本発明は電子機器のバックアップ用電源に用いられ、特に電源などの内部の基板に実装されるコイン型電気二重層キャパシタに関する発明である。
近年、様々な目的から電子機器の内部装置の小型化が進められていく中で内部装置を構成する各部品、例えば電源なども小型化が求められている。しかし、小型化された内部装置において用いる実装基板も小型化されるため、この実装基板に対して実装する各部品の接続面積を十分に確保することができず、各部品の固定強度を維持できないことが課題となっている。さらに、このような部品としてコイン型電気二重層キャパシタの携帯用電子機器への搭載が始まって以来、機器の様々な利用状況を想定したあらゆる方向からの衝撃に耐え得る固定強度がコイン型電気二重層キャパシタに対しても求められている。
ところで、効率よく大量生産することを考慮してコイン型電気二重層キャパシタを実装基板に接続するための固定方法としては、リフローによるはんだ付けが一般的に行われている。しかしながら、このリフローによるはんだ付けを用いて、コイン型電気二重層キャパシタを固定した実装基板を大量生産する場合に、それぞれの実装基板ごとにはんだによるコイン型電気二重層キャパシタの固定具合を均一にすることが難しい。したがって、固定強度が十分でなくコイン型電気二重層キャパシタの実装基板への固定が不十分なものも作られてしまうことがあるという課題があった。
このような従来のコイン型電気二重層キャパシタの実装基板への接続に対する課題について図を用いて具体的に説明する。
図6Aは、従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した上面図、図6Bは、同コイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図である。
図6Aおよび図6Bに示すように、従来のコイン型電気二重層キャパシタの構造は、電気の蓄電および放電を行うキャパシタ素子(図示せず)を内部に配置して金属製の上蓋601と下蓋602とを用いて囲み、絶縁性を有したリング状のパッキンを介してかしめ込んだ構造としている。そして、上蓋601と下蓋602とをキャパシタ素子と電気的に接続することにより、上蓋601と下蓋602とはそれぞれ異なった極性を有するようになり、コイン型電気二重層キャパシタの本体部を構成している。
また、上側端子板604は、上蓋601の外表面601aと電気的に接続している。この上側端子板604は、長手方向にステップ形状を形成し、コイン型電気二重層キャパシタより下に位置する実装基板(図示せず)と接面した状態で電気的に接続されることとなる。さらに、この上側端子板604が実装基板と電気的に接続する長手方向の一端部分にメッキ加工を施したメッキ部604bを有した構成となっている。さらに、このメッキ部604bの幅方向の両側面へ切り欠き部607が設けられている。
下側端子板603は、下蓋602の外表面602aと電気的に接続している。下側端子板603は平板状であり、この下側端子板603の下に位置する実装基板と接面した状態で電気的に接続されることとなる。下側端子板603も、上側端子板604と同様に実装基板と電気的に接続される長手方向の一端部分にメッキ加工を施したメッキ部603bを有した構成となっている。さらに、上側端子板604と同様にこのメッキ部603bの幅方向の両側面へ切り欠き部608が設けられている。
このような構成とすることにより、上側端子板604と下側端子板603をそれぞれ実装基板にはんだを介して接続する際に、従来のコイン型電気二重層キャパシタは、切り欠き部607、608を設けたことによって、メッキ部603b、604bの側面の表面積が拡張され、はんだフィレットを形成する面積が増加する。このことにより、メッキ部603b、604bと実装基板との接続部分の面積を増大させることができるのでコイン型電気二重層キャパシタの実装基板への固定強度の強化を行うことができる。
すなわち、メッキ部603b、604bにそれぞれ切り欠き部607、608が無い場合では、メッキ部603b、604bの長手方向の側面と幅方向の両側面とに形成されるはんだフィレットにより、メッキ部603b、604bと実装基板との接続部分が固定されている。これに対して、メッキ部603b、604bにそれぞれの切り欠き部607、608がある場合には、メッキ部603b、604bの長手方向の側面に形成されるはんだフィレットが切り欠き部607、608の側面にも形成されて増加する。このことにより、メッキ部603b、604bと実装基板との接続部分の固定強度を効果的に強化することができる。
なお、この先行技術に関する文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
しかしながら、コイン型電気二重層キャパシタに関してはさらなる小型化が求められており、さらに小型化されたコイン型電気二重層キャパシタを実装基板に接続したときの固定強度を確保することが難しいという課題があった。すなわち、コイン型電気二重層キャパシタを実装基板に対してリフローによるはんだ付けを行うときに、一層小型化され、かつ実装基板との接続部分の固定強度を十分確保できるコイン型電気二重層キャパシタを実現することが難しいという課題があった。
特開2007−208137号公報
本発明は、上記課題を解決し、リフローはんだ付けを行っても優れた固定強度を有し、同時に小型化も成し遂げたコイン型電気二重層キャパシタを提供するものである。
すなわち、本発明のコイン型電気二重層キャパシタは、一対の電極が絶縁性のセパレータを介して対面するように配置されたキャパシタ素子と、このキャパシタ素子に電解液を含浸させて収納する下蓋と、この下蓋の開口部を絶縁性のリング状パッキングを介して密封する上蓋と、上記上蓋の外表面に一方の端部を接続した上側端子板と、上記下蓋の外表面に一方の端部を接続し、他方の端部に貫通孔を設けた下側端子板とを備えている。そして、本発明のコイン型電気二重層キャパシタは、上記貫通孔の少なくとも一部が、下蓋の底部の外表面により覆われずに開口している構成からなる。
このように、下側端子板の実装基板と接続する部分に貫通孔を設けた構成とすることにより、実装基板にはんだで固定する際に、はんだフィレットを下側端子板の外周面だけでなく、例えば下側端子板の端部の略中央部にも分散して形成することができ、実装基板への固定強度を高めることができる。
さらに、下側端子板における貫通孔の位置を、貫通孔が下蓋の底部の外表面により覆われることなく、その一部が必ず外気と接する部分を有するように開口している構成としている。
このことにより、はんだ付けする際のガス抜きを確実に行い、貫通孔の内周面を覆うはんだフィレットが安定して形成されている。
したがって、実装基板との接続部分において強い固定強度を確保することができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板の突出寸法を最小限に抑えることができるので、コイン型電気二重層キャパシタの小型化を図ることができる。
また、本発明のキャパシタ実装体は、上記記載のコイン型電気二重層キャパシタと、このコイン型電気二重層キャパシタを実装する実装基板と、この実装基板上に前記コイン型電気二重層キャパシタを電気的に接続するはんだと、を備えている。そして、キャパシタ実装体は、上記コイン型電気二重層キャパシタを上記実装基板上に上記はんだで固定する場合に、上記下側端子板の上記貫通孔の上記内周面および上記外周面にそれぞれ形成されたフィレットと、これらのフィレットに連続して上記下側端子板の上面に表出して広がるはんだとが、上記貫通孔の少なくとも一部を用いて一体となっている構成からなる。
このような構成とすることにより、実装基板との接続部分において強い固定強度を確保することができ、同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板の突出寸法を最小限に抑えることができる小型でコンパクトなキャパシタ実装体を実現することができる。
図1Aは本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図である。
図1Bは本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した下面図である。
図2は本実施の形態1における上側端子板および下側端子板に接続する前のコイン型電気二重層キャパシタの一部切り欠き斜視図である。
図3Aは本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の断面図である。
図3Bは本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の要部拡大斜視図である。
図4Aは本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図である。
図4Bは本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図である。
図4Cは本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図である。
図5Aは従来のコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図である。
図5Bは従来のコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図である。
図5Cは従来のコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図である。
図6Aは従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した上面図である。
図6Bは従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図である。
符号の説明
1,101 上蓋
2,102 下蓋
3,103,203,303,403,503 下側端子板
