JP3267682B2 - 成形性の優れた複合組織高強度薄鋼板 - Google Patents

成形性の優れた複合組織高強度薄鋼板

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JP3267682B2 JP17527392A JP17527392A JP3267682B2 JP 3267682 B2 JP3267682 B2 JP 3267682B2 JP 17527392 A JP17527392 A JP 17527392A JP 17527392 A JP17527392 A JP 17527392A JP 3267682 B2 JP3267682 B2 JP 3267682B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車等車両の軽量化を
目的に成形性が良く、特に疲労耐久性が強く要求される
足周り部品等に使用される成形性の優れた高強度薄鋼板
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車等の軽量化のために鋼板の
高強度化やAl合金等の軽量材料化が進んでいる。しか
し、Al合金の場合は軽量化の点から鋼に比較して価格
が著しく高く、また疲労強度が低いことから比重が小さ
いという利点を充分生かしきれないために特殊な用途に
使用されているにすぎないのが現状であって、大量生産
製品である乗用自動車にはより経済的な高強度鋼板が強
く望まれている。しかるに静的な降伏強度や引張強度を
向上させても疲労強度はそれにともなっては向上せず、
高強度化すればするほど問題であった。特に自動車部品
のようにプレス成形や溶接で製造されるものでは単なる
材料の高強度化はむしろこれらの特性を損なうことにな
るため、実用上好ましくなく、従って同一の静的強度で
も疲労強度の高い高強度薄鋼板が求められていた。これ
まで、Ti,Nb,Vを添加した微細な析出強化鋼、フ
ェライト・ベイナイト複合組織強化鋼やフェライト・マ
ルテンサイト複合組織強化鋼(いわゆるDual ph
ase鋼)および延性のすぐれた残留オーステナイトを
含む複合組織強化鋼が開発されていた。しかし、これら
は次に述べる問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、析出強化鋼
はその製造が比較的容易であることから大量に使用され
ているが、疲労特性は低位の水準であり、成形性も他の
高強度薄鋼板より劣るため複雑な形状を有する足周り部
品に適用の限界があった。また、フェライト・ベイナイ
ト複合組織強化鋼は特に局部延性が高く穴拡げ性に優れ
ているが、疲労特性は粗大なベイナイトが存在するため
低位であるフェライト・マルテンサイト複合組織鋼(い
わゆるDual phase鋼)は発明者らの研究で引
張強度が60kg/mm2級の高強度薄鋼板における疲
労強度が優れる機構について知見を述べているが、これ
より強度の高い70kg/mm2以上の高強度薄鋼板で
は疲労強度は向上しなかった。さらに、文献(横幕ら:
1991)によれば疲労強度が向上しない理由として、
硬質相の硬さが飽和するため疲労強度の向上も飽和する
との知見が開示されているが、このように引張強度が7
0kg/mm2以上で疲労特性と成形性のよい複合組織
高強度薄鋼板を製造する技術は見当たらなかった。
【0004】また、延性の良い残留オーステナイトを含
む複合組織鋼では一様伸びが著しく高いことを特徴とす
るが、疲労特性のばらつきが大きく実用には耐えうるも
のではなかった。また、疲労限度の向上に表層の粗さが
関与するため表層を研削して応力集中を低減することで
疲労特性は著しく向上するが、熱間圧延で製造時、加熱
により発生したスケールであるいわゆる黒皮を除去する
ための酸洗ままの状態で使用する成形用高強度薄鋼板の
場合に表面粗さを皆無にすることは実用上不可能であ
る。その他に疲労強度を高くする方法としてショットピ
ーニングや高周波焼入れによる表層に圧縮残留応力と硬
化部を導入して疲労耐久性を向上させる方法があるが、
成形性を低下させるためこの方法は成形用高強度薄鋼板
には適用できない。
【0005】また、使用性能から自動車の足まわり部品
用の高強度薄鋼板には使用中に単に疲労で破壊しないと
