JPWO2009069685A1 - 自立膜型電解質・電極接合体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、自立膜型電解質・電極接合体(ESC)(10)に関する。このESC(10)は、電解質(12)と、該電解質(12)の各端面に形成されたアノード側電極(14)及びカソード側電極(16)とを備える。電解質(12)は、酸化物イオンが移動する面もしくは方向を有する単結晶であるか、又は、酸化物イオンが移動する面もしくは方向に配向された多結晶からなり、且つ前記面又は前記方向が厚み方向に沿うように形成される。電解質(12)の厚みは50〜800μmに設定され、且つアノード側電極(14)及びカソード側電極(16)の合計厚みは、該合計厚みを電解質(12)の厚みで除して求められる値が0.1以下となるように設定される。さらに、ESC(10)としての厚みは1mm以下である。

Description

本発明は、アノード側電極及びカソード側電極の双方で電解質を挟むようにして形成され、且つ電解質の厚みがアノード側電極及びカソード側電極に比して大きな自立膜型電解質・電極接合体に関する。
燃料電池や酸素センサ、酸素負荷膜装置等は、酸化物イオンを伝導可能な電解質の各端面にアノード側電極及びカソード側電極が形成された電解質・電極接合体を有する。このように構成された電解質・電極接合体において、カソード側電極で酸素が電離することに伴って生成した酸化物イオンは、電解質を経由してアノード側電極に移動する。
上記した酸化物イオンの移動は、比較的高温域で一層活発となる。従って、前記電解質・電極接合体を具備する燃料電池等を運転するためには、そのような温度まで昇温する必要がある。このため、電力が必要なときに即座に燃料電池から電力を取り出すことができない。
そこで、近年、比較的低温であっても優れた酸化物イオン伝導度を示す物質を電解質として採用することが提案されている。具体的には、スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、サマリウムドープセリア(SDC)等の蛍石型酸化物や、ランタンガレート(LaSrGaMgO)をはじめとするペロブスカイト型酸化物等である。また、本出願人は、アパタイト型複合酸化物からなる電解質を具備する電解質・電極接合体を提案している(例えば、特許文献1参照)。
この種の電解質における酸化物イオン伝導度や導電率をさらに向上させるためには、該電解質の厚みを可及的に小さくすることが想起される。すなわち、この場合、酸化物イオンの移動距離が短くなると同時にオーム損が小さくなるからである。
ところで、電解質を最初に作製し、次に、該電解質の各端面にアノード側電極及びカソード側電極をそれぞれ形成する、いわゆる自立膜型電解質・電極接合体では、特許文献2に示されるように、電解質の厚みが最も大きい。このため、電解質の厚みを小さくした上に両電極の厚みを過度に小さくすると、電解質・電極接合体としては、強度に乏しいものとなる。従って、電解質の厚みを小さくする場合、両電極の厚みを比較的大きくすることで強度を確保するようにしている。
特開2005−149795号公報 特開平9−190825号公報
しかしながら、強度を確保するべく電極の厚みを過度に大きく設定すると、例えば、燃料電池を構成した場合、該電極において反応ガスが拡散することが容易でなくなる。その他、燃料電池を昇温・降温する際に、電解質と電極との熱膨張係数の不整合に起因して電解質に亀裂が生じる懸念がある。勿論、以上のような事態が生じると、該燃料電池の発電性能が低下するという不具合を招く。
本発明の一般的な目的は、十分な強度を有する自立膜型電解質・電極接合体を提供することにある。
本発明の主たる目的は、電極において反応ガスが容易に拡散し得る自立膜型電解質・電極接合体を提供することにある。
本発明の一実施形態によれば、電解質の各端面にアノード側電極及びカソード側電極がそれぞれ形成され、且つ前記電解質の厚みが最大である自立膜型電解質・電極接合体であって、
前記電解質は、酸化物イオンが移動する面もしくは方向を有する単結晶であるか、又は、酸化物イオンが移動する面もしくは方向に配向された多結晶からなり、且つ前記面又は前記方向が厚み方向に沿うように形成されるとともに、その厚みが50〜800μmに設定され、
前記アノード側電極及び前記カソード側電極の合計厚みを前記電解質の厚みで除して求められる電極厚みに対する電解質厚みの比が0.1以下であり、
