JPWO2011021535A1 - 装飾金属物品の製造方法および装飾金属物品 - Google Patents

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Abstract

宝飾品、装飾品、装身具などに用いる銀または銀合金の銀合金焼結用組成物と銅または銅合金の焼結用組成物とを組み合わせた装飾金属品の製造方法および装飾金属物品を提供する。本発明の装飾金属物品の製造方法は、銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて銅造形体を形成した後、この銅造形体を焼成して銅造形焼成体(3)を得る銅造形焼成体製作工程と、得られた銅造形焼成体(3)と、銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銀可塑性組成物とで造形して装飾物(6)を形成した後、この装飾物(6)を焼成して装飾物焼成体(7)を得る銅−銀造形焼成体製作工程と、を含むことを特徴とする。

Description

本発明は、宝飾品、装飾品、装身具などに用いる銀または銀合金の焼結用組成物と銅または銅合金の焼結用組成物とを組み合わせた装飾金属品の製造方法および装飾金属物品に関する。
従来、異なる色合いや見映えを有する異種金属を接合(接着)する技法としては、ロウ付けと呼ばれる技法が知られている。この技法は、接合する各金属の接合面をヤスリがけした後、フラックスを塗って接合面を合わせ、接合部分の際(きわ)にハンダ、銀ロウ、パラジウムロウなどの各種ロウを置き、バーナーでフラックスの水分を蒸発させた後、火力を上げて結合させる。その後、酸洗い、研磨などを行って異種金属の接合体を得る。
このロウ付けは、金属粉末を含む可塑性組成物を焼結した焼結体に限らず、鋳造体同士を接合する際にも採用される技術であるが、専用の道具や薬品を用いる精微な技術であるため、熟練に時間を要するものであった。
貴金属粉末を含有する可塑性組成物を用いる方法において、異なる金属の焼結体を組み合わせた金属物品を作る方法としては、特許文献1〜3に開示される方法が提案されている。なお、特許文献1〜3では、銅を貴金属類に含めて記載しているが、銅は、金、銀、白金属元素である一般的な貴金属類に比較して著しく耐腐食性(耐酸化性)が劣るという特性を有している。すなわち、銅および銅合金は、酸化雰囲気中(大気中)で加熱すると酸化する特性を有している。
特許文献1に記載の手法は、第1の貴金属粉末を含有する可塑性組成物をプレート状とし、部分的に切欠いた領域を作成し、この領域に別の色を呈する第2の貴金属粉末を含有する可塑性組成物を詰め込んで焼結する方法である。
特許文献2には、第1の貴金属粉末を含有する可塑性組成物を造形し、複数の貫通穴を形成し、該貫通穴に別の色を呈する貴金属粉末を含有する可塑性組成物を詰め込み、各可塑性組成物がそれぞれ露出するように切断して焼結する方法、それぞれプレート状として重合し、巻回して筒状とし、これを切断して焼結する方法が提案されている。
特許文献3に記載の手法は、焼結によって各々異なった色を呈する複数の貴金属可塑性組成物をブロック又はプレート状に予備成形し、これらを表裏模様が異なるように組み合わせて焼結する方法である。
しかし、これらの特許文献1〜3に記載の技術は、異なる色を呈する貴金属粉末を含有させた複数の可塑性組成物を作成しておき、これらを接合した状態で一度に焼成する方法であって、接合面積(接合部分)が小さいと(少ないと)焼成後に分離してしまうため、接合面積(接合部分)が広い(多い)デザインの金属物品にしか適用できず、デザインに大きな制約があった。
また、これらの特許文献1〜3には、その焼成条件について、十分に明確な記載がなされていない。特に特許文献3には、焼成雰囲気についての一切の記載が認められない。
前記特許文献1および前記特許文献2には、純金粉末を含有する可塑性組成物は空気中、すなわち酸化雰囲気で焼結を行い、金75.0重量%、銀12.5重量%、銅12.5重量%の割合で混合した、いわゆるK18の合金金属を含有する可塑性組成物の場合は、アルゴンガス雰囲気中で焼結を行うことが記載されている。すなわち、銅をわずかに12.5重量%しか含まないK18の如き合金金属を含有する可塑性組成物でさえ、不活性雰囲気中で焼結を行わなければならないことが開示されている。
しかし、これらの特許文献1,2は何れも、異なる色を呈する金属粉末の可塑性組成物を物理的に組み合わせた状態で焼成する発明を提案しているにもかかわらず、例えば純金を含有する酸化雰囲気で焼成を行う可塑性組成物Aと、K18のごとき銅を含む不活性雰囲気中で焼成を行う可塑性組成物Bとを組み合わせた状態では、いかなる条件で焼成すべきかの開示は無い。
また、前記特許文献1〜3の出願人が発行している参考資料によると、錫(スズ)との銅合金である青銅(ブロンズ)の粉末を含む可塑性組成物の造形体を焼成するには、アルミ箔の上に炭(すみ)などの還元剤を敷いた状態の上に青銅造形体を設置し、ステンレス容器をかぶせた状態で860℃まで加熱して1〜3時間程度焼成する方法が記載されている。
一方、特許文献4には、銀および銅を含む貴金属混合粉末を含有する可塑性組成物を、酸化雰囲気中にて400℃以上で一次焼結した後、還元雰囲気中にて800℃以上で二次焼結する方法が開示されている。
しかし、この特許文献4には、一次焼結及び二次焼結のそれぞれにおける焼結時間が記載されていないので、検証実験はできないが、その実施例として、金合金としてはK18の合金組成を含む数例が記載されているに過ぎず、その銅の含有量はK18の組成を越えるものはない。また、白金合金としてもわずかに二種類の合金組成のみが検証されているに過ぎず、銅の含有量はさらに少ない。
かかる特許文献4には、酸化雰囲気での一次焼結と還元雰囲気での二次焼結を行うことが記載されているものの、この特許文献4に記載の技術は、銅または銅合金を含有する貴金属可塑性組成物の焼成に限定されるものであって、異なる色合いや見映えを有する異種金属の可塑性組成物を組み合わせた金属物品を得る焼成技術ではない。
特許第2924139号公報 特許第2932648号公報 特許第3389613号公報 特許第3191434号公報
前述のように、銅又は銅合金を含有する銅可塑性組成物の焼成条件は、不活性雰囲気中、すなわち還元雰囲気中で基本的に行うことは知られているものの、これら銅又は銅合金を含有する銅可塑性組成物と焼成中大気で酸化されない耐酸化性の性質を有する銀などの貴金属を含有する貴金属可塑性組成物と組み合わせた複合造形体を、その造形をそこなわずに焼成して装飾金属物品を得るためには、如何なる条件や手順で焼成すべきか具体的には知られていない。
さらに、異なる色を呈する貴金属粉末を含有させた複数の可塑性組成物を作成しておき、これらを接合した状態で一度に焼成する従来の方法にあっては、接合面積が小さいと焼成後に分離してしまうため、接合面積を広くしなければならないというデザイン上の大きな制約があった。
そこで、本発明者らは、上記に鑑みて、赤銅(しゃくどう)色の銅、青銅(ブロンズ)、白銅(はくどう)などの多くの色合いのものが知られている銅または銅合金を含有する銅可塑性組成物と、銀または銀合金を含有する銀可塑性組成物とを組み合わせた宝飾品、装飾品、装身具などに用いる装飾金属物品の製造方法および装飾金属物品を提供することを検討した結果、本発明に至ったもので、その本発明の第1の目的は、銅または銅合金を含有する銅可塑性組成物と銀または銀合金の貴金属を含有する銀可塑性組成物とを組み合わせた複合造形体を、その造形をそこなわずに焼成して装飾金属物品を得るための製造方法を提供することにある。
さらに、第2の目的は、接合面積を広くしなければならないというデザイン上の大きな制約のない技法により、銅または銅合金の銅造形焼成体と銀または銀合金の焼成体物とを組み合わせた斬新な複合造形焼成体を形成できる装飾金属物品の製造方法およびその装飾金属物品を提供することにある。
