JP6515278B2 - 炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法 - Google Patents

炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、凝固する際に初晶としてγ相(γ−Fe)が晶出するγ凝固鋼からなり、微細な凝固組織を有する炭素鋼鋳片及びこの炭素鋼鋳片の製造方法に関するものである。
一般に、上述のγ凝固鋼からなる炭素鋼鋳片は、例えば機械部品、工具、刃物等の素材として広く使用されている。
上述の炭素鋼鋳片は、連続鋳造法あるいは造塊法によって製造されるが、鋳造時において最終凝固部に添加元素が濃化して中心偏析が生じることがある。中心偏析が生じると、粗大な炭化物や硫化物が発生し、炭素鋼鋳片の特性が劣化するおそれがあった。また、鋳造時において凝固過程の冷却や凝固収縮の不均一により、炭素鋼鋳片の表面割れが発生することがあった。
炭素鋼鋳片における中心偏析や表面割れを軽減するためには、炭素鋼鋳片の凝固組織を微細化して等軸晶とすることが効果的であることが知られている。
炭素鋼鋳片の凝固組織を微細化する手段としては、例えば特許文献1には、鋳造時における溶鋼温度を低下させて低温鋳造を行う方法が提案されている。
また、特許文献2には、鋳型内の溶鋼を電磁撹拌し、鋳型内での柱状晶の成長を抑制して等軸晶率を向上させる方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1のように低温鋳造を行った場合には、溶鋼が通過するノズルの閉塞等が生じやすく、操業が安定しないといった問題があった。また、鋳型内の介在物の浮上性が悪化し、炭素鋼鋳片の清浄性が低下するおそれがあった。さらに、凝固組織を安定して微細化することができないおそれがあった。
また、特許文献2のように鋳型内の溶鋼を電磁撹拌した場合には、炭素鋼鋳片の厚さ中央部の凝固組織を微細化することは可能であるが、鋳片の表層近傍の凝固組織を微細化することは困難であった。
そこで、特許文献3〜6には、凝固する際に初晶としてγ相(γ−Fe)が晶出するγ凝固鋼を対象として、溶鋼中に凝固核(接種核)となる硫化物、酸化物等の介在物を生成させて含有することにより、等軸晶を生成させる方法が提案されている。
ここで、特許文献3においては、凝固核(接種核)となる介在物として、MgS、ZrO、Ti、CeO、Ceが示されている。
また、特許文献4〜6においては、凝固核(接種核)となる介在物として、ZrOが示されている。
これらの介在物は、γ相(γ―Fe)との格子整合性が高く、γ凝固鋼に対する接種効果が高い。
特公平07−84617号公報 特開昭50−16616号公報 特開2001−347349号公報 特開2002−321043号公報 特開2002−302738号公報 特開2002−363702号公報
ところで、鋳片の等軸晶率を高めるためには、接種核をできるだけ数多く、均一に分散することが重要である。一般に、酸化物は溶鋼との濡れ性が悪いため、溶鋼中で流動等により酸化物同士が衝突、接触すると、凝集合体し、個々の酸化物は粗大化する傾向にある。凝集合体による個数減少に加えて、粗大化した酸化物の溶鋼中の浮上速度は大きいので、湯面のスラグに吸収されるなどして溶鋼中から早期に除去され易く、溶鋼中の酸化物の個数はますます減少する。また、酸化物を溶鋼中に微細分散させても、鋳造までの時間がかかってしまうと、酸化物の浮上除去が進んで、個数は減少してしまう。このように、濡れ性の悪い酸化物を溶鋼中に、さらに鋳片中に多数を微細分散させることは困難である。この課題に対し、特許文献4は、接種核としてのZrOを生成させるためにZrを添加する際、複数回に分割して添加し、添加部位近傍でZrOの個数密度が高くなることを回避して、凝集合体の頻度を低減することを提案している。しかし、ZrOと溶鋼との濡れ性(凝集合体性)を改善するものではないため、ZrOの分散挙動を大きく改善するには至らなかった。
また、溶鋼温度におけるZrOの結晶構造は正方晶(tetragonal)であり、底面a軸と側面c軸の格子定数が異なる(格子定数a=b≠c)。正方晶のZrOは、γ−Feの結晶構造の面心立方晶fcc(a=b=c)よりも対称性が低いため、γ−Feに対する接種核としての効果に限界があった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、凝固する際に初晶としてγ相(γ−Fe)が晶出するγ凝固鋼からなり、凝固組織が十分に微細化し、中心偏析や表面割れが抑制された高品質な炭素鋼鋳片、及び、この炭素鋼鋳片の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る炭素鋼鋳片は、質量%で、C:0.50%超え1.50%以下、Si:0.01%以上1.2%以下、Mn:0.01%以上3.0%以下、P:0.0010%以上0.050%以下、S:0.0001%以上0.0100%以下、T.Al:0.001%以上0.30%以下、Ca:0.0002%以上0.0040%以下、Zr:0.0010%以上0.25%以下、T.O:0.0005%以上0.0050%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避不純物とされるとともに、T.Oの含有量[%T.O]と、Caの含有量[%Ca]と、Zrの含有量[%Zr]と、T.Alの含有量[%T.Al]とが、下記の(1)式及び(2)式を満足しており、
0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
