書類等を綴じる綴じ具をファイル本体に着脱する場合、ユーザの利便性を考慮するとその着脱のための操作をファイル本体の内側か外側の何れか一方側での作業で綴じ具の固定が完結するのが好ましい。
また、綴じ具をファイル本体に固定する場合、ユーザの利便性を考慮すると、綴じ具とファイル本体とを固定するための固定具と、固定の対象となる該綴じ具や該ファイル本体との相対的な位置の位置決めを行えることが好ましい。仮に固定具が動いてしまうと固定具が綴じ具やファイル本体と接触してしまい、綴じ具による書類等の綴じ込み機構の動作を阻害してしまう恐れもある。ファイル本体における所定の位置に綴じ具が配置されないと、想定されていない重量バランスになってしまい、想定通りであれば自立可能であるにも関わらず自立不能となってしまう場合もある。一方、ファイルに衝撃が加わった際、固定具から綴じ具やファイル本体へ係る力及びその逆方向の力により、固定具/綴じ具/ファイル本体の破損等を防止することも要求されるが、固定具と綴じ具等の位置が定まらず該固定具による固定力が不十分となると当該要求を満たすことが難しくなる。
本発明は、上記問題に鑑み、書類等を綴じる綴じ具をファイル本体の内側もしくは外側のうち一方側からの操作のみで着脱自在に固定することを可能とするとともに、固定の際の綴じ具及び/又はファイル本体に対する相対位置決めを容易かつ正確に行うことができる綴じ具固定装置に関する技術を提供することを課題とする。また、本発明による他の課題は、ファイルの構成要素である固定具(綴じ具固定装置)、綴じ具、ファイル本体等の破損の可能性を低減可能な綴じ具固定装置に関する技術を提供することである。
さらには従来の固定装置は着脱作業が容易ではなかった。特に綴じ具とファイル本体とを分離する際、固定装置を綴じ具及びファイル本体から取り外す際、固定装置と綴じ具やファイル本体との係合部分が引っかかってしまい、極めて作業性が悪かった。例えば特許文献1に開示された従来技術では、背表紙部や取付手段を撓ませるなどして固定装置としての取付手段を背表紙部から取り外す必要がある。特許文献2に開示された従来技術でも、固定装置としての取付装置を綴じ具から取り外す場合に係合部が綴じ具や背表紙と引っかかりやすい。特に、一方の係合部が綴じ具と係合状態において他方の係合部を背表紙等から取り外す場合には、連結部によって当該他方の係合部に係合方向の力が働くため、取付装置を背表紙から引き離す方向に移動させるだけでは取り外し作業を完了させることができない。特に特許文献1、特許文献2に開示された従来技術はそれぞれ係合部が二つ設けられているため、上記作業は困難を極める。
このような固定装置の綴じ具及びファイル本体からの取り外し作業における作業性の問題は、取り外し作業時に固定装置、綴じ具及びファイル本体の特に係合機構に負荷がかかり、当該機構の破損の原因になってしまう問題にもつながる。例えば、特許文献1の係合機構を例にとると、背表紙部や取付手段を撓ませる際、これらが折れ曲がってしまう場合がある。特許文献2の係合機構を例にとると、係合部(係合爪)が破損してしまったり、ファイル本体に設けられた係合部が挿入される貫通孔が広がってしまったりする場合がある。
本発明では、実質的にファイル本体等に対して綴じ具を着脱可能な綴じ具固定装置、及び該綴じ具固定装置を備えたファイルを提供することを目的とする。
本発明に係る綴じ具固定装置は、上記の課題を解決するため、綴じ具をファイル本体に固定するために設けられたファイル本体側の孔部と綴じ具側の貫通部とに対して係合部を挿入させ、かつファイル本体に対する係合、及びその解除を可能とする構成がされ採用されている。更に、係合部には、綴じ具固定装置の位置決めを行う嵌合部を設けることとした。これにより、本発明の綴じ具固定装置によれば、ユーザの操作性と綴じ具固定装置の位置決めが可能となる。
詳細には、本発明に係る綴じ具固定装置は、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用孔部とファイル本体に設けられたファイル側孔部とを用いて、該綴じ具と該ファイル本体とを固定する綴じ具固定装置であって、ファイル本体に配置される固定装置本体部と、固定装置本体部に設けられ、固定用孔部とファイル側孔部が重なって形成された連通孔に挿入される挿入部と、連通孔に挿入部が挿入された際にファイル本体及び綴じ具のうち該挿入部の挿入方向奥側の部材を被係合部材とし、当該被係合部材に対して係合及び該係合の解除が可能である、挿入部に設けられた係合部と、ファイル本体及び綴じ具のうち固定装置本体部と被係合部材との間に挟持される部材を被固定部材とし、挿入部の連通孔への挿入方向に沿って固定装置本体部と係合部との間に設けられ、係合部が被係合部材に対して係合状態となると、固定用孔部とファイル側孔部のうち被固定部材上に存する側の孔部に連通する第一被嵌合部と嵌合し、該綴じ具固定装置と該被固定部材との相対位置を位置決めする挿入部側嵌合部と、を備える。
本発明に係る綴じ具固定装置では、ファイル本体に設けられたファイル側孔部と、綴じ具側に設けられた固定用孔部とが重なって形成された連通孔に、挿入部が挿入される。そして、挿入部が連通孔に挿入された状態において、該挿入部に設けられた係合部が、ファイル本体と綴じ具のうち、挿入部の挿入方向において奥側に位置する一方(本発明に係る被係合部材)に対して、係合およびその解除が可能な状態に配置される。そして、この係合部が被係合部材に対して係合状態となると、その係合部分と綴じ具固定装置の固定装置本体部とによって綴じ具とファイル本体が固定された状態になり、該係合状態が解除された係合解除状態となると綴じ具とファイル本体との固定状態が解除されることになる。その結果、綴じ具のファイル本体への着脱が自在となる。なお、この連通孔の形成について、ファイル側孔部と固定用孔部とは形状が異なっていてもよく、要は、挿入部が被固定部材側の孔部を通り、係合部による被係合部材との係合が可能なように両孔部が連なればよい。
ここで、上記綴じ具固定装置での連通孔へのアクセスは、ファイル本体の内側と外側の何れからでも可能である。すなわち、ファイル本体の内側に配置された綴じ具のさらに内側に添設される場合には、一対の挿入部が固定用孔部、ファイル側孔部の順に挿入され、各挿入部に設けられた第一、第二係合部が被係合部材としてのファイル本体と係合する。またファイル外側に添設される場合には、一対の挿入部がファイル側孔部、固定用孔部の順に挿入され、各挿入部に設けられた第一、第二係合部が被係合部材としての綴じ具と係合する。これにより、ユーザの操作性は格段と向上する。
なお、より好ましくは、連通孔へのアクセスは、綴じ具が設置される側、すなわちファイル本体の内側から行う形態を採用すべきであろう。これは、ファイル本体の背表紙部分には、見出し用のカバー(通常は、見出しユーザから可視状態となるように透明な樹脂カバー等)が設けられていることが多く、そのためファイル本体の外側からユーザに綴じ具固定のための作業を行わせるのは困難である場合が多いからである。
また、本発明に係る綴じ具固定装置では、挿入部側嵌合部が、係合部の係合状態において、上記第一被嵌合部と嵌合する。この嵌合については、挿入部側嵌合部と第一被嵌合部とが固く嵌り合う構成だけでなく、ゆるく嵌り合う構成も許容される。ここで、この第一被嵌合部は、固定用孔部とファイル側孔部のうち被固定部材に相当する綴じ具もしくはファイル本体の上に存する側の孔部に連通するものであり、換言すると係合部による係合が行われるとき、固定装置本体部寄りに位置する(場合によっては、固定装置本体部が接触する位置に配置される)被固定部材に設けられるものである。したがって、係合部の係合時に、挿入部側嵌合部が上記第一被嵌合部に挿入されると、被係合部材における係合部による係合方向とは独立して、綴じ具固定装置と被固定部材との相対位置が規定された状態となる。すなわち、挿入部側嵌合部は係合部による係合方向(挿入部を基準とした係合部の延在方向)と異なる方向(好ましくは略直交方向)における被固定部材に対する相対位置を位置決めする。
このような位置決めにおいて、挿入部側嵌合部が、係合状態に至る過程での、その係合部の位置決めを行う機能を果たし、一方で、第一被嵌合部は、挿入部側嵌合部が係合解除位置から係合位置へ相対移動する際のガイドとなる。そのため、被固定部材における綴じ具固定装置の位置は常に一定の相対位置に保たれ、それと同時に係合状態において係合部を最適な位置に配置させることが可能となる。また、嵌合部が当該最適な位置(設計者が想定する位置;一般に固定装置による最適な(最高の)係合力が発揮される位置)以外に係合部が配置されように係合部を移動させようとしても、第一被嵌合部ではない部分が当該動きを阻害するため、即ち、第一嵌合部が強制的に挿入部側嵌合部を導くため、ファイル本体における係合部の位置が上記最適な位置以外となり、ユーザが固定装置による係合力が想定値よりも弱くなってしまう状態で使用し続ける危険性を極めて低いものにできる。
また、挿入部側嵌合部の側面が上記第一被嵌合部と接することで、綴じ具固定装置と綴じ具との接触面積が増す。これにより、綴じ具固定装置と綴じ具との接触部分の負荷が分散される。なお、前記挿入部側嵌合部は、前記第一被嵌合部に加えて、前記固定用孔部と前記ファイル側孔部のうち該被係合部材上に存する側の孔部に連通する第二被嵌合部とも接するようにしてもよい。これにより、綴じ具だけでなく、ファイル本体に対する位置の位置決めを行うことが可能となる。
なお、綴じ具固定装置の位置を正確に決めることができないと、綴じ具固定装置と綴じ具やファイル本体が無用に接触することが懸念される。そして、接触の度合いが強い場合には、綴じ具固定装置が綴じ具の書類等を綴じる機能(例えば、書類等を綴じるパイプ部の係合機構の開閉機構など)と接触してしまい、当該機能が発揮できなくなってしまう虞もある。しかしながら、本発明に係る綴じ具固定装置によれば、挿入部側嵌合部によって、綴じ具固定装置の位置が綴じ具やファイル本体に対して決まるので、綴じ具固定装置による綴じ具やファイル本体への無用の接触、綴じ具による書類等を綴じる機能への阻害を防止することができる。
また、挿入部側嵌合部は、上述した位置決め機能に加え、位置を規定する機能や位置を保持する機能も有するとも言える。位置を規定する機能とは、綴じ具もしくはファイル本体に対する位置を規定する機能であり、位置を保持する機能とは、綴じ具とファイル本体との固定状態を保持する機能である。
なお、係合部は、被係合部材のいずれの部分に対しても係合を行うように設計してもよい。例えば綴じ具固定装置がファイル内側からのアクセスによって固定を行う機構である場合、ファイル側孔部が貫通孔である場合には、挿入部が綴じ具側の孔部、ファイル側孔部の順に挿入され、係合部がファイル本体の外側に至った状態で該ファイル本体と係合するように設計できる。また、挿入部がファイル側孔部に挿入されている状態において、該ファイル側孔部の途中部分において係合部がファイル本体と係合するようにしてもよい。要約すると、係合部の被係合部材への係合は、挿入部の挿入がファイル本体の一方の側から行われるのが肝要であり、被係合部材との係合箇所は綴じ具がファイル本体に固定される限り、何れの箇所であってもよい。したがって、被係合部材側の孔部は貫通孔でなくてもよく、例えば、窪み部と当該窪みに連通して設けられる係合部との被係合空間とを備えたファイル側孔部を備えたファイル本体に適用することもできる。
また、以上の構成は、ファイルの外側(透明樹脂製シートで覆われる見出し部が設けられている場合がある。)に部材が残らない綴じ具のファイルへの着脱を実現することが可能であり、ユーザの手を入れることが困難な見出し部に固定装置のパーツが残らない等、極めて良好な操作性が得られる。
また、挿入部側嵌合部は、挿入部の連通孔への挿入方向に沿って、固定装置本体部と各係合部との間にそれぞれ延在し、係合部が被係合部材に対して係合状態となると、第一被嵌合部に加えて、固定用孔部とファイル側孔部のうち該被係合部材上に存する側の孔部に連通する第二被嵌合部と嵌合し、該綴じ具固定装置と被固定部材と被係合部材との相対位置を位置決めする板状部材であってもよい。
このような構成によれば、挿入部側嵌合部が、第一被嵌合部に加えて第二嵌合部にも嵌合する。したがって、被固定部材と被係合部材の両者、すなわち綴じ具だけでなく、ファイル本体に対する位置決めも行うことが可能となる。なお、一般的に金属等によって形成されることが多い綴じ具と異なり、ファイル本体の素材には、紙等が用いられることが一般的である。このようなファイル本体では、ファイル本体に設けられたファイル側孔部が固定装置との接触によって破損し易いといった懸念もある。本発明に係る綴じ具固定装置では、挿入部側嵌合部の側面が第二被嵌合部と接する。その結果、綴じ具固定装置と被係合部材であるファイル本体との接触面積が増す。これにより、綴じ具固定装置とファイル本体との接触部分の負荷が分散され、ファイル本体側の破損を防止することができる。
また、挿入部側嵌合部は、板状であって、第一被嵌合部への挿入方向に向かってその厚さが同じか徐々に薄くなるように形成され、第一被嵌合部は、挿入部側嵌合部と嵌合するように該挿入部側嵌合部が挿入される方向に向かってその幅が同じか徐々に狭く形成してもよい。また、挿入部側嵌合部は、第一被嵌合部への挿入方向に向かってその厚さが同じか徐々に薄くなるように形成され、第二被嵌合部は、挿入部側嵌合部と嵌合するように該挿入部側嵌合部が挿入される方向に向かってその幅が同じか徐々に狭く形成してもよい。
上記のように挿入部側嵌合部の形状に変化を与えると共に、第一被嵌合部若しくは第二被嵌合部の形状を挿入部側嵌合部の形状に対応させることで、位置決め精度をより高めることができる。
なお、係合部は、各挿入部のうち少なくとも一方に設ければよいが、挿入部のそれぞれに設けることで、より安定的に綴じ具を該ファイル本体上に固定することが可能となる。一つの連通孔に二以上の挿入部(少なくとも一対の挿入部)が挿入されるようにし、且つ各挿入部に係合部を設ければ、当該連通孔と固定装置との係合力は極めて良好なものとなる。また、各係合部のそれぞれに上記挿入部側嵌合部を設けることで、上述した位置決めをより正確に行うことが可能となる。そこで、本発明に係る綴じ具固定装置は、前記挿入部は、一対の挿入部として形成され、前記係合部は、前記被係合部材に対して係合及び該係合の解除が可能である、前記一対の挿入部のそれぞれに設けられた第一係合部及び第二係合部を含み、前記挿入部側嵌合部は、前記一対の挿入部の前記連通孔への挿入方向に沿って前記固定装置本体部と前記各係合部との間にそれぞれ設けられ、前記各係合部が前記被係合部材に対して係合状態となると、それぞれに対応する前記第一被嵌合部と嵌合し、該綴じ具固定装置と前記被固定部材との相対位置を位置決めするように構成してもよい。そして、この場合、前記第一係合部により係合された前記被係合部材の係合方向である第一係合方向は、前記第二係合部により係合された前記被係合部材の係合方向である第二係合方向と異なるようにすることが好ましい。
本発明に係る綴じ具固定装置によれば、挿入部が連通孔に挿入された状態において、各挿入部に設けられた第一係合部と第二係合部が、被係合部材に対して係合およびその解除が可能な状態に配置される。これらの係合部が被係合部材に対して係合状態となると、その係合部分と綴じ具固定装置の固定装置本体部とによって綴じ具とファイル本体とが固定されることになり、該係合状態が解除された係合解除状態となると当該係合が解除されることになる。その結果、綴じ具のファイル本体への着脱が自在となる。また、挿入部側嵌合部が、第一係合部と第二係合部からなる係合部にそれぞれ設けられることで、位置決めをより正確に行うことが可能となる。
また、これらの第一係合部と第二係合部の係合による被係合部材の係合方向である第一係合方向と第二係合方向とは異なるように設定されることで、各係合部による係合を解除させようとする外力に対して十分に抗し、綴じ具とファイル本体とをより確実に固定することが可能となる。特に、書類等を綴じるファイルにおいては、ユーザの使用状態によって、様々な方向から外力が作用する可能性があるため、本発明に係る綴じ具固定装置のように異なる複数の係合方向を有する固定装置と構成することで、実用品としてのファイルの固定強度を十分に担保することが可能となる。
なお、一つの連通孔に一対の挿入部が挿入された構成を採用し、さらにこのように各係合部の係合方向が異なるようにすれば、一の係合部に対して係合を解除しようとする方向の力が働いた場合であっても、当該係合部とは異なる係合方向の係合部に対しては係合を強めようとする方向の力になるため、当該ファイル側孔部におけるファイル本体と固定装置(一対の挿入部)との係合力は、通常状態と同等のものとなる。そのため、従来提案されているファイル本体に対する一方の側からのみのアクセスで綴じ具とファイル本体との着脱を実現するための固定機構において、わずかな力が働くだけで(場合によっては綴じている書類等による重みによって)係合部(挿入部)がファイル側孔部から抜け落ちてしまうという、このような機構の実用化を阻んでいた問題を解決することができる。
また、第一係合方向及び第二係合方向は、被係合部材の表面に沿って、互いに逆向きとしてもよい。このように両係合方向を逆向きとすることで、綴じ具とファイル本体とが固定されたときに作用する外力に対して、第一係合部及び第二係合部の係合による係合状態を、効果的に維持することが可能となる。すなわち、一方の係合部に対して係合を緩める(解除する)方向の力が印加された場合であっても、他方の係合部に対しては係合を強める(締め付ける)方向の力が印加されるため、一対の挿入部がファイル側孔部から抜けてしまうという、ファイル本体に対して片側からの操作で綴じ具の着脱を実現する構成の実用化を阻んでいた問題を解決することが可能となる。
ここで、上述までの綴じ具固定装置において、好ましくは、第一係合部及び第二係合部の被係合部材との係合が解除された状態で、一対の挿入部は、連通孔に対して、ファイル本体の内側もしくは外側から挿入自在、且つ該ファイル本体の内側もしくは外側に抜出自在に構成されている。これにより、第一係合部及び第二係合部の係合解除状態において、一対の挿入部をファイル側孔部や固定用孔部と引っかかることなく出し入れできるため、一対の挿入部の挿入及び抜出自在状態を連動させることができ、本発明に係る綴じ具固定装置のユーザによる操作性が向上する。特に、該綴じ具固定装置は、ファイル本体の内側もしくは外側の一方側からのみのアクセスによって綴じ具の固定作業が行われるため、作業性の向上はユーザ利益に大きく貢献する。
また、ファイル側孔部は、ファイル本体の背表紙部に設けられ、第一係合方向と第二係合方向は、背表紙部の天地方向に沿って互いに逆向きに設定してもよい。ユーザが綴じ具に書類等を綴じて使用する場合において、綴じ具とファイル本体との固定部分に強大な外力が作用する可能性の1つとして、書類等が綴じられたファイルがその天地方向から床面等に落下した場合が考えられる。そのような落下形態を考慮したとき、落下によって作用する外力を第一係合部及び第二係合部で確実に受けることで、綴じ具とファイル本体との固定状態を維持し、又綴じ具固定装置の破損を回避することが可能となる。また、一方の係合部に対して被係合部材から外れる方向の力は、他方の係合部においては一方の係合部と係合方向が異なるために他方の係合による被係合部材との係合を強める力となり、以てファイル本体と綴じ具とをどのような場合においても確実に固定することが可能となる。
また、ファイルが書庫等に収納された際、綴じ具に綴じられた書類等の自重は綴じ具をファイル本体から引き離す方向に働くため、ファイルの内側もしくは外側の一方側からのみの操作で着脱を行おうとする従来の固定機構では、係合部による係合が外れ挿入部がファイル側孔部から抜け落ちてしまう場合があり、このような操作性の固定機構の実用化が阻まれていたのに対し、本構成では、当該書類等の自重により一対の挿入部のうちの一方の係合部に係合解除方向の力が印加されても、他方の挿入部には係合を強める方向の力が印加されることになる。そのため、「一対の挿入部」の各係合部による被係合部材との係合力は十分に保たれ、書庫等に収納された状態で勝手に(ユーザが意図せず)綴じ具がファイル本体と分離してしまい、当該綴じ具に収納されていた書類等がばらまかれてしまうといった問題を防ぎ、内側もしくは外側の一方側からのみの着脱操作で綴じ具をファイル本体側に着脱する機構の実用化を可能としている。
また、このようなファイルを実用化するに当たっては、綴じ具固定装置の性能だけではなくファイル全体の性能を、従来の他の固定機構を備えたファイルと同等若しくはそれ以上にする必要があるため、同じ書類等収納力を備えた従来のファイルに対しては同等の背表紙の幅にする必要がある。すなわち、ファイル本体の背表紙部の幅は、天地方向の高さと比べて狭いものとなる。そこで、係合方向を上記したように設定することで、係合方向を幅方向とする場合と比べて係合部の大きさ・形状の設定に自由度を持たせて実用に耐えうる十分な設計を行うことが可能となる。また、係合方向を背表紙の幅方向としてしまうと、係合部のファイル側孔部への係合・解除操作が背表紙の幅方向となることがあるが、上記したように当該方向は最小限に設定されるため操作性が悪くなってしまう。上記構成では着脱操作の操作性も十分に担保し得る。
ここで、上述した綴じ具固定装置において、固定装置本体部は、相対的にスライドする第一スライド部材と第二スライド部材を有し、一対の挿入部のうち一方の挿入部は第一スライド部材に設けられ、他方の挿入部は第二スライド部材に設けられるようにしてもよい。そして、このとき、第一スライド部材と第二スライド部材が相対的なスライドにより係合位置に至ると、第一係合部および第二係合部による被係合部材との係合状態が形成され、第一スライド部材と第二スライド部材が、係合位置に至るスライドとは逆方向の相対的なスライドにより係合解除位置に至ると、第一係合部および第二係合部による被係合部材との係合状態が解除される。
このように固定装置本体部を、第一スライド部材と第二スライド部材によって構成することで、ユーザは両スライド部材のスライド操作を行い、それにより第一係合部および第二係合部の係合状態の形成およびその解除が行われることになる。ここで、該係合状態およびその解除を成立させるために、第一スライド部材と第二スライド部材は、係合位置と係合解除位置との間を相対的にスライドされる。両スライド部材による当該スライドを、本願明細書においては単に「相対的スライド」とも言う。したがって、綴じ具をファイル本体に固定したいユーザは、ファイル本体の内側もしくは外側の一方側から、綴じ具固定装置の一対の挿入部をファイル側孔部と固定用孔部が重なって形成される連通孔に挿入させ、更に上記相対的スライドを行えばよく、ユーザに課される作業は極めて簡潔となり且つ第一係合部及び第二係合部による強固な綴じ具の固定が実現される。また、このような固定装置本体部の挿入部には、挿入部側嵌合部が設けられており、このような固定装置の位置決めを正確に行うことが可能となる。
また、係合位置に至る相対的なスライドでの第一スライド部材のスライド方向と第一係合方向は一致し、係合位置に至る相対的なスライドでの第二スライド部材のスライド方向と第二係合方向は一致するようにしてもよい。各スライド部材のスライド方向と係合部の係合状態による係合方向とを一致させることで、綴じ具の固定作業や固定の解除作業時に、各係合部の被係合部材との係合やその解除を認識しやすくなり、以て作業性の向上に資する。
上述した挿入部側嵌合部は、上記のような相対的スライドを行う二つのスライド部材によって構成される綴じ具固定装置以外にも適用することができる。具体的には、挿入部側嵌合部は、例えば、ファイル本体の内側もしくは外側の一方側において相対的な回転運動を行う二つの回動部材によって綴じ具の固定を行う綴じ具固定装置の挿入部に設けてもよい。また、回転運動を行う際の回動軸は、ファイル本体の背表紙の内側面もしくは外側面と直交するものでもよく、また、ファイル本体の内側面もしくは外側面と平行であってもよい。すなわち、綴じ具固定装置は、ファイル本体の背表紙の内側面もしくは外側面と平行な回動軸を中心として回動可能な、第一の回動部材と第二の回動部材とを有する構成であってもよい。また、綴じ具固定装置は、ファイル本体の背表紙の内側面もしくは外側面と略直交する回動軸を中心として回動可能な、第一の回動部材と第二の回動部材とを有する構成であってもよい。
そして、上述までの綴じ具固定装置を含んで構成されるファイルも本発明の一態様となる。即ち、本発明に係るファイルは、上述までの綴じ具固定装置と、綴じ具と、ファイル本体とを含むファイルであって、綴じ具固定装置によって被固定部材が被係合部材に対して固定される、ファイルである。このように当該ファイルは、綴じ具固定装置によって被係合部材と被固定部材とが固定されることで形成されるが、これらの構成以外の構成を含んでも構わない。
ここで、本発明に係るファイルにおいて、第一スライド部材は、被固定部材と接する面に第一位置決め部を有し、第二スライド部材は、被固定部材と接する面に第二位置決め部を有し、被固定部材は、第一位置決め部と第二位置決め部に対応する位置決め補助部を有する構成としてもよい。そして、この場合、第一および第二位置決め部と、位置決め補助部とのうち一方が突起部で、他方が孔部であり、突起部は、第一スライド部材と第二スライド部材が被固定部材上に配置された際に孔部内に配置され、各係合部と被係合部材とが係合した状態から第一スライド部材と第二スライド部材とがスライド移動することで突起部が孔部の縁に接触した際に、挿入部が連通孔に対して抜き出し自在となるように、各スライド部材における一対の挿入部の被固定部材に対する相対位置が規定される。
すなわち、上記ファイルでは、相対的スライドを行う第一スライド部材と第二スライド部材にそれぞれ位置決め部(第一位置決め部と第二位置決め部)が設けられ、それらの位置決め部と被固定部材側の位置決め補助部との接触関係によって、両スライド部材の相対位置関係が決定される。なお、第一、第二位置決め部と位置決め補助部とは、一方が突起部であり他方が孔部であればよく、それぞれが特定の形態に限られない。ここで肝要な点は、第一、第二位置決め部と位置決め補助部は接触関係を有するものである点である。第一位置決め部と第二位置決め部とが位置決め補助部と接触することで、相対的スライド動作が規制され、その結果、両スライド部材の位置が係合解除位置に半ば自動的に特定されることになる。この係合解除位置は、ユーザにとっては、一対の挿入部を固定用孔部とファイル側孔部とが重なって形成される連通孔からの抜出を行いたい位置でもある。そこで、このように第一位置決め部と第二位置決め部によって、両スライド部材の位置が自動的に特定されると、ユーザの上記抜出操作が比較的容易に行われ得る。
また、固定装置本体部は、更に、各係合部の被係合部材に対する係合が解除された状態であるとき、被固定部材に対する該固定装置本体部の相対位置を位置決めする本体部側位置決め部を有するように構成してもよい。このとき、本体部側位置決め部に対応して上記相対位置の位置決めを行う被位置決め部が、被固定部材や被係合部材に設けられている。この本体部側位置決め部と被位置決め部の一例が、上記突起部と孔部による位置決めである。別の例として、本体部側位置決め部と被位置決め部が互いに突起部で形成され、両突起部の接触によって被固定部材に対する固定装置本体部の位置決めが行われる形態も採用できる。この結果、相対的スライド以外の動作によって第一係合部と第二係合部との係合およびその解除を行う綴じ具固定装置においても、上述した理由と同様の理由で、各係合部による係合が解除される状態で、綴じ具に対する前記固定装置本体部の相対位置を位置決めする位置決め部は有用である。つまり、挿入部側嵌合部が設けられた挿入部を、連通孔から容易に抜き出すことが可能となる。
また、上述したファイルにおいて、被係合部材には、被固定部材の内側と接触し、且つ綴じ具の固定時に第一スライド部材及び第二スライド部材が配置されるベース部材と、ベース部材上に設けられ、第一スライド部材及び第二スライド部材による相対的なスライドのスライド方向に沿って延在する突状部と、を有し、第一スライド部材及び第二スライド部材のうち少なくとも一方に設けられ、突状部に嵌り、相対的なスライド時に該凸状部上をスライドするスライド凹部を、更に備えるようにしてもよい。
上述した挿入部の固定用孔部とファイル側孔部で形成された連通孔への挿入が、ファイル本体の内側から為される場合、各係合部が被係合部材に相当するファイル本体と係合し、それにより綴じ具固定装置とファイル本体との間で綴じ具が挟持、固定される。このとき、固定装置本体部を構成する第一スライド部材と第二スライド部材は、綴じ具のベース部材上に配置されて、上述した挿入部の連通孔への挿入と、その後の相対的スライドが行われる。ここで、ベース部材上に設けられた突状部と、少なくとも一方のスライド部材に設けられたスライド凹部は嵌り合っており、且つ相対的スライドにおいて、スライド凹部が突状部状をスライドすることが可能となっている。すなわち、突状部が両スライド部材の相対的スライドのガイドとして役割を担うように構成されており、その結果、係合部の係合およびその解除をユーザは円滑に行うことが可能となる。また、両スライド部材を綴じ具上に配置させる際に、その配置場所を位置決めするためにも、スライド凹部と突状部との嵌め合いは有用である。一方で、綴じ具がファイル本体の内側に配置され且つ連通孔への挿入がファイル本体の外側から為される場合は、各係合部が被係合部材に相当する綴じ具と係合し、それにより綴じ具固定装置と綴じ具との間でファイル本体が挟持、固定される。この場合、ファイル本体の外側に上記突状部を形成すればよい。具体的には、ファイル本体を樹脂で形成すれば、この突状部の形成が容易となる。
ここで、上述したファイルにおいて、前記第一スライド部材と前記第二スライド部材が前記係合位置に至ったとき、両スライド部材の相対位置関係を維持する第一維持部、及び/又は、前記第一スライド部材と前記第二スライド部材が前記係合解除位置に至ったとき、両スライド部材の相対位置関係を維持する第二維持部、を更に備えるようにしてもよい。第一維持部を有することで、係合位置にある第一スライド部材と第二スライド部材との相対位置関係を維持することが可能となる。その結果、ユーザの固定作業時における綴じ具固定装置の姿勢等に影響されることなく、第一係合部と第二係合部の係合によるファイル本体の係合状態を円滑に形成することが可能となる。特に、ロック部材を用いて相対的スライドを制限しようとする場合に、第一維持部が備えられていることでユーザのスライド制限を行おうとする動作が阻害されなくなるため、この第一維持部による相対位置関係の維持は有用である。
なお、ロック部材とは、例えば、第一スライド部材と第二スライド部材が、相対的なスライドにより係合位置に至った際に、ファイル本体の内側もしくは外側から所定のスライド制限位置に至ることで、第一スライド部材と第二スライド部材の相対的なスライドを制限し、両スライド部材をロックする固定用部材である。上述のように第一スライド部材と第二スライド部材は、相対的スライドを行うことで各係合部が被係合部材と係合し綴じ具とファイル本体の固定が行われる。ここで、各係合部による係合をより確実に継続させるために上記ロック部材が好適に備えられる。このロック部材の操作は、例えば、挿入部の挿入および相対的スライドの場合と同様に、ユーザの作業容易性を考慮してファイル本体の内側もしくは外側の一方側からのユーザのアクセスにより行われる。具体的には、ロック部材が、相対的スライドを制限する所定のスライド制限位置に至るようにすることで、該スライド部材の相対的スライドが制限され、以て係合部による係合が確実に継続されることになる。
