JPWO2009075173A1 - 粉末及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の粉末は、金属粉と、前記金属粉を被覆するアパタイト層と、前記金属粉又はアパタイト層に付着したシリカ粒子とを有してなる。本発明の粉末によれば、圧粉磁心を製造する上で、絶縁層の破壊を招くことなく、高温により焼鈍することが可能となる。そのため、絶縁層の絶縁性を保持し、透磁率の充分に高い圧粉磁心を得ることができる。

Description

本発明は、低鉄損な圧粉磁心の原料粉末として好適な粉末に関する。
変圧器、電動機、発電機、スピーカ、誘導加熱器、各種アクチュエータ等、我々の周囲には電磁気を利用した製品が多々ある。それらの高性能化、小型化を図る上で軟磁性材料の圧粉成型体である磁心の性能向上が不可欠である。
前記磁心は、従来、ケイ素鋼の薄膜と絶縁層とを交互に複数積層し、これを型で打ち抜くことにより製造されている(電磁鋼板)。しかしながらこの方法は、製品小型化かつ複雑形状化への対応の点で不都合が多く、渦電流損失の低減という点で課題があった。
このような課題に対して、近年、成型性に優れかつ低コスト製造可能な磁心として、軟磁性金属粉末を圧縮成型して得られる圧粉磁心が注目され、種々の研究開発がなされている。
このような圧粉磁心は、磁束密度を大きくするために透磁率を大きくすることが要求される。特にモーター用の磁心は交番磁界中で使用されることが多いが、鉄損が大きいとエネルギー変換効率が悪化するので、鉄損が小さい(低鉄損)ことが要求される。
前記鉄損には、ヒステリシス損失、渦電流損失及び残留損失があるが、主に問題となるのは、ヒステリシス損失と渦電流損失である。
圧粉磁心におけるヒステリシス損失の増大は、軟磁性金属粉末を圧縮成型して圧粉磁心とする際、軟磁性金属粉末に巨大な加工歪みが加えられることに起因する。従って、ヒステリシス損失の低減には、圧縮成型後、得られた成型体を焼鈍することにより、軟磁性金属粉末中に加えられた歪みを解放することが有効であり、その焼鈍温度は600℃以上が好ましいと言われている。
一方で、渦電流損失の低減を図るためには、軟磁性金属粉末を絶縁材料で被覆することが有効である。しかしながら、従来から一般的に使用される絶縁材料は、ヒステリシス損失を低減するための焼鈍を行うと、絶縁材料の耐熱性が低いために分解が起こり、絶縁性が著しく低下してしまう。したがって、渦電流損失の低減とヒステリシス損失の低減の両立は非常に大きな課題である。
そこで、このような課題を解決するために、耐熱性に優れた絶縁材料の開発が行われている。特に、軟磁性金属粉末として鉄粉を用いたものは安価であり、磁束密度の高い圧粉磁心が製造できることから、種々の研究開発がなされている。例えば、特許文献1では、耐熱性に優れた絶縁被膜としてシリカ粒子を採用する方法が提案されている。前記文献では、表面をリン酸処理した鉄粉とシリカ粒子を含む懸濁液とを混合し、この混合体を乾燥することによりシリカ粉末で被覆された金属粉末を得る方法が開示されている。
しかしながら、前記シリカ粒子で被覆された鉄粉を使用して圧粉磁心を作製しようとした場合、金属粉末同士の接合力を充分に得るためには、焼鈍温度を、600℃付近の通常の工程より高く(例えば800℃以上)する必要があった。しかしながら、焼鈍温度を高くしすぎると、鉄のキュリー温度は769℃であるので、圧粉磁心の磁気特性が低下する傾向がある。
また特許文献2では、軟磁性金属粉末の表面に酸化物層と絶縁層とを形成し、還元性雰囲気、高温条件下で結合強化処理することにより、軟磁性金属粉末の表面に、絶縁性に優れた単一層を形成する方法が提案されている。
特開平9−180924号公報 特開2007−194273号公報
上記特許文献2に開示された方法により作製された軟磁性金属粉末を用いると、耐熱性に優れた圧粉磁心を提供することができるとされている。しかし、当該方法の場合、工程にかかる焼鈍等に関わるエネルギーコストが高いこと、大量生産にはあまり向いていないこと等の理由から、さらに簡便な方法で、耐熱性に優れた被膜を有する軟磁性金属粉末を得ることを考えた。
また、磁束密度を高めるためには、軟磁性金属粉末にできるだけ薄くかつ広範囲に絶縁層を形成することが効果的であるが、簡便で低コストな方法はいままで知られていなかった。
本発明は、上述したような従来技術の有する課題に鑑みてなされたもので、圧粉磁心おいてヒステリシス損失低減と渦電流損失低減の両立を可能とし、また低鉄損と高磁束密度化の両立を可能とする軟磁性金属原料粉末を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、金属粉と、前記金属粉を被覆するアパタイト層と、前記金属粉又は前記アパタイト層に付着したシリカ粒子とを有してなる粉末を提供する。
本発明によれば、金属粉をアパタイト層で被覆するとともに、金属粉又はアパタイト層にシリカ粒子を付着させることで、金属粉表面に600℃以上の焼鈍温度にも耐え得る絶縁被膜が形成可能となる。かかる構成の採用及びそれによる効果は、ヒステリシス損失を低減するためには、600℃以上の焼鈍温度に耐え得る良好な耐熱性絶縁膜の形成が有効であるという本発明者らの知見に基づくものである。
本発明において、前記アパタイト層は下記一般式(I−a)又は(I−b)で表される化合物を含有することが好ましい。
Ca10(PO (I−a)
Ca(10−(m×n)/2)(PO (I−b)
(式中、Mは陽イオンを与える原子又は原子群を示し、mはMが与える陽イオンの価数を示し、nは0を超え5以下であり、Xは一価の陰イオンを与える原子又は原子群を示す。)
また、前記シリカ粒子は、有機基で表面修飾されたシリカ粒子であることが好ましい。
さらに、前記有機基で表面修飾されたシリカ粒子は、下記一般式(II)又は(III)で示される化合物を用いて表面修飾されたシリカ粒子であることが好ましい。
Si(OR4−n (II)
SiX4−n (III)
(式中、nは1〜3の整数であり、R及びRは一価の有機基を示し、Xはハロゲンを示す)。
また、前記金属粉は軟磁性材料の粉末であることが好ましい。
本発明の粉末は圧粉磁心用の粉末として好適である。
また、本発明は、金属粉をアパタイトで被覆する第1の工程と、前記第1の工程で得られた金属粉表面又はアパタイト表面にシリカ粉末を付着させる第2の工程と、前記第2の工程で得られた粉末を350℃以下で予備硬化し、前記金属粉と、前記金属粉を被覆するアパタイト層と、前記金属粉又はアパタイト層に付着したシリカ粒子とを有してなる粉末を得る第3の工程と、を備える、粉末の製造方法を提供する。
前記第1の工程に供する前記金属粉としては、リン酸処理された金属粉を用いることが好ましい。
本発明の粉末は、アパタイト層及びそれに付着したシリカ粒子を有する絶縁層で被覆され、該絶縁層は絶縁性ならびに耐熱性に優れている。従って、圧粉磁心を製造する上で、絶縁層の破壊を招くことなく、高温により焼鈍することが可能である。そのため、絶縁層の絶縁性を保持し、透磁率の充分に高い圧粉磁心を得ることができる。
実施例1で得られたヒドロキシアパタイト被覆鉄粉の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す写真である(倍率:2500倍)。 実施例1で得られたヒドロキシアパタイト被覆鉄粉の断面のSEM像を示す写真である(倍率:50000倍)。 実施例1で得られたナノシリカ付着ヒドロキシアパタイト被覆鉄粉の断面のSEM像を示す写真である(倍率:1000倍)。 実施例1で得られたナノシリカ付着ヒドロキシアパタイト被覆鉄粉の断面のSEM像を示す写真である(倍率:100000倍)。
