JPWO2010038754A1 - 磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い保磁力を維持したまま、摺動耐性や腐食耐性等の耐久性を向上させた保護層を備えることが可能となる。【解決手段】 本発明の磁気記録媒体の製造方法は、磁気記録層122を成膜する磁気記録層成膜工程と、CVD(Chemical Vapour Deposition)法を用いて保護層126を成膜する保護層成膜工程と、を含み、保護層成膜工程では、第1圧力の雰囲気で成膜した後に第2圧力の雰囲気で保護層126を成膜し、第2圧力は、第1圧力未満であることを特徴としている。【選択図】図2

Description

本発明は、HDD(ハードディスクドライブ)などに搭載される磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体に関する。
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDDの面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスク(磁気記録媒体)にして、1枚あたり200GBを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような要請にこたえるためには1平方インチあたり400GBitを超える情報記録密度を実現することが求められる。
HDD等に用いられる磁気記録媒体において高記録密度を達成するためには、情報信号の記録を担う磁気記録層を構成する磁性結晶粒子を微細化すると共に、その層厚を低減していく必要があった。ところが、従来より商業化されている面内磁気記録方式(長手磁気記録方式、水平磁気記録方式とも呼称される)の磁気記録媒体の場合、磁性結晶粒子の微細化が進展した結果、超常磁性現象により記録信号の熱的安定性が損なわれ、記録信号が消失してしまう、熱揺らぎ現象が発生するようになり、磁気記録媒体の高記録密度化への阻害要因となっていた。
そこで、近年、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体(垂直磁気記録媒体)が提案されている。従来の面内磁気記録方式は磁気記録層の磁化容易軸が基板面の平面方向に配向されていたが、垂直磁気記録方式は磁化容易軸が基板面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は面内記録方式に比べて磁性粒が微細化するほど反磁界(Hd)が小さくなって保磁力Hcが向上し、熱揺らぎ現象を抑制することができるので、高記録密度化に対して好適である。かかる垂直磁気記録媒体としては、基板上に軟磁性体からなる軟磁性下地層と、硬磁性体からなる垂直磁気記録層を備える、いわゆる二層型垂直磁気記録媒体が知られている(例えば特許文献1)。
また、このような情報記録密度の増加に伴い、円周方向の線記録密度(BPI:Bit Per Inch)、半径方向のトラック記録密度(TPI:Track Per Inch)のいずれも増加の一途を辿っている。また限られたディスク面積を有効に利用するために、HDDの起動停止機構が従来のCSS(ContactStart and Stop)方式に代えてLUL(Load Unload:ロードアンロード)方式のHDDが用いられるようになってきた。
LUL方式では、HDDの停止時には、磁気ヘッドを磁気記録媒体の外に位置するランプと呼ばれる傾斜台に退避させておき、起動動作時には磁気記録媒体が回転開始した後に、磁気ヘッドをランプから磁気記録媒体上に滑動させ、浮上飛行させて記録再生を行なう。停止動作時には磁気ヘッドを磁気記録媒体外のランプに退避させたのち、磁気記録媒体の回転を停止する。この一連の動作はLUL動作と呼ばれる。
LUL方式のHDDに搭載される磁気記録媒体では、CSS方式のような磁気ヘッドとの接触摺動用領域(CSS領域)を設ける必要がなく、記録再生領域を拡大させることができ、高情報容量化にとって好ましい。またLUL方式ではCSS方式と異なり、磁気記録媒体面上に凸凹形状のCSS領域を設ける必要が無く、磁気記録媒体面上を極めて平滑化することが可能となる。よってLUL方式のHDDに搭載される磁気記録媒体では、CSS方式に比べて磁気ヘッド浮上量を一段と低下させることができるので、記録信号の高S/N比化を図ることができ、磁気記録媒体装置の高記録容量化に資することができるという利点もある。
このような状況の下で情報記録密度を向上させるために、磁気ヘッドの浮上量を低減させることにより、磁気記録媒体の磁気記録層と、磁気ヘッドの記録再生素子との間隙(磁気的スペーシング)を狭くしてS/N比を向上させる技術も検討されている。近年望まれる磁気ヘッドの浮上量は10nm以下であり、1平方インチ当り400Gbit以上の情報記録密度を達成するためには、少なくとも5nm以下にする必要がある。したがって、5nm以下の超低浮上量においても、磁気記録媒体が安定して動作することが求められるようになってきた。とりわけ上述したように、近年、磁気記録媒体は面内磁気記録方式から垂直磁気記録方式に移行しており、磁気記録媒体の大容量化、それに伴うフライングハイトの低下が強く要求されている。
上述した磁気的スペーシングを狭くするための技術として、磁気ヘッド素子の動作時に、ヘッド素子内部に備えた薄膜抵抗体に通電して発熱させ、その熱によって磁気ヘッド(磁極先端部)を熱膨張させ、ABS(the Air Bearing Surface)方向にわずかに突出させるDFH(Dynamic Flying Height)ヘッドが提案されている。これにより、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間隙を調節し(磁気的スペーシングを低減し)、狭い磁気的スペーシングで磁気ヘッドを常に安定して飛行させることができる。そして、現状では、DFH素子のバックオフマージン2nm以下を満足させる媒体開発が必要となっている。このように、近年の高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量化、磁気的スペーシングの低減のもとでの高耐久性、高信頼性を有する磁気記録媒体の実現が求められている。
また、磁気ヘッドが低浮上量化してきたことに伴い、外部衝撃や飛行の乱れによって磁気ヘッドが磁気記録媒体表面に接触する可能性が高まっている。このため磁気記録媒体では、磁気ヘッドが磁気記録媒体に衝突した際、磁気記録層の表面が傷つかないように保護する保護層が設けられる(例えば特許文献2)。保護層は、カーボンオーバーコート(COC)、即ち、カーボン(炭素)皮膜によって高硬度な皮膜を形成する。
また保護層は薄膜においても優れた耐磨耗性と耐腐食性を維持するための強度と化学的耐性が必要とされるため、低摩擦・高強度・高化学安定性を有するダイヤモンドライクカーボンが好ましく使用されている。従来の保護層は、磁気記録媒体上に、炭化水素ガスによるCVD法、またはスパッタリング法などを用いてダイヤモンドライクカーボン保護層を形成していた。膜厚は大凡10nm以下としていた。
他にも、保護層には、カーボンの硬いダイヤモンドライク結合と、柔らかいグラファイト結合とが混在しているものもある(例えば、特許文献3)。また、ダイヤモンドライク結合保護膜を、CVD(Chemical Vapour Deposition)法によって製造する技術も開示されている(例えば、特許文献4)。
また保護層の上には、磁気ヘッドが衝突した際に保護層および磁気ヘッドを保護するために、潤滑層が形成される。潤滑層は、例えばパーフルオロポリエーテルを塗布して焼結することにより形成される。
特開2002−74648号公報 特開2000−282238号公報 特開平10−11734号公報 特開2006−114182号公報
上述のように磁気記録層の上には保護層や潤滑層が必要であるが、高記録密度化に伴い磁気ヘッドと磁気記録層との間隔(ギャップ)をさらに狭くする要請がある。特に垂直磁気記録媒体では磁気記録層に垂直方向の強い磁界を印加するために軟磁性層を形成する場合が多いが、磁気ヘッドと軟磁性層との間隔はさらに大きくなっている。このため、軟磁性層より基板表面側の層、特に磁気記録層より基板表面側の層は、できるだけ薄くすることが好ましい。
しかし、特許文献1および2に記載の従来のCVD法やスパッタリング法を用いて、単に保護層を薄膜化しても、保護層自体の摺動耐性(機械的強度)や腐食耐性等の耐久性が劣化することとなる。
例えばプラズマCVD法で成膜した保護層は、ガス圧力、ガス流量、印加バイアス、投入パワーといったプロセスパラメータによって容易に膜質を変化させることができるが、コロージョン耐性や金属イオン耐溶出性と機械的強度との関係はトレードオフの関係があり、これらを同時に成立させることは従来困難な課題であった。そのため、保護層としての機能を持たせるためには、一番弱い特性が要求品質を満たすように保護層の膜厚を厚くする必要があった。しかし、保護層の膜厚を厚くすると、磁気的スペーシングの低減が実現できず、よりいっそうの高記録密度化の達成が困難になる。
また最近では、磁気記録媒体装置は、従来のパーソナルコンピュータの記憶装置としてだけでなく、携帯電話、カーナビゲーションシステムなどのモバイル用途にも多用されるようになってきており、使用される用途の多様化により、磁気記録媒体に求められる環境耐性は非常に厳しいものになってきている。したがって、これらの状況に鑑みると、従来にもまして、磁気記録媒体の安定性、信頼性などの更なる向上が急務となっている。
本発明は、このような問題に鑑み、高い保磁力を維持したまま、摺動耐性や腐食耐性等の耐久性を向上させた保護層を備える磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体を提供することを目的としている。また薄膜化してもコロージョン耐性や金属イオン耐溶出性とともに十分な機械的強度を有する保護層を備えることで、安定性および信頼性の高い磁気記録媒体の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の発明者らが鋭意検討したところ、従来の方法で成膜した保護層よりも硬い保護層を成膜できれば、保護層自体を薄膜化しても、耐久性を維持できると考えた。従来の保護層よりも硬い保護層を成膜する方法としては、CVD法におけるバイアス電圧を上げる方法もしくは雰囲気圧力を下げる方法が考えられる。
