JP3317146B2 - 頭頂部に耐損傷性に優れた硬度分布を有する高強度・耐損傷レール - Google Patents
頭頂部に耐損傷性に優れた硬度分布を有する高強度・耐損傷レールInfo
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Description
に用いられる耐摩耗用の高強度・耐損傷レールに関し、
特に、頭頂部の耐損傷性を向上させた高強度・耐損傷レ
ールに関する。
ナ部、頭側部、及び顎部を有している。そして、高軸重
重鉄道の急曲線部の木製枕木を使用した軌道で、従来か
ら用いられている耐摩耗用高強度レールは、コーナ部及
び頭側部と、頭頂部との間で、硬度が等しくなるように
熱処理されて形成されている。従って、材質の面からす
ると、レールコーナ部と、レール頭頂部とで耐摩耗特性
は同等となっている。
雑であり、レール頭部の位置によって接触環境が異なっ
ている。高軸重鉄道急曲線部ではレールゲージコーナ部
(内側のコーナ部)及びレール頭側面に作用するすべり
が大きく、一方、接触圧力はレール頭頂部及びレールゲ
ージコーナ部で大きい。この結果、従来の耐摩耗用高強
度レールではレールゲージコーナ部及びレール頭側部
は、レール頭頂部よりも摩耗が促進される。従って、レ
ール頭頂部は、常にレールゲージコーナ部よりも摩耗が
遅く進行し、車輪からの接触圧力はレール頭頂部中央の
摩耗が遅い部分で最大となる。
従来の耐摩耗用高強度レールは、前述のような車輪との
接触状態となるため、新品時あるいは削正後の使用初期
において車輪とのなじみが遅く、局所的な過大接触応力
が長く存在し、疲労性の欠陥が発生しやすい。また、こ
れに加え、レールと車輪とがなじんだ後においても、レ
ール頭頂部中央に最大接触圧力が作用する。木製枕木を
使用した軌道では、このような状態でも問題は少ない
が、コンクリート枕木を使用した高剛性の軌道の場合、
鉄道車両の通過に伴う衝撃的な最大接触圧力が増加する
ため、レール頭頂部中央に、ヘッドチェックと呼ばれる
損傷が発生するという問題が顕在化している。
るために、レールに疲労が蓄積する前にレール頭部表層
を削正する方法を採用しているが、削正には時間と費用
がかさみ、また最適な削正時間を決定することが困難で
ある。
このような頭頂部中央に発生するヘッドチェックを防止
できるレールが示されている。このレールは、コーナ部
及び頭側部の硬度が高く、頭頂部の硬度をコーナ部及び
頭側部の硬度の0.9以下としたものであり、このよう
に頭頂部の硬度を低下させることによりその部分の摩耗
速度を速め、頭頂部での接触力を分散させて最大接触応
力を低下させるようにし、頭頂部の損傷軽減を図ったも
のである。
配され、この接触応力およびその分布は頭頂部の摩耗速
度の分布すなわち頭頂部のレール幅方向の分布に支配さ
れるため、上記公報のようにコーナ部及び頭側部の硬度
範囲と頭頂部の硬度範囲を規定しても損傷軽減効果が得
られない場合があり、また、レール寿命が必ずしも大き
くならない場合がある。
鑑みてなされたものであって、レール頭頂部に適切な硬
度分布を与え、レール頭頂部に疲労蓄積の局所的集中が
起こらず、耐接触疲労損傷性に優れ、結果として軌道保
守費を低減させることができかつ高寿命の高強度・耐損
傷レールを提供することを課題とする。
に、本発明は、第1に、重量%で、C:0.60〜0.
85%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.5〜1.
