JPWO2009144792A1 - 貴金属焼結用組成物、貴金属焼結体の製造方法及び貴金属焼結体 - Google Patents

貴金属焼結用組成物、貴金属焼結体の製造方法及び貴金属焼結体 Download PDF

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Abstract

焼成により宝飾品、装飾品、装身具等に用いる貴金属焼結体を得ることができる貴金属焼結用組成物に係わり、その貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を低減しても貴金属の焼結体を得ることができると共に、その貴金属焼結体の格段の軽量化を図ることができる貴金属焼結用の組成物、その貴金属焼結体を得る製造方法及びその貴金属焼結体を提供する。本発明の貴金属焼結用組成物は、貴金属粉末と中空ガラス粉体と有機バインダー溶液とを混合してなることを特徴とする。

Description

本発明は、宝飾品、装飾品、装身具等に用いる貴金属焼結体を得ることができる貴金属焼結用組成物に係わる。詳しくは、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を低減しても貴金属の焼結体を得ることができると共に、その貴金属焼結体の軽量化を図ることができる貴金属焼結用の組成物、その貴金属焼結体を得る製造方法及びその貴金属焼結体に関する。
貴金属粉末と有機バインダーとを基本構成とする貴金属焼結用組成物(別名、貴金属粘土状組成物または貴金属可塑性組成物とも称される。)が知られている。この貴金属焼結用組成物を所定形状に造形し、乾燥した後、加熱焼結することにより、有機バインダーが分解、蒸発、燃焼等により除去されて、貴金属粉末の粒子相互が焼結し、目的の貴金属焼結体を製造することができる。このような貴金属焼結用組成物から得られた貴金属焼結体は、それ自体が多孔質となっているため、鋳造等により製造される金属成形体に比べて軽量であり(鋳造体にて対し最大で40%程度軽量できる)、特に身に付ける装飾品として好適に利用されている。(例えば、特許文献1〜6参照)。
一方、軽量化は多くの分野にて検討、実施されており、コンクリート製品では、骨材の周囲にセメントコンクリートをまぶして空隙率を大きくしたコンクリートや、セメントモルタルにパーライトやバーミキュライトなどの軽量骨材を加えて軽量化することが知られている。
また、各種のプラスチック製品では、樹脂に二酸化ケイ素(シリカ)粉等の軽量充填材を加えて軽量化することが知られている。
前記貴金属焼結用組成物を用いた貴金属焼結体製造の分野において、前記コンクリート製品やプラスチック製品の手法は適用できない。なぜならば、コンクリート製品は、セメントの固化(水硬反応)により骨材をマトリックスに取り入れて固まるものであり、貴金属粉末を高温で焼結させる貴金属焼結体製造とは基本的な反応システムが全く異なるためである。また、プラスチック製品は、樹脂が固化するものであって、やはり高温で焼結させる貴金属焼結体製造とは基本的な反応システムが全く異なるためである。
また、前記貴金属焼結用組成物を用いた貴金属焼結体製造に、パーライトやバーミキュライト等を適用しようとしても、これらを細粉化しないと適用できないが、これらの微細粉はおそらく見かけ密度が大きくなると推察され、しかも貴金属焼結体が貴金属色を失ってしまうため、到底適用できない。
さらに、これら軽量充填材の添加物を多量に混入させて、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大幅に低減した場合、そもそも貴金属の焼結体を得ることができるかも明らかでなかった。しかも、これらの軽量充填材の添加は、貴金属製品としての品位、或いは色や光沢といった貴金属ならでは視覚的(美的)価値を低下させてしまうものである。
尚、鋳造等による貴金属製造の分野では、中子を用いて空洞化を図る方法が採られることもあるが、装飾品などの複雑形状の製品を作製する場合には、中子を用いることは困難である。
また、前記貴金属焼結用組成物から焼結体を得るに際して、中子による空洞化が図られることがあるが、焼成時に焼けて焼失するような中子は、燃焼によるガスの発生が激しいため、形状に制限があった。例えば、中子としてコルクを使用し、そのコルクの表面全体に貴金属焼結用組成部を薄く貼った(塗った)場合、物品そのものが小さいもの、又はガスの抜ける穴が空いているものであれば問題ないが、完全に密閉被覆した場合には、焼成時のガスの力により焼結品に変形が生じてしまうという問題があった。
酸化銀粉末を含む貴金属焼結用組成物を焼成すると、酸化銀粉末が分解して酸素が発生するので、多孔質の焼成体を得ることができるが、前述と同様の焼成時の酸素ガスの力により焼結品に変形が生じてしまうという問題がある。(例えば、特許文献7参照)
特許第3867786号公報 特許第3456644号公報 特許第3248505号公報 特許第3896181号公報 特開2002−241802号公報 特開2007−51331号公報 特開2004−292894号公報
そこで、本発明は、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大きく低減しても貴金属の焼結体を得ることができると共に、視覚的(美的)価値を維持しながら、その貴金属焼結体の軽量化を図ることができる貴金属焼結用の組成物、その貴金属焼結体を得る製造方法及びその貴金属焼結体を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る貴金属焼結用組成物は、貴金属粉末と、有機バインダー溶液と、中空ガラス粉体とを含む貴金属焼結用組成物であって、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であることを特徴とする。
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、中空のガラス粉体を貴金属焼結用組成物を混入することにより、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大きく低減しても貴金属の焼結体を得ることができると共に、視覚的(美的)価値を維持しながら、その貴金属焼結体の軽量化を図ることができることを見出し、本発明に到達したものである。
かような請求項1の貴金属焼結用組成物によれば、造形性などの取り扱い性が低下することがなく、従来の貴金属焼結用組成物と同様に取り扱うことができ、視覚的(美的)価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
本発明の請求項2に係わる貴金属焼結用組成物は、貴金属粉末50〜99wt%と、有機バインダー溶液1〜50wt%とからなる貴金属基本組成物に、中空ガラス粉体を含有させた貴金属焼結用組成物であって、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であることを特徴とする。
かような構成によっても、造形性などの取り扱い性が低下することがなく、視覚的(美的)価値を維持しながら、従来の貴金属焼結用組成物と同様に取り扱うことができ、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
このような請求項1乃至請求項2における本発明の“かさ体積”とは、例えばメスシリンダーに中空ガラス粉体を入れて、該メスシリンダーの目盛りで測定した体積であって、粉体自身の体積の他、粉体と粉体との隙間の体積や粉体と容器との隙間の体積を含むものである。したがって、貴金属焼結用組成物の全体体積に占める中空ガラス粉体割合が、含まれる中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲とは、(加える中空ガラス粉体のかさ体積/全体の組成物の実体積)×100=5〜160%を意味する。100%を超えるのは、中空ガラス粉体の“かさ体積”を用いるためである。
一般に、粒径の異なる2種の粉体(例えば、貴金属粉末と中空ガラス粉体)を混ぜ合わせると、混ぜ合わせた粉体のかさ体積は、元のそれぞれの粉体のかさ体積の和より小さくなる。これは、大きな粒子間に小さな粒子が入り込んで、かさ密度が大きくなるためである。そのため、本発明の場合、全体の組成物の実体積が、少なくとも貴金属粉末と中空ガラス粉体と有機バインダー溶液が混ぜ合わせた貴金属焼結用組成物の実体積と言うことになり、この実体積をベースに添加する中空ガラス粉体のかさ体積を比較するので100%を超えるのである。
かような定義をするのは、貴金属粉末や中空ガラス粉体は、その形状や状態により“かさ密度”が異なり、wt%やvol%に統一しても、実質的な望ましい状態を示すことができないからである。
さらに、上述した本発明における好ましい実施形態を述べると、本発明の請求項3に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、前記中空ガラス粉体は、平均粒径が15〜65μmの中空の粉体であり、前記貴金属粉末は、平均粒径が1.0〜20μmの粉末であることを特徴とする。
本発明に係わる貴金属粉末の“平均粒径”とは、中位径、中径、メディアン径、メジアン径または50%粒子径とも言い、通常D50で表示されるもので、累積曲線の50%に対応する粒径を意味する。具体的には3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)を用い、測定条件を[粒子透過性:反射]と[真球/非球形:非球形]としたときに測定される粒度分布のD50の値とする。
