、選択的エステル交換反応又は非選択的エステル交換反応のいずれであってもよく、特に限定されない。
エステル化反応としては、例えば、グリセリンと脂肪酸を用いたエステル化反応、グリセリンと脂肪酸エステルを用いたエステル化反応、グリセリンと油脂を用いたエステル化反応等が挙げられる。本発明では、いずれの反応によるかは特に問わない。
本発明の油脂組成物では、有効成分であるトリアシルグリセロールの全構成脂肪酸における上記中鎖脂肪酸の占める割合は、15〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることがより好ましい。上記範囲であれば、インスリン分泌促進作用や、インスリン抵抗性改善作用をより効果的に発揮することができる。なお、上記中鎖脂肪酸の占める割合を確認する方法としては、例えば、本発明の油脂組成物から上記トリアシルグリセロールを分子蒸留、カラムクロマトグラフィー等により単離した後、構成脂肪酸をメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィーにより分析する方法が挙げられる。
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、保存安定性をより向上させたり、調理適性をより向上させたりするために、公知の乳化剤を添加することができる。具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられる。
本発明の油脂組成物は、インスリンの分泌量を高める必要がある糖尿病又はその予備軍に該当するヒトを含む動物や、インスリン抵抗性を改善させる必要がある糖尿病又はその予備軍に該当するヒトを含む動物に対して有効に作用する。特に、インスリン分泌量が低下するインスリン分泌不全や、インスリンの作用が低下するインスリン抵抗性を伴うII型糖尿病の予防又は治療に好適である。ここで、予防とは、例えば、発症の抑制、遅延等を意味し、治療とは、例えば、進行の遅延、症状の緩和、軽減、改善等を意味する。
本発明の油脂組成物に有効成分として含まれるトリアシルグリセロールやその構成脂肪酸である中鎖脂肪酸及び長鎖脂肪酸は、天然に広く存在するものであり、また、食用となる天然物にも含まれている。したがって、本発明の油脂組成物は、安全性が高く、医薬品(動物用を含む)、食品、飼料等として好適に用いることができる。
糖尿病の薬物療法は長期間継続して行う必要があるため、医薬品に用いられる成分には、継続的に服用したとしても副作用の懸念がないことが求められる。本発明の油脂組成物は、安全性が高く、副作用の懸念がない、トリアシルグリセロールを有効成分として含有するので、医薬品に用いた場合であっても、安心して継続的に服用することができる。また、本発明の油脂組成物は、服用のコントロールが容易であるので、II型糖尿病の治療において行われる食事療法と運動療法とを組み合わせた薬物療法に好適である。
本発明の油脂組成物を医薬品として用いる場合の投与経路としては、経口投与が好ましい。本発明の油脂組成物の有効成分であるトリアシルグリセロールは、その大部分が腸管(小腸)の粘膜を通して体内に吸収されるからである。経口投与に適する製剤としては、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤等が挙げられる。本発明の油脂組成物は、有効成分であるトリアシルグリセロールと、薬理上及び製剤上許容しうる添加物と、を含む医薬品組成物の形態の製剤とすることが好ましい。薬理上及び製剤上許容しうる添加物としては、例えば、ブドウ糖、乳糖、結晶セルロース、デンプン等の賦形剤、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、色素、希釈剤等が挙げられ、通常、製剤分野において常用され、且つ有効成分であるトリアシルグリセロールと反応しない物質が用いられる。
上記したように、本発明の油脂組成物は、安全性が高く、継続的な服用による副作用の懸念がないので、既存薬と組み合わせて用いることにより、該既存薬の用量を下げて、これらが有する副作用を低減することができる。他の薬との組み合わせは、配合剤のように同一の医薬組成物中に含むものであってもよいし、別々の医薬組成物中に含むものであってもよい。
本発明の油脂組成物を用いた医薬品の投与量は、患者の症状、予防又は治療、年齢、体重、投与方法、投与期間等の諸条件に応じて、適宜選択可能である。例えば、ヒト(成人60kg)の糖尿病の治療を目的とする場合には、有効量は、通常、有効成分であるトリアシルグリセロールとして、200〜1000mg/kg体重/日であり、この量を一回又は数回に分けて投与すればよく、投与のタイミング等に応じて、この範囲で適宜調整すればよい。
本発明の油脂組成物は、ソフトカプセルに充填・加工することにより、例えば、健康食品、栄養補助食品等の食品として摂取することができる。また、本発明の油脂組成物は、そのままで、又は粉末油脂や液状乳化油脂等に加工することにより、直接摂取したり、これらを更に一般食品に利用し、加工することにより、間接的に摂取したりすることもできる。
本発明の油脂組成物を利用することができる一般食品としては、油脂を使用する加工食品であれば、特に限定されるものではなく、例えば、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット、ドーナツ、マフィン、スコーン、チョコレート、グミ、スナック菓子、ホイップクリーム、アイスクリーム等のパン・菓子類、果汁飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク等の飲料類、スープ類、ドレッシング、ソース、マヨネーズ、バター、マーガリン、調製マーガリン等の調味加工食品、ファットスプレッド、ショートニング、ベーカリーミックス、炒め油、フライ油、フライ食品、加工肉製品、冷凍食品、麺、レトルト食品、流動食、嚥下食等が挙げられる。
