JPWO2011039829A1 - 検体認証システム及び検体認証素子 - Google Patents

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Abstract

検体認証システムにおいては、発信部からTHz波が検体を収容するチャネル内に向けられる。検体を通過したTHz波は、検出部で検出される。発振制御部は、発振部をTHz波の発振周波数をある周波数帯域内で掃引させ、検出駆動部は、THz波の検出周波数を周波数帯域で掃引して検出信号を発生する。検体認証部は、周波数帯域内における検出信号の波形で検体を特定する。

Description

本発明は、波を検体に照射してその吸収スペクトル或いは反射スペクトルから検体を認証する検体認証素子及びこの検体認証素子を備える検体認証システムに関する。
医学の発達により、より高度な治療が行なえるようになっている。しかしながら、重大疾患の病気に関しては、高度な治療は、誰にでも行なえるような金額なものではなく、医療費の高額化が生じている。このような背景から、大規模な治療前に、誰にでも簡易的に行える未然治療、並びに、早期の病気発見の必要性が生じている。在宅時にでも行えるようなより簡易的な検査で疾患の検査が容易にできるようになることで、早期発見によって医療施術の選択肢が増し、医療費高騰の問題を避けることが可能となる。
しかしながら、現在の健康診断で行なうような比較的安価なレベルのものでは、重要疾患の発見に十分とはいえない状況にある。健康診断で行なえるような検査レベルで、重要疾患が発見できることがより望まれている。
将来的に、このような簡易検査を実現できる可能性のあるものとして、バイオセンサが研究されている。バイオセンサといっても色々な種類・定義が世の中にはあるが、本明細書におけるバイオセンサの定義として、「ポータブルなチップにおいて、生体情報をもつ物質をそのチップ上に配置し、そのチップになんらかの検知処理を行なうことで、生体情報を判別するもの」、を指すことにする。
上記のような理想的なセンサはまだ実現されておらず研究段階である。実現に向けた基礎的な研究として、以下のような従来技術1から従来技術3がある。
(従来技術1: ラベル型のバイオセンサ)
現在使われている蛍光分析技術よりも簡便に、たんぱく質、DNA等の生体物質等の検体を認証することを目的として、磁性ビーズを用いたバイオセンサ等の検体を認証する検体認証素子が研究されている。チップ上での検査で簡便にたんぱく質を同定できれば、大型装置を用いなくても、簡便に生体物質の同定を、クリニックでできる可能性がある。この検体認証素子は、これまで蛍光物質をラベルとして用いてきた替わりに、磁性ビーズを用いたことが特徴で、磁界検知にすることで従来よりも高感度に検体認証を行うことが可能となる。このように磁性ビーズをラベルとして用いる従来のバイオセンサは、非特許文献1及び特許文献1で知られている。
(従来技術2: ラベルフリーのバイオ検体手法)
最先端の工学技術と医療とを融合させた医療判断技術として、特殊な波を生態物質に照射することで、ラベルを用いることなく、生態情報を得ようという試みが、非特許文献2及び特許文献2並びに特許文献3に提案されている。
(従来技術3: スピントルク効果を用いた発振素子)
室温で高周波発信できるデバイスとして、GHz帯で発信する、スピントルク効果を用いた発振素子(STO: Spin Torque Oscillator)が提案され、理論、実験による検討が多くなされている。非特許文献3は、その基本概念を示した最初の論文として広く知られている。その後、実際の実験検証が非特許文献4や、それらに続く多くのグループよってなされ、スピントルク効果を用いることで数GHzの周波数において発振可能であることが実験検証されている。
また、スピントルク発信素子のバリエーションとして、非文献文献5に挙げるような、ナノ電流パス部を多数有する構造にすることで、局所的な電流密度を向上させて、発信をおこしやすくスピントルク発信素子(Spin-Torque Oscillator: STO)が提案されている。
米国特許出願公開番号第2008/0255006号公報 特開2006−153852号公報 特開2007−10366号公報 特開2007−124340号公報
D. R. Baselt, USP-5,981,297 (Nov. 9, 1999), "Biosensor using magnetically-detected label" Appl. Phys. Lett. 80, 1, 154 (2002), "Integrated THz technology for label-free genetic diagnostics" J. C. Slonczewski, J. Magn. Magn. Mater. 159, L1 (1996) S. I. Kiselev et al, Nature 425, 308 (2003) M. A. Hoefer et al, Phys. Rev. Lett. 95, 267206 (2005), "Theory of magnetodynamics induced by spin torque in perpendicularly magnetized thin films "
大型医療機関ではなく、町にある簡易クリニック、ひいては自宅での早期判断を可能とするためには、磁性ビーズのようなラベルを用いた検知方法は非常に複雑で、在宅での診断は極めて困難である。しかしながら、ラベルフリーでかつチップ上で簡易的に検体認証を行うことができるバイオセンサは存在しない。
一方、ラベルフリーの診断方法としてTHz波を用いたものがあるが、これはTHz波の発振に大型の装置が必要であり、前記磁性ビーズを用いたバイオセンサ以上に在宅での判断は困難である。つまり、自宅での診断を可能とするためには、ラベルフリーの検体認証方法が必要だが、ラベルフリー認証に適しているTHz波の発振をチップ上で行うことはできない。
また、従来技術としてチップ上で実現できるGHzオーダーの発振素子は存在したが、THzまでの実現は困難であるとされている。
そこで、この発明の目的は、基板上で動作するTHz波の発振を可能とする発振素子を実現し、この発振素子を用いて簡易的に検査を行うことを可能とするラベルフリー型の検体認証素子を実現することにある。
本発明の一態様によれば、
THz波を発生する発振部であって、前記THz波の発振周波数をある周波数帯域内で掃引させて発生する発振部と、
このTHz波が照射される導波路を定め、検体を収容するチャネルと、
前記検体を通過した或いは前記検体から反射されたTHz波を検出する検出部であって、検出THz波の検出周波数を前記周波数帯域で掃引して検出信号を発生する検出部と、
を具備することを特徴とする検体認証素子が提供される。
また、この検体認証素子において、前記発振部及び検出部の少なくとも一方は、第一の磁性層と、この第一の磁性層上の中間層と、この中間層上の第二の磁性層とからなる積層膜構造を有する素子で構成される。
本発明の他の態様によれば、
THz波を発生する発振部と、及び
このTHz波が照射される導波路を定め、検体を収容するチャネルと、
前記検体を通過した或いは前記検体から反射されたTHz波を検出する検出部と、
を具備する素子部と、
前記発振部を制御する発振制御部であって、前記THz波の発振周波数をある周波数帯域内で掃引させる発振制御部と、
前記検出部で前記THz波を検出させる検出駆動部であって、前記THz波の検出周波数を前記周波数帯域で掃引して検出信号を発生する検出駆動部と、
前記周波数帯域内における前記検出信号の波形で前記検体を特定する検体認証部と、
を具備することを特徴とする検体認証システムが提供される。
上記態様によれば、血液、たんぱく質、ウィルス、細菌、DNA、RNA、マイクロRNA、抗体等の生体物質をラベルフリーで検体認証を行うバイオセンサを実現することが可能となる。これらの生体物質は、生体の血液、唾液、尿、便、毛髪、皮脂などから得られる。
また、従来に比べ、高感度で検体認証を行うことが可能になり、さらに従来よりもずっと簡便に認証が行えるため、個人が自宅で行うことも可能となる。
バイオセンサに限らず、環境分析センサとして、水質、雰囲気、土壌に含まれる物質の分析を特殊な研究施設まで毎回持ち込むことなく、現場に近いところで、検体認証を行うことが可能となり、環境対策のフィードバックを迅速に行うことが可能となる。