いう疲労限度だけでなく、走行中の急旋回や緑石のりあ
げ等により繰返し回数は少ないが降伏強度以上の高い応
力振幅においても疲労強度が必要となる。すなわち、1
7回で破断しない最大の応力振幅である疲労限度と
0.2%の塑性ひずみ振幅で求める繰返し降伏応力の2
つの疲労特性について両者を満足して成形性の優れた高
強度薄鋼板が求められている。本発明は上述の現状に鑑
みてなされたもので、プレス成形性を有し高い疲労限度
と高い繰返し降伏応力を有する成形性の優れた複合組織
高強度薄鋼板を安定して提供することを目的とするもの
である。
【0006】なお、図1は高強度薄鋼板の疲労限度と繰
返し降伏応力の関係を示した図である。ここで疲労限度
とは3000回/分の速度で行った両振平面曲げ疲労試
験による疲労限度で107 回で破断しない最大の応力振
幅であり、繰返し降伏応力は0.4%/秒のひずみ速度
でひずみ制御疲労試験によって得られた安定時の応力・
ひずみ曲線から0.2%の塑性ひずみ振幅における応力
振幅をもって表したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は自動車部品の
疲労耐久性と鋼材の強化機構と疲労損傷の関係を詳細に
調査し、疲労による疲労のすべりの発生位置とき裂の位
置と微小き裂の進展が疲労特性に影響することを見出し
た。即ち、従来の疲労特性は硬質相によ疲労き裂の成
長阻止やき裂の迂回による進展力の低下で決まるとされ
てきたが、本発明者らは軟質相のフェライトでのき裂発
生と微小き裂相互の連結、成長抑制が重要であること
を見出し、フェライトの強度及びフェライト粒界、ある
いはフェライトとマルテンサイトの界面強度を低下させ
る粒界炭化物の大きさが疲労損傷に支配的に影響するこ
とを見出した。さらにこの効果はマルテンサイト等の硬
質相フェライトの相対的寸法にも依存することを見出
した。
【0008】そして、本発明鋼では素材の疲労特性が優
れるのみならず、足周り部品の一つで成形性が要求され
る自動車のホイールを製作して、曲げモーメント耐久試
験を行った場合にも製品として優れた疲労耐久寿命を示
した。すなわち、ホイールの曲げモーメント耐久試験に
おいて耐久性が向上する場合は材料の疲労限度だけでな
く、同時に繰返し降伏応力の高い時のみであることを見
出した。これは疲労限度が高いだけでは降伏強度以上の
高い応力振幅において高い疲労強度を確保できないため
ある。また、繰返し降伏応力が高いだけで疲労き裂
が発生し易いため、ホイールとしての耐久性を満足して
いないこと判明した。
【0009】この様な知見をもとに本発明者は高い疲労
限度と高い繰返し降伏応力を有する成形性の優れた高強
度薄鋼板の条件としてフェライトの硬さを高くし、且つ
フェライトの面積率を多くすることで疲労の損傷が特定
の場所に集積し易くなることを防ぎ、硬質相であるマル
テンサイト、ベイナイト等の寸法と面積率を制限して疲
労の起点となることを抑制し、且つ粒界に析出しやすい
粗大炭化物の生成を抑制すれば、疲労限度が38kg/
mm2以上でかつ繰返し降伏応力が50kg/mm2以上
の成形性の良い高強度薄鋼板が得られるという新たな知
見を見出した。
【0010】本発明の要旨は (1)重量%にて、Cを0.05〜0.15%、Siを
1.2〜2.5%、Mnを1.5〜2.3%を含み
つ、稀土類元素を0.005〜0.15%及びCaを
0.005〜0.1%よりなる群から選ばれ少なくとも
1種の元素を含み、残部が鉄及び不可避的不純物よりな
鋼であ、その組織がビッカース硬度で200以上〜
280以下の硬さを有するフェライトの面積率が60%
以上〜85%以下であり、マルテンサイトおよびベイナ
イトの硬質相の和が15%以上〜40%以下であり、但
しベイナイトの面積率はいずれの場合も5%以下であ
り、マルテンサイトの最大長さはフェライト平均粒径の
20%以上〜150%以下であって、且つ粒界炭化物の
寸法が0.5μm以下であり、疲労限度38kg/mm
2 以上、繰返し降伏応力50kg/mm 2 以上で、且つ8
0〜100kg/mm 2 級の引張強度を有することを特
徴とする成形性の優れた複合組織高強度薄鋼板
【0011】(2)重量%にて、Cを0.15〜0.2
5%、Siを1.4〜2.3%、Mnを1.5〜2.3