なお、ロック部材は、次のような形態としてもよい。例えば、ロック部材は、第一スライド部材及び第二スライド部材のうち少なくとも一方のスライド部材にヒンジ接続部を介して接続され、該接続されたスライド部材に対して該ヒンジ接続部による回転移動が可能である部材とする。そして、第一スライド部材と第二スライド部材が相対的なスライドにより係合位置に至ったとき、両スライド部材の間に所定のスライド制限位置に相当する間隙が形成され、ロック部材が回転移動により該間隙に至り、そこを塞ぐことで該両スライド部材の相対的なスライドを制限するようにしてもよい。このようにロック部材をスライド部材に対して回転移動可能となるように接続する形態に以外にも、直線的な相対的な移動等が可能な状態にスライド部材に連結されているロック部材の形態も採用可能である。更には、ロック部材を、スライド部材とは切り離し、独立した部材として構成してもよい。このような場合でも、独立したロック部材は、ファイル本体の内側もしくは外側から上記間隙に至るように設定される。
ここで、上述までの第一スライド部材と第二スライド部材を有する綴じ具固定装置において、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に至ったとき、両スライド部材の相対位置関係を維持する係合解除位置維持部を、更に備えるようにしてもよい。このように係合解除位置維持部を有することで、係合解除位置にある第一スライド部材と第二スライド部材との相対位置関係を維持することが可能となる。その結果、ユーザの固定作業時における綴じ具固定装置の姿勢等に影響されることなく、第一係合部と第二係合部とが設けられた一対の挿入部の相対的な位置関係も維持されることになるため、連通孔への該一対の挿入部の挿入およびそこからの抜出を円滑に行うことが可能となる。
また、第一スライド部材と第二スライド部材が係合位置に至ったとき、両スライド部材の相対位置関係を維持する係合位置維持部を、更に備えるようにしてもよい。このように係合位置維持部を有することで、係合位置にある第一スライド部材と第二スライド部材との相対位置関係を維持することが可能となる。その結果、ユーザの固定作業時における綴じ具固定装置の姿勢等に影響されることなく、第一係合部と第二係合部の係合による綴じ具とファイル本体との固定状態を円滑に形成することが可能となる。特に、上記ロック部材を用いて相対的スライドを制限しようとする場合に形成される上記間隙を維持するために、この係合位置維持部による相対位置関係の維持は有用である。
なお、本発明に係る綴じ具固定装置においては、必ずしも係合位置維持部と係合解除位置維持部を同時に備える必要はなく、ユーザのニーズを考慮して必要な一方の維持部を備えるようにしてもよい。
そして、係合位置維持部と係合解除位置維持部の構成については、次に示す一例が挙げられる。例えば、第一スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成された維持用溝部と、該維持用溝部を2つの維持用領域に区切る突起部と、を有し、また、第二スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成され、且つ突起部を乗り越えて2つの維持用領域の何れにも収まる収容突起部を有する。そして、このとき、係合位置維持部は、収容突起部が2つの維持用領域のうち一方に収容されることで、第一スライド部材と第二スライド部材が係合位置に至ったときの両スライド部材の相対位置関係を維持し、係合解除位置維持部は、収容突起部が2つの維持用領域のうち他方に収容されることで、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に至ったときの両スライド部材の相対位置関係を維持するようにしてもよい。
また、上述した綴じ具固定装置において、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に至ったとき、両スライド部材の相対位置関係を維持する解除時維持部と、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置を外れた位置にあるとき、両スライド部材が所定の移動範囲内で制限された相対移動が許容されるように、該両スライド部材の相対位置関係を形成する相対移動許容部と、を更に備えるようにしてもよい。
このように解除時維持部を有することで、上記第二維持部の場合と同様に、係合解除位置にある第一スライド部材と第二スライド部材との相対位置関係を維持することが可能となる。また、相対移動許容部を有することで、両スライド部材が係合解除位置を外れた位置にあるときは、両スライド部材の相対位置関係は維持されず、両者の相対的スライドが許容される。そのため、両スライド部材を有する綴じ具固定装置を使って綴じ具とファイル本体との固定を行おうとするユーザは、該綴じ具固定装置を触るとすぐに、両スライド部材の相対位置関係が係合解除位置にあるか否かを容易に判断することができる。そして、必要があれば両スライド部材を係合解除位置に位置させるべく相対的スライドを行うことで、円滑な綴じ具とファイル本体との固定を実現することができる。
また、第一スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成された溝部と、該溝部を2つの領域に区切る第一突起部と、を有し、第二スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成され、且つ第一突起部を乗り越えて2つの領域の何れにも収まる第二突起部を有する。このとき、解除時維持部は、第二突起部が2つの領域のうち一方に収容されることで、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に至ったときの両スライド部材の相対位置関係を維持し、相対移動許容部は、第二突起部を2つの領域のうち他方に収容し、且つ該第二突起部の該他方の領域内での移動を可能とすることで、両スライド部材が所定の移動範囲内での制限された状態での相対移動を実現するようにしてもよい。
すなわち、第一スライド部材側に設けられた溝部と第二スライド部材側に設けられた第二突起部の相対移動関係にしたがって、該溝部内の第一突起部を解除時維持部による相対位置関係の維持と、相対移動許容部による相対移動許容の切替の境界とすることで、第一スライド部材と第二スライド部材の相対的スライドが行われる。これにより、第二突起部が2つに区切られた領域の何れかに収まることで、両スライド部材の相対位置関係の維持と、限られた所定の範囲内での相対移動が可能とされる。
また、上述した本発明の綴じ具固定装置において、第一スライド部材と第二スライド部材は、それぞれが端部に、該第一スライド部材と該第二スライド部材とを相対的にスライドさせる際に把持する操作部を更に備えるようにしてもよい。また、操作部は、該第一スライド部材と該第二スライド部材とを相対的にスライドさせる際に手指を引掛ける操作部側貫通孔を有するようにしてもよい。更に、操作部は、操作部側貫通孔の近傍に、該第一スライド部材と該第二スライド部材とを相対的にスライドさせる際に手指を引掛ける窪み部を更に有するようにしてもよい。上記のように構成することでスライド操作がより容易となる。
また、上述までの第一スライド部材と第二スライド部材を有する綴じ具固定装置において、第一スライド部材は、更に、ユーザが第二スライド部材との相対的なスライドを行うための操作部と、操作部の近傍に設けられた被阻害部と、を有し、第二スライド部材は、更に、相対的なスライドにおいて第一スライド部材の操作部が、両スライド部材が係合位置と係合解除位置の何れかの位置に至り該第二スライド部材における端部の内近傍に配置される端部に対する距離が近接状態となったとき、被阻害部に対して該被阻害部と重なる位置に至り、第一スライド部材の上方への変位に対して該被阻害部を介して該変位を阻害し得る阻害部を有してもよい。
上記ファイルにおいては、相対的スライドにおいて第一スライド部材の操作部が近接状態となったとき、被阻害部と阻害部とが、第一スライド部材の上方への変位に対して互いに阻害する位置関係となることで、相対的スライドのために操作部を操作するユーザに対して、両スライド部材をその上方に強制的に操作することは被阻害部と阻害部の存在により制限されていることを明示的に知らしめることが可能となる。すなわち、両スライド部材が係合位置又は係合解除位置にある場合、ユーザがそれらを上方に強制的に相対移動させようとすると阻害部が被阻害部とが接触するため、その接触動作を介してその強制的な相対移動は適切ではないとユーザは知ることになる。その結果、ユーザを適切な相対的スライドのための操作に導くことが可能となる。また、阻害部が被阻害部側の上記方向への移動を邪魔するだけでなく阻止するように構成してもよい。このように構成すれば、ユーザから正しくない方向へ付与された力が第一スライド部材に悪影響及ぼすことを防止できる。
そして、上記の被阻害部と阻害部については、次に示す一例が挙げられる。例えば、第一スライド部材の操作部は、該第一スライド部材の端部のうち第二スライド部材とは接触しない端部に設けられ、且つ被阻害部は、該操作部に隣接して設けられ、阻害部は、第二スライド部材の端部のうち第一スライド部材に対向する端部に設けられるようにしてもよい。なお、各部分の具体的な構成はこの形態に限られず、好ましくは両スライド部材の相対的スライドに影響を及ぼすことなく、且つユーザに対してその存在を知らしめやすい場所に設けられる。
ここで、上記第一スライド部材と第二スライド部材の重なり合いについては、次に示す一例が挙げられる。例えば、上記綴じ具固定装置において、第一スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿った側辺の一部に切り欠き部を有し、第二スライド部材は、第一スライド部材が該第二スライド部材の上面をスライドするために該第一スライド部材を収めるスライド用窪み部と、スライド用窪み部に突出する突出片と、を有する。そして、突出片は、第一スライド部材がスライド用窪み部に収められた状態において切り欠き部の内部に収められることで、該第一スライド部材の上面の一部を覆い、且つ該切り欠き部の内部を相対的なスライドにしたがって、変位自在であってもよい。このような構成により、両スライド部材の相対的スライドと、綴じ具固定装置の上方における両スライド部材の重なり合いを実現できる。
ここで、本発明は、上記態様とは異なる態様として以下の構成としてもよい。すなわち、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用孔部とファイル本体に設けられたファイル側孔部とを用いて、該綴じ具と該ファイル本体とを固定する綴じ具固定装置とで構成された綴じ具固定機構であって、綴じ具固定装置は、ファイル本体に配置される固定装置本体部と、固定装置本体部に設けられ、固定用孔部とファイル側孔部が重なって形成された連通孔に挿入される挿入部と、連通孔に挿入部が挿入された際にファイル本体及び綴じ具のうち該挿入部の挿入方向奥側の部材を被係合部材とし、当該被係合部材に対して係合及び該係合の解除が可能である、挿入部に設けられた係合部と、挿入部の連通孔への挿入方向に沿って固定装置本体部と係合部との間に設けられる平板部とを備え、ファイル本体及び綴じ具のうち固定装置本体部と被係合部材との間に挟持される部材を被固定部材とするとき、固定用孔部とファイル側孔部のうち被固定部材上に存する側の孔部には、これと連通し、平板部が収納される第一収納部が設けられ、固定用孔部とファイル側孔部のうち被係合部材上に存する側の孔部には、更に、これと連通し、平板部が収納される第二収納部が設けられ、係合部が被係合部材に対して係合状態となると、少なくとも平板部に対する鉛直方向の衝撃力が係合部に加わった際、平板部が第一収納部及び第二収納部の少なくとも一方に接触するように構成してもよい。
上記構成によれば、少なくとも上記鉛直方向のベクトルを含む衝撃力が固定装置に加わった際、係合部(例えば、係止爪)だけでなく平板部も綴じ具及び/又はファイル本体と当接する。したがって、固定装置と綴じ具及び/又はファイル本体との間に係る力は平板部がない場合と比べて分散される。これにより、特に、紙等で構成されることの多いファイル本体は衝撃力に起因して破れてしまうといったことが防止され、樹脂等で構成されることの多い係合部(係止爪)は綴じ具によって傷ついてしまったり固定装置から切り離されてしまったりすることが防止される。なお、上記構成における「衝撃力」とは、例えば、書類等が綴じられた状態において机から床に落とされた場合に発生する力など、通常使用において発生する恐れのある大きさ以上の力を意味する。また、平板部は、衝撃力に抗するものであるから、ある程度の厚みがあってもよく、曲面部を有していてもよい。
また、本発明は、更に、以下のような態様とすることもできる。すなわち、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用孔部とファイル本体に設けられたファイル側孔部とを用いて、該綴じ具と該ファイル本体とを固定する綴じ具固定装置とで構成された綴じ具固定機構であって、綴じ具固定装置は、ファイル本体に配置される固定装置本体部と、固定装置本体部に設けられ、固定用孔部とファイル側孔部が重なって形成された連通孔に挿入される挿入部と、連通孔に挿入部が挿入された際にファイル本体及び綴じ具のうち該挿入部の挿入方向奥側の部材を被係合部材とし、当該被係合部材に対して係合及び該係合の解除が可能である、挿入部に設けられた係合部と、挿入部の連通孔への挿入方向に沿って固定装置本体部と係合部との間に設けられる平板部とを備え、ファイル本体及び綴じ具のうち固定装置本体部と被係合部材との間に挟持される部材を被固定部材とするとき、固定用孔部とファイル側孔部のうち被固定部材上に存する側の孔部には、これと連通し、平板部が収納される第一収納部が設けられ、係合部が被係合部材に対して係合状態となると、少なくとも平板部に対する鉛直方向の衝撃力が係合部に加わった際、平板部が第一収納部に接触するように構成することができる。
上記構成によれば、少なくとも上記鉛直方向のベクトルを含む衝撃力が固定装置に加わった際、係止部(例えば、係止爪)だけでなく平板部も綴じ具と当接する。したがって、固定装置と綴じ具との間に係る力は平板部がない場合と比べて分散される。これにより、特に、樹脂等で構成されることの多い係合部(係止爪)が綴じ具によって傷ついてしまったり固定装置から切り離されてしまったりすることが防止される。なお、平板部をファイル本体とのみ当接可能な位置に設け、第一収納部の代わりに上述した第二収納部を設けてもよい。このように構成すれば、特に、紙等で構成されることの多いファイル本体が衝撃力に起因して破れてしまうといったことが防止される。
以上、綴じ具の固定装置について説明したが、本発明は、上述した綴じ具固定装置を有するファイル、綴じ具固定装置を有するファイルとしてもよい。
さらに、本発明に係る綴じ具固定装置およびファイルは、上記した課題を解決するために、綴じ具の着脱に関係する綴じ具固定装置の係合部の動きを、ファイル本体及び/又は綴じ具に対して規定することとした。すなわち、綴じ具固定装置が綴じ具とファイル本体を係合していない状態(固定装置を綴じ具やファイル本体から引き離す際)における、ファイル本体及び/又は綴じ具に対する係合部の相対位置が、ユーザの円滑な着脱操作に寄与する位置に決定される。
本発明に係る綴じ具固定装置は、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用孔部とファイル本体に設けられたファイル側孔部とを用いて、該綴じ具と該ファイル本体とを固定する綴じ具固定装置であって、ファイル本体に配置される固定装置本体部と、固定装置本体部に設けられ、固定用孔部及びファイル側孔部が重なって形成された連通孔に挿入される挿入部と、連通孔に挿入部が挿入された際にファイル本体及び綴じ具のうち該挿入部の挿入方向奥側の部材を被係合部材とし、当該被係合部材に対して係合及び該係合の解除が可能である、挿入部に設けられた係合部と、係合部の被係合部材に対する係合が解除された状態であるとき、挿入部が連通孔に対して抜き出し自在となるように、ファイル本体及び綴じ具の少なくとも一方に対する挿入部の相対位置を位置決めする位置決め部と、を備えている。
上記綴じ具固定装置は、ファイル本体の内側に配置された綴じ具のさらに内側に添設される場合には、挿入部が固定用孔部、ファイル側孔部の順に挿入され、挿入部に設けられた係合部が被係合部材としてのファイル本体と係合する。ファイル外側に添設される場合には、挿入部がファイル側孔部、固定用孔部の順に挿入され、挿入部に設けられた係合部が被係合部材としての綴じ具と係合する。そして、この係合状態が解除された際、位置決め部によって、綴じ具及やファイル本体に対する挿入部の相対位置が、連通孔から抜き出す方向に移動する際にファイル本体及び綴じ具に引っかかることない位置に決定される。言い換えると、ユーザによって綴じ具は外すべく上記係合状態から係合解除状態へ操作されると、綴じ具固定装置に設けられた位置決め部によって挿入部の位置決めが連動して行われることになる。
したがって、係合解除状態における挿入部、特にこれに設けられている係合部の連通孔方向の移動がフリーとなるので、ユーザは、従来のような挿入部とファイル本体や綴じ具との引っかかりを解除しながら綴じ具固定部材をファイル本体側から抜き取る必要がなくなる。すなわち、ユーザは、係合部の被係合部材との係合を解除する動作以外の特別な動作を要求されることなく綴じ具固定装置を係合解除状態にするだけで、位置決め部によって挿入部を適切に位置させることができ、その後は抜き出し方向に綴じ具固定装置を移動すれば綴じ具固定装置を綴じ具・ファイル本体から取り外すことができる。このように、上記綴じ具固定装置は、ファイル本体側からの取り外しの操作性・作業性が極めて良好である。なお、挿入部を複数設ける場合には、位置決め部が全ての挿入部の相対位置を上記のように位置決めするように構成することが望ましい。
また、綴じ具固定装置のファイル本体側からの取り外し性が良好であるため、取り外し作業に起因して挿入部や係合部が破損してしまう等の危険性を極めて低くできる。詳細には、上記したようなファイル本体の片側からのみのアクセスによって綴じ具をファイル本体に着脱可能に固定する綴じ具固定装置は、ファイル本体の他方から当該固定装置と挟み込むようにしてファイル本体に綴じ具を固定する、いわば両側からのアクセスによる従来までの綴じ具固定装置と比べると、ファイル本体の片側に配置される綴じ具固定装置から延在する挿入部・係合部のみによってファイル本体と綴じ具との固定状態を維持しなければならないため、挿入部や係合部に多大な負荷がかかり得る。しかし、本綴じ具固定装置によれば、ファイル本体側からの取り外し性が良好なため、上記取り外し作業時に挿入部や係合部に想定外の負荷がかかることで生じ得る当該作業時の挿入部や係合部、被係合部材の破損、ファイル本体と綴じ具とを固定している際の破損等の問題を解決することが可能となる。
なお、係合部は、被係合部材のいずれの部分に対しても係合を行うように設計してもよい。例えば綴じ具固定装置がファイル内側からのアクセスによって固定を行う機構である場合、ファイル側孔部が貫通孔である場合には、挿入部が綴じ具側の孔部、ファイル側孔部の順に挿入され、係合部がファイル本体の外側に至った状態で該ファイル本体と係合するように設計できる。また、挿入部がファイル側孔部に挿入されている状態において、該ファイル側孔部の途中部分において係合部がファイル本体と係合するようにしてもよい。要約すると、係合部の被係合部材への係合は、挿入部の挿入がファイル本体の一方の側から行われるのが肝要であり、被係合部材との係合箇所は綴じ具がファイル本体に固定される限り、何れの箇所であってもよい。したがって、被係合部材側の孔部は貫通孔でなくてもよく、例えば、窪み部と当該窪みに連通して設けられる前記係合部との被係合空間とを備えたファイル側孔部を備えたファイル本体に適用することもできる。
また、位置決め部は、係合部の被係合部材に対する係合が解除された状態であるとき、挿入部が、固定用孔部及びファイル側孔部に対して、ファイル本体の一方の側(綴じ具固定装置が配設される側)から抜き出し自在となるように綴じ具やファイル本体に対して挿入部を位置決めするだけでなく、挿入自在となるように位置決めしてもよい。すなわち、ユーザの操作により係合部による係合解除状態が形成されると、位置決め部によって綴じ具に対する固定装置本体部の相対位置が位置決めされ、その結果、挿入部の挿入及び抜き出し自在の状態が連動して形成されることになる。そのため、ユーザとしては、綴じ具の取り外しを行うべく係合部による係合の解除を行うだけで、挿入部が抜き出し自在の状態に置かれることになり、挿入部を固定用孔部及びファイル側孔部から抜き出すために、挿入部の位置を合わせる特段の動作が求められる必要がなくなり、また、連通孔に挿入する際に挿入部・係合部が連通孔等に引っかかる等の問題をも解決できる。
上記綴じ具固定装置は、さらに、前記係合部の前記被係合部材に対する係合が解除された状態を維持する係合解除状態維持部を好適に備える。係合解除状態維持部を備えていれば、挿入部を連通孔から引き抜く際に(ユーザが意図せず)係合部の綴じ具固定装置内における相対位置が変わってしまい、挿入部や係合部がファイル本体等に引っかかってしまうといったことを効果的に防止できる。
そして、上述までの綴じ具固定装置を含んで構成されるファイルも本発明の一態様となる。即ち、本発明に係るファイルは、上述までの綴じ具固定装置と、綴じ具と、ファイル本体とを含むファイルであって、ファイル本体及び綴じ具のうち固定装置本体部と被係合部材との間に挟持される部材が被固定部材として、綴じ具固定装置によって該被係合部材に対して固定される、ファイルである。このように当該ファイルは、綴じ具固定装置によって被係合部材と被固定部材とが固定されることで形成されるが、これらの構成以外の構成を含んでも構わない。
上記綴じ具固定装置は、好適には、相対的にスライドする第一スライド部材と第二スライド部材により構成し、第一スライド部材と第二スライド部材に、それぞれ少なくとも一つの挿入部が設け、係合部が、第一スライド部材及び第二スライド部材がスライド移動することにより被係合部材に対して係合状態もしくは係合解除状態となるように構成される。この構成を採用する場合、位置決め部は、第一スライド部材及び第二スライド部材のスライド移動によって各スライド部材における係合部が被係合部材と係合解除状態となった際に、各スライド部材における挿入部がそれぞれの挿入された連通孔に対して抜き出し自在となるように、ファイル本体及び綴じ具の少なくとも一方に対する挿入部の相対位置を位置決めするように構成される。
この綴じ具固定装置は、固定装置本体部が第一スライド部材と第二スライド部材によって構成されているため、ユーザによる両スライド部材を相対的にスライド操作することで各スライド部材における係合部の係合状態の形成/解除が行われる(該係合状態およびその解除を成立させるために、第一スライド部材と第二スライド部材は、係合位置と係合解除位置との間を相対的にスライドされるが、両スライド部材による当該スライドを、本明細書においては単に「相対的スライド」とも言う。)。したがって、ユーザは、綴じ具をファイル本体に固定したい場合には、ファイル本体の一方の側から綴じ具固定装置の各挿入部をそれぞれ対応する連通孔に挿入させてから上記相対的スライドを行えばよく、また、綴じ具の取り外しを行いたい場合にはその逆の動作をファイル本体の一方の側から行えばよい。
この綴じ具固定装置は、上記した位置決め部を備えているため、ユーザによる係合状態を解除して係合解除状態へ二つのスライド部材を相対的に移動させる動作に連動して(当該動作に起因して)、挿入部はファイル本体等に引っかかることのない抜き出し自在な相対位置に配置される。このように、上記綴じ具固定装置は、ファイル本体等から外す場合、第一スライド部材と第二スライド部材とをスライド移動させて係合解除状態にした上でこれらをファイル本体から離す方向へ動かすだけでよいという、極めて良好な操作性・取り外し性能を備えており、かつ、取り外す際に挿入部や係合部、ファイル本体等に負荷がかかる可能性が極めて低い。
上記位置決め部は、ファイル本体及び綴じ具のうち綴じ具装置本体部と被係合部材との間に挟持される部材(被固定部材)に対する前記挿入部の相対位置を定めるようにしてもよい。この構成では、位置決め部は、隣接する部材である被固定部材(ファイル本体・綴じ具・綴じ具固定装置の順に積層された構成をとるファイルにおいては綴じ具、ファイル本体と綴じ具が逆の積層順である場合はファイル本体)との間でのみ位置決めを行うだけでよい。したがって、位置決め部及びこれに対応する綴じ具側もしくはファイル本体側を簡単な構成にすることができる。
なお、この構成を採用する場合には、被固定部材と被係合部材は、互いの相対位置を一定に保持して固定用孔部とファイル側孔部とが重なり連通孔を形成するようにする位置決め機構を備えるようにし、位置決め機構によって位置決めされた被固定部材と被係合部材に対し、係合部が被固定部材側から固定用孔部を経て被係合部材と係合することで、被係合部材との間に被固定部材を挟持するようにすることが望ましい。このように構成すれば、挿入部・係合部の抜き差しが極めて良好なものとなる。
上記綴じ具固定装置は、望ましくは、連通孔に一対の挿入部が挿入されるように構成される。この一対の挿入部にはそれぞれ係合部が設けられ、各係合部はそれぞれ被係合部材と係合/係合解除が可能である。この構成において、位置決め部は、係合解除状態において各挿入部が(各係合部が)それぞれ挿通された連通孔周辺部に引っかからずに抜き出し可能となるように、連通孔における各挿入部の相対位置を位置決めする。
このように、一つの連通孔に二つの挿入部が挿通され、各挿入部に設けられた係合部がそれぞれ被係合部材と係合することで、綴じ具のより堅強な固定を実現できる。すなわち、一つの連通孔に一つの係合部しか存在しない場合、当該係合部に被係合方向の力(係合部が被係合部材と外れる方向の力)が加わってしまうと係合状態が解除されてしまう可能性が高いのに対し、一つの連通孔に二つの係合部(好ましくは互いに異なる係合方向の係合部、望ましくは互いに略反対の係合方向の係合部)を備えていれば、一方の係合部に対する被係合方向の力は、他方の係合部にとっては係合を強める方向の力となる。したがって、ファイル本体に対する片側からのみのアクセスによって綴じ具をファイル本体に着脱可能に固定する場合には、一つの連通孔には一対の挿入部(係合部)が挿入される構成は有用である。
一方で、一つの連通孔に二つの係合部の係合を利用する場合(一対の挿入部を挿入する場合)、一つの連通孔に一つの係合部の係合を利用する場合と比べて一対の挿入部の固定用孔部及びファイル側孔部からの抜き出しは難しくなり、ユーザの作業性が一層低下する。第一係合部がファイル本体や綴じ具等と引っかからないようにしようとすると、第二係合部がファイル本体等に引っかかってしまう、という事態に陥りやすく、両係合部材がそれぞれファイル本体等と引っかからないようにするのが難しいからである。しかし、上記構成の綴じ具固定装置では、上述のように各係合部によるファイル本体への係合状態に連動する位置決め部を有することにより、綴じ具の堅強な固定性能と、綴じ具固定装置のファイル本体等から外すユーザの作業性とを高い次元で両立することが可能となる。
上記綴じ具固定装置は、例えば以下のような二部材スライド構造としてもよい。すなわち、前記位置決め部は、第一スライド部材の被固定部材と接する面に設けられた第一位置決め部と、第二スライド部材の被固定部材と接する面に設けられた第二位置決め部と有する。被固定部材は、位置決め部とともに位置決めを行う位置決め補助部を有し、位置決め部と位置決め補助部のうち一方が突起部で、他方が孔部である。突起部は、第一スライド部材と第二スライド部材が被固定部材上に配置された際に孔部内に配置され、係合部と被係合部材とが係合した状態から第一スライド部材と第二スライド部材とがスライド移動することで突起部が孔部の縁に接触した際に、挿入部が連通孔に対して抜き出し自在となるように、各スライド部材における挿入部の被固定部材に対する相対位置が規定される。
また、一つの連通孔に二つの挿入部が挿入されるように構成してもよい。すなわち、固定装置本体部は、相対的にスライドする第一スライド部材と第二スライド部材を有し、一対の挿入部材のうち一方の挿入部材は第一スライド部材に設けられ、他方の挿入部材は第二スライド部材に設けられるようにする。そして、第一スライド部材と第二スライド部材が相対的なスライドにより係合位置に至ると、各スライド部材における係合部によるファイル本体への係合状態が形成され、第一スライド部材と第二スライド部材が、係合位置に至るスライドとは向きの異なる相対的なスライドにより係合解除位置に至ると、第一係合部材および第二係合部材によるファイル本体との係合状態が解除される。この際、突起部と孔部の相関関係を有する位置決め部と位置決め部の接触状態に基づいて、挿入部の被固定部材に対する相対位置が規定される。
上記構成において、第一位置決め部及び第二位置決め部はそれぞれ突起部であり、位置決め補助部は孔部であり、第一位置決め部及び第二位置決め部は、それぞれ同一の位置決め補助部に挿入され、第一スライド部材と第二スライド部材とがスライド移動することで位置決め補助部の縁と当接した際に、挿入部が連通孔に対して抜き出し自在となるように、各スライド部材における挿入部の被固定部材に対する相対位置が規定されるようにしてもよい。例えば、上記の第一スライド部材と第二スライド部材を有する、ファイルの内側に配される綴じ具固定装置において、位置決め部は、第一スライド部材の綴じ具と接する
裏面上に設けられた第一位置決め突起部と、第二スライド部材の綴じ具と接する裏面上に設けられた第二位置決め突起部と、を有し、第一スライド部材と第二スライド部材が綴じ具上に配置されたとき、綴じ具に設けられた位置決め用の孔部(上記位置決め補助部に相当する)に、第一位置決め突起部(上記位置決め部に相当する)と第二位置決め突起部(上記位置決め部に相当する)とが収められ、各スライド部材のスライド移動によって、第一位置決め突起部と第二位置決め突起部が、位置決め用孔部の縁に接触したとき、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に位置決めされるように構成することができる。
すなわち、上記綴じ具固定装置では、スライド移動を行う第一スライド部材と第二スライド部材にそれぞれ位置決め用の突起部(第一位置決め突起部と第二位置決め突起部)が設けられ、それらの突起部と綴じ具側の位置決め用の孔部との接触関係によって、両スライド部材の相対位置関係が決定される。特に、第一位置決め突起部と第二位置決め突起部とが位置決め用の孔部と接触することで、上記スライド移動が規制され、その結果、両スライド部材の位置が係合解除位置に半ば自動的に特定されることになる。この係合解除位置は、ユーザにとっては、一対の挿入部を固定用孔部とファイル側孔部から抜き出しを行いたい位置でもある。そこで、このように第一位置決め突起部と第二位置決め突起部によって、両スライド部材の位置が自動的に特定されると、ユーザの上記抜き出し操作が比較的容易に行われ得る。