また、三つめの分類として、これまで検疫所で行う薬、麻薬、覚せい剤等の薬物検査に関しても、薬物同定のために特定の検査分析施設まで持ち込む以前に、検疫所においてその場で簡易的に薬物同定が可能となり、有害な薬、麻薬、覚せい剤の社会への拡散防止に役立つことができる。
図1は、この発明の一実施の形態に係る検体を認証する検体認証素子を備えた検体認証システムを示すブロック図である。 図2は、図1に示された透過検出タイプの検体認証素子を概略的に示す斜視図である。 図3は、図2に示される受信部或いは発振部の構造を概略的に示す分解斜視図である。 図4は、図3に示す素子構造において電流狭窄を説明する為の略図である。 図5は、図1に示される検体認証システムにおける発振部で発振される波の発振周波数f 〜f に対する受信部で検出されるある物質Aに関する検出データであって、辞書データと比較されるべき検出データの一例を示すグラフである。 図6は、図1に示される検体認証システムにおける発振部で発振される波の発振周波数f 〜f に対する受信部で検出されるある物質Bに関する検出データであって、辞書データと比較されるべき検出データの一例を示すグラフである。 図7は、図1に示される検体認証システムにおける認証手順(シーケンス)を示すフローチャートである。 図8Aは、図3に示す素子構造を概略的に示す斜視図である。 図8Bは、図3に示す素子構造の他の構造例を概略的に示す斜視図である。 図8Cは、図3に示す素子構造の他の構造例を概略的に示す斜視図である。 図8Dは、図3に示す素子構造の他の構造例を概略的に示す斜視図である。 図8Eは、図3に示す素子構造の他の構造例を概略的に示す斜視図である。 図9Aは、図8Aに示す素子構造の変形例を概略的に示す斜視図である。 図9Bは、図8Bに示す素子構造の変形例を概略的に示す斜視図である。 図9Cは、図8Cに示す素子構造の変形例を概略的に示す斜視図である。 図9Dは、図8Dに示す素子構造の変形例を概略的に示す斜視図である。 図9Eは、図8Eに示す素子構造の変形例を概略的に示す斜視図である。 図10Aは、図8Aに示す素子構造の他の変形例を概略的に示す斜視図である。 図10Bは、図8Bに示す素子構造の他の変形例を概略的に示す斜視図である。 図10Cは、図8Cに示す素子構造の他の変形例を概略的に示す斜視図である。 図10Dは、図8Dに示す素子構造の他の変形例を概略的に示す斜視図である。 図10Eは、図8Eに示す素子構造の他の変形例を概略的に示す斜視図である。 図11は、図1に示された反射検出タイプの検体認証素子を概略的に示す斜視図である。 図12は、図1に示された検体認証素子がアレイ状に配置された検体認証素子アレイを概略的に示す斜視図である。 図13は、磁界印加機構を備えた図3に示される受信部或いは発振部の構造の変形例を概略的に示す斜視図である。 図14は、図3に示される受信部或いは発振部の他の構造例を概略的に示す斜視図である。 図15は、図3に示される受信部或いは発振部の更に他の構造例を概略的に示す斜視図である。 図16Aは、図3に示される受信部或いは発振部の他の実施の形態に係る単層構造を概略的に示す平面図である。 図16Bは、図3に示される受信部或いは発振部の更に他の実施の形態に係る単層構造を概略的に示す平面図である。 図16Cは、図16Bに示される受信部或いは発振部の変形実施例に係る単層構造を概略的に示す平面図である。 図17Aは、磁界印加機構を備えた図3に示される受信部或いは発振部の他の実施の形態に係る構造を概略的に示す平面図である。 図17Bは、磁界印加機構を備えた図3に示される受信部或いは発振部の更に他の実施の形態に係る構造を概略的に示す平面図である。 図18は、図2に示される検体認証素子の他の実施の形態に係る構造を概略的に示す斜視図である。 図19は、図18に示される検体認証素子を多数配列したチップ構造を概略的に示す斜視図である。 図20Aは、この発明の更に他の実施の形態に係る積層構造に磁界を印加する磁石装置を備えた受信部及び発振部を基板上に配置した検体認証素子を概略的に示す斜視図である。 図20Bは、図20Aに示されるよう検体認証素子における平面配置を概略的に示す平面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る検体を認証する検体認証素子及び検体認証システムを詳細に説明する。
以下の実施の形態の説明においては、検体認証素子は、すべてバイオセンサへの応用に着目してその機能とともに説明する。しかし、検体認証素子で認証対象とされる検体12は、生体物質に限らず、環境物質或いは薬物にも同様に適用可能であり、バイオセンサに限らず、環境分析センサ及び薬物検査センサにあっても同様に適用することが可能であることは明らかである点を明記しておく。
図1は、この発明の一実施の形態に係る検体12を認証する検体認証素子2を備えた検体認証システムの全体構成を示している。また、図2は、図1に示された検体認証素子の配置構造を示し、図3は、図2に示される受信部或いは発振部の構造を概略的に示す分解斜視図である。
図2に示されるように検体認証素子2は、非磁性材料で作られた基板6を備え、この基板6上に互いにチャネル8を介して発振部4−1及び受信部4−2が互いに対向して配置されている。ここで、チャネル8は、発振部4−1からのTHz波が向けられる導波路でもあり、この導波路を通過したTHz波が受信部に向けられている。発振部4−1及び受信部4−2は、チャネル8を定める非磁性材料で作られた枠体10に近接して形成され、その間のチャネル8が数10μm〜数cm程度の範囲で認証すべき検体12に応じて選定されたギャップ長を有するように基板6上に形成されている。発振部4−1及び受信部4−2が対向する面には、非磁性材で作られた保護膜(図示せず)が設けられることが好ましい。保護膜を設けるに代えて、チャネル自体が外部から閉塞された空間或いは流通路に規定されるようにチューブ(図示せず)で作られ、このチューブ内のチャネル8に検体12が浮遊或いは保持配置されても良い。図2に示されるように検体認証素子2は、好ましくは、半導体の製造工程と同様に同一基板6上に集積回路化されて製造される。
検体認証素子2は、図1に破線で示される部分がチップ化されて電気的に接続可能に且つ機械的に脱着可能に検体認証システムに設けられることが好ましい。また、チップ化された検体認証素子2は、検体が外部に漏れ出ることを防止した密閉される構造を有し、使い捨て可能に製造されることがより好ましい。
チャネル8には、固有振動数で共振する検体12としての分子が流通或いは保持されている。この検体12としては、既に述べたよう、たんぱく質、ウィルス、細菌、DNA、RNA、マイクロRNA、抗体等の生体物質を組成する生体分子が該当する。また、検体12としては、水質、雰囲気、土壌に含まれる物質等の有機分子或いは無機分子が想定することができる。更に、検体12としては、検疫所で行う薬、麻薬、覚せい剤等の薬物の分子をも想定することができる。
尚、検体12自体は、溶液中に混入されて浮遊されても良いが、水溶液に検体12が混入しないようにした方が、測定精度が上がるため好ましい。これは、水溶液の水分子はテラヘルツ波が透過しづらいため、受信部4−2における検体12に関する信号検出精度が低下する為である。この観点から発振部4−1及び受信部4−2の間の空間領域には、水分が含まれないように外部環境から遮断されることが好ましい。
発振部4−1は、チャネル8内の検体12の分子に向けてテラヘルツ(THz)波を発生し、検体12の分子の固有振動数に対応するテラヘルツ(THz)波が検体12に照射されると、この波が検体を透過することで変調された波が受信部4−2で検出される。この明細書では、テラヘルツ(THz)波は、0.1THz〜100THzの周波数を有する波を意味するものとする。また、発振部4−1は、図1に示す可変電源14―1で掃引されてテラヘルツ(THz)周波数帯域内で時間とともにTHz周波数が掃引される波を発生する。また、受信部4−2も同様に図1に示す可変電源14―1で掃引されてテラヘルツ(THz)帯の周波数帯域内で同調する周波数が掃引されるように動作される。
