JP5157698B2 - 耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール - Google Patents

耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール Download PDF

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Description

本発明は、重荷重鉄道で使用されるレールにおいて、頭部の耐摩耗性と延性を同時に向上させることを目的としたパーライト系レールに関するものである。
海外の重荷重鉄道では、鉄道輸送の高効率化を図るため、貨物の高積載化を進めており、特に急曲線のレールでは、G.C.部や頭側部の耐摩耗性が十分確保できず、摩耗によるレール使用寿命の低下が問題となってきた。このような背景から、現用の共析炭素鋼含有の高強度レール以上の耐摩耗性を有するレールの開発が求められるようになってきた。これらの問題を解決するため、下記に示すようなレールが開発された。これらのレールの主な特徴は、耐摩耗性を向上させるため、鋼の炭素量を増加し、パーライトラメラ中のセメタイト相の体積比率を増加させ、さらに、硬さを制御している(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト体積比率を増加させ、耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。
また、特許文献2の公開技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト体積比率を増加させ、同時に、硬さを制御し、耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。
しかし、特許文献1〜2の開示技術では、パーライト組織中のセメタイト相の体積比率を増加させる、すなわち、鋼の炭素量を増加させることにより、ある一定レベルの耐摩耗性の向上が図れる。しかし、パーライト組織自体の延性や靭性が著しく低下し、レール折損が発生しやすくなるいという問題点があった。さらに、レールの延性や靭性に有害な初析セメンタイト組織が生成しやすくなり、レール折損が発生しやすくなるいという問題点があった。
一般にパーライト鋼の延性や靭性を向上させるには、パーライト組織(パーライトブロックサイズ)の微細化、具体的には、パーライト変態前のオーステナイト組織の細粒化やパーライト組織の微細化が有効であると言われている。オーステナイト組織の細粒化を達成するには、熱間圧延時の圧延温度の低減、圧下量の増加、さらには、レール圧延後に低温再加熱による熱処理が行われている。また、パーライト組織の微細化を図るには、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態の促進等が行われている。
しかし、レールの製造においては、熱間圧延時の成形性確保の観点から、圧延温度の低減、圧下量の増加には限界があり、十分なオーステナイト粒の微細化が達成できなかった。また、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態については、変態核の量の制御が困難なことや粒内からのパーライト変態が安定しない等の問題があり、十分なパーライト組織の微細化が達成できなかった。
これらの諸問題から、パーライト組織のレールにおいて延性や靭性を抜本的に改善するには、レール圧延後に低温再加熱を行い、その後、加速冷却によりパーライト変態をさせ、パーライト組織を微細化する方法が用いられてきた。しかし、近年、耐摩耗性改善のためレールの高炭素化が進み、上記の低温再加熱熱処理をする時に、オーステナイト粒内に粗大な炭化物が溶け残り、加速冷却後のパーライト組織の延性や靭性が低下するといった問題がある。また、再加熱であるため、製造コストが高く、生産性も低い等の経済性の問題もある。
そこで、圧延時成形性を確保し、圧延後のパーライト組織の微細化する高炭素鋼レールの製造方法の開発が求められるようになってきた。この問題を解決するため、下記に示すような高炭素鋼レールの製造方法が開発された。これらのレールの主な特徴は、パーライト組織を微細化するため、高炭素鋼のオーステナイト粒が比較的低温で、かつ、小さい圧下量でも再結晶し易いことを利用して、小圧下の連続圧延によって整粒の微細粒を得、パーライト鋼の延性や靭性を向上させている(例えば、特許文献3、4、5参照)。
特許文献3の開示技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続3パス以上の圧延を行うことにより高延性レールを提供することができる。
また、特許文献4の公開技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続2パス以上の圧延を行い、さらに、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供することができる。
さらに、特許文献5の公開技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、パス間で冷却を施し、さらに、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供することができる。
しかし、特許文献3〜5の開示技術では、鋼の炭素量、連続熱間圧延時の温度、圧延パス数やパス間時間の組合せによっては、オーステナイト組織の微細化が図れず、パーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しないといった問題がある。