すなわち、本発明の請求の範囲第1項に係る装飾金属物品の製造方法は、銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて銅造形体を形成した後、この銅造形体を焼成して銅造形焼成体を得る[銅造形焼成体製作工程]と、
得られた銅造形焼成体と、銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銀可塑性組成物とで造形して装飾物を形成した後、この装飾物を焼成して装飾物焼成体を得る[銅−銀造形焼成体製作工程]と、
を含むことを特徴とするものである。
かような装飾金属物品の製造方法によれば、先に銅造形焼成体を製作し、該銅造形焼成体と銀可塑性組成物とで造形して装飾物を形成して焼成するので、その造形をそこなわずに焼成して装飾金属物品を得ることができる。
一段目焼成と二段目焼成の手順が逆であると、その造形をそこなわずに希望する装飾金属物品を得ることができない。すなわち先に、銀可塑性組成物の銀造形体を焼成して銀造形焼成体を得て、この銀造形焼成体と、銅および銅金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物とで造形して装飾物を形成した後、この装飾物を焼成したのでは、先に焼成した銀造形焼成体が熱により変形したり、溶融が生じたりして、形状が著しく変形してしまう。これは、銅の焼結温度が、銀の焼結温度より高いためである。よって、二段焼成を行う場合は、本発明によって、初めてその造形をそこなわずに希望する装飾金属物品が得られるのである。
一段目焼成である銅造形体の焼成は、還元雰囲気でも酸化雰囲気でもよい。二段目焼成である装飾物の焼成も、還元雰囲気でも酸化雰囲気でもよい。
一段目焼成や二段目焼成をそれぞれ還元雰囲気で焼成する場合、引用文献4の如く、例えば可塑性組成物中の有機バインダを燃焼させるために酸化雰囲気中で300℃〜500℃の低温で一次焼成し、次いで可塑性組成物中の銅や銀などの粉末を焼結させる二次焼成を還元雰囲気で行うようにしてもよい。
還元雰囲気による焼成は、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスを焼成中に流し続けなければならないことや炭素などの還元剤を銅造形体と一緒に密封容器に入れて外部から加熱するなど、煩雑な手間がかかるので、二段目焼成の銀可塑性組成物の焼成が酸化雰囲気で行えるのであれば、一段目焼成も酸化雰囲気で行うのが好ましい。銅造形体の焼成を酸化雰囲気で行うには、後述する実施例から明らかなように、銅可塑性組成物中の銅および銅合金から選択される1種以上の粉末をできるだけ細かくする必要がある。
なお、上記した本発明の“銀合金”とは、銀の含有量が80重量%以上の合金を意味し、例えば日本の品位検定制度で認められている銀の品位950、品位925、品位900品位800のものが挙げられる。銀合金を構成する金属の種類や添加量は、銅造形体の焼成温度より低い焼成温度で焼成を行える範囲で選択できる。この選択は、当該合金の融点に左右されるのではなく、銀合金粉末の粒径を小さくすることで、焼成温度を下げることができるため、合金粉末の粒径、添加金属の種類、添加量から適宜選択することができる。例えば、Pdを1%添加した銀−Pd合金などが挙げられる。
一方、上記した本発明の“銅合金”とは、銅の含有量が80重量%以上の合金を意味し、例えば青銅(ブロンズ)、砲金、白銅などが挙げられる。
また、本発明においては、還元雰囲気は、炭素などの還元剤(加熱時に銅造形体より酸化しやすい物)を銅造形体と一緒に密封容器に入れて外部から加熱する内部状態を含み、アルゴンガス雰囲気などの不活性雰囲気と同義に扱う。
本発明の請求の範囲第2項に係る装飾金属物品の製造方法は、
銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて貫通孔を備える銅造形体を形成した後、この銅造形体を焼成して銅造形焼成体を得る[貫通孔保有銅造形焼成体作製工程]と、
銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銀可塑性組成物にて、前記銅造形焼成体の貫通孔に挿入される挿入部銀造形体と、上部銀造形体と、下部銀造形体とを個別に形成する、または上部銀造形体と下部銀造形体の少なくとも一方に当該挿入部銀造形体を備えて形成する[銀造形体形成工程]と、
前記銅造形焼成体の貫通孔を介して、前記上部銀造形体と前記挿入部銀造形体と前記下部銀造形体とを、それら銀造形体の乾燥前または乾燥以後に、前記銀可塑性組成物のペーストにて一体化することにより、当該銅造形焼成体を当該上部銀造形体と当該下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物に形成する[装飾物セッティング工程]と、
前記[装飾物セッティング工程]を経た装飾物を焼成して前記上部銀造形体および下部銀造形体の焼成体で前記銅造形焼成体を挟んだ装飾物焼成体を得る[装飾物焼成工程]と、
を含むことを特徴とするものである。
前記銀造形体形成工程と前記装飾物セッティング工程とにおいて、銅造形焼成体の貫通孔に挿入される挿入部銀造形体は、単独で形成しても、上部銀造形体と下部銀造形体の一方に挿入部銀造形体を備えて形成してもよい。また、この挿入部銀造形体を複数に分割して形成してもよく、例えば上部銀造形体と下部銀造形体の両方に短い挿入部銀造形体を備えて形成し、銅造形焼成体の貫通孔の中で該短い挿入部銀造形体どうしを銀可塑性組成物のペーストにて一体にすることにより、銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物に形成するようにしてもよい。
さらには、銀可塑性組成物が入ったシリンジを用い、このシリンジから銅造形焼成体の貫通孔にその銀可塑性組成物を直接注入し、貫通孔外部に臨む当該銀可塑性組成物の端部と上部銀造形体と下部銀造形体とを銀可塑性組成物のペーストにて一体にすることにより、銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物に形成するようにしてもよい。したがって、銀造形体形成工程と装飾物セッティング工程は、さまざまな変形アレンジがあり、本発明においては最も広義に解するものとする。
かような請求の範囲第2項の装飾金属物品の製造方法において、一段目の銅造形体の焼成と二段目の該銅造形焼成体と銀可塑性組成物とで造形した装飾物の焼成の手順が逆であると、その造形をそこなわずに希望する装飾金属物品を得ることができないことは、前述した通りである。
さらに、一段目と二段目との焼成の手順を前述の如く行おうとも、二段目の焼成が銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物の焼成ではなく、銀造形体を上部銅造形焼成体と下部銅造形焼成体とで挟んだ状態の装飾物の焼成では、両側の焼結体によって中央の焼結体を強固に挟んで一体に固定された状態の装飾物焼成体にすることができない。
これは、二段目の焼成が銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物の焼成では、前記挿入部銀造形体は、焼成により10%程度収縮するので、装飾物焼成工程において、銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体との焼成体で強固に挟んで一体に固定された状態の装飾物焼成体にすることができる。しかし、銀造形体を上部銅造形焼成体と下部銅造形焼成体とで挟んだ状態の装飾物の焼成では、銀造形体の貫通孔に挿入される挿入部銅焼結体は、既に一段目の焼成において焼結した銅焼結体であるので、もはや収縮は起きず、両側の焼結体によって中央の焼結体を強固に挟んで一体に固定された状態の装飾物焼成体にすることができないのである。
