JP3456644B2 - 造形用粘土組成物及び貴金属製品の製造方法 - Google Patents
造形用粘土組成物及び貴金属製品の製造方法Info
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Description
術工芸品、装飾品等の工芸的要素の大きい貴金属造形物
を製作するための素材として用いる造形用粘土組成物及
び貴金属製品の製造方法に関する。
方法として、貴金属粉末とバインダ水溶液とを基本構成
とする粘土組成物を用い、これを所定形状に造形し、乾
燥した後、加熱することによりバインダ組成物を分解、
蒸発燃焼等により除去し、貴金属粉末の粒子相互を焼結
して目的の貴金属造形物を製造する方法が提案されてい
る(特開平8−269503号公報)。この粘土組成物
は、成形性に優れ、種々の複雑な形状を容易に成形する
ことができ、専門的技術を必要とせずに貴金属製品を造
形できることから、陶芸教室等で利用され、高い評価を
得ている。しかし、引き伸ばした際に、その伸びが大き
い等の特性が要望されている。
き伸ばしても容易に破断することがない造形用粘土組成
物を提案することを目的とする。
案されたもので、純貴金属粉末、貴金属合金粉末の一種
以上からなる貴金属粉末90〜99.9重量%と、分子
量10万〜数百万のポリエチレンオキサイド0.1〜1
0重量%と、全体量の2〜50重量%の水とを混練して
なることを特徴とする造形用粘土組成物に関するもので
ある。また、所望の粘土特性に応じて澱粉又はカルボキ
シメチルセルロース(CMC)の一方又は両方を0.0
2〜5重量%配合するようにしても良いし、ポリエチレ
ングリコール(分子量200〜10000)又はフェニ
ルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してなる網状
高分子の一方又は両方を0.02〜10重量%を配合す
るようにしても良い。尚、これらの有機系バインダを添
加する場合にはその分だけ前記の貴金属粉末の分率が低
くなる。
所望の形状に造形又は物品に付着させた後、必要に応じ
て乾燥固化させ、焼結するようにしたことを特徴とする
貴金属製品の製造方法も提案するものである。さらに、
特に前記構成の粘土組成物を厚み0.1〜2mmの板状
体に成形し、必要に応じて乾燥し、該板状体を180度
折りを含む折り込み成形して造形体を形成した後、必要
に応じて乾燥固化させ、焼結するようにしたことを特徴
とする貴金属焼結品の製造方法をも提案する。
キサイドは、エチレンオキサイドが開環重合して製造さ
れるポリマーであり、その分子量は10万〜数百万に達
するものであり、分子量200〜10000に過ぎない
ポリエチレングリコールとは異なる特性を有する化合物
である。例えばこの分子量10万〜数百万のポリエチレ
ンオキサイドは常温で白色粉末であるのに対し、分子量
が1万以下のポリエチレングリコールは常温で液状又は
ワックス状であり、しかも分子量10万〜数百万のポリ
エチレンオキサイドは極めて低濃度でも強い曳糸性を示
す。
オキサイドを有機系バインダとして用い、貴金属粉末と
水と混練した造形用粘土組成物は、伸び特性が著しく向
上し、例えば従来より有機系バインダとして用いられて
いたセルロース系樹脂では1割(10%オーダー)程度
の伸びしか得られなかったのに対し、少なくとも2〜3
倍(200〜300%)の伸びが得られることが見出さ
れた。尚、この伸び特性は、直径1mm、長さ4cmの
棒状に成形したものを手に持って引き伸ばした場合の数
値である。但し、このポリエチレンオキサイドの配合量
が0.1重量%に満たないと、組成物の伸びは向上する
ものの、バインダとしての作用が十分でなく、造形体が
脆弱でぼろぼろと崩れてしまう。また、10重量%を越
えると、組成物にゴム弾性が与えられ、むしろ所望の形
状に成形し難くなる。また、焼結後に得られる貴金属造
形物の強度が低下する。
u,Ag,Cu,Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,Os