しかし、CVD法において、バイアス電圧を上げると、磁気記録媒体の保磁力(Hc)が低下するという問題点があった。垂直磁気記録媒体において保護層は、磁気記録層の上に書き込み特性を上げるために設けられた補助記録層の上に成膜される。そしてCVD法によって保護層を成膜する際に高いバイアス電圧を印加すると、カーボン粒子が高いエネルギーをもって激しく補助記録層に衝突するため、硬い保護層が形成される反面、保護層の直下に成膜されている磁気記録層の書き込み特性をあげるための補助記録層が、一部破壊されているためであると考えられる。
また、CVD法において成膜する際の雰囲気圧力を下げるほど平均自由行程が長くなり、プラズマイオン同士の衝突頻度が低くなる。つまり、雰囲気の圧力が低いほど、プラズマとなった気体は、大幅なエネルギーの減少を伴わずに基板の表面(補助記録層)へと到達してしまう。したがって、雰囲気の圧力を低くしても、カーボン粒子が高いエネルギーをもって激しく補助記録層に衝突してしまう。
また、雰囲気圧力を下げると、従来の保護層よりも硬い保護層を成膜できる反面、膜中の応力の向上に伴い、膜にピンホール、クラック等が形成されやすくなり、耐腐食性が悪化する。
そこで発明者らは、保護層を成膜する際に、CVD法における雰囲気の圧力を制御することで、基板の表面(補助記録層)へのダメージを防止し保護層の表面の硬度の向上を図ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち上記課題を解決するために、本発明にかかる磁気記録媒体の製造方法の代表的な構成は、基板上に、磁気記録層と、保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体の製造方法であって、磁気記録層を成膜する磁気記録層成膜工程と、CVD(Chemical Vapour Deposition)法を用いて保護層を成膜する保護層成膜工程と、を含み、保護層成膜工程では、第1圧力の雰囲気で成膜した後に第2圧力の雰囲気で保護層を成膜し、第2圧力は、第1圧力未満であることを特徴とする。
保護層成膜工程において、保護層の下部を成膜する際の圧力(第1圧力)よりも上部を成膜する際の圧力(第2圧力)を低くする構成により、保護層を成膜する前に成膜された層に、ダメージを与えることのない圧力(第1圧力)で保護層を成膜しつつ、下部と比較して硬度の高い層を上部に成膜することができる。
CVD法においては、雰囲気の圧力が高いほど平均自由行程が短くなるすなわち衝突頻度が高くなる。つまり、雰囲気の圧力が高いほど、プラズマとなった気体は、衝突を繰り返すことでエネルギーを消失して、基板の表面へと到達する。したがって、雰囲気の圧力を高くすることによって、保護層を成膜する前に成膜された層に、ダメージを与えることのない圧力で保護層を成膜することができる。そして、圧力を低下させてさらに保護層を成膜する構成により、保護層の上部(表面)を高密度で硬度に形成することが可能となる。
当該磁気記録媒体は垂直磁気記録媒体であって、保護層成膜工程の前に、基板の平面方向に磁気的にほぼ連続した補助記録層を成膜する補助記録層成膜工程を含んでもよい。
垂直磁気記録媒体において、磁気記録層の保磁力Hcを向上させていくと、高記録密度化が達成できる反面、磁気ヘッドによる書き込みが困難になる傾向にある。そこで、基板主表面の面内方向に磁気的にほぼ連続し、垂直磁気異方性の高い単一の膜(補助記録層)を磁気記録層の上に形成することにより、飽和磁化Msを向上させることができ、書き込みやすさ、すなわちオーバーライト特性を向上させることが可能となる。言い換えれば、磁気記録層の上に補助記録層を設ける目的は、逆磁区核形成磁界Hnを向上させてノイズを低減し、飽和磁化Msを向上させてオーバーライト特性も向上させることである。なお補助記録層は連続層またはキャップ層とも呼ばれる場合もある。
また、ここでは、保護層の直下の層が、補助記録層となるため、保護層の成膜に伴う補助記録層へのダメージを低減することにより、上述した補助記録層の効果を効果的に得ることができる。
なお補助記録層が「磁気的に連続している」とは、磁性体が連続していること、または分断されていないこと、すなわち全体として一つの磁石であるという意味である。「ほぼ連続している」とは、補助記録層が薄膜であることから必ずしも完全な被膜を形成していないため、部分的に被膜に断裂が生じていて連続していない場合も含むという意味である。
保護層成膜工程の後さらに、保護層の表面を窒化処理する窒化処理工程と、潤滑層を成膜する潤滑層成膜工程と、を含み、窒化処理工程は、窒素を保護層にドープする方法、CVD法もしくはスパッタリング法で遂行されてもよい。
潤滑層として広く用いられるPFPEは、末端に水酸基(OH)を有しており、当該水酸基は保護層の表面に存在する窒素と高い親和性がある。したがって、保護層の表面の窒素含有率を向上させることが可能となる上記構成により、潤滑層の保護層に対する付着率(BR:Bonding Ratio)を向上させることができる。
保護層には、ダイヤモンドライクカーボンが含まれてもよい。これにより、緻密で耐久性のある保護層とすることができる。
上記課題を解決するために、本発明にかかる磁気記録媒体の代表的な構成は、上述した磁気記録媒体の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかる他の磁気記録媒体の代表的な構成は、基板上に少なくとも磁気記録層と、ダイヤモンドライクカーボンを含む保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体であって、ラマン分光法におけるグラファイトカーボンに起因するGピークの高さをGhと、ダイヤモンドライクカーボンに起因するDピークに起因するDピークの高さをDhと、Gピークの蛍光を含んだバックグラウンド強度をBと、Gピークの蛍光を除いたピーク強度をAとした場合、保護層のラマン分光法による測定結果が、Dh/Ghが1.05以下であり、B/Aが1.5以下であることを特徴とする。
上述した磁気記録媒体の製造方法の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該磁気記録媒体にも適用可能である。
ところで、保護層の耐摩耗性や耐衝撃性等の耐久性を向上させるためには、炭素原子を緻密に成膜することでダイヤモンドライク結合を有するカーボン(ダイヤモンドライクカーボンDiamond Like Carbon 以下単にDLCと称する)の含有率を増加させる必要がある。
しかし、耐摩耗性を向上させるためにCVD法による成膜条件を最適化したとしても、耐腐食性が大幅に劣化してしまう。すなわち、CVD法で保護層を成膜する際の圧力が低いほど平均自由行程が長くなり、衝突頻度が低くなり、高エネルギーで基板に製膜されるため、高密度で硬度が高い膜を成膜することができるが、媒体保護膜の被覆率および半径方向の均一性が悪化するため耐腐食性が劣化してしまう。特に、磁気記録媒体の端部の保護層の被覆性が悪化するため、端部におけるコロージョンの発生が顕著になってしまう。
一方、耐腐食性を向上させるためにCVD法による成膜条件を最適化したとしても、耐磨耗性が大幅に劣化してしまう。すなわち、CVD法で保護層を成膜する際の圧力が高いほど平均自由行程が短くなり、衝突頻度が高くなり、低エネルギーで基板に製膜されるため、磁気記録媒体の面内方向の保護層の均一性は高くなる。したがって、特に端部を含む外周部分の耐腐食性が向上するが、密度が低く軟質な膜となってしまうため、耐摩耗性が劣化してしまう。したがって、耐摩耗性および耐腐食性を向上させつつ、保護層を薄膜化することは困難であった。
このため、保護層の耐摩耗性および耐腐食性を向上させつつ、保護層を薄膜化することが課題となっていた。そこで、かかる課題を解決するために、発明者が鋭意検討した結果、保護層を成膜する際に、CVD法における雰囲気の圧力を制御することで、保護層の耐腐食性を向上させ、かつ保護層の表面の硬度の向上を図ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち上記課題を解決するために、本発明の他の代表的な構成は、基板上に、磁気記録層と、ダイヤモンドライクカーボンを含む保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体であって、ラマン分光法におけるグラファイトカーボンに起因するGピークの面積強度をIgと、ダイヤモンドライクカーボンに起因するDピークの面積強度をIdと、Gピークの蛍光を含んだバックグラウンド強度をBと、Gピークの蛍光を除いたピーク強度をAとした場合、保護層のラマン分光法による測定結果が、Id/Igが2.20〜2.45であり、B/Aが1.45〜1.60であり、Id/IgをX、B/AをYとした場合、Y/Xが0.7〜0.8であることを特徴とする。また、上記保護層の膜厚は5.0nm以下であってもよい。
磁気記録層を成膜する磁気記録層成膜工程と、CVD法を用いて保護層を成膜する際に、まず第1圧力の雰囲気で成膜し、次に当該第1圧力未満の圧力である第2圧力の雰囲気で成膜することで、上記構成を有する保護層を備える垂直磁気記録媒体が得られる。
したがって、保護層におけるラマン分光法による測定結果が、Id/Igが2.20〜2.45であり、B/Aが1.45〜1.60であり、Id/IgをX、B/AをYとした場合、Y/Xが0.7〜0.8に設定することができ、コロージョン発生の抑制(耐腐食性の向上)と耐摩耗性を向上させつつ、保護層の薄膜化を図ることが可能となる。ここで、B/Aとは、ラマン分光法を用いて保護層を分析した際のグラファイトに起因するGピークの蛍光を含んだバックグラウンド強度(B)と蛍光を除いたピーク強度(A)との比である。B/Aは、保護層の炭素と水素とのポリマー性結合の割合を示しており、B/Aが大きいほど水素含有量が多いということである。すなわち、B/Aが低いほど、保護層にDLCを多く含んでいることになる。
当該磁気記録媒体の表面に約3%の硝酸を滴下し、約1時間室温で放置した後に、当該硝酸に含まれるCoは、0.2ng/ml以下であるとよい。
磁気記録媒体の表面に約3%の硝酸を滴下し、約1時間室温で放置すると、当該硝酸中に磁気記録層に含まれるCoが溶出する。本発明にかかる磁気記録媒体では、上記保護層を備えているため、媒体表面からのCoの溶出を0.1ng/ml以下に抑えることが可能となる。すなわち、耐腐食性を向上させることができる。
