JP6515278B2 - 炭素鋼鋳片及び炭素鋼鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
上述の炭素鋼鋳片は、連続鋳造法あるいは造塊法によって製造されるが、鋳造時において最終凝固部に添加元素が濃化して中心偏析が生じることがある。中心偏析が生じると、粗大な炭化物や硫化物が発生し、炭素鋼鋳片の特性が劣化するおそれがあった。また、鋳造時において凝固過程の冷却や凝固収縮の不均一により、炭素鋼鋳片の表面割れが発生することがあった。
炭素鋼鋳片の凝固組織を微細化する手段としては、例えば特許文献1には、鋳造時における溶鋼温度を低下させて低温鋳造を行う方法が提案されている。
また、特許文献2には、鋳型内の溶鋼を電磁撹拌し、鋳型内での柱状晶の成長を抑制して等軸晶率を向上させる方法が提案されている。
また、特許文献2のように鋳型内の溶鋼を電磁撹拌した場合には、炭素鋼鋳片の厚さ中央部の凝固組織を微細化することは可能であるが、鋳片の表層近傍の凝固組織を微細化することは困難であった。
ここで、特許文献3においては、凝固核(接種核)となる介在物として、MgS、ZrO2、Ti2O3、CeO2、Ce2O3が示されている。
また、特許文献4〜6においては、凝固核(接種核)となる介在物として、ZrO2が示されている。
これらの介在物は、γ相(γ―Fe)との格子整合性が高く、γ凝固鋼に対する接種効果が高い。
0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
[%Zr]≧4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0) ・・・(2)
内部に、ZrO2−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散されており、 前記介在物の平均組成が、下記の(3)式及び(4)式を満足しており、
0≦(%Al2O3)≦18 ・・・(3)
0.04≦(%CaO)/(%ZrO2)≦0.22 ・・・(4)
前記介在物のうち、CaO安定化ZrO 2 である領域の断面積率の平均値が67%以上であり、長径1μm以上10μm以下のサイズの前記介在物が個数密度で10個/mm2以上500個/mm2以下の範囲内で分散されていることを特徴としている。
そして、ZrO2−CaO系複合酸化物からなる長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物が、個数密度で10個/mm2以上500個/mm2以下の範囲内で分散されているので、凝固組織を確実に微細化することができる。よって、中心偏析や表面割れの無い高品質な炭素鋼鋳片を得ることができる。
そして、このCaO−Al2O3系液相酸化物が分散している溶鋼に対してCaを添加することにより、このCaO−Al2O3系液相酸化物を改質して、γ相(γ−Fe)との格子整合性の高い上述のZrO2−CaO系複合酸化物からなる介在物を溶鋼中に、多数、微細に分散させることができ、接種効果を確実に発揮させて、凝固組織を確実に微細化することができる。
さらに、T.Oの含有量[%T.O]と、Caの含有量[%Ca]と、Zrの含有量[%Zr]と、T.Alの含有量[%T.Al]とが、下記の(1)式及び(2)式を満足している。
0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
[%Zr]≧4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0) ・・・(2)
0≦(%Al2O3)≦18 ・・・(3)
0.04≦(%CaO)/(%ZrO2)≦0.22 ・・・(4)
また、本実施形態では。ZrO2−CaO系複合酸化物からなる長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物が、個数密度で10個/mm2以上500個/mm2以下の範囲内で分散されている。
以下に、接種核となるZrO2−CaO系複合酸化物からなる介在物、及び、この介在物を分散させる方法について説明する。
添加順序は、まずAl脱酸を行い、次にCa脱酸を、最後にZr脱酸を行う。Ca脱酸後に生成されるCaO−Al2O3系酸化物を液相酸化物とすることで、CaO−Al2O3系酸化物の凝集合体を抑制して、微細分散させている。
0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