本発明の油脂組成物を、糖尿病患者又はその予備軍が摂取する飲食品の製造のために使用する場合には、例えば、成人(体重60kg)であれば、配合する食品の種類、その他に摂取する食品に含まれる成分等を考慮し、有効成分であるトリアシルグリセロールの摂取量が200〜1000mg/kg体重/日となるように配合するとよく、摂取のタイミング等に応じて、この範囲で適宜調整すればよい。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
[試験例1]インスリン分泌促進効果の検討(1)
糖負荷を与えたラットを用いて、LCTを対照に、本発明の油脂組成物(MLCT)の血漿インスリン分泌促進効果を検討した。
<製造例1>試料1の製造方法
40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、LCT(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ社製)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料1を得た。対照として用いたLCT(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ社製)の脂肪酸組成を表1に示す。
Figure 2011122389
<製造例2>試料2の製造方法
MCT(商品名:O.D.O,構成脂肪酸:n−オクタン酸/n−デカン酸=3/1,日清オイリオグループ社製)と、LCT(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ社製)と、を14:86(質量比)の割合で混合し、混合油を得た。得られた混合油に、リパーゼ粉末を上記混合油に対して0.1質量%添加した後、60℃で15時間撹拌し、エステル交換反応させた。次いで、反応生成物からリパーゼ粉末を濾別し、濾液を水洗、乾燥後、脱色、脱臭して、MCTとLCTとのエステル交換油(MLCT(1))を得た。そして、40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、上記MLCT(1)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料2を得た。
製造例2にて得られたMLCTのトリアシルグリセロール組成及び脂肪酸組成を、それぞれ表2及び表3に示す。なお、トリアシルグリセロール組成は、カラムにジーエルサイエンス社製のSilicone GS−1を用いたガスクロマトグラフィーにより測定し、脂肪酸組成は、「基準油脂分析試験法(1996)」に準じて測定した。
Figure 2011122389
Figure 2011122389
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(19匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料2の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。すなわち、MLCT(1)の効果を同一個体で比較できるように、最初の糖負荷試験後、1週間のWash−Out期間を設けて2回目の糖負荷試験を行う、クロスオーバー法を採用した。飼育期間中は、温度23±1℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクル(8:00〜20:00照明)の環境下でステンレス製メッシュケージにて個別飼育した。水及び固形飼料(商品名:PicoLab Rodent Diet 20 5053,日本SLC社製)は自由摂取とした。試験前日は17:00から絶食を行い、試験当日は10:00から投与を開始した。
試験は、糖負荷と同時にLCTの投与を行う「LCT投与試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時にMLCT(1)の投与を行う「MLCT(1)投与試行(試料2投与試行)」との2試行にて行った。試料1及び2は、ゾンデを用いてラットに経口投与した。投与量は、ラットの体重1g当たり6μlとした。なお、最終的投与量は、ラットの体重1kg当たり、糖質及び脂質がそれぞれ2g及び1gであった。
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。なお、血漿インスリン濃度の測定は、市販のキット(商品名:Rat Insulin ELISA kit,Mercodia社製)を用いてELISA法により行った。試験結果を図1(A)に示す。なお、MLCT(1)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、LCT投与試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
図1(A)に示すように、MLCT(1)投与試行の血漿インスリン濃度増加量は、LCT投与試行と比較して有意に(p<0.01)高値を示した。このことから、MCTとLCTとのエステル交換油(MLCT)によれば、インスリンの分泌が促進されることが明らかとなった。なお、LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は0.86±0.10ng/mlであり、MLCT(1)投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.15±0.10ng/mlであった。
[試験例2]インスリン分泌促進効果の検討(2)
糖負荷を与えたラットを用いて、LCTを対照に、試験例1とは異なるトリアシルグリセロール組成を有する本発明の油脂組成物(MLCT)の血漿インスリン分泌促進効果を検討した。
<製造例3>試料3の製造方法