本発明の請求の範囲第3項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第2項において、前記[装飾物セッティング工程]が、前記上部銀造形体と前記挿入部銀造形体と前記下部銀造形体の乾燥以後に行われることを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第3項の装飾金属物品の製造方法によれば、銀可塑性組成物の上部銀造形体と挿入部銀造形体と下部銀造形体の乾燥中のものや乾燥後のもの(本発明においては、総称して“乾燥以後のもの”という。)は、銅造形焼成体の貫通孔に挿入しやすく、銀可塑性組成物のペーストにて一体にする作業もしやすいので、作業性が向上すると共に緻密な装飾物を形成できる。
すなわち、前記挿入部銀造形体は、焼成により10%程度収縮するので、装飾物焼成工程において、銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体との焼成体で強固に挟んで一体に固定された状態の装飾物焼成体にすることができるのは当然であるが、銀可塑性組成物の挿入部銀造形体を乾燥以後のものを使用するので、挿入部銀造形体の寸法を焼成による収縮を考慮して少し長めに調整することと、銅造形焼成体の貫通孔より径を短く調整することとが極めて容易となり、これらの調整により、装飾物焼成工程によって、挿入部銀造形体と銅造形焼成体の貫通孔との間や銅造形焼成体と上部銀造形体及び下部銀造形体の焼成体との間などに空隙を設けることができ、これにより全体の強度を保ちつつ一体となって、回転自在に固定された装飾物焼成体を得ることもできるようになる。
本発明の請求の範囲第4項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第3項において、前記[装飾物セッティング工程]にて用いる銀可塑性組成物のペーストは、別途追加したペースト状の可塑性組成物、または一体にする銀造形体の端部に水を含ませて柔らかくしたものであることを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第4項の装飾金属物品の製造方法においては、銀造形体の端部に水を含ませて柔らかくする場合、接合する端部相互に水を含ませて柔らかくしてもよく、一方の接合する端部のみに水を含ませて柔らかくするだけでもよい。
本発明の請求の範囲第5項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第1〜4項のいずれか一項において、前記銅造形体の焼成が、850℃〜990℃の焼成温度で行われ、前記装飾物の焼成が、前記銅造形焼成体の焼成温度より低い焼成温度で行われることを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第5項の装飾金属物品の製造方法によれば、一段目焼成によって形成した前記銅造形焼成体が、二段目焼成の銀可塑性組成物の焼成、すなわち前記装飾物の焼成によって、先に焼成した銅造形焼成体が熱により変形したり、溶融が生じたりして、形状が著しく変形してしまうことが確実に避けられ、その造形をそこなわずに焼成して装飾金属物品を得ることができる。
かかる請求の範囲第5項の装飾金属物品の製造方法においては、一段目焼成である銅造形体の焼成は、還元雰囲気でも酸化雰囲気でもよい。二段目焼成である装飾物の焼成も、還元雰囲気でも酸化雰囲気でもよい。一段目焼成や二段目焼成をそれぞれ還元雰囲気で焼成する場合は、前述の如く、例えば可塑性組成物中の有機バインダを燃焼させるために酸化雰囲気中で300℃〜500℃の低温で一次焼成し、次いで銅や銀などの粉末を焼結させる二次焼成を還元雰囲気で行うようにしてもよい。
本発明の請求の範囲第6項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第5項において、前記銅造形体の焼成が、酸化雰囲気で行われ、前記装飾物の焼成も、酸化雰囲気で行われることを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第6項の装飾金属物品の製造方法によれば、二段目焼成の銀可塑性組成物の焼成は、例えば銀可塑性組成物中の銀合金成分によっては希に還元雰囲気で行われる方が好ましい場合もあるが、操作の容易さなどの観点から一般的には酸化雰囲気で行われるので、一段目焼成である前記銅造形体の焼成を酸化雰囲気で行うと整合性が取れ、還元雰囲気の焼成によるアルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスを焼成中に流し続けなければならないことや炭素などの還元剤を銅造形体と一緒に密封容器に入れて外部から加熱するなどの煩雑な手間が回避でき、カルチャースクールなどで気軽に適用できるようになる。
かかる銅造形体の焼成を酸化雰囲気で行うには、後述する実施例から明らかなように、銅可塑性組成物中の銅および銅合金から選択される1種以上の粉末をできるだけ細かくする必要がある。これは、大気焼成によって外側は酸化しても、微粉末の銅粉末または銅合金粉末を用いて低融点化することにより、内側(内部)は酸化の影響を受けることなく、低い温度で焼結が促進されたために、銅焼結体が一定の強度を得ることができるようになるためである。
本発明の請求の範囲第7項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第6項において、前記銅可塑性組成物の銅および銅合金から選択される粉末は、平均粒径が10μm以下であることを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第7項の装飾金属物品の製造方法によれば、銅および銅合金から選択される粉末の平均粒径が10μm以下である銅可塑性組成物からなる銅造形体の焼成は、例えば酸化雰囲気で行う場合、特に支障なく行うことができる。
本発明に係わる銅、銅合金、銀、銀合金の“平均粒径”とは、中位径、中径、メディアン径、メジアン径または50%粒径とも言い、通常D50で表示されるもので、累積曲線の50%に対応する粒径を意味する。具体的には3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)を用い、測定条件を[粒子透過性:反射]と[真球/非球形:非球形]としたときに測定される粒度分布のD50の値とする。
本発明の請求の範囲第8項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第7項において、前記銅可塑性組成物の銅および銅合金から選択される粉末は、平均粒径2.5μmの粉末を50重量%と平均粒径10.0μmの粉末を50重量%の銅混合粉末であることを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第8項の装飾金属物品の製造方法によれば、銅可塑性組成物からなる銅造形体の焼成を例えば酸化雰囲気で行う場合、特に支障なく行うことができると共に、収縮率を10%程度にすることができ、さらには銅可塑性組成物からなる焼成温度を低くしたり、焼成時間を短くしたりすることが可能となる。
