本発明の製造方法は、基材粒子にフッ素ガスと酸素原子を含む化合物のガスとを必須的に含む混合ガスを接触させる処理を行って基材粒子の表面を親水化するものである。この処理により、炭素に結合している水素が酸素とフッ素に置換されて−C(F)=Oとなり、その後、その一部または全部がカルボキシル基に転換すると考えられる。このため、親水化微粒子の表面近傍には多数の−C(F)=Oおよび/またはカルボキシル基が生成し、著しく親水性が高まるのである。また、上記−C(F)=Oやカルボキシル基の生成と共に、一部粒子骨格中のCH結合が、CF結合に変換される反応も起こる。なお、これらの官能基や結合の存在は、X線光電子分析装置(ESCA)等により確認することができる。
基材粒子に上記混合ガスを接触させる処理の後、さらに水分と接触させる処理を行うことが好ましい。水分との接触によって、−C(F)=Oがより効率的にカルボキシル基に転換される。水分としては、アルカリ性水溶液、および/または、水および/または水蒸気が好ましい。
本発明の製造方法で得られる親水化微粒子の表面には、−C(F)=Oおよび/またはカルボキシル基を有するものであるが、さらに、粒子表面または内部に、これらの基に加えて、フッ素成分として、炭化水素の炭素に共有結合しているフッ素成分(共有結合フッ素ともいう)を有し得る。共有結合フッ素は、−C(F)=Oおよび/またはカルボキシル基と共存することにより、粒子同士の二次凝集を抑制する等の効果を有するため、微量でも存在していることが好ましい。
また、本発明の製造方法で得られる親水化微粒子は、フッ素成分として、フッ化水素(HF)が付着していることがある。このHFは、本発明の親水化微粒子を扱う上で有害となるおそれがあるため、その含有量は少ないほど好ましい。HFが全く付着していないことがより好ましい。
これらのフッ素成分は、溶出性フッ素含有量と非溶出性フッ素含有量とにより区別することができる。すなわち、後述する溶出試験において、イオン化して溶媒中に溶出するフッ素を溶出性フッ素と称し、その含有量を溶出性フッ素含有量とする。溶出性フッ素には、上記の付着(遊離)フッ化水素に由来するフッ素と、−C(F)=Oに由来するフッ素が含まれる。
一方、溶出試験において、溶出し得ないフッ素は非溶出性フッ素であり、その含有量が非溶出性フッ素量である。非溶出性フッ素は、通常、前記した共有結合フッ素に該当するが、粒子内に取り込まれて溶出できない遊離フッ素成分が含まれることもある。
溶出性フッ素含有量および非溶出性フッ素含有量は、粒子1g当たりに含有されるフッ素原子換算の含有量(mg/g)で表される。
親水化微粒子の安全性や特性を検討した結果、非溶出性フッ素はある程度存在するのが好ましい。具体的には、0.1〜50mg/gの範囲であると、上記した二次凝集を抑制する効果が発現するため好ましい。ただし、多すぎると親水性が不充分となったり、粒子の機械的特性が低下するおそれがある。より好ましい非溶出性フッ素含有量は1〜40mg/gであり、さらに好ましくは2〜20mg/gである。
一方、溶出性フッ素含有量は、親水化微粒子を取り扱う上で少ないか、もしくは存在しないことが好ましく、具体的には、1mg/g未満であることが好ましい。0.5mg/g以下であることがより好ましく、0.2mg/g以下であることがさらに好ましく、0.1mg/g以下であることがより一層好ましく、0.01mg/g以下が特に好ましい。
親水性の度合いは、酸価(KOH中和量:mgKOH/g)で表すことができる。本発明の親水化微粒子の酸価は0.05mgKOH/g以上であることが好ましい。0.05mgKOH/gより小さいと、水系媒体への分散性が不足するおそれがある。酸価は、0.1mgKOH/g以上がより好ましく、1mgKOH/g以上がさらに好ましい。親水化微粒子の酸価は、粒子1gの中和に要したKOHの量(mg)と定義され、後述する方法によって測定される。なお、基材粒子は疎水性が高く、水に濡れないため水系媒体へ分散させることができず、酸価の測定はできない。また、後述するアルカリ洗浄を行った場合には、基材粒子に生成したカルボキシル基の水素原子がアルカリ金属原子で置換されている。したがって、アルカリ洗浄後の親水化微粒子では、酸価により親水性の度合いを評価することはできない。
粒子の親水化度合いは、疎水化度で表すこともでき、本発明法で得られる粒子の疎水化度は、10以下が好ましく、0であることが最も好ましい。疎水化度は、以下のようにして求めることができる。
[疎水化度]
底部に撹拌子を置いた200ccのガラスビーカーにイオン交換水50ccを投入し、水面に粒子0.2gを浮かべた後、ビーカー内の水中にビュレットの先端を沈め、撹拌子を緩やかに回転させながら、前記粒子添加から5分後に、ビュレットからメタノールを徐々に導入する。水面の粒子の全量が完全に水中に沈むまでメタノールの導入を続け、水中に粒子が完全に沈んだときのメタノールの導入量(cc)を測定し、下式に基づき疎水化度を求める。
疎水化度(%)=メタノール導入量(cc)×100/{水の量(cc)+メタノール導入量(cc)}
ここで、ビュレットからメタノールを添加する前に、水面に浮かべた粒子が水中に完全に沈んだ場合は、疎水化度0と判定した。
なお、親水化微粒子の形状、平均粒子径、粒子径のCV値、機械的特性の好ましい形態および範囲は、後述する基材粒子の説明における好ましい形態および範囲と同様である。
[親水化処理]
親水化処理は、基材粒子と混合ガスが接触すればよく、その方法は特に限定されないが、基材粒子を保持できる容器内に混合ガスを導入して密封状態で所定時間処理する方法(密封接触法)か、基材粒子を保持できる容器内に、混合ガスを流通させ、連続的に供給する方法(連続供給法)が好ましい。
処理の際には、混合ガスと基材粒子との接触効率を高めて、短時間で均一に親水化することが好ましい。接触効率を高めるには、混合ガスを処理容器内に拡散することが好ましく、ファン等の撹拌装置を用いて混合ガスを気流撹拌したり、パレット等に基材粒子を薄く敷く方法等が挙げられる。また、基材粒子を撹拌してもよく、ドラム回転式装置等を用いて処理容器を回転させたり、撹拌装置で基材粒子を流動させる方法等が挙げられる。これらの接触効率向上手段は、複数を組み合わせて用いても良い。
パレット等に基材粒子を薄く敷き詰める場合には、粒子間でバラツキなく均一に、かつ短時間で親水化処理するために、処理容器内に基材粒子層の厚さが2mm以下となるように、装填することが好ましい。より好ましい粒子層の厚さは0.5mm以下である。
混合ガスにおけるフッ素ガスの濃度は、0.01〜1.0体積%とする。フッ素ガス濃度が0.01体積%より少ないと、親水化処理が不充分な粒子が存在するおそれがある。親水化処理の均一性に優れる点からは、フッ素ガスの濃度を0.08体積%以上とすることが好ましい。フッ素ガスの濃度を1.0体積%以下にすると、白色または着色してもわずかである。0.3体積%以下とするのがより好ましい。
混合ガスにおいては、フッ素ガスと共に、酸素原子を含む化合物のガスも必須成分である。酸素原子を含む化合物のガスとしては、酸素、二酸化硫黄、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素等が好ましいものとして挙げられる。これらの中でも、マイルドな処理条件でも親水化処理効率が高い点で、酸素ガスが好ましい。混合ガスには、フッ素ガスおよび酸素原子を含む化合物のガス以外に、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスも使用可能である。なお、気相中での処理における粉塵爆発を防止して、親水化処理を工業的且つ安全に行う観点からは、不活性ガスとして窒素ガスを使用することが好ましい。したがって、混合ガスとしては、フッ素ガス、酸素原子を含む化合物のガスおよび不活性ガスからなる組成を有するものが好ましく、さらに、フッ素ガス、酸素ガスおよび窒素ガスを含む混合ガスがより好ましい。
混合ガスにおける酸素原子を含む化合物のガスの濃度は、0.1体積%〜99.99体積%であれば、本発明の目的である基材粒子の親水化を行うことができる。酸素原子を含む化合物のガスの濃度が0.1体積%より少ないと、親水化が不十分な粒子が存在する虞がある。親水化の程度が均一な粒子(粉体)を得るためには、また、高度に親水化された粒子を短時間で得るためには、酸素原子を含む化合物のガス濃度は0.1体積%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.5体積%以上である。一方、酸素原子を含む化合物のガスの濃度が高いことは、粒子の親水化に悪影響を与えることはないが、親水化処理における粉塵爆発の発生を抑止し、安全に親水化処理を行えるという理由からは、10体積%以下が好ましく、より好ましくは5体積%以下である。
混合ガスの成分として不活性ガスを用いる場合は、不活性ガスの濃度は特に限定されず、フッ素ガスと酸素原子を含む化合物のガスによる親水化処理の効果を損なわない範囲で適宜選択すればよい。通常、99体積%以下が好ましい。99体積%を超えると、親水化が不十分な粒子が存在する虞がある。また、親水化処理における粉塵爆発の発生を抑止し、安全に親水化処理を行えるという理由からは、不活性ガスの濃度は90体積%以上であるのが好ましく、94質量%以上がより好ましい。