%を含み且つ、稀土類元素を0.005〜0.15%
及びCaを0.005〜0.1%よりなる群から選ばれ
少なくとも1種の元素を含み、残部が鉄及び不可避的不
純物よりなる鋼であって、その組織がビッカース硬度で
210以上で300以下の硬さを有するフェライトの面
積率が50%以上〜80%以下であり、マルテンサイ
ト、ベイナイトおよび残留オーステナイトの硬質相の和
が20%以上〜50%以下で、マルテンサイトが7%以
下で且つ残留オーステナイトを5%以上〜18%以下含
んでおり、マルテンサイトまたは残留オーステナイトの
最大長さはフェライト平均粒径の20%以上〜150%
以下であって、且つ粒界炭化物の寸法が0.5μm以下
であり、疲労限度38kg/mm 2 以上、繰返し降伏応
力50kg/mm 2 以上で、且つ80〜100kg/m
2 級の引張強度を有することを特徴とする成形性の優
れた複合組織高強度薄鋼板 (3)重量%にて、Nbを0.2%以下、Vを0.2%
以下、Tiを0.15%以下を単独に又は複合して含
することを特徴とする前項(1)または(2)記載の成
形性の優れた複合組織高強度薄鋼板にある。
【0012】
【作用】以下に本発明の鋼の各構成要素について説明す
る。自動車足まわり部品は使用中に単に疲労で破壊しな
いという疲労限度だけでなく、繰返し回数は少ないが降
伏強度以上の高い応力振幅における疲労強度すなわち繰
返し降伏応力重要となる。そこで本発明では疲労限度
38kg/mm2 以上と繰返し降伏応力50kg/mm
2 以上という2つの疲労特性を同時に満足できるように
各構成要素を規定した。
【0013】まず、本発明第1項の化学組成について、
C(重量%)は0.05%未満では引張強度が80kg
/mm2 に達せず、0.15%超では強度が高くなりす
ぎて延性を阻害することから、0.05%以上で0.1
5%以下とした。Siは1.2%未満では引張強度が8
0kg/mm2 に達せず、2.5%超では延性や疲労強
度への効果が飽和することから1.2%以上で2.5%
以下とした。Mnは1.5%未満では引張強度が80k
g/mm2 に達せず、2.3超ではベイナイト組織が増
加して引張強度の向上に見合った疲労特性が得られなく
なることから、1.5%以上で2.3%以下とした。
【0014】次に、本発明第2項の化学組成について、
Cは0.15未満では目的とする必要量の残留オーステ
ナイトを確保できず、0.25%超ではじん性及び溶接
性を阻害することから、0.15%以上で0.25%以
下とした。Siは1.4%未満では引張強度が80kg
/mm2に達せず、また、残留オーステナイトの必要な
量を確保できない、また、2.3%超では延性や疲労強
度への効果が飽和することから1.4%以上で2.3%
以下とした。Mnは1.5%未満では引張強度が80k
g/mm2に達せず、2.3%超ではベイナイト組織が
増加して引張強度に見合った疲労特性が得られなくなる
ことから、1.5%以上で2.3%以下とした。
【0015】本発明においては上記の元素に加えて、鋼
板は次のような元素を含んでいてもよい。すなわち、N
b,V,Tiはフェライト粒径や硬質相の寸法を制御す
る析出強化元素であり、本発明第1項及び第2項の化学
組成について、Nbを0.2%以下、Vを0.2%以
下、Tiを0.15%以下を単独にまたは複合して含ん
でもよい。稀土類元素(REM)及びCaは硫化物系介
在物の形態制御に有効であり、成形性や疲労特性に効果
がある。その上限値は効果が飽和すること及び過剰では
逆に鋼の清浄度を低下させることから決定され、またそ
の下限値は形態制御に有効な最小値で決定される。従っ
て、REM及びCaからなる群の少なくとも1元素を含
むことが必要で、REM添加量は0.005%以上、
0.15%以下に、Caは0.005%以上、0.1%
以下とする。
【0016】次に金属組織について述べる。まず、フェ
ライト硬さについて述べる。フェライトマルテンサイ
トを主組織とする複合組織鋼板の場合、疲労のすべりが
最初に発生する箇所はフェライトであり、微小ビッカー
ス硬さが200未満ではフェライトの硬さが低すぎるた
め疲労損傷が局部的に生じやすくなり、疲労限度および
繰返し降伏応力がともに向上しない。またフェライトの