本発明の粉末の一態様は、金属粉と、前記金属粉を被覆するアパタイト層と、前記金属粉又は前記アパタイト層に付着したシリカ粒子とを有してなる粉末である。以下、本発明の粉末の各構成要件について、順に説明する。
(金属粉)
本発明において用いられる金属粉は、強磁性を有しかつ高い飽和磁束密度を示す金属粉であれば、特に制限なく使用することができ、具体的には例えば、鉄粉、ケイ素鋼粉、センダスト粉、アモルファス粉、パーメンジュール粉、ソフトフェライト粉、アモルファス磁性合金粉、ナノクリスタル磁性合金粉及びパーマロイ粉等の軟磁性材料を挙げることができ、これらは単独で又は二種類以上を混合して使用することができる。中でも、磁性が強い上に低価格である点で、鉄粉が好ましい。
また、鉄粉の中でも、飽和磁束密度や透磁率などの磁気特性に優れ、圧縮性に優れる点で、純鉄粉が特に好ましい。このような純鉄粉としては、具体的には例えば、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉及び電解鉄粉等を挙げることができ、例えば株式会社神戸製鋼所製の300NH等が挙げられる。
また、金属粉としては、圧縮性や圧粉磁心の磁気特性などに悪影響を及ぼさない範囲で、含有元素の調整を行ったものを用いても良い。具体的には例えば、金属粉の酸化を防止する目的でリン元素を添加したり、磁気特性向上の目的でコバルト、ニッケル、マンガン、クロム、モリブデン、銅等の元素を添加したりすることができる。
金属粉の粒径としては、特に制限はなく、圧粉磁心の用途や要求特性によって適宜決めることができる。一般的には、走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察できる粒子の大きさが1μm〜300μmの範囲にあるものから選択することができる。粒径が1μm以上であれば、圧粉磁心作成時に成形しやすくなる傾向があり、300μm以下であれば、圧粉磁心の渦電流が大きくなるのを抑制でき、アパタイト層をコートしやすくなる傾向がある。また、平均粒径(ふるい分け法により求められる平均二次粒径)としては50〜250μmのものが好ましい。
金属粉としては、特にその形状に制限はなく、球状、塊状のものや、公知の製法又は機械加工によって、扁平加工した扁平状粉末を用いても良い。
(アパタイト層)
本発明の粉末表面を被覆するアパタイト層は、前記金属粉の絶縁被膜としての機能を有する。かかる観点から、アパタイト層は前記金属粉の表面を層状に覆う被膜構造となっていることが好ましい。
アパタイト層とは、アパタイト構造をとる物質で構成される層の意である。アパタイト層のアパタイト構造をとる物質の好ましい例としては、具体的には、下記一般式(I−a)又は(I−b)で表される化合物を挙げることができる。
Ca10(PO (I−a)
Ca(10−(m×n)/2)(PO (I−b)
(式中、Mは陽イオンを与える原子を示し、mはMが与える陽イオンの価数を示し、nは0を超え5以下であり、Xは一価の陰イオンを与える原子又は原子群を示す。)
前記一般式(I−b)において、陽イオンを与える原子Mは、好ましくはカルシウムに置換しうる金属である。かかる金属としては、具体的にはイオン半径が0.80〜1.40Åの金属を挙げることができ、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス等を挙げることができる。前記一般式(I−b)中のMは1種でも2種以上であってもよい。また、前記一般式(I−b)において、nの範囲としては、0を超え5以下であり、0を超え2.5以下であることがより好ましく、0を超え1.0以下であることがより好ましい。前記一般式(I−a)及び(I−b)において、Xとしては、水酸基(OH)及びハロゲン(F、Cl、B、I等)が好ましく、水酸基及びフッ素がさらに好ましい。Xが水酸基である場合は、金属粉末への塗布性に優れる点で好ましく、フッ素である場合は、強度に優れる点で好ましい。
アパタイト層のアパタイト構造をとる物質としては、圧粉磁心にしたときの絶縁性、耐熱性さらに力学的特性に優れる点で、前記一般式(I−a)で表される化合物がより好ましく、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))又はフルオロアパタイト(Ca10(PO)を用いることが特に好ましい。
本発明の粉末において、「アパタイト層による金属粉の被覆」とは、前記金属粉の少なくとも一部がアパタイト層で覆われている状態をいう。従って後述する「アパタイト被覆金属粉」とは、金属粉が完全にアパタイトで被覆されたものだけではなく、金属粉の一部が露出しているものでもよい。一方で、アパタイト層による金属粉の被覆の程度としては、被覆率が高い方が、後述するシリカが付着しやすくなり、結果として抗折強度が向上する点で好ましい。具体的には、アパタイト層により金属粉の表面が90%以上被覆されていることが好ましく、95%以上被覆されていることがより好ましく、全体(ほぼ100%)被覆していることがさらに好ましい。
本発明の粉末において、前記アパタイト層は、厚みが10nm〜1000nmであることが好ましく、20〜500nmであることがさらに好ましい。厚みが10nm以上であれば絶縁の効果を得る傾向があり、1000nm以下であれば密度向上の効果を得る傾向がある。
前記金属粉にアパタイト層を形成する方法としては、カルシウムイオンあるいは更に前記一般式(1−b)中の陽イオンを与える原子又は原子群Mのイオンを所定の比で含有する水溶液と、リン酸イオンを含有する水溶液の反応により、アパタイト構造をとる物質を金属粉表面に析出させる方法を挙げることができる。アパタイト構造の層を得るためには、反応溶液の液性を中性から塩基性領域(pH=6.0以上)に制御する必要がある。なお、酸性領域であるとアパタイト構造をとる物質以外のリン酸カルシウム層が析出する場合がある。
アパタイト層としてヒドロキシアパタイトを析出させる場合、例えば、硝酸カルシウム水溶液とリン酸二水素アンモニウム水溶液を用いる方法を挙げることができる。このようにして得られるヒドロキシアパタイトの化学量論的な組成はCa10(PO(OH)であるが、大部分がアパタイト構造であって、それが維持できる限り非化学量論的な組成であってもよく、例えば、一部がCa10−Z(HPO(PO6−Z(OH)2−Z(0<Z≦1,1.50≦Ca/P(原子量比)<1.67)となっていてもよい。
前記アパタイト層の原料を添加する量としては、金属粉100質量部に対して、0.1〜1.0質量部であることが好ましく、0.4〜0.8質量部であることがより好ましく、0.5〜0.7質量部であることがさらに好ましい。0.1質量部以上であれば、圧粉磁心にしたときに充分な比抵抗が得られる傾向がある。また、得られる粉末の絶縁層が均一となり絶縁性改善の効果を充分得ることができる。1.0質量部以下であれば、圧粉磁心にしたときに成型体密度が低下するのを防ぐことができる傾向がある。アパタイト層の質量は、得られた粉末を元素分析してカルシウム(及び金属M)の量を定量することによって求めることができる。
(シリカ粒子)