特開平8−144016号公報 特開平8−246100号公報 特開平7−173530号公報 特開2001−234238号公報 特開2002−226915号公報
このような背景から、パーライト組織の耐摩耗性を向上させ、同時に、延性を向上させた耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの提供が望まれるようになった。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、その目的とするところは、重荷重鉄道のレールで要求される、頭部の耐摩耗性と延性を同時に向上させることを目的としたものである。
(1)質量%で、C:0.65〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、Li:0.0005〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、該鋼レールの頭表部の少なくとも一部がパーライト組織であり、前記パーライト組織中の任意断面において、直径1〜100nmの大きさのLi酸化物の合計個数が1μm 中に50〜1000個存在することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
)また、上記(1)のレールには、質量%でさらに、下記[1]〜[10]の成分を選択的に含有させることができる。
[1]Co:0.05〜1.00%の1種、
[2]Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
[3]V:0.005〜0.50%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種、
[4]B:0.0001〜0.0050%の1種、
[5]Cu:0.05〜1.00%の1種、
[6]Ni:0.01〜1.00%の1種、
[7]Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150%の1種または2種以上、
[8]Al:0.0100〜1.00%の1種、
[9]Zr:0.0001〜0.2000%の1種、
[10]N:0.0060〜0.0200%の1種、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
(4)上記(1)又は(2)において、前記鋼レールにおける頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として、少なくとも深さ20mmの範囲がパーライト組織であり、かつ、その硬さがHv320〜500の範囲であることを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
本発明によれば、レール鋼の成分、さらには、Li酸化物(LiO)を制御することにより、パーライト組織の耐摩耗性と延性を向上させ、さらには、組織と硬さを制御することにより、重荷重鉄道に使用されるレールの使用寿命を向上させることが可能となる。
以下に本発明を実施する形態として、耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールにつき、詳細に説明する。以下、組成における質量は、単に%と記載する。
まず、本発明者らは、析出物の適用により、オーステナイト粒の粒成長を抑制する方法を検討した。炭素量0.65〜1.20%を添加したレール鋼をベースに、様々な酸化物を添加した材料を溶製し、レール相当の圧延条件を模擬したラボ圧延実験を行い、引張試験により延性を評価した。なお、素材の硬さは熱処理条件の制御によりHv400レベルに揃えた。
その結果、一定量のLiを添加することにより、Li酸化物(LiO)が生成し、ピンニングによりオーステナイト粒が微細化し、結果的にパーライト組織が微細化し、延性が向上することを見出した。図1に鋼の炭素量と全伸び値の関係を示す。図1は炭素量0.65〜1.20%の鋼、さらには、Liを添加した鋼を用いて、レール相当の圧延条件を模擬したラボ圧延実験を行い、引張試験を行った結果を鋼の炭素量と全伸び値の関係で示したものである。なお、ここではLi酸化物の量を鋼中のLi添加量で示した値で示した。Liの添加量はいずれの鋼においても0.02%である。いずれの炭素量においても、Liを添加することにより、γ粒がピンニングされ、パーライト組織の微細化により全伸び値が向上することが確認された。
さらに、本発明者らは上記のLi酸化物量の最適範囲を検討した。炭素量1.00%のレール鋼をベースに、Li酸化物量を変化させるため、Li添加量を変化させた材料を溶製し、レール相当の圧延条件を模擬したラボ圧延実験を行い、引張試験を行い、延性におよぼすLi酸化物量の影響を調査した。なお、素材の硬さは熱処理条件の制御によりHv400レベルに揃えた。
図2、図3にLi酸化物数と全伸び値の関係を示す。図2は、炭素量1.00%のレール鋼をベースに、Li酸化物量を変化させるため、Li添加量を変化させた材料を溶製し、レール相当の圧延条件を模擬したラボ圧延実験を行い、引張試験を行った結果をLi酸化物数と全伸び値の関係で示したものである。図3は図2においてLi酸化物数が0〜100個の部分を拡大したものである。なお、Li酸化物数は、直径1〜100nmの範囲大きさのLi酸化物のみを評価対象し、1μmの断面中における個数をカウントした。Li酸化物数が少ないと全伸び値には大きな変化は認められず、Li酸化物数がある一定量以上になると全伸び値が増加し、延性が向上することが確認された。さらに、Li酸化物数が一定量を超えると、逆に全伸び値が低下し、延性が低下することが確認された。
