JP4964489B2 - 耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法 - Google Patents

耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法 Download PDF

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本発明は、重荷重鉄道で使用されるレールにおいて、耐摩耗性と延性を同時に向上せることを目的としたパーライト系レールの製造方法に関するものである。
高炭素含有のパーライト鋼はその優れた耐摩耗性から鉄道用レール材料として使用されてきた。しかしながら、炭素含有量が非常に高いため、延性や靭性が低いといった問題があった。
例えば、非特許文献1に示されている炭素量0.6〜0.7mass%の普通炭素鋼レールでは、JIS3号Uノッチシャルピー衝撃試験での常温の衝撃値は12〜18J/cm程度であり、このようなレールを寒冷地等の低温度域で使用した場合、微小な初期欠陥や疲労き裂から脆性破壊を引き起こすといった問題があった。
また、近年、レール鋼は耐摩耗性改善のため、より一層の高炭素化を進めており、これにともない、延性や靭性がさらに低下するといった問題があった。
一般にパーライト鋼の延性や靭性を向上させるには、パーライト組織(パーライトブロックサイズ)の微細化、具体的には、パーライト変態前のオーステナイト組織の細粒化やパーライト組織の微細化が有効であると言われている。オーステナイト組織の細粒化を達成するには、熱間圧延時の圧延温度の低減、圧下量の増加、さらには、レール圧延後の低温再加熱による熱処理が有効である。また、パーライト組織の微細化を図るには、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態の促進等が有効である。
しかし、レールの製造においては、熱間圧延時の成形性確保の観点から、圧延温度の低減、圧下量の増加には限界があり、十分なオーステナイト粒の微細化が達成できなかった。また、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態については、変態核の量の制御が困難なことや粒内からのパーライト変態が安定しない等の問題があり、十分なパーライト組織の微細化が達成できなかった。
これらの諸問題から、パーライト組織のレールにおいて延性や靭性を抜本的に改善するには、レール圧延後に低温再加熱を行い、その後、加速冷却によりパーライト変態をさせ、パーライト組織を微細化する方法が用いられてきた。しかし、近年、耐摩耗性改善のためレールの高炭素化が進み、上記の低温再加熱熱処理時に、オーステナイト粒内に粗大な炭化物が溶け残り、加速冷却後のパーライト組織の延性や靭性が低下するといった問題が生じていた。また、再加熱であるため、製造コストが高く、生産性も低い等の経済性の問題も生じていた。
そこで、圧延時成形性を確保し、圧延後のパーライト組織を微細化する高炭素鋼レールの製造方法の開発が求められるようになってきた。そして、例えば特許文献1、2、3に示すような高炭素鋼レールの製造方法が開発された。これらのレールの製造方法の主な特徴は、パーライト組織を微細化するため、高炭素鋼のオーステナイト粒が比較的低温かつ小さい圧下量でも再結晶し易いことを利用して、小圧下の連続圧延を行うことにより整粒の微細粒を得、その結果、パーライト鋼の延性や靭性を向上させる点にある。
特許文献1の開示技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続3パス以上の圧延を行うことにより高延性レールを提供することができる。
また、特許文献2の公開技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続2パス以上の圧延を行い、さらに、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供することができる。
さらに、特許文献3の公開技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、パス間で冷却を施し、さらに、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供することができる。
しかし、特許文献1〜3の開示技術では、鋼の炭素量、連続熱間圧延時の温度、圧延パス数やパス間時間の組合せによっては、オーステナイト組織の微細化が図れず、パーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しないといった問題がある。
特に、炭素含有量が高い鋼では、圧延直後の粒成長速度が大きいため、連続圧延時のパス間時間の選択によっては、パス間でのオーステナイト粒の成長が顕著となり、上記に示された連続圧延方法やパス間での冷却を行っても、オーステナイト組織の微細化が図れず、パーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しないといった問題がある。
そこで、炭素含有量が高い鋼において、圧延直後の粒成長を抑制し、オーステナイト組織の微細化を図る方法として、下記に示すような高炭素鋼レールの製造方法が開発された。これらのレールの主な特徴は、オーステナイト粒の粒成長を抑制するため、連続圧延時のパス間時間を鋼の炭素量や圧延回数で制御し、さらに、V、Nb、Nの添加量を調整し、微細粒を得、パーライト鋼の延性や靭性を向上させている点にある(例えば、特許文献4参照。)
特許文献4の開示技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、連続圧延時のパス間時間を鋼の炭素量や圧延回数で制御し、V、Nb、Nの添加量を調整し、さらに、圧延直後に加速冷却することにより、耐摩耗性および延性に優れたレールを提供することができる。