硬さが280超では硬質相との硬度差が少なくなるた
め、繰返し降伏応力は向上するが、疲労損傷の起点は硬
質相との粒界に集中し易くなるため静的強度の向上にも
かかわらず疲労限度は向上しない。また、静的強度が高
くなりすぎるため延性を損ない自動車部品の成形が困難
なる。そこで微小ビッカース硬さは200以上〜28
0以下とした。また、残留オーステナイトを含む複合組
織鋼板の場合にはフェライトの微小硬さは同様の理由か
ら上限と下限が決まるためビッカース硬さを210以上
〜300以下とした。ここで、微小ビッカース硬さと
は、本発明のミクロ組織の主たる構成要素であるフェラ
イトの粒内の硬さを測定したものであり、フェライト粒
径に応じて50g以下の微小な荷重を用いて測定したビ
ッカース硬度を指す。
【0017】フェライト面積率はフェライトマルテン
サイトを主組織とする複合組織鋼板の場合、60%未満
では硬質相の割合が増えるためフェライト相を囲んでし
まう組織となり、強度が高くなりすぎ且つ硬質相により
フェライトの変形が拘束されるため成形性が低下するの
みならず、疲労限度も飽和して高くならない。また85
%超では成形性はすぐれるものの静的強度が低く目的の
疲労強度が得られない。そこでフェライト面積率は60
%以上〜85%以下とした。残留オーステナイトを含む
複合組織鋼板の場合にはフェライトの面積率は同様の理
由から上限と下限が決まるため50%以上〜80%以下
とした。
【0018】マルテンサイト等硬質相の面積率はフェラ
イトマルテンサイトを主組織とする複合組織鋼板の場
合、マルテンサイトとベイナイトの和が15%未満では
目的とする静的強度、疲労強度とも得られず、40%超
ではフェライトの相を硬質相が囲む編み目状組織とな
り、成形性が低下するのみならず、疲労限度も飽和して
高くならない。したがって、15%以上〜40%以下と
した。ただし、いずれの場合もベイナイトは粗大になり
やすいため、疲労特性を著しく低下させるので5%以下
とする。この鋼では残留オーステナイトを少量含むこと
があるが、ひずみに対して不安定なため、成形中に消失
するもので本発明第1項の必須の構成要素とはならな
い。
【0019】残留オーステナイトを含む複合組織鋼板の
場合にはひずみに対しても安定な残留オーステナイトを
積極的に利用するものであって、本発明第2項の構成要
素であり、残留オーステナイトは5%以上〜18%以下
とする。5%未満では延性が不足し、繰返し降伏応力も
低下する。また、18%超では疲労強度が飽和する。マ
ルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイト
らなる硬質相の和は20%以下では目的とする静的強
度、疲労強度とも得られず、40%超ではフェライト相
を硬質相が囲む網目状組織となり、成形性が低下するの
みならず、疲労限度も飽和して高くならないため、20
%以上〜40%以下とする。この場合にはマルテンサイ
トの面積率は7%超ではかえって疲労限度が低下するた
め、7%以下とする必要がある。
【0020】マルテンサイト等硬質相の寸法については
フェライトの平均粒径との関連で規定する必要がある。
本発明第1項においてはマルテンサイトの、本発明第2
項においてはマルテンサイトまたは残留オーステナイト
の最大長さがフェライトの平均粒径の20%未満ではフ
ェライト粒径に比して細かい硬質相が多数存在するた
め、硬質相同士が連結し易くなることになり、かえって
延性を阻害する。一方、最大長さが150%以上の粗大
な場合には疲労起点そのものがこれらの硬質相内で生じ
るため疲労強度の向上とはならない。そこで、マルテン
サイト等硬質相の最大長さはフェライトの平均粒径の2
0%以上で且つ150%以下とした。ここで、マルテン
サイト又は残留オーステナイトの最大長さとは、断面観
察によって得られるこれらの相の粒の中で、最も伸長し
た粒の長さを意味する。粒界炭化物の寸法については極
力小さいことが望ましく最大値のみを規定し、0.5μ
m以上ではフェライトにき裂が入る前に粒界炭化物から
き裂を生じ、これらの炭化物を伝播するので疲労特性を
著しく損なう。そこで、最大値0.5μm以下とした。
【0021】以下に実施例を上げてさらに説明する。
【実施例】本発明鋼1〜3はフェライトとマルテンサイ
