JPWO2009050893A1 - マイクロ波加熱装置 - Google Patents

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Abstract

加熱室内に収納される形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物に対して、マイクロ波供給手段から放射されたマイクロ波の反射電力を小さくして、様々な被加熱物に対し効率の高い加熱を行うことができるマイクロ波加熱装置を提供するために、マイクロ波発生部が、発振部(2a,2b)、電力分配部(3a,3b)、電力増幅部(5a〜5d)、被加熱物を収納する加熱室(10)、加熱室の壁面に配置されマイクロ波を加熱室内に供給する複数の給電部(8a〜8d,9a〜9b)、を備えており、制御的に対となる給電部より出力されるマイクロ波の位相差および発振周波数を可変制御するよう構成されている。

Description

本発明は、固体素子である半導体素子を用いて構成したマイクロ波発生部を備えたマイクロ波加熱装置に関するものである。
マイクロ波により被加熱物を加熱処理するマイクロ波加熱装置の代表的な装置としては電子レンジがある。電子レンジにおいては、マイクロ波発生部において発生したマイクロ波が金属製の加熱室内部に放射され、加熱室内部の被加熱物が放射されたマイクロ波により加熱処理される。
従来の電子レンジにおけるマイクロ波発生部には、マグネトロンが用いられていた。マグネトロンにより生成されたマイクロ波は、導波管を介して加熱室内部に供給され、被加熱物に放射されて、被加熱物に対する加熱処理が行われていた。
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部としては、近年、固体素子である半導体素子を用いて構成したものが注目されている。
この種のマイクロ波発生部としては、半導体発振部と、半導体発振部の出力を複数に分配する分配部と、分配された出力をそれぞれ増幅する複数の増幅部と、増幅部の出力を再合成する合成部とを有し、分配部と増幅部との間に位相器を設けたものがある。このようなマイクロ波発生部を用いたマイクロ波加熱装置には、例えば、日本の特開昭56−132793号公報に開示された電子レンジがある。
特開昭56−132793号公報に開示された電子レンジにおいては、位相器がダイオードのオンオフ特性によりマイクロ波の伝送線路の長さを切り換える構成である。この電子レンジにおいて、合成器として90度および180度ハイブリッドを用いることにより2つの出力を形成している。この従来の電子レンジにおいては、位相器を制御することにより2つの出力の電力比を変化させて、2つの出力間の位相を同相あるいは逆相に設定している。このような位相器を備えた従来の電子レンジにおいては、合成器の2つの出力から放射されるマイクロ波は、位相器によって同相または逆相に切り換えることで2つの放射アンテナからの放射される電力比と位相差を変化させている。
特開昭56−132793号公報
電子レンジに代表されるマイクロ波加熱装置において、マイクロ波が供給される加熱室内には、形状、種類、大きさ、量の異なるさまざまな被加熱物が収納される。加熱室内においては、収納された被加熱物に対してマイクロ波が放射されるが、被加熱物の形状、種類、大きさ、量等に応じて大きさの異なる反射電力が発生する。発生した反射電力が大きい場合は、加熱効率が悪く、被加熱物を効率高く所望の状態で加熱していないことを示している。したがって、マイクロ波が供給される加熱室内に収納された形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物に対して、被加熱物をユーザが所望する状態に加熱するときに反射電力を可能な限り小さくして、加熱効率を高めることはこの分野における達成すべき重要な課題であった。
本発明は、従来のマイクロ波加熱装置における上記の課題を達成するものであり、加熱室内に収納される形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物に対して、マイクロ波供給手段から放射されたマイクロ波の加熱室側からの反射電力を小さくして、様々な被加熱物に対し効率の高い加熱を行うことができるマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。また、本発明は、複数のマイクロ波供給手段を加熱室の異なる壁面に最適に配置して、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に加熱することを可能とし、且つ小型化が可能なマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するものであり、マイクロ波を放射する機能を有した複数のマイクロ波供給手段である、第1の給電部を加熱室が構成される壁面に配置するとともに、第1の給電部が受け取った反射電力を加熱室に再放射する第2の給電部を設けることにより、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物により生じる反射電力を小さくして、被加熱物を効率高く所望の状態に加熱するマイクロ波加熱装置を提供するものである。
本発明に係る第1の観点のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収容する加熱室と、発振部と、前記発振部の出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部の出力をそれぞれ電力増幅する複数の電力増幅部と、前記電力増幅部の出力を前記加熱室に供給する複数の第1の給電部と、前記第1の給電部に入力された反射電力を前記加熱室に供給する複数の第2の給電部と、前記第1の給電部からの反射電力を前記第2の給電部へ供給する循環型の非可逆回路と、を備え、
前記第1の給電部と前記第2の給電部は、前記加熱室へ供給するマイクロ波の励振方向が異なるように構成されている。
上記のように構成された第1の観点のマイクロ波加熱装置は、第1の給電部が受け取ったマイクロ波の反射電力を第2の給電部によって加熱室に再放射する構成であるため、電力増幅部が出力するマイクロ波を効率よく被加熱物に吸収させることができる。また、本発明においては、マイクロ波放射を異なる複数の給電部から行うことにより、異なる方向から被加熱物に対して直接的にマイクロ波を効率高く照射することができる。
本発明に係る第2の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第1の観点における前記発振部、前記電力分配部、前記電力増幅部、前記第1の給電部、前記第2の給電部および前記非可逆回路により構成されたマイクロ波発生部を少なくとも二組以上備える構成としてもよい。このように構成された第2の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射を異なる方向から被加熱物に対して直接的に照射することができるため、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物を所望の状態に効率高く加熱することができる。
本発明に係る第3の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における前記第1の給電部と前記第2の給電部が前記加熱室を構成する壁面における同一壁面に配置される構成としてもよい。このように構成された第3の観点のマイクロ波加熱装置は、第1の給電部と第2の給電部間の物理的な距離を最小化して両給電部間での伝送路による伝送損失を大幅に低減し、電力増幅部が出力するマイクロ波を効率高く加熱室内に放射することができる。
本発明に係る第4の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記第1の給電部が前記加熱室を構成する壁面における同一壁面に配置される構成としてもよい。このように構成された第4の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生部において各構成要素間を接続する伝送路を物理的に最小距離にて構成することが可能となり、伝送路による伝送損失を最小化して、電力増幅部が出力するマイクロ波を効率高く加熱室内に放射することができる。
本発明に係る第5の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記第1の給電部が前記加熱室を構成する壁面における異なる壁面に配置される構成としてもよい。このように構成された第5の観点のマイクロ波加熱装置は、異なる方向から被加熱物に対して直接的にマイクロ波を照射することができ、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室内に載置された場合でも加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第6の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記発振部が同一の周波数で発振するよう構成してもよい。このように構成された第6の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波加熱装置を構成する各々のマイクロ波発生部の発振器を共用することができ、マイクロ波加熱装置の小型化が可能となる。
本発明に係る第7の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記発振部が異なる周波数で発振するよう構成してもよい。このように構成された第7の観点のマイクロ波加熱装置は、各々のマイクロ波発生部において反射電力が最小となる周波数を各々独立に選択できるため様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第8の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における前記マイクロ波発生部が、前記電力分配部の出力に接続され、前記電力分配部の出力位相を可変する位相可変部と、制御部とを有する構成としてもよい。このように構成された第8の観点のマイクロ波加熱装置は、第1の給電部から放射されるマイクロ波を被加熱物が置かれた位置で干渉させることができ、加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第8の観点における複数の前記位相可変部の各々が独立の位相量を可変制御する構成としてもよい。このように構成された第9の観点のマイクロ波加熱装置は、各々のマイクロ波発生部における位相量を独立して制御することができ、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも、加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第1の観点における前記マイクロ波発生部が、前記電力増幅部に加熱室内部からの反射電力を検出する電力検出部と、制御部とを有し、前記電力増幅部への反射電力が最小となる周波数となるよう発振部の発振周波数を制御するよう構成してもよい。このように構成された第10の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく、被加熱物の加熱を効率的に行うことができる。
本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第10の観点における前記電力検出部の検出する反射電力が所定値以上になると前記電力増幅部が出力する電力を所定の割合で減ずる構成としてもよい。このように構成された第11の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく被加熱物の加熱を効率的に行うことができると同時に、加熱中も常時所定の反射電力以下となる位相差および発振周波数を維持できるため、被加熱物の温度上昇によって電波の吸収および反射の状態が変化しても常に効率的に被加熱物の加熱を行うことができる。
本発明に係る第12の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第10の観点における加熱動作の初期状態において、前記制御部が、使用可能な周波数帯域において前記電力検出部が検出した反射電力に関する周波数特性から反射電力が最小となる周波数を探索する最小反射電力探査動作を行うよう構成してもよい。このように構成された第12の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行うことができる。
本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第12の観点における前記制御部が、前記最小反射電力探査動作を行うとき、前記電力増幅部の出力を低下させ、前記最小反射電力探査動作が終了して反射電力が最小となる周波数により加熱動作を行うときに前記電力増幅部の出力を上昇させるよう構成してもよい。このように構成された第13の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく被加熱物の加熱を効率的に行うことができる。
本発明に係る第14の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第10の観点における加熱動作において、前記制御部が、前記電力検出部が逐次検出した反射電力において、より小さい値となる周波数を選択して加熱動作を継続させる極小反射電力追尾動作を行うよう構成してもよい。このように構成された第14の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱動作中においても、反射電力を最小化し、被加熱物の加熱を効果的に行うことができる。
本発明に係る第15の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第14の観点における前記制御部が、前記極小反射電力追尾動作において、前記電力検出部が検出した反射電力の値が所定値を越えた場合には前記電力増幅部の出力を低下させるよう構成してもよい。このように構成された第15の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱動作中において、過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく被加熱物の加熱を効率的に行うことができる。
本発明に係る第16の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第14の観点における前記制御部が、前記極小反射電力追尾動作において、前記電力検出部が検出した反射電力の値が所定値を越えた場合には、加熱動作を停止して、前記最小反射電力探査動作を実行して反射電力が最小となる周波数を探索するよう構成してもよい。このように構成された第16の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱動作中において、過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく、信頼性の高い装置となる。
本発明によれば、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部を加熱室が構成される壁面に最適に配置するとともに第1の給電部から放射されたマイクロ波の反射電力を第2の給電部から加熱室内へ再放射するよう構成することにより、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物を効率高く所望の状態で加熱するマイクロ波加熱装置を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成を示す模式図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置における給電部の配置例を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置における第1の給電部の支配的な励振方向を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置における第2の給電部の支配的な励振方向を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置の位相差および発振周波数の制御例を示すフローチャート 実施の形態1のマイクロ波加熱装置の最小反射電力探査動作を示すフローチャート 図5に示す最小反射電力探査動作における周波数特性の一例を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置の極小反射電力追尾動作を示すフローチャート 図7に示す極小反射電力追尾動作を説明する図 図7に示す極小反射電力追尾動作の異常時の動作を示す図 マイクロ波加熱装置において、位相差調整による加熱室内部の電磁界分布の実験に用いた加熱室を上方から見た平面断面図 マイクロ波加熱装置において、位相差0度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差40度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差80度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差120度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差160度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差200度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差240度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差280度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差320度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置における給電部の配置例を示す図 本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置における最小反射電力探査動作を説明する図 実施の形態3のマイクロ波加熱装置における最小反射電力探査動作を説明する図
以下、本発明に係るマイクロ波加熱装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは1つの例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置は、電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置などのマイクロ波加熱装置を含むものである。また、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同じ技術的思想に基づく構成が本発明に含まれる。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成を示す模式図である。特に、図1においては実施の形態1のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生手段であるマイクロ波発生部の構成をブロック図で示している。
