JPWO2009014105A1 - 新規カルボン酸およびそれを有効成分とする抗うつ用組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、抑うつ気分やうつ状態の改善、とくに女性の更年期の抑うつ気分やうつ状態の改善に有効に使用できる新規化合物および抗うつ用組成物を提供する。本発明の化合物は、下記一般式(1):【化1】(式中、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基を意味する。また、nは2〜7の整数である)で示されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルであり、これを抗うつ用組成物の有効成分として使用する。当該化合物には(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2Z)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、および(2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸が含まれる。

Description

本発明は、新規カルボン酸およびその薬理作用を利用した用途に関する。より詳細には、本発明は新規カルボン酸およびそれを有効成分とする医薬組成物、特に抑うつ気分やうつ状態を予防または改善するのに有効な抗うつ剤に関する。また、本発明は、抑うつ気分やうつ状態を予防または改善するのに有効な方法に関する。
近年、ストレス社会を反映して、精神面に異常を訴える人々が顕在化している。特に、抑うつ気分又はうつ状態は、テクノストレスに代表される職場環境の変化、社会的ストレスの増大、身体的・精神的過労、生活リズムの乱れなどの理由で増加の一途をたどっている。これらの症状は、持続する不安・緊張・焦燥・葛藤などを背景に、喜怒哀楽の表出が不適切な情動障害を伴い、放置すればうつ病に移行する。うつ病は、その罹患患者の約10〜15%が自殺企図や自殺遂行をとるとの報告もあることから、大きな社会問題になっている。
従来、うつ病の治療には、三環系抗うつ薬やモノアミン酸化酵素阻害剤などの薬剤が用いられているが、これらの薬剤には自律神経系および循環器系に対する有害な副作用の発現も多く、長期の服用や高齢者の服用、予防的な服用には困難な状況にある。また、前記のように、うつ病の予防には抑うつ気分又はうつ状態を早期に改善することが重要である。しかし、抑うつ気分又はうつ状態は、環境の変化や直面する状況によっても一時的に陥ることがあることから、一般的には病気と認識されず、行動面に異常性が発現されるまで予防的処置が執られないことが多い。このため、副作用の発現が少なく、長期の服用や高齢者の服用が可能であり、予防的な服用が可能な抗うつ剤が求められている。
一方、本願発明が提供するカルボン酸に類似する化合物である10-ヒドロキシデセン酸に、種々の生理活性があることが知られている。例えば、特許文献1には、10-ヒドロキシデセン酸にはアルドースリダクターゼ阻害機能があり、グルコース代謝においてグルコースからソルビトールへの変換を抑制することによって、糖尿病を予防または治療することができることが記載されている。また、特許文献2には、10-ヒドロキシデセン酸には津液作用、すなわち体内から体外への水分分泌を促進させる作用があり、美肌作用、発毛作用、消化液分泌促進作用、便通促進作用、および利尿作用など、種々の効果があることが記載されている。しかしながら、10-ヒドロキシデセン酸について抗うつ作用は知られていない。また本発明者らの実験により、10-ヒドロキシデセン酸には抗うつ作用はないことが確認されている(後述する試験例1参照)。
特開平7−69879号公報 特開平10−114652号公報
本発明は、新規化合物、特に抗うつ作用があり、抗うつ剤といった医薬組成物の有効成分として有効に利用することができる化合物を提供することを目的とする。また本発明は、当該化合物を有効成分とすることによって、抑うつ気分又はうつ状態の改善、特に女性の更年期における抑うつ気分又はうつ状態の改善に有効に用いられる抗うつ用組成物を提供することを目的とする。また本発明は、副作用の発現が少なく、長期の服用が可能な抗うつ用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討していたところ、下式(1)に示す化合物:
Figure 2009014105
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基を意味する。また、nは2〜7の整数である)
で示される新規のカルボン酸、特に(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2Z)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、および(2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸といった新規のカルボン酸に、優れた抗うつ作用があり、特に女性の更年期における抑うつ気分又はうつ状態の緩和に有効であることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。本発明は、下記の実施態様を包含する。
(I)新規カルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル
(I-1)下記一般式(1):
Figure 2009014105
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基を意味する。また、nは2〜7の整数である)
で示されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(I-2)上記カルボン酸が、(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2Z)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、および(2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸からなる群から選択されるいずれかの化合物である、(I-1)記載のカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(I-3)上記(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸が、(2E,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2E,9S)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、またはこれらの混合物である(I-2)に記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(I-4)上記(2Z)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸が、(2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2Z,9S)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、またはこれらの混合物である(I-2)に記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(I-5)上記(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸が、(2E,9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、(2E,9S)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、またはこれらの混合物である(I-2)に記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(II)上記新規カルボン酸等を有効成分とする組成物
(II-1)上記(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分とする医薬組成物。
(II-2)抗うつ剤である、(II-1)に記載する医薬組成物。
(II-3)女性の更年期における抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善するために、更年期にある女性に対して投与される、(II-1)または(II-2)に記載する医薬組成物。
(II-4)(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分とする抗うつ用組成物。
(II-5)女性の更年期における抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善するために、更年期にある女性に対して用いられる、(II-4)に記載する抗うつ用組成物。