トを主組織とする複合組織強化鋼で、表1に示す化学成
分の鋼を溶製、連続鋳造の後、830〜930℃の温度
範囲で3.5mmに圧延し、ランアウトテーブル上で3
0℃/秒以上の速度で740〜640℃迄冷却し、この
温度域で4〜10秒空冷した後200℃以下迄50℃/
秒以上で冷却したものである。また、本発明鋼4〜6は
残留オーステナイトを含む複合組織強化鋼で、750〜
850°の温度範囲で圧延し、4〜10秒空冷した後、
ランアウトテーブル上で30℃/秒以上の速度で350
〜450℃まで冷却したものである。比較鋼7〜11は
析出強化による鋼で850〜950℃の温度範囲で圧延
し、20〜30℃/秒の速度により550〜650℃ま
で冷却したものである。比較鋼12,13はフェライト
・マルテンサイト複合組織強化鋼であり、比較鋼14〜
16は残留オーステナイトを含む鋼であるが、それぞれ
本発明鋼1〜3及び4〜6の製造条件に示した範囲内で
製造したものである。これらの鋼板はホイールディスク
に成形され、板厚2.8mmの60kg/mm 2 級の鋼
板からなるリムと、炭酸ガスアーク溶接により接合し
た。これらのホイールを用いて、曲げモーメント180
kgmで毎分500回の速度で耐久試験を行った。ホイ
ールの耐久寿命はディスク部に疲労き裂が発生・進展し
てホイールの剛性が当初の値から8%低下する時点と定
義し、耐久試験中の荷重付加点における変位から測定し
た。
【0022】
【表1】
【0023】以下に実施例を詳細に説明する。表2に示
すように本発明鋼1〜3はフェライトマルテンサイト
を主組織とする鋼であっていずれも疲労限度及び繰返し
降伏応力は高く、ホイールの成形も良好であってホイー
ルの耐久性も比較鋼の2〜4倍を示している。本発明鋼
4〜6は残留オーステナイトを含む鋼であっていずれも
疲労限度及び繰返し降伏応力は高く、ホイールの成形も
良好であってホイールの寿命も比較鋼の2〜4倍の優れ
た耐久性を示している。
【0024】次に比較鋼の結果について説明する。比較
鋼7〜11はNb,Ti,V等を含む析出強化鋼であっ
てフェライト・ベイナイトを主組織としたものであり、
本発明鋼の組織の構成とは異なるが、さらに比較鋼7は
Siが下限を外れ、また比較鋼8はSiとMnが下限を
外れ、さらにいずれも粒界炭化物の寸法が上限を外れて
いる。その結果、表3に示すように疲労限度は低く、ホ
イール耐久寿命も低い。比較鋼9はSiが下限を外れ、
REM/Caの添加が無く、フェライト硬さと粒界炭化
物の寸法が上限を外れている。その結果、疲労限度は低
く、ホイールの成形工程で割れを生じたためホイール耐
久性の評価は行っていない。
【0025】比較鋼10はSiの下限と粒界炭化物の寸
法に外れているため疲労限度も低く、成形も不良であ
る。比較鋼11はCが上限を、Mnが下限を、Caが上
限をそれぞれ外れ且つ、フェライト硬さが上限を、さら
に粒界炭化物の寸法も外れており疲労限度は低い。比較
鋼12、13はフェライト・マルテンサイトを主組織と
したものであって、比較鋼12の場合はCaが下限を、
フェライト硬さが下限を、マルテンサイトの最大長さと
ベイナイトの面積率が上限をそれぞれ外れており引張強
度及び繰返し降伏応力が不足し、且つホイールの成形で
割れを生じた。比較鋼13はマルテンサイトの最大寸法
と粒界炭化物の寸法が外れているため疲労限度が不十分
であり、且つホイール成形過程で小さい割れを生じた。
【0026】比較鋼14〜16は残留オーステナイトを
含む鋼であって、比較鋼14では残留オーステナイトの
面積率が下限を下回り且つ、マルテンサイト及び残留オ
ーステナイトの最大長さがいずれも外れており、さらに
粒界炭化物の寸法が外れているため繰返し降伏応力が不
足している。比較鋼15はREM/Caの添加が無く、
マルテンサイトの面積率が上限を、粒界炭化物の寸法が
それぞれ外れ、疲労限度が低くなっている。比較鋼16
はREM/Caの添加が無く、フェライト面積率が下限
値を下回り、すなわち、マルテンサイト、ベイナイト及
び残留オーステナイトの硬質相の和が上限値を越えてい
るため疲労限度は低く、ホイールの成形で割れを生じ
た。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】1)受入れまま材での両振平面曲げ疲労限