本発明の粉末において使用するシリカ粒子としては、従来公知のものを広く使用することができ、具体的には、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等を挙げることができるが、取り扱い性が容易である点でコロイダルシリカが好ましい。シリカ粒子の形状は特に制限はない。
シリカ粒子の粒径としては、様々な大きさのものが使用できるが、成膜性のためにはサブミクロン以下の粒径を持つシリカ粒子が好適である。具体的には、シリカ粒子の平均一次粒径が50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。
さらにシリカ粒子は、有機溶剤中で凝集せずに分散していることが好ましい。従って、シリカ粒子の分散性を向上させる目的で、シリカ粒子表面を有機基によって修飾してもよい。このような有機基としては、例えば、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、C1〜C6(炭素数が1〜6)のアルキル基等を挙げることができる。
このような有機基によってシリカ粒子の表面を修飾する方法としては、分子構造内に前記有機基を有するシラン化合物を、前記シリカ粒子の表面に反応させる方法を用いることができる。このようにすることで、圧粉磁心にしたときの抗折強度を向上させることができ、場合によっては比抵抗も向上できる。
このようなシラン化合物としては、具体的には下記一般式(II)で表されるアルコキシシラン又は下記一般式(III)で表されるハロゲノシラン化合物を用いることができる。
Si(OR4−n (II)
SiX4−n (III)
(式中nは1〜3の整数であり、R及びRは一価の有機基を示し、Xはハロゲンを示す。)
前記一般式(II)及び(III)において、Rとしては、シリカ粒子に修飾したい有機基が挙げられ、具体的には、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、C1〜C6(炭素数が1〜6)のアルキル基等を挙げることができる。また、Rとしては、一価の有機基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基等が挙げられる。また、Xとしては、クロロ、ブロモ、ヨード等が挙げられる。
前記一般式(II)で表されるアルコキシシランとしては、具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン等のトリメトキシシラン類;
メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン等のトリエトキシシラン類;
ジメチルジメトキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、メチルn−プロピルジメトキシシラン、メチルiso−プロピルジメトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、メチルtert−ブチルジメトキシシラン、メチルn−ペンチルジメトキシシラン、n−ヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン等のジメトキシシラン類;
ジメチルジエトキシシラン、エチルメチルジエトキシシラン、メチルn−プロピルジエトキシシラン、メチルiso−プロピルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジエトキシシラン、メチルtert−ブチルジエトキシシラン、メチルn−ペンチルジエトキシシラン、n−ヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン等のジエトキシシラン類;などを挙げることができる。
また、前記一般式(III)で表されるハロゲノシラン化合物としては、具体的には例えば;
メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、iso−プロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、tert−ブチルトリクロロシラン、n−ペンチルトリクロロシラン、n−ヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン等のトリクロロシラン類;
ジメチルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、メチル−n−プロピルジクロロシラン、メチル−iso−プロピルジクロロシラン、n−ブチルメチルジクロロシラン、メチル−tert−ブチルジクロロシラン、メチル−n−ペンチルジクロロシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン等のジクロロシラン類などを挙げることができる。
上記シラン化合物は、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
シリカ粒子の表面修飾は、通常、シリカ粒子の分散液に、前記アルコキシシラン化合物又は前記ハロゲノシラン化合物を添加し、撹拌することで行うことができる。その場合、シリカ粒子固形分1重量部に対して、0.4〜0.6重量部の範囲で添加することが好ましい。0.6重量部以下であれば添加したシラン化合物が未反応で残存することがなく、0.4重量部以上であれば、シリカ粒子に対する有機基の修飾の効果を充分得ることができる。なお、前記シリカ粒子は、水に分散したものであっても、有機溶媒に分散したものであってもよい。
また、シリカ粒子表面への有機基の修飾反応を温和な条件で迅速に進行させるために、無機酸、有機酸、酸性イオン交換樹脂などの酸触媒を用いることが好ましい。この場合、特に、塩酸、硝酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、シュウ酸などを用いるのが好ましい。一般に酸は、前記アパタイトと反応して特性を劣化させうるので、揮発性が高く、系に残留しにくいという点で塩酸及び酢酸がより好ましい。前記酸触媒の添加量としては、シリカ粒子固形分1重量部に対して0.05〜0.1重量部であることが好ましい。
前記修飾反応の温度は、シリカ粒子が凝集するのを防ぐため、0〜50℃で行うことが好ましく、10〜40℃で行うことがより好ましい。また、前記シリカ粒子は、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレンなどの有機溶媒に分散されていることが好ましい。
(製造方法)
本発明の粉末の製造方法は、金属粉をアパタイトで被覆してアパタイト層で被覆された金属粉(以下、アパタイト被覆金属粉という)を形成する第1の工程と、前記第1の工程で得られたアパタイト被覆金属粉における金属粉又は前記アパタイト層にシリカ粉末を付着させる第2の工程と、前記第2の工程で得られた粉末を350℃以下で予備硬化し、前記金属粉と、前記金属粉を被覆するアパタイト層と、前記金属粉又はアパタイト層に付着したシリカ粒子とを有してなる粉末を得る第3の工程と、を備える。
(金属粉のリン酸処理)
また、第1の工程に供する金属粉として、リン酸処理された金属粉を用いることが、金属粉の酸化を防止できる点で好ましい。本発明の粉末の製造方法においては、当該リン酸処理を第1の工程の前に設けてもよく、また、リン酸処理された金属粉末として市販されているものを使用してもよい。リン酸処理は従来公知の方法で行うことができる。
(アパタイト層の形成)
