JP2006348335A - 粉末冶金用鉄基混合粉 - Google Patents

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Abstract

【課題】 焼結体の機械的特性の劣化を生じることなく切削性を向上できる粉末冶金用鉄基混合粉を提供する。
【解決手段】 鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末と潤滑剤とを混合した鉄基混合粉であって、鉄基粉末を、S:0.04〜0.2%、Mn:0.05〜0.5%、あるいはさらにSi:0.01〜0.1%を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ全MnS粒子数のうち5%以上の粒子が酸素を含有するMnS粒子として析出した組織を有するアトマイズ鉄粉とし、切削性改善用粉末として、リン酸カルシウム粉および/またはヒドロキシアパタイト粉とする。切削性改善用粉末の含有量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し0.1〜2.0質量%とする。これにより、焼結体の切削性が向上する。なお、リン酸カルシウム粉を、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウムおよびリン酸二水素カルシウムのうちから選ばれた1種または2種以上とすることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、粉末冶金用鉄基混合粉に係り、とくに焼結体の切削性改善と、切削後の焼結体表面の粗度低減を可能とする粉末冶金用鉄基混合粉に関する。
粉末冶金技術の進歩により、高寸法精度の複雑な形状の部品をニアネット形状に製造することが可能となっている。鉄系粉末冶金製品は、鉄基粉末に、銅粉、黒鉛粉などの合金用粉末と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の潤滑剤とを混合した鉄基混合粉を金型に充填のち、加圧成形し、ついで焼結処理を施され焼結体とされたのち、必要に応じ切削加工されて、製品とされる。このようにして製造された焼結体は、空孔の含有比率が高く、溶解法による金属材料にくらべ、切削抵抗が高い。そのため、従来から、焼結体の切削性を向上する目的で、Pb、Se、Te等の種々の粉末が鉄基混合粉に添加、あるいは鉄基粉末に合金化して添加、することが行われてきた。
しかしながら、Pbは融点が330℃と低いため焼結過程で溶融し、しかも鉄中に固溶せず基地中に均一に分散させることが難しいという問題があった。また、Se、Teは焼結体を脆化させるため、焼結体の機械的特性の劣化が著しいという問題があった。これらの粉末以外にも、切削性向上のために、切削性改善用粉末として種々の粉末を添加することが提案されている。
例えば、特許文献1には、硫化マンガン(MnS)が 10μm以下の非常に微細な粉末の形で、好ましくは重量で0.05〜5%含まれる焼結物体製造用鉄粉混合物が提案されている。特許文献1に記載された技術では、寸法変化や強度変化を伴うことなく焼結材の被削性を改善できるとしている。
また、特許文献2には、0.15〜0.5重量%のSと、該S量と平衡なMnに加えてさらに0.3重量%以下の過剰量に当たるMnとを含む快削鋼粉が提案されている。
また、特許文献3には、S含有量が0.04〜0.2wt%、Mn含有量が0.05〜0.5wt%、Si含有量が0.01〜0.1wt%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、MnS粒子数の5%以上が酸素を含有しているアトマイズ鉄粉が提案されている。これら鉄粉(鋼粉)では、鉄粉製造時に溶湯中にMnとSを溶解し、アトマイズ時にMnSとして析出凝固させている。このような鉄粉(鋼粉)を用いて焼結体とすることにより、優れた切削性を有する鉄系粉末冶金製品を製造できるとしている。
また、特許文献4には、鉄基粉末に、黒鉛粉を含む合金用粉末と、潤滑剤とを含み、切削性改善用粉末としてCaF2、MgF2、SrF、BaF2などのアルカリ土類金属のフッ化物粉を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末の合計量に対し、0.1〜0.7質量%含有するとともに、黒鉛粉および切削性改善用粉末を結合材により鉄基粉末表面に固着して含む粉末冶金用鉄基混合粉が提案されている。特許文献4に記載された技術によれば、焼結体の機械的特性劣化を生じることなく切削性が向上できるとしている。また、特許文献5には、鉄基粉末組成物において、焼結製品の切削性を改善する添加剤としてフッ化カルシウムとフッ化バリウムの粉末、好ましくはそれらの溶融物から作られた粉末を0.1〜1.0重量%含み、さらにMnSおよびMoSを含む1種またはそれ以上の従来の切削性改善剤を組み合わせた鉄基粉末組成物が提案されている。