JISE1101−1990 特開平7−173530号公報 特開2001−234238号公報 特開2002−226915号公報 特開2005−290544号公報
しかし、特許文献4の開示技術では、V、Nb等の添加量と圧延直後に行う加速冷却の冷却速度の組合せによっては、オーステナイト組織の粒成長が抑制できず、最終組織であるパーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しないことがあった。また、粒成長が過度に抑制され、オーステナイト組織が非常に微細な状態となり、その後に熱処理を行っても、焼入れ性の低下によりパーライト組織の硬度が上昇せず、レールの耐摩耗性が確保できないことがあった。
このような背景から、V、Nb等の添加量と圧延直後に行う加速冷却の最適化を図り、安定的にオーステナイト組織の微細化を達成し、レール頭部の硬度を確保し、延性を向上させた耐摩耗性に優れたパーライト系レールの提供が望まれるようになった。
本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、その目的とするところは、重荷重鉄道のレールで要求される、頭部の耐摩耗性と延性を同時に向上させることを目的としたものである。
本発明のパーライト系レールの製造方法は、V、Nb等の添加量と圧延直後に行う加速冷却の最適化を図り、レール頭部の硬度や延性を安定的に向上させることを目的として創出されたものである。
すなわち、本発明の要旨とするところは、高炭素含有のパーライト系レールにおいて、レール頭部の硬度や延性を安定的に向上させることを目的として、圧延直後に行う加速冷却時の冷却速度を、V、Nb等の添加量に応じて制御することにより、レール頭部の硬度低下を防止し、同時に、安定的な延性の向上を達成するものである。本発明の構成は下記のとおりである。
(A)質量%で、C:0.85超〜1.40%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%を含有し、さらに、V:0.005〜0.500%およびNb:0.002〜0.050%のいずれか一方または両方を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるレール圧延用鋼片を熱間圧延することによりレールを形成し、
前記熱間圧延直後から前記レールの頭表面が900℃以下700℃以上になるまで、冷却速度(CR:℃/sec)が鋼レールの炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、Nb量(Nb、質量%)からなる下記の式1及び式2で示される値(CRL、CRH)からなるCRL<CR<CRHの範囲となるように第1の加速冷却処理を行うことを特徴とする、耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
CRL=1/15×(C/(3V+10Nb))…(式1)
CRH=5/9×(C/(3V+10Nb)) …(式2)
(B)質量%で、さらに、Cr:0.05〜2.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(C)質量%で、さらに、B:0.0001〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記A又はBに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(D)質量%で、さらに、Co:0.003〜2.00%、Cu:0.01〜1.00%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)〜(C)のいずれか一つに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(E)質量%で、さらに、Ni:0.01〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)〜(D)のいずれか1つに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(F)質量%で、さらに、Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150%の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)〜(E)のいずれか1つに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(G)質量%で、さらに、Al:0.010〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)〜(F)のいずれか1つに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(H)質量%で、さらに、Zr:0.0001〜0.2000%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)〜(G)のいずれか1つに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(I)質量%で、さらに、N:0.0060〜0.0200%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)〜(H)のいずれか1つに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
(J)前記第1の加速冷却処理後のレール頭表面に対して、レール頭部表面の加速冷却開始温度である700℃以上から少なくとも600℃まで、冷却速度が2〜30℃/secである第2の加速冷却処理を行い、その後放冷することを特徴とする上記(A)〜(I)のいずれか1つに記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