前記金属粉にアパタイトの層を形成する方法としては、これまで説明したように、カルシウムイオン(及び必要に応じカルシウム以外の陽イオンを与える原子又は原子群Mのイオン)を含む水溶液と、リン酸イオンを含有する水溶液の反応により、アパタイトを金属粉表面に析出させる方法を挙げることができる。具体的には、フラスコ内に、カルシウム源となる水溶液と金属粉を入れ、撹拌しながら、リン酸源となる水溶液を滴下する方法が挙げられる。また、フラスコ内に水と金属粉を入れ、撹拌しながら、前記カルシウム源となる水溶液と、リン酸源となる水溶液を同時又は逐次滴下する方法も使用できる。逐次滴下する場合、その順序はどちらを先に滴下してもよい。
前記カルシウム源としては、水溶性のカルシウム化合物であれば特に制限はなく、具体的には、例えば、水酸化カルシウム等の無機塩基のカルシウム塩、硝酸カルシウム等の無機酸のカルシウム塩、酢酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩、有機塩基のカルシウム塩等を挙げることができる。前記リン酸源としては、リン酸や、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸塩を挙げることができる。
アパタイト構造の層を得るためには、反応溶液が中性領域〜塩基性領域であることが好ましく、pHとしては7以上であることが好ましく、8以上がより好ましく、9以上がさらに好ましく、10以上が特に好ましい。酸性領域であるとアパタイト以外のリン酸カルシウム層が析出する場合があるので、前記カルシウム源となる水溶液と、リン酸源となる水溶液は、アンモニア水等の塩基によりあらかじめpHを7以上にしておくことが好ましい。
反応温度としては、室温でもかまわないが、反応促進のために50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが好ましく、90℃以上が特に好ましい。溶媒が水である場合、その上限温度としては、反応液の還流温度であり100℃付近である。
反応時間としては、前記カルシウム源となる水溶液とリン酸源となる水溶液の濃度により異なり、濃度が高いほど短い反応時間でよく、濃度が低ければ反応時間を長くすることが好ましい。本発明の製造方法において、前記カルシウム源となる水溶液と、リン酸源となる水溶液の濃度は、それぞれ0.003〜0.5
Mの範囲とすることが好ましく、この場合の反応時間としては、1〜10時間であることが好ましい。
(シリカ粉末の付着)
次に、前記のようにして得られたアパタイト被覆金属粉に、前記シリカ粒子を付着させる。この方法としては、前記シリカ粒子の分散液をアパタイト被覆金属粉に添加して振とう・撹拌する方法が挙げられる。市販のオルガノシリカゾルを用いる場合には、適当な濃度に希釈して使用しても良い。また、前記のように、市販のオルガノシリカゾル中のシリカ粒子の表面をシラン化合物等の有機基で表面修飾した場合には、表面修飾の際に使用した反応液をそのまま使用してもよい。なお、ここで使用されたシリカ粒子はアパタイト層に付着していても、アパタイト層の被覆が不十分な欠陥部分の露出金属粉表面に付着していてもよい。
シリカ粒子を分散させる溶媒としては、特に制限はなく、具体的には例えばイソプロピルアルコールに代表されるアルコール系溶剤、メチルエチルケトンに代表されるケトン系溶剤、トルエンに代表される芳香族系溶剤が挙げられる。特にオルガノシリカゾル中のシリカ粒子がコロイド溶液状態を維持しやすいしやすい芳香族溶媒が好ましい。
(予備硬化)
このようにしてシリカ粒子を表面に付着させたアパタイト被覆金属粉を、350℃以下で予備硬化する。このようにすることで、アパタイト層が硬化し、強固な耐熱性被膜を形成することができる。予備硬化を行わないと、これら原料粉末を圧縮成型して圧粉磁心を製造する際に、表面のシリカ粒子がアパタイト層に埋め込まれてしまい、充分な絶縁性が得られない傾向がある。上記予備硬化の温度としては、100〜300℃とすることが好ましい。
なお、本発明におけるシリカ粒子の添加量は使用する金属粉100質量部に対し、0.05〜1.0質量部とすることが好ましい。添加量が0.05重量部以上であれば、シリカ粒子が金属粉に均一に被覆でき、絶縁性改善の効果が得られる傾向がある。一方1.0質量部以下であれば、圧粉磁心にした際に成形体密度の低下を防ぎ、かつ、得られる圧粉磁心の抗折強度の低下も防ぐことができる傾向がある。
(圧粉磁心の製造)
本発明の圧粉磁心用粉末は、必要に応じて潤滑剤を混合した混合粉末を圧縮成型して圧粉磁心とすることができる。潤滑剤はその分散液を金型壁面に塗布、乾燥してから使用することもできる。潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウムなどの金属石鹸、ワックス等の長鎖炭化水素、シリコーンオイル等が使用できる。成型圧は500〜1500MPaとするのが好ましい。さらに、得られた圧粉磁心を、ヒステリシス損失を低減するために焼鈍を施すことができる。この場合の焼鈍温度は500〜800℃の範囲で選定することが好ましい。本焼鈍は窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガス下で行うことが好ましい。
以上の方法で作製された圧粉磁心は、高い成型体密度と絶縁性を示す。なお、このような特性を示す機構は明確に解明されたわけではないが、本発明者らは以下のような機構を推定している。すなわち、アパタイト層を金属粉に被覆すると、アパタイト特有の高い吸着力によって、シリカ粒子は金属粉に、より付着しやすくなる。さらに、このように付着したシリカ粒子が成型の際に発生するアパタイト層の割れ目部位にシリカ粒子が効果的に充填されることにより、高い成型体密度(例えば7.0g/cm以上)、そして高い耐熱性と絶縁性の保持を可能にしていると推定される。前記したように、シリカ粒子としてサブミクロン以下の粒径であるものが好ましい理由は、小さいシリカ粒子が動きやすいことから、アパタイト層の割れ目部位にシリカ粒子がより効果的に充填されるためと考えられる。
本発明の粉末から作成した圧粉磁心の成型体密度は、7.0g/cm以上であることが好ましく、7.4g/cm以上であることがさらに好ましい。密度が7.4g/cm以上であれば該圧粉磁心の磁束密度が向上する傾向がある。
また、前記圧粉磁心の表面の電気抵抗値は、30μΩm以上であることが好ましく、50μΩm以上であることがより好ましく、90μΩm以上であることがさらに好ましい。電気抵抗が30μΩm以上であれば、前記圧粉磁心の渦電流損低下の効果を得ることができる傾向がある。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れた。また、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコ内容物を室温(25℃)にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した。