上記課題を解決するために、本発明の他の代表的な構成は、基板上に、磁気記録層と、ダイヤモンドライクカーボンを含む保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体の製造方法であって、磁気記録層を成膜する磁気記録層成膜工程と、CVD(Chemical Vapour Deposition)法を用いて保護層を成膜する保護層成膜工程と、を含み、保護層成膜工程では、第1圧力の雰囲気で成膜した後に当該第1圧力未満の圧力である第2圧力の雰囲気で保護層を成膜し、第1圧力で成膜した保護層の膜厚をM、第2圧力で成膜した際の保護層の膜厚をNとした場合、M/Nが0.25〜1であることを特徴とする。また、上記第1圧力は、第2圧力よりも2Pa以上高い圧力であるとよい。
保護層成膜工程において、保護層の下部を成膜する際の圧力(第1圧力)よりも上部を成膜する際の圧力(第2圧力)を低くする構成により、第1圧力で磁気記録媒体の面内方向の保護層の均一性は高くし、第2圧力で成膜することにより、下部と比較して硬度の高い層を上部に形成することができる。
CVD法においては、雰囲気の圧力が高いほど平均自由行程が短くなるすなわち衝突頻度が高くなる。つまり、雰囲気の圧力が高いほど、プラズマとなった気体は、衝突を繰り返すことでエネルギーを消失して、基板の表面へと到達する。したがって、雰囲気の圧力を高くすることによって、プラズマとなった気体が基板表面を均一にかつ端部まで覆うため、被覆性が向上し耐腐食性を確保することができる。そして、圧力を低下させてさらに保護層を成膜する構成により、保護層の上部(表面)を高密度で硬度に形成することが可能となる。
したがって、上記構成で垂直磁気記録媒体を製造することにより、保護層のラマン分光法による測定結果が、Id/Igが2.20〜2.45であり、B/Aが1.45〜1.60であり、Id/IgをX、B/AをYとした場合、Y/Xが0.7〜0.8に設定することができる。
上述した磁気記録媒体の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該磁気記録媒体の製造方法にも適用可能である。
更に、上記課題を解決するために、本発明の他の代表的な構成は、基板上に少なくとも磁気記録層と炭素系保護層が順次設けられた磁気記録媒体の製造方法であって、炭素系保護層を形成するときのチャンバ内のガス流量とガス圧との関係が、ガス圧(単位:Pa)に対するガス流量(単位:sccm)の比(ガス流量/ガス圧)が75(sccm/Pa)以上であることを特徴とする。
炭素系保護層を形成するときのチャンバ内のガス圧が、1〜3Paの範囲であるとよい。また炭素系保護層は、プラズマCVD法により形成されるとよい。好ましくは、炭素系保護層の膜厚が5nm以下であるとよい。
磁気記録媒体は、起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載され、5nm以下のヘッド浮上量の下で使用される磁気記録媒体であるとよい。
炭素系保護層は、ラマン分光法におけるグラファイトカーボンに起因するGピークの面積強度Igと、ダイヤモンドライクカーボンに起因するDピークの面積強度Idとの比であるId/Igが、2.4以下であるとよい。
上記構成によれば、薄膜化してもコロージョン耐性や金属イオン耐溶出性とともに十分な機械的強度を有する保護層を備えた磁気記録媒体の製造方法を提供することができる。これによって、磁気的スペーシングのより一層の低減を実現でき、しかも近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量のもとでも、また用途の多様化に伴う非常に厳しい環境耐性のもとでも高耐久性、高信頼性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
本発明にかかる磁気記録媒体の製造方法は、高い保磁力を維持したまま、摺動耐性や腐食耐性等の耐久性を向上させた保護層を備えることが可能となる。
第1実施形態にかかる磁気記録媒体としての垂直磁気記録媒体の構成を説明する図である。 保護層成膜工程における、CVDチャンバ内の圧力変化およびバイアス変化を説明するための説明図である。 実施例と比較例を比較した比較図である。 保護層のDh/Ghと腐蝕耐性を説明するための説明図である。 保護層のB/Aとスクラッチテストを説明するための説明図である。 保護層の膜厚とDh/Ghの関係および保護層の膜厚とB/Aの関係を説明するための説明図である。 実施例と比較例の評価を説明する図である。 ラマンスペクトルのイメージを説明するための説明図である。 実施例と比較例をラマン分光法によって測定した測定結果を示す図である。 実施例と比較例に対してCo溶出試験を行った結果を示す図である。 摺動耐性試験の結果を説明するための説明図である。 保護層を2Paで成膜する割合と、4Paで成膜する割合を変化させてCo溶出試験を行った結果を説明するための説明図である。 第3実施形態にかかる磁気記録媒体としての垂直磁気記録媒体の構成を説明する図である。 第3実施形態にかかる実施例および比較例における保護層の成膜条件と評価を示す図である。 図14に示す実施例および比較例の成膜条件によるCo溶出量テスト結果の変化を示す図である。 図14に示す実施例および比較例の成膜条件によるピンオンテスト結果の変化を示す図である。
100…垂直磁気記録媒体、110…ディスク基板、112…付着層、114…軟磁性層、114a…第1軟磁性層、114b…スペーサ層、114c…第2軟磁性層、116…前下地層、118…下地層、118a…第1下地層、118b…第2下地層、120…非磁性グラニュラー層、122…磁気記録層、122a…第1磁気記録層、122b…第2磁気記録層、123…分断層、124…補助記録層、126…保護層、128…潤滑層、200…垂直磁気記録媒体
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体の実施形態について説明する。図1は、第1実施形態にかかる磁気記録媒体としての垂直磁気記録媒体100の構成を説明する図である。図1に示す垂直磁気記録媒体100は、ディスク基板110、付着層112、第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114c、前下地層116、第1下地層118a、第2下地層118b、非磁性グラニュラー層120、第1磁気記録層122a、第2磁気記録層122b、補助記録層124、保護層126、潤滑層128で構成されている。なお第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114cは、あわせて軟磁性層114を構成する。第1下地層118aと第2下地層118bはあわせて下地層118を構成する。第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122bとはあわせて磁気記録層122を構成する。
[基板成型工程]
ディスク基板110は、アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円板状に成型したガラスディスクを用いることができる。なおガラスディスクの種類、サイズ、厚さ等は特に制限されない。ガラスディスクの材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性のディスク基板110を得ることができる。なお、ディスク基板110主表面の表面粗さはRmaxで2.18nm以下、Raで0.3nm以下であることが好ましい。
[成膜工程]
上述した基板成型工程で得られたディスク基板110上に、DCマグネトロンスパッタリング法にて付着層112、軟磁性層114、前下地層116、下地層118、非磁性グラニュラー層120、磁気記録層122(磁気記録層成膜工程)、補助記録層124(補助記録層成膜工程)を順次成膜を行い、保護層126はCVD法により成膜する(保護層成膜工程)。この後、潤滑層128をディップコート法により成膜する(潤滑層成膜工程)。なお、生産性が高いという点で、インライン型成膜方法を用いることも好ましい。以下、各層の構成および製造方法について説明する。
付着層112はディスク基板110に接して形成され、この上に成膜される軟磁性層114とディスク基板110との剥離強度を高める機能と、この上に成膜される各層の結晶グレインを微細化及び均一化させる機能を備えている。付着層112は、ディスク基板110がアモルファスガラスからなる場合、そのアモルファスガラス表面に対応させる為にアモルファス(非晶質)の合金膜とすることが好ましい。
付着層112としては、例えばCrTi系非晶質層、CoW系非晶質層、CrW系非晶質層、CrTa系非晶質層、CrNb系非晶質層から選択することができる。中でもCrTi系合金膜は、微結晶を含むアモルファス金属膜を形成するので特に好ましい。付着層112は単一材料からなる単層でも良いが、複数層を積層して形成してもよい。
軟磁性層114は、垂直磁気記録方式において記録層に垂直方向に磁束を通過させるために、記録時に一時的に磁路を形成する層である。軟磁性層114は第1軟磁性層114aと第2軟磁性層114cの間に非磁性のスペーサ層114bを介在させることによって、AFC(Antiferro-magnetic exchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成することができる。これにより軟磁性層114の磁化方向を高い精度で磁路(磁気回路)に沿って整列させることができ、磁化方向の垂直成分が極めて少なくなるため、軟磁性層114から生じるノイズを低減することができる。第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成としては、CoTaZrなどのコバルト系合金、CoCrFeB、CoFeTaZr、CoFeTaZrAlCr、CoFeNiTaZrなどのCo−Fe系合金、[Ni−Fe/Sn]n多層構造のようなNi−Fe系合金などを用いることができる。またスペーサ層の組成は例えばRuとすることができる。
なお、軟磁性層114の膜厚は、構造及び磁気ヘッドの構造や特性によっても異なるが、全体で15nm〜100nmであることが望ましい。なお、上下各層(第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114c)の膜厚については、記録再生の最適化のために多少差をつけることもあるが、概ね同じ膜厚とするのが望ましい。