一方、本発明に係わる中空ガラス粉体の“平均粒径”の定義は、上述と変わりがない。しかし、3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)の測定条件は、[粒子透過性:透過、粒子屈折率:測定する中空ガラス粉体の屈折率]と[真球/非球形:真球]とする。
前記貴金属粉末のより好ましい態様としては、30〜70wt%が平均粒径2.2〜3.0μmである粉末と、残部が平均粒径5〜20μmである粉末との混合粉末を用いるのが好ましい。
前記中空ガラス粉体は、内部が中空のガラス粉体であり、かさ密度が0.075〜0.38g/cm3のものが好ましく使用できる。また、この中空ガラス粉体は、前述の如く平均粒径(D50)が15〜65μmであるが、粒度分布おける粒径の小さい方からの体積累積値が累積値10%(D10)において5〜30μmの範囲及び累積値90%(D90)において20〜110μmの範囲のものが好ましく使用できる。
本発明の請求項4に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジに前記貴金属焼結用組成物を1ml充填し、該シリンジのプランジャーを17mm/min.の速度で10mm押して該シリンジ出口から該前記貴金属焼結用組成物を押し出た際の押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nであることを特徴とする。
前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値は、前記貴金属粉末およびの前記中空ガラス粉体の各大きさ、形状等に影響され、さらに有機バインダーの種類、組合せ、溶媒量等、並びにこれら貴金属粉末、中空ガラス粉体及び有機バインダー溶液の配合割合等により変化する。したがって、押し出し荷重の最大測定値は、貴金属焼結用組成物のトータル的な指標となることを見いだし、本発明に到達したものである。
前記内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ(注射器)としては、商品名:JMSシリンジ(マイクロ)2ml針なし (without NEEDLE cyringe)[株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]が好ましく使用できる。
この本発明の請求項4に係わる貴金属焼結用組成物は、前記押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nの範囲にあれば、造形性に優れ、好適な貴金属焼結用組成物である。
本発明の請求項5に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項4において、粘土状の塑性を有する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nであることを特徴とする。
この本発明の請求項5に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、通常の粘土の如く手作業で造形するのに好適な可塑性を有する造形性に優れた貴金属焼結用組成物である。
本発明の請求項6に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項4において、シリンジに入れた状態から押し出して造形する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nであることを特徴とする。
この本発明の請求項6に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、シリンジに該貴金属焼結用組成物を充填しそのシリンジ先端に細いノズルを設けた状態から、容易に手動でシリンジのプランジャー(ピストン部)を押して該貴金属焼結用組成物を糸状ないし紐状に押し出すことが出来、繊細な線模様を表現するのに好適な貴金属焼結用組成物である。
本発明の請求項7に係わる貴金属焼結体の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物を造形する工程と、該造形物を乾燥する工程と、該造形乾燥物を焼成する工程とを有することを特徴とする。
かような請求項7の貴金属焼結体の製造方法によれば、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物は造形性などの取り扱い性が低下することがないので、従来の貴金属焼結体の製造方法と同様に造形、乾燥、焼成することができ、視覚的価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
本発明の請求項8に係わる貴金属焼結体は、請求項7記載の方法により製造したことを特徴とする。
本発明の請求項8に係わる貴金属焼結体は、中空ガラス粉体が混入させて大幅に軽量化した貴金属焼結体であって、従来の貴金属焼結体と同様に視覚的価値を維持した貴金属焼結体である。
本発明の貴金属焼結用組成物は、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大幅に低減でき、しかも造形性などの取り扱い性は、従来の貴金属焼結用組成物と同様であり、従来の中空ガラス粉体を含まない貴金属焼結体に対して60wt%程度軽量化した貴金属の焼結体を得ることができる。
その貴金属焼結体は、視覚的(美的)価値も従来のものと同様であり、従来の中空ガラス粉体を含まない貴金属焼結用組成物では装飾品としては重すぎて使用できなかった比較的大型の装飾品を作製することもできる。
さらに、貴金属焼結用組成物自体が軽量であるため、特に大型の美術工芸品の作製における作業性が向上する。
また、中空ガラス粉体の添加重量が微量でも、その密度は著しく小さいので、貴金属粉末の使用量を大きく削減でき、コスト削減の効果も大きい。例えば銀では、60wt%程度使用量を削減することができる。
シリンジ押し出し荷重測定装置の部分傾視図 650℃30分で焼成した本発明の貴金属焼結体のSEM写真(1000倍) 650℃30分で焼成した本発明の貴金属焼結体のSEM写真(5000倍) 800℃30分で焼成した本発明の貴金属焼結体のSEM写真(1000倍) 800℃30分で焼成した本発明の貴金属焼結体のSEM写真(5000倍)
符号の説明
10 測定装置本体
20 支柱
30 クロスヘッド
40 ロードセル
50 上部圧縮治具
60 支柱台
70 下部固定圧縮台
80 H型鋼
90 シリンジ
本発明の貴金属焼結用組成物は、貴金属粉末と、有機バインダー溶液と、中空ガラス粉体を含有してなるものである。
前記貴金属粉末は、Au,Ag,Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,Os等の純貴金属粉又はこれらの元素の一種以上を主成分とする貴金属合金粉を言う。これらの貴金属粉末の粒径については、特に限定するものではないが、平均粒径が1.0〜20μmの粉末で、最大で60.0μm程度、最小で0.3μm程度の粉末を用い、焼結温度が600〜900℃になるように粒度分布を調整することが好ましい。例えば、より好ましい態様としては、30〜70wt%が平均粒径2.2〜3.0μmである粉末と、残部が平均粒径5〜20μmである粉末との混合粉末を用いるのが好ましい。
前記“平均粒径”とは、中位径、中径、メディアン径、メジアン径または50%粒子径とも言い、通常D50で表示されるもので、累積曲線の50%に対応する粒径を意味する。具体的には3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)を用い、測定条件を[粒子透過性:反射]と[真球/非球形:非球形]としたときに測定される粒度分布のD50の値とする。
前記貴金属粉末は、製造方法は特に指定はないが、粉末の粒形が球状に近い形状であるものが好ましく使用される。
粉末の粒形が球状でない異方性の粒子は、例えば、シリンジのようなところから押し出すとき、シリンジから出てきた棒の外側と内側で速度差が生じ、流れに沿って配向する傾向にある。そのため、乾燥や焼結時の収縮の際に、中心部と外側で異なる挙動を示すことになり、欠陥の原因となりやすい。
一方、粉末の粒形が球状に近いと、粉末は高密度化しやすいため、より低温又はより短時間での焼成が行える。また、粘土としての流動性が上がり、粘土を曲げ、伸ばすといった造形操作が行いやすくなる。
ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、酸化還元法、気相法の製法にて得られる貴金属粉末は略球形状となる。
前記中空ガラス粉体は、内部が空洞になっているガラス粉体であり、かさ密度が0.075〜0.38g/cm3のものが好ましく使用できる。中空部分は減圧状態であることが好ましい。
また、この中空ガラス粉体は、平均粒径(D50)が15〜65μmであるが、粒度分布おける粒径の小さい方からの体積累積値が累積値10%(D10)において5〜30μmの範囲、累積値90%(D90)において20〜110μmの範囲及び累積値95%(D95)において25〜120μmの範囲のものが好ましく使用できる。
なお、この“平均粒径”の定義は、前述の前記貴金属粉末で説明した平均粒径の定義とかわりがないが、3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)の測定条件は、[粒子透過性:透過、粒子屈折率:測定する中空ガラス粉体の屈折率]と[真球/非球形:真球]とする。