(III)上記新規カルボン酸等の用途
(III-1)抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善するための(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(III-2)女性の更年期における抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善するために、更年期にある女性に対して用いられる、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
(III-3)(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルの、医薬組成物の製造のための使用。
(III-4)上記医薬組成物が抗うつ剤である(III-3)に記載する使用。
(III-5)抗うつ剤が女性の更年期における抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善するためのものである、(III-4)に記載する使用。
(III-6)(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルの、抗うつ用組成物の製造のための使用。
(III-7)抗うつ用組成物が女性の更年期における抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善するためのものである、(III-6)に記載する使用。
(IV)抗うつ方法
(IV-1) 抑うつ気分またはうつ状態にある人に、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することからなる、抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善する方法。
(IV-2)更年期にある女性に、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することからなる、更年期における抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善する方法。
本発明によれば、抗うつ作用を有し、医薬組成物、特に抗うつ剤の有効成分として有用な新規化合物を提供することができる。また本発明によれば、これらの化合物を有効成分とする抗うつ用組成物を提供することができる。当該抗うつ用組成物は、特に女性の更年期における抑うつ気分やうつ状態の改善に有効に用いることができる。
特に本発明の抗うつ作用を有する組成物の有効成分である(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸は優れた抗うつ作用を有するともに、安全性が高いため、副作用が少なく、長期使用が可能である。このため、本発明の組成物は、抑うつ気分やうつ状態の改善に加えて、予防的使用にも有効に使用することができる。
(I)新規カルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル
本発明が対象とする新規化合物は、下記一般式(1):
Figure 2009014105
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基を意味する。また、nは2〜7の整数である)
で示されるカルボン酸である。
ここでRとRは、上記するように、いずれも同一の水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基であってもよいし、また互いに異なる基(水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基)であってもよい。Rとして、好ましくは水素原子、ヒドロキシ基、およびアセチルオキシ基、より好ましくは水素原子およびヒドロキシ基である。Rとして好ましくは、水素原子およびヒドロキシ基、好ましくはヒドロキシ基である。RとRとの組み合わせとして、Rが水素原子またはヒドロキシ基である場合、Rはヒドロキシ基であることが好ましく、またRがアセチルオキシ基である場合、Rは水素原子であることが好ましい。
nは、上記するように2〜7から選択されるいずれの整数であってもよいが、好ましくは2〜5である。
本発明が対象とする化合物(1)は、シス型またはトランス型のいずれであってもよく、本発明の化合物(1)には、これらのシス異性体およびトランス異性体の両者が含まれる。また本発明の化合物(1)のうち、Rが水素原子またはヒドロキシ基であり、Rがヒドロキシ基である化合物には、2位の炭素をキラル中心とする鏡像異性体(R体およびS体)が含まれる。すなわち、本発明が対象とする化合物(1)のうち、Rが水素原子またはヒドロキシ基であり、Rがヒドロキシ基である化合物は、2位の炭素をキラル中心とする鏡像異性体、R体またはS体のいずれであってもよく、またこれらを任意の割合で含有する混合物、例えばラセミ化合物であってもよい。
かかる化合物(1)には、制限されないが、具体的に下記に示す化合物((1a)〜(1f))が含まれる:
Figure 2009014105
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基を意味する。また式中*を付けた炭素はキラル中心(不斉炭素)であり、上記式にはR体およびS体の両方の化合物が含まれる。)
なかでも好ましくは、上記式(1e)または(1f)で示される化合物のうち、R基およびR基がヒドロキシ基である、下式(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸である。
Figure 2009014105
当該(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸には、下式(i)で示されるR体((2E,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)と、下式(ii)で示されるS体((2E,9S)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)の鏡像異性体(エナンチオマー)が存在する。
Figure 2009014105
本発明が対象とする(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸は、かかるエナンチオマー、すなわちR体((2E,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)またはS体((2E,9S)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)のいずれでもよく、またこれらを任意の割合で含有する混合物、例えばラセミ化合物であってもよい。
また好適な化合物として、上記式(1e)または(1f)で示される化合物のうち、R基が水素原子およびR基がヒドロキシ基である、下式(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸である。
Figure 2009014105
当該(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸には、下式(iii)で示されるR体((2E,9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸)と、下式(iv)で示されるS体((2E,9S)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸)の鏡像異性体(エナンチオマー)が存在する。
Figure 2009014105
本発明が対象とする(2E)-9-ジヒドロキシ-2-デセン酸は、かかるエナンチオマー、すなわちR体((2E,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)またはS体((2E,9S)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)のいずれでもよく、またこれらを任意の割合で含有する混合物、例えばラセミ化合物であってもよい。
また好適な化合物として、上記式(1a)または(1b)で示される化合物のうち、R基がアセチルオキシ基およびR基が水素原子である、下式(2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸である。
Figure 2009014105
本発明の化合物(1)は、カルボン酸フリーの形態であっても、またその薬学的に許容される塩もしくはエステル体の形態を有するものであってもよい。