3a,4a,103a,104a 溶接部分
3b,4b,103b,104b,203b,303b,403b,503b 接続部分
3c 側面
4,104 上側端子板
5,105,205,405 貫通孔
5c,105c 内周面
5d,103d 外周面
5e 開口
6a,6b 電極
7a,7b 集電体
8a,8b 分極性電極層
9 セパレータ
10,110 キャパシタ素子
11,111 リング状パッキング
12 曲げ加工部
103c 上面
113a,113b フィレット(はんだ)
113c はんだ
114 実装基板
315 切り欠き部
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。以下の図面においては、同じ要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1Aおよび図1Bは、それぞれ本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図および下面図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの上側端子板および下側端子板に接続する前のコイン型電気二重層キャパシタの一部切り欠き斜視図である。
図1Aおよび図1Bには、上蓋1、下蓋2、下側端子板3、上側端子板4、貫通孔5などを備えた本発明のコイン型電気二重層キャパシタの構成が示されているが、これらの詳細については後述する。
まず、図2を用いて実施の形態1によるコイン型電気二重層キャパシタの主要部を構成するキャパシタ素子10の内部構成の説明を行う。
図2において、電極6aおよび6bは、それぞれ正の電極および負の電極を示している。電極6a、6bにおいて、それぞれアルミニウム製の集電体7a、7bの片面に活性炭とその活性炭を束ねる結着剤と導電助剤とで構成された分極性電極層8a、8bを形成している。そして、電極6a、6bは、互いにもう一方の電極6b、6aの方向へ分極性電極層8a、8bを形成した面が対向するように配設して配置されている。この電極6a、6bを介して、コンデンサ内部で蓄えられた電気を集め外部の回路などへ放出することや、再度外部の回路などから電気を蓄えることができる。なお、集電体7a、7bは、一例としてアルミニウムの導電層を用いたが、銀や銅などの金属やカーボンなどの導電層を用いてもよい。また、この導電層には板状のものだけではなく、銀ペーストや金ペーストなどのペースト状のものを用いてもよい。
図2に示すセパレータ9は、絶縁性を有し、例えば紙製の材料を使用している。セパレータ9は、電極6a、6bの間に介在する位置に配設されている。
上述したようにキャパシタ素子10は、電極6a、6b、集電体7a、7b、分極性電極層8a、8b、セパレータ9を含んで図2に示すように構成されている。
このように構成されたキャパシタ素子10は、例えば駆動用電解液などの電解液(図示せず)を含浸して、上蓋1と下蓋2とにより上下から挟み込まれて収納されている。このときにキャパシタ素子10は上蓋1の開口部と下蓋2の開口部とをかしめこんで封止されている。また同時に、上蓋1と下蓋2とは、それぞれキャパシタ素子10の電極6a、6bの集電体7a、7bと接続されて、キャパシタ素子10の引出電極の役割も担っている。
上蓋1と下蓋2とをかしめ込む際、図2に示すように下蓋2の内部側面に密着するように絶縁性を有したリング状パッキング11を配設している。そして、上蓋1の開口部の先端に上蓋1の中心軸から遠ざかる方向へ曲げ加工を施して曲げ加工部12を形成し、曲げ加工部12とリング状パッキング11とが、圧着するような構成として配置している。そして、下蓋2の開口部の先端に下蓋2の中心軸に向かってカーリング加工を施すことにより、リング状パッキング11の一部を下蓋2の開口部の先端と圧着する。これにより、曲げ加工部12以外の上蓋1の本体が、曲げ加工部12より内側にあるため、上蓋1と下蓋2との直接の接触をリング状パッキング11により防いだ状態で、上蓋1と下蓋2とを組み合わせることができる。
ここで、上蓋1の材料には、例えばステンレス鋼のSUS304などを用い、下蓋2の材料には、例えば高耐食性ステンレスを用いるとよい。どちらも、耐食性、加工性に優れた材料である。
次に、図1Aおよび図1Bを用いて本実施の形態1のコイン型電気二重層キャパシタの説明を具体的に行う。図2においてコイン型電気二重層キャパシタのキャパシタ素子10およびこれを収納するのに用いる上蓋1および下蓋2について説明したので、次にこれらに接続された下側端子板3と上側端子板4について説明する。
まず、上側端子板4を説明する。
図1Aおよび図1Bに示すように上側端子板4は、上蓋1に対して溶接部分4aを溶接することにより電気的に接続されている。この上側端子板4の溶接部分4aの形状(図示せず)は、例えば図1Bに示す下側端子板3の溶接部分3aと同様に略三角形を成している。さらに、上側端子板4は、溶接部分4aの一端から平板部を伸張し、下方へ屈曲させ、この平板部の先端部分に平坦な外部接続部分である接続部分4bを有する構成となっている。
また、接続部分4bは、後述する下側端子板3の溶接部分4aと略同じ高さで、かつ平行となるように構成している。なお、上側端子板4の素材には、例えばステンレス鋼のSUS304などを用いている。
次に、下側端子板3を説明する。
下側端子板3は、平板形状であり、下蓋2と溶接により電気的に接続している部分である溶接部分3aは、接続面積および溶接面積を確保するために、例えば図1Bに示すような略三角形の形状を成している。さらに、下側端子板3は、溶接部分3aの一端から伸びた外部接続部分である接続部分3bを有する構成となっている。なお、下側端子板3の素材には、上側端子板4と同様に、例えばステンレス鋼のSUS304などを用いている。
この下側端子板3の外部接続部分である接続部分3bと実装基板の表面上にあるランド部分(図示せず)との電気的な接続は、一般的に量産性を考慮して短時間で簡便に大量の接続処理ができるリフローによるはんだ付けによって行われる。本実施の形態1で用いるはんだは、例えばクリームはんだであり、例えばすず、銅、銀、そしてフラックスなどが主に含まれている。また、本実施の形態1で下側端子板3に用いられているステンレス鋼のSUS304は、融解したはんだをそれ単体では表面に付着させることができない。このことにより、予め接続部分3bの表面全体に、例えばニッケルのフラッシュメッキをまず施し、その上にすずメッキを施して、クリームはんだを用いたリフローによるはんだ付けが容易にできるようにしている。
さらに、下側端子板3の接続部分3bには、貫通孔5を設ける構成としている。一般的にリフローによるはんだ付けは接続部分3bの実装基板との接面部分におけるはんだの接着具合よりも、接続部分3bの側面3cに形成されるはんだフィレット(以下「フィレット」とする)の形成範囲の広さによって、その箇所におけるはんだ付けの固着強度が決まることとなる。なぜなら、フィレットは他の接合箇所と比較してはんだ内のボイド(空洞)が少なく、その結果、構造上はんだ自体の強度が高いからである。そこで、接続部分3bとなっている下側端子板3の接続部分3bの端部において、その端部の略中央に貫通孔5を設けている。このことにより、接続部分3bの端部の略中央の貫通孔5の内周面5cにフィレットを形成する。このことは、ただ単にフィレットの形成範囲を接続部分3bの側面3cに加えて貫通孔5の内周面5cにまで拡大するだけではなく、フィレットを接続部分3bの異なる複数の箇所に分散して形成し、接続部分の固着強度を大幅に向上することができる。
そして、コイン型電気二重層キャパシタの更なる小型化を図るために、貫通孔5を設ける位置をできる限り溶接部分3aに近接させている。このことにより、下側端子板3が下蓋2から突出する寸法を抑制するものである。しかし、貫通孔5を設ける位置が、過度に溶接部分3aに近接すると、下蓋2の底部の外表面2aにより、貫通孔5の開口部が完全に覆われてしまい外気と接する開口面積がゼロになってしまう。このことにより、リフローによるはんだ付けを行う際に、はんだ上に密封された空間が生まれ、この密封された空間の内部の圧力により融解したはんだが、表面張力を利用して接続部分3bの側面を上っていくことが困難となり、フィレット形成が不完全となってしまう。その結果、接続部分3bの固着強度が低下してしまう。
しかしながら、本実施の形態1のコイン型電気二重層キャパシタは、一対の電極6a、6bが絶縁性のセパレータ9を介して対面するように配置されたキャパシタ素子10と、このキャパシタ素子10に電解液を含浸させて収納する下蓋2と、この下蓋2の開口部を絶縁性のリング状パッキング11を介して密封する上蓋1と、この上蓋1の外表面1aに一方の端部を接続した上側端子板4と、上記下蓋2の外表面2aに一方の端部を接続し、他方の端部に貫通孔5を設けた下側端子板3とを備えている。そして、本実施の形態1のコイン型電気二重層キャパシタは、上記貫通孔5の少なくとも一部が、下蓋2の底部の外表面2aにより覆われずに開口している。
このように、下側端子板3の実装基板(図示せず)と接続する部分に貫通孔5を設けた構成とすることにより、実装基板にはんだで固定する際に、フィレットを下側端子板3の外周面5dだけでなく、例えば下側端子板3の端部の略中央部にも分散して形成することができ、実装基板への固定強度を高めることができる。
さらに、下側端子板3における貫通孔5の位置を、貫通孔5が下蓋2の底部に配置された外表面2aにより覆われることなく、その一部が必ず外気と接する部分を有するように開口5eとして設けている。このことにより、はんだ付けする際のガス抜きを確実に行い、貫通孔5の内周面5cを覆うフィレットが安定して形成されている。
したがって、実装基板との接続部分において強い固定強度を確保することができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタにおいてキャパシタ素子10からの下側端子板3の突出寸法を最小限に抑えることができるので、コイン型電気二重層キャパシタの小型化を図ることができる。