5%、P:0.035%以下、S:0.040%以下、
Al:0.05%以下であり、残部がFe及び不可避的
不純物からなり、そのコーナ部及び頭側部の硬度がブリ
ネル硬度でHB341〜405であり、その頭頂部にお
ける頂部中央から幅方向に20mm離れた位置での硬度
がHB 341〜405であり、頭頂部中央部の硬度が、
頭頂部中央から幅方向に20mm離れた位置の硬度より
ブリネル硬度で10〜50低く、頭頂部中央と頭頂部中
央から幅方向に前記20mm離れた位置との間の硬度
は、頭頂部中央から幅方向外側に向けて単調に増加し、
その間の部分の実際の硬度と、その間の部分の、頭頂部
中央の硬度および頭頂部中央から幅方向に前記20mm
離れた位置の硬度を直線で補間して得られた硬度との差
がブリネル硬度で10以内である高強度・耐損傷レール
を提供する。
5%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.5〜1.5
%、P:0.035%以下、S:0.040%以下、A
l:0.05%以下であり、さらにCr:0.05〜
1.5%、Mo:0.01〜0.20%、V:0.01
〜0.10%、Ni:0.1〜1.0%、Nb:0.0
05〜0.15%のうち1種又は2種以上を含有し、残
部がFe及び不可避的不純物からなり、コーナ部及び頭
側部の硬度がブリネル硬度でHB 341〜405であ
り、その頭頂部における頂部中央から幅方向に20mm
離れた位置での硬度がHB 341〜405であり、頭頂
部中央部の硬度が、頭頂部中央から幅方向に20mm離
れた位置の硬度よりブリネル硬度で10〜50低く、頭
頂部中央と頭頂部中央から幅方向に前記20mm離れた
位置との間の硬度は、頭頂部中央から幅方向外側に向け
て単調に増加し、その間の部分の実際の硬度と、その間
の部分の、頭頂部中央の硬度および頭頂部中央から幅方
向に前記20mm離れた位置の硬度を直線で補間して得
られた硬度との差がブリネル硬度で10以内である高強
度・耐損傷レールを提供する。
され、この接触応力およびその分布は摩耗によるなじみ
進行に伴い変化していくが、その変化過程は摩耗速度の
分布すなわちレール幅方向の硬度分布に支配される。
が適切なものならば、上記特開平6−17193号公報
に開示された技術によって大きな損傷軽減が可能である
が、不適切な分布では、摩耗によるなじみの進行に伴い
局部的な接触応力の集中が起こって損傷軽減効果がなく
なってしまう恐れがあることが判明した。
報では、コーナ部及び頭側部の硬度範囲と頭頂部の硬度
範囲が記載されているのみであり、レール幅方向の硬度
分布については何等記載されておらず、頭頂部に接触応
力およびその分布が適正になるような硬度分布が得られ
ない恐れがある。
では、頭頂部の硬度がコーナ部および頭側部の硬度の
0.9以下と規定されており、これにより確かに頭頂部
の接触応力が大きく減少する。
頭頂部とコーナ部との硬度差がこのように大きくなる
と、接触部中央の接触応力が大きく減少する反動により
接触部中央から幅方向に離れた接触部の端部に大きな接
触応力が発生し、その位置において損傷が進行する恐れ
があることが見出された。このため、レール全体の寿命
が長くならない場合がある。
ル頭頂部の幅方向の硬度分布を制御してなじみ進行に伴
う接触応力の変化過程をコントロールすることにより、
レール頭頂部に疲労蓄積の局所的集中を防止し、高剛性
軌道使用環境下におけるレール頭頂部の耐接触疲労損傷
性を改善する。
する。
ルの頭部を示す断面図である。レール頭部は、頭頂部
1、コーナ部2、頭側部3、及び顎部4を有している。
コーナ部2の一方は、使用に際して車輪と接触するゲー
ジコーナ部となる。
ックは、レール頭部に及ぼされる接触応力が高くなるに
従って短期間で発生するようになる。このことを図2及
び図3を参照して説明する。図2は、踏面曲率半径が1
5mmで最大直径が30mmのレール試験片と、直径30mm
で周面がフラット形状の車輪試験片とを使用した2円筒
接触転動疲労試験方法を示す模式図である。この試験に
より垂直加重と損傷寿命との関係を求めると、図3に示
すような結果が得られる。すなわち、垂直荷重が高い場
合に、つまり接触応力が高い場合に、短期間で損傷が発
生すること(すなわち損傷寿命が短いこと)を確認する
ことができる。
