JPWO2009128486A1 - 磁気メモリ素子の記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 情報を磁性体の磁化方向として保持する記憶層と、記憶層に対して絶縁層を介して設けられた磁化基準層とを有し、絶縁層を通じて記憶層と磁化基準層との間に流れる電流によって記録が行われる磁気メモリ素子の記録方法であって、反転閾値よりかなり大きな書き込みパルスを印加した場合でも、反転閾値より少し大きな書き込みパルスを印加した場合と同程度のエラー率を保つことができる記録方法を提供すること。【解決手段】 1つの情報を記録するに際し、1つ以上の主パルスと1つ以上の副パルスとを同じ向きに印加し、主パルスを、情報を記録するのに十分なパルス高さ及びパルス幅を有するパルスとし、副パルスを、主パルスに比べてパルス幅が短いパルスであるか、又は主パルスに比べてパルス高さが低いパルスであるかの、少なくとも一方の条件を満たすパルスとし、主パルスの後に1つ以上の副パルスを印加する。【選択図】 図1

Description

本発明は、磁化方向の変化が可能で、情報を磁性体の磁化方向として保持する記憶層と、記憶層に対して絶縁層を介して設けられ、磁化方向の基準となる磁化基準層とを有し、絶縁層を通じて記憶層と磁化基準層との間に流れる電流によって情報の記録が行われる磁気メモリ素子の記録方法に関するものである。
コンピュータ等の情報機器では、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory;RAM)として、動作が高速で、高密度記録が可能なDRAM(Dynamic RAM)が広く用いられている。しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、電源が切断されても情報を保持することができ、機器の低消費電力化に不可欠な不揮発性メモリの高速化および高密度大容量化が強く望まれている。
不揮発性メモリとしては、フラッシュメモリなどが実用化されているが、近年、高速、大容量、低消費電力の不揮発性メモリとして、磁気抵抗効果を利用した磁気メモリが注目され、開発が進められている。例えば、トンネル磁気抵抗(Tunnel Magnetoresistance;TMR)効果を用いる磁気メモリ素子、すなわちMTJ素子からなり、電流によって誘起される磁場によって記憶層の磁化方向を反転させ、情報を記録する磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic RAM:MRAM)が実用化されている(例えば、フリースケール・セミコンダクタ・インク社製のMR2A16(商品名)など)。
図9(a)は、MTJ素子の基本構造と、その記憶情報の読み出し動作を示す説明図である。図9(a)に示すように、MTJ素子100は、記憶層105と磁化基準層103との2つの強磁性層の間に、非磁性の薄い絶縁層であるトンネル絶縁層104を挟持した構造、いわゆる磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction:MTJ)を有する。記憶層105は、一軸磁気異方性を有する強磁性導体からなり、外部からの作用で磁化方向を変化させることができ、かつ、磁化方向を情報として保持することができる。例えば、その磁化方向が、磁化基準層103の磁化方向に対して「平行」であるか、「反平行」であるかを、それぞれ「0」および「1」の情報として記憶する。
MTJ素子100からの情報の読み出しには、上述した2つの磁性層の相対的な磁化方向の違いによって、トンネル絶縁層104を通じて記憶層105と磁化基準層103との間に流れるトンネル電流に対する抵抗値が変化するTMR効果を利用する。この抵抗値は、記憶層105の磁化方向と磁化基準層103の磁化方向とが平行であるときに最小値をとり、反平行であるときに最大値をとる。
図9(b)は、MTJ素子100からなるMRAMのメモリセルの構造の一例を示す部分斜視図である。このMRAMでは、行配線であるワード線と列配線であるビット線とがマトリックス状に配置され、それらの各交点の位置にMTJ素子100が配置され、1ビットに相当するメモリセルが形成されている。
メモリセルの上部には、書き込み用ビット線122と読み出し用ビット線123とが層間絶縁膜を間に挟んで設けられ、読み出し用ビット線123に接してその下にMTJ素子100が配置され、さらにMTJ素子100の引き出し電極層106の下に絶縁層を挟んで書き込み用ワード線121が配置されている。
一方、メモリセルの下部には、例えばシリコン基板などの半導体基板111に、読み出し動作時にこのメモリセルを選択するための選択用トランジスタ110として、MOS(Metal Oxide Semiconductor)型電界効果トランジスタが設けられている。トランジスタ110のゲート電極115は、セル間をつないで帯状に形成され、読み出し用ワード線を兼ねている。また、ソース領域114は、読み出し用接続プラグ107を介してMTJ素子100の引き出し電極層106に接続されており、ドレイン領域116は、読み出し用の行配線であるセンス線124に接続されている。
このように構成されたMRAMにおいて、所望のメモリセルのMTJ素子100への情報の書き込み(記録)は、そのメモリセルが含まれる行の書き込み用ワード線121と、列の書き込み用ビット線122とのそれぞれに書き込み電流を流し、2つの書き込み用配線の交点の位置に、これらの電流による磁界の合成磁界を発生させることによって行う。この合成磁界によって、所望のメモリセルのMTJ素子100の記憶層105が、所定の磁化方向、すなわち、磁化基準層103の磁化方向に対して「平行」であるか、または「反平行」である方向に磁化され、情報の書き込み(記録)が行われる。
また、MTJ素子100からの情報の読み出しでは、所望のメモリセルが含まれる行の読み出し用ワード線であるゲート電極115に選択信号を印加して、その行の選択用トランジスタ110をすべてON(導通)状態にする。これに合わせて、所望のメモリセルが含まれる列の読み出し用ビット線123とセンス線124との間に読み出し電圧を印加する。この結果、所望のメモリセルだけが選択され、そのMTJ素子100の記憶層105の磁化方向の違いが、TMR効果を利用してMTJ素子100を流れるトンネル電流の大きさの違いとして検知される。トンネル電流はセンス線124から(図示省略した)周辺回路へ取り出されて測定される。
TMR型のMRAMは、ナノ磁性体特有のスピン依存伝導現象に基づく磁気抵抗効果を利用して、情報の読み出しを行う不揮発性メモリであり、磁化方向の反転によって書き換えを行うため、実質的に無限回の書き換えが可能であり、アクセス時間についても高速であることが報告されている(例えば、R. Scheuerlein et al.,ISSCC Digest of Technical Papers,pp.128-129,Feb.2000参照。)。
しかしながら、電流磁界で書き込みを行うMRAMにおいては、書き換えのために大きな電流(例えば数mA程度)を流す必要があり、消費電力が大きくなる。また、MTJ素子が微細化すると、書き換えに必要な電流が増大する傾向を示す反面、書き込み用配線は細くなるため、書き換えに十分な電流を流すことが難しくなる。また、高集積化が進むと、隣接する別のメモリセルに誤って書き込んでしまう確率が高くなる。さらに、書き込み用配線と読み出し用配線とをそれぞれ必要とするため、構造的に複雑である。これらのために、電流磁界で書き込みを行うMRAMは高密度大容量化が制限される。