図1において、実施の形態1のマイクロ波発生部は、半導体素子を用いて構成した2つの発振部2a,2b、各発振部2a,2bの出力を2分配する電力分配部3a,3b、分配部3a,3bのそれぞれの出力を増幅する電力増幅部5a,5b,5c,5d、電力増幅部5a,5b,5c,5dによって増幅されたマイクロ波出力を加熱室10の内部に放射する第1の給電部8a,8b,8c,8d、および、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った反射電力を循環型の非可逆回路7a,7b,7c,7dを介して加熱室内部に再放射する第2の給電部9a,9b,9c,9dを具備している。
循環型の非可逆回路7a,7b,7c,7dは3つの入出力のポートを有しており、第1のポートから入力されたマイクロ波電力は第2のポートへと導かれ、第3のポートには現れない。また、第2のポートから入力されたマイクロ波電力は全て第3のポートへと導かれ、第1のポートへは現れないように動作する。一般に、このように動作する循環型の非可逆回路をサーキュレータと称している。以下の本明細書においては、非可逆回路7a,7b,7c,7dをサーキュレータと称して説明する。
また、実施の形態1のマイクロ波発生部は、電力分配部3a,3bと電力増幅部5a,5b,5c,5dとを接続するマイクロ波伝送路に挿入され、電力増幅部5a,5b,5c,5dへの出力に任意の位相差を発生させる位相可変部4a,4b,4c,4dと、電力増幅部5a,5b,5c,5dと第1の給電部8a,8b,8c,8dとを接続するマイクロ波伝送路に挿入され、第2の給電部9a,9b,9c,9dが受け取った加熱室内部からの反射電力を検出する電力検出部6a,6b,6c,6dと、電力検出部6a,6b,6c,6dからの検出信号が入力され、発振部2a,2bと位相可変部4a,4b,4c,4dと電力増幅部5a,5b,5c,5dを駆動制御する制御部12と、有している。
電力検出部6a,6b,6c,6dと第1の給電部8a,8b,8c,8dとの間に挿入されたサーキュレータ7a,7b,7c,7dは、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った反射電力を第2の給電部9a,9b,9c,9dに導いている。制御部12は、電力検出部6a,6b,6c,6dによって検出された反射電力に応じて発振部2a,2bの発振周波数と、位相可変部4a,4b,4c,4dの位相量と、電力増幅部5a,5b,5c,5dの増幅率を制御する。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、被加熱物11を収納する略直方体構造からなる加熱室10を有し、加熱室10は金属材料からなる左壁面、右壁面、底壁面、上壁面、奥壁面、および被加熱物11を収納するために開閉する開閉扉(図1においては手前側であり、図示省略)で構成されている。上記のように構成された加熱室10は、開閉扉が閉じた状態において、加熱室内に供給されたマイクロ波を内部に閉じ込めて、マイクロ波が漏れないように構成されている。また、加熱室内には被加熱物11を載置するための載置台13が設けられている。
また、実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生部の出力が伝送されて、そのマイクロ波を加熱室内に放射供給する2組の給電部である、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dが加熱室10を構成する各壁面に配置されている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御的に対となる給電部が対向する壁面に配置されている。即ち、左壁面および右壁面の略中央には、第1の電力分配部3aにより分配されたマイクロ波が供給される制御的に対となる第1の給電部8a,8bがそれぞれ配置されている。また、左壁面および右壁面には、制御的に対となる第1の給電部8a,8bが受け取った反射電力をサーキュレータ7a,7bを介して出力する、制御的に対となる第2の給電部9a,9bがそれぞれ配置されている。
実施の形態1において、第1の給電部8a,8bは、左壁面および右壁面の略中央に配置された例を示しているが、それらのマイクロ波放射方向が完全に対向しないようにずれて配置されている。また、第2の給電部9a,9bにおいても、左壁面および右壁面に配置された例を示しているが、それらのマイクロ波放射方向が完全に対向しないようずれて配置されている。第2の給電部9a,9bのそれぞれは、各第1の給電部8a,8bの下側に配置されており、載置台13上の被加熱物11に対して確実にマイクロ波が照射される位置に配置されている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、加熱室10の上壁面と底壁面の略中央に制御的に対となる第1の給電部8c,8dを配置し、同様に加熱室10の上壁面と底壁面に第2の給電部9c,9dを配置した構成を示している。しかし、本発明のマイクロ波加熱装置の構成は、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における各給電部の配置に拘束されるものではなく、各種対応が可能である。例えば、いずれか1つの壁面に複数の第1の給電部を設けてもよいし、対向面ではない壁面、例えば右壁面と底壁面のような隣接する壁面に制御的に対となる給電部を設けた構成も可能である。
半導体素子を有して構成された電力増幅部5a,5b,5c,5dは、低誘電損失材料により形成された誘電体基板の片面に形成した導電体パターンにて回路を構成し、各電力増幅部5a,5b,5c,5dの増幅素子である半導体素子を良好に動作させるべく、各半導体素子の入力側と出力側にそれぞれ整合回路を配している。
各々の機能ブロックを接続するマイクロ波伝送路は、誘電体基板の片面に設けられた導電体パターンによって特性インピーダンスが略50Ωの伝送回路が形成されている。
第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bは、例えばウィルキンソン型分配器のような出力間に位相差を生じない同相分配器であってもよいし、ブランチライン型やラットレース型のような出力間に位相差を生じる分配器であってもよい。第1の電力分配部3aは、第1の発振部2aから入力されたマイクロ波電力の略1/2の電力を2つの位相可変部4a,4bにそれぞれ出力する。また、第2の分配部3bは、第2の発振部2bから入力されたマイクロ波電力の略1/2の電力を2つの位相可変部4c,4dにそれぞれ出力する。
また、各位相可変部4a,4b,4c,4dは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成されており、各位相可変部4a,4b,4c,4dの位相可変範囲は、0度から略180度の範囲である。したがって、各位相可変部4a,4b,4c,4dより出力されるマイクロ波電力の位相差は、0度から±180度の範囲内で制御することが可能である。
電力検出部6a,6b,6c,6dは、加熱室10側から第2の給電部9a,9b,9c,9dが受け取り、サーキュレータ7a,7b,7c,7dを介して電力増幅部5a,5b,5c,5dに伝送される、いわゆる反射波の電力を抽出するものである。電力検出部6a,6b,6c,6dの電力結合度は、例えば約40dBであり、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。電力検出部6a,6b,6c,6dにより検出された電力信号はそれぞれ、検波ダイオード(図示省略)で整流し、コンデンサ(図示省略)で平滑処理して、その平滑された信号が制御部12に入力される。
制御部12は、ユーザが直接入力する被加熱物の加熱条件あるいは加熱中に被加熱物の加熱状態から得られる加熱情報、および電力検出部6a,6b,6c,6dにより検出された電力信号である反射電力の情報などに基づいて、マイクロ波発生部の構成要素である第1の発振部2a、第2の発振部2b、および電力増幅部5a,5b,5c,5dのそれぞれに供給する駆動電力の制御、並びに位相可変部4a,4b,4c,4dに供給する電圧を制御して、加熱室10内に収納された被加熱物11をユーザが所望する状態となるよう最適に加熱する。また、マイクロ波発生部には主に電力増幅部5a,5b,5c,5dに設けられた半導体素子の発熱を放熱させるための放熱手段(図示省略)が設けられている。
また、第1の給電部8a,8b,8c,8dから放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、第2の給電部9a,9b,9c,9dから放射するマイクロ波の支配的な励振方向と一致しないように、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dが以下のように構成されている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、加熱室10の各壁面に設けられた第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dは、開口部がアンテナとなる開口型の給電部である。図2は第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの開口部の形状の一例を示している。開口型の給電部においては、マイクロ波を加熱室内に放射するアンテナである開口部の形状が、マイクロ波の支配的な励振方向を決定する。
第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの構成は、効率的にマイクロ波を開口部から加熱室内に放射するために、開口部におけるインピーダンスと加熱室内の空間のインピーダンスとを整合させる必要がある。具体的には、加熱室内の開放空間に対して開口部における反射が−20dB以下となるように開口部のインピーダンスを設計すると、開口部に対して供給する電力の99%が開口部から放射されることになる。
また、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの各開口部は、いわゆるアンテナとして機能するため、各給電部へマイクロ波を導く導波路内において単一のモードのマイクロ波が存在するように設定するとインピーダンスの設計が容易になる。電磁波の伝搬形態としては、TEモード(Transverse Electric Mode)、TMモード(Transverse Magnetic Mode)、およびTEMモード(Transverse Electromagnetic Mode)の3形態がある。例えば、放射するマイクロ波の周波数が電子レンジにおいて使用されている2450MHz±50MHzの周波数帯域であって、長方形状の開口部における長辺と短辺の長さの比が2:1である矩形状の導波管を用いた場合、短辺に垂直な方向に電界が立つTE10モードでマイクロ波を伝播させるためには、開口部の長辺の長さが110mmであり、短辺の長さが55mmの、いわゆるWR−430導波管(EIA規格名)が用いられる。このときの管内波長λgは約148mmとなり、開口部の短辺の長さをλg/4程度に設計しておくと、開口部から効率的にマイクロ波が放射される。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成においては、発明者が各種実験を行い検討した結果、給電部の各開口部における短辺の長さを30mm、長辺の長さを80mmと設定した。この設定した長さは、厳密には管内波長の1/4とは相違しているが、この程度の相違は本発明の効果を損なうものではない。
図3Aおよび図3Bは、加熱室10の左壁面に設けられた第1の給電部8aおよび第2の給電部9aの各開口部から放射されるマイクロ波の支配的な励振方向を示す図である。図3Aは第1の給電部8aの開口部における励振方向(図3Aにおいては上下方向)を矢印で示しており、図3Bは第2の給電部9aの開口部における励振方向(図3Bにおいては左右方向)を矢印で示している。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、左壁面の第1の給電部8a、右壁面の第1の給電部8b、底壁面の第1の給電部8c、および上壁面の第1の給電部8dがそれぞれ放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、ほぼ一致するように構成されている。また、左壁面の第2の給電部9a、右壁面の第2の給電部9b、底壁面の第2の給電部9c、および上壁面の第2の給電部9dが放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、ほぼ一致するように構成されている。しかし、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの各開口部は、図2に示すように配設されているため、第1の給電部8a,8b,8c,8dが放射するマイクロ波と、第2の給電部9a,9b,9c,9dが放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、一致しないものとなっている。
図2に示したように、実施の形態1においては、例えば左壁面の第1の給電部8aの開口部と第2の給電部9aの開口部におけるそれぞれの長手方向が直交するように構成した例で説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、第1の給電部8aの開口部の長手方向と第2の給電部9aの開口部の長手方向のなす角度を、90度の他に、30度、45度等の任意の角度に設定することが可能である。
図3Aおよび図3Bに示すように、各開口部から放射されるマイクロ波の支配的な励振方向は、開口部の長手方向に対して垂直な短辺方向であり、この短辺方向に支配的なマイクロ波が励振されて、開口部から放射されている。したがって、開口部において支配的な方向に振動するマイクロ波は、このマイクロ波が放射される開口部においては容易に通過するのに対して、その開口部の短辺方向と異なる方向(例えば、短辺方向から90度回転した長手方向)に振動するマイクロ波は、その開口部を通過することが困難となる。このため、第1の給電部8a,8b,8c,8dの各開口部から放射されたマイクロ波が、第2の給電部9a,9b,9c,9dの開口部内に直接的に伝送されることが極めて少なく、殆どのマイクロ波は加熱室内に放射されて、被加熱物11を加熱する。
[加熱動作]
次に、以上のように構成された実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱動作について説明する。
図4は実施の形態1のマイクロ波加熱装置において実行される加熱動作を示すフローチャートである。図4に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、実際に所定の出力で加熱動作(本加熱動作)を行う前の加熱動作初期状態において、加熱室10内に被加熱物11が配置された状態で、被加熱物11からの反射電力が最小となる周波数を探査する最小反射電力探査動作が行われる(ステップ1)。この最小反射電力探査動作においては、マイクロ波出力は低く抑えられている。ステップ1において検知された最小反射電力のときの周波数で第1の発振部2aおよび第2の発振部2bを発振させて、実際の所定の出力で加熱する本加熱動作が開始される(ステップ2)。この本加熱動作においては、極小反射電力追尾動作が実行される(ステップ3)。極小反射電力追尾動作は、ユーザが設定した加熱条件を満たした時点(例えば、設定時間、設定温度等を満たした時点)である加熱動作終了まで行われる(ステップ4)。実施の形態1のマイクロ波加熱装置における最小反射電力探査動作および極小反射電力追尾動作の詳細については、後述する。
まず始めに、ユーザが被加熱物11を加熱室内に配置して、その被加熱物11に関する加熱条件を操作部(図示していない)において入力する。ユーザが加熱開始キーを押圧することにより、加熱開始信号が生成されて、その加熱開始信号が制御部12に入力される。加熱開始信号が入力された制御部12は制御出力信号を生成し、マイクロ波発生部は動作を開始する。制御部12は、駆動電源(図示省略)を稼働して、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bに電力を供給する。この時、制御部12は、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bに対して、初期の発振周波数、例えば2400MHzに設定される信号を供給して、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bにおける発振を開始させる。
第1の発振部2aおよび第2の発振部2bが発振動作を開始すると、それぞれの出力は第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bにおいて、各々略1/2に分配されて、4つのマイクロ波電力信号が形成される。分配されたマイクロ波電力信号は、各位相可変部4a,4b,4c,4dを介して電力増幅部5a,5b,5c,5dにそれぞれ入力される。制御部12は、駆動電源を制御して、各電力増幅部5a,5b,5c,5dの出力を制御する。
第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bにおいて分配されて形成されたマイクロ波電力信号は、位相可変部4a,4b,4c,4d、並列動作する電力増幅部5a,5b,5c,5d、そして電力検出部6a,6b,6c,6dを経て4つの第1の給電部8a,8b,8c,8dからマイクロ波電力として出力されて、加熱室10内に放射される。本加熱動作前の加熱動作初期状態における最小反射電力探査動作においては、各電力増幅部5a,5b,5c,5dはそれぞれ100W未満、例えば50Wの低いマイクロ波電力を出力する。最小反射電力探査動作においては、反射電力によって各増幅部5a,5b,5c,5dの発熱量が放熱可能な熱量を超えないように、低いマイクロ波電力がアンテナから加熱室10内に放射されるよう構成されている。