の使用初期において、車輪とのなじみが良くない場合、
レールに集中的な垂直荷重が作用し、損傷が発生しやす
い。また、レールの車輪と接触する部分の形状が、レー
ルの摩耗によって車輪となじんでいる場合、摩耗速度が
遅い部分では垂直応力が選択的に作用する。これらのこ
とから、レールの寿命を延長させるためには、従来のレ
ールの頭頂面において摩耗速度が遅いことにより過酷に
作用していた最大垂直応力を分散させることが有効であ
るといえる。
防止するためには、車輪からの接触圧力が局部的に集中
しないように接触状況をコントロールする方法が考えら
れる。
強度と耐摩耗性とを保持しながら、なおかつレールの頭
頂部における最大接触応力を低下させるべく、レール組
成を調節し、またレールのコーナ部及び頭側部よりも、
頭頂部の方が硬度が低くなるようにし、さらに頭頂部中
央での硬度とそこから幅方向に20mm離れた位置での
硬度との間の差と、その間の硬度分布を適正化すること
により、摩耗によるなじみ進行過程で接触応力が局所的
に大きなピークを持たないようにし、接触応力が適切に
分散するようにして疲労蓄積が局所的に集中することを
防止した。
いて説明する。
る。0.6%以上とすることにより良好な強度及び耐摩
耗性が期待できる一方において、0.85%を超えると
初析セメンタイトの析出により靭性が低下するからであ
る。
ル強度確保のために0.1%以上必要であるが、1.0
%を超えると靭性及び溶接性が劣化するからである。
ル強度確保のために0.5%以上必要であるが、1.5
%を超えると靭性及び溶接性に悪影響を及ぼすからであ
る。
P:0.035重量%以下、S:0.040重量%以下
とした。
ら、0.05%を上限とした。
で用いられるレールに関しては、レールゲージコーナ部
の耐摩耗性と強度とを一層良好なものとするために、C
r,Mo,V,Ni及びNbの1種又は2種以上を低合
金添加する。
05%以上であればパーライトラメラ間隔を小さくして
パーライトを微細化し、強度、耐摩耗性及び耐損傷性を
向上させるが、1.50%を超えると溶接性に悪影響を
与える。
oはCrと同様に強度を上昇させる元素であり、その効
果は0.01%以上で現われる。これに対し、0.2%
を超えると、溶接性が劣化する。
0.005〜0.15重量%及び0.01〜0.10重
量%である。これらが析出強化元素としての効果を得る
ためには、Nbは0.005%以上、Vは0.01%以
上添加する必要がある。一方、Nbが0.15%、又は
Vが0.10%を超えて添加されると、Nb又はVの粗
大な炭窒化物が析出し、レールの靭性を劣化させる。
素であり、0.1〜1.0重量%である。0.1%より
も少なければ効果が現れず、1.0%で効果が飽和する
からである。
成を有し、微細パーライト組織を有している。そして、
本発明においては、前述したように、レール頭部の硬さ
分布を調節してレール各部の摩耗特性を制御するにあた
り、特に頭頂部での硬さ分布を調整してその部分の耐摩
耗性を制御し、摩耗によるなじみ進行に伴う接触応力の
変化を適切にコントロールすることによって疲労蓄積を
分散させ、高剛性軌道における高接触圧力の発生による
レール頭頂部のヘッドチェック損傷を抑制する。好まし
い硬さ分布は、例えば各部分における熱処理を調節する
ことにより達成される。
により摩耗速度を調整しても同様の効果を得ることがで
きる。すなわち、この発明では、微細パーライト組織を
前提として、適宜の処理によりレールの硬度分布を調節
しているが、金属組織を変化させることにより、硬さに
拘らず、摩耗特性を制御することができる。例えば、図
4に示すように、同じ硬さでは微細パーライト組織が最
も摩耗特性が良好である。また、この図に示すように、
金属組織を制御することにより硬度を上昇させて疲労強
度を向上させつつ、摩耗速度を上昇させることも可能で
ある。
ールにおいて、硬度を定めた限定理由について説明す
る。
41〜HB 405の範囲に設定する。これはレールの強
度及び耐摩耗性を十分な値にするためである。
なものである。すなわち、頭頂部における頂部中央から
幅方向に20mm離れた位置での硬度がHB 341〜4
05であり、頭頂部中央部の硬度が、頭頂部中央から幅
方向に20mm離れた位置の硬度よりブリネル硬度で1
0〜50低く、頭頂部中央と頭頂部中央から幅方向に前
