JPWO2011024821A1 - 放電ランプ用電極およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、熱電子を放出させる電極本体部を有する放電ランプ用の電極であって、前記電極本体部は、導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成される、電極に関する。

Description

本発明は、放電ランプ、その中でも特に、熱陰極蛍光ランプに関する。
蛍光ランプは、照明、表示装置のバックライト、および各種生産工程での光照射などの用途に広く用いられている。
蛍光ランプの中で、特に熱陰極蛍光ランプの電極には、タングステンまたはモリブデンで構成されたフィラメントが使用されることが一般的である。ただし、蛍光ランプの始動性およびランプ効率を高めるため、通常の場合、フィラメントは、エミッタと呼ばれる電子放出性物質で被覆される。エミッタは、電極の仕事関数を下げ、放電時の熱電子放出を促進する機能を有する。このようなエミッタ材料としては、通常、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)または酸化カルシウム(CaO)等のアルカリ土類金属酸化物等が使用される(例えば、特許文献1)。
一方、最近では、熱電界放出用の電極として、単結晶導電性マイエナイト化合物を使用した例が報告されている(非特許文献1)。
日本国特開2007−305422号公報
Yoshitake Toda, Sung Wng Kim, Katsuro Hayashi, Masahiro Hirano, Toshio Kamiya, Hideo Hosono, Takeshi Haraguchi and Hiroshi Yasuda, "Intense thermal field electron emission from room-temperature stable electride", Applied Physics Letters, 87, 254103 (2005)
しかしながら、特許文献1のようなアルカリ土類金属酸化物製のエミッタを有する電極を使用した蛍光ランプでは、従来より、使用時間とともにエミッタが消耗するという問題が指摘されている。これは、(1)一般にアルカリ土類金属酸化物は、高温での蒸気圧が高いこと、および(2)アルカリ土類金属酸化物とフィラメントの間の密着性があまり良好ではないこと、によるものであると考えられる。すなわち、(1)の影響により、蛍光ランプの使用中に高温化したエミッタが揮発してしまい、(2)の影響により、エミッタがフィラメントから脱落してしまい、エミッタが比較的短時間で消耗してしまうことになる。
なお、このようなエミッタの消耗が生じると、蛍光ランプの発光効率(より具体的には、熱電子放出効率)が低下するという問題が生じる。また、エミッタの消耗が激しくなると、フィラメント部分が露出することになり、これにより電極の断線が生じやすくなり、結果的に蛍光ランプの寿命が短くなるという問題が生じ得る。
また、前述の非特許文献1に記載の単結晶導電性マイエナイト化合物は、蛍光ランプの電極としての使用を想定したものではない。従って、このような電極を蛍光ランプに使用した場合、適正な熱電子放出特性が得られるかどうか不明である。さらに、単結晶材料を使用した電極では、製造が極めて煩雑という問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、長期にわたって適正に使用することの可能な蛍光ランプ用の電極、およびそのような電極を備える蛍光ランプを提供することを目的とする。また、そのような電極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明では、熱電子を放出させる電極本体部を有する放電ランプ用の電極であって、前記電極本体部は、導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成される、電極が提供される。
ここで本発明による電極において、前記電極本体部は、粒子同士が結合して形成されたネック部を有するクラスタ構造を備え、前記クラスタ構造の表面は、粒子が部分的に突出して構成された3次元凹凸構造を有しても良い。
また、本発明による電極において、前記電極本体部は、さらにアルカリ土類金属の酸化物を含んでも良い。
また、本発明による電極において、前記アルカリ土類金属の酸化物は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、および酸化カルシウム(CaO)からなる群より選定された少なくとも1種の酸化物を含んでも良い。
また、本発明では、
水銀および希ガスが充填された内部空間を有するバルブと、
該バルブの内表面に設置された蛍光体と、
前記内部空間で放電を発生、維持させる電極と、
を有する放電ランプであって、
前記内部空間で放電を発生、維持させる電極は、前述の特徴を有する電極である、放電ランプが提供される。
また、本発明では、
熱電子を放出させる電極本体部を有する放電ランプ用の電極の製造方法であって、
前記電極本体部は、
(1a)マイエナイト化合物を含む粉末を準備するステップと、
(1b)前記粉末から成形体を形成するステップと、
(1c)前記成形体を焼成して焼結体を得るステップと、
(1d)前記焼結体に導電性を付与するステップと、
により形成される、製造方法が提供される。
さらに、本発明では、
熱電子を放出させる電極本体部を有する放電ランプ用の電極の製造方法であって、
前記電極本体部は、
(2a)マイエナイト化合物を含む粉末を準備するステップと、
(2b)前記粉末から成形体を形成するステップと、
(2c)前記成形体を焼成して、導電性を有する焼結体を得るステップと、
により形成される、製造方法が提供される。
なお、このような本発明の方法において、前記ステップ(1d)およびステップ(2c)は、前記焼結体を還元性雰囲気で熱処理するステップを有しても良い。
本発明によれば、長期にわたって適正に使用することの可能な放電ランプ用の電極、およびそのような電極を備える放電ランプを提供することが可能となる。また、そのような電極の製造方法を提供することが可能となる。
図1は、本発明による蛍光ランプの概略的な一例を示した一部切欠断面の部分拡大図である。 図2は、本発明による電極の構成の一例を示した模式図である。 図3は、従来の電極の構成の一例を示した模式図である。 図4は、本発明による電極に使用される導電性マイエナイト化合物焼結体の表面形態の一例を示した写真である。 図5(a)〜(c)は、導電性マイエナイト化合物焼結体のネック部の形成過程の一例を模式的に示した概略図である。 図6は、本発明による電極の電極本体部を製造するための方法の一例を模式的に示したフロー図である。 図7は、本発明による電極の電極本体部を製造するための別の方法の一例を模式的に示したフロー図である。 図8は、実施例2に係る電極の一表面形態を示したSEM写真である。 図9は、比較例2に係る電極の一表面形態を示したSEM写真である。 図10は、実施例3に係る電極の印加電圧と熱電子放出電流の関係を示したグラフである。 図11は、実施例3に係る電極のRichardsonプロットを示したグラフである。 図12は、比較例2に係る電極のアーク放電試験後の表面形態を示したSEM写真である。 図13は、BaOまたはマイエナイト化合物にArが入射した場合についての、Arのエネルギーとスパッタリング率の関係を示すグラフである。
