JP5497320B2 - 磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はハードディスクドライブ(以下、HDDと略記する)などの磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクに関する。
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDDの面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスクにして、1枚当り250Gバイトを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような所要に応えるためには1平方インチ当り400Gビットを超える情報記録密度を実現することが求められる。HDD等に用いられる磁気ディスクにおいて高記録密度を達成するためには、情報信号の記録を担う磁気記録層を構成する磁性結晶粒子を微細化すると共に、その層厚を低減していく必要があった。ところが、従来より商業化されている面内磁気記録方式(長手磁気記録方式、水平磁気記録方式とも呼称される)の磁気ディスクの場合、磁性結晶粒子の微細化が進展した結果、超常磁性現象により記録信号の熱的安定性が損なわれ、記録信号が消失してしまう、熱揺らぎ現象が発生するようになり、磁気ディスクの高記録密度化への阻害要因となっていた。
この阻害要因を解決するために、近年、垂直磁気記録方式用の磁気記録媒体が提案されている。垂直磁気記録方式の場合では、面内磁気記録方式の場合とは異なり、磁気記録層の磁化容易軸は基板面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は面内記録方式に比べて、熱揺らぎ現象を抑制することができるので、高記録密度化に対して好適である。このような垂直磁気記録媒体としては、例えば特開2002-74648号公報に記載されたような、基板上に軟磁性体からなる軟磁性下地層と、硬磁性体からなる垂直磁気記録層を備える、いわゆる二層型垂直磁気記録ディスクが知られている。
ところで、従来の磁気ディスクは、磁気ディスクの耐久性、信頼性を確保するために、基板上に形成された磁気記録層の上に、保護層と潤滑層を設けている(例えば特許文献1等)。
特開2000−282238号公報
上述したように、最近のHDDでは400Gbit/inch以上の情報記録密度が要求されるようになってきたが、限られたディスク面積を有効に利用するために、HDDの起動停止機構が従来のCSS(ContactStart and Stop)方式に代えてLUL(Load Unload:ロードアンロード)方式のHDDが用いられるようになってきた。LUL方式では、HDDの停止時には、磁気ヘッドを磁気ディスクの外に位置するランプと呼ばれる傾斜台に退避させておき、起動動作時には磁気ディスクが回転開始した後に、磁気ヘッドをランプから磁気ディスク上に滑動させ、浮上飛行させて記録再生を行なう。停止動作時には磁気ヘッドを磁気ディスク外のランプに退避させたのち、磁気ディスクの回転を停止する。この一連の動作はLUL動作と呼ばれる。LUL方式のHDDに搭載される磁気ディスクでは、CSS方式のような磁気ヘッドとの接触摺動用領域(CSS領域)を設ける必要がなく、記録再生領域を拡大させることができ、高情報容量化にとって好ましいからである。
このような状況の下で情報記録密度を向上させるためには、磁気ヘッドの浮上量を低減させることにより、スペーシングロスを限りなく低減する必要がある。1平方インチ当り400Gビット以上の情報記録密度を達成するためには、磁気ヘッドの浮上量は少なくとも5nm以下にする必要がある。LUL方式ではCSS方式と異なり、磁気ディスク面上にCSS用の凸凹形状を設ける必要が無く、磁気ディスク面上を極めて平滑化することが可能となる。よってLUL方式のHDDに搭載される磁気ディスクでは、CSS方式に比べて磁気ヘッド浮上量を一段と低下させることができるので、記録信号の高S/N比化を図ることができ、磁気ディスク装置の高記録容量化に資することができるという利点もある。
最近のLUL方式の導入に伴う、磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、5nm以下の超低浮上量においても、磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきた。とりわけ上述したように、近年、磁気ディスクは面内磁気記録方式から垂直磁気記録方式に移行しており、磁気ディスクの大容量化、それに伴うフライングハイトの低下が強く要求されている。
また最近では、磁気ディスク装置は、従来のパーソナルコンピュータの記憶装置としてだけでなく、携帯電話、カーナビゲーションシステムなどのモバイル用途にも多用されるようになってきており、使用される用途の多様化により、磁気ディスクに求められる環境耐性は非常に厳しいものになってきている。したがって、これらの状況に鑑みると、従来にもまして、磁気ディスクの安定性、信頼性などの更なる向上が急務となっている。