等の純貴金属粉やこれらの元素の一種以上を主成分とす
る貴金属合金粉の一種以上からなり、粒径1〜100μ
mのものが全体の90%以上を占めるものが好ましく、
特に平均粒径が5〜30μmで適度に分布しているもの
が望ましい。これは大きな粒子間に小さな粒子が混在
し、巨大粒子間の空隙を埋めることにより、充填率が高
くなり、従って焼結時に発生する収縮率が低い貴金属焼
結品を得ることができる。
粉末90〜99.9重量%と、前記分子量10万〜数百
万のポリエチレンオキサイド0.1〜10重量%と、全
体量の2〜50重量%の水とを混練してなるが、手や治
具にて造形を行うような硬さの粘土とする場合には水の
配合量は全体量の15重量%以下(2〜15重量%)と
することが望ましく、注射器等の射出用道具を用いて造
形を行うような硬さの粘土(ペースト)とする場合には
水の配合量は全体量の30重量%以上(30〜50重量
%)とすることが望ましい。この水が全体量の50重量
%を越える場合は水分量が多すぎて自重で形状を維持で
きないし、水が全体量の2重量%に満たない場合には水
分量が少なすぎて生地割れを起こし、成形(造形)が困
難な粘土となってしまう。尚、前記の伸び特性は、手で
持って引き伸ばすことができる程度の硬度を有する粘土
におけるものであり、例えばペースト状の組成物で注射
器等で射出成形した直後は水分量が多いため手で持つこ
とが困難であるが、数分〜数十分後には水分量が低下し
て手で持って引き伸ばすことができる程度の硬度を有す
る粘土となり、前記の伸び特性を発揮する。また、水分
量の多いペースト状の組成物は、曳糸性を有して前記以
上の伸び特性を発揮する。即ち2〜3倍どころか、数十
〜数百倍もの伸びを発揮する場合もある。本発明におけ
る粘土組成物は、このようなペースト状の組成物も含
む。
て澱粉又はCMCの一方又は両方、或いはポリエチレン
グリコール、フェニルプロパンを骨格とする構成単位体
が重合してなる網状高分子などを添加しても良い。この
うち澱粉、CMCを添加した場合には、引き伸ばした際
の伸びが大きくなり、乾燥後は造形物の強度が高くな
り、切削等の作業が行い易くなる。これら澱粉、CMC
の配合量が0.02重量%に満たない場合には上述の配
合効果が十分に現れず、5重量%を越える場合には粘土
造形時に弾力性が出て所望の形状に成形し難くなると共
に、生地割れが発生し易くなる。さらに、ポリエチレン
グリコール、リグニン等の網状高分子を添加した場合に
は、これらが可塑剤として作用し、薄く成形することに
より、布のような柔軟性を有し、例えば折り曲げた後に
開いたときに折り目から切れたり、折り目に痕が残る等
の不具合は生じなく、引き伸ばした際にその伸びは失わ
れない。さらに、脱水させてもこれらの可塑化効果によ
り柔軟性、伸びを失うことがないので、造形時に乾燥に
ついて注意を払う必要がなく、造形時間に制限がなくな
る。これらポリエチレングリコール、リグニン等の網状
高分子の配合量が0.02重量%に満たない場合には上
述の配合効果が十分に現れず、10重量%を越える場合
には添加量に見合う可塑性の向上はなく不経済である。
また焼結時にひび割れを起こす。
加剤を適宜割合にて配合するようにしても良い。例えば
有機系バインダとして、メチルセルロース、ヒドロキシ
エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース等から選ばれる水溶
性セルロース系樹脂、或いは糖又は糖類を適宜配合量で
添加するようにしても良い。特に糖又は糖類の添加は、
保水性を向上し、そのため造形時に水分の揮発が生じ難
く、ひび割れを修復するなどの作業を行うことなく美麗
な造形物とすることができる。
に少なくとも2〜3倍(200〜300%)の伸びが得
られるため、所望の形状に造形する際に或いは物品に付
着させる際にも、従来では到底困難な形状の造形体又は
物品付着物を極めて簡易に造形又は形成することができ
る。