これらの材質試験の結果から、高炭素含有の鋼レールにおいて延性を改善するには、Liの添加が有効であることが確認された。さらに、延性を確実に向上させ、耐摩耗性を確保するには、Li酸化物量に最適な範囲が存在ことを新たに知見した。
すなわち、本発明は、高炭素含有の鋼レールにおいて、Liを添加し、さらに、Li酸化物量を制御し、パーライト組織の耐摩耗性と延性を向上させ、レールの使用寿命を向上させることを目的としたパーライト系レールに関するものである。
次に、本発明の限定理由について詳細に説明する。以下、組成における質量は、単に%と記載する。
(1)化学成分の限定理由
請求項1において、レール鋼の化学成分を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させて、かつ、耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.65%未満では、レールに要求される最低限の強度や耐摩耗性が維持できない。また、C量が1.20%を超えると、粗大な初析セメンタイト組織が多量に生成し、耐摩耗性や延性が低下する。このため、C添加量を0.65〜1.20%に限定した。
なお、C量を0.90%以上にすると、耐摩耗性がより一層向上し、レールの使用寿命が一段と改善する。このため、過酷な使用条件の軌道において、レールの耐摩耗性をより一層向上させ、高寿命化を図るには、請求項3に示すように、C添加量を0.90〜1.20%に限定することが望ましい。
Siは、脱酸材として必須の成分である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素である。さらに、過共析鋼において、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、延性の低下を抑制する元素である。しかし、Si量が0.05%未満では、これらの効果が十分に期待できない。また、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成することや、酸化物の生成により溶接性が低下する。さらに、焼入性が著しく増加し、レールの耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成する。このため、Si添加量を0.05〜2.00%に限定した。
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Mn量が0.05%未満では、その効果が小さく、レールに必要とされる耐摩耗性の確保が困難となる。また、Mn量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成し易くなる。このため、Mn添加量を0.05〜2.00%に限定した。
LiはLiの酸化物(LiO)を形成し、酸化物がオーステナイト組織中に生成し、ピンニングによりオーステナイト粒が微細化し、結果的にパーライト組織が微細化することにより、延性を向上させる元素である。しかし、Li量が0.0005%未満ではその効果は弱く、さらに、直径1〜100nmの大きさの微細なLiの酸化物の数が確保できず、レールの延性の向上が図れない。また、Li量が0.10%を超えると、直径100nm超の大きさのLiの粗大酸化物が急激に生成・増加し、微細なLiの酸化物の数が確保できず、レールの延性が低下し、また、レール頭表部においてポーリング損傷などの表面損傷が発生するため、Li添加量を0.0005〜0.10%に限定した。
また、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織や初析フェライト組織の硬度(強化)の向上、延性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、レール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、Co、Cr、Mo、V、Nb、B、Cu、Ni、Ti、Mg、Ca、Al、Zr、Nの元素を必要に応じて添加する。
ここで、Coは、摩耗面のラメラ構造やフェライト粒径を微細化し、パーライト組織の耐摩耗性を高める。Cr、Moは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、主に、パーライトラメラ間隔を微細化することによりパーライト組織の硬度を確保する。V、Nbは、熱間圧延やその後の冷却課程で生成した炭化物や窒化物により、オーステナイト粒の成長を抑制し、さらに、フェライト組織やパーライト組織中に析出硬化することにより、パーライト組織の靭性と硬度を向上させる。また、炭化物や窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。Bは、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、レール頭部の硬度分布を均一にする。Cuは、フェライト組織やパーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高める。Niは、フェライト組織やパーライト組織の靭性と硬度を向上させ、同時に、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。Tiは、熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止する。Mg、Caは、レール圧延時においてオーステナイト粒の微細化を図り、同時に、フェライトやパーライト変態を促進し、靭性を向上させる。Alは、共析変態温度を高温側へ移動させ、パーライト組織の硬度を高める。Zrは、ZrO介在物が高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レールの延性低下を防止する。Nはオーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライト組織を微細にすることより、延性を向上させることが主な添加目的である。