前下地層116は非磁性の合金層であり、軟磁性層114を防護する作用と、この上に成膜される下地層118に含まれる六方最密充填構造(hcp構造)の磁化容易軸をディスク垂直方向に配向させる機能を備える。前下地層116は面心立方構造(fcc構造)の(111)面がディスク基板110の主表面と平行となっていることが好ましい。また前下地層116は、これらの結晶構造とアモルファスとが混在した構成としてもよい。前下地層116の材質としては、Ni、Cu、Pt、Pd、Zr、Hf、Nb、Taから選択することができる。さらにこれらの金属を主成分とし、Ti、V、Cr、Mo、Wのいずれか1つ以上の添加元素を含む合金としてもよい。例えばfcc構造を採る元素としてはNiW、CuW、CuCrを好適に選択することができる。なお、前下地層116の膜厚は、下地層118の結晶成長の制御を行うのに必要最小限の膜厚とすることが望ましい。厚すぎる場合には、信号の書き込み能力を低下させてしまう原因となる。
下地層118は、磁気記録層122の結晶配向性(結晶配向を基板面に対して垂直方向に配向させる)、結晶粒径、及び粒界偏析を好適に制御するために用いられる。かかる下地層118はhcp構造であって、磁気記録層122のCoのhcp構造の結晶を、結晶軸(c軸)を垂直方向に配向するよう制御しグラニュラー構造として成長させる作用を有している。したがって、下地層118の結晶配向性が高いほど、すなわち下地層118の結晶の(0001)面がディスク基板110の主表面と平行になっているほど、磁気記録層122の配向性を向上させることができる。下地層118の材質としてはRuが代表的であるが、その他に、RuCr、RuCoから選択することができる。Ruはhcp構造をとり、また結晶の格子間隔がCoと近いため、Coを主成分とする磁気記録層122を良好に配向させることができる。
下地層118をRuとした場合において、スパッタ時のガス圧を変更することによりRuからなる2層構造とすることができる。具体的には、下層側の第1下地層118aを形成する際にはArのガス圧を所定圧力、すなわち低圧にし、上層側の第2下地層118bを形成する際には、下層側の第1下地層118aを形成するときよりもArのガス圧を高くする、すなわち高圧にする。これにより、第1下地層118aによる磁気記録層122の結晶配向性の向上、および第2下地層118bによる磁気記録層122の磁性粒子の粒径の微細化が可能となる。
また、ガス圧を高くするとスパッタリングされるプラズマイオンの平均自由行程が短くなるため、成膜速度が遅くなり、皮膜が粗になるため、Ruの結晶粒子の分離微細化を促進することができ、Coの微細化も可能となる。なお、本実施形態のように低ガス圧プロセスと高ガス圧プロセスによる積層構造の場合、同じ材料の組合わせはもちろん、異種材料を組合わせることもできる。
さらに、下地層118のRuに酸素を微少量含有させてもよい。これによりさらにRuの結晶粒子の分離微細化を促進することができ、磁気記録層122のさらなる孤立化と微細化を図ることができる。なお酸素はリアクティブスパッタによって含有させてもよいが、スパッタリング成膜する際に酸素を含有するターゲットを用いることが好ましい。
なお、本実施形態においては下地層をRuから構成したが、これに限定するものではない。下地層の材料としては、面心立方(fcc)構造あるいは六方最密充填(hcp)構造を有する単体あるいは合金を好適に用いることができ、例えばPd、Pt、Tiやそれらを含む合金を例示することができる。
非磁性グラニュラー層120はグラニュラー構造を有する非磁性の層である。下地層118のhcp結晶構造の上に非磁性のグラニュラー層を形成し、この上に第1磁気記録層122a(または磁気記録層122)のグラニュラー層を成長させることにより、磁性のグラニュラー層を初期成長の段階(立ち上がり)から分離させる作用を有している。これにより、磁気記録層122の磁性粒子の孤立化を促進することができる。非磁性グラニュラー層120の組成は、Co系合金からなる非磁性の結晶粒子の間に、非磁性物質を偏析させて粒界を形成することにより、グラニュラー構造とすることができる。
本実施形態においては、かかる非磁性グラニュラー層120にCoCr−SiOを用いる。これにより、Co系合金(非磁性の結晶粒子)の間にSiO(非磁性物質)が偏析して粒界を形成し、非磁性グラニュラー層120がグラニュラー構造となる。なお、CoCr−SiOは一例であり、これに限定されるものではない。他には、CoCrRu−SiOを好適に用いることができ、さらにRuに代えてRh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Au(金)も利用することができる。また非磁性物質とは、磁性粒(磁性グレイン)間の交換相互作用が抑制、または、遮断されるように、磁性粒の周囲に粒界部を形成しうる物質であって、コバルト(Co)と固溶しない非磁性物質であればよい。例えば酸化珪素(SiOx)、酸化クロム(Cr)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコン(ZrO)、酸化タンタル(Ta)を例示できる。
なお本実施形態では、下地層188(第2下地層188b)の上に非磁性グラニュラー層120を設けているが、これに限定されるものではなく、非磁性グラニュラー層120を設けずに垂直磁気記録媒体100を構成することも可能である。
磁気記録層122は、Co系合金、Fe系合金、Ni系合金から選択される硬磁性体の磁性粒の周囲に非磁性物質を偏析させて粒界を形成した柱状のグラニュラー構造を有した強磁性層である。この磁性粒は、非磁性グラニュラー層120を設けることにより、そのグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長することができる。本実施形態では組成および膜厚の異なる第1磁気記録層122aと、第2磁気記録層122bとから構成されている。第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122bは、いずれも非磁性物質としてはSiO、Cr、TiO、B、Fe等の酸化物や、BN等の窒化物、B等の炭化物を好適に用いることができる。
本実施形態では、第1磁気記録層122aにCoCrPt−Crを用いる。CoCrPt−Crは、CoCrPtからなる磁性粒(グレイン)の周囲に、非磁性物質であるCrおよびCr(酸化物)が偏析して粒界を形成し、磁性粒が柱状に成長したグラニュラー構造を形成した。この磁性粒は、非磁性グラニュラー層のグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長した。
また第2磁気記録層122bには、CoCrPt−SiO−TiOを用いる。第2磁気記録層122bにおいても、CoCrPtからなる磁性粒(グレイン)の周囲に非磁性物質であるCrおよびSiO、TiO(複合酸化物)が偏析して粒界を形成し、磁性粒が柱状に成長したグラニュラー構造を形成した。
なお、上記に示した第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122bに用いた物質は一例であり、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122bで異なる材料(ターゲット)であるが、これに限定されず組成や種類が同じ材料であってもよい。非磁性領域を形成するための非磁性物質としては、例えば、Si、Ti、Co等の元素や、酸化珪素(SiO)、酸化クロム(Cr)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコン(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化コバルト(CoOまたはCo)、酸化鉄(Fe)、酸化ボロン(B)等の酸化物を例示できる。また、BN等の窒化物、B等の炭化物も好適に用いることができる。
さらに本実施形態では、第1磁気記録層122aにおいて1種類の、第2磁気記録層122bにおいて2種類の非磁性物質(酸化物)を用いているが、これに限定されるものではなく、第1磁気記録層122aまたは第2磁気記録層122bのいずれかまたは両方において2種類以上の非磁性物質を複合して用いることも可能である。このとき含有する非磁性物質の種類には限定がないが、本実施形態の如く特にSiOおよびTiOを含むことが好ましい。したがって、本実施形態とは異なり、磁気記録層122が1層のみで構成される場合、かかる磁気記録層122はCoCrPt−SiO−TiOからなることが好ましい。
なお、磁気記録層122の膜厚は、例えば20nm以下であることが好ましい。また、磁気記録層122は、必ずしも複数の層から構成される必要はなく、単層であってもよい。
補助記録層124は基板主表面の面内方向に磁気的にほぼ連続した磁性層である。補助記録層124は磁気記録層122に対して磁気的相互作用を有するように、隣接または近接している必要がある。補助記録層124の材質としては、例えばCoCrPt、CoCrPtB、またはこれらに微少量の酸化物を含有させて構成することができる。補助記録層124は逆磁区核形成磁界Hnの調整、保磁力Hcの調整を行い、これにより耐熱揺らぎ特性、OW特性、およびSNRの改善を図ることを目的としている。この目的を達成するために、補助記録層124は垂直磁気異方性Kuおよび飽和磁化Msが高いことが望ましい。
なお、「磁気的に連続している」とは磁性が連続していることを意味している。「ほぼ連続している」とは、補助記録層124全体で観察すれば一つの磁石ではなく、結晶粒子の粒界などによって磁性が不連続となっていてもよいことを意味している。粒界は結晶の不連続のみではなく、Crが偏析していてもよく、さらに微少量の酸化物を含有させて偏析させても良い。ただし補助記録層124に酸化物を含有する粒界を形成した場合であっても、磁気記録層122の粒界よりも面積が小さい(酸化物の含有量が少ない)ことが好ましい。補助記録層124の機能と作用については必ずしも明確ではないが、磁気記録層122のグラニュラー磁性粒と磁気的相互作用を有する(交換結合を行う)ことによってHnおよびHcを調整することができ、耐熱揺らぎ特性およびSNRを向上させていると考えられる。またグラニュラー磁性粒と接続する結晶粒子(磁気的相互作用を有する結晶粒子)がグラニュラー磁性粒の断面よりも広面積となるため磁気ヘッドから多くの磁束を受けて磁化反転しやすくなり、全体のOW特性を向上させるものと考えられる。