[%Zr]≧4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0) ・・・(2)
内部に、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散されており、 前記介在物の平均組成が、下記の(3)式及び(4)式を満足しており、
0≦(%Al)≦18 ・・・(3)
0.04≦(%CaO)/(%ZrO)≦0.22 ・・・(4)
前記介在物のうち、CaO安定化ZrO である領域の断面積率の平均値が67%以上であり、長径1μm以上10μm以下のサイズの前記介在物が個数密度で10個/mm以上500個/mm以下の範囲内で分散されていることを特徴としている。
この構成の炭素鋼鋳片によれば、内部に、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散されており、この介在物の平均組成が、上述の(3)式及び(4)式を満足している。この組成のZrO−CaO系複合酸化物は、後述するように、Al脱酸後にCaを添加してCaO−Al系液相酸化物を形成し、その後、Zrを添加して、このCaO−Al系液相酸化物を改質することによって形成されるものである。このZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物は、CaO濃度が11%以下である領域の断面積率の平均値が67%以上とされている。このZrO−CaO系複合酸化物のうちCaO安定化ZrO である領域は立方晶となっていることから、介在物全体としてγ相(γ―Fe)との格子整合性が高くなっている。
そして、ZrO−CaO系複合酸化物からなる長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物が、個数密度で10個/mm以上500個/mm以下の範囲内で分散されているので、凝固組織を確実に微細化することができる。よって、中心偏析や表面割れの無い高品質な炭素鋼鋳片を得ることができる。
本発明に係る炭素鋼鋳片の製造方法は、上述の炭素鋼鋳片を製造する炭素鋼鋳片の製造方法であって、溶鋼にAlを添加して脱酸を行うAl脱酸工程と、Al脱酸後にCaを添加するCa添加工程と、Ca添加後にZrを添加するZr添加工程と、成分調整した溶鋼を鋳造する鋳造工程と、を有し、前記Al脱酸工程及び前記Ca添加工程により、溶鋼中にCaO−Al系液相酸化物を分散させるとともに、前記Zr添加工程により、前記CaO−Al系液相酸化物とZrとを反応させて、前記(3)式及び前記(4)式を満足する平均組成を有するZrO−CaO系複合酸化物からなる前記介在物を形成することを特徴とする。
この構成の炭素鋼鋳片の製造方法においては、溶鋼にAlを添加して脱酸を行うAl脱酸工程と、Al脱酸後にCaを添加するCa添加工程と、Ca添加後にZrを添加するZr添加工程と、を備えているので、Al脱酸後にCaを添加することによって、CaO−Al系液相酸化物を形成している。このCaO−Al系液相酸化物は、固相酸化物と比べて溶鋼との濡れ性が良好であることから、溶鋼中に広く分散させることが可能となる。
そして、このCaO−Al系液相酸化物が分散している溶鋼に対してCaを添加することにより、このCaO−Al系液相酸化物を改質して、γ相(γ−Fe)との格子整合性の高い上述のZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物を溶鋼中に、多数、微細に分散させることができ、接種効果を確実に発揮させて、凝固組織を確実に微細化することができる。
上述のように、本発明によれば、凝固する際に初晶としてγ相(γ−Fe)が晶出するγ凝固鋼からなり、凝固組織が十分に微細化し、中心偏析や表面割れが抑制された高品質な炭素鋼鋳片、及び、この炭素鋼鋳片の製造方法を提供することが可能となる。
Al−CaO−ZrO三元系状態図である。(各成分濃度がmol%表示であることに注意。一方、本明細書中では、質量%を用いて記載している。) 図1の部分拡大図である。 本発明の実施形態である炭素鋼鋳片の製造方法のフロー図である。
以下に、本発明の実施形態である炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態である炭素鋼鋳片は、その組成が、質量%で、C:0.50%超え1.50%以下、Si:0.01%以上1.2%以下、Mn:0.01%以上3.0%以下、P:0.0010%以上0.050%以下、S:0.0001%以上0.0100%以下、T.Al:0.001%以上0.30%以下、Ca:0.0002%以上0.0040%以下、Zr:0.0010%以上0.25%以下、T.O:0.0005%以上0.0050%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避不純物とされている。
さらに、T.Oの含有量[%T.O]と、Caの含有量[%Ca]と、Zrの含有量[%Zr]と、T.Alの含有量[%T.Al]とが、下記の(1)式及び(2)式を満足している。
0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
[%Zr]≧4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0) ・・・(2)
そして、本実施形態である炭素鋼鋳片においては、内部に、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散されており、このZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物は、下記の(3)式及び(4)式を満足する平均組成とされている。