ここで薬学的に許容される塩としては、無機塩基または有機塩基との塩、または塩基性アミノ酸との塩を挙げることができる。無機塩基としては。例えばナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩;カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩やアルミニウム塩を挙げることができる。また有機塩基としては、例えばエタノールアミンなどの第一級アミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどの第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、ピコリンなどの第三級アミンなどを挙げることができる。塩基性アミノ酸としては、例えばリジン、アルギニンおよびオルニチンなどを挙げることができる。また、エステルとしては対応するカルボン酸のC1〜6低級アルキルエステル(例えばメチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル)、および対応するC1〜6低級アルキルチオエステル(例えば、メチルチオエステル、エチルチオエステル、n-プロピルチオエステル)の他、対応するカルボン酸のジ、もしくはオリゴエステルを挙げることができる。
本発明の一般式(1)で示される化合物のうち、R及びRが共にヒドロキシ基を示す化合物は、例えば、商業的に入手可能な4-(2-hydroxyethyl)-2,2-dimethyl-1,3-dioxolane(2)を出発原料として、下記反応式−1に示す方法により製造することができる。
<反応式−1>
Figure 2009014105
[式中、Tsはトシル基、Xはハロゲン原子、R及びRは同一又は異なってC1−6アルキル基を示す。nは前記に同じ。]。
化合物(3)は、化合物(2)とp−トシルハライドとを反応させることにより製造される。p−トシルハライドとしては、例えば、p−トシルクロライド、p−トシルブロマイド等が挙げられる。化合物(2)とp−トシルハライドとの使用割合としては、通常前者1モルに対して後者を0.5〜2モル程度とするのがよい。この反応は、一般に適当な不活性溶媒中で行われる。不活性溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない公知の溶媒を広く使用でき、例えば、ピリジン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。該反応は、−10〜10℃付近で好適に進行し、一般に5〜10時間程度で反応は完了する。
化合物(5)は、化合物(3)と入手が容易な公知の化合物(4)とを反応させることにより製造される。化合物(4)におけるXには、例えば、塩素や臭素等が含まれる。化合物(3)と化合物(4)との使用割合としては、通常前者1モルに対して後者を0.5〜2モル程度とするのがよい。この反応は、一般に適当な不活性溶媒中、触媒の存在下で行われる。不活性溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない公知の溶媒を広く使用でき、例えば、テトラヒドロフラン、エーテル等が挙げられる。触媒としては、例えば、ヨウ化銅等が挙げられる。該反応は、室温〜50℃付近で好適に進行し、一般に2〜5時間程度で反応は完了する。
化合物(6)は、化合物(5)にオゾンを反応させ、次いで得られる化合物に硫化メチルを反応させることにより製造される。化合物(5)とオゾンとの反応は、一般に適当な不活性溶媒中で行われる。不活性溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない公知の溶媒を広く使用でき、例えば、塩化メチレン、メタノール等が挙げられる。該反応は、−80〜−70℃付近で好適に進行し、一般に10分〜1時間程度で反応は完了する。引続き行われる硫化メチルとの反応は、化合物(5)とオゾンとの反応と同一の溶媒中で行われる。該反応は、−80℃〜室温付近で好適に進行し、一般に2〜8時間程度で反応は完了する。
化合物(8)は、化合物(6)と入手が容易な公知の化合物(7)とを反応させることにより製造される。化合物(6)と化合物(7)との使用割合としては、通常前者1モルに対して後者を0.5〜2モル程度とするのがよい。この反応は、一般に適当な不活性溶媒中、触媒の存在下で行われる。不活性溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない公知の溶媒を広く使用でき、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。触媒としては、例えば、水素化ナトリウム等が挙げられる。該反応は、−10℃〜10℃付近で好適に進行し、一般に2〜5時間程度で反応は完了する。
化合物(1)(一般式(1)中、RとR2がいずれもヒドロキシ基の化合物)は、化合物(8)にトリフルオロ酢酸を反応させ、次いで得られる化合物に塩基を作用させることにより製造される。化合物(8)とトリフルオロ酢酸との反応は、一般に適当な不活性溶媒中で行われる。不活性溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない公知の溶媒を広く使用でき、例えば、塩化メチレン、ジクロロメタン、メタノール等が挙げられる。該反応は、−10〜10℃付近で好適に進行し、一般に3〜10時間程度で反応は完了する。塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の公知のアルカリが使用される。塩基による処理は、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール中で行われる。塩基による処理は、通常室温付近で1〜5時間程度で行われる。
本発明の一般式(1)で表される化合物のうち、R及びRのいずれかが水素原子、又はアセチルオキシ基である化合物は、上記化合物(1)のヒドロキシ基を、水素原子、又はアセチルオキシ基に変換することにより製造される。より具体的には、後述する調製例3〜6に記載する方法に従って製造することができる。
本発明が対象とする塩およびエステル体は、上記方法で得られるカルボン酸から定法に従って調製することができる。例えば、エステル体は、上記カルボン酸をアルコールまたはチオールと反応させることによって調製することができる。
また、本発明の一般式(1)で示される化合物は、これらを含有する天然物から単離精製することもできる。具体的には上記式(i)または(ii)で示される(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸は、後述する調製例1および2に示すように、ローヤルゼリーから単離精製することができる。しかし、かかる化合物を単離できる方法であれば、これらの方法になんら限定されない。
(II)医薬組成物、抗うつ用組成物
本発明が対象とする医薬組成物および抗うつ組成物は、前述する一般式(1)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分とするものである。なお、当該医薬組成物および抗うつ組成物は、化合物(1)を溶媒和物、例えば水和物の形態で含有するものであってもよい。
化合物(1)として好ましくは、(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2Z)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、および(2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸である。本発明の組成物は、これらの化合物、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル(以下、これを総称して「DDA」という)100%からなるものであってもよいし、またそうでなくても抗うつ作用を発揮する有効量のDDAを含有するものであってもよい。制限されないが、本発明の組成物には、DDAが、通常0.001〜99重量%、好ましくは0.01〜80重量%の割合で含まれる。
本発明の抗うつ用組成物は、特に、うつ状態を改善し、またはうつ病を治療するための医薬組成物として有用である。ここでうつ状態とは、「抑うつ気分(気分の落ち込みや、何をしても晴れない厭な気分や、空虚感・悲しさ)」または「興味と喜びの喪失(以前までは楽しめたことにも楽しみを見いだせず、環状が麻痺した状態)」といった症状を有する状態である。また、こうした主要症状の1つを有し、また「自分には何も価値がないと感じる無価値感」、「自殺念慮・希死念慮」、「気力の低下と易疲労性」、「集中力・思考力・決断力の低下」、および「食欲低下や不眠などの身体的症状」といった症状が長期間持続する場合には、うつ病と診断される。なお、うつ病の診断は、例えば米国精神医学会作成のDSM−IV−TR(精神疾患の診断・統計マニュアル)によって行うこともできる。