前記中空ガラス粉体の材質としては、例えば、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス(主成分SiO、CaO、NaO、B)、硼珪酸ガラス、ソディウムボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス等が好ましく使用でき、軟化点は550℃以上が好ましい。このような中空ガラス粉体は、市場で購入可能のであり、例えば、商品名:グラスバブルズ(住友スリーエム製)、商品名:セルスター(東海工業株式会社製)、商品名:Q-CEL(PQ Australia Pty Ltd製)、商品名:Extendospheres(Sphere One,Inc.製)などが挙げられる。
前記有機バインダー溶液は、有機バインダーと、溶媒と、必要により添加される溶媒に混合可能な有機系添加物とからなる。
前記有機バインダーとしては、特に限定するものではないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース(カルボキシシメチルセルロース)等のセルロース系バインダー、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系バインダー、澱粉、小麦粉、ブリティシュガム、キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、プルラン等の多糖類系バインダー、ゼラチン等の動物系バインダー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系バインダー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル等のアクリル系バインダー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール等のその他樹脂系バインダーなどが挙げられる。
これら有機バインダーの一種以上のバインダーを選択して使用することが好ましい。セルロース系バインダーにおいては、特に水溶性のセルロース系バインダーを用いることが最も好ましい。
前記有機バインダーのうち、水溶性のセルロース系バインダーは、可塑性を付与する作用を果たす。また、ポリエチレンオキサイドは、低濃度で高い粘性を与え、液状での接着性を向上する作用を果たす。また、アルギン酸ナトリウムは、前記グリセリンと同様に適度な保水性を与えるが、密着向上作用にも寄与する。さらに、ポリアクリル酸エステル及びポリアクリル酸は、粘着性をより強固にする作用を果たす。
さらに必要により、溶媒に混合可能な有機系添加物として前記有機バインダー溶液に下記の物質を加えてもよい。
すなわち、有機系添加物としては、有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸)、フタル酸−n−ジオクチル、フタル酸−n−ジブチル等の有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン、ジグリセリン、イソプレングリコール、1・3ブチレングリコール、)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)、フェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してなる網状高分子であるリグニン、流動パラフィンおよび油脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物(例えば、オレイン酸を多く含むオリーブ油)などが挙げられる。
これら有機系添加物は、可塑性を改善する目的で添加されたり、造形時に貴金属焼結用組成物が手に付着しないようにする目的で添加されたりする。さらに、上記有機系添加物であるリグニンやグリセリンは、適度な保水性を与える。
さらに有機系添加物としてアニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、貴金属粉末と有機バインダーとの混合性が良くなるという作用や保水性を向上させる作用を果たす。
これら有機バインダーと必要により添加される上記有機系添加物とを水、水/アルコール混合液、アルコール、エステル等の溶媒に溶かして使用する。溶媒量は、目的とする貴金属焼結用組成物の形態により決定される。貴金属焼結用組成物に対する溶媒量の割合が少ない場合、貴金属焼結用組成物は粘土状の挙動を示し、溶媒量の割合が大きい場合は、スラリー状またはペースト状の挙動を示す。当然、溶媒量が少なすぎると硬くなって造形し難く、多すぎると形状が保てなくなる。最終的に貴金属焼結用組成物に対する溶媒量の割合が所定の量になるように、溶媒添加を複数回に分け、所定濃度の有機バインダー溶液を貴金属粉末に加えた後に溶媒のみ添加してもよい。
また、ペースト状の貴金属焼結用組成物を目的とする場合には、有機バインダーと溶媒との両者を兼ねて(すなわち、有機バインダー溶液として)、油状の(メタ)アクリル酸エステル共重合物やフタル酸エステル等を使用するようにしてもよい。
前記有機バインダーと、前記溶媒と、必要により添加される溶媒に混合可能な前記有機系添加物とからなる前記有機バインダー溶液は、通常は、前記有機系添加物を含めて1〜20wt%となる濃度として用いるのが好ましい。
前記中空ガラス粉体を除く、貴金属粉末と前記有機バインダー溶液と必要により添加される焼結促進剤、密着性向上剤等の無機系添加物とにより本発明に係わる貴金属基礎組成物が構成される。
この貴金属基礎組成物において、溶媒を除いた固形分表示で澱粉0.02〜3.0wt%と水溶性のセルロース系バインダー0.02〜3.0wt%を、前記有機バインダーとして、より好ましく使用することが出来る。この場合、溶媒は水が好ましい。
この水溶性のセルロース系バインダーについては、前述のように可塑性を付与する作用を果たすが、前記澱粉は、貴金属焼結用組成物を乾燥した時の乾燥強度を増大させる作用を果たす。しかし、有機バインダーとして澱粉のみを用いると、塗着時に生地割れが発生し易くなる。そこで水溶性のセルロース系バインダーを併用することにより、これらの問題を解消できるのである。
この澱粉は、前記した通り貴金属基礎組成物中の溶媒である水を除いた固形分表示で0.02〜3.0wt%を含有するのであるが、0.02wt%より少ないと、乾燥時の強度不足をまねき易くなり、また3.0wt%を越えると、塗着時、生地割れが発生し易くなり、収縮率も増大する。一方、水溶性のセルロース系バインダーも前記の通り、貴金属基礎組成物中の溶媒である水を除いた固形分表示で0.02〜3.0wt%を含有するのであり、0.02wt%より少ないと、可塑性を付与する効果が充分に発揮されず、また3.0wt%を越えると、収縮率が増大する。このような水溶性のセルロース系バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が用いられ、溶媒である水に溶解して用いる。
上述した澱粉と水溶性のセルロース系バインダーとを有機バインダーとして用いる場合、前記貴金属基礎組成物中における有機バインダーの量は、より好ましい態様としては、有機バインダーの合計量が、水を除いた固形分表示で0.1〜4wt%の範囲内であることが望ましい。この場合、有機バインダーの量が0.1wt%より少ないと、均質な基礎組成物とすることが難しい。また、塗着、乾燥後の強度が弱くなるといった不都合がある。有機バインダーの量が4wt%を越えると、収縮率が大きくなり、ひび割れが生じやすくなる。
ポリエチレンオキサイドを用いる場合には、分子量10万〜数百万のポリエチレンオキサイドを0.1〜3wt%の範囲内であることが望ましい。
また、界面活性剤を用いる場合には、0.03〜3wt%の範囲内であることが望ましく、油脂を用いる場合には、0.1〜3wt%の範囲内であることが望ましい。
また、前記焼結促進剤としてBi、Se、Sb、In、Sn、Zn粉末又はそれらの合金粉末を加えても良い。また、この添加剤として、B、SiO及びLiOから選ばれる少なくとも1種の化合物を加えてもよい。すなわち、B酸化物、Si酸化物及びLi酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を前記焼結促進剤として含有させてもよい。尚、前記のように製品としての中空ガラス粉体には、Si酸化物やB酸化物が含まれているので、これらは貴金属粉末の焼結時に助剤としての効果を発揮することが見込まれる。
さらに、前記密着性向上剤として炭酸鉛、炭酸リチウム、酸化亜鉛、リン酸、炭酸ナトリウム、酸化バナジウム、珪酸ナトリウム、リン酸塩等から選ばれる金属化合物粉末又はガラス粉末を加えても良い。
その他の無機系添加物としては、貴金属が銀や銀合金の場合には、常温にてイオウイオン(S2−)と銀とが反応して黒色の硫化銀(AgS)等の硫化物の膜が形成されてしまい、その装飾効果が著しく低減してしまうのを防止する対策として、純銀(Ag)粉末に対して0.05〜1wt%のパラジウム(Pd)粉末を添加し、耐硫化特性を有する銀焼結品とすることなどが挙げられる。
貴金属焼結用組成部における前記の各成分の添加割合は、前記貴金属粉末50〜99wt%と、前記有機バインダー溶液1〜50wt%とからなる貴金属基本組成物に、中空ガラス粉体を、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合が、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して、前記全体体積の5〜160%の範囲となるように、含有させるのが好ましい。この場合、貴金属焼結用組成部中の前記有機バインダー溶液は、1〜20wt%に相当する濃度となる。
