JP4949144B2 - 耐表面損傷性および耐摩耗性に優れたパーライト系レールおよびその製造方法 - Google Patents

耐表面損傷性および耐摩耗性に優れたパーライト系レールおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、旅客鉄道の曲線区間のレールに要求される耐表面損傷性と耐摩耗性を向上させ、さらには、靭性を向上させることを目的としたパーライト系レールおよびその製造方法に関するものである。
旅客鉄道では、輸送の高効率化の手段として、列車速度の向上の増加が図られている。このような鉄道輸送の効率化はレール使用環境の過酷化を意味し、レール材質の一層の改善が要求されるに至っている。具体的には、曲線区間に敷設されたレールでは、頭部コーナー部や頭側部(車輪のフランジが接触する位置)の摩耗が急激に増加し、レールの使用寿命の点で問題視されるようになった。
そこで、高炭素鋼を用いたパーライト組織を呈した下記に示すような高強度(高硬度)レールやその製造方法が開発され、旅客鉄道の曲線区間のレール寿命を飛躍的に改善してきた(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1の開示技術では、圧延を終えた鋼レールをオーステナイト域温度から800〜450℃間を冷却速度1〜4℃/secで冷却することにより、高硬度のパーライト組織のレールを提供することができる。
特許文献2の開示技術では、圧延を終えた鋼レールをオーステナイト域温度からレール頭部を囲続するノズルから気体冷却媒体をレール頭部に指向して適用することにより高硬度のパーライト組織のレールを製造することができる。
しかし、特許文献1、2の開示技術で製造されたレールでは、車輪のフランジと主に接触する頭部コーナー部や頭側部の耐摩耗性の確保は可能であるが、頭部コーナー部等と比較して摩耗が過度に進まない頭頂部では、摩耗が進まず、疲労ダメージの蓄積により、疲労損傷が発生するといった問題があった。
そこで、疲労損傷の発生を防止するため、頭頂部の摩耗の促進を目的として、ベイナイト組織を呈したレールが開発され、旅客鉄道のレール寿命を飛躍的に改善してきた(例えば、特許文献3、4参照)。
特許文献3の開示技術では、低炭素成分の鋼にMn、Cr等の合金を添加し、Hv330以上の硬さのベイナイト組織としたレールを提供することができる。
特許文献4の開示技術では、低炭素成分の鋼にMn、Cr等の合金量を制御し、Hv180〜240の硬さのベイナイト組織としたレールを提供することができる。
しかし、特許文献3、4の開示技術のレールでは、摩耗促進により頭頂部の疲労損傷の防止は可能となるが、頭部コーナー部や頭側部の摩耗が著しく増加し、レールの使用寿命が低下するといった問題があった。
そこで、頭部コーナー部等での耐摩耗性の確保、頭頂面での疲労損傷の発生を防止するため、頭部コーナー部と頭頂部に硬度差を設けたレールが開発され、旅客鉄道のレール寿命を飛躍的に改善してきた(例えば、特許文献5、6参照)。
特許文献5の開示技術では、高炭素含有(0.60〜0.85%C)のレール鋼を用いて、熱処理時の冷却を制御することにより、頭部コーナー部の硬さHB341〜405(Hv360〜430)、頭頂部の硬さHB307〜365(Hv324〜387)以下(頭部コーナー部の0.9倍以下)であるパーライト組織としたレールを提供できる。
特許文献6の開示技術では、比較的低炭素含有(0.10〜0.65%C)のレール鋼を用いて、頭部コーナー部の硬さHv250〜410、頭頂部の硬さHv200〜250であるパーライト組織としたレールを提供できる。
しかし、特許文献5の開示技術のレールでは、摩耗促進により頭側部の疲労損傷の防止は可能となるが、頭部コーナー部の硬度が高いため、輪重の軽い旅客鉄道では耐摩耗性が過剰となり、摩耗が進まず、疲労ダメージの蓄積により、頭部コーナー部に疲労損傷が発生するといった問題があった。
また特許文献6の開示技術のレールでは、摩耗促進により頭側部の疲労損傷の防止は可能となるが、炭素量が低いため、加工硬化が促進せず、頭部コーナー部や頭側部の摩耗が増加し、レールの使用寿命が低下するといった問題があった。
特開昭62−56524号公報 特開昭61−149436号公報 特開平8−158014号公報 特開平9−87804号公報 特開平6−17193号公報 特開平2−282448号公報
このような背景から、旅客鉄道の曲線区間のレールに要求される、頭部コーナー部や頭側部の耐摩耗性を確保し、同時に、頭頂部での耐表面損傷性を確保したレールの提供が望まれるようになった。
本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、その目的とするところは、旅客鉄道の曲線区間レールで要求される、レール頭部の耐摩耗性と耐表面損傷性を向上させることを目的としたものである。
本発明の要旨は、パーライト系レールにおいて、鋼の炭素量の最適化を図り、頭部コーナー部と頭頂部の硬度の最適化を図ることにより、レール頭部の耐摩耗性と耐表面損傷性を向上させるものである。そしてレール頭部のコーナー部と頭頂部の硬度すなわちレール頭部の硬度分布を最適化するために、熱間圧延後冷却前でありAr3点以上の温度の前記鋼レールの頭部コーナー部、あるいは、熱間圧延後に冷却されてさらにAc3点+30℃以上の温度に加熱された前記鋼レールの頭部コーナー部を加速冷却する際に前記頭部コーナー部の冷却速度を、前記鋼レールの頭頂部の冷却速度より速くするものである。
本発明の構成は下記のとおりである。
(A)質量%で、C:0.65超〜0.80%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜1.20%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
頭部コーナー部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が、硬さHv220〜350のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有し、
