本発明は、騒音制御装置に関し、より特定的には、制御点に到来する騒音を能動的に低減させる騒音制御装置に関するものである。
近年、制御点に到来する騒音と逆位相の制御音を再生することで当該制御点に到来する騒音を低減させる制御(所謂、能動騒音制御)を、固定フィルタ及び適応フィルタを選択的に動作させて実現する騒音制御装置が提案されている(例えば、特許文献1など)。
以下、図27を参照して、上記従来の騒音制御装置について具体的に説明する。図27は、従来の騒音制御装置の回路構成を示す図である。図27において、騒音制御装置は、騒音マイク9101、適応フィルタ9201、制御スピーカ9401、エラーマイク9501、及び固定フィルタ9601を備える。
図27に示した騒音制御装置は、騒音源の位置や発生状況(例えばファンの駆動条件:回転数など)などが変わって騒音が変化したとき、適応フィルタ9201を選択して騒音制御を行う。騒音マイク9101は、到来する騒音源からの騒音を検出して騒音信号として適応フィルタ9201へ出力する。適応フィルタ9201は、入力される騒音信号をフィルタ係数を用いて信号処理して制御信号を生成する。適応フィルタ9201で生成された制御信号は、制御音として制御スピーカ9401から制御点に向けて放射される。エラーマイク9501は、制御点に設置され、制御点に到来する騒音源からの騒音と、制御点に到来する制御スピーカ9401からの制御音とを検出する。エラーマイク9501では、制御点に到来する騒音と制御スピーカ9401からの制御音とが干渉し、その差分がエラー信号として検出されることになる。適応フィルタ9201は、このエラー信号を最小とするように自身のフィルタ係数を更新する処理を行う。その具体的な更新手法としては、例えばFiltered−X_LMS法などがある。以下、Filtered−X_LMS法などを用いた更新処理を、係数更新処理と称す。このような係数更新処理により、適応フィルタ9201は、騒音源の位置や発生状況などが変わって騒音が変化したとき、制御点に到来する変化後の騒音に応じた最適な制御信号が生成できるように、自身のフィルタ係数を更新することができる。
その後、適応フィルタ9201で更新されるフィルタ係数が収束すると、図27に示した騒音制御装置は、収束したフィルタ係数を固定的に設定した固定フィルタ9601を選択して騒音制御を行う。
このように、図27に示した騒音制御装置は、固定フィルタ及び適応フィルタを選択的に動作させて能動騒音制御を実現している。
特開平2−285799号公報
ここで、制御点を例えば実際に騒音を聞く人の耳元とした場合、当該制御点にエラーマイク9501を設置することは、実用上難しい。このため、エラーマイク9501が必ずしも制御点に設置されるとは限らず、適応フィルタ9201で収束したフィルタ係数で低減可能な騒音が、制御点に到来する騒音と異なってしまう場合があった。そして、このような場合、制御音が悪影響を及ぼして、制御音を再生してないとき(騒音制御前)よりも騒音が増大してしまう可能性があった。
また、図27に示す騒音制御装置では、適応フィルタ9201を選択した騒音制御を行っている。このため、図27に示す騒音制御装置では、係数更新処理が実行できる程度の回路規模を予め確保しておく必要があり、回路規模を縮小できなかった。また、適応フィルタ9201のフィルタ係数を更新する際には、リアルタイムでフィルタ係数を算出する必要があるので、処理能力の要求が厳しかった。しかも、間違ったフィルタ係数が適応されると、直ちに間違った制御音が再生され、制御音を再生してないとき(騒音制御前)よりも騒音が増大し、ユーザに不快感を与えてしまう可能性があった。
それ故、本発明は、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の騒音制御装置は、制御点に向けて制御音を放射して、当該制御点に到来する所定の騒音を低減させる騒音制御装置であって、到来する所定の騒音を検出して制御用騒音信号を出力する制御用騒音検出器と、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて制御用騒音検出器からの制御用騒音信号を信号処理して制御信号を出力する制御用フィルタ部と、制御用フィルタ部からの制御信号に基づく制御音を制御点に向けて放射することによって、制御点に到来する所定の騒音を低減させる制御スピーカと、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音であるか否かを判定する騒音判定部と、騒音判定部において所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音ではないと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させる出力制御部とを備える。
なお、上記出力制御部は、例えば、後述する実施形態における出力制御部4000に相当するものである。
上記本発明の騒音制御装置では、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音ではない場合、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させる。ここで、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音ではない場合、制御音が悪影響を及ぼして、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性がある。したがって、このような場合に制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させることで、制御音が出力されないことになるので、騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。また、上記本発明の騒音制御装置では、フィルタ部は、Filtered−X_LMS法などを用いた係数更新処理を行わずに、騒音制御を行っている。このため、係数更新処理を行う適応フィルタを用いた従来の騒音制御装置と比べて、回路規模を縮小することができる。このように、上記本発明の騒音制御装置によれば、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することができる。
好ましくは、騒音判定部は、到来する所定の騒音を検出して判定用騒音信号として出力する判定用騒音検出器と、判定用騒音検出器からの判定用騒音信号を低減させるように予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、制御用騒音検出器からの制御用騒音信号を信号処理する判定用フィルタ部と、判定用騒音検出器からの判定用騒音信号と、判定用フィルタ部からの制御用騒音信号とを加算する加算器と、加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいか否かを判定することによって、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音であるか否かを判定するレベル判定部とを有し、出力制御部は、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させるとよい。
なお、上記判定用フィルタ部は、例えば、後述する実施形態における、固定フィルタ3101〜3120に相当するものである。
この場合において、騒音判定部は、加算器からの出力信号のうち、所定の周波数帯域内の信号のみを抽出し、レベル判定部へ出力する帯域抽出部をさらに有するとよい。
また、この場合において、所定の閾値は、第1閾値と当該第1閾値よりもレベルが低い第2閾値とで構成されており、レベル判定部は、加算器からの出力信号のレベルが第1閾値よりも大きいか否か、第2閾値よりも大きいか否かを判定しており、出力制御部は、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが第1閾値より大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させ、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが第2閾値以下であると判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を開始させるとよい。
また、この場合において、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルを一意に特定する騒音情報と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を制御スピーカからの制御音が低減させるように制御用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数とを関連付けて記憶する記憶部と、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられたフィルタ係数を記憶部から読み出し、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を読み出したフィルタ係数に変更する制御用変更部とをさらに備えるとよい。
また、この場合において、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルを一意に特定する騒音情報と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を制御スピーカからの制御音が低減させるように制御用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を検出した判定用騒音検出器からの判定用騒音信号を低減させるように判定用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数とを関連付けて記憶する記憶部と、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられた判定用フィルタ部のフィルタ係数を記憶部から読み出し、判定用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を当該読み出したフィルタ係数に変更する判定用変更部と、判定用変更部の変更処理後にレベル判定部で実行される判定処理において、加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられた制御用フィルタ部のフィルタ係数を記憶部から読み出し、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を当該読み出したフィルタ係数に変更する制御用変更部とをさらに備えるとよい。
また、好ましくは、制御用騒音検出器は、複数備えられており、制御用フィルタ部は、複数の制御用騒音検出器それぞれに対応した固定のフィルタ係数が予め複数設定されており、各制御用騒音検出器からの制御用騒音信号をそれぞれに対応する固定のフィルタ係数を用いて信号処理し、信号処理して得られる各制御信号を出力しており、制御スピーカは、制御用フィルタ部からの各制御信号に基づく制御音を制御点に向けて放射することによって、制御点に到来する所定の騒音を低減させており、騒音判定部は、各制御用騒音検出器のうちのいずれか1つからの制御用騒音信号を低減させるように、かつ、他の各制御用騒音検出器に対応するように予め設定された複数の固定のフィルタ係数を用いて、他の各制御用騒音検出器からの制御用騒音信号を信号処理する判定用フィルタ部と、いずれか1つの制御用騒音検出器からの制御用騒音信号と、判定用フィルタ部からの各制御用騒音信号とを加算する加算器と、加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいか否かを判定するレベル判定部とを有し、出力制御部は、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させるとよい。
また、好ましくは、騒音判定部は、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルを一意に特定する騒音情報を入力とし、当該騒音情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定することによって、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音であるか否かを判定し、出力制御部は、騒音判定部において周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させるとよい。
この場合において、騒音情報と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を制御スピーカからの制御音が低減させるように制御用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数とを関連付けて記憶する記憶部と、騒音判定部において周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられたフィルタ係数を記憶部から読み出し、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を当該読み出したフィルタ係数に変更する制御用変更部とをさらに備えるとよい。
また、好ましくは、制御用フィルタ部の固定のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、所定のタイミングで、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を、フィルタ係数算出部が算出したフィルタ係数に更新するフィルタ係数更新部をさらに備えるとよい。
また、騒音と制御スピーカからの制御音との合成信号を検出する制御点に設置した誤差検出器と、制御用騒音検出器で検出した制御用騒音信号と誤差検出器で検出した誤差信号とを記憶する信号記憶部と、信号記憶部に記憶した騒音信号および誤差信号を用いて、制御用フィルタ部の固定のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、所定のタイミングで、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を、フィルタ係数算出部が算出したフィルタ係数に更新するフィルタ係数更新部をさらに備えるとよい。
この場合において、誤差検出器で検出した誤差信号における信号レベルを判定する効果判定部をさらに有し、効果判定部の判定結果に従って、信号記憶部の記憶動作開始と制御用フィルタ部の動作停止とが制御されるとよい。
また、この場合において、フィルタ係数算出部は、信号記憶部に記憶された制御用騒音信号を信号処理する適応フィルタと、適応フィルタの出力を信号処理する音響系フィルタと、音響系フィルタの出力信号と信号記憶部に記憶された誤差信号とを加算する加算器とから構成され、音響系フィルタには、制御用スピーカから誤差検出器までの伝達関数が係数として設定されており、適応フィルタは、加算器の加算結果を係数更新用誤差信号として最小化するように係数を更新するとよい。
本発明によれば、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することができる。
図1は、航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図である。
図2は、図1に示す座席2000に設置された騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図3は、検証回路の回路構成を示す図である。
図4は、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を示す図である。
図5は、座席2000が座席Iのままで、時刻がt3〜t4である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を示す図である。
図6は、座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を示す図である。
図7は、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt3〜t4である条件下で、係数(1)で固定したときのエラー信号差分の観測結果を示す図である。
図8は、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、係数(2)で固定したときのエラー信号差分の観測結果を示す図である。
図9は、座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、係数(1)で固定したときのエラー信号差分の観測結果を示す図である。
図10は、航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図である。
図11は、図10に示す座席2000に設置された、第1の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図12は、騒音判定部3000の具体的な回路構成を示す図である。
図13は、レベル判定部3170の判定基準である閾値を示した図である。
図14は、第1の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。
図15は、ステップS100の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
図16は、図1に示す座席2000に設置された、第2の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図17は、騒音判定部3500の具体的な回路構成を示す図である。
図18は、記憶部6100に記憶されるデータ構造を示す図である。
図19は、第2の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。
図20は、図1に示す座席2000に設置された、第3の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図21は、第3の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。
図22は、図1に示す座席2000に設置された、第4の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図23は、記憶部6200に記憶されるデータ構造を示す図である。
図24は、第4の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。
図25は、第5の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図26は、フィルタ係数算出部7000の具体的な回路構成を示す図である。
図27は、従来の騒音制御装置の回路構成を示す図
符号の説明
1101〜1120、9101〜9120 騒音マイク
1000 制御用フィルタ部
1401〜1404、9401〜9404 制御スピーカ
3000、3500、3600、3700 騒音判定部
3160、4000 出力制御部
1201−1〜1220−1、1201−2〜1220−2、1201−3〜1220−3、1201−4〜1220−4、3101〜3120、9601 固定フィルタ
1301〜1304、3140、7301〜7304、7501〜7502、9301〜9304 加算器
3130、7601〜7604、9501〜9502 エラーマイク
3150 バンドパスフィルタ
3170 レベル判定部
5100 判定用変更部
5200、5300 制御用変更部
5400 フィルタ係数更新部
6100、6200 記憶部
7000 フィルタ係数算出部
7001 信号記憶部
7002 効果判定部
7401〜7404 音響系フィルタ
7201-1〜7220−1、7201-2〜7220−2、9201−1〜9220−1、9201−2〜9220−2、9201−3〜9220−3、9201−4〜9220−4 適応フィルタ
最初に、本発明に係る実施形態について説明する前に、本発明の基本概念を説明する。
適応フィルタを用いた騒音制御が例えば航空機内で行われるとすると、その構成は、図1及び図2に示す構成となる。図1は、航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図である。図2は、図1に示す座席2000に設置された騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図2において、騒音制御装置は、騒音マイク9101〜9120、適応フィルタ9201−1〜9220−1、適応フィルタ9201−2〜9220−2、適応フィルタ9201−3〜9220−3、適応フィルタ9201−4〜9220−4、加算器9301〜9304、制御スピーカ9401〜9404、及びエラーマイク9501〜9502を備える。図1に示すように、騒音マイク9101〜9120は、座席2000の外側に設置される。制御スピーカ9401〜9404は、座席2000の内側であって乗員Aの耳元と同じ高さの位置に設置される。制御点は、乗員Aの耳元とし、エラーマイク9501〜9502は、実用上難しいが、ここでは仮に、制御点である乗員Aの耳元に設置されているとする。
騒音マイク9101で検出された騒音は、騒音信号として適応フィルタ9201−1〜9201−4へ出力される。騒音マイク9102で検出された騒音は、騒音信号として適応フィルタ9202−1〜9202−4へ出力される。以下、同様に、騒音マイク9103〜9120で検出された騒音は、対応する適応フィルタ9203〜9220の「−1」〜「−4」のそれぞれへ出力される。
適応フィルタ9201−1には、Filtered−X_LMS法で予め必要とされるところの、制御スピーカ9401からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9401からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−1は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。同様に適応フィルタ9202−1には、制御スピーカ9401からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9401からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9202−1は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。以下、同様に、適応フィルタ9203−1〜9220−1それぞれには、制御スピーカ9401からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9401からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9203−1〜9220−1は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。
また、適応フィルタ9201−2〜9220−2それぞれには、制御スピーカ9402からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9402からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−2〜9220−2は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。また、適応フィルタ9201−3〜9220−3それぞれには、制御スピーカ9403からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9403からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−3〜9220−3は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。また、適応フィルタ9201−4〜9220−4それぞれには、制御スピーカ9404からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9404からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−4〜9220−4は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。
