JPWO2010050238A1 - 耐摩耗性および靭性に優れたパーライト系レール - Google Patents

耐摩耗性および靭性に優れたパーライト系レール Download PDF

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Abstract

このパーライト系レールは、質量%で、C:0.65〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、P≦0.0150%、S≦0.0100%、Ca:0.0005〜0.0200%を含有し、残部として、Feおよび不可避的不純物を含む鋼からなり、レール頭部の頭部コーナー部および頭頂部の表面を起点として深さ10mmまでの範囲からなる頭表部がパーライト組織であり、かつ、その硬さがHv320〜500であり、パーライト組織中の長手方向の任意断面において、長辺が10〜100μmのMn硫化物系介在物が、単位面積あたり10〜200個/mm2の量で存在する。

Description

本発明は、海外の貨物鉄道で使用されるレールにおいて、頭部の耐摩耗性と靭性を同時に向上させることを目的としたパーライト系レールに関する。
本願は、2008年10月31日に、日本に出願された特願2008−281847号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
経済発展に伴い石炭などの天然資源の新たな開発が進められている。具体的にはこれまで未開であった自然環境の厳しい地域での採掘が進められている。これに伴い、資源を輸送する海外の貨物鉄道では軌道環境が著しく厳しくなっている。レールに対しては、これまで以上の耐摩耗性に加えて、寒冷地での靭性などが求められるようになってきた。このような背景から、現用の高強度レール以上の耐摩耗性と高い靭性を有したレールの開発が求められるようになってきた。
一般にパーライト鋼の靭性を向上させるには、パーライト組織の微細化、具体的には、パーライト変態前のオーステナイト組織の細粒化や、パーライトブロックサイズの微細化が有効であると言われている。オーステナイト組織の細粒化を達成するには、熱間圧延時の圧延温度の低減、圧下量の増加、さらには、レール圧延後に低温再加熱による熱処理が行われている。また、パーライト組織の微細化を図るには、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態の促進等が行われている。
しかし、レールの製造においては、熱間圧延時の成形性確保の観点から、圧延温度の低減、圧下量の増加には限界があり、十分なオーステナイト粒の微細化が達成できなかった。また、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態については、変態核の量の制御が困難なことや粒内からのパーライト変態が安定しない等の問題があり、十分なパーライト組織の微細化が達成できなかった。
これらの諸問題から、パーライト組織のレールにおいて靭性を抜本的に改善するには、レール圧延後に低温再加熱を行い、その後、加速冷却によりパーライト変態をさせ、パーライト組織を微細化する方法が用いられてきた。しかし、近年、耐摩耗性改善のためレールの高炭素化が進み、上記の低温再加熱熱処理の時に、オーステナイト粒内に粗大な炭化物が溶け残り、加速冷却後のパーライト組織の延性や靭性が低下するといった問題がある。また、再加熱であるため、製造コストが高く、生産性も低い等の経済性の問題もある。
そこで、圧延時の成形性を確保し、圧延後のパーライト組織を微細化する高炭素鋼レールの製造方法の開発が求められるようになってきた。この問題を解決するため、下記に示すような高炭素鋼レールの製造方法が開発された。これらのレールの主な特徴は、パーライト組織を微細化するために、高炭素鋼のオーステナイト粒が比較的低温で、かつ、小さい圧下量でも再結晶し易いことを利用していることである。これにより、小圧下の連続圧延によって整粒の微細粒を得、パーライト鋼の延性や靭性を向上させている(例えば特許文献1、2、3参照)。
特許文献1には、高炭素含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定の圧延パス間時間で連続3パス以上の圧延を行うことにより高延性レールを提供できることを開示している。
また特許文献2には、高炭素含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続2パス以上の圧延を行い、さらに、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供できることを開示している。
さらに特許文献3には、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、パス間で冷却を施し、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供できることを開示している。
しかし、特許文献1〜3の開示技術では、連続熱間圧延時の温度、圧延パス数やパス間時間の組合せにより、ある一定レベルのオーステナイト組織の微細化が図れ、若干の靭性の向上は認められるものの、鋼中に存在する介在物を起点とする破壊についてはその効果が認められず、抜本的に靭性が向上しないといった問題がある。
さらに、高炭素鋼ではオーステナイト組織の粒成長が早い。このため、圧延で微細化したオーステナイト組織が圧延後に粒成長し、加速冷却を行っても熱処理後のレールにおいて靭性が向上しないといった問題がある。
そこで、レールの代表的な介在物、即ち、MnSやAlの生成を抑制するため、Ca添加、酸素の低減、Alの低減が検討された。これらの製造方法の特徴は、溶銑予備処理において、Caの添加によりMnSをCaSとして無害化すること、さらには、脱酸元素の添加や真空処理を適用し、酸素をできだけ低減させ、溶鋼中の介在物を減少させることにあり、これら技術について検討された(例えば特許文献4、5、6参照)。
特許文献4の技術では、Ca添加量を適正化してSをCaSとして固定する手段により、MnS系伸長介在物を低減する高炭素シリコンキルド高清浄溶鋼の製造方法が提案されている。この技術は、凝固過程において偏析濃化するSが、同じく偏析濃化するCaや、溶鋼中で生成したカルシウムシリケートと反応し、逐次、CaSとして固定されるため、MnS伸長介在物の生成が抑制されるというものである。
特許文献5の技術では、MnO介在物を低減し、MnOより析出するMnS伸長介在物を低減する高炭素高清浄溶鋼の製造方法が提案されている。この技術では、大気精錬炉で溶製後、未脱酸もしくは弱脱酸状態で出鋼後、真空度1Torr以下での真空処理により溶解酸素を30ppm以下とする。次いでAl、Siを添加し、その後にMnを添加する。以上により、最終凝固部に晶出するMnSの晶出核となる2次脱酸生成物の数を減少させ、かつ酸化物中のMnO濃度を低下させる。これにより、MnSの晶出を抑制している。
特許文献6の技術では、鋼中の酸素量、Al量を低減させた高炭素高清浄溶鋼の製造方法が提案されている。この技術は、酸化物系介在物の総酸素値と損傷性の関係に基づき、総酸素量を限定することにより、耐損傷性に優れたレールを製造することができる。さらに、固溶Al量あるいは介在物の組成を好ましい範囲に限定することにより、レールの耐損傷性をより向上させるものである。
上記特許文献4〜6の開示技術は、鋼片段階で生成するMnSやAl系の介在物の形態や量を制御するものである。しかし、レール圧延では、熱間圧延中に介在物の形態が変化する。特に、圧延で長手方向に延伸したMn硫化物系介在物はレールの破壊起点となるため、鋼片段階での介在物の制御のみでは安定的にレールの耐損傷性や靭性を向上させることができないといった問題がある。
また、圧延後のオーステナイト組織の粒成長を抑制するため、析出物の適用が検討された。これらの製造方法の特徴は、合金を添加し、炭窒化物を析出させ、オーステナイト組織をピンニングすることにより粒成長を抑制することにあり、結果的に熱処理後の組織を微細化し、靭性を向上させるものである(例えば特許文献7)。
特許文献7の技術では、V、Nbを添加し、V、Nbの炭窒化物を析出させる。さらに、V、Nbの添加量に合わせた加速冷却を行い、圧延後のオーステナイト組織の粒成長を制御し、パーライト組織を微細化し、レールの靭性を向上されるものである。
また、特許文献7の開示技術は、合金を添加し、炭窒化物を析出させ、オーステナイト組織をピンニングすることにより粒成長を抑制するものである。しかし、合金の炭窒化物の生成量は、圧延温度や圧下量によって大きく変化する。その結果、粒成長の抑制に大きなばらつきが発生し、部分的に結晶粒の粗大化が発生し、合金の炭窒化物のみでは安定的にレールの耐損傷性や靭性を向上させることができないといった問題がある。