本発明によれば、重荷重鉄道のレールで要求される、頭部の耐摩耗性と延性を同時に向上させるため、圧延直後に行う加速冷却時の冷却速度をV、Nb等の添加量に応じて制御することにより、安定的な延性の向上を可能とし、同時に、レール頭部の硬度低下を防止し、耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールを製造することができる。
以下に本発明を実施する形態として、耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法につき、詳細に説明する。このパーライト系レールの製造方法は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉を用いて溶鋼の化学的成分を調整し、この溶鋼を鋳造すること(例えば連続鋳造又は造塊・分塊)によりレール圧延用鋼片を形成し、その後レール圧延用鋼片を熱間圧延することによりレールを形成し、さらに熱間圧延直後からレールの頭表面が900℃以下700℃以上になるまで、鋼レールの炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、Nb量(Nb、質量%)からなる式で示される範囲の冷却速度(CR:℃/sec)で加速冷却するものである。これにより、レール頭部において、高延性で高硬度なパーライト組織を安定的に生成させることが可能となる。また、第1の加速冷却処理の後に、第2の加速冷却処理を行い、その後放冷することにより、さらにレール頭部を高延性で高硬度にさせることができる。
以下、詳細に説明する。なお、以下の記載において、組成における質量%は、単に%とする。
まず、発明の経緯について説明する。本発明者らは、実験により炭素量、V量、Nb量の添加量を変化させた鋼を用いて熱間圧延を行い、圧延直後のオーステナイト粒の粒成長挙動を調査した。その結果、オーステナイト粒の粒成長は、鋼の炭素量の増加にともない促進されるが、鋼のV量、Nb量の増加にともない、VC、NbCの析出によるピンニングより抑制されることを確認した。
これらの結果に基づき、本発明者らは、上記の鋼を用いて熱間圧延実験を行い、圧延直後の冷却速度(圧延直後から850〜700℃までの平均冷却速度)とオーステナイト粒径との相関および圧延後の硬さと延性の相関を調査した。その結果、延性を確保し、かつ、硬さを確保するには、パーライト変態前のオーステナイト粒径をある一定範囲に制御する必要があること、さらに、この範囲内にオーステナイト粒径に収めるためには、オーステナイト粒の粒成長に大きな影響を与える鋼の炭素量、V量、Nb量に基づき圧延直後の冷却速度を制御する必要があることを確認した。
そこで、本発明者らは、適切なオーステナイト粒径に収めるための最適な冷却速度と鋼の炭素量、V量、Nb量との相関を実験データに基づき解析した。その結果、最適な冷却速度には一定の範囲があること、さらに、冷却速度を、鋼の炭素量、V量、Nb量からなる式で算定される値の範囲内に治めることにより、延性を確保し、かつ、硬度低下を防止する最適なオーステナイト粒径が得られることを確認した。
以上のことから、本発明者らは、高炭素含有の鋼片をレールとして熱間圧延して製造する際に、圧延直後のレール頭部の冷却速度(圧延直後の温度から900℃以下700℃以上になるまでの平均冷却速度)を、鋼の炭素量、V量、Nb量からなる式で算定される値の範囲内に治めることにより、パーライト変態前のオーステナイト粒径を最適化し、レール頭部の延性と耐摩耗性を同時に確保できることを見出した。
次に、本発明における各限定理由について詳細に説明する。まず、鋼レールの化学成分の限定理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ、耐摩耗性を確保する上で有効な元素である。C量が0.85%以下では、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率が確保できず、重荷重鉄道において耐摩耗性が維持できない。また、C量が1.40%を超えると、本製造方法では、旧オーステナイト粒界に初析セメンタイト組織が多量に生成し、耐摩耗性や延性が低下する。このため、C量を0.85超〜1.40%に限定した。なお、炭素量を0.95%以上に限定すると、耐摩耗性がより一層向上し、レールの使用寿命の改善効果が高くなる。
Siは、脱酸材として必須の成分である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素である。さらに、過共析鋼において、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、延性の低下を抑制する元素である。しかし、Si量が0.05%未満では、これらの効果が十分に期待できない。また、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成することや、酸化物の生成により溶接性が低下する。さらに、焼入性が著しく増加し、レールの耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成する。このため、Si量を0.05〜2.00%に限定した。
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Mn量が0.05%未満では、その効果が小さく、レールに必要とされる耐摩耗性の確保が困難となる。また、Mn量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成し易くなる。このため、Mn量を0.05〜2.00%に限定した。
