JP4949144B2 - 耐表面損傷性および耐摩耗性に優れたパーライト系レールおよびその製造方法 - Google Patents
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特許文献1の開示技術では、圧延を終えた鋼レールをオーステナイト域温度から800〜450℃間を冷却速度1〜4℃/secで冷却することにより、高硬度のパーライト組織のレールを提供することができる。
特許文献2の開示技術では、圧延を終えた鋼レールをオーステナイト域温度からレール頭部を囲続するノズルから気体冷却媒体をレール頭部に指向して適用することにより高硬度のパーライト組織のレールを製造することができる。
特許文献3の開示技術では、低炭素成分の鋼にMn、Cr等の合金を添加し、Hv330以上の硬さのベイナイト組織としたレールを提供することができる。
特許文献4の開示技術では、低炭素成分の鋼にMn、Cr等の合金量を制御し、Hv180〜240の硬さのベイナイト組織としたレールを提供することができる。
特許文献6の開示技術では、比較的低炭素含有(0.10〜0.65%C)のレール鋼を用いて、頭部コーナー部の硬さHv250〜410、頭頂部の硬さHv200〜250であるパーライト組織としたレールを提供できる。
また特許文献6の開示技術のレールでは、摩耗促進により頭側部の疲労損傷の防止は可能となるが、炭素量が低いため、加工硬化が促進せず、頭部コーナー部や頭側部の摩耗が増加し、レールの使用寿命が低下するといった問題があった。
本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、その目的とするところは、旅客鉄道の曲線区間レールで要求される、レール頭部の耐摩耗性と耐表面損傷性を向上させることを目的としたものである。
本発明の構成は下記のとおりである。
頭部コーナー部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が、硬さHv220〜350のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有し、
かつ、頭頂部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が硬さHv200〜250未満のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有することを特徴とするパーライト系レール。
Cr:0.01〜1.00%、
Mo:0.01〜0.50%、
V :0.005〜0.30%、
Nb:0.002〜0.030%、
B :0.0001〜0.0050%
Co:0.01〜1.00%、
Cu:0.01〜1.00%、
Ni:0.01〜1.00%、
Ti:0.0050〜0.0500%、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%、
Al:0.0040〜1.00%、
Zr:0.0001〜0.2000%、
N:0.0060〜0.0200%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)に記載のパーライト系レール。
熱間圧延後冷却前でありAr3点以上の温度の前記鋼レールの頭部コーナー部、あるいは、熱間圧延後に冷却されてさらにAc3点+30℃以上の温度に加熱された前記鋼レールの頭部コーナー部を、700℃以上の温度域から、0.5〜6℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部コーナー部の温度が650〜450℃達した時点で加速冷却を停止し、その後、自然放冷する工程と、
を有し、
前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部は前記頭部コーナー部からの伝熱により冷却されることを特徴とするパーライト系レールの製造方法。
(D)前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部の冷却速度を、0.3〜2.0℃/secとし、且つ前記鋼レールの頭部コーナー部の冷却速度より遅くすることを特徴とする上記(C)に記載のパーライト系レールの製造方法。
そこで、本発明者らは、この摩耗速度を決定している軌道因子を解明した。その結果、摩耗速度はころがり面の硬さと非常によい相関があり、ころがり面の硬さが高いと摩耗速度が低下することを確認した。
以上から、頭頂部の疲労損傷の発生を防止するには、レール頭頂部の初期硬さをある一定範囲に収める必要があることが見出された。
以上から、頭部コーナー部の耐摩耗性を確保するには、頭部コーナー部の初期硬さをある一定範囲に収める必要があることが見出された。
まず、頭部コーナー部の表面から深さ15mmまでの範囲の硬さをHv220〜350の範囲に限定した理由について説明する。
本成分系では、上述したように、硬さがHv220未満になると、頭部コーナー部に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。さらに、摩耗の過度な促進によりレール寿命が大きく低下する。また、硬さがHv350を超えると、頭部コーナー部の摩耗速度が低下する。これにともない、ころがり面に疲労層が蓄積し、疲労損傷が発生し、耐表面損傷性を十分に確保することが困難となる。このため、頭部コーナー部の硬さをHv220〜350の範囲に限定した。