式(1)下限を満たす量のCaを添加して脱酸すれば、液相率が高い(50%以上)CaO−Al2O3系酸化物(CaO−Al2O3系液相酸化物)が生成することになる。式(1)下限未満では、Ca脱酸後に生成するCaO−Al2O3系酸化物の液相率が低く、表面が液相で被覆されないで固相が表面に露出した酸化物になる。そのため、CaO−Al2O3系酸化物の凝集合体が容易に進行してしまい、CaO−Al2O3系酸化物を微細分散することができない。すると、このCaO−Al2O3系酸化物を改質することで最終的に得られるZrO2−CaO系複合酸化物からなる介在物についても微細分散することができないおそれがある。
なお、式(1)上限は、Zr添加後に生ずる、γ相の接種効果の無いCaZrO3(CaOとZrO2がモル比1:1の複合酸化物)の生成を抑制して、接種核として有効なZrO2の生成を促進するために規定している。すなわち、CaZrO3中の(%Ca)/(%O)=0.8を超えた範囲では、ZrO2の代わりにCaZrO3が生成して、接種効果を得られない。
一方、ZrO2に、CaOを固溶させると、CaO安定化ZrO2(CaO stabilized Zirconia;以下、CSZと記載する)が1140℃以上で生成することが知られている。CSZの結晶構造は立方晶であるため、γ−Feに対する接種効果は正方晶であるZrO2よりも高い。CaO固溶量は温度で変わるが、例えば、溶鋼温度として一般的な1600℃の場合、質量%で5〜11%のCaOを固溶させると、CSZが生成することがCaO−ZrO2二元系状態図から分かる。
4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0)≦[%Zr] ・・・(2)
式(2)はCa量とAl量が多いほど、Zr量を増やす必要があることを示す。この式(2)は、熱力学計算によるシミュレーションから求めた。
図1と、その一部を拡大した図2に、1600℃におけるAl2O3−CaO−ZrO2三元系状態図(T.Murakami,H.Fukuyama,T.Kishida,M.Susa and K.Nagata:Metall. Mater. Trans. B,2000,vol.31B,pp.25−33を基に、説明のため一部加筆したもの)を示す。両図を参照して、CaO−Al2O3系液相酸化物が存在する溶鋼にZrを添加した場合における酸化物組成の代表的な変化の例を模式的に説明する。元の図では、CSZはCss(ss=solid solution、固溶体の意味。この場合、CaOが固溶しているZrO2相を指す。)、CaZrO3はCZ、正方晶のZrO2はTssと表記されている。なお、図1、図2では各成分濃度がmol%で表示されている。一方、本明細書中では、特に断りの無い限り、質量%表示を用いて記載している。
なお、図1によれば、CaO−Al2O3−ZrO2系液相介在物とCSZの二相が平衡する、狭い組成領域(点gを含む領域)も存在する。
式(2)を満たさない量では、十分な量のCSZが得られない。その場合、残りの部分が主に、(i)CaO−Al2O3−ZrO2系液相介在物である場合、(ii)CaOとZrO2がモル比1:1で形成された複合酸化物CaZrO3である場合、(iii)液相とCaZrO3の混合の場合、(iv)正方晶のZrO2である場合、の4通りがある。ここで、CaZrO3は、上述のように、γ−Feと格子整合性が低いため、γ−Feに対する接種効果はほとんど無い。
0≦(%Al2O3)≦18 ・・・(3)
0.04<(%CaO)/(%ZrO2)≦0.22 ・・・(4)
いずれも、CSZが2/3以上を占める場合の、介在物全体の平均組成の条件を示している。上述の介在物においては、Ca量、その他条件により、最終的にCSZのほかに、(i)CaO−Al2O3−ZrO2系液相介在物が残る場合と、(ii)CaZrO3が残る場合、(iii)液相介在物とCaZrO3が混合して残る場合、(iv)正方晶のZrO2が残る場合があるが、(i)から式(3)の上限、(ii)から式(4)の上限、(iv)から式(4)の下限が規定される。
炭素鋼鋳片中の介在物は、圧延等の加工が施されていないことから、ほぼ球形をなしており、大部分が長径/短径の比は3以下程度である。このため、介在物の長径によって介在物のサイズを規定することが可能である。
ここで、長径が1μm未満である場合には、接種核としての効果が低く、凝固組織を微細化させることができない。また、光学顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察することが困難となる。一方、長径が10μmを超えると、介在物の個数が確保することができなくなる。このため、本実施形態では、長径が1μm以上10μm以下の介在物の個数密度を規定している。