かつ、頭頂部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が硬さHv200〜250未満のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有することを特徴とするパーライト系レール。
(B)質量%で、さらに、
Cr:0.01〜1.00%、
Mo:0.01〜0.50%
V :0.005〜0.30%、
Nb:0.002〜0.030%、
B :0.0001〜0.0050%
Co:0.01〜1.00%、
Cu:0.01〜1.00%、
Ni:0.01〜1.00%、
Ti:0.0050〜0.0500%、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%、
Al:0.0040〜1.00%、
Zr:0.0001〜0.2000%、
N:0.0060〜0.0200%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(A)に記載のパーライト系レール。
(C)上記(A)または(B)に記載する成分を有する鋼を熱間圧延することによりレールを形成する工程と、
熱間圧延後冷却前でありAr3点以上の温度の前記鋼レールの頭部コーナー部、あるいは、熱間圧延後に冷却されてさらにAc3点+30℃以上の温度に加熱された前記鋼レールの頭部コーナー部を、700℃以上の温度域から、0.5〜6℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部コーナー部の温度が650〜450℃達した時点で加速冷却を停止し、その後、自然放冷する工程と、
を有し、
前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部は前記頭部コーナー部からの伝熱により冷却されることを特徴とするパーライト系レールの製造方法。
(D)前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部の冷却速度を、0.3〜2.0℃/secとし、且つ前記鋼レールの頭部コーナー部の冷却速度より遅くすることを特徴とする上記(C)に記載のパーライト系レールの製造方法。

本発明によれば、主に、鋼の炭素量の最適化を図り、G.C.部と頭頂部の硬度の最適化を図ることにより、レール頭部の耐摩耗性と耐表面損傷性を向上させたレールが提供できる。その結果、旅客鉄道の曲線区間のレールに要求される耐表面損傷性と耐摩耗性を向上させることができる。
以下に本発明について詳細に説明する。本発明者らは、現行の高強度レールを旅客鉄道の曲線区間に敷設した場合に、頭部コーナー部等と比較して摩耗が過度に進まない頭頂部のころがり面に疲労損傷が発生する原因を調査した。
まず、本発明者らは、実軌道の曲線区間の摩耗挙動を調査した。その結果、旅客鉄道の曲線区間は、海外で発達している貨物鉄道と比較して、レールに作用する面圧やすべりが低く、現行の高強度レールでは、車輪のフランジ部が主に接触する頭部コーナー部等と比較して、頭頂部の摩耗速度が極端に小さいことが確認された。
次に、本発明者らは、この摩耗速度と疲労損傷の関係を詳細に調査した。その結果、摩耗速度がある一定値以下になると、ころがり面に疲労層が蓄積し、疲労損傷の発生が顕著になることがわかった。
そこで、本発明者らは、この摩耗速度を決定している軌道因子を解明した。その結果、摩耗速度はころがり面の硬さと非常によい相関があり、ころがり面の硬さが高いと摩耗速度が低下することを確認した。
さらに、本発明者らは、ころがり面の硬さを支配している因子を調査した。その結果、旅客鉄道では、ころがり面に作用する面圧やすべり率による若干の差異はあるものの、ころがり面の硬さは、レール鋼の初期硬さと強い相関があることが確認された。
これらの結果を踏まえ、まず、頭頂部の初期硬さを変化させたレールを用いて、旅客鉄道の曲線区間を想定したころがり疲労損傷の再現実験を行った。その結果、頭頂部の硬さがHv250以上になると、摩耗速度の低下により疲労損傷の発生が顕著になることを確認した。一方、摩耗速度をさらに増加させるため、頭頂部の硬さをHv200未満に下げると、塑性変形起因のフレーキング損傷が発生することを確認した。
以上から、頭頂部の疲労損傷の発生を防止するには、レール頭頂部の初期硬さをある一定範囲に収める必要があることが見出された。
次に、本発明者らは、旅客鉄道の曲線区間を想定した摩耗試験を行い、車輪のフランジ部が接触する頭部コーナー部において耐摩耗性を確保する最適硬度範囲を検討した。
頭部コーナー部の初期硬さを変化させたレールを用いて、旅客鉄道の曲線区間を想定した耐摩耗性の評価実験を行った。その結果、頭部コーナー部の硬さがHv350以上になると、頭部コーナー部においても摩耗速度が低下し、疲労損傷の発生が顕著になることを確認した。一方、頭部コーナー部の硬さをHv220未満に下げると、摩耗速度が顕著に増加することや、塑性変形起因のフレーキング損傷が発生することを確認した。
以上から、頭部コーナー部の耐摩耗性を確保するには、頭部コーナー部の初期硬さをある一定範囲に収める必要があることが見出された。
以上の結果から、旅客鉄道の曲線区間のレールにおいて、頭頂部の耐表面損傷性、頭部コーナー部の耐摩耗性を同時に確保するには、頭頂部とG.C.部においてそれぞれ最適な硬度範囲に制御することが必要であることが見出された。
以上の知見に基づいて、本発明者らは、パーライト系レールにおいて、鋼の炭素量を制御し、頭部コーナー部と頭頂部の硬度の最適化を図ることにより、レール頭部の耐摩耗性と耐表面損傷性を向上できることを見出した。そして、熱間圧延後冷却前でありAr3点以上の温度の前記鋼レールの頭部コーナー部、あるいは、熱間圧延後に冷却されてさらにAc3点+30℃以上の温度に加熱された前記鋼レールの頭部コーナー部を加速冷却する際に前記頭部コーナー部の冷却速度を、前記鋼レールの頭頂部の冷却速度より速くすることにより、上記したレールを製造できることを見出した。