かような添加割合によって、造形性などの取り扱い性が低下することがなく、視覚的(美的)価値を維持しながら、従来の貴金属焼結用組成物と同様に取り扱うことができ、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
前記“かさ体積”とは、例えばメスシリンダーに中空ガラス粉体を入れて、該メスシリンダーの目盛りで測定した体積であって、粉体自身の体積の他、粉体と粉体との隙間の体積や粉体と容器との隙間の体積を含むものである。
したがって、貴金属焼結用組成物の全体体積に占める中空ガラス粉体割合が、含まれる中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲とは、(加える中空ガラス粉体のかさ体積/全体の組成物の実体積)×100=5〜160%を意味する。100%を超えるのは、加える中空ガラス粉体の“かさ体積”を用いるためである。
一般に、粒径の異なる2種の粉体(例えば、貴金属粉末と中空ガラス粉体)を混ぜ合わせると、混ぜ合わせた粉体のかさ体積は、元のそれぞれの粉体のかさ体積の和より小さくなる。これは、大きな粒子間に小さな粒子が入り込んで、かさ密度が大きくなるためである。そのため、本発明の場合、全体の組成物の実体積が、少なくとも貴金属粉末と中空ガラス粉体と有機バインダー溶液が混ぜ合わせた貴金属焼結用組成物の実体積と言うことになり、この実体積に対して添加する中空ガラス粉体のかさ体積を比較するので100%を超えるのである。
かような定義をするのは、貴金属粉末や中空ガラス粉体は、その形状や状態により“かさ密度”が異なり、wt%やvol%に統一しても、実質的な望ましい状態を示すことができないからである。
貴金属焼結用組成部における前記の各成分の添加割合は、上述したように、前記貴金属粉末50〜99wt%と、前記有機バインダー溶液1〜50wt%とからなる貴金属基本組成物に、中空ガラス粉体を、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合が、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して、前記全体体積の5〜160%の範囲となるように、含有させるのが好ましい。これを換言すると、貴金属粉末50〜99wt%と、有機バインダー0.02〜10wt%を含有し、残部を溶媒とした前記貴金属基本組成物を40〜90体積%と中空ガラス粉体10〜60体積%を含有する組成と表現される。
特に軽量化による貴金属粉末削減の効果と軽量粘土組成物を作成する工程のコストを比較した場合、中空ガラス粉体の添加量を10体積%以上にすることが望ましい。中空ガラス粉体を60体積%以下配合した貴金属組成物は、焼成後に例えば研磨時に破断することがなく、亀裂を生ずることもない。
貴金属焼結用組成部における前記の各成分の添加割合は、前記貴金属粉末およびの前記中空ガラス粉体の各大きさ、形状等に大きく影響され、さらに目的とする貴金属焼結用組成物の形態(粘土状、スラリー状、ペースト状等)により有機バインダーの種類、組合せ、溶媒量等が異なるので一概に規定することは出来ない。そこで、貴金属焼結用組成物のトータル的な指標(例えば、最終的な合否の判定指標)として、シリンジ(注射器)に前記貴金属焼結用組成物を充填し、該シリンジ出口から該前記貴金属焼結用組成物を押し出す際の最大押出荷重の測定値を用いる。
前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値は、前記貴金属粉末およびの前記中空ガラス粉体の各大きさ、形状等に影響され、さらに有機バインダーの種類、組合せ、水分量等、並びにこれら貴金属粉末、中空ガラス粉体及び有機バインダー溶液の配合割合等により変化するので、貴金属焼結用組成物のトータル的な指標と成り得る。
このシリンジ押し出し荷重の最大値を測定する装置および測定手順を説明する。
(1)測定装置
シリンジ押し出し荷重測定装置として、図1に示した試験装置(株式会社島津製作所製、小型卓上試験機 EZ Test[EZ−S型])を使用した例を述べる。測定装置本体10の支柱20に沿ってクロスヘッド30が希望する一定の速度で上下動可能に設けられている。
このクロスヘッド30の先端下部に、ロードセル40の測定子下端を介して上部圧縮治具50が固定されている。この上部圧縮治具50の先端には、シリンジ(注射器)90のプランジャー(ピストン部)91に当接して押し下げることが出来るように円盤状のプレート51が設けられている。
一方、測定装置本体10の支柱20の基端下部には支柱台60が設けられている。その支柱台60には、前記上部圧縮治具50の下方位置に下部固定圧縮台70が固定されている。この下部固定圧縮台70の上面にH形鋼[H125(H寸法)×125(B寸法)]80が載置されている。H形鋼80の上部フランジ部81には、シリンジ90のバレル(外筒)92を貫通させるが該バレル92に設けられたフランジ部93は通過させない孔82が設けられている。
(2)測定方法
内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ[商品名:JMSシリンジ2ml針なし(マイクロ)(without NEEDLE cyringe)/株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]に、測定する貴金属焼結用組成物を1ml充填する。このシリンジ90を測定装置本体10の下部固定圧縮台70に載置されたH形鋼80の孔82に上方から挿通し、シリンジ90のフランジ部93をH形鋼80の上部フランジ部81に当接させてシリンジ90を固定する。
次いでクロスヘッド30を17mm/minの一定の速度で支柱20に沿って降下させ、上部圧縮治具50先端のプレート51で、シリンジ90のプランジャー91を押圧してシリンジ90の出口から該前記貴金属焼結用組成物を押し出す。シリンジ90のプランジャー91が10mm移動する間の押し出し荷重を付属するレコーダー(図示せず)で記録し、その最大測定値を求める。
上述した測定方法により測定した押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nの範囲にあれば、造形性に優れ、好適な貴金属焼結用組成物である。
さらに、押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、特に、一般の粘土の如く、手作業で造形するのに好適な可塑性を有する造形性に優れた貴金属焼結用組成物である。
また、前記押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、シリンジに該貴金属焼結用組成物を充填しそのシリンジ先端に細いノズルを設けた状態から、容易に手動でシリンジのプランジャー(ピストン部)を押して該貴金属焼結用組成物を糸状ないし紐状に押し出すことが出来、繊細な線模様を表現するのに好適な貴金属焼結用組成物である。
通常、造形に用いるシリンジは、好ましくは10mlのものを使用し、そのシリンジ先端に設ける細いノズルは、好ましくは0.4〜1.2mmφのものを使用する。
粘土をシリンジから出すときに、必要量を出来るだけ一定の速度で出す必要がある。押し出す速度が遅くなった部分や途中で一旦止めた部分は、細くなってしまい美的価値が下がってしまう。
ノズルが細くなるほど、シリンジから押し出すときの抵抗が大きくなるので、あまり硬すぎると、一定の速度で出すことが難しくなる。ただし、細いノズルは、貴金属焼結用組成物の表面積が大きくなるため、早く乾燥するので、通常の貴金属焼結用組成物より、やわらかい貴金属焼結用組成物にしても、液ダレするまえに表面が固化して形状を維持できる。
逆に、やわらかい粘土で太い線を描くと、すぐに液ダレが生じてしまう。太い線であれば、シリンジから押し出す抵抗もへるので、その分、硬い粘土を使用する。
本発明の貴金属焼結体の製造方法は、上述した貴金属焼結用組成物を造形する工程と、該造形物を乾燥する工程と、該造形乾燥物を焼成する工程とを有する。
本発明の貴金属焼結用組成物は、造形性などの取り扱い性が低下することがないので、従来の貴金属焼結体の製造方法と同様に造形、乾燥、焼成することができ、視覚的価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
したがって、前記貴金属焼結用組成物を造形する工程では、従来の(中空ガラス粉体を含まない)貴金属焼結用組成物と同様に、手やヘラ等の治具を用いて任意に造形してもよい。また、型取り成形してもよく、一般的に使用される型に細工を加え、型取りをしてもよく、またはその両者を併用するようにしてもよい。例えば、貴金属焼結用組成物を型に入れ、さらに型から取り出した貴金属焼結用組成物に手や治具等を用いて細工を入れるようにしてもよい。
本発明の貴金属焼結用組成物は、中空ガラス粉体を含まない従来の貴金属焼結用組成物、貴金属焼結用造形物、又は貴金属鋳造品などと適宜に組み合わせて乾燥・焼成してもよい。例えば、銀と金、白金と金のように、組み合わせ、同時又は後から乾燥・焼成してもよい。
前記造形乾燥物を焼成する工程では、焼成温度を中空ガラス粉体の軟化点付近の600〜900℃の間になるように調整する。従来と同様、特殊な装置や設備を要することなく、軽量の貴金属焼結体を作製することができる。
次に、表2の最上段の組成を示す本発明の貴金属焼結用組成物(銀焼結用組成物)を、電気炉にて650℃-30min焼成した本発明の貴金属焼結体のSEM写真(走査型電子顕微鏡[Scanning Electron Micrscope]の写真)の例を、図2及び図3に示す。