0≦(%Al)≦18 ・・・(3)
0.04≦(%CaO)/(%ZrO)≦0.22 ・・・(4)
また、本実施形態では。ZrO−CaO系複合酸化物からなる長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物が、個数密度で10個/mm以上500個/mm以下の範囲内で分散されている。
ここで、本実施形態においては、上述のZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物が、溶鋼中に分散していることにより、凝固時にこれらの介在物が接種核として作用することで、炭素鋼鋳片の等軸晶化を図っている。すなわち、本実施形態の炭素鋼片においては、上述のように微細なZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散していることから、凝固組織が十分に微細化されていることになる。
以下に、接種核となるZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物、及び、この介在物を分散させる方法について説明する。
本実施形態では、上述のZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物を溶鋼中に分散させるために、介在物を形成する中間段階において、液相酸化物(表面が液相に被覆された、液相率が高い酸化物)を生成させている。液相酸化物は、固相酸化物に比べて、溶鋼との濡れ性が良く、溶鋼中での凝集合体性が低いので、微細分散した状態を維持し易い。そして、十分に微細分散した状態の液相酸化物を改質して、接種核となる介在物を得ることにより、最終的に得られるZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物(接種核)は確実に微細分散されることになる。
本実施形態では、3種類の脱酸元素のAl、Ca、Zrを用いて、最終的にZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物を微細分散させるために、その添加順序と添加量とを規定している。
添加順序は、まずAl脱酸を行い、次にCa脱酸を、最後にZr脱酸を行う。Ca脱酸後に生成されるCaO−Al系酸化物を液相酸化物とすることで、CaO−Al系酸化物の凝集合体を抑制して、微細分散させている。
ここで、Ca脱酸後に、上述の液相酸化物を得るために、以下の式(1)によってCa量を規定している。
0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
式(1)下限を満たす量のCaを添加して脱酸すれば、液相率が高い(50%以上)CaO−Al系酸化物(CaO−Al系液相酸化物)が生成することになる。式(1)下限未満では、Ca脱酸後に生成するCaO−Al系酸化物の液相率が低く、表面が液相で被覆されないで固相が表面に露出した酸化物になる。そのため、CaO−Al系酸化物の凝集合体が容易に進行してしまい、CaO−Al系酸化物を微細分散することができない。すると、このCaO−Al系酸化物を改質することで最終的に得られるZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物についても微細分散することができないおそれがある。
なお、式(1)上限は、Zr添加後に生ずる、γ相の接種効果の無いCaZrO(CaOとZrOがモル比1:1の複合酸化物)の生成を抑制して、接種核として有効なZrOの生成を促進するために規定している。すなわち、CaZrO中の(%Ca)/(%O)=0.8を超えた範囲では、ZrOの代わりにCaZrOが生成して、接種効果を得られない。
また、γ−Feに対する接種核として、特許文献3〜6ではZrOが提案されている。溶鋼温度におけるZrOの結晶構造は正方晶(tetragonal)であり、底面a軸と側面c軸の格子定数が異なる(格子定数a=b≠c)。γ−Feと格子整合性が良好であるのは、正方晶の底面であり、ZrOの底面の格子定数が、γ−Feの格子定数と近い。しかし、正方晶は、γ−Feの結晶構造の面心立方晶fcc(a=b=c)よりも対称性が低いため、γ−Feに対する接種核としての効果に限界があった。
一方、ZrOに、CaOを固溶させると、CaO安定化ZrO(CaO stabilized Zirconia;以下、CSZと記載する)が1140℃以上で生成することが知られている。CSZの結晶構造は立方晶であるため、γ−Feに対する接種効果は正方晶であるZrOよりも高い。CaO固溶量は温度で変わるが、例えば、溶鋼温度として一般的な1600℃の場合、質量%で5〜11%のCaOを固溶させると、CSZが生成することがCaO−ZrO二元系状態図から分かる。
本実施形態においては、γ−Feに対する接種効果が高い立方晶のCSZを生成する。そのために、式(2)でZr量を規定している。
4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0)≦[%Zr] ・・・(2)
式(2)はCa量とAl量が多いほど、Zr量を増やす必要があることを示す。この式(2)は、熱力学計算によるシミュレーションから求めた。
