JP2004315928A - 耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪 - Google Patents
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Abstract
【課題】機関車、客車、貨車等の鉄道車両用のパーライト組織の車輪において、踏面やフランジ面の耐摩耗性をより一層向上させ、同時に熱き裂の生成を抜本的に防止する。
【解決手段】質量%で、C:0.85〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、必要に応じて更にCr,Moの1種又は2種や、V,Nbの1種又は2種や、Bや、Co,Cuの1種又は2種や、Niや、Ti,Mg,Caの1種又は2種以上や、Alや、Zrや、Nを所定量含有し、残部がFe及びその他不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼で構成された一体型の鉄道車両用車輪であって、車輪の踏面及び/又はフランジ面の少なくとも一部がパーライト組織であることを特徴とする耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
【選択図】 図1
【解決手段】質量%で、C:0.85〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、必要に応じて更にCr,Moの1種又は2種や、V,Nbの1種又は2種や、Bや、Co,Cuの1種又は2種や、Niや、Ti,Mg,Caの1種又は2種以上や、Alや、Zrや、Nを所定量含有し、残部がFe及びその他不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼で構成された一体型の鉄道車両用車輪であって、車輪の踏面及び/又はフランジ面の少なくとも一部がパーライト組織であることを特徴とする耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性および耐熱き裂性を備えた寿命の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪に関するものであり、詳細には、機関車、客車、貨車等の鉄道車両の高軸重化や高速化にも対応できる耐摩耗性および耐熱き裂性を備えた長寿命の一体型の鉄道車両用車輪に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両用車輪には、機関車用、客車用、貨車用などがあり、それぞれ機能、形状等が相違している。そのため、それぞれの用途に応じた寸法、形状および材質の車輪が用いられている。通常これらの車輪の寿命は、その踏面およびフランジ面の摩耗量によって決定されている。そこで車輪用の材料としては、基本的には耐摩耗性の良いパーライト組織が利用されている。
【0003】
しかし旅客鉄道の高速化に伴い、新幹線等の高速鉄道においては、ブレーキをかけた際の車輪/ブレーキ間の発熱量が増大するといった変化が生じている。
このような変化に伴って、従来あまり問題にはならなかった車輪の熱き裂が顕在化してきた。その結果、鉄道の高速化においては、この車輪の耐熱き裂性が鉄道車両用車輪の寿命を決定付ける重要な要因となっている。
【0004】
この車輪の熱き裂とは、車輪とブレーキの摩擦熱により、車輪の踏面やフランジ面が一瞬にオーステナイト化し急冷されるため、マルテンサイト組織やベイナイト組織が発生し、硬さ上昇による脆化や引張残留応力の生成により、き裂が生成する現象である。この熱き裂が発生すると、車輪の踏面あるいはフランジ面を切削加工し、き裂発生部を取り除かなければならないので、車輪の使用寿命が短くなる。さらにこの熱き裂が限界長さに達した場合には、車輪の割損という重大事態を招くことがある。
【0005】
耐摩耗性と耐熱き裂性は、車輪用材料にとっては相反する性質であり、一般的には両立させ難い性質である。その理由は次のとおりである。
耐摩耗性を高めるためには、踏面部のパーライト組織の硬さをできるだけ高くする必要がある。しかし、硬さを向上させるため鋼の焼入性を向上させる合金添加量を増加すると、車輪とブレーキの摩擦熱により、車輪の使用中にマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成しやすくなる。このため使用中に熱き裂が発生しやすく、耐熱き裂性を満足することができない。
【0006】
一方、耐熱き裂性を得るためには、パーライト組織の車輪においては合金添加量を低減させる必要がある。しかし、合金添加量の低減はパーライト組織の硬さの低下を引き起こし、十分な耐摩耗性が得られない。従って耐摩耗性と耐熱き裂性(耐割損性)を同時に満足させることは、基本的には解決することが難しい課題であった。
【0007】
そこで、これらの矛盾する問題を解決するため、パーライト組織を呈した下記に示すような鉄道用車輪やその製造方法が発明され、車輪の使用寿命を改善してきた。
▲1▼ パーライト組織の鋼(C:0.55〜0.80mass%)において、Si,Mn,Crの合金を添加し、パーライト組織の硬さを制御することにより、耐摩耗性および耐割損性を向上させた鉄道車輪用鋼(特許文献1)。
▲2▼ パーライト組織の鋼(C:0.40〜0.75mass%)において、Si,Mn,Crの合金添加量を調整し、さらに、熱処理時の冷却速度やその冷却停止温度を制御し、パーライト組織の硬さや焼入れ性を制御することにより、耐摩耗性と耐熱き裂性をさらに向上させた鉄道車両用車輪およびその製造方法(特許文献2)。
これらの車輪の特徴は、比較的炭素量の高い鋼を用いて、Si,Mn,Crの合金添加量や熱処理方法を調整し、パーライト組織の硬さや焼入れ性を制御することにより、車輪の耐摩耗性および耐熱き裂性を向上させるところにあった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭57−143465号公報
【特許文献2】
特開平9−202937号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
近年、旅客鉄道のさらなる高速化に伴い、新幹線等の高速鉄道においては、車輪/ブレーキ間の発熱量がさらに増大し、上記発明の車輪を用いても、車輪の踏面やフランジ面にマルテンサイト組織やベイナイト組織が発生し、熱き裂の生成を防止できないといった問題が顕在化し始めた。
【0010】
また近年、貨車鉄道の高軸重化に伴い、海外の重荷重鉄道においては車輪の摩耗量が増加し、上記発明の車輪を用いても、踏面やフランジ面の摩耗の抑制が十分でなく、耐摩耗性の低下が問題視され始めた。
そこで、パーライト組織の車輪において、踏面やフランジ面の耐摩耗性を向上させ、同時に熱き裂の生成を抜本的に防止できる新たな材料開発が求められるようになった。
【0011】
すなわち本発明は、機関車、客車、貨車等の鉄道車両用のパーライト組織の車輪において、踏面やフランジ面の耐摩耗性をより一層向上させ、同時に熱き裂の生成を抜本的に防止することを目的としたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を要旨とする。
(1) 質量%で、
C :0.85〜1.20%、
Si:0.05〜2.00%、
Mn:0.050〜2.00%
を含有し、残部がFeおよびその他不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼で構成された一体型の鉄道車両用車輪であって、車輪の踏面及び/又はフランジ面の少なくとも一部がパーライト組織であることを特徴とする耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
【0013】
(2)また上記(1)の車輪には、質量%でさらに、下記▲1▼〜▲9▼の成分を選択的に含有させることができる。
▲1▼ Cr:0.05〜2.00%、 Mo:0.01〜0.50%
の1種または2種、
▲2▼ V :0.005〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050%
の1種または2種、
▲3▼ B :0.0001〜0.0050%、
▲4▼ Co:0.10〜2.00%、 Cu:0.01〜1.00%
の1種または2種、
▲5▼ Ni:0.01〜1.00%、
▲6▼ Ti:0.0050〜0.0500%、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%
の1種または2種以上、
▲7▼ Al:0.01〜1.00%、
▲8▼ Zr:0.0001〜0.2000%、
▲9▼ N:0.0040〜0.0200%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