適応フィルタ9201−1〜9220−1は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9301へそれぞれ出力する。加算器9301は、適応フィルタ9201−1〜9220−1からの制御信号を加算し、制御スピーカ9401へ出力する。制御スピーカ9401は、加算器9301からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。適応フィルタ9201−2〜9220−2は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9302へそれぞれ出力する。加算器9302は、適応フィルタ9201−2〜9220−2からの制御信号を加算し、制御スピーカ9402へ出力する。制御スピーカ9402は、加算器9302からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。適応フィルタ9201−3〜9220−3は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9303へそれぞれ出力する。加算器9303は、適応フィルタ9201−3〜9220−3からの制御信号を加算し、制御スピーカ9403へ出力する。制御スピーカ9403は、加算器9303からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。適応フィルタ9201−4〜9220−4は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9304へそれぞれ出力する。加算器9304は、適応フィルタ9201−4〜9220−4からの制御信号を加算し、制御スピーカ9404へ出力する。制御スピーカ9404は、加算器9304からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。以上の係数更新処理によって、図1及び図2に示す騒音制御装置は、制御点である乗員Aの耳元に到来する騒音を低減させている。
ここで、騒音の周波数および/またはレベルがほとんど変化しない、あるいは或る程度の変動量内で変動している場合、固定フィルタのみで騒音制御しても、適応フィルタで騒音制御した場合と同等の騒音低減効果を得ることができる。このことを検証するため、図3に示す検証回路を座席2000に設置し、座席位置と時刻の条件を変化させて、エラー信号を観測した。図3は、検証回路の回路構成を示す図である。以下、検証回路について具体的に説明する。
図3において、騒音マイク9101〜9120からの騒音信号は、対応する適応フィルタ9201−1〜9220−1で信号処理され、加算器9301で加算される。エラーマイク9501で検出した騒音は、加算器9301へ出力される。加算器9301での加算結果をエラー信号とみなし、適応フィルタ9201−1〜9220−1は、このエラー信号を最小とするように自身のフィルタ係数を更新する。これによって、加算器9301での加算結果が低減する。これは、エラーマイク9501で検出される騒音が低減されることを意味する。なお、適応フィルタ9201−1〜9220−1は、図2では、Filtered−X_LMS法基づいた係数更新を行なっていたが、図3では、一般的なLMS法による係数更新を行なう。
以下、座席位置と時刻の条件を変化させて、係数更新処理により適応フィルタ9201−1〜9220−1のフィルタ係数が収束したときのエラー信号の観測結果を考察する。なお、以下の観測結果は、航空機が巡航速度で飛行中に観測した結果である。
図4は、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、エラー信号を観測した結果を示す図であり、制御時と非制御時のエラー信号差分を示している。つまり0dB位置より下がっていれば、騒音が低減されていることになる。座席Iは、航空機前方部の窓際席である。図4によると、エラー信号差分は、およそ1kHz以下でレベルが低減しており、500Hz以下で10dB以上低減している。このときの適応フィルタ9201−1〜9220−1で収束したフィルタ係数の組を、係数(1)とする。また、座席2000が座席Iのままで、時刻がt3〜t4である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を、図5に示す。図5によると、エラー信号差分は、図4と同様、およそ1kHz以下でレベルが低減しており、500Hz以下で10dB以上低減している。このときの適応フィルタ9201−1〜9220−1で収束したフィルタ係数の組を、係数(2)とする。また、座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を、図6に示す。座席IIは、航空機前方部の機内中央席であり、座席Iと座席IIは、ともに航空機前方部という所定のエリア内に存在している。図6によると、エラー信号差分は、図4と同様、およそ1kHz以下でレベルが低減しており、500Hz以下で10dB以上低減している。このときの適応フィルタ9201−1〜9220−1で収束したフィルタ係数の組を、係数(3)とする。なお、t2とt3との時間間隔、t4とt5との時間間隔は、それぞれ十分に離れた間隔(30分以上)であるとする。
ここで、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt3〜t4である条件下で、適応フィルタ9201−1〜9220−1の係数更新処理を停止し、係数(1)をそれぞれに固定的に設定し、固定フィルタとして動作させたときのエラー信号差分の観測結果を、図7に示す。図7によると、エラー信号差分には、係数(2)で制御した図5と同様の騒音低減効果が得られていることがわかる。反対に、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、適応フィルタ9201−1〜9220−1の係数更新処理を停止し、係数(2)をそれぞれに固定的に設定し、固定フィルタとして動作させたときのエラー信号差分の観測結果を、図8に示す。図8によると、エラー信号差分には、係数(1)で制御した図4と同様の騒音低減効果が得られていることがわかる。さらに、座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、適応フィルタ9201−1〜9220−1の係数更新処理を停止し、係数(1)をそれぞれに固定的に設定し、固定フィルタとして動作させたときのエラー信号差分の観測結果を、図9に示す。図9によると、エラー信号差分には、係数(3)で制御した図6と同様の騒音低減効果が得られていることがわかる。
以上の観測結果より、次のことが考察される。図4及び図7の観測結果と、図5及び図8の観測結果により、少なくとも同じ座席であれば、異なる時刻に求めたフィルタ係数が固定的に設定された固定フィルタのみで制御しても、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。つまり、騒音の周波数および/またはレベルが或る程度の変動量内で時間変動している場合でも、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。また、図6及び図9の観測結果により、所定のエリア内であれば、異なる場所で求めたフィルタ係数が固定的に設定された固定フィルタのみで制御しても、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。つまり、騒音の周波数および/またはレベルが場所に応じて或る程度の変動量内で変動している場合でも、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。
このように、上記観測結果から、巡航速度で飛行中の航空機内の所定のエリア内のように、騒音の周波数および/またはレベルが或る程度の変動量内で変動している場合であっても、当該騒音に基づき求められたフィルタ係数が固定的に設定された固定フィルタのみで騒音制御することで、適応フィルタで騒音制御した場合と同等の騒音低減効果が得られることがわかる。しかしながら、騒音の周波数および/またはレベルの変動量が大きくなりすぎると、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性がある。これらを踏まえ、本発明では、上記観測結果から騒音の低減量を予測しつつ、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまうときの騒音の周波数および/またはレベルの変動量以下の変動量を閾値(所定量)として設定する。そして、変動量が当該閾値以下であれば、制御点に到来する騒音が固定フィルタのフィルタ係数と対応する騒音である、つまり騒音が安定しているとみなして、制御音を出力させる。一方、変動量が当該閾値よりも大きければ、制御点に到来する騒音が固定フィルタのフィルタ係数と対応する騒音ではない、つまり、騒音が不安定になったとみなして、制御音を出力させないようにする。これにより、閾値を任意に設定可能にしつつも、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。また、本発明では、固定フィルタのみを用いることになるので、係数更新処理を行う適応フィルタを用いた従来の騒音制御装置よりも回路規模を縮小させることができる。
以下、第1〜第4の実施形態において具体的な構成例を挙げて、上記基本概念を実現するための騒音制御装置について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図10及び図11を参照して、本発明の第1の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成について説明する。図10は、航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図である。図11は、図10に示す座席2000に設置された、第1の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図11において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3000、及び出力制御部4000を備える。図10に示すように、騒音マイク1101〜1120は、制御用の騒音を検出するための制御用騒音検出器であり、座席2000の外側に設置される。騒音マイク1101〜1120は、到来する騒音を検出して制御用騒音信号として制御用フィルタ部1000へ出力する。制御スピーカ1401〜1404は、座席2000の内側であって乗員Aの耳元と同じ高さの位置に設置される。制御点は、乗員Aの耳元とする。制御スピーカ1401〜1404は、制御用フィルタ部1000で生成された制御信号を入力とし、制御点に向けて制御音を放射する。
制御用フィルタ部1000は、固定フィルタ1201−1〜1220−1、固定フィルタ1201−2〜1220−2、固定フィルタ1201−3〜1220−3、固定フィルタ1201−4〜1220−4、及び加算器1301〜1304を備える。
騒音マイク1101で検出された騒音は、制御用騒音信号として固定フィルタ1201−1〜1201−4へ出力される。騒音マイク1102で検出された騒音は、制御用騒音信号として固定フィルタ1202−1〜1202−4へ出力される。以下、同様に、騒音マイク1103〜1120で検出された騒音は、対応する固定フィルタ1203〜1220の「−1」〜「−4」のそれぞれへ出力される。
固定フィルタ1201−1は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、騒音マイク1101からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1301へ出力する。固定フィルタ1201−1に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1401から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。ここでは、所定の騒音は、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとし、固定フィルタ1201−1〜1220−4に設定されるフィルタ係数は、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルが或る程度の変動量内で変動しているときに求められた係数であるとする。固定フィルタ1202−1は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、騒音マイク1102からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1301へ出力する。固定フィルタ1202−1に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1401から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。以下、同様に、固定フィルタ1203−1〜1220−1は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1103〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1301へ出力する。固定フィルタ1203−1〜1220−1に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1401から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1301は、固定フィルタ1201−1〜1220−1からの制御信号を加算し、制御スピーカ1401へ出力する。制御スピーカ1401は、加算器1301からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
また、固定フィルタ1201−2〜1220−2は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1101〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1302へ出力する。固定フィルタ1201−2〜1220−2に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1402から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1302は、固定フィルタ1201−2〜1220−2からの制御信号を加算し、制御スピーカ1402へ出力する。制御スピーカ1402は、加算器1302からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
また、固定フィルタ1201−3〜1220−3は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1101〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1303へ出力する。固定フィルタ1201−3〜1220−3に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1403から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1303は、固定フィルタ1201−3〜1220−3からの制御信号を加算し、制御スピーカ1403へ出力する。制御スピーカ1403は、加算器1303からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
また、固定フィルタ1201−4〜1220−4は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1101〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1304へ出力する。固定フィルタ1201−4〜1220−4に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1404から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1304は、固定フィルタ1201−4〜1220−4からの制御信号を加算し、制御スピーカ1404へ出力する。制御スピーカ1404は、加算器1304からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
以上の制御用フィルタ部1000の処理によって、図10及び図11に示す騒音制御装置は、制御点である乗員Aの耳元に到来する所定の騒音を低減させることができる。
騒音判定部3000は、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する。騒音判定部3000は、変動量が所定量以下である場合、所定の騒音が安定しているとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの出力を開始させるための出力開始信号を出力制御部4000へ出力する。騒音判定部3000は、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合、所定の騒音が不安定になったとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの制御信号の出力を停止させるための出力停止信号を、出力制御部4000へ出力する。
以下、図12を参照して、騒音判定部3000の具体的な回路構成について説明する。図12は、騒音判定部3000の具体的な回路構成を示す図である。図12において、騒音判定部3000は、固定フィルタ3101〜3120、判定用エラーマイク3130、加算器3140、バンドパスフィルタ(BPF)3150、出力制御部3160、及びレベル判定部3170を備える。
固定フィルタ3101は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、騒音マイク1101からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器3140へ出力する。固定フィルタ3101に設定されるフィルタ係数は、所定の騒音に基づいて、後述する加算器3140の出力が最小となるように予め求められた係数である。以下、同様に、固定フィルタ3103〜3120は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1103〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器3140へ出力する。固定フィルタ3103〜3120に設定されるフィルタ係数は、所定の騒音に基づいて、後述する加算器3140の出力が最小となるように予め求められた係数である。ここでは一例として、固定フィルタ3101〜3120に設定されるフィルタ係数の組を、図3及び図4で説明した係数(1)とする。
判定用エラーマイク3130は、判定用騒音検出器であり、図3に示したエラーマイク9501のように制御点に設置される必要がなく、例えば座席2000の座面下部や背面などの乗員Aの邪魔にならない位置に設置される。判定用エラーマイク3130は、到来する騒音を検出し、判定用騒音信号として加算器3140へ出力する。
なお、ハードウエアとしての本騒音制御装置が座席2000の下部空間に設置された場合、判定用エラーマイク3130は、本騒音制御装置内、あるいは本騒音制御装置の筐体に設置されてもよい。また、判定用エラーマイク3130として、新たなマイクを用意するのではなく、騒音マイク1101〜1120のいずれか1つを利用してもよい。例えば図12における騒音マイク1120を判定用エラーマイク3130として利用する場合、騒音判定部3000に制御用騒音信号を入力する騒音マイクは、騒音マイク1101〜1119となり、騒音判定部3000は、固定フィルタ3101〜3119を有することになる。このように、判定用エラーマイク3130として騒音マイク1101〜1120のいずれか1つを利用する場合、騒音判定部3000の固定フィルタが1つ削減され、その分の演算量を削減することができる。
加算器3140は、固定フィルタ3101〜3120からの制御信号と、判定用エラーマイク3130からの判定用騒音信号とを加算し、BPF3150へ出力する。加算器3140からの出力信号の周波数特性は、例えば図4で示したようになる。
BPF3150は、加算器3140からの出力信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを抽出する。つまり、BPF3150は、加算器3140からの出力信号のうち、不要な周波数帯域の信号を除去する。所定の周波数帯域としては、例えば図4の結果を考慮し、20〜500Hzとする。
出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を制御し、固定フィルタ3101〜3120からの制御信号の出力を停止させるか、開始させるかを制御する。出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を停止させて制御信号の出力を停止させた場合、固定フィルタ3101〜3120が非動作中であることを示す非動作中信号を、レベル判定部3170へ出力する。一方、出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を開始させて制御信号の出力を開始させた場合、固定フィルタ3101〜3120が動作中であることを示す動作中信号を、レベル判定部3170へ出力する。
レベル判定部3170は、出力制御部3160から非動作中信号を受け取ったとき、BPF3150からの出力信号のレベルを非動作レベルとして計算する。そして、レベル判定部3170は、計算した非動作レベルに基づき閾値を決定し、決定した閾値を自身に記憶する。この閾値は、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量に関する閾値(所定量)に相当することになる。具体的に例えば、レベル判定部3170は、図13に示すように、非動作レベルから10dBだけ低いレベルを閾値として決定する。図13は、レベル判定部3170の判定基準である閾値を示した図である。その後、レベル判定部3170は、出力制御部3160から動作中信号を受け取ったとき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する。そして、レベル判定部3170は、計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する。レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する。なお、レベル判定部3170が計算する出力信号のレベルは、例えば出力信号のオーバーオールレベルとする。
出力制御部4000は、騒音判定部3000から出力停止信号を受け取ったとき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタ(1201−1〜1220−1、1201−2〜1220−2、1201−3〜1220−3、1201−4〜1220−4)の動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる。一方、出力制御部4000は、騒音判定部3000から出力開始信号を受け取ったとき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる。
以下、図14を参照して、第1の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図14は、第1の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3000内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。また、騒音判定部3000の初期状態において、所定の騒音の周波数および/またはレベルは、或る程度の変動量内で変動しているとする。
図14において、処理が開始されると、騒音判定部3000の初期状態において、閾値を決定するための処理が行われる(ステップS100)。図15は、ステップS100の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。図15において、出力制御部3160は、騒音判定部3000内の固定フィルタの動作を停止させて制御信号の出力を停止させ、非動作中信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS1000)。ステップS1000の次に、レベル判定部3170は、非動作中信号に基づき、BPF3150からの出力信号のレベルを非動作レベルとして計算する(ステップS1001)。レベル判定部3170は、ステップS1001で計算した非動作レベルから10dBだけ低いレベルを閾値として決定し、自身に記憶する(ステップS1002)。ステップS1002の次に、出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を開始させて制御信号の出力を開始させて、動作中信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS1003)。
再び図14に戻って説明を続ける。レベル判定部3170は、動作中信号に基づき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する(ステップS101)。ステップS101の次に、レベル判定部3170は、ステップS101で計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS102)。
レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS102でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS103)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS104)。ステップS104の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS105)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS105でNo)、処理は、ステップS101へ戻る。