度である。 2)受入れまま材のひずみ制御疲労試験における定常的
な安定応力・ひずみ特性において0.2%の繰返し塑性
ひずみに対応する繰返し応力である。 3)ホイールのハブ穴加工で割れが発生しないときは
○、微小割れは△、大きい割れが発生したときは×。 4)ホイール耐久寿命(単位 万回)。 5)比較ホイール(リム、ディスクとも引張強度60k
g/mm2鋼板:平均寿命15万回)に対する寿命比。
【0030】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明鋼は素材
の特性として疲労特性と成形性にも優れているので、疲
労強度をあげるためにショットピーニング工程等の付加
的処理を必要とせず従来通りの生産様式で可能であり経
済的で工業的にその効果が大きい発明である。さらに付
加的処理を行えば疲労強度をより改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車ホイールの耐久試験結果を比較鋼に比較
して発明鋼による試験結果を使用した高強度薄鋼板の疲
労限度と繰返し降伏応力の関係図である。
【符号の説明】
1 寿命を示す領域の下限線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−126813(JP,A) 特開 昭57−70257(JP,A) 特開 平1−162723(JP,A) 特開 昭61−130454(JP,A) 特開 昭54−28723(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、Cを0.05〜0.15
    %、Siを1.2〜2.5%、Mnを1.5〜2.3%
    を含み且つ、稀土類元素を0.005〜0.15%及
    びCaを0.005〜0.1%よりなる群から選ばれ少
    なくとも1種の元素を含み、残部が鉄及び不可避的不純
    物よりなる鋼であ、その組織がビッカース硬度で20
    0以上〜280以下の硬さを有するフェライトの面積率
    が60%以上〜85%以下であり、マルテンサイトおよ
    びベイナイトの硬質相の和が15%以上〜40%以下で
    あり、ベイナイトの面積率は5%以下であり、マルテン
    サイトの最大長さはフェライト平均粒径の20%以上〜
    150%以下であって、且つ粒界炭化物の寸法が0.5
    μm以下であり、疲労限度38kg/mm 2 以上、繰返
    し降伏応力50kg/mm 2 以上で、且つ80〜100
    kg/mm 2 級の引張強度を有することを特徴とする成
    形性の優れた複合組織高強度薄鋼板
  2. 【請求項2】 重量%にて、Cを0.15〜0.25
    %、Siを1.4〜2.3%、Mnを1.5〜2.3%
    を含み且つ、稀土類元素を0.005〜0.15%及
    びCaを0.005〜0.1%よりなる群から選ばれ少
    なくとも1種の元素を含み、残部が鉄及び不可避的不純
    物よりなる鋼であ、その組織がビッカース硬度で21
    0以上で300以下の硬さを有するフェライトの面積率
    が50%以上〜80%以下であり、マルテンサイト、ベ
    イナイトおよび残留オーステナイトの硬質相の和が20
    %以上〜50%以下で、マルテンサイトが7%以下で且
    つ残留オーステナイトを5%以上〜18%以下含んでお
    り、マルテンサイトまたは残留オーステナイトの最大長
    さはフェライト平均粒径の20%以上〜150%以下で
    あって、且つ粒界炭化物の寸法が0.5μm以下であ
    り、疲労限度38kg/mm 2 以上、繰返し降伏応力5
    0kg/mm 2 以上で、且つ80〜100kg/mm 2
    の引張強度を有することを特徴とする成形性の優れた複
    合組織高強度薄鋼板
  3. 【請求項3】 重量%にて、Nbを0.2%以下、Vを
    0.2%以下、Tiを0.15%以下を単独に又は複合
    して含有することを特徴とする請求項1または2記載の
    成形性の優れた複合組織高強度薄鋼板。
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