図1と、その一部を拡大した図2に、1600℃におけるAl−CaO−ZrO三元系状態図(T.Murakami,H.Fukuyama,T.Kishida,M.Susa and K.Nagata:Metall. Mater. Trans. B,2000,vol.31B,pp.25−33を基に、説明のため一部加筆したもの)を示す。両図を参照して、CaO−Al系液相酸化物が存在する溶鋼にZrを添加した場合における酸化物組成の代表的な変化の例を模式的に説明する。元の図では、CSZはCss(ss=solid solution、固溶体の意味。この場合、CaOが固溶しているZrO相を指す。)、CaZrOはCZ、正方晶のZrOはTssと表記されている。なお、図1、図2では各成分濃度がmol%で表示されている。一方、本明細書中では、特に断りの無い限り、質量%表示を用いて記載している。
まず、Zr添加前にCaO−Al系液相介在物を生成させてから、Zrを少量添加すると、CaO−Al−ZrO系液相介在物が生成する(図1中の点a)。Zr量を増やすにしたがって、液相介在物が減少し続ける一方でCaOとZrOのモル比が1:1の複合酸化物CaZrOが生成し始める(点b)。CaZrOは溶鋼温度では固相であり、また、γ−Feとの格子整合性も低いため、γ−Feに対する接種効果も無い。さらにZr量を増やすにつれて、液相介在物は一層減少してCaZrOが増加し、やがてCSZが生成し始める(点c)。Zr量が式(2)を満たすまでに増加すると、CSZが酸化物の2/3以上の体積を占めるまで増大する。さらにZrを追加すると、CSZとCZの二相領域(点d)に達し、CSZ単相領域(点e)、そして正方晶のZrOが生成する領域(点f)まで変化する。
なお、図1によれば、CaO−Al−ZrO系液相介在物とCSZの二相が平衡する、狭い組成領域(点gを含む領域)も存在する。
式(2)を満たす量のZrを添加すれば、CSZが断面積の2/3以上を占めるZrO−CaO系複合酸化物が生成することになり、γ−Feに対して高い接種効果が得られる。介在物全体として高い接種効果を得るためには、CSZが2/3以上を占める必要がある。
式(2)を満たさない量では、十分な量のCSZが得られない。その場合、残りの部分が主に、(i)CaO−Al−ZrO系液相介在物である場合、(ii)CaOとZrOがモル比1:1で形成された複合酸化物CaZrOである場合、(iii)液相とCaZrOの混合の場合、(iv)正方晶のZrOである場合、の4通りがある。ここで、CaZrOは、上述のように、γ−Feと格子整合性が低いため、γ−Feに対する接種効果はほとんど無い。
このようにして得られた鋳片に分布する最終的な介在物は、以下の組成である。
0≦(%Al)≦18 ・・・(3)
0.04<(%CaO)/(%ZrO)≦0.22 ・・・(4)
いずれも、CSZが2/3以上を占める場合の、介在物全体の平均組成の条件を示している。上述の介在物においては、Ca量、その他条件により、最終的にCSZのほかに、(i)CaO−Al−ZrO系液相介在物が残る場合と、(ii)CaZrOが残る場合、(iii)液相介在物とCaZrOが混合して残る場合、(iv)正方晶のZrOが残る場合があるが、(i)から式(3)の上限、(ii)から式(4)の上限、(iv)から式(4)の下限が規定される。
まず、式(3)の上限から説明する。(i)CSZと液相介在物の二相共存領域(図1の点gを含む領域)における介在物の、Alの平均濃度の最大値から規定した。CSZへのAlの固溶限は約1%である。また、CSZ以外の液相介在物中のAl濃度は最大52%である。介在物全体に占めるCSZの断面積率が低くなるほど、CSZと液相介在物を合わせた介在物全体に含まれるAlの平均濃度(%Al)は上昇する。(%Al)の値は、CSZの断面積率が最小の2/3の時に最大となり、2/3×1%+1/3×52%=18%と算出される。この値が、CSZの断面積率が最小の2/3を確保するために許容される、Alの平均濃度(%Al)の最大値である。下限については、Alを含有しない場合があり得ることから0である。
次に、式(4)の上限を説明する。(ii)CSZとCaZrOの二相共存領域(図1、2の点dを含む領域)において、CaZrOが1/3以上を占める場合から規定される。溶鋼中におけるCSZへのCaOの固溶限は約11%であり、また、CaZrO中のCaOの割合は31.3%である。介在物全体としての平均CaO濃度(%CaO)と平均ZrO濃度(%ZrO)の比は、CSZの断面積率が最小の2/3である時に最大となり、(2/3×11%+1/3×31.3%)/(2/3×89%+1/3×68.7%)=0.22と算出される。この値が、CSZの断面積率が最小の2/3を確保するために許容される(%CaO)/(%ZrO)の最大値である。
また、式(4)の下限については、Zrを多量に添加して、(iv)CSZと正方晶のZrOの二相共存領域(図1、2の点fを含む領域)において、正方晶のZrOが1/3を占めた場合から規定される。T.Murakami et al.の文献によると、CSZと正方晶のZrOの平衡組成には範囲(図2の太線La、Lb)があるが、CA(CaO・6Al)−正方晶のZrO−CSZの三相平衡時の正方晶のZrOとCSZの組成(図2の点h)で算出した式(4)の値が最小値をとる。この時、正方晶のZrOへのCaOの固溶量は0.22%であり、CSZへのCaOの固溶量は5.8%である。式(4)を計算すると、(1/3×0.22+2/3×5.8)/(1/3×99.78+2/3×94.2)=0.04である。
(介在物のサイズ)
炭素鋼鋳片中の介在物は、圧延等の加工が施されていないことから、ほぼ球形をなしており、大部分が長径/短径の比は3以下程度である。このため、介在物の長径によって介在物のサイズを規定することが可能である。