本発明の抗うつ用組成物は、こうしたうつ状態またはうつ病の中でも、女性の更年期におけるうつ状態またはうつ病の予防、改善または治療に有効である。更年期は、卵巣機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)が減少するが、かかる女性ホルモンの急速な減少のために心身共に不安定な状態になりやすく、それがうつ状態を招き、またうつ病にかかりやすい原因になっていると考えられている。従って、本発明の抗うつ用組成物は、更年期においてうつ状態にある女性またはうつ病の女性に好適に用いることができる。
本発明の抗うつ用組成物は、通常、うつ状態の予防、改善またはうつ病の治療に有効量のDDAに加えて、薬学的に許容される担体または添加剤を配合して調製される。組成物中のDDAの配合量は、対象とするうつ状態の種類やその重篤度、また投与形態に応じて適宜選択されるが、通常、全身投与製剤の場合には、抗うつ用組成物の全体重量(100重量%)の0.001〜50重量%、特に0.01〜10重量%とすることができる。
本発明の抗うつ用組成物の投与方法として、経口投与、ならびに静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経粘膜投与、経皮投与、および直腸内投与等の非経口投与を挙げることができる。好ましくは経口投与および静脈内投与であり、より好ましくは経口投与である。本発明の抗うつ用組成物は、かかる投与方法に応じて、種々の形態の製剤(剤型)に調製することができる。以下に、各製剤(剤型)について説明するが、本発明において用いられる剤型はこれらに限定されるものではなく、医薬製剤分野において通常用いられる各種剤型を用いることができる。
経口投与を行う場合の剤型として、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤およびシロップ剤を挙げることができ、これらの中から適宜選択することができる。また、それらの製剤について徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、腸溶性化、易吸収化等の修飾を施すことができる。
また、静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与を行う場合の剤型として、注射剤または点滴剤(用時調製の乾燥品を含む)等があり、適宜選択することができる。
また、経粘膜投与、経皮投与、または直腸内投与を行う場合の剤型として、咀嚼剤、舌下剤、パッカル剤、トローチ剤、軟膏剤、貼布剤、液剤等があり、適応場所に応じて適宜選択するここができる。また、それらの製剤について徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、易吸収化等の修飾を施すことができる。
本発明の抗うつ用組成物にはその剤形(経口投与または各種の非経口投与の剤形)に応じて、薬学的に許容される担体および添加剤を配合することができる。薬学的に許容される担体及び添加剤としては、溶剤、賦形剤、コーティング剤、基剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、乳化剤、安定剤、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、矯味剤、芳香剤、着色剤が挙げられる。以下に、医薬上許容される担体および添加剤の具体例を列挙するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
溶剤としては、精製水、滅菌精製水、注射用水、生理食塩液、ラッカセイ油、エタノール、グリセリン等を挙げることができる。賦形剤としては、デンプン類(例えばバレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン)、乳糖、ブドウ糖、白糖、結晶セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、タルク、酸化チタン、トレハロース、キシリトール等を挙げることができる。
結合剤としては、デンプンおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体(たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、トラガント、アラビアゴム等の天然高分子化合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子化合物、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ等を挙げることができる。
滑沢剤としては、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸およびその塩類(たとえばステアリン酸マグネシウム)、タルク、ワックス類、コムギデンブン、マクロゴール、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、シリコン油等を挙げることができる。
崩壊剤としては、デンプンおよびその誘導体、寒天、ゼラチン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロースおよびその誘導体、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースおよびその塩類ならびにその架橋体、低置換型ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。
溶解補助剤としては、シクロデキストリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリピニルピロリドン、アラビアゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、クエン酸、各種界面活性剤等を挙げることができる。
粘稠剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリピニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、トラガント、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。
乳化剤は、アラビアゴム、コレステロール、トラガント、メチルセルロース、レシチン、各種界面活性剤(たとえば、ステアリン酸ポリオキシル40、セスキオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム)等を挙げることができる。
安定剤としては、トコフェロール、キレート剤(たとえばEDTA、チオグリコール酸)、不活性ガス(たとえば窒素、二酸化炭素)、還元性物質(たとえば亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ロンガリット)等を挙げることができる。
緩衝剤としては、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸等を挙げることができる。
等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等を挙げることができる。無痛化剤こしては、局所麻酔剤(塩酸プロカイン、リドカイン)、ペンジルアルコール、ブドウ糖、ソルビトール、アミノ酸等を挙げることができる。
矯味剤としては、白糖、サッカリン、カンゾウエキス、ソルビトール、キシリトール、グリセリン等を挙げることができる。芳香剤としては、トウヒチンキ、ローズ油等を挙げることができる。着色剤としては、水溶性食用色素、レーキ色素等を挙げることができる。
保存剤としては、安息香酸およびその塩類、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、逆性石けん、ベンジルアルコール、フェノール、チロメサール、デヒドロ酢酸、ホウ酸、等を挙げることができる。
コーティング剤としては、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、メチルメタアクリレート−メタアクリル酸共重合体および上記記載した高分子等を挙げることができる。
基剤としては、ワセリン、流動パラフィン、カルナウバロウ、牛脂、硬化油、パラフィン、ミツロウ、植物油、マクロゴール、マクロゴール脂肪酸エステル、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ベントナイト、カカオ脂、ウイテップゾール、ゼラチン、ステアリルアルコール、加水ラノリン、セタノール、軽質流動パラフィン、親水ワセリン、単軟膏、白色軟膏、親水軟膏、マクロゴール軟膏、ハードファット、水中油型乳剤性基剤、油中水型乳剤性碁剤等を挙げることができる。
なお、上記の各剤型について、公知のドラッグデリバリーシステム(DDS)の技術を採用することができる。本明細書にいうDDS製剤とは、徐放化製剤、局所適用製剤(トローチ、バッカル錠、舌下錠等)、薬物放出制御製剤、腸溶性製剤および胃溶性製剤等、投与経路、バイオアベイラビリティー、副作用等を勘案した上で、最適の製剤形態にした製剤である。