【0014】
(3)前記の車輪鋼において、車輪の踏面およびフランジ面の車輪外郭表面から少なくとも深さ40mmまでが、硬さHB300以上のパーライト組織であることを特徴する耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、耐摩耗性の高いパーライト組織を用いて、耐摩耗性および耐熱き裂性を抜本的に改善する方法について詳細な検討を行った。
まず本発明者らは、敷設環境の厳しい貨物鉄道の貨車および機関車において、パーライト組織の車輪の耐摩耗性を支配している因子を調査した。その結果、車輪の耐摩耗性は、摩耗量が少ない初期状態においては、車輪の踏面やフランジ面の初期硬さとよい相関が認められるが、車輪の使用寿命を決定づける摩耗量がさらに増加した状態では、使用前の車輪の初期硬さとの相関が非常に少なくなることを確認した。
【0016】
次に、本発明者らは車輪の耐摩耗性を支配している因子を明らかにするため、長期間上記のような貨物鉄道で使用され、十分に摩耗した車輪の踏面やフランジ面の硬さの影響を調査した。その結果、摩耗量の少ない車輪は摩耗面の硬さが高いことが明らかとなった。
さらに本発明者らは、摩耗面の微視組織の変化を観察した。その結果、摩耗面では、使用する前のパーライト組織のラメラ構造は全く存在せず、ナノオーダーまで微細化された基地フェライト中に微細に破砕された硬質なセメンタイトを含む混合組織となっていること、また摩耗量の少ない車輪の摩耗面では、基地フェライト組織が非常に微細化されていることを確認した。
【0017】
また本発明者らは、微視組織の内部構造について、詳細な観察および分析を行った結果、この混合組織では、微細に破砕されたセメンタイト中の炭素が車輪から受ける強い歪みにより分解し、セメンタイトから分解した炭素が基地の微細フェライト中に過飽和に固溶していることが明らかとなった。
すなわち車輪の耐摩耗性は、摩耗面の基地フェライト組織自体の微細化と基地フェライト組織への炭素の固溶による微細強化と固溶強化により、摩耗面の加工硬化が促進され、摩耗面の硬度が上昇することにより確保されていることが明らかとなった。
【0018】
そこで本発明者らは、車輪の耐摩耗性を向上させるため、冶金的に基地フェライト組織の微細強化と固溶強化を促進させ、摩耗面の硬さを上昇させる方法を検討した。様々な材料の摩耗試験を行った結果、パーライト組織の車輪では、パーライト組織中の硬質なセメンタイト相を増加させること、すなわちパーライト鋼の炭素量を増加することにより、摩耗面の基地フェライト組織がさらに微細化し、同時に基地フェライト中へ固溶する炭素量が増加し、微細強化と固溶強化により摩耗面の加工硬化がさらに促進され、摩耗面の硬度が上昇し、結果的に耐摩耗性が大幅に向上することが確認された。
【0019】
次に本発明者らは、この高炭素化したパーライト鋼の変態特性を調査するために連続冷却変態実験を行い、パーライトノーズの位置と炭素量の関係を求めた。図1に高炭素鋼の炭素量とパーライトノーズの関係を示す。パーライト鋼を高炭素化するとパーライトノーズが短時間側へシフトすることが確認された。
【0020】
このことから、本発明者らは、パーライト鋼を高炭素化すると、パーライト変態の促進によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し難くなり、結果的に車輪とブレーキの摩擦熱により発生するマルテンサイト組織やベイナイト組織の発生が抑制され、耐熱き裂性が向上すると考えた。
【0021】
そこで本発明者らは、炭素量の高いパーライト鋼を用いて、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱による組織変化やこれに伴い発生するき裂の再現実験を行った。その結果、ある一定範囲まで炭素量を増加したパーライト鋼では、ブレーキによる摩擦熱を与えても、パーライト変態の促進によりマルテンサイト組織等の生成が抑制され、結果的に耐熱き裂性が向上することを見出した。
【0022】
すなわち本発明は、機関車、客車、貨車等の鉄道車両用のパーライト組織の車輪において、踏面やフランジ面の耐摩耗性をより一層向上させ、同時に熱き裂の生成を抜本的に防止することを目的としたものである。
【0023】
次に、本発明の限定理由について詳細に説明する。
(1)車輪の化学成分
請求項1〜10において、車輪の化学成分を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.85%未満では、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率が確保できず、摩耗面の微細強化や固溶強化が十分に発揮されず、車輪の踏面やフランジ面の耐摩耗性を維持できない。またC量が1.20%を超えると、本成分系では、旧オーステナイト粒界に生成する初析セメンタイト組織が生成し、耐摩耗性が低下するばかりでなく、車輪の靭性が低下して割損を引き起こしやすくなる。このためC量を0.85〜1.20%に限定した。
【0024】
Siは、脱酸材として必須の成分である。またパーライト組織中のフェライト相への固溶体硬化により車輪の硬度(強度)を上昇させる元素である。しかし、0.05%未満ではその効果が十分に期待できず、車輪の踏面やフランジ面の硬度上昇が認められない。また2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱により、マルテンサイト組織やベイナイト組織が生成して耐熱き裂性が低下する。このためSi量を0.05〜2.00%に限定した。
【0025】
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、車輪の耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、0.05%未満の含有量ではその効果が小さく、車輪に必要とされる耐摩耗性の確保が困難となる。また2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱により、マルテンサイト組織やベイナイト組織が生成して耐熱き裂性が低下する。このためMn量を0.05〜2.00%に限定した。
【0026】
また、上記の成分組成で製造される車輪は、パーライト組織の硬度(強化)の向上、パーライト組織の延性や靭性の向上、車輪踏面深さ方向の硬度向上を図る目的で、Cr,Mo,V,Nb,B,Co,Cu,Ni,Ti,Mg,Ca,Al,Zr,Nの元素を必要に応じて添加する。それら成分の添加目的を以下に説明する。
【0027】
Cr,Moは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、主にパーライトラメラ間隔を微細化することによりパーライト組織の硬度を確保する。V,Nbは、熱間圧延、熱間鍛造やその後の冷却過程で生成した炭化物や窒化物により、オーステナイト粒の成長を抑制し、さらに析出硬化により、パーライト組織の靭性と硬度を向上させる。Bは、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時にパーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、パーライト鋼の靭性を向上させ、さらに車輪踏面深さ方向の硬度分布を均一にする。Co,Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高める。Niは、Cu添加による熱間圧延時の脆化を防止し、同時にパーライト鋼の硬度を向上させる。
【0028】
Tiは、窒化物を形成し、熱処理時のオーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の靭性を向上させる。Mg,Caは、酸化物を形成し、熱処理時のオーステナイト粒の微細化を図り、同時にパーライト変態を促進し、パーライト組織の靭性を向上させる。Alは、共析変態温度を高温側へ移動させ、パーライト組織を強化する。Zrは、ZrO2 介在物が高炭素鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、初析セメンタイト組織の生成を抑制する。Nは、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライト組織を微細にすることより靭性を向上させることが、それぞれ主な添加目的である。
【0029】
これらの成分の個々の限定理由について、以下に詳細に説明する。
Crは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させることにより耐摩耗性を向上させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が小さく、2.00%を超える過剰な添加を行うと、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し、耐熱き裂性が低下する。