一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合(ステップS102でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS106)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS107)。ステップS107の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS108)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS108でNo)、処理は、ステップS101へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置は、騒音が不安定になった場合、制御信号の出力を停止させている。このため、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。さらに、本実施形態に係る騒音制御装置は、固定フィルタのみを用いて騒音制御している。このため、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小することができる。このように、本実施形態によれば、制御点に到来する騒音を騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することができる。
なお、上述では、騒音判定部3000がBPF3150を備えるとしたが、これに限定されない。騒音判定部3000は、BPF3150の代わりに、例えばローパスフィルタや、ハイパスフィルタ、あるいはオールパスフィルタなどを備えていてもよい。
また、上述では、レベル判定部3170は、BPF3150からの出力信号のオーバーオールレベルを計算していたが、これに限定されない。例えば、レベル判定部3170にFFT機能をもたせて図4のような周波数特性を直接求め、予め決められた周波数(例えば、50Hz、100Hz、500Hzなど)のレベルを直接読み取り、当該周波数のレベルが閾値よりも大きいか否かを判定させるようにしてもよい。
また、上述では、レベル判定部3170は、非動作レベルから10dBだけ低いレベルを閾値としたが、これに限定されない。当該閾値は、非動作レベルよりも低いレベルに設定されればよく、例えば、非動作レベルから6dBだけ低いレベルであってもよい。
また、上述では、レベル判定部3170は、閾値を1つだけ設定していたが、2つ設定してもよい。例えば、非動作レベルよりも低い第1閾値と、当該第1閾値よりもレベルが低い第2閾値とを設定したとする。この場合、レベル判定部3170は、BPF3150からの出力信号のレベルが第1閾値よりも大きいか否か、第2閾値よりも大きいか否かを判定する。そして、レベル判定部3170は、動作レベルが第1閾値よりも大きいと判定した場合、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。一方、レベル判定部3170は、動作レベルが第2閾値以下であると判定した場合、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する。このように、レベル判定部3170が、第1閾値及び第2閾値との間を判定しないようにすることで、所定の騒音が急激に変化した場合であっても、制御信号の出力の停止/開始を緩やかにすることができる。
また、上述では、出力制御部4000は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止または開始させることによって、制御信号の出力を停止または開始させていたがこれに限定されない。例えば、制御用フィルタ部1000内の加算器1301〜1304それぞれの後段にスイッチを追加し、当該スイッチをオン/オフさせることによって、制御信号の出力を停止または開始させるようにしてもよい。
また、上述では、騒音制御装置の構成は、騒音マイクを1101〜1120の計20個、制御スピーカを1401〜1404の計4個備える構成であったが、騒音マイクを1個、制御スピーカを1個備える構成であってもよい。この場合、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3000は、固定フィルタを1個ずつ備えることになる。なおこの場合、騒音判定部3000の判定用エラーマイク3130は、騒音マイクで代用することはできないので、騒音マイクとは別の新たなマイクで構成する必要がある。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であれば、騒音が安定しているとみなし、制御信号の出力を停止しなかった。しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、実際には、騒音は所定量以下で変動している。例えば、巡航速度で飛行中、航空機内の騒音は、エンジン負荷の変動などによって変動する。エンジン負荷は、例えば、飛行状況に応じてエンジン出力を上げたり下げたりすることで変動する。第2の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更することによって、常に最適な騒音低減効果を得ることを目的とする。
以下、図16を参照して、第2の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図16は、図1に示す座席2000に設置された、第2の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。図16では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図16において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3500、出力制御部4000、判定用変更部5100、制御用変更部5200、及び記憶部6100を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図11に示した騒音制御装置に対して、騒音判定部3000が騒音判定部3500へ入れ代わった点、判定用変更部5100、制御用変更部5200、及び記憶部6100を新たに備える点で異なる。その他の構成については、図11に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。
騒音判定部3500の具体的な構成は、図17に示す構成となる。図17は、騒音判定部3500の具体的な回路構成を示す図である。図17に示すように、騒音判定部3500の構成については、固定フィルタ3101〜3120のフィルタ係数が判定用変更部5100によって変更される点で図12に示した騒音判定部3000の構成と異なる。それ以外の構成については、図12に示した騒音判定部3000と同様であり、ここでは説明を省略する。また、騒音判定部3500の処理は騒音判定部3000と若干異なるが、これについては、後述する騒音判定処理及び出力制御処理において詳細に説明する。
判定用変更部5100は、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出す。外部情報については、後述する。判定用変更部5100は、騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更する。
制御用変更部5200は、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出す。外部情報については、後述する。制御用変更部5200は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更する。
記憶部6100には、図18に示すように、騒音判定部3500及び制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数と、外部情報とが関連付けして記憶される。図18は、記憶部6100に記憶されるデータ構造を示す図である。記憶部6100に記憶に記憶される外部情報は、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報である。変動量が所定量以下となる外部情報としては、例えば、エンジン負荷に関する情報、飛行高度に関する情報、飛行速度に関する情報、現在位置に関する情報、及び気象情報などが挙げられる。記憶部6100には、このような複数種類の外部情報が記憶されている。図18の例では、エンジン負荷に関する情報と、騒音判定部3500及び制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数とが関連付けされた様子を示している。なお、騒音判定部3500内には固定フィルタが20個、制御用フィルタ部1000内には固定フィルタが80個ある。また、図18に示す1〜5は、エンジン負荷の大小を示し、エンジン負荷の大小に応じてこれら100個のフィルタ係数(x1〜x20、y1〜y80)からなる組(「−1」〜「−5」)が関連付けされている。
以下、図19を参照して、騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図19は、第2の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3000内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。また、騒音判定部3000の初期状態において、所定の騒音の周波数および/またはレベルは、或る程度の変動量内で変動しているとする。
図19において、処理が開始されると、騒音判定部3000の初期状態において、閾値を決定するための処理が行われる(ステップS200)。ステップS200の処理は、図15に示した処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。レベル判定部3170は、動作中信号に基づき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する(ステップS201)。ステップS201の次に、レベル判定部3170は、ステップS201で計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS202)。
レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS202でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS203)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS204)。ステップS204の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS205)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS205でNo)、処理は、ステップS201へ戻る。
一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合(ステップS202でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、フィルタ係数を変更する指示を示す変更指示信号を、判定用変更部5100へ出力する(ステップS206)。判定用変更部5100は、レベル判定部3170から変更指示信号を受け取ったとき、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を記憶部6100から読み出し、騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更し、変更の完了を示す変更完了信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS207)。レベル判定部3170は、判定用変更部5100から変更完了信号を受け取ったとき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する(ステップS208)。そして、レベル判定部3170は、計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS209)。
レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS209でYes)、変更したフィルタ係数を元のフィルタ係数に復帰させる指示を示す復帰指示信号を、判定用変更部5100へ出力する(ステップS210)。判定用変更部5100は、レベル判定部3170から復帰指示信号を受け取ったとき、騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、元のフィルタ係数に変更し、復帰の完了を示す復帰完了信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS211)。
一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合(ステップS209でNo)、フィルタ係数を変更する指示を示す変更指示信号を、制御用変更部5200へ出力する(ステップS212)。制御用変更部5200は、レベル判定部3170から変更指示信号を受け取ったとき、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を記憶部6100から読み出し、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更し、変更の完了を示す変更完了信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS213)。
ステップS211の復帰完了信号、またはステップS213の変更完了信号を受け取ったとき、レベル判定部3170は、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS214)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS215)。ステップS215の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS216)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS216でNo)、処理は、ステップS201へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置では、所定の騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更する。このため、本実施形態に係る騒音制御装置では、騒音が安定しているとみなした場合において、常に最適な騒音低減効果を得ることができる。なお、このフィルタ係数の変更処理は、適応フィルタで行われる係数更新処理と異なり、外部情報に応じたフィルタ係数を選択するのみである。このため、本実施形態に係る変更処理を行っても、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小させることができる。
なお、上述では、航空機に関する情報を外部情報としたが、これに限定されない。例えば、騒音制御装置が列車や自動車に設置される場合、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報であれば、走行位置や走行速度などの情報を外部情報として用いてもよい。具体的には、列車は予め決められたレールの上を走るので、路線情報や各路線の距離情報などを組み合わせて走行位置を特定することができ、その特定した走行位置を、外部情報として用いることができる。この場合、走行位置がトンネル内であるか、鉄橋上であるかを予め把握することができるので、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する外部情報となり得る。自動車の場合、道路が多く複雑で周囲環境も千差万別なので、騒音の周波数および/またはレベルを予め把握するのは列車よりも難しいが、カーナビゲーションシステムと道路インフラ情報などを組み合わせれば、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する外部情報を生成することも可能である。
なお、上述では、判定用変更部5100が騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を変更し、再度、レベル判定部3170において判定処理を行っていた。これは、外部情報の信頼性を検証するためである。したがって、このような検証を行う必要がない場合には、直接、制御用変更部5200が制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を変更するようにしてもよい。
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態で説明した騒音判定部3000及び3500は、図12及び図17に示したような回路構成を有し、レベル判定部3170でのレベル判定を行うことによって、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定していた。これに対し、本実施形態では、レベル判定を行わずに、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定することを目的とする。
以下、図20を参照して、第3の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図20は、図1に示す座席2000に設置された、第3の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。図20では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図20において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3600、及び出力制御部4000を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図11に示した騒音制御装置に対して、騒音判定部3000が騒音判定部3600へ入れ代わった点で異なる。その他の構成については、図11に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。
騒音判定部3600は、入力される外部情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する。騒音判定部3600は、変動量が所定量以下である場合、所定の騒音が安定しているとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの制御信号の出力を開始させるための出力開始信号を、出力制御部4000へ出力する。騒音判定部3600は、入力される外部情報に基づいて、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合、所定の騒音が不安定になったとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの出力を停止させるための出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。
ここで、本実施形態における外部情報は、第2の実施形態と同様、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報である。なお、変動量が所定量よりも大きくなる外部情報としては、例えば、高度情報、シートベルトサイン、速度情報、及び現在位置などが挙げられる。以下、各外部情報毎に騒音判定部3600がどのように判定するかについて説明する。航空機では、所定の高度(例えば10000フィート)以上になると水平飛行で、かつ一定速度の巡航状態となる。このため、或る高度(例えば10000フィート)以上になると、所定の騒音の変動が少なくなり、その変動量が所定量以下となる。よって、外部情報が高度情報である場合、騒音判定部3600は、高度が所定の高度以上である場合、変動量が所定量以下であると判定し、高度が所定の高度より低い場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。また、巡航状態にはシートベルトサインが消える(オフする)。よって、外部情報がシートベルトサインである場合、騒音判定部3600は、シートベルトサインがオフである場合、変動量が所定量以下であると判定し、シートベルトサインがオンである場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。また、巡航状態には航空機は一定速度で飛行する。よって、外部情報が速度情報である場合、騒音判定部3600は、速度が一定速度である場合、変動量が所定量以下であると判定し、速度が一定速度ではない場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。また、気流の乱れが発生する位置に航空機が到達したとき、所定の騒音の変動が大きくなり、その変動量が所定量より大きくなる。なお、この位置は、飛行当日の気象情報に基づき、予め特定することができる。よって、外部情報が現在位置である場合、騒音判定部3600は、現在位置が予め特定した位置と一致しない場合、変動量が所定量以下であると判定し、現在位置が予め特定した位置と一致した場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。
以下、図21を参照して、第3の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図21は、第3の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3600内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。
図21において、処理が開始されると、騒音判定部3600は、外部情報を取得する(ステップS300)。騒音判定部3600は、ステップS300で取得した外部情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する(ステップS301)。騒音判定部3600は、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合(ステップS301でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS302)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS303)。ステップS303の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS304)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS304でNo)、処理は、ステップS300へ戻る。
一方、騒音判定部3600は、変動量が所定量以下であると判定した場合(ステップS301でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS305)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS306)。ステップS306の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS307)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS307でNo)、処理は、ステップS300へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置は、騒音が不安定になった場合、制御信号の出力を停止させている。このため、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。さらに、本実施形態に係る騒音制御装置は、固定フィルタのみを用いて騒音制御している。このため、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小することができる。このように、本実施形態によれば、制御点に到来する騒音を騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することができる。
なお、上述では、騒音判定部3600は、外部情報として、高度情報、シートベルトサイン、速度情報、及び現在位置を用いていたが、これに限定されず、他の外部情報を用いてもよい。また、より判定精度を上げるために、騒音判定部3600は、例えば高度情報、シートベルトサイン、速度情報、及び現在位置を任意に組み合わせて判定するようにしてもよい。また、外部情報を用いた騒音判定部3600の判定を、第1及び第2の実施形態と併用してもよい。これにより、より判定精度を上げることができる。