そこで、異なる原理に基づいて磁気メモリ素子の記憶層へ情報を書き込む(記録する)素子として、書き込みにスピン注入による磁化反転を用いる磁気メモリ素子が注目されている。スピン注入とは、磁化方向が固定された強磁性導電層(磁化基準層)に電流を流すことによって、スピンの向きが一方に偏った電子集団からなる電流(スピン偏極電流:spin-polarized current)を作り出し、この電流を磁化方向が変化可能な磁性導電層(記憶層)に注入する操作である。このようにすると、スピン偏極電流が記憶層を流れる際に、スピン偏極した電子と記憶層を構成している磁性体の電子との相互作用によって、記憶層の磁化方向を磁化基準層の磁化方向に一致させようとする力(トルク)が作用する。従って、ある閾値以上の電流密度のスピン偏極電流を流すことによって、記憶層の磁化方向を反転させることができる(例えば、後述の特許文献1および非特許文献1参照。)。
図10は、後述の特許文献2に示されている、スピン注入によって磁化方向が反転されるMTJ素子(以下、スピン注入MTJ素子と呼ぶ。)からなり、スピン注入による磁化反転を利用するMRAM(以下、スピントルクMRAMと呼ぶ。)の構造の一例を示す部分斜視図である。このスピントルクMRAMでは、行配線であるワード線215と列配線であるビット線218とがマトリックス状に配置され、それらの各交点の位置に1個のスピン注入MTJ素子220が配置され、1ビットに相当するメモリセルが形成されている。図10は、メモリセル4個分を示している。
下部の半導体基板211には、後述する選択用トランジスタ210が各メモリセルに形成されており、ワード線215は選択用トランジスタ210のゲート電極を兼ねている。また、ドレイン領域216は、図中の左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域216には、行配線219が接続されている。
図11は、スピントルクMRAMのメモリセルの構造を示す部分断面図である。メモリセルの中央部には、下層から順に下地層201、反強磁性層202、磁化固定層203a、中間層203b、磁化基準層203c、トンネル絶縁層204、記憶層205、および保護層206の各層が積層され、スピン注入MTJ素子220が形成されている。スピン注入MTJ素子220の層構成は、基本的には通常のMTJ素子100と同じである。
磁化固定層203a、中間層203b、および磁化基準層203cは、反強磁性層20202の上に積層されており、全体として固定磁化層を構成している。強磁性導体からなる磁化固定層203aの磁化方向は反強磁性層20202によって固定されている。同じく強磁性導体からなる磁化基準層203cは、非磁性層である中間層203bを介して、磁化固定層203aと反強磁性結合を形成している。この結果、磁化基準層203cの磁化方向は、磁化固定層203aの磁化方向の反対方向に固定されている。図11に示した例では、磁化固定層203aの磁化方向は左向きに固定され、磁化基準層203cの磁化方向は右向きに固定されている。
固定磁化層を上記の積層フェリ構造とすると、固定磁化層の外部磁界に対する感度を低下させることができるため、外部磁界による固定磁化層の磁化変動を抑制して、MTJ素子の安定性を向上させることができる。また、磁化固定層203aおよび磁化基準層203cから漏れ出す磁束が互いに打ち消し合うので、これらの膜厚を調整することによって、固定磁化層から漏洩する磁束を最少に抑えることができる。
記憶層5は、一軸磁気異方性を有する強磁性導体からなり、外部からの作用で磁化方向を変化させることができ、かつ、磁化方向を情報として保持することができる。例えば、その磁化方向が、磁化基準層203cの磁化方向に対して「平行」であるか、「反平行」であるかを、それぞれ「0」および「1」の情報として記憶する。磁化基準層203cと記憶層205との間には、非磁性の薄い絶縁層であるトンネル絶縁層204が設けられており、磁化基準層203cとトンネル絶縁層204と記憶層205とによって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。
一方、メモリセルの下部には、シリコン基板などの半導体基板211の素子分離されたウエル領域211aに、このメモリセルを選択するための選択用トランジスタ210として、ゲート絶縁膜212、ソース電極213、ソース領域214、ゲート電極215、ドレイン領域216、およびドレイン電極217よりなるMOS型電界効果トランジスタが設けられている。
上述したように、選択用トランジスタ210のゲート電極215は、セル間をつないで帯状に形成され、第1の行配線であるワード線を兼ねている。また、ドレイン電極217は第2の行配線である行配線219に接続されており、ソース電極213は、接続プラグ207を介してスピン注入MTJ素子220の下地層201に接続されている。一方、スピン注入MTJ素子220の保護層206は、メモリセルの上部に設けられた列配線であるビット線218に接続されている。
所望のメモリセルのスピン注入MTJ素子220へ情報を記録するには、所望のメモリセルが含まれる行のワード線215に選択信号を印加して、その行の選択用トランジスタ210をすべてON(導通)状態にする。これに合わせて、所望のメモリセルが含まれる列のビット線218と行配線219との間に書き込み電圧を印加する。この結果、所望のメモリセルが選択され、そのスピン注入MTJ素子220の記憶層205をスピン偏極電流が貫流し、記憶層205が所定の磁化方向に磁化され、情報の記録が行われる。
この際、初めスピン注入MTJ素子220の磁化基準層203cの磁化方向が、記憶層205の磁化方向に対して「反平行」である状態にあり、これを書き込みによって記憶層205の磁化方向が磁化基準層203cの磁化方向に対して「平行」である状態に反転させる場合には、図11に示すように、閾値以上の電流密度の書き込み電流を記憶層205から磁化基準層203cへ流すようにする。これによって、実体としては、閾値以上の電子密度のスピン偏極電子流が磁化基準層203cから記憶層205へ流れ、磁化反転が起こる。
逆に、記憶層205の磁化方向に対して「平行」状態にある磁化基準層203cの磁化方向を「反平行」状態に反転させる場合には、閾値以上の電流密度の書き込み電流を、上記の逆方向へ、すなわち磁化基準層203cから記憶層205へ流し、実体としては、閾値以上の電子密度の電子流が記憶層205から磁化基準層203cへ流れるようにする。
また、スピン注入MTJ素子220からの情報の読み出しは、MTJ素子100と同様、TMR効果を用いて行われる。スピン注入MTJ素子220の書き込みと読み出しは、いずれも、記憶層205中の電子と、この層を貫流するスピン偏極電流との相互作用を利用しており、読み出しはスピン偏極電流の電流密度が小さい領域で行われ、書き込みはスピン偏極電流の電流密度が閾値を超えて大きい領域で行われる。