【0030】
Moは、Cr同様パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が小さく、車輪の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また0.50%を超える過剰な添加を行うと、パーライト組織の変態速度が著しく低下し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し、耐熱き裂性が低下する。このためMo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
【0031】
Vは、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、V炭化物やV窒化物のピニング効果によりオーステナイト粒を微細化し、さらに熱間圧延後の冷却課程で生成したV炭化物、V窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、パーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また0.500%を超えて添加すると、粗大なVの炭化物やVの窒化物が生成して車輪の靭性が低下し、車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためV量を0.005〜0.500%に限定した。
【0032】
Nbは、Vと同様に、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、Nb炭化物やNb窒化物のピニング効果によりオーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したNb炭化物、Nb窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、その効果は0.002%未満では期待できず、パーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また0.050%を超える添加すると、粗大なNbの炭化物やNbの窒化物が生成して車輪の靭性が低下し、車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためNb量を0.002〜0.050%に限定した。
【0033】
Bは、旧オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物を形成し、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時にパーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、車輪踏面深さ方向の硬度分布を均一にすることより、車輪の靭性低下を防止し、摩耗寿命を向上させる元素であるが、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、車輪踏面深さ方向の硬度分布には改善が認められない。また0.0050%を超えて添加すると、旧オーステナイト粒界に粗大な鉄の炭ほう化物が生成し、靭性、耐摩耗性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためB量を0.0001〜0.0050%に限定した。
【0034】
Coは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であり、さらにパーライトの変態エネルギーを増加させて、パーライト組織を微細にすることにより靭性を向上させる元素であるが、0.10%未満ではその効果が期待できない。また2.00%を超えて添加すると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、車輪の踏面やフランジ面にスポーリング損傷が発生し、車輪の耐損傷性が低下する。このためCo量を0.10〜2.00%に限定した。
【0035】
Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が期待できない。また1.00%を超えて添加すると、著しく焼入れ性が向上し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し、耐熱き裂性が低下する。このためCu量を0.01〜1.00%に限定した。
【0036】
Niは、Cu添加による熱間圧延時や熱間鍛造時の脆化を防止し、同時にフェライトへの固溶強化によりパーライト鋼の高硬度(強度)化を図る元素である。0.01%未満ではその効果が著しく小さく、また1.00%を超えて添加すると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、車輪の踏面やフランジ面にスポーリング損傷が発生し、車輪の耐損傷性が低下する。このためNi量を0.01〜1.00%に限定した。
【0037】
Tiは、熱処理時の再加熱において析出したTiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用してオーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の延性や靭性を向上させるのに有効な元素である。しかし0.0050%未満ではその効果が少なく、0.0500%を超えて添加すると、粗大なTiの炭化物やTiの窒化物が生成して車輪の靭性が低下し、これに加えて車輪内部から疲労損傷が発生し易くなることから、Ti量を0.0050〜0.050%に限定した。
【0038】
Mgは、O、またはSやAl等と結合して微細な酸化物を形成し、熱処理時の再加熱において結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO,MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成して車輪の靭性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなることから、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定した。
【0039】
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらにCaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。しかし0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0150%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物が生成して車輪の靭性が低下し、これに加えて車輪内部から疲労損傷が発生し易くなることから、Ca量を0.0005〜0.0150%に限定した。
【0040】
Alは、脱酸材として必須の成分である。また共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高強度化に有効な元素であるが、0.0100%未満ではその効果が弱く、1.00%を超えて添加すると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる粗大なアルミナ系介在物が生成して車輪の靭性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなるため、Al量を0.0100〜1.00%に限定した。
【0041】
Zrは、ZrO2 介在物がγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、オーステナイト粒界から生成する初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかしZr量が0.0001%未満ではZrO2 系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。またZr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系介在物が多量に生成して車輪の靭性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためZr量を0.0001〜0.2000%に限定した。
【0042】
Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。しかし0.0040%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、鋼中に固溶させることが困難となり、車輪内部に疲労損傷の起点となる気泡が生成することから、N量を0.0040〜0.0200%に限定した。
【0043】
上記のような成分組成で構成される車輪は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊あるいは連続鋳造し、さらに熱間鍛造や熱間圧延を経て車輪として製造される。
次に、この熱間鍛造や熱間圧延した高温度の熱を保有する車輪、あるいは熱処理する目的で高温に再加熱された車輪の踏面やフランジ部に熱処理を施すことにより、車輪に所定の特性を満たすパーライト組織を安定的に生成させることが可能となる。
【0044】
なお、熱処理方法については特に限定しないが、パーライト変態を十分に完遂させるため、特許文献2に記載のように、パーライトノーズを確実に通る冷却速度を選択し、車輪の踏面やフランジ面を冷却することが望ましい。
また熱処理時の冷却媒体は、所定の冷却速度が得られるものであれば特に限定するものではない。本発明では冷却媒体として、エアー、ミスト、汽水(スプレー)、ソルトバスを用いた。
【0045】
なお、本発明車輪の金属組織はパーライト組織が望ましい。しかし、車輪の成分系の選択や熱処理製造方法によっては、踏面やフランジ面の一部に微量な初析セメンタイト組織、初析フェライト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入することがある。しかしこれらの組織が混入しても、車輪としての基本性能や耐摩耗性や耐熱き裂性に大きな影響を及ぼさないため、本発明車輪の頭部の金属組織は若干の初析セメンタイト組織、初析フェライト組織、ベイナイト組織、マルテンサイト組織の混在も含んでいる。
【0046】
(2)パーライト組織の呈する範囲とその硬さ
パーライト組織の呈する範囲を、車輪の踏面およびフランジ面の外郭表面から少なくとも深さ40mmの範囲に限定した理由について説明する。
深さ40mm未満では、車輪の使用寿命から考えると、機関車用、客車用、貨車用の車輪に要求される耐摩耗性や耐熱き裂性を必要とされている領域としては小さく、十分な車輪使用寿命の改善効果が得られないためである。また、パーライト組織を呈する範囲が深さ50mm以上であれば、車輪の使用寿命がさらに向上し、より望ましい。
【0047】
次に、パーライト組織の硬さをHB300以上に限定した理由について説明する。
パーライト組織の硬さがHB300未満になると、本成分系においてはパーライト組織の耐摩耗性が改善せず、車輪の使用寿命の向上が図れないためである。なお、パーライト組織の硬さの上限については特に限定しないが、十分な耐熱き裂性を確保する観点から、HB450以下が望ましい。
【0048】
ここで、図2に本発明の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪の断面表面位置での呼称、および硬さHB300以上のパーライト組織が必要な領域を示す。車輪において1は踏面、2はフランジ面であり、踏面1とフランジ面2はレールと主に接触する部分である。
硬さHB300以上のパーライト組織は、少なくとも図中の斜線内に配置されていれば、車輪の耐摩耗性や耐熱き裂性の向上が可能となる。
したがって、硬さHB300以上のパーライト組織は、レールと主に接する踏面とフランジ面近傍に配置することが望ましく、それ以外の部分はパーライト組織以外の金属組織であってもよい。
【0049】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に本発明車輪の化学成分、踏面のミクロ組織、踏面部の硬さを示す。また表1に、図3に示す西原式摩耗試験による摩耗試験結果、熱き裂再現試験結果を併せて示す。
表2に比較車輪の化学成分、踏面のミクロ組織、踏面部の硬さを示す。また表1に、図3に示す西原式摩耗試験による摩耗試験結果、熱き裂再現試験結果を併せて示す。
【0050】
なお、車輪の構成は以下のとおりである。
・本発明車輪鋼(7枚) 符号A〜G
上記成分範囲内で、ミクロ組織がパーライト組織であり、その硬さがHB300以上である耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
・比較車輪鋼(7枚) 符号H〜N
符号H〜I:Cの添加量が上記請求範囲外の従来の比較車輪鋼(2枚)。
符号J〜L:Si,Mnの添加量が上記請求範囲外の比較車輪鋼(3枚)。
符号M〜N:上記成分範囲内で、パーライト組織の硬さがHB300以下である比較車輪鋼。
【0051】
ここで、本明細書中の図について説明する。
図1は高炭素鋼の炭素量とパーライトノーズの関係を示した連続冷却変態線図、図2は車輪断面表面位置での呼称および本発明の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れたパーライト組織が必要とされる領域を示した図、図3は西原式摩耗試験機の概略図をそれぞれ示したものである。また図4は、表1と表2に示す摩耗試験および熱き裂再現試験における試験片採取位置を示した図である。
なお図2において、1は踏面、2はフランジ面である。また図3において、3は車輪試験片、4はレール試験片、5は冷却用ノズルである。
【0052】
各種試験は次のとおりとした。
・摩耗試験
試験機 :西原式摩耗試験機(図3参照)
試験片形状 :円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:車輪踏面5mm(図4参照)
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :20%
レール試験片 :パーライト鋼(Hv380)
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :70万回(車輪側)
【0053】
・熱き裂再現試験
試験機 :西原式摩耗試験機(図3参照)
試験片形状 :円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:車輪踏面5mm(図4参照)
レール試験片 :パーライト鋼(Hv380)
試験条件
(1)初期摩耗再現条件
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :20%
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :20万回
(2)ブレーキ再現条件
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :0%
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :10万回繰返し後→車輪側のみ回転停止(レール側回転)、3秒後停止
(3)き裂発生再現条件
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :0%
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :10万回
(1)→(2)→(3)を順に試験を行い、摩耗面のき裂の有無を目視で確認。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
表1、表2に示すように、本発明車輪鋼(符号:A〜G)は、比較車輪鋼(符号:H〜I)と比べて、Cの添加量を増加させることにより、耐摩耗性が向上し、同時に耐熱き裂性も向上している。また、本発明車輪鋼はCに加えてSi,Mnの添加量をある一定範囲内に納め、さらにパーライト組織の硬さをある一定値以上とすることにより、耐摩耗性と耐熱き裂性を確保することができる。
上記のように、C,Si,Mnの添加量をある一定範囲内に納め、さらにパーライト組織の硬さをある一定値以上とすることにより、車輪鋼の耐摩耗性と耐熱き裂性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炭素鋼の炭素量とパーライトノーズの関係を示した連続冷却変態線図。
【図2】車輪断面表面位置での呼称および本発明の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れたパーライト組織が必要とされる領域を示した図。
【図3】西原式摩耗試験機の概略図を示した図。
【図4】摩耗試験および熱き裂再現試験における試験片採取位置を示した図。
【符号の説明】
1:踏面
2:フランジ面
3:車輪試験片
4:レール試験片
5:冷却用ノズル