また、上述のコイン型電気二重層キャパシタにおいて貫通孔5を設ける位置については、貫通孔5の開口部の少なくとも一部を下蓋2の外表面2aの外形線が横切る位置にに配置していることとしている。しかしながら、下蓋2の底部の外表面2aの外形線の外側に貫通孔5を形成して配置していても、貫通孔5を設けることによって得られるフィレットを安定して形成し実装基板との接続部分において強い固定強度を確保する効果は失われない。
また、下側端子板3を階段状とし、下蓋2との溶接部分3aと、実装基板との接続部分3bに段差を設ける構成とした場合も、下蓋2の底部の外表面2aによって貫通孔5の開口部を塞がないようにすると同時に下側端子板3の下蓋2からの突出寸法を抑えることができる。よって、この構成は、図6Aおよび図6Bに示した従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成と比較すると、実装基板への固定強度をより高めることができると共に、コイン型電気二重層キャパシタ全体の小型化を図ることができる。一方、前述の平板状の下側端子板3を用いた本発明のコイン型電気二重層キャパシタの場合と比較すると、コイン型電気二重層キャパシタの高さが若干高くなる。
なお、本実施の形態1では、貫通孔5の形状は、例えば方形状としたが、円形状、楕円形状、三角形状、多角形状など貫通孔5が形成されて配置されたものであれば、どのような形状であっても同様の効果を奏するものである。また、貫通孔5は1個だけでなく複数個が形成されていてもよい。
(実施の形態2)
図3Aは、本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の断面図である。図3Bは、同コイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の斜視図である。ここでキャパシタ素子110は上蓋101と下蓋102とに取り囲まれて配置され、この上蓋101と下蓋102とはリング状パッキング111を介して密着している。
図3Aおよび図3Bのコイン型電気二重層キャパシタにおいて、図1に示した実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタと相違する点は、次に説明する点である。
すなわち、図3Aおよび図3Bに示すように下側端子板103を貫通孔105の位置で、実装基板上にはんだで固定する際に、貫通孔105の内周面105cにフィレット113aを形成している。それと共に下側端子板103の上面103cに表出して広がっているはんだ113cと、下側端子板103の外周面103dにフィレット113bとを形成している。これらのフィレット113a、113bを形成しているはんだと、下側端子板103の上面103cに表出して広がっているはんだ113cとが一体となるように配置している点が実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタと相違する点である。なお、上側端子板104は溶接部分104aを介して上蓋101と電気的に接続され、下側端子板103は溶接部分103aを介して下蓋102と電気的に接続されている。上側端子板104は、実施の形態1と同様に図3Aに示すように途中で折り曲げられた形状をしており接続部分104bにより実装基板114に電気的に接続されている。
ここで、コイン型電気二重層キャパシタを実装基板114上にはんだを用いて固定する場合、貫通孔105の内周面105cにフィレット113aを形成している。なお、このフィレット113aは、内周面105cに隣接して接触するように形成されている。このときに、フィレット113aにおいて、融解したはんだはバックフィレットを形成するだけでなく、貫通孔105の内周面105cを這い上がり、下側端子板103の上面103cに表出して広がってくる。このような現象は、はんだの融解によりはんだ内部からガス抜きされて生じた空気の一部が貫通孔105を通過していくときに起こると考えられる。すなわち、この空気の一部の流れが、バックフィレットを形成しようとして貫通孔105を上るはんだを後押ししてはんだが広がることにさらに勢いを付ける。このことにより、はんだは接続部分103bから上面103cへ表出する程の勢いを付与される結果によるものである。
一方で、下側端子板103の外周面103dにおいても、融解したはんだは、バックフィレットを形成するだけでなく、下側端子板103の端部の外周面103dを這い上がり、同様に下側端子板103の上面103cに表出して広がってくる。
しかしながら、はんだが、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がる範囲、及び下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がる範囲には限りがある。このため、下側端子板103における貫通孔105の位置を、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとが接触できる距離に配置している。
このような配置に構成することにより、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとが接触して一体となる。すなわち、フィレット113a、113bがはんだ113cにより接続されて図3Aおよび図3Bに示すようにはんだとして一体となる。
このことにより、はんだが、実装基板114の接続部となる下側端子板103の端部の大部分の表面を覆うという効果が得られることとなる。この結果、コイン型電気二重層キャパシタが実装基板114に固定される強度は、フィレット113a、113bが形成されてこれらのフィレット113a、113bだけによる固定強度よりも、遥かに強固な固定強度を得ることができる。
すなわち、本実施の形態2のコイン型電気二重層キャパシタは、実装基板114上にはんだで固定される場合に、貫通孔105の内周面105cと下側端子板103の外周面103dとにはんだによるフィレット113a、113bが形成される。それと共に、下側端子板103の上面103cに形成されたはんだがフィレット113a、113bと一体となる所定の位置に、下側端子板103における貫通孔105を配置した構成としている。
なお、この貫通孔105は、実装基板114の接続部となる下側端子板103の端部にできるだけ近い位置に近接して配置している。このときの貫通孔105が近接する位置の下限は、下側端子板103自身の機械強度において、下側端子板103の端部の外周面103dと貫通孔105との間の端子板の材料強度が実装基板114にコイン型電気二重層キャパシタを接続し固定するのに十分に確保できる程度までとしている。
また、貫通孔105の位置を、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとが接触できる距離を設定する手段として以下の構成とするのが効果的である。
すなわち、下側端子板103における貫通孔105の位置を調整する以外に、下側端子板103の端部の外周面103dと貫通孔105との間において、下側端子板103の厚みを部分的に薄くする。このことにより、端子板の材料強度が十分に確保できると共に、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとを接触し易くでき、これらのはんだを一体化し易くすることができる。
ところで、本実施の形態2において、図3Aおよび図3Bに示すように上述のコイン型電気二重層キャパシタと、このコイン型電気二重層キャパシタを実装する実装基板114と、この実装基板114上に上述のコイン型電気二重層キャパシタを電気的に接続するはんだ113a、113b、113cと、を備えたキャパシタ実装体を構成してもよい。そして、このキャパシタ実装体は、上述のコイン型電気二重層キャパシタを実装基板114上にはんだ113a、113b、113cで固定する場合に、下側端子板103の貫通孔105の内周面105cおよび外周面103dにそれぞれ形成されたフィレット113a、113bと、これらのフィレット113a、113bに連続して下側端子板103の上面103cに表出して広がるはんだ113cとが、貫通孔105の少なくとも一部を用いて一体となっている構成としている。
このような構成とすることにより、実装基板114との接続部分において強い固定強度を確保することができ、同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板103の突出寸法を最小限に抑えることができる小型でコンパクトなキャパシタ実装体を実現することができる。
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1は、図1A、図1Bおよび図2に示す実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの一例についての実施例であり、以下の手順によって作製した。ここで、図4Aは、本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部拡大斜視図であり、この図4Aも併せて用いて説明する。
まず、コイン型電気二重層キャパシタのキャパシタ素子10を含む本体部を以下の手順で作成した。図2に示すように、例えばアルミニウム製の集電体7a、7bのそれぞれの片面に活性炭とその活性炭を束ねる結着剤と導電助剤とで構成された分極性電極層8a、8bをそれぞれ形成し、正の電極6aおよび負の電極6bとした。
次に、分極性電極層8a、8bを形成した面を互いに対向させて配置し、正の電極6aと負の電極6bとの間に、例えば絶縁性の紙製のセパレータ9を介在させ、これらを積層することによりキャパシタ素子10を形成した。
その後、キャパシタ素子10に、例えば駆動用の電解液を含浸させた。そののちに、例えば高耐食性ステンレスの材料で製作された下蓋2にキャパシタ素子10を収納した。このとき、キャパシタ素子10の正の電極6aの集電体7aが下蓋2に接触するように配置している。