次に、本発明の限定理由について詳細に説明する。以下、組成における質量は、単に%と記載する。
(1)頭部コーナー部及び頭頂部の硬さ
まず、頭部コーナー部の表面から深さ15mmまでの範囲の硬さをHv220〜350の範囲に限定した理由について説明する。
本成分系では、上述したように、硬さがHv220未満になると、頭部コーナー部に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。さらに、摩耗の過度な促進によりレール寿命が大きく低下する。また、硬さがHv350を超えると、頭部コーナー部の摩耗速度が低下する。これにともない、ころがり面に疲労層が蓄積し、疲労損傷が発生し、耐表面損傷性を十分に確保することが困難となる。このため、頭部コーナー部の硬さをHv220〜350の範囲に限定した。
次に、頭頂部の表面から深さ15mmまでの範囲の硬さをHv200〜250未満の範囲に限定した理由について説明する。
本成分系では、上述したように、硬さがHv200未満になると、頭頂部に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。また、硬さがHv250以上になると、頭頂部の摩耗速度が低下する。これにともない、ころがり面に疲労層が蓄積し、疲労損傷が発生し、耐表面損傷性を十分に確保することが困難となる。このため、頭頂部の硬さをHv200〜250未満の範囲に限定した。
ここで、図1に本発明の耐表面損傷性および耐摩耗性に優れた熱処理パーライト系レールの頭部断面表面位置での呼称、および、耐表面損傷性や耐摩耗性が必要とされる領域を示す。レール頭部において1は頭頂部、2は頭部コーナー部であり、頭部コーナー部2の一方は車輪と主に接触するコーナー部である。上記頭部コーナー部2の硬さHv220〜350の範囲の領域は、頭部コーナー部2の全域である必要は無く、例えば頭部コーナー部2の中央部を中心として少なくとも図中の左右の斜線内に配置されているのが好ましい。また、上記頭頂部1の硬さHv200〜250未満の範囲の領域は、頭頂部1の全域である必要は無く、例えば頭頂部1の中央部を中心として少なくとも図中の中央の交差した斜線内に配置されるのが好ましい。
また、頭頂部1、頭部コーナー部2の境界の領域では、硬さはなだらかに変化し、それぞれの部分の硬度値へ収束していくような硬度分布をとる。
(2)頭部コーナー部、頭頂部において硬度制御が必要な範囲
頭部コーナー部、頭頂部において硬度の制御が必要な範囲を頭部コーナー部及び頭頂部の表面から深さ15mmまでの範囲に限定した理由について説明する。
深さ15mm未満では、レールの使用寿命から考えると、旅客鉄道の曲線区間のレールに要求される、耐表面損傷性や耐摩耗性を必要とされている領域としては小さく、十分な寿命改善効果が得られない。なお、耐表面損傷性や耐摩耗性に優れた上記硬さの呈する範囲が、頭部コーナー部および頭頂部の表面から深さ20mm以上であれば、耐表面損傷性や耐摩耗性の改善効果がさらに増し、より望ましい。
(3)頭部コーナー部、頭頂部の金属組織
頭部コーナー部、頭頂部の金属組織をパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織に限定した理由について説明する。
レール鋼において基本的な耐摩耗性を確保するには、ころがり面での加工硬化能の高い金属組織である必要がある。金属組織と耐摩耗性の関係を調査した結果、パーライト組織が最も加工硬化能が高く、耐摩耗性が高いことを確認した。この結果からパーライト組織を主体とする金属組織に限定した。なお、パーライト組織を確保するにあたり、成分系、冷却速度によっては初析フェライト組織が部分的に含まれることがある。この初析フェライト組織は面積比率で10%以下であれば、耐摩耗性、耐表面損傷性に大きな影響をおよぼさない。したがって、金属組織としては、パーライトもしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織に限定した。なお、初析フェライト組織の生成量については数値限定をしていないが、上記のように10%を最大とすることが望ましい。
(4)鋼レールの化学成分
本発明において鋼レールの化学成分を上記のように限定した理由について説明する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ、強度や耐摩耗性を確保する有効な元素である。しかし、C量が0.65%以下では、初析フェライト組織が大量に生成し、硬度が低下することや、頭部コーナー部での加工硬化が進展せず、耐摩耗性を確保することが困難となる。一方、C量が0.80%を超えると、硬度が大きく上昇することや、頭部コーナー部や頭頂部の加工硬化が進み、ころがり面の硬さの上昇により摩耗速度が著しく低下し、疲労損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、C量を0.65超〜0.80%に限定した。
Siは、初析フェライト組織やパーライト組織中のフェライト相への固溶体硬化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素であるが、0.05%未満の含有量ではその効果が小さく、レールとして必要な最低限の強度を確保することが困難となる。一方、1.00%を超えると、硬度が大きく上昇することや、初析フェライト組織やパーライト組織の延性が低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリング損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Si量を0.05〜1.00%に限定した。