以下、図面により本発明の形態を説明する。
図1には、本発明において、好ましく適用される放電ランプの一形態である、蛍光ランプの一例として、直管形蛍光ランプの一部切欠断面の部分拡大図を示す。また、図2には、図1に示す蛍光ランプに含まれる電極の構成の一例を模式的に示す。図1では、蛍光ランプの左側部分が示されていないが、この部分が、図示された蛍光ランプの右側部分と略対称の構成を有することは、当業者には明らかである。
図1に示すように、蛍光ランプ10は、放電空間20を有するガラスなどで構成された管状のバルブ30と、電極40と、プラグ50とを有する。
バルブ30の内表面には、保護膜60および蛍光体70が設置されている。放電空間20内には、放電ガスが封入されており、放電ガスは、希ガスを含み、放電ガスには、例えば、水銀を含むアルゴンガスが使用される。保護膜60は、バルブ30に含まれるナトリウムの溶出を防ぎ、主として水銀とナトリウムの化合物が生成することを抑制することにより、蛍光ランプ内壁が黒化することを防ぐ役割を有する。
プラグ50は、蛍光ランプ10の両端に、バルブ30を支持するように設けられており、ピン部55を有する。
電極40は、バルブ30の両端に封止されている。
図2に示すように、電極40は、2つの端部41aおよび41bを有する電極本体部41と、端部41aおよび41bのそれぞれと電気的に接合された支持線45aおよび45bとを有する。支持線45aおよび45bは、導電性を有し、他端がプラグ50のそれぞれのピン部55と電気的に接続されている。また、支持線45aおよび45bは、電極本体部41を支持する役割を有する。
なお、係る電極40の構造は、単なる一例であって、電極40が他の構造を取り得ることは、当業者には明らかである。例えば、図2では、電極40の電極本体部41は、角柱状の形状となっているが、電極本体部41の形状は、これに限られず、例えば線状構造であっても良い。線状構造には、コイルのような構造が含まれる。線状構造の長手方向に対して垂直な方向の断面の形状は、例えば円形、楕円形、矩形であっても良い。
また、図2において、電極本体部41の端部41aおよび41bは、電極本体部41の中心部に比べて断面が小さくなっているが、電極本体部41の端部41aおよび41bは、電極本体部41の中心部と同等の断面寸法を有しても良い。
さらに、図2に示す電極40では、電極本体部41と支持線45aおよび45bとが、別個の素子として形成されている。しかしながら、電極本体部41と支持線45aおよび45bとは、一体化されていても良い。
このような蛍光ランプ10において、両方の電極40(図1では、一方しか示されていない)の間に電圧を印加した際に、電極(陰極側)40が加熱され、高温になった電極本体部41から、電子(熱電子)が放出される。放出された電子は、もう片方の電極(陽極側)40の方に移動し、これにより放電が開始される。次に、放電により流れる電子が、バルブ30の放電空間20内に封入されている水銀原子と衝突すると、水銀原子が励起され、励起された水銀が基底状態に戻る際に紫外線が放出される。この放出された紫外線がバルブ30の蛍光体70に照射されると、蛍光体70から可視光線が発生する。以上の一連の現象により、蛍光ランプ10から可視光線を放射させることができる。
次に、本発明の特徴について説明する。
まず最初に、図3を用いて、従来の電極の構造およびその問題について説明する。図3は、従来の電極の構成の一例を模式的に示した概略図である。
従来の電極140は、2つの端部141aおよび141bを有するフィラメント142と、端部141aおよび141bのそれぞれと電気的に接合された支持線145aおよび145bとを有する。前述の図2の場合と同様、支持線145aおよび145bは、導電性を有し、他端が蛍光ランプのプラグのそれぞれのピン部と電気的に接続されている。また、支持線145aおよび145bは、フィラメント142を支持する役割を有する。
通常の場合、フィラメント142は、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)等の金属のコイルで構成される。また、フィラメント142には、エミッタ146と呼ばれる電子放出性物質が被覆される。エミッタ146用の材料としては、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)または酸化カルシウム(CaO)等のアルカリ土類金属酸化物が使用される。これは、一般にアルカリ土類金属酸化物は、仕事関数が低く、小さな電圧印加により、熱電子放出を促進することができるためである。
しかしながら、図3のように構成された電極140では、従来より、アルカリ土類金属酸化物材料で構成されたエミッタ146が、使用時間とともに容易に消耗してしまうという問題が指摘されている。
この原因としては、(1)一般にアルカリ土類金属酸化物は、高温での蒸気圧が高いこと、および(2)フィラメント142とアルカリ土類金属酸化物製エミッタ146の界面で、密着性があまり良好ではないことが考えられる。
例えば、酸化バリウム(BaO)は、融点および沸点がそれぞれ、1923℃および2000℃程度であり、酸化カルシウム(CaO)は、融点および沸点がそれぞれ、2572℃および2850℃程度であり、何れの材料とも、融点と沸点は、接近している。従って、これらの物性値からも、アルカリ土類金属酸化物は、高温での蒸気圧が比較的高いことが予想される。
従来の材料をエミッタ146として有する蛍光ランプでは、(1)の影響により、蛍光ランプの使用中に高温化したエミッタ146が揮発してしまい、(2)の影響により、使用中にエミッタ146がフィラメント142から脱落してしまうため、エミッタ146が比較的短時間で消耗してしまうと考えられる。
なお、このようなエミッタ146の消耗が生じると、蛍光ランプの発光効率(より具体的には、熱電子放出効率)が低下してしまう。また、エミッタ146の消耗が激しくなると、フィラメント142が露出することになり、これにより電極の断線が生じやすくなり、結果的に蛍光ランプの寿命が短くなるという問題が生じ得る。
これに対して、本発明の蛍光ランプ10では、電極40は、従来のようなフィラメント142上にエミッタ146が被覆された構造とはなっていない。すなわち、本発明の蛍光ランプ10では、電極40の電極本体部41が、導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成されていることに特徴がある。
後述するように、導電性マイエナイト化合物は、1100℃を超えるような高温域でも比較的安定であり、アルカリ土類金属酸化物のように、蛍光ランプの使用中に揮発してしまうという問題があまり生じない。また、本発明では、従来のような金属フィラメントが不要となるため、電極本体部41は、密着性の懸念される金属フィラメントとエミッタとの界面を有さない構造となっている。
従って、電極40をマイエナイト化合物の焼結体で構成することにより、蛍光ランプの使用中に、高温化したエミッタが揮発したり、脱落したりするという問題が軽減される。また、本発明による電極は、従来のようなフィラメントを有さないため、エミッタの消耗後のフィラメントの露出による電極の断線が生じるおそれがない。このため、本発明では、蛍光ランプを長期にわたって適正に使用することが可能となる。