且つ前記アノード側電極、前記電解質及び前記カソード側電極の合計厚みが1mm以下である自立膜型電解質・電極接合体が提供される。
電解質の厚み、両電極の合計厚み、及び自立膜型電解質・電極接合体の厚みを上記のように設定することにより、十分な強度を確保することができる。しかも、両電極の厚みが比較的小さいので、例えば、燃料電池を構成した場合、各電極における反応ガスの拡散が不十分となることが回避される。
その上、本発明においては、電解質の材質として酸化物イオン伝導に異方性を有する物質を用いるとともに、酸化物イオンが移動する面もしくは方向を厚み方向に設定するようにしているので、酸化物イオンは、カソード側電極からアノード側電極に向かって比較的容易に移動することができる。換言すれば、この電解質は内部抵抗が小さく、比較的低温であっても大きな伝導度を示す。
以上のような理由から、この自立膜型電解質・電極接合体を用いて燃料電池を構成した場合、優れた発電性能が発現する。
結局、上記のように、電解質の厚み、両電極の合計厚み、及び自立膜型電解質・電極接合体としての厚みを所定の範囲内に設定することにより、十分な強度を確保することができるとともに、比較的低温域においても優れた酸化物イオン伝導を示す自立膜型電解質・電極接合体を得ることができる。
例えば、このような自立膜型電解質・電極接合体を用いて燃料電池を構成した場合、該自立膜型電解質・電極接合体が損傷し難いので長期間にわたって安定して発電させることができ、しかも、比較的低温であっても十分な発電特性を得ることができる。
なお、上記のような特性を示す電解質の材質としては、アパタイト型複合酸化物が特に好適である。すなわち、アパタイト型複合酸化物は酸化物イオン伝導の異方性が大きいので、酸化物イオン伝導度が大きい面又は方向を厚み方向として自立膜型電解質・電極接合体を構成することにより、カソード側電極からアノード側電極への酸化物イオンの移動を一層容易とすることができる。これにより、電解質が、その内部抵抗が一層低減したものとなるので、例えば、燃料電池を構成した際、発電特性が一層向上する。
一方、アノード側電極の好適な材質としては金属と酸化物セラミックスとの複合材を挙げることができ、カソード側電極の好適な材質としてはペロブスカイト型化合物、蛍石型化合物又はアパタイト型化合物のいずれか1種を挙げることができる。
また、電解質とアノード側電極との間、又は電解質とカソード側電極との間の少なくともいずれか一方に、酸化物イオン伝導が等方性を示し且つ電解質に比して伝導性が低い中間層を介在することが好ましい。これにより、電解質とアノード側電極との間、又は電解質とカソード側電極との間で授受される酸化物イオンの個数が増加するので、界面抵抗、ひいては自立膜型電解質・電極接合体の内部抵抗が一層低減するからである。
なお、中間層を介装する場合も、自立膜型電解質・電極接合体の全体厚みは1mm以下に設定される。換言すれば、アノード側電極、電解質、カソード側電極及び中間層の合計厚みは、1mm以下である。
上記したような特性を示す中間層の好適な材質としては、蛍石型化合物を挙げることができる。
いずれの場合においても、電解質は、700℃において、厚み方向に沿う伝導度が0.05S/cm2以上を示すものであることが好ましい。このような比較的低温域で十分な伝導度を示すものであると、例えば、比較的低温域で十分な発電特性を示す燃料電池を構成することが可能となる。従って、燃料電池から電力を取り出すことが可能となるまでの時間が短縮される。
本実施の形態に係る自立膜型電解質・電極接合体の全体概略縦断面図である。 LaXSi61.5X+12の単位格子のc軸方向からの構造図である。 図1の自立膜型電解質・電極接合体を具備する燃料電池の単位セルの概略縦断面図である。 図1の電解質・電極接合体を模式的に示した模式構造説明図である。 実施例1及び比較例1の各単位セルにおける電流密度と電圧との関係を示すグラフである。 実施例1及び比較例1の各単位セルにおける両電極や電解質の材質、厚み、出力等を示す図表である。 実施例2、3の各単位セルにおける両電極や電解質の材質、厚み、出力等を示す図表である。 実施例4〜14及び比較例2、3の各単位セルにおける両電極や電解質の材質、厚み、出力等を示す図表である。
以下、本発明に係る自立膜型電解質・電極接合体につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る自立膜型電解質・電極接合体(以下、ESCとも表記する)10の全体概略縦断面図である。このESC10は、電解質12の各端面にアノード側電極14及びカソード側電極16がそれぞれ形成されることによって構成されている。なお、カソード側電極16と電解質12との間には、中間層18が介装されている。