本発明の請求の範囲第9項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第8項において、前記銀可塑性組成物の銀および銀合金から選択される粉末は、平均粒径2.2〜3.0μmの粉末を30〜70重量%と残部が平均粒径5〜20μmの粉末の銀混合粉末であることを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第9項の装飾金属物品の製造方法によれば、例えば酸化雰囲気で行う場合、特に支障なく行うことができると共に、請求の範囲第8項の銅可塑性組成物を焼成した際の収縮率とほぼ同じ10%程度にすることができ、しかも焼成温度を銅造形焼成体の焼成温度よりはるかに低い焼成温度で行うことができ、さらには焼成時間を短くしたりすることが可能となり、前記装飾物の焼成の際に銅造形焼成体や装飾物焼成体自体に悪影響を及ぼすことがない。
本発明の請求の範囲第10項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第9項において、前記装飾物焼成体を酸洗い又は磨きを行う[表面酸化膜除去工程]を行うことを特徴とするものである。
本発明の請求の範囲第11項に係る装飾金属物品は、銅または銅合金からなる銅造形焼成体の中間を、銀および銀合金から選択される銀造形焼成体の少なくとも上下2つによって挟んで一体とし、かつ、この挟持基部からそれぞれの焼成体の外端部が外方に向けて造形されたことを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第11項の装飾金属物品によれば、従来の「異なる色を呈する貴金属粉末を含有させた複数の可塑性組成物を作成しておき、これらを接合した状態で一度に焼成する方法にあっては、接合面積が小さいと焼成後に分離してしまうため、焼成後の分離を防止するために接合面積が広い塊状のものとしなければならない」というデザイン上の大きな制約がないので、形成された装飾金属物品は、従来に比して極めて立体的で複雑な形状を成すことができる。
なお、本発明の装飾金属物品は、挟んだ銀造形焼成体と銅造形焼成体とが一体に固定された装飾物造形焼成体が一般的であるが、銅造形焼成体が回転自在に固定された装飾物焼成体も制作可能である。
本発明の装飾金属物品の製造方法によれば、先に銅造形焼成体を製作し、該銅造形焼成体と銀可塑性組成物とで造形して装飾物を形成して焼成するので、その造形をそこなわずに焼成して装飾金属物品を得ることができる。なお、一段目の銅可塑性組成物の銅造形体の焼成と二段目の銀可塑性組成物の銀造形体の焼成との手順が逆であると、一段目で形成した造形焼成体の造形をそこなわずに希望する装飾金属物品を得ることができない。
また、本発明の装飾金属物品の製造方法によれば、銅造形焼成体に貫通孔を備えるようにし、この銅造形焼成体の貫通孔を介して、上部銀造形焼成体と下部銀造形焼成体とを一体とすることにより、銅造形焼成体を挟んだ装飾物焼成体を得るようにしたので、従来の「異なる色を呈する貴金属粉末を含有させた複数の可塑性組成物を作成しておき、これらを接合した状態で一度に焼成する方法にあっては、接合面積が小さいと焼成後に分離してしまうため、焼成後の分離を防止するために接合面積が広い塊状のものとしなければならない」というデザイン上の大きな制約がなく、銅または銅合金の銅造形焼成体と銀または銀合金の焼成体物とを組み合わせた斬新な複合造形焼成体を形成できる。
さらに、その装飾金属物品は、銅造形焼成体の中間を銀造形焼成体の上下2つによって挟んで一体とし、かつ、挟持基部からそれぞれの焼成体の外端部が外方に向けて造形してなるものであるため、例えば挟持基部を中心として放射状に外端部が広がる形状の装飾性の優れた花形状の装飾金属物品とすることができ、従来に比して極めて立体的で複雑な形状を成すことができる。
本発明の実施例における挿入部銀造形体を備える上部銀造形体と、銅造形焼成体と、下部銀造形体とを組み合わせた装飾物6の分解斜視図である。 本発明の実施例にて装飾物セッティング工程を経て得られた装飾物の平面図である。 図2におけるIII−III線における断面図である。 本発明の実施例にて得られた装飾物焼成体の斜視図である。
本発明の請求の範囲第1項における[銅造形焼成体製作工程]、[銅−銀造形焼成体製作工程]についてそれぞれ説明する。
[銅造形焼成体製作工程]
この工程では、銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて銅造形体を形成した後に焼成する。
この工程では、例えば後述する請求の範囲第2項に係る発明における[貫通孔保有銅造形焼成体製作工程]と全く同様に銅造形体に貫通孔を形成して銅造形焼成体としてもよいし、焼成した銅造形焼成体に、適宜に治具などを用いて貫通孔を形成してもよい。
この工程において使用される銅可塑性組成物は、銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する。
前述のように銅は、赤銅(しゃくどう)色を有し、銅合金としては、錫(スズ)との銅合金である青銅(ブロンズ)、ニッケルとの銅合金である白銅(はくどう)など多くの色合いのものが知られている。これらの銅粉末、銅合金粉末としては、アトマイズ粉、還元粉など製造方法は特に指定はないが、粒子が球状に近い形状であることが好適に使用され、粒径が10μm以下であると、銅可塑性組成物からなる銅造形体の焼成を酸化雰囲気で支障なく行うことができるため好ましい。さらに平均粒径2.5μmの粉末を50重量%と平均粒径10.0μmの粉末を50重量%の銅混合粉末を用いると、折り曲げ強度の高い銅造形焼成体を得ることができ、銅可塑性組成物の焼成を酸化雰囲気で支障なく行うことができると共に、収縮率を10%程度にすることができ、さらには銅可塑性組成物からなる焼成温度を低くしたり、焼成時間を短くしたりすることが可能となるため好ましい。
また、例えば後述する酸化ジルコニウムなどの金属酸化物などの添加剤を上記銅混合粉末に含有させる場合、そのような場合でも上記銅混合粉末は、平均粒径2.5μmの銅粉末と平均粒径10.0μmの銅粉末とを等量ずつ含有することが好ましい。例えば、銅混合粉末が金属酸化物を5.0重量%の割合で含有する場合、上記2種の銅粉末としては47.5重量%ずつ含有させることが好ましい。このように各銅粉末を等量ずつ含有させることにより、上記の場合と同様の効果を得ることができる。なお、添加物の粒度は、その目的により一概には言えないが、金属酸化物の場合、5μm〜40μm程度が好ましく使用できる。
要するにこの工程における銅造形体の焼成は、還元雰囲気でも不活性雰囲気でも酸化雰囲気でもよいが、手間やコストを考慮した場合には、大気中で実施できる酸化雰囲気での焼成が望ましい。すなわち、還元雰囲気による焼成は、炭素などの還元剤を銅造形体と一緒に密封容器に入れて外部から加熱するなど、煩雑な手間がかかる。不活性雰囲気による焼成は、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスを焼成中に流し続けなければならないためコストがかかる。また、二段目焼成の銀可塑性組成物の焼成も、還元雰囲気でも不活性雰囲気でも酸化雰囲気でもよいが、二段目焼成の銀可塑性組成物の焼成が簡便な酸化雰囲気で行えることを考慮して、酸化雰囲気で行うことが好ましい。
そして、銅造形体の焼成を酸化雰囲気で行うには、後述する実施例から明らかなように、銅可塑性組成物中の銅および銅合金から選択される1種以上の粉末をできるだけ細かくする必要がある。
前記有機バインダとしては、特に限定するものではないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどのセルロース系バインダ、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸系バインダ、澱粉、片栗粉、小麦粉、ブリティシュガム、キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、プルランなどの多糖類系バインダ、ゼラチンなどの動物系バインダ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニル系バインダ、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルなどのアクリル系バインダ、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコールなどのその他樹脂系バインダなどから一種以上のバインダを選択して使用するのが好ましい。セルロース系バインダにおいては、特に水溶性のセルロース系バインダを用いることが最も好ましい。