次に、四つ口フラスコを90℃のオイルバス中で撹拌しながら2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、濾物を110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の粉末が得られた(収率96質量%)。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をX線光電子分光(XPS)により分析したところ、原子存在率がFe:4.58%、Ca:15.7%、Ca/P比(モル比)が1.64であり、鉄粉がヒドロキシアパタイトに被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆鉄粉20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを混合し、最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、200℃にて30分予備硬化した。予備硬化して得られた粉末を250μmのふるいに掛け、巨大会合粒子を除去し、ナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉を得た。
以上のようにして得られたアパタイト被覆鉄粉の断面のSEM像を図1、2に、ナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉の断面のSEM像をそれぞれ図3、4に示した。これら粒子表面において、ヒドロキシアパタイト層、ナノシリカ層が形成していることを確認できた。
得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉5.92gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPaにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、296μΩmであった。また、密度は7.48g/cmであった。この錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、再度表面を研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、91μΩmであった。また、密度は7.47g/cmであった。
[比較例1]
以下のように実施例1と同様に途中までヒドロキシアパタイト被覆鉄粉を調製した。すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れた。また、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコ内容物を室温(25℃)にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した。
次に、四つ口フラスコを90℃のオイルバス中で撹拌しながら2時間反応させた。それから、得られたスラリー液を吸引ろ過し、濾物を110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の粉末が得られた。(収率96質量%)。得られた粉末を250μmのふるいに掛け、アパタイト被覆金属粉を得た。アパタイト被覆金属粉5.95gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPaにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmであった。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、144μΩmであった。また、密度は7.54g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、0.54μΩmであった。また、密度は7.53g/cmであった。
[比較例2]
アパタイト層を設けずに、実施例1でナノシリカを付着させる方法で、鉄粉にナノシリカを付着させた。すなわち、鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)20gとナノシリカトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを混合し、最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうさせた後、200℃にて30分予備硬化した。予備硬化して得られた粉末を250μmのふるいに掛け、巨大会合粒子を除去し、ナノシリカ付着金属粉を得た。得られた粉末の内、5.99gを1000MPaにて、直径1.4cm、厚み5.145mmの円柱状の錠剤に成型した。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗計で測定したところ、79μΩmであった。また、密度は7.57g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて一時間焼鈍焼成し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、20μΩmであった。また、密度は7.57g/cmであった。
かくして得られた圧粉磁心の密度、比抵抗について測定した結果を表1に示した。
表1を参照して、高い比抵抗を得るにはヒドロキシアパタイト被覆及びシリカ粒子の付着の両方が不可欠である。また、実施例1の成型体密度は、実施例1でヒドロキシアパタイト被覆及びシリカ粒子付着が行なわれているにもかかわらず、比較例1及び比較例2の成型体密度と比較してほとんど低下していない。これは、圧縮成型時に破壊され、生じたアパタイト層の割れ目の細孔内にシリカ粒子が埋め込まれたためと推定できる。
次に、アパタイト層とシリカ粒子との吸着力の強さを見積もるために表面状態の異なる純鉄粉とアパタイト被覆鉄粉にそれぞれシリカ粒子を付着させて、どれほどのシリカ粒子が表面に残存するかを、定量分析を通して比較した。方法としては、Mlvern社製HPPSを用い動的光散乱法により測定した平均粒径20nmのシリカ粒子を含有するオルガノシリカゾル液(媒体:トルエン)(固形分濃度3.0質量%)5.0g中を、最大容量10mLのガラス製スクリュー管に入れ、その中に種々の粉末3.0gを加えた。このスクリュー管を回転数を105rpmに設定したミックスローターで、3時間撹拌した。撹拌後の液を、定量分析用No.5B(JIS P3801)のろ紙を用いて吸引濾過を行い、濾物をトルエンで洗浄し、真空乾燥させてそれぞれの粉末を得た。
得られた粉末をICP−OES法を用いて元素分析し、粉末に付着したシリカ粒子をケイ素原子量として定量した。結果を表2に示す。
表2の結果から、アパタイト被覆した鉄粉から定量されるケイ素原子量は、純鉄粉のものと比較して2倍程度多い。ケイ素原子はシリカ粒子由来のものしか存在しないので、このことからシリカ粒子の付着量が多く、アパタイト層は純鉄粉表面層よりもシリカ粒子の吸着力が強いことがわかった。
[実施例2]
実施例1において硝酸カルシウム水溶液に鉄粉を加えた後、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌する工程を追加した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、濾物を110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe3.31%、Ca17.1%、Ca/P比(モル比)が1.63であり、粉末がヒドロキシアパタイトで被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを混合し、最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化後に得られた粉末を250μmのふるいに掛けた。