記20mm離れた位置との間の硬度は、頭頂部中央から
幅方向外側に向けて単調に増加し、その間の部分の実際
の硬度と、その間の部分の、頭頂部中央の硬度および頭
頂部中央から幅方向に前記20mm離れた位置の硬度を
直線で補間して得られた硬度との差がブリネル硬度で1
0以内である。
したのは以下のような理由による。車輪とレールとの接
触幅は、新品時あるいは削正直後に最も小さく(高軸重
鉄道では10mm程度)、摩耗によるなじみ進行に伴
い、次第に広くなる。これに応じて接触力は分散し、接
触応力分布はフラットなものに変化していく。このなじ
み過程における接触応力分布と硬度分布との関係を数値
シミュレーションにより種々調査した。
レールでの接触応力の幅方向分布を示す。図では、頭頂
部中央から右半分のみを示している。
用初期は頭頂部中央に大きな接触応力が発生し、摩耗に
よるなじみの進行に伴い接触応力分布はフラットになっ
ていくのがわかる。しかし、なじみが進行しても接触応
力は常に頭頂部中央で最も高い。従って、頭頂部中央部
に疲労蓄積が集中してしまい、頭頂部中央部にヘッドチ
ェック等の損傷が発生する。
(ケースa,b,c)を頭頂部に有する場合について接
触応力分布を調査した。ケースaでは、頭頂部中央の硬
度が頭頂部中央から幅方向に20mm離れた位置におけ
る硬度よりもブリネル硬度で25低く、ケースbでは4
0低く、ケースcでは60低い。
8および図9にそれぞれケースa〜cの1千万通過トン
時および8千万通過トン時における接触応力分布を図5
に示した硬度一様レールと比較して示す。
aのレールの頭頂部中央の接触応力が硬度一様のものよ
りも速く低下することがわかる。これは、中央の硬度が
低いため周辺よりも速く摩耗が進行するためである。こ
れによって頭頂部中央の疲労蓄積を大幅に低減すること
ができる。
触応力が減少する分だけ接触部端部の接触応力が増加
し、接触応力のピークが頭頂部中央ではなく接触部端部
にくるようになり、その位置での疲労蓄積が大きくな
る。しかし、図7に示すように、摩耗によるなじみが進
行するに伴い、接触応力が最大となる位置が頭頂部中央
か端部へと次第にレール幅方向に移動していく。すなわ
ち、疲労蓄積が最も大きい位置はなじみの進行によって
移動し、疲労蓄積が分散されるのである。従って、レー
ル全体としては損傷が軽減される。
応力が低下し、接触応力のピーク位置が移動するという
現象は、頭頂中央から幅方向に20mm離れた位置まで
の硬度分布にほぼ支配されることが見出された。そし
て、この範囲の硬度が、頭頂中央から幅方向外側に向け
て単調かつほぼ直線的に増加していると、上記現象がス
ムーズに起こる。しかし、例えばこの範囲で硬度が増加
から減少に転ずるような箇所があると、その位置での接
触応力が異常に大きくなり、損傷発生の原因となってし
まう。
頂部中央から幅方向に前記20mm離れた位置との間の
硬度は、頭頂部中央から幅方向外側に向けて単調に増加
し、その間の部分の実際の硬度と、その間の部分の、頭
頂部中央の硬度および頭頂部中央から幅方向に前記20
mm離れた位置の硬度を直線で補間して得られた硬度と
の差がブリネル硬度で10以内である」と規定した。
と明らかなように、頭頂部中央での硬度と頭頂部中央か
ら幅方向に前記20mm離れた位置での硬度の差が大き
くなると、接触部端部に発生する接触応力のピークは大
きくなる。硬度差がブリネル硬度で60あるケースcの
場合には、これらの図に示すように、接触応力のピーク
値は非常に大きくなり損傷発生の原因となる。従って、
この発明では、頭頂部中央部の硬度と、頭頂部中央から
幅方向に20mm離れた位置の硬度との差の上限をブリ
ネル硬度で50と規定した。
方向に20mm離れた位置における硬度との差がブリネ
ル硬度で10よりも小さいと、前述した損傷を軽減する
接触応力分布が十分に現れなくなるので、その硬度差の
下限をブリネル硬度で10と規定した。この頭頂部中央
の硬度とそこから幅方向に20mm離れた位置における
硬度との差の好ましい範囲は、ブリネル硬度で15〜4
0である。
置での硬度は、コーナ部及び頭側部の硬度を設定したの
と同じ理由により、HB 341〜HB 405の範囲に規
定した。頭頂部中央から幅方向に20mm離れた位置と
コーナ部との間の硬度は、接触応力には大きく影響しな
いものの、硬度に大きな変動がなく、硬度がほぼ一様か