これらの成分の限定理由について、以下に詳細に説明する。
Coは、パーライト組織中のフェライト相に固溶し、レール頭部の摩耗面において、車輪との接触により形成させる微細なフェライト組織をより一層微細化し、耐摩耗性を向上させる元素である。Co量が0.05%未満では、フェライト組織の微細化が図れず、耐摩耗性の向上効果が期待できない。また、Co量を1.00%以上添加しても、上記の効果が飽和し、添加量に応じたフェライト組織の微細化が図れない。また、合金添加コストの増大により経済性が低下する。このため、Co添加量を0.05〜1.00%に限定した。
Crは、平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、Cr量が0.05%未満ではその効果は小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、Cr量2.00%を超える過剰な添加を行うと、焼入れ性が増加し、マルテンサイト組織が生成し、頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Cr添加量を0.05〜2.00%に限定した。
Moは、Crと同様に平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、硬度(強度)を向上させる元素であるが、Mo量が0.01%未満ではその効果が小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、Mo量が0.50%を超える過剰な添加を行うと、変態速度が著しく低下し、頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Mo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
Vは、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、V炭化物やV窒化物のピニング効果により、オーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したV炭化物、V窒化物による析出硬化により、フェライト組織やパーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、比較的高温度域でV炭化物やV窒化物を生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、フェライト組織やパーライト組織の硬度の向上や延性の改善は認められない。また、V量が0.50%を超えると、Vの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、フェライト組織やパーライト組織の延性が低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、V添加量を0.005〜0.50%に限定した。
Nbは、Vと同様に、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、Nb炭化物やNb窒化物のピニング効果により、オーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却課程で生成したNb炭化物、Nb窒化物による析出硬化により、フェライト組織やパーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、低温度域から高温度域までNbの炭化物やNb窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、その効果は、Nb量が0.002%未満では、その効果が期待できず、フェライト組織やパーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また、Nb量が0.050%を超えると、Nbの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、フェライト組織やパーライト組織の延性が低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Nb添加量を0.002〜0.050%に限定した。
Bは、オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物(Fe23(CB)6)を形成し、パーライト変態の促進効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭表面から内部までより均一な硬度分布をレールに付与し、レールを高寿命化する元素であるが、B量が0.0001%未満では、その効果が十分でなく、レール頭部の硬度分布には改善が認められない。また、B量が0.0050%を超えると、粗大な鉄炭ほう化物が生成し、延性や靭性の低下を招く。このため、B添加量を0.0001〜0.0050%に限定した。
Cuは、フェライト組織やパーライト組織中のフェライト相に固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、Cu量が0.01%未満では、その効果が期待できない。また、Cu量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により延性に有害なマルテンサイト組織が生成し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Cu量を0.01〜1.00%に限定した。