なお、騒音判定部3600は、上記外部情報とは別に、乗員Aが座席に着座しているか否かを示す着座情報を用いてもよい。例えば、座席2000に設けたセンサを用いて、乗員Aが座席に着座しているか否かを検出すれば、当該センサからの検出信号を着座情報を示す信号として取得することができる。騒音判定部3600は、着座情報に基づき、乗員Aが座席に着座しているか否かを判定する。騒音判定部3600は、乗員Aが座席に着座していると判定したとき、出力開始信号を出力制御部4000へ出力し、乗員Aが座席に着座していないと判定したとき、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。これにより、不要な騒音制御を停止させることができ、演算量を低減させることができる。
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であれば、騒音が安定しているとみなし、制御信号の出力を停止しなかった。しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、実際には、第2の実施形態で説明したように、騒音は所定量以下で変動している。第4の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更することによって、常に最適な騒音低減効果を得ることを目的とする。
以下、図22を参照して、第4の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図22は、図1に示す座席2000に設置された、第4の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。図22では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図22において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3700、出力制御部4000、制御用変更部5300、及び記憶部6200を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図20に示した騒音制御装置に対して、騒音判定部3600が騒音判定部3700へ入れ代わった点、制御用変更部5300及び記憶部6200が新たに追加された点で異なる。その他の構成については、図20に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。なお、騒音判定部3700の処理は騒音判定部3600と若干異なるが、後述する騒音判定処理及び出力制御処理において詳細に説明する。
制御用変更部5300は、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を、記憶部6200から読み出す。外部情報については、後述する。制御用変更部5300は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6200から読み出したフィルタ係数に変更する。
記憶部6200には、図23に示すように、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数と、外部情報とが関連付けして記憶される。図23は、記憶部6200に記憶されるデータ構造を示す図である。記憶部6200に記憶に記憶される外部情報は、第3の実施形態と同様、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報である。なお、変動量が所定量以下となる外部情報としては、例えば、エンジン負荷に関する情報、飛行高度に関する情報、飛行速度に関する情報、現在位置に関する情報、及び気象情報などが挙げられる。記憶部6200には、このような複数種類の外部情報が記憶されている。図23の例では、エンジン負荷に関する情報と、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数とが関連付けされた様子を示している。なお、制御用フィルタ部1000内には固定フィルタが80個ある。また、図23に示す1〜5は、エンジン負荷の大小を示し、エンジン負荷の大小に応じてこれら80個のフィルタ係数(y1〜y80)からなる組(「−1」〜「−5」)が関連付けされている。
以下、図24を参照して、第4の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図24は、第4の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3700内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。
図24において、処理が開始されると、騒音判定部3700は、外部情報を取得する(ステップS400)。騒音判定部3700は、ステップS400で取得した外部情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する(ステップS401)。騒音判定部3700は、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合(ステップS401でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS402)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS403)。ステップS403の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS404)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS404でNo)、処理は、ステップS400へ戻る。
一方、騒音判定部3700は、変動量が所定量以下であると判定した場合(ステップS401でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、フィルタ係数を変更する指示を示す変更指示信号を、制御用変更部5300へ出力する(ステップS405)。制御用変更部5300は、騒音判定部3700から変更指示信号を受け取ったとき、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を記憶部6200から読み出し、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6200から読み出したフィルタ係数に変更し、変更の完了を示す変更完了信号を騒音判定部3700へ出力する(ステップS406)。騒音判定部3700は、制御用変更部5300から変更完了信号を受け取ったとき、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS407)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS408)。ステップS408の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS409)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS409でNo)、処理は、ステップS400へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置では、所定の騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更する。このため、本実施形態に係る騒音制御装置では、騒音が安定しているとみなした場合において、常に最適な騒音低減効果を得ることができる。なお、このフィルタ係数の変更処理は、適応フィルタで行われる係数更新処理と異なり、外部情報に応じたフィルタ係数を選択するのみである。このため、本実施形態に係る変更処理を行っても、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小させることができる。
(第5の実施形態)
第1及び第3の実施形態では、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であれば、騒音が安定しているとみなし、制御信号の出力を停止しなかった。しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、第2及び第4の実施形態で説明したように、騒音は所定量以下で変動している。第2及び第4の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100、6200を参照して、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更することによって、常に最適な騒音低減効果を得ていた。
しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、座席位置によっては騒音の種類が異なるため、記憶部6100、6200に記憶されたフィルタ係数が、必ずしも最適なフィルタ係数であるとは限らなかった。また、記憶部6100、6200に記憶されたフィルタ係数が初期状態において最適であったとしても、機内の設備の更新や経年劣化等によって、座席位置や周囲の環境が変わった場合には、記憶部6100、6200に記憶されたフィルタ係数が、必ずしも最適なフィルタ係数であるとは限らなかった。
さらに、固定フィルタの場合、その固定のフィルタ係数を何らかの手段で求める必要があるが、例えば航空機などの大量乗客輸送手段では座席数が多いために、各座席で最適なフィルタ係数を求める場合、それぞれ個別にフィルタ係数を求める作業が必要となる。また、他機種では機体、エンジン、座席状態が全て異なり、同機種でも航空会社によってエンジンが異なる場合もありえるため、それら条件を含めた各座席毎の最適なフィルタ係数を求める作業は膨大な作業量になる可能性がある。
そこで、第5の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、座席位置や周囲の環境に応じた最適なフィルタ係数に更新することによって、常に最適な騒音低減効果を得ることを目的とする。また、同時に、それを自動的に行なえるようにすることで、各座席毎の最適なフィルタ係数を求める工数を大きく低減させることを目的とする。
以下、図25を参照して、第5の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図25は、図1に示す座席2000に設置された、第5の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である、図25では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図25において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3000、出力制御部4000、フィルタ係数更新部5400、フィルタ係数算出部7000、信号記憶部7001、効果判定部7002、及びエラーマイク7601〜7604を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図11に示した騒音制御装置に対して、フィルタ係数更新部5400、フィルタ係数算出部7000、信号記憶部7001、効果判定部7002、及びエラーマイク7601〜7604を新たに備える点で異なる。その他の構成については、図11に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。なお、エラーマイク7601〜7604は、例えば座席に座ったユーザーの耳位置近傍のシートに取付けられている。
最初は、図11の場合と同様に固定フィルタ1201−1〜1220−4には初期値としての固定のフィルタ係数が設定されている。騒音判定部3000でこのフィルタ係数を求めたときの騒音状態に近いと判断されたら、出力制御部4000に動作開始を促し、固定フィルタ1201−1〜1220−4で騒音マイク1100〜1120からの騒音信号をその固定のフィルタ係数で処理し、スピーカ1401〜1404で再生するのは、図11の場合と同様である。エラーマイク7601〜7604では、その位置での騒音とスピーカ1401〜1404から再生された制御音とが合成され、その合成された結果としてのエラー信号を検出する。
ここで、エラーマイクを4つとしているが、スピーカと同数以下であれば、理論上は固定フィルタの制御係数を正しく求めることができる。さらに、スピーカ1401からエラーマイク7601間の音響特性をFx1_1、スピーカ1401からエラーマイク7602間の音響特性をFx1_2、スピーカ1402からエラーマイク7601間の音響特性をFx2_1、スピーカ1402からエラーマイク7602間の音響特性をFx2_2と示す。ただし、その他の音響特性、例えば、スピーカ1401からエラーマイク7603間の音響特性Fx1_3や、スピーカ1404からエラーマイク7602間の音響特性Fx4_2などは図示を省略している。
さて、エラーマイク7601〜7604で検出されたエラー信号は、効果判定部7002に入力される。効果判定部7000は、所定の騒音低減効果が得られているかを判定する。その手法としては、例えば、各エラー信号から騒音制御帯域内の成分を抽出し、固定フィルタ1201−1〜1220−4を動作させる前のレベルと動作後のレベルとを比較することなどが考えられる。また、固定フィルタ1201−1〜1220−4の動作前後の騒音制御帯域内のエラー信号レベルを平均化した後、比較する手法でもよい。あるいは、騒音制御帯域内の複数の代表周波数におけるエラー信号レベルを比較する手法でもよい。
効果判定部7000は、このように判定した結果、所定効果が得られていれば、そのまま固定フィルタ1201−1〜1220−4を動作させて、騒音制御を継続する。しかし、効果判定部7000は、所定効果が得られていない場合(効果が劣化する以外に騒音が増加する場合も含む)、そのフィルタ係数では騒音制御が困難になったとの判定を出力制御部4000へ通知する。その結果、出力制御部4000は、固定フィルタ1201−1〜1220−4の動作を停止する。同時に、効果判定部7002は、信号記憶部7001に信号記憶するように指示する。信号記憶部7001は、効果判定部7002からの指示を受けて、騒音マイク1101〜1120からの騒音信号n1〜n20と、エラーマイク7601〜7604からのエラー信号e1〜e4とを例えば内部メモリなどに所定時間録音する。録音が完了すると、信号記憶部7001は、フィルタ係数算出部7000に係数算出開始を指示する。フィルタ係数算出部7000は、係数算出開始の指示を受けて、制御用フィルタ部1000の固定のフィルタ係数を、信号記憶部7001に録音したデータを利用して算出する。フィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングでフィルタ係数算出部7000が算出したフィルタ係数を読み出し、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、フィルタ係数算出部7000から読み出したフィルタ係数に更新する。
フィルタ係数算出部7000の具体的な構成は、図26に示す構成となる。図26は、フィルタ係数算出部7000の具体的な回路構成を示す図である。ただし、図26では、簡単のため、図25に示す固定フィルタ1201−1〜1220−1、及び固定フィルタ1201−2〜1220−2のフィルタ係数を求めるための構成のみについて説明する。図26において、フィルタ係数算出部7000は、適応フィルタ7201−1〜7220−1、適応フィルタ7201−2〜7220−2、加算器7301〜7304、音響系フィルタ7401〜7404、及び加算器7501〜7502を備える。
図25で説明したように、信号記憶部7001からの騒音信号n1〜n20は適応フィルタ7201−1〜7220−2へ出力される。
適応フィルタ7201−1〜7220−1には、Filtered−X_LMS法で予め必要とされるところの、制御スピーカ1401からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx1_1)と、制御スピーカ1401からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx1_2)とが設定されている。以下、同様に、適応フィルタ7201−2〜7220−2それぞれには、制御スピーカ1402からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx2_1)と、制御スピーカ1402からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx2_2)とが設定されている。
適応フィルタ7201−1〜7220−1は、入力される騒音信号を、設定されたフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器7301、加算器7303、および図示しない加算器7305、7307、・・・、7337へそれぞれ出力する。加算器7301は、最終的に、適応フィルタ7201−1〜7220−1からの制御信号を加算し、音響系フィルタ7401及び音響系フィルタ7402へ出力する。適応フィルタ7201−2〜7220−2は、入力される騒音信号を、設定されたフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器7302、加算器7404、および図示しない加算器7306、7308、・・・、7338へそれぞれ出力する。加算器7302は、最終的に、適応フィルタ7201−2〜7220−2からの制御信号を加算し、音響系フィルタ7403及び音響系フィルタ7404へ出力する。
ここで、音響系フィルタ7401には、制御スピーカ1401からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx1_1)が設定されている。音響系フィルタ7402には、制御スピーカ1401からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx1_2)が設定されている。音響系フィルタ7403には、制御スピーカ1402からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx2_1)が設定されている。音響系フィルタ7404には、制御スピーカ1402からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx2_2)が設定されている。
音響系フィルタ7401及び音響系フィルタ7403を通過した信号は、加算器7501へ出力される。また、エラー信号e1は、加算器7501へ出力される。加算器7501は、これらの入力信号を加算する。同様に、音響系フィルタ7402及び音響系フィルタ7404を通過した信号は、加算器7502へ出力される。また、エラー信号e2は、加算器7502へ出力される。加算器7502は、これらの入力信号を加算する。適応フィルタ7201−1〜7220−2は、加算器7501〜7502での加算結果を自身の係数更新用エラー信号E1〜E2とみなして、この係数更新用エラー信号E1〜E2を最小とするように自身のフィルタ係数を更新する。
ここで、図25で説明したように、騒音信号n1〜n20とエラー信号e1〜e4とは所定時間(例えば1分)のデータとして録音されており、フィルタ係数算出部7000は、適応フィルタ7201−1〜7220−2のフィルタ係数が収束するまでこのデータを繰返し使用することが可能である。また、フィルタ係数算出部7000は、制御音をスピーカ1401〜1404から再生する制御用フィルタ部1000とは独立構成になっているので、制御用フィルタ部1000の処理速度に依存せずに処理を実行できる。つまり、制御用フィルタ部1000は所定のサンプリング周期内に処理を完了する必要のあるリアルタイム処理を行うが、フィルタ係数算出部7000は実時間としてのサンプリング周期内に処理を終える必要は無い。
騒音信号n1〜n20とエラー信号e1〜e4とは実時間でサンプリングがなされた信号であるため、フィルタ係数算出部7000で算出されるフィルタ係数は、たとえ実時間以上に処理時間がかかっても、サンプリング周期に基づく係数になる。換言すれば、フィルタ係数算出部7000の一連の処理時間は実時間に対して任意であり、早く処理を完了する構成にすれば、フィルタ係数を算出する(フィルタ係数が収束する)までの時間を短縮できる。例えば、フィルタ係数算出部7000をサンプリング周期よりも早く動作させれば実時間よりも速くフィルタ係数を算出することが可能である。また、フィルタ係数算出部7000が遅く処理を完了すれば、演算負荷が低減できるため、単位時間当たりの演算量を軽減できる。フィルタ係数算出部7000は、遅く処理を完了する場合、図26の処理を全てサンプリング周期内に完了する必要は無く、例えばあるサンプルでは適応フィルタ7201−1を処理し、次のサンプルでは適応フィルタ7201−2を処理することも可能となる。ただし、このようにサンプリング周期毎に、適用フィルタの処理をきれいに分割する必要性は無い。
以上の係数更新処理によって、フィルタ係数算出部7000は、制御点に到来する騒音を低減させるフィルタ係数を算出する。
その後、適応フィルタ7201−1〜7220−1、及び適応フィルタ7201−2〜7220−2で更新されるフィルタ係数が収束すると、図25に示したフィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングで、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を収束したフィルタ係数に更新する。所定のタイミングとしては、例えば、適応フィルタ7201−1〜7220−1、及び適応フィルタ7201−2〜7220−2で更新されるフィルタ係数が収束するタイミングであったり、数分に1回や、数日に1回の割合で更新するものであってもよい。あるいは、航空機の初運航時や、機内の設備の更新等が行われた後のタイミングであってもよい。
さらに、騒音制御装置は、以下の処理を行った後で、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を算出したフィルタ係数に更新してもよい。騒音制御装置は、上記のように適応フィルタ7201−1〜7220−2で更新されるフィルタ係数が収束したら、その時間における騒音信号とエラー信号とを録音する指示を信号記憶部7001へ与える。フィルタ係数算出部7000は、再度録音した騒音信号を用いて、適応フィルタ7201−1〜7220−2のAF1_1、AF1_2、・・・・、AF20_2で固定フィルタの係数として収束した係数と畳込み処理を行い、音響系フィルタ7401〜7404を経由したその結果と再度録音したエラー信号とを加算器7501〜7502で加算する。フィルタ係数更新部5400は、その加算結果が所定値以内に収まっていると判定したら初めて、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、算出したフィルタ係数に更新する。これによって、フィルタ係数算出部7000の係数算出に時間がかかり、その間に騒音状態がさらに変化してしまっても、スピーカ1401〜1403から間違った制御音が再生され、ユーザーに不快感を与えてしまうことを防止できる。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置は、効果判定部7002がその時点での制御用フィルタ1000の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を用いた場合のエラーマイク7601〜7604の騒音低減効果を判定し、低減効果が所定値以内に収まっていない場合は、制御用フィルタ1000の実時間動作とは関係なく独立に、フィルタ係数算出部7000が最適なフィルタ係数を算出し、フィルタ係数更新部5400が所定のタイミングで、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を更新する。このため、実際の騒音制御処理のバックグラウンドで、座席位置や周囲の環境に応じた最適なフィルタ係数を算出することができることに加え、フィルタ係数算出のための処理能力の要求を緩和することもできる。また、算出したフィルタ係数が直ちに制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに適応されないので、間違ったフィルタ係数に更新されることを防止し、その結果、たとえフィルタ係数が発散するなど不具合が生じても実際には制御音として再生されないのでユーザーに不快感を与えない。これによって、騒音制御装置は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、座席位置や周囲の環境に応じた最適なフィルタ係数に変更し、常に最適な騒音低減効果を得ることができる。
なお、上述したフィルタ係数算出部7000は、図16に示す騒音制御装置、図20に示す騒音制御装置、及び図22に示す騒音制御装置にも適用することができる。すなわち、図16及び図22に騒音制御装置では、フィルタ係数算出部7000が最適なフィルタ係数を算出し、フィルタ係数更新部5400が所定のタイミングで、記憶部6100及び記憶部6200が記憶する固定フィルタ係数を更新する。また、図20に示す騒音制御装置では、フィルタ係数算出部7000が最適なフィルタ係数を算出し、フィルタ係数更新部5400が所定のタイミングで、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を更新する。