なお、最近、熱電界放出用の電極として、単結晶導電性マイエナイト化合物を使用した例が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、この文献は、蛍光ランプの電極としての使用を想定したものではない。従って、単結晶導電性マイエナイト化合物で構成された電極を蛍光ランプに使用した場合、適正な熱電子放出特性が得られるかどうか不明である。実際、後述するように、単結晶導電性マイエナイト化合物で構成された電極では、比較的仕事関数が大きくなることが報告されている。また、単結晶材料を使用した電極では、製造が極めて煩雑になるという問題がある。
これに対して、本発明では、電極40の電極本体部41は、導電性マイエナイト化合物の(多結晶)焼結体で構成されている。
図4には、一例として、マイエナイト化合物の粉末を用いて形成した導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成された電極本体部41を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したときの表面形態を示す(3000倍)。
この図からわかるように、導電性マイエナイト化合物の焼結体は、粒子同士が結合して形成されたネック部を多数有するクラスタ構造であり、その表面は、粒子が部分的に突出して構成された3次元凹凸構造を呈している。ここで、「粒子」とは、必ずしも焼結前のマイエナイト化合物の粉末を指すわけではなく、焼結体を観察した際に、形状的に粒子状になっている部分も意味する。
このような特徴的な表面形態の形成過程について、図5を用いて模式的に説明する。図5は、導電性マイエナイト化合物焼結体のネック部の形成過程の一例を模式的に示した概略図である。
まず、図5(a)のように配置された2つの粒子が焼結処理されると、図5(b)において実線で示すような結合が生じる。また、さらに粒子同士の結合が進むと、図5(c)において実線で示すような構造が得られる。この図5(b)および(c)において、粒子同士が結合している部分がネック部に相当する。なお、図5(b)および(c)における点線は、焼結処理前(つまり図5(a))の粒子形状を比較のために示したものである。
このような粒子間結合が各粒子間で進展すると、全体としてクラスタ状の構造が形成される。クラスタ構造の表面(特に放電空間側)では、粒子が部分的に突出した3次元凹凸構造形状が得られる。
なお、図5(c)のような形態では、ネック部同士の結合も進展するので、見かけ上、比較的平滑な表面を有する密な部分の内部に粒子が分布して、その表面に粒子が部分的に突出しているような形態にもなり得る。
前述の図4のような焼結体の構造は、粒子の焼成の過程で形成されるものであり、マイエナイト化合物、もしくは同化合物の構成元素からなる他の結晶が焼結体表面において再析出すること、およびマイエナイト化合物の粉末の焼結が同時に起こることに起因した、複雑な現象であると推察される。
また、図4のような表面構造を有する焼結体を電極用の材料として使用した場合、その表面積は、飛躍的に増大し、より多くの熱電子を放出することができるようになるために、より大きな電流を得やすくなる。そのため、従来の単結晶導電性マイエナイト化合物で構成された電極に比べて、極めて良好な熱電子特性が得られる。
従って、本発明の導電性マイエナイト化合物の焼結体は、蛍光ランプ等の電極に効果的に使用することができる。また、本発明では、電極の製造方法が極めて単純になるという効果が得られる。
なお、図4に示す表面形態において、例えば○で示された突出部の寸法(以下、「ドメイン径」と称する)は、約0.1μm〜10μm程度である。ドメイン径が0.1μmより小さい場合、あるいはドメイン径が10μmより大きい場合、表面積の増大効果が十分に得られないおそれがある。
(本発明の蛍光ランプの各部材の詳細について)
次に、本発明による蛍光ランプの電極40および蛍光体70について、詳しく説明する。なお、バルブ30、プラグ50および保護膜60等の部材に関しては、その仕様は、当業者には十分に明らかであるので、記載を省略する。
(電極40)
前述のように、本発明による電極40の電極本体部41は、導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成される。
ここで、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al(以下「C12A7」ともいう。)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。
一般に、マイエナイト化合物は、ケージの中に酸素イオンを包接しており、この酸素イオンは、特に「フリー酸素イオン」と称される。
また、この「フリー酸素イオン」は、還元処理等により、その一部もしくは全てを電子で置換することができ、特に、電子密度が1.0×1015cm−3以上のものが「導電性マイエナイト化合物」と呼ばれる。「導電性マイエナイト化合物」は、その名が示すように導電性を有するため、本発明のような電極材料として使用することができる。
本発明では、「導電性マイエナイト化合物」の電子密度は、1.0×1018cm−3以上であることが好ましく、1.0×1019cm−3以上であることがより好ましく、1.0×1020cm−3以上であることがさらに好ましい。導電性マイエナイト化合物の電子密度が1.0×1018cm−3よりも低い場合、電極に使用した際の電極の抵抗が大きくなるおそれがある。
なお、本発明において、導電性マイエナイトの電子密度とは、電子スピン共鳴装置での測定により算出された、または吸収係数の測定により算出された、スピン密度の測定値を意味する。一般には、スピン密度の測定値が1019cm−3よりも小さい場合は、電子スピン共鳴装置(ESR装置)を用いて測定することが好ましく、1018cm−3を超える場合は、以下のようにして、電子密度を算定することが好ましい。まず分光光度計を用いて、導電性マイエナイトのケージ中の電子による光吸収の強度を測定し、2.8eVでの吸収係数を求める。次に、この得られた吸収係数が電子密度に比例することを利用して、導電性マイエナイトの電子密度を定量する。また、導電性マイエナイトが粉末等であり、光度計によって透過スペクトルを測定することが難しい場合は、積分球を使用して光拡散スペクトルを測定し、クベルカムンク法によって得られた値から、導電性マイエナイトの電子密度が算定される。
なお、本発明において導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造と同等の結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部または全部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および/または銅(Cu)などの原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および/またはテリビウム(Tb)などで置換されても良い。また、ケージの骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
また、導電性マイエナイト化合物は、12CaO・7Al化合物、12SrO・7Al化合物、これらの混晶化合物、またはこれらの同型化合物であることが好ましい。