混合ガス中のフッ素ガスの分圧は、8Pa(0.06Torr)以上であると親水化処理の均一性に優れ、好ましい。より好ましくは、24Pa(0.18Torr)以上、さらに好ましくは、64Pa(0.48Torr)以上である。親水化処理によるビニル系重合体骨格の分解や着色を抑制するという観点からは、フッ素ガスの分圧を1000Pa(7.5Torr)以下とすることが好ましく、700Pa(5.25Torr)以下がより好ましい。
混合ガスの成分として酸素ガスを用いる場合の酸素ガスの分圧は、親水化処理を均一に行う観点から、70Pa(0.53Torr)〜85000Pa(637.6Torr)が好ましい。なお、工業的且つ安全に親水化処理を行う観点からは、70Pa〜7998Pa(60Torr)とするのが好ましく、より好ましくは70Pa〜3999Pa(30Torr)である。酸素原子を含む化合物のガスの分圧に関しても好ましい範囲は同様である。
混合ガスの成分として窒素ガスを用いる場合の窒素ガスの分圧は、工業的且つ安全に親水化処理を行う観点から、3199Pa(24Torr)〜79180Pa(594Torr)とするのが好ましく、より好ましくは71918Pa(540Torr)〜79180Pa(594Torr)である。他の不活性ガスを用いる場合についても他の不活性ガスの分圧の好ましい範囲は同様である。
混合ガスの全圧は、安全に親水化処理を行うためには、101.3kPa(760Torr)以下が好ましい。101.3kPaを超えると、混合ガスが容器外に漏れるおそれがある。
混合ガスと基材粒子との比率は、密封接触式の場合、基材粒子1kgに対し、常温常圧換算で、混合ガスを30L〜4000Lとすることが好ましく、1000L〜3000Lとすることがより好ましい。連続供給式の場合は、基材粒子1kgに対し、常温常圧換算で、トータル流量が30L〜15000Lとなるように供給することが好ましく、1000L〜10000Lとなるように供給することがさらに好ましい。
具体的には、密封接触式の場合は、密封可能なチャンバーに、そのまま、または容器に入れた基材粒子を入れ、減圧した後、混合ガスを導入して、所定時間処理を行う。水分が残存すると、HFが発生して危険なので、減圧の際には、充分に真空排気することが好ましい。連続供給式の場合は、所定時間混合ガスを導入すればよい。
密封接触式の場合は、混合ガスを導入する前に、予めチャンバー内を予熱しておいてもよい。反応温度は、−20℃〜200℃程度が好ましく、0℃〜100℃程度がより好ましく、10℃〜40℃がさらに好ましい。反応温度が200℃を超えるとビニル重合体粒子が分解してしまう虞があり、一方、−20℃より低くなると親水化処理が不十分となる場合がある。なお、反応温度とは、チャンバー内のガスの温度を意味する。
混合ガスの導入時には、酸素原子を含む化合物のガスあるいはその他のフッ素ガス以外のガスを先にチャンバーへ導入し、その後でフッ素ガスを導入してもよいし、予め混合したガスを導入してもよい。
基材粒子と混合ガスの接触時間(処理時間)は特に限定されず、所望の親水化度合いになるまで処理すればよいが、大体10分〜60分程度で処理は完了する。処理後は、再び0.13Pa(0.001Torr)程度まで減圧し、その後、窒素ガスを導入するという工程を行うことが好ましい。この工程が終われば、大気圧に開放する。
本発明の親水化微粒子の製造方法では、上記混合ガスによる接触処理の後に、混合ガス接触後の粒子を、さらに水分と接触させる処理を行うことが好ましい。混合ガスとの接触によって粒子表面に形成された−C(F)=Oが、水分と接触することで、より効率的にカルボキシル基に転換される。また、このとき生成するHFや粒子表面に吸着しているHFあるいはF2を有効に除去することもできる。上記水分は、アルカリ性水溶液、および/または、水および/または水蒸気であることが好ましい。
混合ガス接触後の粒子と水分とを接触させる態様としては、水分として、アルカリ性水溶液を用いる態様;水および/または水蒸気を用いる態様;アルカリ性水溶液と、水および/または水蒸気を用いる態様のいずれであってもよい。中でも、アルカリ性水溶液と、水および/または水蒸気を用いる態様が好ましい。また、接触順序は特に限定されないが、効率よく、粒子表面に吸着しているHFあるいはF2などを除去する観点からは、粒子をアルカリ性水溶液と接触させた後、水および/または水蒸気と接触させるのが望ましい。アルカリ性水溶液と接触させると、粒子表面にはカルボン酸のアルカリ金属塩やアミン塩(以下、カルボン酸塩ということがある。)が形成される。このカルボン酸塩は、粒子の親水性を一層高めるため好ましく、その後、粒子を、水および/または水蒸気と接触させることで、余分なアルカリ性水溶液を洗浄することができる。なお、本明細書では、以下、粒子とアルカリ性水溶液とを接触させる場合をアルカリ処理といい、粒子と水とを接触させる場合を温水洗浄ということがある。
カルボキシル基またはカルボン酸塩への転換を効率的に進め、また、粒子表面に吸着しているHFやF2を有効に除去し、溶出性フッ素を低減するための水分との接触処理方法としては、特に限定されないが、例えば、ガスとの接触に用いたチャンバーを大気圧に開放した後、チャンバー内に水蒸気を送り込み、粒子と水とを接触させる方法;ガスとの接触に用いたチャンバーを大気圧に開放した後、チャンバー内に水蒸気を送り込み、粒子と水とを接触させた後、さらに、粒子を取りだして水中に分散させて水や水を含む溶媒で洗浄する方法;ガスとの接触後、チャンバーから取りだした粒子を、別途水蒸気雰囲気中に浸したり、水や水を含む溶媒で洗浄する方法;ガスとの接触後、チャンバーから取り出した粒子をアルカリ性水溶液中に分散させてアルカリ処理する方法;ガスとの接触後、チャンバーから取り出した粒子をアルカリ性水溶液中に分散させてアルカリ処理した後、さらに、粒子を取りだして水中に分散させて水や水を含む溶媒で洗浄する方法等が挙げられる。水分との接触時間は1分〜600分程度が好ましい。
−C(F)=Oのカルボキシル基またはカルボン酸塩への転換を効率的に進め、また、このとき生成するHFや粒子表面に吸着しているHFあるいはF2を有効に除去するため、水分(アルカリ性水溶液、および/または、水および/または水蒸気)の温度は、20℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上、最も好ましくは80℃以上である。
また、アルカリ性水溶液または水や水を含む溶媒で粒子を処理、洗浄する場合は、溶媒と粒子との合計100質量%中、粒子濃度を0.5〜50質量%とすることが好ましい。粒子濃度が0.5質量%未満であると、所定量の粒子を洗浄する際に発生する含フッ素廃水の量が増大するため、工業的にコストがアップするおそれがある。粒子濃度が50質量%を超えると、洗浄が不十分となるおそれがある。粒子の洗浄を効率的に行うために、溶媒に粒子を入れた状態で超音波分散を行うことも好ましい。
上述のように、粒子表面に付着しているフッ素成分などの溶出性フッ素は、粒子の安全性、あるいは他の材料との接触により腐食などの問題を引き起こす虞があるため、できる限り除去することが好ましく、上記水分としてアルカリ性水溶液を使用したアルカリ処理を実施すると、粒子表面に吸着した溶出性フッ素を一層効率よく除去することができる。
アルカリ性水溶液としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの水溶性アミン類の水溶液、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムといったアルカリ金属水酸化物や、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムといったアルカリ金属炭酸塩などのアルカリ金属化合物を水に溶解したアルカリ金属イオンを含有する水溶液が好ましく用いられる。上記アルカリ性水溶液の中でも、アルカリ金属イオンを含有する水溶液が好ましく、さらに、ナトリウムを含むものがより好ましく、特に、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
アルカリ性水溶液の濃度は0.01N〜5Nであるのが好ましい。より好ましくは0.05N〜2Nであり、さらに好ましくは0.1N〜1Nである。アルカリ処理の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、ガスとの接触後、チャンバーから取りだした粒子を上記濃度のアルカリ性水溶液に分散させた後、80℃以上の温度で、1分〜600分間、粒子をアルカリ性水溶液と接触させる方法が挙げられる。
得られた親水化微粒子に含有されるフッ素原子の量(全フッ素量)、イオン化して遊離するフッ素原子の量(溶出性フッ素含有量)および化学結合により粒子骨格に取り込まれ、遊離しないフッ素原子の量(非溶出性フッ素含有量)は、以下の方法で測定できる。
[全フッ素量:酸素燃焼フラスコ法]
3cm×2cmの濾紙上に2mgの粒子を秤量し、粒子が飛散しないように包む。酸素フラスコに付属の白金製バスケットをブンゼンバーナーで加熱し、赤熱状態を5秒程度続ける。バスケットが冷えたら、粒子を包んだ濾紙をバスケットに詰める。容量500mlの酸素フラスコに15mlの蒸留水を入れ、フラスコ内壁を濡らしたら、フラスコ内を酸素雰囲気に置換する。バスケット内の濾紙に点火し、素早くフラスコ内に差し込む。燃焼後、フラスコを2,3回振盪させ、30分放置した後、容量100mlのポリプロピレン製ビーカーにフラスコの内容物を移し替え、さらに蒸留水を加えて合計50mlに調整する。緩衝液5mlを加えてpHを一定に調整し、マグネチックスターラーで撹拌しつつ、イオンメーターでフッ素イオン濃度を測定し、全フッ素量(mg/g)を求めた。ここで、イオンメーターは「Orion1115000 4-Star」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を、電極は「Orion 9609BNWP」(同社製)を用いた。