加熱室10内に供給されたマイクロ波電力が被加熱物11に100%吸収されると加熱室10からの反射電力は0Wになる。しかし、加熱室10内に収納される被加熱物11は、種類、形状、大きさ、および量がその都度異なるため、常にマイクロ波電力が被加熱物11に100%吸収されることはなく、加熱室10においては反射電力が発生する。被加熱物11の種類、形状、大きさ、および量により、被加熱物11を含む加熱室10の電気的特性が異なっている。このため、被加熱物11により決定される電気的特性に基づくマイクロ波発生部の出力インピーダンスと加熱室10のインピーダンスとに応じた反射電力が発生する。その反射電力は加熱室10内部からマイクロ波発生部側に伝送される。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、サーキュレータ7a,7b,7c,7dは、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った加熱室10内部から反射されたマイクロ波電力(反射電力)を第2の給電部9a,9b,9c,9dへ導き、第2の給電部9a,9b,9c,9dから加熱室10内部へ再放射するよう構成されている。
前述のように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、第1の給電部8a,8b,8c,8dと第2の給電部9a,9b,9c,9dのマイクロ波の励振方向が異なるように構成されているため、第1の給電部8a,8b,8c,8dから直接的に第2の給電部9a,9b,9c,9dへ伝送されるマイクロ波電力の量は極めて低く抑えられている。また、同じ理由により、第2の給電部9a,9b,9c,9dから直接的に第1の給電部8a,8b,8c,8dへ伝送されるマイクロ波電力の量は極めて低く抑えられている。このため、電力増幅部5a,5b,5c,5dが各々出力するマイクロ波電力は、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dから加熱室10内部に確実に放射されて、反射電力の低減が図られており、被加熱物11を効率的に加熱する。
電力増幅部5a,5b,5c,5dとサーキュレータ7a,7b,7c,7dとの間に設けられた電力検出部6a,6b,6c,6dは、検出対象周波数帯域(例えば、2400MHz〜2500MHz)において、加熱室10内部からマイクロ波発生部側に伝送されてきた反射電力量を検出し、その反射電力量に比例した検出信号を抽出するものである。その反射電力量に比例した検出信号を受けた制御部12は、検出対象周波数帯域(例えば、2400MHz〜2500MHz)において、反射電力が最小値となる発振周波数の選択を行う。この発振周波数の選択動作において、制御部12は、位相可変部4a,4b,4c,4dにより、制御的に対となる第1の給電部8aと8b、および第1の給電部8cと8dにおいて生じる位相差を0度の状態で第1の発振部2aおよび第2の発振部2bの発振周波数を初期の2400MHzから、例えば1MHzピッチ間隔で徐々に高い周波数側に変化させて、周波数可変範囲の上限である2500MHzまで変化させていく。このときの反射電力が電力検出部6a,6b,6c,6dにより検知されて、その検知信号が制御部12に入力される。
このように制御部12が発振周波数に対する最小反射電力探査動作を行うことにより、制御部12は第1の発振部2aおよび第2の発振部2bの発振周波数に対する反射電力の変動状態を認識する。制御部12においては、検出対象周波数帯域において反射電力が最も小さくなる発振周波数を出力するように第1の発振部2aおよび第2の発振部2bを制御するとともに、ユーザが入力した被加熱物11に対する加熱条件に対応した加熱出力が得られるように、第1の発振部2a,第2の発振部2b,および各電力増幅部5a,5b,5c,5dを駆動制御する。駆動制御された各電力増幅部5a,5b,5c,5dの出力である所望のマイクロ波電力信号は、電力検出部6a,6b,6c,6dおよびサーキュレータ7a,7b,7c,7dを介して第1の給電部8a,8b,8c,8dに供給される。第1の給電部8a,8b,8c,8dは入力されたマイクロ波電力を加熱室10内の被加熱物11に出力し、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った反射電力をサーキュレータ7a,7b,7c,7dを介して第2の給電部9a,9b,9c,9dに供給する。第2の給電部9a,9b,9c,9dは反射電力のマイクロ波電力を加熱室10内部に放射し、被加熱物11を加熱する。
[最小反射電力探査動作]
次に、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において実際に所定の出力で加熱する本加熱動作の前に行われる最小反射電力探査動作について詳細に説明する。図5は、図4に示したマイクロ波加熱装置の加熱動作において行われる最小反射電力探査動作を示すフローチャートである。
最小反射電力探査動作は、ユーザが加熱開始キーを押圧することにより開始する。ステップ101においては、制御的に対となる給電部(例えば、第1の給電部8aと8b)から出力されるマイクロ波の位相差(Φ)を0に固定した状態で、且つ発振周波数(F(m))を検出対象周波数帯域の最低周波数(Fmin、例えば、2400MHz)に設定して加熱室側からの反射電力を検出する(ステップ102)。次に、最低周波数から最高周波数(Fmax、例えば、2500MHz)へ変化幅ΔFだけ徐々にm回上昇させていく(mは正の整数)。このとき、加熱室側からの反射電力を逐次検出していく(ステップ102)。この反射電力検出動作を検出対象周波数帯域の最高周波数まで継続する(ステップ102〜ステップ104)。反射電力検出動作において検出された反射電力に対する周波数特性に基づいて、最小反射電力値を示した周波数を検出して、その周波数を本加熱動作時の第1の発振部2aおよび第2の発振部2bの発振周波数とする(ステップ105)。なお、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の制御部12においては、各電力検出部6a,6b,6c,6dから入力される反射電力に関する周波数特性情報が合成されて1つの周波数特性曲線を算出して最小反射電力を示す周波数を検出している。
以上が実施の形態1のマイクロ波加熱装置において本加熱動作の前に実行される最小反射電力探査動作である。図6は、最小反射電力探査動作において、最低周波数(2400MHz)から最高周波数(2500MHz)までの周波数でスイープ動作を行い、反射電力の変動を測定した周波数特性の一例を示す図である。図6における反射電力曲線の最小値が最小反射電力周波数(fop)となる。
なお、本発明に係る実施の形態1において、最小反射電力探査動作は検出対象周波数帯域の最低周波数から最高周波数までの単一方向だけ行われる例で説明したが、検出対象周波数帯域の最高周波数から最低周波数までの単一方向でもよく、または往復動作で探査動作を行ってもよい。
上記のように最小反射電力探査動作を行うことにより、様々な形状、大きさ、量などの異なる被加熱物11に対して反射電力が最も小さくなる条件で加熱を開始することができ、電力増幅部5a,5b,5c,5dに備えられた半導体素子が反射電力によって過剰に発熱することを防止でき熱的な破壊を回避することができる。
[極小反射電力追尾動作]
次に、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、加熱動作中の本加熱動作において行われる極小反射電力追尾動作について説明する。極小反射電力追尾動作とは、本加熱動作中に行われる反射電力の極小値を逐次追尾する動作である。
前述の最小反射電力探査動作により検出された周波数による本加熱動作中においては、反射電力が極小値となるように極小反射電力追尾動作が行われる。以下の極小反射電力追尾動作の説明において、加熱動作中における第1の発振部2の発振周波数、および第1の発振部2からの出力が入力され、制御的に対となっている位相可変部4a,4bの位相差に関する制御について説明する。別の対である位相可変部4c,4dにおいても、位相可変部4a,4bと同様の制御が行われるため、ここでは代表して一方の制御的に対である位相可変部4a,4bの制御についてのみ説明し、位相可変部4c,4dの制御については省略する。
図7は、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、本加熱動作時に実行される極小反射電力追尾動作のフローチャートであり、第1の発振部2の発振周波数および位相可変部4a,4bの位相差を制御して、時々刻々変化する発振周波数近辺の反射電力の極小値を追尾するものである。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、位相可変部4a,4b,4c,4dが加熱開始から所定の変化量(ΔΦ)で徐々にその位相を変化させている。位相可変部4a,4bによって位相を変化させることによって加熱室内部において第1の給電部8a,8bが放射するマイクロ波の干渉する位置を変化させることができる。このため、加熱室10内に載置された被加熱物11の位置に応じて位相を制御して干渉位置を変動させることにより、被加熱物11を均等若しくは局部的に加熱することが可能となる。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱動作中においては、位相可変部4a,4bにおける位相差(Φ(n))(nは正の整数)を一定の時間間隔で、一定の変化幅ΔΦ、例えば10度毎に変化させる(S301)。このとき、第1の発振部2aは、位相可変部4a,4bが位相差を変える時間間隔と同じ間隔で一定の変化幅Δf、例えば0.1MHz毎に発振周波数を変化させていく(S302)。上記のように、位相可変部4a,4bの位相差および第1の発振部2aの発振周波数を変更する毎に電力検出部6a,6bにおいて反射電力(Pr(n))を検出する(S303)。
ステップ303において検出された反射電力(Pr(n))が予め設定した所定値Xより大きいか否かが判断される(ステップ304)。検出された反射電力(Pr(n))が所定値Xより大きい場合(Pr(n)>X)には、加熱室10内の被加熱物11等において初期状態と大きく異なる状態が生じたと判断して、本加熱動作を一旦中止して(ステップ305)、マイクロ波加熱装置において本加熱動作の直前に実行した最小反射電力探査動作が再度行われる(ステップ306)。この最小反射電力探査動作は、前述のように位相差を0度に設定して、検出対象周波数帯域の最低周波数(例えば、2400MHz)から一定変化幅(例えば、0.1MHz)毎に上昇させ、変化させる度に反射電力を検出するものである。最小反射電力探査動作が実行されることにより、被加熱物11を収納する当該加熱室における反射電力に関する周波数特性が検出される。制御部12は、検出した周波数特性に基づいて、最小反射電力となる周波数を検出し、その周波数で発振するように、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bを制御する。以下、図4に示したステップ2以降が実行される。
一方、ステップ304において、検出された反射電力(Pr(n))が所定値Xより小さい場合(Pr(n)≦X)には、ステップ307へ移行する。制御部12は今回検出された反射電力(Pr(n))と前回検出された反射電力(Pr(n−1))とを比較し、今回検出された反射電力が減少していれば(Pr(n)≦Pr(n−1))、現在の発振周波数を維持する(ステップ308)。そして、変化幅Δfの符号(+)をそのまま維持して(ステップ309)、次のステップ301に移行する。このとき、当該被加熱物11に対する加熱条件が満たされていれば、この加熱動作は終了となり、同時に極小反射電力追尾動作も終了する(ステップ312)。
一方、ステップ307において、今回検出された反射電力が増大していれば(Pr(n)>Pr(n−1))、現在の発振周波数を前回の発振周波数に変更する(ステップ310)。そして、変化幅Δfの符号を逆(−)に変更して(ステップ311)、次のステップ301に移行する。このとき、当該被加熱物11に対する加熱条件が満たされていれば、この加熱動作は終了となり、同時に極小反射電力追尾動作も終了する(ステップ312)。
上記の極小反射電力追尾動作を本加熱動作中において繰返すことにより、位相差および発振周波数を徐々に変化させていきながら、当該加熱室10からの反射電力を常に極小値に向かうよう制御することができる。
なお、実施の形態1のマイクロ波加熱装置では、検出された反射電力(Pr(n))が予め設定した所定値Xより大きい場合(Pr(n)>X)には、本加熱動作を一旦中止して、最小反射電力探査動作を再度行う設定としている(ステップ306)。しかし、本加熱動作を一旦停止すると、調理などにおいて問題が生じる場合があるため、例えば電力増幅部5a,5b,5c,5dが出力する電力を所定の割合で減じていく構成としてもよい。
図8Aおよび図8Bは、極小反射電力追尾動作を示す反射電力に対する周波数特性図である。図8Aにおいて、(a)が前述の図6に示した本加熱動作前に検出した周波数特性図であり、(b)が本加熱動作中において変化した周波数特性において極小値が変化した状態を示している。図8Aの(b)において、破線が本加熱動作前の周波数特性曲線であり、実線が本加熱動作中の周波数特性曲線である。実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱動作中の極小反射電力追尾動作により、反射電力の極小値を追尾して常に効率の高い加熱が可能となる。
ただし、図8Bに示すように、加熱動作中の周波数特性曲線が大きく変化した場合には、即ち図7のステップ304において反射電力値(Pr(n))が所定値Xより大きくなった場合には、極小反射電力追尾動作では極小値を追尾できないため、一旦本加熱動作を停止して最小反射電力探査動作を行う。図8Bにおいて、(a)が前述の図6に示した本加熱動作前に検出した周波数特性図であり、(b)が本加熱動作中において大きく変化した周波数特性曲線を示している。図8の(b)において、破線が本加熱動作前の周波数特性曲線であり、実線が本加熱動作中において大きく変化した周波数特性曲線である。
上記のように、極小反射電力追尾動作においては位相可変部4a,4bが一定の変化幅ΔΦ(例えば、位相差10度)で位相差Φを時々刻々変化させている。この位相可変部4a,4bによって生じる位相差Φを変化させることによって加熱室10内でのマイクロ波の干渉位置が変化するため被加熱物11を均等に加熱することが可能となる。一方、位相差Φを特定の値に固定することにより、加熱室10内でのマイクロ波の干渉位置を一定として、被加熱物11を局所的に加熱することが可能となる。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、上記のように加熱動作を制御することにより、加熱動作中においても電力検出部6a,6bが加熱室10からの反射電力を検出する構成であるため、制御部12が反射電力の状態を常に認識して、発振周波数を時々刻々微調整して、加熱室内部を常に反射電力が低い状態に維持することができる。また、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、位相差を変更する構成であるため、反射電力の状態を考慮して、位相差を時々刻々微調整して、加熱室内部を常に反射電力の低い状態に維持することが可能である。
したがって、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、半導体素子の発熱を低く抑えることが可能となり、加熱効率を高く維持することができるため、短時間での加熱を図ることが可能である。
また、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、許容可能な反射電力値を所定値として定め、その許容可能な反射電力値までの範囲内において、制御部12が時間的に位相可変部4a,4bの位相差と第1の発振部2aと第2の発振部2bの発振周波数を変化させる構成とすることも可能である。このように位相差と発振周波数を変化させることにより、加熱室10内でのマイクロ波の伝播状態を時間的に変化させることができるので、被加熱物11の局所加熱を解消し、加熱の均一化を図ることが可能である。
なお、上記の説明においては、第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bのそれぞれの出力に対して、2つの位相可変部4a,4b、および4c,4dを挿入した例で説明したが、第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bのいずれか一方の出力にのみ位相可変部を挿入して、その位相変化幅を0度から360度となるように調整することも可能である。
[位相制御動作]
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御部12からの制御信号により位相可変部4a,4b,4c,4dが対向して配置された制御的に対となる2つの第1の給電部8aと8b、および2つの第1の給電部8cと8dのそれぞれから放射されるマイクロ波の位相差を自在に変化させる構成を有している。このように位相可変部4a,4b,4c,4dにより、加熱室10において対向する位置から供給されるマイクロ波の位相を調整することにより、加熱室内部に所望の電磁波分布を形成することが可能となる。実施の形態1における位相可変部4a,4b,4c,4dは、印加電圧に応じて静電容量が変化する静電容量可変素子を用いて構成されており、位相可変範囲が0度〜180度の範囲である。なお、制御的に対の第1の給電部8aと8b、および第1の給電部8cと8dを対向する位置ではなく、対向しない位置、例えば同じ壁面における異なる位置や、隣接する壁面における位置に配設した場合であっても、位相を調整することにより加熱室10内の電磁波分布を変更することができる。
上記のように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の加熱動作時においては、アンテナとなる第1の給電部8a,8b,8c,8dにおいて制御的に対の第1の給電部8aと8b、および第1の給電部8cと8dから放射されるマイクロ波の位相差が、制御部12による位相制御により変化するよう構成されている。
以下、このように制御部12により位相制御を行うことにより被加熱物11を均等、若しくは局部的に加熱することが可能となる理由について説明する。
まず、マイクロ波加熱装置において、加熱室10を構成する壁面に対向して配置された給電部であるアンテナから放射されるマイクロ波において位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁界分布がどのような変化するかについて、本発明者が実験を行ったので以下に説明する。
図9は、実験に用いた加熱室10を上方から見た平面断面図である。この実験では、図9に示すように、初めに加熱室10の内部に所定量の水が入った複数のカップ(図9においてはCUとして表示)を整列配置した。その時の各カップ(CU)内の中央部(図9において点Pと表示)における水の温度を測定した。
そして、加熱室10の対向する壁面に配置されたアンテナ(A1,A2)から位相を変化させたマイクロ波を放射させた。その後、所定時間経過後にマイクロ波の放射を停止して、各カップ(CU)内の中央部の位置(P)において、マイクロ波放射による水の温度上昇値を測定した。
アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で複数の位相差を設定し、設定した位相差ごとに複数回のマイクロ波を放射した。なお、本実験では、位相差を0度〜320度の範囲において40度ごとに変えて測定した。