通常、貴金属の地金より貴金属粉を用いた成形体は、焼成すると収縮する性質があり、その収縮は密度が小さければ小さいほど激しくなるので、出来上がった焼結体は元の成形体とかけ離れた形状になってしまうことがある。
しかし、本発明の貴金属焼結用組成物(中空ガラス粉体入り)の場合、密度が小さいにもかかわらず、SEM写真から650℃-30minの焼成条件の場合、ガラスは溶けずに形状を保っており、中空ガラス粉体が貴金属粉末の体積方向の収縮を阻害することで焼結体の形状を維持していることが理解される。
さらに、表2の最上段に示す上記と同じ組成の貴金属焼結用組成物(銀焼結用組成物)を、電気炉にて800℃-30min焼成した本発明の貴金属焼結体のSEM写真の例を、図4及び図5に示す。
このSEM写真から800℃-30min の焼成条件の場合、ガラスは変形しているが完全に溶けきってはおらず、ある程度形状を維持している。密度が小さいにも係わらず中空ガラスが貴金属粉末の体積収縮を阻害し、焼結体の形状を維持していることが理解される。
本発明の貴金属焼結体は、中空ガラス粉体が混入させて大幅に軽量化した貴金属焼結体であって、従来の貴金属焼結体と同様に視覚的価値を維持した貴金属焼結体である。
すなわち、本発明の貴金属焼結体は、中空ガラス粉体が貴金属焼結体中に点在する構造であるため、見かけ上は従来の中空ガラス粉体を含まない貴金属焼結体と同様であり、極めて軽量である。従来と同様に研磨により貴金属光沢を得ることができ、身に付けるペンダント(ヘッド)やブローチ等の装飾体として、さらには眼鏡、鞄の金具、時計のベルト、ケースや文字盤周りの部品を軽量化したパーツとしても好適に利用することができる。
また、本発明の貴金属焼結体に、電気メッキ、無電解メッキ、或いは蒸着成膜技術をはじめとするPVD、CVDなどの表面処理を施すことで装飾効果を一層付加することができる。特に本発明の貴金属焼結体は、一部表面に電気絶縁性物質を有しているため、電気/無電解メッキなどの表面処理工程には導電化をはかるためのアクティベーター、センシタイザー処理(活性化)を施した後にメッキを行うことができる。また、PVD/CVDなどの処理には密着性の向上をはかるため中間膜を構成することもできる。
さらに、中空ガラス粉体に着色を施した後に貴金属粘土組成物と混合することにより、装飾効果を高めることもできる。
〔実施例1〕
デンプン8.75wt%、セルロース10wt%および残部が水から成る有機バインダー溶液8wt%と、平均粒径2.5μmのAg粉末50wt%(全体では46wt%)、平均粒径20μmのAg粉末50wt%(全体では46wt%)からなる銀合金粉末92wt%とを混合した物を銀基本組成物とした。
この銀基本組成物99.8gに中空ガラス粉体(住友スリーエム株式会社製グラスバブルズ:かさ密度0.075g/cm,真密度0.125g/cm,粒径65μm)0.2g(単独状態のかさ体積は2.67cm)を混合し、銀焼結用組成物とした。
この銀焼結用組成物を立方体に成型したときの体積と重量から、銀焼結用組成物の密度を求めたところ、5.51g/cmであった。
この銀焼結用組成物を内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ[商品名:JMSシリンジ(マイクロ)2ml針なし (without NEEDLE cyringe)/株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]に詰めて、前述した押し出し荷重の測定を行った結果は、0.90Nであった。
この銀焼結用組成物を一定容積のシリコンモールドで型取りし、電気炉にて表1の条件で焼成した。その後、でき上がったサンプルをバレル研磨し、その際にサンプルに亀裂や破断等の破壊が起こるかどうかで合否の評価をした。結果は、表1に併せて記載した。
また、前記シリコンモールドに充填して使用した銀焼結用組成物の重量並びにそれを焼成して得た焼結体の重量を表2に示した。焼成条件は、600℃、30分とし、結果は表3に記載した。表3中における重量減少率は、以下の式にて導いた。
重量減少率=(比較例6の銀焼結体重量−実施例の銀焼結体重量)÷比較例6の銀焼結体重量
〔実施例2〜8〕
全体の組成物に占める中空ガラス粉末のかさ体積が5〜160%の範囲になるように、適宜、中空ガラス粉体の添加量、大きさを表2に示す条件に変えた以外は、前記実施例1と同様に実施した。焼成条件は、600℃、30分とし、結果は表2,表3に記載した。
〔比較例1〕
中空ガラス粉体の添加量、大きさを表2に示す条件に変えた以外は、前記実施例1と同様に実施した。焼成条件は、600℃、30分とし、銀焼結用組成物の組成と結果は、それぞれ表2,表3に記載した。
〔比較例2,3〕
中空ガラス粉体の代わりに、平均粒径50μm、かさ密度0.02g/cm3の微小中空球体プラスチック(商品名:EXPANCEL[日本フィライト株式会社製])を、比較例2では1.3g、比較例3では0.1gをそれぞれ加えて、共に銀焼結用組成物全体の重量を100gとした以外は、前記実施例1と同様に実施した。焼成条件は、600℃、30分とした。比較例2及び比較例3共に、焼成中に変形し、綺麗な焼結体を得ることができなかった。銀焼結用組成物の組成と結果は、それぞれ表2と表3に記載した。
〔比較例4,5〕
中空ガラス粉体の代わりに、平均粒径60μm、かさ密度0.4g/cm3のシリカ系微小中空球体(商品名:フィライト[日本フィライト株式会社製])を、比較例4では15.8g、比較例5では1.4gをそれぞれ加えて、共に銀焼結用組成物全体の重量を100gとした以外は、前記実施例1と同様に実施した。焼成条件は、600℃、30分とした。比較例4及び比較例5共に、焼結体の研磨を行っても表面に不純物が見られ、十分な金属光沢が得られなかった。銀焼結用組成物の組成と結果は、それぞれ表2と表3に記載した。
〔比較例6〕
中空ガラス粉体を用いずに、表2に示す条件にて前記実施例1と同様に実施した。焼成条件は、600℃、30分とし、銀焼結用組成物の組成と結果は、表2に記載した。
[実施例1〜8と比較例1〜6についての考察]
表2より明らかなように本発明の実施例1〜8では、かさ密度0.075〜0.378g/cm(真密度が0.125〜0.600g/cm)の中空ガラス粉体を用い、中空ガラス粉体を含んだ全体の組成物体積に対してかさ体積で7.1〜153%の該中空ガラス粉体を含有させて(中空ガラス粉体のかさ体積/銀焼結用組成物全体の体積が7.1〜153%)[添加重量では0.2〜14.9wt%]、銀焼結用組成物とした。これは、銀焼結用組成物中の中空ガラス粉体の体積割合がおおよそ10%か60%に相当する。
そして、実施例1〜8の銀焼結用組成物を共通の型に入れて成形した後に焼成して得られた銀焼結体は、中空ガラスを使用しない比較例6の場合と対比して、1.9〜57.1%の重量の減量効果が認められた(表3参照)。また、取り扱い性などは、従来の中空ガラス粉体を含有していない銀焼結用組成物である比較例6と殆ど差異を感じなかった。 これに対し、中空ガラス粉体の添加量が適正でない(=多すぎる)比較例1や中空ガラス粉体を用いていない比較例2〜5では、表3に示すように焼結体として不具合が生じた。そのため、減量効果の計量をするに及ばないものと判断した。
〔実施例9〕
デンプン8.75wt%、セルロース10wt%および残部が水から成る有機バインダー溶液8wt%と、平均粒径4.5μmのAu粉末92wt%とを混合した物を金基本組成物とした。
この金基本組成物94.6gに中空ガラス粉体(住友スリーエム株式会社製グラスバブルズ:かさ密度0.378g/cm,真密度0.6g/cm,粒径27μm)5.4gを混合し、金焼結用組成物とした。
この金焼結用組成物をシリコンモールドで型取りし、電気炉にて800℃、30分の条件で焼成した。焼成して得た焼結体の重量は31.6gとなり、中空ガラス粉体を添加しない同容積のものが52.3gであったので、40.0%の減量となった。結果を表2にも示した。
でき上がったサンプルをバレル研磨した。その結果、金属光沢が得られ、亀裂や破断等も生じなかった。
〔実施例10〕
デンプン5.25wt%、セルロース10wt%および残部が水から成る有機バインダー溶液8wt%と、平均粒径2.5μmのAg粉末50wt%(全体では46wt%)、平均粒径20μmのAg粉末wt%(全体では46wt%)からなる銀合金粉末92wt%とを混合した物を銀基本組成物とした。
この銀基本組成物99.8gに中空ガラス粉体(住友スリーエム株式会社製グラスバブルズ:かさ密度0.075g/cm,真密度0.125g/cm,粒径65μm)0.2g(かさ体積2.67cm)を混合し、銀焼結用組成物(全体体積18.1cm)とした。銀焼結用組成物の全体体積に対して、加えた中空ガラス粉体の単独状態のかさ体積の割合は、14.7%であった。
この銀焼結用組成物を内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ[商品名:JMSシリンジ(マイクロ)2ml針なし (without NEEDLE cyringe)/株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]に詰めて、前述した押し出し荷重の測定を行った結果、0.24Nであった。
未使用の2mlシリンジの先端がギザギザになるように、切り込みを入れる。銀焼結用組成物をそのシリンジに詰めて、銀焼結用組成物を押し出す。ひねり出した棒状の銀焼結用組成物についたライン(テクスチャー)を生かすため、棒の両端をねじりながらリングを作製した。80℃の乾燥機に入れ、20分間乾燥させた。次いで、600℃の電気炉で30分間焼成後、ステンレスブラシ、磨きへらで仕上げ、金属光沢を出した。