本発明の抗うつ用組成物の経口投与量としては、カルボン酸フリーの化合物(1)の量に換算して0.01〜100mg/kgの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜10mg/kgである。静脈内投与をする場合、カルボン酸フリーの化合物(1)の有効血中濃度が0.01〜1000μg/mL、より好ましくは0.02〜100μg/mLの範囲となるような投与量を挙げることができる。なお、これらの投与量は、年齢、性別、体型等により変動し得る。
以下、本発明をより詳細に説明するために調製例、試験例及び実施例を挙げるが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
調製例1 (2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸の調製
下記(1)〜(6)に示す方法に従って、ローヤルゼリーから(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を単離精製した(図1〜6参照)。
なお、当該単離精製工程で使用した機器などは、下記の通りである。
高速冷却遠心機:日立製CR-21 ローター: R10A
限外濾過膜 :Millipore製 Prep/Scale-TFF Cartridge PLGC10k 1ft2
ポンプ :Millipore製 濾過膜専用ローラーポンプ
凍結乾燥機 :東京理化製 FDU-540型。
(1)限外濾過膜によるA3画分の調整
乾燥粉末ローヤルゼリー(約150g)にイオン交換水(1.5L)を加え、室温で2時間攪拌した後、高速冷却遠心機を用いて遠心分離(10,000rpm, 18780×g, 10分)を行い、水溶性画分と不溶性画分に分画した。不溶性画分にイオン交換水(0.5L)加えて、同様の操作を2回行った(但し、攪拌は30分間)。
最終的に残った不溶性画分をB1画分とし、得られた3回分の水溶性画分を1つにまとめてA1画分とした。A1画分を10kDaの限外濾過膜にて分画し、分子量10,000以下をA3画分とした。
以上の操作を5回繰り返して行い、ローヤルゼリー乾燥粉末774gからA3画分(凍結乾燥物)454gを得た。
(2)A3画分からのゲル濾過による分画操作(図2)
(1)で調製したA3画分(凍結乾燥物:30〜35g)にイオン交換水(100ml)を加え、室温で30分攪拌した後、遠心分離(10,000rpm, 4℃,10分)によって上清と沈殿物(D5)に分画した。
上清をゲル濾過カラム(東ソー社:Toyopeal HW40F 2リットル、カラムサイズφ50×1000mm)に注入し、流速8ml/minで溶離液(イオン交換水)を流し、波長210nmのUVで検出しながら100ml毎に分画を行った。0.3〜1.2LまでをD1画分、1.3〜2.6LまでをD2画分、2.7〜4.4LまでをD3画分、4.5〜5.0LまでをD4画分とした。
この操作を13回繰り返して行い、A3画分(凍結乾燥物)417.4gからD4画分(凍結乾燥物)4.66gを得た。
(3)D4画分からの逆相(ODS)中圧クロマトグラフィーによる分画操作(図3)
(2)で調製したD4画分をアセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸水溶液の等量(1:1)混合液に溶解し、下記条件で、分取用逆相カラム(Hi-Flash-Column ODS-8-50W-L(36g, 2.6×100mm))を用いて中圧クロマト分取装置(山善株式会社製 YFLC-Wprep2XY-W10V)にて分画を行った。
<クロマトグラフィー条件>
流速:20ml/min, 1分毎に分画
溶出溶媒:アセトニトリル:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液[98:2(8分)→0.01分→100:0(10分)]
検出:UV 254nm。
アセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸水溶液の(2:98)混合液で吸着しない画分をD4-I画分、アセトニトリル100%で溶出する画分をD4-II画分とした。同じ操作を3回繰り返し、D4画分(凍結乾燥物)(2.76g)から、D4-I画分(凍結乾燥物)(0.81g)とD4-II画分(凍結乾燥物)(2.26g)を得た。
(4)D4-II画分からの逆相(ODS)高速液体クロマトグラフィーによる分画操作(図4)
(3)で調製したD4-II画分を、アセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸水溶液の(2:5)混合液に溶解し、下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製を行った。
<HPLC条件>
HPLC装置:ウォーターズ デルタ600
検出装置:ウォーターズ 2996 (フォトダイオードアレイ検出装置)
分取カラム:ナカライテスクCosmosil 5C18-AR-II (φ10×250mm)+ガードカラム(10×10mm)
流速:5ml/min
検出:PDAマックスプロット
溶出条件:アセトニトリル:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液[0:100(10分)→50分→100:0(20分)]。
上記の溶出条件にてHPLCにて分離を行い、注入開始より10分毎に分画し、合計8画分(D4-II-1〜D4-II-8)を得た。かかる分取操作を繰り返し行い、D4-II画分(凍結乾燥物)(49.3mg)よりD4-II-3画分(凍結乾燥物)(6.8mg)が得た。
(5)D4-II-3画分からの逆相(ODS)高速液体クロマトグラフィーによる分画操作(図5)
(4)で調製したD4-II-3画分をアセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸水溶液の(1:1)混合液に溶解し、下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製を行った。
<HPLC条件>
HPLC装置:ウォーターズ デルタ600
検出装置:ウォーターズ 2996 (フォトダイオードアレイ検出装置)
分取カラム:ナカライテスクCosmosil 5C18-AR-II (φ10×250mm)+ガードカラム(10×10mm)
流速:5ml/min
検出:PDAマックスプロット
溶出条件:アセトニトリル:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液[13:87(30分)→10分→0:100(10分)]。
上記の溶出条件によりHPLCにて分離を行い、クロマトグラフのピークを指標として分画を行ったところ、合計8つの画分(D4-II-3A〜D4-II-3H)を得た。かかる分取操作を繰り返し行い、D4-II-3画分(凍結乾燥物)(15.6mg)よりD4-II-3E画分(凍結乾燥物)(0.9mg)を得た。
(6)D4-II-3E画分からの順相クロマトグラフィーによる分離(図6)
(5)で調製したD4-II-3E画分(凍結乾燥物)(16.6mg)を、クロロホルムとメタノールの等量(1:1)混合液0.5mlに溶解し、下記条件の順相カラムクロマトグラフィーに供して精製を行った。
<順相カラムクロマトグラフィー条件>
分離用シリカ:富士シリシア化学 シリカゲルBW-300 (5g)
サイズ:φ15×44mm
溶出条件:クロロホルム:メタノール[95:5(35ml)→9:1(15ml)]。
上記の溶出条件において、溶出液2ml毎に、アニスアルデヒド硫酸発色による薄相クロマトグラフィーにて確認しながら分画を行ったところ、合計4つの画分(D4-II-3E-1〜D4-II-3E-4)を得た。かかる精製操作を繰り返し行い、D4-II-3E-4画分(凍結乾燥物)(3.3mg)を得た。
(7)D4-II-3E-4画分の同定
上記(6)で得られたD4-II-3E-4画分を、FAB-MS測定(日本電子製JMS-T100LC型(マトリクス:polyethylene glycol))、1H-NMR測定(日本電子製:ECP-500)および13C-NMR測定(バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド製:Varian-Unity500型)に供したところ、下記の結果が得られた。
[α]26 D +4.44°(c 0.495, MeOH)
FAB-MS: m/z 203 [M+H] -
1H NMR (500 MHz, CD3OD): 1.30〜1.55 (6H, m, H-5〜H-8), 2.22 (2H, dq, J = 1.6, 7.3 Hz, H-4), 3.41 (1H, dd, J = 6.4, 11.0, H-10), 3.46 (1H, dd, J = 4.6, 110, H-10), 3.56 (1H, m, H-9), 5.79 (1H, dt, J = 15.6, 1.6 Hz, H-2), 6.95 (1H, dt, J = 15.6, 7.1 Hz, H-3).