本成分系では、上述したように、硬さがHv200未満になると、頭頂部に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。また、硬さがHv250以上になると、頭頂部の摩耗速度が低下する。これにともない、ころがり面に疲労層が蓄積し、疲労損傷が発生し、耐表面損傷性を十分に確保することが困難となる。このため、頭頂部の硬さをHv200〜250未満の範囲に限定した。
また、頭頂部1、頭部コーナー部2の境界の領域では、硬さはなだらかに変化し、それぞれの部分の硬度値へ収束していくような硬度分布をとる。
頭部コーナー部、頭頂部において硬度の制御が必要な範囲を頭部コーナー部及び頭頂部の表面から深さ15mmまでの範囲に限定した理由について説明する。
深さ15mm未満では、レールの使用寿命から考えると、旅客鉄道の曲線区間のレールに要求される、耐表面損傷性や耐摩耗性を必要とされている領域としては小さく、十分な寿命改善効果が得られない。なお、耐表面損傷性や耐摩耗性に優れた上記硬さの呈する範囲が、頭部コーナー部および頭頂部の表面から深さ20mm以上であれば、耐表面損傷性や耐摩耗性の改善効果がさらに増し、より望ましい。
頭部コーナー部、頭頂部の金属組織をパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織に限定した理由について説明する。
レール鋼において基本的な耐摩耗性を確保するには、ころがり面での加工硬化能の高い金属組織である必要がある。金属組織と耐摩耗性の関係を調査した結果、パーライト組織が最も加工硬化能が高く、耐摩耗性が高いことを確認した。この結果からパーライト組織を主体とする金属組織に限定した。なお、パーライト組織を確保するにあたり、成分系、冷却速度によっては初析フェライト組織が部分的に含まれることがある。この初析フェライト組織は面積比率で10%以下であれば、耐摩耗性、耐表面損傷性に大きな影響をおよぼさない。したがって、金属組織としては、パーライトもしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織に限定した。なお、初析フェライト組織の生成量については数値限定をしていないが、上記のように10%を最大とすることが望ましい。
本発明において鋼レールの化学成分を上記のように限定した理由について説明する。
(5)頭部コーナー部の熱処理条件
まず、レール頭部を冷却する前の温度条件について説明する。所定の組織および硬度を得るためには、少なくともレール頭部を十分にオーステナイト化させる必要がある。その温度は、圧延直後のレール頭部においてはAr3点以上の温度域であり、また、再加熱されたレール頭部ではAc3点+30℃以上の温度が必要である。なお、温度の上限は特に規定しないが、あまり高温度にすると液相が現れ、オーステナイト相が不安定になるため、温度は実質1300℃が上限となる。
頭部温度が700℃未満では、加速冷却前に初析フェライト組織やパーライト組織が生成し、熱処理により頭部コーナー部や頭頂部の硬度制御が不可能となってしまい、所定の硬度が得られないからである。このため、加速冷却を開始する鋼レールの頭部温度を700℃以上に限定した。
表1に本発明レール鋼の化学成分、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、さらには、頭部コーナー部の熱処理条件を示す。また、表1には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
表2に比較レール鋼の化学成分、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、さらには、頭部コーナー部の熱処理条件を示す。また、表1には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
表3に、本発明に規定する化学成分を有するレール鋼において、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より速くした場合の、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、頭部コーナー部の熱処理条件さらには頭頂部の冷却条件を示す。また、表3には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
表4に、本発明に規定する化学成分を有するレール鋼において、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より遅くした場合の、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、頭部コーナー部の熱処理条件さらには頭頂部の冷却条件を示す。また、表4には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
●本発明レール鋼(28本) 符号:1〜24(表1)、39〜42(表3)