上記のように、マイクロ波加熱装置の加熱室内部の水平面内に配置された水の温度上昇値を測定することにより、加熱室内部におけるマイクロ波の電磁界分布を調査した。本実験によれば、水の温度上昇値が高い領域では電磁界分布が強いと判定でき、水の温度上昇値が低い領域では電磁界分布が弱いと判定できる。
図10は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を0度に設定した場合の実験結果を、水の温度上昇値に基づく等温線により示したものである。同様に、図11〜図18は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を40度から320度の範囲において40度ごと変えて測定した場合の実験結果を等温線で示している。なお、図11〜図18に示した各位相差は、アンテナA2から放射されるマイクロ波の位相を基準として、アンテナA1から放射されるマイクロ波の遅れ位相を示している。
図10〜図18に示される実験結果によれば、水の温度上昇値は、加熱室内部において大きくばらついている。また、図13および図14に示すように、設定された位相差が120度および160度の場合には、加熱室10の一方の側面(左壁面)に近い領域(図13および図14においてHR1と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
また、図17および図18に示すように、設定された位相差が280度および320度の場合には、加熱室10の他方の側面(右壁面)に近い領域(図17および図18においてHR2と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
以上の実験結果から、本発明者は、加熱室内の電磁界分布が、異なる位置に配置された2個のアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差に応じて変化することに着目した。本発明者は、例えば、対向する壁面等の異なる配置されたアンテナA1,A2から放射されたマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の被加熱物を均一に加熱することが可能であること、および被加熱物の特定の部分を集中的に加熱することが可能であることを見出した。
したがって、異なる位置に配置されたアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を所望の状態に変化させることができることが理解できる。このため、加熱ムラを解消させるために、従来行っていた加熱室内部に配置された被加熱物を加熱室内部で移動させるような機構は必要がなくなる。さらに、上記のように位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を変化させることができるため、従来行っていたマイクロ波を放射するアンテナを移動させるような機構は必要がなくなる。
また、上記の実験結果から明らかなように、対向して放射されたマイクロ波の衝突に起因した現象が電磁界分布の変化としてあらわれているため、アンテナA1とアンテナA2のそれぞれから放射されるマイクロ波の放射方向が交差するようにアンテナA1、A2を配設しても同様の現象が発生する。これは、例えば隣接する加熱室壁面にアンテナA1、A2を配設する構成においても実現できる。
したがって、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、電磁界分布を所望の分布とするために、被加熱物またはアンテナを移動させるための機構が必要ではなく、加熱室内部に被加熱物またはアンテナの移動用のスペースを確保する必要がない。その結果、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成は、低コスト化および小型化を実現することができる。
以上のように、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部を加熱室が構成される壁面に最適に配置するとともに、第1の給電部から放射されたマイクロ波の反射電力を第2の給電部から加熱室内へ再放射するよう構成することにより、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物を効率高く所望の状態で加熱することができる。
(実施の形態2)
図19は本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置における加熱室の給電部の構成を示す模式図である。実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、加熱室の壁面に配設されたアンテナである給電部の構成である。
図19に示すように、実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、加熱室210を構成する底壁面にのみ複数の給電部が設けられている。実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成と異なる点は、給電部の配置であり、図1に示したマイクロ波発生部の構成は同じであるため、実施の形態2においては異なる点のみについて説明する。
図19において、加熱室210の底壁面には、4つの第1の給電部208a,208b,208c,208dおよび4つの第2の給電部209a,209b,209c,209dが設けられている。図19に示すように、制御的に対となる第1の給電部208aと208bの各開口部は、その長手方向が左右方向となり、直線上に所定間隔を有して配置されている。また、第1の給電部208cと208dの各開口部は、その長手方向が前後方向となり、直線上に所定間隔を有して配置されている。4つの第1の給電部208a,208b,208c,208dは、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸を中心として、90度の角度を有して放射状に配置されている。
一方、制御的に対となる第2の給電部209aと209bの各開口部の長手方向は、並行に配置されており、底壁面において、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸から同じ距離に設けられている。実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、第2の給電部209aが第1の給電部208aと208dとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。同様に、第2の給電部209bが第1の給電部208bと208cとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。また、制御的に対となる第2の給電部209cと209dの各開口部の長手方向は、並行に配置されており、底壁面において、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸から同じ距離に設けられている。実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、第2の給電部209cが第1の給電部208aと208cとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。同様に、第2の給電部209dが第1の給電部208bと208dとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。
上記のように、4つの第1の給電部208a,208b,208c,208dは被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸を中心として放射状に配置されており、4つの第2の給電部209a,209b,209c,209dは、底壁面において、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸から同じ距離に対向するよう配置されている。実施の形態2においては、給電部を上記のように配置たれ例で説明するが、制御的について対となる給電部が同じ励振方向となるように配置され、第1の給電部からのマイクロ波が第2の給電部に伝送されないように構成するものであれば本発明に含まれ、同様の効果を奏するものである。
上記のように実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、底壁面に全ての給電部が設けられているため、前述の図1に示したマイクロ波発生部の構成をマイクロ波加熱装置における底部に集中的に配置することができる。実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生部が集中的に配置されているため、マイクロ波伝送路を短くすることができ、マイクロ波伝送路における損失を大幅に低減することができる。
マイクロ波伝送路としては、例えば基板上に設けたマイクロストリップ線路、セミリジッドケーブルのような同軸線路、または導波管が用いられる。マイクロストリップ線路には、一般的にはプリント基板を加工して線路を形成したものが用いられるが、実施の形態2においては誘電体シートの一方の面に線路となる導体を設け、他方の面に接地となる導体膜を張り付けて構成したものを用いた。なお、誘電体シートとしてはポリテトラフルオロエチレンなどの高周波においても低損失な材料が用いられる。また、マイクロ波伝送路として用いられる同軸線路としては、誘電体の内部に線路となる導体線が埋設され、ケーブル状の誘電体の外面に接地となる外殻導体が設けられているものが一般的に用いられる。上記のように、マイクロ波伝送路として用いられるマイクロストリップ線路と同軸線路は、誘電体と導体により構成されているため、誘電体における誘電体損および導体におけるオーム損が発生する。
また、一般的に用いられる導波管は、金属製の管(一般的には断面が矩形状の管)であり、損失は少ないが形状が大きくなるという不利な点を有する。例えば、2450MHz程度の周波数を導波管で伝送するためには、110mm×55mm程度の断面形状を有する矩形状の導波管が必要となる。このため、導波管の使用はマイクロ波発生部の占有空間が大きなものとなる。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波発生部を集中的に配置して、マイクロ波伝送路の長さを短くしている。このため、マイクロ波伝送路における損失が大幅に低減され、効率の高い加熱が可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置について添付の図20および図21を用いて説明する。実施の形態3のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波発生部における制御部の制御動作である。したがって、実施の形態3のマイクロは加熱装置において他の実施の形態1,2と異なる点について説明し、符号は実施の形態1の説明において用いた符号を参照する。
図20は、加熱動作の初期段階において実行される最小反射電力探査動作において4つの電力検出部6a,6b,6c,6dが検出した反射電力の周波数特性曲線の一例である。図20において、符号Aが第2の給電部9aが加熱室10側から受け取った反射電力をサーキュレータ6aを介して検出した反射電力の周波数特性曲線である。符号Bが第2の給電部9bが加熱室側から受け取った反射電力をサーキュレータ6bを介して検出した周波数特性曲線である。第2の給電部9aと9bは、制御的に対である第1の給電部8aと8bに対応するものである。同様に、符号Cが第2の給電部9cが加熱室10側から受け取った反射電力をサーキュレータ6cを介して検出した反射電力の周波数特性曲線である。符号Dが第2の給電部9dが加熱室側から受け取った反射電力をサーキュレータ6dを介して検出した周波数特性曲線である。第2の給電部9cと9dは、制御的に対である第1の給電部8cと8dに対応するものである。
図20の周波数特性曲線A,B,C,Dの一例が示すように、電力検出部6a,6b,6c,6dのそれぞれが検出する反射電力は、必ずしも同じ特性曲線を示し、同じ周波数で最小値を示すものではない。これは、加熱室内部に収納された被加熱物の形状が対称形状ではないなどに起因するものであり、それぞれの給電部から見た加熱室内のインピーダンスは異なっている。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置の制御部12(図1参照)においては、各電力検出部6a,6b,6c,6dから入力された反射電力に関する周波数特性を制御的に対となる周波数特性AとB、およびCとDをそれぞれ合成する。
図21は図20の周波数特性曲線AとB、および周波数特性曲線CとDを合成した周波数特性曲線である。図21において、周波数特性曲線Yが図20の周波数特性曲線AとBを合成して形成されたものである。また、周波数特性曲線Zが図20の周波数特性曲線CとDを合成して形成されたものである。
図21に示すように、周波数特性曲線AとBが合成されて形成された周波数特性曲線Yにおいては周波数f1において最小反射電力となり、周波数特性曲線CとDが合成されて形成された周波数特性曲線Zにおいては周波数f2において最小反射電力となる。したがって、制御的に対となる第1の給電部8aと8bから周波数f1のマイクロ波が出力されて反射電力の少ない効率的な加熱が行われる。同様に、制御的に対となる第1の給電部8cと8dから周波数f2のマイクロ波が出力されて反射電力の少ない効率的な加熱が行われる。
上記のように、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、制御的に対となっているそれぞれの給電部において、反射電力の少ない周波数を検出して、その周波数により加熱処理を行うよう構成されている。したがって、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置によれば、加熱システム全体として、反射電力の少ない状態で加熱することができ、最適な加熱周波数による加熱システムを構築することができる。
本発明のマイクロ波加熱装置によれば、被加熱物の加熱時において、制御的に対となる給電部から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内の電磁波分布を変化させて、加熱室内に配置された加熱物を均一、若しくは局部的に加熱することが可能となる。
本発明のマイクロ波加熱装置においては、位相差を変化させることにより加熱室内の電磁波分布を変化させることができるため、加熱室内に配置された被加熱物を加熱室内で回転等の移動動作を行うことなく、被加熱物の均一加熱、若しくは局部加熱を行うことが可能となる。
また、本発明のマイクロ波加熱装置においては、被加熱物の均一加熱を行い、電磁波分布を変化させるために、マイクロ波を放射する給電部であるアンテナを移動させる必要がない。したがって、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物およびアンテナを移動させるための機構を必要としないため、加熱室内に被加熱物およびアンテナを移動させるための空間を確保する必要がなく、マイクロ波加熱装置の低コスト化および小型化を実現することができる。
前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御部が位相差を連続的または段階的に変化させる制御動作を行っているが、位相差を段階的に変化させる場合には、位相差を、例えば40度ごとに変化させてもよいし、45度ごとに変化させてもよい。この場合、一段階当りに変化させる位相差の値は上記の数値に限定されるものではなく、できる限り小さい値に設定することが好ましい。これにより、被加熱物をより均一に加熱して、不均一な加熱をより低減することができる。
なお、本発明のマイクロは加熱装置においては、位相差の変化の周期を、予め固定的に設定してもよいし、ユーザにより手動で任意に設定する構成としてもよい。位相差の変化の周期を固定的に設定する場合、例えば30秒で0度から360度まで変化するように設定してもよいし、10秒で0度から360度まで変化するように設定してもよい。
また、位相差の変化の範囲は、必ずしも0度から360度までの範囲の全てである必要はない。例えば、予め複数の位相差の値とその位相差の値に対応する電磁界分布との関係を制御部の内蔵メモリに記憶させておき、制御部が被加熱物の加熱状態に応じて複数の位相差の値を選択的に設定してもよい。具体的には、加熱室内に複数の温度センサを配置して、加熱室の加熱処理領域の温度を検知する構成とする。この場合、被加熱物の温度を複数の部位において測定することができ、被加熱物の温度分布を知ることができる。
このとき、制御部は、内蔵メモリに記憶された位相差と電磁界分布との関係に基づいて、均一加熱すべき被加熱物における低温度部分で電磁界が強くなるように位相差を設定する。このように位相差を調整することにより、被加熱物をより均一に効率高く加熱することができる。
本発明に係るマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を放射する複数の給電部を切り替え制御し、動作中の給電部間のマイクロ波の位相差を変化させることにより効率の高い加熱処理が可能となるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの各種用途に適用できる。
本発明は、固体素子である半導体素子を用いて構成したマイクロ波発生部を備えたマイクロ波加熱装置に関するものである。
マイクロ波により被加熱物を加熱処理するマイクロ波加熱装置の代表的な装置としては電子レンジがある。電子レンジにおいては、マイクロ波発生部において発生したマイクロ波が金属製の加熱室内部に放射され、加熱室内部の被加熱物が放射されたマイクロ波により加熱処理される。
従来の電子レンジにおけるマイクロ波発生部には、マグネトロンが用いられていた。マグネトロンにより生成されたマイクロ波は、導波管を介して加熱室内部に供給され、被加熱物に放射されて、被加熱物に対する加熱処理が行われていた。
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部としては、近年、固体素子である半導体素子を用いて構成したものが注目されている。
この種のマイクロ波発生部としては、半導体発振部と、半導体発振部の出力を複数に分配する分配部と、分配された出力をそれぞれ増幅する複数の増幅部と、増幅部の出力を再合成する合成部とを有し、分配部と増幅部との間に位相器を設けたものがある。このようなマイクロ波発生部を用いたマイクロ波加熱装置には、例えば、日本の特開昭56−132793号公報に開示された電子レンジがある。