なお補助記録層124として、単一の層ではなく、高い垂直磁気異方性かつ高い飽和磁化Msを示す薄膜を形成するCGC構造(Coupled Granular Continuous)としてもよい。なおCGC構造は、グラニュラー構造を有する磁気記録層と、PdやPtなどの非磁性物質からなる薄膜のカップリング制御層と、CoBとPdとの薄膜を積層した交互積層膜からなる交換エネルギー制御層とから構成することができる。
保護層126は、真空を保ったままカーボンをCVD法により成膜して形成する。本実施形態において、保護層126は、水素化カーボンで構成されている。保護層126は、磁気ヘッドの衝撃から垂直磁気記録媒体100を防護するための層であり、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)を含んで構成される。したがって、緻密で耐久性のある保護層126とすることができる。
一般にCVD法によって成膜されたカーボンはスパッタ法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に垂直磁気記録媒体100を防護することができる。
本実施形態において、保護層126を成膜する保護層成膜工程は、第1圧力の雰囲気で成膜した後に第2圧力の雰囲気で保護層126を成膜し、第1圧力は、第2圧力以上である。
保護層126の下部を成膜する際の圧力(第1圧力)よりも上部を成膜する際の圧力(第2圧力)を低くする構成により、保護層126を成膜する前に成膜された層(本実施形態では補助記録層124)に、ダメージを与えることのない圧力(第1圧力)で保護層126を成膜しつつ、下部と比較して硬度の高い層を上部に成膜することができる。
CVD法においては、雰囲気の圧力が高いほど平均自由行程が短くなり、プラズマイオン同士の衝突頻度が高くなる。つまり、雰囲気の圧力が高いほど、プラズマとなった気体は、衝突を繰り返すことでエネルギーを消失して、ディスク基板110の表面へと到達する。したがって、雰囲気の圧力を高くすることによって、保護層126を成膜する前に成膜された層(本実施形態では補助記録層124)に、ダメージを与えることのない圧力で保護層126を成膜することができる。そして、圧力を低下させてさらに保護層126を成膜する構成により、保護層126の上部(表面)を高密度で硬度に形成することが可能となる。
図2は、保護層成膜工程における、CVDチャンバ内の圧力変化およびバイアス変化を説明するための説明図である。本実施形態の保護層成膜工程は、CVDチャンバを変えずに同一のCVDチャンバで雰囲気圧力を変化させて成膜を行う。
図2に示すように、まず、チャンバ内の圧力を第1圧力になるまで気体(本実施形態ではエチレン(C))を導入し、着火(高周波を引加した電極間で放電させること)することでプラズマを発生させる。この間は、チャンバ内の雰囲気の圧力が安定しないため、成膜を行わず待機する。したがって、この際の基板へのバイアス電圧を印加は行わない。
その後、チャンバ内の雰囲気圧力が第1圧力に達し安定したら、補助記録層124まで成膜した基板にバイアス電圧(負電圧)を印加しながら保護層126を成膜する。
そして、基板に印加したバイアス電圧を下げた後、気体の導入量を下げることでチャンバ内の圧力を第2圧力まで低下させ、さらに保護層126の成膜を行う。ここで、第1圧力から第2圧力へ雰囲気の圧力を低下させる際には、基板に印加したバイアス電圧を下げる。これにより、圧力が安定しない状態での成膜を停止すること可能となる。また、雰囲気の圧力が第2圧力に維持された状態で保護層126の成膜を再開する構成により、安定して成膜を行うことができる。
本実施形態では、保護層126を成膜した後さらに窒化処理工程を遂行する。窒化処理工程は、チャンバ内に窒素ガスを導入して、磁気記録媒体に高周波バイアスを印加し、窒素を保護層表面にドープする方法で行う。なお窒化炭素を用いたCVD法やスパッタリング法によって窒化炭素膜を形成してもよい。
保護層成膜工程の後に、保護層126を窒化処理する窒化処理工程を含む構成により、保護層126の上部すなわち潤滑層128を成膜する面に窒素を含有させることができる。
潤滑層128は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜する。PFPEは長い鎖状の分子構造を有し、末端に水酸基(OH)を配している。PFPEの末端に配される水酸基は保護層126の表面に存在する窒素と高い親和性がある。したがって、本実施形態にかかる保護層成膜工程および窒化処理工程を含むことにより保護層126の表面に窒素を含有させることが可能となり、潤滑層128の保護層126に対する付着率(BR)を向上させることができる。この潤滑層128の作用により、垂直磁気記録媒体100の表面に磁気ヘッドが接触しても、保護層126の損傷や欠損を防止することができる。
(実施例と評価)
ディスク基板110上に、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、付着層112から補助記録層124まで順次成膜を行った。付着層112は、CrTiとした。軟磁性層114は、第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成はCoFeTaZrとし、スペーサ層114bの組成はRuとした。前下地層116の組成はfcc構造のNiW合金とした。下地層118は、第1下地層118aは低圧Ar下でRuを成膜し、第2下地層118bは高圧Ar下でRuを成膜した。非磁性グラニュラー層120の組成は非磁性のCoCr−SiOとした。第1磁気記録層122aの組成は、CoCrPt−Crとし、第2磁気記録層122bの組成は、CoCrPt−SiO−TiOとした。補助記録層124の組成はCoCrPtBとした。保護層126はCVD法によりCを用いて成膜し、同一チャンバ内で、窒素を導入して窒化処理を行った。潤滑層128はディップコート法によりPFPEを用いて1.3nm形成した。
ここで実施例11として、保護層126を成膜する保護層成膜工程において、2PaのC雰囲気で成膜した後に、0.7PaのC雰囲気で成膜を行った垂直磁気記録媒体100を作成した。また、比較例として、保護層126を成膜する保護層成膜工程において、2PaのC雰囲気でのみ成膜を行った垂直磁気記録媒体(以下、比較例11と称する)と、0.7PaのC雰囲気でのみ成膜を行った垂直磁気記録媒体(以下、比較例12と称する)とを作成した。実施例、比較例ともに、ディスク基板110に印加したバイアスは、−400Vである。
図3は、実施例と比較例を比較した図であり、特に図3(a)は、スクラッチテストの結果を、図3(b)は腐蝕耐性試験の結果を示す。ここで、腐蝕耐性試験は、室温85℃、湿度80%の環境下に垂直磁気記録媒体100を約1週間放置した時に直磁気記録媒体100表面上に析出したCoのスポット数を検出し、所定数以上のものを不良品(図3(b)中×で示す)とし、所定数以下のものを良品(図3(b)中○で示す)と判定した。
図3(a)に示すように、スクラッチテストを行った結果、比較例11の保護層は、少なくとも膜厚が4.0nm程度ないとスクラッチを生じてしまう(図3(a)中×で示す)ことが分かった。一方、実施例11の保護層126は、比較例12と同様に、3.5nm以上あればスクラッチが発生しない(図3(a)中○で示す)。
図3(b)に示すように、腐蝕耐性試験を行った結果、比較例12の保護層は、少なくとも膜厚が5.0nm程度ないとCoのスポットの析出数が所定数を超えてしまう(図3(b)中×で示す)ことが分かった。一方、実施例11の保護層126は、3.5nm以上あればCoのスポットの析出数が所定数以下である。
図4は、保護層のDh/Ghと腐蝕耐性を説明するための説明図である。ここで、Dh/Ghとは、波長514.5nmのアルゴンイオンレーザ光により保護層126を励起して得られる波数900cm−1〜波数1800cm−1におけるラマンスペクトルから蛍光を除いたスペクトルの1350cm−1付近に現れるDピークDh(DLCに起因するピーク)と、1520cm−1付近に現れるGピークGh(アモルファスグラファイトカーボンに起因するピーク)とをガウス関数により波形分離したときのピーク比である。
図4に示すように、実施例11はDh/Ghが1.02以下と、比較例12よりもDh/Ghは低いが、Coのスポットの析出数が所定値以下である。一方、比較例11は、Coのスポットの析出数は所定値以下であるが、Dh/Ghは実施例11よりも低い。したがって実施例11は、DLCを比較例12よりも少なく、比較例11よりも多く含んでいることがわかる。したがって、実施例11は、比較例12よりは硬度が低いが、比較例11より硬い保護層126を有している。
図5は、保護層のB/Aとスクラッチテストを説明するための説明図である。ここで、B/Aとは、ラマン分光法を用いて保護層126を分析した際のグラファイトに起因するGピークの蛍光を含んだバックグラウンド強度(B)と蛍光を除いたピーク強度(A)との比である。B/Aは、保護層126の炭素と水素とのポリマー性結合の割合を示しており、B/Aが大きいほど水素含有量が多いということである。すなわち、B/Aが低いほど、保護層126にDLCを多く含んでいることになる。
図5に示すように、実施例11は、比較例12よりもB/Aは高いが、スクラッチ数が所定値以下である。すなわち、実施例11は、比較例12ほどの硬度を有してはいないが、スクラッチテストでは問題がない程度の高い硬度を有している。
図6は、保護層の膜厚とDh/Ghの関係および保護層の膜厚とB/Aの関係を説明するための説明図である。図6(a)に示すように、実施例11は、保護層126の膜厚を薄くしてもDh/Ghが1.05以下となり、比較例12と同等の高いDh/Ghを有することが分かる。
一方、図6(b)に示すように実施例11の保護層126のB/Aは、1.5以上となり、比較例12および比較例11と同等であるため、保護層126のDLCの量に相違はない。
図7は、実施例と比較例の評価を説明する図である。図7に示すように、実施例11では、比較例11が有する高腐蝕耐性を有し、比較例12が有する耐摺動性(スクラッチテストの結果)および高いDh/Ghを兼ね備えることができる。