発振部4−1及び受信部4−2は、夫々、図3に示すよう下部電極26及び上部電極28間に積層構造27を備えている。この積層構造27は、磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層(ピン層)としての磁化層20、この磁化層20上に積層された中間層22及びこの中間層(スペーサ層)22上に積層された磁性層24から構成されている。磁化層20及び中間層22間に、第1の金属層(図示せず)が介挿され、また、磁性層24及び中間層22間に、第2の金属層(図示せず)が介挿されても良い。中間層22は、絶縁層22Iの厚み方向に沿って絶縁層を貫通する電流パス22Pが設けられている。この電流パス(金属パス)22Pは、ナノメートルオーダの径を有する金属で作られている。より具体的には、この電流パス(金属パス)22Pは、ナノメートルオーダの径を有するFe、Co、Niなどの磁性材料、或いは、Cu、Au、Ag、Alなどの非磁性材料で作られている。磁化層20は、図示しない下地層及びピニング層を介して下部電極26に載置固定される場合もある。ここで、磁化層20は、ピニング層に積層される下部ピン層、Ru層及び中間層22に接触される上部ピン層の積層構造に形成されている。また、磁性層24は、キャップ層(図示せず)を介して上部電極28に積層されている。この磁性層24は、発振部4−1であれば、磁性発振層と称せられるようにTHz帯の周波数を有する波を発振出力する。即ち、下部電極26及び上部電極28との間で磁化層20、中間層22及び磁性層24を含む積層膜の膜面に垂直に電流が流されると、電流は、中間層22の電流パス22Pで狭窄された状態で、もう一方の磁性層に電子が注入される。すると、狭窄された大きな電流密度状態でのスピントランスファートルクにより、磁性発信層としての磁性層24でスピン波励起(磁化の歳差運動)が生じ、THz帯の周波数を有する波が発振出力される。ここで、波の発信周波数は、下部電極26及び上部電極28との間に供給する直流電流(DC電流)の値で定まり、このDC電流を減少或いは増加させることによって発振部4−1から出力される波の発振周波数をTHz帯の周波数域で変化させることができる。電流を増加させることで、発振周波数が大きくなる。ここで、図1において、可変電源14−1及びこの可変電源14−1を制御する電源制御部32は、発振部4−1を電流制御する発振制御を構成し、発振部4−1に対してTHz波の発振周波数をある周波数帯域内で掃引させるように発振させている。
発振部4−1は、電流パスをナノオーダーで絞り込んでいることから、CCP−CPP発振素子(Current-Confined-Path Current-Perpendicular-to-Plane (CPP) Oscillator)と称す。
尚、このCCP−CPP発振素子の詳細に関しては、以下の特許文献4を参照されたい。ここで、特許文献4は、この出願の明細書の一部をなすものとして、その記述内容を取り込むことができるものとする。
本発明者らは、CCP−CPP発振素子において、THz波での発振が生じることに当初気づかなかったが、以下のような原理的な理由から、THz波の発振を生じさせることが可能となるとの結論に至っている。即ち、CCP−CPP発振素子でTHz帯の周波数を有する波を発生することができ、DC電流を減少或いは増加させることによって発振部4−1から出力される波の発振周波数をTHz帯の周波数内で変化させることができることの着想に至っている。
この着想の理由を以下に説明する。
CCP−CPP発振素子では、電流が中間層22の電流パスで絞られ、局所的な電流密度は非常に高い値となる。高い電流密度は、効率的に発振を生じさせることが可能となる。この局所的な電流集中の様子を図4に概念的に示している。
発振素子4−1又は受信素子4−2の素子構造においては、磁性多層膜に膜面に垂直に通電する為に上部電極28及び下部電極26が設けられているが、図4には、図面を簡略化する為にこれら上部電極28及び下部電極26を除去した素子構造及びこの素子構造における電流分布が示されている。図4においては、電流分布は、破線並びに斜線で示されている。図4に示されるように、上部電極28及び下部電極26の一方から磁性多層膜に膜面に垂直に供給された電流は、THz波を発生させるために中間層22のナノ電流パス22Pで狭窄されて他方の電極に向けて流出される。ここで、複数のナノ電流パス22Pが設けられることによって、従来よりも高周波数領域の発振周波数でスピントルクによる高周波発振を効率的に生じさせることができる。
また、図4では、二つの磁性層の間のスペーサ層にCCPを用いた場合の例を示しているが、CCPが第一の磁性層や第二の磁性層の中に挿入された場合にあっても本質的には同様である。従って、後に説明するように、図8〜図10に示す他の実施例に係る構造にあっても同様な効果を実現することができることを意味している。
この局所的な巨大電流集中の効果については、特許文献4に記載されると同様の物理効果に起因している。本発明者らは、この現象に起因して、特許文献4に記載していない想定外の別の現象が生じる可能性があることにこの発明をするに当たって気がつくに至っている。具体的には、このような巨大電流密度を有する効率的な発振箇所がCCP−CPPのように近接して多数設けられている構造では、夫々のCCPで発振する波が近接したCCP間で干渉し、この干渉で特殊なスピン波モードが誘起され、その特殊なスピン波によって発振周波数が上昇されることとなる。これは、非特許文献5で記載しているような、単純にナノ電流パスのサイズを小さくしていくことで発振周波数を上げようとする試みとは全く異なる別の効果であるため、複数のCCP近傍のスピン波の干渉効果として、1THz以上の発振周波数が実現できる可能性がある。もちろん、発振周波数はCCPのサイズによって変化することが想定されるが、たとえCCPのサイズが同じであったとしても、本概念によれば、各CCP間の距離設計によって発振周波数が変化することを意味する。つまり、スピン波の干渉効果によって発振周波数があがる可能性がある。CCPのサイズ及び各CCP間の距離に依存する発振周波数の値は、複雑な関係となるため詳細については、数値計算を必要とする。いずれにしても、CCP−CPP発振素子では、複数のナノ電流パスの相互作用によって発振周波数が変化することは、重要なポイントとなる。
また、CCP-CPP素子はさらなる別の効果として、ナノ電流パスの個数が増え、磁性層の発振領域も増えるため、発振出力の増大が見込めるという効果も期待できる。この効果については、特許文献4に記載したものと同様の効果である。一般的に通常のSTOにおいては、発振出力が小さいという問題があるため、CCP−CPP素子において発振出力が増大するということは実用上大きなメリットのある効果の一つである。
巨大な電流密度を起こすために、CCP構造を用いないで非特許文献4のようなCuスペーサ層や、その他多くの報告がなされているMgOトンネルバリア層をスペーサ層とする構造において素子全体に巨大電流密度を流すと、素子全体が加熱し、元素拡散や素子が溶けてしまう問題がある。また、発振箇所は膜全体となってしまうため、発振箇所どうしの相互作用も生じないため、本発明のCCP−CPP素子のような特殊なスピン波は生じず、発振周波数をTHzオーダーの帯域までにするようなことは到底実現できるものではない。ところが、CCP−CPP発振素子では、巨大電流密度は局所的なものであるため、CCPの周囲では放熱し、元素拡散が生じることもなければ、素子が溶けてしまうという問題も生じない。
また、非特許文献5のような、1つのナノ電流パスだけしか形成されない構造においては、CCP間のスピン波モードは形成されず、一つのホールに起因した発振現象のみが生ずるにすぎない。このような構造にあっては、0.2THz以上のTHz波は発振されず、発振周波数の上限も極めて限られたものとなり、かつ発振出力も小さい。
図3に示した構造を一例として参照して、具体的な材料、膜厚などの例を以下に挙げる。第1磁性層20、第2磁性層24については、Fe、Co、Niなどを含む磁性層で構成され、膜厚は1nm〜30nm程度の範囲が考えられる。また、スペーサ層22については、絶縁層22Iは、Al、Zr,Mg,Hf、Si,Ta、Ti,Cr、W,Mo,Mn、Fe、Co、Niなどの酸化物、窒化物などで作ることができる。また、ナノ電流パス22Pの材料としては、電流を流すことのできる金属材料が考えられる。具体的には、Cu、Au、Au、Ag、Alなどの従来のMR効果を生じさせることできる材料や、Fe,Co,Niなどの磁性元素材料が挙げられる。前述のような金属材料が好ましいが、場合によってはPt,Pd、Ru,Irなどの貴金属層材料なども考えられる。また、スペーサ層22の膜厚としては、1nm〜5nm程度に定められると考えられる。