スピン注入による磁化反転の可否は、スピン偏極電流の電流密度に依存するため、スピン注入MTJ素子220では、記憶層の体積が小さくなるほど、体積に比例してより少ない電流で磁化反転が可能になる(非特許文献1参照。)。また、選択用トランジスタ210で選択したメモリセルに情報を書き込むので、電流磁場による書き込みと異なり、隣接する別のセルに誤って書き込んでしまうおそれがない。また、書き込みと読み出しとで大部分の配線を共用できるので、構造が簡素化する。さらに、磁場書き込みに比べて磁性体の形状の影響が小さいので、製造時の歩留まりを高めやすい。これらの点で、スピントルクMRAMは、電流磁場で書き込みを行うMRAMに比べて、微細化、高密度大容量化に適している。
しかしながら、選択用トランジスタ210を用いて書き込み(記録)を行うことから、別の問題点が生じる。すなわち、書き込み時にスピン注入MTJ素子220に流すことのできる電流は、選択用トランジスタ210に流すことができる電流(トランジスタの飽和電流)によって制限される。一般に、トランジスタのゲート幅やゲート長が小さくなるに従い、トランジスタの飽和電流も小さくなるので、スピン注入MTJ素子220への書き込み電流を確保するために、選択用トランジスタ210の小型化が制限される。従って、選択用トランジスタ210をできるだけ小型化し、スピントルクMRAMを最大限に高密度大容量化するためには、書き込み電流の閾値をできる限り減少させることが不可欠である。
また、トンネル絶縁層204が絶縁破壊することを防ぐためにも、書き込み電流の閾値を減少させる必要がある。また、MRAMの消費電力を減少させるためにも、書き込み電流閾値をできる限り減少させる必要がある。
さて、スピン注入による磁化反転に要する電流の閾値は、現象論的に、記憶層205のスピン制動定数α、飽和磁化量Msの二乗、および体積Vに比例し、スピン注入効率ηに反比例することが示されている。従って、これらを適切に選択することによって、磁化反転に要する電流の閾値を下げることができる。
しかし、一方、スピン注入MTJ素子220が信頼できるメモリ素子であるためには、記憶層205のメモリ保持特性(磁化の熱安定性)が確保され、磁化方向が熱運動によって変化してしまわないことが必要である。熱安定性は記憶層205の飽和磁化量Msおよび体積Vに比例する。
記憶層205の飽和磁化量Msおよび体積Vは、磁化反転に要する電流の閾値と熱安定性との両方に関係しており、これらの因子を小さくして磁化反転に要する電流の閾値を低下させると、熱安定性もまた低下してしまうというトレードオフの関係にある。
従って、磁化反転に要する電流の閾値を低下させるには、慎重に熱安定性の確保との両立をはかりながら、主としてスピン注入の効率ηを改善する必要がある。本発明者は、スピントルクMRAMが、他のメモリに比して競争力のあるメモリとなり得るように、磁化反転に要する電流密度の閾値の低減と、メモリ保持特性(熱安定性)確保とを両立させ得るMTJ材料を鋭意開発してきた(特開2006-165265号公報、特開2007-103471号公報、特開2007-48790号公報、特許文献2、および特願2006-350113など参照。)。その結果、その実現に近づきつつある。
特開2003−17782号公報(第6及び7頁、図2) 特開2007−287923号公報(第7−15頁、図2) F.J.Albert et al., Appl. Phys. Lett., Vol.77, (2002), p.3809
しかしながら、本発明者が、上述したMTJ材料を用いて、書き込み電流密度の閾値の小さいスピン注入MTJ素子を作製して調べたところ、従来、論文や学会発表にも報告されていない特異な現象が現れることが判明した。すなわち、このスピン注入MTJ素子では、印加する書き込みパルスを、書き込みエラー率を考慮して反転閾値よりも少し大きく設定すると、(外挿して得た推定値として)10-25以下の書き込みエラー率を確保できるにも関わらず、印加する書き込みパルスを反転閾値よりもかなり大きく設定すると、書き込みパルスが大きくなるほど、かえって書き込みエラー率が増加する傾向があることが認められた(図12参照)。ここでは、反転閾値より大きな記録電圧で起きるエラーを、"高記録電圧エラー"と呼ぶ。
数百Mbitの容量をもつスピントルクMRAMメモリチップへの実際の書き込みでは、スピン注入MTJ素子の反転閾値のばらつきや、トランジスタおよび配線に起因する反転閾値のばらつきなどを考慮して、反転閾値の平均値よりもかなり大きい書き込みパルスを印加するように設定する。従って、上記の現象が現れると、スピントルクMRAMメモリチップへの実際の書き込みにおいて、10-25以下の書き込みエラー率を確保することができなくなる。
また、MRAMやスピントルクRAMは記憶層を構成する磁性体の磁化方向として情報を保持しているため、強い外部磁場に曝されると記憶層の磁化方向が変化してしまい、情報が消失する。特に、書き込み(記録)過程の途中では、外部磁場に対する耐性が著しく低下するため、磁気メモリ素子に作用する外部磁場を減少させるための磁気シールドが必須であり、前述した市販のMRAM(MR2A16)にも装備されている。しかしながら、磁気シールドで磁場遮蔽効果を得るためには、ある程度の厚さと体積が必要であり、メモリICの体積や重量の増加、あるいは価格の上昇が避けられない。
特に、スピントルクRAMにおいては、外部磁場が記録電流や反転時間に影響することが、例えば文献(K.Ito et al., J.Phys.D., Vol. 40, 2007年, p.1261)に示されており、さらに、通電によるスピン注入MTJ素子の発熱により外部磁場に対する耐性がさらに低下する可能性が、文献(G.D.Fuchs et al., Apl.Phys.Let., Vol. 86, 2005年, p.152509)に示されており、外部磁場に対する耐性をより高めておく必要がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、磁化方向の変化が可能で、情報を磁性体の磁化方向として保持する記憶層と、記憶層に対して絶縁層を介して設けられ、磁化方向の基準となる磁化基準層とを有し、絶縁層を通じて記憶層と磁化基準層との間に流れる電流によって情報の記録が行われる磁気メモリ素子の記録方法であって、反転閾値より少し大きい書き込みパルスを印加した場合に得られる書き込みエラー率を、反転閾値よりかなり大きい書き込みパルスを印加した場合でも保つことができ、又、外部磁場に対する耐性が向上した磁気メモリ素子の記録方法を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、書き込みパルスの印加方法を工夫することによって上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
即ち、本発明は、強磁性導体からなり、磁化方向の変化が可能で、情報を磁性体の磁化方向として保持する記憶層と;前記記憶層に対して絶縁層を介して設けられ、強磁性導体からなり、磁化方向が固定され、磁化方向の基準となる基準磁化層と;を少なくとも有し、前記絶縁層を通じて前記記憶層と前記基準磁化層との間に流れる電流によって情報の記録が行われる磁気メモリ素子に対する記録方法において、1つの情報を記録するに際し、1つ以上の主パルスと1つ以上の副パルスとを同じ向きに印加し、前記の1つ以上の主パルスの後に、1つ以上の副パルスを印加し、前記の主パルスの後に印加する副パルスを、前記主パルスに比べてパルス幅が短いパルスであるか、又は前記主パルスに比べてパルス高さが低いパルスであるかの、少なくとも一方の条件を満たすパルスとする、ことを特徴とする、磁気メモリ素子の記録方法に係わるものである。