13C-NMR (125 MHz, CD3OD): 23.4, 29.2, 30.3, 33.0, 34.3 (C-4 〜C-8), 67.4(C-10), 73.2(C-9), 122.6(C-2), 151.1(C-3), 177.7(C-1)。
この結果から、D4-II-3E-4画分に含まれる化合物は、下式で示される(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸であると同定された。当該(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸は、食経験のあるローヤルゼリーに含まれている成分であることから、経口的に摂取しても副作用なく安全性の高い化合物であると考えられる。
Figure 2009014105
得られた(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を、下式に示す方法でメチル化した後、(S)-MTPAClで処理し、(R)-MTPAエステルを調製した。得られた(R)-MTPAエステルの1H-NMRを測定し、10位に帰属されるプロトンシグナルの面積比を算出した。その結果、上記で得られた(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸はラセミ体であり、各立体の存在比はR:S=3:1、計算誤差を考慮すると少なくともR:S=2.8〜3.8:1の範囲にあることが判明した。
Figure 2009014105
調製例2(図7参照)
乾燥粉末ローヤルゼリー(浙江省浙江平湖産)200 gに1500 mLのメタノールを加え、室温で攪拌しながら12時間抽出した。溶出液を減圧濾過し、ろ液の溶媒を減圧下留去した。得られた残渣(108.9 g)をODS カラムクロマトグラフィー (カラム:Cosmosil 75C18-PREP、 カラムサイズ:φ80×205 mm、溶離液:10%、50%メタノール水溶液、各2500 mL (1250 mL×2フラクション)) で精製し、フラクション1(10%メタノール溶出区の前半)、2(10%メタノール溶出区の後半)、3(50%メタノール溶出区の前半)、4(50%メタノール溶出区の後半)にわけた。フラクション4をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラム:Daiso gel IR-60, カラムサイズ:φ26×150 mm、溶離液:5%メタノールを含むクロロホルム、500 mL(50 mL×10フラクション))で精製し、7-10番目に溶出されたフラクションを合わせて濃縮した。これを再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラム:Daiso gel IR-60、カラムサイズ:φ26×150 mm、溶離液:5%メタノールを含むクロロホルム、600 mL (60 mL×10フラクション))で精製し、5番目に溶出されたフラクションをさらにHPLC(カラム:Cosmosil 5C18-AR column(Nacalai Tesque、10×250 mm)、溶離液:13% acetonitrileを含む0.1% TFA、流速:5.0 mL/min、モニター:220 nm)で精製し、(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸13.3 mg を得た。
調製例3 (2E, 9S)-9- ヒドロキシ-2-デセン酸(以下、便宜上「化合物DDA-14」ともいう)の製造
Figure 2009014105
市販の(4R)-4-(2-ヒドロキシエチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン (1)をトシル化し、さらに5-ブロモ1-ペンテンを使ったGrignard反応を行うことで、 (R)-2,2-ジメチル-4-(オクト-7-エニル)-1,3-ジオキソラン (3)とした。これを酢酸で処理してアセトナイドを除去した後、第一級水酸基のトシル化を行った。次いで、オゾン分解とホスホノ酢酸トリメチルを使ったWittig反応を行い、PPTSによる酸加水分解によりTHP基を除去した後、水酸化カリウムによるアルカリ加水分解を行い、表題の(2E, 9S)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸(11)(化合物DDA-14)を合成した。
得られた化合物DDA-14を、1H-NMR測定(日本電子製:Alpha-400)に供した結果を下
記に示す。
1H NMR (400 MHz, CD3OD):1.13 (d, J=6.0 Hz, 3H), 1.50-1.34 (m, 8H), 2.23-2.19 (m, 2H), 3.69 (m, 1H), 5.79 (dt, J=15.6, 1.4 Hz, 1H), 6.94 (dt, J=15.6, 6.8 Hz, 1H)。
調製例4 (2E, 9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸(以下、便宜上「化合物DDA-15」ともいう)の製造
Figure 2009014105
調製例3に記載した方法で得られたアルコール(7)を光延反応で立体を反転させたベンゾエート(12)とした。その後は調整例3に記載した方法と同様にして、表題の(9R, 2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸(17)(化合物DDA-15)を合成した。
得られた化合物DDA-15を、1H-NMR測定(日本電子製:Alpha-400)に供した結果を下記に示す。
1H NMR (400 MHz 、CDCl3):1.03 (d, J=8.0 Hz, 3H), 1.44-1.20 (m, 8H), 2.17-2.11 (m, 2H), 3.62 (m, 1H), 5.71 (br.d, J=15.6 Hz, 1H), 6.86 (dt, J=15.6, 7.2 Hz, 1H)。
調製例5 (2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(以下、便宜上「化合物DDA-7」ともいう)の製造
Figure 2009014105
調製例3に記載した方法で得られたアセトナイド(3)をswern酸化してアルデヒドにした後、Ethyl ditrifluoroacetyl-phosphoacetateを使ったWittig反応を行った。次いで水素化ナトリウムよるアルカリ加水分解によりアセトナイドを除去し、最後に水酸化ナトリウムによるアルカリ加水分解を行うことで、表題の(2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(20)(化合物DDA-7)を合成した。
得られた化合物DDA-7を、1H-NMR測定(日本電子製:Alpha-400)に供した結果を、下記に示す。
1H NMR (400 MHz、DMSO):1.39-1.18 (m, 8H), 2.58-2.50 (m, 2H), 3.19-4.34 (m,3H), 5.71 (d, J=11.6 Hz, 1H), 6.21 (dt, J=11.6, 7.6 Hz, 1H)。
調製例6 (2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸(以下、便宜上「化合物DDA-16」ともいう)の合成
Figure 2009014105
まず市販のδ-バレロラクトン(22)をDIBAL還元によりアルデヒドとした。さらにジエチルホスホノ酢酸tert-ブチルを使ったWittig反応と、無水酢酸、ピリジンによるアセチル化を行い、最後にトリフルオロ酢酸によりt-BuO基を除去することで、表題の(2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸(24)(DDA-16)を合成した。
得られた化合物DDA-16を、1H-NMR測定(日本電子製:Alpha-400)に供した結果を、下記に示す。
1H NMR(400 MHz、CDCl3):1.71-1.52 (m, 4H), 2.05 (s, 3H), 2.30-2.21 (m, 2H), 4.07 (t, J=6.2 Hz, 2H), 5.85 (dt, 15.6, 1.6 Hz, 1H), 7.06 (dt, 15.6, 7.0 Hz, 1H)。
試験例1
強制遊泳試験は、抗うつ作用の前臨床評価に広く用いられており、臨床的に有効な抗うつ薬は不動時間を短縮することが知られている(Porsortら、Nature 266:730-732, 1977)。また、岡田ら(Jpn.J.Pharmacology.,73:93-96,1997)および吉村ら(脳の科学 22:49-54, 2000、Psychopharmacology 183:300-307, 2005)は、雌性動物の卵巣を摘出して人為的な閉経状態におくと、不動時間が有意に延長されることから、卵巣摘出した雌性動物が閉経周辺期(更年期)の抑うつ気分またはうつ状態を反映した病態モデル動物として利用できることを報告している。
そこで、調製例1で調製したD4-II-3E-4画分((2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)をこの病態モデル動物に投与して、強制遊泳試験(Nature、266:730-732、1977)を行い、当該化合物の抗うつ作用を評価した。
(1)卵巣摘出病態モデル動物の調製
被験動物としてICR系雌性マウス(9週齢、体重29-33g)を使用した。マウスはすべて1ケージ10匹群居飼育し、1週間に1回、餌料(床敷きホワイトフレーク)を交換した。卵巣摘出術は、下記の方法によって行った。
<卵巣摘出>