Vは、圧延中やその後の冷却過程で析出したV炭化物、V窒化物、V炭窒化物によりオーステナイト粒の粒成長を抑制し、また、圧延後の冷却過程で析出したV炭化物、V窒化物、V炭窒化物による析出硬化により、パーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満では、その効果が十分に期待できず、パーライト組織の延性や硬度の向上は認められない。また、V量が0.500%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大なV炭化物、V窒化物、V炭窒化物が生成し、レールの延性や耐疲労損傷性が低下する。このため、V量を0.005〜0.500%に限定した。
Nbは、圧延中やその後の冷却過程で析出したNb炭化物、Nb炭窒化物によりオーステナイト粒の粒成長を抑制し、かつ、連続圧延後の冷却過程で析出したNb炭化物、Nb炭窒化物による析出硬化により、パーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。しかし、その効果は、Nb量が0.002%未満では期待できず、パーライト組織の硬度の向上や延性の改善は認められない。また、Nb量が0.050%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大なNb炭化物やNb炭窒化物が生成し、レールの延性や耐疲労損傷性が低下する。このため、Nb量を0.002〜0.050%に限定した。
また、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織の硬度(強化)の向上、パーライト組織の延性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、レール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、Cr、Mo、B、Co、Cu、Ni、Ti、Mg、Ca、Al、Zr、Nの元素を必要に応じて添加することもできる。
これらの成分の限定理由について、以下に詳細に説明する。
Crは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させることにより耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Cr量が0.05%未満では、その効果は小さい。また、Cr量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、マルテンサイト組織が多量に生成し、レールの耐摩耗性や延性が低下する。このため、Cr量を0.05〜2.00%に限定した。
Moは、Cr同様パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。Mo量が0.01%未満では、その効果が小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、Mo量が0.50%を超えると、パーライト組織の変態速度が著しく低下し、延性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなる。このため、Mo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
Bは、旧オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物を形成し、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時に、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭部の硬度分布を均一化することにより、レールの延性低下を防止し、高寿命化を図る元素である。しかし、B量が0.0001%未満では、その効果は十分でなく、初析セメンタイト組織の生成やレール頭部の硬度分布には改善が認められない。また、B量が0.0050%を超えると、旧オーステナイト粒界に粗大な鉄の炭ほう化物が生成し、レールの延性、さらには、耐疲労損傷性が大きく低下することから、B量を0.0001〜0.0050%に限定した。
Coは、パーライト組織中のセメンタイト相とフェライト相に均等に固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であり、さらに、パーライトの変態エネルギーを増加させて、パーライト組織を微細にすることにより延性を向上させる元素である。さらに、レール頭部の摩耗面において、車輪との接触により形成させる微細なフェライト組織をより一層微細化し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Co量が0.003%未満では、その効果が期待できない。また、Co量が2.00%を超えると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、ころがり面にスポーリング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。このため、Co量を0.003〜2.00%に限定した。
Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。しかし、Cu量が0.01%未満では、その効果が期待できない。また、Cu量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなる。さらに、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、レールの延性が低下する。このため、Cu量を0.01〜1.00%に限定した。