尚、上述したようにTHz光発振素子で構成される発振部4−1及び受信素子で構成される受信部4−2を同一チップ上に配置して検体認証素子を実現している。上述した以外の本発明のさらなる特長として、発振素子の構造とほぼ同様のCCP−CPP素子を受信素子として用いて、具体的な受信手段を解決したことがある。特殊なTHz波特有の検知システムを用いなくても、発振素子と同様の構成を用いて、CCP−CPP素子でTHz波の検知を可能としている。
受信部4−2が図3に示すような積層構造を有している場合には、発振部4−1から検体を介して到達したTHz波が受信素子4−2の積層構造体内に導かれる。また、受信部4−2には、発振部4−1に供給される電流に同期して受信部4−2の下部電極26及び上部電極28との間に電流が供給されて下部電極26及び上部電極28との間に生起される内部抵抗から電圧が測定される。ここで、検体12の分子の固有振動数に対応するテラヘルツ(THz)波が検体12に照射されると、この波が検体を透過することで変調された波が受信部4−2に導入されるとその内の内部抵抗を変化させることとなる。この抵抗変化と共振周波数との関係から検体12の物質が特定される。
上述の原理をもう少し具体的に以下に説明する。初めに、発振素子4−1をTHz波で連続発振させるために、発振素子4−1には、ある固定電流値を有する電流が発振素子4−1に通電される。後述するように、通電する電流値に応じて発振周波数が変化される。このように電流値に応じて発振周波数が変化する特性は、磁性多層膜を用いた発振素子の共通の特徴だが、0.1THz以上のTHz領域でも実現できることが本発明の特徴である。発振素子4−1では、電流供給に応じてその電流値において発振され、ある振幅(A=Aa 1)及びある周波数(f=fa 1)を有する波が発振出力される。このTHz波が検体12に照射され、その透過波若しくは反射波が受信素子4−2で検知される。図2に示す発振素子4−1及び受信素子4−2の配置では、透過波が受信素子4−2で検知される。検体12に波が照射されると、この検体12の固有振動周波数の影響を受けて、発振素子4−1から発せられたTHz波は、振幅及び周波数がともに変化する場合がある。検体を通過後の振幅、および周波数を(A=A0 1、f=f0 1)とする。
このようにTHz波が検体12を透過して振幅及び周波数(A=A0 1、f=f0 1)がともに変化される状態を受信素子4−2で検知するために、受信素子4−2においては、受信素子4−2に供給される電流の通電値が掃引されて連続的或いは階段的に変化される。受信素子4−2への電流値が変更されることによって、受信素子4−2における発振周波数がf=f0 1の周波数近傍の周波数となったときに、検体12から到達するTHz波で受信素子4−2の発振状態が最も干渉を受けることになり、受信素子4−2の特性が変化を受ける。また、この変化の程度は、検体12を透過したTHz波の振幅によって影響の程度が変化される。従って、受信素子4−2では、振幅A=A0 1での影響も受けるため、振幅A0 1の情報も検知されることになる。一方、受信素子4−2の発振周波数を変化させても、発振周波数が周波数f=f01と全くかけ離れた周波数であれば、受信素子4−2の発振状況は、何も影響を受けず、検体12からの透過波が受信素子4−2に入射されていない状態と全く同一となる。受信素子4−2の発振が影響を受けたときには、受信素子4−2の発振している磁性層の磁化方向が変化する。これは、発振とは、磁性層の磁化角度による変化によるものだからである。つまり、受信素子では、磁化固着層と発振している発振層の相対的な磁化角度にが変化することによって受信素子4−2の内部抵抗が異なってくる。なぜなら、磁性層1と磁性層2の相対角度によって、この素子の抵抗の値が変わるためである。発振層は図3でいうと、第1磁性層20、第2磁性層24のいずれの場合もあるが、第1磁性層20が磁化固着層だとすると、第2磁性層24が発振層ということになる。発振層の磁化方向が検体からのテラヘルツ波によって変化した場合、受信素子4−2の抵抗変化、または電圧変化として読み取ることができる。これは、GMR効果或いはTMR効果等の磁気抵抗効果を用いることで抵抗変化を検知することと同じある。この抵抗変化はセンス電流を通電しているため、電圧変化として読み取ることが可能となる。
図1において、可変電源14−2及びこの可変電源14−2を制御する電源制御部32は、受信部4−2でTHz波を検出する為の受信部4−2を駆動する検出駆動部を構成している。この検出駆動部が受信部4−2を駆動してTHz波の検出周波数を周波数帯域で掃引して、検出信号を発生させるように受信部4−2を発振させることができる。
上述した検出において、発振素子4−1の通電値が連続的に変えられることによって、発振素子4−1の発振周波数の変化に基づく、検体12の透過特性の変化を測定することが可能となる。つまり、4−1の発振部4−1の発振周波数を固定した状態で、受信部4−2の周波数をスキャンすることで、検体の情報を検知する。このデータは、予め測定されて用意され、検体12毎の周波数特性が辞書データとして検査システムの不揮発性メモリ38に保持されている。物質A及びB毎の検体12から得られた図5及び図6に示すようなデータは、この辞書データに照合されて、検体12が認証されることとなる。即ち、周波数に依存した透過特性の変化で、検体12の特定が可能となり、検体12を認証することが可能となる。
図5及び図6は、夫々物質A及び物質Bを検査対象とした際の受信素子4−2で検出されるデータを示している。ここで、物質Aと物質Bで検出データが異なるため、これらのデータを辞書データと照合することで、物質Aと物質Bとを認証することが可能となる。この図5及び図6に示されるデータの各グラフは、発振部4−1で可変される周波数fa 〜f の数だけ受信素子4−2で用意される。即ち、ある周波数fa のTHz波が発振部4−1から出力され、その周波数fa のTHz波が被検体12に照射されている間に受信素子4−2に流れる電流が掃引されて受信素子4−2の抵抗値或いは電圧値の変化が検出される。同様に、ある周波数f のTHz波が発振部4−1から出力され、その周波数f のTHz波が被検体12に照射されている間に受信素子4−2に流れる電流が掃引されて受信素子4−2の抵抗値或いは電圧値の変化が検出される。
従って、図5及び図6には、周波数fa 〜f のN個に関する受信素子4−2に流れる電流(横軸)に対する受信素子4−2の抵抗値或いは電圧値の変化(縦軸)のグラフが示されている。この図5及び図6のデータについては、後に説明するより具体的な検体認証動作で参照され、より理解が深められる。
図1に示すように、検体認証システムは、上述したように発振部4−1及び受信部4−2を動作させるために、発振部4−1及び受信部4−2が夫々可変電源14−1,14−2に接続されている。この可変電源14−1,14−2は、電源制御回路32からの制御信号に従って発振部4−1及び受信部4−2に供給される電力が同期して制御される電源制御回路32の発信制御部からの発振制御信号が可変電源14−1に与えられ、可変電源14−1が発振部4−1から発振されるTHz波の発信周波数をある帯域内で掃引させて発生させるように発振部4−1を作動する。また、電源制御回路32の検出制御部からの検出制御信号が可変電源14−2に与えられ、可変電源14−2が検出部4−2で検出されるTHz波の発信周波数を当該帯域内で掃引させて検出信号を発生させるように検出部4−2を作動させる。
このような演算制御部(CPU)40の制御下である電源制御回路32からの制御信号に従って、ある電圧が発振部4−1の下部電極26及び上部電極28との間に印加されて発振部4−1内に電流が注入される。この電流注入に伴い、この発振部4−1は、あるTHzの発振周波数を有する波を出力する。演算制御部(CPU)40の制御下で、この発振部4−1に流れる電流は、インタフェース34で検出電流信号に変換されてメモリ36に一時的に記憶される。演算制御部(CPU)40において、この検出電流信号は、不揮発性メモリ38の辞書データに参照されて検出電流に対応した発信周波数に変換されてメモリ36に格納される。