以上説明したように、本実施例にかかる磁気記録媒体の製造方法によれば、高い保磁力を維持したまま、摺動耐性や腐食耐性等の耐久性を向上させた保護層126を備えることが可能となる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態にかかる垂直磁気記録媒体およびその製造方法の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と第2実施形態との違いは保護層126のみである。このため、以下に説明する第2実施形態にかかる垂直磁気記録媒体およびその製造方法の実施形態では、保護層126のみの詳細を説明し、その後にその実施例について説明する。
第2実施形態にかかる保護層126は、ラマン分光法による測定結果が、Id/Igが2.20〜2.45であり、B/Aが1.45〜1.60であり、Id/IgをX、B/AをYとした場合、Y/Xが0.7〜0.8である。
また第2実施形態において、保護層126を成膜する保護層成膜工程は、第1圧力の雰囲気で成膜した後に第2圧力の雰囲気で保護層126を成膜し、第1圧力は、第2圧力よりも2Pa以上高い圧力である。更に、第2実施形態では、保護層126の膜厚は5nm以下であり、第1圧力で成膜した保護層の膜厚をM、第2圧力で成膜した際の保護層の膜厚をNとした場合、M/Nが0.25〜1である。
保護層成膜工程において、保護層126の下部を成膜する際の圧力(第1圧力)よりも上部を成膜する際の圧力(第2圧力)を低くする構成により、第1圧力で垂直磁気記録媒体100の面内方向の保護層126の均一性を高くし、第2圧力で成膜することにより、下部と比較して硬度の高い層を上部に形成することができる。
第1実施形態と同様に、CVD法においては、雰囲気の圧力が高いほど平均自由行程が短くなるすなわち衝突頻度が高くなる。つまり、雰囲気の圧力が高いほど、プラズマとなった気体は、衝突を繰り返すことでエネルギーを消失して、ディスク基板110の表面へと到達する。したがって、雰囲気の圧力を高くすることによって、プラズマとなった気体がディスク基板110表面を均一にかつ端部まで覆うため、被覆性が向上し耐腐食性を確保することができる。そして、圧力を低下させてさらに保護層126を成膜する構成により、保護層126の上部(表面)を高密度で硬度に形成することが可能となる。
上記保護層成膜工程により、保護層126におけるラマン分光法による測定結果が、Id/Igが2.20〜2.45であり、B/Aが1.45〜1.60であり、Id/IgをX、B/AをYとした場合、Y/Xが0.7〜0.8に設定することができ、コロージョン発生の抑制(耐腐食性の向上)と耐摩耗性を向上させつつ、保護層の薄膜化を図ることが可能となる。
ここで、CVDチャンバ内の圧力を可変させる手段としては、チャンバに導入するガス流量を変化させたり、チャンバからの排気量を変化させたりすることが挙げられる。
また本実施形態において、保護層126の表面に約3%の硝酸を滴下し、約1時間室温で放置した後に、当該硝酸に含まれるCoは、0.1ng/ml以下である。保護層126の表面すなわち垂直磁気記録媒体100の表面に約3%の硝酸を滴下し、約1時間室温で放置すると、当該硝酸中に磁気記録層122もしくは補助記録層124に含まれるCoが溶出する。本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100では、上記保護層126を備えているため、媒体表面からのCoの溶出を0.2ng/ml以下に抑えることが可能となる。すなわち、耐腐食性を向上させることができる。
本実施形態では、保護層126を成膜した後さらに窒化処理工程を遂行する。窒化処理工程は、保護層成膜工程のCVDチャンバと同一のCVDチャンバで気体をエチレンから窒素に変更して行う。詳しくはチャンバ内に窒素を導入してプラズマ化し、基板に高周波バイアスをかけて窒素を保護層表面にドープする方法で行う。なお窒化炭素を用いたCVD法やスパッタリング法によって窒化炭素膜を形成してもよい。
(実施例と評価)
実施例21として、保護層126を成膜する保護層成膜工程において、4PaのC雰囲気で成膜した後に、2PaのC雰囲気で成膜を行った垂直磁気記録媒体100を作成した。また、ディスク基板110に印加したバイアスは、−400Vである。なお、実施例21の垂直磁気記録媒体100の製造工程については、第1実施形態と同様であるため記載を省略する。
図8は、ラマンスペクトルのイメージを説明するための説明図である。ここでは、保護層126の表面に波長が514.5nmのArイオンレーザーを照射し、900cm−1〜1800cm−1の波数帯に表れるラマン散乱によるストークス成分を観察し、ストークス散乱の振動数と入射レーザーの振動数の差であるラマンシフトをスペクトルとして測定している。ラマンスペクトル分析は通常、潤滑層128塗布(成膜)前に行うが、潤滑層128塗布後に測定しても構わない。潤滑層128塗布前後でラマンスペクトル分析を行ったところ、Dh/Gh値は前後どちらにおいても全く同じ値を示しており、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑層128のラマン分光分析への影響はないことが明らかとなった。
ラマンスペクトルの波数900cm−1から1800cm−1の範囲の内、蛍光によるバックグランドを直線近似で補正し、低波数側(1350cm−1付近をピークとする。以下Dピークと略す)と高波数側(1520cm−1付近をピークとする。以下Gピークと略す)とをガウス関数により波形分離したときの、DピークとGピークのピーク高さ(それぞれDh、Ghと略す)の比をDh/Ghとする。Dhは炭素の未結合手であるダングリングボンドによって周波数がシフトしたストークス成分であり、近距離秩序の高さを反映している。GhはGLC(Graphite like Carbon)によって周波数がシフトしたストークス成分である。Dh/Ghが高いほど近距離秩序が高くアモルファス・グラファイト成分が少なく、ダイヤモンドライク成分が多い、硬い被膜であるということができる。
また図8において、Gピークの蛍光を含んだバックグラウンド強度(B)と蛍光を除いたピーク強度(A)との比B/Aによって膜質を評価することができる。B/Aは、保護層126の炭素と水素とのポリマー性結合の割合を示しており、B/Aが大きいほど水素含有量が多いということができる。
更に図8において、Gピークの面積強度をIg、Dピークの面積強度をIdとすると、ピーク面積強度比Id/Igによって膜質を評価することができる。ピーク面積強度比Id/Igが大きい場合ほどグラファイト・アモルファス成分が少なく、秩序だったダイヤモンドライク成分が多い硬い被膜である(耐摩耗性が良好)ということができる。
図9は、実施例と比較例をラマン分光法によって測定した測定結果を示す図であり、図9(a)は、Id/Igを、図9(b)はB/Aを示す。ここで、保護層126を成膜する保護層成膜工程において2PaのC雰囲気でのみ成膜を行った垂直磁気記録媒体100を比較例21とした。
図9(a)に示すように、実施例21ではId/Igが2.20〜2.45の間に分布するのに対し、比較例21では、2.30以下となった。また図9(b)に示すように、実施例21ではB/Aが1.45〜1.60の間に分布するのに対し、比較例21では1.60以上となった。
図9の結果を纏めると、実施例21は、比較例21と比較してId/Igが高く、B/Aが低い。すなわち実施例21は、比較例21よりも多くDLCを含んでいることがわかる。したがって、実施例21のほうが、より硬い保護層126を備えていることがわかる。また、実施例21ではId/IgをX、B/AをYとした場合、Y/Xが0.7〜0.8である関係を満たしていることが分かる。
図10は、実施例と比較例に対してCo溶出試験を行った結果を示す図であり、保護層126を成膜する保護層成膜工程において、2PaのC雰囲気で成膜した後に、1PaのC雰囲気で成膜を行った垂直磁気記録媒体100を比較例22とした。
ここでは、実施例21および比較例22の表面に約3%の硝酸を約100μl滴下し、約1時間室温で放置した後、当該硝酸をICP(誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)質量分析装置で分析することによりCoの量を検出した。
図10に示すように、実施例21では、硝酸に含まれるCoすなわち溶出したCoは、0.2ng/ml以下であるのに対し、比較例22では、保護層126の膜厚を5nm以上にしなければ0.2ng/ml以上Coが溶出した。これにより、実施例21は比較例22と比較して、耐腐食性が高いことがわかる。
図11は、摺動耐性試験の結果を説明するための説明図である。図11では、保護層126を2Paで成膜する割合と、4Paで成膜する割合を変化させて摺動耐性試験を行った。図11中、2Paで成膜する割合が0%であるとは、保護層126をすべて4Paで成膜したということであり、2Paで成膜する割合が100%であるとは、保護層126をすべて2Paで成膜したということである。
図11に示すように、2Paで成膜する割合が75%である場合に、最も摺動耐性がよいことが分かる。これは、保護層126の総膜厚が5nmである場合、4Paで1.25nm、2Paで3.75nm成膜した場合に相当する。
図12は、保護層を2Paで成膜する割合と、4Paで成膜する割合を変化させてCo溶出試験を行った結果を説明するための説明図である。ここでも図11と同様に、2Paで成膜する割合が0%であるとは、保護層126をすべて4Paで成膜したということであり、2Paで成膜する割合が100%であるとは、保護層126をすべて2Paで成膜したということである。図12に示すように、4Paで成膜する割合が低下するほど、Coの溶出量が増加し、耐腐食性が悪化していることが分かる。
図11および図12の結果から、2Paで成膜する割合を50〜75%とし、4Paで成膜する割合を50〜25%とすることにより、耐衝撃性および耐腐食性を兼ね備えた保護層126を成膜することができる。すなわち、第1圧力としての4Paで成膜した保護層126の膜厚をM、第2圧力としての2Paで成膜した際の保護層126の膜厚をNとした場合、M/Nが0.25〜1を満たすことになる。