Mnは、フェライト変態温度やパーライト変態温度を低下させ、焼入れ性を高めることによって高強度化に寄与する元素であり、さらに、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.05%未満の含有量ではその効果が小さく、レールとして必要な最低限の強度を確保することが困難となる。一方、1.20%を超えると、焼入れ性が増加し、硬度が大きく上昇することや、マルテンサイト組織が生成し、頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリング損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Mn量を0.05〜1.20%に限定した。
また、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織や初析フェライト組織の硬度(強化)の向上、延性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、レール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、Cr、Mo、V、Nb、B、Co、Cu、Ni、Ti、Mg、Ca、Al、Zr、Nの元素を必要に応じて添加する。各添加元素の添加目的は以下の通りである。
Cr、Moは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、主に、パーライトラメラ間隔を微細化することによりパーライト組織の硬度を確保する。V、Nbは、熱間圧延やその後の冷却課程で生成した炭化物や窒化物により、オーステナイト粒の成長を抑制し、さらに、フェライト組織やパーライト組織中に析出硬化することにより、パーライト組織の靭性と硬度を向上させる。また、炭化物や窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。Bは、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、レール頭部の硬度分布を均一にする。Co、Cuは、フェライト組織やパーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高める。Niは、フェライト組織やパーライト組織の靭性と硬度を向上させ、同時に、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。Tiは、熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止する。Mg、Caは、レール圧延時においてオーステナイト粒の微細化を図り、同時に、フェライトやパーライト変態を促進し、靭性を向上させる。Alは、共析変態温度を高温側へ移動させ、パーライト組織の硬度を高める。Zrは、ZrO介在物が高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レールの延性低下を防止する。Nはオーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライト組織を微細にすることより、延性を向上させる。
これらの成分の添加量を限定した理由について、以下に詳細に説明する。
Crは、平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果は小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。一方、1.00%を超える過剰な添加を行うと、焼入れ性が増加し、マルテンサイト組織が生成し、頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Cr量を0.01〜1.00%に限定した。
Moは、Crと同様に平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。一方、0.50%を超える過剰な添加を行うと、変態速度が著しく低下し、頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Mo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
Vは、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、V炭化物やV窒化物のピニング効果により、オーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したV炭化物、V窒化物による析出硬化により、フェライト組織やパーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、比較的高温度域でV炭化物やV窒化物を生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、フェライト組織やパーライト組織の硬度の向上や延性の改善は認められない。一方、0.30%を超えて添加すると、Vの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、フェライト組織やパーライト組織の延性が低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、V量を0.005〜0.30%に限定した。
Nbは、Vと同様に、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、Nb炭化物やNb窒化物のピニング効果により、オーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したNb炭化物、Nb窒化物による析出硬化により、フェライト組織やパーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、低温度域から高温度域までNbの炭化物やNb窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、その効果は、0.002%未満では期待できず、フェライト組織やパーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。一方、0.030%を超える添加すると、Nbの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、フェライト組織やパーライト組織の延性が低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Nb量を0.002〜0.030%に限定した。