特許文献1〜5に記載された技術では、切削性改善用粉を焼結体内や空隙中に分散させるか、あるいは高硬度の無機化合物を焼結体内や空隙中に析出させて、これらがチッピング促進材として、切削時に切削部位が塑性変形する際の応力の集中点となり切屑を微細化するとしている。この切屑の微細化により切削工具と切屑間の接触面が低減し、摩擦抵抗を下げることにより、工具摩耗を防止、あるいは低減しようとするものである。しかしながら、切削に際し、工具表面が大気中で直接被削材と接触し摩擦によって発熱が生じるため、工具表面が酸化し工具材質が劣化して、所望の切削性向上が得られないという問題があった。
このような問題に対し、例えば特許文献6には、鉄粉を主体とし、アノールサイト相および/またはゲーレナイト相を有する平均粒径50μm以下のCaO−Al2O3−SiO2系複合酸化物の粉末を0.02〜0.3重量%含有する粉末冶金用鉄系混合粉末が提案されている。特許文献6に記載された技術では、被削材中に予め低融点のセラミックスを分散させ、切削時に加工面に露出したセラミックス粒子が工具表面に付着し工具保護膜(いわゆるベラーク層)を形成し、工具表面の材質劣化を防止して、切削性を改善するとしている。しかしながら、特許文献6に記載された技術では、CaO−Al2O3−SiO2系複合酸化物を不純物が少なく、かつ粒度を制限した粉末とする必要があり、不純物が少なく、かつ粒度を制限した粉末を使用しないと、粉体特性、焼結体特性が低下するという問題があった。
特開昭61−147801号公報 特開昭56−45964号公報 特許第3443911号公報 特開2002−155301号公報 特許第3073526号公報 特開平9−279204号公報
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、焼結体の機械的特性の劣化を生じることなく切削性を向上できる粉末冶金用鉄基混合粉を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、焼結体の機械的特性の劣化を生じることなく切削性を向上できる切削性改善用粉末について鋭意研究した。
まず、本発明者らは、MnとSを含むアトマイズ鉄粉により製造された焼結体の切削性があまり向上しない原因を鋭意検討した。従来、溶製材のS快削鋼においては、被削性向上のために、MnSの組成、とくに酸素含有量が、またMnSの形態が重要であり、AISI1200シリーズでは取鍋での酸素量の制御を行うとともに、凝固中にMnSの形態を丸くすることが知られている(例えば第96回西山記念講座、昭和59年2月16日、日本鉄鋼協会、p107)。
一方、水アトマイズ鉄粉ではアトマイズ中に水により表面が酸化されるため、アトマイズ粉末(仕上還元前)の平均酸素量は0.3%以上と高く、その後の仕上還元、焼結工程で種々の雰囲気に晒され、Mn、Sを含む介在物(ここではMnSと総称する)は酸化還元を受ける。MnSの酸素の含有の有無は、被削性に大きな関係があると考えられるが、MnSに含まれる酸素と被削性の関係に言及した文献はほとんど見当たらない。例えば特公平3−25481号公報では、MnSの組成、とりわけ酸素含有量についてはまったく検討されておらず、不可避的不純物として記載されているにすぎない。
そこで、本発明者らは、Mn、S等の組成を種々変化させたアトマイズ鉄粉を作製し、焼結体の切削性について調査した。その結果、適正量のMn、Sを含有し、あるいはさらにSiの適正量を含有したアトマイズ鉄粉中には、仕上還元後に、析出粒子数の5%以上が酸素を含有したMnS析出粒子となり、しかも5μm以下、ほとんどが1〜2μmの大きさで微細に分散して、その後の焼結工程を経ても十分な切削性を維持できることを見出した。
また、これらMnS析出粒子のSEM−EDX観察から、MnS析出粒子には、Mn、S以外に酸素、あるいはさらにSiの特性線のピークが観察された。EDX分析における測定範囲は電子線の広がりを考慮すると5μm程度なので、Siを含有する場合にはMnSに含有される酸素の一部は、SiO2の酸素であると考えられる。このことから、Siは、SiO2として、MnSの析出サイトとして機能し、微細なそして形状が球形のMnS粒子を均一に鉄粉粒子内に分散析出させるのに有効に機能しているものと推察された。
また、この微細な球形のMnS粒子は、焼結中にγ粒の成長に対しピンニング効果を発揮し、結果として焼結体の組織を微細化する。このため、Sが含まれない場合に比べ、強度の低下が認められないことも同時に見出した。
さらに本発明者らは、切屑を微細化する作用を有する微細なMnS粒子を鉄粉中に析出させることに加えてさらに、切削性改善用粉末としてリン酸カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイトを鉄粉に添加することにより、MnSのみが析出した鉄粉に比べて、機械的特性の劣化を伴うことなく、切削性が顕著に改善されることを知見した。この切削性向上の正確な機構については、現在までのところ明確になっていないが、本発明者らは、つぎのように考えている。