Niは、Cu添加による熱間圧延時の脆化を防止し、同時に、フェライトへの固溶強化によりパーライト鋼の高硬度(強度)化を図る元素である。さらに、溶接熱影響部においては、Tiと複合でN Tiの金属間化合物が微細に析出し、析出強化により軟化を抑制する元素である。しかし、Ni量が0.01%未満では、その効果が著しく小さい。また、Ni量が1.00%を超えると、フェライト相の延性が著しく低下し、ころがり面にスポーリング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。このため、Ni量を0.01〜1.00%に限定した。
Tiは、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0050%未満では、その効果が少ない。また、Ti量が0.0500%を超えると、粗大なTiの炭化物、Tiの窒化物が生成して、レールの延性、これに加えて耐疲労損傷性が大きく低下することから、Ti量を0.0050〜0.0500%に限定した。
Mgは、O、または、SやAl等と結合して微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において、結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO、MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Mg量が0.0005%未満では、その効果は弱い。また、Mg量が0.0200%を超えると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの延性、さらには、耐疲労損傷性を低下させるため、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定した。
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらに、CaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Ca量が0.0005%未満では、その効果は弱い。また、Ca量が0.0150%を超えると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの延性、さらには、耐疲労損傷性を低下させるため、Ca量を0.0005〜0.0150%に限定した。
Alは、脱酸材として必須の成分である。また、共析変態温度を高温側へ、共析炭素量を高炭素側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高強度化と初析セメンタイト組織の生成抑制に有効な元素である。しかし、Al量が0.010%未満では、その効果が弱い。また、Al量が1.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる粗大なアルミナ系介在物が生成し、レールの延性、さらには、耐疲労損傷性が低下する。また、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下するため、Al量を0.010〜1.00%に限定した。
Zrは、ZrO介在物がγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レール偏析部に生成する初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかし、Zr量が0.0001%未満では、ZrO系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。その結果、偏析部に初析セメンタイト組織が生成し、レールの延性を低下させる。また、Zr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系介在物が多量に生成し、レールの延性が低下することや、粗大Zr系介在物を起点とした疲労損傷が発生しやすくなり、レールの使用寿命が低下する。このため、Zr量を0.0001〜0.2000%に限定した。
Nは、連続圧延中に、V窒化物やV炭窒化物、Nb炭窒化物の析出を促進させ、オーステナイト粒の粒成長を抑制する元素である。また、連続圧延後の冷却過程で、V窒化物やV炭窒化物、Nb炭窒化物の析出を促進させ、パーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。これに加えて、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、N量が0.0060%未満では、その効果は弱い。また、N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成することから、N量を0.0060〜0.0200%に限定した。
なお、レール鋼においては、Nは不純物として最大0.0050%程度含まれる。したがって、N量を上記範囲にするためには、Nを意図的に添加する必要がある。
次に、熱間圧延後の熱処理条件を限定した理由について説明する。
まず、第1の加速冷却処理すなわちレール頭表面の加速冷却における冷却範囲を、熱間圧延直後から900℃以下700℃以上までの範囲に限定した理由を説明する。高炭素鋼ではオーステナイト粒の粒成長が早い。したがって、圧延直後に加速冷却を開始しないとオーステナイト粒が粗大化し、パーライト組織の延性が向上しない。このため、加速冷却は圧延直後に開始する必要がある。
次に、加速冷却の終了温度範囲について説明する。900℃を超えた温度域でレール頭部表面の加速冷却を停止すると、鋼の炭素量によっては、加速冷却終了後にオーステナイト粒の粒成長が著しく、オーステナイト粒が粗大化し、レール頭部の延性が低下する。また、700℃未満までレール頭部表面の加速冷却を行うと、冷却速度によっては、加速冷却後に発生するレール頭部内部からの復熱量が多く、レール頭部表面の温度が上昇するためオーステナイト粒が粗大化し、レール頭部の延性が低下する。このため、加速冷却終了温度を900℃以下700℃以上とした。