ところで、従来、磁性層は、Arガス中でのスパッタリング法により好適に成膜されていたが、このArが磁気ディスクの磁性層に取り込まれることが予想される。磁性層の成膜工程において、Arが磁性層に多く混入されると、磁性層の密度が低下し、耐腐食性が悪化し、磁気ディスクの信頼性特性に影響を与えるものと考えられる。しかしながら、従来は磁性層中のAr含有量の好ましい分析手段が無く、磁気ディスクの磁性層に取り込まれているAr量が具体的にはどの程度であり、それが磁気ディスクの耐腐食性をはじめとする信頼性特性にどの程度影響を与えているのか皆目見当がつかないのが現状であった。なお、本発明者は、従来、固体構造の解析等に一般的に用いられている、軟X線照射による2次電子のエネルギー分布を測定するESCA(エスカ:Electron Spectroscopyfor Chemical Analysis)による測定を試みたが、従来ESCAではエッチング用のガスとしてAが用いられており、測定で検出されたArが、磁性層のスパッタ成膜中に混入したものなのか、ESCAで測定中に磁性層に混入したものなのか区別ができないという欠点がある。
本発明は、このような従来の状況に鑑みなされたもので、その目的とするところは、近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量のもとで、また用途の多様化に伴う非常に厳しい環境耐性のもとで、良好な信頼性特性を有する磁気ディスクを提供することである。
本発明者は、鋭意検討した結果、以下の発明により、前記課題が解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板上に少なくとも磁性層と保護層が設けられた磁気ディスクであって、カーボン60(C60)をエッチング用のガスとして用いたESCA(エスカ)にて測定される前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量が許容値となるように前記磁性層の成膜条件を設定し、該設定した成膜条件により前記磁性層を形成してなることを特徴とする磁気ディスク。
(構成2)
予め前記磁性層の成膜条件が判っている磁気ディスクについて、カーボン60(C60)をエッチング用のガスとして用いたESCA(エスカ)にて前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量を測定し、前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量の許容値を設定し、該設定した許容値となるように前記磁性層の成膜条件を設定することを特徴とする構成1に記載の磁気ディスク。
(構成3)
前記磁性層は、スパッタリング法により成膜され、前記成膜条件は成膜時のガス圧であることを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスク。
(構成4)
前記磁性層は、CoPt系磁性層であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載の磁気ディスク。
(構成5)
起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクであることを特徴とする構成1乃至4のいずれか一項に記載の磁気ディスク。
(構成6)
基板上に少なくとも磁性層と保護層が設けられた磁気ディスクであって、カーボン60(C60)をエッチング用のガスとして用いたESCA(エスカ)にて測定される前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量が、0.1〜1.2原子%の範囲であることを特徴とする磁気ディスク。
本発明によれば、C60をエッチング用のガスとして用いたESCAにより磁性層中のAr含有量をモニターし、これが許容値(許容範囲)となるように磁性層の成膜条件を最適化して、磁性層中のAr含有量を好適に制御することができ、結果、近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量のもとで、また用途の多様化に伴う非常に厳しい環境耐性のもとで、耐腐食性をはじめとする良好な信頼性特性を有する磁気ディスクを得ることができる。
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
まず、本発明により製造される磁気ディスク、とりわけ高記録密度化に好適な垂直磁気記録媒体の概略を説明する。
本発明に係る上記垂直磁気記録媒体の層構成の一実施の形態としては、具体的には、基板に近い側から、例えば密着層、軟磁性層、シード層、下地層、磁気記録層(垂直磁気記録層)、保護層、潤滑層などを積層したものである。
上記基板用ガラスとしては、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダタイムガラス等が挙げられるが、中でもアルミノシリケートガラスが好適である。また、アモルファスガラス、結晶化ガラスを用いることができる。なお、化学強化したガラスを用いると、剛性が高く好ましい。本発明において、基板主表面の表面粗さはRmaxで10nm以下、Raで0.3nm以下であることが好ましい。