また、特許文献7の開示技術は、オーステナイト組織の微細化を達成することのみである。圧延で長手方向に延伸したMn硫化物系介在物からの損傷については全く効果がなく、安定的にレールの耐損傷性や靭性を向上させることができないといった問題がある。
さらに、特許文献4〜7の開示技術では、鋼の成分の変動、特に、不純物として混入する成分の変動により、組織の脆化が発生し、合金添加や酸素の低減による介在物制御、析出物の適用によるオーステナイト組織の微細化のみでは安定的にレールの耐損傷性や靭性を向上させることができないといった問題がある。
このような背景から、パーライト組織の耐摩耗性を向上させ、同時に、耐損傷性を向上させた耐摩耗性および靭性に優れたパーライト系レールの提供が望まれるようになった。
特開平7−173530号公報 特開2001−234238号公報 特開2002−226915号公報 特開平5−171247号公報 特開平5−263121号公報 特開2001−220651号公報 特開2007−291413号公報
本発明は、上述した問題点に鑑み創出したものであり、特に海外の貨物鉄道のレールで要求される、頭部の耐摩耗性と靭性を同時に向上させたパーライト系レールを提供することを目的とする。
本発明は以下の構成を要旨とする。
本発明のパーライト系レールは、質量%で、C:0.65〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、P≦0.0150%、S≦0.0100%、Ca:0.0005〜0.0200%を含有し、残部として、Feおよび不可避的不純物を含む鋼からなる。前記レールの頭部において、頭部コーナー部および頭頂部の表面を起点として深さ10mmまでの範囲からなる頭表部がパーライト組織であり、かつ前記パーライト組織の硬さがHv320〜500である。前記パーライト組織中の長手方向の任意断面(レールの長さ方向に平行な断面)において、長辺が10〜100μmのMn硫化物系介在物が、単位面積あたり10〜200個/mmの量で存在する。
ここでHvとは、JIS B7774で規定されたビッカース硬さをいう。
本発明のパーライト系レールでは、前記鋼は、質量%で、さらに、Mg:0.0005〜0.0200%、Zr:0.0005〜0.0100%の1種または2種を含有し、前記パーライト組織中の任意の横断面(レール幅方向に平行な断面)において、粒径が5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物が、単位面積当たり500〜50000個/mmの量で存在してもよい。
前記鋼は、質量%で、さらに、下記(1)〜(9)に記載した鋼成分のいずれか1種または2種以上を選択的に含有してもよい。
(1)Co:0.01〜1.00%
(2)Cr:0.01〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種
(3)V:0.005〜0.50%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種
(4)B:0.0001〜0.0050%
(5)Cu:0.01〜1.00%
(6)Ni:0.01〜1.00%
(7)Ti:0.0050〜0.0500%
(8)Al:0.0100超〜1.00%
(9)N:0.0060〜0.0200%
本発明によれば、レール鋼の成分、組織、硬さを制御し、これに加えてP、Sを低減し、Caを添加し、Mn硫化物系介在物の数を制御する。これにより、パーライト組織の耐摩耗性と靭性を向上させ、特に海外の貨物鉄道用レールの使用寿命を向上させることが可能となる。さらに、Mg、Zrを添加し、微細なMn硫化物系介在物、Mg、Zr系酸化物の数を制御することにより、パーライト組織の靭性をより向上させることができ、使用寿命を更に向上させることができる。
本発明レール鋼の横断面(長手方向に対して垂直な断面)での呼称を示す図である。 P量を0.0150%以下とした炭素量1.00%の鋼を用いて、S量を変化させ、さらにはCa、Mg、Zrを添加した鋼を溶解し、レール相当の圧延条件を模擬したラボ溶解圧延実験を行い、衝撃試験を行った結果であり、S量と衝撃値の関係におけるCa添加、Mg,Zr添加の影響を示す図である。 請求項1におけるレール鋼のMn硫化物系介在物の観察位置を示す図である。 請求項2におけるレール鋼のMn硫化物系介在物、Mg系酸化物、及びZr酸化物の観察位置を示す図である。 摩耗試験における試験片の採取位置を示す図である。 摩耗試験の概要を示す図である。 衝撃試験における試験片の採取を示す図である。 本発明レール鋼と比較レール鋼(鋼No.48、50、51、52、53、64、66、67)の摩耗試験結果における炭素量と摩耗量の関係を示す図である。 本発明レール鋼と比較レール鋼(鋼No.49、51、53、65、66、68)の衝撃試験結果における炭素量と衝撃値の関係を示す図である。 本発明レール鋼と比較レール鋼(鋼No.54〜63、P、S、Caの添加量が本発明の限定範囲外のレール)の衝撃試験結果における炭素量と衝撃値の関係を示す図である。 本発明レール鋼(鋼No.11〜13、18〜20、24〜26、29〜31、33〜35、36〜38、45〜47)の衝撃試験結果における炭素量と衝撃値の関係を示す図である。
以下に本発明を実施する形態として、耐摩耗性および靭性に優れたパーライト系レールについて詳細に説明する。なお、合金元素における含有単位は、質量%であり、以下、単に%と記載する。
図1は、本発明の耐摩耗性および靭性に優れたパーライト系レールの長手方向に対して垂直な断面を示す。レール頭部3は、頭頂部1と、前記頭頂部1の両端に位置する頭部コーナー部2を有する。頭部コーナー部2の一方は、車輪と主に接触するゲージコーナー(G.C.)部である。
前記頭部コーナー部2および前記頭頂部1の表面を起点として深さ10mmまでの範囲を頭表部3a(実線の斜線部)と呼ぶ。また、前記頭部コーナー部2および前記頭頂部1の表面を起点として深さ20mmまでの範囲を符号3b(点線の斜線部)で示す。
まず、本発明者らは、レールの靭性に悪影響を及ぼす鋼の成分系を検討した。炭素量を変化させた鋼をベースに、PやSの含有量を変化させた鋼を用いて、レール相当の熱間圧延条件を模擬した試験溶解および熱間圧延実験を行い、レールの試作品を作製した。そして、衝撃試験により試作品の衝撃値を測定し、衝撃値に及ぼすP、S含有量の影響を検討した。
その結果、Hv320〜500レベルのパーライト組織の鋼では、P、Sの含有量が、いずれも、ある一定レベル以下に低減されると、衝撃値が向上することが確認された。
さらに、P、Sの組み合わせで最適含有量を検討した結果、いずれの元素も同時にある一定レベル以下まで添加量を低減させると、衝撃値が大幅に向上することが確認された。
次に、本発明者らは、レールの衝撃値をさらに向上させるため、衝撃値を支配している因子の解明を進めた。その結果、衝撃値が低いレールでは、熱間圧延で長手方向に延伸したMn硫化物系介在物が多数存在し、破壊の起点になっていることを確認した。
そこで、本発明者らは、長手方向に延伸したMn硫化物系介在物の生成機構を解明した。レール製造においては、鋼片を、一旦、1200〜1300℃まで再加熱して熱間圧延を行っている。この熱間圧延条件とMnSの形態との関係を調査した。その結果、圧延温度が高い場合、及び圧延時の圧下量が大きい場合に、軟質なMn硫化物系介在物は塑性変形を容易に引き起こし、レール長手方向に延伸しやすいことが確認された。
そこで、本発明者らは、Mn硫化物系介在物自体の延伸を抑制する方法を検討した。試験溶解および熱間圧延実験を行った結果、Mn硫化物系介在物は、様々な酸化物を核にして生成することが確認された。さらに、酸化物の硬さとMn硫化物系介在物の形態を調査した結果、Mn硫化物系介在物の核となる介在物を硬質化することにより、この延伸が抑制できることを確認した。
さらに本発明者らは、Mn硫化物系介在物の核となる硬質な介在物を検討した。融点が高い酸化物を用いてラボ実験を行った結果、比較的融点の高いCaは、酸化物に加えて硫化物を形成し、CaO−CaSの集合体を形成することを発見した。また、CaSは、Mn硫化物系介在物との整合性が高いため、このCaの酸化物と硫化物の集合体(CaO−CaS)にMn硫化物系介在物が効率的に生成することを突き止めた。
なお、整合性とは、2つの金属の結晶構造において、ある結晶面での格子定数(原子間の距離)の差のことを示す。この差が小さいほど、整合性が高い、すなわち2つの金属が結合し易いと考えられる。
次に本発明者らは、上記の検証を行うため、Caが添加された鋼を用いて試験溶解および熱間圧延実験を行った。その結果、Caの酸化物と硫化物の集合体(CaO−CaS)を核にして生成したMn硫化物系介在物は、熱間圧延後の延伸が殆どなく、結果的に長手方向に延伸したMn硫化物系介在物が少なくなることを確認した。
さらに、この鋼を用いて衝撃試験を行った結果、Caが添加され、延伸したMn硫化物系介在物が少ない鋼では、延伸したMn硫化物系介在物からの破壊が減少し、衝撃値が向上することが確認された。