特開昭56−132793号公報に開示された電子レンジにおいては、位相器がダイオードのオンオフ特性によりマイクロ波の伝送線路の長さを切り換える構成である。この電子レンジにおいて、合成器として90度および180度ハイブリッドを用いることにより2つの出力を形成している。この従来の電子レンジにおいては、位相器を制御することにより2つの出力の電力比を変化させて、2つの出力間の位相を同相あるいは逆相に設定している。このような位相器を備えた従来の電子レンジにおいては、合成器の2つの出力から放射されるマイクロ波は、位相器によって同相または逆相に切り換えることで2つの放射アンテナからの放射される電力比と位相差を変化させている。
特開昭56−132793号公報
電子レンジに代表されるマイクロ波加熱装置において、マイクロ波が供給される加熱室内には、形状、種類、大きさ、量の異なるさまざまな被加熱物が収納される。加熱室内においては、収納された被加熱物に対してマイクロ波が放射されるが、被加熱物の形状、種類、大きさ、量等に応じて大きさの異なる反射電力が発生する。発生した反射電力が大きい場合は、加熱効率が悪く、被加熱物を効率高く所望の状態で加熱していないことを示している。したがって、マイクロ波が供給される加熱室内に収納された形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物に対して、被加熱物をユーザが所望する状態に加熱するときに反射電力を可能な限り小さくして、加熱効率を高めることはこの分野における達成すべき重要な課題であった。
本発明は、従来のマイクロ波加熱装置における上記の課題を達成するものであり、加熱室内に収納される形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物に対して、マイクロ波供給手段から放射されたマイクロ波の加熱室側からの反射電力を小さくして、様々な被加熱物に対し効率の高い加熱を行うことができるマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。また、本発明は、複数のマイクロ波供給手段を加熱室の異なる壁面に最適に配置して、加熱室内部のマイクロ波の電磁界分布を均一、若しくは被加熱物に応じて適切に加熱することを可能とし、且つ小型化が可能なマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するものであり、マイクロ波を放射する機能を有した複数のマイクロ波供給手段である、第1の給電部を加熱室が構成される壁面に配置するとともに、第1の給電部が受け取った反射電力を加熱室に再放射する第2の給電部を設けることにより、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物により生じる反射電力を小さくして、被加熱物を効率高く所望の状態に加熱するマイクロ波加熱装置を提供するものである。
本発明に係る第1の観点のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収容する加熱室と、発振部と、前記発振部の出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部の出力をそれぞれ電力増幅する複数の電力増幅部と、前記電力増幅部の出力を前記加熱室に供給する複数の第1の給電部と、前記第1の給電部に入力された反射電力を前記加熱室に供給する複数の第2の給電部と、前記第1の給電部からの反射電力を前記第2の給電部へ供給する循環型の非可逆回路と、を備え、
前記第1の給電部と前記第2の給電部は、前記加熱室へ供給するマイクロ波の励振方向が異なるように構成されている。
上記のように構成された第1の観点のマイクロ波加熱装置は、第1の給電部が受け取ったマイクロ波の反射電力を第2の給電部によって加熱室に再放射する構成であるため、電力増幅部が出力するマイクロ波を効率よく被加熱物に吸収させることができる。また、本発明においては、マイクロ波放射を異なる複数の給電部から行うことにより、異なる方向から被加熱物に対して直接的にマイクロ波を効率高く照射することができる。
本発明に係る第2の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第1の観点における前記発振部、前記電力分配部、前記電力増幅部、前記第1の給電部、前記第2の給電部および前記非可逆回路により構成されたマイクロ波発生部を少なくとも二組以上備える構成としてもよい。このように構成された第2の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射を異なる方向から被加熱物に対して直接的に照射することができるため、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物を所望の状態に効率高く加熱することができる。
本発明に係る第3の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における前記第1の給電部と前記第2の給電部が前記加熱室を構成する壁面における同一壁面に配置される構成としてもよい。このように構成された第3の観点のマイクロ波加熱装置は、第1の給電部と第2の給電部間の物理的な距離を最小化して両給電部間での伝送路による伝送損失を大幅に低減し、電力増幅部が出力するマイクロ波を効率高く加熱室内に放射することができる。
本発明に係る第4の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記第1の給電部が前記加熱室を構成する壁面における同一壁面に配置される構成としてもよい。このように構成された第4の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生部において各構成要素間を接続する伝送路を物理的に最小距離にて構成することが可能となり、伝送路による伝送損失を最小化して、電力増幅部が出力するマイクロ波を効率高く加熱室内に放射することができる。
本発明に係る第5の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記第1の給電部が前記加熱室を構成する壁面における異なる壁面に配置される構成としてもよい。このように構成された第5の観点のマイクロ波加熱装置は、異なる方向から被加熱物に対して直接的にマイクロ波を照射することができ、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室内に載置された場合でも加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第6の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記発振部が同一の周波数で発振するよう構成してもよい。このように構成された第6の観点のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波加熱装置を構成する各々のマイクロ波発生部の発振器を共用することができ、マイクロ波加熱装置の小型化が可能となる。
本発明に係る第7の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における複数の前記発振部が異なる周波数で発振するよう構成してもよい。このように構成された第7の観点のマイクロ波加熱装置は、各々のマイクロ波発生部において反射電力が最小となる周波数を各々独立に選択できるため様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第8の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第2の観点における前記マイクロ波発生部が、前記電力分配部の出力に接続され、前記電力分配部の出力位相を可変する位相可変部と、制御部とを有する構成としてもよい。このように構成された第8の観点のマイクロ波加熱装置は、第1の給電部から放射されるマイクロ波を被加熱物が置かれた位置で干渉させることができ、加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第9の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第8の観点における複数の前記位相可変部の各々が独立の位相量を可変制御する構成としてもよい。このように構成された第9の観点のマイクロ波加熱装置は、各々のマイクロ波発生部における位相量を独立して制御することができ、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも、加熱室内に放射されたマイクロ波を効率的に被加熱物に吸収させて、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行い、短時間での加熱を実現することが可能となる。
本発明に係る第10の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第1の観点における前記マイクロ波発生部が、前記電力増幅部に加熱室内部からの反射電力を検出する電力検出部と、制御部とを有し、前記電力増幅部への反射電力が最小となる周波数となるよう発振部の発振周波数を制御するよう構成してもよい。このように構成された第10の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく、被加熱物の加熱を効率的に行うことができる。
本発明に係る第11の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第10の観点における前記電力検出部の検出する反射電力が所定値以上になると前記電力増幅部が出力する電力を所定の割合で減ずる構成としてもよい。このように構成された第11の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく被加熱物の加熱を効率的に行うことができると同時に、加熱中も常時所定の反射電力以下となる位相差および発振周波数を維持できるため、被加熱物の温度上昇によって電波の吸収および反射の状態が変化しても常に効率的に被加熱物の加熱を行うことができる。
本発明に係る第12の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第10の観点における加熱動作の初期状態において、前記制御部が、使用可能な周波数帯域において前記電力検出部が検出した反射電力に関する周波数特性から反射電力が最小となる周波数を探索する最小反射電力探査動作を行うよう構成してもよい。このように構成された第12の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも、反射電力を最小に抑制して被加熱物の加熱を効果的に行うことができる。
本発明に係る第13の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第12の観点における前記制御部が、前記最小反射電力探査動作を行うとき、前記電力増幅部の出力を低下させ、前記最小反射電力探査動作が終了して反射電力が最小となる周波数により加熱動作を行うときに前記電力増幅部の出力を上昇させるよう構成してもよい。このように構成された第13の観点のマイクロ波加熱装置は、様々な形状、種類、大きさ、量の異なる被加熱物が加熱室に載置された場合でも過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく被加熱物の加熱を効率的に行うことができる。
本発明に係る第14の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第10の観点における加熱動作において、前記制御部が、前記電力検出部が逐次検出した反射電力において、より小さい値となる周波数を選択して加熱動作を継続させる極小反射電力追尾動作を行うよう構成してもよい。このように構成された第14の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱動作中においても、反射電力を最小化し、被加熱物の加熱を効果的に行うことができる。
本発明に係る第15の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第14の観点における前記制御部が、前記極小反射電力追尾動作において、前記電力検出部が検出した反射電力の値が所定値を越えた場合には前記電力増幅部の出力を低下させるよう構成してもよい。このように構成された第15の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱動作中において、過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく被加熱物の加熱を効率的に行うことができる。
本発明に係る第16の観点のマイクロ波加熱装置は、前記第14の観点における前記制御部が、前記極小反射電力追尾動作において、前記電力検出部が検出した反射電力の値が所定値を越えた場合には、加熱動作を停止して、前記最小反射電力探査動作を実行して反射電力が最小となる周波数を探索するよう構成してもよい。このように構成された第16の観点のマイクロ波加熱装置は、加熱動作中において、過大な反射電力によって増幅部に致命的な損傷を負わせることなく、信頼性の高い装置となる。
本発明によれば、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部を加熱室が構成される壁面に最適に配置するとともに第1の給電部から放射されたマイクロ波の反射電力を第2の給電部から加熱室内へ再放射するよう構成することにより、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物を効率高く所望の状態で加熱するマイクロ波加熱装置を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成を示す模式図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置における給電部の配置例を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置における第1の給電部の支配的な励振方向を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置における第2の給電部の支配的な励振方向を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置の位相差および発振周波数の制御例を示すフローチャート 実施の形態1のマイクロ波加熱装置の最小反射電力探査動作を示すフローチャート 図5に示す最小反射電力探査動作における周波数特性の一例を示す図 実施の形態1のマイクロ波加熱装置の極小反射電力追尾動作を示すフローチャート 図7に示す極小反射電力追尾動作を説明する図 図7に示す極小反射電力追尾動作の異常時の動作を示す図 マイクロ波加熱装置において、位相差調整による加熱室内部の電磁界分布の実験に用いた加熱室を上方から見た平面断面図 マイクロ波加熱装置において、位相差0度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差40度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差80度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差120度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差160度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差200度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差240度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差280度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 マイクロ波加熱装置において、位相差320度の加熱室内部の電磁界分布の実験結果を示す等温線図 本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置における給電部の配置例を示す図 本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置における最小反射電力探査動作を説明する図 実施の形態3のマイクロ波加熱装置における最小反射電力探査動作を説明する図
以下、本発明に係るマイクロ波加熱装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは1つの例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置は、電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置などのマイクロ波加熱装置を含むものである。また、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同じ技術的思想に基づく構成が本発明に含まれる。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成を示す模式図である。特に、図1においては実施の形態1のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波発生手段であるマイクロ波発生部の構成をブロック図で示している。
図1において、実施の形態1のマイクロ波発生部は、半導体素子を用いて構成した2つの発振部2a,2b、各発振部2a,2bの出力を2分配する電力分配部3a,3b、分配部3a,3bのそれぞれの出力を増幅する電力増幅部5a,5b,5c,5d、電力増幅部5a,5b,5c,5dによって増幅されたマイクロ波出力を加熱室10の内部に放射する第1の給電部8a,8b,8c,8d、および、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った反射電力を循環型の非可逆回路7a,7b,7c,7dを介して加熱室内部に再放射する第2の給電部9a,9b,9c,9dを具備している。
循環型の非可逆回路7a,7b,7c,7dは3つの入出力のポートを有しており、第1のポートから入力されたマイクロ波電力は第2のポートへと導かれ、第3のポートには現れない。また、第2のポートから入力されたマイクロ波電力は全て第3のポートへと導かれ、第1のポートへは現れないように動作する。一般に、このように動作する循環型の非可逆回路をサーキュレータと称している。以下の本明細書においては、非可逆回路7a,7b,7c,7dをサーキュレータと称して説明する。
また、実施の形態1のマイクロ波発生部は、電力分配部3a,3bと電力増幅部5a,5b,5c,5dとを接続するマイクロ波伝送路に挿入され、電力増幅部5a,5b,5c,5dへの出力に任意の位相差を発生させる位相可変部4a,4b,4c,4dと、電力増幅部5a,5b,5c,5dと第1の給電部8a,8b,8c,8dとを接続するマイクロ波伝送路に挿入され、第2の給電部9a,9b,9c,9dが受け取った加熱室内部からの反射電力を検出する電力検出部6a,6b,6c,6dと、電力検出部6a,6b,6c,6dからの検出信号が入力され、発振部2a,2bと位相可変部4a,4b,4c,4dと電力増幅部5a,5b,5c,5dを駆動制御する制御部12と、有している。