Bは、オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物(Fe23(CB))を形成し、パーライト変態の促進効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭表面から内部までより均一な硬度分布をレールに付与し、レールを高寿命化する元素であるが、0.0001%未満の含有量ではその効果が十分でなく、レール頭部の硬度分布には改善が認められない。一方、0.0050%を超えて添加すると、粗大な鉄炭ほう化物が生成し、延性や靭性の低下を招く。このため、B量を0.0001〜0.0050%に限定した。
Coは、フェライト組織やパーライト組織中のフェライト相に固溶し、固溶強化により硬度(強度)を向上させる元素であり、さらに、パーライトの変態エネルギーを増加させて、パーライト組織を微細にすることにより硬度や靭性を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が期待できない。一方、1.00%を超えて添加すると、フェライト組織やパーライト組織の延性が著しく低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Co量を0.01〜1.00%に限定した。
Cuは、フェライト組織やパーライト組織中のフェライト相に固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が期待できない。一方、1.00%を超えて添加すると、著しい焼入れ性向上により延性に有害なマルテンサイト組織が生成し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Cu量を0.01〜1.00%に限定した。
Niは、フェライト組織やパーライト組織の靭性を向上させ、同時に、固溶強化により高硬度(強度)化を図る元素である。さらに、溶接熱影響部においては、Tiと複合でNiTiの金属間化合物が微細に析出し、析出強化により軟化を抑制する元素であるが、0.01%未満では、その効果が著しく小さい。一方、1.00%を超えて添加すると、フェライト組織やパーライト組織の延性が著しく低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Ni量を0.01〜1.00%に限定した。
Tiは、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、0.0050%未満ではその効果が少ない。一方0.0500%を超えて添加すると、粗大なTiの炭化物、Tiの窒化物が生成して、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Ti量を0.0050〜0.050%に限定した。
Mgは、O、または、SやAl等と結合して微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において、結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、フェライト組織やパーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO、MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、フェライトやパーライト変態の生成に寄与し、その結果、主にパーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱い。一方、0.0200%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定した。
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらに、CaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、フェライトやパーライト変態の生成に寄与し、その結果、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱い。一方、0.0150%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの靭性を低下させるため、Ca量を0.0005〜0.0150%に限定した。
Alは、脱酸材として必須の成分である。また、共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高硬度(強度)化に寄与する元素であるが、0.0040%以下では、その効果が弱い。一方、1.00%を超えて添加すると、鋼中に固溶させることが困難となり、粗大なアルミナ系介在物が生成し、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。さらに、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下するため、Al量を0.0040〜1.00%に限定した。
Zrは、ZrO介在物がγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、偏析部の特性を向上させる元素である。しかし、Zr量が0.0001%以下では、ZrO系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。一方、Zr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系介在物が多量に生成し、靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Zr量を0.0001〜0.2000%に限定した。
Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのフェライトやパーライト変態を促進させ、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、N量が0.0060%未満では、その効果が弱い。一方、N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成し、レール頭部内部に疲労損傷が発生する。このため、N量を0.0060〜0.0200%に限定した。
次に、本発明に係るレールの製造方法を説明する。まず、上記のような成分組成で構成される溶鋼を、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製し、この溶鋼を造塊・分塊あるいは連続鋳造することにより鋼片を製造し、さらにこの鋼片を熱間圧延することにより鋼レールを形成する。尚、前記工程における製造条件は一般的な条件でよい。
次に、この熱間圧延後冷却前でありAr3点以上の温度の鋼レールの頭部コーナー部、あるいは、熱間圧延後に冷却されてさらにAc3点+30℃以上の温度に加熱された鋼レールの頭部コーナー部を、700℃以上の温度域から、0.5〜6℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部コーナー部の温度が650〜450℃達した時点で加速冷却を停止し、その後、自然放冷する。これにより、レール頭部に耐表面損傷性と耐摩耗性に優れた一定範囲の硬さを有するパーライト組織を安定的に生成させることが可能となる。
レール製造時の熱処理条件を限定した理由について詳細に説明する。
(5)頭部コーナー部の熱処理条件
まず、レール頭部を冷却する前の温度条件について説明する。所定の組織および硬度を得るためには、少なくともレール頭部を十分にオーステナイト化させる必要がある。その温度は、圧延直後のレール頭部においてはAr3点以上の温度域であり、また、再加熱されたレール頭部ではAc3点+30℃以上の温度が必要である。なお、温度の上限は特に規定しないが、あまり高温度にすると液相が現れ、オーステナイト相が不安定になるため、温度は実質1300℃が上限となる。
Ar3変態点、Ac3変態点は鋼の炭素量や合金成分によりそれぞれ異なっている。変態点を正確に求めるには実験による検証が必要である。これらの値を簡便に求めるには、炭素量のみを基準に、冶金学の教科書(例えば、鉄鋼材料、日本金属学会編)などに掲載されている、Fe−FeC系の平衡状態図から読み取ることが望ましい。実際のレール圧延におけるAr3変態点は平行状態図の線よりも20〜30℃低め、Ac3変態点は平行状態図の線よりも20〜30℃高めの値となる。
以下に説明する冷却速度および温度は、図1に示したレール頭頂部1および頭部コーナー部2の表面から深さが1〜5mmの範囲で測定すれば、深さ15mmの範囲を代表させることができ、少なくとも図1に示す斜線部分の組織と硬さを制御することができる。
次に、加速冷却を開始する鋼レールの頭部温度を700℃以上に限定した理由について説明する。
頭部温度が700℃未満では、加速冷却前に初析フェライト組織やパーライト組織が生成し、熱処理により頭部コーナー部や頭頂部の硬度制御が不可能となってしまい、所定の硬度が得られないからである。このため、加速冷却を開始する鋼レールの頭部温度を700℃以上に限定した。
次に、熱間圧延直後の鋼レール頭部、あるいは、熱処理する目的で再加熱した鋼レールの頭部コーナー部を700℃以上の温度域から、650〜450℃までの間を0.5〜6℃/secの冷却速度で加速冷却する方法において、加速冷却停止温度範囲、加速冷却速度を上記の様に限定した理由について説明する。
650℃を超える温度で加速冷却を停止すると、初析フェライト組織が大量に生成することや加速冷却直後の高温度域でパーライト変態が開始し、硬さの低い粗大なパーライト組織が多く生成する。その結果、頭部コーナー部の硬さがHv220未満となり、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となる。さらに、塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。また、450℃未満まで加速冷却を行うと、本成分系では、加速冷却途中にオーステナイト組織が完全に変態せず、耐摩耗性の低いベイナイト組織や耐損傷性の低いマルテンサイト組織が頭部コーナー部に生成し、耐摩耗性を低下させるだけではなく、スポーリング損傷の発生を誘発する。このため、加速冷却停止温度範囲を650〜450℃の範囲に限定した。
次に、頭部コーナー部の加速冷却速度が0.5℃/sec未満になると、初析フェライト組織が大量に生成することや加速冷却途中の高温度域でパーライト変態が開始する。その結果、頭部コーナーの硬さがHv220未満となり、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となる。さらに、塑性変形起因のフレーキング損傷の発生し、耐表面損傷性が低下する。また、加速冷却速度が6℃/secを超えると、パーライト組織の変態温度が低下し、頭部コーナー部の硬さがHv350を超える。その結果、ころがり面の摩耗速度が低下し、ころがり面に疲労損傷が発生する。また、成分系によっては、耐摩耗性の低いベイナイト組織や耐損傷性の低いマルテンサイト組織が頭部コーナー部に生成する。その結果、耐摩耗性を低下させるだけでなく、スポーリング損傷の発生を誘発する。このため、加速冷却速度を0.5〜6℃/secの範囲に限定した。
なお、耐表面損傷性および耐摩耗性に優れた初析フェライト組織を含むパーライト組織を安定的に生成させるには、加速冷却速度は1〜3℃/secの範囲が最も望ましい。