Niは、フェライト組織やパーライト組織の靭性を向上させ、同時に、固溶強化により高硬度(強度)化を図る元素である。さらに、溶接熱影響部においては、Tiと複合でNi3Tiの金属間化合物が微細に析出し、析出強化により軟化を抑制する元素であるが、Ni量が0.01%未満では、その効果が著しく小さく、また、Ni量が1.00%を超えると、フェライト組織やパーライト組織の延性が著しく低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Ni添加量を0.01〜1.00%に限定した。
Tiは、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0050%未満ではその効果が少なく、Ti量が0.0500%を超えると、粗大なTiの炭化物、Tiの窒化物が生成して、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Ti添加量を0.0050〜0.050%に限定した。
Mgは、O、または、SやAl等と結合して微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において、結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、フェライト組織やパーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO、MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、フェライトやパーライト変態の生成に寄与し、その結果、主にパーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Mg量が0.0005%未満ではその効果は弱く、Mg量が0.0200%を超えると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Mg添加量を0.0005〜0.0200%に限定した。
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらに、CaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、フェライトやパーライト変態の生成に寄与し、その結果、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Ca量が0.0005%未満ではその効果は弱く、Ca量が0.0150%を超えると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの靭性を低下させるため、Ca添加量を0.0005〜0.0150%に限定した。
Alは、脱酸材として必須の成分である。また、共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高硬度(強度)化に寄与する元素であるが、Al量が0.0100%未満では、その効果が弱い。また、Al量が1.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、粗大なアルミナ系介在物が生成し、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。さらに、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下するため、Al添加量を0.0100〜1.00%に限定した。
Zrは、ZrO介在物がγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、偏析部の特性を向上させる元素である。しかし、Zr量が0.0001%以下では、ZrO系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。また、Zr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系介在物が多量に生成し、靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Zr量を0.0001〜0.2000%に限定した。
Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのフェライトやパーライト変態を促進させ、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、N量が0.0060%未満では、その効果が弱い。N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成し、レール頭部内部に疲労損傷が発生する。このため、N添加量を0.0060〜0.0200%に限定した。
上記のような成分組成で構成されるレール鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。
微細な酸化物(LiO)を均一に分散させるには、高温の転炉などでLiを添加することが望ましい。さらに、鋳造残段階での酸化物の凝集を防止するため、電磁力などで凝固途中の溶鋼を攪拌する、また、鋳造時の溶綱の流れを制御するため鋳造ノズルの形状を最適化することが望ましい。
(2)Li酸化物(LiO)の限定理由
オーステナイト粒を微細する析出物として、Li酸化物(LiO)に着目した理由について詳細に説明する。