電力検出部6a,6b,6c,6dと第1の給電部8a,8b,8c,8dとの間に挿入されたサーキュレータ7a,7b,7c,7dは、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った反射電力を第2の給電部9a,9b,9c,9dに導いている。制御部12は、電力検出部6a,6b,6c,6dによって検出された反射電力に応じて発振部2a,2bの発振周波数と、位相可変部4a,4b,4c,4dの位相量と、電力増幅部5a,5b,5c,5dの増幅率を制御する。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、被加熱物11を収納する略直方体構造からなる加熱室10を有し、加熱室10は金属材料からなる左壁面、右壁面、底壁面、上壁面、奥壁面、および被加熱物11を収納するために開閉する開閉扉(図1においては手前側であり、図示省略)で構成されている。上記のように構成された加熱室10は、開閉扉が閉じた状態において、加熱室内に供給されたマイクロ波を内部に閉じ込めて、マイクロ波が漏れないように構成されている。また、加熱室内には被加熱物11を載置するための載置台13が設けられている。
また、実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生部の出力が伝送されて、そのマイクロ波を加熱室内に放射供給する2組の給電部である、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dが加熱室10を構成する各壁面に配置されている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御的に対となる給電部が対向する壁面に配置されている。即ち、左壁面および右壁面の略中央には、第1の電力分配部3aにより分配されたマイクロ波が供給される制御的に対となる第1の給電部8a,8bがそれぞれ配置されている。また、左壁面および右壁面には、制御的に対となる第1の給電部8a,8bが受け取った反射電力をサーキュレータ7a,7bを介して出力する、制御的に対となる第2の給電部9a,9bがそれぞれ配置されている。
実施の形態1において、第1の給電部8a,8bは、左壁面および右壁面の略中央に配置された例を示しているが、それらのマイクロ波放射方向が完全に対向しないようにずれて配置されている。また、第2の給電部9a,9bにおいても、左壁面および右壁面に配置された例を示しているが、それらのマイクロ波放射方向が完全に対向しないようずれて配置されている。第2の給電部9a,9bのそれぞれは、各第1の給電部8a,8bの下側に配置されており、載置台13上の被加熱物11に対して確実にマイクロ波が照射される位置に配置されている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、加熱室10の上壁面と底壁面の略中央に制御的に対となる第1の給電部8c,8dを配置し、同様に加熱室10の上壁面と底壁面に第2の給電部9c,9dを配置した構成を示している。しかし、本発明のマイクロ波加熱装置の構成は、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における各給電部の配置に拘束されるものではなく、各種対応が可能である。例えば、いずれか1つの壁面に複数の第1の給電部を設けてもよいし、対向面ではない壁面、例えば右壁面と底壁面のような隣接する壁面に制御的に対となる給電部を設けた構成も可能である。
半導体素子を有して構成された電力増幅部5a,5b,5c,5dは、低誘電損失材料により形成された誘電体基板の片面に形成した導電体パターンにて回路を構成し、各電力増幅部5a,5b,5c,5dの増幅素子である半導体素子を良好に動作させるべく、各半導体素子の入力側と出力側にそれぞれ整合回路を配している。
各々の機能ブロックを接続するマイクロ波伝送路は、誘電体基板の片面に設けられた導電体パターンによって特性インピーダンスが略50Ωの伝送回路が形成されている。
第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bは、例えばウィルキンソン型分配器のような出力間に位相差を生じない同相分配器であってもよいし、ブランチライン型やラットレース型のような出力間に位相差を生じる分配器であってもよい。第1の電力分配部3aは、第1の発振部2aから入力されたマイクロ波電力の略1/2の電力を2つの位相可変部4a,4bにそれぞれ出力する。また、第2の分配部3bは、第2の発振部2bから入力されたマイクロ波電力の略1/2の電力を2つの位相可変部4c,4dにそれぞれ出力する。
また、各位相可変部4a,4b,4c,4dは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成されており、各位相可変部4a,4b,4c,4dの位相可変範囲は、0度から略180度の範囲である。したがって、各位相可変部4a,4b,4c,4dより出力されるマイクロ波電力の位相差は、0度から±180度の範囲内で制御することが可能である。
電力検出部6a,6b,6c,6dは、加熱室10側から第2の給電部9a,9b,9c,9dが受け取り、サーキュレータ7a,7b,7c,7dを介して電力増幅部5a,5b,5c,5dに伝送される、いわゆる反射波の電力を抽出するものである。電力検出部6a,6b,6c,6dの電力結合度は、例えば約40dBであり、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。電力検出部6a,6b,6c,6dにより検出された電力信号はそれぞれ、検波ダイオード(図示省略)で整流し、コンデンサ(図示省略)で平滑処理して、その平滑された信号が制御部12に入力される。
制御部12は、ユーザが直接入力する被加熱物の加熱条件あるいは加熱中に被加熱物の加熱状態から得られる加熱情報、および電力検出部6a,6b,6c,6dにより検出された電力信号である反射電力の情報などに基づいて、マイクロ波発生部の構成要素である第1の発振部2a、第2の発振部2b、および電力増幅部5a,5b,5c,5dのそれぞれに供給する駆動電力の制御、並びに位相可変部4a,4b,4c,4dに供給する電圧を制御して、加熱室10内に収納された被加熱物11をユーザが所望する状態となるよう最適に加熱する。また、マイクロ波発生部には主に電力増幅部5a,5b,5c,5dに設けられた半導体素子の発熱を放熱させるための放熱手段(図示省略)が設けられている。
また、第1の給電部8a,8b,8c,8dから放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、第2の給電部9a,9b,9c,9dから放射するマイクロ波の支配的な励振方向と一致しないように、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dが以下のように構成されている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、加熱室10の各壁面に設けられた第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dは、開口部がアンテナとなる開口型の給電部である。図2は第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの開口部の形状の一例を示している。開口型の給電部においては、マイクロ波を加熱室内に放射するアンテナである開口部の形状が、マイクロ波の支配的な励振方向を決定する。
第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの構成は、効率的にマイクロ波を開口部から加熱室内に放射するために、開口部におけるインピーダンスと加熱室内の空間のインピーダンスとを整合させる必要がある。具体的には、加熱室内の開放空間に対して開口部における反射が−20dB以下となるように開口部のインピーダンスを設計すると、開口部に対して供給する電力の99%が開口部から放射されることになる。
また、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの各開口部は、いわゆるアンテナとして機能するため、各給電部へマイクロ波を導く導波路内において単一のモードのマイクロ波が存在するように設定するとインピーダンスの設計が容易になる。電磁波の伝搬形態としては、TEモード(Transverse Electric Mode)、TMモード(Transverse Magnetic Mode)、およびTEMモード(Transverse Electromagnetic Mode)の3形態がある。例えば、放射するマイクロ波の周波数が電子レンジにおいて使用されている2450MHz±50MHzの周波数帯域であって、長方形状の開口部における長辺と短辺の長さの比が2:1である矩形状の導波管を用いた場合、短辺に垂直な方向に電界が立つTE10モードでマイクロ波を伝播させるためには、開口部の長辺の長さが110mmであり、短辺の長さが55mmの、いわゆるWR−430導波管(EIA規格名)が用いられる。このときの管内波長λgは約148mmとなり、開口部の短辺の長さをλg/4程度に設計しておくと、開口部から効率的にマイクロ波が放射される。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成においては、発明者が各種実験を行い検討した結果、給電部の各開口部における短辺の長さを30mm、長辺の長さを80mmと設定した。この設定した長さは、厳密には管内波長の1/4とは相違しているが、この程度の相違は本発明の効果を損なうものではない。
図3Aおよび図3Bは、加熱室10の左壁面に設けられた第1の給電部8aおよび第2の給電部9aの各開口部から放射されるマイクロ波の支配的な励振方向を示す図である。図3Aは第1の給電部8aの開口部における励振方向(図3Aにおいては上下方向)を矢印で示しており、図3Bは第2の給電部9aの開口部における励振方向(図3Bにおいては左右方向)を矢印で示している。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、左壁面の第1の給電部8a、右壁面の第1の給電部8b、底壁面の第1の給電部8c、および上壁面の第1の給電部8dがそれぞれ放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、ほぼ一致するように構成されている。また、左壁面の第2の給電部9a、右壁面の第2の給電部9b、底壁面の第2の給電部9c、および上壁面の第2の給電部9dが放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、ほぼ一致するように構成されている。しかし、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dの各開口部は、図2に示すように配設されているため、第1の給電部8a,8b,8c,8dが放射するマイクロ波と、第2の給電部9a,9b,9c,9dが放射するマイクロ波の支配的な励振方向は、一致しないものとなっている。
図2に示したように、実施の形態1においては、例えば左壁面の第1の給電部8aの開口部と第2の給電部9aの開口部におけるそれぞれの長手方向が直交するように構成した例で説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、第1の給電部8aの開口部の長手方向と第2の給電部9aの開口部の長手方向のなす角度を、90度の他に、30度、45度等の任意の角度に設定することが可能である。
図3Aおよび図3Bに示すように、各開口部から放射されるマイクロ波の支配的な励振方向は、開口部の長手方向に対して垂直な短辺方向であり、この短辺方向に支配的なマイクロ波が励振されて、開口部から放射されている。したがって、開口部において支配的な方向に振動するマイクロ波は、このマイクロ波が放射される開口部においては容易に通過するのに対して、その開口部の短辺方向と異なる方向(例えば、短辺方向から90度回転した長手方向)に振動するマイクロ波は、その開口部を通過することが困難となる。このため、第1の給電部8a,8b,8c,8dの各開口部から放射されたマイクロ波が、第2の給電部9a,9b,9c,9dの開口部内に直接的に伝送されることが極めて少なく、殆どのマイクロ波は加熱室内に放射されて、被加熱物11を加熱する。
[加熱動作]
次に、以上のように構成された実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱動作について説明する。
図4は実施の形態1のマイクロ波加熱装置において実行される加熱動作を示すフローチャートである。図4に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、実際に所定の出力で加熱動作(本加熱動作)を行う前の加熱動作初期状態において、加熱室10内に被加熱物11が配置された状態で、被加熱物11からの反射電力が最小となる周波数を探査する最小反射電力探査動作が行われる(ステップ1)。この最小反射電力探査動作においては、マイクロ波出力は低く抑えられている。ステップ1において検知された最小反射電力のときの周波数で第1の発振部2aおよび第2の発振部2bを発振させて、実際の所定の出力で加熱する本加熱動作が開始される(ステップ2)。この本加熱動作においては、極小反射電力追尾動作が実行される(ステップ3)。極小反射電力追尾動作は、ユーザが設定した加熱条件を満たした時点(例えば、設定時間、設定温度等を満たした時点)である加熱動作終了まで行われる(ステップ4)。実施の形態1のマイクロ波加熱装置における最小反射電力探査動作および極小反射電力追尾動作の詳細については、後述する。
まず始めに、ユーザが被加熱物11を加熱室内に配置して、その被加熱物11に関する加熱条件を操作部(図示していない)において入力する。ユーザが加熱開始キーを押圧することにより、加熱開始信号が生成されて、その加熱開始信号が制御部12に入力される。加熱開始信号が入力された制御部12は制御出力信号を生成し、マイクロ波発生部は動作を開始する。制御部12は、駆動電源(図示省略)を稼働して、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bに電力を供給する。この時、制御部12は、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bに対して、初期の発振周波数、例えば2400MHzに設定される信号を供給して、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bにおける発振を開始させる。
第1の発振部2aおよび第2の発振部2bが発振動作を開始すると、それぞれの出力は第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bにおいて、各々略1/2に分配されて、4つのマイクロ波電力信号が形成される。分配されたマイクロ波電力信号は、各位相可変部4a,4b,4c,4dを介して電力増幅部5a,5b,5c,5dにそれぞれ入力される。制御部12は、駆動電源を制御して、各電力増幅部5a,5b,5c,5dの出力を制御する。
第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bにおいて分配されて形成されたマイクロ波電力信号は、位相可変部4a,4b,4c,4d、並列動作する電力増幅部5a,5b,5c,5d、そして電力検出部6a,6b,6c,6dを経て4つの第1の給電部8a,8b,8c,8dからマイクロ波電力として出力されて、加熱室10内に放射される。本加熱動作前の加熱動作初期状態における最小反射電力探査動作においては、各電力増幅部5a,5b,5c,5dはそれぞれ100W未満、例えば50Wの低いマイクロ波電力を出力する。最小反射電力探査動作においては、反射電力によって各増幅部5a,5b,5c,5dの発熱量が放熱可能な熱量を超えないように、低いマイクロ波電力がアンテナから加熱室10内に放射されるよう構成されている。
加熱室10内に供給されたマイクロ波電力が被加熱物11に100%吸収されると加熱室10からの反射電力は0Wになる。しかし、加熱室10内に収納される被加熱物11は、種類、形状、大きさ、および量がその都度異なるため、常にマイクロ波電力が被加熱物11に100%吸収されることはなく、加熱室10においては反射電力が発生する。被加熱物11の種類、形状、大きさ、および量により、被加熱物11を含む加熱室10の電気的特性が異なっている。このため、被加熱物11により決定される電気的特性に基づくマイクロ波発生部の出力インピーダンスと加熱室10のインピーダンスとに応じた反射電力が発生する。その反射電力は加熱室10内部からマイクロ波発生部側に伝送される。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、サーキュレータ7a,7b,7c,7dは、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った加熱室10内部から反射されたマイクロ波電力(反射電力)を第2の給電部9a,9b,9c,9dへ導き、第2の給電部9a,9b,9c,9dから加熱室10内部へ再放射するよう構成されている。
前述のように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、第1の給電部8a,8b,8c,8dと第2の給電部9a,9b,9c,9dのマイクロ波の励振方向が異なるように構成されているため、第1の給電部8a,8b,8c,8dから直接的に第2の給電部9a,9b,9c,9dへ伝送されるマイクロ波電力の量は極めて低く抑えられている。また、同じ理由により、第2の給電部9a,9b,9c,9dから直接的に第1の給電部8a,8b,8c,8dへ伝送されるマイクロ波電力の量は極めて低く抑えられている。このため、電力増幅部5a,5b,5c,5dが各々出力するマイクロ波電力は、第1の給電部8a,8b,8c,8dおよび第2の給電部9a,9b,9c,9dから加熱室10内部に確実に放射されて、反射電力の低減が図られており、被加熱物11を効率的に加熱する。
電力増幅部5a,5b,5c,5dとサーキュレータ7a,7b,7c,7dとの間に設けられた電力検出部6a,6b,6c,6dは、検出対象周波数帯域(例えば、2400MHz〜2500MHz)において、加熱室10内部からマイクロ波発生部側に伝送されてきた反射電力量を検出し、その反射電力量に比例した検出信号を抽出するものである。その反射電力量に比例した検出信号を受けた制御部12は、検出対象周波数帯域(例えば、2400MHz〜2500MHz)において、反射電力が最小値となる発振周波数の選択を行う。この発振周波数の選択動作において、制御部12は、位相可変部4a,4b,4c,4dにより、制御的に対となる第1の給電部8aと8b、および第1の給電部8cと8dにおいて生じる位相差を0度の状態で第1の発振部2aおよび第2の発振部2bの発振周波数を初期の2400MHzから、例えば1MHzピッチ間隔で徐々に高い周波数側に変化させて、周波数可変範囲の上限である2500MHzまで変化させていく。このときの反射電力が電力検出部6a,6b,6c,6dにより検知されて、その検知信号が制御部12に入力される。