発振部4−1に印加される電圧は、階段状に上昇或いは降下されるように変化され、この電圧変化に伴い発振部4−1から出力される波の周波数が変化される。発振部4−1を流れる電流を検出する検出信号も階段状に変化されてこの変化に従ってメモリ36に格納される発信周波数の値も変化され、この発振周波数の値が受信部4−2から抵抗検出信号に関連付けられてメモリ36に記憶される。
受信部4−2においても、演算制御部(CPU)40の制御下にある電源制御回路32からの制御信号に従って、ある電流が発振部4−1の下部電極26から上部電極28向けて供給されて発振部4−1が動作状態に維持される。この状態で、発振部4−1からあるTHzの発振周波数を有する波が受信部4−2に導入されると、演算制御部(CPU)40の制御下で、その受信部4−2の電圧がインタフェース34で検出電圧信号に変換されてメモリ36に一時的に記憶される。検出電圧信号は、演算制御部(CPU)40において受信部4−2の内部抵抗に変換されてメモリ36に格納されても良い。発振部4−1に印加される電流または電圧の変化に同期して発振部4−1内に供給される電流も階段状に上昇或いは降下されるように変化される。この発振素子に供給される電流、または電圧の値が、物理的にはTHzの発振周波数に関連付けられているものであるため、検体の周波数スペクトルを取得する基本パラメータとしてメモリ36に格納される。
既に述べたように、検体12の分子の固有振動数に対応するテラヘルツ(THz)波が検体12に照射されると、この波が変調されて変調された波が受信部4−2に導入されるとその内の内部抵抗或いは検出電圧信号が変化されることとなる。この内部抵抗或いは検出電圧信号の変化もTHzの発振周波数に関連付けられてメモリ36に格納される。
メモリ36には、発振部4−1から発振される発振周波数と内部抵抗或いは検出電圧信号の変化が記憶される。この記憶された発振周波数と内部抵抗或いは検出電圧信号の変化は、検体12に特有な変化を示す。従って、予め不揮発性メモリ38の辞書データに物質毎の発振周波数と、その発振周波数ごとの受信素子の内部抵抗或いは検出電圧信号の受信素子に通電する電流に対する変化、例えば、図5及び図6に示すような取得データは、物質Aと物質Bとでは異なるため、これらのデータを辞書データと照合することによって、検体12がいずれの物質であるかを識別することができる。
上述したメモリ36、不揮発性メモリ38及び演算制御部(CPU)40は、周波数帯域内における検出信号の波形で検体を特定する検体認証部を構成している。
上述したように、検体12を一意に認証するためには、検体12の透過もしくは反射の周波数スペクトルデータを予め取得して辞書データとして不揮発性メモリ38に格納されることが必要とされる。そして、検出された周波数スペクトルデータとあらかじめ有しているデータベースの辞書データと照合がされて検体12が認証される。即ち、検出された周波数スペクトルデータが辞書データに照合されることで、検体12が何であるかを判別することが可能となる。つまり、THz光を用いて、分子レベルでの固有振動周波数がこの周波数領域であることを用いて、検体12の指紋スペクトル認証を行い、検体12を認証している。
尚、磁性多層膜を用いた発振素子4−1および受信素子4−2を用いることによって、検体12が配置される同一基板6上に発振素子4−1と受信素子4−2を配置することが可能となる、飛躍的に安価にTHz波による検体認証を行うことが可能となる。発振部、受信部、検体をすべて同一基板上において配置し、コンパクトで安価なバイオセンサを実現することが可能になる。
尚、図5及び図6を参照して受信素子4−2の電流を変化させて受信素子4−2の周波数を変化させているが、簡便なシステムでは、受信素子4−2に供給される電流が一定で周波数が固定されていても良い。このようなシステムでは、発振素子4−1からの掃引周波数に対する受信素子4−2で設定された周波数での測定が可能となる。このようなシステムは、特定の物質の検出に利用される。つまり、これまでの実施例では一般的な形態として記載したため、発振素子4−1のひとつ周波数に対して、受信素子4−2の周波数をスキャンして変化させていたが、場合によっては受信素子4−2の周波数のスキャンをなくす実施例も場合によっては可能である。
図1に示される検体認証システムにおける認証手順(シーケンス)を図7に示すフローを参照して説明する。
認証手順が開始されると、初めに、検査検体12が図2に示すセンサチップ上のチャネル8内に配置される。(ステップS10)ここで、検体12は、血液、唾液、汗のような液体、それらを人体から採取後、成分分離措置した液体の場合もある。液体の場合には、検査検体12がチップ上の配置された後、そのまま発振信号が照射される領域のチャネルに保持されても良く、また、検査検体12がチップ上の配置された後、移動機構によって液体としてチップ上を移動され、発振信号が照射されるチャネル上の領域に移動されても良い。また、検体は、液体だけでなく、固体であっても良い。検体が固体である場合には、当然に発振信号が照射される領域に検査検体12が配置される。
次に、ある一つの発振条件が設定され、発振素子4−1からの波が検査検体12に照射される。(ステップS12)発振された波は、直接的に検体12に照射されても良く、或いは、発振された波が素子内で反射されて間接的に検体12に照射されても良い。直接照射及び間接照射のいずれの場合にあっても、発振波が検査検体12に照射されるように発振素子4−1及び受信素子4−2の配置が調整されることが必要とされる。
検査検体12に発振波が照射されている状態において、受信素子4−2の内部抵抗、若しくは、電圧値及び電流値等が測定され、メモリ36に保存される。
このとき、検体を透過、もしくは反射された波の情報も最も効率的に検知するため、受信素子の電流値を変化させて、受信素子の発振条件を変化させてデータを取得する。(ステップS14)
発振素子4−1の発振条件を変更させて、発振素子4−1を発振させる。(ステップS16)既に検査検体12は、チップ上に配置されているので、発振条件が異なる信号が、検査検体12に照射されることになる。具体的に変える条件は、発振素子4−1の電流値或いは発振素子4−1に印加される印加磁界の大きさ等が変えられる。
ステップS16の状態において、受信素子4−2の抵抗、若しくは、電圧、電流値等が測定され、測定データがステップS14と同様にメモリ36に保存される。このとき、ステップS14と同様に、受信素子の電流値を変化させて、受信素子の発振条件を変化させてデータを取得する。(ステップS18)
ステップS18に続くステップS19においては、このステップS16及びステップS18が必要な回数だけ繰り返されて必要回数のデータが取得される。ステップS16及びステップS18が繰り返されることで、発振素子4−1の発振周波数に対する受信特性が測定される。即ち、周波数スペクトルデータが取得される。
ステップS16及びステップS18の測定が必要回数だけ繰り返されると、ステップS20に移行される。ステップS16及びステップS18の測定で得られたデータは、発振条件を変えた際の受信素子4−1に対するデータ依存性という形のスペクトルデータとして整理される。物理的には、発振素子4−1の条件依存性とは、発振素子4−1の周波数依存性であるが、実際に実験上変えているパラメータとしては、通常は発振素子4−1の電流値依存性に相当している。しかしながら、発振素子4−1に印加する磁界を変えている場合には、外部磁界依存性という場合もある。また、受信素子4−1の特性としては、通常、抵抗値、つまりはあるセンス電流値での電圧測定値というデータとして取得される。
次に、ステップS20で整理したデータと、既に装置側で保有している辞書データとが照合される。(ステップS21)この照合によって、物質は、物質特有の指紋スペクトルデータを有することから、物質の一意の認証が可能となる。
図2に示される認証素子と略同様な実験システムを利用して実験によって図5及び図6に示されると同様のデータが予め獲得され、図1に示される不揮発性メモリ38に格納されている。この辞書データと測定されたデータとの照合を行うことによって、検体の認証が可能となる。
上述した種々の実施の形態で説明した発振素子4−1及び受信素子4−2の詳細について、下記に補足し、その種々の実施例について説明する。
これら発振素子4−1及び受信素子4−2としては、既に説明されるように、CCP−CPP構造を有するスピントルク発振素子が用いられる。