ここで、長径が1μm未満である場合には、接種核としての効果が低く、凝固組織を微細化させることができない。また、光学顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察することが困難となる。一方、長径が10μmを超えると、介在物の個数が確保することができなくなる。このため、本実施形態では、長径が1μm以上10μm以下の介在物の個数密度を規定している。
(介在物の個数密度)
上述のサイズの介在物の個数密度が10個/mm未満の場合には、鋳片内で広範囲にわたって等軸晶を生成させるには不十分であって、凝固組織を微細化できない。一方、上述のサイズの介在物の個数密度が500個/mmを超える場合には、介在物の数が多すぎて、製品疵の原因となるおそれがある。また、加工性や靭性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物の個数密度を、10個/mm以上500個/mm以下の範囲内に規定している。なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、個数密度を20個/mm以上200個/mm以下の範囲内とすることが好ましい。
また、以下に、本実施形態において、炭素鋼鋳片の各元素量を規定した理由を示す。
(C:炭素)
Cは、炭素鋼鋳片の強度を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Cの含有量が0.50%超えとすることにより、凝固する際に初晶としてγ相(γ−Fe)が晶出するγ凝固鋼となる。ここで、Cの含有量が1.50%を超えると、加工性、溶接性が低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Cの含有量を0.50%超え1.50%以下の範囲内に規定している。
(Si:ケイ素)
Siは、溶鋼の脱酸を促進するとともに、炭素鋼鋳片の強度を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Siの含有量が0.01%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Siの含有量が1.2%を超えると、加工性、溶接性が低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Siの含有量を0.01%以上1.2%以下の範囲内に規定している。
(Mn:マンガン)
Mnは、炭素鋼鋳片の強度及び靭性を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Mnの含有量が0.01%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Mnの含有量が3.0%を超えると、溶接性が低下してしまう。
以上のことから、本実施形態では、Mnの含有量を0.01%以上3.0%以下の範囲内に規定している。
(P:リン)
Pは、炭素鋼鋳片の靭性に影響を与える元素であるが、不可避的に0.0010%は含有される。ここで、Pの含有量が0.050%を超えると、中心偏析が激しくなり、炭素鋼鋳片の靭性が劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、Pの含有量を0.0010%以上0.050%以下の範囲内に規定している。
(S:硫黄)
Sは、炭素鋼鋳片の靭性に影響を与える元素であるが、不可避的に0.0001%は含有される。ここで、Sの含有量が0.0100%を超えると、粗大な介在物が生成し、炭素鋼鋳片の靭性が顕著に劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、Sの含有量を0.0001%以上0.0100%以下の範囲内に規定している。
(T.Al:アルミニウム)
Alは、溶鋼を脱酸するために一般的に添加される元素である。ここで、T.Alの含有量が0.001%未満では、十分に脱酸をすることができない。一方、T.Alの含有量が0.30%を超えると、粗大な介在物(Alクラスター、AlN)が発生し、炭素鋼鋳片の品質が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、T.Alの含有量を0.001%以上0.30%以下の範囲内に規定している。なお、本発明において、T.Al(トータルアルミニウム)の含有量は、溶鋼中のアルミニウムに加え、化合物の状態で炭素鋼鋳片に含有されているアルミニウムを含む合計量である。
(Ca:カルシウム)
Caは、本発明では2点の重要な作用を有する。
(1)まず、接種核となるZrO−CaO系複合酸化物、特に接種作用を担うCSZの形成元素である。上述したように、CSZは立方晶であり、正方晶であるZrOよりもγ−Feに対する高い接種効果を有する。本実施形態で生成されるZrO−CaO系複合酸化物は、観察断面積の2/3以上が正方晶のCSZであるので、十分に高い接種効果を有する。
(2)最終的に生成されるZrO−CaO系複合酸化物を、溶鋼中(鋳片内部)に、多数、微細に分散させるために重要な影響を与える元素である。すなわち、Al脱酸後にCa添加することにより、溶鋼中にCaO−Al系液相酸化物を生成するので、その後にZr添加すれば、ZrO−CaO系複合酸化物を溶鋼中に確実に微細分散できる。液相酸化物は固相酸化物に比べて溶鋼との濡れ性が良好であるので凝集合体しにくいためである。このように、Zr添加前に凝集合体しにくいCaO−Al系液相酸化物を生成し、これを改質することにより、ZrO−CaO系複合酸化物を溶鋼中に、多数、微細に分散させることが可能となる。