基板上には、垂直磁気記録層の磁気回路を好適に調整するための軟磁性層を設けることが好適である。かかる軟磁性層は、第一軟磁性層と第二軟磁性層の間に非磁性のスペーサ層を介在させることによって、AFC(Antiferro-magneticexchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成することが好適である。これにより第一軟磁性層と第二軟磁性層の磁化方向を高い精度で反並行に整列させることができ、軟磁性層から生じるノイズを低減することができる。具体的には、第一軟磁性層、第二軟磁性層の組成としては、例えばCoTaZr(コバルト−タンタル−ジルコニウム)またはCoFeTaZr(コバルト−鉄−タンタル−ジルコニウム)またはCoFeTaZrAlCr(コバルト−鉄−タンタル−ジルコニウム−アルミニウム−クロム)またはCoFeNiTaZr(コバルト−鉄−ニッケル−タンタル−ジルコニウム)とすることができる。上記スペーサ層の組成は例えばRu(ルテニウム)とすることができる。
軟磁性層の膜厚は、構造及び磁気ヘッドの構造や特性によっても異なるが、全体で15nm〜100nmであることが望ましい。なお、上下各層の膜厚については、記録再生の最適化のために多少差をつけることもあるが、概ね同じ膜厚とするのが望ましい。
また、基板と軟磁性層との間には、密着層を形成することも好ましい。密着層を形成することにより、基板と軟磁性層との間の付着性を向上させることができるので、軟磁性層の剥離を防止することができる。密着層の材料としては、例えばTi含有材料を用いることができる。
また、シード層は、下地層の配向ならびに結晶性を制御するために用いられる。全層を連続成膜する場合には特に必要のない場合もあるが、軟磁性層と下地層の相性如何によっては結晶成長性が劣化することがあるため、シード層を用いることにより、下地層の結晶成長性の劣化を防止することができる。シード層の膜厚は、下地層の結晶成長の制御を行うのに必要最小限の膜厚とすることが望ましい。厚すぎる場合には、信号の書き込み能力を低下させてしまう原因となる。
上記下地層は、垂直磁気記録層の結晶配向性(結晶配向を基板面に対して垂直方向に配向させる)、結晶粒径、及び粒界偏析を好適に制御するために用いられる。下地層の材料としては、面心立方(fcc)構造あるいは六方最密充填(hcp)構造を有する単体あるいは合金が好ましく、例えばRu、Pd,Pt,Tiやそれらを含む合金が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明においては、特にRuまたはその合金が好ましく用いられる。Ruの場合、hcp結晶構造を備えるCoPt系垂直磁気記録層の結晶軸(c軸)を垂直方向に配向するよう制御する作用が高く好適である。なお、低ガス圧プロセスと高ガス圧プロセスによる積層構造の場合、同じ材料の組合わせはもちろん、異種材料を組合わせることもできる。
また、上記垂直磁気記録層は、コバルト(Co)を主体とする結晶粒子と、Si,Ti,Cr,Co、またはこれらSi,Ti,Cr,Coの酸化物を主体とする粒界部を有するグラニュラー構造の強磁性層を含むことが好適である。
具体的に上記強磁性層を構成するCo系磁性材料としては、非磁性物質である酸化ケイ素(SiO)又は酸化チタン(TiO)の少なくとも一方を含有するCoCrPt(コバルト−クロム−白金)からなる硬磁性体のターゲットを用いて、hcp結晶構造を成型する材料が望ましい。また、この強磁性層の膜厚は、例えば20nm以下であることが好ましい。
また、補助記録層を、交換結合制御層を介して垂直磁気記録層の上部に設けることによって、磁気記録層の高密度記録性と低ノイズ性に加えて高熱耐性を付け加えることができる。補助記録層の組成は、例えばCoCrPtBとすることができる。
また、前記垂直磁気記録層と前記補助記録層との間に、交換結合制御層を有することが好適である。交換結合制御層を設けることにより、前記垂直磁気記録層と前記補助記録層との間の交換結合の強さを好適に制御して記録再生特性を最適化することができる。交換結合制御層としては、例えば、Ruなどが好適に用いられる。
上記強磁性層を含む垂直磁気記録層の形成方法としては、スパッタリング法で成膜することが好ましい。特にDCマグネトロンスパッタリング法で形成すると均一な成膜が可能となるので好ましい。
また、上記垂直磁気記録層の上に、保護層を設けることが好適である。保護層を設けることにより、磁気記録媒体上を浮上飛行する磁気ヘッドから磁気ディスク表面を保護することができる。保護層の材料としては、炭素系保護層が好適である。
また、前記保護層上に、更に潤滑層を設けることも好ましい。潤滑層を設けることにより、磁気ヘッドと磁気ディスク間の磨耗を抑止でき、磁気ディスクの耐久性を向上させることができる。潤滑層の材料としては、たとえばPFPE(パーフルオロポリエーテル)系化合物が好ましい。潤滑層は、例えばディップコート法で形成することができる。
本発明は、前記構成1にあるように、基板上に少なくとも磁性層と保護層が設けられた磁気ディスクの製造方法であって、カーボン60(C60)をエッチング用のガスとして用いたESCA(エスカ)にて測定される前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量が許容値となるように前記磁性層の成膜条件を設定し、該設定した成膜条件により前記磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法である。