当然、第一位置決め突起部と第二位置決め突起部は、互いに同じ位置決め用の孔部に挿入されるように構成してもよく、それぞれを異なる位置決め用の孔部に挿入されるように構成してもよい。
また、被係合部材に位置決め補助部に対向する位置に被係合部材用孔部を設け、第一位置決め部及び第二位置決め部の少なくとも一方は、挿入部が連通孔に対して抜き出し自在に位置決めされている際に被係合部材用孔部の縁とも当接するように構成してもよい。このように構成すれば、綴じ具固定装置は、被固定部材との間だけでなく被係合部材との間においても位置決めされるので、極めて良好な抜き出し性能を奏する。
天地方向の長さに対して背幅の薄いファイルにおいては、上記綴じ具固定装置は、ファイル側孔部をファイル本体の背表紙に設けられたファイルにおける固定用とし、第一スライド部材と第二スライド部材が背表紙の天地方向に沿って互いに逆向きに相対的なスライドを行うようにするとよい。このように構成すれば、第一スライド部材及び第二スライド部材のスライド量を長くとることができるため、ファイルの片側からのみのアクセスによって綴じ具をファイル本体に固定するという係合部が比較的外れやすい条件下であっても、係合部を上記天地方向に長くとることが可能となり、以てこのような片側からのアクセスであっても強固な係合力(結合力)が期待できる。
上記ファイルは、被係合部材をファイル本体とし、固定装置本体部がファイル本体内側に添設される綴じ具のさらにファイル内側に配置され、挿入部が、固定用孔部、ファイル側孔部の順に挿入され、前記係合部が前記ファイル本体と係合するように構成してもよい。このように構成すれば、ファイルの外側に固定のための部材(裏当て部材)が残らない綴じ具のファイルへの着脱が実現される。特に、ファイルの外側に透明樹脂製シートで覆われた見出し部が設けられている場合、当該見出し部にはユーザが手を入れるなどして作業することが困難であるが、本構成によれば見出し部内に固定装置のパーツが残らないため、極めて良好に「着」並びに「脱」することが可能となる。
本発明に係るファイルの第二の態様は、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用孔部とファイル本体に設けられたファイル側係合部とを用いて、綴じ具とファイル本体とを固定するための綴じ具固定装置を備えたファイルであって、ファイル本体にはファイル側被係合部が設けられ、綴じ具には固定用孔部が設けられている。そして、綴じ具固定装置は、ファイル本体内側に配置された綴じ具のさらに内側に配置される固定装置本体部と、固定装置本体部に設けられ、ファイル側被係合部と隣接する位置に配置された、固定用孔部を介しファイル側被係合部と係合状態及び係合解除状態を採る係合部と、係合部のファイル側被係合部に対する係合が解除された状態であるとき、該係合部が、固定用孔部に対して抜き出し自在となるように、綴じ具に対する該係合部の相対位置を位置決めする位置決め部と、を備える。
本発明に係るファイルの第三の態様は、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用係合部とファイル本体に設けられたファイル側孔部とを用いて、綴じ具とファイル本体とを固定するための綴じ具固定装置を備えたファイルであって、前記ファイル本体にはファイル側孔部が設けられ、前記綴じ具には固定用被係合部が設けられている。そして、前記綴じ具固定装置は、前記ファイル本体における前記綴じ具が配置された側とは反対側に配置される固定装置本体部と、前記固定装置本体部に設けられ、前記固定用係合部と隣接する位置に配置された前記ファイル側孔部を介し前記固定用被係合部と係合状態及び係合解除状態を採る係合部と、前記係合部の前記固定用被係合部に対する係合が解除された状態であるとき、該係合部が、前記ファイル側孔部に対して抜き出し自在となるように、前記ファイル本体に対する該係合部の相対位置を位置決めする位置決め部と、を備える。
上記第二、第三の態様に係るファイルであっても、最初の態様に係るファイルと同等の作用・効果を奏する。なお、第二、第三の態様に係るファイルも、その趣旨に反しない範囲で最初の態様に係るファイルと同等の変更を加えることができ、そのような変更を加えれば上記したようなさらなる作用・効果を奏する。
以上説明した本発明に係る綴じ具固定装置またはそれを備えるファイルによれば、書類等を綴じる綴じ具とファイル本体とをその内側もしくは外側のうち一方側からの操作のみで着脱自在に固定することを可能とするとともに、固定の際の綴じ具及び/又はファイル本体に対する相対位置決めを行うことができる綴じ具固定装置に関する技術を提供することが可能となる。
また、書類等を綴じる綴じ具をファイル本体の片側からの作業のみで固定することを可能とするとともに、ユーザによる適切な綴じ具の着脱作業を可能とする綴じ具固定装置およびファイルを提供することができる。
図1は、本実施形態に係る固定装置1と、それによってファイル本体80に固定される綴じ具60が示されている。なお、図1に示す綴じ具60の状態は、実際に固定装置1によって綴じ具60が固定されるときの状態ではなく、該綴じ具60の概略構成が把握しやすいように例示的に示される状態である。ここで、固定装置1、綴じ具60、ファイル本体80の概略的な構成を示すと、固定装置1は第一スライド部材10と第二スライド部材30を有しており、ファイル本体80は、ファイルとして使用されるときの背表紙に相当する背表紙部80aと、表表紙に相当する表表紙部80bと、裏表紙に相当する裏表紙部80cを有し、各表紙部間は、折り曲げ形成される。また、綴じ具60は、ベース部材61、第一綴じ部材70、第二綴じ部材75を有しており、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされた状態でベース部材61に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われることになる。なお、これらの部品の詳細は、順次説明していく。
先ず、固定装置1を構成する第一スライド部材10と第二スライド部材30の構成について、図2A−図5Bに基づいて説明する。第一スライド部材10と第二スライド部材30は、後述する図3A、3B等に示すように組み合わせられことで、互いが相対的にスライドすることが可能となり、当該スライドが可能な状態において本実施形態に係る固定装置1としての機能を発揮する。なお、この両スライド部材による相対的なスライドを、以下「相対的スライド」と言う。
ここで、図2Aは、第一スライド部材10の構成を示す図であり、図中左側が第一スライド部材10の上面図、図中右側がその背面図となっている。図2Bは、第二スライド部材30の構成を示す図であり、図中左側が第二スライド部材30の上面図、図中右側がその背面図となっている。また、図3Aは、第一スライド部材10と第二スライド部材30を組み合わせて固定装置1を形成したときの、該固定装置1の上方斜視図であり、図3Bは、その固定装置1の下方斜視図である。次に、図4Aは、固定装置1が綴じ具60を固定するために採る、後述する「係合状態」を固定装置1の上方から示す図であり、図4Bは、図4Aに示す係合状態の断面図である。また、図5Aは、固定装置1が綴じ具60の固定を解除するために採る、後述する「係合解除状態」を固定装置1の上方から示す図であり、図5Bは、図5Aに示す係合状態の断面図である。
先ず、第一スライド部材10について、図2Aに基づいて説明する。第一スライド部材10の表側の構成については、該第一スライド部材10は、長手方向に延びる二本の平行な縦フレーム11を、三本の平行な横フレーム14a、14b、14cで連結するとともに、縦フレーム11の一方の端部に操作部16が設けられた形状を有している。なお、横フレーム14cは、操作部16が設けられた縦フレーム11の端部とは逆の端部に位置する。ここで、縦フレーム11上には、同じように長手方向に延びる二本の平行な上側縦フレーム12が設けられている。したがって、縦フレーム11及び横フレーム14a〜14cの上面と、上側縦フレーム12の上面とは同一面には位置せず、段差形状を形成することになる。また、上側縦フレーム12の端部12aは、横フレーム14cの外側の辺よりも第一スライド部材10の外側に若干量飛び出して形成されている。
ここで、二本の縦フレーム11と操作部16及び横フレーム14aとで囲まれることで、第一スライド部材10の表側と裏側を貫通する貫通領域15aが形成され、同様に二本の縦フレーム11と横フレーム14a及び横フレーム14bとで囲まれることで、第一スライド部材10の表側と裏側を貫通する貫通領域15bが形成され、同様に二本の縦フレーム11と横フレーム14b及び横フレーム14cとで囲まれることで、第一スライド部材10の表側と裏側を貫通する貫通領域15cが形成されている。そして、上側縦フレーム12の一部が貫通領域15c上に突出するように形成されるスライド突起部13が、その上面が各上側縦フレーム12の上面と面一となるように設けられている。したがって、横フレーム14a〜14cの上面と、スライド突起部13の上面とは面一にはならない。
また、操作部16は、ユーザが第一スライド部材10をスライド操作するときにその指をかけて当該操作をし易いように、その中央に貫通孔を有している。なお、本実施例では、貫通孔がO状に形成されているが、貫通孔の形状は、矩形や多角形等いずれでもよい。更に、この貫通孔の左右両側に窪み部17が設けられることで、更にユーザの指が操作部16に掛かり易く工夫されている。更に、操作部16において、その貫通孔と貫通領域15aとを連通するように窪み部18が設けられている。
次に、第一スライド部材10の裏側の構成について説明する。縦フレーム11の下面は、円柱形状の位置決め突起部21を除いて、面一の平面となっている。この位置決め突起部21は、スライド突起部13の近傍に設けられ、後述する綴じ具60側の位置決め孔部64に対応する。そして、貫通領域15aのうち各縦フレーム11に沿う辺に、段差部20がそれぞれ設けられている。この段差部20の下面は縦フレーム11の下面より固定装置1の表側に下がって形成される。同様に、縦フレーム11の下面より固定装置1の表側に下がって形成される段差部19が、貫通領域15cのうち各縦フレーム11の横フレーム14c側の端部にそれぞれ設けられている。なお、段差部19および段差部20の長さは、概ね同一である。
また、横フレーム14a及び横フレーム14cの各々には、綴じ具60をファイル本体80に対して固定するための該ファイル本体80への係合を行う係合爪22、23が、裏側に突出するように設けられている。各係合爪の詳細な構造については、後述する。また、横フレーム14bには、その下面が弧状に窪んだスライド凹部24が、第一スライド部材10の長手方向に沿って形成され、その結果、貫通領域15bと15cは、スライド凹部24によって連通された状態となる。なお、係合爪22、23の第一スライド部材10の長手方向に沿った中心軸及びスライド凹部24の延在方向に沿った中心軸は一致するように、各構成がそれぞれに対応する横フレーム上に配置される。
次に、第二スライド部材30について、図2Bに基づいて説明する。該第二スライド部材30は、長手方向に延びるベース部31を有している。そして、ベース部31の一方の端部には、ベース部31の本体側から延びる二本の連結部31aを介して操作部38が設けられており、上記操作部16と同様に、操作部38は、ユーザが第二スライド部材30をスライド操作するときにその指をかけて当該操作をし易いように、その中央に貫通孔を有している。更に、この貫通孔の左右両側に窪み部39が設けられることで、更にユーザの指が操作部38に掛かり易く工夫されている。また、操作部38と連結部31aとの接続部位の近傍に、第二スライド部材30の外側に飛び出した平面状の平面突出部40が設けられている。この平面突出部40の上面は、ベース部31の上面より固定装置1の裏側に下がって形成され、また該平面突出部40の下面は、ベース部31の下面と面一に形成される。
更に、連結部31aとベース部31との接続部位の近傍に、第二スライド部材30の外側に飛び出したスライド突起部44が、ベース部31の長手方向に沿って設けられている。このスライド突起部44の上面は、ベース部31の上面より固定装置1の裏側に下がって形成され、また該スライド突起部44の下面は、ベース部31の下面と面一に形成される。
ここで、二本の連結部31aと、ベース部31及び操作部38によって囲まれることで、第二スライド部材30の表側と裏側とを貫通する貫通領域34が形成される。そして、この貫通領域34のうちベース部31側の辺に対してヒンジ結合され、該ヒンジ結合部を軸としてベース部31に対して相対的に回転し貫通領域34内に出入り自在のロック部材36が設けられている。このロック部材36の詳細な構成については、後述する。
また、ベース部31の長手方向の端部のうち、上記操作部38が設けられた端部とは反対側の端部に、連結部31aと同様に、ベース部31の本体側から延びる二本の連結部31bを介してスライド突起部45が設けられている。このスライド突起部45は、二本の連結部31bの端部のうち、ベース部31と連結される端部とは反対側の端部を横フレームとして連結するとともに、第二スライド部材30の外側に飛び出して形成される。そして、このスライド突起部45の上面は、ベース部31の上面より固定装置1の裏側に下がって形成され、また該スライド突起部45の下面は、上記スライド突起部44の下面と同一平面上に位置するように形成される。
ここで、二本の連結部31bと、ベース部31及びスライド突起部45によって囲まれることで、第二スライド部材30の表側と裏側とを貫通する貫通領域35が形成される。そして、この貫通領域35のうちベース部31側の辺に対してヒンジ結合され、該ヒンジ結合部を軸としてベース部31に対して相対的に回転し貫通領域35内に出入り自在のロック部材37が設けられている。なお、このロック部材37の構成は上記ロック部材36と同一であり、その詳細な構成については後述する。
更に、ベース部31の上面において、長手方向に延びる二本の側辺を、それぞれ、該長手方向に沿って切り欠くことでスライド溝部32が形成されている。このスライド溝部32の深さは、ベース部31の裏面まで到達しない深さである。そして、スライド溝部32の中央部分には、このスライド溝部32内の領域を二つの分割領域32a、32bに分割するように突起部33が設けられている。
次に、第二スライド部材30の裏側の構成について説明する。ベース部31には、裏側において環状のフレーム部31cが、表側において上述したスライド溝部32が設けられた場所を含むように、ベース部31の裏側に設けられている。フレーム部31cが配置されたベース部31においてはその厚さが厚くなるため、スライド溝部32を形成するために切り欠いた分だけベース部31の強度が低下するのを、フレーム部31cで強度を補うことができる。そして、このフレーム部31cを形成する辺のうち第二スライド部材30の長手方向の辺の下面には、固定装置1の裏側に突出する円柱形状の位置決め突起部41が設けられており、これは、上記位置決め突起部21と同様に、後述する綴じ具60側の位置決め孔部64に対応する。
また、フレーム部31cを形成する辺のうち第二スライド部材30の幅方向(長手方向に垂直な方向)の辺には、その下面が弧状に窪んだスライド凹部46が、第二スライド部材30の長手方向に沿って形成され、その結果、フレーム部31cで囲まれた内側の領域とその外側の領域とが、スライド凹部46によって連通された状態となる。更に、第二スライド部材30の裏側において、スライド突起部44と45の近傍に、それぞれ、綴じ具60をファイル本体80に対して固定するための該ファイル本体80への係合を行う係合爪42、43が、裏側に突出するように設けられている。これらの係合爪の構成は上記の係合爪22、23と同じであり、その詳細な構造については後述する。また、係合爪42、43の第二スライド部材30の長手方向に沿った中心軸及びスライド凹部46の延在方向に沿った中心軸は一致するように、各構成が設けられている。
このように構成される第一スライド部材10と第二スライド部材30は、樹脂製である。そこで、樹脂の弾性変形等を利用して、第一スライド部材10と第二スライド部材30とを組み合わせることで本実施形態に係る固定装置1が形成され、その固定装置1の構成を図3A及び図3Bに示す。そこで、第一スライド部材10と第二スライド部材30との組み合わせ手順について説明する。
先ず、第一スライド部材10の縦フレーム11を、貫通領域15cの近傍で外側に引っ張り、該縦フレーム11をやや拡幅させる。その状態で、第二スライド部材30の係合爪42を貫通領域15c内に通すとともに、該係合爪42近傍のスライド突起部44が、第一スライド部材10の段差部19に接触するように、両スライド部材を組み合わせる。このとき、第一スライド部材10のスライド突起部13は、第二スライド部材30のスライド溝部32内の領域に収められる。その後、第一スライド部材10の貫通領域15aに対して、第二スライド部材30の係合爪43を挿入するとともに、該係合爪43近傍のスライド突起部45が、第一スライド部材10の段差部20に接触するように、両スライド部材を更に組み合わせる。
このように第一スライド部材10と第二スライド部材30とが組み合わされた固定装置1では、第二スライド部材30が、第一スライド部材10の横フレーム14a〜14c上に位置するとともに(図3Bを参照)、該横フレーム14a〜14cと上側縦フレーム12とで概ね形成される、第一スライド部材10の長手方向に延在するスライド空間内を、該第一スライド部材10に対して相対的にスライド(上記相対的スライド)を行うことが可能となる(図3Aを参照)。このとき、図3A、3Bに示すように、第二スライド部材30は、第一スライド部材10の横フレーム14a〜14cとスライド突起部13とによって上下方向で挟まれた状態となるため、上記スライド空間内における相対的スライドを円滑に行うことができる。また、図3Bに示すように、第二スライド部材30は、そのスライド突起部44、45が第一スライド部材10の段差部19、20によってスライド方向にガイドされることになるため、第二スライド部材30と第一スライド部材10の分離を抑制しながら、円滑な相対的スライドを担保することができる。
ここで、第一スライド部材10に設けられる係合爪22、23と、第二スライド部材30に設けられる係合爪42、43は、各々の形状は同一である。そこで、係合爪22を代表として、各係合爪の具体的な構成を説明する。図3Bに示すように、係合爪22は、第一スライド部材10の横フレーム14aから、固定装置1の裏側に延出する板状の挿入片22bと、該挿入片22bの先端部分において該挿入片22bに対して直交し第一スライド部材10の長手方向に平行な係合片22aと、係合片22aから垂直に立設し横フレーム14aにまで至る板状の部材であって、第一スライド部材10の長手方向に沿って該板状の平面部が延在し且つ挿入片22bに対しても直交する位置決め片(挿入部側嵌合部に相当する。)22cとを有する。
ここで、図3Cに係合爪22の拡大側面図を示す。また、図3Dに図3Cの断面図を示す。これらの図に示すように、位置決め片22cは、第一スライド部材10の長手方向に沿って該板状の平面部が延在し且つ挿入片22bに対しても直交している。本実施例の位置決め片22cは、第一スライド部材10の長手方向における厚さが均等に設計されている。また、位置決め片22cの自由端部(紙面左側の端部)は、係合片22aの自由端部よりも挿入片22b側にくるように設計されている。これにより、係合解除状態において係止爪22をファイル側係合孔部86に抜き差しする際、位置決め片22cの自由端部とファイル本体80のファイル側係合孔部86の縁部とが接触してしまうことを防止できる。なお、位置決め片22cが設けられることで、係合爪22の強度向上も期待できる。
なおまた、上述のように係合爪22以外の係合爪についても、該係合爪22と同一の構成を有しており、図面には参照番号は記載していないが、係合爪23、42、43の各々において、係合片、挿入片、位置決め片を指し示す場合には、それぞれ各係合爪の参照番号の後に、a、b、cを添える。
このように構成される係合爪22では、係合爪22が重ねられた綴じ具60とファイル本体80の方向に相対的に近づくと、該係合片22aと第一スライド部材10(特に、横フレーム14a)との間に綴じ具60やファイル本体80とが収められ、これらと係合し、その結果、係合爪22が該綴じ具60及びファイル本体80を係合することで、該綴じ具60の固定を行うことになる。ここで、係合爪22において係合片22aと第一スライド部材10との間の開口部分(挿入片22bに対向する部分)を、係合爪22の「開口部」と称し、該開口部から挿入片22bの方に向かって綴じ具60等を収め、該綴じ具60等を係合するときの係止爪22による係合方向(挿入片22bから開口部に向かう方向)を本実施形態に係る「係合方向」と定義する。また、係合爪22によって綴じ具60等の係合が行われるとき、位置決め片22cは、係合爪22が係合を行うべき所定の位置に該係合爪22を導く。このような固定装置1による綴じ具60の固定については、後述にて詳細に説明する。
また、第一スライド部材10の係合爪22、23の係合方向は同一であり、第二スライド部材30の係合爪42、43の係合方向は同一であるが、係合爪22、23の係合方向は、係合爪42、43の係合方向と逆向きとなっている。そして、固定装置1では、図3Bに示すように、係合爪23と係合爪42が互いの係合方向が逆となった状態で一対の係合爪を形成し、同様に、係合爪22と係合爪43が互いの係合方向が逆となった状態で一対の係合爪を形成している。
ここで、各一対の係合爪においては、一方の係合爪と他方の係合爪との距離(正確には、両係合爪が有する挿入片間の間隔。以下、「爪間距離」という。)は、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドに伴って変動する(なお、図3A、3Bに示す状態は、爪間距離が最も広がった状態を示し、後述する「係合状態」に相当する。)。そして、係合爪の爪間距離が最も広がった状態で、第二スライド部材30側に設けられたロック部材36、37を回転変位させることで、その係合爪の間に形成された空間(以下、「挿入空間」と言う。)にロック部材36、37の一部又は全部が入り込み、その結果、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドが制限され、上記「係合状態」が維持されることになる。また、再び、相対的スライドを行いたい場合は、このロック部材36、37を先とは逆方向に回転変位させることで、係合爪の間に形成された空間から該ロック部材を取り除けばよい。
ここで、ロック部材36、37の詳細な構成について、図3Aに基づいて説明する。なお、ロック部材36及び37は同一の構成であるため、代表としてロック部材36についてのみ説明する。ロック部材36は、第二スライド部材30のベース部31に対してヒンジ結合される板状の操作板部36dと、該操作板部36dに対して垂直に立設し板状の部材であって、その板状の平面がベース部31の幅方向に延びる第一板部36aと、該操作板部36dに対して垂直に立設し板状の部材であって、第一板部36aに対しても直交する第二板部36bと、第一板部36aの板状の平面上であって該第二板部36bとの結合箇所とは反対側の平面上に、操作板部36dに対して垂直となるように半円柱状の接触部36cとを有している。また、上述のようにロック部材37についても、ロック部材36と同一の構成を有しており、図面には参照番号は記載していないが、ロック部材37において、第一板部、第二板部、接触部、操作板部を指し示す場合には、それぞれの参照番号は37a、37b、37c、37dとする。これらロック部材36、37の機能については、後述にて詳細に説明する。
また、図3Bに示すように、第一スライド部材10と第二スライド部材30が組み合わされた固定装置1においては、各スライド部材の裏側に設けられた位置決め突起部21、41は隣接して配置されることになる。なお、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドに伴って、位置決め突起部21と位置決め突起部41の相対位置関係は変化することになる。そして、これらの突起部は、上述のように、綴じ具60側の位置決め孔部64内で変位することで、両スライド部材の位置決めを行う機能を有するが、この点については後述する。
また、図3Bに示すように、固定装置1の裏側において、第一スライド部材10のスライド凹部24と第二スライド部材のスライド凹部46は、それぞれの中心軸が一致し、一列に並ぶ関係となる。なお、これらのスライド凹部については、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドに伴って、スライド凹部24とスライド凹部46の相対位置関係は変化することになる。
ここで、固定装置1においては、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドによって、両スライド部材が採る位置によって、上述した一対の係合爪の状態が変化し、その結果、各係合爪を介した綴じ具60等の係合状態が変化することで、綴じ具60の固定またはその取り外しが行われることになる。そこで、本実施形態に係る固定装置1及びそれを用いたファイルの構成の理解を助けるために、先ずは、固定装置1における係合状態について図4A及び4Bに基づいて、係合解除状態については図5A及び5Bに基づいて説明する。
固定装置1の係合状態では、図4Aに示すように、相対的スライドによって第一スライド部材10の操作部16と第二スライド部材30の操作部38とが互いに最も近接した相対位置関係、換言すると、第二スライド部材30が第一スライド部材上に形成される上記スライド空間内で最も奥までスライドした状態となる。この係合状態にある固定装置1において各スライド部材が採る位置を「係合位置」と称する。固定装置1が係合状態にあるときの特徴は、図4Bに示すように、対をなす第一スライド部材10側の係合爪22、23と、第二スライド部材30側の係合爪43、42とがそれぞれ最も離間した状態(爪間距離が最大)となる。その結果、各係合爪が図4Bには図示されていない綴じ具60等に対して係合することで、綴じ具60のファイル本体80への固定が行われることになる。また、第一スライド部材10のスライド突起部13は、第二スライド部材30の分割領域32aに収まっている。
一方で、固定装置1の係合解除状態では、図5Aに示すように、相対的スライドによって第一スライド部材10の操作部16と第二スライド部材30の操作部38とが互いに最も離間した相対位置関係、換言すると、第二スライド部材30が第一スライド部材上に形成される上記スライド空間から最も多く飛び出した状態となる。この係合解除状態にある固定装置1において各スライド部材が採る位置を「係合解除位置」と称する。固定装置1が係合解除状態にあるときの特徴は、図5Bに示すように、対をなす第一スライド部材10側の係合爪22、23と、第二スライド部材30側の係合爪43、42とがそれぞれ最も近接した状態(爪間距離が最小)となる。その結果、各係合爪が図4Bには図示されていない綴じ具60等に対して係合しないため(係合位置から係合解除位置へ各係合爪が移動するためファイル本体80と係合しなくなるため)、綴じ具60のファイル本体80への固定が解除されることになる。また、第一スライド部材10のスライド突起部13は、第二スライド部材30の分割領域32bに収まっている。
次に、綴じ具60の構成について、図6A〜6Cに基づいて説明する。綴じ具60は、上述したようにベース部材61、第一綴じ部材70、第二綴じ部材75を有しており、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされた状態でベース部材61に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われる。なお、綴じ具60は、書類等を綴じるという機能の観点からは、従来の綴じ具と本質的に同質であるので、当該観点に基づく構成の説明は割愛する。一方で、本実施形態に係る固定装置1は綴じ具60をファイル本体80に固定するためのものであるから、当該固定に関する構成の説明を重点的に行う。
ここで、図6Aは、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされ、それをベース部材61に取り付けられたときの状態の上面図である。図6Bは、図6Aに示す状態を裏側から見たときの図である。図6Cは、第一綴じ部材70および第二綴じ部材75の構成を示す図である。
先ず、ベース部材61は、二つの側壁部61b(図1参照)と、該側壁部61bのそれぞれに設けられた綴込爪部61aと、ファイル本体80と接触することになるベース部材としてのベースプレート61cを有する。また、図6Cに示すように、第一綴じ部材70は、側壁部71と、該側壁部71の中央部分に設けられた窪み部72と、該側壁部71から延出する二本のパイプ管73を有し、第二綴じ部材75は、側壁部76と、該側壁部76の中央部分に設けられた窪み部77と、該側壁部76から延出する足管78を有している。足管78がパイプ管73に挿入されることで、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされ、そしてその組み合わされた状態で、ベース部材61のそれぞれの側壁部61bに第一綴じ部材70の側壁部71と第二綴じ部材75の側壁部76が設置されることで、ベース部材61のそれぞれの綴込爪部61aが、第一綴じ部材70の窪み部72と第二綴じ部材75の窪み部77に引っ掛かり、図6Aに示す状態に至る。なお、この第一綴じ部材70、第二綴じ部材75、ベース部材61の組合せによる綴じ具の形成は、従来からの技術による。
ここで、ベース部材61のベースプレート61c上には、複数種類の孔部等が設けられている。先ず、ベースプレート61cの中央部分に、該ベースプレート61cの長手方向に延びる突状部65が設けられている。この突状部65は、ベースプレート61cを裏面側から表面側に向かって盛り上げて形成される。そして、この突状部65を挟んで、左右それぞれに2個ずつ且つ該突状部65に沿って爪付位置決め孔部62が設けられる。この爪付位置決め孔部62は概ね矩形形状をしているが、図6Aに示すその上下の辺においては、ベースプレート61cの一部を裏側に折り曲げることで形成される位置決め爪63が設けられている。この結果、図6Bに示すように、位置決め爪63は、ベースプレート61cの裏面から垂直に立設された状態となる。
次に、図6Aにおいて、スライド突状部65の右側に位置する二つの爪付位置決め孔部62の間に、位置決め孔部64が設けられている。この位置決め孔部64は、ベースプレート61cを貫通する略矩形状の孔部であり、上述した固定装置1における第一スライド部材10の位置決め突起部21と第二スライド部材30の位置決め突起部41とに対応する。