[銅−銀造形焼成体製作工程]
この工程では、得られた銅造形焼成体と、銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銀可塑性組成物とで造形して装飾物を形成した後、この装飾物を焼成して装飾物焼成体(銅−銀造形焼成体)を得る。
この工程において使用される銀可塑性組成物は、銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する。これらの銀粉末としては、アトマイズ粉、還元粉など製造方法は特に指定はないが、粒子が球状に近い形状であることが好適に使用され、さらに平均粒径2.2〜3.0μmの粉末を30〜70重量%を含有し、残部が平均粒径5〜20μmの粉体の混合物が好ましく用いることができる。このように平均粒径が異なる複数種類の粉末を組み合わせることにより、比較的低い温度で焼成することができ、巨大粒子間の空隙を微粒子が埋めることにより、高密度の焼成体となり、低収縮率の銀焼結体を得ることができる。特に微粒子及び巨大粒子の平均粒径並びに含有量についても特定したので、融点から融点より160〜210℃低い温度範囲で焼結でき、焼結による収縮率を10%(長さで)未満に抑制できることが見出された。
この工程では、銅造形焼成体と銀可塑性組成物とで造形して装飾物を形成する際には、どのように組み合わせてもよく、前述のように銅造形焼成体に貫通孔を形成した場合には、銀可塑性組成物の取付けが容易になる。例えば後述する請求の範囲第2項に係る発明のように銀可塑性組成物を2分割して上部(一方)と下部(他方)を貫通孔にて連結するようにしてもよい。したがって、それぞれ自由に造形された銅−銀造形焼成体である装飾金属物品を得ることができる。
また、この工程の焼成は、酸化雰囲気で、前記銅造形体の焼成温度より低い焼成温度で行えばよい。
なお、一段目焼成(=銅造形体の焼成)と二段目焼成(=銀造形体の焼成)との手順が逆であると、希望する装飾金属物品が得られない。すなわち先に、銀造形体を焼成して銀造形焼成体を得て、この銀造形焼成体と、銅可塑性組成物とで造形して装飾物を形成した後、この装飾物を焼成したのでは、先に焼成した銀造形焼成体が熱により変形したり、溶融が生じたりして、形状が著しく変形してしまう。これは、銅の焼結温度が、銀の焼結温度より高いためである。したがって、二段焼成を行う場合は、本発明によって、初めて希望する装飾金属物品が得られるのである。
次に、本発明の請求の範囲第2項における[貫通孔保有銅造形焼成体製作工程]、[銀造形体形成工程]、[装飾物セッティング工程]、[装飾物焼成工程]についてそれぞれ説明する。
[貫通孔保有銅造形焼成体製作工程]
この工程では、銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて貫通孔を備える銅造形体を形成した後に焼成する。
この工程は、貫通孔を銅造形体に形成する以外は、前記第1の発明における[銅造形焼成体製作工程]と全く同様であり、焼成は還元雰囲気でも不活性雰囲気でも酸化雰囲気でもよい。
この工程において銅焼結体に形成する貫通孔は、後述する[装飾物セッティング工程]にて挿入部銀造形体を配置する部分であって、特にその形状や寸法を限定するものではなく、また一箇所に限らず複数箇所に形成してもよい。
[銀造形体形成工程]
この工程では、銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銀可塑性組成物にて、前記銅造形焼成体の貫通孔に挿入される挿入部銀造形体と、上部銀造形体と、下部銀造形体とを個別に形成する、または上部銀造形体と下部銀造形体の少なくとも一方に当該挿入部造形体を備えて形成する。
この工程に用いる銀可塑性組成物は、前記第1の発明にて用いたものと全く同様である。
この工程では、上部銀造形体および下部銀造形体は、個別に作成されて特に形状などを制限するものではないが、前記銅造形焼成体の貫通孔に挿入される挿入部銀造形体は、それらと別体として形成されるものでもよいし、また何れか一方の造形体に突起状に形成されるものでもよく、また両方の造形体に突起状に形成されるものでもよい。例えば上部銀造形体および下部銀造形体のそれぞれに突起状に挿入部銀造形体を形成した場合には、後述する[装飾物セッティング工程]においてそれぞれの突起状部分を突き合わせた状態で接着すればよい。
要するに前記銅造形焼成体の貫通孔に挿入される挿入部銀造形体は、単独で形成しても、上部銀造形体と下部銀造形体の一方に突起状に形成してもよい。また、この挿入部銀造形体を複数に分割して形成してもよく、例えば上部銀造形体と下部銀造形体の両方に短い挿入部銀造形体を備えて形成し、銅造形焼成体の貫通孔の中で該短い挿入部銀造形体どうしを銀可塑性組成物のペーストにて一体にすることにより、銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物に形成するようにしてもよい。
なお、この[銀造形体形成工程]の後に、前記上部銀造形体と前記挿入部銀造形体と前記下部銀造形体を乾燥すると、以後の[装飾物セッティング工程]において、銅造形焼成体の貫通孔に挿入しやすく、銀可塑性組成物のペーストにて一体にする作業もしやすいので、作業性が向上すると共に緻密な装飾物を形成できる。
[装飾物セッティング工程]
この工程では、前記銅造形焼成体の貫通孔を介して、前記上部銀造形体と前記挿入部銀造形体と前記下部銀造形体とを、それら造形体の乾燥前又は乾燥以後に、前記銀可塑性組成物のペーストにて一体化することにより、銅造形焼成体を挟んだ状態の装飾物を形成する。
この工程にて用いる銀可塑性組成物のペーストは、別途追加したペースト状の可塑性組成物でもよいし、または一体にする銀造形体の端部に水を含ませて柔らかくしたものでもよい。
例えば銀可塑性組成物のペースト(上記説明では、「別途追加したペースト状の可塑性組成物」)が入ったシリンジを用い、このシリンジから銅造形焼成体の貫通孔にその銀可塑性組成物のペーストを直接注入し、貫通孔に臨む挿入部銀造形体の端部と上部銀造形体と下部銀造形体とを一体にすることにより、銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物に形成するようにしてもよい。
また、銀造形体の端部に水を含ませて柔らかくする場合、筆などにて微量の水を供給した後、しばらく放置して柔らかくなったことを確認して押し付けて付着させればよい。
[装飾物焼成工程]
この工程では、前記[装飾物セッティング工程]を経た装飾物を焼成して前記上部銀造形体および下部銀造形体の焼成体で前記銅造形焼成体を挟んだ装飾物焼成体を得る。
前記挿入部銀造形体は、焼成により10%程度収縮するので、この[装飾物焼成工程]において、銅造形焼成体を上部銀造形体と下部銀造形体の焼成体で強固に挟んで一体に固定された状態の装飾物焼成体にすることができる。
一方、挿入部銀造形体の寸法を焼成による収縮を考慮して少し長めに形成すると共に銅造形焼成体の貫通孔より径を細くすることによって、この[装飾物焼成工程]によって、挿入部銀造形体と銅造形焼成体の貫通孔との間や銅造形焼成体と上部銀造形体及び下部銀造形体の焼成体との間などに空隙を設けることができ、これにより全体の強度を保ちつつ一体となって、回転自在に固定された装飾物焼成体を得ることができる。