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性および耐熱き裂性を備えた寿命の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪に関するものであり、詳細には、機関車、客車、貨車等の鉄道車両の高軸重化や高速化にも対応できる耐摩耗性および耐熱き裂性を備えた長寿命の一体型の鉄道車両用車輪に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両用車輪には、機関車用、客車用、貨車用などがあり、それぞれ機能、形状等が相違している。そのため、それぞれの用途に応じた寸法、形状および材質の車輪が用いられている。通常これらの車輪の寿命は、その踏面およびフランジ面の摩耗量によって決定されている。そこで車輪用の材料としては、基本的には耐摩耗性の良いパーライト組織が利用されている。
【0003】
しかし旅客鉄道の高速化に伴い、新幹線等の高速鉄道においては、ブレーキをかけた際の車輪/ブレーキ間の発熱量が増大するといった変化が生じている。
このような変化に伴って、従来あまり問題にはならなかった車輪の熱き裂が顕在化してきた。その結果、鉄道の高速化においては、この車輪の耐熱き裂性が鉄道車両用車輪の寿命を決定付ける重要な要因となっている。
【0004】
この車輪の熱き裂とは、車輪とブレーキの摩擦熱により、車輪の踏面やフランジ面が一瞬にオーステナイト化し急冷されるため、マルテンサイト組織やベイナイト組織が発生し、硬さ上昇による脆化や引張残留応力の生成により、き裂が生成する現象である。この熱き裂が発生すると、車輪の踏面あるいはフランジ面を切削加工し、き裂発生部を取り除かなければならないので、車輪の使用寿命が短くなる。さらにこの熱き裂が限界長さに達した場合には、車輪の割損という重大事態を招くことがある。
【0005】
耐摩耗性と耐熱き裂性は、車輪用材料にとっては相反する性質であり、一般的には両立させ難い性質である。その理由は次のとおりである。
耐摩耗性を高めるためには、踏面部のパーライト組織の硬さをできるだけ高くする必要がある。しかし、硬さを向上させるため鋼の焼入性を向上させる合金添加量を増加すると、車輪とブレーキの摩擦熱により、車輪の使用中にマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成しやすくなる。このため使用中に熱き裂が発生しやすく、耐熱き裂性を満足することができない。
【0006】
一方、耐熱き裂性を得るためには、パーライト組織の車輪においては合金添加量を低減させる必要がある。しかし、合金添加量の低減はパーライト組織の硬さの低下を引き起こし、十分な耐摩耗性が得られない。従って耐摩耗性と耐熱き裂性(耐割損性)を同時に満足させることは、基本的には解決することが難しい課題であった。
【0007】
そこで、これらの矛盾する問題を解決するため、パーライト組織を呈した下記に示すような鉄道用車輪やその製造方法が発明され、車輪の使用寿命を改善してきた。
▲1▼ パーライト組織の鋼(C:0.55〜0.80mass%)において、Si,Mn,Crの合金を添加し、パーライト組織の硬さを制御することにより、耐摩耗性および耐割損性を向上させた鉄道車輪用鋼(特許文献1)。
▲2▼ パーライト組織の鋼(C:0.40〜0.75mass%)において、Si,Mn,Crの合金添加量を調整し、さらに、熱処理時の冷却速度やその冷却停止温度を制御し、パーライト組織の硬さや焼入れ性を制御することにより、耐摩耗性と耐熱き裂性をさらに向上させた鉄道車両用車輪およびその製造方法(特許文献2)。
これらの車輪の特徴は、比較的炭素量の高い鋼を用いて、Si,Mn,Crの合金添加量や熱処理方法を調整し、パーライト組織の硬さや焼入れ性を制御することにより、車輪の耐摩耗性および耐熱き裂性を向上させるところにあった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭57−143465号公報
【特許文献2】
特開平9−202937号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
近年、旅客鉄道のさらなる高速化に伴い、新幹線等の高速鉄道においては、車輪/ブレーキ間の発熱量がさらに増大し、上記発明の車輪を用いても、車輪の踏面やフランジ面にマルテンサイト組織やベイナイト組織が発生し、熱き裂の生成を防止できないといった問題が顕在化し始めた。
【0010】
また近年、貨車鉄道の高軸重化に伴い、海外の重荷重鉄道においては車輪の摩耗量が増加し、上記発明の車輪を用いても、踏面やフランジ面の摩耗の抑制が十分でなく、耐摩耗性の低下が問題視され始めた。
そこで、パーライト組織の車輪において、踏面やフランジ面の耐摩耗性を向上させ、同時に熱き裂の生成を抜本的に防止できる新たな材料開発が求められるようになった。
【0011】
すなわち本発明は、機関車、客車、貨車等の鉄道車両用のパーライト組織の車輪において、踏面やフランジ面の耐摩耗性をより一層向上させ、同時に熱き裂の生成を抜本的に防止することを目的としたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を要旨とする。
(1) 質量%で、
C :0.85〜1.20%、
Si:0.05〜2.00%、
Mn:0.050〜2.00%
を含有し、残部がFeおよびその他不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼で構成された一体型の鉄道車両用車輪であって、車輪の踏面及び/又はフランジ面の少なくとも一部がパーライト組織であることを特徴とする耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
【0013】
(2)また上記(1)の車輪には、質量%でさらに、下記▲1▼〜▲9▼の成分を選択的に含有させることができる。
▲1▼ Cr:0.05〜2.00%、 Mo:0.01〜0.50%
の1種または2種、
▲2▼ V :0.005〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050%
の1種または2種、
▲3▼ B :0.0001〜0.0050%、
▲4▼ Co:0.10〜2.00%、 Cu:0.01〜1.00%
の1種または2種、
▲5▼ Ni:0.01〜1.00%、
▲6▼ Ti:0.0050〜0.0500%、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%
の1種または2種以上、
▲7▼ Al:0.01〜1.00%、
▲8▼ Zr:0.0001〜0.2000%、
▲9▼ N:0.0040〜0.0200%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
【0014】
(3)前記の車輪鋼において、車輪の踏面およびフランジ面の車輪外郭表面から少なくとも深さ40mmまでが、硬さHB300以上のパーライト組織であることを特徴する耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、耐摩耗性の高いパーライト組織を用いて、耐摩耗性および耐熱き裂性を抜本的に改善する方法について詳細な検討を行った。
まず本発明者らは、敷設環境の厳しい貨物鉄道の貨車および機関車において、パーライト組織の車輪の耐摩耗性を支配している因子を調査した。その結果、車輪の耐摩耗性は、摩耗量が少ない初期状態においては、車輪の踏面やフランジ面の初期硬さとよい相関が認められるが、車輪の使用寿命を決定づける摩耗量がさらに増加した状態では、使用前の車輪の初期硬さとの相関が非常に少なくなることを確認した。
【0016】
次に、本発明者らは車輪の耐摩耗性を支配している因子を明らかにするため、長期間上記のような貨物鉄道で使用され、十分に摩耗した車輪の踏面やフランジ面の硬さの影響を調査した。その結果、摩耗量の少ない車輪は摩耗面の硬さが高いことが明らかとなった。
さらに本発明者らは、摩耗面の微視組織の変化を観察した。その結果、摩耗面では、使用する前のパーライト組織のラメラ構造は全く存在せず、ナノオーダーまで微細化された基地フェライト中に微細に破砕された硬質なセメンタイトを含む混合組織となっていること、また摩耗量の少ない車輪の摩耗面では、基地フェライト組織が非常に微細化されていることを確認した。
【0017】
また本発明者らは、微視組織の内部構造について、詳細な観察および分析を行った結果、この混合組織では、微細に破砕されたセメンタイト中の炭素が車輪から受ける強い歪みにより分解し、セメンタイトから分解した炭素が基地の微細フェライト中に過飽和に固溶していることが明らかとなった。
すなわち車輪の耐摩耗性は、摩耗面の基地フェライト組織自体の微細化と基地フェライト組織への炭素の固溶による微細強化と固溶強化により、摩耗面の加工硬化が促進され、摩耗面の硬度が上昇することにより確保されていることが明らかとなった。
【0018】