この場合、電解質12は、アパタイト型複合酸化物からなる単結晶である。この単結晶は、例えば、チョクラルスキー法等の公知の単結晶製造方法によって作成することができる。
ここで、アパタイト型複合酸化物として、その組成がLaXSi61.5X+12(ただし、8≦X≦10。以下同じ)で表されるランタンとシリコンとの複合酸化物を例示し、その単位格子の構造につき説明する。
LaXSi61.5X+12の単位格子の構造を、視点をc軸方向として図2に示す。この単位格子20は、6個のSiO4四面体22と、2aサイトを占有するO2-24と、4fサイトまたは6hサイトをそれぞれ占有するLa3+26a、26bとを含むアパタイト型構造である。なお、SiO4四面体22におけるSi4+およびO2-は図示していない。
この単位格子20は、六方晶系に属する。すなわち、図2において、単位格子20のa軸方向の辺ABとc軸方向の辺BFとが互いに交わる角度α、b軸方向の辺BCと辺BFとが互いに交わる角度β、辺ABと辺BCとが交わる角度γは、それぞれ、90°、90°、120゜である。そして、辺ABと辺BCとは互いに長さが等しく、且つこれら辺AB、BCの長さは辺BFと異なる。
このようなアパタイト型構造であるLaXSi61.5X+12が酸化物イオン導電体となる理由は、2aサイトを占有するO2-24がSiO4四面体22またはLa3+26aとの結合に関与していないためであると考えられる。O2-24に作用する力は強力ではなく、従って、O2-24は2aサイトに束縛されることなくc軸方向に沿って比較的自由に移動することができるからである。
すなわち、電解質12を構成する各結晶内では、酸化物イオンは、c軸方向に沿って移動する。このため、酸化物イオン伝導度は、c軸に沿う方向で大きくなり、a軸やb軸に沿う方向では小さくなる。換言すれば、酸化物イオン伝導に異方性が生じる。
本実施の形態においては、図1に矢印Cとして示すように、c軸方向が電解質12の厚み方向とされている。すなわち、アノード側電極14及びカソード側電極16は、電解質12において酸化物イオン伝導度が最も高くなる方向に対して垂直に配設されており、従って、酸化物イオンは、カソード側電極16からアノード側電極14へ速やかに移動することができる。
このように構成された電解質12の厚みは、50〜800μmの間に設定される。50μm未満ではアノード側電極14及びカソード側電極16を設ける際に強度が十分でなくなる。このため、電解質12が破損し易くなるので、ESC10を作製することが容易ではない。また、800μmを超えると、酸化物イオンが移動し難くなるとともにオーム損が増加する。従って、ESC10としては、発電特性が十分でないものとなる。なお、電解質12の厚みは100μm以上であることが好ましい。
さらに、電解質12は、直流4端子法による700℃における伝導度が0.05S/cm2以上を示すものであることが好ましい。なお、0.1S/cm2を示すものであることがより好ましく、0.3S/cm2を示すものであることが一層好ましい。勿論、以上の伝導度は、c軸方向、すなわち、電解質12の厚み方向(図1中の矢印C)でのものである。
電解質12が、比較的低温である700℃における伝導度がこのように大きいものであると、例えば、ESC10を組み込んだ燃料電池は、比較的低温であっても、発電特性に優れたものとなる。従って、該燃料電池を運転温度まで上昇させる時間が著しく短縮される。
アノード側電極14は、この場合、金属であるNiと、酸化物セラミックスであるSDCとが共焼結された複合材、すなわち、いわゆるNi−SDCサーメットからなる。なお、Niに代替してPt、Pt/Co、Ni/Co、Pt/Rdを採用したサーメットであってもよい。また、アノード側電極14は、上記したような金属のみからなるものであってもよい。
一方、カソード側電極16は、アノード側電極14と同様の材質で構成されたものであってもよいが、LaSrCoFeO、BaSrCoFeO、SmSrCoO等の酸化物セラミックスから構成されたものが一層好適である。又は、これらの酸化物セラミックスと上記したような金属とのサーメットからなるものであってもよい。