ふるいに掛けた鉄粉末のうち、6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、236μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼成し、表面を研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、75μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。
[実施例3]
実施例2において四つ口フラスコ内容物にリン酸二水素アンモニウム水溶液滴下後、30℃のオイルバス中にて1.5時間撹拌する工程を追加した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、濾物を110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe5.56%、Ca14.85%、Ca/P比(モル比)が1.63であり、粉末がヒドロキシアパタイトで被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを混合し、最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。
得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、111μΩmであった。また、成型体密度は7.51g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、55μΩmであった。また、成型体密度は7.51g/cmであった。
[実施例4]
実施例3において、90℃反応時間を2時間から10分に変更した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて10分間反応させた。それから、得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe6.79%、Ca12.77%、Ca/P比(モル比)が1.44であった。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、214μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、53μΩmであった。また、成型体密度は7.49g/cmであった。
[実施例5]
実施例3において、90℃での反応時間を2時間から5時間に変更した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて5時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe6.07%、Ca13.98%、Ca/P比が1.67であり、粉末がヒドロキシアパタイトで被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、218μΩmであった。また、成型体密度は7.47g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、93μΩmであった。また、成型体密度は7.47g/cmであった。
[実施例6]
実施例3において、90℃の反応温度を30℃に変更した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま3.5時間撹拌した。
それから、得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe7.84%、Ca11.67%、Ca/P比(モル比)が1.65であり、鉄粉末がヒドロキシアパタイトで被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、119μΩmであった。また、成型体密度は7.53g/cmであった。
研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、31μΩmであった。また、密度は7.53g/cmであった。
[実施例7]
実施例3において、90℃反応温度を50℃に変更した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から50℃に5分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe7.08%、Ca13.24%、Ca/P比(モル比)が1.77であり、鉄粉末がヒドロキシアパタイトで被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。
得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、176μΩmであった。また、成型体密度は7.46g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、53μΩmであった。また、成型体密度は7.47g/cmであった。
[実施例8]
実施例3において、90℃反応温度を30℃に変更し、110℃焼成を行わなかった。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07 mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま3.5時間撹拌した。
次に、得られたスラリー液を吸引ろ過し、ステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥したところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe5.53%、Ca13.63%、Ca/P比(モル比)が1.52であった。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。
得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、168μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、56μΩmであった。また、成型体密度は7.49g/cmであった。
[実施例9]
実施例3において、90℃反応温度を50℃に変更し、110℃焼成を行わなかった。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から50℃に5分かけて昇温し、四つ口フラスコ内容物を撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、ステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥したところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe4.89%、Ca15.54%、Ca/P比(モル比)が1.77であり、粉末がヒドロキシアパタイトで被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、137μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、44μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。