以上説明したように、本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100の保護層126によれば、保護層126を第1圧力で成膜することにより、面内方向の保護層126の均一性を高くし、耐腐食性を向上させることができ、第1圧力より低い圧力である第2圧力でさらに保護層126を成膜することにより、下部と比較して硬度の高い層を上部に形成することが可能となる。したがって、耐摩耗性と耐腐食性を兼ね備えつつ、薄膜化が可能な保護層126を有する垂直磁気記録媒体100を提供することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態にかかる垂直磁気記録媒体の製造方法について説明する。なお、第1実施形態と第3実施形態との主たる違いは保護層126の製造方法である。このため、以下に説明する第3実施形態にかかる垂直磁気記録媒体の製造方法では、保護層126のみについて詳細を説明し、その後にその実施例について説明する。
図13は、第3実施形態にかかる磁気記録媒体としての垂直磁気記録媒体200の構成を説明する図である。図13に示す垂直磁気記録媒体200は、ディスク基板110、付着層112、第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114c、前下地層116、第1下地層118a、第2下地層118b、第1磁気記録層122a、第2磁気記録層122b、分断層123、補助記録層124、保護層126、潤滑層128で構成されている。なお第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114cは、あわせて軟磁性層114を構成する。第1下地層118aと第2下地層118bはあわせて下地層118を構成する。第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122bとはあわせて磁気記録層122を構成する。
第1実施形態において詳述したように、磁気記録層の上方に保護層126(炭素系保護層)を設けることにより、磁気記録媒体上を浮上飛行する磁気ヘッドから磁気記録媒体表面を保護することができる。そして、第3実施形態にかかる垂直磁気記録媒体の製造方法では、保護層126を形成するときのチャンバ内のガス流量とガス圧との関係が、ガス圧(単位:Pa)に対するガス流量(単位:sccm)の比(ガス流量/ガス圧)が75(sccm/Pa)以上となるようにする。
例えば、ガス流量のみで圧力を変化させた場合、コロージョン耐性や金属イオン耐溶出性と機械的強度とは両立せず、どちらか一方が良くなると、他方が悪化してしまう。そこで、本実施形態においては、ガス流量とともに排気コンダクタンスを変化させることで、同一圧力でもガス流量を変化させることができる。すなわち、圧力を一定にするために、ガス流量の増加に従って排気速度を速くする。この方法によれば、ある圧力に対して、ガス流量及びガス排気速度が速いため、成膜チャンバ内に導入された原料ガスは短時間で排気される。
また、成膜チャンバ内に存在する不純物ガスの割合が減るため、相対的に不純物が少ないチャンバ雰囲気下におかれ、不純物の影響を相対的に小さくすることができる。これにより、不純物の取り込みが少なくなり、原料ガスがプラズマ中で分解された後にチャンバ内に滞在する時間は短くなる。つまり、成膜に寄与するプラズマで分解された原料は、時間が経ち再結合してエネルギーを失う頃には排気され、エネルギーの高い分解されたばかりのプラズマ生成物が中心となって膜が形成される。
すなわち、本実施形態のように、ガス圧(単位:Pa)に対するガス流量(単位:sccm)の比(ガス流量/ガス圧)が75(sccm/Pa)以上とする条件下で成膜を行うことにより、ある圧力に対してガス流量が増加することによって、より緻密な膜が形成されるため。たとえ薄膜化してもコロージョン耐性や金属イオン耐溶出性とともに十分な機械的強度を兼ね備えた保護膜を形成することができる。
また本実施形態において、保護層126を形成するときのチャンバ内のガス圧は、たとえば1〜3Paの範囲であることが好ましい。ガス圧があまり高いと、その圧力に対するガス流量を変化させても、チャンバ内での原料ガスおよび、プラズマ生成物同士の衝突により、再結合が起こりやすくなり、コロージョン耐性や金属イオン耐溶出性とともに十分な機械的強度を持つ膜が形成され難くなる。
更に、本実施形態において、保護層126は、プラズマCVD法により形成されることが好ましい。プラズマCVD法による成膜に使用する炭化水素系ガスとしては、例えばエチレンガスに代表される低級炭化水素系ガス(炭素数が1〜5程度)が好適に用いられる。また本実施形態にかかる製造方法により形成される保護層126の膜厚は、薄膜化の要請の観点から、5nm以下であることが好ましい。特に、2〜5nmの範囲であることが好ましい。2nm未満では、保護層としての性能が低下する場合がある。
なお、本実施形態においても保護層126を形成後、表面に窒素プラズマを照射するなどの方法によって窒化処理を施すことが好ましい。これにより、保護層126を、その潤滑層側に窒素を含有させ、磁気記録層122側に水素を含有させた組成傾斜層とすることができ、保護層126と、たとえば潤滑層128との密着性を好適に高めることが可能となる。
以上説明したように、第3実施形態にかかる垂直磁気記録媒体の製造方法によれば、薄膜化してもコロージョン耐性や金属イオン耐溶出性とともに十分な機械的強度を兼ね備えた保護層126を形成することができる。したがって、磁気的スペーシングのより一層の低減を実現でき、しかも近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの超低浮上量(5nmあるいはそれ以下)のもとで、また用途の多様化に伴う非常に厳しい環境耐性のもとでも高耐久性、高信頼性を有する磁気記録媒体が得られる。
また本実施形態の磁気記録媒体は、特にLUL方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気記録媒体として好適である。LUL方式の導入に伴う磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、例えば5nm以下の超低浮上量においても磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきており、低浮上量のもとで高い耐久性及び信頼性を有する本実施形態の磁気記録媒体は好適である。
更に、第3実施形態では磁気記録層122と補助記録層124との間に、分断層123(交換結合制御層とも称される)を有する。これにより、磁気記録層122と補助記録層124との間の交換結合の強さを好適に制御して記録再生特性を最適化することができる。分断層123としては、例えば、Ruなどが好適に用いられる。
なお、本実施形態においては、第1実施形態の垂直磁気記録媒体100が備えていた非磁性グラニュラー層120を設けていない。これは、垂直磁気記録媒体には非磁性グラニュラー層120を必ずしも設ける必要がないからであるが、かかる例に限定するものではなく、第1実施形態と同様に非磁性グラニュラー層を設けることも可能である。
(実施例と評価)
以下、実施例と比較例との評価を具体的に説明する。まず実施例および比較例の構成について説明した後に、それらの評価について詳述する。図14は、第3実施形態にかかる実施例および比較例における保護層の成膜条件と評価を示す図である。
(実施例31)
アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円盤状に成型し、ガラスディスクを作製した。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性のディスク基板110を得た。ディスク直径は65mmである。このガラス基板の主表面の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で測定したところ、Rmaxが2.18nm、Raが0.18nmという平滑な表面形状であった。なお、Rmax及びRaは、日本工業規格(JIS)に従う。
次に、枚葉式静止対向スパッタ装置を用いて、上記ディスク基板110上に、DCマグネトロンスパッタリング法にて、順次、以下の各層の成膜を行った。なお、以下の説明において、各層(各材料)の記述における数値は組成を示すものとする。
まず、付着層112として、10nmのCr−45Ti層を成膜した。次に、軟磁性層114として、スペーサ層114b(非磁性層)を挟んで反強磁性交換結合する2層の軟磁性層の積層膜を成膜した。すなわち、最初に1層目の第1軟磁性層114aとして、25nmの(Co60Fe40)92−Ta3−Zr5層を成膜し、次にスペーサ層114bとして、0.5nmのRu層を成膜し、さらに2層目の第2軟磁性層114cとして、1層目の第1軟磁性層114aと同じ、(Co60Fe40)92−Ta3−Zr5層を25nmに成膜した。そして、上記軟磁性層114上に、前下地層116として、5nmのNiW5層を成膜した。次に、下地層118として2層のRu層を成膜した。すなわち、第1下地層118aとして、Arガス圧0.7PaにてRuを12nm成膜し、第2下地層118bとして、Arガス圧4.5PaにてRuを12nm成膜した。
そして、下地層118の上に、磁気記録層122を成膜した。まず、第1磁気記録層122aとして、厚さが2nmである(Co-Cr20-Pt18)93−Cr7からなる層を、その上に、第2磁気記録層122bとして、厚さが9nmの(Co−Cr10−Pt18)87−SiO5−TiO5−CoO3を成膜した。その後、分断層123(交換結合制御層)として、0.3nmのRu層を成膜し、更にその上に補助記録層124として、7nmのCo-Cr18-Pt13-B5を成膜した。そして、補助記録層124の上に、エチレンガスを用いてCVD法により、保護層126(炭素系保護層)を形成した。このとき、エチレンガスをチャンバ内に75sccm流した状態で1Paとし、基板には−400Vのバイアスを印加した。保護層126の膜厚は4.5nmとした。続いて、形成した保護層126に対して窒素プラズマを曝露する窒化処理を行った。
このようにして保護層126を形成した垂直磁気記録媒体を洗浄した後、次に、上記保護層126の上に、パーフルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤をディップ法で塗布することにより潤滑層128を形成した。成膜後に、垂直磁気記録媒体を焼成炉内で110℃、60分間で加熱処理した。以上のようにして、実施例31の垂直磁気記録媒体200を得た。
(実施例32〜39)