アノード側電極14とカソード側電極16の合計厚みは、該合計厚みを電解質12の厚みで除して求められる比(電解質厚み/電極厚み比)が0.1以下となるように設定される。すなわち、例えば、電解質12の厚みが50μm又は100μmのいずれかである場合、アノード側電極14とカソード側電極16の合計厚みは、それぞれ、5μm以下又は10μm以下となるように設定される。
アノード側電極14とカソード側電極16の合計厚みをこのように設定することにより、例えば、両電極14、16において、反応ガスが拡散することが困難となることを回避することができる。
中間層18は、好適には蛍石型酸化物からなり、その具体例としては、SDC、Y23ドープCeO2(YDC)、Gd23ドープCeO2(GDC)、La23ドープCeO2(LDC)が挙げられる。これらの酸化物は、酸化物イオン伝導について等方性を示す。従って、中間層18においては、厚み方向(図1におけるC方向)及び縦方向(図1におけるX方向)の双方で酸化物イオン伝導度が略同等である。また、中間層18における酸化物イオン伝導度は、電解質12の厚み方向に比して小さい。
後述するように、この中間層18が存在することにより、カソード側電極16から電解質12へ移動する酸化物イオンの個数を増加させることができ、結局、酸化物イオン伝導性を向上させることができる。
なお、SDC、YDC、GDC等は、酸化物イオン伝導と電子伝導の双方が生じる混同伝導体である。このような混合伝導体は、上記したようにカソード側電極16からアノード側電極14への速やかな酸化物イオン伝導に寄与する他、カソード側電極16における酸素の電離反応と、アノード側電極14における酸化物イオンと水素との結合に伴う水と電子との生成反応を促進する。すなわち、電極反応が促進され、燃料電池の発電性能を一層向上させる。
中間層18の厚みは、電解質12の厚みの1/1000程度とすればよい。
ESC10全体の厚みは、強度が確保される程度であればよく、具体的には、最大で1mmで十分である。1mmを超える厚みであると、ESC10としては体積が大きいものとなり、体積当たりのエネルギ効率が低下することになる。
ESC10の厚みは小さいほど好ましいが、上記したように、電解質12の厚みが50μmであるために、これを下回ることはない。なお、ESC10としての十分な強度を確保するためには、ESC10の厚みを100μm以上とすることが好ましく、200μm以上とすることがより好ましい。また、強度を確保する一方で高い酸化物イオン伝導度を得るべく、ESC10の厚みを200〜600μmとすることが最も好ましい。
燃料電池の単位セルを構成する場合、図3に示すように、上記のように構成されたESC10が1対のセパレータ30a、30bの間に介装される。また、該セパレータ30a、30bの外側には集電用電極32a、32bがそれぞれ配置され、さらに該集電用電極32a、32bの外側にはエンドプレート34a、34bがそれぞれ配置される。これらエンドプレート34a、34b同士が図示しないボルトで互いに連結されてESC10、セパレータ30a、30b及び集電用電極32a、32bがエンドプレート34a、34bで挟持され、これにより単位セル36が構成されている。なお、セパレータ30a、30bには、燃料ガス又は酸素含有ガスをアノード側電極14又はカソード側電極16に供給するためのガス流路38a、38bがそれぞれ形成されている。
この単位セル36は、500〜800℃程度の中温度域、好ましくは700℃に昇温された後に運転される。すなわち、セパレータ30bに設けられたガス流路38bに酸素を含有する酸素含有ガスを流通させ、その一方で、セパレータ30aに設けられたガス流路38aに水素を含有する燃料ガスを流通させる。
酸素含有ガス中の酸素は、カソード側電極16において電子と結合し、酸化物イオン(O2-)を生成する。生成した酸化物イオンは、カソード側電極16から電解質12側へ移動する。
ここで、中間層18を設けたESC10を模式的に図4に示す。この図4に示すように、酸化物イオンは、カソード側電極16から中間層18に移動し、該中間層18の内部をランダムに移動して、電解質12が該中間層18と接触する部位に向かう。上記したように、中間層18は、SDCやYDC、GDC等、酸化物イオン伝導が等方性を示す物質からなるからである。このため、中間層18中を直進移動した酸化物イオンのみならず、斜行移動した酸化物イオンが電解質12に入り込む。すなわち、電解質12に入り込む酸化物イオンの個数が著しく増加する。