なお、銅造形焼成体の貫通孔の直径は、使用する銅可塑性組成物の物性により異なるので特定できないが、一般的には1mm以上、好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2mm以上である。
この工程の焼成は、前記第1の発明における[銅−銀造形焼成体製作工程]と同様に、酸化雰囲気で、前記銅造形体の焼成温度より低い焼成温度で行えばよい。
なお、一段目焼成(=銅造形体の焼成)と二段目焼成(=銀造形体の焼成)の手順が逆であると、希望する装飾金属物品が得られないことは、既に請求の範囲第1項における発明にて説明した通りである。
[表面酸化膜除去工程]
この工程では、前記装飾物焼成体を酸洗い又は磨きを行って表面に形成された酸化膜を除去する。
この酸洗い、磨きについては、この種の貴金属可塑性組成物の焼成技術としては、公知の技術であって、酸洗いは、顆粒状の酸(市販品)や希硫酸に5分程度つけて必要に応じてブラシなどで研磨してすぐに水洗する。磨きは、磨きへら、糸バフ、リューター、スポンジ研磨材、ステンレスブラシなど各種の磨き材料が市販されているので、適宜にこれらを用いて研磨する。
前記装飾物焼成体は、前記[貫通孔保有銅造形焼成体製作工程]および[装飾物焼成工程]にて酸化雰囲気での焼成を行うことにより、銅造形焼成体の表面にも銀造形焼成体の表面にもそれぞれ形成された酸化膜を除去するものである。
前述のように銅可塑性組成物中の銅および銅合金から選択される粉末の粒径が10μm以下であると、酸化雰囲気にて焼成して表面に酸化膜が形成されても、酸洗いや磨きにより容易に除去できる。
さらに必要により、添加物として前記有機バインダに下記の物質を加えてもよい。すなわち添加物としては、有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸、クエン酸)、フタル酸−n−ジオクチル、フタル酸−n−ジプチルなどの有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,3ブチレングリコール)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)、フェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してなる網状高分子であるリグニン、流動パラフィンおよび油脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物(例えば、オレイン酸を多く含むオリーブ油)などが挙げられる。これら添加物は、可塑性を改善する目的で添加されたり、造形時に銅可塑性組成物や銀可塑性組成物が手に付着しないようにする目的で添加されたりする。さらに、上記添加物であるリグニンやグリセリンは、適度な保水性を与える。
さらに添加物として、アニオン系、カチオン系、ノニオン系などの界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、銀粉末や銅粉末と有機バインダとの混合性が良くなるという作用や保水性を向上させる作用を果たす。
前記有機バインダのうち、水溶性のセルロース系バインダは、可塑性を付与する作用を果たす。また、前記有機バインダのうち、ポリエチレンオキサイドは、低濃度で高い粘性を与え、液状での接着性を向上する作用を果たす。また、アルギン酸ナトリウムは、前記グリセリンと同様に適度な保水性を与えるが、密着向上作用にも寄与する。さらに、ポリアクリル酸エステル及びポリアクリル酸は、粘着性をより強固にする作用を果たす。
水溶性のセルロース系バインダについては、前述のように可塑性を付与する作用を果たすが、水溶性のセルロース系バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどが用いられ、水に溶解して用いる。
上述した水溶性のセルロース系バインダを有機バインダとして用いる銅可塑性組成物、銀可塑性組成物における有機バインダの量として、より好ましい様態としては、有機バインダの合計量が、水を除いた固形分表示で0.1〜4wt%の範囲内であることが望ましい。この場合、有機バインダの量が0.1wt%より少ないと、均質な銅可塑性組成物、銀可塑性組成物とすることが難しい。また、塗着、乾燥後の強度が弱くなるといった不都合がある。有機バインダの量が4wt%を越えると、収縮率が大きくなり、ひび割れが生じやすくなる。したがって、有機バインダの量は0.1〜4wt%が望ましい。
ポリエチレンオキサイドを用いる場合には、分子量10万〜数百万のポリエチレンオキサイドを0.1〜3wt%の範囲内のものを用いることが望ましい。
また、界面活性剤を用いる場合には、0.03〜3wt%の範囲内であることが望ましく、油脂を用いる場合には、0.1〜3重量%の範囲内であることが望ましい。
さらに、水は必要量加えるものとし、少なすぎると硬くなって造形し難く、多すぎると形状が保てなくなる。本発明にて用いる銅可塑性組成物や銀可塑性組成物は、水の含有量により、粘土状でもペースト状でもスラリー状にも調製できる。
前記好適な組成では、何れの可塑性組成物においても金属粉末は75〜99wt%であるが、少なすぎると、収縮が大きくなり、焼結にも支障を生じ、多すぎると、その分、有機バインダ及び水の割合が少なくなって、造形に支障を生ずる。
また、焼結促進剤としてBi、Se、Sb、In、Sn、Zn、Pd粉末又はそれらの合金粉末を加えても良い。
さらに、密着性向上剤として炭酸鉛、炭酸リチウム、酸化亜鉛、リン酸、炭酸ナトリウム、酸化バナジウム、珪酸ナトリウム、リン酸塩などから選ばれる金属化合物粉末又はガラス粉末を加えても良い。
また、可塑性を改善する目的で、リグニンの如きフェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してなる網状高分子、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,3ブチレングリコール、流動パラフィン、アルコール類、油脂、フタル酸、フタル酸−n−ジオクチル、フタル酸−n−ジブチル、ポリビニルアルコールを加え、必要に応じて界面活性剤、表面活性剤を加えても良い。
さらに、焼成時の変形を防止する目的で酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を添加しても良い。これは、金属酸化物によって焼結を遅らせることで、有機バインダが燃焼した際に発生するガスなどが外部へ拡散するための通路を形成する効果がある。
〔実施例1:銅焼成体中の銅粉末の粒径の影響〕
〈使用した原材料〉
実験例Aとして、銅可塑性組成物を構成する銅粉末は、平均粒径2.5μmの銅粉末50重量%と、平均粒径10μmの銅粉末50重量%とを混合した銅混合粉末を用意した。この銅混合粉末90重量%と、有機バインダとしてのメチルセルロース1.20重量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.30重量%及び水8.50重量%とを十分に混合して粘土状にし、長さ50mm幅10mm厚さ1.5mmの試験片を作り、80℃×30minにて乾燥し、長さを測定し、収縮率を求めた。そして、電気炉を用いて970℃30分で大気(酸化雰囲気)中で焼成し、得られた銅焼成体の表面を磨いてテストピースとした。
折り曲げ強度は、三点曲げ試験法に基づいて行い、具体的には、試験片の中央部を、圧子でスピード(50mm/min)10mmの深さまで押し曲げ、その際の荷重値を測定し、以下の式より求めた。
折り曲げ強度=3Pl/2bd2
P:荷重値,
l:支点間距離
b:試験片幅
d:試験片厚さ