上述のサイズの介在物の個数密度が10個/mm2未満の場合には、鋳片内で広範囲にわたって等軸晶を生成させるには不十分であって、凝固組織を微細化できない。一方、上述のサイズの介在物の個数密度が500個/mm2を超える場合には、介在物の数が多すぎて、製品疵の原因となるおそれがある。また、加工性や靭性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物の個数密度を、10個/mm2以上500個/mm2以下の範囲内に規定している。なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、個数密度を20個/mm2以上200個/mm2以下の範囲内とすることが好ましい。
Cは、炭素鋼鋳片の強度を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Cの含有量が0.50%超えとすることにより、凝固する際に初晶としてγ相(γ−Fe)が晶出するγ凝固鋼となる。ここで、Cの含有量が1.50%を超えると、加工性、溶接性が低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Cの含有量を0.50%超え1.50%以下の範囲内に規定している。
Siは、溶鋼の脱酸を促進するとともに、炭素鋼鋳片の強度を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Siの含有量が0.01%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Siの含有量が1.2%を超えると、加工性、溶接性が低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Siの含有量を0.01%以上1.2%以下の範囲内に規定している。
Mnは、炭素鋼鋳片の強度及び靭性を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Mnの含有量が0.01%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Mnの含有量が3.0%を超えると、溶接性が低下してしまう。
以上のことから、本実施形態では、Mnの含有量を0.01%以上3.0%以下の範囲内に規定している。
Pは、炭素鋼鋳片の靭性に影響を与える元素であるが、不可避的に0.0010%は含有される。ここで、Pの含有量が0.050%を超えると、中心偏析が激しくなり、炭素鋼鋳片の靭性が劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、Pの含有量を0.0010%以上0.050%以下の範囲内に規定している。
Sは、炭素鋼鋳片の靭性に影響を与える元素であるが、不可避的に0.0001%は含有される。ここで、Sの含有量が0.0100%を超えると、粗大な介在物が生成し、炭素鋼鋳片の靭性が顕著に劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、Sの含有量を0.0001%以上0.0100%以下の範囲内に規定している。
Alは、溶鋼を脱酸するために一般的に添加される元素である。ここで、T.Alの含有量が0.001%未満では、十分に脱酸をすることができない。一方、T.Alの含有量が0.30%を超えると、粗大な介在物(Al2O3クラスター、AlN)が発生し、炭素鋼鋳片の品質が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、T.Alの含有量を0.001%以上0.30%以下の範囲内に規定している。なお、本発明において、T.Al(トータルアルミニウム)の含有量は、溶鋼中のアルミニウムに加え、化合物の状態で炭素鋼鋳片に含有されているアルミニウムを含む合計量である。
Caは、本発明では2点の重要な作用を有する。
(1)まず、接種核となるZrO2−CaO系複合酸化物、特に接種作用を担うCSZの形成元素である。上述したように、CSZは立方晶であり、正方晶であるZrO2よりもγ−Feに対する高い接種効果を有する。本実施形態で生成されるZrO2−CaO系複合酸化物は、観察断面積の2/3以上が正方晶のCSZであるので、十分に高い接種効果を有する。
(2)最終的に生成されるZrO2−CaO系複合酸化物を、溶鋼中(鋳片内部)に、多数、微細に分散させるために重要な影響を与える元素である。すなわち、Al脱酸後にCa添加することにより、溶鋼中にCaO−Al2O3系液相酸化物を生成するので、その後にZr添加すれば、ZrO2−CaO系複合酸化物を溶鋼中に確実に微細分散できる。液相酸化物は固相酸化物に比べて溶鋼との濡れ性が良好であるので凝集合体しにくいためである。このように、Zr添加前に凝集合体しにくいCaO−Al2O3系液相酸化物を生成し、これを改質することにより、ZrO2−CaO系複合酸化物を溶鋼中に、多数、微細に分散させることが可能となる。
以上の理由から、本実施形態では、Caの含有量を0.0002%以上0.0040%未満の範囲に規定している。
Zrは、γ相(γ―Fe)の凝固核(接種核)となるZrO2−CaO系複合酸化物からなる介在物を生成するために必要な元素である。