[溶出性フッ素含有量:フッ素イオン電極法]
容量100mlのポリプロピレン製ビーカーに50mlの蒸留水を投入し、さらに5mlの緩衝液を加えた。マグネチックスターラーで撹拌しつつ、液中にフッ素イオン電極を浸漬した。0.2gの粒子を投入し、投入後360分のフッ素イオン濃度を測定し、溶出性フッ素含有量(mg/g)とした。イオンメーターおよび電極は全フッ素量の測定の場合と同一のものを用いた。
[非溶出性フッ素含有量]
非溶出性フッ素含有量(mg/g)は、下式により求めた。
非溶出性フッ素含有量=(全フッ素量)−(溶出性フッ素含有量)
また、親水化処理後の粒子表面におけるカルボキシル基の生成の有無は、X線光電子分析装置(ESCA:例えばアルバック・ファイ社製の走査型X線光電子分析装置「PHI Quantera SXM(登録商標)」)を用いて測定することができる。本発明では288eVのピークの有無により、判定した。
次に、基材粒子について説明する。本発明法に用いられる基材粒子はビニル系重合体を含有する粒子であれば特に限定されず、ビニル系重合体のみからなる粒子や、有機質と無機質とが複合された材料からなる有機質無機質複合粒子のいずれも使用することができる。なお、本発明のビニルには、(メタ)アクリロイルも含まれる。ビニル系重合体微粒子としては、具体的には、(メタ)アクリル系(共)重合体、(メタ)アクリル系−スチレン系共重合体等のビニル系重合体のみからなる粒子や、重合性(ビニル基含有の意味;以下同じ)アルコキシシランのラジカル重合体および/または縮重合体、重合性アルコキシシランとビニル系モノマーとの共重合体等の有機質無機質複合粒子が挙げられる。以下の説明で「ビニル重合体」というときは、ビニル系モノマーが重合した有機質のみの重合体を意味する。また、本発明でいう「ビニル系重合体微粒子」は、「ビニル重合体」からなる成分や骨格を含む粒子を意味する。これらのビニル系重合体微粒子の製造方法の詳細は後述するが、乳化重合、懸濁重合、シード重合、ゾルゲル法等が採用でき、中でも、シード重合やゾルゲル法は粒度分布を小さくすることができるため好ましい。なお、微粒子の組成は、GC−MS等で確認することができる。
[ビニル重合体粒子]
ビニル重合体粒子は、ビニル系単量体を含有する単量体混合物を含む単量体組成物を重合して得られる。単量体混合物に含有させるビニル系単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する非架橋性単量体、1分子中に2個以上のビニル基を有する架橋性単量体のいずれも使用することができる。
前記非架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等の(メタ)アクリル系単量体:スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、パラヒドロキシスチレン等のスチレン系単量体:2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類:2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。なお、前記非架橋性単量体として(メタ)アクリル酸を用いる場合には、部分的にアルカリ金属で中和してもよい。これらの非架橋性単量体は単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの非架橋性単量体の中でも、分子内にエステル結合を有さない単量体を必須成分として用いることが好ましく、中でも、スチレン系単量体が好ましく、特に、スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等が好適である。
架橋性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、デカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、および、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤;ポリブタジエン、ポリイソプレン不飽和ポリエステル等が挙げられる。これらの架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分子内にエステル結合を有さない単量体を必須成分として用いることが好ましく、中でも、芳香族ジビニル化合物が好ましく、特に、ジビニルベンゼンが好適である。
非架橋性単量体としてスチレン系単量体、架橋性単量体として芳香族ジビニル化合物を用いた場合には、本発明法による粒子の親水化効果が得られやすいため好ましい。
また、前記単量体混合物中の架橋性単量体の含有率は1質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。前記単量体混合物中の架橋性単量体の含有率を1質量%以上とすることにより、ビニル重合体粒子の耐溶剤性や耐熱性が高まり、また架橋性単量体の含有率を50質量%以下とすることにより、粒子としての硬度を適切にすることができる。
また単量体組成物を重合する際には、必要に応じて、重合開始剤や分散安定剤を用いてもよい。重合開始剤としては、通常、重合に用いられるものはいずれも使用可能であり、例えば、過酸化物系開始剤や、アゾ系開始剤等が使用可能である。前記過酸化物系開始剤としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ系開始剤としては、ジメチル2,2−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
これらの重合開始剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。なお、これらの重合開始剤の添加量は、単量体混合物100質量部に対して0.1質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、5質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは3質量部以下である。
分散安定剤は、懸濁重合法等を用いて単量体組成物を重合させる場合に、重合反応時に単量体組成物の液滴径の安定化を図るために使用されるものである。なお、分散安定剤は、単量体組成物に含有させずに、分散媒体である溶媒(例えば、水系溶媒)に溶解または分散させておいてもよい。分散安定剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いても良い。分散安定剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩等のポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤が好適である。
分散安定剤は、所望するビニル重合体粒子のサイズに応じてその添加量を適宜調整すればよい。例えば、平均粒子径3μm以上30μm以下のビニル系重合体粒子を得たい場合であれば、分散安定剤の添加量を単量体混合物100質量部に対して0.1質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、10質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
また、単量体組成物には、顔料、可塑剤、重合安定剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加しても良い。これらの添加剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して0.01質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、10質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
[ビニル重合体粒子の製造方法]
ビニル重合体粒子の製造方法は、前記したような単量体混合物を含む単量体組成物を重合させるものである。なお、重合方法としては、懸濁重合、シード重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することができ、これらの中でも懸濁重合、シード重合が好ましい。
懸濁重合法を採用する場合、用いられる溶媒としては、単量体組成物を完全に溶解しないものであれば特に限定されないが、好ましくは水系媒体が用いられる。これらの溶媒は、単量体組成物100質量部に対して、通常20質量部以上10000質量部以下の範囲内で適宜使用することができる。ビニル重合体粒子の製造方法としては、単量体混合物と重合開始剤とを含有する単量体組成物を、分散安定剤を溶解または分散させた水系溶媒に懸濁させて重合させる方法が好適である。