なお、前記パルスは、電圧制御であっても、電流制御であっても、電力制御であってもよい。
本発明の磁気メモリ素子の記録方法によれば、後述の実施の形態および実施例で示すように、1つの情報を記録するに際し、前記の1つ以上の主パルスの後に、前記の1つ以上の副パルスを印加し、前記の主パルスの後に印加する副パルスを、前記主パルスに比べてパルス幅が短いパルスであるか、又は前記主パルスに比べてパルス高さが低いパルスであるかの、少なくとも一方の条件を満たすパルスとすることによって、反転閾値よりもかなり大きい書き込みパルスを印加した場合でも、反転閾値より少し大きい書き込みパルスで得られると同様の書き込みエラー率を保つことができた。
先述した高記録電圧エラーが発現する機構や、本発明によって書き込みエラー率を小さく抑えることができる仕組みが、完全に明らかになったとは言えない。しかし、反転閾値より少し大きい書き込みパルスを印加した場合には問題が生ぜず、反転閾値よりもかなり大きい書き込みパルスを印加した場合に問題が生じ、しかも、書き込みパルスが大きいほど書き込みエラー率が増加することから考えて、反転閾値に比して過剰な書き込み電力の注入が問題を引き起こしていると推測できる。
従来の単一のパルスによる書き込みでは、過剰な書き込み電力の注入によって生じた書き込みエラーが修正されることなく、そのまま結果になるため、書き込みエラー率が高い。また、書き込み時の外部磁場に対する耐性が低い。これに対し、本発明では、前記の1つ以上の主パルスの後に、1つ以上の副パルスを印加するので、前記主パルスで生じた書き込みエラーを、この副パルスによる書き込みで修正できる可能性が高い。しかも、前記の主パルスの後に印加する副パルスを、前記主パルスに比べてパルス幅が短いパルスであるか、又は前記主パルスに比べてパルス高さが低いパルスであるかの、少なくとも一方の条件を満たすパルスとするので、前記副パルスによる書き込みでは過剰なエネルギーが蓄積されにくく、上記の高記録電圧エラーが現れにくい。以上の効果により、本発明の磁気メモリ素子の記録方法では書き込みエラー率が減少し、また、書き込み時の外部磁場に対する耐性が向上する。
本発明の実施の形態1に基づく磁気メモリ素子の記録方法における書き込みパルス列の例を示すグラフである。 同、磁気メモリ素子の記録方法における書き込みパルス列の例を示すグラフである。 同、磁気メモリ素子の記録方法における書き込みパルス列の例を示すグラフである。 本発明の実施の形態2に基づく磁気メモリ素子の記録方法における書き込みパルス列の例を示すグラフである。 同、磁気メモリ素子の記録方法における書き込みパルス列の例を示すグラフである。 本発明の実施例1の磁気メモリ素子の記録方法における、書き込みエラー率とパルス間隔との関係を示すグラフである。 本発明の実施例2の磁気メモリ素子の記録方法における、書き込みエラー率と副パルスの高さとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例3による、磁気メモリ素子の記録方法の外部磁場に対する耐性を示すグラフである。 MTJ素子の基本構造と、その記憶情報の読み出し動作を示す説明図(a)、および、MTJ素子からなるMRAMのメモリセルの構造の一例を示す部分斜視図(b)である。 特許文献2に示されている、スピントルクMRAMの構造を示す部分斜視図である。 同、スピン注入MTJ素子からなるスピントルクMRAMのメモリセルの構造を示す部分断面図である。 書き込みパルス電圧と書き込みエラー率との関係を示すグラフである。 1つの矩形のパルスから上記の実施形態の主パルスと副パルスとからなる書き込みパルスを生成する書き込みパルス発生回路の構成を示す図である。 書き込みパルスを波形メモリとD/A変換回路を用いて生成する書き込みパルス発生回路の構成を示す図である。 本発明の実施形態に係るスピントルクMRAMのメモリセルの構造を示す部分斜視図である。 本発明の実施形態に係るスピン注入MTJ素子の構成を示す断面図である。
本発明の磁気メモリ素子の記録方法において、前記の1つ以上の主パルスと、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスとからなるパルス列中に、連続する3つのパルスの組みであって、パルス幅及びパルス高さの少なくとも一方が漸次減少していく組みを少なくとも一組設けるのがよい。
また、前記の1つ以上の主パルスの終端と、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスの先端との間に、3ns以上の時間間隔を設けるのがよい。(なお、パルスの終端および先端は、それぞれ、パルスの立ち下がり及び立ち上がりにおける高さがパルス高さの最大値の半分になる位置とする。以下、同様。)
また、前記の1つ以上の主パルスと、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスとからなるパルス列中の、任意に選ばれた連続する2つのパルスの組みにおいて、後のパルスを、パルス幅が2ns以上、10ns以下であるか、又はパルス高さが前のパルスの0.7倍以上、0.95倍以下であるかの、少なくとも一方の条件を満たすパルスとし、且つ、前のパルスの終端と後のパルスの先端との間に5ns以上の時間間隔を設けるのがよい。
また、前記の1つ以上の主パルスと、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスとからなるパルス列中の、任意に選ばれた連続する2つのパルスの組みにおいて、後のパルスを、パルス幅が3ns以下であるか、又はパルス高さが前のパルスの0.95倍以下であるかの、少なくとも一方の条件を満たし、且つ、前のパルスの終端と後のパルスの先端との時間間隔を5ns未満とするのがよい。
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に、より具体的に説明する。
実施の形態1
実施の形態1では、主として、請求項1〜3に関わるスピン注入MTJ素子の記録方法の例について説明する。
本実施の形態で用いるスピントルクMRAMのメモリセルの構造およびスピン注入MTJ素子の構成を図15および図16に示す。
図15は、スピン注入によって磁化方向が反転されるMTJ素子(以下、スピン注入MTJ素子と呼ぶ。)からなり、スピン注入による磁化反転を利用するMRAM(以下、スピントルクMRAMと呼ぶ。)の構造の一例を示す部分斜視図である。このスピントルクMRAMでは、行配線であるワード線15と列配線であるビット線18とがマトリックス状に配置され、それらの各交点の位置に1個のスピン注入MTJ素子20が配置され、1ビットに相当するメモリセルが形成されている。図15は、メモリセル4個分を示している。
下部の半導体基板11には、後述する選択用トランジスタ10が各メモリセルに形成されており、ワード線15は選択用トランジスタ10のゲート電極を兼ねている。また、ドレイン領域16は、図中の左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域16には、行配線19が接続されている。
図16は、スピントルクMRAMのメモリセルの構造を示す部分断面図である。メモリセルの中央部には、下層から順に下地層1、反強磁性層2、磁化固定層3a、中間層3b、磁化基準層3c、トンネル絶縁層4、記憶層5、および保護層6の各層が積層され、スピン注入MTJ素子20が形成されている。