MnS析出粒子の作用は、切屑を微細化する、いわゆるチッピング効果であるといわれているが、このチッピング効果だけでは、工具表面が大気中で直接被削材と接触し摩擦により発熱するため、工具表面の酸化により工具の材質が劣化し、工具摩耗の顕著な低減、すなわち切削性の顕著な改善は得られない。微細なMnS析出粒子に加えて、リン酸カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイトを添加し、焼結体中にこれらを分散させることにより、微細なMnS析出粒子により切屑の微細化を促進するとともに、切削時に加工面に露出したリン酸カルシウム粉、ヒドロキシアパタイト粉が工具の表面に付着し工具保護膜を形成して、切削時の工具表面の変質を防止又は抑制し、工具寿命を顕著に改善するものと推察される。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明は、鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末と、さらに潤滑剤とを混合してなる鉄基混合粉であって、前記鉄基粉末を、質量%でS:0.04〜0.2%、Mn:0.05〜0.5%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ全MnS粒子数のうち5%以上の粒子は酸素を含有するMnS粒子として析出した組織を有するアトマイズ鉄粉とし、前記切削性改善用粉末はリン酸カルシウム粉および/またはヒドロキシアパタイト粉とし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し0.1〜2.0質量%を含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉であり、また本発明では、前記アトマイズ鉄粉が、前記組成に加えてさらに質量%で、Si:0.01〜0.1%を含有することが好ましく、また本発明では、前記リン酸カルシウム粉を、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウムおよびリン酸二水素カルシウムのうちから選ばれた1種または2種以上とすることが好ましく、また本発明では、前記切削性改善用粉末が、平均粒径:1〜20μmの粉末であることが好ましく、また本発明では、前記鉄基粉末の一部または全部が、前記合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材により表面に固着してなることが好ましい。
また、本発明では、前記潤滑剤を、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量100質量部に対し0.2〜1.5質量部含有することが好ましい。
また、本発明は、上記した粉末冶金用鉄基混合粉を、加圧成形し、さらに焼結してなる鉄基焼結体である。
本発明によれば、焼結体の機械的特性の劣化を伴うことなく、切削性を向上させることができ、切削加工を必要とする焼結部材の生産性を顕著に向上させ、産業上格段の効果を奏する。
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉は、鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末と、潤滑剤と、を混合してなる鉄基混合粉である。
本発明で使用する鉄基粉末は、質量%でS:0.04〜0.2%、Mn:0.05〜0.5%、あるいはさらにSi:0.01〜0.1%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ全MnS粒子数のうち5%以上の粒子が酸素を含有するMnS粒子として析出した組織を有するアトマイズ鉄粉とする。
アトマイズ鉄粉中の各成分の限定理由は次のとおりである。以下、組成における質量%は単に%と記す。
S:0.04〜0.2%
Sは、MnS析出粒子の源として含有する。S含有量が0.04%未満では、MnS析出量が少なく、切削性の向上が認められず、また同時にMnS析出粒子の焼結処理中にγ結晶粒成長に対するピンニング効果が現れず、組織が粗大化し、強度も低下する。一方、0.2%を超えて含有すると、効果が飽和し、更なる切削性の向上が認められないうえ、圧縮性が低下する。このため、鉄粉中のSは0.04〜0.2%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.15%である。
なお、本発明で使用するアトマイズ鉄粉用の溶鋼におけるS含有量は、0.05〜0.25%に限定することが好ましい。これは、仕上還元後のS含有量が0.04〜0.2%とするために、アトマイズ処理後の仕上還元により若干脱硫が行われることを考慮する必要があるためである。
Mn:0.05〜0.5%