次に、この下蓋2の開口部に、絶縁性のリング状パッキング11を介して、例えばステンレス鋼のSUS304製の上蓋1の開口部を合わせた。そして、上蓋1と下蓋2とを合わせた箇所をかしめ込み、上蓋1の開口部と下蓋2の開口部とにリング状パッキング11を圧着させて密封した。このとき、キャパシタ素子10の負の電極6bの集電体7bが上蓋1に接触するようにした。以上のようにしてコイン型電気二重層キャパシタのキャパシタ素子10を含む本体部を作製した。
続いて、以下の手順で上記コイン型電気二重層キャパシタの本体部に外部端子板を接続して表面実装できるようにした。
まず、図1Aに示すように、コイン型電気二重層キャパシタの本体部の上面、すなわち上蓋1に、例えばステンレス鋼のSUS304製の上側端子板4を接続した。この上側端子板4は、予め屈曲加工しておき、実装基板(図示せず)と接触する部分には、平坦な外部接続部分である接続部分4bを設けておいた。
その後、図1Bおよび図4Aに示すように、コイン型電気二重層キャパシタの本体部の下面、すなわち下蓋2に、例えばステンレス鋼のSUS304製の下側端子板3を接続した。このとき、下側端子板3の一方の端部を下蓋2より突出させるように配置し、実装基板との接続部分3bを設けるようにした。この接続部分3bは、例えば方形状の厚み0.1mmの平板であり、予め形成された貫通孔5を有し、この貫通孔5の開口部が、下蓋2の底部の外表面2aにより完全には覆われないようにした。すなわち、貫通孔5の少なくとも一部が、下蓋2の底部に位置する外表面2aにより覆われずに開口として配置されている。また、図4Aに示すように、下側端子板3における貫通孔5の位置として、下側端子板3の接続部分3bの先端面からの距離Xおよび下側端子板3の接続部分3bの両側側面からの距離Yが、例えば共に0.9mmとなるようにした。
(実施例2)
実施例2は、図1A、図1Bおよび図2に示す実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの他の例を示したものである。また、図4Bは、本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部拡大斜視図であり、この図4Bも併せて用いて説明する。
図4Bに示すように、実施例2が実施例1と相違する点は、貫通孔205の開口部全体を外部に露出させて下蓋2に隠れないようにして下側端子板203の接続部分203bを下蓋2に接続したことである。
このような構成とすることにより、コイン型電気二重層キャパシタをはんだによって実装基板上に固定する場合に発生するガスが、貫通孔205の開口部からより効率的に排出され、実装基板にコイン型電気二重層キャパシタを強固に接続できる。
(実施例3)
実施例3は、図3Aおよび図3Bに示す実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタのさらに別の例を示したものである。また、図4Cは、本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部拡大斜視図であり、この図4Cも併せて用いて説明する。
図4Cに示すように、実施例3が実施例1と相違する点は、下側端子板103の接続部分103bにおける貫通孔105の位置である。
実施例3では、下側端子板103における貫通孔105の位置として、貫通孔105の内周面105cから下側端子板103の接続部分103bの外周面103dまでの距離X’および下側端子板103の接続部分103bの両側側面までの距離Y’が、例えばそれぞれ0.3mm、0.5mmとなるようにした。つまり、実施例1と比較すると、下側端子板103における貫通孔105の位置が、下側端子板103の先端側である外周面103d側にさらに近接している。
(比較例)
比較例は、上記実施例1から3と比較して本発明のコイン型電気二重層キャパシタの顕著な効果を検証するために、従来のコイン型電気二重層キャパシタについて以下に示す比較例1から3を作製して比較した。
図5Aは、従来のコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図である。図5Bおよび図5Cは、従来のコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図である。
(比較例1)
図5Aに示すように、比較例1が実施例1と相違する点は、スリッド孔に代えて、下側端子板303の接続部分303bの側面に切り欠き部315を設けている。そして、その切り欠き部315の全体をさらに外部に露出させ、下蓋2に覆われないようにして下側端子板303を下蓋2に接続している点が相違していることである。
(比較例2)
図5Bに示すように、比較例2が実施例1と相違する点は、貫通孔405の開口部全体を下蓋2の底部の外表面で覆うようにして下側端子板403の接続部分403bを下蓋2に接続したことである。
(比較例3)
図5Cに示すように、比較例3が実施例1と相違する点は、下側端子板503の接続部分503bに貫通孔も切り欠き部も設けないようにしたことである。
ここで、実施例1から3および比較例1から3のコイン型電気二重層キャパシタについて、それぞれ20個の試料をリフローにより作製した。すなわち、例えばピーク温度260℃以上、5秒以下の一般的なリフロー条件の下、実装基板上にはんだでコイン型電気二重層キャパシタを固定した。そして、実装基板上に固定された試料の固着強度を比較調査した。その結果を下記の表1に示す。なお、このときのクリームはんだ厚は、例えば100μmから80μmの厚さで行った。
また、固着強度の測定方法としては、実装基板において、コイン型電気二重層キャパシタを実装した位置に貫通孔を開け、この貫通孔よりピンを挿入してコイン型電気二重層キャパシタを突き上げ、コイン型電気二重層キャパシタが外れてしまう限界強度を計測した。この計測値を一覧表としてまとめたのが表1である。
この表1から明らかなように、固着強度の平均値において実施例1から3は27N以上、33N以下の値の範囲を示し、比較例1から3は17N以上、23N以下の値の範囲を示している。したがって、固着強度の平均値から見て、明らかに本発明の実施例1から3の試料の方が固着強度が強いことがわかる。このことにより、下側端子板3、103、203に貫通孔5、105、205を設けたことにより、比較例1から3と比較して固着強度が大きく向上していることがわかる。
また、実施例1は、貫通孔5の開口部を完全に覆わなければ、強固な固着強度を維持でき、さらに下側端子板3の下蓋2からの突出寸法を抑え、コイン型電気二重層キャパシタ小形化することができる。
また、実施例3では、下側端子板103における貫通孔105の位置を制御することによって、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がったはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がったはんだとが接触して一体化させている。したがって、下側端子板103の端部の接続部分103bの大部分の表面をはんだで覆うことができる。このため、貫通孔5、205を設けただけの実施例1や実施例2以上に強固な固着強度を得ることができる。このことは、表1の固着強度の平均値を見ても明らかで、実施例3の固着強度の平均値は、実施例1および実施例2の固着強度の平均値の1.2倍の強度を示している。
なお、実施例3を例とすると、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がったはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がったはんだとを安定して一体化するには、図4Cに示した、X’、Y’の寸法の上限値を0.7mm以下に設定するとよい。ここで、X’、Y’の寸法の上限値が0.7mmを超えると、量産工程においてはんだの一体化が不十分な試料が発生する場合があった。
一方、固着強度には、下側端子板103自身の機械強度が影響するため、X’、Y’寸法の下限値は、0.2mm以上とするとよい。すなわち、X’、Y’寸法の下限値が0.2mmより小さくなると、量産工程において下側端子板103の破断により固着強度が低下してしまう試料が発生する場合があった。特に下側端子板103の厚みに対し、クリームはんだの厚みが同等以下である場合、前記寸法条件で下側端子板103における貫通孔104の位置を制御すると、顕著に固着強度を向上することができる。
さらに、下側端子板103における貫通孔105の位置を、貫通孔105が下蓋102の底部の外表面によって完全に覆われることなく、その一部が必ず外気と接する部分を有するように設ける。このことにより、はんだ付けする際のガス抜きを確実に行い、貫通孔105の内周面105cを覆うフィレットが安定して形成され、優れた固着強度を得ることができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板103の突出寸法を最小限に抑えることができ、コイン型電気二重層キャパシタ全体の小型化を図ることができる。
また、図3Aおよび図3Bに示すようなコイン型電気二重層キャパシタを含むキャパシタ実装体を構成している場合に、下側端子板103の上面103cに表出して広がるはんだ113cがフィレット113a、113bと一体となる所定の位置に、下側端子板103における貫通孔105を配置している。このような場合にキャパシタ実装体における上述のはんだ113cがフィレット113a、113bと一体となる所定の位置は、下側端子板103の外周面103dからの貫通孔105の内周面105cまでの距離が、0.2mm以上、0.7mm以下である位置としている。
このような構成とすることにより、コイン型電気二重層キャパシタにおいて説明した内容と同様に、優れた固着強度をもつ高信頼性のキャパシタ実装体を実現することができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板103の突出寸法を最小限に抑えることができるので、キャパシタ実装体の小型化およびコンパクト化を実現することができる。