懸濁重合の重合温度は50℃以上とすることが好ましく、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、95℃以下とすることが好ましく、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。また、重合反応時間は1時間以上とすることが好ましく、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上であり、10時間以下とすることが好ましく、より好ましくは8時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。また、生成するビニル重合体の粒子径をコントロールするため、重合反応は単量体組成物の液滴径の規制を行った後あるいは液滴径の規制を行いながら反応を行うことが好ましい。この単量体組成物の液滴径の規制は、例えば、単量体組成物を水性媒体に分散させた懸濁液を、T.K.ホモミキサー、ラインミキサー等の高速撹拌機によって撹拌することにより行うことができる。そして、重合反応により生成したビニル系重合体粒子は、乾燥、さらに必要により分級等工程に供してもよい。なお、乾燥は150℃以下で行うのが好ましく、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
シード重合法を採用する場合は、シード粒子としては、スチレン系、(メタ)アクリレート系の重合体を用いることが好ましく、非架橋型または架橋度の小さい微粒子であることがより好ましい。またシード粒子の平均粒子径は0.1μm〜10μmが好ましく、且つ、100×粒子径標準偏差/平均粒子径で表される値(CV値)が10以下であることが好ましい。このようなシード粒子の製造方法は、従来用いられる方法を採用することができ、例えば、ソープフリー乳化重合、分散重合等が挙げられる。
シード重合における単量体組成物の仕込み量は、シード粒子1質量部に対して0.5質量部〜50質量部とすることが好ましい。単量体組成物の仕込み量が、少なすぎると重合による粒子径の増加が小さくなり、また、多すぎると単量体組成物が完全にシード粒子に吸収されず、媒体中で独自に重合して異常粒子を生成するおそれがある。なお、重合温度や得られた粒子の乾燥条件については、前記懸濁重合と同様の条件が適用できる。
[有機無機複合粒子]
有機無機複合粒子は、ビニル重合体に由来する有機質部分と、無機質部分とを含んでなる粒子である。前記有機無機複合粒子の態様としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等の無機質微粒子が、ビニル重合体中に分散含有されてなる態様;(オルガノ)ポリシロキサン、ポリチタノキサン等のメタロキサン鎖(「金属−酸素−金属」結合を含む分子鎖)と有機分子が分子レベルで複合してなる態様;ビニルトリメトキシシラン等のビニル系重合体を形成し得るビニル基を有するオルガノアルコキシシランが加水分解縮合反応やビニル基の重合反応を起こすことで得られる粒子や加水分解性シリル基を有するシラン化合物を原料とするポリシロキサンとビニル基を有する重合性単量体等と反応させて得られる粒子のように、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子からなる態様等が挙げられる。これらの中でも、特にビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子からなる態様が好ましい。
以下、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子(以下、単に「複合粒子」ということがある。)について詳述する。
前記ビニル重合体骨格は、下記式(1)で表される繰り返し単位により構成される主鎖を有するビニル重合体であり、側鎖を有するもの、分岐構造を有するもの、さらには架橋構造を有するものであってもよい。複合粒子の硬度を適度に制御できる。
また、ポリシロキサン骨格は、下記式(2)で表されるシロキサン単位が連続的に化学結合して、網目構造のネットワークを構成した部分と定義される。
ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量は、複合粒子の質量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。ポリシロキサン骨格中のSiO2の量が上記範囲であれば、複合粒子の硬度の制御が容易となる。なお、ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量は、粒子を空気等の酸化性雰囲気中で800℃以上の温度で焼成した前後の質量を測定することにより求めた質量百分率である。
複合粒子は、その硬度や破壊強度等といった機械的特性それぞれについて、ポリシロキサン骨格部分やビニル重合体骨格部分の割合を適宜変化させることにより任意に調節することができる。複合粒子におけるポリシロキサン骨格は、加水分解性基を有するシラン化合物を加水分解縮合反応させて得ることが好ましい。
加水分解性を有するシラン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、下記一般式(3)で表されるシラン化合物およびその誘導体等が挙げられる。
R’mSiX4-m (3)
(式中、R’は置換基を有していてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基および不飽和脂肪族基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基およびアシロキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0から3までの整数である。)
一般式(3)で表されるシラン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、m=0のものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン;m=1のものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性シラン;m=2のものとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジフェニルシランジオール等の2官能性シラン;m=3のものとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノール等の1官能性シラン等が挙げられる。
一般式(3)で表されるシラン化合物の誘導体としては、特に限定はされないが、例えば、Xの一部がカルボキシル基、β−ジカルボニル基等のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物や、前記シラン化合物を部分的に加水分解して得られる低縮合物等が挙げられる。
加水分解性を有するシラン化合物は、1種のみ用いても2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。なお、一般式(3)において、m=3であるシラン化合物およびその誘導体のみを原料として使用する場合は、複合粒子は得られない。
複合粒子のポリシロキサン骨格が、ビニル系重合体骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接結合した有機ケイ素原子を分子内に有する形態の場合は、前記加水分解性を有するシラン化合物としては、ビニル結合を含有する有機基を有するものを用いる必要がある。
ビニル結合を含有する有機基としては、例えば、下記一般式(4)、(5)および(6)で表される有機基等を挙げることができる。
CH2=C(−Ra)−COORb− (4)
(式中、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
CH2=C(−Rc)− (5)
(式中、Rcは水素原子またはメチル基を表す。)
CH2=C(−Rd)−Re− (6)
(式中、Rdは水素原子またはメチル基を表し、Reは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
一般式(4)の有機基としては、例えば、(メタ)アクリロキシ基等が挙げられ、(メタ)アクリロキシ基を有する一般式(3)のシラン化合物としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ−トリメトキシシリルプロピル−β−メタクリロキシエチルエーテルともいう)、γ−(メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
前記一般式(5)の有機基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基等が挙げられ、これらの有機基を有する前記一般式(3)のシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