そこで本発明者らは、車輪の耐摩耗性を向上させるため、冶金的に基地フェライト組織の微細強化と固溶強化を促進させ、摩耗面の硬さを上昇させる方法を検討した。様々な材料の摩耗試験を行った結果、パーライト組織の車輪では、パーライト組織中の硬質なセメンタイト相を増加させること、すなわちパーライト鋼の炭素量を増加することにより、摩耗面の基地フェライト組織がさらに微細化し、同時に基地フェライト中へ固溶する炭素量が増加し、微細強化と固溶強化により摩耗面の加工硬化がさらに促進され、摩耗面の硬度が上昇し、結果的に耐摩耗性が大幅に向上することが確認された。
【0019】
次に本発明者らは、この高炭素化したパーライト鋼の変態特性を調査するために連続冷却変態実験を行い、パーライトノーズの位置と炭素量の関係を求めた。図1に高炭素鋼の炭素量とパーライトノーズの関係を示す。パーライト鋼を高炭素化するとパーライトノーズが短時間側へシフトすることが確認された。
【0020】
このことから、本発明者らは、パーライト鋼を高炭素化すると、パーライト変態の促進によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し難くなり、結果的に車輪とブレーキの摩擦熱により発生するマルテンサイト組織やベイナイト組織の発生が抑制され、耐熱き裂性が向上すると考えた。
【0021】
そこで本発明者らは、炭素量の高いパーライト鋼を用いて、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱による組織変化やこれに伴い発生するき裂の再現実験を行った。その結果、ある一定範囲まで炭素量を増加したパーライト鋼では、ブレーキによる摩擦熱を与えても、パーライト変態の促進によりマルテンサイト組織等の生成が抑制され、結果的に耐熱き裂性が向上することを見出した。
【0022】
すなわち本発明は、機関車、客車、貨車等の鉄道車両用のパーライト組織の車輪において、踏面やフランジ面の耐摩耗性をより一層向上させ、同時に熱き裂の生成を抜本的に防止することを目的としたものである。
【0023】
次に、本発明の限定理由について詳細に説明する。
(1)車輪の化学成分
請求項1〜10において、車輪の化学成分を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.85%未満では、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率が確保できず、摩耗面の微細強化や固溶強化が十分に発揮されず、車輪の踏面やフランジ面の耐摩耗性を維持できない。またC量が1.20%を超えると、本成分系では、旧オーステナイト粒界に生成する初析セメンタイト組織が生成し、耐摩耗性が低下するばかりでなく、車輪の靭性が低下して割損を引き起こしやすくなる。このためC量を0.85〜1.20%に限定した。
【0024】
Siは、脱酸材として必須の成分である。またパーライト組織中のフェライト相への固溶体硬化により車輪の硬度(強度)を上昇させる元素である。しかし、0.05%未満ではその効果が十分に期待できず、車輪の踏面やフランジ面の硬度上昇が認められない。また2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱により、マルテンサイト組織やベイナイト組織が生成して耐熱き裂性が低下する。このためSi量を0.05〜2.00%に限定した。
【0025】
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、車輪の耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、0.05%未満の含有量ではその効果が小さく、車輪に必要とされる耐摩耗性の確保が困難となる。また2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱により、マルテンサイト組織やベイナイト組織が生成して耐熱き裂性が低下する。このためMn量を0.05〜2.00%に限定した。
【0026】
また、上記の成分組成で製造される車輪は、パーライト組織の硬度(強化)の向上、パーライト組織の延性や靭性の向上、車輪踏面深さ方向の硬度向上を図る目的で、Cr,Mo,V,Nb,B,Co,Cu,Ni,Ti,Mg,Ca,Al,Zr,Nの元素を必要に応じて添加する。それら成分の添加目的を以下に説明する。
【0027】
Cr,Moは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、主にパーライトラメラ間隔を微細化することによりパーライト組織の硬度を確保する。V,Nbは、熱間圧延、熱間鍛造やその後の冷却過程で生成した炭化物や窒化物により、オーステナイト粒の成長を抑制し、さらに析出硬化により、パーライト組織の靭性と硬度を向上させる。Bは、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時にパーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、パーライト鋼の靭性を向上させ、さらに車輪踏面深さ方向の硬度分布を均一にする。Co,Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高める。Niは、Cu添加による熱間圧延時の脆化を防止し、同時にパーライト鋼の硬度を向上させる。
【0028】
Tiは、窒化物を形成し、熱処理時のオーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の靭性を向上させる。Mg,Caは、酸化物を形成し、熱処理時のオーステナイト粒の微細化を図り、同時にパーライト変態を促進し、パーライト組織の靭性を向上させる。Alは、共析変態温度を高温側へ移動させ、パーライト組織を強化する。Zrは、ZrO2 介在物が高炭素鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、初析セメンタイト組織の生成を抑制する。Nは、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライト組織を微細にすることより靭性を向上させることが、それぞれ主な添加目的である。
【0029】
これらの成分の個々の限定理由について、以下に詳細に説明する。
Crは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させることにより耐摩耗性を向上させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が小さく、2.00%を超える過剰な添加を行うと、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し、耐熱き裂性が低下する。
【0030】
Moは、Cr同様パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が小さく、車輪の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また0.50%を超える過剰な添加を行うと、パーライト組織の変態速度が著しく低下し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し、耐熱き裂性が低下する。このためMo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
【0031】
Vは、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、V炭化物やV窒化物のピニング効果によりオーステナイト粒を微細化し、さらに熱間圧延後の冷却課程で生成したV炭化物、V窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、パーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また0.500%を超えて添加すると、粗大なVの炭化物やVの窒化物が生成して車輪の靭性が低下し、車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためV量を0.005〜0.500%に限定した。
【0032】
Nbは、Vと同様に、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、Nb炭化物やNb窒化物のピニング効果によりオーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したNb炭化物、Nb窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、その効果は0.002%未満では期待できず、パーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また0.050%を超える添加すると、粗大なNbの炭化物やNbの窒化物が生成して車輪の靭性が低下し、車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためNb量を0.002〜0.050%に限定した。