更に、ベースプレート61cには、スライド突状部65の延長上に、且つ該スライド突状部65を挟んで両側に、該ベースプレート61cの貫通孔として形成される係合孔部66と係合時位置決め孔部(本発明の第二被嵌合部に相当する。)67が設けられている。係合孔部66は略矩形状の貫通孔であり、この係合孔部66を挟んでベースプレート61cの長手方向に二つの係合時位置決め孔部67が、該係合孔部66と連通するように設けられている。これらの係合孔部66と係合時位置決め孔部67は、上記係合爪22、23、42、43の位置決め片に対応する。
次に、ファイル本体80の構成について、図7に基づいて説明する。ファイル本体80の背表紙部80aにおいて、綴じ具60が固定されるべき位置にそれを位置決めするために、ファイル側位置決め孔部82が四つ設けられている。このファイル側位置決め孔部82は、矩形状の貫通孔であり、その一つに対して、綴じ具60側の一つの爪付位置決め孔部62が有する二つの位置決め爪63が嵌り込むように配置されることで、綴じ具60の背表紙部80a上への位置決めが行われる。
そして、その綴じ具60の位置決めが行われた状態で、綴じ具60側の係合孔部66と係合時位置決め孔部67に対応する背表紙部80aの位置に、貫通孔であるファイル側係合孔部86とファイル側係合時位置決め孔部(本発明の第二被嵌合部に相当する。)87が設けられている。したがって、ファイル側係合孔部86は略矩形状の貫通孔であり、このファイル側係合孔部86を挟んで背表紙部80aの長手方向に二つのファイル側係合時位置決め孔部87が、該ファイル側係合孔部86と連通するように設けられている。
このように構成される固定装置1を用いて、綴じ具60をファイル本体80に固定するための流れについて、図8A〜図8Gに基づいて説明する。図8Aは、ファイル本体80に対して上述のように綴じ具60を位置決め配置した状態を示している。なお、本実施形態に係る固定装置1は、ファイル本体80の内側(綴じられる書類等が位置する側)に綴じ具60を固定するものであり、ユーザによる該固定装置1による綴じ具60の固定作業も、ファイル本体80の内側からのみ行われる。なお、図8Aに示す状態は、ファイル本体80、綴じ具60、固定装置1の相対関係を把握しやすいように、ファイル本体80の外側から俯瞰し、且つ該ファイル本体80を透明な状態で記載している。
図8Aに示す状態では、ファイル本体80のファイル側位置決め孔部82に、綴じ具60の位置決め爪63が嵌り込んでいる。なお、図においては当業者の理解のために位置決め爪63を強調して記載しているが、この位置決め爪63はファイル側位置決め孔部82に嵌り込んでこんでいる状態では、その孔部から背表紙部80aの表側には飛び出してはいない。そして、図からも分かるように、綴じ具60側の係合孔部66と係合時位置決め孔部67が、ファイル本体80側のファイル側係合孔部86とファイル側係合時位置決め孔部87にそれぞれ対応して重なった状態となっている。また、図8Aにおいて、綴じ具60の位置決め孔部64が記載されているが、綴じ具60がファイル本体80に対して位置決めされた状態では、ファイル本体80の外側からこの状態を俯瞰するとこの位置決め孔部64は背表紙部80aによって覆われた状態になる。
なお、図8Aに示された固定装置1は、上述した係合解除状態に置かれた上で、隣接している一対の係合爪23、42と、同様に隣接している一対の係合爪22、43が、ファイル本体80の内側から、上述のように重ねられた状態にある係合孔部66とファイル側係合孔部86に挿入されるべく一点鎖線で示すように位置合わせされている。したがって、固定装置1は、裏返された状態となっている。
そして、重ねられた状態にある係合孔部66とファイル側係合孔部86に、係合解除状態にある固定装置1の各係合爪22、23、42、43が挿入された状態が、換言すると各係合爪を構成する挿入片22b、23b、42b、43bがファイル本体80の内側から両孔部に挿入されるようにユーザによって固定装置1が操作された状態が、図8Bに断面図として示されている。なお、この状態では、ロック部材36、37は一対の係合爪の間に広がる所定の挿入空間が形成されていないため、図に示すように、各スライド部材10、30に対して立設した状態となっている。また、図8Bに示す状態をファイル本体80の外側から見た図が、図8Cに示されている。図8Cに示すように、ファイル側位置決め孔部82には綴じ具60の位置決め爪63が嵌り合っており、また二つあるファイル側係合孔部86に対しては、対をなす係合爪22、43および23、42のそれぞれがただ挿入された状態となっており、各係合爪とファイル本体80との係合は行われていない。したがって、このときは、ファイル側係合時位置決め孔部(第二被嵌合部)87にも、各係合爪の位置決め片が嵌り合っていないため、図8Cに示すようにファイル本体80の外側からファイル側係合時位置決め孔部(第二被嵌合部)87を視認することができる。
そして、固定装置1を図8A〜8Cに示す係合解除状態から図8D及び8Eに示す係合状態に移行させることで、該固定装置1による綴じ具60のファイル本体80への固定が行われることになる。図8Dは、図8Aと同様に、ファイル本体80の外側から、固定装置1が係合状態となることで綴じ具60がファイル本体80に固定された状態を示す。図8Dに示す状態では、固定装置1を構成する第一スライド部材10と第二スライド部材30が相対的スライドを行うことで、対をなす係合爪の爪間距離が最大とされる。これにより、各係合爪の係合片22a、23a、42a、43aと各スライド部材10、30との間に重なり合った綴じ具60とファイル本体80が挟まった状態となり、以て各係合片によるファイル本体への係合が行われる。そして、このように固定装置1が係合状態に至ったとき、対をなす係合爪間には、図8Dに示すように各ロック部材のための挿入空間が形成される。
また、固定装置1が係合状態に至るとき、各係合爪の位置決め片22c、23c、42c、43cは、重ねられた状態にある係合孔部66とファイル側係合孔部86の領域から、同様に重ねられた状態にある係合時位置決め孔部67とファイル側係合時位置決め孔部87に挿入されることになる。なお、代表として係合爪22について、その位置決め片22cがファイル側係合時位置決め孔部87に挿入された状態を図9に示しているので、参照されたい。このように係合爪22に設けられた位置決め片22cが、ファイル側係合時位置決め孔部87に挿入されることで、固定装置1が係合解除状態から係合状態に至るときに、重なり合った状態にある綴じ具60及びファイル本体80に対して、固定装置1を常に決められた所定の位置に導き、その所定の位置でファイル本体80と各係合爪との係合を行わせることができる。そのため、固定装置1による綴じ具60の固定が、安定的に且つ確実に行われる。また、この構成により、ファイル背表紙上における係合方向とは異なる方向における固定装置1の相対位置を一定にすることもできる。さらに、固定装置1に対して当該係合方向とは異なる方向の力が加わった場合などでも、係止爪22から綴じ具60やファイル本体80と当該方向における接触面積が大きいため、ファイル本体80等への衝撃を分散させることができる。特にファイル本体80は、一般に紙等で作成されることが多いため、このような力が加わった場合に係止爪22によって破損してしまうことがあり、また係止爪22の強度等によっては係止爪22が破損してしまうことがあるが、それを好適に防止できる。
なお、位置決め片22cが、ファイル側係合時位置決め孔部87に挿入されることで、位置決め片22cの側面とファイル側係合時位置決め孔部87の内側面とが接触する。その結果、固定装置1とファイル本体80との接触部分の接触面積が増すことから、該接触部分の負荷の分散が図られ、例えば、ファイル本体80におけるファイル側係合孔部86の損傷を防止することができる。また、固定装置1、綴じ具60、ファイル本体80の固定後においても、位置決め片22cは、ファイル側係合時位置決め孔部87と接触(嵌合)し続ける。したがって、位置決め片22は、固定状態を保持する機能も担う。
そして、図8Dに示す固定装置1、綴じ具60、ファイル本体80の固定状態の断面図を図8Eに示し、更に図8Cと同様にファイル本体80の外側から該固定状態を見たときの状態を図8Fに示す。これらに示す状態では、対をなす係合爪22と43の間に、また係合爪23と42の間にそれぞれ対応するロック部材37、36が挿入されるべき挿入空間が形成されている。そこで、図8Gに示すように、各ロック部材37、36をヒンジ結合部分を軸として回転移動させて該挿入空間に対して挿入することで、固定装置1における第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドを制限させる。これにより、各係合爪がファイル本体80と係合する状態が維持され、以て各係合爪による綴じ具60及びファイル本体80の係合状態が継続されることになる。
ここで、図10A〜図10Cに基づいて、代表としてロック部材36による上記相対的スライドの制限の様子について説明する。図10Aは、係合状態にある固定装置1における、第二スライド部材30側の操作部38近傍の拡大図を示す。第一フレーム部材10の横フレーム14cに沿って、貫通領域15c側に傾斜する傾斜部14dが設けられている。また、第二スライド部材30にヒンジ結合されたロック部材36には、第一板部36aの縁に沿って、該第一板部36aを面取りされるように形成される傾斜部36eが設けられる。
そこで、係合状態にある固定装置1において、ロック部材36を所定の挿入空間に挿入させるべく、該ロック部材36を回転移動させる。すると図10Aに示す状態の断面図である図10Bで示されるように、第一スライド部材10側の傾斜部14dとロック部材36側の傾斜部36eが接触する。両傾斜部の傾斜面は、ロック部材36が挿入空間に導かれやすくなるように形成されているため、当該接触後、ユーザが若干の力をロック部材36に加えることで、両傾斜部に促されながら、第一スライド部材10と第二スライド部材30との間で弾性変形が生じ、その結果ロック部材36は円滑に挿入空間の中に収められる(図10Cに示す状態)。なお、図10Cに示す状態では、ロック部材36の接触部36cが、第一スライド部材10側の係合爪23の挿入片23bに接触した状態となり、且つ該ロック部材36の第二板部36bの先端部分(第一板部36aと繋がっていない部分であって該第一板部36aの反対側端部)が、第二スライド部材30側の係合爪42の挿入片42bに接触した状態となっている。すなわち、係合爪23と係合爪42との間にロック部材36が嵌まり込むことで、両係合爪の相対的な動き、すなわち、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドを制限することになる。また、ロック部材37についても、ロック部材36の場合と同様に、係合爪22と係合爪43の相対的な動きを制限することができる。
ここで、図11に基づいて、固定装置1における各係合爪の形状について説明する。なお、図11においては、代表的に係合爪23及び係合爪42を記載しているが、同様の技術的思想が係合爪22、43にも適用される。各係合爪が図8D〜8Fで示すように綴じ具60及びファイル本体80に係合する際に、各係合片がファイル本体80等に接触し各係合片と各スライド部材との間にファイル本体80等が円滑に挟まれるように、対をなす係合爪23、42の係合片23a、42aの先端部分には、傾斜部23a1、42a1が設けられている。これにより、図8B、Cに示す状態から図8D〜8Fに移行させるべく、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドが容易となる。
そして、このように構成される固定装置1では、重なり合った綴じ具60の係合孔部66およびファイル本体80のファイル側係合孔部86に対して挿入される、対をなす係合爪23、42は、それぞれの係合方向が互いに逆方向となっている。本実施例の場合は、ファイル本体80を基準とすると、ファイル本体80の天地方向において、係合爪23、42の係合方向は互いに逆向きとなる。この点については、対をなす係合爪22、43についても同様である。
このように、重なり合った一つの係合孔部66およびファイル側係合孔部86に対して挿入された係合爪の係合方向が互いに異なり、好ましくは互いに逆方向となることで、ファイルの落下等によって綴じ具60の固定部分に外力が作用したとき、その外力の向きにかかわらず、固定装置1による綴じ具60の係合状態を良好に維持することが可能となる。ファイル本体80に対して片側からの操作のみで着脱可能な固定装置では、わずかな衝撃や綴じている書類等の重さによって固定装置が変形するなどして係合爪がファイル側係合孔部から抜け落ちてしまう(係合が勝手に解除されてしまう)可能性が極めて高いのに対し、本構成を採用すれば、一つのファイル側係合孔部に挿入された一方の係合爪に対して上記作用が働いても、他方の係合爪にはそれと反対の作用(締め付ける作用/係合力を強める作用)が働くため、「一つのファイル側係合孔部に対する固定装置の係合力」はどのような場合であっても良好に働くからである。したがって、係合爪の係合方向は、好ましくは、一方に係合解除方向の力が加わったとしても他方に係合強化方向の力が加わるように、互いに逆方向とされる。本実施例のようにファイル本体80の天地方向において互いに逆向きとすることで、実用的なファイルの使用時における落下や、特に書庫等に立て掛けられて収納される場合など、一方の係合爪に対して係合解除方向の力が加わりやすく、従来提案されてきた「片側からのみのアクセスで綴じ具のファイル本体に対するアクセスを可能にする技術」では固定装置が抜け落ちてしまい実用化に至らない原因となっていた問題を解決した上で、係合爪の大きさや形状の設計自由度をより高めることができるため、綴じ具60のファイル本体80への固定をより確実なものとすることができる。
次に、本実施形態に係る固定装置1での位置決め突起部21と41の機能について、図12A〜12Cに基づいて説明する。図12Aは、係合解除状態にある固定装置1と綴じ具60との相対関係をファイル本体80の外側から見たときの状態を示している。また、図12Cは、係合状態にある固定装置1と綴じ具60との相対関係をファイル本体80の外側から見たときの状態を示しており、更に図12Bは、図12Aと図12Cに示す状態の中間状態、すなわち、固定装置1において第一スライド部材10と第二スライド部材30の位置が、係合位置と係合解除位置との中間の位置となっている状態を示している。このように、図12A〜図12Cの各図は、各係合爪によるファイル本体80への係合状態と、第一スライド部材10及び第二スライド部材30の綴じ具60に対する相対位置とが連動している様子を示すものであり、以下にその詳細を説明する。なお、図12A〜12Cにおいては、ファイル本体80は二点鎖線で透明状態に記載されている。
ここで、固定装置1が係合解除状態にあるとき、図12Aに示すように、綴じ具60の位置決め孔部64の中に収められる位置決め突起部21、41について、該位置決め突起部21が位置決め孔部64の上側の辺64aに接触し、位置決め突起部41が位置決め孔部64の下側の辺64bに接触していることで、係合解除状態を形成する第一スライド部材10と第二スライド部材30の綴じ具60に対する相対位置が一義的に決定される。そして、このとき対をなす係合爪22、43、及び係合爪23、42は、それぞれに対応する係合孔部66等に対して接触していない状態である。
以上より、固定装置1側の位置決め突起部21、41と綴じ具60側の位置決め孔部64との相関関係によって、固定装置1が係合解除状態とされるときには、各係合爪が、対応する係合孔部66に対して非接触状態となるように、各位置決め突起部と各位置決め孔部によって、固定装置1と綴じ具60との相対位置関係が一義的に決定されることになる。その結果、ユーザは、第一スライド部材10と第二スライド部材30を操作して固定装置1を係合解除状態とすると、必然的に各係合爪が係合孔部66等に対して非接触状態とされるため、固定装置1を綴じ具60から容易に抜き出すことが可能となる。これは、綴じ具60をファイル本体80から取り外すときの、ユーザの作業性向上に大いに資するものである。
また、係合解除状態にある固定装置1を係合状態に移行させたときは、図12Bに示すように位置決め突起部21、41が、位置決め孔部64の何れの辺64a、64bにも接触しない状態を経て、図12Cに示す状態に至る。このときは、位置決め突起部21が位置決め孔部64の下側の辺64bに接触し、位置決め突起部41が位置決め孔部64の上側の辺64aに接触している。これによって、係合解除状態の場合と同様に、係合状態においても、固定装置1と綴じ具60との相対位置関係が一義的に決定されることになる。
なお、本実施例では、図12A〜図12Cに示すように、一つの位置決め孔部64に対して、各スライド部材に設けられた二つの位置決め突起部21、41が収められているが、これに代えて、各位置決め突起部に対応する位置決め孔部をそれぞれ綴じ具60側に設けるようにしてもよい。また、各スライド部材側に位置決め突起部を設ける代わりに、綴じ具60側に各スライド部材に対応する位置決め突起部を立設させるとともに、それらの位置決め突起部が収められる位置決め孔部を、各スライド部材側に設けるようにしてもよい。すなわち、位置決め突起部と位置決め孔部の配置については、各スライド部材による相対的スライドに連動して、各スライド部材に設けられた係合爪の綴じ具に対する相対位置が適切に決定される範囲において、綴じ具60及び各スライド部材の何れかに適宜配置し得る。
次に、本実施形態に係る固定装置1でのスライド突起部13とスライド溝部32の機能について、図13A及び13Bに基づいて説明する。図13Aは、係合状態にある固定装置1において、各係合爪の状態と、スライド突起部13及びスライド溝部32との関係を示し、図13Bは、係合解除状態にある固定装置1において、各係合爪の状態と、スライド突起部13及びスライド溝部32との関係を示す。なお、図13A、13Bのうち左側は固定装置1の上面図であり、右側はその断面図である。
上述したように、固定装置1において係合位置と係合解除位置との間でユーザの操作により相対的スライドが行われると、第一スライド部材10に設けられたスライド突起部13は、突起部33を乗り越えながらスライド溝部32内の分割領域32aと32bの間を行き来する。ここで、図13Aに示すように分割領域32aは、スライド突起部13をほぼ隙間無く収容する形状を有している。これにより、固定装置1が係合状態にあるときは、ロック部材36、37によって上記相対的スライドが制限されていない場合であっても、スライド突起部13が突起部33によってスライド溝部32内での移動が制限されるため、該スライド突起部13が突起部33を乗り越える外力が作用しない限り、第一スライド部材10と第二スライド部材との相対位置関係は維持されることになる。したがって、仮にロック部材36、37の挿入空間への挿入が不十分であっても、綴じ具60のファイル本体80への固定はある程度維持されることになる。
一方で、図13Bに示すように分割領域32bの形状は、スライド突起部13を収容したとき該スライド突起部13がまだある程度スライド可能な程度に余分な隙間を有する形状である。すなわち、分割領域32bは分割領域32aよりも広く、その分割領域32b内という限られた範囲で、スライド突起部13はある程度スライドできる。この結果、今から綴じ具60をファイル本体80に固定しようとする状態(例えば、図8Aに示す状態)では、固定装置1を操作しようとするユーザは、第一スライド部材10と第二スライド部材30とが上記限られた範囲でのスライドを行うことができることを触感によって感じることで、固定装置1が係合解除状態にあることを認識することができ、以てユーザのその後の作業を円滑に行うことができる。換言すると、今から綴じ具60をファイル本体80に固定しようとするときに、ユーザが触感にて第一スライド部材10と第二スライド部材30との上記限られた範囲でのスライドを感じることができない場合には、固定装置1が係合解除状態ではなく係合状態になっているため、直ちに係合解除状態に変更した後、綴じ具60の固定作業へと円滑に移行することができる。
また、上記実施例とは異なり、分割領域32bの形状を、分割領域32aと同様に、スライド突起部13をほぼ隙間無く収容する形状としてもよい。この場合は、固定装置1が係合解除状態にあるときでも、スライド突起部13が突起部33によってスライド溝部32内での移動が制限されるため、該スライド突起部13が突起部33を乗り越える外力が作用しない限り、第一スライド部材10と第二スライド部材との相対位置関係は維持されることになる。したがって、固定装置1を重ねられた係合孔部66等に挿入/抜き出ししようとするとき各係合爪が動かないため、各係合爪が係合位置等にずれて配置されてしまうなどして綴じ具に引っかかってしまい着脱作業が阻害されてしまうといったことを防止することもできるため、ユーザの作業性が向上するとも言える。このように第一スライド部材10と第二スライド部材30との係合解除状態を維持できるようにすれば、固定装置1を係合孔部66等に挿入する際に各係合爪が綴じ具に引っかかることなく容易に装着することも可能となる。
次に、スライド突状部65の機能について図14に基づいて説明する。図14は、係合状態にある固定装置1と綴じ具60を、ファイル本体80に取り付けられた状態での該ファイル本体80の外側から見た状態を、スライド突状部65を中心として記載した図であり、その際固定装置1の裏側の様子が把握しやすいように、該スライド突状部65周辺のベースプレート61cを切断した状態で表している。
ここで注視すべきは、綴じ具60のスライド突状部65に対する、第一スライド部材10に設けられたスライド凹部24と第二スライド部材30に設けられたスライド凹部46(例えば、図3Bを参照。)の相関関係である。具体的には、固定装置1による綴じ具60の固定が行われる場合には、両スライド凹部が、それぞれの窪み形状がスライド突状部65を覆いかぶさるように、固定装置1と綴じ具60の相対位置関係が決定されている。すなわち、上述したように位置決め突起部21、41が位置決め孔部64に挿入された係合解除状態においても、又図14に示すように固定装置1が係合状態に置かれるときでも、両スライド凹部の窪み形状はスライド突状部65を覆いかぶさっている。
したがって、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドが行われるときは、各スライド部材のスライド凹部が、綴じ具60のスライド突状部65の上を、該スライド突状部65の延在方向に滑っていくことになる。換言すると、ユーザが第一スライド部材10と第二スライド部材30を操作して相対的スライドを行わせるとき、スライド突状部65は該相対的スライドのガイドとして機能する。そのため、ユーザが、両スライド部材を係合位置又は係合解除位置に至らしめることが、より円滑に行われることになり、以てユーザの作業性が向上する。
ここで、第二スライド部材30は、図3Aに示すように、実質的に第一スライド部材30の上側に配置された状態で、上記相対的スライドを行うものである。しかし、第二スライド部材30が上側に位置することにより、使用するユーザによっては操作部16と18を把持して各スライド部材を持ち上げようとする動作を行う可能性がある。勿論、この持ち上げ動作によっては両スライド部材は相対的スライドを行うことができないが、ユーザの力が大き過ぎるとこの持ち上げ動作によって固定装置1が破損してしまう可能性がある。固定装置1が係合解除状態にあるときは、各係合爪はファイル本体80等と係合はしてはいないため、仮にユーザが持ち上げ動作を行ったとしても、固定装置1が係合孔部66等から引き出されるだけで、固定装置1の破損へと至る可能性は低い。
しかし、固定装置1が係合状態にあるときは、各係合爪はファイル本体80と係合しているため、ユーザが持ち上げ動作を行ってしまうと第一スライド部材10と第二スライド部材30との組合せが外れ、固定装置1が破損してしまう可能性が高い。そこで、本実施形態に係る固定装置1では、それが係合状態にあるときに、ユーザの操作が行われる操作部38の隣接した部位に、仮に第一スライド部材10と第二スライド部材30とに対して持ち上げ動作が行われたときに両者が互いにその持ち上げ動作を阻害し合う構成が、第二スライド部材30の平面突出部40と、第一スライド部材10の上側縦フレーム12の端部12aによって提供されており、その状態の詳細を、図15に示す。
図15Aからも明確に分かるように、係合状態にある固定装置1においては、第二スライド部材30は第一スライド部材10の上側に位置しているが、該第二スライド部材30側の操作部38に隣接して設けられている平面突出部40は、第一スライド部材10側の上側縦フレーム12の端部12aの下に潜り込んだ状態となっている。したがって、図15Aに示す状態で、ユーザが固定装置1に対して操作部38を介して持ち上げ動作を誤って行ってしまっても、直ちに平面突出部40が端部12aと引っ掛かり、ユーザに対して違和感を与えることができる。その結果、ユーザの誤操作によって操作部38が不用意に上側に持ち上げられてしまうのを回避することが可能となる。
<変形例>
本実施形態に係る固定装置の実施例の開示は、上述した実施例に限られない。すなわち、一つの係合孔部66等に挿入される係合爪の係合によるファイル本体の係合方向が、少なくとも異なる二つの方向に設定される固定装置である限り、本実施形態に係る固定装置の実施例である。したがって、例えば、一つの係合孔部66等に挿入される係合爪の数は三つ以上でも構わない。また、一方の係合孔部66等に挿入される係合爪の数が二つ以上であれば、もう一方の係合孔部等に挿入される係合爪は、一つであってもよい。更には、一つの係合孔部66等に挿入される係合爪の数が一つであり、もう一方の係合孔部66等に挿入される係合爪の数が一つであっても、それぞれの係合爪によるファイル本体80の係合方向が異なる限り、本発明の固定装置の範疇に含まれる。すなわち、2つの係合孔部66等の対を以て、一つの係合孔部等と考えればよい。
なお、上述においては綴じ具60やファイル本体80に設けられる係合孔部66等の数は二つであることを前提としているが、当然にその数は二つに限られるものではなく、一つの場合や三つ以上の場合でも、本実施形態に係る固定装置1の範疇に含まれる。
また、ロック部材36、37のように相対的スライドを行う二つのスライド部材の動きを制限する構成は、必ずしも本実施形態に係る固定装置として必要な構成ではない。少なくともスライド部材が係合位置に至ったときに、ファイル本体80との係合状態が維持され綴じ具60がファイル本体80に固定されればよい。当然に、ロック部材を設ける場合でも、その数は二つに限定されるものではなく、相対的スライドを行うスライド部材の動きを制限できる適切な数であれば、一つでもよく、また三つ以上でもよい。
更には、位置決め突起部21、41及び位置決め孔部64による固定装置1の位置決めに関する技術的思想、スライド突起部13及びスライド溝部32によるスライド部材10、30の係合状態等の係合に関する技術的思想、スライド凹部24、46及びスライド突状部65による相対的スライドのガイドに関する技術的思想、平面突出部40と上側縦フレーム12の端部12との引っ掛かりに関する技術的思想については、出願人は上記実施例において一堂に開示しているが、これらは適宜組み合わせてもよく、それらの任意の組合せも出願人の開示の範囲に含まれる。また、上記した各技術要素や以下に記す各技術要素は、それぞれ発明であって、それぞれ単独でも十分に作用効果を奏するものであり、また、組み合わせれば単なる作用効果の積み重ねではない優れた作用効果を奏するものであることは言うまでもない。
また、位置決め片についても上述した構成に限定されるものではない。ここで、図15Bは、変形例に係る係合爪の側面図を示す。図15Cは、変形例に係る係合爪の断面図を示す。これらの図に示すように、変形例に係る係合爪22においては、位置決め片22c’の幅が自由端部側(紙面左側)に向かって徐々に狭くなるように設計されている。なお、位置決め片が有する位置決め機能や固定状態の保持機能を発揮させるべく、係合時位置決め孔部67’およびファイル側係合時位置決め孔部87’の形状も変形例に係る位置決め片22c’の形状に対応させることが好ましい。図15Dは、変形例の綴じ具の構成を示す。図15Eは、変形例のファイル本体の構成を示す。このように位置決め片22c’の幅を自由端部側に向かって同じか細い厚みになるように徐々に狭くすることで、位置決めする際の精度をより向上することが可能となる。
また、上述した実施例では、位置決め片22cが、横フレーム14aと係合片22aとの双方に接続されており、位置決め片22cが挿入されると、係合時位置決め孔部67およびファイル側係合時位置決め孔部87の双方と接触(嵌合)した。つまり、固定装置1、綴じ具60、ファイル本体80との間での相対的な位置決めが実現された。但し、位置決め片22cの態様を工夫することで、例えば、綴じ具60に対する位置決めのみ、若しくは、ファイル本体80に対する位置決めのみを実現することも可能である。ここで、図15Fは、綴じ具60に対する位置決めのみを行う位置決め片を有する係合爪を示す。この変形例に係る位置決め片22c’’は、横フレーム14aと接続され、係合片22aとは接続されていない。したがって、位置決め片22’’を挿入した場合、係合時位置決め孔部67とのみ接触(嵌合)する。すなわち、位置決め片22’’によれば、綴じ具60に対する相対的な位置決めが実現される。また、図15Gは、ファイル本体80に対する位置決めのみを行う位置決め片を有する係合爪を示す。この変形例に係る位置決め片22c’’’は、係合片22aと接続され、横フレーム14aとは接続されていない。したがって、位置決め片22’’’を挿入した場合、ファイル側係合時位置決め孔部87とのみ接触(嵌合)する。すなわち、位置決め片22’’によれば、ファイル本体80に対する相対的な位置決めが実現される。
また、上記した各技術要素や以下に記す各技術要素は、それぞれ発明であって、それぞれ単独でも十分に作用効果を奏するものであり、また、組み合わせれば単なる作用効果の積み重ねではない優れた作用効果を奏するものであることは言うまでもない。
本発明に係る固定装置の更なる実施例を、第十の実施例として、図49〜図51に基づいて説明する。図49は、本実施例に係る固定装置2000の構成を示すとともに、それにより固定される綴じ具2060とファイル本体との関係を示す図である。また、図50は、固定装置2000によって固定された綴じ具2060とファイル本体2080をファイル本体2080の外側から俯瞰した図であり、図51はその固定状態に断面を示す図である。なお、固定装置2000は、上記実施例に示す固定装置1等と比べて書類等の綴じる量が比較的少ない綴じ具2060をファイル本体2080に綴じるために特に好適に用いられるが、本実施例で示される技術的思想は、綴じられる書類等の量に依存するものではない。