また本発明者らは、Mn硫化物系介在物の延伸をさらに抑制させるため、酸化物と硫化物が集合体を形成するCaの添加量とSの添加量の関係を試験溶解および熱間圧延実験により検討した。その結果、SとCaの添加量の比を制御することにより、Caの硫化物が適度に生成して微細分散し、これにより、結果的に圧延後のMn硫化物系介在物の延伸をさらに抑制できることを確認した。
さらに本発明者らは、靭性に悪影響する延伸したMn硫化物系介在物の抑制に加えて、Mn硫化物系介在物や酸化物を利用して、熱間圧延後のオーステナイト組織の粒成長を抑制する方法を検討した。試験溶解および熱間圧延実験の結果、オーステナイト組織の粒成長を安定的に抑制するには、これまでの合金に代わって、オーステナイト組織に、ピンニング元素として、ナノサイズの酸化物やMn硫化物系介在物を微細分散させる必要があることを見出した。
そこで本発明者らは、酸化物やMn硫化物系介在物を微細分散させる方法を検討した。その結果、Mg、Zrの酸化物は、凝集せず、微細に均一に分散することが確認された。さらに、Mg系の酸化物及びZrの酸化物は、共に、Mn硫化物系介在物との整合性がよく、この微細な酸化物を核にしてMn硫化物系介在物も微細に分散することが確認された。
次に本発明者らは、Mg、Zrが添加された鋼を用いて熱間圧延実験を行った。その結果、ナノサイズの酸化物やMn硫化物系介在物が微細に分散し、圧延後のオーステナイト組織の粒成長が抑制できることを確認した。さらに、この鋼を用いて衝撃試験を行った結果、Mg、Zrが添加された鋼では、パーライト組織の微細化により衝撃値が向上することが確認された。
本発明者らは、P量を0.0150%以下とした炭素量1.00%の鋼を用いて、S量を変化させ、さらにはCa、Mg、Zrを添加して実験用の鋼を試験溶解した。次に、レール相当の熱間圧延条件を模擬したラボ圧延実験を行い、レールの試作品を作製した。そして、衝撃試験により試作品の衝撃値を測定し、衝撃値におよぼすS量や、Ca、Mg、Zr添加の影響を調査した。なお、素材の硬さは熱処理条件の制御によりHv400レベルに揃えた。
図2は、S量(ppm)と衝撃値の関係を示す。C量が1.00%の鋼(●印)において、P量を0.0150%以下とした場合、S量を0.0100%以下まで低減すると衝撃値が向上することが確認された。また、Caが添加された鋼(■印)の結果より、Caを添加することによって、延伸するMn硫化物系介在物が制御され、衝撃値が向上することが確認された。さらに、Ca,Mg,Zrが添加された鋼(△印)の結果より、Caに加えてMg、Zrを添加することによって、ナノサイズの酸化物やMn硫化物系介在物が微細に分散し、これにより、衝撃値が著しく向上することが確認された。
以上の研究結果に基づいて、前述した構成要件を有する本発明が完成された。この本発明の構成要件について、以下に説明する。
(1)鋼の化学成分の限定理由
本発明のパーライト系レールにおいて、鋼の化学成分を前述した数値範囲に限定する理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させて、かつ、耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.65%未満になると、本成分系では、レールに要求される最低限の強度や耐摩耗性が維持できない。また、C量が1.20%を超えると、粗大な初析セメンタイト組織が多量に生成し、耐摩耗性や靭性が低下する。このため、C添加量を0.65〜1.20%に限定する。なお、耐摩耗性を十分に確保するにはC量を0.90%以上とすることが望ましい。
Siは、脱酸材として必須の成分である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化により、レール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素である。さらに、過共析鋼において、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、靭性の低下を抑制する元素である。しかし、Si量が0.05%未満では、これらの効果が十分に期待できない。またSi量が2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成することや、酸化物の生成により、溶接性が低下する。さらに、焼入性が著しく増加し、レールの耐摩耗性や靭性に有害なマルテンサイト組織が生成する。このためSi添加量を0.05〜2.00%に限定する。なお、焼入れ性を確保し、耐摩耗性や靭性に有害なマルテンサイト組織の生成を抑制するには、Si量を0.20〜1.30%とすることが望ましい。
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Mn量が0.05%未満では、その効果が小さく、レールに必要とされる耐摩耗性の確保が困難となる。またMn量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、耐摩耗性や靭性に有害なマルテンサイト組織が生成し易くなる。このため、Mn添加量を0.05〜2.00%に限定する。なお、焼入れ性を確保し、耐摩耗性や靭性に有害なマルテンサイト組織の生成を抑制するには、Mn量を0.40〜1.30%とすることが望ましい。
Pは、鋼中に不可避的に含有される元素である。P量と靭性には相関があり、P量が増加すると、フェライト相の脆化によりパーライト組織が脆化し、脆性破壊、すなわちレール損傷が発生しやすくなる。このため、靭性を向上させるにはP量は低いことが望ましい。衝撃値とP量の相関を実験室的に確認した結果、P量を0.0150%以下まで低減すると、Pの偏析が著しく低減し、破壊の起点であるパーライト組織の脆化が抑制され、衝撃値が大きく向上することが確認された。この結果から、P量を0.0150%以下に限定する。P量の下限値については限定していないが、精錬工程での脱燐能力を考慮すると、P量は0.0020%程度が、実際に製造する際の限界になると考えられる。
なお、低P化(P量の低減化)の処理は、精錬コストの増大をもたらすばかりでなく、生産性を悪化させる。そこで、経済性も鑑み、衝撃値を安定的に向上させるには、P量を0.0030〜0.0100%とすることが望ましい。
Sは、鋼中に不可避的に含有される元素である。S量と靭性には相関があり、S量が増加すると、MnSの粗大化や密度の増加により応力集中が発生し、脆性破壊、すなわちレール損傷が発生しやすくなる。このため、靭性を向上させるには、S量は低いことが望ましい。衝撃値とS量の相関を実験室的に確認した結果、S量を0.0100%以下まで低減すると、破壊の起点であるMn硫化物系介在物の生成量が低減し、さらに、CaやZr、Mg添加によるMn硫化物系介在物の延伸抑制や微細化により、パーライト組織の脆化が抑制され、衝撃値が大きく向上することが確認された。この結果から、S量を0.0100%以下に限定する。S量の下限値については限定していないが、精錬工程での脱硫能力を考慮すると、S量0.0010%程度が実際に製造する際の限界になると考えられる。
なお、低S化(S量の低減化)の処理は、精錬コストの増大をもたらすばかりでなく、生産性を悪化させる。そこで、経済性も鑑み、延伸したMn硫化物系介在物の生成を抑制し、衝撃値を安定的に向上させるには、S量を0.0060以下とすることが望ましい。
また、さらに衝撃値を向上させるには、オーステナイト組織をピンニングする微細なMn硫化物系介在物を安定的に生成させ、延伸したMn硫化物系介在物の生成を抑制するため、S量を0.0020〜0.0035%とすることが望ましい。
Caは、脱酸・脱硫元素であり、Caの添加により、Caの酸化物と硫化物が集合体(CaO−CaS)を生成する。この集合体は、Mn硫化物系介在物の生成核となり、圧延後のMn硫化物系介在物が延伸することを抑制する。さらには、これを核にして、ナノサイズのMn硫化物系介在物が形成される。Caは、このような作用効果を有する元素である。Ca量が0.0005%未満では、その効果が小さく、Mn硫化物系介在物の生成核としては不十分となる。またCa量が0.0200%を超えると、鋼中の酸素量によっては、Mn硫化物系介在物の核とならない単独の硬質CaOの数が増加する。この結果、レール鋼の靭性が大きく低下する。このため、Ca添加量を0.0005〜0.0200%に限定する。
なお、延伸したMn硫化物系介在物の生成を確実に抑制し、かつMn硫化物系介在物の核とならず靭性に有害な硬質CaOの生成を未然に抑制し、衝撃値を向上させるには、Ca添加量を0.0015〜0.0150%の範囲にすることが望ましい。また、さらに衝撃値を向上させるには、オーステナイト組織をピンニングする微細なMn硫化物系介在物を安定的に生成させ、Mn硫化物系介在物の粗大化を抑制する必要があり、Ca量を0.0020〜0.0080%とすることが望ましい。