【0033】
Bは、旧オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物を形成し、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時にパーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、車輪踏面深さ方向の硬度分布を均一にすることより、車輪の靭性低下を防止し、摩耗寿命を向上させる元素であるが、0.0001%未満ではその効果は十分でなく、車輪踏面深さ方向の硬度分布には改善が認められない。また0.0050%を超えて添加すると、旧オーステナイト粒界に粗大な鉄の炭ほう化物が生成し、靭性、耐摩耗性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためB量を0.0001〜0.0050%に限定した。
【0034】
Coは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であり、さらにパーライトの変態エネルギーを増加させて、パーライト組織を微細にすることにより靭性を向上させる元素であるが、0.10%未満ではその効果が期待できない。また2.00%を超えて添加すると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、車輪の踏面やフランジ面にスポーリング損傷が発生し、車輪の耐損傷性が低下する。このためCo量を0.10〜2.00%に限定した。
【0035】
Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効果が期待できない。また1.00%を超えて添加すると、著しく焼入れ性が向上し、車輪とブレーキの間に発生する摩擦熱によりマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し、耐熱き裂性が低下する。このためCu量を0.01〜1.00%に限定した。
【0036】
Niは、Cu添加による熱間圧延時や熱間鍛造時の脆化を防止し、同時にフェライトへの固溶強化によりパーライト鋼の高硬度(強度)化を図る元素である。0.01%未満ではその効果が著しく小さく、また1.00%を超えて添加すると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、車輪の踏面やフランジ面にスポーリング損傷が発生し、車輪の耐損傷性が低下する。このためNi量を0.01〜1.00%に限定した。
【0037】
Tiは、熱処理時の再加熱において析出したTiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用してオーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の延性や靭性を向上させるのに有効な元素である。しかし0.0050%未満ではその効果が少なく、0.0500%を超えて添加すると、粗大なTiの炭化物やTiの窒化物が生成して車輪の靭性が低下し、これに加えて車輪内部から疲労損傷が発生し易くなることから、Ti量を0.0050〜0.050%に限定した。
【0038】
Mgは、O、またはSやAl等と結合して微細な酸化物を形成し、熱処理時の再加熱において結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO,MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成して車輪の靭性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなることから、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定した。
【0039】
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらにCaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。しかし0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0150%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物が生成して車輪の靭性が低下し、これに加えて車輪内部から疲労損傷が発生し易くなることから、Ca量を0.0005〜0.0150%に限定した。
【0040】
Alは、脱酸材として必須の成分である。また共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高強度化に有効な元素であるが、0.0100%未満ではその効果が弱く、1.00%を超えて添加すると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる粗大なアルミナ系介在物が生成して車輪の靭性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなるため、Al量を0.0100〜1.00%に限定した。
【0041】
Zrは、ZrO2 介在物がγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、オーステナイト粒界から生成する初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかしZr量が0.0001%未満ではZrO2 系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。またZr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系介在物が多量に生成して車輪の靭性が低下し、さらには車輪内部から疲労損傷が発生し易くなる。このためZr量を0.0001〜0.2000%に限定した。
【0042】
Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の靭性や延性を向上させるのに有効な元素である。しかし0.0040%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、鋼中に固溶させることが困難となり、車輪内部に疲労損傷の起点となる気泡が生成することから、N量を0.0040〜0.0200%に限定した。
【0043】
上記のような成分組成で構成される車輪は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊あるいは連続鋳造し、さらに熱間鍛造や熱間圧延を経て車輪として製造される。
次に、この熱間鍛造や熱間圧延した高温度の熱を保有する車輪、あるいは熱処理する目的で高温に再加熱された車輪の踏面やフランジ部に熱処理を施すことにより、車輪に所定の特性を満たすパーライト組織を安定的に生成させることが可能となる。
【0044】
なお、熱処理方法については特に限定しないが、パーライト変態を十分に完遂させるため、特許文献2に記載のように、パーライトノーズを確実に通る冷却速度を選択し、車輪の踏面やフランジ面を冷却することが望ましい。
また熱処理時の冷却媒体は、所定の冷却速度が得られるものであれば特に限定するものではない。本発明では冷却媒体として、エアー、ミスト、汽水(スプレー)、ソルトバスを用いた。
【0045】
なお、本発明車輪の金属組織はパーライト組織が望ましい。しかし、車輪の成分系の選択や熱処理製造方法によっては、踏面やフランジ面の一部に微量な初析セメンタイト組織、初析フェライト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入することがある。しかしこれらの組織が混入しても、車輪としての基本性能や耐摩耗性や耐熱き裂性に大きな影響を及ぼさないため、本発明車輪の頭部の金属組織は若干の初析セメンタイト組織、初析フェライト組織、ベイナイト組織、マルテンサイト組織の混在も含んでいる。
【0046】
(2)パーライト組織の呈する範囲とその硬さ
パーライト組織の呈する範囲を、車輪の踏面およびフランジ面の外郭表面から少なくとも深さ40mmの範囲に限定した理由について説明する。
深さ40mm未満では、車輪の使用寿命から考えると、機関車用、客車用、貨車用の車輪に要求される耐摩耗性や耐熱き裂性を必要とされている領域としては小さく、十分な車輪使用寿命の改善効果が得られないためである。また、パーライト組織を呈する範囲が深さ50mm以上であれば、車輪の使用寿命がさらに向上し、より望ましい。