[実施例10]
実施例3において、110℃焼成を行わなかった。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(1.79mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.07mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、0MPaにて真空乾燥したところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた鉄粉末をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe3.85%、Ca16.63%、Ca/P比(モル比)が1.56であった。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、137μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、30μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。
[実施例11]
実施例3において、硝酸カルシウムの仕込み量を1.79mmolから0.60mmolに、リン酸二水素アンモニウムの仕込み量を1.07mmolから0.36mmolに変更した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(0.60mmol,0.008M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(0.36mmol,0.005M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30 ℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe7.29%、Ca13.14%、Ca/P比(モル比)が1.52であった。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、122μΩmであった。また、成型体密度は7.56g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、30μΩmであった。また、成型体密度は7.56g/cmであった。
[実施例12]
実施例3において、硝酸カルシウムの仕込み量を1.78mmolから2.98mmolに、リン酸二水素アンモニウムの仕込み量を1.07mmolから1.78mmolに変更した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(2.98mmol,0.040M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(1.78mmol,0.024M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe2.76%、Ca17.59%、Ca/P比(モル比)が1.67であった。
さらに、得られたアパタイト被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、213μΩmであった。また、成型体密度は7.44g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、88μΩmであった。また、成型体密度は7.44g/cmであった。
[実施例13]
実施例11と同様にヒドロキシアパタイト層が1層から成るヒドロキシアパタイト被覆鉄粉を調製し、さらに同様の処理を繰り返し、ヒドロキシアパタイト層が2層構造であるヒドロキシアパタイト被覆鉄粉を調製した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(0.60mmol,0.008M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(0.36mmol,0.005M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、この内容物に10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、四つ口フラスコ内容物を撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた(収率96質量%)。
続いて、得られたアパタイト1層被覆粉末28.8g及び25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液72mL(0.57mmol,0.008M)を300mLの四つ口フラスコに入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液72mL(0.34mmol,0.005M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、この内容物に10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe7.05%、Ca13.84%、Ca/P比(モル比)が1.59であった。
さらに、得られたアパタイト2層被覆粉末20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、131μΩmであった。また、成型体密度は7.53g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼成し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、59μΩmであった。また、成型体密度は7.53g/cmであった。
[実施例14]
実施例13と同様にヒドロキシアパタイト層が2層から成るヒドロキシアパタイト被覆鉄粉を調製し、さらに同様の処理を繰り返し、ヒドロキシアパタイト層が3層構造であるヒドロキシアパタイト被覆鉄粉を調製した。
すなわち、300mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液75mL(0.60mmol,0.008M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)30gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液75mL(0.36mmol,0.005M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。
続いて、得られたアパタイト1層被覆鉄粉29.5g及び25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液74mL(0.59mmol,0.008M)を300mLの四つ口フラスコに入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液74mL(0.35mmol,0.005M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、四つ口フラスコ内容物を撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。