本発明では、これらに限定されるものではないが、導電性マイエナイト化合物として、例えば下記の(1)〜(4)に示す化合物が考慮される。
(1)C12A7化合物の骨格を構成するカルシウム(Ca)の一部が、マグネシウム(Mg)またはストロンチウム(Sr)に置換された、カルシウムマグネシウムアルミネート(Ca1−yMg12Al1433、またはカルシウムストロンチウムアルミネート(Ca1−zSr12Al1433。なお、yおよびzは0.1以下であることが好ましい。
(2)シリコン置換型マイエナイトであるCa12Al10Si35
(3)ケージ中のフリー酸素イオンがH、H 、H2−、O、O 、OH、F、Cl、Br、S2−またはAuなどの陰イオンによって置換された、例えば、Ca12Al1432:2OHまたはCa12Al1432:2F
(4)陽イオンと陰イオンがともに置換された、例えばワダライトCa12Al10Si32:6Cl
なお、本発明において、電極本体部41は、導電性マイエナイト化合物単独で構成されても良いが、さらに別の添加物質を含んでも良い。別の添加物質は、例えば、アルカリ土類金属の酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)または酸化カルシウム(CaO)等が好ましい。電極本体部41が導電性マイエナイト化合物とこのような酸化物を同時に含む場合、低温域(〜800℃程度)から高温域(〜1300℃程度)までの広い温度範囲にわたって、優れた熱電子放出特性が得られる。
別の添加物質は、電極本体部41の全重量に対して、例えば1wt%〜50wt%の範囲で添加される。
なお、電極本体部41の抵抗値は、0.1Ω〜100Ωの範囲であっても良い。電極本体部41の抵抗値は、0.5〜50Ωの範囲であることが好ましく、1〜20Ωの範囲であることがより好ましく、2〜10Ωの範囲であることがさらに好ましい。抵抗値が0.1Ωより小さい場合、回路全体を流れる電流が大きくなり、電極のみを選択的に加熱することができなくなるおそれがある。また100Ωより大きい場合、電流が流れにくくなり、電極を十分に加熱することができなくなるおそれがある。
本発明において、導電性マイエナイト化合物の導電率は、後述する還元性雰囲気での熱処理により、比較的容易に調整することができる。従って、電極本体部41の抵抗値も、比較的容易に制御することができる。また、抵抗値は、焼結体の緻密さによっても制御することが可能である。
(蛍光体70)
蛍光体70としては、例えば、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体、セリウムテルビウム付活燐酸ランタン蛍光体、ユーロピウム付活ハロ燐酸ストロンチウム蛍光体、ユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、ユーロピウムマンガン付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、およびアンチモン付活ハロ燐酸カルシウム蛍光体などを単独、または混合して使用できる。
なお蛍光ランプ10において、形状、サイズ、ワット数、ならびに蛍光ランプが放つ光色および演色性などは、特に限定されない。形状については、図1に示すような直管に限られず、例えば、丸形、二重環形、ツイン形、コンパクト形、U字形、電球形などの形状であっても良い。サイズについては、例えば4形〜110形などであっても良い。ワット数については、例えば数ワット〜百数十ワットなどであっても良い。光色については、例えば、昼光色、昼白色、白色、温白色、および電球色などがある。
(電極本体部の製造方法)
次に、本発明による電極40の電極本体部41の製造方法について説明する。
電極本体部41の製造方法は、マイエナイト化合物に導電性を付与する工程の違いから、2つの方法に大別される。第1の方法は、マイエナイト化合物の粉末を焼結させて焼結体を得た後、これを所望の形状に加工してから、マイエナイト化合物に導電性を付与する方法である。一方、第2の方法は、マイエナイト化合物の粉末を焼結して、焼結体を得る際に、同時に導電性を付与する方法である。
(第1の方法)
図6には、第1の方法のフロー図を示す。
図6に示すように、第1の方法は、マイエナイト化合物を含む粉末を調製するステップ(ステップ110:S110)と、前記粉末を含む成形体を形成するステップ(ステップ120:S120)と、前記成形体を焼成し、焼結体を得るステップ(ステップ130:S130)と、得られた焼結体に導電性を付与する処理を行うステップ(ステップ140:S140)とを有する。以下、各ステップについて詳しく説明する。
(ステップ110)
まず、平均粒径1μm〜10μm程度のマイエナイト化合物粉末が準備される。特に、粉末の平均粒径は、2μm以上6μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径が1μmより小さいと、粉末が凝集してそれ以上の微粉化することが困難であり、10μmより大きいと、焼結が進みにくくなるおそれがある。
通常の場合、マイエナイト化合物粉末は、マイエナイト化合物原料を粗粉化し、さらにこの粗粉を微細まで粉砕することにより調製される。原料の粗粉化には、スタンプミル、自動乳鉢等が使用され、まず平均粒径が約20μm程度になるまで粉砕される。粗粉を、前述の平均粒径の微細粉まで粉砕するには、ボールミル、ビーズミルなどが使用される。
(ステップ120)
次に、マイエナイト化合物粉末を含む成形体が作製される。
成形体の作製方法は、特に限られず、ペースト(またはスラリー。以下同じ)を介して、あるいは粉末またはペーストの加圧成形により、成形体を作製しても良い。
例えば、前述の調製粉末をバインダとともに溶媒中に添加、撹拌することにより、ペーストを調製しても良い。バインダには、有機バインダおよび無機バインダのいずれも使用することができる。有機バインダとしては、例えば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルブチラール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂などが使用できる。また、無機バインダとしては、例えば、ケイ酸ソーダ系や金属アルコキシド系などが使用できる。また、溶媒としては、酢酸ブチル、テルピネオール、化学式C2n+1OH(n=1〜4)で表されるアルコール等が使用できる。
バインダの配合量は、例えばメチルセルロースの場合は、前途の調整粉末に対して、0.5〜60体積%が好ましい。成形方法によっては、可塑剤、分散剤、潤滑剤を添加しても良い。可塑剤は成形時に可塑性を付加できる。分散剤は粉末の凝集体を解し分散性を向上させる。潤滑剤は粉体間の摩擦を少なくして、流動性をよくし、成形を容易にできる。可塑剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレートなどが使用できる。分散剤としては、例えば、脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤、ベンゼンスルホン酸などが使用できる。潤滑剤としては、例えば、ポリエチレングリコールエチルエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどが使用できる。
その後、ペーストを押出成形、射出成形することにより、成形体を得ることができる。