本発明者らは、変態後のパーライト組織に析出し難く、パーライト組織の耐摩耗性や延性に悪影響しない析出物の検討を行った。その結果、析出物のサイズ自体が非常に微細であり、さらに、オーステナイト組織中に粗大化し難く、微細に分散する析出物として、酸化力の強いLiをベースとした酸化物(LiO)が最適であることを実験により確認した。
(3)Li酸化物(LiO)の大きさおよび数の限定理由
まず、パーライト組織1μm中のLi酸化物(LiO)の個数を限定する場合に、Li酸化物(LiO)の大きさを限定した理由について詳細に説明する。
パーライト組織中のLi酸化物(LiO)の直径が1〜100nmの範囲であれば、オーステナイト組織中に生成した場合、粒界において十分なピンニング効果を示し、結果的にパーライト組織を微細化し、確実に延性を向上させる。したがって、評価対象とするLi酸化物(LiO)の直径を1〜100nmの範囲に限定した。
次に、パーライト組織1μm中のLiの酸化物(LiO)の合計個数を限定した理由について詳細に説明する。
Li酸化物(LiO)の合計個数が50個未満になると、オーステナイト組織中のピンニング効果が十分にあらわれず、レールの延性が向上しない。また、Li酸化物(LiO)の合計個数が1000個以上になると、パーライト組織自体が脆化し、延性が低下し、さらに、レール頭表部においてスポーリング損傷などの表面損傷が発生するため、Li酸化物(LiO)の合計個数を1μm中に50〜1000個に限定した。
なお、上記のLi酸化物(LiO)の大きさや数を上記の範囲に限定する方法としては、まず、Li添加量を上記限定範囲内に納めると同時に、レールとして圧延する鋼片の製造段階での調整が必要である。具体的には、レールの溶鋼を製造する際の転炉でのLi添加方法を制御する必要がある。
まず、Li酸化物(LiO)効率的に添加するため、P等の不純物の精錬がほぼ終了した後に、Li酸化物を添加することが望ましい。このことにより、溶鋼の上部にあるスラグに吸着されることなく、溶鋼にLi酸化物を添加することが可能となる。
次に、Li酸化物(LiO)の大きさや数を制御するため、添加後に転炉内で溶鋼を酸素や不活性ガスで攪拌させることが望ましい。このことにより、Liの酸化が促進される。さらに、攪拌により、溶鋼中のLi酸化物の粗大化が抑制され、凝集することなく微細な酸化物となり、溶鋼中に分散させることが可能となる。
これらの制御を行うことにより、Li酸化物(LiO)の大きさや数を上記の範囲に制御することが可能である。
析出物は、任意断面より薄膜を採取し、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、倍率50000〜500000の倍率で観察した。析出物の粒径は、観察により個々の析出物の面積を求め、その面積に相当する円の直径を用いた。析出物は20視野の観察を行い、所定の直径に該当する析出物の数をカウントし、これを所定の視野面積に相当する数に換算した。各レール鋼の代表値はこれら20視野の平均値とした。
(4)レール頭部のパーライト組織の硬さとその範囲の限定理由
次に、頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として、少なくとも深さ20mmの範囲を、硬さHv320〜500の範囲のパーライト組織に限定した理由について説明する。
まず、パーライト組織の硬さをHv320〜500の範囲に限定した理由について説明する。
本成分系では、パーライト組織の硬さがHv320未満になると、レール頭部の耐摩耗性の確保が困難となり、レールの使用寿命が低下する。また、ころがり面に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、レール頭部の耐表面損傷性が大きく低下する。また、パーライト組織の硬さがHv500を超えると、パーライト組織の延性が著しく低下し、ころがり面のスポーリング損傷が発生し、レール頭部の耐表面損傷性が低下する。このためパーライト組織の硬さをHv320〜500の範囲に限定した。
次に、硬さHv320〜500のパーライト組織の必要範囲を頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として、少なくとも深さ20mmの範囲に限定した理由を説明する。
硬さHv320〜500のパーライト組織の存在する範囲が、頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点として深さ20mm未満では、重荷重鉄道のレールにおいて、耐摩耗性を維持するには小さく、十分なレール使用寿命の向上が図れない。また、硬さHv300〜500のパーライト組織の存在する範囲が、頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点として深さ30mm以上であれば、さらにレール使用寿命が向上し、より望ましい。
ここで、図4に本発明の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの頭部断面表面位置での呼称、および、硬さHv320〜500のパーライト組織が必要な領域を示す。レール頭部において、1は頭頂部、2は頭部コーナー部であり、頭部コーナー部2の一方は車輪と主に接触するゲージコーナー(G.C.)部である。
レール頭表部とは、頭部コーナー部、頭頂部表面を起点として深さ5mmまでの範囲を示し、少なくともこの部位に上記の成分範囲のパーライト組織が配置されていれば、レールにおいて耐摩耗性の向上が図れる。
また、硬さHv320〜500のパーライト組織は、頭部コーナー部、頭頂部表面を起点として深さ20mmまでの範囲、すなわち、少なくとも図中の斜線内に配置されていれば、レールの耐摩耗性がより一層確保され、レールの使用寿命の向上が図れる。