図49に示すように、固定装置2000によって、ファイル本体2080に綴じ具2060が固定される。ここで、固定装置2000、綴じ具2060、ファイル本体2080の概略的な構成を示すと、固定装置2000は樹脂材料を一体成型することで形成され、ファイル本体2080は、ファイルとして使用されるときの背表紙に相当する背表紙部2080aと、表表紙に相当する表表紙部2080bと、裏表紙に相当する裏表紙部2080cを有し、各表紙部間は、折り曲げ形成される。また、綴じ具2060は、ベース部材2061、第一綴じ部材2070、第二綴じ部材2075を有しており、第一綴じ部材2070と第二綴じ部材2075が組み合わされた状態でベース部材2061に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われることになる。
図49に示すように本実施例においては綴じ具2060をファイル本体2080に固定するためには当該固定装置2000が二台使用される。具体的には、後述するように綴じ具2060のベースプレート2061cの天地方向における両端部近傍に設置され、したがって該ベースプレート2061cの中央部分は二台の固定装置2000によって占有されない構成となっている。
ここで、固定装置2000は、平板状の本体板部2001と、その先端部分に設けられた係合爪2023と、該本体板部2001の後方に設けられた係合爪2022と、本体板部2001の後端部分において該本体板部2001に対して上方に折れ曲がった形状となるように設けられた平板状の操作部2002と、を有している。更に、本体板部2001と操作部2002との接続部位近傍の、該本体板部2001の下面側に、該本体板部2001の横方向に延びる突起状のロック用突状部2003が設けられている。
ここで、係合爪2022、2023は、上記実施例1等に示す係合爪22等と機能的に同一となる構成を有する。すなわち、係合爪2022及び係合爪2023は、それぞれ上記係合片22aに相当する係合片2022a、2023aを有し、上記挿入片22bに相当する挿入片2022b、2023bを有し、上記位置決め片22cに相当する位置決め片2022c、2023cを有する。なお、係合爪2023には、更に、挿入片2023bと位置決め片2023cとを上方から覆うように接続され、本体板部2001と面一となる板状の上板部2023dが設けられている。また、一つの固定装置2000においては、係合爪2022と係合爪2023の係合方向は同一方向であるが、二台の固定装置2000を使用して、綴じ具206とファイル本体2080の固定を行うと、図に示すように一方の固定装置2000による係合方向と、他方の固定装置2000による係合方向とが異なり(本実施例の場合は互いに反対方向となる)、その結果、全体として、より強固な綴じ具2060等の固定が実現され得る。
次に、綴じ具2060の構成について説明する。綴じ具2060は、第一綴じ部材2070と第二綴じ部材2075が組み合わされ、それをベース部材2061に取り付けられることで形成される。ベース部材2061は、二つの側壁部2061bと、該側壁部2061bのそれぞれに設けられた綴込爪部2061aと、ファイル本体2080と接触することになるベース部材としてのベースプレート2061cを有する。なお、また、第一綴じ部材2070と第二綴じ部材2075については、機能的には上述までの第一綴じ部材70と第二綴じ部材75等と同じであるから、それに関する詳細な説明は割愛する。
ここで、ベース部材2061のベースプレート2061c上には、複数種類の孔部等が設けられている。ベースプレート2061cの中央部分を挟んで上下方向(ファイル本体の天地方向に対応する方向)に、且つ該ベースプレートの中央部分を避けるように、係合孔部2066と係合時位置決め孔部2067によって形成される該ベースプレート2061cの貫通孔が、該中央部分を挟んで鏡像関係となるように2個設けられている。この係合孔部2066は略矩形状の貫通孔であり、係合時位置決め孔部2067は、係合孔部2066の上下方向の辺のうちベースプレート2061cの中央部分側の辺に、該係合孔部2066と連通する貫通孔である。この係合時位置決め孔部2067は、上記係合爪2023の位置決め片2023cに対応するものである。
また、二つの係合孔部2066の間には、ベースプレート2061cの一部がその側に折り曲げられることで形成される二つの貫通孔2062が設けられる。このとき、折り曲げ片が、綴じ具2060をファイル本体上に配置するとき、その位置決め機構として機能するべく、位置決め爪2063となる。この位置決め爪2063は、ベースプレート2061cの裏面から垂直に立設された状態となる。したがって、これら貫通孔2062、位置決め爪2063は、上記の爪付位置決め孔部62、位置決め爪63に相当する。
また、ベースプレート2061cの上下方向の二辺に、それぞれ、切り欠いて形成され上記係合時位置決め孔部2067と同じ方向に延在する位置決め切り欠き部2068が設けられている。この位置決め切り欠き部2068は、上記係合爪2022の位置決め片2022cに対応するものである。
次に、ファイル本体2080の構成について説明する。ファイル本体2080の背表紙部2080aには、固定装置2000の係合爪2022、2023が挿入されるファイル側係合孔部2086a、2086bが設けられている。ファイル側係合孔部2086a、2086bは、背表紙部2080aの中央部分に対して、その天地方向に沿って鏡像関係に配置されている。したがって、以下では片側のファイル側係合孔部2086a、2086bについて説明する。
背表紙部2080aの中央部分寄りに配置されるファイル側係合孔部2086aは略矩形状の貫通孔である。更に、その天地方向の辺のうち該中央部分側の辺には、綴じ具2060側の係合時位置決め孔部2067に対応し、それと同様に天地方向に延在する貫通孔であるファイル側係合時位置決め孔部2087aが設けられている。同様に、上記ファイル側係合孔部2086aよりも外側に配置されるファイル側係合孔部2086bも略矩形状の貫通孔である。更に、その天地方向の辺のうち該中央部分側の辺には、綴じ具2060のベースプレート2061cの端部に位置する位置決め切り欠き部2068に対応し、それと同様に天地方向に延在する貫通孔であるファイル側係合時位置決め孔部2087bが設けられている。ここで、ファイル側係合孔部2086a、2086bの形状は概ね同じであり、またファイル側係合時位置決め孔部2087a、2087bについては、固定装置2000の各係合爪の位置決め片2022c、2023cの長さ(係合方向における奥行き)に対応し、両孔部の天地方向の長さは概ね同じである。
また、背表紙部2080aの中央部分には、上述した位置決め爪2063に対応するファイル側位置決め孔部2082が二つ設けられている。このファイル側位置決め孔部2082は矩形状の貫通孔であり、その天地側の両辺に各貫通孔2062に設けられた二つの位置決め爪2063が接触することでファイル本体2080に対する綴じ具2060の配置位置を位置決めする。
そこで、ファイル本体2080上に位置決めされた綴じ具2060の、固定装置2000による固定方法について以下に説明する。図50には、位置決め爪2063とファイル側位置決め孔部2082とによって、ファイル本体2080上に綴じ具2060が位置決めされ、その状態で固定装置2000による固定が行われた状態が示されている。また、図51は、図50に示す状態の断面図(B−B断面図)である。
位置決め爪2063とファイル側位置決め孔部2082とによって、ファイル本体2080と綴じ具2060が重ねられた状態となることで、ファイル側係合孔部2086aと係合孔部2066とが重なって、ファイル本体2080の外側と内側との間を連通し、固定装置2000の係合爪2023が挿入可能な連通孔が形成される。このとき、ファイル側位置決め孔部2087aも係合時位置決め孔部2067と重なって連通した状態を形成する。更に、ファイル側位置決め孔部2087bもまた、位置決め切り欠き部2068と重なって同様に連通した状態を形成するが、ファイル側係合孔部2086bについては、その上に綴じ具2060が重なる状態には至らない。したがって、固定装置2000の係合爪2022は、このファイル側係合孔部2086bにのみ挿入される。
そして、綴じ具2000の各係合爪2022、2023を、それぞれに対応するファイル側係合孔部2086aと係合孔部2066による連通孔と、ファイル側係合孔部2086bとに、ファイル本体2080の内側から挿入し、各係合爪によるファイル本体2080との係合を実現させる。具体的には、ユーザが操作部2002を把持しながら、係合爪2023をファイル側係合孔部2086aと係合孔部2066による連通孔に挿入すると同時に、係合爪2022をファイル側係合孔部2086bに挿入する。この状態で、操作部2002を介して固定装置2000を背表紙部2080aの中央部分に向かってスライド力を付与すると、挿入片2022cとファイル側位置決め孔部2087a及び係合時位置決め孔部2067との位置決めのための嵌合関係に従いながら、且つ挿入片2023cとファイル側位置決め孔部2087b及び位置決め切り欠き部2068との位置決めのための嵌合関係に従いながら、固定装置2000がスライドする。そして、最終的に各係合爪の挿入片2023b、2022bが各孔部の縁やベースプレート2061cの縁に当接することで、固定装置2000のスライドが終了する。その結果、固定装置2000の各係合爪の係合片2023a、2022aがファイル本体2080の背表紙部2080aの外側と係合した状態となり、以て綴じ具2060は、固定装置2000とファイル本体2080に挟持され、該ファイル本体2080への固定が行われる。
ここで、固定装置2000のスライドが終了する際に、操作部2002を背表紙部2080a側に移動させると、ロック用突状部2003が滑り込むようにファイル側係合孔部2086bに挿入され、孔部2086bの天地方向の辺のうち外側に位置する辺に接触した状態となる(図50、図51を参照)。この結果、固定装置2000は、ファイル本体2080の天地方向において、各係合爪とロック用突状部2003によってスライドが規制された状態が形成されることになり、以て綴じ具2060をファイル本体2080上に確実に固定することが可能となる。そして、上述したが、このように固定装置2000の係合爪による係合方向が、固定装置2000間で異なるため、綴じ具2060の固定がより磐石となる。
なお、ファイル本体2080上に固定された綴じ具2060を取り外すためには、ファイル側係合孔部2086bに嵌りこんでいるロック用突状部2003を、操作部2002を利用して引き抜けばよい。操作部2002は、固定装置上方に折れ曲がっているため、ユーザによる引き抜き作業は困難ではない。ロック用突状部2003が引き抜かれた後は、固定装置2000を固定時とは反対の方向にスライドさせることで、各係合爪による係合状態を解除し、各係合爪を挿入されている連通孔等から引き抜けばよい。
また、図49からも分かるように、本実施例においては、綴じ具2060をファイル本体2080に固定する固定手段として、二つの固定装置2000が利用され、すなわち必要十分の大きさを有する固定装置が必要数だけ利用され、各固定装置によって効率的な固定が行われている。そのため、綴じ具2060に対して固定装置2000が占める空間の大きさをより小さくすることができ、以て綴じ具設計の視点から”デッドスペース”となってしまう空間が減り、綴じ具設計のために活用できる空間を広くすることが可能となる。言い換えると綴じ具固定のために広い空間を確保する必要がなくなるため、綴じ具の大きさが比較的小さくなっても固定装置2000は採用することが可能である。例えば、綴じ具2060の紙葉を綴じるパイプ部分の長さが短い綴じ具(したがって、対応するファイルの背表紙部の幅も狭くなる)にも、この固定装置2000は適用が可能である。
<その他の発明の開示(1)>
また、本願においては以下の発明も開示する。なお、当該開示は、本出願人の特許取得の意思を放棄したものでは決してなく、本出願人は当該意思を留保しているものである。
<技術分野>
本発明は、書類等を綴じる綴じ具をファイル本体上に着脱可能に固定するための綴じ具固定装置、及び、当該装置を用いてファイル本体上に綴じ具が固定されたファイルに関する。
<背景技術>
一般にファイル本体は紙等で形成され、綴じ具は金属等で形成されているため、ファイルを廃棄処分する際には両者を分別する必要がある。また、形成素材の違いから一般に綴じ具の方がファイル本体よりも耐久性が高いため、ファイル本体は破棄しなければいけない状態であっても綴じ具は再利用可能な場合も多く、綴じ具のみ再利用することも求められている(例えば、特許文献3を参照。)。
一方、綴じ具とファイル本体の着脱作業を容易にするため、綴じ具の着脱をファイルの内側からのみの操作で実現するための綴じ具着脱機構が提案されている。その中でも、ファイル本体に設けられた一対のファイル側孔部に挿入される一対の係合部と、係合部同士を連結する連結部とを備え、連結部にヒンジが1つ設けられた綴じ具固定装置は、連結部をファイル本体側へ押し込むだけで綴じ具のファイル本体への固定が完了する、構成・操作が単純な機構である(例えば、特許文献4を参照。)。
<特許文献3>特許第3664078号公報
<特許文献4>特開2000−153688号公報(特に0042〜0045、図11)
<発明の開示>
<発明が解決しようとする課題>
しかしながら、特許文献4に開示された従来技術では例えば以下に記すような問題点があるため実用に耐え得ない。
[問題点1]係合部によって他の物を傷つけてしまう問題
上記従来技術では、係合部をファイル側孔部等に挿通させただけの状態では、当該孔部の反対側(綴じ具固定装置の/挿通部の挿通方向側)においてファイル本体から係合部が突き出ている状態となってしまう。
そのためファイル本体を作業台においたまま作業することができなかったり、挿通部の挿通方向側に存する外部の物を傷つけてしまったりする危険性がある。
[問題点2]見出し部を設けることが困難/不可能である問題
一般にファイル本体には、綴じ具固定装置をファイル外側から視認できないようにして固定機構に解除状態の力が加わらないようにするための係合部・綴じ具固定装置保護部としての意味も込めて、綴じ具と当接する面と反対側の面に見出し片が挿入される見出し部が設けられることが多い。見出し部は通常、ファイル本体(特に背表紙部)外側に光透過性の樹脂製のシートが重ねられ、シートとファイル本体の隙間を狭く(シートによって見出し片をファイル本体側へ当接・保持できる程度に)した上で外周部がファイル本体に接着等されて形成される。
このような見出し部を設ける場合、上記のように係合爪部がファイル本体から突出すると、シートや見出し片が傷ついてしまう可能性がある。これを防止するためにファイル本体とシートとの隙間を広くすると、見出し部の見出し片保持機能が低下してしまう。一方で見出し部を設けないと、ファイル同士の区分けが困難になるだけでなく、係合部に外部の物が直接当接できてしまうため、ファイル本体に対して係合部が移動してしまい、綴じ具固定装置によるファイル本体への係合状態が勝手に解除されてしまう危険性がある。
[問題点3]綴じ具固定装置のファイル本体への着脱の困難性
上記従来技術では、綴じ具固定装置にヒンジが一つしか設けられていないため、ヒンジを基準として両係合部側はおおむね板状とする必要がある。すなわち、従来の綴じ具固定装置は、2枚の板がヒンジ結合された構造である。この構造においてファイル本体側の孔部に係合部を挿抜自在とした上で係合爪部とファイル本体側との当接面積を稼ぐためには、当該孔部の係合部のスライド方向の幅を、係合部の厚みと同程度にしなければならない(例えば、特許文献4の図11を参照。)。
したがって、このような細い線状のファイル本体側の孔部に係合部を挿入する作業は繁雑であり、しかも一対の孔部に各係合部をそれぞれ挿入する作業は極めて困難であった。
[問題点4]ファイル側の孔部にかかる負荷
上記従来技術では、綴じ具固定装置は、ファイル本体側の孔部の縁を起点に非係合状態から係合状態へ移る。したがって孔部の縁に負荷がかかってしまう。そのため、一般に紙や樹脂等で形成されるファイル本体は、孔部が広がってしまったり破損してしまったりする危険性がある。このような問題が発生してしまった場合、孔部周辺を補強したり、ファイル本体を取り替えたりしなければならなくなってしまう。
[問題点5]係合部が係合位置からずれると係合力が弱くなってしまう問題点
従来の固定装置における係合部が非係合状態から係合状態へ移る際の係合爪部先端の相対移動の軌跡はファイル本体に対して略曲線となるため、係合部は係合状態から少しでも非係合状態側へ相対移動するとファイル本体側と当接しなくなってしまう。したがって、係合部が係合位置からずれてしまったと場合、綴じ具固定装置とファイル本体との係合力が急激に弱まってしまう危険性がある。
上記した各問題は、綴じ具固定装置をファイル外側に設け、係合部が綴じ具と係合してファイル本体と綴じ具とを固定する構成においてもおおむね同様に生じる。例えば問題点1は綴じ具や綴じ具に綴じられた書類等を傷つけてしまうという問題となり、問題点2で指摘したような見出し部は設けることができなくなり、問題点3で指摘した着脱の困難性は同等である。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ファイル側に押し込む操作を行うだけでファイル本体と綴じ具とが固定される、実施化可能な綴じ具固定装置を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、上記綴じ具固定装置を用いて綴じ具とファイルとが着脱可能に固定されたファイルを提供することである。
<課題を解決するための手段>
上記目的を達成するために、綴じ具側孔部を備えた書類等を綴じる綴じ具を、ファイル本体側孔部を備えたファイル本体に固定する本発明に係る綴じ具固定装置は、ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成される一対の連通部それぞれに挿通される一対の挿通部、及び、各挿通部に設けられた、連通部内を他の連通孔とは反対方向に相対移動した際に、挿通部による挿通方向に存する綴じ具及びファイル本体の何れかと係合する係合爪部を有する係合部と、両係合部を連結する連結部と、一方の係合部から連結部を通り他方の係合部に至る線において、当該線を横切る方向に設けられた3つ以上のヒンジと、を備えている。
上記綴じ具固定装置は、係合部〜係合部間にヒンジが3つ以上存在するため、連結部をファイル本体側に押しつける方向に押し込むことと係合部が綴じ具/ファイル本体表面上をスライド移動する。すなわち、係合爪部は、上記スライド移動に伴い、被係合部材(である綴じ具及びファイル本体の何れか)の被係合面上をスライド移動する。したがって、上記した従来技術の問題点が解決されている。
例えば、上記問題点3に対し、上記綴じ具固定装置は、ファイル本体側孔部並びに綴じ具側孔部の幅は、挿通部が当該孔部内をスライド移動する長さであるため、従来と比べてこれらの孔部の幅を大きくすることができ、固定装置をファイル本体側へ装着する作業が極めて容易になる。上記問題点4に対し、上記綴じ具固定装置は、非係合状態から係合状態へ係合部を相対移動させる際に、特定の箇所のみに負荷がかかってしまうということはない。上記問題点5に対し、上記綴じ具固定装置は、係合爪部がファイル本体の表面に対してスライド移動するため、係合位置からずれてしまってもファイル本体側と当接している。したがって、係合爪部が(係合部が)係合位置からずれてしまったとしても直ちにファイル本体から綴じ具が脱落してしまう危険性を低くできる。
上記綴じ具固定装置は、例えば次のように構成することもできる。すなわち、この綴じ具固定装置は、ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成される一対の連通部それぞれに挿通される一対の挿通部、及び、各挿通部に設けられた、連通孔内を他の連通孔とは反対方向に相対移動した際に、挿通部による挿通方向に存する綴じ具及びファイル本体の何れかと係合する係合爪部を有する係合部と、各係合部とアームヒンジ部を介して連結された2つのアーム部、及び、各アーム部を連結する連結ヒンジ部を備えた連結部と、を備えている。
ここで「アームヒンジ部」並びに「連結ヒンジ部」とは、それぞれヒンジが1つ又は複数で構成された部位を意味する。例えば複数のヒンジで構成されたアームヒンジ部は、全てのヒンジによる回動方向の移動が重畳した動きが模式的に一つのヒンジに置き換えることができる。ただし、複数のヒンジによって一つのアームヒンジ部を構成すれば、当該箇所を一つのヒンジのみで構成する場合と比べて複雑な動きが許容され、綴じ具やファイル本体の形状に最適化することができるなどの利点を有する。
この綴じ具固定装置によれば、係合部が連結ヒンジ部を介してアーム部と接続されているため、ファイル本体に対するアーム部の相対角度がどのような角度であっても係合部並びに係合爪部はファイル本体表面に沿った方向に確実に向きやすい。言い換えれば、係合爪部からこれに最も近いアームヒンジ部までの距離が短いため、係合爪部のファイル本体に対する相対角度がアーム部の角度の影響を受けにくい。
上記綴じ具固定装置は、好適には、アームヒンジ部を、係合爪部が綴じ具及びファイル本体の何れかと係合している際、連結ヒンジ部を結んだ直線よりもファイル本体側に位置するようにされる。したがって、この構成では、係合部が係合状態における連結ヒンジ部間の距離よりも2つのアーム部を足しあわせた長さの方が若干長くなる。このように構成すれば、係合部(係合爪部)の係合状態を解除しようとする力が働いても、アームヒンジ部はファイル本体側へ押しつけられる方向に動くこととなる。したがって、係合状態を良好に維持できる。
上記固定装置におけるヒンジ/アームヒンジ部/連結ヒンジ部は、連結する二部材に切り込みが設けられて形成された形状のヒンジとしてもよい。当該ヒンジによって接合される両部材は、一体成型することができ、また、別体成型する場合であっても両者を接着等すれば形成できるため、綴じ具固定装置の製造が極めて容易となる。また、当該ヒンジは、これに接合されている両部材と比べてファイル本体側並びにその反対側に出っ張らない。したがって、当該ヒンジについて、これが綴じ具における書類等を綴じる機構を邪魔しないように設計するといった必要がない。
上記綴じ具固定装置における係合部は、さらに、挿通部の挿通方向とは反対側に、連通孔を挿通不能な基盤部が好適に設けられる。基盤部は連通孔を挿通できないため、係合部は、基盤部においてファイル本体等と当接した上で、挿通部が連通孔内を相対移動する。したがって、より確実に係合部(係合爪部)をファイル本体等の表面に沿って移動させることが可能となる。
上記した綴じ具固定装置によって綴じ具がファイル本体に着脱可能に固定されたファイルは、さらに、挿通部の連通孔内における相対移動をガイドするガイド機構を備えているとよい。
上記綴じ具固定装置は、ヒンジをファイル本体に対して上下させることで係合部を係合状態/非係合状態とするため、係合部を直接もって着脱作業を行う必要がない。したがって、両係合部が適切な位置に配置されていない場合、ヒンジをファイル本体側に動かしても係合部が連通孔の縁に引っかかってしまうなどして係合位置に移動しにくい場合がある。これに対し、本構成を採用すれば、利用者による連結部/アーム部をファイル本体に押し込む/引き離す力を的確かつ確実に係合部の係合位置への移動力/非係合位置への移動力に返還することができる。
上記した綴じ具固定装置によって綴じ具がファイル本体に着脱可能に固定されたファイルは、さらに、ファイル本体上において綴じ具を所定位置に位置決めする位置決め機構を備えていてもよい。
本ファイルにおいては、アームヒンジ部をファイル本体に近づけるだけで綴じ具をファイル本体に固定することができるため、係合箇所近傍を持って着脱作業を行う必要がない。したがって、着脱作業中(特に取り付け作業中)に綴じ具に触れてしまい綴じ具がファイル本体における所定位置からずれる可能性がある。このようにずれてしまうとファイル側孔部と綴じ具側孔部とによって想定通りの連通孔を形成できず、綴じ具のファイル本体への固定がうまくいかない場合もあり得るが、本構成によればこの問題を解決できる。
<発明の効果>
上記説明からも明らかなように、本発明によれば、ファイル側に押し込む操作を行うだけでファイル本体と綴じ具とが係合し、ファイル側から引き離す操作を行うだけでファイル本体と綴じ具との係合が解除される、実用化可能な綴じ具固定装置を提供することができる。
また、本発明によれば、上記綴じ具固定装置が用いられたファイルを提供することができる。
<発明を実施するための最良の形態>
以下、本発明の実施の形態に係る綴じ具固定装置及びファイルについて図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、本明細書においては、ファイル本体における綴じ具が設けられる側を内側、反対側を表側・外側と表記する。また、ファイルを水平面に自立させた場合における背表紙の延在方向(背表紙部における表表紙部と裏表紙部の距離方向に対する直交方向)を適宜「天地方向」と記載し、ファイル本体を基準としてファイルの内側垂直方向を「上側」と記載する。
<第一実施形態>
図52に示すように、第一実施形態に係るファイルは、ファイル本体3080の内側に綴じ具3060が綴じ具固定装置1によって着脱自在に取り付けられている。
[ファイル本体3080]
ファイル本体3080は、本実施例においては紙製の表紙体であり、表表紙部3080bと裏表紙部3080cとの間に背表紙部3080aが設けられている。背表紙部3080aと表表紙部3080b、裏表紙部3080cとは、それぞれ一枚構成の板状の紙部材が折り曲げられてヒンジ(表紙ヒンジ部)が形成されて成る。
背表紙部3080aには、天地方向に一対のファイル本体側孔部3086a、3086aが設けられている。各ファイル本体側孔部3086a、3086aは、対となるファイル本体側孔部3086aがある側とは反対側にファイル本体側収納孔3086b、3086bが連通している。図52に示すように、ファイル本体側収納孔3086b、3086bの横方向(天地方向の直交方向)の長さ(幅)は、ファイル本体側孔部3086a、3086aよりも狭く設計されている。ファイル本体側孔部3086a、3086a間には計4つの綴じ具位置決め片用収納孔3082が設けられている。
[綴じ具3060]
綴じ具3060は、背表紙部3080aに添設されるベース部3061cに、上記表紙ヒンジ部に沿った位置から一対の側壁部3061b、3061bが起立しており、側壁部3061b、3061b間に一対の串部3072、3072が延在している、いわゆるパイプ式の綴り機構を備えている。なお、綴り機構は、公知のパイプ式綴り機構などの公知の機構であるため、本明細書においては詳細な説明を省略する。
ベース部3061cは、背表紙部3080aに添設された際にファイル本体側孔部3086a、3086aに対向する位置に綴じ具側孔部3066a、3066aが設けられており、ファイル本体側収納孔3086b、3086b、に対向する位置に綴じ具側収納部3066b、3066bが設けられている。位置決め片用収納孔3082に対応する位置には計8つの位置決め片3063が設けられており、一つの位置決め片用収納孔3082には2つの位置決め片3063が縁に当接するように収納される。したがって、8つの位置決め片3063並びに4つの位置決め片用収納孔3082によってファイル本体3080における綴じ具3060の相対位置が所定位置に位置決めされる。なお、本実施形態における位置決め片3063は、ベース部3061cに切り込みを設け、当該切り込みを折り返すことで設けられているため、一つの位置決め片用収納孔3082に収納される一対の位置決め片3063間には貫通孔3062が形成されている。
[綴じ具固定装置3001]
図52〜図54に示すように、綴じ具固定装置3001は、操作部3031の両側(天地方向)に2本のアーム部3011、3011が設けられており、アーム部3011、3011の操作部3031とは反対側の端側(天地方向)に係合爪部3013、3013が設けられている。なお、図53においては操作部3031のみ断面図で示している。
図53、図54に示すように、操作部3031は、ベース部3061cに面する側(図52、図53における図中下側、図54における図中)にアーム部3011と接続するための軸部3031a、3031aを備えている。軸部3031a、3031aにはアーム部3011の嵌合孔部3011b、3011bが嵌め合わされている。すなわち、軸部3031aと嵌合孔部3011bによってヒンジが形成されている。
また、軸部3031a、3031aの周囲は、軸部3031a、3031aに嵌め合わされたアーム部3011の上下動を許容する肉抜き部3032、3032が設けられている。したがって、操作部3031は、上下方向(図53に示す矢印方向)に回動可能なアームヒンジ部を形成している。
ヒンジ部3011は、嵌合孔部3011bが設けられた側(操作部3031と接続している端側)とは反対側に第二嵌合孔部3011aが設けられている。第二嵌合孔部3011aの周囲には肉抜き部3011cが設けられている。なお、第二係合孔部3011a及び肉抜き部3011cについては係合部3020の説明において合わせて説明する。
[係合部3020]
図52〜図54に示すように、係合部3020は、ファイル本体側孔部3086a及び綴じ具側孔部3066aによる連通孔に挿通され、当該連通孔内をベース部3061c面方向にスライド移動される部材である。
図52、図53に示すように、係合部3020は、軸台3025の両側(図52中左上側と右下側)にそれぞれ軸部3025aが突出している。軸部3025aは、嵌合孔部3011bに嵌め合わされている。また、上記の通りヒンジ部3011における嵌合孔部3011bの周囲は肉抜きされている(肉抜き部3011cが設けられている)ため、係合部3020は軸部3025aを中心として回転移動可能である。すなわち、軸台3025とアーム部3011はヒンジ結合されており、連結ヒンジ部を形成している。
このように、本実施形態に係るファイルは、4つのヒンジを備えており、内2つによって1つのアームヒンジ部が形成され、他の2つがそれぞれ連結ヒンジ部を形成している。
図52、図53に示すように、軸台3025は基板部3021に設けられている。基板部3021は、綴じ具側孔部3066aの横方向の幅よりも広く、綴じ具側孔部3066aに挿通不能である。
基板部3021における軸台3025が設けられた側とは反対側の面には挿通部3022が設けられている。挿通部3022は、横方向の幅が綴じ具側孔部3066aの幅よりもやや狭く、綴じ具側孔部3066aに挿通可能である。
挿通部3022の基板部3066aと接する端とは反対側の端側には、挿通部3022を基準として基板部3021の延在方向と同方向(係合方向/天地方向)に、横方向の幅が挿通部3022と同一で、縦方向の長さが綴じ具側孔部3066aの長さよりもやや短い、基板部3021と略平行な係合爪部3023が設けられている。係合爪部3023と基板部3021の対向する面間の距離は、ベース部3061cの厚み(Y方向の長さ)と背表紙部3080aの厚みを加算した長さである。
挿通部3022を一端側として係合方向に基板部3021と係合爪部3023とを結ぶ板状の位置決め板部3024が設けられている。図53に示すように位置決め板部3024の天地方向の長さ(X方向の長さ)は基板部3021のそれよりも短く、図52に示すように横方向の幅はファイル本体側収納孔3086bの幅よりもやや短い。