前記一般式(6)の有機基としては、例えば、1−アルケニル基もしくはビニルフェニル基、イソアルケニル基もしくはイソプロペニルフェニル基等が挙げられ、これらの有機基を有する前記一般式(3)のシラン化合物としては、例えば、1−ヘキセニルトリメトキシシラン、1−ヘキセニルトリエトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−デセニルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω−トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p−トリメトキシシリルスチレン、1−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1−ヘキセニルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
複合粒子に含まれるビニル重合体骨格は、(I)シラン化合物の加水分解縮合反応により得られたポリシロキサン骨格を有する粒子に、ビニル系単量体成分を吸収させた後、重合させることで得ることができる。また、特に前記シラン化合物が、加水分解性基とともに、ビニル結合を含有する有機基を有する場合には、(II)シラン化合物の加水分解縮合反応後に、これを重合することでも得ることができる。
前記複合粒子は、(i)ポリシロキサン骨格がビニル系重合体骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している形態(化学結合タイプ)であってもよいし、(ii)このような有機ケイ素原子を分子内に有していない形態(IPNタイプ)であってもよく、特に限定はされないが、(i)の形態が好ましい。なお、前記(I)の方法でポリシロキサン骨格とともにビニル重合体骨格を得た場合は、(ii)の形態を有する複合粒子が得られ、特に前記シラン化合物が、加水分解性基とともに、ビニル結合を含有する有機基を有していれば、前記(i)と(ii)の形態を併せ持った複合粒子が得られる。また、前記(II)のようにしてポリシロキサン骨格とともにビニル重合体骨格を得た場合は、(i)の形態を有する複合粒子が得られる。
前記(I)や(II)の方法において、ポリシロキサン骨格を有する粒子に吸収させることのできる単量体としては、前記したビニル系単量体が挙げられ、所望する複合粒子の物性に応じて適宜選択することができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
例えば、疎水性のビニル系単量体は、ポリシロキサン骨格を有する粒子に単量体成分を吸収させる際に、単量体成分を乳化分散させた安定なエマルションを生成させ得るので好ましい。また、前記した架橋性単量体を使用すれば、得られる複合粒子の機械的特性の調節が容易にでき、また、複合粒子の耐溶剤性を向上させることもできる。架橋性単量体としては、前記ビニル重合体粒子に用いられるものとして例示したものを用いることができる。
複合粒子の製造方法は、加水分解縮合工程と、重合工程とを含むことが好ましく、加水分解、縮合工程後、重合工程前に、重合性単量体を吸収させる吸収工程を含めることがより好ましい。吸収工程を含めることにより、複合粒子中のビニル重合体骨格成分の含有量や含有されるビニル重合体骨格の屈折率を調整できる。なお、加水分解縮合工程に用いるシラン化合物が、ポリシロキサン骨格構造を構成し得る要素とともにビニル重合体骨格を構成する要素を併せ持ったものでない場合は、前記吸収工程を必須とし、この吸収工程に続く重合工程においてビニル重合体骨格が形成される。
前記加水分解縮合工程とは、シラン化合物を、水を含む溶媒中で加水分解して縮重合させる反応を行う工程である。加水分解縮合工程により、ポリシロキサン骨格を有する粒子(ポリシロキサン粒子)を得ることができる。加水分解と縮重合は、一括、分割、連続等、任意の方法を採用できる。加水分解し、縮重合させるにあたっては、触媒としてアンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の塩基性触媒を好ましく用いることができる。
前記水を含む溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤を含めることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
加水分解縮合工程ではまた、アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤を併用することもできる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
加水分解縮合は、原料となる前記シラン化合物と、触媒や水および有機溶剤を含む溶媒を混合した後、温度0℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上70℃以下で、30分以上100時間以下撹拌することにより行うことができる。これによりポリシロキサン粒子が得られる。また、所望の程度まで加水分解縮合反応を行って粒子を製造した後、これを種粒子として、反応系にさらにシラン化合物を添加して種粒子を成長させてもよい。
吸収工程は、ポリシロキサン粒子の存在下に、単量体成分を存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。したがって、ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に単量体成分を加えてもよいし、単量体成分を含む溶媒中にポリシロキサン粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予めポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、単量体成分を加えるのが好ましい。特に、加水分解、縮合工程で得られたポリシロキサン粒子を反応液(ポリシロキサン粒子分散液)から取り出すことなく、この反応液に単量体成分を加える方法は、工程が複雑にならず、生産性に優れるため好ましい。
なお、吸収工程においては、ポリシロキサン粒子の構造中に単量体成分を吸収させるが、単量体成分の吸収が速やかに進行するように、ポリシロキサン粒子および単量体成分それぞれの濃度や、ポリシロキサンと単量体成分の混合比、混合の処理方法、手段、混合時の温度や時間、混合後の処理方法、手段等を適宜設定し、その条件のもとで行うのが好ましい。
これらの条件は、用いるポリシロキサン粒子や単量体成分の種類等によって、適宜その必要性を考慮すればよい。また、これら条件は1種のみ適用しても2種以上を合わせて適用してもよい。
前記吸収工程における、単量体成分の添加量は、ポリシロキサン粒子の原料として使用したシラン化合物の質量に対して、質量で0.01倍以上100倍以下とするのが好ましい。より好ましくは0.5倍以上30倍以下であり、さらに好ましくは1倍以上20倍以下である。添加量が前記範囲に満たない場合は、ポリシロキサン粒子の単量体成分の吸収量が少なくなり、生成する複合粒子の機械的特性が不充分となることがあり、前記範囲を超える場合は、添加した単量体成分をポリシロキサン粒子に完全に吸収させることが困難となる傾向があり、未吸収の単量体成分が残存するため後の重合段階において粒子間の凝集が発生しやすくなるおそれがある。
前記吸収工程において、単量体成分の添加のタイミングは特に限定されず、一括で加えてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。また、単量体成分を加えるにあたっては、単量体成分のみを添加しても単量体成分の溶液を添加してもいずれでもよいが、単量体成分を予め乳化剤で水または水性媒体に乳化分散させた乳化液をポリシロキサン粒子に混合することが、ポリシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
前記乳化剤は特に限定されないが、例えば、前記分散安定剤として例示したアニオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン性界面活性剤が、ポリシロキサン粒子、単量体成分を吸収した後のポリシロキサン粒子および複合粒子の分散状態を安定化させることもできるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は特に限定されるものではなく、具体的には、乳化すべき単量体成分の総質量100質量部に対して0.01質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、10質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。0.01質量部未満の場合は、安定な乳化液が得られないことがあり、10質量部を超える場合は、乳化重合等が副反応として併発してしまうおそれがある。乳化液を得るには、単量体成分を乳化剤とともにホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて水中で乳濁状態とすればよい。
また、単量体成分を乳化剤で乳化分散させる際には、単量体成分の質量に対して0.3倍以上10倍以下の水や水溶性有機溶剤を使用するのが好ましい。前記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
吸収工程は、0℃以上60℃以下の温度範囲で、5分間以上720分間以下、撹拌しながら行うのが好ましい。これらの条件は、用いるポリシロキサン粒子や単量体の種類等によって、適宜設定すればよく、これらの条件は1種のみ、あるいは2種以上を合わせて採用してもよい。