次に、第1の加速冷却処理の冷却速度を限定した理由について詳細に説明する。圧延直後のオーステナイト粒の粒成長挙動を実験により調査した。その結果、オーステナイト粒の粒成長は、鋼の炭素量の増加にともない促進され、鋼のV量、Nb量の増加にともない、VC、NbCの析出によるピンニングより抑制されることを確認した。
これらの結果に基づき、上記の鋼を用いて熱間圧延実験を行い、圧延直後の冷却速度(圧延直後から900℃以下700℃以上になるまでの平均冷却速度)とオーステナイト粒径の相関および圧延後の硬さと延性の関係を調査した。その結果、延性を確保し、かつ、硬さを確保するには、パーライト変態前のオーステナイト粒径をある一定範囲に制御する必要があること、さらに、この範囲内にオーステナイト粒径に収めるためには、オーステナイト粒の粒成長に大きな影響を与える鋼の炭素量、V量、Nb量に基づき圧延直後の冷却速度を制御する必要があることを確認した。
そこで、本発明者らは、適切なオーステナイト粒径に収めるための最適な冷却速度と鋼の炭素量、V量、Nb量との相関を実験データに基づき重相関解析を行った。その結果、最適な冷却速度には一定の範囲があることを見出し、さらに、その冷却速度は鋼の炭素量、V量、Nb量からなる式であらわせることを知見し、冷却速度の下限値(CRL:℃/sec)を示すものとして1式、冷却速度の上限値(CRH:℃/sec)を示すものとして2式を導き出し、冷却速度(CR:℃/sec)としてCRL<CR<CRHの範囲を限定した。

CRL=1/15×((C/(3V+10Nb)) …(式1)
CRH=5/9×((C/(3V+10Nb)) …(式2)
ただし、C=レール圧延用鋼片の炭素量(質量%)、V=レール圧延用鋼片のV量(質量%)、Nb=レール圧延用鋼片のNb量(質量%)である。

冷却速度(CR)が下限値であるCRL以下となると、オーステナイト組織の微細化が図れず、最終組織であるパーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しない、また、冷却速度(CR)が上限値であるCRH以上となると、粒成長が過剰に抑制され、オーステナイト粒が非常に微細な状態となり、その後に熱処理を行っても、焼入れ性の低下によりパーライト組織の硬度が上昇せず、レールの耐摩耗性が確保できない。このため、圧延直後の冷却速度(CR)をCRL<CR<CRHの範囲に限定した。
図1に、炭素量を変化させたV量0.01%の鋼を用いて、熱間圧延および圧延直後の加速冷却実験を行い、パーライト変態後の鋼板の硬度測定、引張試験を行った結果を示す。実験結果を鋼の炭素量と圧延直後の加速冷却速度の関係で整理した。
また、図2に、炭素量を変化させたNb量0.005%の鋼を用いて、熱間圧延および圧延直後の加速冷却実験を行い、パーライト変態後の鋼板の硬度測定、引張試験を行った結果を示す。実験結果を鋼の炭素量と圧延直後の加速冷却速度の関係で整理した。
さらに、図3に、炭素量を変化させたV量0.01%、Nb量0.005%の鋼を用いて、熱間圧延および圧延直後の加速冷却実験を行い、パーライト変態後の鋼板の硬度測定、引張試験を行った結果を示す。実験結果を鋼の炭素量と圧延直後の加速冷却速度の関係で整理した。
図1〜3に示したように、式1、式2で算定されるCRL、CRHの範囲内で圧延直後の加速冷却速度を制御することにより、いずれの炭素量およびV、Nbの添加量においても、オーステナイト組織の粒成長が適切に抑制され、最終組織であるパーライト組織の粗大化や焼入れ性の低下によるパーライト組織の硬度も発生せず、レールの耐摩耗性と延性を同時に確保できることを確認した。
次に、第1の加速冷却処理のあとに行う第2の加速冷却処理において、レール頭表面の加速冷却条件を限定した理由について、詳細に説明する。
まず、第2の加速冷却処理の開始温度について説明する。レール頭部表面の加速冷却開始温度が700℃未満になると、加速冷却前にパーライト変態が始まり、レール頭部の高硬度が図れず、耐摩耗性が確保できない。また、鋼の炭素量や合金成分によっては、初析セメンタイト組織が生成し、レール頭部表面の延性が低下する。このため、レール頭部表面の加速冷却開始温度を700℃以上とした。

次に、加速冷却速度の範囲について説明する。レール頭部表面の加速冷却速度が2℃/sec未満では、本レール製造条件では、レール頭部の高硬度が図れず、レール頭部の耐摩耗性の確保が困難となる。さらに、鋼の炭素量や合金成分によっては、初析セメンタイト組織が生成し、レールの頭部の延性が低下する。また、加速冷却速度が30℃/secを超えると、本成分系では、マルテンサイト組織が生成し、レール頭部の延性が大きく低下する。このため、レール頭部表面の加速冷却速度の範囲を2〜30℃/secの範囲に限定した。
次に、加速冷却温度の停止温度について説明する。600℃を超えた温度でレール頭部の加速冷却を停止すると、加速冷却終了後に、レール内部から過大な復熱が発生する。この結果、温度上昇によりパーライト変態温度が上昇し、パーライト組織の高硬度が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、パーライト組織が粗大化し、レール頭部の延性も低下する。このため、少なくとも600℃まで加速冷却を行うことを限定した。
なお、レール頭部の加速冷却を終了する温度の下限は特に限定してないが、レール頭部表面の硬度を確保し、かつ、頭部内部の偏析部等に生成しやすいマルテンサイト組織の生成を防止するには、実質的に400℃が下限となる。