本発明者は、鋭意検討した結果、C60をエッチング用のガスとして用いたESCAによる深さ方向での測定を行うことにより、磁気ディスクの深さ方向での膜中に含まれるAr含有量を好適に分析可能であることを見い出した。なお、ESCAの測定原理については、理化学文献等で知られている。
本発明における好ましい実施の形態としては、以下が挙げられる。
(1)予め前記磁性層の成膜条件、例えば成膜時のチャンバー内のガス圧が判明している1つあるいは複数の磁気ディスクについて、C60を用いたESCAにて前記磁性層中のAr含有量を測定する。なお、本発明において、磁性層中のAr含有量を測定する際のESCAにおける測定条件は、C60で約5Åずつメディアをエッチングしていき、各々で1kVの電圧でX線を照射して得られるBinding Energyを測定する。
(2)前記磁性層中のAr含有量の許容値(許容範囲)を設定する。本発明者の検討によると、磁性膜の密度が高く、耐腐食性の良好な磁気ディスクを得るためには、磁性層中のAr含有量の許容値は、0.1〜1.2原子%の範囲であることが望ましい。
(3)設定した許容値となるように前記磁性層の成膜条件、例えば成膜時のArガス圧を設定する。
(4)設定した成膜条件により前記磁性層を形成する。
本発明において磁性層を形成する場合は、前述したように、特にスパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法により成膜することで磁性層が均一となり密に成膜される。
本発明のように、C60を用いたESCAにより磁性層中のAr含有量を評価することにより、膜の特性あるいはスパッタ成膜条件を管理することができ、従来のようにサンプルを沢山作製して種々の評価テストを行わなくてもよい。また、磁性層の材料が変更されても(どのような磁性層に対しても)、スパッタ成膜時のArガス圧を含むスパッタ成膜条件を最適化することが可能になる。
本発明により得られる磁気ディスクは、特にLUL方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクとして好適である。LUL方式の導入に伴う磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、例えば5nm以下の超低浮上量においても磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきており、超低浮上量のもとで良好な信頼性徳性を有する本発明の磁気ディスクは好適である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
(磁気ディスクの製造)
以下のようにして、基板上に、密着層、軟磁性層、シード層、下地層、磁気記録層、炭素系保護層、及び潤滑層を順次形成して、磁気ディスクを作製した。
化学強化されたアルミノシリケートガラスからなる2.5インチ型ガラスディスク(外径65mm、内径20mm、ディスク厚0.635mm)を準備し、ディスク基板とした。ディスク基板1の主表面は、Rmaxが2.13nm、Raが0.20nmに鏡面研磨されている。
このディスク基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、Arガス雰囲気中で、密着層、軟磁性層、シード層、下地層、磁気記録層を順次形成した。
以下の各材料の記述における数値は組成を示すものとする。
まず、密着層として、10nmのCr-50Ti層を成膜した。
次に、軟磁性層として、非磁性層を挟んで反強磁性交換結合する2層の軟磁性層の積層膜を成膜した。すなわち、最初に1層目の軟磁性層として、25nmの(50Fe-50Co)-3Ta4Zr層を成膜し、次に非磁性層として、0.7nmのRu層を成膜し、さらに2層目の軟磁性層として、(46Fe-54Co)-1Ta6Zr層を25nmに成膜した。
次に、上記軟磁性層上に、シード層として、5nmのNiW層を成膜した。
次に,下地層として2層のRu層を成膜した。すなわち、下地第一層として、Arガス圧0.7PaにてRuを12nm成膜し、下地第二層として、Arガス圧4.5PaにてRuを12nm成膜した。
次に、下地層の上に、Arガス圧3Paにて磁気記録層を成膜した。まず、垂直磁気記録層として、10nmの85(Co-7Cr-19Pt)-7SiO2-8TiO2を成膜した。次に、交換結合制御層として、0.3nmのRu層を成膜し、更にその上に磁気記録層の補助記録層として、7nmのCo-12Cr-18Pt-3Bを成膜した。
そして次に、上記磁気記録層の上に、プラズマCVD法により、水素化ダイヤモンドライクカーボンからなる炭素系保護層を形成した。成膜時のパワー(kW/mm2)及びガス流量は所定の値に設定した。炭素系保護層の膜厚は5nmとした。
そして、真空装置から取り出し、この後、PFPE(パーフロロポリエーテル)からなる潤滑層をディップコート法により形成した。潤滑層の膜厚は1nmとした。