あるいは、前述の調製粉末またはペーストを金型に入れ、この金型を加圧することにより、所望の形状の成形体を形成しても良い。
(ステップ130)
次に、得られた成形体が焼成される。なお、成形体が溶媒を含む場合は、予め成形体を50℃〜200℃の温度範囲で20〜30分程度保持し、溶媒を揮発させて除去しても良い。また、成形体がバインダを含む場合は、予め成形体を200〜800℃の温度範囲で20〜30分程度保持し、バインダを除去しても良い。あるいは、両者の処理を同時に行っても良い。
焼成条件は、特に限られない。
焼成処理は、例えば大気雰囲気中、真空中、または不活性ガス雰囲気中等で行なわれる。
焼成温度は、例えば1200℃〜1415℃の範囲であり、1250℃〜1350℃の範囲であることが好ましい。1200℃より低い温度では、焼結が不十分となり、得られる焼結体が脆くなる可能性がある。また、焼成温度が1415℃よりも高い場合、粉末の溶融が進行し、成形体の形状を維持できなくなるおそれがある。
前記温度に保持する時間は、成形体の焼結が完了するように調整すればよいが、好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上、さらにより好ましくは15分以上である。保持時間が5分より短いと焼結が十分に進まないおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、作製コストを考えると、保持時間は、6時間以内が好ましい。
得られた焼結体は、その後、所望の形状に加工される。加工方法は、特に限られず、機械加工、放電加工、レーザ加工等が適用されても良い。
(ステップ140)
次に、得られた焼結体(マイエナイト化合物)に対して導電性を付与する処理が行われる。
焼結体への導電性の付与は、還元性雰囲気で焼結体を熱処理することにより行うことができる。ここで、還元性雰囲気とは、雰囲気に接する部位に還元剤が存在し、酸素分圧が10−3Pa以下の雰囲気または減圧環境を意味する。還元剤としては、例えばカーボンやアルミニウムの粉末をマイエナイト化合物原料に混ぜても良く、また、雰囲気に接する部位に、カーボン、カルシウム、アルミニウム、チタンを設置しても良い。カーボンの場合は、成形体をカーボン容器に入れて真空下で焼成する方法が例示される。
酸素分圧は、例えば10−5Pa以下であり、10−10Pa以下であることが好ましく、10−15Paであることがより好ましい。酸素分圧が10−3Pa以上の場合、十分な導電性を得ることができないおそれがある。
熱処理温度は、600〜1415℃の範囲である。熱処理の温度は、1000℃〜1400℃の範囲であることが好ましく、1200〜1370℃の範囲であることがより好ましく、1300℃〜1350℃の範囲であることがさらに好ましい。熱処理の温度が600℃よりも低い場合、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがある。また、熱処理温度が1415℃よりも高い場合、焼結体の溶融が進行し、成形体の形状が維持できなくなるおそれがある。
熱処理時間(保持時間)は、5分〜6時間の範囲であることが好ましく、10分〜4時間の範囲であることがさらに好ましく、15分〜2時間の範囲であることがさらに好ましい。保持時間が5分未満の場合、十分な導電性を得ることができなくなるおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、作製コストを考えると、保持時間は、6時間以内が好ましい。
以上の工程により、導電性マイエナイト化合物からなる電極本体部を作製することができる。
(第2の方法)
図7には、第2の方法のフロー図を示す。
図7に示すように、第2の方法は、マイエナイト化合物を含む粉末を調製するステップ(ステップ210:S210)と、前記粉末を含む成形体を形成するステップ(ステップ220:S220)と、前記成形体を焼成し、焼結体を得ると同時に、焼結体に導電性を付与するステップ(ステップ230:S230)とを有する。このうち、ステップ210およびステップ220については、前述の第1の方法のステップ110およびステップ120と同様である。そこで、以下、ステップ230について詳しく説明する。
(ステップ230)
このステップでは、焼成処理によって、ステップ220によって得られた成形体が焼成される。なお、成形体が溶媒を含む場合は、予め成形体を50℃〜200℃の温度範囲で20〜30分程度保持し、溶媒を揮発させて除去しても良い。また、成形体がバインダを含む場合は、予め成形体を200〜800℃の温度範囲で20〜30分程度保持し、バインダを除去しておいても良い。あるいは、両者の処理を同時に行っても良い。
焼成処理は、成形体を還元性雰囲気で熱処理することにより行なうことができる。還元性雰囲気とは、雰囲気に接する部位に還元剤が存在し、かつ酸素分圧が10−3Pa以下の不活性ガス雰囲気、または減圧環境を意味する。還元剤としては、例えばカーボンやアルミニウムの粉末を原料に混ぜても良く、また、雰囲気に接する部位に、カーボン、カルシウム、アルミニウム、チタンを設置しても良い。カーボンの場合は、成形体をカーボン容器に入れて真空下で焼成する方法が例示される。
酸素分圧は、10−5Pa以下であることが好ましく、10−10Paであることがより好ましく、10−15Pa以下であることがさらに好ましい。酸素分圧が10−3Paより大きい場合、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがある。
焼成温度は、1200℃〜1415℃の範囲である。焼成温度は、1250℃〜1350℃の範囲であることがより好ましい。焼成温度が1200℃よりも低い場合、焼結が進行しにくくなり、得られる焼結体が脆くなる可能性がある。また、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがある。一方、焼成温度が1415℃よりも高い場合、粉末の溶融が進行し、成形体の形状を維持することができなくなるおそれがある。
焼成時間(保持時間)は、成形体の焼結が完了し、かつ十分な導電性が付与されれば、いかなる時間であっても良い。保持時間は、例えば、5分〜6時間の範囲であっても良く、10分〜4時間の範囲であることが好ましく、15分〜2時間の範囲であることがより好ましい。保持時間が5分未満の場合、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、作製コストを考えると6時間以内が好ましい。
以上の工程により、導電性マイエナイト化合物からなる電極本体部を作製することができる。
なお、前述の製造方法では、電極本体部が導電性マイエナイト化合物のみで構成される場合を例に、本発明の製造方法について説明した。
一方、マイエナイト化合物とアルカリ土類金属酸化物の混合物を含む電極本体部を形成する場合は、前述のステップ110および210の段階で、マイエナイト化合物粉末に、例えば、所望のアルカリ土類金属炭酸塩の粉末を添加し、混合粉末を調製すれば良い。ただし、このような混合粉末を出発物質として使用する場合は、反応の過程で生じるCOを除去する処置が必要となる。COが残留すると、蛍光ランプ中の水銀が劣化され、発光効率が低下してしまうからである。
COの除去は、例えば窒素雰囲気または真空下で、成形体に対して、予め800℃〜1200℃の温度に20〜30分間程度保持することにより行われても良い。