したがって、硬さHv320〜500のパーライト組織は、車輪とレールが主に接するレール頭部表面近傍に配置することが望ましく、それ以外の部分はパーライト組織以外の金属組織であってもよい。
なお、レール頭部において、硬さHv320〜500のパーライト組織を得る方法としては、圧延後、または、再加熱後のオーステナイト領域のある高温のレール頭部に加速冷却を行うことが望ましい。加速冷却の方法としては、特開平8−246100号公報、特開平9−111352号公報等に記載されているような方法で熱処理を行うことにより、所定の組織と硬さを得ることができる。
また、本発明レールの頭部金属組織は、上記限定のようなパーライト組織であることが望ましい。しかし、レールの成分系や熱処理製造方法によっては、パーライト組織中に面積率で、5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入することがある。しかし、これらの組織が混入しても、レール頭部の耐摩耗性には大きな悪影響を及ぼさないため、耐摩耗性に優れたパーライト系レールの組織としては、5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織、マルテンサイト組織の混在も含んでいてもよい。言い換えれば、本発明レールの頭部金属組織は、95%以上がパーライト組織であれば良く、耐摩耗性や延性を十分に確保するためには、頭部金属組織の98%以上をパーライト組織とすることが望ましい。なお、表1及び表2におけるミクロ 組織の欄で微量と記載しているのは5%以下の量を意味し、パーライト組織以外の組織において微量と記載していないのは5%超の量を意味する。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に供試レール鋼の化学成分、直径1〜100nmの大きさのLi酸化物(LiO)の数(1μm中)、レール頭部のミクロ組織、硬さを示す。尚、ミクロ組織および硬さは頭表面下2mm位置のデータであり、ミクロ組織におけるパーライトは、面積率で95%以上がパーライト組織であることを意味し、パーライト組織以外の組織の微量は面積率が5%以下であることを意味する。さらに、図5に示す位置から試験片を採取し、図6に示す方法で行った摩耗試験の結果、図7に示す位置から試験片を採取して行った引張試験の結果も併記した。なお、図5は、表1、表2示す摩耗試験における試験片採取位置を図示したものであり、図6は、表1、表2に示す摩耗試験の概要を示したものであり、図6おいて、3レール試験片、4相手材、5冷却用ノズルである。図7は、表1、表2に示す引張試験における試験片採取位置を図示したものである。
Figure 0005157698
表2は、比較レール鋼の化学成分、直径1〜100nmの大きさのLi酸化物(LiO)の数(1μm中)、レール頭部のミクロ組織、硬さを示す。尚、ミクロ組織および硬さは頭表面下2mm位置のデータであり、ミクロ組織におけるパーライト組織以外の組織は面積率が5%超であることを意味するが、パーライト組織以外の組織の微量は面積率が5%以下であることを意味する。さらに、図5に示す位置から試験片を採取し、図6に示す方法で行った摩耗試験の結果、図7に示す位置から試験片を採取して行った引張試験の結果も併記した。
Figure 0005157698
また、各種試験条件は下記のとおりである。
[1]頭部引張試験
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS4号相似
平行部長さ:30mm、平行部直径:6mm、伸び測定評点間距離:25mm
試験片採取位置:レール頭部表面下6mm(図7参照)
引張速度:10mm/min、試験温度:常温(20℃)
[2]頭部摩耗試験
試験機:西原式摩耗試験機(図6参照)
試験片形状:円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:レール頭部表面下2mm(図5参照)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
相手材:パーライト鋼(Hv380)
雰囲気:大気中
冷却:圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
(1)本発明レール(32本) 符号1〜32
上記限定成分範囲内で、かつ、直径1〜100nmの大きさの微細Li酸化物(LiO)の数(1μm中)、レール頭部のミクロ組織、硬さが規定の範囲の耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
(2)比較レール(25本) 符号33〜57
鋼:33〜40:成分範囲が本願発明範囲外のレール。
鋼:41〜51:成分範囲が本願発明範囲内であるが、微細Li酸化物(LiO)の数(1μm中)が本願発明範囲外であるレール。
鋼:52〜54:成分範囲が本願発明範囲内であるが、頭部のミクロ組織が上記限定外のレール。
鋼:55〜57:成分範囲が本願発明範囲内であるが、頭部の硬さが上記限定外のレール。
表1、表2に示すように、本発明レール鋼(鋼:1〜32)は、比較レール鋼(鋼:33〜38)と比べて、鋼の化学成分を限定範囲内に収めることにより、延性や耐摩耗性に悪影響する初析セメンタイト組織、マルテンサイト組織やベイナイト組織等の組織を生成させることなく、安定的に一定の硬さ範囲内のパーライト組織を得ることが可能となる。
表1、表2、に示すように、本発明レール鋼(鋼:1〜32)は、比較レール鋼(鋼:39〜40)と比べて、Liの添加量をある一定範囲内に納めることにより、パーライト組織のレールの延性を大きく向上させることができる。