本発明のコイン型電気二重層キャパシタは、特に実装基板との接続において優れた機械強度を有し小型化にも適しているため、小型化が推し進められ使用において様々な衝撃に対する耐性を必要とする携帯電子機器などの電源のバックアップ用として利用されることが期待でき有用である。
本発明は電子機器のバックアップ用電源に用いられ、特に電源などの内部の基板に実装されるコイン型電気二重層キャパシタに関する発明である。
近年、様々な目的から電子機器の内部装置の小型化が進められていく中で内部装置を構成する各部品、例えば電源なども小型化が求められている。しかし、小型化された内部装置において用いる実装基板も小型化されるため、この実装基板に対して実装する各部品の接続面積を十分に確保することができず、各部品の固定強度を維持できないことが課題となっている。さらに、このような部品としてコイン型電気二重層キャパシタの携帯用電子機器への搭載が始まって以来、機器の様々な利用状況を想定したあらゆる方向からの衝撃に耐え得る固定強度がコイン型電気二重層キャパシタに対しても求められている。
ところで、効率よく大量生産することを考慮してコイン型電気二重層キャパシタを実装基板に接続するための固定方法としては、リフローによるはんだ付けが一般的に行われている。しかしながら、このリフローによるはんだ付けを用いて、コイン型電気二重層キャパシタを固定した実装基板を大量生産する場合に、それぞれの実装基板ごとにはんだによるコイン型電気二重層キャパシタの固定具合を均一にすることが難しい。したがって、固定強度が十分でなくコイン型電気二重層キャパシタの実装基板への固定が不十分なものも作られてしまうことがあるという課題があった。
このような従来のコイン型電気二重層キャパシタの実装基板への接続に対する課題について図を用いて具体的に説明する。
図6Aは、従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した上面図、図6Bは、同コイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図である。
図6Aおよび図6Bに示すように、従来のコイン型電気二重層キャパシタの構造は、電気の蓄電および放電を行うキャパシタ素子(図示せず)を内部に配置して金属製の上蓋601と下蓋602とを用いて囲み、絶縁性を有したリング状のパッキンを介してかしめ込んだ構造としている。そして、上蓋601と下蓋602とをキャパシタ素子と電気的に接続することにより、上蓋601と下蓋602とはそれぞれ異なった極性を有するようになり、コイン型電気二重層キャパシタの本体部を構成している。
また、上側端子板604は、上蓋601の外表面601aと電気的に接続している。この上側端子板604は、長手方向にステップ形状を形成し、コイン型電気二重層キャパシタより下に位置する実装基板(図示せず)と接面した状態で電気的に接続されることとなる。さらに、この上側端子板604が実装基板と電気的に接続する長手方向の一端部分にメッキ加工を施したメッキ部604bを有した構成となっている。さらに、このメッキ部604bの幅方向の両側面へ切り欠き部607が設けられている。
下側端子板603は、下蓋602の外表面602aと電気的に接続している。下側端子板603は平板状であり、この下側端子板603の下に位置する実装基板と接面した状態で電気的に接続されることとなる。下側端子板603も、上側端子板604と同様に実装基板と電気的に接続される長手方向の一端部分にメッキ加工を施したメッキ部603bを有した構成となっている。さらに、上側端子板604と同様にこのメッキ部603bの幅方向の両側面へ切り欠き部608が設けられている。
このような構成とすることにより、上側端子板604と下側端子板603をそれぞれ実装基板にはんだを介して接続する際に、従来のコイン型電気二重層キャパシタは、切り欠き部607、608を設けたことによって、メッキ部603b、604bの側面の表面積が拡張され、はんだフィレットを形成する面積が増加する。このことにより、メッキ部603b、604bと実装基板との接続部分の面積を増大させることができるのでコイン型電気二重層キャパシタの実装基板への固定強度の強化を行うことができる。
すなわち、メッキ部603b、604bにそれぞれ切り欠き部607、608が無い場合では、メッキ部603b、604bの長手方向の側面と幅方向の両側面とに形成されるはんだフィレットにより、メッキ部603b、604bと実装基板との接続部分が固定されている。これに対して、メッキ部603b、604bにそれぞれの切り欠き部607、608がある場合には、メッキ部603b、604bの長手方向の側面に形成されるはんだフィレットが切り欠き部607、608の側面にも形成されて増加する。このことにより、メッキ部603b、604bと実装基板との接続部分の固定強度を効果的に強化することができる。
なお、この先行技術に関する文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
しかしながら、コイン型電気二重層キャパシタに関してはさらなる小型化が求められており、さらに小型化されたコイン型電気二重層キャパシタを実装基板に接続したときの固定強度を確保することが難しいという課題があった。すなわち、コイン型電気二重層キャパシタを実装基板に対してリフローによるはんだ付けを行うときに、一層小型化され、かつ実装基板との接続部分の固定強度を十分確保できるコイン型電気二重層キャパシタを実現することが難しいという課題があった。
本発明は、上記課題を解決し、リフローはんだ付けを行っても優れた固定強度を有し、同時に小型化も成し遂げたコイン型電気二重層キャパシタを提供するものである。
すなわち、本発明のコイン型電気二重層キャパシタは、一対の電極が絶縁性のセパレータを介して対面するように配置されたキャパシタ素子と、このキャパシタ素子に電解液を含浸させて収納する下蓋と、この下蓋の開口部を絶縁性のリング状パッキングを介して密封する上蓋と、上記上蓋の外表面に一方の端部を接続した上側端子板と、上記下蓋の外表面に一方の端部を接続し、他方の端部に貫通孔を設けた下側端子板とを備えている。そして、本発明のコイン型電気二重層キャパシタは、上記貫通孔の少なくとも一部が、下蓋の底部の外表面により覆われずに開口している構成からなる。
このように、下側端子板の実装基板と接続する部分に貫通孔を設けた構成とすることにより、実装基板にはんだで固定する際に、はんだフィレットを下側端子板の外周面だけでなく、例えば下側端子板の端部の略中央部にも分散して形成することができ、実装基板への固定強度を高めることができる。
さらに、下側端子板における貫通孔の位置を、貫通孔が下蓋の底部の外表面により覆われることなく、その一部が必ず外気と接する部分を有するように開口している構成としている。
このことにより、はんだ付けする際のガス抜きを確実に行い、貫通孔の内周面を覆うはんだフィレットが安定して形成されている。
したがって、実装基板との接続部分において強い固定強度を確保することができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板の突出寸法を最小限に抑えることができるので、コイン型電気二重層キャパシタの小型化を図ることができる。
また、本発明のキャパシタ実装体は、上記記載のコイン型電気二重層キャパシタと、このコイン型電気二重層キャパシタを実装する実装基板と、この実装基板上に前記コイン型電気二重層キャパシタを電気的に接続するはんだと、を備えている。そして、キャパシタ実装体は、上記コイン型電気二重層キャパシタを上記実装基板上に上記はんだで固定する場合に、上記下側端子板の上記貫通孔の上記内周面および上記外周面にそれぞれ形成されたフィレットと、これらのフィレットに連続して上記下側端子板の上面に表出して広がるはんだとが、上記貫通孔の少なくとも一部を用いて一体となっている構成からなる。
このような構成とすることにより、実装基板との接続部分において強い固定強度を確保することができ、同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板の突出寸法を最小限に抑えることができる小型でコンパクトなキャパシタ実装体を実現することができる。
本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図
本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した下面図
本実施の形態1における上側端子板および下側端子板に接続する前のコイン型電気二重層キャパシタの一部切り欠き斜視図
本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の断面図
本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の要部拡大斜視図
本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図
本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図
本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図
従来のコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図
従来のコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図
従来のコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図
従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した上面図