以上のように、カソード側電極16と電解質12の間に中間層18が介装されることにより、カソード側電極16から電解質12へ移動できる酸化物イオンの個数が多くなり、その結果、酸化物イオン伝導性が向上する。しかも、この場合、電解質12とカソード側電極16との間の界面抵抗が小さくなるので、過電圧が小さくなる。
酸化物イオンは、さらに、電解質12内をアノード側電極14側に向かって移動する。ここで、電解質12は、その厚み方向(矢印C方向)、すなわち、酸化物イオンが最も容易に移動し得る方向がアノード側電極14に向かっている。このため、酸化物イオンの速やかな移動が起こる。
このように、酸化物イオン伝導に異方性を示す物質(例えば、アパタイト型複合酸化物)を電解質12として用い、且つ酸化物イオンが伝導する面又は方向を厚み方向とすることによって、酸化物イオン伝導度を大きくすることができる。この電解質12では、比較的低温であっても酸化物イオンが移動し易いので、単位セル36は、比較的低温で十分な発電特性を示す。
また、電解質12の酸化物イオン伝導度が大きいので、強度を確保するために電解質12を若干大きくしても酸化物イオン伝導を妨げることが回避される。しかも、これにより両電極14、16の厚みを小さくすることができるので、両電極14、16における反応ガスの拡散の容易さを維持することもできる。
以上のような理由から、優れた発電性能を示す単位セル36(燃料電池)を得ることができる。
酸化物イオンは、最終的にアノード側電極14に到達し、該アノード側電極14に供給された燃料ガス中の水素と結合する。その結果、水及び電子が放出される。放出された電子は、集電用電極32a、32bに電気的に接続された外部回路に取り出され、該外部回路を付勢するための直流の電気エネルギとして利用された後、カソード側電極16へと至り、該カソード側電極16に供給された酸素と結合する。
以上の反応機構において、中間層18が混合伝導体であるSDCやYDC、GDC等からなるので、カソード側電極16における電離反応と、アノード側電極14における水生成反応とが促進される。このため、単位セル36は、一層優れた発電性能を示す。
ESC10は、以下のようにして作製することができる。先ず、電解質12となるLaXSi61.5X+12等のアパタイト型酸化物の単結晶を、結晶成長方向をc軸方向に配向させて成長させることによって得る。このように配向させるには、例えば、特開平11−130595号公報に記載された方法を採用すればよい。
次に、得られた単結晶のc軸方向に対して垂直に交わる一端面にペースト状のSDC、YDC又はGDC等を塗付する。塗付方法としては、スクリーン印刷法等の公知方法を採用することができる。その後、塗付したペーストを焼き付けることにより、中間層18が形成される。
次に、電解質12の他端面に対してペースト状Ni−SDCを塗付する。塗付方法としては、上記と同様、スクリーン印刷法等を採用すればよい。このペーストを焼き付けることにより、Ni−SDCからなるアノード側電極14が形成される。
次に、中間層18の露呈した一端面に対してペースト状のペロブスカイト型化合物、蛍石型化合物又はアパタイト型化合物をスクリーン印刷法等によって塗付する。このペーストを焼き付ければ、カソード側電極16が形成される。
アノード側電極14、カソード側電極16及び中間層18は、気相法によって作製するようにしてもよい。気相法の好適な例としては、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法等が挙げられる。
以上のようにして、Ni−SDCからなるアノード側電極14、c軸方向を厚み方向とするLaXSi61.5X+12等の単結晶からなる電解質12、SDC、YDC又はGDC等からなる中間層18、ペロブスカイト型化合物、蛍石型化合物又はアパタイト型化合物からなるカソード側電極16を有するESC10(図1参照)が得られるに至る。
なお、上記した実施の形態においては、中間層18を、カソード側電極16と電解質12との間にのみ介装するようにしているが、アノード側電極14と電解質12との間にのみ介装するようにしてもよいし、カソード側電極16と電解質12との間、アノード側電極14と電解質12との間の双方に介装するようにしてもよい。
また、電解質12は、LaXSi61.5X+12からなるものに特に限定されるものではなく、酸化物イオン伝導が異方性を示す物質であれば、例えば、LaXGe61.5X+12(ただし、8≦X≦10)等のその他のアパタイト型酸化物であってもよいし、層状化合物でもある一連のBIMEVOX化合物であってもよい。