このように制御部12が発振周波数に対する最小反射電力探査動作を行うことにより、制御部12は第1の発振部2aおよび第2の発振部2bの発振周波数に対する反射電力の変動状態を認識する。制御部12においては、検出対象周波数帯域において反射電力が最も小さくなる発振周波数を出力するように第1の発振部2aおよび第2の発振部2bを制御するとともに、ユーザが入力した被加熱物11に対する加熱条件に対応した加熱出力が得られるように、第1の発振部2a,第2の発振部2b,および各電力増幅部5a,5b,5c,5dを駆動制御する。駆動制御された各電力増幅部5a,5b,5c,5dの出力である所望のマイクロ波電力信号は、電力検出部6a,6b,6c,6dおよびサーキュレータ7a,7b,7c,7dを介して第1の給電部8a,8b,8c,8dに供給される。第1の給電部8a,8b,8c,8dは入力されたマイクロ波電力を加熱室10内の被加熱物11に出力し、第1の給電部8a,8b,8c,8dが受け取った反射電力をサーキュレータ7a,7b,7c,7dを介して第2の給電部9a,9b,9c,9dに供給する。第2の給電部9a,9b,9c,9dは反射電力のマイクロ波電力を加熱室10内部に放射し、被加熱物11を加熱する。
[最小反射電力探査動作]
次に、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において実際に所定の出力で加熱する本加熱動作の前に行われる最小反射電力探査動作について詳細に説明する。図5は、図4に示したマイクロ波加熱装置の加熱動作において行われる最小反射電力探査動作を示すフローチャートである。
最小反射電力探査動作は、ユーザが加熱開始キーを押圧することにより開始する。ステップ101においては、制御的に対となる給電部(例えば、第1の給電部8aと8b)から出力されるマイクロ波の位相差(Φ)を0に固定した状態で、且つ発振周波数(F(m))を検出対象周波数帯域の最低周波数(Fmin、例えば、2400MHz)に設定して加熱室側からの反射電力を検出する(ステップ102)。次に、最低周波数から最高周波数(Fmax、例えば、2500MHz)へ変化幅ΔFだけ徐々にm回上昇させていく(mは正の整数)。このとき、加熱室側からの反射電力を逐次検出していく(ステップ102)。この反射電力検出動作を検出対象周波数帯域の最高周波数まで継続する(ステップ102〜ステップ104)。反射電力検出動作において検出された反射電力に対する周波数特性に基づいて、最小反射電力値を示した周波数を検出して、その周波数を本加熱動作時の第1の発振部2aおよび第2の発振部2bの発振周波数とする(ステップ105)。なお、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の制御部12においては、各電力検出部6a,6b,6c,6dから入力される反射電力に関する周波数特性情報が合成されて1つの周波数特性曲線を算出して最小反射電力を示す周波数を検出している。
以上が実施の形態1のマイクロ波加熱装置において本加熱動作の前に実行される最小反射電力探査動作である。図6は、最小反射電力探査動作において、最低周波数(2400MHz)から最高周波数(2500MHz)までの周波数でスイープ動作を行い、反射電力の変動を測定した周波数特性の一例を示す図である。図6における反射電力曲線の最小値が最小反射電力周波数(fop)となる。
なお、本発明に係る実施の形態1において、最小反射電力探査動作は検出対象周波数帯域の最低周波数から最高周波数までの単一方向だけ行われる例で説明したが、検出対象周波数帯域の最高周波数から最低周波数までの単一方向でもよく、または往復動作で探査動作を行ってもよい。
上記のように最小反射電力探査動作を行うことにより、様々な形状、大きさ、量などの異なる被加熱物11に対して反射電力が最も小さくなる条件で加熱を開始することができ、電力増幅部5a,5b,5c,5dに備えられた半導体素子が反射電力によって過剰に発熱することを防止でき熱的な破壊を回避することができる。
[極小反射電力追尾動作]
次に、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、加熱動作中の本加熱動作において行われる極小反射電力追尾動作について説明する。極小反射電力追尾動作とは、本加熱動作中に行われる反射電力の極小値を逐次追尾する動作である。
前述の最小反射電力探査動作により検出された周波数による本加熱動作中においては、反射電力が極小値となるように極小反射電力追尾動作が行われる。以下の極小反射電力追尾動作の説明において、加熱動作中における第1の発振部2の発振周波数、および第1の発振部2からの出力が入力され、制御的に対となっている位相可変部4a,4bの位相差に関する制御について説明する。別の対である位相可変部4c,4dにおいても、位相可変部4a,4bと同様の制御が行われるため、ここでは代表して一方の制御的に対である位相可変部4a,4bの制御についてのみ説明し、位相可変部4c,4dの制御については省略する。
図7は、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、本加熱動作時に実行される極小反射電力追尾動作のフローチャートであり、第1の発振部2の発振周波数および位相可変部4a,4bの位相差を制御して、時々刻々変化する発振周波数近辺の反射電力の極小値を追尾するものである。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、位相可変部4a,4b,4c,4dが加熱開始から所定の変化量(ΔΦ)で徐々にその位相を変化させている。位相可変部4a,4bによって位相を変化させることによって加熱室内部において第1の給電部8a,8bが放射するマイクロ波の干渉する位置を変化させることができる。このため、加熱室10内に載置された被加熱物11の位置に応じて位相を制御して干渉位置を変動させることにより、被加熱物11を均等若しくは局部的に加熱することが可能となる。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱動作中においては、位相可変部4a,4bにおける位相差(Φ(n))(nは正の整数)を一定の時間間隔で、一定の変化幅ΔΦ、例えば10度毎に変化させる(S301)。このとき、第1の発振部2aは、位相可変部4a,4bが位相差を変える時間間隔と同じ間隔で一定の変化幅Δf、例えば0.1MHz毎に発振周波数を変化させていく(S302)。上記のように、位相可変部4a,4bの位相差および第1の発振部2aの発振周波数を変更する毎に電力検出部6a,6bにおいて反射電力(Pr(n))を検出する(S303)。
ステップ303において検出された反射電力(Pr(n))が予め設定した所定値Xより大きいか否かが判断される(ステップ304)。検出された反射電力(Pr(n))が所定値Xより大きい場合(Pr(n)>X)には、加熱室10内の被加熱物11等において初期状態と大きく異なる状態が生じたと判断して、本加熱動作を一旦中止して(ステップ305)、マイクロ波加熱装置において本加熱動作の直前に実行した最小反射電力探査動作が再度行われる(ステップ306)。この最小反射電力探査動作は、前述のように位相差を0度に設定して、検出対象周波数帯域の最低周波数(例えば、2400MHz)から一定変化幅(例えば、0.1MHz)毎に上昇させ、変化させる度に反射電力を検出するものである。最小反射電力探査動作が実行されることにより、被加熱物11を収納する当該加熱室における反射電力に関する周波数特性が検出される。制御部12は、検出した周波数特性に基づいて、最小反射電力となる周波数を検出し、その周波数で発振するように、第1の発振部2aおよび第2の発振部2bを制御する。以下、図4に示したステップ2以降が実行される。
一方、ステップ304において、検出された反射電力(Pr(n))が所定値Xより小さい場合(Pr(n)≦X)には、ステップ307へ移行する。制御部12は今回検出された反射電力(Pr(n))と前回検出された反射電力(Pr(n−1))とを比較し、今回検出された反射電力が減少していれば(Pr(n)≦Pr(n−1))、現在の発振周波数を維持する(ステップ308)。そして、変化幅Δfの符号(+)をそのまま維持して(ステップ309)、次のステップ301に移行する。このとき、当該被加熱物11に対する加熱条件が満たされていれば、この加熱動作は終了となり、同時に極小反射電力追尾動作も終了する(ステップ312)。
一方、ステップ307において、今回検出された反射電力が増大していれば(Pr(n)>Pr(n−1))、現在の発振周波数を前回の発振周波数に変更する(ステップ310)。そして、変化幅Δfの符号を逆(−)に変更して(ステップ311)、次のステップ301に移行する。このとき、当該被加熱物11に対する加熱条件が満たされていれば、この加熱動作は終了となり、同時に極小反射電力追尾動作も終了する(ステップ312)。
上記の極小反射電力追尾動作を本加熱動作中において繰返すことにより、位相差および発振周波数を徐々に変化させていきながら、当該加熱室10からの反射電力を常に極小値に向かうよう制御することができる。
なお、実施の形態1のマイクロ波加熱装置では、検出された反射電力(Pr(n))が予め設定した所定値Xより大きい場合(Pr(n)>X)には、本加熱動作を一旦中止して、最小反射電力探査動作を再度行う設定としている(ステップ306)。しかし、本加熱動作を一旦停止すると、調理などにおいて問題が生じる場合があるため、例えば電力増幅部5a,5b,5c,5dが出力する電力を所定の割合で減じていく構成としてもよい。
図8Aおよび図8Bは、極小反射電力追尾動作を示す反射電力に対する周波数特性図である。図8Aにおいて、(a)が前述の図6に示した本加熱動作前に検出した周波数特性図であり、(b)が本加熱動作中において変化した周波数特性において極小値が変化した状態を示している。図8Aの(b)において、破線が本加熱動作前の周波数特性曲線であり、実線が本加熱動作中の周波数特性曲線である。実施の形態1のマイクロ波加熱装置における加熱動作中の極小反射電力追尾動作により、反射電力の極小値を追尾して常に効率の高い加熱が可能となる。
ただし、図8Bに示すように、加熱動作中の周波数特性曲線が大きく変化した場合には、即ち図7のステップ304において反射電力値(Pr(n))が所定値Xより大きくなった場合には、極小反射電力追尾動作では極小値を追尾できないため、一旦本加熱動作を停止して最小反射電力探査動作を行う。図8Bにおいて、(a)が前述の図6に示した本加熱動作前に検出した周波数特性図であり、(b)が本加熱動作中において大きく変化した周波数特性曲線を示している。図8の(b)において、破線が本加熱動作前の周波数特性曲線であり、実線が本加熱動作中において大きく変化した周波数特性曲線である。
上記のように、極小反射電力追尾動作においては位相可変部4a,4bが一定の変化幅ΔΦ(例えば、位相差10度)で位相差Φを時々刻々変化させている。この位相可変部4a,4bによって生じる位相差Φを変化させることによって加熱室10内でのマイクロ波の干渉位置が変化するため被加熱物11を均等に加熱することが可能となる。一方、位相差Φを特定の値に固定することにより、加熱室10内でのマイクロ波の干渉位置を一定として、被加熱物11を局所的に加熱することが可能となる。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、上記のように加熱動作を制御することにより、加熱動作中においても電力検出部6a,6bが加熱室10からの反射電力を検出する構成であるため、制御部12が反射電力の状態を常に認識して、発振周波数を時々刻々微調整して、加熱室内部を常に反射電力が低い状態に維持することができる。また、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、位相差を変更する構成であるため、反射電力の状態を考慮して、位相差を時々刻々微調整して、加熱室内部を常に反射電力の低い状態に維持することが可能である。
したがって、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、半導体素子の発熱を低く抑えることが可能となり、加熱効率を高く維持することができるため、短時間での加熱を図ることが可能である。
また、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、許容可能な反射電力値を所定値として定め、その許容可能な反射電力値までの範囲内において、制御部12が時間的に位相可変部4a,4bの位相差と第1の発振部2aと第2の発振部2bの発振周波数を変化させる構成とすることも可能である。このように位相差と発振周波数を変化させることにより、加熱室10内でのマイクロ波の伝播状態を時間的に変化させることができるので、被加熱物11の局所加熱を解消し、加熱の均一化を図ることが可能である。
なお、上記の説明においては、第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bのそれぞれの出力に対して、2つの位相可変部4a,4b、および4c,4dを挿入した例で説明したが、第1の電力分配部3aおよび第2の電力分配部3bのいずれか一方の出力にのみ位相可変部を挿入して、その位相変化幅を0度から360度となるように調整することも可能である。
[位相制御動作]
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御部12からの制御信号により位相可変部4a,4b,4c,4dが対向して配置された制御的に対となる2つの第1の給電部8aと8b、および2つの第1の給電部8cと8dのそれぞれから放射されるマイクロ波の位相差を自在に変化させる構成を有している。このように位相可変部4a,4b,4c,4dにより、加熱室10において対向する位置から供給されるマイクロ波の位相を調整することにより、加熱室内部に所望の電磁波分布を形成することが可能となる。実施の形態1における位相可変部4a,4b,4c,4dは、印加電圧に応じて静電容量が変化する静電容量可変素子を用いて構成されており、位相可変範囲が0度〜180度の範囲である。なお、制御的に対の第1の給電部8aと8b、および第1の給電部8cと8dを対向する位置ではなく、対向しない位置、例えば同じ壁面における異なる位置や、隣接する壁面における位置に配設した場合であっても、位相を調整することにより加熱室10内の電磁波分布を変更することができる。
上記のように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の加熱動作時においては、アンテナとなる第1の給電部8a,8b,8c,8dにおいて制御的に対の第1の給電部8aと8b、および第1の給電部8cと8dから放射されるマイクロ波の位相差が、制御部12による位相制御により変化するよう構成されている。
以下、このように制御部12により位相制御を行うことにより被加熱物11を均等、若しくは局部的に加熱することが可能となる理由について説明する。
まず、マイクロ波加熱装置において、加熱室10を構成する壁面に対向して配置された給電部であるアンテナから放射されるマイクロ波において位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁界分布がどのような変化するかについて、本発明者が実験を行ったので以下に説明する。
図9は、実験に用いた加熱室10を上方から見た平面断面図である。この実験では、図9に示すように、初めに加熱室10の内部に所定量の水が入った複数のカップ(図9においてはCUとして表示)を整列配置した。その時の各カップ(CU)内の中央部(図9において点Pと表示)における水の温度を測定した。
そして、加熱室10の対向する壁面に配置されたアンテナ(A1,A2)から位相を変化させたマイクロ波を放射させた。その後、所定時間経過後にマイクロ波の放射を停止して、各カップ(CU)内の中央部の位置(P)において、マイクロ波放射による水の温度上昇値を測定した。
アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で複数の位相差を設定し、設定した位相差ごとに複数回のマイクロ波を放射した。なお、本実験では、位相差を0度〜320度の範囲において40度ごとに変えて測定した。
上記のように、マイクロ波加熱装置の加熱室内部の水平面内に配置された水の温度上昇値を測定することにより、加熱室内部におけるマイクロ波の電磁界分布を調査した。本実験によれば、水の温度上昇値が高い領域では電磁界分布が強いと判定でき、水の温度上昇値が低い領域では電磁界分布が弱いと判定できる。
図10は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を0度に設定した場合の実験結果を、水の温度上昇値に基づく等温線により示したものである。同様に、図11〜図18は、アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波の位相差を40度から320度の範囲において40度ごと変えて測定した場合の実験結果を等温線で示している。なお、図11〜図18に示した各位相差は、アンテナA2から放射されるマイクロ波の位相を基準として、アンテナA1から放射されるマイクロ波の遅れ位相を示している。
図10〜図18に示される実験結果によれば、水の温度上昇値は、加熱室内部において大きくばらついている。また、図13および図14に示すように、設定された位相差が120度および160度の場合には、加熱室10の一方の側面(左壁面)に近い領域(図13および図14においてHR1と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
また、図17および図18に示すように、設定された位相差が280度および320度の場合には、加熱室10の他方の側面(右壁面)に近い領域(図17および図18においてHR2と表示)で温度上昇値が非常に高くなっている。
以上の実験結果から、本発明者は、加熱室内の電磁界分布が、異なる位置に配置された2個のアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差に応じて変化することに着目した。本発明者は、例えば、対向する壁面等の異なる配置されたアンテナA1,A2から放射されたマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の被加熱物を均一に加熱することが可能であること、および被加熱物の特定の部分を集中的に加熱することが可能であることを見出した。
したがって、異なる位置に配置されたアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を所望の状態に変化させることができることが理解できる。このため、加熱ムラを解消させるために、従来行っていた加熱室内部に配置された被加熱物を加熱室内部で移動させるような機構は必要がなくなる。さらに、上記のように位相差を変化させることにより、加熱室内部の電磁波分布を変化させることができるため、従来行っていたマイクロ波を放射するアンテナを移動させるような機構は必要がなくなる。