次に、綴じ具固定装置3001を用いて綴じ具3060をファイル本体3080に固定する手順(着手順)を、特に図54及び図55を参照しながら説明する。なお、綴じ具3060をファイル本体3080から取り外すには、固定手順の逆の操作を行えばよいだけであるため、説明を省略する。
[着手順]
利用者はまず、8つの位置決め片3063をそれぞれ位置決め片用収容孔3082に挿入することで、ベース部3061cを背表紙部3080aにおける所定位置に配置する。
背表紙部3080a上の相対位置が規定された状態のベース部3061cにおいては、図54に示すように綴じ具側孔部3066a、3066aとファイル本体側孔部3086a、3086aが連通して一対の連通孔が形成されており、利用者は、この一対の連通孔に一対の係合部3020、3020を挿通する。この際、アームヒンジ部を介した2つのアーム部3011、3011は、図54に示すように操作部3031を基準として下方向に傾いた状態となっている。また、係合爪部3023並びに挿通部3022は上記連通部を挿通可能で、基板部3021は挿通不能なため、基板部3021はベース部3061cに当接した状態となる。
利用者は次に、図55に示すように操作部3031をファイル本体3080側に(下側に)押しつける。綴じ具固定装置3001は、上記したようにアームヒンジ部を備えているため2つのアーム部3011の成す角度が180度に近づいていき、2つの係合部3020は、それぞれ連結ヒンジ部を介してアーム部3011、3011と連結しているため互いに遠ざかる方向へ移動する力が働く。また、上記の通り基板部3021はベース部3061cに当接し(連通孔を挿通できず)Y方向の相対位置が規定されているため、係合部3020は、位置決め板部3024がファイル本体側収納孔3086b並びに綴じ具側収納部3066bによる連通孔に嵌り(ガイドされ)つつ、ベース部3061c面上をX方向に他の係合部3020と遠ざかる方向にスライド移動する。したがって、ベース部3061c及び背表紙部3080aは基板部3021と係合爪部3023とに挟持された状態となる。
2つのアーム部3011、3011がアームヒンジ部を介して略180度の状態となった際、挿通部3022、3022はそれぞれ綴じ具側孔部3066a、3066a、ファイル本体側孔部3086a、3086aと当接し、位置決め板部3024、3024はそれぞれ綴じ具側収納部3066b、3066b、ファイル本体側収納孔部3086b、3086bと当接している。すなわち、係合爪部3023、3023は、それぞれ挿通部3022、3022の上記連通孔の挿通方向側部材である背表紙部3080aと係合した状態(係合状態)となる。
利用者は、係合状態となった綴じ具固定装置3001の操作部3031をさらにベース部3061c側に近づける。この状態では、係合部3020、3020が互いに近づく方向、すなわち係合を解除する方向の力が係合部3020に加わっても、操作部3031はベース部3061c側に近づく方向に移動するだけで、係合は解除されない(固定状態)。以上により綴じ具3060がファイル本体3080に固定される。
なお、上記実施形態は適宜変形することができ、例えば係合状態を維持する機構として、ベース部3061cに係合状態におけるアーム部3011を保持するように公知の部材保持機構を設けてもよい。また、アーム部3011に貫通孔を設け、ベース部3061cにおける当該貫通孔に対応する位置に鍵受け部を設け、一方に上記貫通孔を貫通して当該鍵受け部と係合する鍵部を備え、他方に上記貫通孔を貫通不能な基部を備えた鍵部材を鍵受け部に係合させてベース部3061cに対するアーム部3011のY方向の相対位置を固定してもよい。このように構成すれば、綴じ具固定装置3001による係合箇所とは異なる箇所で綴じ具及び/又はファイル本体と係合することが可能となる。鍵部における係合方向(上記貫通孔に対する挿通方向を基準とした鍵受け部と係合する部材の延在方向)を係合部3020の係合方向と異なる方向にすれば、様々な方向の力(係合解除力)に対しても効果的に対抗し得る。
また、上記した構成要素以外の要素を適宜加えることもできる。例えば図56に示すように、綴じ具ベース部3061cを覆うカバー3090を設けてもよい。カバー3090は、ファイル内側方向に操作部3031が配置し、反対方向に図示しない係合部3020が配置するための貫通孔部3091を備えており、さらに固定状態において操作部3031が嵌め合わされる凹部3092が設けられており、ベース部3061cに固定可能である。操作部3031並びに係合部3020はそれぞれ貫通孔部3091を貫通することができない。したがって、係合部3020は、ファイルの内側から外部の物が当接してしまい、固定状態、係合状態が解除されてしまうという危険性をより低くすることができる。
上記実施形態においては係合状態において挿通部3022が綴じ具側孔部3066a、ファイル本体側孔部3086aと当接する際、例えば各ヒンジによって綴じ具構成装置3001の各部材が若干互いに近づく状態となり、係合状態から固定状態へ移動する際に挿通部3022が綴じ具側孔部3066a、ファイル本体側孔部3086aに当接し続けるようにしてもよい。すなわち、アームヒンジ部においてアーム部3011、3011を180度の関係にした際の係合部3020、3020間の距離がファイル本体側孔部3086a、3086a間の距離よりも若干長くなるようにしてもよい。このように構成すれば固定状態がより解除されにくくなり、長期的に極めて安定的に固定状態を維持し得る。
<第二実施形態>
図57、図58に示された第二実施形態に係るファイル(第二のファイル)は、第一実施形態に係るファイル(第一のファイル)とは、主に以下の点で相違する。これらの相違点を中心に説明する。なお、図57における綴じ具3060はベース部3061c以外の構成要素を省略している。図58は、図57における綴じ具3060が背表紙部3080aにおける所定位置に配置され、綴じ具側孔部3066a及びファイル本体側孔部3086aに係合部3120が挿通された状態における、一対の(直線上に存する)綴じ具側収納部3066b、3066bを結ぶ直線を含む断面を示した。
[第一のファイルとの主たる相違点]
・第一のファイルではファイル本体側孔部並びに綴じ具側孔部はそれぞれ2つずつ設けられていたが、第二のファイルではそれぞれ4つずつ設けられている。したがって、一つの係合爪部3123の背表紙部3080aとの当接面積を第一のファイルのそれと同じにした場合、綴じ具固定装置3100による(係合部3120による)ファイル本体3080とのファイル外側における当接面積が第一のファイルのそれよりも広くなり、綴じ具固定装置3100によるベース部3061cと背表紙部3080aとの挟持力はより強くなる。これにより、第一のファイルよりも多量の被綴込物(総量の重い被綴込物)を綴じる綴り機構を採用することが可能となる。すなわち、パイプ式の綴り機構を採用する場合、第一のファイルの場合と比べてより長い串部を備えた綴り機構を採用することが可能となる。
・アームヒンジ部を構成するヒンジ3107、3108、並びに連結ヒンジ部を構成するヒンジ3109、3110が、それぞれ、一枚の板状部材の一方の面側に切り込みが入れられて成る形状のヒンジである。したがって、例えば操作部3111とアーム部3101、3102とは、一枚の板状部材において、ヒンジ3107と3108の位置に他方の面側に切り込みが到達しないように一方の面側からカッター等で切り込みを入れるだけでアームヒンジ部を形成することができる。ただし、各ヒンジは、上記のように形成せず、例えば隣接する二部材同士を上記状態になるように接着等して形成することもできる。
・挿通部3122を基準とした際の係合方向の長さが基板部3121と係合爪部3123とでほぼ同一である。したがって、係合爪部3123と基板部3121とが対向している面積をより多くとることができ、より強固な係合力・固定力を奏することが可能となる。
・アームヒンジ部を構成するヒンジ3107、3108の周囲に貫通孔3150、3150が設けられ、ベース部3061c並びに背表紙部3080aにおける貫通孔3150、3150に対向する位置にそれぞれ貫通孔3132、貫通孔3142が設けられている。したがって、利用者は、固定状態を解除する場合、貫通孔3150、3150に指を入れて操作部3111のファイル外側面側(図57における図中下側)に触れ、そのままの状態で操作部3111をファイル内側方向に引き上げるだけでよい。
・図58に示すように、第二のファイルでは、固定状態において、連結ヒンジ部を結んだ直線上にアームヒンジ部が位置し、挿通部3122、3122がそれぞれのファイル本体側孔部3086a並びに綴じ具側孔部3066aと当接した状態である。すなわち係合状態が固定状態となっている。したがって、一方の係合部3120に対して係合を解除する方向の力が働いても、他方の係合部3120によって当該力に対抗するため、係合状態、固定状態を長期的に安定して維持することができる。
<第三実施形態>
図59、図60を用いて第三実施形態に係る(第三のファイル)における第一のファイルや第二のファイルとの主たる相違点について以下に記す。なお、図60では説明を容易にするため綴じ具のベース部3061cのみを描いた。
[第一・第二のファイルとの主たる相違点]
・2本のアーム部3311、3311におけるアームヒンジ部であるヒンジ3317(本実施形態ではアームヒンジ部は一つのヒンジで構成されている)の近傍に計4つの横方向係合部3307が設けられている点が第一・第二ファイルと異なる。図59に示すように、横方向係合部3307は、アーム部3311からベース部3061c側に鉛直下向きの挿通部3307aが立設し、挿通部3307aのベース部3061c側に横方向係合爪部3307bが延在している。図60に示すように横方向係合爪部3307bは挿通部3307aを基準として、4つの係合部3305における係合方向(係合爪部3305cの挿通部3305bを基準とした延在方向)とは略直交する方向、すなわちファイル本体3080における天地方向に対する直交方向(横方向)に延在している。なお、アーム部3311と横方向係合爪部3307bとの距離は、係合部3305における基板部3305aと係合爪部3305cの距離(位置決め板部3305dの上下方向の長さ)にほぼ等しい。
ベース部3061cは、綴じ具固定装置3300が固定状態である際の横方向係合爪部3307b、3307bに対応する位置において挿通部3307aは挿通可能で横方向係合爪部3307bは挿通不能な横幅を有する貫通孔3069を備え、背表紙部3080aは、貫通孔3069に対向する位置に貫通孔3069とともに連通孔を形成する貫通孔3089を備える。なお、本実施形態においては、貫通孔3069、3089はそれぞれ一対設けられており、各貫通孔3069、3089は、それぞれ、綴じ具固定装置3300における横方向の側の横方向係合爪部3307b、3307bに対応する位置のみでなく、これらの位置を結んだ領域も貫通している。すなわち、各貫通孔3069、3089は、図60に示すように、天地方向に細長い形状となっている。
アーム部3311は、各係合部3305の位置を一定にした際、横方向(図60における上下方向)に弾性変形可能に構成されている。したがって、操作部としてのヒンジ3317近傍のアーム部3311をベース部3061c側に押し込み横方向係合爪部3307bがベース部3061cに当接した際、各アーム部3311をそれぞれに設けられた横方向係合爪部3307bの延在方向(係合方向)とは反対側に弾性変形させることで、横方向係合爪部3307bを貫通孔3069及び貫通孔3089によって構成された連通孔に通すことが可能となる。なお、アーム部3311はこのように弾性変形可能である必要があるため、少なくとも弾性変形を行う部分を樹脂等で構成することが好ましい。
第三のファイルは、横方向係合部3307を備えているため、係合部3305による係合方向とは異なる方向においてもファイル本体3080と係合している。したがって、綴じ具固定装置3300は様々な方向からの係合解除力に対抗し得る。
また、綴じ具固定装置3300とファイル本体3080との係合面積(係合爪部3305c及び横方向係合爪部3307bと背表紙部3080aの外側との当接面積)を第2のファイルよりも広くすることができるため、極めて強固な係合力を奏する。
・アームヒンジ部と連結ヒンジ部が異なる形状のヒンジである点。すなわち、アームヒンジ部としてのヒンジ3317は第一のファイルと同様の軸と嵌合孔とを嵌合させたヒンジであり、連結ヒンジ部としてのヒンジ3320、3320は第二のファイルと同様の切り欠き形状のヒンジである。このように、各ヒンジは少なくとも他の一つのヒンジと異なる形状であってもよい。すなわち、本実施の形態に係る綴じ具固定装置は、綴じ具固定装置3300が係合部3305から天地方向における他方の係合部3305に至る直線を横切る方向のヒンジを3本以上備えていることが肝要である。
<第四実施形態>
図61、図62に示す第四実施形態に係るファイル(第四のファイル)は、第一〜第三のファイルと異なりヒンジ結合を備えないが、綴じ具固定装置3200が係合部3205を備え、係合部3205によって綴じ具3060とファイル本体3080とを固定するという点については第一〜第三のファイルと同様である。また、第一〜第三のファイルと同様にワンタッチの操作で係合部3205(基板部3205a、係合爪部3205c)による背表紙部3080aとの係合状態を被係合状態にできる点で効果を共通にする。以下詳細に説明する。なお、基板部3205a、挿通部3205b、係合爪部3205c並びに位置決め板部3205dを備えた係合部3205は第一〜第三実施形態と同等であり、また、ファイル本体3080や綴じ具3060の構成も第一〜第三実施形態と同等であるため、本実施形態においては詳細な説明を省略する。また、図62においては説明容易のためカバー3201を省略している。
綴じ具固定装置3200は、中央部に設けられた操作部(係合保持状態解除部)3219を基準として天地方向に2つのスライダー3215、3215を備え、各スライダー3215にはそれぞれ2つの係合部3205が設けられている。各スライダー3215に設けられた係合部3205は、他のスライダー3215に設けられた係合部3205とは係合方向が反対である。
綴じ具固定装置3200は、係合部3205の係合状態を解除する方向に各スライダー3215、3215を付勢する(両スライダー3215、3215を互いに近づける方向に付勢する)付勢バネ3211、3211が設けられている。両スライダー3215、3215間には係合保持部3221と操作部3219が設けられており、これらの構成要素のさらにファイル内側方向には操作部3219とその周辺部のみをファイル内部方向に露出するカバー3201が設けられている。
図61に示すように、各スライダー3215、3215は、他のスライダー3215と対向する側に半円状の凹部3217が設けられている。両スライダー3215、3215間には保持板3218が設けられている。保持板3218は、図62に示すように、ベース部3061cにおける凹状部3071(凹状部3071は背表紙部3080aに設けられた孔部に嵌め合わされている)に設けられた圧縮バネ3072上に配置されている。
保持部3218は、圧縮バネ3072と接する面とは反対側に操作部3219を備え、当該面側が段形状となっていて壁部3221が設けられている。
次に、綴じ具固定装置3200の作用を説明する。
係合状態では、圧縮バネ3072によってファイルの内側方向に付勢された状態の保持板3218の端部3222が各スライダー3215、3215の端部と当接し、付勢バネ3211、3211によるスライダー3215、3215を互いに近づける方向への付勢力に抗している。一方、スライダー3215、3215間に保持板3218が挟まれている場合(スライダー3215、3215の端部3217、3217間の距離が保持板の端部3222、3222の距離分離れている場合)、各係合部3205は背表紙部3080aと係合するように設計されている。したがって、係合状態は維持(固定)されている。
この状態において利用者が操作部3219をベース部3061c側に押し込むと、スライダー3215、3215間から保持板3218が抜けた状態となるため、付勢バネ3211、3211は、スライダー3215、3215を互いに近づける方向に移動させる。すると、スライダー3215、3215の端部3217、3217は壁部3221、3221に当接する。壁部3221、3221は、この状態よりもスライダー3215、3215が互いに近づく方向へ移動するのを制限する。一方、この状態では(スライダー3215、3215の端部3217、3217間の距離が壁部3221、3221の距離分離れている場合)、各係合部3205はファイル本体側孔部3086a並びに綴じ具側孔部3066aに挿抜自在の位置になるよう設計されている。したがって、綴じ具固定装置3200は背表紙部3080aからファイル内側方向へ取り外すことが可能となり、綴じ具3060とファイル本体3080との固定が解除される。
再度係合部3205を係合状態にするためには、スライダー3215、3215の端部3217、3217を挟持して、他のスライダー3215に対して互いに遠ざける方向に移動させる。そして、端部3217、3217間の距離が保持板3218の端部3222、3222の距離と同じになると、圧縮バネ3072によってファイル内側方向に付勢されている保持板3218が両スライダー3215、3215に位置する。この位置は上記の通り綴じ具固定装置3200が係合状態をとる位置である。すなわち、この状態は上記の通り係合状態/固定状態である。なお、この際の保持板3218は、カバー3201と少なくとも一部が当接し、ベース部3061cからのファイル内側方向の相対位置が制限されている。
本発明は、実施形態に限定して解されるものではないことは当然である。例えば、上記各実施形態においては綴じ具固定装置はファイルの内側に配置され係合爪部がファイル本体と係合しているが、綴じ具固定装置をファイルの外側に配置し、係合爪部が綴じ具(ベース部)と係合するように構成することもできる。各実施形態においては基板部と係合爪部とが対向するようにしたが、基板部を備えていない構成であっても上記作用を奏し得る。ファイル本体における綴じ具が添設される位置を背表紙部以外の表紙部とすることもできる。
ここで、上記した複数の実施形態は、下記の付記的事項に係る技術的思想にも含まれるものである。
(付記1)
綴じ具側孔部を備えた書類等を綴じる綴じ具を、ファイル本体側孔部を備えたファイル本体に固定する綴じ具固定装置であって、
前記綴じ具固定装置は、
ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成される一対の連通部それぞれに挿通される一対の挿通部、及び、各挿通部に設けられた、連通部内を他の連通孔とは反対方向に相対移動した際に、挿通部による挿通方向に存する綴じ具及びファイル本体の何れかと係合する係合爪部を有する係合部と、
両係合部を連結する連結部と、
一方の係合部から連結部を通り他方の係合部に至る線において、当該線を横切る方向に設けられた3つ以上のヒンジと、を備えた、
綴じ具固定装置。
(付記2)
綴じ具側孔部を備えた書類等を綴じる綴じ具を、ファイル本体側孔部を備えたファイル本体に固定する綴じ具固定装置であって、
前記綴じ具固定装置は、
ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成される一対の連通部それぞれに挿通される一対の挿通部、及び、各挿通部に設けられた、連通孔内を他の連通孔とは反対方向に相対移動した際に、挿通部による挿通方向に存する綴じ具及びファイル本体の何れかと係合する係合爪部を有する係合部と、
各係合部とアームヒンジ部を介して連結された2つのアーム部、及び、各アーム部を連結する連結ヒンジ部を有する連結部と、を備えた、
綴じ具固定装置。
(付記3)
アームヒンジ部は、係合爪部が綴じ具及びファイル本体の何れかと係合している際、連結ヒンジ部を結んだ直線よりもファイル本体側に位置するようにされた、
付記2に記載の綴じ具固定装置。
(付記4)
アームヒンジ部及び連結ヒンジ部の内の少なくとも一つは、連結する二部材に切り込みが設けられて形成された形状のヒンジである、
付記2に記載の綴じ具固定装置。
(付記5)
前記係合部は、さらに、挿通部の挿通方向とは反対側に、前記連通孔を挿通不能な基盤部が設けられている、
付記2から付記4の何れか一項に記載の綴じ具固定装置。
(付記6)
綴じ具側孔部を備えた綴じ具とファイル本体側孔部を備えたファイル本体とが付記2から付記5の何れか一項に記載の綴じ具固定装置によって固定されたファイルであって、
前記ファイルは、さらに、挿通部の連通孔内における相対移動をガイドするガイド機構を備えた、ファイル。
(付記7)
綴じ具側孔部を備えた綴じ具とファイル本体側孔部を備えたファイル本体とが付記2から付記5の何れか一項に記載の綴じ具固定装置によって固定されたファイルであって、
前記ファイルは、さらに、ファイル本体上において綴じ具を所定位置に位置決めする位置決め機構を備えた、ファイル。
<その他の発明の開示(2)>
また、本願においては以下の発明も開示する。なお、当該開示は、本出願人の特許取得の意思を放棄したものでは決してなく、本出願人は当該意思を留保しているものである。
<技術分野>
本発明は、書類等を綴じる綴じ具をファイル本体上に着脱可能に固定するための綴じ具固定機構を備えたファイルに関する。
<背景技術>
従来、書類等に設けられた綴じ孔にパイプやリングなどの軸部を貫通させることで書類等を綴じるファイルが広く利用されている。このようなファイルは、一般に、綴じ具は金属等で形成され、綴じ具等が設けられたファイル本体(表紙部)は紙や樹脂等で形成されている。
そのため、ファイル本体は綴じ具に比べて耐久性に劣るため、両者を分別した上で、この綴じ具(元の綴じ具)を新たなファイル本体に取り付けて新たなファイルとする技術が提案され、広く利用されている(例えば、特許文献5から特許文献7を参照。)。
<特許文献5>特許第3421913号公報
<特許文献6>特開2000−153688号公報
<特許文献7>特開2004−338261号公報
<発明の開示>
<発明が解決しようとする課題>
しかしながら、上記従来技術には例えば以下の問題が指摘されており、これらの従来技術が搭載されたファイルであっても新たなファイル本体に旧綴じ具を取り付けるいわゆるリサイクル/リユースが実効的に行われているとは言えない状態であった。
[従来の問題点1]綴じ具のファイルからの着脱作業時に綴じ具から書類等を一旦取り外す必要がある点
特許文献5に開示された従来技術や特許文献6に開示された従来技術では、綴じ具のベース部上に綴じ具をファイル本体と着脱可能に固定するための綴じ具固定装置が設けられている。したがって、綴じ具に書類等が綴じられた状態では綴じ具固定装置を操作することができないため、綴じ具から書類等を取り外す必要があった。
しかし、綴じられている書類等を綴じ具から取り外してしまうと、書類等がばらばらになってしまったり、一部が抜け落ちてしまったり、綴じ順が変わってしまったりするなど種々の問題が生じ得る。ファイルはそもそもこのような問題を解決するためのものであるため、ファイル本体の付け替え作業において以上のような問題が発生してしまっては本末転倒である。
また、綴じ具の中には、一方がパイプ状部で他方がこれに嵌め合わされる串状部を備え、パイプ状部に串状部が嵌合した状態において両者の相対移動を制限する保持部を備え、保持部からパイプ部並びに串状部の嵌合体を取り外し可能なものもある。このような綴じ具では、パイプ状部と串状部とが嵌合しただけの、保持部に保持されていない状態であっても、パイプ状部に貫通されている書類等は「仮に」綴じられた状態となっている。したがって、このような綴じ具を備えたファイルでは、ファイル本体の付け替え作業を行う際には嵌合体を保持部から取り外して書類等を綴じた状態のままファイル本体とは別の場所に置き、綴じ具とファイル本体との着脱作業を行うことも可能ではある。
しかし、上記嵌合体は、あくまでも書類等を仮に保持しているだけであるため(パイプ状部と串状部は嵌合しているだけで係合はしていないため)、上記作業中に嵌合が外れてしまう場合があり得る。また、一般利用者の中にはパイプ状部と串状部が嵌合していることをもって係合している(固定されている)と勘違いしてしまう者がおり、このような機構を備えていないファイルにおける綴じ具の着脱作業よりもかえって書類等をばらまいてしまう危険性が高い場合もある。パイプ状部と串状部とが係合するように構成した場合、従来の構成とは別個に設計する必要があり、構造が複雑なものとなってしまうだけでなく、両者が嵌合しているだけというメリット(書類の加除が行い易いなど)がなくなってしまったり少なくなってしまったりする。
このような理由により、上記従来技術が搭載されたファイルにおいて実際にファイル本体を付け替える利用者は極めて少なかった。
また、従来のファイルは、この作業を行う利用者が以上のような問題が発生しないように極めて慎重に作業を行う必要があるなど、書類等をばらまいてしまう危険性があるという、ファイルに本質的に求められる要求に耐えられているとは言い得ない機構であった。
[従来の問題点2]ファイルの内側からのみの操作によって着脱作業を完了させる必要がある点
特許文献7に開示された従来技術は、上記従来の問題点1のみに着目すればこれを解決しているとも言い得るが、種々の問題をはらんでいた。
特許文献7に開示された従来技術は、ファイル本体の内面側に配置された綴じ具を、外面側に配置された綴じ具固定装置によってファイル本体に取り付ける技術である。したがって、綴じ具固定装置による綴じ具とファイル本体との係合状態を解除すれば(係合解除状態とすれば)、ファイル本体から綴じ具を取り外せる。すなわち、綴じ具における書類等が綴じられている側とは反対側からの操作によって綴じ具とファイル本体とを固定しているため、綴じ具に書類等が綴じられている状態であっても、ファイル本体から綴じ具を取り外すことができる。
しかし、この従来技術では、ファイル本体の一方の面に綴じ具を配置し、他方の面に綴じ具固定装置を配置するという構成であるため、例えば以下に記すような事実上現実のファイルには適用できなかったり、従来の問題点1と同様の問題が発生してしまったりするなど種々の問題があった。
通常、ファイルは、表側に透明なカバーが配され、見出し片を挿入・保持可能なように見出し片保持部が設けられる。特に綴じ具とファイル本体とが分別可能なファイルや着脱可能なファイルでは、綴じ具のファイル本体への取り付け機構が必要となるため、ファイルの表側に取り付け機構の一部が配される(露出してしまう)が、通常使用時にこの機構に外部の物体が当接して係合状態が解除されないようにするため、また、上記部分がファイル外部に露出しているのを隠すため、ファイル本体における綴じ具が配された位置の表側(外側)に見出し片保持部が設けられる。
そのため、上記従来技術を採用する場合、見出し片保持部を設けることができないため、従来のファイルに適用することは事実上できなかった。また、新規にファイルを設計した場合であっても、通常使用時に外部の物体に当接して綴じ具固定装置による係合状態が解除されてしまうといったことを防止するために、綴じ具固定装置を外部から視認できないようにする新規な機構を検討する必要がある。当然、ファイルには他のファイルと区別するための見出し部が必要であるため、見出し部についても新規な機構を検討する必要がある。
このように、特許文献7に開示された従来技術は、採用することが極めて困難であり、ファイルとしては未完成といわざるを得ない。
また、上記従来技術では、ファイル本体に対して綴じ具と接する面とは反対側の面からの操作によって綴じ具とファイル本体との着脱を行う必要がある。一方、A4規格の書類等を綴じるファイルの場合、表表紙部並びに裏表紙部がおおむね高さ430mm程度、幅330mm程度の大きさである上、そもそも特許文献7に開示された綴じ具固定装置を片手で操作することは不可能である。
したがって、上記従来技術では、利用者は、綴じ具とファイル本体との着脱作業時に、綴じ具固定装置とファイル本体の外側面にしか事実上アクセスし得ず、綴じ具や書類等を挟持することができない。そのため、綴じ具固定装置によって綴じ具とファイル本体との係合を解除した際、綴じ具やこれに綴じられた書類等は利用者に保持されない。
この結果、書類等は綴じ具ごと落下してしまい書類等が破損してしまう可能性もあり、さらには再利用するはずであった綴じ具も破損してしまう可能性がある。綴じ具の落下等の衝撃により綴じ具による書類等を綴じる機構が開放され、上記同様に書類等がばらまかれてしまう危険性もある。
以上のように、特許文献7に開示された技術は、従来の問題点1を解決しているとは言い得ず、さらに様々な問題をはらんでいる。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、書類等を綴じた状態の綴じ具をそのままファイル本体から取り外し、新たなファイル本体に取り付けることが可能なファイルを提供することを課題とする。
<課題を解決するための手段>
上記課題を解決するために、本発明に係るファイルは、書類等を綴じた状態の綴じ具をファイル本体に着脱可能に取り付ける綴じ具固定装置を有し、書類等を綴じ具から取り除くことなく、ファイル本体における綴じ具が取り付けられた側からのみの操作によって綴じ具固定装置によるファイル本体と綴じ具とを非係合状態から係合状態へ状態変位することができるように構成されている。したがって、綴じ具や綴じ具に綴じられた書類等を挟持したまま綴じ具のファイル本体への着脱作業を行え、また、当該着脱作業を行っている側(重力方向上側や利用者側)に綴じ具や綴じ具に綴じられた書類等が配置される。これにより、書類等が綴じられた綴じ具をファイル本体から書類等を綴じたままの状態で丸ごと確実に取り外して、これらを新たなファイル本体等へ取り付けることが実質的に可能となる。より具体的には例えば下記構成を採用し得る。
すなわち、上記ファイルは、書類等を綴じる綴じ具と、ファイル本体と、ファイル本体に綴じ具を固定する綴じ具固定装置と、を備えている。ファイル本体は、表表紙部と、裏表紙部と、両表紙部間に設けられた背表紙部と、何れかの表紙部に設けられたファイル本体側孔部と、を備えている。綴じ具は、ファイル本体上に配置されたベース部と、書類等の綴じ孔に挿通される軸部と、軸部の端部を保持し、当該軸部から書類等が抜け落ちないようにする、ベース部から起立した軸部保持部と、を備え、軸部保持部に設けられた保持部貫通孔を備えている。綴じ具固定装置は、ベース部におけるファイル本体とは反対側に配置された基部と、基部に設けられたファイル本体側孔部に挿通される挿通部と、挿通部に設けられた、挿通部がファイル本体側孔部に挿通された状態でベース部に沿って相対移動した際にファイル本体と係合する係合部と、を備えている。挿通部移動部は、基部と接続した連結部と、連結部と接続し、保持部貫通孔から常時操作可能な位置に設けられた操作部と、を備えている。