また、実験例B〜Eとして、前記銅混合粉末に代えて、表1に示す粉末組成を有するものについても同様に成形し、試験片を作り、実験例Aと同条件で乾燥して焼成し、得られた銅焼成体の表面を磨きや酸洗いしてテストピースとした。なお、表中の2種混合粉末については等分配合(それぞれ50重量%)とし、3種混合粉末についても等分配合(それぞれ100/3重量%)とした。
〈結果〉
Figure 2011021535
〈考察〉
平均粒径2.5μmの銅微粉末を添加することにより、銅粉末間の焼結が促進されたため、銅微粉末を添加していない実験例Dの約2倍の強度の銅焼成体が得られることが確認された。
また、平均粒径10μm以下の銅混合粉末を含有する実験例A〜Cの銅可塑性組成物では、酸化雰囲気での焼成を行っても、その後の磨きや酸洗いにより、美麗な表面状態となり、請求の範囲第7項に規定した要件が望ましいことが確認された。
特に平均粒径2.5μmの粉末を50重量%と平均粒径10.0μmの粉末を50重量%の銅混合粉末を含有する実施例Aの銅可塑性組成物が最も望ましい結果となり、請求の範囲第8項に規定した要件がより望ましいことが確認された。
これに対し、平均粒径40μmの銅粉末を添加した実験例D,Eの銅可塑性組成物では、折り曲げ強度が弱く、銅造形焼成体として適していない。しかし、この銅可塑性組成物をアルゴンガス雰囲気中で焼成した場合は、十分装飾品として使用できる銅造形焼成体を得た。
〔実施例2:複雑な花形模様を有する装飾金属品の製造〕
1.貫通孔保有銅造形焼成体製作工程
前記実施例1と同様に、平均粒径2.5μmの銅粉末50重量%と、平均粒径10μmの銅粉末50重量%とを混合した銅混合粉末を用い、この銅混合粉末90重量%と、有機バインダとしてのメチルセルロース1.20重量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.30重量%及び水8.50重量%とを十分に混合して粘土状の銅可塑性組成物を作った。
前記銅可塑性組成物を、手やヘラ、さらには必要に応じて型枠などを使用して図1の中段に示すように中心に円形状の貫通孔4を備え、この貫通孔4から外方に向かって放射状に複数の花びらが延在する形状の銅造形体に形成した。
次に、形成した前記銅造形体を、80℃×30minの条件にて乾燥した後、970℃30分で大気(酸化雰囲気)中で電気炉にて焼成して銅造形焼成体3を得た。
2.銀造形体形成工程
平均粒径2.5μmの銀粉末50重量%(46wt%)および平均粒径20μmの銀粉末50重量%(46wt%)からなる銀混合粉末92wt%と、デンプン0.7wt%、セルロース0.8wt%、残部を水とした水溶性バインダを十分に混合して粘土状の銀可塑性組成物を作った。
前記銀可塑性組成物を、手やヘラ、さらには必要に応じて型枠などを使用して図1の上段に示すような上部銀造形体1と、下部銀造形体5を形成した。
なお、上部銀造形体1は、図示するように裏面から下方へ延在する突起部分(挿入部銀造形体2)を備える花粉集合体状に形成し、下部銀造形体5は、図1の下段に示すように略中央から外方に向かって放射状に複数の花びらが延在する形状に形成した。
また、形成した前記挿入部銀造形体2を備える上部銀造形体1および前記下部銀造形体5は、80℃×30minにて乾燥した。
3.装飾物セッティング工程
図1に示すように前記2.の工程にて得られた下部銀造形体5の上に、前記1.の工程にて得られた銅造形焼成体3を配置し、その貫通孔4に前記2.の工程にて得られた上部銀造形体1の突起部分2を嵌め付けるように配置して取り付けた。その際、図2および図3に示すように下部銀造形体5の花びらが、銅造形焼成体3の花びらと重ならないように注意した。
なお、突起部分2を貫通孔4に嵌め付ける際には、前記2.の工程にて用いた銀可塑性組成物に少量の水を加えて作ったペーストを挿入部銀造形体2の端部に塗布して接着し、銅造形焼成体3を、上部銀造形体1および下部銀造形体5とで挟んだ状態の装飾物6を得た。
4.装飾物焼成工程
前記3.の工程にて得られた装飾物6を、電気炉を用いて650℃30分で大気(酸化雰囲気)中で焼成した。
5.表面酸化膜除去工程
前記4.の工程にて得られた装飾物焼成体(装飾金属物品)7を酸洗い又は磨きを行って表面に形成された酸化膜を除去した。酸洗いには、市販の顆粒状の酸を温水に溶かして使用した。磨きには、磨きへら、糸バフを用いて研磨した。
そして、図4に示すように銅造形焼成体3の上下から、上部銀造形焼成体8および下部銀造形焼成体9が挟むように複雑に組み合わされ、従来に比して極めて立体的で複雑で緻密な装飾物焼成体(装飾金属物品)7が得られた。
また、その製造において、前記装飾物セッティング工程を、挿入部銀造形体2を備える上部銀造形体1と、下部銀造形体5を乾燥以後に行ったので、銅造形焼成体3の貫通孔4に挿入しやすく、銀可塑性組成物のペーストにて一体にする作業もしやすかった。
また、その製造において、前記1.の工程の焼成も、前記装飾物焼成工程の焼成も、酸化雰囲気で行うことができたため、煩雑な手間が回避され、汎用の電気炉で容易に焼成することができた。特に二段目の焼成となる前記装飾物焼成工程の焼成では、銅造形焼成体3の溶融や変形を生ずることもなかった。さらに、それらの焼成において、表面に酸化膜が形成されるけれども、前記表面酸化膜除去工程において短時間で容易に酸化膜を除去でき、美麗な金属地肌を得ることができた。
〔実施例3:複雑な花形模様を有する装飾金属品の製造〕
銅混合粉末90重量%(混合重量組成:平均粒径2.5μmの銅粉末47.5%、平均粒径10μmの銅粉末47.5%、及び酸化ジルコニウム5.0%)と、有機バインダとしてのメチルセルロース1.20重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.15重量%、澱粉0.8重量%、リグニン0.10重量%及び水7.75重量%とを十分に混合して粘土状の銅可塑性組成物を作った。
この銅可塑性組成物を用いた以外は、前記実施例2と全く同様にして、銀造形体形成工程、装飾物セッティング工程、装飾物焼成工程および表面酸化膜除去工程を行って装飾物焼成体(装飾金属物品)を得た。
この製造においても、前記装飾物セッティング工程で、挿入部銀造形体2を備える上部銀造形体1と、下部銀造形体5を乾燥以後に行ったので、銅造形焼成体3の貫通孔4に挿入しやすく、銀可塑性組成物のペーストにて一体にする作業もしやすかった。
また、その製造においても前記実施例2と全く同様に、前記貫通孔保有銅造形焼成体製作工程の焼成も、前記装飾物焼成工程の焼成も、酸化雰囲気で行うことができたため、煩雑な手間が回避され、汎用の電気炉で容易に焼成することができた。特に二段目の焼成となる前記装飾物焼成工程の焼成では、銅造形焼成体3の溶融や変形を生ずることもなかった。さらに、それらの焼成において、表面に酸化膜が形成されるけれども、前記表面酸化膜除去工程において短時間で容易に酸化膜を除去でき、美麗な金属地肌を得ることができた。
1 (挿入部銀造形体を備える)上部銀造形体
2 挿入部銀造形体
3 銅造形焼成体
4 貫通孔
5 下部銀造形体
6 装飾物
7 装飾物焼成体(装飾金属物品)
8 上部銀造形焼成体
9 下部銀造形焼成体
【0012】
すことがない。
[0024]
本発明の請求の範囲第10項に係る装飾金属物品の製造方法は、上記した請求の範囲第9項において、前記装飾物焼成体を酸洗い又は磨きを行う[表面酸化膜除去工程]を行うことを特徴とするものである。
[0025]
本発明の請求の範囲第11項に係る装飾金属物品は、銅または銅合金からなる銅造形焼成体に貫通孔が備えられ、該貫通孔を介して、銀および銀合金から選択される銀造形焼成体の少なくとも上下2つが一体となって前記銅造形焼成体を挟み、かつ、この挟持基部からそれぞれの焼成体の外端部が外方に向けて造形されたことを特徴とするものである。