Mnは、MnSのMn源として含有する。Mn含有量が、0.05%未満ではMnSの量が少なく、切削性の向上が認められない。一方、0.5%を超える含有は、圧縮性が低下する。このため、Mnは0.05〜0.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.4%である。
Si:0.01〜0.1%
Siは、MnSの析出サイトのSiO2源としてMnS粒子を均一、微細に分散させるため、必要に応じて含有できる。Si含有量が、0.01%未満ではMnSが焼結体内に均一に分散せず、切削性の顕著な向上が認められない。一方、0.1%を超える含有は、SiO2が単独で焼結体内に析出し切削性が低下する。このため、Siは0.01〜0.1%の範囲に限定することが好ましい。
本発明で使用するアトマイズ鉄粉では、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、O:0.30%以下、C:0.05%以下、N:0.01%以下、P:0.03%以下が許容できる。
上記した組成に加えてさらに、本発明で鉄基粉末として使用するアトマイズ鉄粉は、MnS粒子が析出した組織を有する。そして、MnS析出粒子は、仕上還元後で全MnS粒子数のうち5%以上の粒子が酸素を含有するものとする。これにより、切削性が顕著に改善される。酸素を含有するMnS析出粒子が5%未満では、球状析出物が減少するため、切削性の改善が認められない。
なお、アトマイズ鉄粉中に含まれる、全MnS粒子数のうち5%以上の粒子が酸素を含有するMnS粒子とするためには、アトマイズ処理時の溶鋼の酸素量を300massppm以下とし、仕上還元条件における水素雰囲気の露点を30℃以上とし、仕上還元温度を850℃以上とすることが好ましい。
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉は、切削性改善用粉末として、リン酸カルシウム粉および/またはヒドロキシアパタイト粉を含有する。
リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトは、焼結体中に分散し、切削時焼結体の加工面に露出し、切削時に工具表面に付着し、工具保護膜を形成するため、酸化等の工具の変質が防止または抑制され、工具寿命が格段に長寿命化する。なお、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトを含有しても、焼結時に鉄基粉末と反応することなく、焼結体の機械的特性の劣化はほとんど認められない。
また、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトは、単独含有でも複合して含有してもいずれでもよい。複合して含有することにより、単独含有の場合より効果がより顕著となる。
リン酸カルシウムには、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)、リン酸一水素カルシウム(CaHPO4あるいはCaHPO4・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2あるいはCa(H2PO4)2・H2O))があるが、本発明ではいずれも好適に使用できる。なかでもリン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)とリン酸一水素カルシウム(CaHPO4あるいはCaHPO4・2H2O)を用いるのが好ましい。
また、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)は、リン酸カルシウムと同様な作用を有し、単独またはリン酸カルシウムと複合して使用できる。複合して使用すれば、単独使用と同様またはそれ以上の効果を有する。
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉では、含有させる切削性改善用粉末は合計で、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し質量%で0.1〜2.0%とする。切削性改善用粉末の合計の含有量が、0.1質量%未満では、切削性の顕著な向上が認められない。一方、2.0質量%を超えると、圧縮性の低下、圧壊強さの低下が顕著となり好ましくない。このようなことから、切削性改善用粉末の含有量は合計で、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し質量%で0.1〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対し0.5〜1.5質量%である。なお、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)を単独で用いた場合には、含有量は0.1〜0.6質量%の範囲とすることが好ましい。