ここで、Zrの含有量が0.0010%未満では、ZrO2−CaO系複合酸化物中のCSZが十分に生成しないおそれがある。一方、Zrの含有量が0.25%を超えると、粗大な酸化物が生成して、炭素鋼鋳片の加工性や靭性が大幅に劣化してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Zrの含有量を0.0010%以上0.25%以下の範囲内に規定している。
Oは、不可避的に0.0005%は含有される。ここで、T.Oの含有量が0.0050%を超えると、粗大な酸化物等が生成し、炭素鋼鋳片の品質が劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、T.Oの含有量を0.0005%以上0.0050%以下の範囲内に限定している。なお、本発明において、T.O(トータル酸素)の含有量は、溶鋼中の溶存酸素(フリー酸素)に加え、酸化物の状態で炭素鋼鋳片に含有されているOを含む合計量である。
まず、転炉等で溶製した溶鋼を準備する。そして、Ca、Zrを除く鋼成分を調整する。この成分調整の際に成分値(歩留まり)を安定させるため、Al脱酸を複数回に分けて行っても良い。こうして、まず、Ca、Zrを除く成分調整と、Al脱酸を行う。この溶鋼中には、Al2O3を主体とする介在物が存在している。
次に、Caを添加する。Al脱酸後に生成した粗大なAl2O3を溶鋼から浮上除去させるために、Al添加してから1.5分以上経過した後に、Caを添加することが好ましい。
Caを添加することにより、溶鋼中に残存したAl2O3を、CaO−Al2O3系液相酸化物に改質する。そのために、CaはO量に応じて式(1)を満たす量を含有させる。この際のCa量は添加量ではなく、歩留後の鋼中含有量である。このCaO−Al2O3系液相酸化物は、溶鋼との濡れ性が良いため、溶鋼中に微細分散しやすい。CaとAl2O3を十分に反応させてCaO−Al2O3系液相酸化物を生成させるために、Ca添加終了後から1.5分以上、溶鋼を撹拌することが好ましい。しかし、長時間撹拌すると、液相酸化物といえども凝集合体が進行してしまうため、撹拌時間は長くても3分以内が好ましい。添加するCaの形態や方法は、一般的に実施されている、CaSi合金ワイヤー添加や、CaSi合金粉末インジェクション等を用いることができ、特に限定するものではない。
そして、溶鋼にZrを添加する。これにより、Ca添加工程S02で生成し、溶鋼中に微細分散したCaO−Al2O3系液相酸化物をZrO2−CaO系複合酸化物に改質する。Zr量は、Al量とCa量に応じて式(2)を満たす量を含有させる。ZrとCaO−Al2O3系液相酸化物を十分に反応させるために、Zr添加終了後から1.5分以上、溶鋼を撹拌することが好ましい。しかし、長時間撹拌すると、凝集合体が進行してしまうため、撹拌時間は長くても3分以内が好ましい。
このようにして得た溶鋼を連続鋳造機によって鋳造する。その際、Zr添加から鋳造終了までのその際、Zr添加から鋳造終了までの時間は6時間以内とする。このようにすることで溶鋼中の、ZrO2−CaO系複合酸化物からなる長径1μm以上10μm以下のサイズの介在物を、個数密度で10個/mm2以上500個/mm2以下の範囲内とすることができる。
ここで、Zr添加から鋳造終了までの時間が6時間を超えると、Zr添加工程S03で形成されたZrO2−CaO系複合酸化物が溶鋼表面に浮上してしまい、接種核としての機能を果たさなくなるおそれがある。
そして、Zr添加工程S03において、CaO−Al2O3系液相酸化物が分散している溶鋼に対してZrを添加することにより、このCaO−Al2O3系液相酸化物を改質して、γ相(γ−Fe)との格子整合性の高い上述のZrO2−CaO系複合酸化物からなる介在物を溶鋼中に、多数、微細に分散させることができ、接種効果を確実に発揮させて、凝固組織を確実に微細化することができる。
250t転炉で溶製した溶鋼を、真空脱ガス装置においてAlを添加して脱酸するとともに溶鋼の成分調整を行った。
そして、本発明例1−11、比較例21−31では、Al脱酸後の溶鋼に、CaSi合金ワイヤー添加を行ってCaを添加し、その後、Zrを添加した。
比較例21では、Al脱酸後にCa添加を行ったが、Zrを添加しなかった。
比較例22では、Al脱酸後の溶鋼へのCa添加を実施せずに、Zrを添加した。
比較例31では、Al脱酸後に、Zrを添加し、その後Caを添加した。