発振素子と受信素子は、基本的には同じ周波数領域で見ることになるので、ほぼ同一の構成が良いと考えられる。発振素子から検体12に照射され、検体12を透過することによって周波数のシフトが生じるので、受信素子で検知する周波数は、必ずしも発振素子の周波数と一致するものではないが、検体12を通過することに伴う周波数シフトはそれほど大きいものではないと考えられるため、発振素子4−1と受信素子4−2の構造はほぼ同様の構成で用いることができる。
発振素子4−1又は受信素子4−2の素子構造は、図3に示す構造に限らず、図8A〜図8Eに示される種々の配置構造が採用されても良い。
図8A示され実施例に係る積層構造では、図3に示す構造と同様に磁化層20に相当する第1の磁性層F1及び磁性層24に相当する第2の磁性層F2間に中間層22に相当するスペーサ層Sが設けられ、スペーサ層Sに電流パス22Pに相当するナノ電流狭窄部が設けられてスペーサ層Sがナノ電流パス層Xの機能をも有している。第1及び第2の磁性層F1、F2は、無通電時においては、図8Aに示されるように矢印で示される方向に磁化方向が向いている。また、スペーサ層(S)の電流パス22Pで絞り込まれた電流は、第1の磁性層(F1)と第2の磁性層(F2)で高い電流密度となる。
図8Bに示される実施例に係る構造では、ナノ電流狭窄部22Pを有するナノ電流パス層Xが第2の磁性層F2上に設けられ、また、第1及び第2の磁性層F1、F2間にスペーサ層Sが設けられている。第1及び第2の磁性層F1、F2は、無通電時においては、図8Bに示されるように矢印で示される方向に磁化方向が向いている。図8Bに示される構造では、スペーサ層S及びナノ電流パス層Xが分離されて設けられている。図8Bに示される構造では、ナノ電流パス層Xで電流が絞り込まれ、第2の磁性層(F2)でナノオーダーに電流が絞込まれる。
図8Cに示される実施例に係る構造では、ナノ電流狭窄部22Pを有するナノ電流パス層Xが第1の磁性層F1の下に設けられ、また、第1及び第2の磁性層F1、F2間にスペーサ層Sが設けられている。第1及び第2の磁性層F1、F2は、無通電時においては、図8Cに示されるように矢印で示される方向に磁化方向が向いている。図8Cに示される構造では、図8(b)と同様に、スペーサ層S及びナノ電流パス層Xが分離されて設けられている。図8Cに示される構造では、ナノ電流パス層Xで電流が絞り込まれ、第1の磁性層(F1)でナノオーダーに電流が絞込まれる。
図8Dに示される実施例に係る構造では、第1の磁性層F1が二つの磁性層F1−1及びF1−2に分離され、この二つの磁性層F1−1及びF1−2間にナノ電流狭窄層Xが配置されている。また、第1及び第2の磁性層F1―2、F2間にスペーサ層Sが設けられている。第1及び第2の磁性層F1―1、F1−2、F2は、無通電時においては、図8Dに示されるように矢印で示される方向に磁化方向が向いている。図8Dに示される構造では、図8B及び図8Cと同様に、スペーサ層S及びナノ電流パス層Xが分離されて設けられている。図8Dに示される構造では、ナノ電流パス層Xで電流が絞り込まれ、第1の磁性層(F1-1、F1-2)でナノオーダーに電流が絞込まれる。
図8Eに示される実施例に構造では、第2の磁性層F2が二つの磁性層F2−1及びF2−2に分離され、この二つの磁性層F2−1及びF2−2間にナノ電流狭窄層Xが配置されている。また、第1及び第2の磁性層F1、F2―1間にスペーサ層Sが設けられている。第1及び第2の磁性層F1、F2−1、F2―2は、無通電時においては、図8Eに示されるように矢印で示される方向に磁化方向が向いている。図8Eに示される構造では、図8B、図8C及び図8Dと同様に、スペーサ層S及びナノ電流パス層Xが分離されて設けられている。図8Eに示される構造では、ナノ電流パス層Xで電流が絞り込まれ、第1の磁性層(F2-1、F2-2)でナノオーダーに電流が絞込まれる。
上述した図8A〜図8Eに示された構造においても、上部電極28及び下部電極26の一方から磁性多層膜に膜面に垂直に供給された電流は、THz波を発生させるために複数のナノ電流パス層Xのナノ電流パス22Pで狭窄されて他方の電極に向けて流出される。従って、スピントルクによる高周波発振を効率的に生じさせることができる。
上述した図8A〜図8Eに示された実施例に係る構造においては、第1及び第2の磁性層F1,F1―1、F1−2、F2,F2―1及びF2―1における磁化の方向が膜面に平行な方向に生じている。しかし、図9A〜図9Eに示されるように第2の磁性層F2、F2―1及びF2―1においては、図8A〜図8Eに示された構造と同様に、磁界の方向が膜面に平行な方向に生じるように磁化されているに対して、第1の磁性層F1,F1―1、F1−2における磁界の方向が膜面に垂直な方向に生じるように磁化されても良い。また、図10A〜図10Eに示されるように第1及び第2の磁性層F1,F1―1、F1−2、F2,F2―1及びF2―1では、磁界の方向が膜面に垂直な方向に生じるように磁化されても良い。図9A〜図9E及び図10A〜図10Eに示される構造は、磁界の方向が異なるのみで図8A〜図8Eに示される構造と同一であるので、同一箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
図3、図8A〜図8E、図9A〜図9E及び図10A〜図10Eに示された構造では、単一の中間層22或いは単一のナノ電流パス層Xが設けられているが、複数のナノ電流パス層Xが設けられ、各ナノ電流パス層Xにナノ電流パス22Pが設けられ、複数個所で電流が狭窄されても良い。
図11に示すように検体認証素子2は、既に説明したように検体12を透過した波の替わりに、検体12で反射された波が検出される構成としても良い。この図11に示す素子2では、発振部4−1から発生された波が反射部4−3で反射されて受信部4−2に向けられるように反射部4−3が発振部4−1及び受信部4−2に対向するように配置されている。この配置では、図1に示す配置とは異なり、検体12で波が吸収されて生ずる吸収スペクトルを検出するのではなく、検体12で波が反射されて生ずる反射スペクトルが受信部4−2で測定される。この配置では、反射部4−3は、発振部4−1及び受信部4−2とは反対側の検体12の背面側に配置され、THz波を反射するような材質で形成されている。
図12には、検体認証素子アレイが示されている。この図12に示される検体認証素子アレイでは、夫々が発振部4−1及び受信部4−2のペアで構成される検出素子2−1〜2−nが基板6上にアレイ状、例えば、行列に配置されている。検体認証素子アレイは、図1に示されると同様に電源制御回路32で制御される可変電源14−1、14−2に接続され、また、インタフェースを介して演算処理部40及びメモリ36に接続されている。また、各検出素子2−1〜2−nのチャネル8は、互いに分離されても良く、或いは、互いに連通されても良い。互いに分離されたチャネル8を有する構造では、同一の検体12が各チャネル8に分配され、また、互いに連通されたチャネル8を有する構造では、検体12が各チャネル8に外部から分配されるように与えられても良く、或いは、各チャネル8に分配されるように検体12がチャネル8間を流通されても良い。
図12に示されるアレイでは、検出素子2−1〜2−nの発振部4−1が夫々互いに異なる帯域のTHz周波数を有する波を発生し、この異なる帯域のTHz周波数で広帯域のTHz周波数帯域をカバーしている。また、検出素子2−1〜2−nの受信部4−2が夫々互いに異なる帯域のTHz周波数を検出するように動作されて検出信号を発生し、この異なる帯域のTHz周波数で広帯域のTHz周波数帯域を同時に検出することができる。従って、ある検体12が各チャネル8に分配され、検出素子2−1〜2−nが作動されると、検出素子2−1〜2−nからの信号で広帯域のTHz周波数帯域におけるある検体12の吸収スペクトルを検出し、検体12を特定することができる。即ち、発振部4−1における周波数掃引或いは受信部4−2における電流掃引或いは電圧掃引を必要とせずに、図7A或いは図7Bに示すような検出データを検出することができる。
尚、発振素子4−1或いは受信素子4−2の各部のディメンション等の構造設計が変えられても良い。また、同一の検体が各チャネル8に分配されず、異なる複数の検体12が異なるチャネル8に分配されて複数の検体12を同一基板6上の複数の検出素子2−1〜2−nで同時に認証するようにしても良い。このように複数の検体12を検出する際には、上述した実施の形態で述べたように複数の検出素子2−1〜2−nにおいて周波数掃引、電流掃引及び又は電圧掃引が実施されても良い。