MCT(商品名:スコレー64G,構成脂肪酸:n−オクタン酸/n−デカン酸=3/2,日清オイリオグループ社製)と、LCT(商品名:日清コーン油,日清オイリオグループ社製)と、を30:70(質量比)の割合で混合し、混合油を得た。得られた混合油に対して、製造例2と同様の方法によりエステル交換反応、脱色処理、及び脱臭処理を施し、MCTとLCTとのエステル交換油(MLCT(2))を得た。そして、40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、上記MLCT(2)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料3を得た。
製造例3にて得られたMLCTのトリアシルグリセロール組成及び脂肪酸組成を、それぞれ表4及び表5に示す。測定は、上記と同様の方法にて行った。
Figure 2011122389
Figure 2011122389
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(19匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料3の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。飼育条件は、試験例1と同様とした。
試験は、糖負荷と同時にLCTの投与を行う「LCT投与試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時にMLCT(2)の投与を行う「MLCT(2)投与試行(試料3投与試行)」との2試行にて行った。試料1及び3は、ゾンデを用いてラットに経口投与した。投与量は、ラットの体重1g当たり6μlとした。なお、最終的投与量は、ラットの体重1kg当たり、糖質及び脂質がそれぞれ2g及び1gであった。
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、試験例1と同様の方法にて血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。試験結果を図1(B)に示す。なお、MLCT(2)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、LCT投与試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
図1(B)に示すように、MLCT(2)投与試行の血漿インスリン濃度増加量は、LCT投与試行と比較して有意に(p<0.05)高値を示した。このことからも、MCTとLCTとのエステル交換油(MLCT)によれば、インスリンの分泌が促進されることが明らかとなった。なお、LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.25±0.10ng/mlであり、MLCT(2)投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.50±0.14ng/mlであった。
[試験例3]インスリン分泌促進効果の検討(3)
糖負荷を与えたラットを用いて、LCTを対照に、MCTの血漿インスリン分泌促進効果を検討した。
<製造例4>試料4の製造方法
40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、MCT(商品名:O.D.O,構成脂肪酸:n−オクタン酸/n−デカン酸=3/1,日清オイリオグループ社製)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料4を得た。
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(18匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料4の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。飼育条件は、試験例1と同様とした。
試験は、糖負荷と同時にLCTの投与を行う「LCT投与試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時にMCTの投与を行う「MCT投与試行(試料4投与試行)」との2試行にて行った。試料1及び4は、ゾンデを用いてラットに経口投与した。投与量は、ラットの体重1g当たり6μlとした。なお、最終的投与量は、ラットの体重1kg当たり、糖質及び脂質がそれぞれ2g及び1gであった。
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、試験例1と同様の方法にて血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。試験結果を図2に示す。なお、MCT投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、LCT投与試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
図2に示すように、MCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量と、LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量との間には有意な差は認められなかった。なお、LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.27±0.12ng/mlであり、MCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.34±0.08ng/mlであった。
[試験例4]インスリン分泌促進効果の検討(4)
糖負荷を与えたラットを用いて、LCTを対照に、MCTとLCTとの混合油(MCT+LCT)の血漿インスリン分泌促進効果を検討した。
<製造例5>試料5の製造方法