前述したように、SとCaは、酸化物と硫化物の集合体(CaO−CaS)を生成する。この集合体は、Mn硫化物系介在物の核となり、Mn硫化物系介在物の延伸に大きな影響をおよぼす。したがって、S添加量とCa添加量の制御が重要となる。そこで、S添加量、Ca添加量を変化させた鋼を試験溶解して、熱間圧延実験を行った。その結果、S添加量に対するCa添加量の比(S/Ca)の値が特定の範囲内にある場合、Caの酸化物や硫化物が適度に生成して微細分散し、これにより、結果的に圧延後のMn硫化物系介在物の延伸をさらに抑制できることがわかった。
具体的には、S/Caの値が0.45未満になると、Mn硫化物系介在物の核とならない単独の硬質CaOの数が若干増加する。この結果、レール鋼の靭性が低下する場合がある。また、S/Caの値が3.00を超えると、Mn硫化物系介在物の核となる硫化物の集合体(CaO−CaS)の数が低減し、Mn硫化物系介在物の延伸が助長される。この結果、レール鋼の靭性が低下する場合がある。このため、S/Caの値を0.45〜3.00の範囲とすることがさらに望ましい。
本発明では、Mg、Zrの1種または2種を含有することが好ましい。
Mgは、脱酸元素であり、主にOと結合して微細なナノサイズの酸化物(MgO)や硫化物(MgS)との複合体を形成する元素である。この複合体を核にして、ナノサイズのMn硫化物系介在物が形成される。その結果、圧延後のオーステナイト組織の粒成長が抑制され、レール鋼の組織が微細化し、パーライト組織の靭性を向上させることができる。しかし、Mg量が0.0005%未満では、微細な酸化物(MgO)と硫化物(MgS)の複合体の生成量が少なく、圧延後のオーステナイト組織の粒成長抑制効果が十分に得られない。Mg量が0.0200%を超えると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な酸化物から疲労損傷が発生する。このため、Mg添加量を0.0005〜0.0200%に限定する。
なお、オーステナイト組織をピンニングする微細な酸化物(MgO)、及びナノサイズのMn硫化物系介在物を形成する酸化物(MgO)と硫化物(MgS)の複合体の生成量を十分に確保し、疲労損傷に有害で粗大な酸化物の生成を十分に抑制し、衝撃値を向上させるには、Mg添加量を0.0010〜0.0050%の範囲にすることが望ましい。
Zrは、脱酸元素であり、主にOと結合して微細なナノサイズの酸化物(ZrO)を形成する元素である。この酸化物は、微細に均一に分散し、さらには、これを核にナノサイズのMn硫化物系介在物が形成される。その結果、圧延後のオーステナイト組織の粒成長が抑制され、レール鋼の組織が微細化し、パーライト組織の靭性を向上させることができる。しかし、Zr量が0.0005%未満では、微細な酸化物(ZrO)の生成量が少なく、圧延後のオーステナイト組織の粒成長を抑制する効果が十分に得られない。Zr量が0.0100%を超えると、Zrの粗大酸化物が生成し、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Zr添加量を0.0005〜0.0100%に限定する。
なお、オーステナイト組織をピンニングする微細な酸化物(ZrO)、ナノサイズのMn硫化物系介在物を形成する酸化物(ZrO)の生成量を十分に確保し、かつ疲労損傷に有害な粗大な酸化物の生成を十分に抑制し、衝撃値を向上させるには、Mg添加量を0.0010〜0.0050%の範囲にすることが望ましい。
また、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織や初析フェライト組織の硬度(強化)の向上、靭性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、及びレール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、Co、Cr、Mo、V、Nb、B、Cu、Ni、Ti、Al、及びNから選択される1種又は2種以上の元素が必要に応じて添加されることが好ましい。
上記元素の主な添加目的や作用効果を以下に示す。
Coは、摩耗面のラメラ構造やフェライト粒径を微細化し、パーライト組織の耐摩耗性を高める。Cr、Moは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、主に、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保する。V、Nbは、熱間圧延やその後の冷却課程で炭化物や窒化物を生成し、これにより、オーステナイト粒の成長を抑制する。さらに、フェライト組織やパーライト組織中に析出硬化することにより、パーライト組織の靭性と硬度を向上させる。また、炭化物や窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。
Bは、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、レール頭部の硬度分布を均一にする。Cuは、フェライト組織やパーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高める。Niは、フェライト組織やパーライト組織の靭性と硬度を向上させ、同時に、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。Tiは、溶接熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止する。Alは、共析変態温度を高温側へ移動させ、パーライト組織の硬度を高める。Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、パーライト変態を促進させる。そして、パーライトブロックサイズを微細化することにより、靭性を向上させる。
これらの成分の限定理由について、以下に詳細に説明する。
Coは、パーライト組織中のフェライト相に固溶する。これにより、レール頭部の摩耗面において、車輪との接触により形成させる微細なフェライト組織をより一層微細化し、耐摩耗性を向上させる。Co量が0.01%未満では、フェライト組織の微細化が図れず、耐摩耗性の向上効果が期待できない。また、Co量を1.00%超添加しても、上記の効果が飽和し、添加量に応じたフェライト組織の微細化が図れない。また、合金添加コストの増大により経済性が低下する。このため、Co添加量を0.01〜1.00%に限定する。
Crは、平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与する。同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる。しかし、Cr量が0.01%未満では、その効果は小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、Cr量が2.00%を超える過剰なCr添加を行うと、焼入れ性が増加し、マルテンサイト組織が生成する。これにより頭部コーナー部や頭頂部に、マルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Cr添加量を0.01〜2.00%に限定する。
Moは、Crと同様に、平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与する。このように、Moは、硬度(強度)を向上させる元素であるが、Mo量が0.01%未満では、その効果が小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、Mo量が0.50%を超える過剰なMo添加を行うと、変態速度が著しく低下する。これにより頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Mo添加量を0.01〜0.50%に限定する。
Vは、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、V炭化物やV窒化物のピニング効果により、オーステナイト粒を微細化する。さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したV炭化物、V窒化物による析出硬化により、フェライト組織やパーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、靭性を向上させる。Vは、このような作用効果を得るために有効な元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、Vは、比較的高温度域でV炭化物やV窒化物を生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満では、その効果が十分に期待できず、フェライト組織やパーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また、V量が0.50%を超えると、Vの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、フェライト組織やパーライト組織の靭性が低下する。これにより頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、V添加量を0.005〜0.50%に限定する。