また、切削性改善用粉末の最大粒径は、180μm以下とするのが、混合粉の均一化の観点から好ましい。なお、より好ましくは1〜100μmである。なお、本発明では粒径はレーザを用いたマイクロトラック法で測定した平均粒径(体積基準の積算分率で50%)を用いるものとする。
また、鉄基混合粉に含有される合金用粉末としては、黒鉛粉、銅粉等が例示でき、所望の製品特性に応じ選定し所定量含有することが好ましい。
また、本発明の鉄基混合粉に含有される潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸、あるいはワックス等が好ましい。なお、潤滑剤の配合量は、とくに限定されないが、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量100質量部に対し0.2〜1.5質量部とするのが好ましい。潤滑剤の配合量が0.2質量部未満では、金型との摩擦が著しく増加し抜出力が増大するため金型寿命が低下する。一方、1.5質量部を超えると、成形体密度の低下が著しくなり、焼結体密度が低下する。
つぎに、本発明の鉄基混合粉の好ましい製造方法について説明する。
本発明の鉄基混合粉は、上記した鉄基粉末に、上記した合金用粉末、切削性改善用粉末、さらに潤滑剤を所定量配合して、Vブレンダ、ダブルコーンブレンダ等の通常公知の混合機を用いて一度に、あるいは二回以上に分けて混合し鉄基混合粉とすることが好ましい。なお、鉄基粉末の一部または全部を、合金用粉末および/または切削性改善用粉末が結合材により表面に固着させる偏析防止処理を施した鉄基粉末としてもよい。このような鉄基粉末を用いることにより、より偏析が少なく、流動性に優れた鉄基混合粉とすることができる。
偏析防止処理としては、例えば、特許第3004800号公報に示される方法を用いることができる。すなわち、鉄基粉末に、合金用粉末および/または切削性改善用粉末を、結合材の作用を有する特定の有機化合物とともに混合し、ついで少なくとも該特定の有機化合物の融点のうちの最低値+10℃以上に加熱して、該有機化合物のうちの1種を溶融させたのち冷却固化して、合金用粉末および/または切削性改善用粉末を鉄基粉末の表面に固着させる方法が好ましい。
結合材としての特定の有機化合物としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ワックスが好ましい。高級脂肪酸もしくは高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドの溶融混合物、等が例示できる。
なお、本発明では、結合材の含有量は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100質量部に対し0.05〜2.0質量部とすることが好ましい。0.05質量部未満では、合金用粉末の偏析防止効果が認められない。一方、2.0質量部を超えて含有すると、鉄基混合粉の充填性が低下するし、成形体の密度が低下する。
なお、本発明の鉄基混合粉は、上記した製造方法に限定されるものではないことは言うまでもない。
また、本発明の鉄基混合粉は、一般の粉末冶金における工法を適用し、機械部品の製造に供することができる。具体的には、本発明の鉄基混合粉を、金型に充填し圧縮成形したのち、必要に応じサイジング等の処理を施して、焼結処理を施し焼結体とする。焼結体にさらに、浸炭焼入れ、光輝焼入れ、高周波焼入れ等の熱処理を施し、製品とする。なお、切削加工等の加工を随時施し、所望の寸法の製品とすることは言うまでもない。
高周波溶解炉で所定量のMn、S、Siを含有する溶湯を溶製し、これら溶湯を水アトマイズ処理して、アトマイズ生粉とした。ついで、これらアトマイズ生粉に、窒素雰囲気中で140℃×60minの乾燥処理を施し、ついで、露点60℃の水素雰囲気中で900℃×2hの仕上還元処理を施したのち、粉砕、分級して、表1に示す組成の鉄基粉末とした。
これら鉄基粉末に含まれるMnとSを含む介在物(MnS析出粒子という)について、酸素の有無を調査した。仕上還元後のこれら鉄基粉末を樹脂に埋込み、研磨したのち、EPMA分析にて粒子断面のMn、S、Oを分析しマッピング像としたのち、画像処理により各元素のマッピング像を重ね合わせて、各MnS粒子について酸素含有の有無を判定した。測定したMnS粒子数は300個とした。測定した全MnS粒子に占める酸素を含有するMnS粒子の比率(%)を表1に併記した。
Figure 2006348335