MCT(商品名:O.D.O,構成脂肪酸:n−オクタン酸/n−デカン酸=3/1,日清オイリオグループ社製)と、LCT(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ社製)と、を14:86(質量比)の割合で混合し、MCTとLCTとの混合油(MCT+LCT)を得た。そして、40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、上記混合油2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料5を得た。
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(14匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料5の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。飼育条件は、試験例1と同様とした。
試験は、糖負荷と同時にLCTの投与を行う「LCT投与試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時にMCTとLCTとの混合油の投与を行う「MCT+LCT投与試行(試料5投与試行)」との2試行にて行った。試料1及び5は、ゾンデを用いてラットに経口投与した。投与量は、ラットの体重1g当たり6μlとした。なお、最終的投与量は、ラットの体重1kg当たり、糖質及び脂質がそれぞれ2g及び1gであった。
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、試験例1と同様の方法にて血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。試験結果を図3に示す。なお、MCT+LCT投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、LCT投与試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
図3に示すように、MCT+LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量と、LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量との間には有意な差は認められなかった。なお、LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.28±0.18ng/mlであり、MCT+LCT投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.25±0.18ng/mlであった。
以上の試験例1〜4の結果より、MCTとLCTとのエステル交換油(MLCT)に認められた血漿インスリン分泌促進効果は、MLCTに含まれるトリアシルグリセロールのうち、分子内に中鎖脂肪酸残基を1つ又は2つ有するトリアシルグリセロールに起因することが明らかとなった。
[試験例5]インスリン抵抗性改善効果の検討
高脂肪食の長期間摂取によりインスリン抵抗性を発症したモデル動物を用いて、LCTを対照に、本発明の油脂組成物(MLCT)のインスリン抵抗性改善効果を検討した。
<製造例6>油脂組成物の製造方法
MCT(商品名:O.D.O,構成脂肪酸:n−オクタン酸/n−デカン酸=3/1,日清オイリオグループ社製)と、LCT(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ社製)と、を14:86(質量比)の割合で混合し、混合油を得た。得られた混合油に、リパーゼ粉末を上記混合油に対して0.1質量%添加した後、60℃で15時間撹拌し、エステル交換反応させた。次いで、反応生成物からリパーゼ粉末を濾別し、濾液を水洗、乾燥後、脱色、脱臭して、本発明の油脂組成物であるMCTとLCTとのエステル交換油(MLCT)を得た。
製造例6にて得られたMLCTのトリアシルグリセロール組成及び脂肪酸組成を、それぞれ表6及び表7に示す。測定は、上記と同様の方法にて行った。
Figure 2011122389
Figure 2011122389
<製造例7>試験飼料の製造方法
試験飼料には、AIN93基準食の配合に準じ、油脂としてLCT(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ社製)又は製造例6にて得られたMLCTを使用して設計した飼料を用いた。試験飼料の組成を表8に示す。まず、油脂(LCT又はMLCT)以外の各成分を混合した後、油脂を混合し、均一化して試験飼料(LCT食、MLCT食)を得た。
Figure 2011122389
試験には、インスリン抵抗性モデルラット(参考文献:Han et al,Diabetes,46,p1761−p1767,1997)を用いた。すなわち、Sprague−Dawley系雄性ラット(日本SLC社より購入)に4週齢〜12週齢時まで、表9に示す組成の高脂肪飼料を摂取させることにより、インスリン抵抗性を発症させたラットを用いた。飼育期間中は、温度23±1℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクル(8:00〜20:00照明)の環境下でステンレス製メッシュケージにて個別飼育し、水と高脂肪飼料は自由摂取とした。
Figure 2011122389
上記のインスリン抵抗性モデルラット30匹について、体重、血糖値、及び血漿インスリン濃度が均等になるように2群(各15匹)に分け、それぞれLCT食を摂取させる「LCT食摂取群(対照群)」と、MLCT食を摂取させる「MLCT食摂取群」とした。なお、血糖値の測定には、グルコースC2テストワコー(和光純薬工業社製)を、インスリン濃度の測定には、Rat insulin ELISAキット(Mercodia社製)を用いて、各ラットの尾静脈血を分析した。
群分け後は、温度23±1℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクル(8:00〜20:00照明)の環境下でステンレス製メッシュケージにて個別飼育し、水と試験飼料は自由に摂取させることとした。