図13は、この発明の他の実施の形態に係る発振素子4−1の積層構造27又は受信素子4−2の積層構造27に外部から磁界を印加する機構を備えた素子構造を示している。この素子構造においては、下部電極26及び上部電極28間に積層構造27が配置され、この積層構造27の両側に保磁力の大きいハード磁性層膜54―1、54−2が配置され、ハード磁性層膜54―1、54−2と積層構造27との間及びハード磁性層膜54―1、54−2と下部電極26及び上部電極28との間には、絶縁膜52が介在されている。このようにハード磁性層膜54―1、54−2を備える素子構造においては、磁界を積層構造27に向けて安定に印加することが可能なことから、安定な発振を実現することが可能となる。
図3及び図13に示される素子構造では、積層構造27の上下面に上部電極28及び下部電極26が配置されているが、図14に示されるように積層構造27の両側に第1及び第2電極26、28が配置されても良い。図3及び図11に示される素子構造は、膜面垂直通電型と称せられ、積層構造27の膜面に垂直に電流が注入されてスピントルクが生じているが、図14に示される素子構造は、膜面内通電型と称せられ、積層構造27の膜面沿って流れる電流によってスピントルクが生起される。このように膜面内通電型に発振部4−1及び又は受信部4−2が形成されても良い。
図15は、図12に示す膜面内通電型の素子構造の変形例を示している。図15に示す素子構造では、積層構造27の両側に積層構造27に磁界を供給するハード磁性部材56−1、56−2が配置され、このハード磁性部材56−1、56−2上に第1及び第2電極26、28が配置されている。この構造においても、一方の第1及び第2電極26、28からハード磁性部材56−1、56−2を介して他方の第1及び第2電極26、28に向けて積層構造の膜面に平行に電流が供給される。外部から安定に積層構造27に磁界が印加され、そして積層構造27内に電流が流れることによってスピントルクが生起される。
図16A、図16B及び図16Cは、この発明の更に他の実施の形態に係る発振素子4−1又は受信素子4−2の平面形状を示している。図16Aに示される構造においては、単層膜構造60が基板6上に形成され、単層膜構造60の両側がこの単層膜構造60に電流を供給する第1電極26及び第2電極28に接続される。単層膜構造60は、絶縁層62中に第1及び第2の磁性層58−1、58−2が埋め込まれている。そして、第1及び第2の磁性層58−1、58−2は、夫々第1電極26及び第2電極28から延出され、その先端部58A、58Bが次第に幅を減少するように先鋭に形成され、その先鋭端がピンポイントで互いに連結されている。このように第1及び第2の磁性層58−1、58−2が形成される場合には、この第1及び第2の磁性層58−1、58−2を流れる電流は、先端部58A、58Bの先鋭端でナノ電流に狭窄されてスピントルクが発生される。図16Aに示される構造は、基板上に平坦構造に形成することができ、この構造を採用した発振素子4−1及び受信素子4−2を備えた検知装置を平坦な構造とすることができる。結果として、センサの小型化並びに平坦化が可能となる。
図16Aに示される構造では、十分な強度の波の発生が望めない虞がある場合には、図16B及び図16Cに示すような配列構造に形成されても良い。図16Bに示されるにおいては、同様に単層膜構造60が基板6上に形成され、単層膜構造60の両側がこの単層膜構造60に電流を供給する第1電極26及び第2電極28に接続されている。単層膜構造60では、絶縁層62中に複数の第1の磁性層58−1が互い略平行に埋め込まれ、同様に絶縁層62中に複数の第2の磁性層58−2が互い略平行に埋め込まれている。そして、第1及び第2の磁性層58−1、58−2は、夫々第1電極26及び第2電極28から延出され、その先端部58A、58Bが次第に幅を減少するように先鋭に形成され、その先鋭端がピンポイントで互いに連結されている。このように多数の第1及び第2の磁性層58−1、58−2が並列されて形成される場合には、この第1及び第2の磁性層58−1、58−2を流れる電流は、多数の先端部58A、58Bの先鋭端でナノ電流に狭窄されて複数の箇所でスピントルクが発生される。図16Aに示される構造と同様にこの図16Bに示される構造では、基板上に平坦構造に形成することができ、この構造を採用した発振素子4−1及び受信素子4−2を備えた検知装置を平坦な構造とすることができる。結果として、センサの小型化並びに平坦化が可能となる。
図16Cに示す配列構造においては、図16Bに示す配列構造における互いに連結される先端部58A、58Bの先鋭端間が非磁性層セグメント64を介して接続されている。この構造では、ナノ電流が通過するナノ電流パス部が非磁性層セグメント64で形成されることとなる。ナノ電流パス部としての非磁性層セグメント64でナノ電流に狭窄され、複数の箇所でスピントルクが発生される。図16Bに示される構造と同様にこの図16Cに示される構造では、基板上に平坦構造に形成することができ、この構造を採用した発振素子4−1及び受信素子4−2を備えた検知装置を平坦な構造とすることができる。結果として、センサの小型化並びに平坦化が可能となる。
図16Aから図16Cに示された構造では、単層膜構造60で形成される旨を説明したが、この単層膜構造60が絶縁層を介して積層されて第1電極26及び第2電極28に接続されても良いことは明らかである。
図17A及び図17Bに示すように、発振素子4−1或いは受信素子4−2に外部磁界を印加するために配線ライン70−1、70−2が発振素子4−1或いは受信素子4−2に設けられても良い。
図17Aに示す実施例に係る構造においては、積層膜構造27の膜面に垂直な方向に沿って電流磁界印加用の配線ライン70−1、70−2が延出されている。この配線ライン70−1、70−2には、矢印の方向に電流が流れ、その周囲の円周方向に可変磁界が形成される。この可変磁界は、配線ライン70−1、70−2に流れる電流に依存して形成される。その結果、積層膜構造27の側面から膜に沿って積層膜構造27内に可変磁界が侵入され、磁性層20,24が磁化される。従って、積層膜構造27内において生ずるスピントルクは、与えられる可変磁界に依存することとなる。
尚、図17Aにおいては、二本の配線を用い、それぞれが逆の電流方向にすることによって、素子にかかる磁界の向きを一定にしている。しかし、配線は、必ずしも二本でなくても良く、一本の配線でも良い。また、磁界を印加するための配線の周りに、図示していない磁性材料を形成し、磁界を強めるようにしても良い。
図17Bに示す実施例に係る構造においては、積層膜構造27の膜面に平行な方向に沿って電流磁界印加用の配線ライン70−1、70−2が延出されている。この配線ライン70−1、70−2には、矢印の方向に電流が流れ、その周囲の円周方向に磁界が形成される結果、同様に積層膜構造27の側面から膜に沿って積層膜構造27内に磁界が侵入され、磁性層20,24が磁化される。
図18は、図2に示される検体認証素子2の好ましい変形例が示されている。この検体認証素子2では、発振素子4−1及び受信素子4−2の周囲の側面は、夫々チャネル8に面する側面を除いて夫々THz波を遮蔽するためのシールド72−1,72−2で囲堯されている。従って、発振部4−1及び受信部4−2が周囲の環境の影響を受けることなく、シールドされている。
尚、発振部4−1及び受信部4−2とシールド72−1,72−2との間で電流がリークされることを防止する為にその間には、絶縁層(図示せず)が介在されることが好ましい。
図19に示されるように、多数の図18に示される検体認証素子2が基板6上に複数列に亘って配列されて検体認証チップ90が構成されることが好ましい。この検体認証チップでは、検体認証素子2のチャネル8が直線状に延出されて検体流出路80を形成し、検体注入部82、84から注入された検体12、例えば、溶液に混入された検体が他の検体注入部84、82に向けて流出されるように構成されても良い。
ここで、検体認証チップ90の上面は、蓋部(図示せず)で覆われ、検体流出路80が密閉されている。また、検体注入部82、84の一方或いはいずれにも検体12が充填され、検査開始に当たって注入部82、84から検体流出路80に流出されるように注入部82、84にゲートが設けられ、検体流出路80において自然に検体12を含む溶液が流出するように検体流出路80に傾斜が設けられても良い。また、図示しない供給機構によって検体12を含む溶液が検体流出路80内を循環することができるように構成しても良い。