なお、上記ファイルは、挿通部がファイル本体側孔部に直接挿通されるように構成されてもよく、ベース部に設けられた綴じ具側孔部とファイル本体側孔部それぞれに挿通されるように構成されてもよい。また、軸部保持部は、ベース部面、すなわち背表紙部が設けられた面から立ち上がった部材であればよく、ベース部と一体成形されていてもよい。
したがって、上記ファイルは、常時、操作部が保持部貫通孔を貫通しているか、保持部貫通孔を介して保持可能であるため、綴じ具に書類等が閉じられた状態であっても操作部を操作して連結部に接続された基部を綴じ具に対して相対移動させ、係合部をファイル本体に対して係合/被係合させることができる。
なお、上記したファイルでは、操作部を用いた操作は手指を用いて行えるようにすることが好ましい。このように構成すれば、特殊な工具等を用いることなくファイル本体を取り替えることができる。
挿通部は複数設けるとよい。複数設ければ係合部とファイル本体との間の係合力が高くなり、ファイル落下時にファイル本体から綴じ具が外れてしまうといったことを防止できるからである。
各挿通部は、少なくとも他の一の挿通部とファイル本体への係合方向(ファイル本体におけるそれぞれの挿通部を基準とした係合部の延在方向)が異なるように設定することが好ましい。このように設定すれば、一の挿通部・係合部に係合を解除する方向の力が加わった場合であっても、その力は他の係合部に係合を強める力として働くため、綴じ具固定装置全体としてのファイル本体との係合力を持続的に高いものにできるからである。
また、一つの連通孔に二つの挿通部が挿通されるようにし、各挿通部に設けられた係合部の係合方向が互いに異なるようにすることが望ましい。このように構成すれば、一つの連通孔において発生するファイル本体と綴じ具固定装置との係合力を、上記同様の理由により常時高いものにできるからである。
このように複数の挿通部を設け、各係合部の係合方向が少なくとも他の一の係合部の係合方向と異なるようにする場合、係合方向が同じもの同士を一又は複数の基部に設け、各基部をそれぞれに設けられた挿通部・係合部の係合方向に相対移動できるように構成するとよい。このように構成すれば、係合方向が同じ挿通部・係合部を一度にファイル本体へ係合・係合解除することが可能となる。
各基部は、それぞれ異なる操作部によって操作されるようにしてもよいが、好ましくは一つの操作部による操作によって複数の基部を相対移動できるように、操作部から加えられた力を、各基部の係合方向/被係合方向の力に変換する変換部を介して各基部に伝えるように構成される。
上記ファイルは、さらに、ファイル本体上における綴じ具の相対位置を位置決めする位置決め部を設けるとよい。これにより、上記連通孔の形成が容易になり、また、係合部の係合作業を行う際にファイル本体と綴じ具とがずれてしまって完全な係合(設定通りの係合)が行えなくなってしまうといった問題も防止し得る。
ファイルは、さらに、連通孔内における挿通部の相対移動をガイドするガイド部を設けるとよい。操作部と係合部の間には複数の部材が介在するため、操作部に加えられた力と係合部の係合方向・非係合方向の力とは向きが異なる場合がある。この場合であっても、ガイド部を有すれば、係合部を確実に係合位置へ移動させることができる。
<発明の効果>
上記説明からも明らかなように、本発明によれば、書類等を綴じた状態の綴じ具をそのまま丸ごとファイル本体から取り外し、新たなファイル本体に取り付けることが実質的に可能で、この作業において綴じ具から書類等が脱落等する危険性のないファイルを提供することができる。
<発明を実施するための最良の形態>
以下、本発明の実施の形態に係るファイルを、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第一実施形態>
図63は、第一実施形態に係るファイル(第一のファイル)の構成を示した斜視図である。図64は、第一のファイルを図63とは裏側(ファイル表側)から眺めた状態を示した斜視図であり、説明のためファイル本体4080が破線で描かれている。図65は、図63における綴じ具固定装置4001を中心とした正面図であり、説明のため一部の構成要素を省略している。
第一のファイルは、綴じ具固定装置4001と綴じ具4060とファイル本体4080とを備える。
[ファイル本体4080]
図63に示すように、ファイル本体4080は、板状の紙部材にヒンジが2本設けられ、表表紙部4080b、背表紙部4080a及び背表紙部4080cとされている。背表紙部4080aには、それぞれ略矩形の貫通孔であるファイル本体側位置決め孔部4082とファイル本体側孔部4086が4つずつ設けられている。
[綴じ具4060]
綴じ具4060は、いわゆるパイプ式の綴り機構を備えた部材である。綴り機構は、公知の構成を採用できるが、本実施例においては図63に示すように、ベース部4061cに、軸部保持部としての一対の側壁部4061b、4061bが設けられており、一対の側壁部4061b、4061b間には軸部としての一対のパイプ部4078、4078が延在している。パイプ部4078、4078は、端部が側壁部4061b、4061bに保持されているため、綴じられた書類等の抜け落ちが防止されている。パイプ部4078、4078の少なくとも一端は側壁部4061b、4061bと当接状態と非当接状態を取ることができ、非当接状態において書類等の加除が行われ、当接状態において書類等の保持が行われる。なお、パイプ部4078、4078を中心とする軸部と軸部保持部による書類等の綴り機構は公知の機構であるため、詳細な説明を省略する。
一方の側壁部4061b(図63中左側の側壁部)は、保持部貫通孔4050が設けられている。言い換えると、背表紙部4080a面から起立した位置において貫通孔が設けられている。
図63、図64に示すように、ベース部4061cは、4つの綴じ具側孔部4066と8つの位置決め片4063が設けられている。本例においてはベース部4061cが金属で形成されているため、ベース部4061cに4つの貫通孔4062を設け、その辺部を起立させることで各位置決め片4063が形成されている。図64に示すように、4つの綴じ具側孔部4066はおおよそベース部4061cの四隅に設けられ、8つの位置決め片4063はそれぞれ綴じ具側孔部4066よりもベース部4061c中央部に設けられている。
ベース部4061cの中央には略円筒形状の回転軸4079が起立するように設けられており、回転軸4079を基準として両側壁部4061b側にはそれぞれ2つずつガイド片4064が設けられている。
[綴じ具固定装置4001]
図63〜図64に示すように、綴じ具固定装置4001は、2つの基部4030、4031及び挿通部移動部としての回転レバー4040により形成されている。
基部4030、4031にはそれぞれ2つずつ係合爪部4011、4012が設けられている。各係合爪部4011、4012は略同一形状であるため、一つの係合爪部4011を例に取り説明する。係合爪部4011は、基部4030からファイル本体4080側へ延在する挿通部4011aが設けられていて、挿通部4011aの先端側(上記延在側)に基部4030と略並行な係合部4011bが設けられている。基部4030が存する平面と係合部4011bが存する平面との距離は、おおよそ背表紙部4080aの厚み及びベース部4061cの厚みを合わせた距離である。
基部4030、4031は、それぞれ2つのガイド片4064、4064に挟まれ(ガイドされ)、一方の側壁部4061bから他方の側壁部4061bに向かう方向(図65においては図中横方向)の相対位置が規定されている。また、それぞれに略円筒形状の支軸4044が突設されている。
回転レバー4040は、2つの長孔4043、4043が設けられており、長孔4043、4043がそれぞれ支軸4044、4044と嵌め合わされ、基部4030と4031を連結している。回転レバー4040の略中央部には回転孔部4042が設けられており、回転孔部4042は回転軸4079に嵌め合わされる。回転レバー4040は、このように回転孔部4042が回転軸4079に嵌め合わされた状態において、その一端に設けられた操作部4041が保持部貫通孔4050を貫通している。
したがって、利用者は、上記綴り機構に書類等が綴じられた状態であっても保持部貫通孔4050から操作部4041を操作することができ、操作部4041を動かすことで基部4030と4031がベース部4061c面上において互いに離れる方向/近づく方向に相対移動させることができる。
次に、綴じ具固定装置4001を用いて綴じ具4060をファイル本体4080に取り付ける手順(着手順)を、図63〜図64を参照しながら説明する。なお、これらを分別するには着手順とは逆の操作を行えばよいだけなので、詳細な説明を省略する。
[取り付け手順]
第一のファイルは、操作部4041が保持部貫通孔4050から貫通する構成を採用するため、通常状態では(利用者が着脱を行う際には)綴じ具固定装置4001は綴じ具4060に組み付けられている。すなわち、計4つの係合爪部4011、4012はそれぞれ綴じ具側孔部4066に挿通された状態である。
利用者は、この状態の綴じ具4060(並びに綴じ具固定装置4001)を、背表紙部4080aに設けられた4つのファイル本体側位置決め孔部4082にベース部4061cに設けられた8つの位置決め片4063を挿入することで、綴じ具4060を背表紙部4080aにおける所定位置に配置することができる。この際、各係合爪部4011、4012は、それぞれファイル本体側孔部4086に挿通される。
保持部貫通孔4050から操作部4041が外側(図63においては左側の側壁部4061bのさらに左側)に突出しているため、利用者は操作部4041を移動させる(図63においては左下側から右上側に回転孔部4042を中心とした回転移動を行う/図65においては図下側から上側に回転移動させる。)。
基部4031は、長孔4043が支軸4044に嵌め合わされているため操作部4041の移動動作によって当該移動方向と略同方向の力が加わり、一方ガイド片4064、4064によってベース部4061cにおける図65横方向の相対位置が制限されているため、図65上方向に相対移動することとなる。これにより、係合部4012bは背表紙部4080aの表側と当接する。一方基部4031の係合爪部4011が設けられた面側は当初からベース部4061cと当接している。したがって、ベース部4061c及び背表紙部4080aは、係合部4012b及び基部4031に挟持された状態となる。
一方、基部4030は、支軸4044と操作部4041との間に回転孔部4042が存するため、上記移動方向とは反対方向の力が加わる。これにより、基部4031と同様に係合部4011bが背表紙部4080aの表側に当接し、ベース部4061c及び背表紙部4080aが係合部4011b及び基部4030に挟持された状態となる。
このようにして、ベース部4061及び背表紙部4080aが基部4030、4031と係合部4011b、4012bにそれぞれ挟持され、綴じ具4060がファイル本体4080に固定される。
第一のファイルは、上記構成を備えているため、上記したような作用・効果を奏する。特に、第一のファイルは、操作部4041が保持部貫通孔4050から外側(保持部貫通孔4050が設けられた側壁部4061bを基準として他の側壁部4061bとは反対側。)に突出しており、利用者によって手指で操作可能に構成されているため、利用者は操作部4041を操作するだけで、綴り機構に書類等が綴じられたままの状態で綴じ具4060をファイル本体4080に着脱することが可能となっている。
なお、係合爪部4011、4012には、書類等の重みによる破損を防止するため、係合部4011b、4012bと基部4030、4031との間にリブが好適に設けられる。例えば500枚のコピー用紙を綴り機構に綴じる場合、係合部4011b、4012bにはおおよそ2kg程度の重みがかかる。上記リブは、この重みに対抗して係合爪部4011、4012が破損してしまう(例えば基部4030、4031から外れてしまう)のを防止し、ファイル本体との係合状態を維持することを可能とする。このようなリブを設ける場合には、ファイル本体側孔部4086や綴じ具側孔部4066にリブ収納部を設ける必要がある。
また、第一のファイルでは各係合部4011b、4012bに対抗する側にも基部4030、4031が存するように構成したが、この側に基部4030、4031が存しなくても十分な固定強度が得られる。係合爪部4011、4012の係合方向が互いに異なる方向(それぞれの挿通部に対するそれぞれの係合部の延在方向が異なる方向)であるため、一方の係合部に係合を解除する力は他方の係合部には係合を強める方向に働くため、長期的に安定して綴じ具4060をファイル本体4080へ固定することができからである。また、このように構成すれば、一枚構成の金属製の板を折り曲げるだけで基部と係合爪部を形成することも可能となる。
次に、第二実施形態に係るファイル(第二のファイル)について説明する。
<第二実施形態>
図66は、第二のファイルの構成を示した斜視図である。図67は、図66における各構成が組み付けられた際の綴じ具固定装置としての回転ロック部4113近傍の正面図である。なお、図66、図67において第一のファイルと同等の構成要素については同一の符号を付し、これらの構成要素については特別なものを除き詳細な説明を省略する。
[ファイル本体4080]
ファイル本体4080における第一のファイルと異なる点は、ファイル本体側孔部が背表紙部4080に1つのみ(4140のみ)設けられている点である。ファイル本体側孔部4140は、円(小円部)の上下にこの円よりも半径の長い扇形(扇部)がそれぞれ組み合わされた形状である。また、4つの位置決め孔部4082は、ファイル本体側孔部4140の周囲にそれぞれ設けられている。
[綴じ具4060]
綴じ具4060における第一のファイルと異なる点は、ベース部4061cに設けられた綴じ具側孔部が一つのみ(4141のみ)である点と、両側壁部4061bに保持部貫通孔4051、4051が設けられている点である。綴じ具側孔部4141は、ファイル本体側孔部4140と略同一形状である。また、8つの位置決め片4063は、図66に示すように綴じ具側孔部4141の周囲に設けられている。
[綴じ具固定具4113]
綴じ具固定具4113は、ファイル本体側孔部4140における小円部に嵌合可能な半径の円筒部4130(挿通部)の上下に、それぞれ上記扇部と嵌合可能な扇形状の基盤部4131と係合部4132とが設けられている。
円筒部4130における図66下側は、2枚の係合部4132、4132が円筒部4130の中心線を基準としてそれぞれ反対方向に設けられており、綴じ具側孔部4141並びにファイル本体側孔部4140を貫通可能となっている。
円筒部4130における係合部4132が設けられた側とは反対側(図66上側)には、上記中心線を基準として係合部4132、4132の延在方向と異なる方向(本例では略90度の方向)に基盤部4131、4131が設けられている。基盤部4131、4131は、それぞれ、円筒部4130とは反対方向に延在する操作部4133が設けられている。
基盤部4131が存する面と係合部4132が存する面との距離は、背表紙部4080aの厚みとベース部4061cの厚みとを加算した長さとほぼ同じに設計されている。
次に、第二のファイルの組み立て方法(「着」行程)を説明する。なお、組み立てられた第二のファイルにおいてファイル本体4080と綴じ具4060とを分離する方法(「脱」行程)は下記の逆の作業を行えばよいため、説明を省略する。
[組み立て方法]
利用者はまず、綴じ具固定装置4113における係合部4132、4132が設けられた側を綴じ具側孔部4141に貫通させる。これにより基盤部4131、4131がベース部4061cと当接した状態となる。また、側壁部4061b、4061bは図66に示すようにベース部4061cとの接合部が斜めに(非垂直に)切り立っているため、図67に示すように操作部4133、4133の先端部は、保持部貫通部4051、4051の中に(中間に)位置する。したがって、利用者は側壁部4061b、4061bの外側から操作部4133、4133に触れることができる(操作可能である。)。
このように綴じ具固定装置4113が組み付けられた綴じ具4060を、背表紙部4080内側における所定位置に配置する。この際、綴じ具固定装置4113の係合部4132、4132が設けられた側がファイル本体側孔部4140に嵌合・貫通するため、綴じ具4060は上記所定位置に確実に配置される。また、位置決め片4063がそれぞれ対応する位置決め孔部4082に嵌合するため、ファイル本体4080における綴じ具4060の相対方向も一意に決まる。
利用者は、ファイル本体4080上における所定位置に綴じ具4060を配置した後、保持部貫通部4051、4051内に存する操作部4133、4133を用いて、円筒部4130の中心線(小円部の中心線)を基準に図67におけるY方向に綴じ具固定装置4113を回転移動させる。これにより、係合部4132、4132は、その一部が背表紙部4080a(ファイル本体の表側)と当接し、基盤部4131、4131は、その一部がベース部4061c、4061cと当接する。したがって、ベース部4061cと背表紙部4080aは、係合部4132、4132と基盤部4131、4131によって挟持された状態となる。
このように綴じ具固定装置4113を図67におけるY方向に回転移動させると、ベース部4061cに設けられている図示しない係合突起が綴じ具固定装置4113のY方向と反対方向への移動を制限し、また、操作部4133が保持部貫通部4051、4051のY方向側の壁部と当接してさらにY方向側へ回転移動することが制限されるため、第二のファイルにおける綴じ具固定装置4113の相対位置が固定され、ベース部4061cと背表紙部4080aの挟持状態が固定される(綴じ具4060がファイル本体4080に固定される。)。
第二のファイルによれば、上記作用・効果を奏するだけでなく、綴じ具4060がファイル本体4080に固定された状態において操作部4133が側壁部4061bよりも綴じ具内側に存するため、外部の物が当接するなどして綴じ具固定装置4113が動いてしまう危険性を極めて低いものにすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その趣旨・精神に沿って適宜変形することができる。
例えば、第二のファイルにおいて綴じ具固定装置4113を2つ用いた構成とし、ファイル本体4080と綴じ具4060との結合力を高くすれば、多量の書類等を綴る綴り機構を採用することも可能となる。また、上記各実施形態においては綴じ具固定装置はファイルの内側に配置され係合爪部がファイル本体と係合しているが、綴じ具固定装置をファイルの外側に配置し、係合爪部が綴じ具(ベース部)と係合するように構成することもできる。
ここで、上記した複数の実施形態は、下記の付記的事項に係る技術的思想にも含まれるものである。
(付記1)
書類等を綴じる綴じ具と、ファイル本体と、ファイル本体に綴じ具を固定する綴じ具固定装置と、を備えたファイルであって、
ファイル本体は、
表表紙部と、
裏表紙部と、
両表紙部間に設けられた背表紙部と、
何れかの表紙部に設けられたファイル本体側孔部と、を備え、
綴じ具は、
ファイル本体上に配置されたベース部と、
書類等の綴じ孔に挿通される軸部と、
軸部の端部を保持し、当該軸部から書類等が抜け落ちないようにする、ベース部から起立した軸部保持部と、
軸部保持部に設けられた保持部貫通孔と、を備え、
綴じ具固定装置は、
ベース部におけるファイル本体とは反対側に配置された基部と、
基部に設けられた、ファイル本体側孔部に挿通される挿通部と、
挿通部に設けられた、挿通部がファイル本体側孔部に挿通された状態で前記ベース部に沿って相対移動した際にファイル本体と係合する係合部と、
挿通部移動部と、を備え、
前記挿通部移動部は、
前記基部と接続した連結部と、
連結部と接続し、前記保持部貫通孔から常時操作可能な位置に設けられた操作部と、を備えた、
操作部を操作することで連結部に接続された基部を綴じ具に対して相対移動させ、係合部をファイル本体に対して係合・被係合させるファイル。
<その他の発明の開示(3)>
また、本願においては以下の発明も開示する。なお、当該開示は、本出願人の特許取得の意思を放棄したものでは決してなく、本出願人は当該意思を留保しているものである。
<技術分野>
本発明は、ファイル本体に着脱可能に固定される綴じ具、及びこの綴じ具が固定されたファイルに関する。
<背景技術>
書類等を綴じるファイルは、企業や家庭等の様々な場面で広く使用されている。一般に、このファイルは、その表紙体(ファイル本体)の材質は紙や樹脂等であるが、一方で書類等を綴じる綴じ具には、金属や比較的強度の高い樹脂等が使用されることが多い。従って、ファイルを使用していくことで生じる破損等に対応して、表紙体や綴じ具の部品交換の要求があり、またファイルを廃棄する場合に、環境保全の観点から材質の異なるファイル本体と綴じ具とを分別したいという要求もある。
これらの要求に応えるべく、書類等を綴じるファイルにおいて、綴じ具とファイル本体とを分離可能とする技術が公開されている(例えば、特許文献8〜特許文献9を参照。)。特許文献1に開示された従来技術は、ファイル本体側孔部を備えたファイル本体の内側面に綴じ具側孔部を備えた綴じ具を両孔部が連通するように配置し、ファイル本体の外側面に挿通部を備えた裏当て部材を、当該挿通部がこれらの孔部を挿通するように配置し、綴じ具の内側に突出した挿通部が孔部から抜け落ちないように固定する技術である。特許文献2に開示された従来技術は、裏当て部材を廃し、ファイル本体に対して片側から係合部付きの挿通部を上記孔部に挿通させ、係合部を挿通方向先端側に存する部材と係合させ、この係合状態を維持・固定することでファイル本体と綴じ具とを着脱可能に固定する技術である。
<特許文献8>特許第3664078号公報
<特許文献9>特開2000−153688号公報
<発明の開示>
<発明が解決しようとする課題>
しかしながら、いずれの従来技術も、特に「着」作業が困難であった。
特許文献8に開示された従来技術では、挿通部が二つの孔部を挿通し、さらに綴じ具内側の固定具によって固定できる分だけ綴じ具からファイル内側に突出する必要があるが、綴じ具とファイル本体、ファイル本体と裏当て部材の土台部(基盤部)との間に隙間が生じるなどして挿通部を十分な量綴じ具内側へ突出させることが困難な場合があった。特に、綴じ具のファイル本体への着脱を繰り返すと、ファイル本体がカーブしてしまったり、ファイル本体側孔部がめくれてふくらんでしまったりするため、綴じ具をファイル本体に固定することが困難になるばかりでなく、不完全な固定になってしまったり、固定できなくなってしまったりする場合もある。
特許文献9に開示された従来技術でも同様である。さらにこの従来技術では、挿通部に設けられた係合部の係合先がファイル本体であるため、ファイル本体は特許文献8におけるファイル本体以上に痛みやすく、上記問題がより顕在化しやすい。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、綴じ具とファイル本体との固定の作業性が極めて良好な綴じ具、並びに当該綴じ具を用いたファイルを提供することを目的とする。
<課題を解決するための手段>
上記課題を解決するため、本発明に係る綴じ具は、ファイル本体側孔部に抜き差し可能な綴じ具側挿通部と、綴じ具側挿通部に設けられた、綴じ具側挿通部がファイル本体側孔部内を移動した際にファイル本体と係合する綴じ具側係合部と、を備え、ファイル本体側孔部に綴じ具側挿通部が挿通され、綴じ具側係合部がファイル本体と係合した状態において、前記綴じ具固定具によってファイル本体に固定される。なお、本明細書では、「係合」とは綴じ具とファイル本体との位置を一定にすることを意味し、「固定」とは係合状態を維持することを意味する。
この構成によれば、綴じ具固定具によってファイル本体と綴じ具とを固定する前に、綴じ具とファイル本体とが係合(仮固定)され、両者の位置(両者間の隙間)が一定の状態となっているため(好ましくは密着しているため)、例えば特許文献1や特許文献2に開示されたような綴じ具固定具を用いた場合であってもその作業性は極めて良好なものとなる。特に、ファイル本体側孔部がめくれて膨らんでしまった場合でも、綴じ具(ベース部)、綴じ具側挿通部並びに綴じ具側係合部で形成された領域内にファイル本体(ファイル本体側孔部周辺部)を入り込ませるので、綴じ具とファイル本体との間の隙間が綴じ具固定具では固定できない程度に(綴じ具固定具の綴じ具固定具側挿通部が挿通して十分な量突出できない程度に)ならずにすみ、長期にわたって綴じ具とファイル本体との着脱を可能とする。
また、綴じ具はファイル本体と係合しているため、万が一綴じ具固定具が係合状態から非係合状態となってしまった場合でも、すぐさま綴じ具がファイル本体から脱落してしまう危険性を低くできる。
さらに、綴じ具とファイル本体とが係合していて、さらに綴じ具固定装置と綴じ具又はファイル本体の何れか(被係合部材)とが係合しており、これらの係合状態が固定されることで綴じ具がファイル本体に固定されているため、綴じ具固定装置と被係合部材の間に被固定部材(綴じ具及びファイル本体の内で被係合部材でないもの)を挟む固定方法と比べて固定力/固定状態維持力が極めて高い。したがって、当該綴じ具は、ファイル本体に対して片側からのみのアクセスによって綴じ具をファイル本体に対して固定する綴じ具固定具を備えたファイルに特に好適に採用される。このような固定機構では、裏当て部材がなく、ファイルの一方の側から挿通された挿通部に設けられた係合部が綴じ具若しくはファイル本体と係合するだけであるため、特許文献1に開示されたような固定機構と比べて弱くなってしまったり、ファイル本体における係合部の位置がずれてしまうと係合力が途端に弱くなってしまったりするが、本構成を採用すれば、ファイル本体と綴じ具との係合を綴じ具固定具のみが担う必要がなくなるため、極めて安定的に綴じ具とファイル本体との固定状態を維持できるからである。
なお、綴じ具は、綴じ具固定具と接着等された一体型でもよく、別体であってもよい。
上記綴じ具は、ファイル本体側固定用孔部が設けられたファイル本体に固定されるものであって、綴じ具側挿通部がファイル本体側孔部に挿通されてファイル本体の表面上を移動されることで綴じ具側係合部がファイル本体に係合し、この状態においてファイル本体側固定用孔部と連通する綴じ具側固定用孔部を設け、綴じ具側固定用孔部(及びファイル本体側固定用孔部)が綴じ具固定具に用いられてファイル本体に固定されるようにしてもよい。
このような綴じ具を用いたファイルは、ファイル本体上において綴じ具が係合位置(所定位置)に位置しなければファイル本体側固定用孔部と綴じ具側固定用孔部とが連通しないため、綴じ具固定具によって綴じ具をファイル本体へ固定することができない。したがって、綴じ具固定具によって綴じ具をファイル本体へ固定する際には綴じ具がファイル本体上の所定位置に必ず位置するため、所定位置に位置しない状態で綴じ具がファイル本体に固定されてしまうことがない。
そのため、この綴じ具における綴じ具係合部は、綴じ具のファイル本体への固定時、設計通りの係合力を発揮する。一般に設計通りの係合位置に配置された際、綴じ具係合部のファイル本体との係合力は最高の状態になるように設定されるため、綴じ具とファイル本体とを強固な固定力で固定することが可能となる。
また、例えばA4サイズのコピー用紙を500枚綴じる場合、被綴込物の重さは約2kg程度にもなり、綴じ具係合部には、(複数綴じ具係合部を設けたり、綴じ具固定具によっても綴じ具とファイル本体とを係合するようにしたとしても、)非常に大きな力が加わる。これに対し、綴じ具側係合部が所定位置に位置していないと、綴じ具側係合部の一部(設計通りの係合状態においてファイル本体と当接する面積よりも狭い面積)でこの力を受け止めることになってしまい、綴じ具係合部が破損してしまうこともあり得る。本綴じ具はこの問題も解決し得る。
上記綴じ具は、さらに、綴じ具側係合部がファイル本体と係合した際にファイル本体側孔部と連通する綴じ具側孔部が設けられていて、綴じ具固定具によって当該綴じ具側孔部(並びにファイル本体側孔部)が利用されてファイル本体へ固定するものであってもよい。
このように構成すれば、ファイル本体と綴じ具とを固定するために、ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部以外の孔部を設ける必要がなく、特に紙や樹脂等で成形されるファイル本体を十分な強度なものにできる。
また、綴じ具を金属で作成する場合、綴じ具側孔部を設ければ、当該部分に切り込みを入れて折り返すことで綴じ具側係合部を作成することも可能となる。
上記綴じ具を用いたファイルは、好ましくは、綴じ具は、さらに、係合部がファイル本体と係合した状態においてファイル本体側孔部に対向する位置に綴じ具側孔部が設けられており、綴じ具固定具は、ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成された連通孔に抜き差し自在な綴じ具固定具側挿通部と、綴じ具固定具側挿通部が連通孔に挿通されてファイル本体の表面上を移動した際に挿通方向先端側の部材と係合する、綴じ具固定具側挿通部に設けられた綴じ具固定具側係合部と、綴じ具固定具側係合部による係合状態を維持する係合状態維持部と、を備えている。
このファイルでは、一つの連通孔に二つの係合部が設けられるため、一つの連通孔あたりの係合力が強い。特に、この二つの係合部の係合方向(それぞれの係合部が設けられた挿通部を基準とした、ファイル本体を基準とした係合部の延在方向)を異なるようにすれば、一方の係合部に係合を解除する方向の力が働いたとしても、当該力は他方の係合部の係合を強めるように作用するため、連通孔毎の係合力は長期的に高い状態を維持できる。
また、当該連通孔は、綴じ具側挿通部や綴じ具側係合部の近傍(隣接位置)に配されているため、これらの部材による効用(綴じ具とファイル本体との距離規定作用)が確実に作用している。したがって、綴じ具固定具による固定作業は、ファイル本体等が変形等してしまったとしても、長期に渡って良好である。綴じ具とファイル本体との間に生じた隙間に綴じ具固定具側係合部が入り込んでしまうという危険性も回避し得る。
係合状態維持部は、綴じ具固定具側挿通部が連通孔内を移動して綴じ具固定具側係合部が係合状態となった際に生じた連通孔の空間に嵌合して当該綴じ具固定具側挿通部の移動を制限する邪魔部材を備えているとよい。
この構成によれば、邪魔部材は綴じ具固定具側挿通部の移動を制限するため、綴じ具固定具側係合部を常時一定の相対位置(係合位置)に維持することができるため、係合状態を強固に保つことができる。
なお、係合状態維持部は、綴じ具固定具と一体形成したり接着等したりして、係合状態を維持していない場合であっても綴じ具固定具に付属するように構成するとよい。綴じ具のファイル本体への取付作業時に必ず係合状態維持部が作業現場に存するので、綴じ具とファイル本体とが完全に固定されていない状態(仮係合状態)で放置されてしまうといった危険性を回避できるからである。
係合状態維持部は、好適には、連通孔における綴じ具側挿通部の相対位置も一定にする。これにより、ファイル本体と綴じ具とをより強固に・確実に固定することが可能となる。
上記綴じ具固定具は、好適には綴じ具におけるファイル本体と接する側とは反対側に配置される。