磁化固定層3a、中間層3b、および磁化基準層3cは、反強磁性層2の上に積層されており、全体として固定磁化層を構成している。強磁性導体からなる磁化固定層3aの磁化方向は反強磁性層2によって固定されている。同じく強磁性導体からなる磁化基準層3cは、非磁性層である中間層3bを介して、磁化固定層3aと反強磁性結合を形成している。この結果、磁化基準層3cの磁化方向は、磁化固定層3aの磁化方向の反対方向に固定されている。図16に示した例では、磁化固定層3aの磁化方向は左向きに固定され、磁化基準層3cの磁化方向は右向きに固定されている。
固定磁化層を上記の積層フェリ構造とすると、固定磁化層の外部磁界に対する感度を低下させることができるため、外部磁界による固定磁化層の磁化変動を抑制して、MTJ素子の安定性を向上させることができる。また、磁化固定層3aおよび磁化基準層3cから漏れ出す磁束が互いに打ち消し合うので、これらの膜厚を調整することによって、固定磁化層から漏洩する磁束を最少に抑えることができる。
記憶層5は、一軸磁気異方性を有する強磁性導体からなり、外部からの作用で磁化方向を変化させることができ、かつ、磁化方向を情報として保持することができる。例えば、その磁化方向が、磁化基準層3cの磁化方向に対して「平行」であるか、「反平行」であるかを、それぞれ「0」および「1」の情報として記憶する。磁化基準層3cと記憶層5との間には、非磁性の薄い絶縁層であるトンネル絶縁層4が設けられており、磁化基準層3cとトンネル絶縁層4と記憶層5とによって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。
一方、メモリセルの下部には、シリコン基板などの半導体基板11の素子分離されたウエル領域11aに、このメモリセルを選択するための選択用トランジスタ10として、ゲート絶縁膜12、ソース電極13、ソース領域14、ゲート電極15、ドレイン領域16、およびドレイン電極17よりなるMOS型電界効果トランジスタが設けられている。
上述したように、選択用トランジスタ10のゲート電極15は、セル間をつないで帯状に形成され、第1の行配線であるワード線を兼ねている。また、ドレイン電極17は第2の行配線である行配線19に接続されており、ソース電極13は、接続プラグ7を介してスピン注入MTJ素子20の下地層1に接続されている。一方、スピン注入MTJ素子20の保護層6は、メモリセルの上部に設けられた列配線であるビット線18に接続されている。
所望のメモリセルのスピン注入MTJ素子20へ情報を記録するには、所望のメモリセルが含まれる行のワード線15に選択信号を印加して、その行の選択用トランジスタ10をすべてON(導通)状態にする。これに合わせて、所望のメモリセルが含まれる列のビット線18と行配線19との間に書き込み電圧を印加する。この結果、所望のメモリセルが選択され、そのスピン注入MTJ素子20の記憶層5をスピン偏極電流が貫流し、記憶層5が所定の磁化方向に磁化され、情報の記録が行われる。
この際、初めスピン注入MTJ素子20の磁化基準層3cの磁化方向が、記憶層5の磁化方向に対して「反平行」である状態にあり、これを書き込みによって記憶層5の磁化方向が磁化基準層3cの磁化方向に対して「平行」である状態に反転させる場合には、図9に示すように、閾値以上の電流密度の書き込み電流を記憶層5から磁化基準層3cへ流すようにする。これによって、実体としては、閾値以上の電子密度のスピン偏極電子流が磁化基準層3cから記憶層5へ流れ、磁化反転が起こる。
逆に、記憶層5の磁化方向に対して「平行」状態にある磁化基準層3cの磁化方向を「反平行」状態に反転させる場合には、閾値以上の電流密度の書き込み電流を、上記の逆方向へ、すなわち磁化基準層3cから記憶層5へ流し、実体としては、閾値以上の電子密度の電子流が記憶層5から磁化基準層3cへ流れるようにする。
また、スピン注入MTJ素子20からの情報の読み出しはTMR効果を用いて行われる。スピン注入MTJ素子20の書き込みと読み出しは、いずれも、記憶層5中の電子と、この層を貫流するスピン偏極電流との相互作用を利用しており、読み出しはスピン偏極電流の電流密度が小さい領域で行われ、書き込みはスピン偏極電流の電流密度が閾値を超えて大きい領域で行われる。
なお、磁化基準層3cは、記録動作中に磁化が反転や不安定化しないように、PtMn,IrMnなどの反強磁性体と組み合わせて磁化方向を固定してもよいし、CoPtなど保磁力の大きな材料を用いてもよいし、記憶層5よりも広い面積に加工して用いてもよいし、外部磁場によって特定の方向に磁化してもよい。
磁化基準層3cは、単独の強磁性体層としてもよいし、図16に示すように、Ruなどの非磁性金属からなる中間層3bを介して磁化固定層3aと反平行に磁気的に結合するようにしてもよい。磁化基準層3cの磁化は、面内磁化でもよいし、垂直磁化でもよい。また、磁化基準層3cは、記憶層5の下側に配置してもよいし、上側に配置しても、あるいは上下に配置してもよい。
トンネル絶縁層4は、酸化物や窒化物などのセラミック材料からなるのがよい。特に、トンネル絶縁層4として酸化マグネシウムMgO層を設け、磁化基準層3cおよび記憶層5の少なくともトンネル絶縁層4の側にCoFeB層を設けると、磁気抵抗変化率が大きくとれるので好ましい。
図1は、実施の形態1に基づく磁気メモリ素子の記録方法における書き込みパルス列の例を示すグラフである。実施の形態1では、1つの情報を記録するに際し、主パルスの後に、パルス高さは主パルスと同じで、パルス幅が主パルスに比べて短い副パルスを印加する。主パルスおよび副パルスは、電圧制御であっても、電流制御であっても、電力制御であってもよい
図1(1)は、1つの主パルスの後に1つの副パルスを印加する場合を示している。主パルスは、従来の単一パルスで書き込みを行う場合と同様、情報を記録するのに十分なパルス高さおよびパルス幅を有するパルスとする。この場合、前述したように、数百Mbitの容量をもつスピントルクMRAMメモリチップへの実際の書き込みでは、スピン注入MTJ素子の反転閾値のばらつきや、トランジスタおよび配線に起因する反転閾値のばらつきなどを考慮して、反転閾値の平均値よりもかなり大きい書き込みパルスを印加する。この結果、書き込みパルスが大きくなるほど、かえって書き込みエラー率が増加する高記録電圧エラーが現れる。
従来の単一のパルスによる書き込みでは、上記の主パルスによる書き込みで生じた書き込みエラーが修正されることなく、そのまま結果になるため、書き込みエラー率が高い。また、書き込み時の外部磁場に対する耐性が低い。これに対し、本実施の形態では、主パルスの後に、反転閾値をこえるパルス高さを有する副パルスを印加するので、主パルスで生じた書き込みエラーを、副パルスによる書き込みで修正できる可能性が高い。しかも、副パルスのパルス幅は主パルスのパルス幅に比べて短いので、副パルスによる書き込みでは過剰なエネルギーが蓄積されにくく、上記の高記録電圧エラーが現れにくい。以上の効果により、本実施の形態に基づく磁気メモリ素子の記録方法では、書き込みエラー率が減少し、書き込み時の外部磁場に対する耐性が向上する。
この際、主パルスの終端と副パルスの先端との間には3ns以上、より好ましくは5ns以上の時間間隔を設けるのがよい。これは、主パルスによる書き込みで蓄積された過剰なエネルギーを散逸させるための時間を十分に確保するためである。