さらに、図8に示すように、本発明レール鋼(鋼:1〜32)は、比較レール鋼(鋼:41〜51)と比べて、レールの溶鋼を製造する際の転炉でのLi添加方法等を制御し、Li酸化物の大きさや数をある一定範囲内に納めることにより、パーライト組織のレールの延性を大きく向上させることができる。なお、図8は、表1に示す本発明レール鋼と表2に示す比較レール鋼の頭部引張試験の結果を炭素量と全伸び値の関係を示したものである。
表1、表2に示すように、本発明レール鋼(鋼:1〜32)は、比較レール鋼(鋼:52〜54)と比べて、ミクロ組織をパーライト組織にすることにより、耐摩耗性や延性を確保することができる。
表1、表2に示すように、本発明レール鋼(鋼:1〜32)は、比較レール鋼(鋼:55〜57)と比べて、パーライト組織の硬さをある一定範囲内に納めることにより、耐摩耗性や延性を確保することができる。
さらに、表1、表2、図9に示すように、本発明レール鋼(鋼:1〜32)は、炭素量を0.90%以上とすることにより、耐摩耗性が飛躍的に向上する。なお、図9は、表1に示す本発明レール鋼の頭部摩耗試験の結果を炭素量と摩耗量の関係を示したものである。
炭素量0.65〜1.20%の鋼、さらには、Liを添加した鋼を用いて、レール相当の圧延条件を模擬したラボ圧延実験を行い、引張試験を行った結果を鋼の炭素量と全伸び値の関係で示した図。 炭素量1.00%のレール鋼をベースに、Li酸化物量を変化させるため、Li添加量を変化させた材料を溶製し、レール相当の圧延条件を模擬したラボ圧延実験を行い、引張試験を行った結果をLi酸化物数と全伸び値の関係で示した図。 図2に示したLi酸化物量数が100個以下の部分を拡大した図。 本発明のレールの頭部断面表面位置での呼称を示した図。 表1、表2示す摩耗試験における試験片採取位置を示した図。 表1、表2に示す摩耗試験の概要を示した図。 表1、表2に示す引張試験における試験片採取を示した図。 表1に示す本発明レール鋼と表2に示す比較レール鋼の頭部引張試験の結果を炭素量と全伸び値の関係を示した図。 表1に示す本発明レール鋼の頭部摩耗試験の結果を炭素量と摩耗量の関係を示した図。
符号の説明
1:頭頂部、
2:頭部コーナー部、
3:レール試験片、
4:相手材、
5:冷却用ノズル

Claims (13)

  1. 質量%で、C:0.65〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、Li:0.0005〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、該鋼レールの頭表部の少なくとも一部がパーライト組織であり、前記パーライト組織中の任意断面において、直径1〜100nmの大きさのLi酸化物の合計個数が1μm 中に50〜1000個存在することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  2. 請求項1において、C:0.90〜1.20%の範囲であることを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  3. 請求項1又は2において、質量%で、さらに、Co:0.05〜1.00%を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  4. 請求項1〜のいずれか1項において、質量%で、さらに、Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  5. 請求項1〜のいずれか1項において、質量%で、さらに、V:0.005〜0.50%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  6. 請求項1〜のいずれか1項において、質量%で、さらに、B:0.0001〜0.0050%を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  7. 請求項1〜のいずれか1項において、質量%で、さらに、Cu:0.05〜1.00%を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  8. 請求項1〜のいずれか1項において、質量%で、さらに、Ni:0.01〜1.00%を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  9. 請求項1〜のいずれか1項において、質量%で、さらに、Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150%の1種または2種以上を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  10. 請求項1〜のいずれか1項において、質量%で、さらに、Al:0.0100〜1.00%を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項において、質量%で、さらに、Zr:0.0001〜0.2000%を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項において、質量%で、さらに、N:0.0060〜0.0200%を含有することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項において、前記鋼レールにおける頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として、少なくとも深さ20mmの範囲がパーライト組織であり、かつ、その硬さがHv320〜500の範囲であることを特徴とする耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レール。
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