あるいは滑らかに単調に変化していくのが望ましい。
である場合にも、各サイドで上記硬度条件を満足する必
要がある。
とは避けられないため、局所的ないしはミクロ的に硬度
が幅方向に単調増加しない部分が現れることがあるが、
この発明ではマクロ的に硬度が単調増加していればよ
い。
なくとも10mm以上、好ましくは23mmの深さまで
は、水平断面内でこの発明の上記硬度条件を満たしてい
るようにすることが好ましい。これにより、レール摩耗
が大幅に進行した場合でも、損傷軽減を図ることができ
る。
触条件があまり厳しくない環境下では、頭側部、コーナ
部及び頭頂部中央から幅方向に20mm離れた位置にお
ける硬度範囲をHB 320〜HB 380に下げることも
可能である。
ーナ部及び頭頂部中央から幅方向に20mm離れた位置
からコーナ部に至る範囲の部分の硬度を十分大きくして
レールの強度及び耐摩耗性を確保し、頭頂部においては
その中央の硬度を中央から幅方向に20mm離れた位置
の硬度より低くし、その中間位置での硬度がほぼ直線的
に変化するように調整することにより、摩耗によるなじ
み進行に伴い、摩耗速度が大きい頭頂部中央部の接触応
力が低下してその部分の損傷は抑制され、かつ頭頂部の
摩耗速度が幅方向に適切に制御されるため、接触部端部
に発生する接触応力のピーク値が過大にならず、またそ
のピーク位置が移動するため、結果として疲労蓄積が集
中せず頭頂面上に分散する。従って、疲労損傷の発生が
抑制され、削正の回数を減らすことができ、結果として
軌道の保守費を低減することができ、レールの寿命を延
ばすことができる。
1に示す組成の鋼をレール素材とした。
素材に対して従来の頭部スラッククエンチ熱処理を施し
た従来の硬頭レールと、同じ素材に対して頭頂部の冷却
を弱くした特殊な頭部スラッククエンチを行った本発明
に係るレールとを作成した。
した。すなわち、熱間圧延によりレール素材を作製した
後、Ar1 以上にあるレール素材頭部に、図10に示す
ように配置された頭頂部冷却用のエアーヘッダ5及び頭
側部冷却用のエアーヘッダ6に設けられた複数のノズル
からエアーを吹き付けて、レール素材頭部を冷却した。
図11の(a)はここで用いた頭頂部冷却用エアーヘッ
ダ5のノズル配置を示す図であり、この図に示すよう
に、その中央部においてノズル穴の個数が減少されてい
る。すなわち、従来の頭頂部冷却用ヘッダは、図11の
(b)に示すようにノズル穴が均一に配置されている
が、ここではヘッダ中央部のノズル穴個数を減じて、レ
ール頭頂部に吹き付けるエアーの量が少なくなるように
した。また、ヘッダのエアーの圧力をコントロールして
頭側部に噴射するエアー圧力よりも頭頂部に噴射するエ
アー圧力のほうが低くなるようにした。
分布を図12に示す。図12中符号Aは従来レールの硬
度分布を示し、符号B,Cは本発明レールの硬度分布を
示す。なお、符号Bのレールを製造する際に用いた図1
1の(a)の頭頂部冷却用ノズルヘッダ5のノズル穴の
個数が減少されている部分の幅は、符号Cのレールを製
造する際に用いたノズルヘッダのものよりも狭くした。
符号Aではコーナ部から頭頂部中央までほぼ一様な硬度
分布であるのに対し、本発明のレールである符号B,C
のレールでは以下に示すような硬度分布を有していた。
すなわち、頭頂部中央の硬度はそこから幅方向に20m
m離れた位置の硬度より、符号Bでは左側で23(ブリ
ネル硬度、以下同じ)、右側で21低く、符号Cでは左
側で11、右側で13低くなった。また、硬度は、符号
B,Cともに、頭頂部中央から前記20mm離れた位置
まで単調に増加しており、その間の部分の実際の硬度
と、頭頂部中央の硬度および頭頂部中央から幅方向に前
記20mm離れた位置の硬度を直線で補間して得られた
硬度との差が符号Bでは6以内、符号Cでは4以内であ
った。
の円板に加工し、これらを加熱した後上述したレールの
冷却方法と同様に円板側面の中央部の冷却をコーナ部よ
り緩める方法により、円板の幅方向に硬度分布を有する
円筒試験片を作成した。これらの試験片の硬度分布を表
2に示す。ここでは冷却方法を調節することにより幅方
向に種々の硬度分布を形成し、本発明の範囲内の硬度分
布を有するもの(本発明例)と、硬度分布が本発明の範
囲から外れるもの(比較例)を作成した。また、鋼種A