ここで、Caの含有量が0.0002%未満では、CaO−Al系液相酸化物を生成することができない。そして、CSZを生成することができない。一方、0.0040%を超えると、Zr添加後に生成する複合酸化物のCaO含有率が高くなって、接種作用を有するCSZの含有率が低下してしまい、ZrO−CaO系複合酸化物全体として接種効果が不十分になる。
以上の理由から、本実施形態では、Caの含有量を0.0002%以上0.0040%未満の範囲に規定している。
(Zr:ジルコニウム)
Zrは、γ相(γ―Fe)の凝固核(接種核)となるZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物を生成するために必要な元素である。
ここで、Zrの含有量が0.0010%未満では、ZrO−CaO系複合酸化物中のCSZが十分に生成しないおそれがある。一方、Zrの含有量が0.25%を超えると、粗大な酸化物が生成して、炭素鋼鋳片の加工性や靭性が大幅に劣化してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Zrの含有量を0.0010%以上0.25%以下の範囲内に規定している。
(T.O:酸素)
Oは、不可避的に0.0005%は含有される。ここで、T.Oの含有量が0.0050%を超えると、粗大な酸化物等が生成し、炭素鋼鋳片の品質が劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、T.Oの含有量を0.0005%以上0.0050%以下の範囲内に限定している。なお、本発明において、T.O(トータル酸素)の含有量は、溶鋼中の溶存酸素(フリー酸素)に加え、酸化物の状態で炭素鋼鋳片に含有されているOを含む合計量である。
次に、本実施形態である炭素鋼鋳片の製造方法について、図3のフロー図を参照して説明する。
(溶製工程S01)
まず、転炉等で溶製した溶鋼を準備する。そして、Ca、Zrを除く鋼成分を調整する。この成分調整の際に成分値(歩留まり)を安定させるため、Al脱酸を複数回に分けて行っても良い。こうして、まず、Ca、Zrを除く成分調整と、Al脱酸を行う。この溶鋼中には、Alを主体とする介在物が存在している。
(Ca添加工程S02)
次に、Caを添加する。Al脱酸後に生成した粗大なAlを溶鋼から浮上除去させるために、Al添加してから1.5分以上経過した後に、Caを添加することが好ましい。
Caを添加することにより、溶鋼中に残存したAlを、CaO−Al系液相酸化物に改質する。そのために、CaはO量に応じて式(1)を満たす量を含有させる。この際のCa量は添加量ではなく、歩留後の鋼中含有量である。このCaO−Al系液相酸化物は、溶鋼との濡れ性が良いため、溶鋼中に微細分散しやすい。CaとAlを十分に反応させてCaO−Al系液相酸化物を生成させるために、Ca添加終了後から1.5分以上、溶鋼を撹拌することが好ましい。しかし、長時間撹拌すると、液相酸化物といえども凝集合体が進行してしまうため、撹拌時間は長くても3分以内が好ましい。添加するCaの形態や方法は、一般的に実施されている、CaSi合金ワイヤー添加や、CaSi合金粉末インジェクション等を用いることができ、特に限定するものではない。
(Zr添加工程S03)
そして、溶鋼にZrを添加する。これにより、Ca添加工程S02で生成し、溶鋼中に微細分散したCaO−Al系液相酸化物をZrO−CaO系複合酸化物に改質する。Zr量は、Al量とCa量に応じて式(2)を満たす量を含有させる。ZrとCaO−Al系液相酸化物を十分に反応させるために、Zr添加終了後から1.5分以上、溶鋼を撹拌することが好ましい。しかし、長時間撹拌すると、凝集合体が進行してしまうため、撹拌時間は長くても3分以内が好ましい。
(鋳造工程S04)
このようにして得た溶鋼を連続鋳造機によって鋳造する。その際、Zr添加から鋳造終了までのその際、Zr添加から鋳造終了までの時間は6時間以内とする。このようにすることで溶鋼中の、ZrO−CaO系複合酸化物からなる長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物を、個数密度で10個/mm以上500個/mm以下の範囲内とすることができる。
ここで、Zr添加から鋳造終了までの時間が6時間を超えると、Zr添加工程S03で形成されたZrO−CaO系複合酸化物が溶鋼表面に浮上してしまい、接種核としての機能を果たさなくなるおそれがある。
以上のような構成とされた本実施形態である炭素鋼鋳片によれば、内部に、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散されており、この介在物の平均組成が、上述の(3)式及び(4)式を満足していることから、介在物の2/3以上が立方晶のCZSで占められることになり、介在物全体としてγ相(γ―Fe)との格子整合性が高くなっている。よって、この介在物が凝固核となり、凝固組織を確実に微細化されることが可能となる。
また、本実施形態では、ZrO−CaO系複合酸化物からなる長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物が、個数密度で10個/mm以上500個/mm以下の範囲内で分散されているので、凝固組織を確実に微細化することができる。よって、中心偏析や表面割れの無い高品質な炭素鋼鋳片を得ることができる。
また、本実施形態においては、Al脱酸後にCaを添加するCa添加工程S02と、Ca添加後にZrを添加するZr添加工程S03と、を備えているので、Ca添加工程S02によって、溶鋼中のAlを改質してCaO−Al系液相酸化物を形成することができる。このCaO−Al系液相酸化物は、固相酸化物と比べて溶鋼との濡れ性が良好であることから、溶鋼中に広く分散させることが可能となる。