また、上述した説明では省略したが、フィルタ係数算出部7000が、騒音判定部3000,3500,3600,3700のフィルタ係数を算出することができるのはいうまでもない。この場合、フィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングで、騒音判定部3000,3600内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を更新する。あるいは、フィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングで、記憶部6100及び記憶部6200が記憶する騒音判定部3500,3700のフィルタ係数を更新する。なお、この場合、図26に示した音響系フィルタ7401〜7404、および適応フィルタ7201−1〜7220−2内の伝達関数Fx1_1、Fx1_2、Fx2_1、Fx2_2を示すフィルタは、全て不要である。
本発明に係る騒音制御装置は、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能であり、自動車や、列車、航空機内の座席、住宅内の椅子やソファ、あるいは、オフィスや工場内の椅子等に適用される。
本発明は、騒音制御装置に関し、より特定的には、制御点に到来する騒音を能動的に低減させる騒音制御装置に関するものである。
近年、制御点に到来する騒音と逆位相の制御音を再生することで当該制御点に到来する騒音を低減させる制御(所謂、能動騒音制御)を、固定フィルタ及び適応フィルタを選択的に動作させて実現する騒音制御装置が提案されている(例えば、特許文献1など)。
以下、図27を参照して、上記従来の騒音制御装置について具体的に説明する。図27は、従来の騒音制御装置の回路構成を示す図である。図27において、騒音制御装置は、騒音マイク9101、適応フィルタ9201、制御スピーカ9401、エラーマイク9501、及び固定フィルタ9601を備える。
図27に示した騒音制御装置は、騒音源の位置や発生状況(例えばファンの駆動条件:回転数など)などが変わって騒音が変化したとき、適応フィルタ9201を選択して騒音制御を行う。騒音マイク9101は、到来する騒音源からの騒音を検出して騒音信号として適応フィルタ9201へ出力する。適応フィルタ9201は、入力される騒音信号をフィルタ係数を用いて信号処理して制御信号を生成する。適応フィルタ9201で生成された制御信号は、制御音として制御スピーカ9401から制御点に向けて放射される。エラーマイク9501は、制御点に設置され、制御点に到来する騒音源からの騒音と、制御点に到来する制御スピーカ9401からの制御音とを検出する。エラーマイク9501では、制御点に到来する騒音と制御スピーカ9401からの制御音とが干渉し、その差分がエラー信号として検出されることになる。適応フィルタ9201は、このエラー信号を最小とするように自身のフィルタ係数を更新する処理を行う。その具体的な更新手法としては、例えばFiltered−X_LMS法などがある。以下、Filtered−X_LMS法などを用いた更新処理を、係数更新処理と称す。このような係数更新処理により、適応フィルタ9201は、騒音源の位置や発生状況などが変わって騒音が変化したとき、制御点に到来する変化後の騒音に応じた最適な制御信号が生成できるように、自身のフィルタ係数を更新することができる。
その後、適応フィルタ9201で更新されるフィルタ係数が収束すると、図27に示した騒音制御装置は、収束したフィルタ係数を固定的に設定した固定フィルタ9601を選択して騒音制御を行う。
このように、図27に示した騒音制御装置は、固定フィルタ及び適応フィルタを選択的に動作させて能動騒音制御を実現している。
ここで、制御点を例えば実際に騒音を聞く人の耳元とした場合、当該制御点にエラーマイク9501を設置することは、実用上難しい。このため、エラーマイク9501が必ずしも制御点に設置されるとは限らず、適応フィルタ9201で収束したフィルタ係数で低減可能な騒音が、制御点に到来する騒音と異なってしまう場合があった。そして、このような場合、制御音が悪影響を及ぼして、制御音を再生してないとき(騒音制御前)よりも騒音が増大してしまう可能性があった。
また、図27に示す騒音制御装置では、適応フィルタ9201を選択した騒音制御を行っている。このため、図27に示す騒音制御装置では、係数更新処理が実行できる程度の回路規模を予め確保しておく必要があり、回路規模を縮小できなかった。また、適応フィルタ9201のフィルタ係数を更新する際には、リアルタイムでフィルタ係数を算出する必要があるので、処理能力の要求が厳しかった。しかも、間違ったフィルタ係数が適応されると、直ちに間違った制御音が再生され、制御音を再生してないとき(騒音制御前)よりも騒音が増大し、ユーザに不快感を与えてしまう可能性があった。
それ故、本発明は、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の騒音制御装置は、制御点に向けて制御音を放射して、当該制御点に到来する所定の騒音を低減させる騒音制御装置であって、到来する所定の騒音を検出して制御用騒音信号を出力する制御用騒音検出器と、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて制御用騒音検出器からの制御用騒音信号を信号処理して制御信号を出力する制御用フィルタ部と、制御用フィルタ部からの制御信号に基づく制御音を制御点に向けて放射することによって、制御点に到来する所定の騒音を低減させる制御スピーカと、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音であるか否かを判定する騒音判定部と、騒音判定部において所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音ではないと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させる出力制御部とを備える。
なお、上記出力制御部は、例えば、後述する実施形態における出力制御部4000に相当するものである。
上記本発明の騒音制御装置では、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音ではない場合、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させる。ここで、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音ではない場合、制御音が悪影響を及ぼして、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性がある。したがって、このような場合に制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させることで、制御音が出力されないことになるので、騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。また、上記本発明の騒音制御装置では、フィルタ部は、Filtered−X_LMS法などを用いた係数更新処理を行わずに、騒音制御を行っている。このため、係数更新処理を行う適応フィルタを用いた従来の騒音制御装置と比べて、回路規模を縮小することができる。このように、上記本発明の騒音制御装置によれば、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することができる。
好ましくは、騒音判定部は、到来する所定の騒音を検出して判定用騒音信号として出力する判定用騒音検出器と、判定用騒音検出器からの判定用騒音信号を低減させるように予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、制御用騒音検出器からの制御用騒音信号を信号処理する判定用フィルタ部と、判定用騒音検出器からの判定用騒音信号と、判定用フィルタ部からの制御用騒音信号とを加算する加算器と、加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいか否かを判定することによって、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音であるか否かを判定するレベル判定部とを有し、出力制御部は、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させるとよい。
なお、上記判定用フィルタ部は、例えば、後述する実施形態における、固定フィルタ3101〜3120に相当するものである。
この場合において、騒音判定部は、加算器からの出力信号のうち、所定の周波数帯域内の信号のみを抽出し、レベル判定部へ出力する帯域抽出部をさらに有するとよい。
また、この場合において、所定の閾値は、第1閾値と当該第1閾値よりもレベルが低い第2閾値とで構成されており、レベル判定部は、加算器からの出力信号のレベルが第1閾値よりも大きいか否か、第2閾値よりも大きいか否かを判定しており、出力制御部は、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが第1閾値より大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させ、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが第2閾値以下であると判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を開始させるとよい。
また、この場合において、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルを一意に特定する騒音情報と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を制御スピーカからの制御音が低減させるように制御用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数とを関連付けて記憶する記憶部と、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられたフィルタ係数を記憶部から読み出し、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を読み出したフィルタ係数に変更する制御用変更部とをさらに備えるとよい。
また、この場合において、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルを一意に特定する騒音情報と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を制御スピーカからの制御音が低減させるように制御用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を検出した判定用騒音検出器からの判定用騒音信号を低減させるように判定用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数とを関連付けて記憶する記憶部と、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられた判定用フィルタ部のフィルタ係数を記憶部から読み出し、判定用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を当該読み出したフィルタ係数に変更する判定用変更部と、判定用変更部の変更処理後にレベル判定部で実行される判定処理において、加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられた制御用フィルタ部のフィルタ係数を記憶部から読み出し、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を当該読み出したフィルタ係数に変更する制御用変更部とをさらに備えるとよい。
また、好ましくは、制御用騒音検出器は、複数備えられており、制御用フィルタ部は、複数の制御用騒音検出器それぞれに対応した固定のフィルタ係数が予め複数設定されており、各制御用騒音検出器からの制御用騒音信号をそれぞれに対応する固定のフィルタ係数を用いて信号処理し、信号処理して得られる各制御信号を出力しており、制御スピーカは、制御用フィルタ部からの各制御信号に基づく制御音を制御点に向けて放射することによって、制御点に到来する所定の騒音を低減させており、騒音判定部は、各制御用騒音検出器のうちのいずれか1つからの制御用騒音信号を低減させるように、かつ、他の各制御用騒音検出器に対応するように予め設定された複数の固定のフィルタ係数を用いて、他の各制御用騒音検出器からの制御用騒音信号を信号処理する判定用フィルタ部と、いずれか1つの制御用騒音検出器からの制御用騒音信号と、判定用フィルタ部からの各制御用騒音信号とを加算する加算器と、加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいか否かを判定するレベル判定部とを有し、出力制御部は、レベル判定部において加算器からの出力信号のレベルが所定の閾値よりも大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させるとよい。
また、好ましくは、騒音判定部は、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルを一意に特定する騒音情報を入力とし、当該騒音情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音が有する周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定することによって、制御点に到来する所定の騒音が固定のフィルタ係数と対応する騒音であるか否かを判定し、出力制御部は、騒音判定部において周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいと判定されたとき、制御用フィルタ部からの制御信号の出力を停止させるとよい。
この場合において、騒音情報と、当該騒音情報によって特定される周波数および/またはレベルを有する所定の騒音を制御スピーカからの制御音が低減させるように制御用フィルタ部に設定されるべきフィルタ係数とを関連付けて記憶する記憶部と、騒音判定部において周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であると判定されたとき、外部から入力される騒音情報と関連付けられたフィルタ係数を記憶部から読み出し、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を当該読み出したフィルタ係数に変更する制御用変更部とをさらに備えるとよい。
また、好ましくは、制御用フィルタ部の固定のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、所定のタイミングで、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を、フィルタ係数算出部が算出したフィルタ係数に更新するフィルタ係数更新部をさらに備えるとよい。
また、騒音と制御スピーカからの制御音との合成信号を検出する制御点に設置した誤差検出器と、制御用騒音検出器で検出した制御用騒音信号と誤差検出器で検出した誤差信号とを記憶する信号記憶部と、信号記憶部に記憶した騒音信号および誤差信号を用いて、制御用フィルタ部の固定のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、所定のタイミングで、制御用フィルタ部に設定されたフィルタ係数を、フィルタ係数算出部が算出したフィルタ係数に更新するフィルタ係数更新部をさらに備えるとよい。
この場合において、誤差検出器で検出した誤差信号における信号レベルを判定する効果判定部をさらに有し、効果判定部の判定結果に従って、信号記憶部の記憶動作開始と制御用フィルタ部の動作停止とが制御されるとよい。
また、この場合において、フィルタ係数算出部は、信号記憶部に記憶された制御用騒音信号を信号処理する適応フィルタと、適応フィルタの出力を信号処理する音響系フィルタと、音響系フィルタの出力信号と信号記憶部に記憶された誤差信号とを加算する加算器とから構成され、音響系フィルタには、制御用スピーカから誤差検出器までの伝達関数が係数として設定されており、適応フィルタは、加算器の加算結果を係数更新用誤差信号として最小化するように係数を更新するとよい。
本発明によれば、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することができる。
航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図
図1に示す座席2000に設置された騒音制御装置の回路構成を示す図
検証回路の回路構成を示す図
座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を示す図
座席2000が座席Iのままで、時刻がt3〜t4である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を示す図
座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を示す図
座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt3〜t4である条件下で、係数(1)で固定したときのエラー信号差分の観測結果を示す図
座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、係数(2)で固定したときのエラー信号差分の観測結果を示す図
座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、係数(1)で固定したときのエラー信号差分の観測結果を示す図
航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図
図10に示す座席2000に設置された、第1の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図
騒音判定部3000の具体的な回路構成を示す図
レベル判定部3170の判定基準である閾値を示した図
第1の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャート
ステップS100の詳細な処理の流れを示すフローチャート
図1に示す座席2000に設置された、第2の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図
騒音判定部3500の具体的な回路構成を示す図
記憶部6100に記憶されるデータ構造を示す図
第2の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャート
図1に示す座席2000に設置された、第3の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図
第3の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャート
図1に示す座席2000に設置された、第4の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図
記憶部6200に記憶されるデータ構造を示す図
第4の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャート
第5の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図
フィルタ係数算出部7000の具体的な回路構成を示す図
従来の騒音制御装置の回路構成を示す図
最初に、本発明に係る実施形態について説明する前に、本発明の基本概念を説明する。
適応フィルタを用いた騒音制御が例えば航空機内で行われるとすると、その構成は、図1及び図2に示す構成となる。図1は、航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図である。図2は、図1に示す座席2000に設置された騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図2において、騒音制御装置は、騒音マイク9101〜9120、適応フィルタ9201−1〜9220−1、適応フィルタ9201−2〜9220−2、適応フィルタ9201−3〜9220−3、適応フィルタ9201−4〜9220−4、加算器9301〜9304、制御スピーカ9401〜9404、及びエラーマイク9501〜9502を備える。図1に示すように、騒音マイク9101〜9120は、座席2000の外側に設置される。制御スピーカ9401〜9404は、座席2000の内側であって乗員Aの耳元と同じ高さの位置に設置される。制御点は、乗員Aの耳元とし、エラーマイク9501〜9502は、実用上難しいが、ここでは仮に、制御点である乗員Aの耳元に設置されているとする。
騒音マイク9101で検出された騒音は、騒音信号として適応フィルタ9201−1〜9201−4へ出力される。騒音マイク9102で検出された騒音は、騒音信号として適応フィルタ9202−1〜9202−4へ出力される。以下、同様に、騒音マイク9103〜9120で検出された騒音は、対応する適応フィルタ9203〜9220の「−1」〜「−4」のそれぞれへ出力される。
適応フィルタ9201−1には、Filtered−X_LMS法で予め必要とされるところの、制御スピーカ9401からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9401からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−1は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。同様に適応フィルタ9202−1には、制御スピーカ9401からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9401からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9202−1は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。以下、同様に、適応フィルタ9203−1〜9220−1それぞれには、制御スピーカ9401からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9401からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9203−1〜9220−1は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。
また、適応フィルタ9201−2〜9220−2それぞれには、制御スピーカ9402からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9402からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−2〜9220−2は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。また、適応フィルタ9201−3〜9220−3それぞれには、制御スピーカ9403からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9403からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−3〜9220−3は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。また、適応フィルタ9201−4〜9220−4それぞれには、制御スピーカ9404からエラーマイク9501までの伝達関数と、制御スピーカ9404からエラーマイク9502までの伝達関数とが設定されている。適応フィルタ9201−4〜9220−4は、設定された各伝達関数を用いて、エラーマイク9501及び9502からの各エラー信号を総合的に最小とするように、自身のフィルタ係数を更新する。
適応フィルタ9201−1〜9220−1は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9301へそれぞれ出力する。加算器9301は、適応フィルタ9201−1〜9220−1からの制御信号を加算し、制御スピーカ9401へ出力する。制御スピーカ9401は、加算器9301からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。適応フィルタ9201−2〜9220−2は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9302へそれぞれ出力する。加算器9302は、適応フィルタ9201−2〜9220−2からの制御信号を加算し、制御スピーカ9402へ出力する。制御スピーカ9402は、加算器9302からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。適応フィルタ9201−3〜9220−3は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9303へそれぞれ出力する。加算器9303は、適応フィルタ9201−3〜9220−3からの制御信号を加算し、制御スピーカ9403へ出力する。制御スピーカ9403は、加算器9303からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。適応フィルタ9201−4〜9220−4は、入力される騒音信号を、更新したフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器9304へそれぞれ出力する。加算器9304は、適応フィルタ9201−4〜9220−4からの制御信号を加算し、制御スピーカ9404へ出力する。制御スピーカ9404は、加算器9304からの制御信号に基づく制御音を、制御点であるエラーマイク9501及び9502に向けて放射する。以上の係数更新処理によって、図1及び図2に示す騒音制御装置は、制御点である乗員Aの耳元に到来する騒音を低減させている。