ペントバルビタール(65mg/kg,i.p)麻酔下にマウスの背腹部を約5mm切開し、卵巣及び卵巣周辺の付着脂肪組織を一時的に体外に露出し、卵巣と子宮端部の間を結紮後、卵巣を切除摘出する。その後、速やかに子宮および卵巣周辺組織を腹腔内に戻した後、腹壁および皮膚を縫合する。
(2)被験物質の投与
調製例1で調製したD4-II-3E-4画分(凍結乾燥物)0.25mgをイオン交換水50mlに溶解し、懸濁液を調製した。これを上記の被験動物(卵巣摘出病態モデルマウス)に、体重10gあたり0.1mlの割合で経口ゾンデを用いて、卵巣摘出した日から1日1回2週間の間、経口投与した(試験群)。対照実験として、D4-II-3E-4画分(凍結乾燥物)に代えて注射用蒸留水を、被験動物(卵巣摘出病態モデルマウス)に体重10gあたり0.1mlの割合で経口投与した(対照群)。また、上記の卵巣摘出病態モデルマウス(卵巣摘出群)と同様に開腹はするものの、卵巣を切除摘出することなく縫合したマウスに対して、注射用蒸留水を体重10gあたり0.1mlの割合で経口投与した(偽手術群)。
(3)強制遊泳試験
卵巣摘出の2週間後、試験群、対照群および偽手術群の各マウスに、Porsortらの方法(Nature、266:730-732、1977)に準拠して、下記のように強制遊泳試験を行った。
透明のポリカーボネート製のメスシリンダー(内径10cm、高さ25cm)に25℃の水を入れ、底面から10cmの位置に水面を合わせる。6分間遊泳させ、高感度ビデオシステムにて録画、その後、録画画面を観察しながら、イベントレコーダーを操作することにより不動状態で浮遊している時間(秒)を計測する(2分目から4分間を解析の対象とする)。
(4)子宮重量の測定試験
強制遊泳試験後(不動時間の観察終了後)、マウスを過量のペントバルビタール(100 mg/kg以上)投与により呼吸停止に至らしめ、屠殺し、開腹して子宮を摘出した。摘出子宮を濾紙上に展開して付着する奬膜及び血管を除去後、ただちに湿重量を化学天秤にて計量した。
(5)結果
結果を図8に示す。なお、結果は試験群(D4-II-3E-4画分)、対照群および偽手術群とも被験動物10匹の平均値である。なお、図中、波線は偽手術群の不動時間(秒)の平均値である。
図8からわかるように、D4-II-3E-4画分((2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)を投与した試験群の被験動物(卵巣摘出病態モデルマウス)の不動時間は、これを投与しない対照群の被験動物のそれに比して、有意に短かった。このことから、(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸に抗うつ作用があること、特に女性の更年期の抑うつ気分やうつ状態の改善に有効な抗うつ作用があることが明らかになった。
さらに図9からわかるように、不動時間を短縮する用量のD4-II-3E-4画分((2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)を投与した試験群の被験動物(卵巣摘出病態モデルマウス)の子宮重量は対照群の動物と比較して差は認められなかった。
卵巣摘出雌性動物に女性ホルモンのエストロゲンを投与すると、不動時間は短縮し、正常値に戻ることが報告されている(別宮、吉村他、日本神経精神薬理学雑誌、22:298,2002。Psychopharmacology 183:300-307, 2005)。このことはエストロゲンが閉経周辺期の“うつ状態”を改善することを示す。しかし、エストロゲン投与の結果、卵巣を摘出していない雌性動物に比べて子宮重量を著しく肥大させるということも分かっている。このことは“うつ状態”を改善する投与量では、エストロゲンは子宮重量を異常に肥大させる有害作用を発現することを意味する。このエストロゲンの子宮重量の異常な増加は、人のホルモン補充療法で指摘される有害作用に相当する症状と考えられる。
図8及び9の結果から、上記で得られたD4-II-3E-4画分((2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)に、不動時間を有効に改善しつつ、子宮重量を増加させるなどの有害作用の危険性があることは極めて少なく、女性の更年期の抑うつ気分やうつ状態の改善に有効な抗うつ作用があることが明らかになった。
なお、被験物質として10-ヒドロキシデセン酸(10-HAD、比較化合物)を用いて、上記と同様にして、強制遊泳試験を行った結果を図10に示す。その結果、10-ヒドロキシデセン酸に抗うつ作用は認められず、抗うつ作用は(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸に特有の作用であることがわかった。
試験例2
調製例3〜6で製造した化合物(DDA-7、DDA-14〜DDA-16)を被験化合物として、試験例1を一部下記のように変更して、強制遊泳試験を行って、抗うつ作用を評価した。なお、DDA-14とDDA-15については、天然物としてそれらのラセミ体が報告されており、ここではこれと同様の割合になるようにそれぞれ3:1の重量比で混合し、(2E, 9S+9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸(ラセミ体)として、用いた。
(1)強制遊泳試験
卵巣を摘出した翌日から14日間(卵巣摘出の翌日を投与1日とする)、各被験化合物を投与した被験動物(卵巣摘出病態モデルマウス)を強制遊泳に供した。化合物DDA-7は0.32mgを、DDA-14とDDA-15は各0.29mgと0.088mgを、DDA-16は0.29mgをイオン交換水80mlに溶解し調製した。各被験化合物投与を始めて14日目に、被験化合物を経口投与した2時間後に被験動物を水槽に入れて10分間遊泳時間を測定した(試験群)。なお、対照実験として、被験化合物に代えて注射用蒸留水を、被験動物(卵巣摘出病態モデルマウス)体重10gあたり0.1mlの割合で経口投与したものについて同様の試験を行った(対照群)。
遊泳時間の測定は磁石をマウスの両側後肢に付け、マウスを水槽 (直径:145mm、高さ:190mm、水深:100mm、水温:約24 ±2℃) に入れ10分間の後肢の動きを掻痒測定システム (株式会社ニューロサイエンス) を用いて捉えることで実施した。なお、10分の遊泳時間は1分毎に分けて解析した。
(2)結果
測定時間2〜4分間における不動時間を下表および図11に示す。なお、結果は試験群および対照群とも被験動物6匹の平均値である。
Figure 2009014105
これからわかるように、上記各被験化合物を投与した試験群の被験動物(卵巣摘出病態モデルマウス)の不動時間は、これを投与しない対照群の被験動物のそれに比して、有意に短かった。このことから、調製例3および6で製造した化合物DDA-7および化合物DDA-16、ならびに化合物DDA-14とDDA-15のラセミ体に抗うつ作用があること、特に女性の更年期の抑うつ気分やうつ状態の改善に有効な抗うつ作用があることが明らかになった。
実施例1〜4:カプセル剤
(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1) 5 mg
乾燥精製酵母 (朝日ビール薬品(株)) 344 mg
蔗糖脂肪酸エステル((株)太陽化学) 1 mg
上記成分(粉末)を均一に混合し、得られた粉末350mgを1号ハードカプセルにいれて、カプセル剤とした(実施例1)。
また(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1)に代えて、調製例3および4で合成したDDA-14とDDA-15の混合物(天然型ラセミ体)((2E, 9S+9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸)、調製例5で合成したDDA-7((2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)、または調製例6で合成したDDA-16((2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸)を用いて、同様にしてカプセル剤を調製した(実施例2〜4)。
実施例5〜8:ドリンク剤
(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1) 5 mg
レモン果汁((株)ポッカコーポレーション) 20 ml
プロポリス(アピ(株)) 0.2 g
ビタミンC((株)武田薬品) 0.2 g
ハチミツ(アピ(株)) 13 g
上記の6成分を水に溶解し、これを褐色瓶に充填してドリンク剤(1本分100ml)を得た。
また(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1)に代えて、調製例3および4で合成したDDA-14とDDA-15の混合物(天然型ラセミ体)((2E, 9S+9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸)、調製例5で合成したDDA-7((2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)、または調製例6で合成したDDA-16((2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸)を用いて、同様にしてドリンク剤を調製した(実施例6〜8)。
実施例9〜12:ハードカプセル
(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1) 5 mg
乳糖 (アピ(株)) 150 mg
テアニン((株)太陽化学) 50 mg