Nbは、Vと同様に、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、Nb炭化物やNb窒化物のピニング効果により、オーステナイト粒を微細化する。さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したNb炭化物、Nb窒化物による析出硬化により、フェライト組織やパーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、靭性を向上させる。Nbは、このような作用効果を得るために有効な元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、Nbは、低温度域から高温度域まで、Nbの炭化物やNb窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、Nb量が0.002%未満では、その効果が期待できず、フェライト組織やパーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また、Nb量が0.050%を超えると、Nbの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、フェライト組織やパーライト組織の靭性が低下する。これにより頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Nb添加量を0.002〜0.050%に限定する。
Bは、オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物(Fe23(CB))を形成し、パーライト変態を促進させる。このパーライト変態の促進効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性が低減し、レールの頭表面から内部まで、より均一な硬度分布が得られる。このため、レールを高寿命化することができる。B量が0.0001%未満では、その効果が十分でなく、レール頭部の硬度分布には改善が認められない。また、B量が0.0050%を超えると、粗大な鉄炭ほう化物が生成し、靭性の低下を招く。このため、B添加量を0.0001〜0.0050%に限定する。
Cuは、フェライト組織やパーライト組織中のフェライト相に固溶し、固溶強化により、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。Cu量が0.01%未満では、その効果が期待できない。またCu量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により、靭性に有害なマルテンサイト組織が生成する。これにより頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Cu量を0.01〜1.00%に限定する。
Niは、フェライト組織やパーライト組織の靭性を向上させ、同時に、固溶強化により高硬度(強度)化を図る元素である。さらに、溶接熱影響部においては、Tiとの複合化合物であるNiTiの金属間化合物が微細に析出し、析出強化により軟化が抑制される。Ni量が0.01%未満では、その効果が著しく小さく、またNi量が1.00%を超えると、フェライト組織やパーライト組織の靭性が著しく低下する。これにより頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Ni添加量を0.01〜1.00%に限定する。
Tiは、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物やTiの窒化物が溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0050%未満では、その効果が少なく、Ti量が0.0500%を超えると、粗大なTiの炭化物やTiの窒化物が生成して、レールの靭性が低下する。同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Ti添加量を0.0050〜0.050%に限定する。
Alは、脱酸材として必須の成分である。また、共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高硬度(強度)化に寄与する元素である。Al量が0.0100%以下では、その効果が弱い。またAl量が1.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、粗大なアルミナ系介在物が生成する。これによりレールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。さらに、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下するため、Al添加量を0.0100超〜1.00%に限定する。
Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのフェライトやパーライト変態を促進させる。これにより主にパーライトブロックサイズが微細化することにより、靭性を向上させることができる。しかし、N量が0.0060%未満では、その効果が弱い。N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成し、レール頭部内部に疲労損傷が発生する。このため、N添加量を0.0060〜0.0200%に限定する。
(2)レール頭表部3aのパーライト組織の領域および硬さの限定理由
次に、レールの頭表部3aがパーライト組織であり、かつ、その硬さをHv320〜500の範囲に限定する理由について説明する。
まず、パーライト組織の硬さをHv320〜500の範囲に限定する理由について説明する。
本成分系では、パーライト組織の硬さがHv320未満になると、レールの頭表部3aの耐摩耗性の確保が困難となり、レールの使用寿命が低下する。また、ころがり面に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、レール頭表部3aの耐表面損傷性が大きく低下する。また、パーライト組織の硬さがHv500を超えると、パーライト組織の靭性が著しく低下し、レール頭表部3aの耐損傷性が低下する。このためパーライト組織の硬さをHv320〜500の範囲に限定する。
次に、硬さHv320〜500のパーライト組織の必要範囲を、レール鋼の頭表部3aに限定する理由を説明する。
ここで、レールの頭表部3aとは、図1中に示すように、頭部コーナー部2及び頭頂部1の表面を起点として深さ10mmまでの範囲(実線の斜線部)を示す。この部位に上記の成分範囲のパーライト組織が配置されていれば、車輪との接触による摩耗を抑制し、レールにおいて耐摩耗性の向上が図れる。
また、硬さHv320〜500のパーライト組織は、頭部コーナー部2及び頭頂部1の表面を起点として深さ20mmまでの範囲3b、すなわち、少なくとも図1中の点線の斜線部内に配置されていることが好ましく、これにより車輪との接触により、さらにレール頭部の内部まで摩耗した場合の耐摩耗性が、より一層確保され、レールの使用寿命の向上が図れる。したがって、硬さHv320〜500のパーライト組織は、車輪とレールが主に接するレール頭部3の表面近傍に配置することが望ましく、それ以外の部分はパーライト組織以外の金属組織であってもよい。
なお、レール頭部3の表面近傍において、硬さHv320〜500のパーライト組織を得る方法としては、後述するように、圧延後、または、再加熱後のオーステナイト領域のある高温のレール頭部3に加速冷却を行うことが望ましい。
本発明でのレール頭部3のうち、前記した頭表部3a、又は頭表部3aを含む深さ20mmまでの範囲3bの金属組織は、上記限定のようなパーライト組織のみからなることが望ましい。しかし、レールの成分系や熱処理製造方法によっては、パーライト組織中に面積率で5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入することがある。しかし、これらの組織が5%以下の含有量で混入しても、レール頭部5の耐摩耗性および靭性には大きな悪影響を及ぼさないため、上記限定のパーライト組織としては、微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織、マルテンサイト組織等が5%以下の含有量で混在したものも含んでいる。