従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。以下の図面においては、同じ要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1Aおよび図1Bは、それぞれ本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの構成を示した側面図および下面図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの上側端子板および下側端子板に接続する前のコイン型電気二重層キャパシタの一部切り欠き斜視図である。
図1Aおよび図1Bには、上蓋1、下蓋2、下側端子板3、上側端子板4、貫通孔5などを備えた本発明のコイン型電気二重層キャパシタの構成が示されているが、これらの詳細については後述する。
まず、図2を用いて実施の形態1によるコイン型電気二重層キャパシタの主要部を構成するキャパシタ素子10の内部構成の説明を行う。
図2において、電極6aおよび6bは、それぞれ正の電極および負の電極を示している。電極6a、6bにおいて、それぞれアルミニウム製の集電体7a、7bの片面に活性炭とその活性炭を束ねる結着剤と導電助剤とで構成された分極性電極層8a、8bを形成している。そして、電極6a、6bは、互いにもう一方の電極6b、6aの方向へ分極性電極層8a、8bを形成した面が対向するように配設して配置されている。この電極6a、6bを介して、コンデンサ内部で蓄えられた電気を集め外部の回路などへ放出することや、再度外部の回路などから電気を蓄えることができる。なお、集電体7a、7bは、一例としてアルミニウムの導電層を用いたが、銀や銅などの金属やカーボンなどの導電層を用いてもよい。また、この導電層には板状のものだけではなく、銀ペーストや金ペーストなどのペースト状のものを用いてもよい。
図2に示すセパレータ9は、絶縁性を有し、例えば紙製の材料を使用している。セパレータ9は、電極6a、6bの間に介在する位置に配設されている。
上述したようにキャパシタ素子10は、電極6a、6b、集電体7a、7b、分極性電極層8a、8b、セパレータ9を含んで図2に示すように構成されている。
このように構成されたキャパシタ素子10は、例えば駆動用電解液などの電解液(図示せず)を含浸して、上蓋1と下蓋2とにより上下から挟み込まれて収納されている。このときにキャパシタ素子10は上蓋1の開口部と下蓋2の開口部とをかしめこんで封止されている。また同時に、上蓋1と下蓋2とは、それぞれキャパシタ素子10の電極6a、6bの集電体7a、7bと接続されて、キャパシタ素子10の引出電極の役割も担っている。
上蓋1と下蓋2とをかしめ込む際、図2に示すように下蓋2の内部側面に密着するように絶縁性を有したリング状パッキング11を配設している。そして、上蓋1の開口部の先端に上蓋1の中心軸から遠ざかる方向へ曲げ加工を施して曲げ加工部12を形成し、曲げ加工部12とリング状パッキング11とが、圧着するような構成として配置している。そして、下蓋2の開口部の先端に下蓋2の中心軸に向かってカーリング加工を施すことにより、リング状パッキング11の一部を下蓋2の開口部の先端と圧着する。これにより、曲げ加工部12以外の上蓋1の本体が、曲げ加工部12より内側にあるため、上蓋1と下蓋2との直接の接触をリング状パッキング11により防いだ状態で、上蓋1と下蓋2とを組み合わせることができる。
ここで、上蓋1の材料には、例えばステンレス鋼のSUS304などを用い、下蓋2の材料には、例えば高耐食性ステンレスを用いるとよい。どちらも、耐食性、加工性に優れた材料である。
次に、図1Aおよび図1Bを用いて本実施の形態1のコイン型電気二重層キャパシタの説明を具体的に行う。図2においてコイン型電気二重層キャパシタのキャパシタ素子10およびこれを収納するのに用いる上蓋1および下蓋2について説明したので、次にこれらに接続された下側端子板3と上側端子板4について説明する。
まず、上側端子板4を説明する。
図1Aおよび図1Bに示すように上側端子板4は、上蓋1に対して溶接部分4aを溶接することにより電気的に接続されている。この上側端子板4の溶接部分4aの形状(図示せず)は、例えば図1Bに示す下側端子板3の溶接部分3aと同様に略三角形を成している。さらに、上側端子板4は、溶接部分4aの一端から平板部を伸張し、下方へ屈曲させ、この平板部の先端部分に平坦な外部接続部分である接続部分4bを有する構成となっている。
また、接続部分4bは、後述する下側端子板3の溶接部分4aと略同じ高さで、かつ平行となるように構成している。なお、上側端子板4の素材には、例えばステンレス鋼のSUS304などを用いている。
次に、下側端子板3を説明する。
下側端子板3は、平板形状であり、下蓋2と溶接により電気的に接続している部分である溶接部分3aは、接続面積および溶接面積を確保するために、例えば図1Bに示すような略三角形の形状を成している。さらに、下側端子板3は、溶接部分3aの一端から伸びた外部接続部分である接続部分3bを有する構成となっている。なお、下側端子板3の素材には、上側端子板4と同様に、例えばステンレス鋼のSUS304などを用いている。
この下側端子板3の外部接続部分である接続部分3bと実装基板の表面上にあるランド部分(図示せず)との電気的な接続は、一般的に量産性を考慮して短時間で簡便に大量の接続処理ができるリフローによるはんだ付けによって行われる。本実施の形態1で用いるはんだは、例えばクリームはんだであり、例えばすず、銅、銀、そしてフラックスなどが主に含まれている。また、本実施の形態1で下側端子板3に用いられているステンレス鋼のSUS304は、融解したはんだをそれ単体では表面に付着させることができない。このことにより、予め接続部分3bの表面全体に、例えばニッケルのフラッシュメッキをまず施し、その上にすずメッキを施して、クリームはんだを用いたリフローによるはんだ付けが容易にできるようにしている。
さらに、下側端子板3の接続部分3bには、貫通孔5を設ける構成としている。一般的にリフローによるはんだ付けは接続部分3bの実装基板との接面部分におけるはんだの接着具合よりも、接続部分3bの側面3cに形成されるはんだフィレット(以下「フィレット」とする)の形成範囲の広さによって、その箇所におけるはんだ付けの固着強度が決まることとなる。なぜなら、フィレットは他の接合箇所と比較してはんだ内のボイド(空洞)が少なく、その結果、構造上はんだ自体の強度が高いからである。そこで、接続部分3bとなっている下側端子板3の接続部分3bの端部において、その端部の略中央に貫通孔5を設けている。このことにより、接続部分3bの端部の略中央の貫通孔5の内周面5cにフィレットを形成する。このことは、ただ単にフィレットの形成範囲を接続部分3bの側面3cに加えて貫通孔5の内周面5cにまで拡大するだけではなく、フィレットを接続部分3bの異なる複数の箇所に分散して形成し、接続部分の固着強度を大幅に向上することができる。
そして、コイン型電気二重層キャパシタの更なる小型化を図るために、貫通孔5を設ける位置をできる限り溶接部分3aに近接させている。このことにより、下側端子板3が下蓋2から突出する寸法を抑制するものである。しかし、貫通孔5を設ける位置が、過度に溶接部分3aに近接すると、下蓋2の底部の外表面2aにより、貫通孔5の開口部が完全に覆われてしまい外気と接する開口面積がゼロになってしまう。このことにより、リフローによるはんだ付けを行う際に、はんだ上に密封された空間が生まれ、この密封された空間の内部の圧力により融解したはんだが、表面張力を利用して接続部分3bの側面を上っていくことが困難となり、フィレット形成が不完全となってしまう。その結果、接続部分3bの固着強度が低下してしまう。
しかしながら、本実施の形態1のコイン型電気二重層キャパシタは、一対の電極6a、6bが絶縁性のセパレータ9を介して対面するように配置されたキャパシタ素子10と、このキャパシタ素子10に電解液を含浸させて収納する下蓋2と、この下蓋2の開口部を絶縁性のリング状パッキング11を介して密封する上蓋1と、この上蓋1の外表面1aに一方の端部を接続した上側端子板4と、上記下蓋2の外表面2aに一方の端部を接続し、他方の端部に貫通孔5を設けた下側端子板3とを備えている。そして、本実施の形態1のコイン型電気二重層キャパシタは、上記貫通孔5の少なくとも一部が、下蓋2の底部の外表面2aにより覆われずに開口している。
このように、下側端子板3の実装基板(図示せず)と接続する部分に貫通孔5を設けた構成とすることにより、実装基板にはんだで固定する際に、フィレットを下側端子板3の外周面5dだけでなく、例えば下側端子板3の端部の略中央部にも分散して形成することができ、実装基板への固定強度を高めることができる。
さらに、下側端子板3における貫通孔5の位置を、貫通孔5が下蓋2の底部に配置された外表面2aにより覆われることなく、その一部が必ず外気と接する部分を有するように開口5eとして設けている。このことにより、はんだ付けする際のガス抜きを確実に行い、貫通孔5の内周面5cを覆うフィレットが安定して形成されている。
したがって、実装基板との接続部分において強い固定強度を確保することができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタにおいてキャパシタ素子10からの下側端子板3の突出寸法を最小限に抑えることができるので、コイン型電気二重層キャパシタの小型化を図ることができる。
また、上述のコイン型電気二重層キャパシタにおいて貫通孔5を設ける位置については、貫通孔5の開口部の少なくとも一部を下蓋2の外表面2aの外形線が横切る位置にに配置していることとしている。しかしながら、下蓋2の底部の外表面2aの外形線の外側に貫通孔5を形成して配置していても、貫通孔5を設けることによって得られるフィレットを安定して形成し実装基板との接続部分において強い固定強度を確保する効果は失われない。