また、上記の実験結果から明らかなように、対向して放射されたマイクロ波の衝突に起因した現象が電磁界分布の変化としてあらわれているため、アンテナA1とアンテナA2のそれぞれから放射されるマイクロ波の放射方向が交差するようにアンテナA1、A2を配設しても同様の現象が発生する。これは、例えば隣接する加熱室壁面にアンテナA1、A2を配設する構成においても実現できる。
したがって、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、電磁界分布を所望の分布とするために、被加熱物またはアンテナを移動させるための機構が必要ではなく、加熱室内部に被加熱物またはアンテナの移動用のスペースを確保する必要がない。その結果、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成は、低コスト化および小型化を実現することができる。
以上のように、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波を放射する機能を有する複数のマイクロ波供給手段である給電部を加熱室が構成される壁面に最適に配置するとともに、第1の給電部から放射されたマイクロ波の反射電力を第2の給電部から加熱室内へ再放射するよう構成することにより、形状、種類、大きさ、量の異なる様々な被加熱物を効率高く所望の状態で加熱することができる。
(実施の形態2)
図19は本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置における加熱室の給電部の構成を示す模式図である。実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、加熱室の壁面に配設されたアンテナである給電部の構成である。
図19に示すように、実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、加熱室210を構成する底壁面にのみ複数の給電部が設けられている。実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成と異なる点は、給電部の配置であり、図1に示したマイクロ波発生部の構成は同じであるため、実施の形態2においては異なる点のみについて説明する。
図19において、加熱室210の底壁面には、4つの第1の給電部208a,208b,208c,208dおよび4つの第2の給電部209a,209b,209c,209dが設けられている。図19に示すように、制御的に対となる第1の給電部208aと208bの各開口部は、その長手方向が左右方向となり、直線上に所定間隔を有して配置されている。また、第1の給電部208cと208dの各開口部は、その長手方向が前後方向となり、直線上に所定間隔を有して配置されている。4つの第1の給電部208a,208b,208c,208dは、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸を中心として、90度の角度を有して放射状に配置されている。
一方、制御的に対となる第2の給電部209aと209bの各開口部の長手方向は、並行に配置されており、底壁面において、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸から同じ距離に設けられている。実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、第2の給電部209aが第1の給電部208aと208dとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。同様に、第2の給電部209bが第1の給電部208bと208cとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。また、制御的に対となる第2の給電部209cと209dの各開口部の長手方向は、並行に配置されており、底壁面において、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸から同じ距離に設けられている。実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、第2の給電部209cが第1の給電部208aと208cとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。同様に、第2の給電部209dが第1の給電部208bと208dとの間で、それぞれに対して45度の角度に形成されている。
上記のように、4つの第1の給電部208a,208b,208c,208dは被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸を中心として放射状に配置されており、4つの第2の給電部209a,209b,209c,209dは、底壁面において、被加熱物が配置される加熱領域の略中心軸から同じ距離に対向するよう配置されている。実施の形態2においては、給電部を上記のように配置たれ例で説明するが、制御的について対となる給電部が同じ励振方向となるように配置され、第1の給電部からのマイクロ波が第2の給電部に伝送されないように構成するものであれば本発明に含まれ、同様の効果を奏するものである。
上記のように実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、底壁面に全ての給電部が設けられているため、前述の図1に示したマイクロ波発生部の構成をマイクロ波加熱装置における底部に集中的に配置することができる。実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生部が集中的に配置されているため、マイクロ波伝送路を短くすることができ、マイクロ波伝送路における損失を大幅に低減することができる。
マイクロ波伝送路としては、例えば基板上に設けたマイクロストリップ線路、セミリジッドケーブルのような同軸線路、または導波管が用いられる。マイクロストリップ線路には、一般的にはプリント基板を加工して線路を形成したものが用いられるが、実施の形態2においては誘電体シートの一方の面に線路となる導体を設け、他方の面に接地となる導体膜を張り付けて構成したものを用いた。なお、誘電体シートとしてはポリテトラフルオロエチレンなどの高周波においても低損失な材料が用いられる。また、マイクロ波伝送路として用いられる同軸線路としては、誘電体の内部に線路となる導体線が埋設され、ケーブル状の誘電体の外面に接地となる外殻導体が設けられているものが一般的に用いられる。上記のように、マイクロ波伝送路として用いられるマイクロストリップ線路と同軸線路は、誘電体と導体により構成されているため、誘電体における誘電体損および導体におけるオーム損が発生する。
また、一般的に用いられる導波管は、金属製の管(一般的には断面が矩形状の管)であり、損失は少ないが形状が大きくなるという不利な点を有する。例えば、2450MHz程度の周波数を導波管で伝送するためには、110mm×55mm程度の断面形状を有する矩形状の導波管が必要となる。このため、導波管の使用はマイクロ波発生部の占有空間が大きなものとなる。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波発生部を集中的に配置して、マイクロ波伝送路の長さを短くしている。このため、マイクロ波伝送路における損失が大幅に低減され、効率の高い加熱が可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置について添付の図20および図21を用いて説明する。実施の形態3のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波発生部における制御部の制御動作である。したがって、実施の形態3のマイクロは加熱装置において他の実施の形態1,2と異なる点について説明し、符号は実施の形態1の説明において用いた符号を参照する。
図20は、加熱動作の初期段階において実行される最小反射電力探査動作において4つの電力検出部6a,6b,6c,6dが検出した反射電力の周波数特性曲線の一例である。図20において、符号Aが第2の給電部9aが加熱室10側から受け取った反射電力をサーキュレータ6aを介して検出した反射電力の周波数特性曲線である。符号Bが第2の給電部9bが加熱室側から受け取った反射電力をサーキュレータ6bを介して検出した周波数特性曲線である。第2の給電部9aと9bは、制御的に対である第1の給電部8aと8bに対応するものである。同様に、符号Cが第2の給電部9cが加熱室10側から受け取った反射電力をサーキュレータ6cを介して検出した反射電力の周波数特性曲線である。符号Dが第2の給電部9dが加熱室側から受け取った反射電力をサーキュレータ6dを介して検出した周波数特性曲線である。第2の給電部9cと9dは、制御的に対である第1の給電部8cと8dに対応するものである。
図20の周波数特性曲線A,B,C,Dの一例が示すように、電力検出部6a,6b,6c,6dのそれぞれが検出する反射電力は、必ずしも同じ特性曲線を示し、同じ周波数で最小値を示すものではない。これは、加熱室内部に収納された被加熱物の形状が対称形状ではないなどに起因するものであり、それぞれの給電部から見た加熱室内のインピーダンスは異なっている。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置の制御部12(図1参照)においては、各電力検出部6a,6b,6c,6dから入力された反射電力に関する周波数特性を制御的に対となる周波数特性AとB、およびCとDをそれぞれ合成する。
図21は図20の周波数特性曲線AとB、および周波数特性曲線CとDを合成した周波数特性曲線である。図21において、周波数特性曲線Yが図20の周波数特性曲線AとBを合成して形成されたものである。また、周波数特性曲線Zが図20の周波数特性曲線CとDを合成して形成されたものである。
図21に示すように、周波数特性曲線AとBが合成されて形成された周波数特性曲線Yにおいては周波数f1において最小反射電力となり、周波数特性曲線CとDが合成されて形成された周波数特性曲線Zにおいては周波数f2において最小反射電力となる。したがって、制御的に対となる第1の給電部8aと8bから周波数f1のマイクロ波が出力されて反射電力の少ない効率的な加熱が行われる。同様に、制御的に対となる第1の給電部8cと8dから周波数f2のマイクロ波が出力されて反射電力の少ない効率的な加熱が行われる。
上記のように、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、制御的に対となっているそれぞれの給電部において、反射電力の少ない周波数を検出して、その周波数により加熱処理を行うよう構成されている。したがって、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置によれば、加熱システム全体として、反射電力の少ない状態で加熱することができ、最適な加熱周波数による加熱システムを構築することができる。
本発明のマイクロ波加熱装置によれば、被加熱物の加熱時において、制御的に対となる給電部から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、加熱室内の電磁波分布を変化させて、加熱室内に配置された加熱物を均一、若しくは局部的に加熱することが可能となる。
本発明のマイクロ波加熱装置においては、位相差を変化させることにより加熱室内の電磁波分布を変化させることができるため、加熱室内に配置された被加熱物を加熱室内で回転等の移動動作を行うことなく、被加熱物の均一加熱、若しくは局部加熱を行うことが可能となる。
また、本発明のマイクロ波加熱装置においては、被加熱物の均一加熱を行い、電磁波分布を変化させるために、マイクロ波を放射する給電部であるアンテナを移動させる必要がない。したがって、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物およびアンテナを移動させるための機構を必要としないため、加熱室内に被加熱物およびアンテナを移動させるための空間を確保する必要がなく、マイクロ波加熱装置の低コスト化および小型化を実現することができる。
前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、制御部が位相差を連続的または段階的に変化させる制御動作を行っているが、位相差を段階的に変化させる場合には、位相差を、例えば40度ごとに変化させてもよいし、45度ごとに変化させてもよい。この場合、一段階当りに変化させる位相差の値は上記の数値に限定されるものではなく、できる限り小さい値に設定することが好ましい。これにより、被加熱物をより均一に加熱して、不均一な加熱をより低減することができる。
なお、本発明のマイクロは加熱装置においては、位相差の変化の周期を、予め固定的に設定してもよいし、ユーザにより手動で任意に設定する構成としてもよい。位相差の変化の周期を固定的に設定する場合、例えば30秒で0度から360度まで変化するように設定してもよいし、10秒で0度から360度まで変化するように設定してもよい。
また、位相差の変化の範囲は、必ずしも0度から360度までの範囲の全てである必要はない。例えば、予め複数の位相差の値とその位相差の値に対応する電磁界分布との関係を制御部の内蔵メモリに記憶させておき、制御部が被加熱物の加熱状態に応じて複数の位相差の値を選択的に設定してもよい。具体的には、加熱室内に複数の温度センサを配置して、加熱室の加熱処理領域の温度を検知する構成とする。この場合、被加熱物の温度を複数の部位において測定することができ、被加熱物の温度分布を知ることができる。
このとき、制御部は、内蔵メモリに記憶された位相差と電磁界分布との関係に基づいて、均一加熱すべき被加熱物における低温度部分で電磁界が強くなるように位相差を設定する。このように位相差を調整することにより、被加熱物をより均一に効率高く加熱することができる。
本発明に係るマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を放射する複数の給電部を切り替え制御し、動作中の給電部間のマイクロ波の位相差を変化させることにより効率の高い加熱処理が可能となるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの各種用途に適用できる。

Claims (16)

  1. 被加熱物を収容する加熱室と、発振部と、前記発振部の出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部の出力をそれぞれ電力増幅する複数の電力増幅部と、前記電力増幅部の出力を前記加熱室に供給する複数の第1の給電部と、前記第1の給電部に入力された反射電力を前記加熱室に供給する複数の第2の給電部と、前記第1の給電部からの反射電力を前記第2の給電部へ供給する循環型の非可逆回路と、を備え、
    前記第1の給電部と前記第2の給電部は、前記加熱室へ供給するマイクロ波の励振方向が異なるように構成されたマイクロ波加熱装置。
  2. 前記発振部、前記電力分配部、前記電力増幅部、前記第1の給電部、前記第2の給電部および前記非可逆回路により構成されたマイクロ波発生部を少なくとも二組以上備えた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  3. 前記第1の給電部と前記第2の給電部が前記加熱室を構成する壁面における同一壁面に配置された請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
  4. 複数の前記第1の給電部が前記加熱室を構成する壁面における同一壁面に配置された請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
  5. 複数の前記第1の給電部が前記加熱室を構成する壁面における異なる壁面に配置された請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
  6. 複数の前記発振部が同一の周波数で発振するよう構成した請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
  7. 複数の前記発振部が異なる周波数で発振するよう構成した請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
  8. 前記マイクロ波発生部は、前記電力分配部の出力に接続され、前記電力分配部の出力位相を可変する位相可変部と、制御部とを有する請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
  9. 複数の前記位相可変部の各々が独立の位相量を可変制御する構成とした請求項8に記載のマイクロ波加熱装置。
  10. 前記マイクロ波発生部は、前記電力増幅部に加熱室内部からの反射電力を検出する電力検出部と、制御部とを有し、前記電力増幅部への反射電力が最小となる周波数となるよう発振部の発振周波数を制御するよう構成した請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  11. 前記電力検出部の検出する反射電力が所定値以上になると前記電力増幅部が出力する電力を所定の割合で減ずる構成とした請求項10に記載のマイクロ波加熱装置。
  12. 加熱動作の初期状態において、前記制御部は、使用可能な周波数帯域において前記電力検出部が検出した反射電力に関する周波数特性から反射電力が最小となる周波数を探索する最小反射電力探査動作を行うよう構成した請求項10に記載のマイクロ波加熱装置。
  13. 前記制御部は、前記最小反射電力探査動作を行うとき、前記電力増幅部の出力を低下させ、前記最小反射電力探査動作が終了して反射電力が最小となる周波数により加熱動作を行うときに前記電力増幅部の出力を上昇させるよう構成した請求項12に記載のマイクロ波加熱装置。
  14. 加熱動作において、前記制御部は、前記電力検出部が逐次検出した反射電力において、より小さい値となる周波数を選択して加熱動作を継続させる極小反射電力追尾動作を行うよう構成した請求項10に記載のマイクロ波加熱装置。
  15. 前記制御部は、前記極小反射電力追尾動作において、前記電力検出部が検出した反射電力の値が所定値を越えた場合には前記電力増幅部の出力を低下させるよう構成した請求項14に記載のマイクロ波加熱装置。
  16. 前記制御部は、前記極小反射電力追尾動作において、前記電力検出部が検出した反射電力の値が所定値を越えた場合には、加熱動作を停止して、前記最小反射電力探査動作を実行して反射電力が最小となる周波数を探索するよう構成した請求項14に記載のマイクロ波加熱装置。
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