言い換えれば、本発明でのレール頭部5のうち、前記した頭表部3a、又は頭表部3aを含む深さ20mmまでの範囲3bの金属組織は、95%以上がパーライト組織であれば良く、耐摩耗性や靭性を十分に確保するためには、頭部金属組織の98%以上をパーライト組織とすることが望ましい。
なお、後述する表1及び表2におけるミクロ組織の欄で微量と記載しているのは5%以下の含有量を意味し、パーライト組織以外の組織において微量と記載していないのは5%超の量(本発明外)を意味する。
(3)長辺が10〜100μmのMn硫化物系介在物の単位面積当たりの数の限定理由
本発明において、評価対象とした長手方向の任意断面のMn硫化物系介在物の長辺の長さを10〜100μmの範囲に限定する理由について詳細に説明する。
本成分系において、Mn硫化物系介在物の長辺の長さと実レールの損傷実績(実際にレールを使用した際の損傷状況)を調査した結果、レールの破壊は、応力集中が発生するMn硫化物系介在物の端部から発生していることを確認した。そこで、Mn硫化物系介在物の長さを変化させた鋼を試験溶解し、熱間圧延実験を行った結果、長辺の長さ10〜100μmのMn硫化物系介在物の数とレール耐損傷性には、よい相関があることが確認された。したがって、Mn硫化物系介在物の数の評価対象を長辺の長さ10〜100μmの範囲に限定する。
なお、耐損傷性に対しては、応力集中が著しい長辺の長さが長いMn硫化物系介在物の方が影響は大きく、長辺の長さが短いMn硫化物系介在物の方が影響は小さい。しかし、本発明鋼では長さ100μmを超えるMn硫化物系介在物は少なく、その鋼の特性を把握するには不適当であること、及び長さ10μm未満のMn硫化物系介在物は、耐損傷性に対して影響が少ないことから、表記のサイズのMn硫化物系介在物を評価対象とした。
次に、本発明において、長手方向の任意断面(レールの長さ方向に平行な断面)において、長辺10〜100μmのMn硫化物系介在物の単位面積当たりの数を10〜200個/mmに限定する理由について詳細に説明する。
長辺10〜100μmのMn硫化物系介在物の合計個数が単位面積あたり200個/mmを超えると、本成分系ではMn硫化物系介在物の数が過剰となり、介在物周囲の応力集中の発生により、レールの損傷の可能性が高くなる。鋼の機械的特性においても衝撃値の向上が望めない。また、長辺10〜100μmのMn硫化物系介在物の合計個数が単位面積あたり10個/mm未満になると、本成分系では鋼中に残存してしまう不可避的な水素を吸着するトラップサイトが著しく減少する。これにより水素性の欠陥(水素脆化)を誘発する可能性が高くなり、レールの耐損傷性を損なう可能性がある。そこで、長辺の長さ10〜100μmのMn硫化物系介在物の合計個数を単位面積当たり10〜200個/mmに限定する。
なお、本限定において、Mn硫化物系介在物とは、Caの酸化物と硫化物の集合体(CaO−CaS)を核に生成したMn硫化物系介在物と、それ以外のMn硫化物系介在の両方を評価対象とする。
また、Mn硫化物系介在物の数については、図3に示すようにレールの損傷が顕在化しているレール頭部3の長手方向の断面からサンプルを切り出し、硫化物系介在物の測定を行う。切り出した各サンプルのレール長手方向断面を鏡面研磨し、任意断面においてMn硫化物系介在物を光学顕微鏡で調査する。そして、上記限定のサイズの介在物数をカウントし、これを単位断面当たりの数として算定する。各レール鋼の代表値は、これら20視野の単位断面当たりの数の平均値とした。Mn硫化物系介在物の測定部位は、特に限定しないが、損傷の起点となるレール頭部5の表面から深さ3〜10mmの範囲を測定することが望ましい。
また、破壊の起点となるMn硫化物系介在物の影響をさらに少なくし、水素性の欠陥を未然に抑制し、レールの耐折損性を安定的に向上させるには、長辺10〜100μmのMn硫化物系介在物の合計個数を単位面積当たり20〜180個/mmの範囲に制御することが望ましい。
(4)粒径5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の単位面積当たりの数の限定理由
本発明では、任意の横断面において、粒径が5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物が、単位面積当たり500〜50000個/mmの量で存在することが好ましい。
評価対象となるMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の粒径を5〜100nmの範囲に限定する理由について詳細に説明する。
Mg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の粒径が5〜100nmの範囲であれば、オーステナイト組織中に生成した場合、粒界において十分なピンニング効果を示す。これにより、レールの耐損傷に悪影響することなく、結果的にパーライト組織を微細化し、確実に靭性を向上させることが確認された。したがってMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の評価対象を粒径5〜100nmの範囲に限定する。
なお、ピンニング効果に対しては、粒径が微細な介在物が多数存在するほど効果があるが、粒径5nm未満のMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物については、その測定が非常に困難である。また、粒径100nm超のMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物については、上記のようにピンニング効果が得られない。以上により、上記のサイズのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物を評価対象とする。
次に、好ましい形態において、長手方向の任意断面の粒径5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の単位mm当たりの量(個数)を500〜50000個に限定する理由について詳細に説明する。
粒径5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の合計個数が、単位面積あたり500個/mm未満になると、圧延後のオーステナイト組織中のピンニング効果が十分にあらわれない。このため、パーライト組織が粗大化し、レールの靭性が向上しない。また、粒径5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の合計個数が、単位面積あたり50000個/mmを超えると、析出が過剰となり、パーライト組織自体が脆化し、レールの靭性が低下する。そこで、粒径5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の合計個数を単位面積当たり500〜50000個/mmに限定する。
なお、本限定において、Mg系酸化物、Zr酸化物とは、一部にMn硫化物等の複合酸化物を含むものであり、また、Mn硫化物系介在物とは、Mg酸化物、Zr酸化物、Ca酸化物等の微細な酸化物を核に生成したものである。
Mg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物は、以下のように観察し,粒径、個数を測定する。まず、図4に示した任意の横断面から薄膜を採取し、透過型電子顕微鏡を用いて、倍率50000〜500000の倍率で観察する。析出物の粒径は、観察により個々の析出物の面積を求め、その面積に相当する円の直径として求める。
析出物は20視野の観察を行い、所定の直径5〜100nmに該当する析出物の数をカウントし、これを単位面積当たりの数に換算する。レール鋼の代表値は、これら20視野の平均値とする。なお、Mg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の測定部位は、特に限定しないが、靭性が必要とされるレール頭表部3aの表面から深さ3〜10mmの範囲を測定することが望ましい。
(5)本発明のレール鋼の製造方法
上記の成分組成及びミクロ組織を有する本発明のレール鋼は、特に限定するものではないが、通常は、以下の方法により製造される。まず転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、溶鋼を得る。そして、この溶鋼を用いて、造塊・分塊法あるいは連続鋳造法によって、圧延用の鋼片(鋼塊)を製造する。さらに、鋼片を1200℃以上に再加熱後、数パスの熱間圧延を行い、レールの成形を行う。その後、熱処理(再加熱、冷却)を施すことによりレールが製造される。
特に、溶銑段階では、通常の脱S、脱Pを行い(脱P、脱S処理)、さらに、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で十分な脱S、脱Pを行う(脱P、脱S処理)。次いで、Caを添加することにより、Mn硫化物系介在物を制御する。さらには、必要に応じてMg、Zrを添加することにより、ナノサイズの酸化物やMn硫化物系介在物を微細に分散させる。