ではこのような制御冷却を行わずに硬度が一様の従来レ
ールに相当するもの(従来例)を作成した。
機により損傷寿命試験を行った。車輪試験片の硬度は約
HB 331であった。この試験結果を表2に示す。な
お、表2では、各試験片の損傷寿命を、硬度一様の従来
レールに相当する試験片の損傷寿命に対する比で示して
いる。
命が従来例の1.3倍以上向上し、最大1.9倍にもな
ることが確認された。
せるためには、頭頂部中央部の接触応力を低減すること
ができると同時に、接触部端部に発生する接触応力のピ
ーク値を抑制することができ、しかもそのピーク発生位
置を頭頂部中央から幅方向外側へ移動させることによっ
て疲労蓄積を分散させることができる本発明の頭頂部硬
度分布が有効であることが確認された。
チェック等の過大接触圧力に伴って発生する頭頂部の損
傷を抑制することができ、レール寿命を延長させること
ができる。このため、高軸重鉄道の急曲線においてコン
クリート枕木等を用いる高剛性軌道を導入する上での問
題点を解決することができ、軌道保守費を低減させるこ
とができる。このように、耐摩耗性及び耐損傷性に優れ
た本発明のレールは、今後の高剛性軌道の普及に伴い、
鉄道の保守費低減のために有効なものになることが期待
され、経済的価値が極めて高いものである。
を把握するための2円筒接触転動試験を説明するための
図。
の関係を示す図。
速度との関係及び組織と摩耗速度との関係を示す図。
に伴う接触応力分布の変化を示す図。
硬度分布を示す図。
伴う接触応力分布を示す図。
び頭頂部の硬度分布が一様のレールにおける1千万通過
トン時の頭頂部の接触応力分布を示す図。
び頭頂部の硬度分布が一様のレールにおける8千万通過
トン時の頭頂部の接触応力分布を示す図。
図。
却方法を実施する際に用いるレール頭頂部冷却用ヘッダ
のノズル穴の配列を示す図。
B,C)および従来レールの硬度分布(符号A)を示す
図。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.60〜0.85%、
Si:0.1〜1.0%、Mn:0.5〜1.5%、
P:0.035%以下、S:0.040%以下、Al:
0.05%以下であり、残部がFe及び不可避的不純物
からなり、そのコーナ部及び頭側部の硬度がブリネル硬
度でHB 341〜405であり、その頭頂部における頂
部中央から幅方向に20mm離れた位置での硬度がHB
341〜405であり、頭頂部中央部の硬度が、頭頂部
中央から幅方向に20mm離れた位置の硬度よりブリネ
ル硬度で10〜50低く、頭頂部中央と頭頂部中央から
幅方向に前記20mm離れた位置との間の硬度は、頭頂
部中央から幅方向外側に向けて単調に増加し、その間の
部分の実際の硬度と、その間の部分の、頭頂部中央の硬
度および頭頂部中央から幅方向に前記20mm離れた位
置の硬度を直線で補間して得られた硬度との差がブリネ
ル硬度で10以内である高強度・耐損傷レール。 - 【請求項2】 重量%で、C:0.60〜0.85%、
Si:0.1〜1.0%、Mn:0.5〜1.5%、
P:0.035%以下、S:0.040%以下、Al:
0.05%以下であり、さらにCr:0.05〜1.5
%、Mo:0.01〜0.20%、V:0.01〜0.
10%、Ni:0.1〜1.0%、Nb:0.005〜
0.15%のうち1種又は2種以上を含有し、残部がF
e及び不可避的不純物からなり、コ−ナ部及び頭側部の
硬度がブリネル硬度でHB 341〜405であり、その
頭頂部における頂部中央から幅方向に20mm離れた位
置での硬度がHB 341〜405であり、頭頂部中央部
の硬度が、頭頂部中央から幅方向に20mm離れた位置
の硬度よりブリネル硬度で10〜50低く、頭頂部中央
と頭頂部中央から幅方向に前記20mm離れた位置との
間の硬度は、頭頂部中央から幅方向外側に向けて単調に
増加し、その間の部分の実際の硬度と、その間の部分
の、頭頂部中央の硬度および頭頂部中央から幅方向に前
記20mm離れた位置の硬度を直線で補間して得られた
硬度との差がブリネル硬度で10以内である高強度・耐
損傷レール。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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