ところで、従来のように、酸化バリウム(BaO)等のアルカリ土類金属酸化物でエミッタを構成する場合、以下の製造方法が採用されてきた。
(i)アルカリ土類金属の炭酸塩(例えばBaCO)粉末を含むスラリーをフィラメントに塗布する。
(ii)蛍光ランプのバルブ内で、フィラメントに通電を行い、フィラメントを加熱する。これにより、炭酸塩粉末が酸化物に分解し、フィラメント上に、アルカリ土類金属酸化物からなるエミッタが形成される。
しかしながら、このような方法では、炭酸塩の分解が不十分な場合、適正な酸化物エミッタを得ることができないという問題がある。また、この方法では、加熱過程で二酸化炭素(CO)が発生するが、この二酸化炭素(CO)が蛍光ランプ内に残留すると、水銀が化学変化することなどにより、蛍光ランプの性能に悪影響が生じる可能性が高くなる。
これに対して、本発明において、電極本体部が導電性マイエナイト化合物のみで構成される場合、アルカリ土類金属の炭酸塩をエミッタを形成する際の出発原料としていないため、二酸化炭素(CO)の発生がなく、蛍光ランプの性能に悪影響が生じる可能性が抑制されるという付随的な効果が得られる。
また、本発明によれば、水銀および希ガスが充填された内部空間を有するバルブと、該バルブの内表面に設置された蛍光体と、前記内部空間で放電を発生、維持させる電極と、を有する放電ランプであって、該電極本体部が導電性マイエナイト化合物の焼結体からなる放電ランプが提供される。
具体的には、図1に示す蛍光ランプが提供される。本蛍光ランプは、内面に保護膜60および蛍光体70が塗布されたバルブ30を有し、前記バルブの内部空間には、蛍光体励起用の水銀(Hg)ガスと、希ガスとしてアルゴン(Ar)とが充填されている。さらに、前記内部空間には、放電を発生、維持させるための電極40が設置される。この電極40は、マイエナイト化合物の焼結体で構成される。このような蛍光ランプは、放電時の電極の消耗が抑制され、長期にわたって安定な特性を維持することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
以下の方法により、導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成された電極サンプルを形成した。
(マイエナイト化合物の合成)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化アルミニウム(Al)の粉末を、モル比で12:7となるように混合した後、この混合粉末を大気中、1300℃で6時間保持した。次に、得られた焼結体を自動乳鉢で粉砕し、粉末(以下、粉末A1と称する)を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、この粉末A1の粒度を測定したところ、平均粒径は、20μmであった。また、X線回折により、粉末A1は、12CaO・7Al構造だけを有し、粉末A1は、(非導電性)マイエナイト化合物であることが確認された。さらに、ESR装置により、粉末A1の電子密度を求めたところ、電子密度は、1×1015cm−3未満であった。
次に、粉末A1を2MPaの圧力で加圧成形して、直径1cm、厚み5mmの円盤形状の成形体を作製した。さらに、この成形体を1350℃に加熱して焼結体を得た。得られた焼結体を蓋付きカーボン容器に入れ、このカーボン容器を、真空で10−3Pa以下の酸素分圧(すなわち、前述の「還元性雰囲気」)とした電気炉内に入れ、1300℃で2時間保持した。さらに、得られた試料を乾式ボールミルを用いて粉砕し、粉末A2を得た。前述のレーザ回折散乱法による測定の結果、粉末A2の平均粒径は、5μmであった。
粉末A2について、光拡散反射スペクトルを測定し、クベルカムンク法により粉末A2の電子密度を求めた。その結果、粉末A2の電子密度は、7×1018cm−3であり、粉末A2は、導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
(電極の調製)
次に、粉末A2を加圧成形して、直径1cm、厚み5mmの円盤形状の成形体を作製した。この成形体を蓋付きカーボン容器に入れ、容器内を10−3Pa以下の真空とし、1300℃で2時間保持した。これにより、焼結体Bを得た。
焼結体Bを研削加工することにより、四角柱状試料を作製した。四角柱状試料の寸法は、縦約2mm×横約2mm×高さ約10mmである。加工後に、この四角柱状試料に対して熱処理を実施した。熱処理は、酸素分圧が10−3Pa以下の真空環境下、カーボン容器に四角柱状試料を入れた状態で、これを1325℃で2時間保持することにより実施した。
以上の工程により、電極サンプル(実施例1に係る電極)が得られた。
このようにして得られた実施例1に係る電極について、光拡散反射スペクトルを測定し、クベルカムンク法により電子密度を求めた。その結果、電子密度は、3×1020cm−3であった。また、X線回折により、実施例1に係る電極は、12CaO・7Al構造だけを有し、実施例1に係る電極は、マイエナイト化合物であることが確認された。また、電極本体部となる導電性マイエナイト化合物の重量は、109mgであった。
さらに、実施例1に係る電極の両端部(端面から1mmの領域)に、白金を蒸着した。白金蒸着部に測定端子をつなぎ、実施例1に係る電極の抵抗を測定したところ、抵抗値は、4Ωであった。
(実施例2)
イソプロピルアルコールを溶媒とする湿式ボールミルにより、前述の粉末A1をさらに粉砕した。粉砕粉を吸引ろ過し、80℃空気中で乾燥して、粉末A3を得た。粉末A3の平均粒径は、5μmであった。
粉末A3について、ESR装置での測定により、その電子密度を求めた。その結果、粉末A3の電子密度は、1×1015cm−3未満であり、粉末A3は、非導電性マイエナイト化合物であった。
次に、粉末A3と、バインダーとしてのポリビニルアルコールとを、重量比で99:1となるように混合し、この混合物を金型に注入した。この金型に2MPaの圧力を印加し、四角柱状の成形体を得た。成形体の寸法は、縦約2mm×横約2mm×高さ約10mmである。この成形体を、大気雰囲気、300℃で30分間保持することにより、成形体に含まれるバインダーを除去した。
その後、成形体を蓋付きカーボン容器に入れ、これを電気炉内に配置した。電気炉内を真空にして、炉内の酸素分圧が10−3Pa以下となるような還元性雰囲気下で、成形体を熱処理した。熱処理温度は、1325℃、保持時間は2時間とした。これにより、マイエナイト化合物からなる電極が得られた。なお電極の寸法は、縦約1.9mm×横約1.9mm×高さ約9.7mmであった。
以上の工程により、電極サンプル(実施例2に係る電極)が得られた。
このようにして得られた実施例2に係る電極について、光拡散反射スペクトルを測定し、クベルカムンク法により電子密度を求めた。その結果、電子密度は、3×1020cm−3であった。また、X線回折により、実施例2に係る電極は、12CaO・7Al構造だけを有し、実施例2に係る電極は、マイエナイト化合物であることが確認された。また、電極本体部となる導電性マイエナイト化合物の重量は、94mgであった。
さらに、実施例2に係る電極の両端部(端面から1mmの領域)に、白金を蒸着した。白金蒸着部に測定端子をつなぎ、実施例2に係る電極の抵抗を測定したところ、抵抗値は、5Ωであった。
(比較例1)