そして、Zr添加工程S03において、CaO−Al系液相酸化物が分散している溶鋼に対してZrを添加することにより、このCaO−Al系液相酸化物を改質して、γ相(γ−Fe)との格子整合性の高い上述のZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物を溶鋼中に、多数、微細に分散させることができ、接種効果を確実に発揮させて、凝固組織を確実に微細化することができる。
以上、本発明の実施形態である炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下に、本発明の効果を確認すべく、実施した実験結果について説明する。
250t転炉で溶製した溶鋼を、真空脱ガス装置においてAlを添加して脱酸するとともに溶鋼の成分調整を行った。
そして、本発明例1−11、比較例21−31では、Al脱酸後の溶鋼に、CaSi合金ワイヤー添加を行ってCaを添加し、その後、Zrを添加した。
比較例21では、Al脱酸後にCa添加を行ったが、Zrを添加しなかった。
比較例22では、Al脱酸後の溶鋼へのCa添加を実施せずに、Zrを添加した。
比較例31では、Al脱酸後に、Zrを添加し、その後Caを添加した。
上述のようにして、表1に示す成分組成の溶鋼を得た。成分分析試料は、タンディッシュで採取した。この溶鋼を連続鋳造することにより、幅1250mm、厚さ250mmの矩形断面を有する炭素鋼鋳片(スラブ)を製造した。
(凝固組織の観察)
得られた炭素鋼鋳片(スラブ)の鋳造方向に直交する断面において、ピクリン酸液で凝固組織(デンドライト組織)を検出し、1/4幅、1/2幅、3/4幅の各位置で等軸晶率(鋳片厚みに対する等軸晶帯厚みの比率)を測定した。鋳片表層から厚さ中央部に向かって、成長方向が揃った柱状晶組織が発達し、厚さ中央部には成長方向がランダムな等軸晶が生成する。柱状晶の成長方向が揃うのは、優先成長方位がマクロ的な熱流方向と一致又は近いデンドライトが優先的に成長するためである。このように、柱状晶帯と等軸晶帯は、組織(デンドライトの一次枝)の方向性によって区別することができる。なお、等軸晶帯には、形状がほとんど球状(長径/短径の比が1に近い)の粒状晶や、細長い形状の分岐状デンドライト(長径/短径の比が3以下のものが多いが、3を超えるものもある)が含まれる。等軸晶帯の比率を表2に示す。
(介在物の組成)
得られた炭素鋼鋳片(スラブ)の鋳造方向に直交する断面において、1/4幅の1/4厚の位置から観察試料を採取し、この観察試料をSEM観察し、長径1μm以上10μm以下の介在物を任意に20個選択した。SEMに付属したEDS(エネルギー分散測定)装置によって、それぞれの介在物全体を覆う範囲を測定範囲として、各介在物の全体組成を求めた。そして、測定した20個の介在物の全体組成を平均して、(%Al)、および、(%CaO)/(%ZrO)を求めた。なお、ここで、( )括弧で示した組成は、介在物組成であることを示す。
(介在物におけるCZS相の断面積率)
介在物内部でCSZ相が占める断面積率は、反射電子像を画像処理して求めた。原子番号(化合物の場合は、構成原子の原子番号と質量濃度の積を、全元素について合計した、平均原子番号を用いれば良い)が大きくなるほど、反射電子像は明るく見えるため、CSZ相を判別できる。対象とする明るさの相がCSZ相であることは、事前に、EDSにより定量分析を行って確認した。なお、反射電子像でなく、EPMAにより介在物全体の元素濃度分布を測定(元素マッピング)して、CSZ相を特定して、その断面積率を求めても良い。
(介在物の個数密度/鋳片介在物の最大径)
上述の観察試料を、光学顕微鏡で、倍率1000倍、60視野で観察し、長径1μm以上10μm以下の介在物の個数密度を算出した。また、観察された介在物の最大長径を求めた。介在物の最大長径及び個数密度を表2に示す。
(製品疵)
得られた炭素鋼鋳片(スラブ)を常法にしたがい、1050〜1200℃に加熱後、熱間圧延して厚さ3mmの熱延板を製造し、長さ10mm以上の疵の有無を目視で検査した。100m当たりの疵の個数が1個未満のものを「○」、1個以上のものを「×」と判定した。評価結果を表2に示す。
Figure 0006515278
Figure 0006515278
比較例21は、Zrを添加しなかったため、鋳片にはCSZ相は観察されず、CaO−Al系液相酸化物が分布した。この酸化物はγ−Feと格子整合性が低く接種効果を有しないため、等軸晶率は5%と低かった。
比較例22は、Al脱酸後のCa添加を実施せずに、Zr添加を行った。CaO−Al系液相酸化物が生成されない状態で、Zr添加を行ったので、CSZは生成せず、正方晶であるZrOが生成し、その鋳片内個数密度は10個/mmに満たなかった。そのため、等軸晶率は10%にとどまった。
比較例23は、Al脱酸後のCa量が下限未満の0.0001%であり、その結果、式(1)の値も下限未満であった。このため、CaO−Al系酸化物は固相となり、凝集合体が進行して個数が減少した。そのため、Zr脱酸後に生成したZrO−CaO系複合酸化物の個数は10個/mm未満で少なく、等軸晶率は10%であった。また、CSZ相は少なく、断面積率は67%未満であった。
比較例24は、Al脱酸後のCa量が上限を超えた0.0045%であり、その結果、式(1)および式(4)の値が上限を超えたため、Zr脱酸後に生成したZrO−CaO系複合酸化物中の(%CaO)が高く、CaZrO複合酸化物が多量に生成した。一方、γ−Feに対する接種効果が高いCSZ相の断面積率が67%未満であり、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物全体としての接種効果が低下したため、等軸晶率は20%に届かなかった。