指輪の表面に、流れるようなラインが表現され、装飾性に優れた指輪が得られた。
〔実施例11〕
実施例10と同じ要領で、リングを作製し、乾燥工程まで行う。
デンプン5.25wt%、セルロース6wt%および残部が水から成る有機バインダー溶液13.5wt%と、平均粒径2.5μmのAg粉末50wt%(全体では43.25wt%)、平均粒径20μmのAg粉末wt%(全体では43.25wt%)からなる銀合金粉末86.5wt%とを混合した物を銀基本組成物とした。
この銀基本組成物99.8gに中空ガラス粉体(住友スリーエム株式会社製グラスバブルズ:かさ密度0.075g/cm,真密度0.125g/cm,粒径65μm)0.2g(かさ体積2.67cm)を混合し、銀焼結用組成物(全体体積25.3cm)とした。銀焼結用組成物の全体体積に対して、加えた中空ガラス粉体の単独状態のかさ体積の割合は、10.5%であった。
この銀焼結用組成物を内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ[商品名:JMSシリンジ(マイクロ)2ml針なし (without NEEDLE cyringe)/株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]に詰めて、前述した押し出し荷重の測定を行った結果、0.08Nであった。
この銀焼結用組成物を別の10mlシリンジに詰め、シリンジ先端に樹脂製のノズル(内径φ0.84mm)を取り付け、銀焼結用組成物を、押し出しながら、先に乾燥させたリングの表面にイニシャル模様をつけた。
80℃の乾燥機に入れ、20分間乾燥させ、600℃の電気炉で30分間焼成後、ステンレスブラシ、磨きへらで仕上げ、金属光沢を出した。
指輪の表面に、オリジナルの立体模様の加わり、装飾性に優れた指輪が得られた。
〔比較例7〕
実施例10と同じ要領で、リングを作製し、乾燥工程まで行う。
デンプン3wt%、セルロース4wt%および残部が水から成る有機バインダー溶液20wt%と、平均粒径2.5μmのAg粉末50wt%(全体では40wt%)、平均粒径20μmのAg粉末wt%(全体では40wt%)からなる銀合金粉末80wt%とを混合した物を銀基本組成物とした。
この銀基本組成物99.8gに中空ガラス粉体(住友スリーエム株式会社製グラスバブルズ:かさ密度0.075g/cm,真密度0.125g/cm,粒径65μm)0.2g(かさ体積2.67cm)を混合し、銀焼結用組成物(全体体積31.2cm)とした。銀焼結用組成物の全体体積に対して、加えた中空ガラス粉体の単独状態のかさ体積の割合は、8.6%であった。
この銀焼結用組成物を内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ[商品名:JMSシリンジ(マイクロ)2ml針なし (without NEEDLE cyringe)/株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]に詰めて、前述した押し出し荷重の測定を行った結果、0.05Nであった。
この銀焼結用組成物を別の10mlシリンジに詰め、シリンジ先端に樹脂製のノズル(内径φ0.84mm)を取り付け、銀焼結用組成物を、押し出しながら、先に乾燥させたリングの表面にイニシャル模様をつけた。
80℃の乾燥機に入れ、20分間乾燥させたところ、後から加えたイニシャル模様の線が、乾燥固化前に一部が流れ、文字として読み取ることが出来なくなった。
〔比較例8〕
デンプン10wt%、セルロース8.75wt%および残部が水から成る有機バインダー溶液8wt%と、平均粒径2.5μmのAg粉末50wt%(全体では46wt%)、平均粒径20μmのAg粉末wt%(全体では46wt%)からなる銀合金粉末92wt%とを混合した物を銀基本組成物とした。
この銀基本組成物99.8gに中空ガラス粉体(住友スリーエム株式会社製グラスバブルズ:かさ密度0.075g/cm,真密度0.125g/cm,粒径65μm)0.2g(かさ体積2.67cm)を混合し、銀焼結用組成物(全体体積18.1cm)とした。銀焼結用組成物の全体体積に対して、加えた中空ガラス粉体の単独状態のかさ体積の割合は、14.7%であった。
この銀焼結用組成物を内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ[商品名:JMSシリンジ(マイクロ)2ml針なし (without NEEDLE cyringe)/株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]に詰めて、前述した押し出し荷重の測定を行った結果、1.5Nであった。
この銀焼結用組成物を手で棒状に成形し、棒の両端を引き寄せ、リング状に成形を行ったところ、銀焼結用組成物が硬く、曲がらずに、折れてしまった。
【0003】
特許文献2:特許第3456644号公報
特許文献3:特許第3248505号公報
特許文献4:特許第3896181号公報
特許文献5:特開2002−241802号公報
特許文献6:特開2007−51331号公報
特許文献7:特開2004−292894号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0007]
そこで、本発明は、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大きく低減しても貴金属の焼結体を得ることができると共に、視覚的(美的)価値を維持しながら、その貴金属焼結体の軽量化を図ることができる貴金属焼結用の組成物、その貴金属焼結体を得る製造方法及びその貴金属焼結体を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0008]
本発明の請求項1に係る貴金属焼結用組成物は、貴金属粉末と、有機バインダー溶液と、中空ガラス粉体とを含む貴金属焼結用組成物であって、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、中空のガラス粉体を貴金属焼結用組成物を混入することにより、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大きく低減しても貴金属の焼結体を得ることができると共に、視覚的(美的)価値を維持しながら、その貴金属焼結体の軽量化を図ることができることを見出し、本発明に到達したものである。
かような請求項1の貴金属焼結用組成物によれば、造形性などの取り扱い性が低下することがなく、従来の貴金属焼結用組成物と同様に取り扱うことができ、視覚的(美的)価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
[0009]
本発明の請求項2に係わる貴金属焼結用組成物は、貴金属粉末50〜99wt%と、有機バインダー溶液1〜50wt%とからなる貴金属基本組成物に、中空ガラス粉体を
【0004】
含有させた貴金属焼結用組成物であって、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
かような構成によっても、造形性などの取り扱い性が低下することがなく、視覚的(美的)価値を維持しながら、従来の貴金属焼結用組成物と同様に取り扱うことができ、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
[0010]
このような請求項1乃至請求項2における本発明の“かさ体積”とは、例えばメスシリンダーに中空ガラス粉体を入れて、該メスシリンダーの目盛りで測定した体積であって、粉体自身の体積の他、粉体と粉体との隙間の体積や粉体と容器との隙間の体積を含むものである。したがって、貴金属焼結用組成物の全体体積に占める中空ガラス粉体割合が、含まれる中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲とは、(加える中空ガラス粉体のかさ体積/全体の組成物の実体積)×100=5〜160%を意味する。100%を超えるのは、中空ガラス粉体の“かさ体積”を用いるためである。
[0011]
一般に、粒径の異なる2種の粉体(例えば、貴金属粉末と中空ガラス粉体)を混ぜ合わせると、混ぜ合わせた粉体のかさ体積は、元のそれぞれの粉体のかさ体積の和より小さくなる。これは、大きな粒子間に小さな粒子が入り込んで、かさ密度が大きくなるためである。そのため、本発明の場合、全体の組成物の実体積が、少なくとも貴金属粉末と中空ガラス粉体と有機バインダー溶液が混ぜ合わせた貴金属焼結用組成物の実体積と言うことになり、この実体積をベースに添加する中空ガラス粉体のかさ体積を比較するので100%を超えるのである。
かような定義をするのは、貴金属粉末や中空ガラス粉体は、その形状や状態により“かさ密度”が異なり、wt%やvol%に統一しても、実質的な望ましい状態を示すことができないからである。
[0012]
さらに、上述した本発明における好ましい実施形態を述べると、本発明の請求項3に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、前記中空ガラス粉体は、平均粒径が15〜65μmの中空の粉体であり、前記貴金属粉末は、平均粒径が1.0〜20μmの粉末であり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
【0005】
[0013]