いわゆるダブルコイル構造のタングステンフィラメント(ニラコ社製W−460100)を、そのまま電極サンプル(比較例1に係る電極)として使用した。
(比較例2)
前述のタングステンフィラメントのコイル部に、炭酸バリウム(関東化学社製)の粉末を付与し、酸素分圧が10−3Pa以下の真空下でフィラメントに通電した。電圧は、8Vとし、フィラメント温度は、約1000℃、通電時間は15分とした。
これにより、フィラメント上にエミッタが設置された電極サンプル(以下、「比較例2に係る電極」と称する)が得られた。X線回折の結果、比較例2に係る電極において、エミッタは、酸化バリウム(BaO)のみで構成されていることがわかった。また、沈着したエミッタの重量は、17mgであった。
(各電極の表面形態について)
以上の方法により得られた各電極(比較例1に係る電極を除く)の表面を、FE−SEM装置(日立製作所製S−4300)を用いて観察した。
図8および図9には、それぞれ、実施例2に係る電極(3000倍で観察)および比較例2に係る電極(6000倍で観察)の表面形態を示す。
図8に示すように、実施例2に係る電極は、粒子同士が結合して形成されたネック部を多数有するクラスタ塊の先端が、複雑に突出して構成された3次元凹凸構造を呈していた。実施例1に係る電極の表面形態も、実施例2の場合とほぼ同様であった。一方、図9に示すように、比較例2に係る電極は、のっぺりとした比較的平坦な島部同士が大きな溝で部分的に分断されたような構造を有していた。
(熱電子放出特性評価)
以下の方法により、各電極の熱電子放出特性を評価した。
まず、真空チャンバ内に、前述のいずれか一つの電極(以下、「サンプル電極」と称する)と、該電極から7cmの距離となるようにコレクター電極とを設置し、真空チャンバ内を約10−4Paまで排気した。次に、両電極間に、1kVの電圧を印加した状態で、サンプル電極に通電した。そして、サンプル電極を所定の温度まで加熱した際に、サンプル電極から放射される熱電子(実際には、コレクター電極に流れる電流値)を測定した。
サンプル電極の温度は、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、および1300℃の各温度とした。なお、サンプル電極の温度は、放射温度計(ミノルタ株式会社製、TR−630)により測定した。
各電極において得られた結果を、まとめて表1に示す。
Figure 2011024821
なお、表1において、○の記載は、実験の際に、熱電子放出による電流が10μAを超えたことを表している。また、×は、熱電子放出による電流が10μA以下であったことを示している。なお、−は、フィラメントに設置されたエミッタが急激に蒸発し、安定した熱電子放出が得られず、測定ができなかったことを表している。
この結果から、実施例1および実施例2に係る電極の場合、900℃〜1300℃のいずれの温度においても、良好な熱電子放出特性が得られることがわかる。一方、比較例1に係る電極では、900℃〜1200℃の温度範囲では、良好な熱電子放出特性は、得られなかった。また、比較例2に係る電極では、フィラメント温度が1200℃以上になると、測定中に急速にエミッタが蒸発し、安定した熱電子放出が得られず、熱電子放出による電流を正確に測定することはできなかった。
これらの結果から、実施例1および実施例2に係る電極は、900℃〜1300℃の広い温度範囲において、良好な熱電子放出特性を有することがわかった。
(仕事関数の評価)
以下の方法で、導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成された電極サンプル(以下、「実施例3に係る電極」と称する)の仕事関数を評価した。
(電極サンプルの作製)
実施例3に係る電極は、以下の方法により作製した。
まず、前述の粉末A1を2MPaの圧力で加圧成形して、直径1cm、厚み1mmの円盤形状の成形体を作製した。次に、この成形体を蓋付きカーボン容器に入れ、容器を10−3Pa以下の減圧雰囲気にした電気炉内で加熱し、焼結体を得た。熱処理温度は、1350℃とし、保持時間は、2時間とした。
X線回折の結果、得られた焼結体は、12CaO・7Al構造であり、結晶方位が特定の方向に偏在していないことから、多結晶体であることが確認された。また、得られた焼結体の光拡散反射スペクトルを測定し、クベルカムンク法により焼結体の電子密度を求めた。その結果、電子密度は、3×1020cm−3であった。なお、マイエナイト化合物の単結晶体はチョクラルスキー法やフローティングゾーン法で作製されており、本願のような作製法では単結晶体が得られない。
次に、この焼結体をメノウ乳鉢で粗粉砕し、寸法1mm角程度の試料を得た。この試料の片面に白金を蒸着し、白金蒸着面が接合面となるようにして、試料を導電性接着剤(藤倉化成製ドータイトXA−819A)を介して銅板(30mm角、厚さ3mm)に接着した。その後、この銅板を、大気下、200℃で2時間保持し、接着剤を硬化させた。これにより、実施例3に係る電極が得られた。
(試験方法)
この実施例3に係る電極を用い、マイエナイト化合物の焼結体の先端部と、通常の銅板電極(30mm角、厚さ3mm)との間隔が0.1mmとなるようにして、両電極を真空チャンバ内に配置した。両電極は、銅板が平行となるように配置した。次に、真空チャンバ内を約10−4Paまで排気した。実施例3に係る電極の表面(銅板側)を、カーボンヒーターで加熱し、電極を試験温度に調整した。試験温度は、50℃、68℃、77℃、86℃、および115℃とした。
この状態で、実施例3に係る電極と通常の銅板電極との間に電圧を印加し、この際に実施例3に係る電極から生じる熱電子放出電流を測定した。
(測定結果)
図10には、50℃〜115℃の各温度において得られた結果をまとめて示す。図10において、横軸は、印加電圧(kV)の平方根で示しており、縦軸は、熱電子放出電流I(μA)のln対数で示している。
この得られた結果から、各温度において、印加電圧が0となるときの飽和放出電流Isを外挿により求めた。また、この飽和放出電流Isを用いて、Richardsonプロット法により、実施例3に係る電極の仕事関数φを算出した。なお、Richardsonプロット法では、前述の飽和放出電流Isと測定温度Tから得られる指標ln(Is/T)を、温度とボルツマン定数kの積の逆数(1/kT)に対してプロットした際に得られる直線の傾きから、電極の仕事関数φが算定される(真空ナノエレクトロニクスの基礎、山本恵彦著、日本学術振興会、P80−81)。
図11には、Richardsonプロットの結果を示す。このプロットの直線の傾きから、実施例3に係る電極の仕事関数は、約0.6eVと予想された。なお、同図には、前述の非特許文献1に記載されている、単結晶の導電性マイエナイト化合物を電極として使用した場合の結果を同時に示す。この場合、電極の仕事関数は、約2.1eVと報告されており、実施例3に係る電極では、単結晶導電性マイエナイト製電極に比べて、仕事関数が有意に低減されることがわかった。
(アーク放電試験)
以下の方法により、実施例1、実施例2および比較例1、比較例2に係る電極のアーク放電試験を実施した。
まず、真空チャンバ内に、前述のいずれか一つのサンプル電極をカソードとして設置し、該電極から5mmの距離となるようにタングステン電極をアノードとして設置し、真空チャンバ内を約10−4Paまで排気した。次に、真空チャンバにArガスを導入し、内圧を338Paとした。さらに、サンプル電極(カソード)と、タングステン電極(アノード)との間に、100Vの電圧を印加した。