比較例25は、Al量が上限を超えたため、Al脱酸後に粗大なAlが生成したほか、Ca脱酸後のCaO−Al系酸化物は液相にならず、凝集合体が進行した。Zr脱酸後のZrO−CaO系複合酸化物の個数は10個/mm未満で少なく、CSZ相の断面積率は67%未満であり、等軸晶率は5%であった。また、粗大なAlに起因して、粗大なZrO−CaO系複合酸化物が鋳片内に分布したため製品疵が発生した。
比較例26は、Zrが下限値未満であったため、式(4)の値が上限を超え、式(2)を満たさなかった。そのため、γ−Feの接種核となるCSZの生成量が不足して、CSZ相の断面積率は67%未満であり、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物全体としての接種効果が低かったため、等軸晶率は10%にとどまった。
比較例27は、ZrO−CaO系複合酸化物の個数は50個/mmを超え、等軸晶率は35%であった。しかし、Zrが上限量を超えたため、ZrO−CaO系複合酸化物が粗大になり、製品疵が発生した。
比較例28は、式(1)の値が下限未満となったため、Ca脱酸後のCaO−Al系酸化物が十分に液相化せず、凝集合体が進行し、Zr脱酸後のZrO−CaO系複合酸化物の個数も少なかったため、等軸晶率が10%にとどまった。
比較例29は、式(1)の上限を超えており、Zr脱酸後のZrO−CaO系複合酸化物の(%CaO)が増加した結果、式(4)の上限も超えた。そのため、Zr脱酸後に生成したZrO−CaO系複合酸化物中の(%CaO)が高く、CaZrOが多量に生成する一方、γ−Feに対する接種効果が高いCSZ相の断面積率が67%未満となり、ZrO−CaO系介在物全体としての接種効果が低下したために、等軸晶率は20%に届かなかった。
比較例30は、Zr量が式(2)を満たさなかったため、Zr脱酸後に生成したZrO−CaO系複合酸化物中の(%CaO)が高く、CSZ相の断面積率が67%未満となり、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物全体としての接種効果が低下したために、等軸晶率は20%に届かなかった。
比較例31は、Al脱酸後にZr添加を実施し、最後にCa添加を行ったため、CaO−Al系液相酸化物を生成する段階を経なかった。そのため、Al脱酸後からCa脱酸に至るまで、酸化物は固相であり、溶鋼中で凝集が進行して個数が減少したため、等軸晶率が10%であった。
これらに対して、本発明例1−11においては、いずれも等軸晶率が高く、かつ、製品疵も少なかった。
以上のことから、本発明例によれば、溶鋼が凝固する際に晶出する初晶がγ相となるγ凝固鋼において、凝固組織を安定して微細化させることができ、各種特性に優れた炭素鋼鋳片を得ることが可能であることが確認された。
S02 Ca脱酸工程
S03 Zr添加工程

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.50%超え1.50%以下、
    Si:0.01%以上1.2%以下、
    Mn:0.01%以上3.0%以下、
    P:0.0010%以上0.050%以下、
    S:0.0001%以上0.0100%以下、
    T.Al:0.001%以上0.30%以下、
    Ca:0.0002%以上0.0040%以下、
    Zr:0.0010%以上0.25%以下、
    T.O:0.0005%以上0.0050%以下、
    を含有し、残部がFeおよび不可避不純物とされるとともに、T.Oの含有量[%T.O]と、Caの含有量[%Ca]と、Zrの含有量[%Zr]と、T.Alの含有量[%T.Al]とが、下記の(1)式及び(2)式を満足しており、
    0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
    [%Zr]≧4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0) ・・・(2)
    内部に、ZrO−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散されており、
    前記介在物の平均組成が、下記の(3)式及び(4)式を満足しており、
    0≦(%Al)≦18 ・・・(3)
    0.04≦(%CaO)/(%ZrO)≦0.22 ・・・(4)
    前記介在物のうち、CaO安定化ZrO である領域の断面積率の平均値が67%以上であり、
    長径1μm以上10μm以下のサイズの前記介在物が個数密度で10個/mm以上500個/mm以下の範囲内で分散されていることを特徴とする炭素鋼鋳片。
  2. 請求項1に記載の炭素鋼鋳片を製造する炭素鋼鋳片の製造方法であって、
    溶鋼にAlを添加して脱酸を行うAl脱酸工程と、Al脱酸後にCaを添加するCa添加工程と、Ca添加後にZrを添加するZr添加工程と、成分調整した溶鋼を鋳造する鋳造工程と、を有し、
    前記Al脱酸工程及び前記Ca添加工程により、溶鋼中にCaO−Al系液相酸化物を分散させるとともに、
    前記Zr添加工程により、前記CaO−Al系液相酸化物とZrとを反応させて、前記(3)式及び前記(4)式を満足する平均組成を有するZrO−CaO系複合酸化物からなる前記介在物を形成することを特徴とする炭素鋼鋳片の製造方法。
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