吸収工程において、単量体成分がポリシロキサン粒子に吸収されたかどうかの判断については、例えば、単量体成分を加える前および吸収段階終了後に、顕微鏡により粒子を観察し、単量体成分の吸収により粒子径が大きくなっていることを確認することで容易に判断できる。
重合工程は、単量体成分を重合反応させて、ビニル重合体骨格を有する粒子を得る工程である。具体的には、シラン化合物としてビニル結合を有する有機基を持つものを用いた場合は、該有機基のビニル結合を重合させてビニル重合体骨格を形成する工程であり、吸収工程を経た場合は、吸収させた単量体成分、または吸収させた単量体成分とポリシロキサン骨格が有するビニル結合とを重合させてビニル(系)重合体骨格を形成する工程であるが、両方に該当する場合はどちらの反応によってもビニル(系)重合体骨格を形成する工程となり得る。
重合反応は、加水分解縮合工程や吸収工程の途中で行ってもよいし、いずれかまたは両方の工程後に行ってもよく、特に限定はされないが、通常は、加水分解縮合工程後(吸収工程を行った場合はもちろん吸収工程後)に開始するようにする。
重合法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いる方法、紫外線や放射線を照射する方法、熱を加える方法等、いずれも採用可能である。前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、前記ビニル重合体粒子の重合に使用されるものを挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体成分の総質量100質量部に対して、0.001質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001質量部未満の場合は、単量体成分の重合度が上がらない場合がある。ラジカル重合開始剤の溶媒に対する仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込む方法(ラジカル重合開始剤を単量体成分と共に乳化分散させておく態様、単量体成分が吸収された後にラジカル重合開始剤を仕込む態様);最初に一部を仕込んでおき、残りを連続フィード添加する方法、または、断続的にパルス添加する方法、あるいは、これらを組み合わせた手法等、従来公知の手法はいずれも採用することができる。
ラジカル重合を行う際の反応温度は40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上であり、100℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず複合粒子の機械的特性が不充分となる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。なお、ラジカル重合を行う際の反応時間は、用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、600分以下が好ましく、より好ましくは300分以下である。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
上述した製法によれば、後述する好ましい特性(機械的特性や粒度分布特性等)を有するビニル系重合体微粒子からなる基材粒子が得られる。
本発明に用いられる基材粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状のいずれでもよく、粒子表面の形状も、平滑状、襞状、多孔状のいずれでもよい。中でも、工業的に用途が多い点で球状が好適である。基材粒子の大きさは、質量平均粒子径で1mm(1000μm)以下とする。1mmを超える粒子は用途が限られ、工業上の利用分野も少ないためである。質量平均粒子径は、0.05〜500μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましく、0.5〜30μmがさらに好ましい。質量平均粒子径は、従来公知の粒度分布測定法において、体積平均粒子径として求められる値を意味し、具体的には、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置(例えば、商品名「コールターマルチサイザーIII型」、ベックマンコールター株式会社製)により測定される値とする。
また本発明に用いられる基材粒子の粒子径における変動係数(CV値)は、40%以下が好ましい。CV値が40%を超えると、粒子径のバラツキが大きすぎて親水化処理にムラが出るおそれがある。なお、CV値は、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置により測定される基材粒子の質量平均粒子径と、基材粒子の粒子径の標準偏差とを下記式に当てはめて求められる値である。
基材粒子の変動係数(%)=100×粒子径の標準偏差/質量平均粒子径
親水化微粒子の質量平均粒子径や変動係数の好適範囲も、基材粒子と同範囲である。
基材粒子は、前記した方法で親水化処理される。基材粒子と親水化微粒子の分散性、機械的特性、色相、粒度分布特性(CV値)は同程度であることが好ましく、親水化処理の前後で変化しないことが好ましい。なお、分散性とは、粒子が固着したり融着したりすることのない性質である。
機械的特性は、例えば、圧縮弾性率、圧縮破壊荷重、回復率等で評価できる。本発明の圧縮弾性率は、粒子に負荷を加え10%変形したときの弾性率(N/mm2:MPa)であり、圧縮破壊荷重は、圧縮を強めて破壊に至ったときの荷重(mN)であり、回復率は圧縮後の回復率(%)である。これらの測定方法については、実施例で詳述する。基材粒子、親水化微粒子のいずれにおいても、圧縮弾性率は、1000N/mm2以上が好ましく、2000N/mm2以上がより好ましく、3000N/mm2以上がさらに好ましい。同様に、圧縮破壊荷重は、1mN以上が好ましく、3mN以上がより好ましく、5mN以上がさらに好ましい。また、回復率は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する限り、本発明の範囲に含まれる。なお、以下においては、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
合成例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水400部、25%アンモニア水6部、メタノール180部を入れ、攪拌しながら、この溶液に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部を滴下口から添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合反応を行い、ポリシロキサン粒子の乳濁液を得た。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製:「ハイテノール(登録商標)NF−08」)0.35部をイオン交換水175部で溶解した溶液に、ジビニルベンゼン70部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製:「V−65」)3.4部を溶解した溶液を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間、乳化分散させて、単量体成分の乳化液を調製した。
得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体成分を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させ、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した。80℃で12時間真空乾燥させることにより、基材粒子1(有機質無機質複合粒子)を得た。この基材粒子1の粒子径をコールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)で測定したところ、質量平均粒子径は3.8μm、変動係数(CV値)は2.9%であった。なお、基材粒子の平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)により、30000個の粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を求めた。粒子径のCV値(%)は、下記式に従って求めた。
合成例2
フラスコに添加した3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの量を50部にした以外は、合成例1と同様にして、ポリシロキサン粒子の乳濁液を調製した。
次いで、前記「ハイテノールNF−08」0.75部をイオン交換水175部で溶解した溶液に、スチレン125部、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート25部および前記「V−65」4部からなる溶液を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間、乳化分散させて、単量体成分の乳化液を調製した。後は合成例1と同様にして、基材粒子2(有機質無機質複合粒子)を得た。