以上の製造工程により、実施例1の垂直磁気記録ディスクが得られた。
(実施例2、実施例3)
実施例1における磁気記録層の成膜時のArガス圧を5Pa(実施例2)、10Pa(実施例3)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2、実施例3の垂直磁気記録ディスクを得た。
(比較例1、比較例2)
実施例1における磁気記録層の成膜時のArガス圧を1Pa(比較例1)、15Pa(比較例2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1、比較例2の垂直磁気記録ディスクを得た。
以上のようにして得られた実施例、比較例の各磁気ディスクについて、C60を用いたESCAにて、上記磁気記録層に含まれるAr含有量の分析を行った。なお、ESCAによる測定は、アルバックファイ製のQuanteraを使用して行い、その際の測定条件は、C60で約3Åずつエッチングして、各々で1kVの電圧でX線を照射して、Binding Energyを測定した。
分析の結果、磁気記録層の深さ方向にArが浸透していることが判明した。そして、この磁気記録層中のAr含有量は、纏めて以下の表1に示した。
次に、以下の試験方法により、各磁気ディスクの評価を行った。
[金属イオン耐溶出性評価]
磁気ディスクの表面に3%の硝酸100μLを各8点滴下し、約1時間室温で放置した後、当該8点を回収し、これら液滴の半径を測定して、これを1mLに定容する。これらの液滴をICP(誘導結合プラズマ:Inductively CoupledPlasma)質量分析装置で金属成分を定量し、溶液濃度と滴下面積から磁気ディスク表面1m当たりのCo溶出量を算出した。溶出したCo量が少ないほど、磁気ディスクの耐腐食性が優れていると言える。
[コロージョン評価]
恒温槽を98%RH、90℃に保った後、そこに磁気ディスクを入れて3日間放置した後、MMX(MicroMax製)を用いてメディア表面を観察して、コロージョンスポットの数(白い輝点の集まりが表面上にいくつあるかを数える。
コロージョンスポットのカウント数が少ないほど、コロージョン耐性が優れていると言える。
以上の評価結果を纏めて以下の表1に示した。なお、Co溶出量に関しては、0.80μg/m以下、コロージョンスポット数に関しては、0.008カウント/mm以下であれば腐食耐性が十分にあると考えられる。評価結果をもとに、腐食耐性があるものは「○」、無いものは「×」を表1中に付している。
Figure 0005497320
表1の結果から、磁性膜の密度が高く、耐腐食性の良好な磁気ディスクを得るためには、磁性層中のAr含有量の許容値は、0.1〜1.2原子%の範囲であることが望ましい。設定した許容値となるように前記磁性層の成膜条件、例えば成膜時のArガス圧を設定する。そして、設定した成膜条件により前記磁性層を形成することにより、良好な腐食耐性を備える磁気ディスクが得られる。
以上説明したように、本発明によれば、磁性層中のAr含有量をモニターし、許容値となるように好適に制御することができるので、結果、近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量のもとで、また用途の多様化に伴う非常に厳しい環境耐性のもとで、良好な信頼性特性を有する磁気ディスクが得られることが確認された。

Claims (5)

  1. 基板上に少なくとも磁性層と保護層が設けられた磁気ディスクの製造方法であって、
    カーボン60(C60)をエッチング用のガスとして用いたESCA(エスカ)にて測定される前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量が、0.1〜1.2原子%の範囲となるように前記磁性層の成膜条件を設定し、該設定した成膜条件により前記磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法
  2. 予め前記磁性層の成膜条件が判っている磁気ディスクについて、カーボン60(C60)をエッチング用のガスとして用いたESCA(エスカ)にて前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量を測定し、前記磁性層中のアルゴン(Ar)含有量が、0.1〜1.2原子%の範囲となるように前記磁性層の成膜条件を設定することを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスクの製造方法
  3. 前記磁性層は、スパッタリング法により成膜され、前記成膜条件は成膜時のガス圧であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスクの製造方法
  4. 前記磁性層は、CoPt系磁性層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気ディスクの製造方法
  5. 起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気ディスクの製造方法
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