的向上は、一次成形に限定されるものではなく、従来で
は到底不可能な二次成形が極めて容易に実施できる。即
ちまず造形用粘土組成物を単なる板状或いは棒状に成形
(一次成形)しておき、この板状体や棒状体を適宜形状
に成形(二次成形)して所望の形状に造形する手法は従
来の粘土組成物では屈曲や折曲等にて破断やひび割れ等
を生じ易いものであったが、本発明の粘土組成物では何
等支障なく造形することができ、その伸び性を生かして
種々の形状の造形体とすることができる。そして、乾燥
固化させた乾燥造形体又は物品付着物を、或いは乾燥さ
せずにそのまま、各種の焼結条件にて焼結させて貴金属
製品とすることができる。
要に応じて乾燥し、該板状体を180度折りを含む折り
込み成形して造形体を形成し、例えば折り鶴のような造
形体を容易に作製することができる。尚、180度折り
は、局部的に伸び応力が作用するものであるから、従来
の粘土組成物では破断やひび割れ等を生じ易い。そし
て、折り紙として知られている公知の技術を用いて各種
の造形体を形成することができ、しかも微細部分の仕上
げに際しては伸ばす等して美麗な造形体とすることがで
きる。
は、次のようにして行った。 〔伸び試験〕;粘土組成物を直径1mm、長さ40mm
の棒状テストピースに成形し、手で長さ方向に引き伸ば
して伸び率を測定した。 〔折り曲げ試験〕;粘土組成物を長さ100mm、幅1
0mm、厚さ0.5mmの板状テストピースに成形し、
中央部を二つに折り曲げ、元の状態に戻したときの中央
部を観察した。 〔乾燥後の強度試験〕;粘土組成物を長さ100mm、
幅10mm、厚さ1.0mmの板状テストピースに成形
し、乾燥後の強度を測定した。
ンオキサイド(明成化学工業(株)製『アルコックスE
−160』分子量360〜400万)1.0gと、水
4.0gとをよく混練して銀粘土組成物を得た。得られ
た銀粘土組成物について伸び試験を行ったところ、30
0%以上の値が得られた。
ース(信越化学工業(株)製『メトロースSM800
0』)1.0gと、β−バレイショデンプン(日澱化学
(株)製『DELICA M−9』)1.0gと、水
6.0gとをよく混練して銀粘土組成物を得た。得られ
た銀粘土組成物について伸び試験を行ったところ、12
%の値が得られた。
ンオキサイド(明成化学工業(株)製『アルコックスE
−160』分子量360〜400万)1.0gと、CM
C(第一工業製薬(株)製『セロゲン3H』)1.0g
と、水7.0gとをよく混練して銀粘土組成物を得た。
得られた銀粘土組成物について伸び試験を行ったとこ
ろ、300%以上の値が得られた。また、乾燥後の強度
試験では、0.9kgf/cm2の値が得られ、乾燥後の成形
物をやすりがけしても成形物が崩れるようなことはな
く、形の修正が可能であった。
ンオキサイド(明成化学工業(株)製『アルコックスE
−160』分子量360〜400万)1.0gと、β−
バレイショデンプン(日澱化学(株)製『DELICA
M−9』)1.0gと、水7.0gとをよく混練して
銀粘土組成物を得た。得られた銀粘土組成物について伸
び試験を行ったところ、300%以上の値が得られた。
また、乾燥後の強度試験では、0.8kgf/cm2の値が得
られ、乾燥後の成形物をやすりがけしても成形物が崩れ
るようなことはなく、形の修正が可能であった。
チレンオキサイド(明成化学工業(株)製『アルコック
スE−160』分子量360〜400万)1.0gと、
ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製『PE
G−200』)1.0gと、リグニン0.2gと、水
3.0gとをよく混練して銀粘土組成物を得た。得られ
た銀粘土組成物について伸び試験を行ったところ、20
0%の値が得られた。また、折り曲げ試験では5回以上
折り曲げても中央部に痕跡は残らなかった。さらに、得
られた銀粘土組成物を厚さ0.5mmのテストピースに
成形後、脱水してから同様な試験を行ったが、結果に変
化は見られず、伸び、折り曲げ性に優れていた。