得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体成分を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させ、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した。80℃で12時間真空乾燥させることにより、基材粒子2を得た。この基材粒子2の質量平均粒子径は3.8μm、CV値は3.3%であった。
合成例3
25%アンモニア水の量を20部とし、単量体成分の乳化液調製の際に、スチレン75部、1,6−ヘキサンジメタクリレート75部とした以外は合成例2と同様にして基材粒子3(有機質無機質複合粒子)を得た。この基材粒子3の質量平均粒子径は2.1μm、CV値は5.2%であった。
合成例4
25%アンモニア水の量を20部とした以外は合成例1と同様にして基材粒子4(有機質無機質複合粒子)を得た。この基材粒子4の質量平均粒子径は2.0μm、CV値は5.3%であった。
合成例5
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、分散安定剤として前記「ハイテノールNF−08」を2部溶解したイオン交換水溶液150部を仕込んだ。ジビニルベンゼン100部と前記「V−65」2部を追加し、前記TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により5000rpmで5分間、乳化分散させて、懸濁液を調製した。
この懸濁液にイオン交換水250部を加え、窒素雰囲気下で65℃に昇温させ、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄し、さらに分級操作を行った。分級後の粒子を80℃で12時間真空乾燥させることにより、基材粒子5(ビニル重合体粒子)を得た。この基材粒子5の質量平均粒子径は2.1μm、CV値は25.0%であった。
合成例6
ジビニルベンゼン100部に替えて、スチレン30部と1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート70部からなる単量体混合物を用いた以外は合成例5と同様にして、基材粒子6(ビニル重合体粒子)を得た。この基材粒子6の質量平均粒子径は2.8μm、CV値は19.0%であった。
合成例7
ジビニルベンゼン100部に替えて、スチレン70部と1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート30部からなる単量体混合物を用いた以外は合成例5と同様にして、基材粒子7(ビニル重合体粒子)を得た。この基材粒子7の質量平均粒子径は2.3μm、CV値は23.5%であった。
合成例8
ジビニルベンゼン100部に替えて、メチルメタクリレート70部とエチレングリコールジメタクリレート30部からなる単量体混合物を用いた以外は合成例5と同様にして、基材粒子8(ビニル重合体粒子)を得た。この基材粒子8の質量平均粒子径は3.2μm、CV値は30.0%であった。
合成例9
25%アンモニア水の量を10部とした以外は合成例1と同様にして基材粒子9(有機質無機質複合粒子)を得た。この基材粒子10の質量平均粒子径は3.0μm、CV値は2.5%であった。
合成例10
25%アンモニア水の量を10部とし、単量体成分の乳化液調製の際に、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート100部とした以外は合成例1と同様にして基材粒子10(有機質無機質複合粒子)を得た。この基材粒子10の質量平均粒子径は3.0μm、CV値は2.7%であった。
実施例1
合成例1で得られた基材粒子1を120g、容量500Lのチャンバー式処理容器に入れた。粒子層の厚みは0.5mmであった。チャンバー内を1Paに減圧した後、フッ素(F2)および酸素(O2)を、F2:13.33Pa(0.1Torr)、O2:80kPa(600Torr)となるように導入した。F2は0.017体積%、残部はO2である。その後、30℃で60分間処理を行った。その後、チャンバー内を窒素置換した後、大気圧に戻した。ガス処理後の粒子のうち7gを、500mlのセパラブルフラスコに入れ、イオン交換水を加えて350gとし(粒子濃度2質量%)、常温(25℃程度)で10分間超音波分散を行った。次いで、85℃に加温し、3時間熱処理を行い、粒子の洗浄(水分との接触処理)を行った。室温まで冷却した後、粒子を濾過し、得られたケーキに、イオン交換水、メタノールの順で掛け洗いを行った後、80℃で12時間真空乾燥を行って、実施例1に係る親水化微粒子1を得た。
実施例2
F2を133.3Pa(1Torr)、0.17体積%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして親水化処理を行い、実施例2に係る親水化微粒子2を得た。
実施例3
基材粒子1に替えて基材粒子2を用いた以外は実施例2と同様にして実施例3に係る親水化微粒子3を得た。
実施例4
F2を0.67kPa(5Torr)、0.83体積%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る親水化微粒子4を得た。
実施例5〜11
基材粒子1に替えて合成例2〜8で得られた基材粒子2〜8を用いた以外は実施例4と同様にして実施例5〜11に係る親水化微粒子5〜11を得た。
比較例1
F2を1.33kPa(10Torr)、1.64体積%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして親水化処理を行い、比較例1に係る比較用親水化微粒子1を得た。
比較例2
合成例1で得られた基材粒子1を5g取り、メタノール45gに分散させ、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5gを添加して、撹拌しながら100±2℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、濾過し、得られたケーキをメタノールで洗浄した。80℃で12時間真空乾燥を行い、比較例2に係る比較用親水化微粒子2を得た。
比較例3
合成例1で得られた基材粒子1を0.5g取り、予め硫酸200ml/l、クロム酸400g/lとなるように調製した酸化処理混合液100mlに加え、70℃で5分間加熱処理を行った。室温まで冷却した後、濾過し、得られた微粒子を水で洗浄した。80℃で12時間真空乾燥を行い、比較例3に係る比較用親水化微粒子3を得た。
<特性評価方法>
各合成例で得た基材粒子と実施例および比較例で得た親水化微粒子について、下記特性を評価し、表1〜表3に示した。
[質量平均粒子径、CV値]
質量平均粒子径とCV値は、前記合成例1と同様の方法で測定した。
[粒子形状]
電子顕微鏡を用いて粒子の観察を行い、形状を目視で判定した。
[水への分散性]
イオン交換水30gを容量50ccのスクリュー管に入れ、粒子0.1gを添加して、水中への粒子の分散状態を目視で観察した。粒子がほぼ完全に水になじんでいるものを○、ほとんどの粒子が水になじんでいるが、一部水の上に浮いたままの粒子がある場合を△、ほとんどの粒子が水の上に浮いているものを×として評価した。
[疎水化度]
底部に撹拌子を置いた200ccのガラスビーカーにイオン交換水50ccを投入し、水面に粒子0.2gを浮かべた後、ビーカー内の水中にビュレットの先端を沈め、撹拌子を緩やかに回転させながら、前記粒子添加から5分後に、ビュレットからメタノールを徐々に導入した。水面の粒子の全量が完全に水中に沈むまでメタノールの導入を続け、水中に粒子が完全に沈んだときのメタノールの導入量(cc)を測定し、下式に基づき疎水化度を求めた。なお、前記ビュレットからメタノールを添加する前に、水面に浮かべた粒子が水中に完全に沈んだ場合は、疎水化度0とした。
疎水化度(%)=メタノール導入量(cc)×100/{水の量(cc)+メタノール導入量(cc)}
[色目の変化]
親水化処理前後の粒子の色目を目視観察により評価した。色目の変化のないものを○、わずかに黄色みを帯びるものを△、完全に変色したものを×とした。
[全フッ素量、溶出性フッ素含有量、非溶出性フッ素含有量]
前記した方法で全フッ素量と溶出性フッ素含有量を求め、その差を非溶出性フッ素含有量とした。
[酸価(KOH中和量)]
秤量した0.5gの試料粒子に超純水(オルガノ社製「PURELITE」PRA-0015-000型で調製、18.2MΩ・cm以下)を加えて全量を50gに調整した後、超音波処理を10分間行った。次いで、自動滴定装置(平沼産業社製、COM-1600)を用いて中和滴定を行い、電位変化量が最大になるときの適定液の添加量を求め、下式により酸価を算出した。なお、滴定液には、濃度0.005MのKOH水溶液を用いた。
[カルボキシル基およびカルボン酸塩の確認]
X線光電子分光分析装置(ESCA;アルバック−ファイ社製;走査型X線光電子分光装置;PHI Quantera SXMTM(Scanning X-ray Microprobe))を使用して、親水化処理後の基材粒子表面におけるカルボキシル基およびカルボン酸塩の生成の有無を確認した。
[C,O,F原子の表面存在率]
X線光電子分光分析装置(ESCA;JEOL社製;JPS−9000MC)を使用して、基材粒子および親水化微粒子表面におけるC,OおよびF原子の存在率(モル%)を測定し、下記式により各原子の相対表面存在率(%)を算出した。