図1(2)は、1つの主パルスの後に2つの副パルスを印加し、請求項2に対応して、主パルスと副パルス1と副パルス2とを、パルス幅が漸次減少していく、連続した3つのパルスの組みとして構成した例を示している。この場合、副パルス1による書き込みと副パルス2による書き込みによって修正が2度繰り返され、しかも、後に印加されるパルスほどパルス幅が短くなり、過剰なエネルギーの蓄積による高記録電圧エラーが現れにくくなるので、書き込みエラー率が改善される可能性がより高くなる。
図2は、実施の形態1に基づく書き込みパルス列の例を示すグラフであり、種々の主パルスの例を示している。図2(a)および図2(b)は、書き込み電力の注入を休止する、1ns程度の短い休止期間を主パルスの中に設ける例である。図2(a)に示すように主パルスの中間部に休止期間を設けても効果はないが、図2(b)に示すように主パルスの終端近くに休止期間を設けると、一定期間内に注入される書き込み電力を実効的に徐々に減少させ、上記の高記録電圧エラーを現れにくくする効果がある(特願2008−107768参照。)。
図2(c)および図2(d)は、2つの主パルスを印加する例である。図2(c)はパルス高さおよびパルス幅がともに等しい主パルス1と主パルス2とを印加する場合を示し、図2(d)はパルス高さおよびパルス幅が互いに異なる主パルス1と主パルス2とを印加する場合を示す。いずれにしても、先行する主パルス1による書き込みは後続の主パルス2による書き込みで無効になるので、複数の主パルスを印加する効果は特にない。
図3は、実施の形態1に基づく書き込みパルス列の例を示すグラフであり、種々の副パルスの例を示している。図3(a)は、主パルスの後に2つ、一般には複数の副パルスを印加する例で、副パルスによる書き込みによって修正が2回、一般には複数回繰り返されるので、書き込みエラー率が改善される可能性がより高くなる。この場合、図1(b)を用いて既述したように、副パルスのパルス幅が漸次減少していくように構成するのが望ましい。一方、図3(b)および図3(c)は最後の主パルスに先行する副パルスを設けた例で、このような副パルスを印加する効果は特にない。
実施の形態2
実施の形態2では、主として、請求項1および2に関わるスピン注入MTJ素子の記録方法の別の例について説明する。
図4および図5は、実施の形態2に基づく磁気メモリ素子の記録方法における書き込みパルス列の例を示すグラフである。実施の形態2では、1つの情報を記録するに際し、主パルスの後に、パルス幅は主パルスと同じで、パルス高さが主パルスに比べて低い副パルスを印加する。主パルスおよび副パルスは、電圧制御であっても、電流制御であっても、
電力制御であってもよい
図4は、1つの主パルスの後に1つの副パルスを印加する場合を示しており、図4(a)および(b)は、その効果を説明するための説明図である。主パルスは、従来の単一パルスで書き込みを行う場合と同様、情報を記録するのに十分なパルス高さおよびパルス幅有するパルスとする。この場合、前述したように、数百Mbitの容量をもつスピントルクMRAMメモリチップへの実際の書き込みでは、スピン注入MTJ素子の反転閾値のばらつきや、トランジスタおよび配線に起因する反転閾値のばらつきなどを考慮して、反転閾値の平均値よりもかなり大きい書き込みパルスを印加する。
この結果、図4(a)に示すように、平均的な反転閾値を有する磁気メモリ素子では、主パルスによる書き込みで反転閾値に比して過剰な書き込み電力が注入され、かえって書き込みエラー率が増加する高記録電圧エラーが現れる。これに対し、副パルスのパルス高さは、平均的な反転閾値を上回っているものの、平均的な反転閾値に比べて著しく高いというほどではない。このため、副パルスを印加すると書き込みが行われ、主パルスで生じた書き込みエラーが修正される。しかも、副パルスによる書き込みでは過剰なエネルギーが注入されることが少ないので、上記の高記録電圧エラーが現れにくい。以上の効果により、平均的な反転閾値を有する磁気メモリ素子では、書き込みエラー率が減少し、書き込み時の外部磁場に対する耐性が向上する。
一方、図4(b)に示すように、反転閾値の高い磁気メモリ素子では、副パルスのパルス高さが反転閾値よりも小さい場合がある。この磁気メモリ素子では、副パルスを印加しても書き込みは行われず、副パルス2は無効であり、主パルスによる書き込み結果がそのまま維持される。しかしながら、反転閾値の高い磁気メモリ素子では、主パルスのパルス高さは反転閾値に比べて著しく高いというほどではなく、主パルスによる書き込みにおいて、過剰なエネルギーの注入によって書き込みエラー率が増加する高記録電圧エラー象が現れることは少ない。すなわち、主パルスによって書き込みエラー率の小さい、良好な書き込みが行われており、修正の必要がない。
以上の結果、図4に示す書き込みパルス列を用いると、平均的な反転閾値を有する磁気メモリ素子に対しても、反転閾値の高い磁気メモリ素子に対しても、書き込みエラー率の小さい、良好な書き込みを行うことができる。
図5は、1つの主パルスの後に2つの副パルスを印加し、請求項2に対応して、主パルスと副パルス1と副パルス2とを、パルス高さが漸次減少していく、連続した3つのパルスの組みとして構成した例を示している。この場合、図5(a)に示すように、平均的な反転閾値を有する磁気メモリ素子に対しては副パルス1による書き込みによって修正が行われ、図4(a)に示した場合と同様の効果がある。副パルス2は無効である。図5(b)に示すように、反転閾値の高い磁気メモリ素子では、図4(b)に示した場合と同様、主パルスのパルス高さは反転閾値に比べて著しく高いというほどではなく、主パルスによって良好な書き込みが行われており、修正の必要がない。加えて、図5(c)に示すように、反転閾値の低い磁気メモリ素子に対しては、副パルス1による書き込みと副パルス2による書き込みによって修正が2度繰り返され、しかも、後に印加されるパルスほど過剰なエネルギーの注入による高記録電圧エラーが現れにくくなるので、書き込みエラー率が改善される可能性がより高くなる。
以上の結果、図5に示す書き込みパルス列を用いると、図4に示す書き込みパルス列を用いる場合よりも、さらに書き込みエラー率の小さい、良好な書き込みを行うことができる。
実施例では、スピン注入MTJ素子からなるスピントルクMRAMに本発明の実施の形態1および2に基づく記録方法を適用し、本発明の効果を検証した。実施例1および2は請求項3〜5の根拠となる実験であり、実施例4は請求項2の根拠となる実験である。実験は、素子の長軸方向に磁場を印加しながら、消去、記録、再生を繰り返し行い、書き込みエラー率を測定した。磁場を印加する方向は、記録しようとする磁化方向とは反対の方向とした。
実施例1
実施例1では、実施の形態1に基づく磁気メモリ素子の記録方法に対応して、図1(1)に示した書き込みパルス列を印加した。用いたスピントルクMRAMは、下記の層で構成されるスピン注入MTJ素子20からなるものである。
下地層1 :膜厚5nmのTa膜、
反強磁性層2反強磁性層2 :膜厚30nmのPtMn膜、
磁化固定層3a :膜厚2nmのCoFe膜、
中間層3b :膜厚0.7nmのRu膜、
磁化基準層3c :膜厚2nmのCoFeB膜、
トンネル絶縁層4:膜厚0.8nmの酸化マグネシウムMgO膜、
記憶層5 :膜厚3nmのCoFeB膜、