本発明に係わる貴金属粉末の“平均粒径”とは、中位径、中径、メディアン径、メジアン径または50%粒子径とも言い、通常D50で表示されるもので、累積曲線の50%に対応する粒径を意味する。具体的には3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)を用い、測定条件を[粒子透過性:反射]と[真球/非球形:非球形]としたときに測定される粒度分布のD50の値とする。
一方、本発明に係わる中空ガラス粉体の“平均粒径”の定義は、上述と変わりがない。しかし、3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)の測定条件は、[粒子透過性:透過、粒子屈折率:測定する中空ガラス粉体の屈折率]と[真球/非球形:真球]とする。
前記貴金属粉末のより好ましい態様としては、30〜70wt%が平均粒径2.2〜3.0μmである粉末と、残部が平均粒径5〜20μmである粉末との混合粉末を用いるのが好ましい。
[0014]
前記中空ガラス粉体は、内部が中空のガラス粉体であり、かさ密度が0.075〜0.38g/cmのものが好ましく使用できる。また、この中空ガラス粉体は、前述の如く平均粒径(D50)が15〜65μmであるが、粒度分布おける粒径の小さい方からの体積累積値が累積値10%(D10)において5〜30μmの範囲及び累積値90%(D90)において20〜110μmの範囲のものが好ましく使用できる。
[0015]
本発明の請求項4に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジに前記貴金属焼結用組成物を1ml充填し、該シリンジのプランジャーを17mm/min.の速度で10mm押して該シリンジ出口から該前記貴金属焼結用組成物を押し出た際の押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
[0016]
前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値は、前記貴金属粉末およびの前記中空ガラス粉体の各大きさ、形状等に影響され、さらに有機バインダーの種類、組合せ、溶媒量等、並びにこれら貴金属粉末、中空ガラス粉体及び有機バインダー溶液の配合割合等により変化する。したがって、押し出し荷重の最大測定値は、貴金属焼結用組成物のトータル的な指標となることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
前記内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジ(注射器)としては、商品名:JMSシリンジ(マイクロ)2ml針なし(without NEEDLE cyringe)[株式会社ジェイ・エム・エス(JMS CO.LTD.)製]が好ましく使用できる。
この本発明の請求項4に係わる貴金属焼結用組成物は、前記押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nの範囲にあれば、造形性に優れ、好適な貴金属焼結用組成物である。
[0017]
本発明の請求項5に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項4において、粘土状の塑性を有する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
この本発明の請求項5に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、通常の粘土の如く手作業で造形するのに好適な可塑性を有する造形性に優れた貴金属焼結用組成物である。
[0018]
本発明の請求項6に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項4において、シリンジに入れた状態から押し出して造形する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
この本発明の請求項6に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、シリンジに該貴金属焼結用組成物を充填しそのシリンジ先端に細いノズルを設けた状態から、容易に手動でシリンジのプランジャー(ピストン部)を押して該貴金属焼結用組成物を糸状ないし紐状に押し出すことが出来、繊細な線模様を表現するのに好適な貴金属焼結用組成物である。
[0019]
本発明の請求項7に係わる貴金属焼結体の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物を造形する工程と、該造形物を乾燥する工程と、該造形乾燥物を焼成する工程とを有することを特徴とする。
かような請求項7の貴金属焼結体の製造方法によれば、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物は造形性などの取り扱い性が低下することがないので、従来の貴金属焼結体の製造方法と同様に造形、乾燥、焼成することができ、視覚的価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
[0020]
本発明の請求項8に係わる貴金属焼結体は、請求項7記載の方法により製造したこ
一般に、粒径の異なる2種の粉体(例えば、貴金属粉末と中空ガラス粉体)を混ぜ合わせると、混ぜ合わせた粉体のかさ体積は、元のそれぞれの粉体のかさ体積の和より小さくなる。これは、大きな粒子間に小さな粒子が入り込んで、かさ密度が大きくなるためである。そのため、本発明の場合、全体の組成物の実体積が、少なくとも貴金属粉末と中空ガラス粉体と有機バインダー溶液が混ぜ合わせた貴金属焼結用組成物の実体積と言うことになり、この実体積をベースに添加する中空ガラス粉体のかさ体積を比較するので100%を超えるのである。
かような定義をするのは、貴金属粉末や中空ガラス粉体は、その形状や状態により“かさ密度”が異なり、wt%やvol%に統一しても、実質的な望ましい状態を示すことができないからである。
また、本発明の請求項1及び請求項2に係る貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジに前記貴金属焼結用組成物を1ml充填し、該シリンジのプランジャーを17mm/min.の速度で10mm押して該シリンジ出口から該前記貴金属焼結用組成物を押し出た際の押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値は、前記貴金属粉末およびの前記中空ガラス粉体の各大きさ、形状等に影響され、さらに有機バインダーの種類、組合せ、溶媒量等、並びにこれら貴金属粉末、中空ガラス粉体及び有機バインダー溶液の配合割合等により変化する。したがって、押し出し荷重の最大測定値は、貴金属焼結用組成物のトータル的な指標となることを見いだし、本発明に到達したものである。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、粘土状の塑性を有する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
この本発明の請求項に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1
.13Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、通常の粘土の如く手作業で造形するのに好
適な可塑性を有する造形性に優れた貴金属焼結用組成物である。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、シリンジに入れた状態から押し出して造形する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
この本発明の請求項に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、シリンジに該貴金属焼結用組成物を充填しそのシリンジ先端に細いノズルを設けた状態から、容易に手動でシリンジのプランジャー(ピストン部)を押して該貴金属焼結用組成物を糸状ないし紐状に押し出すことが出来、繊細な線模様を表現するのに好適な貴金属焼結用組成物である。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結体の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物を造形する工程と、該造形物を乾燥する工程と、該造形乾燥物を焼成する工程とを有することを特徴とする。
かような請求項の貴金属焼結体の製造方法によれば、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物は造形性などの取り扱い性が低下することがないので、従来の貴金属焼結体の製造方法と同様に造形、乾燥、焼成することができ、視覚的価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結体は、請求項記載の方法により製造したことを特徴とする。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結体は、中空ガラス粉体が混入させて大幅に軽量化した貴金属焼結体であって、従来の貴金属焼結体と同様に視覚的価値を維持した貴金属焼結体である。
本発明の請求項1に係る貴金属焼結用組成物は、銀及び/又は金の粉末と、有機バインダー溶液と、軟化点が550℃以上である中空ガラス粉体とを含む貴金属焼結用組成物であって、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であることを特徴とする。