次に、図4を用いてレールの部位について説明する。図4はレールの頭部断面表面位置での呼称を示したものである。「レール頭表面」とは、図4に示す頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)を含む部分である。上記に説明した熱間圧延直後の熱処理、さらに、熱間圧延加速冷却後に行われる熱処理における加速冷却開始温度、加速冷却停止温度、加速冷却速度は、図4に示すレール頭表面、または、頭表面から深さ5mmの範囲で測温すれば、レール頭部の全体を代表させることができ、さらに、この部分の温度や冷却速度を制御することにより、オーステナイト粒径や硬さを制御でき、耐摩耗性に優れた高延性なパーライト組織を得ることができる。
なお、本製造方法では、特に冷媒については限定していないが、所定の冷却速度を確保し、レール各部位において、冷却条件の制御を確実に行うため、エアー、ミスト、エアーとミストの混合冷媒を用いて、レール各部位の外表面に所定の冷却を行うことが望ましい。
また、レール頭部の硬さについては特に限定していないが、重荷重鉄道において耐摩耗性を確保するには、Hv350以上の硬さを確保することが望ましい。
また、本製造方法によって製造された鋼レールの頭部の金属組織はパーライト組織であることが望ましいが、成分系、さらには、加速冷却条件の選択によっては、パーライト組織中に微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織およびベイナイト組織が生成することがある。しかし、パーライト組織中にこれらの組織が微量に生成してもレールの疲労強度や延性に大きな影響をおよぼさないため、本発明に係る鋼レールの頭部の組織には、若干の初析フェライト組織、初析セメンタイト組織およびベイナイト組織が混在している場合も含まれている。
本発明に係るレールの製造方法により複数のレールを複数製造した。
表1−1及び表1−2にレール圧延用鋼片の化学成分、CRL値、CRH値、レール圧延用鋼片を用いて製造したレールの熱間圧延直後の頭表部の熱処理条件、頭部熱間圧延加速冷却後の頭表部の熱処理条件、レール頭表面下2mm位置のミクロ組織、及び硬さを示す。さらには、図5に示す位置から試験片を採取して行った引張試験の全伸び値、図6に示す位置から試験片を採取し、図7に示す方法で行った摩耗試験結果も併記した。図7において、3はレール試験片、4は相手材、5は冷却用ノズルである。
また、比較例となるレールを複数製造した。
表2−1及び表2−2に比較レール鋼の化学成分、CRL値、CRH値、供試レール鋼を用いて本発明のレール製造方法で製造したレールの熱間圧延直後の頭表部の熱処理条件、頭部熱間圧延加速冷却後の頭表部の熱処理条件、レール頭表面下2mm位置のミクロ組織、硬さを示す。さらには、図5に示す位置から試験片を採取して行った引張試験の全伸び値、図6に示す位置から試験片を採取し、図7に示す方法で行った摩耗試験結果も併記した。
なお、各種試験条件は下記のとおりである。
1.頭部引張試験
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS4号相似
平行部長さ:30mm、平行部直径:6mm、伸び測定評点間距離:25mm
試験片採取位置:レール頭部表面下5mm(図5参照)
引張速度:10mm/min、試験温度:常温(20℃)
2.摩耗試験
試験機:西原式摩耗試験機(図7参照)
試験片形状:円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:レール頭部表面下2mm(図6参照)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
相手材:パーライト鋼(Hv380)
雰囲気:大気中
冷却:圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
なお、レールの耐摩耗性については本試験の摩耗量を目安として評価した。本試験において摩耗量が1gを超えた場合は実軌道での耐摩耗性も確保できず、レールの使用寿命が著しく劣化すると判断した
Figure 0004964489
Figure 0004964489
本発明に係るレール、すなわち上記限定成分範囲内で、かつ、上記限定範囲内の熱間圧延直後の熱処理条件で製造したパーライト系レールは16本(鋼1〜16)である。
Figure 0004964489
Figure 0004964489
比較例に係るレールは17本(鋼17〜33)である。これらのうち、鋼17〜21は、上記限定成分範囲外で、上記限定範囲内の熱間圧延直後の熱処理条件で製造したレールである。また、鋼22〜29は、上記限定成分範囲内のレール鋼を、上記限定範囲外の熱間圧延直後の熱処理条件で製造したレールである。また鋼30〜33は、上記限定成分範囲内のレール鋼を、上記限定範囲外の熱間圧延加速冷却後の熱処理条件で製造したレールである。
さらに、図8は、表1−1、表1−2に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表2−1、表2−2に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部引張試験の結果を炭素量と全伸び値の関係を示したものである。図9は表1−1、表1−2に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表2−1、表2−2に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部摩耗試験の結果を炭素量と全伸び値の関係を示したものである。
表1−1、表1−2、表2−1、表2−2に示したように、本発明レール鋼(符号:1〜16)では、C、Si、Mn、V、Nbの添加量を本発明に係る範囲内に納めたため、比較レール鋼(符号:17〜21)と比べて、レールの耐摩耗性や延性に悪影響を与える初析セメンタイト組織、マルテンサイト組織、粗大な析出物などの生成が抑制された。その結果、耐摩耗性や延性に優れたパーライト組織を製造することができた。