を用いて厚さ0.5mmの正方形の板状体を成形した。
この板状体を常温で10分ほど乾燥した後、折り鶴を造
形した。折り鶴の嘴部分と両翼の先端は指で伸ばしなが
ら仕上げを行った。180度折りを行った部分(折曲部
分)や伸ばし部分(嘴部分、両翼の先端)にひび割れ等
は全く観察されず、美麗であった。
れも成形時に手への付着はほとんど無かった。そして、
成形品を必要に応じて乾燥した後、炉内が870℃にな
った状態の電気炉内に入れ、10分間加熱した後、電気
炉内から取り出し、室内で放冷、冷却し、焼結品を得
た。得られた焼結品にはひび割れ等は全く発生しなかっ
た。
前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲
に記載の構成を変更しない限りどのようにでも実施する
ことができる。
土組成物は、引き伸ばしても容易に破断することがな
く、造形性が優れている。したがって、製作者の要望に
合わせてイメージ通りの貴金属物品を容易に作ることが
できる。また、澱粉又はカルボキシメチルセルロースの
一方又は両方を配合した粘土組成物は、引き伸ばした際
の伸びが大きくなり、しかも乾燥後は造形物の強度が高
くなり、切削等の作業が行い易くなる。さらに、ポリエ
チレングリコールやフェニルプロパンを骨格とする構成
単位体が縮合してなる網状高分子を配合した粘土組成物
は、これらが可塑剤として作用するため、布状に成形し
て折り曲げても折り目から切れたり折り目に痕が残るこ
とがなく、造形時や造形後に乾燥によりひび割れ等を生
ずることがない。
Claims (5)
- 【請求項1】 純貴金属粉末、貴金属合金粉末の一種以
上からなる貴金属粉末90〜99.9重量%と、分子量
10万〜数百万のポリエチレンオキサイド0.1〜10
重量%と、全体量の2〜50重量%の範囲の水とを混練
してなることを特徴とする造形用粘土組成物。 - 【請求項2】 純貴金属粉末、貴金属合金粉末の一種以
上からなる貴金属粉末85〜99.88重量%と、有機
系バインダ0.12〜15重量%と、全体量の2〜50
重量%の水とを混練してなる造形用粘土組成物であり、
有機系バインダは分子量10万〜数百万のポリエチレン
オキサイド0.1〜10重量%と、澱粉又はカルボキシ
メチルセルロースの一方又は両方0.02〜5重量%と
を含有することを特徴とする造形用粘土組成物。 - 【請求項3】 純貴金属粉末、貴金属合金粉末の一種以
上からなる貴金属粉末80〜99.88重量%と、有機
系バインダ0.12〜20重量%と、全体量の2〜50
重量%の水とを混練してなる造形用粘土組成物であり、
有機系バインダは分子量10万〜数百万のポリエチレン
オキサイド0.1〜10重量%と、ポリエチレングリコ
ール又はフェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮
合してなる網状高分子の一方又は両方0.02〜10重
量%とを含有することを特徴とすることを特徴とする造
形用粘土組成物。 - 【請求項4】 純貴金属粉末、貴金属合金粉末の一種以
上からなる貴金属粉末90〜99.9重量%と、分子量
10万〜数百万のポリエチレンオキサイド0.1〜10
重量%と、全体量の2〜50重量%の範囲の水とを混練
してなる粘土組成物を所望の形状に造形又は物品に付着
させた後、必要に応じて乾燥固化させ、焼結するように
したことを特徴とする貴金属製品の製造方法。 - 【請求項5】 純貴金属粉末、貴金属合金粉末の一種以
上からなる貴金属粉末90〜99.9重量%と、分子量
10万〜数百万のポリエチレンオキサイド0.1〜10
重量%と、全体量の2〜50重量%の範囲の水とを混練
してなる粘土組成物を厚み0.1〜2mmの板状体に成
形し、必要に応じて乾燥し、該板状体を180度折りを
含む折り込み成形して造形体を形成した後、必要に応じ
て乾燥固化させ、焼結するようにしたことを特徴とする
貴金属製品の製造方法。
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