次に、両電極間に電圧を印加したまま、サンプル電極に通電を行い、アーク放電を行った。アーク放電の際には、アーク放電電流が0.2Aとなるように、サンプル電極の通電量を調整し、このときのサンプル電極の温度を前述の放射温度計により測定した。
放電を1時間継続させた後、実験を終了して、サンプル電極の変化状況を目視により観測した。また、試験後のサンプル電極の表面を、FE−SEM装置で観察した。さらに、試験前後の各サンプル電極の重量を測定し、これらの差から、各サンプル電極の重量減少量を評価した。
実験によって得られた結果をまとめて表2に示す。
Figure 2011024821
表2に示すように、目視の結果、実施例1、実施例2、および比較例1に係る電極では、エミッタ(電極)に、大きな変化は認められなかった。これに対して、比較例2に係る電極では、エミッタが部分的に脱落していることが観察された。また、比較例2に係る電極では、試験後の電極の周囲には、BaOエミッタから飛散したものと思われる黒色の付着物が多数付着していることが観察された。また、重量減少量の測定結果から、実施例1および実施例2に係る電極では、重量減少は、ほとんど認められないのに対して、比較例2に係る電極では、重量が減少していることがわかった。
図12には、比較例2に係る電極の試験後の表面形態を示す。この図12と図9との比較から、比較例2に係る電極は、アーク放電試験により、表面形態が大きく変化していること、すなわち図12では、溝が図9の溝に比べてより深くなっており、島部分がより小さな領域に分離されていることがわかる。
(実施例4)
(BaOとマイエナイト化合物の耐スパッタ性のシミュレーション計算)
モンテカルロ法によってAr原子が試料(ターゲット)に垂直入射した場合について、マイエナイト化合物のスパッタリング率を算出した。計算には、TRIMコード(J.F.Ziegler,J.P.Biersack,U.Littmark,“TheStopping and Range of Ions in Solid”,vol.1 of series“Stopping and Range of Ions in Matters”,Pergamon Press,New York(1984)を参照)を用いた。比較のため、BaOについてもスパッタリング率を計算した。スパッタリング率は、入射原子またはイオン1つにつき、スパッタリングされたターゲット原子の数であり、数値が小さいほど、スパッタリングされ難いことを示す。
このシミュレーションにおいては、ターゲットであるマイエナイト化合物およびBaOの密度を、それぞれ2.67g/cmおよび5.72g/cmとした。また、材料表面での原子間の結びつきの目安である表面結合エネルギーを、マイエナイト化合物については3.55eV/atom、BaOについては3.90eV/atomとした。ここで用いたeV/atomとは、材料の原子1つあたりのエネルギー値を示す単位である。
また、現在実用に供される蛍光ランプの放電ガスは、Arを主成分とした混合ガスである。そこで実施例4においては、飛来原子としてArについてシミュレーションを行った。このシミュレーションはArの運動エネルギーを0.1〜1.0keVの範囲で変えたときのマイエナイト化合物またはBaOの構成原子が、スパッタリングによって材料表面から外部へ飛び出す効率を見積もったものである。
図13に0.1keVのArが入射したときのBaOのスパッタリング率を1とした場合の計算結果を示す。図11における全てのエネルギー領域で、マイエナイト化合物のスパッタリング率は、BaOのそれを下回ることが示されている。以上のことから、蛍光ランプの放電用ガスであるArに対して、マイエナイト化合物は、BaOよりも高いスパッタリング耐性を示すことが分かった。
以上のことから、マイエナイト化合物の焼結体で構成された電極は、従来の電極に比べて、幅広い温度域において安定であり、良好な熱電子放出特性を有することがわかった。従って、マイエナイト化合物の焼結体で構成された電極を有する蛍光ランプでは、放電時の電極の消耗が抑制され、長期にわたって安定な特性を維持することができる。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2009年8月25日出願の日本国特許出願2009−194799に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、放電用の電極を有する蛍光ランプ等に適用することができる。
10 蛍光ランプ
20 放電空間
30 バルブ
40 電極
41 電極本体部
41a、41b 端部
45a、45b 支持線
50 プラグ
55 ピン部
60 保護膜
70 蛍光体
140 従来の電極
141a、141b 端部
142 フィラメント
145a、145b 支持線
146 エミッタ

Claims (9)

  1. 熱電子を放出させる電極本体部を有する放電ランプ用の電極であって、
    前記電極本体部は、導電性マイエナイト化合物の焼結体で構成される、電極。
  2. 前記電極本体部は、粒子同士が結合して形成されたネック部を有するクラスタ構造を備え、前記クラスタ構造の表面は、粒子が部分的に突出して構成された3次元凹凸構造を有する、請求項1に記載の電極。
  3. 前記電極本体部は、さらにアルカリ土類金属の酸化物を含む、請求項1または2に記載の電極。
  4. 前記アルカリ土類金属の酸化物は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)および酸化カルシウム(CaO)からなる群より選定された少なくとも1種の酸化物を含む、請求項3に記載の電極。
  5. 水銀および希ガスが充填された内部空間を有するバルブと、
    該バルブの内表面に設置された蛍光体と、
    前記内部空間で放電を発生、維持させる電極と、
    を有する放電ランプであって、
    前記電極は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電極である、放電ランプ。
  6. 熱電子を放出させる電極本体部を有する放電ランプ用の電極の製造方法であって、
    前記電極本体部は、
    (1a)マイエナイト化合物を含む粉末を準備するステップと、
    (1b)前記粉末から成形体を形成するステップと、
    (1c)前記成形体を焼成して焼結体を得るステップと、
    (1d)前記焼結体に導電性を付与するステップと、
    により形成される、製造方法。
  7. 熱電子を放出させる電極本体部を有する放電ランプ用の電極の製造方法であって、
    前記電極本体部は、
    (2a)マイエナイト化合物を含む粉末を準備するステップと、
    (2b)前記粉末から成形体を形成するステップと、
    (2c)前記成形体を焼成して、導電性を有する焼結体を得るステップと、
    により形成される、製造方法。
  8. 前記ステップ(1d)は、前記焼結体を還元性雰囲気で熱処理するステップを有する、請求項6に記載の製造方法。
  9. 前記ステップ(2c)は、前記焼結体を還元性雰囲気で熱処理するステップを有する、請求項7に記載の製造方法。
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