C原子の相対表面存在率(%)=100×[C原子の存在率(モル%)/(C原子の存在率(モル%)+O原子の存在率(モル%)+F原子の存在率(モル%))]
O原子の相対表面存在率(%)=100×[O原子の存在率(モル%)/(C原子の存在率(モル%)+O原子の存在率(モル%)+F原子の存在率(モル%))]
F原子の相対表面存在率(%)=100×[F原子の存在率(モル%)/(C原子の存在率(モル%)+O原子の存在率(モル%)+F原子の存在率(モル%))]
[10%圧縮弾性率(10%K値:硬度)]
島津微小圧縮試験機(島津製作所社製,「MCTW‐500」)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.275mN/秒)で荷重をかけて、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの荷重と変位量(mm)を測定する。測定した圧縮荷重、粒子の圧縮変位、粒子の半径を、下記式:
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)に代入し、値を算出する。この操作を、異なる3個の粒子について行い、その平均値を基材粒子の10%圧縮弾性率とする。
[圧縮破壊荷重]
圧縮弾性率と同様にして粒子に荷重をかけ、粒子が変形により破壊したときの荷重(mN)を圧縮破壊荷重とした。
[圧縮変形回復率(回復率)]
微小圧縮試験機(島津製作所製:「MCTW‐500」)を用いて、試料粒子を反転荷重9.8mNまで圧縮した後、荷重を減らしていくときの荷重値と圧縮変位との関係を測定して得られる値であり、荷重を除く際の終点を原点荷重値0.098mNとし、負荷および除負荷における圧縮(回復)速度を1.486mN/秒として測定したときに、反転の点までの変位(L1)と、反転の点から原点荷重値をとる点までの変位(L2)との比(L1/L2)(%)として表した値である。
実施例1〜11で得られた親水化微粒子は、親水化処理によって疎水化度が0となっており、色目の変化もほとんどなかった。各親水化微粒子について、XPS(ESCA)で分析したところ、288eVにカルボキシル基に相当する炭素のピークが観測された。また、各微粒子についての機械的強度は、処理前後でほとんど変化なかった。一方、比較例1は、混合ガス中におけるフッ素の体積%が規定範囲を超えているため、粒子骨格が酸化によるダメージを受けて黒変した。また、比較例2では、粒子にシランカップリング処理を行ったが、親水化が不充分・不均一であり、水に分散しない粒子が多く認められた。また、クロム酸による酸化・親水化処理を行った比較例3では、粒子表面の親水化は充分であったが、クロム酸処理前に比べて粒子の圧縮破壊荷重や回復率等が低下してしまうことがわかった。
実施例12〜17
合成例9で得られた基材粒子9を120g、容量500Lのチャンバー式処理容器に入れた。混合ガスの組成およびチャンバー内のガスの温度を表4に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にしてガス処理を行って、親水化微粒子12〜17を得た。なお、実施例12〜17では、ガス処理後のイオン交換水による洗浄処理は行わなかった。
表4中、参考例1は基材粒子9の各種物性の測定結果を示すものである。
表4より、実施例12〜17で得られた微粒子は親水化処理によって疎水化度が0となっていた。すなわち、混合ガスが不活性ガスを含む場合においても同様に親水化処理が進行し、親水化微粒子が得られることが分かる。なお、各微粒子の機械的強度は、処理前後でほとんど変化がなかった。また、XPS(ESCA)を使用して、実施例12〜17の親水化微粒子表面を分析したところ、288eVにカルボキシル基に相当する炭素のピークが観察された。さらに、各原子の相対表面存在率(%)の結果から、親水化処理後の基材粒子は親水化処理前と比較して相対的に酸素原子量が増加しており、カルボキシル基が生成していることが確認できた。
また、溶出性フッ素量を測定したところ、親水化微粒子12では1.83mg/gであり、親水化微粒子14では1.50mg/gであった。
実施例18〜21
混合ガスの温度を−20℃(実施例18)、0℃(実施例19)、20℃(実施例20)、40℃(実施例21)にそれぞれ変更したこと以外は、実施例16と同様にしてガス処理を行って、親水化微粒子18〜21を得た。実施例18〜21でも、ガス処理後のイオン交換水による洗浄は行わなかった。
XPS(ESCA)を使用して、親水化処理後の基材粒子表面における各種原子の存在量の分析を行ったところ、288eVにカルボキシル基に相当する炭素のピークが観察された。また、親水化処理を行う際の混合ガスの温度が上昇するにつれて、相対的に酸素原子量が増加し、フッ素原子量が低下することが確認された(表5)。
実施例22,23
親水化微粒子12を7g、85℃のイオン交換水に浸漬させ、攪拌下、85℃で3時間洗浄した(粒子濃度6.3質量%)。その後、イオン交換水、メタノールの順で掛け洗いを行い、さらに、80℃で12時間真空乾燥を行って、親水化微粒子22を得た。
親水化微粒子14についても、同様の温水洗浄を行って、親水化微粒子23を得た。
実施例24,25
親水化微粒子12を7g、0.25Nの水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬させ(粒子濃度2質量%)、攪拌下、85℃で3時間アルカリ処理を行った。粒子をろ過した後、85℃のイオン交換水に浸漬させ(粒子濃度6.3質量%)、同温度で3時間洗浄処理を行った。室温まで冷却した後、粒子をろ過し、イオン交換水、メタノールの順で掛け洗いを行い、さらに、80℃で12時間真空乾燥を行って、親水化微粒子24を得た。
親水化微粒子14についても、同様のアルカリ処理および温水洗浄を行って、親水化微粒子25を得た。
親水化微粒子12,14および22〜25の溶出性フッ素量を測定した。結果を表6に示す。
表6より、溶出性フッ素量は、アルカリ処理や温水洗浄を行わなかった実施例12,14で最も多く、アルカリ処理や温水洗浄を行うことで低減できることが分かる。また、溶出性フッ素量の低減効果は、温水洗浄、アルカリ処理と温水洗浄の順で高くなることが分かる。
実施例26〜28
合成例10で得られた基材粒子10を120g、容量500Lのチャンバー式処理容器に入れた。混合ガスの組成およびチャンバー内のガスの温度を表4に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にしてガス処理を行って、親水化微粒子26〜28を得た。なお、実施例26〜28では、ガス処理後のイオン交換水による洗浄処理は行わなかった。
表7中、参考例2は基材粒子10の各種物性の測定結果を示すものである。
表7より、実施例26〜28で得られた微粒子は親水化処理によって疎水化度が0となっていた。すなわち、混合ガスが不活性ガスを含む場合においても同様に親水化処理が進行し、親水化微粒子が得られることが分かる。なお、各微粒子の機械的強度は、処理前後でほとんど変化がなかった。XPS(ESCA)を使用して、実施例26〜28で得られた親水化微粒子表面を分析したところ、288eVにカルボキシル基に相当する炭素のピークが観察された。また、各原子の相対表面存在率(%)の結果から、親水化処理後の基材粒子は親水化処理前と比較して、相対的に酸素原子量が増加しており、カルボキシル基の生成が確認できた。なお、親水化微粒子26の溶出性フッ素量は3.76mg/gであった。
実施例15,16(表4)と、実施例27,28(表7)のXPS(ESCA)分析結果より、モノマー成分がアクリレート系の基材粒子に比べて、モノマー成分がスチレン系(芳香族ジビニル化合物)の基材粒子の方が、同一親水化処理条件において元の基材粒子(親水化処理前)に対する親水化処理後のO原子の存在率の増加度合いが大きく、且つ、F原子存在率が高く、モノマー成分がスチレン系の基材粒子の混合ガスに対する反応性が高く、親水化処理されやすいことが分かる。
実施例29
親水化微粒子26を7g、85℃のイオン交換水に浸漬させ(粒子濃度6.3質量%)、攪拌下、85℃で3時間洗浄処理した。その後、イオン交換水、メタノールの順で掛け洗いを行い、さらに、80℃で12時間真空乾燥を行って、親水化微粒子29を得た。
実施例30
親水化微粒子26を7g、0.25Nの水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬させ(粒子濃度2質量%)、攪拌下、85℃で3時間アルカリ処理を行った。粒子をろ過した後、85℃のイオン交換水に浸漬させ(粒子濃度6.3質量%)、同温度で3時間洗浄処理を行った。室温まで冷却した後、粒子をろ過し、イオン交換水、メタノールの順で掛け洗いを行い、さらに、80℃で12時間真空乾燥を行って、親水化微粒子30を得た。
得られた親水化微粒子26,29および30の溶出性フッ素量を測定した。結果を表8に示す。
表8より、溶出性フッ素量は、洗浄処理により低減できることが分かる、また、洗浄処理によるフッ素低減効果は、基材粒子がスチレン系モノマーを含む場合と同様、温水洗浄、アルカリ洗浄と温水洗浄の両方を行った場合、の順に高まることが分かる。
また、実施例24、25、30で得られた各粒子に関して、XPS(ESCA)で表面元素分析を行った結果、Naの存在が確認された。