また、表1−1、表1−2、表2−1、表2−2、表2、図8、図9に示したように、本発明レール鋼(符号:1〜16)では、熱間圧延直後のレール頭表部の加速冷却速度(CR値)や加速冷却停止温度等の熱処理条件を本発明に係る範囲内に納めたため、比較レール鋼(符号:22〜29)と比べて、炭素量が同一とした場合、レール頭部の延性を向上させ、耐摩耗性を確保することができた。
さらに、表1、表2に示したように、本発明レール鋼(符号:2、4〜16)では、熱間圧延加速冷却後のレール頭表部の熱処理条件をある一定範囲内に納めたため、比較レール鋼(符号:30〜33)と比べて、初析セメンタイト組織、マルテンサイト組織の生成が抑制された。その結果、レール頭部の硬度を向上させ、耐摩耗性を向上させることができた。
これらの結果から、高炭素含有の鋼レールの製造において、C、Si、Mn、V、Nbの添加量をある一定範囲内に納め、さらに、熱間圧延直後のレール頭表部の加速冷却速度(CR値)や加速冷却停止温度等の熱処理条件をある一定範囲内に納めることにより、レール頭部の延性を向上させ、耐摩耗性を確保することが可能となり、耐摩耗性および延性に優れたパーライト組織を呈したレールを製造できることが示された。
V量0.01%の鋼板の硬度測定、引張試験を行った結果を炭素量と圧延直後の加速冷却速度の関係で示した図。 Nb量0.005%の鋼板の硬度測定、引張試験を行った結果を炭素量と圧延直後の加速冷却速度の関係で示した図。 V量0.01%、Nb量0.005%の鋼板の硬度測定、引張試験を行った結果を炭素量と圧延直後の加速冷却速度の関係で示した図。 本発明のレール製造方法で製造したレールの頭部断面表面位置の呼称を示した図。 表1と表2に示す引張試験における試験片採取位置を示した図。 表1と表2に示す摩耗試験における試験片採取位置を示した図。 摩耗試験の概要を示した図。 表1に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表2に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部引張試験の結果を炭素量と全伸び値の関係で示した図。 表1に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表2に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部摩耗試験の結果を炭素量と全伸び値の関係で示した図。
符号の説明
1:頭頂部、
2:頭部コーナー部、
3:レール試験片、
4:相手材、
5:冷却用ノズル

Claims (10)

  1. 質量%で、C:0.85超〜1.40%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%を含有し、さらに、V:0.005〜0.500%およびNb:0.002〜0.050%のいずれか一方または両方を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるレール圧延用鋼片を熱間圧延することによりレールを形成し、
    前記熱間圧延直後から前記レールの頭表面が900℃以下700℃以上になるまで、冷却速度(CR:℃/sec)が鋼レールの炭素量(C、質量%)、V量(V、質量%)、Nb量(Nb、質量%)からなる下記の式1及び式2で示される値(CRL、CRH)からなるCRL<CR<CRHの範囲となるように第1の加速冷却処理を行うことを特徴とする、耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
    CRL=1/15×(C/(3V+10Nb)) … ( 式1 )
    CRH=5/9×(C/(3V+10Nb)) … ( 式2 )
  2. 質量%で、さらに、
    Cr:0.05〜2.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  3. 質量%で、さらに、
    B:0.0001〜0.0050%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  4. 質量%で、さらに、
    Co:0.003〜2.00%、
    Cu:0.01〜1.00%
    の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  5. 質量%で、さらに、
    Ni:0.01〜1.00%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  6. 質量%で、さらに、
    Ti:0.0050〜0.0500%、
    Mg:0.0005〜0.0200%、
    Ca:0.0005〜0.0150%
    の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  7. 質量%で、さらに、
    Al:0.010〜1.00%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  8. 質量%で、さらに、
    Zr:0.0001〜0.2000%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  9. 質量%で、さらに、
    N:0.0060〜0.0200%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
  10. 前記第1の加速冷却処理後のレール頭表面に対して、レール頭部表面の加速冷却開始温度である700℃以上から少なくとも600℃まで、冷却速度が2〜30℃/secである第2の加速冷却処理を行い、その後放冷することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
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