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、中空のガラス粉体を貴金属焼結用組成物を混入することにより、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大きく低減しても貴金属の焼結体を得ることができると共に、視覚的(美的)価値を維持しながら、その貴金属焼結体の軽量化を図ることができることを見出し、本発明に到達したものである。
かような請求項1の貴金属焼結用組成物によれば、造形性などの取り扱い性が低下することがなく、手作業で造形することができ、焼成する際には形状を保持するための型枠が不要であり、従来の貴金属焼結用組成物と同様に取り扱うことができ、視覚的(美的)価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
本発明の請求項2に係わる貴金属焼結用組成物は、銀及び/又は金の粉末50〜99wt%と、有機バインダー溶液1〜50wt%とからなる貴金属基本組成物に、軟化点が550℃以上である中空ガラス粉体を含有させた貴金属焼結用組成物であって、前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であることを特徴とする。
かような構成によっても、造形性などの取り扱い性が低下することがなく、視覚的(美的)価値を維持しながら、手作業で造形することができ、焼成する際には形状を保持するための型枠が不要であり、従来の貴金属焼結用組成物と同様に取り扱うことができ、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
一般に、粒径の異なる2種の粉体(例えば、貴金属粉末と中空ガラス粉体)を混ぜ合わせると、混ぜ合わせた粉体のかさ体積は、元のそれぞれの粉体のかさ体積の和より小さくなる。これは、大きな粒子間に小さな粒子が入り込んで、かさ密度が大きくなるためである。そのため、本発明の場合、全体の組成物の実体積が、少なくとも貴金属粉末と中空ガラス粉体と有機バインダー溶液が混ぜ合わせた貴金属焼結用組成物の実体積と言うことになり、この実体積をベースに添加する中空ガラス粉体のかさ体積を比較するので100%を超えるのである。
かような定義をするのは、貴金属粉末や中空ガラス粉体は、その形状や状態により“かさ密度”が異なり、wt%やvol%に統一しても、実質的な望ましい状態を示すことができないからである。
また、本発明の請求項1及び請求項2に係る貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジに前記貴金属焼結用組成物を1ml充填し、該シリンジのプランジャーを17mm/min.の速度で10mm押して該シリンジ出口から該前記貴金属焼結用組成物を押し出た際の押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nであり、前記中空ガラス粉体は、平均粒径が15〜65μmの中空の粉体であり、前記銀及び/又は金の粉末は、平均粒径が1.0〜20μmの粉末であり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値は、前記貴金属粉末およびの前記中空ガラス粉体の各大きさ、形状等に影響され、さらに有機バインダーの種類、組合せ、溶媒量等、並びにこれら貴金属粉末、中空ガラス粉体及び有機バインダー溶液の配合割合等により変化する。したがって、押し出し荷重の最大測定値は、貴金属焼結用組成物のトータル的な指標となることを見いだし、本発明に到達したものである。前記数値範囲に入っていれば、好ましく通常の粘土の如く手作業で造形できたり、前記貴金属焼結用組成物をシリンジに入れた状態から手作業で押し出して造形することが好ましくでき、金型が使用することなく焼成して貴金属焼結体を得ることができる。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、粘土状の塑性を有する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
この本発明の請求項に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、通常の粘土の如く手作業で造形するのに好適な可塑性を有する造形性に優れた貴金属焼結用組成物である。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結用組成物は、上記した請求項1又は請求項2において、シリンジに入れた状態から押し出して造形する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nであり、手作業で造形するのに適することを特徴とする。
この本発明の請求項に係わる前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nの範囲にある貴金属焼結用組成物は、シリンジに該貴金属焼結用組成物を充填しそのシリンジ先端に細いノズルを設けた状態から、容易に手動でシリンジのプランジャー(ピストン部)を押して該貴金属焼結用組成物を糸状ないし紐状に押し出すことが出来、繊細な線模様を表現するのに好適な貴金属焼結用組成物である。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結体の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物を造形する工程と、該造形物を乾燥する工程と、該造形乾燥物を焼成する工程とを有することを特徴とする。
かような請求項の貴金属焼結体の製造方法によれば、請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物は造形性などの取り扱い性が低下することがないので、従来の貴金属焼結体の製造方法と同様に造形、乾燥、焼成することができ、視覚的価値を維持しながら、従来よりはるかに軽い貴金属焼結体を得ることができる。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結体は、請求項記載の方法により製造したことを特徴とする。
本発明の請求項に係わる貴金属焼結体は、中空ガラス粉体が混入させて大幅に軽量化した貴金属焼結体であって、従来の貴金属焼結体と同様に視覚的価値を維持した貴金属焼結体である。
本発明の貴金属焼結用組成物は、貴金属焼結用組成物の単位体積当たりの貴金属含量を大幅に低減でき、しかも造形性などの取り扱い性は、従来の貴金属焼結用組成物と同様であり、手作業で造形することができ、焼成する際には形状を保持するための型枠が不要である。また、従来の中空ガラス粉体を含まない貴金属焼結体に対して60wt%程度軽量化した貴金属の焼結体を得ることができる。
その貴金属焼結体は、視覚的(美的)価値も従来のものと同様であり、従来の中空ガラス粉体を含まない貴金属焼結用組成物では装飾品としては重すぎて使用できなかった比較的大型の装飾品を作製することもできる。
さらに、貴金属焼結用組成物自体が軽量であるため、特に大型の美術工芸品の作製における作業性が向上する。

Claims (8)

  1. 貴金属粉末と、有機バインダー溶液と、中空ガラス粉体とを含む貴金属焼結用組成物であって、
    前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であることを特徴とする貴金属焼結用組成物。
  2. 貴金属粉末50〜99wt%と、有機バインダー溶液1〜50wt%とからなる貴金属基本組成物に、中空ガラス粉体を含有させた貴金属焼結用組成物であって、
    前記貴金属焼結用組成物の全体体積に占める前記中空ガラス粉体の割合は、含まれる前記中空ガラス粉体を単独状態のかさ体積に換算して前記全体体積の5〜160%の範囲であることを特徴とする貴金属焼結用組成物。
  3. 前記中空ガラス粉体は、平均粒径が15〜65μmの中空の粉体であり、前記貴金属粉末は、平均粒径が1.0〜20μmの粉末であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物。
  4. 内径6mmφで出口1.3mmφ×出口の内部長さ8.3mmの2ml用シリンジに前記貴金属焼結用組成物を1ml充填し、該シリンジのプランジャーを17mm/min.の速度で10mm押して該シリンジ出口から該前記貴金属焼結用組成物を押し出した際の押し出し荷重の最大測定値が0.08〜1.13Nであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物。
  5. 粘土状の塑性を有する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.24〜1.13Nであることを特徴とする請求項4に記載の貴金属焼結用組成物。
  6. シリンジに入れた状態から押し出して造形する貴金属焼結用組成物にあっては、前記シリンジ押し出し荷重の最大測定値が0.08〜0.23Nであることを特徴とする請求項4に記載の貴金属焼結用組成物。
  7. 請求項1又は請求項2に記載の貴金属焼結用組成物を造形する工程と、該造形物を乾燥する工程と、該造形乾燥物を焼成する工程とを有することを特徴とする貴金属焼結体の製造方法。
  8. 請求項7記載の方法により製造したことを特徴とする貴金属焼結体。
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