また、下側端子板3を階段状とし、下蓋2との溶接部分3aと、実装基板との接続部分3bに段差を設ける構成とした場合も、下蓋2の底部の外表面2aによって貫通孔5の開口部を塞がないようにすると同時に下側端子板3の下蓋2からの突出寸法を抑えることができる。よって、この構成は、図6Aおよび図6Bに示した従来のコイン型電気二重層キャパシタの構成と比較すると、実装基板への固定強度をより高めることができると共に、コイン型電気二重層キャパシタ全体の小型化を図ることができる。一方、前述の平板状の下側端子板3を用いた本発明のコイン型電気二重層キャパシタの場合と比較すると、コイン型電気二重層キャパシタの高さが若干高くなる。
なお、本実施の形態1では、貫通孔5の形状は、例えば方形状としたが、円形状、楕円形状、三角形状、多角形状など貫通孔5が形成されて配置されたものであれば、どのような形状であっても同様の効果を奏するものである。また、貫通孔5は1個だけでなく複数個が形成されていてもよい。
(実施の形態2)
図3Aは、本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の断面図である。図3Bは、同コイン型電気二重層キャパシタが実装基板上にはんだで固定された場合の斜視図である。ここでキャパシタ素子110は上蓋101と下蓋102とに取り囲まれて配置され、この上蓋101と下蓋102とはリング状パッキング111を介して密着している。
図3Aおよび図3Bのコイン型電気二重層キャパシタにおいて、図1に示した実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタと相違する点は、次に説明する点である。
すなわち、図3Aおよび図3Bに示すように下側端子板103を貫通孔105の位置で、実装基板上にはんだで固定する際に、貫通孔105の内周面105cにフィレット113aを形成している。それと共に下側端子板103の上面103cに表出して広がっているはんだ113cと、下側端子板103の外周面103dにフィレット113bとを形成している。これらのフィレット113a、113bを形成しているはんだと、下側端子板103の上面103cに表出して広がっているはんだ113cとが一体となるように配置している点が実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタと相違する点である。なお、上側端子板104は溶接部分104aを介して上蓋101と電気的に接続され、下側端子板103は溶接部分103aを介して下蓋102と電気的に接続されている。上側端子板104は、実施の形態1と同様に図3Aに示すように途中で折り曲げられた形状をしており接続部分104bにより実装基板114に電気的に接続されている。
ここで、コイン型電気二重層キャパシタを実装基板114上にはんだを用いて固定する場合、貫通孔105の内周面105cにフィレット113aを形成している。なお、このフィレット113aは、内周面105cに隣接して接触するように形成されている。このときに、フィレット113aにおいて、融解したはんだはバックフィレットを形成するだけでなく、貫通孔105の内周面105cを這い上がり、下側端子板103の上面103cに表出して広がってくる。このような現象は、はんだの融解によりはんだ内部からガス抜きされて生じた空気の一部が貫通孔105を通過していくときに起こると考えられる。すなわち、この空気の一部の流れが、バックフィレットを形成しようとして貫通孔105を上るはんだを後押ししてはんだが広がることにさらに勢いを付ける。このことにより、はんだは接続部分103bから上面103cへ表出する程の勢いを付与される結果によるものである。
一方で、下側端子板103の外周面103dにおいても、融解したはんだは、バックフィレットを形成するだけでなく、下側端子板103の端部の外周面103dを這い上がり、同様に下側端子板103の上面103cに表出して広がってくる。
しかしながら、はんだが、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がる範囲、及び下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がる範囲には限りがある。このため、下側端子板103における貫通孔105の位置を、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとが接触できる距離に配置している。
このような配置に構成することにより、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとが接触して一体となる。すなわち、フィレット113a、113bがはんだ113cにより接続されて図3Aおよび図3Bに示すようにはんだとして一体となる。
このことにより、はんだが、実装基板114の接続部となる下側端子板103の端部の大部分の表面を覆うという効果が得られることとなる。この結果、コイン型電気二重層キャパシタが実装基板114に固定される強度は、フィレット113a、113bが形成されてこれらのフィレット113a、113bだけによる固定強度よりも、遥かに強固な固定強度を得ることができる。
すなわち、本実施の形態2のコイン型電気二重層キャパシタは、実装基板114上にはんだで固定される場合に、貫通孔105の内周面105cと下側端子板103の外周面103dとにはんだによるフィレット113a、113bが形成される。それと共に、下側端子板103の上面103cに形成されたはんだがフィレット113a、113bと一体となる所定の位置に、下側端子板103における貫通孔105を配置した構成としている。
なお、この貫通孔105は、実装基板114の接続部となる下側端子板103の端部にできるだけ近い位置に近接して配置している。このときの貫通孔105が近接する位置の下限は、下側端子板103自身の機械強度において、下側端子板103の端部の外周面103dと貫通孔105との間の端子板の材料強度が実装基板114にコイン型電気二重層キャパシタを接続し固定するのに十分に確保できる程度までとしている。
また、貫通孔105の位置を、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとが接触できる距離を設定する手段として以下の構成とするのが効果的である。
すなわち、下側端子板103における貫通孔105の位置を調整する以外に、下側端子板103の端部の外周面103dと貫通孔105との間において、下側端子板103の厚みを部分的に薄くする。このことにより、端子板の材料強度が十分に確保できると共に、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がるはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がるはんだとを接触し易くでき、これらのはんだを一体化し易くすることができる。
ところで、本実施の形態2において、図3Aおよび図3Bに示すように上述のコイン型電気二重層キャパシタと、このコイン型電気二重層キャパシタを実装する実装基板114と、この実装基板114上に上述のコイン型電気二重層キャパシタを電気的に接続するはんだ113a、113b、113cと、を備えたキャパシタ実装体を構成してもよい。そして、このキャパシタ実装体は、上述のコイン型電気二重層キャパシタを実装基板114上にはんだ113a、113b、113cで固定する場合に、下側端子板103の貫通孔105の内周面105cおよび外周面103dにそれぞれ形成されたフィレット113a、113bと、これらのフィレット113a、113bに連続して下側端子板103の上面103cに表出して広がるはんだ113cとが、貫通孔105の少なくとも一部を用いて一体となっている構成としている。
このような構成とすることにより、実装基板114との接続部分において強い固定強度を確保することができ、同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板103の突出寸法を最小限に抑えることができる小型でコンパクトなキャパシタ実装体を実現することができる。
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1は、図1A、図1Bおよび図2に示す実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの一例についての実施例であり、以下の手順によって作製した。ここで、図4Aは、本発明の実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部拡大斜視図であり、この図4Aも併せて用いて説明する。
まず、コイン型電気二重層キャパシタのキャパシタ素子10を含む本体部を以下の手順で作成した。図2に示すように、例えばアルミニウム製の集電体7a、7bのそれぞれの片面に活性炭とその活性炭を束ねる結着剤と導電助剤とで構成された分極性電極層8a、8bをそれぞれ形成し、正の電極6aおよび負の電極6bとした。
次に、分極性電極層8a、8bを形成した面を互いに対向させて配置し、正の電極6aと負の電極6bとの間に、例えば絶縁性の紙製のセパレータ9を介在させ、これらを積層することによりキャパシタ素子10を形成した。
その後、キャパシタ素子10に、例えば駆動用の電解液を含浸させた。そののちに、例えば高耐食性ステンレスの材料で製作された下蓋2にキャパシタ素子10を収納した。このとき、キャパシタ素子10の正の電極6aの集電体7aが下蓋2に接触するように配置している。
次に、この下蓋2の開口部に、絶縁性のリング状パッキング11を介して、例えばステンレス鋼のSUS304製の上蓋1の開口部を合わせた。そして、上蓋1と下蓋2とを合わせた箇所をかしめ込み、上蓋1の開口部と下蓋2の開口部とにリング状パッキング11を圧着させて密封した。このとき、キャパシタ素子10の負の電極6bの集電体7bが上蓋1に接触するようにした。以上のようにしてコイン型電気二重層キャパシタのキャパシタ素子10を含む本体部を作製した。
続いて、以下の手順で上記コイン型電気二重層キャパシタの本体部に外部端子板を接続して表面実装できるようにした。