【0047】
次に、パーライト組織の硬さをHB300以上に限定した理由について説明する。
パーライト組織の硬さがHB300未満になると、本成分系においてはパーライト組織の耐摩耗性が改善せず、車輪の使用寿命の向上が図れないためである。なお、パーライト組織の硬さの上限については特に限定しないが、十分な耐熱き裂性を確保する観点から、HB450以下が望ましい。
【0048】
ここで、図2に本発明の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪の断面表面位置での呼称、および硬さHB300以上のパーライト組織が必要な領域を示す。車輪において1は踏面、2はフランジ面であり、踏面1とフランジ面2はレールと主に接触する部分である。
硬さHB300以上のパーライト組織は、少なくとも図中の斜線内に配置されていれば、車輪の耐摩耗性や耐熱き裂性の向上が可能となる。
したがって、硬さHB300以上のパーライト組織は、レールと主に接する踏面とフランジ面近傍に配置することが望ましく、それ以外の部分はパーライト組織以外の金属組織であってもよい。
【0049】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に本発明車輪の化学成分、踏面のミクロ組織、踏面部の硬さを示す。また表1に、図3に示す西原式摩耗試験による摩耗試験結果、熱き裂再現試験結果を併せて示す。
表2に比較車輪の化学成分、踏面のミクロ組織、踏面部の硬さを示す。また表1に、図3に示す西原式摩耗試験による摩耗試験結果、熱き裂再現試験結果を併せて示す。
【0050】
なお、車輪の構成は以下のとおりである。
・本発明車輪鋼(7枚) 符号A〜G
上記成分範囲内で、ミクロ組織がパーライト組織であり、その硬さがHB300以上である耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
・比較車輪鋼(7枚) 符号H〜N
符号H〜I:Cの添加量が上記請求範囲外の従来の比較車輪鋼(2枚)。
符号J〜L:Si,Mnの添加量が上記請求範囲外の比較車輪鋼(3枚)。
符号M〜N:上記成分範囲内で、パーライト組織の硬さがHB300以下である比較車輪鋼。
【0051】
ここで、本明細書中の図について説明する。
図1は高炭素鋼の炭素量とパーライトノーズの関係を示した連続冷却変態線図、図2は車輪断面表面位置での呼称および本発明の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れたパーライト組織が必要とされる領域を示した図、図3は西原式摩耗試験機の概略図をそれぞれ示したものである。また図4は、表1と表2に示す摩耗試験および熱き裂再現試験における試験片採取位置を示した図である。
なお図2において、1は踏面、2はフランジ面である。また図3において、3は車輪試験片、4はレール試験片、5は冷却用ノズルである。
【0052】
各種試験は次のとおりとした。
・摩耗試験
試験機 :西原式摩耗試験機(図3参照)
試験片形状 :円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:車輪踏面5mm(図4参照)
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :20%
レール試験片 :パーライト鋼(Hv380)
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :70万回(車輪側)
【0053】
・熱き裂再現試験
試験機 :西原式摩耗試験機(図3参照)
試験片形状 :円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:車輪踏面5mm(図4参照)
レール試験片 :パーライト鋼(Hv380)
試験条件
(1)初期摩耗再現条件
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :20%
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :20万回
(2)ブレーキ再現条件
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :0%
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :10万回繰返し後→車輪側のみ回転停止(レール側回転)、3秒後停止
(3)き裂発生再現条件
試験荷重 :686N(接触面圧640MPa)
すべり率 :0%
雰囲気 :大気中
冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数 :10万回
(1)→(2)→(3)を順に試験を行い、摩耗面のき裂の有無を目視で確認。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
表1、表2に示すように、本発明車輪鋼(符号:A〜G)は、比較車輪鋼(符号:H〜I)と比べて、Cの添加量を増加させることにより、耐摩耗性が向上し、同時に耐熱き裂性も向上している。また、本発明車輪鋼はCに加えてSi,Mnの添加量をある一定範囲内に納め、さらにパーライト組織の硬さをある一定値以上とすることにより、耐摩耗性と耐熱き裂性を確保することができる。
上記のように、C,Si,Mnの添加量をある一定範囲内に納め、さらにパーライト組織の硬さをある一定値以上とすることにより、車輪鋼の耐摩耗性と耐熱き裂性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炭素鋼の炭素量とパーライトノーズの関係を示した連続冷却変態線図。
【図2】車輪断面表面位置での呼称および本発明の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れたパーライト組織が必要とされる領域を示した図。
【図3】西原式摩耗試験機の概略図を示した図。
【図4】摩耗試験および熱き裂再現試験における試験片採取位置を示した図。
【符号の説明】
1:踏面
2:フランジ面
3:車輪試験片
4:レール試験片
5:冷却用ノズル
Claims (11)
- 質量%で、
C :0.85〜1.20%、
Si:0.05〜2.00%、
Mn:0.05〜2.00%
を含有し、残部がFeおよびその他不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼で構成された一体型の鉄道車両用車輪であって、車輪の踏面及びフランジ面のいずれか一方又は両方の少なくとも一部がパーライト組織であることを特徴とする耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
Cr:0.05〜2.00%、
Mo:0.01〜0.50%
の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
V :0.005〜0.50%、
Nb:0.002〜0.050%
の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
B :0.0001〜0.0050%
を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
Co:0.10〜2.00%、
Cu:0.01〜1.00%
の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
Ni:0.01〜1.00%
を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
Ti:0.0050〜0.0500%、
Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
Al:0.01〜1.00%
を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
Zr:0.0001〜0.2000%
を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 質量%でさらに、
N :0.0040〜0.0200%
を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。 - 請求項1〜10に記載の車輪鋼において、車輪の踏面およびフランジ面の外郭表面から少なくとも深さ40mmまでが、硬さHB300以上のパーライト組織であることを特徴する耐摩耗性および耐熱き裂性に優れた高炭素鉄道車両用車輪。
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