このように構成すれば、綴じ具のファイル本体への係合作業、並びに綴じ具固定装置を用いた固定作業を、全てファイルの内側からのみの操作で完了させることができる。したがって、ファイル本体における綴じ具が設けられた位置における外側に、ファイル本体外側に透明シートが配されて構成される見出し片保持部を設けた場合であっても、当該見出し片保持部によって綴じ具の着脱作業性が著しく悪化することはなく、また、見出し片保持部により外部の部材が係合部等に直接当接することが防止できる。
上記ファイルは、ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部が複数設けられ、ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成された連通孔の内の複数(全部を含む。)は、同一の綴じ具固定具から延在する複数の綴じ具固定具側挿通部がそれぞれ挿通され、複数の綴じ具固定具側挿通部が設けられた綴じ具固定具は、当該固定具に設けられた綴じ具固定具側係合部の係合方向が互いに略同一としてもよい。
このように構成すれば、係合箇所が多数存在するため綴じ具とファイル本体との係合力が高いにも関わらず、綴じ具固定具に設けられた複数の挿通部をそれぞれ連通孔に挿通して各係合部を係合状態とした段階で、綴じ具固定具に設けられた(係合部の数よりも少ない数でよい;好適には一つの)係合状態維持部を機能させるだけでファイル本体と綴じ具との固定を完了できるという作業性の高さを実現できる。
<発明の効果>
上記説明からも明らかなように、本発明によれば、綴じ具とファイル本体との固定の作業性が極めて良好な綴じ具、並びに当該綴じ具を用いたファイルを提供することができる。
<発明を実施するための最良の形態>
本発明に係る綴じ具およびファイルの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
<第一の実施形態>
図68は、本実施形態に係る綴じ具を備えたファイル5001の構成を示す斜視図である。図68に示すように、ファイル5001は、表紙としての紙製のファイル本体5080に樹脂製の綴じ具5060が樹脂製の綴じ具固定具5010によって固定されて構成されている。
[綴り機構]
図68〜図70に示すように、綴じ具5060は、2穴パンチャ等用いてパンチ穴が開けられた書類等を綴じるための、第一綴じ部5070に設けられた2本のパイプ部5073を有する。第二綴じ部5075にはパイプ部5073と嵌合するパイプ用貫通孔5074が設けられており、パイプ用貫通孔5074にパイプ部5073が嵌合された状態で挿入足5051を備えたストッパ部5053が挿入される。ストッパ部5053には、パイプ部5073内に設けられた図示しない係合部に凸部5052が係合することでパイプ部5073と第二綴じ部5075との係合状態が固定され、パイプ部5072によって綴じられた(綴じ孔にパイプ部5072が貫通された)書類等がパイプ部5073から抜け落ちなくなる。この状態を解除するには、切り欠き5072において露出しているストッパ部5073に手指を掛け、第二綴じ部5075から第一綴じ部5070とは反対方向に引き離せばよい。
[綴じ具基部・・・綴じ具側係合爪部]
図68並びに図71に示すように、綴じ具5060は、綴じ具基部5061には綴じ具側貫通部5066が一対設けられている。
各綴じ具側貫通部5066の同一方向側(図69では図右側)にはそれぞれ綴じ具側係合爪部5062が設けられている。綴じ具側係合爪部5062は、綴じ具基部5061から起立する方向に延在する綴じ具側挿通部5062bと、基端部とは反対側(先端部側)に設けられた綴じ具側係合部5062aとを備える。綴じ具側係合部5062aと綴じ具基部5061との距離は、ファイル本体5080(背表紙部5080a)の厚みと略同じである。綴じ具側係合部5062aの綴じ具側挿通部5062bとの接続部分からの延在方向に、綴じ具基部5061と綴じ具側係合部5062aとを結ぶ綴じ具側位置決め片5062cが設けられている。なお、綴じ具側係合爪部5062は、綴じ具基部5061と一体成型されている。また、綴じ具側係合爪部5062は、後述するファイル本体側孔部5086に挿通自在で、かつ、ファイル本体側位置決め片収納部5087に挿通不能な大きさである。
各綴じ具側貫通部5066における綴じ具側係合爪部5062が設けられた側とは反対側(図69では図左側)に綴じ具側位置決め片収納孔5067が連通している。
[ファイル本体]
図68に示すように、ファイル本体5080は、板状の紙部材が二箇所のヒンジで折り曲げられて表表紙部5080b、裏表紙部5080c並びに背表紙部5080aとされている。背表紙部5080aには、綴じ具5060が所定位置に配置された際に各綴じ具側貫通部5066と連通する、略同形状のファイル側貫通部5086を備えている。ファイル側貫通部5086は、綴じ具側位置決め片収納部5067と対応する位置、並びにこれと対向する位置に計4つのファイル本体側位置決め片収納部5087が設けられている。
[綴じ具固定具]
図68、図72に示すように、綴じ具固定具5010は、固定具基部5011に一対の綴じ具固定具側係合爪部5012と係合状態維持部としてのストッパ部5014を備えている。二つの綴じ具固定具側係合爪部5012間の距離は、ファイル本体側貫通部5086間の距離(綴じ具側貫通部5066間の距離)と略同一である。
図73、図74に示すように各綴じ具固定具側係合爪部5012は、それぞれ、綴じ具固定具側挿通部5012bと、これから同一方向側に延在する綴じ具固定具側係合部5012aとを備え、綴じ具固定具側係合部5012aと固定具基部5011との間に上記と略同一方向に綴じ具固定具側位置決め片5012cを備える。綴じ具固定具側係合爪部5012は、図71に示す綴じ具側係合爪5062と略同形状であるが、挿通部の長さが少なくとも綴じ具基部5061の厚み分長い。また、綴じ具固定具側係合部5012aの大きさはファイル本体側孔部5086に挿通自在で、かつ、ファイル本体側位置決め片収納部5087に挿通不能な大きさである。
図73に示すように、ストッパ部5014は、ストッパ部基部5014eが固定具基部5011とヒンジ部5014bを介して接続している。ストッパ部基部5014eにおける綴じ具固定具側挿通部5012bの延在面側に固定用凸部5014cが設けられた付勢片5014aと補強片5014bとが設けられている。また、ストッパ部基部5014eには、ヒンジ部5014bにおいて固定具基部5011に対してストッパ部5014を(ストッパ部基部5014eを)回転可能に操作するための操作部5015が設けられている。
次に、綴じ具5060が綴じ具固定具5010によってファイル本体5080に固定されてファイル5001を形成する行程(着行程)を説明する。なお、ファイル5001を綴じ具5060、綴じ具固定具5010及びファイル本体5080に分ける行程(脱行程)は下記と逆の行程であるため、説明を省略する。
[着行程1:ファイル本体5080への綴じ具5060の係合]
まず、ファイル本体5080における一対のファイル本体側孔部5086に、綴じ具5060における一対の綴じ具側係合爪部5062を挿通する。
この状態において、各綴じ具固定具側位置決め片5062cをそれぞれファイル本体側位置決め片収納部5087に収納させるように、ファイル本体5080上において綴じ具5060をスライド移動させる。
これにより、図75に示すように、綴じ具側係合部5062aと綴じ具基部5061との間に背表紙部5080aが挟持され、一対の綴じ具側貫通部5066と一対のファイル本体側貫通部5086が連通して一対の連通孔が形成される。また、並びに綴じ具側位置決め片5062cと嵌合していない2つのファイル本体側位置決め片収納部5087と一対の綴じ具側位置決め片収納部5067がそれぞれ連通する。
このように、本実施の形態に係る綴じ具5060はファイル本体5080に係合する。
[着行程2:係合状態の固定]
図76に示すように、上記のようにして形成された一対の連通孔の綴じ具5060側から、綴じ具固定具5010における一対の綴じ具固定具側係合爪部5012が挿通される。そして、各綴じ具固定具側位置決め片5012cが上記のように連通している綴じ具側位置決め片収納部5067並びにファイル本体側位置決め片収納部5087に収納させるように、綴じ具基部5061上において綴じ具側係合爪部5062の延在方向とは反対方向にスライド移動させる。
これにより、図77に示すように、綴じ具固定具側係合部5012aと固定具基部5011との間に綴じ具基部5061並びに背表紙部5080bが挟持され、綴じ具固定具5010とファイル本体5080とが係合状態となる。
上記係合状態において図77に示すようにファイル本体5080の内側から外側(図中下側から上側)へ至る連通孔(固定用連通孔)が形成されており、図79に示すようにこの固定用連通孔にストッパ部5014の付勢片5014a並びに補強片5014bが挿通される。すなわち、邪魔部材としての付勢片5014a並びに補強片5014bが上記固定用連通孔に嵌め合わされるため、綴じ具固定具5010、綴じ具5060並びにファイル本体5080の移動が制限され、上記係合状態が維持される(綴じ具5060がファイル本体5080に固定される)。
このように、本実施の形態に係るファイル1は、綴じ具5060とファイル本体5080とが「固定」される前に「係合状態」を取ることなどにより上記したような各種作用・効果を奏するだけでなく、ファイルの内側からのみの、しかも簡単な操作で綴じ具5060とファイル本体5080とを着・脱することが可能となる。
なお、当然、第一の実施形態は適宜変形することができる。例えば、図79に示すように、綴じ具固定具5010を2つ設けた構成にすることもできる。すなわち、図68の構成においてファイル本体側貫通部5086、綴じ具側貫通部5066及び綴じ具側係合爪部5062をそれぞれ4つずつ設け、上記着固定5001と同様にして形成された4つの固定用連通孔の内の2つに一方の綴じ具固定具5010を係合させ、他の2つに他方の綴じ具固定具5010を係合させ、それぞれ固定するようにしてもよい。このように構成すれば、ファイル本体5080と係合する部分(綴じ具側係合部5062a並びに綴じ具固定具側係合部5012a)の数が増えるため、ファイル本体5080と綴じ具5060との固定力が図68の構成よりも強くなるため、綴込可能な書類類の量を多くする(パイプ部5073の長さを長くする)ことが可能となる。
また、綴じ具5060等の材料も適宜選択可能であり、綴り機構も他の綴り機構にすることができる。
<第二の実施形態>
図80は、第二の実施形態に係るファイル5001bを示した斜視図である。ファイル5001bは、綴じ具5260がファイル本体5280に係合する構造は第一の実施形態と概略同様であるが、綴じ具固定具5210を用いて綴じ具5260をファイル本体5280に固定する構造は第一の実施形態と異なる特徴を有する。
[ファイル本体]
ファイル本体5280は、表表紙部5280bと、裏表紙部5280cと、表表紙部5280b及び裏表紙部5280cをつなぐ背表紙部5280aとを有す紙製の部材である。背表紙部5280aは、綴じ具5260を係止するために用いられる6つのファイル本体側孔部5286(図示されているのは5つ)と、綴じ具5260を固定する際に用いられる1つの略L字状のファイル本体側固定用孔部5288とが設けられている。ファイル本体側固定用孔部5288は、ファイル本体5280における天地方向(図中右上から左下方向)に延びた縦方向孔部5288aと、縦方向孔部5288aの一端に繋がり、そこから横方向に延びるように設けられた横方向孔部5288bとを有する。
[綴じ具]
綴じ具5260は、綴じ具基部5261と、綴じ具基部5261に設けられた第一綴じ部5270や第二綴じ部5275、図示しないパイプ部などにより構成された公知の綴り機構と、綴じ具基部5261におけるファイル本体5280と当接する側に設けられた綴じ具側係合爪部5262と(以上本実施形態においては金属製)、綴じ具基部5261の中央付近に設けられた固定具設置部5265と(本実施形態においては樹脂製)、を有する。
本実施形態における綴じ具側係合爪部5262は、第一実施形態とは異なり綴じ具側位置決め片を有していない。したがって、ファイル本体側にもファイル本体側位置決め片収納部は設けられていない。
固定具設置部5265は、ファイル本体5280と綴じ具5260とが固定された状態においてファイル本体側固定用孔部5288(横方向孔部5288b)に対応する位置に設けられた綴じ具側固定用孔部5266が設けられている。また、本実施の形態における固定具設置部5265は、4つの爪5265bが綴じ具基部5261に設けられた設置部固定用孔5261bに係合することで綴じ具5260に固定されている。
[綴じ具固定具]
図81に示すように、綴じ具固定具5210は、利用者に指先で挟持される操作部5215と、操作部5215の基端に立設された2つの立設片5212bと、夫々の立設片5212bの先端(操作部5215とは反対側)に設けられ、立設片5212bに対して略直角外向きに延びた係止片5212aと、を有する樹脂製の部材である。図80に示すように、綴じ具固定具5210は、操作部5215は綴じ具側固定用孔部5266を挿通不能で、立設片5212B並びに係止片5212aが綴じ具側固定用孔部5266を貫通してファイル本体側固定用孔部5288に挿通可能となっている。したがって、綴じ具側固定用孔部5266の幅は、図80に示す2つの立設片5212bの外側面同士の距離Wと略同じとされている。
したがって、本実施形態においては、綴じ具固定具5210は綴じ具5260に一体化された状態となっている。
次に、綴じ具5260をファイル本体5280に固定する作業手順(着作業)を説明する。なお、ファイル本体5280から綴じ具5260を取り外す作業(脱作業)は下記手順と逆の作業を行えばよいため、説明を省略する。
[係合行程]
まず、綴じ具固定具5210を綴じ具側固定用孔部5266の一端側(図80における綴じ具側固定用孔部5266の右端側)に寄せる。次いで、第1の実施形態と同様に、綴じ具側係合爪部5262をファイル本体側貫通部5286に挿通させる。そして、綴じ具固定具5210を図80中左下側(綴じ具側係合爪部の延在方向側)にスライド移動させる。これにより、綴じ具5260とファイル本体5280とが係合状態となる。
なお、綴じ具固定具5210は、上記位置(綴じ具側固定用孔部5266の右端側)にあるため、まず縦方向孔部5288aにおける横方向孔部5288bと接していない側(図80中右上側)に挿通され、上記スライド操作によって横方向孔部5288bと接している側(図80中左下側)に移動される。係合状態になると、綴じ具側固定用孔部5266と横方向孔部5288bは対向する位置に配置される(連通する)ため、綴じ具固定具5210は、綴じ具側固定用孔部5266を(横方向孔部5288bを)移動することができる状態となる。
[固定行程]
上記係合状態において、利用者は、綴じ具固定具5210を綴じ具側固定用孔部5266の延在方向(図80中右下側から左上側)に移動される。
これにより、綴じ具固定具5210と横方向孔部5288bのファイル本体5280の天地方向の縁部とが当接した状態となるため、綴じ具5260の上記スライド方向とは逆方向の動きが制限され、ファイル本体5280と綴じ具5260とが固定された状態となる。
なお、綴じ具側固定用孔部5266には、上記相対位置に配置された綴じ具固定具5210と係合する図示しない係合部が設けられているため、固定状態において綴じ具固定具5210が勝手に綴じ具側固定用孔部5266内を移動することはない。
本実施形態によっても上記したような作用・効果を奏する。また、綴じ具5260と綴じ具固定具5210とが利用者が綴じ具5260とファイル本体5280との着脱を行う際には一体化されているため、綴じ具固定具5210を紛失してしまい、ファイル5001bを組み立て不能になってしまうという危険性を極めて低くできる。
<第三の実施形態>
図82は、第三の実施の形態に係るファイル5001cを示した斜視図である。ファイル5001cは、綴じ具5360がファイル本体5380に係合する構造について第一の実施形態と概略同様であるが、固定具5310を用いて綴じ具5001cをファイル本体5380に固定する構造(係合状態を維持する機構)について第一の実施形態と異なる特徴を有する。
[ファイル本体]
図82に示すように、ファイル本体5380は、表表紙部5380bと、裏表紙部5380cと、表表紙部5380b及び裏表紙部5380cとを繋ぐ位置に設けられた背表紙部5380aとを有する。背表紙部5380aには、ファイル本体側孔部5386と、綴じ具5001cを固定する際に固定具5310に用いられる綴じ具固定用孔部5388と、を備える。綴じ具固定用孔部5388は、背表紙部5380aにおける略天地方向に延びる縦方向孔部5388aと、縦方向孔部5388aの一端に繋がり、そこから背表紙部5380aにおける略水平方向(図82中横方向)に延在する横方向孔部5388bとを備える。
[綴じ具]
図82に示すように、綴じ具5360は、綴じ具基部5361と、綴じ具基部5361に設けられた第一綴じ部5370や第二綴じ部5375や図示しないパイプ部などを構成要素とする公知の綴り機構と、綴じ具基部5361のファイル本体5380と接する面側に設けられた綴じ具側係合爪部5362と、綴じ具基部5361の中央付近に設けられ、固定具5310が設置される固定具設置部5365と、を有する。綴じ具側係合爪部5362等は第二の実施形態における綴じ具側係合爪部と同様である。なお、固定具設置部5365の詳細な構成については、固定具5310と併せて説明する。
[固定具]
固定具5310は、対称の形状を有する一組の部材からなる樹脂製の部材であり、被接続部5316a、5316bが固定具設置部5365に設けられた接続部5368a、5368bに嵌め合わされ、固定具設置部5365内において接続部5368a、5368bを中心に回動可能とされている。被接続部5316a、5316bからは、それぞれ同一方向側(図82中上側)に第一レバー部5317a、5317bが延在し、第一レバー部5317a、5317bの端部に立設部5312a、5312bが設けられている。被接続部5316a、5316bの他方の側(図82中下側)には第二レバー部5318a、5318bが設けられ、その端部(図82中下側)には操作部5315a、5315bが設けられている。
固定具設置部5365は、固定具5310の動き(接続部5368a、5368bを中心とした回動方向の動き)を許容するための綴じ具基部5361と背表紙部5380aとの間に設けられた空間(凹部)を備えており、当該空間内に固定具5310の一部(第一レバー部5317a、5317bなど)が配置される。また、操作部5315a、5315bを操作可能にするため、上記空間における図82中下側には開口部が設けられている。すなわち、図82に示すように、第二レバー部5318a、5318bの一部並びに操作部5315a、5315bは、上記開口の外側に露出している。
固定具設置部5365は上記空間内にバネ設置突起5369を備え、バネ設置突起5369にはトーションバネ5363が嵌合されている。トーションバネ5363は、両端がそれぞれ立設部5312a、5312bと当接していて、立設部5312a、5312bを互いに近づける方向に付勢している。
次に、図83〜図85を用いて、綴じ具5360をファイル本体5380に固定する手順(着手順)を説明する。
[着手順]
図83に示すように、第一実施形態や第二実施形態と同様に、綴じ具側係合爪部5362がファイル本体側貫通部5386に挿通される。この際、立設部5312a、5312bは縦方向孔部5388aの端部(横方向孔部5388bと接続していない側の端部)側に挿通される。
そして、綴じ具5360は、綴じ具側係合部延在方向(図83右側、図82下側)に移動されてファイル本体5380と係合する。この際、立設部5312a、5312bは、それぞれが挿通している縦方向孔部5388a、5388aに沿って移動する。したがって、図84に示すように、綴じ具5360が係合位置に近づくにつれて立設部5312a及び5312bは互いに遠ざかる。
綴じ具5360が係合状態となると、立設部5312a、5312bはそれぞれ縦方向孔部5388a、5388aの横方向孔部5388b、5388bとの接合点に位置するため、横方向孔部5388b、5388b方向の延在方向に移動可能となる。一方、立設部5312a及び5312bは、それぞれトーションバネ5363によって互いに近づく方向に付勢されているため、図85に示すように横方向孔部5388b、5388bを、縦方向孔部5388a、5388aとの接合側端部から他端部側(内側)へ自動的に移動する。
この状態において、綴じ具5360をファイル本体5380に対して上記移動方向と反対方向に移動しようとすると、立設部5312a及び立設部5312bが横方向孔部5388b、5388bとそれぞれ当接するために制限される。つまり、係合状態が制限された状態(固定状態)となる。
次に、ファイル本体5380から綴じ具5360を取り外す手順(脱手順)を説明する。
[脱手順]
図85に示す状態において、利用者は操作部5315a、5315bを互いに近づけると、立設部5312a及び立設部5312bは、それぞれが挿通された横方向孔部5388b、5388bにおいて互いに遠ざかる方向に移動する。このようにして立設部5312a、5312bがそれぞれ横方向孔部5388b、5388bにおける縦方向孔部5388a、5388aとの接合位置に配置されると、立設部5312a、5312bは、図85中左側において横方向孔部5388b、5388bせず、縦方向孔部5388a、5388aを移動可能となる。そのため、利用者は、綴じ具5360を上記着手順とは逆方向(図85中左方向)に移動させることで、図83に示すファイル本体5380から綴じ具5360を取り外し可能な状態となる。
このように、第三の実施形態に係るファイル5001cは、上記実施形態に係るファイルと同等の作用・効果を奏するだけでなく、綴じ具5360をファイル本体5380に取り付ける作業においては綴じ具5360を係合方向(図82における図中下方向、図83〜図85における図中左方向)に移動させるだけで、綴じ具5360及びファイル本体5380を係合させ、かつ固定させることが可能となる。
<第四の実施形態>
図86は、第四の実施形態に係るファイル5001dの構成を示した斜視図である。ファイル5001cは、第一の実施形態とは、特に固定具5410を用いて綴じ具5001dをファイル本体5480に固定する構造について異なる特徴を有する。
[ファイル本体]
図86に示すように、ファイル本体5480は、他の実施形態同様、表表紙部5480b、裏表紙部5480c並びに背表紙部5480aにより構成され、ファイル本体側孔部5486を4つ(内2つは図示せず)備える。
[綴じ具]
綴じ具5460は、綴じ具基部5461と、第一綴じ部5470や第二綴じ部5475や図示しないパイプ等により構成された公知の綴り機構と、綴じ具基部5461のファイル本体5480と接する面側に設けられた綴じ具側係合爪部5462と、固定具5410が接続される接続部5468と、固定具5410の移動をガイドするガイド部5469と、を有する。なお、綴じ具側係合爪部5462等の既出の構成要素については第二の実施形態に係るファイル5001bのものと同等のものを採用できるため、本実施形態においては詳細な説明は省略する。また、接続部5468及びガイド部5469については、固定具5410と併せて説明する。
[固定具]
固定具5410は、図示しない金属製の軸部材を介して接続部5468に回動可能に接続された被接続部5417bを備える。被接続部5417bにはレバー部5417が設けられており、レバー部5417における被接続部5417bとは反対側の端部に操作部5415が設けられている。レバー部5417と被接続部5417bとの境には上記軸部材と略並行な溝部5416が設けられており、溝部5416には金属製のクランク部材5418が嵌合している。クランク部材5418の両端部は、固定具基部5411に設けられた軸受部5413に嵌合され、固定具基部5411は、図86に示すようにガイド部5469、5469間に嵌め込まれている。固定具基部5411は、軸受部5413が設けられた側とは反対側にファイル本体側孔部5486に挿通可能な綴じ具固定具側挿通部としての立設片5412bが設けられている。立設片5412bには、綴じ具固定具側係合部としての係止片5412aが設けられている。すなわち、立設片5412b及び係止片5412aが綴じ具固定具側係合爪部を構成している。
次に、図87及び図88を用い、綴じ具5460をファイル本体5480に係合し、次いで固定する手順を説明する。なお、綴じ具5460とファイル本体5480とを分離するには、下記手順と逆の作業を行えばよいため、説明を省略する。また、固定具5410は予め綴じ具5460に組み付けられているものとする。
[係合行程]
図87に示すように、利用者はまず、接続部5468を基準として操作部5415を綴じ具側係合爪部5462方向に移動させる。これにより、固定具基部5411は、クランク部材5418を介して引っ張られ、立設片5412b及び係止片5412aが綴じ具側係合爪部側に最も近い状態となる。この状態において2つの綴じ具側係合爪部5462をファイル本体側孔部5486に挿通させ、綴じ具5460を係合方向に(綴じ具側係合部の延在方向に/図86中左下方向に)移動させることで係合状態とする。この状態において立設片5412bは係止片5412a側が綴じ具に挿通された状態となっている。
[固定行程]
利用者は、接続部5468を基準として操作部5415を綴じ具側係合爪部5462とは反対方向に移動させる。これにより、固定具基部5411はガイド部5469にガイドされてファイル本体5480上を移動する。したがって、立設片5412bがファイル本体側孔部5480内を綴じ具側係合爪部5462とは反対方向に移動し、図88に示すように係止片5412aが背表紙部5480aと係合する。この状態は接続部5468や軸受部5413、クランク部材5418などによって維持される。すなわち、操作部5415に綴じ具5460と引き離す方向の力が加わらない限り係合状態が維持され、綴じ具5460とファイル本体5480とが固定される。
本発明は、上記した実施形態に限定して解釈されるものではなく、その精神・趣旨に添って適宜変形可能である。したがって、例えば第1の実施形態における位置決め片を他の実施形態に適用するといった組み替えも好適に行われる。綴じ具を背表紙部以外の表紙部に設けるといった変形も当然に可能である。
また、綴じ具側係合爪部や固定具側係合爪部に外部物体が当接して係合位置からずれてしまう危険性を防止するため、ファイル本体側孔部が設けられた表紙部の表面側にカバー部を設けるとよい。このカバー部は、透明なビニルなどでファイル本体側孔部を覆うように表紙部に設けられる。このカバー部は、好適にはビニルと表紙部との間に一部開口部が設けられ、見出し片が収納可能とされた見出し部とされる。見出し部が設けられると、ファイルを他のファイルと区分けるための見出しを、綴じられている書類等の内容に応じて適宜変更することができるとともに、綴じ具側係合爪部等が外部から視認されなくなるためデザイン性が極めて高くなる。
このように見出し部を設けた場合には、ファイル本体側孔部を補強するための背表紙カバーを見出し部に挿通してもよい図89及び図90は、第一の実施形態に係るファイル5001に見出し部を設けた場合に適用可能な背表紙カバー5800の一例が記されている。背表紙カバー5800は、板状の本体部5801と、本体部5801の一端に設けられた第一引っかけ部5802と、本体部5801をファイル本体5080の背表紙部5080aの上辺に引っ掛けるための第二引っ掛け部5803を有している。図90に示すように、本体部5801が見出し部内に挿通され、第一引っかけ部5802が見出し部と、第二引っかけ部5803がファイル本体とそれぞれ当接すると、本体部5801に設けられたカバー側係合孔部5806、カバー側係合時位置決め孔部5807がそれぞれファイル本体側孔部5086、ファイル本体側位置決め片収納部5087と連通する。なお、綴じ具側挿通部5062bの長さや綴じ具固定具側挿通部5012bは、本体部5801の厚み分長く設計される。
ここで、上記した複数の実施形態は、下記の付記的事項に係る技術的思想にも含まれるものである。
(付記1)
ファイル本体側孔部が設けられたファイル本体に配設され、綴じ具固定具によって固定される綴じ具であって、
前記綴じ具は、
前記ファイル本体側孔部に抜き差し可能な綴じ具側挿通部と、
当該綴じ具側挿通部に設けられた、綴じ具側挿通部がファイル本体側孔部内を移動した際にファイル本体と係合する綴じ具側係合部と、を備え、
ファイル本体側孔部に綴じ具側挿通部が挿通され、綴じ具側係合部がファイル本体と係合した状態において、前記綴じ具固定具によってファイル本体に固定される、
綴じ具。
(付記2)
付記1記載の綴じ具が前記綴じ具固定具によって前記ファイル本体に固定されたファイルであって、
前記綴じ具は、さらに、綴じ具側係合部がファイル本体と係合した際にファイル本体側孔部と連通する綴じ具側孔部が設けられており、
前記綴じ具固定具は、綴じ具側孔部及びファイル本体側孔部を用いて綴じ具をファイル本体へ固定する、
ファイル。
(付記3)
前記綴じ具固定具は、
ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成された連通孔に抜き差し自在な綴じ具固定具側挿通部と、
綴じ具固定具側挿通部が連通孔に挿通されてファイル本体の表面上を移動した際に挿通方向先端側に存する部材と係合する、綴じ具固定具側挿通部に設けられた綴じ具固定具側係合部と、
綴じ具固定具側係合部による係合状態を維持する係合状態維持部と、
を備えた、付記2に記載のファイル。
(付記4)
前記係合状態維持部は、綴じ具固定具側挿通部が連通孔内を移動して綴じ具固定具側係合部が係合状態となった際に生じた連通孔の空間に嵌合して当該綴じ具固定具側挿通部の移動を制限する邪魔部材を備えている、
付記3に記載のファイル。
(付記5)
前記ファイルは、
ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部が複数設けられ、
ファイル本体側孔部及び綴じ具側孔部によって形成された連通孔の内の複数は、同一の綴じ具固定具から延在する複数の綴じ具固定具側挿通部がそれぞれ挿通され、
複数の綴じ具固定具側挿通部が設けられた綴じ具固定具は、当該固定具に設けられた綴じ具固定具側係合部の係合方向が互いに略同一である、
付記3又は付記4に記載のファイル。
(付記6)
付記1記載の綴じ具が前記綴じ具固定具によって前記ファイル本体に固定されたファイルであって、
前記ファイル本体は、さらに、ファイル本体側固定用孔部が設けられており、
前記綴じ具は、
綴じ具側挿通部がファイル本体側孔部に挿通されてファイル本体の表面上を移動されることで綴じ具側係合部がファイル本体に係合する部材であって、
さらに、綴じ具側係合部がファイル本体に係合した際にファイル本体側固定用孔部と連通する綴じ具側固定用孔部が設けられており、
前記綴じ具固定具は、ファイル本体側固定用孔部及び綴じ具側固定用孔部を用いて綴じ具をファイル本体へ固定する、
ファイル。