上記した鉄基粉末100kgに、合金用粉末として表2に示す添加量の黒鉛粉末(平均粒径4μm)、あるいは電解銅粉(平均粒径35μm)と、切削性改善用粉末とを潤滑剤とともに配合し、Vブレンダに装入し、均一混合して、鉄基混合粉とした。合金用粉末および切削性改善用粉末の配合量は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対する質量%とした。なお、潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛(平均粒径:20μm)とし、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100重量部に対し表2に示す量(重量部)とした。なお、鉄基粉末として、一部の鉄基混合粉では、アトマイズ純鉄粉(商品名:JFEスチールJIP301A)、との混合粉を使用した。また、一部の鉄基混合粉では、比較例として切削性改善用粉末の配合を行わなかった。
これら鉄基混合粉を金型に挿入し、圧縮成形し、成形体(リング状試験片AおよびB)とした。なお、成形密度は6.6Mg/m一定とした。密度測定はアルキメデス法を用いた。
リング状試験片A(外径35mmφ×内径14mmφ×高さ10mm)は、圧壊試験用とし、リング状試験片B(外径60mmφ×内径20mmφ×高さ25mm)は、旋削試験用とした。
ついで、これら成形体をRXガス(32vol%H−24vol%CO−0.3vol%CO−残部N)雰囲気中でメッシュベルト炉を使用し、1130℃×20minで焼結し焼結体とした。得られた焼結体について、圧壊試験、旋削試験を実施した。
圧壊試験は、リング状試験片Aを用いて、JIS Z2507の規定に準拠して実施し、圧壊強さ(N/mm2)を求めた。
また、旋削試験は、リング状試験片Bの焼結体を3個重ねて長さ75mmの円筒状とし、この側面を超硬性チップ(三菱マテリアル社製:HTi05T,ノーズ半径0.4mm)を用いて切削し、横逃げ面の磨耗深さが0.5mmに達するまでに旋削した距離を用いて焼結体の切削性を評価した。旋削条件は、切削速度92m/min、送り量0.03mm/rev、切込深さ0.89mmとした。なお、横逃げ面の磨耗形態を模式的に図1に示す。なお、10000m施削後に、一旦試験を中断して、試験片の切削面を接触式表面粗さ計を用いて、JIS B 0601−2001の規定に準拠して、試験片切削面の表面粗さRzを測定した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2006348335
本発明例はいずれも、焼結体の圧壊強さが400MPa以上確保され、また工具寿命までの旋削距離が9000mを超えて長く、切削性に優れた焼結体となっており、鉄基混合粉として優れた特性を有する鉄基混合粉である。また、本発明例は、切削後の表面粗さRzが低減し、仕上加工の平坦度が改善されている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、工具寿命までの切削距離が9000m以下と短く、切削性が低下し、さらに仕上加工面粗度が増大し、加工面の平坦度が低下している。
切削工具横逃げ面の摩耗形態を模式的に示す説明図である。

Claims (5)

  1. 鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末と、さらに潤滑剤とを混合してなる鉄基混合粉であって、前記鉄基粉末を、質量%でS:0.04〜0.2%、Mn:0.05〜0.5%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ全MnS粒子数のうち5%以上の粒子は酸素を含有するMnS粒子として析出した組織を有するアトマイズ鉄粉とし、前記切削性改善用粉末はリン酸カルシウム粉および/またはヒドロキシアパタイト粉とし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し0.1〜2.0質量%を含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
  2. 前記アトマイズ鉄粉が、前記組成に加えてさらに質量%で、Si:0.01〜0.1%を含有することを特徴とする請求項1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
  3. 前記リン酸カルシウム粉を、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウムおよびリン酸二水素カルシウムのうちから選ばれた1種または2種以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
  4. 前記切削性改善用粉末が、平均粒径:1〜20μmの粉末であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
  5. 前記鉄基粉末の一部または全部が、前記合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材により表面に固着してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
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