また、本加速冷却速度範囲は冷却開始から終了までの平均的な冷却速度を限定するものであるが、加速冷却途中においてパーライト変態による発熱やレール内部からの自然復熱による一時的な温度上昇が発生することがある。しかし、加速冷却開始から終了までの平均的な冷却速度が上記範囲内であれば本パーライト系レールの特性に大きな影響をおよぼさないため、本レールの加速冷却条件としては冷却途中の一時的な温度上昇にともなう冷却速度の低下も含んでいる。
0.5〜6℃/secの冷却速度を得る方法としては、空気や空気を主としミスト等を加えた冷却媒体およびこれらの組み合わせにより、所定冷却速度を得ることが可能である。したがって、硬さHv220〜350の範囲の耐表面損傷性および耐摩耗性に優れたパーライト系レールを製造するには、頭部コーナー部において、初析フェライト組織の生成量を制御し、硬さの低いパーライト組織の生成を防止し、さらに、耐摩耗性や靭性に有害なベイナイト組織、マルテンサイト組織が生成しないように、空気や空気を主としミスト等を加えた冷媒を用いてオーステナイト域温度から0.5〜6℃/secの冷却速度で加速冷却し、該鋼レール頭表部の温度が650〜450℃達した時点で加速冷却を停止することにより、レール頭部コーナー部に所定の硬度分布を付与することが可能となる。
なお、頭頂部の硬度や組織の制御方法については特に限定していないが、上記の熱処理を頭部コーナー部に付与することにより、伝熱により頭頂部の硬度や組織も付随的に制御が可能となる。また、頭頂部の硬度や組織を正確に制御するには、頭部コーナー部と同様に、空気や空気を主としミスト等を加えた冷媒を用いて、オーステナイト域温度から加速冷却することが望ましい。加速冷却速度については限定しないが、頭部コーナー部よりも冷却速度を低下させることが望ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に本発明レール鋼の化学成分、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、さらには、頭部コーナー部の熱処理条件を示す。また、表1には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
表2に比較レール鋼の化学成分、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、さらには、頭部コーナー部の熱処理条件を示す。また、表1には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
表3に、本発明に規定する化学成分を有するレール鋼において、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より速くした場合の、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、頭部コーナー部の熱処理条件さらには頭頂部の冷却条件を示す。また、表3には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
表4に、本発明に規定する化学成分を有するレール鋼において、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より遅くした場合の、頭部コーナー部のミクロ組織、硬さ、頭頂部のミクロ組織、硬さ、頭部コーナー部の熱処理条件さらには頭頂部の冷却条件を示す。また、表4には、図2に示す表面損傷・摩耗再現試験結果も併記した。
なお、レールの構成は以下のとおりである。
●本発明レール鋼(28本) 符号:1〜24(表1)、39〜42(表3)
化学成分が上記成分範囲内で、鋼レールの頭部コーナー部の表面を起点として、少なくとも深さ15mmの範囲が、硬さHv220〜350のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織であり、かつ、頭頂部の表面を起点として、少なくとも深さ15mmの範囲が、硬さHv200〜250未満のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織であることを特徴とする耐表面損傷性および耐摩耗性に優れたパーライト系レール。特に符号39〜42では、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より早いことを実測した。
●比較レール鋼(18本) 符号25〜38(表2)、43〜46(表4)
符号:25〜31:化学成分が本発明外の比較レール鋼(7本)。
符号:32〜38:化学成分が本発明内で、熱処理製造条件が上記した本発明の範囲外の比較レール鋼(7本)。
符号:43〜46:化学成分が本発明内で、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より遅くした場合の比較レール鋼(4本)。
Figure 0004949144
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図2は表面損傷・摩耗の再現試験機の概略を示しており、図3は表1に示す本発明レール鋼(符号:1〜24)と表2に示す比較レール鋼(符号:25、27、30、32、33、36〜38)の表面損傷・摩耗の再現試験機結果を鋼の炭素量と摩耗量で整理したグラフである。
なお、図1において、1は頭頂部、2は頭部コーナー部である。また、図2において、3は車輪試験片、4はレール円盤試験片、5はモーター(車輪側)、6はモーター(レール側)、7は水潤滑装置である。
各種試験条件は下記のとおり。
●表面損傷・摩耗の再現試験
試験機:ころがり疲労試験機(図2参照)
試験片形状:円盤状試験片
(レール 外径:200mm、レール材断面形状:60Kレールの1/4モデル)
(車輪 外径:200mm、車輪材断面形状 :円弧踏面車輪の1/4モデル)
試験荷重 ラジアル荷重:0.6トン、初期面圧:650MPa