さらに、電解質12は、単結晶からなるものに特に限定されるものではなく、各粉末の結晶をc軸方向に配向させた焼結体からなるものであってもよい。このような焼結体は、例えば、アパタイト化合物の粉末を溶媒に添加してスラリーとした後、10T(テスラ)程度の強磁場の存在下で該スラリーを固化させた成形体とし、さらに、該成形体を焼結することによって得ることができる。
同様に、中間層18は、SDC、YDC又はGDCからなるものに特に限定されるものではなく、酸化物イオン伝導が等方性を示す物質であれば、その他の蛍石型酸化物であってもよいし、ペロブスカイト型酸化物であってもよい。
このESC10から単位セル36を構成するには、さらに、アノード側電極14及びカソード側電極16の各一端面にセパレータ30a、30b、集電用電極32a、32b及びエンドプレート34a、34bを配置すればよい。
c軸方向に配向したLa9.33Si626(アパタイト化合物)の単結晶を、チョクラルスキー法によって作製した。この単結晶に対して鏡面研磨加工を施し、c軸方向に沿う方向(厚み方向)の寸法が300μm、直径が30mmのディスク形状体とした。次に、スパッタリングを行うことによって、厚み200nmのSDC層をディスク形状体の両端面に形成し、その後、大気中にて1350℃で2時間保持することで熱処理を施した。
次に、一方のSDC(Sm0.2Ce0.81.9)層の端面にNi−SDCのペーストをスクリーン印刷によって塗布した後、大気中にて1350℃で4時間保持することで熱処理を施し、Ni−SDC(Sm0.2Ce0.81.9)層を形成した。なお、前記ペーストにおけるNiとSDCの割合は、重量比で50:50とした。
次に、残余のSDC層の端面にBa0.5Sr0.5Co0.8Fe0.23のペーストをスクリーン印刷によって塗布した後、大気中にて800℃で4時間保持することで熱処理を施し、Ba0.5Sr0.5Co0.8Fe0.23層を形成した。
以上により、La9.33Si626を電解質、Ni−SDC層をアノード側電極、Ba0.5Sr0.5Co0.8Fe0.23層をカソード側電極とし、且つ電解質とアノード側電極との間、電解質とカソード側電極との間にSDC層からなる中間層がそれぞれ介装されたESCを得た。これを実施例1とする。この実施例1のESCにおいて、アノード側電極及びカソード側電極の各厚みは、ともに5μm以下であった。
実施例1のESCを用いて燃料電池の単位セルを構成し、アノード側電極にH2を流量20cc/分で供給するとともに、カソード側電極に圧縮エアを流量100cc/分で供給して発電させた。600℃、700℃における電流密度と電圧との関係を、グラフにして図5に示すとともに、図表として図6に示す。
これら図5及び図6には、比較のため、市販の電解質・電極接合体を用いて構成された単位セル(比較例1)の700℃における電流密度と電圧との関係が併せて示されている。なお、この市販品は、電解質の厚みが5μm、電解質・電極接合体全体としての厚みが約400μmのものである。
これら図5及び図6から、電流密度が同一であるとき、実施例1の単位セルは、比較例1の単位セルに比して低温であっても電圧や出力等が高いこと、換言すれば、発電特性に優れていることが明らかである。
また、La0.6Sr0.4Co0.80.23(LSCF)のペーストを用い、1000℃で4時間の焼成処理を施した以外は実施例1と同様にして、LSCFからなるカソード側電極を具備するESCを作製した。これを実施例2とする。
さらに、Agのペーストを用い、800℃で4時間の焼成処理を施したことを除いては実施例1、2と同様にして、Agからなるカソード側電極を具備するESCを作製した。これを実施例3とする。
以上の実施例2、3のESCについても、燃料電池の単位セルを構成してアノード側電極にH2を流量20cc/分で供給する一方、カソード側電極に圧縮エアを流量100cc/分で供給して発電させ、600℃、700℃における出力を測定した。結果を図表として図7に示す。この図7から、実施例2、3においても十分な出力が得られていることが分かる。
さらに、c軸方向に配向したLa9.33Si626の単結晶に対して鏡面研磨加工を施し、c軸方向に沿う方向(厚み方向)の寸法が300μm、直径が17mmのディスク形状体とした。次に、スパッタリングを行うことによって、厚み200nmのSDC層をディスク形状体の両端面に形成し、その後、大気中にて1350℃で2時間保持することで熱処理を施した。