製造条件の詳細を以下に示す。
溶銑段階では、低P化、低S化を図るには、通常の脱P処理及び脱S処理を丹念に行うことが望ましい。
脱Sについては、溶銑鍋(転炉精錬の前段階)において、時間をかけ、CaOを十分に添加し、CaSをスラグとして排出することが望ましい。
なお、ここでのCaOの添加は、S量が非常に高い溶銑からSを低減する場合に行う方法である。後述するCaの酸化物と硫化物の集合体(CaO−CaS)を生成させるために添加するCaO−Si合金の添加とは異なり、なんら影響を与えるものではない。
脱Pについては、転炉での精錬において、脱Pにより分離したP(Pなど)を含むスラグからのPの再溶解を防止するため、精錬途中でスラグを排出することが望ましい。
次いで、Caを添加することにより、Mn硫化物系介在物を制御する。
Caは、鋳造前の精錬工程で添加することが望ましい。Caの添加方法としては、取鍋でCa合金(Ca−Si合金など)ワイヤーやCa合金塊を添加したり、Ca合金粉末を吹き込むことが望ましい。
Ca合金としては、Ca−Si合金(50Ca−50Siなど)や、Fe−Si−Ca合金(Fe−30Si−30Caなど)、Ni−Ca合金(90Ni−10Caなど)が用いられる。Caは蒸気圧が高いため、純Caを添加すると、溶鋼のスプラッシュが発生したり、湯面上のスラグを巻き込んで溶鋼清浄性が悪化する。また、歩留も低い。そこで、Ca合金、例えば、Ca−Si合金を添加することが広く行われている。合金化することにより、Ca単体の場合よりもCaの活量が低下するので、添加時の蒸発が相対的に穏やかになり、歩留も向上する。
合金中のCa濃度が低い方が歩留も向上し、添加時のスプラッシュの発生も抑制される点で好ましい。ただし、Ca以外の他元素(Siなど)が同時に添加されることにも留意し、Ca合金組成を選択する必要がある。
Caの酸化物と硫化物の集合体(CaO−CaS)の凝集や偏析を防止するために、添加後、取鍋内のArバブリング等により溶鋼を撹拌し、Ca濃度を均一化すると同時に、大型介在物を浮上させることが望ましい。溶鋼量200t以上の場合、撹拌は5分から10分程度行うことが望ましい。過剰な撹拌は、介在物の凝集合体を進行させて介在物が粗大化するため、好ましくない。
Caの歩留を確保する観点からは、精錬工程の最後で添加するのが有利である。Caを、精錬工程ではなく、鋳造工程においてタンディッシュ内に添加しても良い。鋳造時のスループット(時間当たりの鋳造量)に応じて、Ca合金の添加速度を調整する必要がある。この場合、Ca添加後の溶鋼撹拌は、タンディッシュ内および鋳型内に限られるため、Ca濃度の均一性は、取鍋添加時よりやや劣る。そこで、鋳造段階におけるCaの酸化物と硫化物の集合体(CaO−CaS)の凝集や偏析を防止するため、電磁力などで凝固途中の溶鋼を攪拌することが望ましい。また、鋳造時の溶鋼の流れを制御するため、鋳造ノズルの形状を最適化することが望ましい。
また、Mn硫化物系介在物と整合性の高いCaSを効率的に生成させるには、過剰なCaOの生成を抑制するように溶鋼の酸素量を調整することが望ましい。酸素量を事前に調整するには、Al、Si等により事前に脱酸することが望ましい。
また、微細なナノサイズの酸化物やMn硫化物系介在物を微細分散させるには、通常の精錬後、高温の溶鋼鍋や鋳造時のターンディシュなどで、純金属Mg、Mg合金(Fe−Si−Mg、Fe−Mn−Mg、Fe−Si−Mn−Mg、Si−Mg)、又はZr合金(Fe−Si−Zr、Fe−Mn−Mg−Zr、Fe−Si−Mn−Mg−Zr)を添加することが望ましい。さらに、鋳造段階での凝集や偏析を防止するため、電磁力などで凝固途中の溶鋼を攪拌することが望ましい。また、鋳造時の溶鋼の流れを制御するため鋳造ノズルの形状を最適化することが望ましい。
なお、Ca、MgやZrを添加する順番については明記していないが、酸素量の少ない高炭素鋼では、Ca、MgやZrの酸化物を効率よく生成させるには、比較的酸化力の弱いCaを先に添加し、その後、酸化力の強いMgやZrを添加することが望ましい。
熱間圧延において、最終成形を行う温度は、形状と材質確保の観点から、900〜1000℃の範囲が望ましい。
また、熱間圧延後の熱処理に関して、レール頭部3において、硬さHv320〜500のパーライト組織を得るためには、圧延後、または、再加熱後のオーステナイト領域のある高温のレール頭部3に加速冷却を行うことが望ましい。加速冷却の方法としては、特許文献8(特開平8−246100号公報)、特許文献9(特開平9−111352号公報)等に記載されているような方法で熱処理(及び冷却)を行うことにより、所定の組織と硬さを得ることができる。
なお、レール圧延後、再加熱によって熱処理を行うには、レール頭部やレール全体を火炎や高周波で加熱することが望ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1〜6は、供試レール鋼の化学成分を示す。なお、残部はFe及び不可避的不純物からなる。この表1〜6に示す成分組成を有するレール鋼を以下の方法により製造した。
溶銑段階で脱P、脱Sを行い、さらに、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で十分な脱P、脱Sを行って溶鋼を得た。この溶鋼にCaを添加することによりMn硫化物系介在物を制御し、あるいはさらに、Mg、Zrを添加することによりナノサイズの酸化物やMn硫化物系介在物を微細に分散させた。そして、連続鋳造法により鋼塊を製造し、さらに鋼塊に対して熱間圧延を行った。その後、熱処理を施すことによりレールとした。
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(a)Mn硫化物系介在物の個数測定
図3は、請求項1に限定したレール鋼のMn硫化物系介在物の観察位置を示す。
図3に示されたように、得られたレール鋼の長手方向の断面のうち、頭表部3aを含むレール頭表面から3〜10mmの深さの領域からサンプルを切り出した。そして、前述した方法により、長辺が10〜100μmのMn硫化物系介在物の単位面積当たりの個数(個/mm)を求めた。
(b)Mn硫化物系介在物、Mg系酸化物、及びZr酸化物の個数測定
図4は、請求項2に限定したレール鋼のMn硫化物系介在物、Mg系酸化物、及びZr酸化物の観察位置を示す。
図4に示されたように、得られたレール鋼の横断面のうち、頭表部3aを含むレール頭表面から3〜10mmの深さの領域からサンプルを切り出した。そして、前述した方法により、粒径5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物の単位面積当たりの個数(個/mm)を求めた。
(c)頭表部3aのミクロ組織の観察および硬さの測定
レール頭部3の表面から深さ4mmの位置からサンプルを切り出した。そして、観察面を、研磨の後、ナイタール腐食液でエッチングした。JIS G 0551に準拠して、光学顕微鏡によって観察面のミクロ組織を観察した。
また、JIS B7774に従って、切り出したサンプルのビッカース硬さHvを測定した。なお、ビッカース硬度は、荷重98N(10kgf)でサンプルにダイヤモンド圧子を載荷して測定した。表には(Hv、98N)と記載した。
得られた結果を表7〜12に示す。なお、表中、*1の頭部材質は、レール頭部5の表面から深さ4mmの部位の材質であることを示す。
Figure 2010050238
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(d)摩耗試験
図5は、摩耗試験における試験片の採取位置を図示したものであり、図中の数字は寸法(mm)を示す。
図5に示されたように、レール鋼のうち、頭表部3aを含む領域から円盤状試験片を切り出した。そして、図6に示されたように、相対する2本の回転軸のうち、一方の回転軸に円盤状試験片(レール試験片4)を配置し、他方の回転軸には相手材5を配置した。レール試験片4に所定の荷重がかかる状態で、レール試験片4と相手材5を接触させた。この状態で、冷却用ノズル6から圧搾空気を供給して冷却しながら、2本の回転軸を所定の回転速度で回転させた。そして、70万回回転させた後、レール試験片4の重量の減少量(摩耗量)を測定した。
摩耗試験の条件を以下に示す。
試験機:西原式摩耗試験機(図6参照)
試験片形状:円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:レール頭部表面下2mm(図5参照)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
相手材:パーライト鋼(Hv380)
雰囲気:大気中
冷却:圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
(e)頭部衝撃試験
図7は、衝撃試験における試験片の採取位置を図示したものである。