雰囲気:乾燥+水潤滑(60cc/min)
回転数:乾燥;100rpm、水潤滑;300rpm
繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、その後、水潤滑により損傷発生および摩耗限界まで(損傷が発生しない場合は200万回で試験を中止)。
表1の本発明レール鋼は、C、Si、Mnの添加量を適切な範囲に納め、適切な熱処理を施すことにより、レール鋼の初期硬さや組織を部位に応じて制御している。そのため、表1、表2、図3の表面損傷・摩耗再現試験結果に示すように、表2の比較レール鋼と比べてレールの耐表面損傷性や耐摩耗性が向上している。
以下、実施例について詳細に説明する。
表1、表2、図3に示すように、本発明レール鋼(符号:1〜24)は、C、Si、Mnの添加量を適切な範囲に納めたため、比較レール鋼(符号:25〜31)で確認されたような、大量な初析フェライト組織、マルテンサイト組織等の異常組織の生成が防止された。そして、レール各部位の初期硬度を制御したため、フレーキング損傷、スポーリング損傷や疲労損傷の発生が防止された。また、頭部コーナー部の摩耗を抑制し、レールの耐表面損傷性や耐摩耗性を向上させることができた。
さらに、表1、表2、図3に示すように、本発明レール鋼(符号:1〜24)は、比較レール鋼(符号:32〜38)と比べて、適切な条件の熱処理をレール頭部に施したため、レール頭部の初期硬さが部位に応じて制御された。さらに、ベイナイト、マルテンサイト組織等の異常組織の生成を防止できたため、フレーキング損傷、スポーリング損傷や疲労損傷の生成が防止され、頭部コーナー部の摩耗が抑制され、レールの耐表面損傷性や耐摩耗性を向上させることができた。
さらに、表3、表4に示すように、本発明レール鋼(符号:39〜42)は、比較レール鋼(符号:43〜46)と比較して明らかなように、頭部コーナー部の冷却速度を頭頂部より速くすることにより、レール頭頂部の硬さを制御し、さらに、マルテンサイト組織等の異常組織の生成を防止でき、その結果、頭頂部の疲労損傷の生成を防止し、頭部コーナー部の摩耗を抑制し、レールの耐表面損傷性と耐摩耗性を向上させることができた。
また図3に示すように、同一炭素量で比較すると、本発明レール鋼は比較レール鋼と比べて頭部コーナー部の耐摩耗性が向上した。
以上から、本発明によれば、旅客鉄道の曲線区間で使用されるレールにおいて、耐表面損傷性の向上と耐摩耗性の向上を同時に達成できることが示された。
本発明レール鋼の頭部断面表面位置での呼称および耐表面損傷性や耐摩耗性が必要とされる部位や硬度や組織の制御が必要とされる領域。 表面損傷・摩耗の再現試験機の概略図。 本発明レール鋼(符号:1〜24)と比較レール鋼(符号:25、27、30、32、33、36〜38)の表面損傷・摩耗の再現試験機結果を鋼の炭素量と摩耗量で整理した図。
符号の説明
1…頭頂部、2…頭部コーナー部、3…車輪試験片、4…レール円盤試験片、5…モーター(車輪側)、6…モーター(レール側)、7…水潤滑装置

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.65超〜0.80%、
    Si:0.05〜1.00%、
    Mn:0.05〜1.20%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    頭部コーナー部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が、硬さHv220〜350のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有し、
    かつ、頭頂部に、表面から少なくとも深さ15mmまでの範囲が硬さHv200〜250未満のパーライト組織もしくは初析フェライト組織を含むパーライト組織である領域を有することを特徴とするパーライト系レール。
  2. 質量%で、さらに、
    Cr:0.01〜1.00%、
    Mo:0.01〜0.50%
    V :0.005〜0.30%、
    Nb:0.002〜0.030%、
    B :0.0001〜0.0050%
    Co:0.01〜1.00%、
    Cu:0.01〜1.00%、
    Ni:0.01〜1.00%、
    Ti:0.0050〜0.0500%、
    Mg:0.0005〜0.0200%、
    Ca:0.0005〜0.0150%、
    Al:0.0040〜1.00%、
    Zr:0.0001〜0.2000%、
    N:0.0060〜0.0200%
    の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のパーライト系レール。
  3. 請求項1または2に記載する成分を有する鋼を熱間圧延することによりレールを形成する工程と、
    熱間圧延後冷却前でありAr3点以上の温度の前記鋼レールの頭部コーナー部、あるいは、熱間圧延後に冷却されてさらにAc3点+30℃以上の温度に加熱された前記鋼レールの頭部コーナー部を、700℃以上の温度域から、0.5〜6℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部コーナー部の温度が650〜450℃達した時点で加速冷却を停止し、その後、自然放冷する工程と、
    を有し、
    前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部は前記頭部コーナー部からの伝熱により冷却されることを特徴とするパーライト系レールの製造方法。
  4. 前記鋼レールを加速冷却及び自然放冷する工程において、前記頭頂部の冷却速度を、0.3〜2.0℃/secとし、且つ前記鋼レールの頭部コーナー部の冷却速度より遅くすることを特徴とする請求項に記載のパーライト系レールの製造方法。
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