得られた炭素鋼鋳片(スラブ)の鋳造方向に直交する断面において、ピクリン酸液で凝固組織(デンドライト組織)を検出し、1/4幅、1/2幅、3/4幅の各位置で等軸晶率(鋳片厚みに対する等軸晶帯厚みの比率)を測定した。鋳片表層から厚さ中央部に向かって、成長方向が揃った柱状晶組織が発達し、厚さ中央部には成長方向がランダムな等軸晶が生成する。柱状晶の成長方向が揃うのは、優先成長方位がマクロ的な熱流方向と一致又は近いデンドライトが優先的に成長するためである。このように、柱状晶帯と等軸晶帯は、組織(デンドライトの一次枝)の方向性によって区別することができる。なお、等軸晶帯には、形状がほとんど球状(長径/短径の比が1に近い)の粒状晶や、細長い形状の分岐状デンドライト(長径/短径の比が3以下のものが多いが、3を超えるものもある)が含まれる。等軸晶帯の比率を表2に示す。
得られた炭素鋼鋳片(スラブ)の鋳造方向に直交する断面において、1/4幅の1/4厚の位置から観察試料を採取し、この観察試料をSEM観察し、長径1μm以上10μm以下の介在物を任意に20個選択した。SEMに付属したEDS(エネルギー分散測定)装置によって、それぞれの介在物全体を覆う範囲を測定範囲として、各介在物の全体組成を求めた。そして、測定した20個の介在物の全体組成を平均して、(%Al2O3)、および、(%CaO)/(%ZrO2)を求めた。なお、ここで、( )括弧で示した組成は、介在物組成であることを示す。
介在物内部でCSZ相が占める断面積率は、反射電子像を画像処理して求めた。原子番号(化合物の場合は、構成原子の原子番号と質量濃度の積を、全元素について合計した、平均原子番号を用いれば良い)が大きくなるほど、反射電子像は明るく見えるため、CSZ相を判別できる。対象とする明るさの相がCSZ相であることは、事前に、EDSにより定量分析を行って確認した。なお、反射電子像でなく、EPMAにより介在物全体の元素濃度分布を測定(元素マッピング)して、CSZ相を特定して、その断面積率を求めても良い。
上述の観察試料を、光学顕微鏡で、倍率1000倍、60視野で観察し、長径1μm以上10μm以下の介在物の個数密度を算出した。また、観察された介在物の最大長径を求めた。介在物の最大長径及び個数密度を表2に示す。
得られた炭素鋼鋳片(スラブ)を常法にしたがい、1050〜1200℃に加熱後、熱間圧延して厚さ3mmの熱延板を製造し、長さ10mm以上の疵の有無を目視で検査した。100m当たりの疵の個数が1個未満のものを「○」、1個以上のものを「×」と判定した。評価結果を表2に示す。
以上のことから、本発明例によれば、溶鋼が凝固する際に晶出する初晶がγ相となるγ凝固鋼において、凝固組織を安定して微細化させることができ、各種特性に優れた炭素鋼鋳片を得ることが可能であることが確認された。
S03 Zr添加工程
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.50%超え1.50%以下、
Si:0.01%以上1.2%以下、
Mn:0.01%以上3.0%以下、
P:0.0010%以上0.050%以下、
S:0.0001%以上0.0100%以下、
T.Al:0.001%以上0.30%以下、
Ca:0.0002%以上0.0040%以下、
Zr:0.0010%以上0.25%以下、
T.O:0.0005%以上0.0050%以下、
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物とされるとともに、T.Oの含有量[%T.O]と、Caの含有量[%Ca]と、Zrの含有量[%Zr]と、T.Alの含有量[%T.Al]とが、下記の(1)式及び(2)式を満足しており、
0.2≦[%Ca]/[%T.O]≦0.8 ・・・(1)
[%Zr]≧4×[%Ca]×(3.4×[%T.Al]+1.0) ・・・(2)
内部に、ZrO2−CaO系複合酸化物からなる介在物が分散されており、
前記介在物の平均組成が、下記の(3)式及び(4)式を満足しており、
0≦(%Al2O3)≦18 ・・・(3)
0.04≦(%CaO)/(%ZrO2)≦0.22 ・・・(4)
前記介在物のうち、CaO安定化ZrO 2 である領域の断面積率の平均値が67%以上であり、
長径1μm以上10μm以下のサイズの前記介在物が個数密度で10個/mm2以上500個/mm2以下の範囲内で分散されていることを特徴とする炭素鋼鋳片。 - 請求項1に記載の炭素鋼鋳片を製造する炭素鋼鋳片の製造方法であって、
溶鋼にAlを添加して脱酸を行うAl脱酸工程と、Al脱酸後にCaを添加するCa添加工程と、Ca添加後にZrを添加するZr添加工程と、成分調整した溶鋼を鋳造する鋳造工程と、を有し、
前記Al脱酸工程及び前記Ca添加工程により、溶鋼中にCaO−Al2O3系液相酸化物を分散させるとともに、
前記Zr添加工程により、前記CaO−Al2O3系液相酸化物とZrとを反応させて、前記(3)式及び前記(4)式を満足する平均組成を有するZrO2−CaO系複合酸化物からなる前記介在物を形成することを特徴とする炭素鋼鋳片の製造方法。
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