ここで、騒音の周波数および/またはレベルがほとんど変化しない、あるいは或る程度の変動量内で変動している場合、固定フィルタのみで騒音制御しても、適応フィルタで騒音制御した場合と同等の騒音低減効果を得ることができる。このことを検証するため、図3に示す検証回路を座席2000に設置し、座席位置と時刻の条件を変化させて、エラー信号を観測した。図3は、検証回路の回路構成を示す図である。以下、検証回路について具体的に説明する。
図3において、騒音マイク9101〜9120からの騒音信号は、対応する適応フィルタ9201−1〜9220−1で信号処理され、加算器9301で加算される。エラーマイク9501で検出した騒音は、加算器9301へ出力される。加算器9301での加算結果をエラー信号とみなし、適応フィルタ9201−1〜9220−1は、このエラー信号を最小とするように自身のフィルタ係数を更新する。これによって、加算器9301での加算結果が低減する。これは、エラーマイク9501で検出される騒音が低減されることを意味する。なお、適応フィルタ9201−1〜9220−1は、図2では、Filtered−X_LMS法基づいた係数更新を行なっていたが、図3では、一般的なLMS法による係数更新を行なう。
以下、座席位置と時刻の条件を変化させて、係数更新処理により適応フィルタ9201−1〜9220−1のフィルタ係数が収束したときのエラー信号の観測結果を考察する。なお、以下の観測結果は、航空機が巡航速度で飛行中に観測した結果である。
図4は、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、エラー信号を観測した結果を示す図であり、制御時と非制御時のエラー信号差分を示している。つまり0dB位置より下がっていれば、騒音が低減されていることになる。座席Iは、航空機前方部の窓際席である。図4によると、エラー信号差分は、およそ1kHz以下でレベルが低減しており、500Hz以下で10dB以上低減している。このときの適応フィルタ9201−1〜9220−1で収束したフィルタ係数の組を、係数(1)とする。また、座席2000が座席Iのままで、時刻がt3〜t4である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を、図5に示す。図5によると、エラー信号差分は、図4と同様、およそ1kHz以下でレベルが低減しており、500Hz以下で10dB以上低減している。このときの適応フィルタ9201−1〜9220−1で収束したフィルタ係数の組を、係数(2)とする。また、座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、エラー信号差分を観測した結果を、図6に示す。座席IIは、航空機前方部の機内中央席であり、座席Iと座席IIは、ともに航空機前方部という所定のエリア内に存在している。図6によると、エラー信号差分は、図4と同様、およそ1kHz以下でレベルが低減しており、500Hz以下で10dB以上低減している。このときの適応フィルタ9201−1〜9220−1で収束したフィルタ係数の組を、係数(3)とする。なお、t2とt3との時間間隔、t4とt5との時間間隔は、それぞれ十分に離れた間隔(30分以上)であるとする。
ここで、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt3〜t4である条件下で、適応フィルタ9201−1〜9220−1の係数更新処理を停止し、係数(1)をそれぞれに固定的に設定し、固定フィルタとして動作させたときのエラー信号差分の観測結果を、図7に示す。図7によると、エラー信号差分には、係数(2)で制御した図5と同様の騒音低減効果が得られていることがわかる。反対に、座席2000が座席Iの位置にあり、時刻がt1〜t2である条件下で、適応フィルタ9201−1〜9220−1の係数更新処理を停止し、係数(2)をそれぞれに固定的に設定し、固定フィルタとして動作させたときのエラー信号差分の観測結果を、図8に示す。図8によると、エラー信号差分には、係数(1)で制御した図4と同様の騒音低減効果が得られていることがわかる。さらに、座席2000が座席IIの位置にあり、時刻がt5〜t6である条件下で、適応フィルタ9201−1〜9220−1の係数更新処理を停止し、係数(1)をそれぞれに固定的に設定し、固定フィルタとして動作させたときのエラー信号差分の観測結果を、図9に示す。図9によると、エラー信号差分には、係数(3)で制御した図6と同様の騒音低減効果が得られていることがわかる。
以上の観測結果より、次のことが考察される。図4及び図7の観測結果と、図5及び図8の観測結果により、少なくとも同じ座席であれば、異なる時刻に求めたフィルタ係数が固定的に設定された固定フィルタのみで制御しても、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。つまり、騒音の周波数および/またはレベルが或る程度の変動量内で時間変動している場合でも、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。また、図6及び図9の観測結果により、所定のエリア内であれば、異なる場所で求めたフィルタ係数が固定的に設定された固定フィルタのみで制御しても、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。つまり、騒音の周波数および/またはレベルが場所に応じて或る程度の変動量内で変動している場合でも、係数更新処理を常時行う適応フィルタのみで制御する場合と同等の騒音低減効果が得られると考察される。
このように、上記観測結果から、巡航速度で飛行中の航空機内の所定のエリア内のように、騒音の周波数および/またはレベルが或る程度の変動量内で変動している場合であっても、当該騒音に基づき求められたフィルタ係数が固定的に設定された固定フィルタのみで騒音制御することで、適応フィルタで騒音制御した場合と同等の騒音低減効果が得られることがわかる。しかしながら、騒音の周波数および/またはレベルの変動量が大きくなりすぎると、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性がある。これらを踏まえ、本発明では、上記観測結果から騒音の低減量を予測しつつ、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまうときの騒音の周波数および/またはレベルの変動量以下の変動量を閾値(所定量)として設定する。そして、変動量が当該閾値以下であれば、制御点に到来する騒音が固定フィルタのフィルタ係数と対応する騒音である、つまり騒音が安定しているとみなして、制御音を出力させる。一方、変動量が当該閾値よりも大きければ、制御点に到来する騒音が固定フィルタのフィルタ係数と対応する騒音ではない、つまり、騒音が不安定になったとみなして、制御音を出力させないようにする。これにより、閾値を任意に設定可能にしつつも、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。また、本発明では、固定フィルタのみを用いることになるので、係数更新処理を行う適応フィルタを用いた従来の騒音制御装置よりも回路規模を縮小させることができる。
以下、第1〜第4の実施形態において具体的な構成例を挙げて、上記基本概念を実現するための騒音制御装置について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図10及び図11を参照して、本発明の第1の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成について説明する。図10は、航空機の座席2000に着座した乗員Aの様子を、(a)正面図、(b)側面図、(c)後面図で示した図である。図11は、図10に示す座席2000に設置された、第1の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。
図11において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3000、及び出力制御部4000を備える。図10に示すように、騒音マイク1101〜1120は、制御用の騒音を検出するための制御用騒音検出器であり、座席2000の外側に設置される。騒音マイク1101〜1120は、到来する騒音を検出して制御用騒音信号として制御用フィルタ部1000へ出力する。制御スピーカ1401〜1404は、座席2000の内側であって乗員Aの耳元と同じ高さの位置に設置される。制御点は、乗員Aの耳元とする。制御スピーカ1401〜1404は、制御用フィルタ部1000で生成された制御信号を入力とし、制御点に向けて制御音を放射する。
制御用フィルタ部1000は、固定フィルタ1201−1〜1220−1、固定フィルタ1201−2〜1220−2、固定フィルタ1201−3〜1220−3、固定フィルタ1201−4〜1220−4、及び加算器1301〜1304を備える。
騒音マイク1101で検出された騒音は、制御用騒音信号として固定フィルタ1201−1〜1201−4へ出力される。騒音マイク1102で検出された騒音は、制御用騒音信号として固定フィルタ1202−1〜1202−4へ出力される。以下、同様に、騒音マイク1103〜1120で検出された騒音は、対応する固定フィルタ1203〜1220の「−1」〜「−4」のそれぞれへ出力される。
固定フィルタ1201−1は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、騒音マイク1101からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1301へ出力する。固定フィルタ1201−1に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1401から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。ここでは、所定の騒音は、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとし、固定フィルタ1201−1〜1220−4に設定されるフィルタ係数は、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルが或る程度の変動量内で変動しているときに求められた係数であるとする。固定フィルタ1202−1は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、騒音マイク1102からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1301へ出力する。固定フィルタ1202−1に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1401から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。以下、同様に、固定フィルタ1203−1〜1220−1は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1103〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1301へ出力する。固定フィルタ1203−1〜1220−1に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1401から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1301は、固定フィルタ1201−1〜1220−1からの制御信号を加算し、制御スピーカ1401へ出力する。制御スピーカ1401は、加算器1301からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
また、固定フィルタ1201−2〜1220−2は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1101〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1302へ出力する。固定フィルタ1201−2〜1220−2に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1402から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1302は、固定フィルタ1201−2〜1220−2からの制御信号を加算し、制御スピーカ1402へ出力する。制御スピーカ1402は、加算器1302からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
また、固定フィルタ1201−3〜1220−3は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1101〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1303へ出力する。固定フィルタ1201−3〜1220−3に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1403から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1303は、固定フィルタ1201−3〜1220−3からの制御信号を加算し、制御スピーカ1403へ出力する。制御スピーカ1403は、加算器1303からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
また、固定フィルタ1201−4〜1220−4は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1101〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器1304へ出力する。固定フィルタ1201−4〜1220−4に設定されるフィルタ係数は、生成した制御信号に基づく制御音が制御スピーカ1404から出力された際に、当該制御音の位相が、制御点に到来する所定の騒音の位相と制御点において逆位相となるように求められた係数である。加算器1304は、固定フィルタ1201−4〜1220−4からの制御信号を加算し、制御スピーカ1404へ出力する。制御スピーカ1404は、加算器1304からの制御信号に基づく制御音を、制御点に向けて放射する。
以上の制御用フィルタ部1000の処理によって、図10及び図11に示す騒音制御装置は、制御点である乗員Aの耳元に到来する所定の騒音を低減させることができる。
騒音判定部3000は、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する。騒音判定部3000は、変動量が所定量以下である場合、所定の騒音が安定しているとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの出力を開始させるための出力開始信号を出力制御部4000へ出力する。騒音判定部3000は、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合、所定の騒音が不安定になったとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの制御信号の出力を停止させるための出力停止信号を、出力制御部4000へ出力する。
以下、図12を参照して、騒音判定部3000の具体的な回路構成について説明する。図12は、騒音判定部3000の具体的な回路構成を示す図である。図12において、騒音判定部3000は、固定フィルタ3101〜3120、判定用エラーマイク3130、加算器3140、バンドパスフィルタ(BPF)3150、出力制御部3160、及びレベル判定部3170を備える。
固定フィルタ3101は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、騒音マイク1101からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器3140へ出力する。固定フィルタ3101に設定されるフィルタ係数は、所定の騒音に基づいて、後述する加算器3140の出力が最小となるように予め求められた係数である。以下、同様に、固定フィルタ3103〜3120は、予め設定された固定のフィルタ係数を用いて、対応する騒音マイク1103〜1120からの制御用騒音信号を信号処理し、制御信号として加算器3140へ出力する。固定フィルタ3103〜3120に設定されるフィルタ係数は、所定の騒音に基づいて、後述する加算器3140の出力が最小となるように予め求められた係数である。ここでは一例として、固定フィルタ3101〜3120に設定されるフィルタ係数の組を、図3及び図4で説明した係数(1)とする。
判定用エラーマイク3130は、判定用騒音検出器であり、図3に示したエラーマイク9501のように制御点に設置される必要がなく、例えば座席2000の座面下部や背面などの乗員Aの邪魔にならない位置に設置される。判定用エラーマイク3130は、到来する騒音を検出し、判定用騒音信号として加算器3140へ出力する。
なお、ハードウエアとしての本騒音制御装置が座席2000の下部空間に設置された場合、判定用エラーマイク3130は、本騒音制御装置内、あるいは本騒音制御装置の筐体に設置されてもよい。また、判定用エラーマイク3130として、新たなマイクを用意するのではなく、騒音マイク1101〜1120のいずれか1つを利用してもよい。例えば図12における騒音マイク1120を判定用エラーマイク3130として利用する場合、騒音判定部3000に制御用騒音信号を入力する騒音マイクは、騒音マイク1101〜1119となり、騒音判定部3000は、固定フィルタ3101〜3119を有することになる。このように、判定用エラーマイク3130として騒音マイク1101〜1120のいずれか1つを利用する場合、騒音判定部3000の固定フィルタが1つ削減され、その分の演算量を削減することができる。
加算器3140は、固定フィルタ3101〜3120からの制御信号と、判定用エラーマイク3130からの判定用騒音信号とを加算し、BPF3150へ出力する。加算器3140からの出力信号の周波数特性は、例えば図4で示したようになる。
BPF3150は、加算器3140からの出力信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを抽出する。つまり、BPF3150は、加算器3140からの出力信号のうち、不要な周波数帯域の信号を除去する。所定の周波数帯域としては、例えば図4の結果を考慮し、20〜500Hzとする。
出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を制御し、固定フィルタ3101〜3120からの制御信号の出力を停止させるか、開始させるかを制御する。出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を停止させて制御信号の出力を停止させた場合、固定フィルタ3101〜3120が非動作中であることを示す非動作中信号を、レベル判定部3170へ出力する。一方、出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を開始させて制御信号の出力を開始させた場合、固定フィルタ3101〜3120が動作中であることを示す動作中信号を、レベル判定部3170へ出力する。
レベル判定部3170は、出力制御部3160から非動作中信号を受け取ったとき、BPF3150からの出力信号のレベルを非動作レベルとして計算する。そして、レベル判定部3170は、計算した非動作レベルに基づき閾値を決定し、決定した閾値を自身に記憶する。この閾値は、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量に関する閾値(所定量)に相当することになる。具体的に例えば、レベル判定部3170は、図13に示すように、非動作レベルから10dBだけ低いレベルを閾値として決定する。図13は、レベル判定部3170の判定基準である閾値を示した図である。その後、レベル判定部3170は、出力制御部3160から動作中信号を受け取ったとき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する。そして、レベル判定部3170は、計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する。レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する。なお、レベル判定部3170が計算する出力信号のレベルは、例えば出力信号のオーバーオールレベルとする。
出力制御部4000は、騒音判定部3000から出力停止信号を受け取ったとき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタ(1201−1〜1220−1、1201−2〜1220−2、1201−3〜1220−3、1201−4〜1220−4)の動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる。一方、出力制御部4000は、騒音判定部3000から出力開始信号を受け取ったとき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる。
以下、図14を参照して、第1の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図14は、第1の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3000内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。また、騒音判定部3000の初期状態において、所定の騒音の周波数および/またはレベルは、或る程度の変動量内で変動しているとする。
図14において、処理が開始されると、騒音判定部3000の初期状態において、閾値を決定するための処理が行われる(ステップS100)。図15は、ステップS100の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。図15において、出力制御部3160は、騒音判定部3000内の固定フィルタの動作を停止させて制御信号の出力を停止させ、非動作中信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS1000)。ステップS1000の次に、レベル判定部3170は、非動作中信号に基づき、BPF3150からの出力信号のレベルを非動作レベルとして計算する(ステップS1001)。レベル判定部3170は、ステップS1001で計算した非動作レベルから10dBだけ低いレベルを閾値として決定し、自身に記憶する(ステップS1002)。ステップS1002の次に、出力制御部3160は、固定フィルタ3101〜3120の動作を開始させて制御信号の出力を開始させて、動作中信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS1003)。
再び図14に戻って説明を続ける。レベル判定部3170は、動作中信号に基づき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する(ステップS101)。ステップS101の次に、レベル判定部3170は、ステップS101で計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS102)。
レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS102でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS103)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS104)。ステップS104の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS105)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS105でNo)、処理は、ステップS101へ戻る。
一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合(ステップS102でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS106)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS107)。ステップS107の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS108)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS108でNo)、処理は、ステップS101へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置は、騒音が不安定になった場合、制御信号の出力を停止させている。このため、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。さらに、本実施形態に係る騒音制御装置は、固定フィルタのみを用いて騒音制御している。このため、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小することができる。このように、本実施形態によれば、制御点に到来する騒音を騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することができる。