保護層6 :膜厚5nmのTa膜
スピン注入MTJ素子20の平面形状は、長軸長さが150〜250nmで、短軸長さが70〜85nmである楕円形であり、記憶層5の保磁力は140Oeである。このスピン注入MTJ素子20に50Oeの外部磁場を印加しながら、パルス電圧0.8V、パルス幅30nsの主パルスに続いて、パルス電圧0.8V、パルス幅Wの副パルスを印加した。この際、副パルスのパルス幅Wと、主パルスの終端と副パルスの先端との間のパルス間隔Dとを種々に変え、これらと書き込みエラー率との関係を調べた。
図6は、パルス幅Wが1〜30nsの副パルスを印加した場合の、書き込みエラー率とパルス間隔Dとの関係を示すグラフである。図6から2つの異なる傾向があることがわかる。すなわち、副パルスとしてパルス幅Wが1nsのパルスを用いた場合には、パルス間隔Dが1nsである場合にエラー率改善効果が著しく、パルス間隔Dが5nsをこえると改善効果はほとんどない。
一方、副パルスとしてパルス幅Wが2nsまたは3nsのパルスを用いた場合には、パルス間隔Dが3ns以上、望ましくは5ns以上である場合に、本発明によるエラー率改善効果が著しい。副パルスとしてパルス幅Wが5ns以上のパルスを用いると改善効果は小さくなり、副パルスのパルス幅Wが主パルスのパルス幅と同じ30nsになると全く改善が見られない。
実施例2
実施例2では、実施の形態2に基づく磁気メモリ素子の記録方法に対応して、図4に示した書き込みパルス列を印加した。用いたスピントルクMRAMは、実施例1で用いたスピン注入MTJ素子20と同じ層構成を有し、記憶層5の保磁力が125Oeであるスピン注入MTJ素子20からなるものである。このスピン注入MTJ素子20に50Oeの外部磁場を印加しながら、パルス電圧0.9V、パルス幅30nsの主パルスに続いて、パルス電圧V、パルス幅30nsの副パルスを印加した。この際、副パルスのパルス電圧Vと、主パルスの終端と副パルスの先端との間のパルス間隔Dとを種々に変え、それらと書き込みエラー率との関係を調べた。
図7は、パルス間隔Dを1〜10nsの範囲で変えながら、書き込みエラー率と、主パルスと副パルスのパルス電圧の比との関係を調べた結果を示すグラフである。図6ほど明確ではないが、図7においても2つの異なる傾向があると思われる。
パルス間隔Dを3ns以上にした場合には、主パルスと副パルスのパルス電圧の比が0.7以上、1.0以下である場合にのみ改善効果が現れ、特にパルス電圧の比が0.8以上、0.95以下である場合に改善効果が著しい。有効な副パルスのパルス電圧に下限が存在することは副パルスによる書き込みが行われていることを示している。
一方、パルス間隔Dを1nsまたは2nsとした場合には、主パルスと副パルスのパルス電圧の比が0.8以上、0.95以下である場合に現れる改善効果は、上記と同様、本発明による効果であると考えられ、パルス電圧の比が0.3以上、0.95以下であり、副パルスのパルス電圧が反転しきい値未満である場合に現れる改善効果は別発明による効果であると考えられる。
実施例3
実施例3では、実施の形態1に基づく磁気メモリ素子の記録方法の、外部磁場に対する耐性を調べた。用いたスピントルクMRAMは、実施例1で用いたスピン注入MTJ素子20と同じ層構成を有し、記憶層5の保磁力が212Oeであるスピン注入MTJ素子20からなるものである。このスピン注入MTJ素子20に0〜200Oeの外部磁場を印加しながら、書き込みパルス電圧を0.5〜0.7Vの範囲で変化させた場合の書き込みエラー率を調べた。電圧の極性は正とした。
図8は、上記の外部磁場および書き込みパルス電圧に対して書き込みエラー率がそれぞれ0.1、0.01、および0.001になる位置を等高線でつないで示したグラフである。外部磁場が大きくなると、大きな外部磁場に抗して記録層に情報を書き込むことが必要になるため、同じ書き込みエラー率を維持するために、より大きな書き込みパルス電圧が必要になる。従って上記等高線は図8において右上がりの曲線になることが予想される。また、外部磁場が一定であれば、パルス電圧が大きいほど、書き込みエラー率が小さくなることが予想される。
図8(b)は、パルス幅100nsの単一のパルスで記録した比較例の場合の結果を示す。この場合、外部磁場が比較的小さい領域では上記等高線は予想通りに右上がりの曲線になるが、外部磁場が大きい領域では予想からはずれ、パルス電圧を大きくしても書き込みエラー率が改善されない現象が現れる。この領域では、外部磁場が一定の場合、パルス電圧が大きいほど、むしろ書き込みエラー率が大きくなるという、前述した高記録電圧エラーが起こっている。
一方、図8(a)は、パルス幅100nsの主パルスの後に、10nsのパルス間隔を設けた後、パルス幅3nsの副パルスを印加した場合である。この場合、外部磁場が大きい領域まで上記等高線は右上がりの曲線になる。また、外部磁場が一定であれば、パルス電圧が大きいほど、書き込みエラー率が小さくなる。このように、実施の形態1に基づく記録方法では、書き込みパルス電圧を大きくした場合の書き込みエラー率が改善され、書き込みの動作範囲を拡大することができ、大きな外部磁場が作用する場合に磁場に対する耐性が向上する。
このように、実施の形態1に基づく磁気メモリ素子の記録方法によれば、外部磁場の作用を受ける広い動作環境でエラーの少ない記録動作が可能となり、大容量のスピントルクMRAMにおいて外部磁場を遮蔽する磁気シールドの厚さや大きさを減らすことができ、スピントルクMRAMを小型化、軽量化、低価格化することができる。
実施例4
実施例4では、書き込みパルス列として、パルス幅10nsの主パルスに種々のパルス幅およびパルス間隔の副パルスを組み合わせたパルス列を用いた場合の、書き込みエラー率を調べた。この際、実施の形態1に対応して、主パルスと副パルスのパルス高さは同じとし、後に印加される副パルスのパルス幅は、前に印加される副パルスのパルス幅と同じか、それよりも短くした。用いたスピントルクMRAMは、実施例1で用いたスピン注入MTJ素子20と同じ層構成を有し、記憶層5の保磁力が130Oeであるスピン注入MTJ素子20からなるものである。このスピン注入MTJ素子20に50Oeの外部磁場を作用させながら、パルス電圧が1.1Vの主パルスおよび副パルスを印加した。
結果を表1に示す。表1は、時系列順に主パルスおよび副パルスのパルス幅とパルス間隔とを示し、最後にその書き込みパルス列を用いた場合の書き込みエラー率を示している。
Figure 2009128486
比較例1は単一のパルスを印加した場合であり、この場合の書き込みエラー率は8.0×10-2であった。比較例2は主パルスに先行して副パルスを印加した場合である。この場合の書き込みエラー率は8.1×10-2であり、比較例1と誤差範囲内で変わらず、主パルスに先行する副パルスは無効であることを示している。
パルス列1とパルス列2とは、主パルスの10ns後に1つの副パルスを印加する場合であり、この場合の副パルスのパルス幅としては2nsより3nsの方が優れている。これは、副パルスによる書き込みを十分に行うのに2nsでは少しパルス幅が短すぎるのかもしれない。パルス列3〜5は、主パルスの後に2つまたは3つの副パルスを印加する場合であり、副パルスが1つのパルス列2よりも書き込みエラー率が改善される。