得られたアパタイト2層被覆鉄粉29.5g及び25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液74mL(0.59mmol,0.008M)を300mLの四つ口フラスコに入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液74mL(0.35mmol,0.005M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに10分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま1.5時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた粉末の表面近傍の原子存在率をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe10.33%、Ca10.95%、Ca/P比(モル比)が1.69であった。
さらに、得られたアパタイト3層被覆鉄粉20gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)2gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト3層被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、95μΩmであった。また、成型体密度は7.494g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、31μΩmであった。また、成型体密度は7.50g/cmであった。
[実施例15]
実施例3において仕込む鉄粉量を33倍に変更し、それに伴い反応容器容積、溶媒量等も33倍に変更し、四つ口フラスコ内容物にリン酸二水素アンモニウム水溶液滴下後、30℃のオイルバス中にて撹拌する時間を1.5時間から2時間に変更した。
すなわち、1000mLの四つ口フラスコに25%アンモニア水によりpH11以上に調整した硝酸カルシウム水溶液250mL(5.95mmol,0.024M)及び鉄粉(神戸製鋼所社製純鉄粉300NH)100gを入れ、30℃のオイルバス中にて15分間撹拌した。その後、側管付滴下ロートに25%アンモニア水によりpH11以上に調整したリン酸二水素アンモニウム水溶液250mL(3.57mmol,0.014M)を入れ、これを四つ口フラスコに固定した。四つ口フラスコを30℃のオイルバス中にて撹拌しながら、これに30分かけて滴下ロート内のリン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下した後、オイルバスの温度を30℃に保持したまま2時間撹拌した。
次に、オイルバスの温度を30℃から90℃に10分かけて昇温し、撹拌しながら90℃にて2時間反応させた。得られたスラリー液を吸引ろ過し、110℃のオーブンにて乾燥させたところ灰色の鉄粉末が得られた。得られた鉄粉末をXPSにより分析したところ、原子存在率がFe3.85%、Ca15.30%、Ca/P比が1.76であり、鉄粉末がヒドロキシアパタイトで被覆されていることを確認できた。
さらに、得られたアパタイト被覆鉄粉60gとオルガノシリカゾルトルエン溶液(固形分濃度3.0質量%)6gとを最大内容量50mLのポリプロピレン製ビン中で10分間振とうした後、内容物をステンレス製シャーレに取り出し、1MPa以下の圧力にて5分間乾燥し、取り出した粉末を200℃にて25分間予備硬化した。予備硬化して得られた鉄粉末を250μmのふるいに掛けた。得られたナノシリカ付着アパタイト被覆鉄粉6gを内径14mmの金型に充填し、成型圧力1000MPa/cmにて、円柱状の錠剤に成型した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。成型した錠剤の表面を研磨し、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、193μΩmであった。また、成型体密度は7.51g/cmであった。研磨した錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、表面を再研磨後、体積抵抗率(比抵抗)を四端子抵抗率計で測定したところ、41μΩmであった。また、成型体密度は7.51g/cmであった。
実施例1〜15で得られたヒドロキシアパタイト被覆鉄粉及びナノシリカ付着ヒドロキシアパタイト被覆鉄粉に関する評価結果を表3〜5にまとめた。
表4を参照して、合成法が異なっても、同程度の被覆率で金属粉にヒドロキシアパタイト層を形成できることが明らかになった。また表3及び5を参照して、製造工程に100〜300℃で予備硬化する工程を含むナノシリカ付着ヒドロキシアパタイト被覆鉄粉の圧粉磁心は、高い比抵抗及び成型体密度を示すことが明らかである。

Claims (8)

  1. 金属粉と、前記金属粉を被覆するアパタイト層と、前記金属粉又はアパタイト層に付着したシリカ粒子とを有してなる粉末。
  2. 前記アパタイト層が下記一般式(I−a)又は(I−b)で表される化合物を含有する、請求項1に記載の粉末。
    Ca10(PO (I−a)
    Ca(10−(m×n)/2)(PO (I−b)
    (式中、Mは陽イオンを与える原子を示し、mはMが与える陽イオンの価数を示し、nは0を超え5以下であり、Xは一価の陰イオンを与える原子又は原子群を示す。)
  3. 前記シリカ粒子が有機基で表面修飾されたシリカ粒子である、請求項1又は2に記載の粉末。
  4. 前記有機基で表面修飾されたシリカ粒子が下記一般式(II)又は(III)で示される化合物を用いて表面修飾されたシリカ粒子である、請求項3に記載の粉末。
    Si(OR4−n (II)
    SiX4−n (III)
    (式中、nは1〜3の整数であり、R及びRは一価の有機基を示し、Xはハロゲンを示す)。
  5. 前記金属粉が軟磁性材料の粉末である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末。
  6. 圧粉磁心用の粉末である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末。
  7. 金属粉をアパタイトで被覆してアパタイト被覆金属粉を得る第1の工程と、
    前記第1の工程で得られたアパタイト被覆金属粉の金属粉表面又はアパタイト層表面にシリカ粉末を付着させる第2の工程と、
    前記第2の工程で得られた粉末を350℃以下で予備硬化し、前記金属粉と、前記金属粉を被覆するアパタイト層と、前記金属粉又はアパタイト層に付着したシリカ粒子とを有してなる粉末を得る第3の工程と、
    を備える、粉末の製造方法。
  8. 前記第1の工程に供する前記金属粉として、リン酸処理された金属粉を用いる、請求項7に記載の粉末の製造方法。
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