なお、上述では、騒音判定部3000がBPF3150を備えるとしたが、これに限定されない。騒音判定部3000は、BPF3150の代わりに、例えばローパスフィルタや、ハイパスフィルタ、あるいはオールパスフィルタなどを備えていてもよい。
また、上述では、レベル判定部3170は、BPF3150からの出力信号のオーバーオールレベルを計算していたが、これに限定されない。例えば、レベル判定部3170にFFT機能をもたせて図4のような周波数特性を直接求め、予め決められた周波数(例えば、50Hz、100Hz、500Hzなど)のレベルを直接読み取り、当該周波数のレベルが閾値よりも大きいか否かを判定させるようにしてもよい。
また、上述では、レベル判定部3170は、非動作レベルから10dBだけ低いレベルを閾値としたが、これに限定されない。当該閾値は、非動作レベルよりも低いレベルに設定されればよく、例えば、非動作レベルから6dBだけ低いレベルであってもよい。
また、上述では、レベル判定部3170は、閾値を1つだけ設定していたが、2つ設定してもよい。例えば、非動作レベルよりも低い第1閾値と、当該第1閾値よりもレベルが低い第2閾値とを設定したとする。この場合、レベル判定部3170は、BPF3150からの出力信号のレベルが第1閾値よりも大きいか否か、第2閾値よりも大きいか否かを判定する。そして、レベル判定部3170は、動作レベルが第1閾値よりも大きいと判定した場合、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。一方、レベル判定部3170は、動作レベルが第2閾値以下であると判定した場合、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する。このように、レベル判定部3170が、第1閾値及び第2閾値との間を判定しないようにすることで、所定の騒音が急激に変化した場合であっても、制御信号の出力の停止/開始を緩やかにすることができる。
また、上述では、出力制御部4000は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止または開始させることによって、制御信号の出力を停止または開始させていたがこれに限定されない。例えば、制御用フィルタ部1000内の加算器1301〜1304それぞれの後段にスイッチを追加し、当該スイッチをオン/オフさせることによって、制御信号の出力を停止または開始させるようにしてもよい。
また、上述では、騒音制御装置の構成は、騒音マイクを1101〜1120の計20個、制御スピーカを1401〜1404の計4個備える構成であったが、騒音マイクを1個、制御スピーカを1個備える構成であってもよい。この場合、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3000は、固定フィルタを1個ずつ備えることになる。なおこの場合、騒音判定部3000の判定用エラーマイク3130は、騒音マイクで代用することはできないので、騒音マイクとは別の新たなマイクで構成する必要がある。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であれば、騒音が安定しているとみなし、制御信号の出力を停止しなかった。しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、実際には、騒音は所定量以下で変動している。例えば、巡航速度で飛行中、航空機内の騒音は、エンジン負荷の変動などによって変動する。エンジン負荷は、例えば、飛行状況に応じてエンジン出力を上げたり下げたりすることで変動する。第2の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更することによって、常に最適な騒音低減効果を得ることを目的とする。
以下、図16を参照して、第2の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図16は、図1に示す座席2000に設置された、第2の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。図16では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図16において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3500、出力制御部4000、判定用変更部5100、制御用変更部5200、及び記憶部6100を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図11に示した騒音制御装置に対して、騒音判定部3000が騒音判定部3500へ入れ代わった点、判定用変更部5100、制御用変更部5200、及び記憶部6100を新たに備える点で異なる。その他の構成については、図11に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。
騒音判定部3500の具体的な構成は、図17に示す構成となる。図17は、騒音判定部3500の具体的な回路構成を示す図である。図17に示すように、騒音判定部3500の構成については、固定フィルタ3101〜3120のフィルタ係数が判定用変更部5100によって変更される点で図12に示した騒音判定部3000の構成と異なる。それ以外の構成については、図12に示した騒音判定部3000と同様であり、ここでは説明を省略する。また、騒音判定部3500の処理は騒音判定部3000と若干異なるが、これについては、後述する騒音判定処理及び出力制御処理において詳細に説明する。
判定用変更部5100は、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出す。外部情報については、後述する。判定用変更部5100は、騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更する。
制御用変更部5200は、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出す。外部情報については、後述する。制御用変更部5200は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更する。
記憶部6100には、図18に示すように、騒音判定部3500及び制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数と、外部情報とが関連付けして記憶される。図18は、記憶部6100に記憶されるデータ構造を示す図である。記憶部6100に記憶される外部情報は、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報である。変動量が所定量以下となる外部情報としては、例えば、エンジン負荷に関する情報、飛行高度に関する情報、飛行速度に関する情報、現在位置に関する情報、及び気象情報などが挙げられる。記憶部6100には、このような複数種類の外部情報が記憶されている。図18の例では、エンジン負荷に関する情報と、騒音判定部3500及び制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数とが関連付けされた様子を示している。なお、騒音判定部3500内には固定フィルタが20個、制御用フィルタ部1000内には固定フィルタが80個ある。また、図18に示す1〜5は、エンジン負荷の大小を示し、エンジン負荷の大小に応じてこれら100個のフィルタ係数(x1〜x20、y1〜y80)からなる組(「−1」〜「−5」)が関連付けされている。
以下、図19を参照して、騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図19は、第2の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3500内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。また、騒音判定部3500の初期状態において、所定の騒音の周波数および/またはレベルは、或る程度の変動量内で変動しているとする。
図19において、処理が開始されると、騒音判定部3500の初期状態において、閾値を決定するための処理が行われる(ステップS200)。ステップS200の処理は、図15に示した処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。レベル判定部3170は、動作中信号に基づき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する(ステップS201)。ステップS201の次に、レベル判定部3170は、ステップS201で計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS202)。
レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS202でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS203)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS204)。ステップS204の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS205)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS205でNo)、処理は、ステップS201へ戻る。
一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合(ステップS202でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、フィルタ係数を変更する指示を示す変更指示信号を、判定用変更部5100へ出力する(ステップS206)。判定用変更部5100は、レベル判定部3170から変更指示信号を受け取ったとき、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を記憶部6100から読み出し、騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更し、変更の完了を示す変更完了信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS207)。レベル判定部3170は、判定用変更部5100から変更完了信号を受け取ったとき、BPF3150からの出力信号のレベルを動作レベルとして計算する(ステップS208)。そして、レベル判定部3170は、計算した動作レベルが、自身に記憶した閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS209)。
レベル判定部3170は、動作レベルが閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS209でYes)、変更したフィルタ係数を元のフィルタ係数に復帰させる指示を示す復帰指示信号を、判定用変更部5100へ出力する(ステップS210)。判定用変更部5100は、レベル判定部3170から復帰指示信号を受け取ったとき、騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、元のフィルタ係数に変更し、復帰の完了を示す復帰完了信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS211)。
一方、レベル判定部3170は、動作レベルが閾値以下であると判定した場合(ステップS209でNo)、フィルタ係数を変更する指示を示す変更指示信号を、制御用変更部5200へ出力する(ステップS212)。制御用変更部5200は、レベル判定部3170から変更指示信号を受け取ったとき、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を記憶部6100から読み出し、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100から読み出したフィルタ係数に変更し、変更の完了を示す変更完了信号をレベル判定部3170へ出力する(ステップS213)。
ステップS211の復帰完了信号、またはステップS213の変更完了信号を受け取ったとき、レベル判定部3170は、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS214)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS215)。ステップS215の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS216)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS216でNo)、処理は、ステップS201へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置では、所定の騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更する。このため、本実施形態に係る騒音制御装置では、騒音が安定しているとみなした場合において、常に最適な騒音低減効果を得ることができる。なお、このフィルタ係数の変更処理は、適応フィルタで行われる係数更新処理と異なり、外部情報に応じたフィルタ係数を選択するのみである。このため、本実施形態に係る変更処理を行っても、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小させることができる。
なお、上述では、航空機に関する情報を外部情報としたが、これに限定されない。例えば、騒音制御装置が列車や自動車に設置される場合、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報であれば、走行位置や走行速度などの情報を外部情報として用いてもよい。具体的には、列車は予め決められたレールの上を走るので、路線情報や各路線の距離情報などを組み合わせて走行位置を特定することができ、その特定した走行位置を、外部情報として用いることができる。この場合、走行位置がトンネル内であるか、鉄橋上であるかを予め把握することができるので、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する外部情報となり得る。自動車の場合、道路が多く複雑で周囲環境も千差万別なので、騒音の周波数および/またはレベルを予め把握するのは列車よりも難しいが、カーナビゲーションシステムと道路インフラ情報などを組み合わせれば、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する外部情報を生成することも可能である。
なお、上述では、判定用変更部5100が騒音判定部3500内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を変更し、再度、レベル判定部3170において判定処理を行っていた。これは、外部情報の信頼性を検証するためである。したがって、このような検証を行う必要がない場合には、直接、制御用変更部5200が制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を変更するようにしてもよい。
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態で説明した騒音判定部3000及び3500は、図12及び図17に示したような回路構成を有し、レベル判定部3170でのレベル判定を行うことによって、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定していた。これに対し、本実施形態では、レベル判定を行わずに、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定することを目的とする。
以下、図20を参照して、第3の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図20は、図1に示す座席2000に設置された、第3の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。図20では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図20において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3600、及び出力制御部4000を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図11に示した騒音制御装置に対して、騒音判定部3000が騒音判定部3600へ入れ代わった点で異なる。その他の構成については、図11に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。
騒音判定部3600は、入力される外部情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する。騒音判定部3600は、変動量が所定量以下である場合、所定の騒音が安定しているとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの制御信号の出力を開始させるための出力開始信号を、出力制御部4000へ出力する。騒音判定部3600は、入力される外部情報に基づいて、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合、所定の騒音が不安定になったとみなして、固定フィルタ1201−1〜1220−4からの出力を停止させるための出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。
ここで、本実施形態における外部情報は、第2の実施形態と同様、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報である。なお、変動量が所定量よりも大きくなる外部情報としては、例えば、高度情報、シートベルトサイン、速度情報、及び現在位置などが挙げられる。以下、各外部情報毎に騒音判定部3600がどのように判定するかについて説明する。航空機では、所定の高度(例えば10000フィート)以上になると水平飛行で、かつ一定速度の巡航状態となる。このため、或る高度(例えば10000フィート)以上になると、所定の騒音の変動が少なくなり、その変動量が所定量以下となる。よって、外部情報が高度情報である場合、騒音判定部3600は、高度が所定の高度以上である場合、変動量が所定量以下であると判定し、高度が所定の高度より低い場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。また、巡航状態にはシートベルトサインが消える(オフする)。よって、外部情報がシートベルトサインである場合、騒音判定部3600は、シートベルトサインがオフである場合、変動量が所定量以下であると判定し、シートベルトサインがオンである場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。また、巡航状態には航空機は一定速度で飛行する。よって、外部情報が速度情報である場合、騒音判定部3600は、速度が一定速度である場合、変動量が所定量以下であると判定し、速度が一定速度ではない場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。また、気流の乱れが発生する位置に航空機が到達したとき、所定の騒音の変動が大きくなり、その変動量が所定量より大きくなる。なお、この位置は、飛行当日の気象情報に基づき、予め特定することができる。よって、外部情報が現在位置である場合、騒音判定部3600は、現在位置が予め特定した位置と一致しない場合、変動量が所定量以下であると判定し、現在位置が予め特定した位置と一致した場合、変動量が所定量より大きいと判定することができる。
以下、図21を参照して、第3の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図21は、第3の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3600内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。
図21において、処理が開始されると、騒音判定部3600は、外部情報を取得する(ステップS300)。騒音判定部3600は、ステップS300で取得した外部情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する(ステップS301)。騒音判定部3600は、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合(ステップS301でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS302)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS303)。ステップS303の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS304)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS304でNo)、処理は、ステップS300へ戻る。
一方、騒音判定部3600は、変動量が所定量以下であると判定した場合(ステップS301でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS305)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS306)。ステップS306の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS307)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS307でNo)、処理は、ステップS300へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置は、騒音が不安定になった場合、制御信号の出力を停止させている。このため、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大してしまう可能性を払拭することができる。さらに、本実施形態に係る騒音制御装置は、固定フィルタのみを用いて騒音制御している。このため、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小することができる。このように、本実施形態によれば、制御点に到来する騒音を騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能な騒音制御装置を提供することができる。
なお、上述では、騒音判定部3600は、外部情報として、高度情報、シートベルトサイン、速度情報、及び現在位置を用いていたが、これに限定されず、他の外部情報を用いてもよい。また、より判定精度を上げるために、騒音判定部3600は、例えば高度情報、シートベルトサイン、速度情報、及び現在位置を任意に組み合わせて判定するようにしてもよい。また、外部情報を用いた騒音判定部3600の判定を、第1及び第2の実施形態と併用してもよい。これにより、より判定精度を上げることができる。
なお、騒音判定部3600は、上記外部情報とは別に、乗員Aが座席に着座しているか否かを示す着座情報を用いてもよい。例えば、座席2000に設けたセンサを用いて、乗員Aが座席に着座しているか否かを検出すれば、当該センサからの検出信号を着座情報を示す信号として取得することができる。騒音判定部3600は、着座情報に基づき、乗員Aが座席に着座しているか否かを判定する。騒音判定部3600は、乗員Aが座席に着座していると判定したとき、出力開始信号を出力制御部4000へ出力し、乗員Aが座席に着座していないと判定したとき、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する。これにより、不要な騒音制御を停止させることができ、演算量を低減させることができる。
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であれば、騒音が安定しているとみなし、制御信号の出力を停止しなかった。しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、実際には、第2の実施形態で説明したように、騒音は所定量以下で変動している。第4の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更することによって、常に最適な騒音低減効果を得ることを目的とする。