かかる請求の範囲第11項の装飾金属物品によれば、従来の「異なる色を呈する貴金属粉末を含有させた複数の可塑性組成物を作成しておき、これらを接合した状態で一度に焼成する方法にあっては、接合面積が小さいと焼成後に分離してしまうため、焼成後の分離を防止するために接合面積が広い塊状のものとしなければならない」というデザイン上の大きな制約がないので、形成された装飾金属物品は、従来に比して極めて立体的で複雑な形状を成すことができる。
なお、本発明の装飾金属物品は、挟んだ銀造形焼成体と銅造形焼成体とが一体に固定された装飾物造形焼成体が一般的であるが、銅造形焼成体が回転自在に固定された装飾物焼成体も制作可能である。
発明の効果
[0026]
本発明の装飾金属物品の製造方法によれば、先に銅造形焼成体を製作し、該銅造形焼成体と銀可塑性組成物とで造形して装飾物を形成して焼成するので、その造形をそこなわずに焼成して装飾金属物品を得ることができる。なお、一段目の銅可塑性組成物の銅造形体の焼成と二段目の銀可塑性組成物の銀造形体の焼成との手順が逆であると、一段目で形成した造形焼成体の造形をそこなわずに希望する装飾金属物品を得ることができない。
また、本発明の装飾金属物品の製造方法によれば、銅造形焼成体に貫通孔を備えるようにし、この銅造形焼成体の貫通孔を介して、上部銀造形焼成体
【0013】
と下部銀造形焼成体とを一体とすることにより、銅造形焼成体を挟んだ装飾物焼成体を得るようにしたので、従来の「異なる色を呈する貴金属粉末を含有させた複数の可塑性組成物を作成しておき、これらを接合した状態で一度に焼成する方法にあっては、接合面積が小さいと焼成後に分離してしまうため、焼成後の分離を防止するために接合面積が広い塊状のものとしなければならない」というデザイン上の大きな制約がなく、銅または銅合金の銅造形焼成体と銀または銀合金の焼成体物とを組み合わせた斬新な複合造形焼成体を形成できる。
[0027]
さらに、その装飾金属物品は、銅造形焼成体に貫通孔を備え、該貫通孔を介して、銀および銀合金から選択される銀造形焼成体の少なくとも上下2つが一体となって前記銅造形焼成体を挟み、かつ、この挟持基部からそれぞれの焼成体の外端部が外方に向けて造形してなるものであるため、例えば挟持基部を中心として放射状に外端部が広がる形状の装飾性の優れた花形状の装飾金属物品とすることができ、従来に比して極めて立体的で複雑な形状を成すことができる。
図面の簡単な説明
[0028]
[図1]本発明の実施例における挿入部銀造形体を備える上部銀造形体と、銅造形焼成体と、下部銀造形体とを組み合わせた装飾物6の分解斜視図である。
[図2]本発明の実施例にて装飾物セッティング工程を経て得られた装飾物の平面図である。
[図3]図2におけるIII−III線における断面図である。
[図4]本発明の実施例にて得られた装飾物焼成体の斜視図である。
発明を実施するための形態
[0029]
本発明の請求の範囲第1項における[銅造形焼成体製作工程]、[銅−銀造形焼成体製作工程]についてそれぞれ説明する。
[0030]
[銅造形焼成体製作工程]
この工程では、銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて銅造形体を形成した後に焼成する。
この工程では、例えば後述する請求の範囲第2項に係る発明における[貫

Claims (11)

  1. 銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて銅造形体を形成した後、この銅造形体を焼成して銅造形焼成体を得る銅造形焼成体製作工程と、
    得られた銅造形焼成体と、銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銀可塑性組成物とで造形して装飾物を形成した後、この装飾物を焼成して装飾物焼成体を得る銅−銀造形焼成体製作工程と、
    を含むことを特徴とする装飾金属物品の製造方法。
  2. 銅および銅合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銅可塑性組成物にて貫通孔を備える銅造形体を形成した後、この銅造形体を焼成して銅造形焼成体を得る貫通孔保有銅造形焼成体製作工程と、
    銀および銀合金から選択される1種以上の粉末と有機バインダとを含有する銀可塑性組成物にて、前記銅造形焼成体の貫通孔に挿入される挿入部銀造形体と、上部銀造形体と、下部銀造形体とを個別に形成する、または上部銀造形体と下部銀造形体の少なくとも一方に当該挿入部銀造形体を備えて形成する銀造形体形成工程と、
    前記銅造形焼成体の貫通孔を介して、前記上部銀造形体と前記挿入部銀造形体と前記下部銀造形体とを、それら銀造形体の乾燥前または乾燥以後に、前記銀可塑性組成物のペーストにて一体にすることにより、当該銅造形焼成体を当該上部銀造形体と当該下部銀造形体とで挟んだ状態の装飾物に形成する装飾物セッティング工程と、
    前記装飾物セッティング工程を経た装飾物を焼成して前記上部銀造形体および下部銀造形体の焼成体で前記銅造形焼成体を挟んだ装飾物焼成体を得る装飾物焼成工程と、
    を含むことを特徴とする装飾金属物品の製造方法。
  3. 前記装飾物セッティング工程が、前記上部銀造形体と前記挿入部銀造形体と前記下部銀造形体の乾燥以後に行われることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  4. 前記装飾物セッティング工程にて用いる銀可塑性組成物のペーストは、別途追加したペースト状の可塑性組成物、または一体にする銀造形体の端部に水を含ませて柔らかくしたものであることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  5. 前記銅造形体の焼成が、850℃〜990℃の焼成温度で行われ、前記装飾物の焼成が、前記銅造形体の焼成温度より低い焼成温度で行われることを特徴とする請求の範囲第1〜4項の何れか一項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  6. 前記銅造形体の焼成が、酸化雰囲気で行われ、前記装飾物の焼成も、酸化雰囲気で行われることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  7. 前記銅可塑性組成物の銅および銅合金から選択される粉末は、平均粒径が10μm以下であることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  8. 前記銅可塑性組成物の銅および銅合金から選択される粉末は、平均粒径2.5μmの粉末を50重量%と平均粒径10.0μmの粉末を50重量%の銅混合粉末であることを特徴とする請求の範囲第7項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  9. 前記銀可塑性組成物の銀および銀合金から選択される粉末は、平均粒径2.2〜3.0μmの粉末を30〜70重量%と残部が平均粒径5〜20μmの粉末の銀混合粉末であることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  10. 前記装飾物焼成体を酸洗い又は磨きを行う表面酸化膜除去工程を行うことを特徴とする請求の範囲第9項に記載の装飾金属物品の製造方法。
  11. 銅または銅合金からなる銅造形焼成体の中間を、銀および銀合金から選択される銀造形焼成体の少なくとも上下2つによって挟んで一体とし、かつ、この挟持基部からそれぞれの焼成体の外端部が外方に向けて造形してなることを特徴とする装飾金属物品。
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