パルス列6は、先行する無効の副パルスを除けば、主パルス以後のパルス構成はパルス列2と同じであり、書き込みエラー率もほぼ同じである。パルス列7およびパルス列8は、主パルスの1ns後にパルス幅が1nsの短い副パルスを印加する場合であり、比較例1に比して書き込みエラー率が改善される。この場合も、パルス幅が1nsの短い副パルスを2つ続けたパルス列8の方が副パルスが1つのパルス列7よりも書き込みエラー率が改善された。ただし、既述したように、パルス列7およびのパルス列8の結果には、本発明の効果と別発明の効果とが重なっているかもしれない。
次に、以上の実施形態の書き込みパルスの発生回路を説明する。
図13は1つの矩形のパルスから上記の実施形態の主パルスと副パルスとからなる書き込みパルスを生成する書き込みパルス発生回路の構成を示す図である。
この書き込みパルス発生回路30は、複数のバッファ32,33,34と複数の論理回路35,36を用いて構成される。書き込みパルス発生回路30の入力端31には矩形のパルス信号が入力される。入力端31に入力された矩形のパルス信号は、OR論理の論理回路36の一方の入力端、AND論理の論理回路35の非反転入力端、直列に接続されたバッファ32,33に入力される。ここで、直列に接続されたバッファ32,33は副パルスの幅を生成するためのもので、バッファ32,33の遅延時間の選定により任意の副パルスの幅td1を選定することができる。バッファ32,33の出力はAND論理の論理回路35の非反転入力端に入力される。AND論理の論理回路35の出力はバッファ34を通じてOR論理の論理回路36の他方の入力端に入力される。ここで、バッファ34は主パルスと副パルスとの間の時間td2を生成するもので、バッファ34の遅延時間の選定により任意の時間td2を設定することができる。そして、OR論理の論理回路36によって主パルスと副パルスで構成される書き込みパルスが得られ、書き込みパルス発生回路30の出力端37より出力される。
図14は書き込みパルスを波形メモリとD/A変換回路を用いて生成する書き込みパルス発生回路40の構成を示す図である。波形メモリ41には、主パルスと副パルスで構成される書き込みパルスの波形データが格納されている。書き込みパルスの波形データは、出力レベルを2段階の中から選択できるNビットを1ワードとして、複数のワードの時系列データで構成される。波形メモリ41には読み出し用のN個のポートが設けられ、これらN個のポートはD/A変換回路42のN個の入力端とそれぞれ接続されている。D/A変換回路42は、波形メモリ41より書き込みパルスの波形データをNビットのデータ(1ワード)毎に入力してアナログ信号に変換して書き込みパルスとして出力する。D/A変換回路42は、例えばラダー抵抗回路等で構成することが可能である。このような書き込みパルス発生回路を用いることで、高い自由度で書き込みパルスの波形を得ることができ、上記の各実施形態の書き込みパルスを容易にかつ高い自由度で得ることができる。
なお、図8の例では、出力レベルを2段階の中から決めることができるように、1ワードのビット数Nを"3"としたが、本発明はこれに限定されるものではない。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
本発明によると、書き込み時の過渡特性を改善して、書き込みの失敗が少なく、書き込み電流密度の閾値が小さく、高集積化、高速化、および低消費電力化が可能なスピン注入磁化反転型MTJ素子を実現し、小型、軽量、かつ低価格な不揮発性メモリの実用化に貢献できる。
1…下地層、2…反強磁性層、3a…磁化固定層、3b…中間層、3c…磁化基準層、4…トンネル絶縁層、5…記憶層、6…保護層、7…接続プラグ、10…選択用トランジスタ、11…半導体基板、11a…ウエル領域、12…ゲート絶縁膜、13…ソース電極、14…ソース領域、15…ゲート電極、16…ドレイン領域、17…ドレイン電極、18…ビット線、19…行配線、20…スピン注入磁化反転MTJ素子、21…素子分離構造、30,40…書き込みパルス発生回路

Claims (6)

  1. 強磁性導体からなり、磁化方向の変化が可能で、情報を磁性体の磁化方向として保持する記憶層と;前記記憶層に対して絶縁層を介して設けられ、強磁性導体からなり、磁化方向が固定され、磁化方向の基準となる基準磁化層と;を少なくとも有し、前記絶縁層を通じて前記記憶層と前記基準磁化層との間に流れる電流によって情報の記録が行われる磁気メモリ素子に対する記録方法において、
    1つの情報を記録するに際し、1つ以上の主パルスと1つ以上の副パルスとを同じ向きに印加し、
    前記の1つ以上の主パルスの後に、1つ以上の前記副パルスを印加し、
    前記主パルスの後に印加する副パルスを、前記主パルスに比べてパルス幅が短いパルスであるか、又は前記主パルスに比べてパルス高さが低いパルスであるかの、少なくとも一方の条件を満たすパルスとする
    磁気メモリ素子の記録方法。
  2. 前記の1つ以上の主パルスと、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスとからなるパルス列中に、連続する3つのパルスの組みであって、パルス幅及びパルス高さの少なくとも一方が漸次減少していく組みを少なくとも一組設ける、請求項1に記載した磁気メモリ素子の記録方法。
  3. 前記の1つ以上の主パルスの終端と、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスの先端との間に、3ns以上の時間間隔を設ける、請求項1に記載した磁気メモリ素子の記録方法。
    (なお、パルスの終端および先端は、それぞれ、パルスの立ち下がり及び立ち上がりにおける高さがパルス高さの最大値の半分になる位置とする。以下、同様。)
  4. 前記の1つ以上の主パルスと、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスとからなるパルス列中の、任意に選ばれた連続する2つのパルスの組みにおいて、後のパルスを、パルス幅が2ns以上、10ns以下であるか、又はパルス高さが前のパルスの0.7倍以上、0.95倍以下であるかの、少なくとも一方の条件を満たすパルスとし、且つ、前のパルスの終端と後のパルスの先端との間に5ns以上の時間間隔を設ける、請求項1又は2に記載した磁気メモリ素子の記録方法。
  5. 前記の1つ以上の主パルスと、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスとからなるパルス列中の、任意に選ばれた連続する2つのパルスの組みにおいて、後のパルスを、パルス幅が3ns以下であるか、又はパルス高さが前のパルスの0.8倍以下であるかの、少なくとも一方の条件を満たし、且つ、前のパルスの終端と後のパルスの先端との時間間隔を5ns未満とする、請求項1又は2に記載した磁気メモリ素子の記録方法。
  6. 前記の1つ以上の主パルスと、その後に印加される前記の1つ以上の前記副パルスとからなるパルス列中の、任意に選ばれた連続する2つのパルスの組みにおいて、後のパルスを、パルス幅が3ns以下であるか、又はパルス高さが前のパルスの0.95倍以下であるかの、少なくとも一方の条件を満たし、且つ、前のパルスの終端と後のパルスの先端との時間間隔を5ns未満とする、請求項1又は2に記載した磁気メモリ素子の記録方法。
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