上記成分(粉末)を均一に混合し、得られた粉末350mgを1号ゼラチン製硬質カプセルに入れてカプセル剤とした。
また(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1)に代えて、調製例3および4で合成したDDA-14とDDA-15の混合物(天然型ラセミ体)((2E, 9S+9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸)、調製例5で合成したDDA-7((2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)、または調製例6で合成したDDA-16((2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸)を用いて、同様にしてカプセル剤を調製した(実施例10〜12)。
実施例13〜16:ドリンク剤
(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1) 5 mg
ハチミツ(アピ(株)) 7,500 mg
エゾウコギエキス(ヤクハン製薬(株)) 2,500 mg
プロポリスエキス(アピ(株)) 1,000 mg
ビタミンC((株)武田薬品) 300 mg
クエン酸 (アピ(株)) 100 mg
上記の6成分を水に溶解し、これを褐色瓶に充填してドリンク剤(1本分30ml)を得た。
また(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸(調製例1)に代えて、調製例3および4で合成したDDA-14とDDA-15の混合物(天然型ラセミ体)((2E, 9S+9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸)、調製例5で合成したDDA-7((2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)、または調製例6で合成したDDA-16((2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸)を用いて、同様にしてドリンク剤を調製した(実施例14〜16)。
本発明によれば、抗うつ作用を有し、医薬組成物、特に抗うつ剤の有効成分として有用な新規化合物を提供することができる。また本発明によれば、これらの化合物を有効成分とする抗うつ用組成物を提供することができる。当該抗うつ用組成物は、特に女性の更年期における抑うつ気分やうつ状態の改善に有効に用いることができる。
ローヤルゼリー乾燥粉末から(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を単離精製する工程において、「限外濾過膜によるA3画分の調製」工程を示す。 ローヤルゼリー乾燥粉末から(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を単離精製する工程において、「A3画分からのゲル濾過による分画」工程を示す。 ローヤルゼリー乾燥粉末から(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を単離精製する工程において、「D4画分からの逆相(ODS)中圧クロマトグラフィーによる分画」工程を示す。 ローヤルゼリー乾燥粉末から(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を単離精製する工程において、「D4-II画分からの逆相(ODS)高速液体クロマトグラフィーによる分画」工程を示す。 ローヤルゼリー乾燥粉末から(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を単離精製する工程において、「D4-II-3画分からの逆相(ODS)高速液体クロマトグラフィーによる分画」工程を示す。 ローヤルゼリー乾燥粉末から(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸を単離精製する工程において、「D4-II-3-E画分からの順相クロマトグラフィーによる分離」工程を示す。 調製例2で採用した、ローヤルゼリー乾燥粉末から(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸の単離精製方法のフロー図を示す。 調製例1で調製したD4-II-3E-4画分(凍結乾燥物)を経口投与した卵巣摘出病態モデルマウス(試験群)(黒バー)および蒸留水を経口投与した卵巣摘出病態モデルマウス(対照群)(白バー)について強制遊泳試験を行い、不動時間(秒)を測定した結果を示すグラフである。なお、図中波線は、偽手術群の不動時間の平均を示す。 不動時間を短縮する用量のD4-II-3E-4画分((2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)が子宮重量に与える影響の測定結果を示す図面である。縦軸は子宮重量(mg)を示す。点線は卵巣を摘出していない偽手術群の子宮重量(正常値)である。 10-ヒドロキシデセン酸(10-HDA)を経口投与(70,140,210mg/kg/day)した卵巣摘出病態モデルマウス(試験群)(黒バー)、および蒸留水を経口投与した卵巣摘出病態モデルマウス(対照群)(白バー)について強制遊泳試験を行い、不動時間(秒)を測定した結果を示すグラフである。なお、図中波線は、偽手術群の不動時間の平均を示す。 調製例3および4で合成したDDA-14とDDA-15の混合物(天然型ラセミ体)((2E, 9S+9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸)、調製例5で合成したDDA-7((2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸)、および調製例6で合成したDDA-16((2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸)をそれぞれ経口投与した卵巣摘出病態モデルマウス(試験群)および蒸留水を経口投与した卵巣摘出病態モデルマウス(対照群)について強制遊泳試験を行い、不動時間(秒)を測定した結果を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2009014105
    (式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、またはアセチルオキシ基を意味する。また、nは2〜7の整数である)
    で示されるカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
  2. 上記カルボン酸が、(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2Z)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、および(2E)-7-アセトキシ-2-ヘプテン酸からなる群から選択されるいずれかの化合物である、請求項1記載のカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
  3. 上記(2E)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸が、(2E,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2E,9S)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、またはこれらの混合物である請求項2に記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
  4. 上記(2Z)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸が、(2Z,9R)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、(2Z,9S)-9,10-ジヒドロキシ-2-デセン酸、またはこれらの混合物である請求項2に記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
  5. 上記(2E)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸が、(2E,9R)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、(2E,9S)-9-ヒドロキシ-2-デセン酸、またはこれらの混合物である請求項2に記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分とする医薬組成物。
  7. 抗うつ剤である、請求項6に記載する医薬組成物。
  8. 請求項1乃至5のいずれかに記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを有効成分とする抗うつ用組成物。
  9. 抑うつ気分またはうつ状態を治療するための請求項1乃至5のいずれに記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステル。
  10. 抑うつ気分またはうつ状態にある人に、請求項1乃至5のいずれに記載するカルボン酸、またはその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することからなる、抑うつ気分またはうつ状態を予防または改善する方法。
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