化学成分が上記成分範囲内で、鋼レールの頭部コーナー部の表面を起点として、少なくとも深さ15mmの範囲が、硬さHv220〜350のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織であり、かつ、頭頂部の表面を起点として、少なくとも深さ15mmの範囲が、硬さHv200〜250未満のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織であることを特徴とする耐表面損傷性および耐摩耗性に優れたパーライト系レール。特に符号39〜42では、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より早いことを実測した。
●比較レール鋼(18本) 符号25〜38(表2)、43〜46(表4)
符号:25〜31:化学成分が本発明外の比較レール鋼(7本)。
符号:32〜38:化学成分が本発明内で、熱処理製造条件が上記した本発明の範囲外の比較レール鋼(7本)。
符号:43〜46:化学成分が本発明内で、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より遅くした場合の比較レール鋼(4本)。
●表面損傷・摩耗の再現試験
試験機:ころがり疲労試験機(図2参照)
試験片形状:円盤状試験片
(レール 外径:200mm、レール材断面形状:60Kレールの1/4モデル)
(車輪 外径:200mm、車輪材断面形状 :円弧踏面車輪の1/4モデル)
試験荷重 ラジアル荷重:0.6トン、初期面圧:650MPa
雰囲気:乾燥+水潤滑(60cc/min)
回転数:乾燥;100rpm、水潤滑;300rpm
繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、その後、水潤滑により損傷発生および摩耗限界まで(損傷が発生しない場合は200万回で試験を中止)。
表1、表2、図3に示すように、本発明レール鋼(符号:1〜24)は、C、Si、Mnの添加量を適切な範囲に納めたため、比較レール鋼(符号:25〜31)で確認されたような、大量な初析フェライト組織、マルテンサイト組織等の異常組織の生成が防止された。そして、レール各部位の初期硬度を制御したため、フレーキング損傷、スポーリング損傷や疲労損傷の発生が防止された。また、頭部コーナー部の摩耗を抑制し、レールの耐表面損傷性や耐摩耗性を向上させることができた。
Claims (4)
- 質量%で、
C :0.65超〜0.80%、
Si:0.05〜1.00%、
Mn:0.05〜1.20%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
頭部コーナー部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が、硬さHv220〜350のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有し、
かつ、頭頂部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が硬さHv200〜250未満のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有することを特徴とするパーライト系レール。 - 質量%で、さらに、
Cr:0.01〜1.00%、
Mo:0.01〜0.50%、
V :0.005〜0.30%、
Nb:0.002〜0.030%、
B :0.0001〜0.0050%
Co:0.01〜1.00%、
Cu:0.01〜1.00%、
Ni:0.01〜1.00%、
Ti:0.0050〜0.0500%、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%、
Al:0.0040〜1.00%、
Zr:0.0001〜0.2000%、
N:0.0060〜0.0200%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のパーライト系レール。 - 請求項1または2に記載する成分を有する鋼を熱間圧延することによりレールを形成する工程と、
熱間圧延後冷却前でありAr3点以上の温度の前記鋼レールの頭部コーナー部、あるいは、熱間圧延後に冷却されてさらにAc3点+30℃以上の温度に加熱された前記鋼レールの頭部コーナー部を、700℃以上の温度域から、0.5〜6℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部コーナー部の温度が650〜450℃達した時点で加速冷却を停止し、その後、自然放冷する工程と、
を有し、
前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部は前記頭部コーナー部からの伝熱により冷却されることを特徴とするパーライト系レールの製造方法。 - 前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部の冷却速度を、0.3〜2.0℃/secとし、且つ前記鋼レールの頭部コーナー部の冷却速度より遅くすることを特徴とする請求項3に記載のパーライト系レールの製造方法。
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