本検討では、インスリン抵抗性の改善効果を確認するために、インスリン抵抗性モデルラットに試験飼料を摂取させて6週間飼育した後、経口糖負荷試験を行い、糖負荷後の血糖値及び血漿インスリン濃度の経時変化を解析した。すなわち、一晩(16時間)絶食させたラットに対して、体重1kgあたり1.5gのグルコースを経口投与し、投与前と、投与30分後、60分後、120分後にラットの尾静脈から採血を行い、血糖値及びインスリン濃度を測定した。なお、血糖値の測定には、グルコースC2テストワコー(和光純薬工業社製)を、インスリン濃度の測定には、Rat insulin ELISAキット(Mercodia社製)を用いた。測定値に基づいて作成した血糖値及びインスリン濃度の経時変化を示す曲線グラフから、曲線下面積(Area under the Curve:AUC)を算出し、該算出した値をそれぞれ糖負荷後の血糖値及び血漿インスリン濃度の変化量とした。そして、各群の変化量について平均値と標準誤差を算出し、Student t−test検定を用いて群間の有意差検定を行い、危険率5%未満をもって有意差ありと判断した。結果を表10に示す。
Figure 2011122389
表10に示すように、血糖値AUCは、LCT食摂取群とMLCT食摂取群との間で有意な差は認められなかったが、インスリン濃度AUCは、MLCT食摂取群がLCT食摂取群と比べて有意に低い値を示した。すなわち、MLCT食摂取群では、LCT食摂取群よりも少ないインスリン分泌でLCT食摂取群と同レベルの血糖値を維持しており、MLCTの摂取によるインスリン抵抗性の改善が認められた。
インスリン抵抗性の発症は、肥満、特に内臓脂肪の蓄積によって、脂肪細胞からインスリン感受性の亢進作用を持つアディポネクチンが、正常に分泌されなくなることが原因の1つとして考えられている(Kadowaki et al,J Clin Invest,116,p1784−p1792,2006)。そこで、ラットのインスリン抵抗性の改善に伴う、アディポネクチンの分泌量、及び内臓脂肪量の変化を調べた。
血漿アディポネクチン濃度の測定は、試験飼料を摂取させて6週間飼育した後であって、経口糖負荷試験前の上記ラットに対して行った。すなわち、ラットに対してグルコースを投与する直前に尾静脈より採血し、得られた血液を3000rpmで10分間遠心分離し、上澄みの血漿を分取した。血漿中のアディポネクチン濃度は、ELISA法(マウス/ラットアディポネクチンELISAキット,大塚製薬社製)を用いて、測定した。そして、各群の測定値について平均値と標準誤差を算出し、Student t−test検定を用いて群間の有意差検定を行い、危険率5%未満をもって有意差ありと判断した。結果を表11に示す。
Figure 2011122389
表11に示すように、MLCT食摂取群では、LCT食摂取群と比べて血漿アディポネクチン濃度が有意に高い値を示した。このことから、MLCT食摂取群では、MLCTの摂取によりアディポネクチンの分泌が回復し、アディポネクチンのインスリン感受性の亢進作用により、インスリン抵抗性が改善したと考えられた。
次に、上記経口糖負荷試験後の上記ラットについて、内臓脂肪量、体重増加量、及び試験飼料摂取量の測定を行った。経口糖負荷試験後に試験飼料を摂取させて2日間飼育したラットを、ジエチルエーテル麻酔下で脱血死させた。副睾丸脂肪、腎周囲脂肪、及び腸間膜脂肪を摘出し、各重量を測定し、それぞれ副睾丸脂肪量、腎周囲脂肪量、及び腸間膜脂肪量とした。また、副睾丸脂肪量、腎周囲脂肪量、及び腸間膜脂肪量の合計脂肪量を内臓脂肪量とした。体重増加量は、個々のラットの試験飼料投与開始時の体重と解剖直前の体重とを測定し、その差から算出した。試験飼料摂取量は、個々のラットが飼育期間中に摂取した試験飼料の総量を測定し、飼育日数で除して、一日平均摂取量として算出した。そして、各群の上記量について平均値と標準誤差を算出し、Student t−test検定を用いて群間の有意差検定を行い、危険率5%未満をもって有意差ありと判断した。内臓脂肪量の測定結果を表12に、体重増加量及び試験試料摂取量の測定結果を表13に示す。
Figure 2011122389
Figure 2011122389
表12に示すように、内臓脂肪量は、LCT食摂取群とMLCT食摂取群との間で有意な差が認められなかったが、腸間膜脂肪量は、MLCT食摂取群がLCT食摂取群と比べて有意に低い値を示した。よって、MLCTはアディポネクチンの分泌の回復に寄与していると考えられた。なお、表13に示すように、LCT食摂取群及びMLCT食摂取群の体重増加量は同程度であり、試験飼料の違いによる摂取量や成長の違いは認められなかった。
本発明の油脂組成物は、糖尿病患者にみられるインスリン分泌不全やインスリン抵抗性といった症状の改善に有効であり、糖尿病用の医療や食品の分野において利用が可能である。

Claims (4)

  1. トリアシルグリセロールを有効成分として含有し、
    当該トリアシルグリセロールは、分子内に中鎖脂肪酸残基を1つ又は2つ有し、且つ、構成脂肪酸として、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とを含有することを特徴とする糖尿病の予防又は治療用油脂組成物。
  2. 前記トリアシルグリセロールの構成脂肪酸は、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸と炭素数16〜24の長鎖脂肪酸とからなる請求項1に記載の油脂組成物。
  3. 前記中鎖脂肪酸が炭素数8及び/又は10の飽和脂肪酸である請求項1又は2に記載の油脂組成物。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の油脂組成物を含有する飲食品。
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