図7に示されたように、レール鋼の横断面のうち、頭表部3aを含む領域がノッチ底になるように、レール幅(横断面)方向から試験片を切り出した。そして、得られた試験片に対して、以下の条件で衝撃試験を行い、衝撃値(J/cm)を測定した。
試験機:衝撃試験機
試験片形状:JIS3号2mmUノッチ
試験片採取位置:レール頭部表面下2mm(図7参照)
試験温度:常温(20℃)
得られた結果を表13〜15に示す。なお、表中、*2の摩耗試験結果は、上記した摩耗試験の結果であり、レール試験片13の重量の減少量(g)を摩耗量として示した。*3の衝撃試験結果は、上記した頭部衝撃試験の結果であり、衝撃値(J/cm)を示した。なお、衝撃値(J/cm)が大きいほど、靭性が優れていることを意味する。
本評価において、70万回での摩耗量が1.5g以下の場合、耐摩耗性に優れていると評価した。20℃の衝撃値は、鋼の炭素量によってその値が大きく変動するため、特性の優劣を示す基準値は設定しておらず、同一の炭素量のレール鋼にて、衝撃値の優劣を比較した。
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(1)本発明レール(47本)、鋼符号1〜47
鋼No.3、4、7、8、11〜14、17〜19、21〜25、29、30、32〜34、36、37、43、45、46:化学成分が上記本発明の限定範囲内で、長辺:10〜100μmのMn硫化物系介在物の数、レール頭部のミクロ組織、硬さが、本発明の限定範囲内である耐摩耗性および靭性に優れたパーライト系レールである。
鋼No.1、2、5、6、9、10、15、16、20、26〜28、31、35、38〜42、44、47:化学成分が上記本発明の限定範囲内で、長辺:10〜100μmのMn硫化物系介在物の数、粒径:5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物、及びMn硫化物系介在物の数、レール頭部のミクロ組織、硬さが、本発明の限定範囲内である耐摩耗性および靭性に優れたパーライト系レールである。
(2)比較レール(21本)、鋼符号48〜68
鋼No.48〜53:C、Si、Mnの成分が本発明の範囲外のレール。
鋼No.54〜55:P、Sの成分が本発明の範囲外のレール。
鋼No.56〜57:Caの成分が本発明の範囲外のレール。
鋼No.58〜63:P、S、Caの成分が本発明の範囲外のレール。
鋼No.64〜66:化学成分は本発明の範囲内であるが、頭部のミクロ組織が上記本発明の限定範囲外のレール。
鋼No.67〜68:化学成分は本発明の範囲内であるが、頭部の硬さが上記本発明の限定範囲外のレール。
表1〜15に示すように、本発明レール鋼(鋼No.1〜47)では、比較レール鋼(鋼No.48〜53)と比べて、鋼のC、Si、Mnの化学成分が本発明の限定範囲内である。このため、耐摩耗性や靭性に悪影響する初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、マルテンサイト組織を生成させることなく、安定的に本発明の限定範囲内の硬さのパーライト組織を得ることが可能となる。
本発明レール鋼(鋼No.1〜47)では、比較レール鋼(鋼No.64〜68)と比べて、頭部のミクロ組織がパーライト組織を含み、硬さが本発明の限定範囲内である。このため、レールの耐摩耗性や靭性を向上させることができる。
図8は、本発明レール鋼(鋼No.1〜47)と比較レール鋼(鋼No.48、50、51、52、53、64、66、67)の摩耗試験の結果を示す。
鋼のC、Si、Mnの化学成分を本発明の限定範囲内とし、これにより、耐摩耗性に悪影響する初析フェライト組織、マルテンサイト組織の生成を防止し、硬さを本発明の限定範囲内とする。以上により、いずれの炭素量においても、耐摩耗性を大きく向上させることができる。
図9は、本発明レール鋼(鋼No.1〜47)と比較レール鋼(鋼No.49、51、53、65、66、68)の衝撃試験の結果を示す。
鋼のC、Si、Mnの化学成分を本発明の限定範囲内とし、これにより、靭性に悪影響を及ぼす初析セメンタイト組織、マルテンサイト組織の生成を防止し、硬さを本発明の限定範囲内とする。以上により、いずれの炭素量においても、靭性を大きく向上させることができる。
図10に示すように、本発明レール鋼(鋼No.1〜47)は、比較レール鋼(鋼No.54〜63)と比べて、P、S、Caの添加量が本発明の限定範囲内である。このため、いずれの炭素量においても、パーライト組織のレールの靭性を大きく向上させることができる。
さらに、図11に示すように、本発明レール鋼(鋼No.11〜13、18〜20、24〜26、29〜31、33〜35、36〜38、45〜47)は、Caが添加され、さらには、Ca添加量の最適化が行われている。これにより、Mn硫化物系介在物が制御され、その数を本発明の限定範囲内としている。このため、パーライト組織のレールの靭性を向上させることができる。上記に加えて、Mg、Zrが添加されている場合、酸化物やMn硫化物系介在物を微細に分散させ、Mg系酸化物、Zr酸化物、Mn硫化物系介在物の数を500〜50000個/mmとしている。これにより、パーライト組織のレールの靭性をさらに向上させることができる。
本発明のパーライト系レールは、現用の高強度レール以上の優れた耐摩耗性および靭性を有する。このため、自然環境の厳しい地域で採掘された天然資源を輸送する貨物鉄道用のレールのように、著しく厳しい軌道環境で使用されるレールとして、本発明は好適に適用できる。
1:頭頂部
2:頭部コーナー部
3:レール頭部
3a:頭表部
3b:頭部コーナー部および頭頂部の表面を起点として深さ20mmまでの範囲
4:レール試験片
5:相手材
6:冷却用ノズル

Claims (11)

  1. 質量%で、
    C:0.65〜1.20%、
    Si:0.05〜2.00%、
    Mn:0.05〜2.00%、
    P≦0.0150%、
    S≦0.0100%、
    Ca:0.0005〜0.0200%を含有し、
    残部として、Feおよび不可避的不純物を含む鋼からなり、
    レールの頭部において、頭部コーナー部および頭頂部の表面を起点として深さ10mmまでの範囲からなる頭表部がパーライト組織であり、
    かつ、前記パーライト組織の硬さがHv320〜500であり、
    前記パーライト組織中の長手方向の任意断面において、長辺が10〜100μmのMn硫化物系介在物が、単位面積あたり10〜200個/mmの量で存在することを特徴とするパーライト系レール。
  2. 前記鋼は、質量%で、さらに、Mg:0.0005〜0.0200%、Zr:0.0005〜0.0100%の1種または2種を含有し、
    前記パーライト組織中の任意の横断面において、粒径が5〜100nmのMg系酸化物、Zr酸化物およびMn硫化物系介在物が、単位面積当たり500〜50000個/mmの量で存在することを特徴とする請求項1に記載のパーライト系レール。
  3. 前記鋼は、質量%で、さらに、Co:0.01〜1.00%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のパーライト系レール。
  4. 前記鋼は、質量%で、さらに、Cr:0.01〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパーライト系レール。
  5. 前記鋼は、質量%で、さらに、V:0.005〜0.50%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパーライト系レール。
  6. 前記鋼は、質量%で、さらに、B:0.0001〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパーライト系レール。
  7. 前記鋼は、質量%で、さらに、Cu:0.01〜1.00%を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のパーライト系レール。
  8. 前記鋼は、質量%で、さらに、Ni:0.01〜1.00%を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のパーライト系レール。
  9. 前記鋼は、質量%で、さらに、Ti:0.0050〜0.0500%を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のパーライト系レール。
  10. 前記鋼は、質量%で、さらに、Al:0.0100超〜1.00%を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のパーライト系レール。
  11. 前記鋼は、質量%で、さらに、N:0.0060〜0.0200%を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のパーライト系レール。
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