保護層126を成膜するときの、チャンバ内に導入するエチレンガスの流量とガス圧を図14に示すようにそれぞれ変更したこと以外は、実施例31と同様にして、実施例32〜実施例39の垂直磁気記録媒体を得た。
(比較例31〜37)
保護層126を成膜するときの、チャンバ内に導入するエチレンガスの流量とガス圧を図14に示すようにそれぞれ変更したこと以外は、実施例31と同様にして、比較例31〜比較例37の垂直磁気記録媒体を得た。
(評価)
次に、以下の試験方法により、実施例31〜39および比較例31〜37の各磁気記録媒体の評価を行った。図15は、図14に示す実施例および比較例の成膜条件によるCo溶出量テスト結果の変化を示す図である。図16は、図14に示す実施例および比較例の成膜条件によるピンオンテスト結果の変化を示す図である。
[耐磨耗性評価]
保護層126の耐磨耗性を評価するためにピンオンテストを行った。ピンオンテストは、91.8rpmで回転させた垂直磁気記録媒体上の半径26mmの位置に30gの荷重で棒の先に固定させたボールを押し付けることで摺動させ、保護層126が破断するまでのパスカウントを測定することにより行った。パスカウントが高いほど保護層126の耐磨耗性が優れていると言える。
[金属イオン耐溶出性(耐腐食性)評価]
保護層126の耐腐食性を評価するため、垂直磁気記録媒体の表面に3%の硝酸100μLを各8点滴下し、約1時間室温で放置した後、当該8点を回収し、これら液滴の半径を測定して、これを1mLに定容する。これらの液滴をICP(誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)質量分析装置で金属成分を定量し、溶液濃度と滴下面積から垂直磁気記録媒体表面1m当たりのCo溶出量を算出した。溶出したCo量が少ないほど、保護層の耐腐食性が優れていると言える。
図14、図15、図16の結果から明らかなように、保護層126を形成するときのチャンバ内のガス圧に対するガス流量の比(ガス流量/ガス圧)が75(sccm/Pa)以上とした実施例31〜39の垂直磁気記録媒体においては、上記ガス流量/ガス圧比の増加に伴って、ピンオン試験の結果はわずかに改善が見られ、Co溶出量の顕著な減少が見られる。すなわち、本発明による垂直磁気記録媒体では、金属イオン耐溶出性やそれによるコロージョン耐性と機械的強度を兼ね備えた保護層126を形成できることが確認できた。ここで、比較例33および34、並びに実施例34、35および36から、コロージョン耐性と機械的強度を兼ね備えた場合におけるId/Igは2.4以下であった。
一方、保護層126を形成するときのチャンバ内のガス圧に対するガス流量の比(ガス流量/ガス圧)が75(sccm/Pa)未満である比較例31〜37の垂直磁気記録媒体においては、ピンオン試験、Co溶出量の変化は殆ど見られず、改善効果は確認できなかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態の保護層成膜工程において、基板に印加するバイアスを一定にしているが、これに限定されず、バイアスを変化させて印加することで、保護層の硬度を変えることもできる。
また、上述した実施形態では、磁気記録媒体として垂直磁気記録媒体を挙げて説明したが、本発明は、ディスクリート型、ビットパターン型等のパターンドメディア、面内磁気記録媒体にも好適に利用することができる。
本発明は、垂直磁気記録方式のHDD(ハードディスクドライブ)などに搭載される磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体として利用することができる。

Claims (17)

  1. 基板上に、磁気記録層と、保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記磁気記録層を成膜する磁気記録層成膜工程と、
    CVD(Chemical Vapour Deposition)法を用いて前記保護層を成膜する保護層成膜工程と、
    を含み、
    前記保護層成膜工程では、第1圧力の雰囲気で成膜した後に第2圧力の雰囲気で前記保護層を成膜し、
    前記第2圧力は、前記第1圧力未満であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 当該磁気記録媒体は垂直磁気記録媒体であって、
    前記保護層成膜工程の前に、前記基板の平面方向に磁気的にほぼ連続した補助記録層を成膜する補助記録層成膜工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  3. 前記保護層成膜工程の後さらに、
    前記保護層の表面を窒化処理する窒化処理工程と、
    前記潤滑層を成膜する潤滑層成膜工程と、
    を含み、
    前記窒化処理工程は、窒素を前記保護層にドープする方法、CVD法もしくはスパッタリング法で遂行されることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 前記保護層には、ダイヤモンドライクカーボンが含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 請求項1から4に記載の磁気記録媒体の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする磁気記録媒体。
  6. 基板上に少なくとも磁気記録層と、ダイヤモンドライクカーボンを含む保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体であって、
    ラマン分光法におけるグラファイトカーボンに起因するGピークの高さをGhと、ダイヤモンドライクカーボンに起因するDピークに起因するDピークの高さをDhと、前記Gピークの蛍光を含んだバックグラウンド強度をBと、前記Gピークの蛍光を除いたピーク強度をAとした場合、前記保護層のラマン分光法による測定結果が、Dh/Ghが1.05以下であり、B/Aが1.5以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  7. 基板上に、磁気記録層と、ダイヤモンドライクカーボンを含む保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体であって、
    ラマン分光法におけるグラファイトカーボンに起因するGピークの面積強度をIgと、ダイヤモンドライクカーボンに起因するDピークの面積強度をIdと、前記Gピークの蛍光を含んだバックグラウンド強度をBと、前記Gピークの蛍光を除いたピーク強度をAとした場合、前記保護層のラマン分光法による測定結果が、Id/Igが2.20〜2.45であり、B/Aが1.45〜1.60であり、Id/IgをX、B/AをYとした場合、Y/Xが0.7〜0.8であることを特徴とする磁気記録媒体。
  8. 前記保護層の膜厚は5.0nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体。
  9. 当該磁気記録媒体の表面に約3%の硝酸を滴下し、約1時間室温で放置した後に、該硝酸に含まれるCoは、0.2ng/ml以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の磁気記録媒体。
  10. 基板上に、磁気記録層と、ダイヤモンドライクカーボンを含む保護層と、をこの順に備える磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記磁気記録層を成膜する磁気記録層成膜工程と、
    CVD(Chemical Vapour Deposition)法を用いて前記保護層を成膜する保護層成膜工程と、
    を含み、
    前記保護層成膜工程では、第1圧力の雰囲気で成膜した後に該第1圧力未満の圧力である第2圧力の雰囲気で前記保護層を成膜し、
    前記第1圧力で成膜した前記保護層の膜厚をM、前記第2圧力で成膜した際の該保護層の膜厚をNとした場合、M/Nが0.25〜1であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  11. 前記第1圧力は、前記第2圧力よりも2Pa以上高い圧力であることを特徴とする請求項10に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  12. 基板上に少なくとも磁気記録層と炭素系保護層が順次設けられた磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記炭素系保護層を形成するときのチャンバ内のガス流量とガス圧との関係が、ガス圧(単位:Pa)に対するガス流量(単位:sccm)の比(ガス流量/ガス圧)が75(sccm/Pa)以上であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  13. 前記炭素系保護層を形成するときのチャンバ内のガス圧が、1〜3Paの範囲であることを特徴とする請求項12に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  14. 前記炭素系保護層は、プラズマCVD法により形成されることを特徴とする請求項12または13に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  15. 前記炭素系保護層の膜厚が5nm以下であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  16. 前記磁気記録媒体は、起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載され、5nm以下のヘッド浮上量の下で使用される磁気記録媒体であることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  17. 前記炭素系保護層は、ラマン分光法におけるグラファイトカーボンに起因するGピークの面積強度Igと、ダイヤモンドライクカーボンに起因するDピークの面積強度Idとの比であるId/Igが、2.4以下であることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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