次に、スパッタリングを行うことによって、両方のSDC層にPt層を形成し、これにより、La9.33Si626を電解質、Pt層をアノード側電極、カソード側電極とし、且つ電解質とアノード側電極との間、電解質とカソード側電極との間にSDC層からなる中間層がそれぞれ介装されたESCを得た。これを実施例4とする。
また、図8に示すように、アノード側電極の材質をPt−SDCとしたESCや、中間層の材質をGDC又はLDCとしたESC、カソード側電極の材質をPt−SDC又はLSCFとしたESC、カソード側電極と電解質との間にのみ中間層を設けたESC等を作製した。各々を実施例4〜14とする。
なお、図7中の「50%Pt−SDC」は、Ptの割合が50重量%であることを示す。「75%Pt−SDC」、「85%Pt−SDC」も同様に、Ptの割合が75重量%、85重量%であることを意味する。また、電極の材質がPt−SDC又はLSCFである場合、電極の形成後に500℃で1時間の熱処理を行った。
比較のため、中間層を具備しないESC、及び厚み5μmのYSZからなる電解質を具備するESCを作製した。各々を比較例2、3とする。
以上の実施例4〜14及び比較例2、3のESCについても、燃料電池の単位セルを構成してアノード側電極にH2を流量20cc/分で供給するとともに、カソード側電極に圧縮エアを流量100cc/分で供給して発電させ、500℃における出力を測定した。結果を図8に併せて示す。この図8から、酸化物イオン伝導に優れた電解質を用いるとともに、該電解質と電極の間に中間層を介在させることにより、電解質の厚みが大きい場合であっても発電特性に優れる燃料電池が得られることが明らかである。

Claims (7)

  1. 電解質(12)の各端面にアノード側電極(14)及びカソード側電極がそれぞれ形成され、且つ前記電解質(12)の厚みが最大である自立膜型電解質・電極接合体(10)であって、
    前記電解質(12)は、酸化物イオンが移動する面もしくは方向を有する単結晶であるか、又は、酸化物イオンが移動する面もしくは方向に配向された多結晶からなり、且つ前記面又は前記方向が厚み方向に沿うように形成されるとともに、その厚みが50〜800μmに設定され、
    前記アノード側電極(14)及び前記カソード側電極(16)の合計厚みを前記電解質(12)の厚みで除して求められる電極厚みに対する電解質厚みの比が0.1以下であり、
    且つ前記アノード側電極(14)、前記電解質(12)及び前記カソード側電極(16)の合計厚みが1mm以下であることを特徴とする自立膜型電解質・電極接合体(10)。
  2. 請求項1記載の接合体(10)において、前記電解質(12)がアパタイト型複合酸化物からなることを特徴とする自立膜型電解質・電極接合体(10)。
  3. 請求項1又は2記載の接合体(10)において、前記アノード側電極(14)が金属と酸化物セラミックスとの複合材からなることを特徴とする自立膜型電解質・電極接合体(10)。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合体(10)において、前記カソード側電極(16)がペロブスカイト型化合物、蛍石型化合物又はアパタイト型化合物のいずれか1種からなることを特徴とする自立膜型電解質・電極接合体(10)。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合体(10)において、前記電解質(12)と、前記アノード側電極(14)又は前記カソード側電極(16)の少なくともいずれか一方との間に、酸化物イオン伝導が等方性を示し且つ前記電解質(12)に比して伝導性が低い中間層(18)が介在され、
    前記アノード側電極(14)、前記電解質(12)、前記カソード側電極(16)及び前記中間層(18)の合計厚みが1mm以下であることを特徴とする自立膜型電解質・電極接合体(10)。
  6. 請求項5記載の接合体(10)において、前記中間層(18)が蛍石型化合物からなることを特徴とする自立膜型電解質・電極接合体(10)。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の接合体(10)において、前記電解質(12)は、700℃での前記厚み方向に沿う伝導度が0.05S/cm2以上であることを特徴とする自立膜型電解質・電極接合体(10)。
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