まず、図1Aに示すように、コイン型電気二重層キャパシタの本体部の上面、すなわち上蓋1に、例えばステンレス鋼のSUS304製の上側端子板4を接続した。この上側端子板4は、予め屈曲加工しておき、実装基板(図示せず)と接触する部分には、平坦な外部接続部分である接続部分4bを設けておいた。
その後、図1Bおよび図4Aに示すように、コイン型電気二重層キャパシタの本体部の下面、すなわち下蓋2に、例えばステンレス鋼のSUS304製の下側端子板3を接続した。このとき、下側端子板3の一方の端部を下蓋2より突出させるように配置し、実装基板との接続部分3bを設けるようにした。この接続部分3bは、例えば方形状の厚み0.1mmの平板であり、予め形成された貫通孔5を有し、この貫通孔5の開口部が、下蓋2の底部の外表面2aにより完全には覆われないようにした。すなわち、貫通孔5の少なくとも一部が、下蓋2の底部に位置する外表面2aにより覆われずに開口として配置されている。また、図4Aに示すように、下側端子板3における貫通孔5の位置として、下側端子板3の接続部分3bの先端面からの距離Xおよび下側端子板3の接続部分3bの両側側面からの距離Yが、例えば共に0.9mmとなるようにした。
(実施例2)
実施例2は、図1A、図1Bおよび図2に示す実施の形態1におけるコイン型電気二重層キャパシタの他の例を示したものである。また、図4Bは、本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部拡大斜視図であり、この図4Bも併せて用いて説明する。
図4Bに示すように、実施例2が実施例1と相違する点は、貫通孔205の開口部全体を外部に露出させて下蓋2に隠れないようにして下側端子板203の接続部分203bを下蓋2に接続したことである。
このような構成とすることにより、コイン型電気二重層キャパシタをはんだによって実装基板上に固定する場合に発生するガスが、貫通孔205の開口部からより効率的に排出され、実装基板にコイン型電気二重層キャパシタを強固に接続できる。
(実施例3)
実施例3は、図3Aおよび図3Bに示す実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタのさらに別の例を示したものである。また、図4Cは、本発明の実施の形態2におけるコイン型電気二重層キャパシタの要部拡大斜視図であり、この図4Cも併せて用いて説明する。
図4Cに示すように、実施例3が実施例1と相違する点は、下側端子板103の接続部分103bにおける貫通孔105の位置である。
実施例3では、下側端子板103における貫通孔105の位置として、貫通孔105の内周面105cから下側端子板103の接続部分103bの外周面103dまでの距離X’および下側端子板103の接続部分103bの両側側面までの距離Y’が、例えばそれぞれ0.3mm、0.5mmとなるようにした。つまり、実施例1と比較すると、下側端子板103における貫通孔105の位置が、下側端子板103の先端側である外周面103d側にさらに近接している。
(比較例)
比較例は、上記実施例1から3と比較して本発明のコイン型電気二重層キャパシタの顕著な効果を検証するために、従来のコイン型電気二重層キャパシタについて以下に示す比較例1から3を作製して比較した。
図5Aは、従来のコイン型電気二重層キャパシタの要部を示した拡大斜視図である。図5Bおよび図5Cは、従来のコイン型電気二重層キャパシタの他の例の要部を示した拡大斜視図である。
(比較例1)
図5Aに示すように、比較例1が実施例1と相違する点は、スリッド孔に代えて、下側端子板303の接続部分303bの側面に切り欠き部315を設けている。そして、その切り欠き部315の全体をさらに外部に露出させ、下蓋2に覆われないようにして下側端子板303を下蓋2に接続している点が相違していることである。
(比較例2)
図5Bに示すように、比較例2が実施例1と相違する点は、貫通孔405の開口部全体を下蓋2の底部の外表面で覆うようにして下側端子板403の接続部分403bを下蓋2に接続したことである。
(比較例3)
図5Cに示すように、比較例3が実施例1と相違する点は、下側端子板503の接続部分503bに貫通孔も切り欠き部も設けないようにしたことである。
ここで、実施例1から3および比較例1から3のコイン型電気二重層キャパシタについて、それぞれ20個の試料をリフローにより作製した。すなわち、例えばピーク温度260℃以上、5秒以下の一般的なリフロー条件の下、実装基板上にはんだでコイン型電気二重層キャパシタを固定した。そして、実装基板上に固定された試料の固着強度を比較調査した。その結果を下記の表1に示す。なお、このときのクリームはんだ厚は、例えば100μmから80μmの厚さで行った。
また、固着強度の測定方法としては、実装基板において、コイン型電気二重層キャパシタを実装した位置に貫通孔を開け、この貫通孔よりピンを挿入してコイン型電気二重層キャパシタを突き上げ、コイン型電気二重層キャパシタが外れてしまう限界強度を計測した。この計測値を一覧表としてまとめたのが表1である。
この表1から明らかなように、固着強度の平均値において実施例1から3は27N以上、33N以下の値の範囲を示し、比較例1から3は17N以上、23N以下の値の範囲を示している。したがって、固着強度の平均値から見て、明らかに本発明の実施例1から3の試料の方が固着強度が強いことがわかる。このことにより、下側端子板3、103、203に貫通孔5、105、205を設けたことにより、比較例1から3と比較して固着強度が大きく向上していることがわかる。
また、実施例1は、貫通孔5の開口部を完全に覆わなければ、強固な固着強度を維持でき、さらに下側端子板3の下蓋2からの突出寸法を抑え、コイン型電気二重層キャパシタ小形化することができる。
また、実施例3では、下側端子板103における貫通孔105の位置を制御することによって、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がったはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がったはんだとが接触して一体化させている。したがって、下側端子板103の端部の接続部分103bの大部分の表面をはんだで覆うことができる。このため、貫通孔5、205を設けただけの実施例1や実施例2以上に強固な固着強度を得ることができる。このことは、表1の固着強度の平均値を見ても明らかで、実施例3の固着強度の平均値は、実施例1および実施例2の固着強度の平均値の1.2倍の強度を示している。
なお、実施例3を例とすると、貫通孔105の内周面105cから這い上がって広がったはんだと、下側端子板103の端部の外周面103dから這い上がって広がったはんだとを安定して一体化するには、図4Cに示した、X’、Y’の寸法の上限値を0.7mm以下に設定するとよい。ここで、X’、Y’の寸法の上限値が0.7mmを超えると、量産工程においてはんだの一体化が不十分な試料が発生する場合があった。
一方、固着強度には、下側端子板103自身の機械強度が影響するため、X’、Y’寸法の下限値は、0.2mm以上とするとよい。すなわち、X’、Y’寸法の下限値が0.2mmより小さくなると、量産工程において下側端子板103の破断により固着強度が低下してしまう試料が発生する場合があった。特に下側端子板103の厚みに対し、クリームはんだの厚みが同等以下である場合、前記寸法条件で下側端子板103における貫通孔104の位置を制御すると、顕著に固着強度を向上することができる。
さらに、下側端子板103における貫通孔105の位置を、貫通孔105が下蓋102の底部の外表面によって完全に覆われることなく、その一部が必ず外気と接する部分を有するように設ける。このことにより、はんだ付けする際のガス抜きを確実に行い、貫通孔105の内周面105cを覆うフィレットが安定して形成され、優れた固着強度を得ることができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板103の突出寸法を最小限に抑えることができ、コイン型電気二重層キャパシタ全体の小型化を図ることができる。
また、図3Aおよび図3Bに示すようなコイン型電気二重層キャパシタを含むキャパシタ実装体を構成している場合に、下側端子板103の上面103cに表出して広がるはんだ113cがフィレット113a、113bと一体となる所定の位置に、下側端子板103における貫通孔105を配置している。このような場合にキャパシタ実装体における上述のはんだ113cがフィレット113a、113bと一体となる所定の位置は、下側端子板103の外周面103dからの貫通孔105の内周面105cまでの距離が、0.2mm以上、0.7mm以下である位置としている。
このような構成とすることにより、コイン型電気二重層キャパシタにおいて説明した内容と同様に、優れた固着強度をもつ高信頼性のキャパシタ実装体を実現することができる。それと同時に、コイン型電気二重層キャパシタの本体部からの下側端子板103の突出寸法を最小限に抑えることができるので、キャパシタ実装体の小型化およびコンパクト化を実現することができる。
本発明のコイン型電気二重層キャパシタは、特に実装基板との接続において優れた機械強度を有し小型化にも適しているため、小型化が推し進められ使用において様々な衝撃に対する耐性を必要とする携帯電子機器などの電源のバックアップ用として利用されることが期待でき有用である。
1,101 上蓋
2,102 下蓋
3,103,203,303,403,503 下側端子板
3a,4a,103a,104a 溶接部分
3b,4b,103b,104b,203b,303b,403b,503b 接続部分
3c 側面
4,104 上側端子板
5,105,205,405 貫通孔
5c,105c 内周面
5d,103d 外周面
5e 開口
6a,6b 電極
7a,7b 集電体
8a,8b 分極性電極層
9 セパレータ
10,110 キャパシタ素子
11,111 リング状パッキング
12 曲げ加工部
103c 上面
113a,113b フィレット(はんだ)
113c はんだ
114 実装基板
315 切り欠き部