図19に示される検体認証チップ90においては、図12に示す検体認証素子アレイと同様に動作されて検出データを得ることができる。
尚、検体認証チップ90の上面が蓋部で覆われている構造においては、検体流出路80が密閉されるのみでなく、その内が真空に維持され、検体注入部82、84も密閉されてその内が真空に維持されていても良い。このような検体認証チップ90では、注射針を有する注射器のような注入部を有する検体注入器具(図示せず)(検体12を入れるサンプルホルダー)で検体注入部82、84内に注入部を差し込み、検体12を外気に触れさせることなく検体認証チップ90内に供給することができるように構成しても良い。
更に、図2、図11、図12及び図20Aに示す検体認証素子にあっても、チャネル8が密閉され真空とされるカプセル構造に形成されることが好ましい。そして、検体12が外部環境に触れないように、このカプセル構造に検体注入器具(図示せず)から検体12がチャネル8に供給されることがより好ましい。
ここで、カプセルを真空にする構造が好ましい理由は、THz波は、大気中だと減衰することから、サンプル以外での減衰を少しでも少なくする為である。真空にしてあるため、検体12を入れるときには注射針等から入れれば、カプセル内が陰圧のため、サンプルとしての検体12がチャネルに入ることとなる。予め、カプセルには、注射針が指しやすいように、ゴム状の領域が設けられ、真空或いは大気圧よりも陰圧の状態を維持したままで、真空をやぶることなく、検体12を注入できることが好ましい。
上述した種々の実施の形態では、発信素子4−1での発振周波数及び受信素子4−2で検出する周波数を変化させる為に、発信素子4−1及び受信素子4−2に通電する電流を変化させている。しかし、図20A及び図20Bに示すように、発信素子4−1及び受信素子4−2に磁界を印加する磁界印加部が設けられ、この磁界印加部が調整されて印加磁界の大きさが変えられても良い。
図20A及び図20Bは、この発明の更に他の実施の形態に係る積層構造に磁界を印加する磁石装置を備えた受信部4−1及び発振部4−2を基板上に配置した検体認証素子を示している。受信部4−1及び発振部4−2は、図20A及び図20Bに示されるように、その積層構造27の両側に磁界を積層構造27に印加する磁界印加部としての磁石装置74−1,74−2が配置されている。この磁石装置74−1,74−2は、図13に示すようなバイアス固定磁界を発生する永久磁石のみで構成されず、永久磁石をヨークとして駆動回路76−176−2からの駆動電流で可変磁界を発生する電磁石で構成しても構わない。このような磁石装置74−1,74−2では、永久磁石からのバイアス固定磁界が積層構造27に印加されるのみならず、駆動回路76−176−2からの駆動電流で電磁石が作動されて可変磁界が積層構造27に印加される。可変磁界は、駆動回路76−1、76−2からの駆動電流で増減されることから、積層構造では、増加或いは減少される可変磁界でスピントルクが生成されることから、発振素子で発生されるTHz発信周波数を可変させることができ、また、受信素子で検出されるTHz発信周波数を可変させることができる。この可変磁界でのTHz発信周波数の制御は、積層構造27への供給電流或いは印加電圧を一定に維持した状態で実施されても良く、或いは、既に述べた実施の形態で説明したように積層構造27への供給電流或いは印加電圧が制御される状態で実施されても良い。磁石装置74−1,74−2は、具体的には、図17A或いは図17Bに示すような磁界用配線70−1,70−2であっても良く、この磁界用配線70−1,70−2に供給される電流値を変えることによって、磁界用配線70−1,70−2からの電流磁界で積層構造27に印加される外部磁界を変えても良い。
この発明の検体認証素子によれば、チップ上で動作するTHz波の発振を可能とする発振素子を実現し、THz波で検体を特定する簡易検査の実施が可能となる。
4―1...発振部、4−2...受信部、6...基板、8...チャネル、10...枠体、12...検体、14−1、14−2...可変電源、20...磁化層、22...中間層、22I...絶縁層、22P...電流パス(金属パス)、24...磁性層、26...下部電極、27...積層構造、28...上部電極、36...メモリ、38...不揮発性メモリ、40...演算制御部、58−1、58−2...磁性層、58A、58B...先端部、60...単層膜構造、62...絶縁層、64...非磁性セグメント、70−1,70−2...配線ライン、74−1,74−2...磁石装置、76−1、76−2...駆動回路、82、84...検体注入部、90...検体認証チップ

Claims (10)

  1. THz波を発生する発振部と、
    このTHz波が照射される導波路を定め、検体を収容するチャネルと、
    前記検体を通過した或いは前記検体から反射されたTHz波を検出する検出部と、
    を具備する素子部と、
    前記発振部を制御する発振制御部であって、前記THz波の発振周波数をある周波数帯域内で掃引させる発振制御部と、
    前記検出部で前記THz波を検出させる検出駆動部であって、前記THz波の検出周波数を前記周波数帯域で掃引して検出信号を発生する検出駆動部と、
    前記周波数帯域内における前記検出信号の波形で前記検体を特定する検体認証部と、
    を具備することを特徴とする検体認証システム。
  2. 前記検体認証部は、
    前記検出信号を前記周波数帯域に相関させた検出相関グラフのデータを記憶する第1のメモリ部と、
    既知の複数の検体に関する検出信号と前記周波数帯域との相関を有する参照用相関グラフの辞書データを格納する第2のメモリ部と、
    前記検体認証部は、前記検出相関グラフで前記辞書データを参照して前記検出相関グラフと前記参照用相関グラフとを比較して検体を認証する比較演算回路を含むことを特徴とする請求項1の検体認証システム。
  3. 前記検出駆動部は、前記検出部に内の抵抗変化を前記検出信号から解析し、
    前記検体認証部は、前記周波数帯域内における前記抵抗変化で前記検体を特定することを特徴とする請求項1記載の検体認証システム。
  4. 前記発振制御部は、前記発振部に供給される電流を制御して前記THz波の発振周波数をある周波数帯域内で掃引させ、
    前記検出駆動部は、前記検出部に通電する電流値を掃引して前記THz波の検出周波数を前記周波数帯域で掃引することを特徴とする請求項5記載の検体認証システム。
  5. THz波を発生する発振部であって、前記THz波の発振周波数をある周波数帯域内で掃引させて発生する発振部と、
    このTHz波が照射される導波路を定め、検体を収容するチャネルと、
    前記検体を通過した或いは前記検体から反射されたTHz波を検出する検出部であって、検出THz波の検出周波数を前記周波数帯域で掃引して検出信号を発生する検出部と、
    を具備することを特徴とする検体認証素子。
  6. 前記発振部及び検出部の少なくとも一方は、第一の磁性層と、第二の磁性層と、前記第一の磁性層と前記第二の磁性層との間に配置される中間層とからなる積層膜構造を有する素子で構成されることを特徴とする請求項5記載の検体認証素子。
  7. 前記積層膜構造は、絶縁層とこの絶縁層を貫通する複数の電流パス層とで形成された高周波シフト層を有することを特徴とする請求項6記載の検体認証素子。
  8. 請求項5記載の構造を夫々有する複数の検体認証素子が同一基板上に配置されていることを特徴とする集積型検体認証装置。
  9. 前記集積型検体認証素子において、各検体認証素子間で干渉が生じないようにテラヘルツ領域の波を吸収するシールド部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の集積型検体認証装置。
  10. 前記複数の検体認証素子の夫々では、前記発振周波数帯域及び前記検出周波数帯域が異なり、前記検体認証部が複数の検体を特定する請求項9記載の集積型検体認証素子。
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