以下、図22を参照して、第4の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図22は、図1に示す座席2000に設置された、第4の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である。図22では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図22において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3700、出力制御部4000、制御用変更部5300、及び記憶部6200を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図20に示した騒音制御装置に対して、騒音判定部3600が騒音判定部3700へ入れ代わった点、制御用変更部5300及び記憶部6200が新たに追加された点で異なる。その他の構成については、図20に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。なお、騒音判定部3700の処理は騒音判定部3600と若干異なるが、後述する騒音判定処理及び出力制御処理において詳細に説明する。
制御用変更部5300は、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を、記憶部6200から読み出す。外部情報については、後述する。制御用変更部5300は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6200から読み出したフィルタ係数に変更する。
記憶部6200には、図23に示すように、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数と、外部情報とが関連付けして記憶される。図23は、記憶部6200に記憶されるデータ構造を示す図である。記憶部6200に記憶に記憶される外部情報は、第3の実施形態と同様、騒音の周波数および/またはレベルを一意に特定する情報である。なお、変動量が所定量以下となる外部情報としては、例えば、エンジン負荷に関する情報、飛行高度に関する情報、飛行速度に関する情報、現在位置に関する情報、及び気象情報などが挙げられる。記憶部6200には、このような複数種類の外部情報が記憶されている。図23の例では、エンジン負荷に関する情報と、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されるべきフィルタ係数とが関連付けされた様子を示している。なお、制御用フィルタ部1000内には固定フィルタが80個ある。また、図23に示す1〜5は、エンジン負荷の大小を示し、エンジン負荷の大小に応じてこれら80個のフィルタ係数(y1〜y80)からなる組(「−1」〜「−5」)が関連付けされている。
以下、図24を参照して、第4の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れについて説明する。図24は、第4の実施形態に係る騒音判定処理及び出力制御処理の流れを示したフローチャートである。なお、制御用フィルタ部1000及び騒音判定部3700内の固定フィルタが全て動作している状況において、以下の処理がなされるものとする。
図24において、処理が開始されると、騒音判定部3700は、外部情報を取得する(ステップS400)。騒音判定部3700は、ステップS400で取得した外部情報に基づいて、制御点に到来する所定の騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量よりも大きいか否かを判定する(ステップS401)。騒音判定部3700は、変動量が所定量よりも大きいと判定した場合(ステップS401でYes)、「所定の騒音が不安定になった」とみなし、出力停止信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS402)。出力制御部4000は、出力停止信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を停止させ、制御信号の出力を停止させる(ステップS403)。ステップS403の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS404)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS404でNo)、処理は、ステップS400へ戻る。
一方、騒音判定部3700は、変動量が所定量以下であると判定した場合(ステップS401でNo)、「所定の騒音が安定している」とみなし、フィルタ係数を変更する指示を示す変更指示信号を、制御用変更部5300へ出力する(ステップS405)。制御用変更部5300は、騒音判定部3700から変更指示信号を受け取ったとき、入力される外部情報と関連付けされたフィルタ係数を記憶部6200から読み出し、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6200から読み出したフィルタ係数に変更し、変更の完了を示す変更完了信号を騒音判定部3700へ出力する(ステップS406)。騒音判定部3700は、制御用変更部5300から変更完了信号を受け取ったとき、出力開始信号を出力制御部4000へ出力する(ステップS407)。出力制御部4000は、出力開始信号に基づき、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタの動作を開始させ、制御信号の出力を開始させる(ステップS408)。ステップS408の後、騒音制御装置は、騒音判定処理及び出力制御処理を終了するか否か判定する(ステップS409)。騒音判定処理及び出力制御処理を終了しない場合(ステップS409でNo)、処理は、ステップS400へ戻る。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置では、所定の騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更する。このため、本実施形態に係る騒音制御装置では、騒音が安定しているとみなした場合において、常に最適な騒音低減効果を得ることができる。なお、このフィルタ係数の変更処理は、適応フィルタで行われる係数更新処理と異なり、外部情報に応じたフィルタ係数を選択するのみである。このため、本実施形態に係る変更処理を行っても、適応フィルタを用いた場合と比べて、回路規模を縮小させることができる。
(第5の実施形態)
第1及び第3の実施形態では、制御点に到来する騒音の周波数および/またはレベルの変動量が所定量以下であれば、騒音が安定しているとみなし、制御信号の出力を停止しなかった。しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、第2及び第4の実施形態で説明したように、騒音は所定量以下で変動している。第2及び第4の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、記憶部6100、6200を参照して、騒音の変動に応じた最適なフィルタ係数に変更することによって、常に最適な騒音低減効果を得ていた。
しかしながら、騒音が安定しているとみなした場合でも、座席位置によっては騒音の種類が異なるため、記憶部6100、6200に記憶されたフィルタ係数が、必ずしも最適なフィルタ係数であるとは限らなかった。また、記憶部6100、6200に記憶されたフィルタ係数が初期状態において最適であったとしても、機内の設備の更新や経年劣化等によって、座席位置や周囲の環境が変わった場合には、記憶部6100、6200に記憶されたフィルタ係数が、必ずしも最適なフィルタ係数であるとは限らなかった。
さらに、固定フィルタの場合、その固定のフィルタ係数を何らかの手段で求める必要があるが、例えば航空機などの大量乗客輸送手段では座席数が多いために、各座席で最適なフィルタ係数を求める場合、それぞれ個別にフィルタ係数を求める作業が必要となる。また、他機種では機体、エンジン、座席状態が全て異なり、同機種でも航空会社によってエンジンが異なる場合もありえるため、それら条件を含めた各座席毎の最適なフィルタ係数を求める作業は膨大な作業量になる可能性がある。
そこで、第5の実施形態では、騒音が安定しているとみなした場合において、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、座席位置や周囲の環境に応じた最適なフィルタ係数に更新することによって、常に最適な騒音低減効果を得ることを目的とする。また、同時に、それを自動的に行なえるようにすることで、各座席毎の最適なフィルタ係数を求める工数を大きく低減させることを目的とする。
以下、図25を参照して、第5の実施形態に係る騒音制御装置の構成について具体的に説明する。図25は、図1に示す座席2000に設置された、第5の実施形態に係る騒音制御装置の回路構成を示す図である、図25では、第1の実施形態と同様、航空機内の騒音を制御対象とし、所定の騒音を、巡航速度で飛行中に航空機内で発生する騒音であるとする。
図25において、騒音制御装置は、騒音マイク1101〜1120、制御用フィルタ部1000、制御スピーカ1401〜1404、騒音判定部3000、出力制御部4000、フィルタ係数更新部5400、フィルタ係数算出部7000、信号記憶部7001、効果判定部7002、及びエラーマイク7601〜7604を備える。本実施形態に係る騒音制御装置は、図11に示した騒音制御装置に対して、フィルタ係数更新部5400、フィルタ係数算出部7000、信号記憶部7001、効果判定部7002、及びエラーマイク7601〜7604を新たに備える点で異なる。その他の構成については、図11に示した騒音制御装置と同様であり、同じ符号を付している。なお、エラーマイク7601〜7604は、例えば座席に座ったユーザーの耳位置近傍のシートに取付けられている。
最初は、図11の場合と同様に固定フィルタ1201−1〜1220−4には初期値としての固定のフィルタ係数が設定されている。騒音判定部3000でこのフィルタ係数を求めたときの騒音状態に近いと判断されたら、出力制御部4000に動作開始を促し、固定フィルタ1201−1〜1220−4で騒音マイク1100〜1120からの騒音信号をその固定のフィルタ係数で処理し、スピーカ1401〜1404で再生するのは、図11の場合と同様である。エラーマイク7601〜7604では、その位置での騒音とスピーカ1401〜1404から再生された制御音とが合成され、その合成された結果としてのエラー信号を検出する。
ここで、エラーマイクを4つとしているが、スピーカと同数以下であれば、理論上は固定フィルタの制御係数を正しく求めることができる。さらに、スピーカ1401からエラーマイク7601間の音響特性をFx1_1、スピーカ1401からエラーマイク7602間の音響特性をFx1_2、スピーカ1402からエラーマイク7601間の音響特性をFx2_1、スピーカ1402からエラーマイク7602間の音響特性をFx2_2と示す。ただし、その他の音響特性、例えば、スピーカ1401からエラーマイク7603間の音響特性Fx1_3や、スピーカ1404からエラーマイク7602間の音響特性Fx4_2などは図示を省略している。
さて、エラーマイク7601〜7604で検出されたエラー信号は、効果判定部7002に入力される。効果判定部7002は、所定の騒音低減効果が得られているかを判定する。その手法としては、例えば、各エラー信号から騒音制御帯域内の成分を抽出し、固定フィルタ1201−1〜1220−4を動作させる前のレベルと動作後のレベルとを比較することなどが考えられる。また、固定フィルタ1201−1〜1220−4の動作前後の騒音制御帯域内のエラー信号レベルを平均化した後、比較する手法でもよい。あるいは、騒音制御帯域内の複数の代表周波数におけるエラー信号レベルを比較する手法でもよい。
効果判定部7002は、このように判定した結果、所定効果が得られていれば、そのまま固定フィルタ1201−1〜1220−4を動作させて、騒音制御を継続する。しかし、効果判定部7002は、所定効果が得られていない場合(効果が劣化する以外に騒音が増加する場合も含む)、そのフィルタ係数では騒音制御が困難になったとの判定を出力制御部4000へ通知する。その結果、出力制御部4000は、固定フィルタ1201−1〜1220−4の動作を停止する。同時に、効果判定部7002は、信号記憶部7001に信号記憶するように指示する。信号記憶部7001は、効果判定部7002からの指示を受けて、騒音マイク1101〜1120からの騒音信号n1〜n20と、エラーマイク7601〜7604からのエラー信号e1〜e4とを例えば内部メモリなどに所定時間録音する。録音が完了すると、信号記憶部7001は、フィルタ係数算出部7000に係数算出開始を指示する。フィルタ係数算出部7000は、係数算出開始の指示を受けて、制御用フィルタ部1000の固定のフィルタ係数を、信号記憶部7001に録音したデータを利用して算出する。フィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングでフィルタ係数算出部7000が算出したフィルタ係数を読み出し、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、フィルタ係数算出部7000から読み出したフィルタ係数に更新する。
フィルタ係数算出部7000の具体的な構成は、図26に示す構成となる。図26は、フィルタ係数算出部7000の具体的な回路構成を示す図である。ただし、図26では、簡単のため、図25に示す固定フィルタ1201−1〜1220−1、及び固定フィルタ1201−2〜1220−2のフィルタ係数を求めるための構成のみについて説明する。図26において、フィルタ係数算出部7000は、適応フィルタ7201−1〜7220−1、適応フィルタ7201−2〜7220−2、加算器7301〜7304、音響系フィルタ7401〜7404、及び加算器7501〜7502を備える。
図25で説明したように、信号記憶部7001からの騒音信号n1〜n20は適応フィルタ7201−1〜7220−2へ出力される。
適応フィルタ7201−1〜7220−1には、Filtered−X_LMS法で予め必要とされるところの、制御スピーカ1401からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx1_1)と、制御スピーカ1401からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx1_2)とが設定されている。以下、同様に、適応フィルタ7201−2〜7220−2それぞれには、制御スピーカ1402からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx2_1)と、制御スピーカ1402からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx2_2)とが設定されている。
適応フィルタ7201−1〜7220−1は、入力される騒音信号を、設定されたフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器7301、加算器7303、および図示しない加算器7305、7307、・・・、7337へそれぞれ出力する。加算器7301は、最終的に、適応フィルタ7201−1〜7220−1からの制御信号を加算し、音響系フィルタ7401及び音響系フィルタ7402へ出力する。適応フィルタ7201−2〜7220−2は、入力される騒音信号を、設定されたフィルタ係数を用いて信号処理し、制御信号として加算器7302、加算器7404、および図示しない加算器7306、7308、・・・、7338へそれぞれ出力する。加算器7302は、最終的に、適応フィルタ7201−2〜7220−2からの制御信号を加算し、音響系フィルタ7403及び音響系フィルタ7404へ出力する。
ここで、音響系フィルタ7401には、制御スピーカ1401からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx1_1)が設定されている。音響系フィルタ7402には、制御スピーカ1401からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx1_2)が設定されている。音響系フィルタ7403には、制御スピーカ1402からエラーマイク7601までの伝達関数(Fx2_1)が設定されている。音響系フィルタ7404には、制御スピーカ1402からエラーマイク7602までの伝達関数(Fx2_2)が設定されている。
音響系フィルタ7401及び音響系フィルタ7403を通過した信号は、加算器7501へ出力される。また、エラー信号e1は、加算器7501へ出力される。加算器7501は、これらの入力信号を加算する。同様に、音響系フィルタ7402及び音響系フィルタ7404を通過した信号は、加算器7502へ出力される。また、エラー信号e2は、加算器7502へ出力される。加算器7502は、これらの入力信号を加算する。適応フィルタ7201−1〜7220−2は、加算器7501〜7502での加算結果を自身の係数更新用エラー信号E1〜E2とみなして、この係数更新用エラー信号E1〜E2を最小とするように自身のフィルタ係数を更新する。
ここで、図25で説明したように、騒音信号n1〜n20とエラー信号e1〜e4とは所定時間(例えば1分)のデータとして録音されており、フィルタ係数算出部7000は、適応フィルタ7201−1〜7220−2のフィルタ係数が収束するまでこのデータを繰返し使用することが可能である。また、フィルタ係数算出部7000は、制御音をスピーカ1401〜1404から再生する制御用フィルタ部1000とは独立構成になっているので、制御用フィルタ部1000の処理速度に依存せずに処理を実行できる。つまり、制御用フィルタ部1000は所定のサンプリング周期内に処理を完了する必要のあるリアルタイム処理を行うが、フィルタ係数算出部7000は実時間としてのサンプリング周期内に処理を終える必要は無い。
騒音信号n1〜n20とエラー信号e1〜e4とは実時間でサンプリングがなされた信号であるため、フィルタ係数算出部7000で算出されるフィルタ係数は、たとえ実時間以上に処理時間がかかっても、サンプリング周期に基づく係数になる。換言すれば、フィルタ係数算出部7000の一連の処理時間は実時間に対して任意であり、早く処理を完了する構成にすれば、フィルタ係数を算出する(フィルタ係数が収束する)までの時間を短縮できる。例えば、フィルタ係数算出部7000をサンプリング周期よりも早く動作させれば実時間よりも速くフィルタ係数を算出することが可能である。また、フィルタ係数算出部7000が遅く処理を完了すれば、演算負荷が低減できるため、単位時間当たりの演算量を軽減できる。フィルタ係数算出部7000は、遅く処理を完了する場合、図26の処理を全てサンプリング周期内に完了する必要は無く、例えばあるサンプルでは適応フィルタ7201−1を処理し、次のサンプルでは適応フィルタ7201−2を処理することも可能となる。ただし、このようにサンプリング周期毎に、適用フィルタの処理をきれいに分割する必要性は無い。
以上の係数更新処理によって、フィルタ係数算出部7000は、制御点に到来する騒音を低減させるフィルタ係数を算出する。
その後、適応フィルタ7201−1〜7220−1、及び適応フィルタ7201−2〜7220−2で更新されるフィルタ係数が収束すると、図25に示したフィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングで、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を収束したフィルタ係数に更新する。所定のタイミングとしては、例えば、適応フィルタ7201−1〜7220−1、及び適応フィルタ7201−2〜7220−2で更新されるフィルタ係数が収束するタイミングであったり、数分に1回や、数日に1回の割合で更新するものであってもよい。あるいは、航空機の初運航時や、機内の設備の更新等が行われた後のタイミングであってもよい。
さらに、騒音制御装置は、以下の処理を行った後で、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を算出したフィルタ係数に更新してもよい。騒音制御装置は、上記のように適応フィルタ7201−1〜7220−2で更新されるフィルタ係数が収束したら、その時間における騒音信号とエラー信号とを録音する指示を信号記憶部7001へ与える。フィルタ係数算出部7000は、再度録音した騒音信号を用いて、適応フィルタ7201−1〜7220−2のAF1_1、AF1_2、・・・・、AF20_2で固定フィルタの係数として収束した係数と畳込み処理を行い、音響系フィルタ7401〜7404を経由したその結果と再度録音したエラー信号とを加算器7501〜7502で加算する。フィルタ係数更新部5400は、その加算結果が所定値以内に収まっていると判定したら初めて、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、算出したフィルタ係数に更新する。これによって、フィルタ係数算出部7000の係数算出に時間がかかり、その間に騒音状態がさらに変化してしまっても、スピーカ1401〜1403から間違った制御音が再生され、ユーザーに不快感を与えてしまうことを防止できる。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御装置は、効果判定部7002がその時点での制御用フィルタ1000の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を用いた場合のエラーマイク7601〜7604の騒音低減効果を判定し、低減効果が所定値以内に収まっていない場合は、制御用フィルタ1000の実時間動作とは関係なく独立に、フィルタ係数算出部7000が最適なフィルタ係数を算出し、フィルタ係数更新部5400が所定のタイミングで、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を更新する。このため、実際の騒音制御処理のバックグラウンドで、座席位置や周囲の環境に応じた最適なフィルタ係数を算出することができることに加え、フィルタ係数算出のための処理能力の要求を緩和することもできる。また、算出したフィルタ係数が直ちに制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに適応されないので、間違ったフィルタ係数に更新されることを防止し、その結果、たとえフィルタ係数が発散するなど不具合が生じても実際には制御音として再生されないのでユーザーに不快感を与えない。これによって、騒音制御装置は、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を、座席位置や周囲の環境に応じた最適なフィルタ係数に変更し、常に最適な騒音低減効果を得ることができる。
なお、上述したフィルタ係数算出部7000は、図16に示す騒音制御装置、図20に示す騒音制御装置、及び図22に示す騒音制御装置にも適用することができる。すなわち、図16及び図22に騒音制御装置では、フィルタ係数算出部7000が最適なフィルタ係数を算出し、フィルタ係数更新部5400が所定のタイミングで、記憶部6100及び記憶部6200が記憶する固定フィルタ係数を更新する。また、図20に示す騒音制御装置では、フィルタ係数算出部7000が最適なフィルタ係数を算出し、フィルタ係数更新部5400が所定のタイミングで、制御用フィルタ部1000内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を更新する。
また、上述した説明では省略したが、フィルタ係数算出部7000が、騒音判定部3000,3500,3600,3700のフィルタ係数を算出することができるのはいうまでもない。この場合、フィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングで、騒音判定部3000,3600内の固定フィルタに設定されたフィルタ係数を更新する。あるいは、フィルタ係数更新部5400は、所定のタイミングで、記憶部6100及び記憶部6200が記憶する騒音判定部3500,3700のフィルタ係数を更新する。なお、この場合、図26に示した音響系フィルタ7401〜7404、および適応フィルタ7201−1〜7220−2内の伝達関数Fx1_1、Fx1_2、Fx2_1、Fx2_2を示すフィルタは、全て不要である。
本発明に係る騒音制御装置は、制御点に到来する騒音が騒音制御前よりも増大する可能性を払拭し、かつ回路規模を縮小することが可能であり、自動車や、列車、航空機内の座席、住宅内の椅子やソファ、あるいは、オフィスや工場内の椅子等に適用される。
1101〜1120、9101〜9120 騒音マイク
1000 制御用フィルタ部
1401〜1404、9401〜9404 制御スピーカ
3000、3500、3600、3700 騒音判定部
3160、4000 出力制御部
1201−1〜1220−1、1201−2〜1220−2、1201−3〜1220−3、1201−4〜1220−4、3101〜3120、9601 固定フィルタ
1301〜1304、3140、7301〜7304、7501〜7502、9301〜9304 加算器
3130、7601〜7604、9501〜9502 エラーマイク
3150 バンドパスフィルタ
3170 レベル判定部
5100 判定用変更部
5200、5300 制御用変更部
5400 フィルタ係数更新部
6100、6200 記憶部
7000 フィルタ係数算出部
7001 信号記憶部
7002 効果判定部
7401〜7404 音響系フィルタ
7201-1〜7220−1、7201-2〜7220−2、9201−1〜9220−1、9201−2〜9220−2、9201−3〜9220−3、9201−4〜9220−4 適応フィルタ